説明

3次元距離計測装置及びその方法

【課題】曲面のエッジ部分等における形状計測精度の向上を図り正確なギャップ計測を行う3次元距離計測装置及びその方法を提供する提供する。
【解決手段】画像を撮影する複数の撮像装置と、計測対象物が所定範囲で重なるように撮像装置を回転させて光軸を調整する回転駆動装置とを備えた3次元撮影手段と、複数の画像に写された所要計測点の画素の位置対応付け情報を演算する対応付け演算処理手段と、位置対応付け情報と回転駆動装置の回転情報とを用いて計測対象物の3次元形状を演算する3次元形状演算処理手段と、3次元形状から計測対象物の3次元形状が得られない領域の3次元形状を推定する3次元形状推定演算処理手段と、推定結果より計測対象物上において指定された2点の距離計測点の3次元座標を演算する3次元計測座標演算処理手段と、これらの3次元座標を用いて2点間の距離を演算する距離演算処理手段とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ギャップ等の3次元距離計測技術に係り、特に、計測領域内の特徴量が少ない場合であっても好適に距離計測を行うことができる3次元距離計測装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラントの高経年化が進む中、今後炉内構造物や機器の保守・補修の機会が増加すると考えられる。炉内補修工事等では、対象物の形状寸法や、対象箇所までのアクセスルート(ギャップ)の形状寸法等の寸法情報が必要である。これらの寸法情報は設計図面情報に依存するだけでなく、アズビルト情報が重要である。
【0003】
ギャップ計測の従来技術として、2枚以上の画像を用いたステレオ視法による3次元計測方法がある。これは、1度に面的な形状計測が可能であり、構造物間のギャップ計測として必要な最短距離計測を効率的に実施できる方法である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−218251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ステレオ視法を用いた計測方法において、計測対象物の正面付近は計測機器との位置関係が正対に近いため、比較的容易に形状計測が可能である。しかし、曲面のエッジ部分等においては、カメラに対する計測面の角度が大きくなり、計測該当領域内の特徴点(特徴量)が少なくなる。このため、計測精度の低下や、計測したい箇所が撮影範囲に入らないといった課題がある。
【0006】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、曲面のエッジ部分等における形状計測精度の向上を図り、高精度に計測対象物における2点間の距離を計測することができる3次元距離計測装置及びその方法を提供することを目的とする。
【0007】
また、本発明に係る3次元距離計測装置及びその方法は、計測対象物の設計図面情報等が十分に得られない場合においても正確な距離計測を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る3次元距離計測装置は、上述した課題を解決するために、画像を撮影する複数の撮像装置と、計測対象空間内における計測対象物が所定範囲で重なるように前記撮像装置を回転させて光軸を調整する回転駆動装置とを備えた3次元撮影手段と、複数の前記画像に写された前記計測対象空間内の所要計測点の画素の位置を対応付けした位置対応付け情報を演算する対応付け演算処理手段と、前記位置対応付け情報と前記回転駆動装置から得られる回転情報とを用いて、前記計測対象物の3次元座標に基づく3次元形状を演算する3次元形状演算処理手段と、前記3次元形状演算処理手段より得られた前記3次元形状から前記計測対象物の前記3次元形状が得られない領域の3次元形状を推定する3次元形状推定演算処理手段と、前記3次元形状推定演算処理手段より得られた推定結果より前記計測対象物上において指定された2点の距離計測点の3次元座標を演算する3次元計測座標演算処理手段と、前記3次元計測座標演算処理手段より得られた前記3次元座標を用いて前記2点間の距離を演算する距離演算処理手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る3次元距離計測装置は、異なる位置で画像を撮影する複数の撮像装置と、計測対象空間内における計測対象物が所定範囲で重なるように前記撮像装置を回転させて光軸を調整する回転駆動装置とを備えた3次元撮影手段と、複数の前記画像に写された前記計測対象空間内の所要計測点の画素の位置を対応付けした位置対応付け情報を演算する対応付け演算処理手段と、前記位置対応付け情報と前記回転駆動装置から得られる回転情報とを用いて、前記計測対象物の3次元座標に基づく3次元形状を演算する3次元形状演算処理手段と、前記3次元撮影手段により異なる位置で撮影された複数の画像に基づき前記3次元演算処理手段により演算された異なる座標系を有する複数の前記3次元形状における前記計測対象物の形状が重なり合う部分を対応点として検出する統合座標検出処理手段と、前記統合座標検出処理手段により得られた前記対応点を用い、前記異なる座標系を任意の座標系に座標統合する座標系統合演算処理手段と、前記座標統合された結果より前記計測対象物上において指定された2点の距離計測点の3次元座標を演算する3次元計測座標演算処理手段と、前記3次元計測座標演算処理手段より得られた前記3次元座標を用いて前記2点間の距離を演算する距離演算処理手段とを備えたことを特徴とする。
【0010】
さらに、本発明に係る3次元距離計測方法は、上述した課題を解決するために、画像を撮影する複数の撮像装置を準備し、計測対象空間内における計測対象物が所定範囲で重なるように前記撮像装置を回転させて光軸を調整し、前記撮影装置により撮影を行う工程と、複数の前記画像に写された前記計測対象空間内の所要計測点の画素の位置を対応付けした位置対応付け情報を演算する工程と、前記位置対応付け情報と前記撮像装置の回転に関する情報とを用いて、前記計測対象物の3次元座標に基づく3次元形状を演算する工程と、前記3次元形状座標から前記計測対象物の前記3次元形状が得られない領域の3次元形状を推定する工程と、前記3次元形状の推定結果より前記計測対象物上において指定された2点の距離計測点の3次元座標を演算する工程と、前記3次元座標を用いて前記2点間の距離を演算する工程とを備えることを特徴とする。
【0011】
さらにまた、本発明に係る3次元距離計測方法は、画像を撮影する複数の撮像装置を準備し、計測対象空間内における計測対象物が所定範囲で重なるように前記撮像装置を回転させて光軸を調整し、前記撮影装置により撮影を行う工程と、前記撮影を行う工程を異なる位置で行う工程と、複数の前記画像に写された前記計測対象空間内の所要計測点の画素の位置を対応付けした位置対応付け情報を演算する工程と、前記位置対応付け情報と前記撮像装置の回転に関する情報とを用いて、前記計測対象物の3次元座標に基づく3次元形状を演算する工程と、異なる位置で撮影された複数の画像に基づき演算された異なる座標系を有する複数の前記3次元形状における前記計測対象物の形状が重なり合う部分を対応点として検出する工程と、前記対応点を用い、前記異なる座標系を任意の座標系に座標統合する工程と、前記座標統合された結果より前記計測対象物上において指定された2点の距離計測点の3次元座標を演算する工程と、前記3次元座標を用いて前記2点間の距離を演算する工程とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る3次元距離計測装置及びその方法においては、曲面のエッジ部分等における形状計測精度の向上を図り、高精度に計測対象物における2点間の距離を計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る3次元距離計測装置及び3次元距離計測方法の第1実施形態を示すブロック図。
【図2】3次元撮影部で撮影された画像から3次元座標を求める説明図。
【図3】本発明に係る3次元距離計測装置及び3次元距離計測方法の第2実施形態を示すブロック図。
【図4】本発明に係る3次元距離計測装置及び3次元距離計測方法の第3実施形態を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1実施形態]
本発明に係る3次元距離計測装置及びその方法の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1は、本発明に係る3次元距離計測装置及び3次元距離計測方法の第1実施形態を示すブロック図である。図1に示す3次元距離計測装置は、ステレオ視法による3次元距離計測装置の構成を示したものである。ここでは、3次元距離計測装置及びその方法を円柱形状や球形状、直方体形状を有する原子力発電プラントの炉内構造物(例えば配管など)の表面上に形成された欠陥の長さの測定や、炉内構造物間のギャップの計測に適用した場合について説明する。以下、3次元距離計測装置の計測対象を「ギャップ等」という。
【0016】
3次元距離計測装置は、3次元撮影部1、画像入力装置2、対応付け演算処理部3、3次元形状演算処理部4、3次元表示処理部5、3次元形状推定演算処理部6、3次元計測座標演算処理部7、ギャップ演算処理部8を備える。画像入力装置2、対応付け演算処理部3、3次元形状演算処理部4、3次元表示処理部5、3次元形状推定演算処理部6、3次元計測座標演算処理部7及びギャップ演算処理部8は、後述する各機能を実現するために記憶された種々のプログラムを実行するパーソナルコンピュータ等で実現される。
【0017】
3次元撮影部1は、撮像装置10及び回転駆動装置11を備える。撮像装置10は、第1の撮像装置10a及び第2の撮像装置10bを備える。第1の撮像装置10a及び第2の撮像装置10bより撮影された2枚の画像は、画像入力装置2を介して対応付け演算処理部3に入力される。
【0018】
回転駆動装置11は、撮像装置10に接続される。回転駆動装置11は、各撮像装置10a、bを三軸回りに回転させる。回転駆動装置11の回転角度情報は、対応付け演算処理部3及び3次元形状演算処理部4に出力される。
【0019】
対応付け演算処理部3は、撮像装置10により撮影された2枚の画像に写像された計測対象空間内の計測点を同一点として画素位置の対応付けを行う。
【0020】
3次元形状演算処理部4は、対応付け演算処理部3から得られた2枚の画像の画素位置の対応付け結果と、回転駆動装置11から出力された回転角度情報を用いて3次元座標を算出し、炉内構造物表面の3次元形状を演算する。
【0021】
3次元形状推定演算処理部6は、3次元形状演算処理部4より得られる3次元形状から、炉内構造物の3次元形状を円弧や直線形状などとして推定する。
【0022】
3次元計測座標演算処理部7は、3次元形状推定演算処理部6より得られる3次元形状推定結果より、図示しない入力装置を用いてオペレータより指定された円弧上や直線上にあるギャップ等の計測点となる計測座標を演算する。
【0023】
ギャップ演算処理部8は、3次元計測座標演算処理部7より得られる計測座標を用いてギャップ等を演算する。
【0024】
3次元形状表示処理部5は、撮像装置10から得られた撮影画像、3次元形状演算処理部4で得られた3次元座標や3次元形状、3次元形状の断面、ギャップ演算処理部8で得られたギャップ等を表示する。
【0025】
次に、第1実施形態における3次元距離計測装置の動作と効果について説明する。
【0026】
3次元撮影部1は、ギャップ等を撮影可能な位置に適宜設置される。各撮像装置10a、bのうち一方の撮像装置を回転駆動装置11により回転制御させ、撮像装置10から炉内構造物までの計測距離に応じて最適と思われる箇所においてギャップ等を計測する炉内構造物が所定範囲で重なるように各撮像装置10a、bの光軸方向を調整して一致させる。3次元撮影部1は、各撮像装置10a、bにより同時に炉内構造物の表面を撮影する。
【0027】
対応付け演算処理部3は、回転駆動装置11から出力された回転角度情報を用いて、撮像装置10により撮像された2枚の画像に写像された計測対象空間内の計測点を同一点として、所要の画像処理を行い画素位置の対応付けを行う。同一点の抽出は、所要の画像処理技術を用いて行われる。
【0028】
3次元形状演算処理部4は、対応付け演算処理部3から得られた2枚の画像の画素位置の対応付け結果と、回転駆動装置11から出力された回転角度情報を用いて3次元座標を算出し、炉内構造物表面の3次元形状を演算する。
【0029】
ここで、3次元撮影部1で撮影された画像から3次元座標の求め方を図2を用いて説明する。
【0030】
計測対象空間の座標系において各撮像装置10a、bの投影中心座標20a,20b(X(a,b),Y(a,b),Z(a,b))でそれぞれ撮影される。計測対象空間上の計測点22(X,Y,Z)は、それぞれの撮像面21a,21b上において、対応する画素座標23a,23b(x(a,b)、y(a,b))として写像される。
【0031】
式(1)で示される通り、投影中心座標20a,20bと画素座標23a,23bと計測点22とが一直線上にあることから導出される条件式を用いて、計測点の3次元座標が求まる。これにより、炉内構造物のギャップ等の3次元計測を可能とする。
【0032】
式(1)において、fは焦点距離、a11〜a33は撮像装置10の各軸周りの回転量を用いた回転変換である。
【数1】

【0033】
3次元形状推定演算処理部6は、3次元形状演算処理部4から得られた3次元形状に基づいて、3次元形状が十分に得られない炉内構造物の3次元形状を円弧形状や直線形状として推定する。3次元形状演算処理部4において演算された検出対象の一部の3次元形状が円柱形状や球形状などの曲線を描く形状である場合には円弧推定を、直方体形状などの直線的な面を有する形状である場合には直線推定が適用される。
【0034】
具体的には、3次元形状推定演算処理部6は、演算された3次元形状において3次元撮影部1の撮像装置10に対して正対に近い位置で計測された箇所を選択する。すなわち、3次元形状が十分に計測されないエッジ等の境界部分とは異なる部分であり、エッジ等の境界部分と比較して3次元形状が十分に計測されている箇所である。選択は、3次元形状推定演算処理部6が自動で行ったり、またはオペレータにより図示しない入力装置を介して行われる。
【0035】
3次元形状推定演算処理部6は、この正対に近い状態で計測された計測対象物上の箇所において、オペレータにより指定された任意の断面区間(例えば計測対象空間におけるZ軸方向の一定区間におけるX−Y断面)に基づいて3次元形状を抽出し、円柱形状等である場合にはこの区間より得られた複数の3次元座標から円弧を求める。
【0036】
ここで、高さ方向(例えば、計測対象物に対して上下方向(計測対象空間におけるZ軸方向))を一定であると仮定すると、球体ではなく円として仮定することが可能である。このため、円の一般式((x−a)+(y−b)=r((a,b)は円の中心、rは半径))で計測対象物の表面形状を定義することができる。3次元形状推定演算処理部6は、円の一般式に基づいて、3次元形状演算処理部4より得られた複数の3次元座標から最小二乗法等により連立方程式を解き、中心と半径を求める。
【0037】
同様に、3次元形状推定演算処理部6は、抽出された計測対象物の3次元形状が直方体形状等である場合には、この区間より得られた複数の3次元座標から直線を求める。3次元形状推定演算処理部6は、直線の一般式(ax+by+c=0(a,b,cは定数))で計測対象物の表面形状を定義することができる。3次元形状推定演算処理部6は、直線の一般式に基づいて、得られた複数の3次元座標から最小二乗法等により連立方程式を解き、各定数を求める。直線推定を適用する場合、直線を延長することは無限に計測点が存在することとなる。このため、オペレータは推定する直線の距離を任意に設定し、処理範囲を設定する。
【0038】
なお、計測対象物が撮像装置の座標系に対して傾いている場合には、適宜円の一般式と楕円の一般式(x/a+y/b=1)もしくは直線の一般式を用い、円弧及び直線による形状推定を行う。
【0039】
3次元計測座標演算処理部7は、3次元形状推定演算処理部6から得られる炉内構造物の3次元形状の推定結果である円及び直線の一般式に基づいて、円弧上や直線上にあるギャップ計測点の3次元座標を演算する。ギャップ計測点は、例えば3次元表示処理部5により表示された3次元形状においてオペレータにより指定される。例えば、ギャップの計測を所望する2つの炉内構造物を指定したり、1つの炉内構造物の表面上の2点を指定したりする。3次元計測座標演算処理部7は、次処理のギャップ演算に用いるギャップ計測点の3次元座標の候補を、ギャップ空間で挟まれた2つの炉内構造物に対してそれぞれ演算する。また、欠陥の長さを測定する場合には、オペレータにより指定されたギャップ計測点の3次元座標を演算する。
【0040】
ギャップ演算処理部8は、3次元計測座標演算処理部7において演算されたギャップ計測点の3次元座標を用いてギャップ等を演算する。
【0041】
ギャップ演算処理部8は、2つの炉内構造物のギャップを計測する場合、3次元計測座標演算処理部7において演算された各表面上の複数のギャップ計測点の3次元座標の候補から、炉内構造物間の距離が最小距離となる断面(例えばX−Y断面)におけるギャップ計測点の3次元座標の組合せを求めて距離を演算する。
【0042】
ここで、ギャップ演算処理部8は、双方の計測対象物が円弧で推定されている場合には円弧の中心を結ぶ線が最小距離とする断面となるため、複数の計測座標の候補の中からギャップ計測に用いられるギャップ計測点の3次元座標を限定することができる。一方が円弧で推定され、他方が直線で推定された場合には、双方の中心を結ぶ線の断面と直線上に設定された距離において最小となる距離を演算する。また、双方が直線で推定された場合には、各直線上に設定した距離において最小となる距離を演算する。
【0043】
ギャップ演算処理部8は、これらの演算処理を予め設定された高さ方向(例えばZ軸方向)の計測範囲において行い、最短距離を自動的に算出する。
【0044】
また、ギャップ演算処理部8は、炉内構造物の表面上における欠陥の長さ等を計測する場合には、指定された2点が存在する表面上の3次元座標に基づいて計測を行う。
【0045】
第1実施形態における3次元距離計測装置及びその方法によれば、曲面エッジ部分等の撮像装置10と炉内構造物との角度が大きい箇所や、さらには撮像装置10の撮影範囲には写らない箇所でギャップ等を計測するための計測点が3次元形状から得られない場合であっても、3次元形状が計測された断面区間の複数の3次元座標と円及び直線等の一般式から炉内構造物の3次元形状を推定することにより円弧及び直線の延長上に存在するギャップ計測点の3次元座標を得ることができ、ギャップ等を計測することが可能となる。
【0046】
また、3次元形状計測した結果を用いて3次元形状を推定することにより指定されたギャップ計測点の3次元座標候補を演算し、さらにギャップ計測に必要な最小距離を計測することが可能となる。これにより、曲面のエッジ部分等における計測精度の向上を図ることができ、また設計図面情報等が十分に得られない場合においても正確なギャップ計測を行うことができる。
【0047】
さらに、炉内構造物間のギャップを精度よく計測することができるため、炉内補修時に炉内構造物間を通過する補修機器の利用の可否を判断することができる。
【0048】
さらにまた、曲面である炉内構造物の表面上の欠陥長さなどを計測する場合においては、3次元形状を円弧として推定することにより表面上の3次元座標が得られることから、二つの3次元座標間の単なる直線距離ではなく、正確な欠陥長さを計測することができる。
【0049】
[第2実施形態]
本発明に係る3次元距離計測装置及びその方法の第2実施形態を図面に基づいて説明する。
【0050】
図3は、本発明に係る3次元距離計測装置及び3次元距離計測方法の第2実施形態を示すブロック図である。
【0051】
第2実施形態における3次元距離計測装置及びその方法が第1実施形態における3次元距離計測装置及びその方法と異なる点は、3次元形状推定演算処理部6及び3次元計測座標演算処理部7に代えて、統合座標検出処理部31及び座標系統合演算処理部32が設けられた点である。第1実施形態と対応する構成及び部分については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0052】
3次元距離計測装置及びその方法は、複数計測箇所において計測を実施し、複数計測位置の3次元形状を座標統合し、ギャップ計測を実施するものである。なお、複数計測箇所における3次元形状は、それぞれ異なる座標系を持った計測結果である。この3次元距離計測装置及びその方法は、例えば、ギャップ等の計測領域が撮像装置10の1回の撮影で得られる画像に収まらず、ギャップ計測を行うために必要な3次元形状が得られない場合に有効である。
【0053】
統合座標検出処理部31は、撮像装置10により複数箇所で撮影された画像やこの画像から得られる3次元形状の異なる座標系を統合するために必要な同一対応点を検出する。座標系統合演算処理部32は、統合座標検出処理部31で検出された同一対応点を用い、異なる座標系を統合する。
【0054】
次に、第2実施形態における3次元距離計測装置及びその方法の動作と効果について説明する。
【0055】
第1実施形態と同様に、3次元撮影部1はギャップ等を撮影可能な位置に配置される。ここで、上述したように1箇所において計測対象となるギャップの全領域の撮影ができない場合、3次元撮影部1はギャップ等を形成する計測対象の全領域が撮影されるよう、異なる位置に移動して再度撮影を行う。撮影は、所要の画像が得られるように2箇所以上で行われる。
【0056】
対応付け演算処理部3及び3次元形状演算処理部4で所要の画像処理を行うことにより演算処理された3次元形状は、統合座標検出処理部31に出力される。
【0057】
統合座標検出処理部31は、座標系を統合するために必要な同一対応点を検出する。同一対応点は、次の第1の機能及び第2の機能のいずれかを用いて行われる。
【0058】
第1の機能は、オペレータにより指示された複数の3次元形状情報を統合するために必要な3つ以上の点から対応点を決定する機能である。具体的には、第1の機能は、3次元表示処理部5により表示された3次元形状上もしくは複数毎の撮影画像上において、オペレータから受け付けた指示に基づいて、複数計測位置の3次元形状の重なる部分においてほぼ同一となる対応点を決定するものである。
【0059】
第2の機能は、各計測位置における撮影で得られた画像に基づく3次元形状より、形状が重なり合う部分を形状マッチングにより検出し、重なり合う部分に含まれる計測座標に対し、計測座標誤差が最小となる上位3点以上を座標系統合のための対応点として自動的に検出する機能である。
【0060】
形状マッチングは、2以上の3次元形状の一致あるいは近似する部分を検出する処理であり、単純に形状マッチングを実施する場合には多数の回転変換と平行移動を行う必要がある。また、十分な3次元形状計測結果が得られない場合には、形状マッチングを行うことができない。
【0061】
そこで、統合座標検出処理部31は、第2の機能については対応付け演算処理部3とほぼ同様の処理を行い、2箇所以上の計測箇所で撮影された画像(少なくとも2箇所で撮影された少なくとも3枚の画像)を用いてほぼ同一の点の画素位置の対応付けを行うこともできる。統合座標検出処理部31は、対応付けられた点のうち5点以上の点を用い、式(2)で示されるアフィン変換により回転変換と平行移動を実施する。
【0062】
式(2)において、X,Y,Zは1つ目の計測箇所で撮影された画像における対応付けられた点の座標、X´,Y´,Z´は2つ目の計測箇所で撮影された画像における対応付けられた点の座標、a,b,c,d,e,f,g,h,iは回転要素、t,t,tは平行移動要素である。
【数2】

【0063】
以上の処理により得られた変換後の対応点を元に、オペレータにより設定された回転補正量と平行移動補正量の範囲において、計測座標誤差が最小となる上位5点以上を同一対応点として自動的に検出する。
【0064】
座標系統合演算処理部32は、第1の機能又は第2の機能に基づいて統合座標検出処理部31により検出された計測点を上述した式(2)のアフィン変換式を元に座標を変換し、各座標系を統合する。これにより、ギャップ等の計測点の3次元座標を得ることができる。ここで、基準となる座標系と変換する座標系は任意に設定される。
【0065】
ギャップ演算処理部8は、座標系統合演算処理部32において演算された計測座標を用いて、ギャップ等を演算する。ギャップ演算処理部8は、第1実施形態と同様に、オペレータにより指定された計測箇所において炉内構造物間の距離が最小となる箇所をギャップとして計測したり、欠陥長さを計測したりする。
【0066】
第2実施形態における3次元距離計測装置及びその方法によれば、複数計測箇所の3次元形状計測した結果を用いて座標統合を行う対応点の検出と座標統合を行い、ギャップ計測を行うことが可能となる。これにより、第1実施形態で奏する効果に加え、撮像装置10の画角によらずに比較的広範囲に亘る炉内構造物の3次元形状をも取得でき、炉内構造物間のギャップ等を計測することができる。
【0067】
また、3次元距離計測装置は、第1実施形態の3次元形状推定演算処理部6及び3次元計測座標演算処理部7に加えて、第2実施形態の統合座標検出処理部31及び座標系統合演算処理部32を備えてもよい。配管表面の欠陥等の計測対象が局所的である場合には、第1実施形態に基づいて回転駆動装置11により一方の光軸方向を調整して一致させることにより視差を生じさせて精度よく3次元形状計測を行うことができる。また、配管と配管とのギャップ等の計測範囲が広範囲に亘る場合には、第2実施形態に基づいて複数箇所で計測された3次元形状計測結果等を用いて座標統合を行うことにより、計測対象との画角や計測距離を考慮することなく3次元形状計測を行うことができる。この結果、一つの装置で種々の計測距離を持った計測対象の距離計測を行うことができる。
【0068】
[第3実施形態]
本発明に係る3次元距離計測装置及びその方法の第3実施形態を図面に基づいて説明する。
【0069】
図4は、本発明に係る3次元距離計測装置及び3次元距離計測方法の第3実施形態を示すブロック図である。
【0070】
第3実施形態における3次元距離計測装置及びその方法が第1実施形態における3次元距離計測装置及びその方法と異なる点は、3次元形状推定演算処理部6に代えて、設計図面情報記録部41及び図面形状推定演算処理部42が設けられた点である。第3実施形態における3次元距離計測装置及びその方法は、CAD図面等の情報を元に形状を推定し、ギャップ計測を実施するものである。なお、第1実施形態と対応する構成及び部分については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0071】
設計図面情報記録部41は、炉内構造物のCAD図面データや設計図面上における炉内構造物の直径や長さ等の設計図面情報を記憶する。設計図面情報は、設計図面情報記録部41より適宜入出力される。また、設計図面情報記録部41は、炉内構造物の3次元形状計測結果の記録も可能とする。
【0072】
図面形状推定演算処理部42は、設計図面情報記録部41に記録された設計図面情報を用いて計測対象物に該当する炉内構造物を決定する。図面形状推定演算処理部42は、炉内構造物の設計図面情報から、3次元形状が十分に得られない計測対象物の3次元形状情報を円弧又は直線形状として推定し、ギャップ計測点の3次元座標を演算する。図面形状推定演算処理部42は、第1実施形態における3次元形状推定演算処理部6に対応する。
【0073】
次に、第3実施形態における3次元距離計測装置及びその方法の動作と効果について説明する。
【0074】
第1実施形態と同様に、3次元撮影部1はギャップ等を撮影可能な位置に配置される。対応付け演算処理部3及び3次元形状演算処理部4で所要の画像処理を行うことにより演算処理された3次元形状は、設計図面情報記録部41及び図面形状推定演算処理部42に出力される。
【0075】
図面形状推定演算処理部42は、設計図面情報記録部41に記録されたCAD図面データ等から得られる炉内構造物の直径や長さ等の設計図面情報と3次元形状演算処理部4から得られた結果との比較を行う。図面形状推定演算処理部42は、3次元形状演算処理部4から得られた3次元形状において不足する形状情報を設計図面情報を用いて補間し、ギャップ計測点の3次元座標候補点を求める。
【0076】
具体的には、図面形状推定演算処理部42は、3次元形状演算処理部4の演算結果より、3次元撮影部1の撮像装置10と正対する位置にある計測対象物表面の3次元形状を設計図面情報記録部41に入力された図面情報と照合し、3次元形状が十分に得られない炉内構造物の形状を円弧形状や直線形状として推定する。なお、円弧及び直線推定は、第1実施形態における3次元形状推定演算処理部6と同一の処理を実施する。
【0077】
設計図面情報記録部41において正確な図面情報が記録されている場合には、図面形状推定演算処理部42は、3次元形状演算処理部4から得られた計測データとの比較により、所要の画像処理を行う。具体的には、設計図面情報記録部41は、設計図面上における炉内構造物の中心座標を用いて3次元形状の座標系に対する位置合わせ処理を実施する。図面形状推定演算処理部42は、円柱形状の炉内構造物の直径や立方体形状の炉内構造物の長さの情報を元に3次元形状を補間する。
【0078】
3次元計測座標演算処理部7は、図面形状推定演算処理部42において推定された炉内構造物の3次元座標情報に基づいて、次処理のギャップ計測点の3次元座標の候補を演算する。ギャップ演算処理部8は、3次元計測座標演算処理部7において演算されたギャップ計測点の3次元座標を用いてギャップ等を演算する。なお、3次元計測座標演算処理部7及びギャップ演算処理部8は、第1実施形態における各処理部と同様の処理を行うため、第3実施形態においては重複した説明を省略する。
【0079】
第3実施形態における3次元距離計測装置及びその方法によれば、第1実施形態で奏する効果に加え、CAD図面データや設計図面上における炉内構造物の直径や長さ等の設計図面情報を用いることにより、3次元形状演算処理部4で演算された3次元形状において不足する形状情報を補間することができ、より精度よくギャップ計測を行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0080】
1 3次元撮影部
2 画像入力装置
3 対応付け演算処理部
4 3次元形状演算処理部
5 3次元表示処理部
6 3次元形状推定演算処理部
7 3次元計測座標演算処理部
8 ギャップ演算処理部
10、10a、10b 撮像装置
11 回転駆動装置
31 統合座標検出処理部
32 座標系統合演算処理部
41 設計図面情報記録部
42 図面形状推定演算処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を撮影する複数の撮像装置と、計測対象空間内における計測対象物が所定範囲で重なるように前記撮像装置を回転させて光軸を調整する回転駆動装置とを備えた3次元撮影手段と、
複数の前記画像に写された前記計測対象空間内の所要計測点の画素の位置を対応付けした位置対応付け情報を演算する対応付け演算処理手段と、
前記位置対応付け情報と前記回転駆動装置から得られる回転情報とを用いて、前記計測対象物の3次元座標に基づく3次元形状を演算する3次元形状演算処理手段と、
前記3次元形状演算処理手段より得られた前記3次元形状から前記計測対象物の前記3次元形状が得られない領域の3次元形状を推定する3次元形状推定演算処理手段と、
前記3次元形状推定演算処理手段より得られた推定結果より前記計測対象物上において指定された2点の距離計測点の3次元座標を演算する3次元計測座標演算処理手段と、
前記3次元計測座標演算処理手段より得られた前記3次元座標を用いて前記2点間の距離を演算する距離演算処理手段とを備えたことを特徴とする3次元距離計測装置。
【請求項2】
前記計測対象物の設計図面情報を記録する設計図面情報記録手段をさらに備え、
前記3次元形状推定演算処理手段は、前記設計図面情報と前記3次元形状とを比較することにより前記計測対象物の3次元形状を推定する請求項1記載の3次元距離計測装置。
【請求項3】
前記3次元撮影手段により異なる位置で撮影された複数の画像に基づき前記3次元演算処理手段により演算された異なる座標系を有する複数の前記3次元形状における前記計測対象物の形状が重なり合う部分を対応点として検出する統合座標検出処理手段と、
前記統合座標検出処理手段により得られた前記対応点を用い、前記異なる座標系を任意の座標系に座標統合する座標系統合演算処理手段とをさらに備え、
前記3次元計測座標演算処理手段は、前記座標統合された結果に基づいて前記2点の距離計測点の3次元座標を演算する請求項1記載の3次元距離計測装置。
【請求項4】
異なる位置で画像を撮影する複数の撮像装置と、計測対象空間内における計測対象物が所定範囲で重なるように前記撮像装置を回転させて光軸を調整する回転駆動装置とを備えた3次元撮影手段と、
複数の前記画像に写された前記計測対象空間内の所要計測点の画素の位置を対応付けした位置対応付け情報を演算する対応付け演算処理手段と、
前記位置対応付け情報と前記回転駆動装置から得られる回転情報とを用いて、前記計測対象物の3次元座標に基づく3次元形状を演算する3次元形状演算処理手段と、
前記3次元撮影手段により異なる位置で撮影された複数の画像に基づき前記3次元演算処理手段により演算された異なる座標系を有する複数の前記3次元形状における前記計測対象物の形状が重なり合う部分を対応点として検出する統合座標検出処理手段と、
前記統合座標検出処理手段により得られた前記対応点を用い、前記異なる座標系を任意の座標系に座標統合する座標系統合演算処理手段と、
前記座標統合された結果より前記計測対象物上において指定された2点の距離計測点の3次元座標を演算する3次元計測座標演算処理手段と、
前記3次元計測座標演算処理手段より得られた前記3次元座標を用いて前記2点間の距離を演算する距離演算処理手段とを備えたことを特徴とする3次元距離計測装置。
【請求項5】
画像を撮影する複数の撮像装置を準備し、計測対象空間内における計測対象物が所定範囲で重なるように前記撮像装置を回転させて光軸を調整し、前記撮影装置により撮影を行う工程と、
複数の前記画像に写された前記計測対象空間内の所要計測点の画素の位置を対応付けした位置対応付け情報を演算する工程と、
前記位置対応付け情報と前記撮像装置の回転に関する情報とを用いて、前記計測対象物の3次元座標に基づく3次元形状を演算する工程と、
前記3次元形状座標から前記計測対象物の前記3次元形状が得られない領域の3次元形状を推定する工程と、
前記3次元形状の推定結果より前記計測対象物上において指定された2点の距離計測点の3次元座標を演算する工程と、
前記3次元座標を用いて前記2点間の距離を演算する工程とを備えることを特徴とする3次元距離計測方法。
【請求項6】
前記計測対象物の設計図面情報を記録する工程をさらに備え、
前記3次元形状を推定する工程は、前記設計図面情報と前記3次元形状とを比較することにより前記計測対象物の3次元形状を推定する請求項5記載の3次元距離計測方法。
【請求項7】
画像を撮影する複数の撮像装置を準備し、計測対象空間内における計測対象物が所定範囲で重なるように前記撮像装置を回転させて光軸を調整し、前記撮影装置により撮影を行う工程と、
前記撮影を行う工程を異なる位置で行う工程と、
複数の前記画像に写された前記計測対象空間内の所要計測点の画素の位置を対応付けした位置対応付け情報を演算する工程と、
前記位置対応付け情報と前記撮像装置の回転に関する情報とを用いて、前記計測対象物の3次元座標に基づく3次元形状を演算する工程と、
異なる位置で撮影された複数の画像に基づき演算された異なる座標系を有する複数の前記3次元形状における前記計測対象物の形状が重なり合う部分を対応点として検出する工程と、
前記対応点を用い、前記異なる座標系を任意の座標系に座標統合する工程と、
前記座標統合された結果より前記計測対象物上において指定された2点の距離計測点の3次元座標を演算する工程と、
前記3次元座標を用いて前記2点間の距離を演算する工程とを備えることを特徴とする3次元距離計測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−203108(P2011−203108A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−70572(P2010−70572)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】