説明

CVD装置及びCVD方法

【課題】突発故障時においてCVD装置を停止させることなく運用可能であって、基体を運搬する移動装置が休むことなく効率的に稼働する生産効率のよいCVD装置及びCVD方法を提供することである。
【解決手段】CVD法によって基体に成膜する成膜室を備えた成膜チャンバーと、基体を仮置きする基体仮置き装置とをそれぞれ複数台備えて一群の成膜グループを構成し、当該成膜グループに属する成膜チャンバーと基体仮置き装置との間で基体の受渡しを行うグループ付移動装置を有し、前記成膜グループとグループ付移動装置の組み合わせを複数組備え、それぞれのグループ付移動装置が他の成膜グループに属する成膜チャンバー又は基体仮置き装置と相互に基体の受渡しを行うことのできるCVD装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CVD装置及びCVD方法に関し、より詳細には、高性能な太陽電池を効率よく量産することのできる、CVD装置及びCVD方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、石油等の化石原料の高騰や、発電を行う際の環境への配慮から太陽電池パネルを用いた発電が注目されている。なぜなら、太陽電池は太陽光を基に発電するので、枯渇性燃料が持つ有限性への対策になり、また、発電時に二酸化炭素を排出しないので、地球温暖化の緩和策に成り得る等の理由によるものである。
【0003】
太陽電池は、ガラス基板(基体)の上に半導体層を積層したものであり、具体例としてガラス基板上にシリコン系のp層、i層及びn層を成膜して積層したものが知られている。
【0004】
なお、これらのシリコン系半導体層の成膜には、プラズマCVD法が活用されることが多く、プラズマCVD等のCVD法によってこのようなシリコン系半導体層の成膜を実施するCVD装置が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−139524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されているプラズマCVD装置は、4台の成膜チャンバーと、1基の移動チャンバーと、1基の基体受取・払出し装置を有している。成膜チャンバーとは成膜室を有しており、成膜室内で基体に成膜を実施可能なチャンバーである。移動チャンバーとは、移動可能なチャンバーであり、基体の積載、運搬が可能である。基体受取・払出し装置とは移動チャンバーと基体の受け渡しが可能であり、成膜前の基体を移動チャンバーへ受け渡し、成膜後の基体を移動チャンバーから受け取る装置である。
【0007】
このようなCVD装置で使用される移動チャンバーは、重量のある基体の運搬に使用されるため、構造上大きな荷重を受けた状態で運用される。加えて、複雑な機構を有していることや、連続稼働時間が長いこと等から突発的な故障や動作不良を発生させるおそれがある。
しかし、特許文献1に開示されているCVD装置では、移動チャンバーが1基であるために、移動チャンバーに突発故障や動作不良が発生するとCVD装置全体を停止させなければならなかった。
【0008】
そこで、この問題を解決する手段として、特許文献1の段落「0185」に記載されているように、移動チャンバーを複数有する構造にして、1基の移動チャンバーが移動中、他の移動チャンバーを干渉しないポジションに待機させておくという方法がある。この方法によると、仮に1基の移動チャンバーに突発故障が発生しても、その移動チャンバーの修理中に他の移動チャンバーを稼働することでCVD装置を停止させなくてもよい。
【0009】
しかしながら、この方法では、増加させた移動チャンバーの数に応じて待機場所を確保せねばならず、CVD装置を設置するためにより広い空間が必要になってしまう。さらに、増加させた移動チャンバーは、稼働している移動チャンバーに干渉しないように待機するため、通常時(移動チャンバーが規定通り稼働している状態)において使用することができない。つまり、突発故障や動作不良が発生しない場合、設置した予備の移動チャンバー及び予備の移動チャンバーの待機場所が薄膜の生産に作用しないため、非効率的であるという問題があった。
【0010】
そこで本発明は、突発故障時において大きく生産性が低下しない、効率のよいCVD装置及びCVD方法の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、CVD法によって基体に成膜する成膜室を備えた成膜チャンバーと、基体を仮置きする基体仮置き装置とをそれぞれ複数台備えて一群の成膜グループを構成し、当該成膜グループに属する成膜チャンバーと基体仮置き装置との間で基体の受渡しを行うグループ付移動装置を有し、前記成膜グループとグループ付移動装置の組み合わせを複数組備えたCVD装置であって、前記グループ付移動装置は、他の成膜グループに属する成膜チャンバー又は基体仮置き装置と相互に基体の受渡しを行うことが可能であることを特徴とするCVD装置である。
【0012】
本発明のCVD装置は、それぞれ複数台の成膜チャンバー及び基体仮置き装置から構成される成膜グループを備えており、当該成膜グループに属する成膜チャンバーと基体仮置き装置(基体受取・払出し装置)との間で基体の受渡しを行うことができるグループ付移動装置(移動チャンバー)を有し、成膜グループとグループ付移動装置の組み合わせを複数組備えている。
すなわち、成膜に必要な装置がグループ毎に分割されており、各成膜グループはそれぞれ独自に成膜を行うことができる。つまり、CVD装置が備える全てのグループ付移動装置は、通常時において、各移動装置が属するグループで成膜を行うために基体の運搬を行う。そのため、前述したように予備の移動装置を待機させる場合と異なり、通常時においてすべての移動装置が動作するので、CVD装置を効率良く稼働させることができる。
【0013】
また、グループ付移動装置は、他の成膜グループに属する成膜チャンバー又は基体仮置き装置と相互に基体の受渡しを行うことが可能である。
したがって、例えば、担当する成膜グループで成膜チャンバー内に基体の搬入を行ったグループ付移動装置に、成膜チャンバー内で成膜が完成して基体が搬出可能になるまでの間、他の成膜グループの基体の運搬を手伝わせることができる。このように、グループ付移動装置の成膜グループとの組み合わせを適宜変更することで、グループ付移動装置を休ませることなく稼働させることが可能であり、基体の搬入及び搬出の作業時間を短縮することができるため効率良くCVD装置を稼働することができる。
【0014】
加えて、仮にいずれかのグループ付移動装置に突発故障が発生しても、故障したグループ付移動装置の作業を、他のグループ付移動装置によって補うことができる。即ち、移動装置が故障しても、CVD装置を停止させることなく故障したグループ付移動装置の修理を行うことができる。
【0015】
つまり、本発明のCVD装置は、グループ付移動装置が故障していない場合、それぞれが担当する成膜グループの基体の運搬を別途行うことが可能である。即ち、全てのグループ付移動装置を互いに干渉せずに稼働することができる。また、いずれかのグループ付移動装置が故障した場合、故障したグループ付移動装置が担当する成膜グループの基体の運搬を他のグループ付移動装置が補うことができる。そのことにより、移動装置の突発故障や動作不良発生時に生産性が大きく低下しない、生産効率のよい成膜を実施することができる。
また、各成膜グループの進捗にあわせて、成膜グループを担当するグループ付移動装置の数を適宜変更することで、グループ付移動装置を休止させることなく稼働させることができる。
【0016】
請求項2に記載の発明は、各成膜グループは、3以上の基体仮置き装置を備え、各成膜グループに属する成膜チャンバーは、基体仮置き装置の間に挟まれた位置に列状に並べられて配置されていることを特徴とする請求項1に記載のCVD装置である。
【0017】
本発明のCVD装置では、各成膜グループが3以上の基体仮置き装置を備えている。そのため、基体仮置き装置を用途毎に割り当てることができる。例えば、払い出し専用、受け取り専用及びメンテナンス用の基体仮置き装置をそれぞれ設けて、グループ付移動装置への未成膜の基体の受け渡し、グループ付移動装置からの成膜後の基体の受け取り、成膜チャンバー修理時等における成膜室内の基体の一時的な仮置きといった限られた用途のみを行わせることができる。なお、成膜チャンバーの修理は、成膜室内の基体を取り出して成膜室内を空にした状態で行い、取り出した基体は別の場所に仮置きし、修理完了後に戻すものとする。
【0018】
そのようにすることで、例えば、グループ付移動装置から成膜後の基体を受け取ると同時に、未成膜の基体をグループ付移動装置に渡すための準備を平行して行うことができる。また、未成膜の基体をグループ付移動装置に渡すと同時に、グループ付移動装置から成膜後の基体を受け取る準備を行うことができる。そのため、グループ付移動装置と基体仮置き装置の基体のやり取りを円滑に行うことができ、成膜に係わる作業時間を短縮することができる。また、成膜チャンバーの修理中に、グループ付移動装置と未成膜の基体及び成膜後の基体をやり取りすることができるため、成膜チャンバーが故障しても、故障した成膜チャンバーを有する成膜グループによる薄膜の生産を停止しなくてもよい。したがって、成膜チャンバーの故障時において、生産性を大きく低下させない生産性の高い成膜が可能になる。
【0019】
またさらに、基体仮置き装置に割り当てた用途を状況に応じて変更することも可能である。
例えば、前述したように、他の成膜グループと組み合わせたグループ付移動装置に基体の運搬を手伝わせる場合、普段受け取り専用として使用している基体仮置き装置を払い出し専用とすれば、2つのグループ付移動装置に、同時に未成膜の基体を受け渡すことができる。また反対に、普段払い出し専用として使用している基体仮置き装置を受け取り専用とすれば、2つグループ付移動装置から同時に成膜後の基体を受け取ることができる。このようにすれば、2つのグループ付移動装置を、基体の受け渡しのために待たせることなく運用できるため効率がよい。
【0020】
また、本発明のCVD装置では、各成膜グループに属する成膜チャンバーを、基体仮置き装置の間に挟まれた位置に列状に並べて配置する。そのため、複数の成膜グループを列状に隣合わせて配置すると、隣り合う成膜グループの互いに近づく方向の端部に設けられた基体仮置き装置が、列状に連続して配置される。つまり、複数の成膜グループの基体仮置き装置を同じ場所に一塊に配置することができる。そのため、未成膜の基体を受け取る前工程や、成膜後の基体を送り出す後工程と基体仮置き装置を連結させる場合、一か所で連結させればよいため容易に連結が可能である。
【0021】
請求項3に記載の発明は、前記3以上の基体仮置き装置は、少なくとも1台のメンテナンス用基体仮置き装置を含み、前記メンテナンス用基体仮置き装置は、成膜チャンバーのメンテナンス時にメンテナンスを行う成膜チャンバー内の基体を仮置きすることを特徴とする請求項2に記載のCVD装置である。
【0022】
また、本発明のCVD装置では、基体仮置き装置にメンテナンス専用の仮置き装置を含む。そのため、修理(メンテナンス)を行う成膜チャンバーから取り出した基体を基体仮置き装置へ一時的に退避させた状態で、移動チャンバーからの成膜後の基体の受け取り、また、未成膜の基体を移動チャンバーへの未成膜の基体の払い出しを行うことができる。そのことにより、メンテナンス中であっても、移動チャンバーとの基体の受け渡しが通常通り行うことができるので、メンテナンス時に生産性の低下しない生産効率の高い成膜を実施することができる。
【0023】
請求項4に記載の発明は、2以上の成膜グループに跨がる共通レールを有し、各グループ付移動装置は基体を載置する移動台を備え、各グループ付移動装置は前記共通レールに沿って移動して他の成膜グループに属する成膜チャンバー又は基体仮置き装置と相互に基体の受渡しを行うことが可能である請求項1乃至3のいずれかに記載のCVD装置である。
【0024】
本発明のCVD装置では、グループ付移動装置がレールに沿って移動する。そのため、グループ付移動装置はレール上を前後動させるだけでよいので、タイヤ等を用いた自走式の移動装置等に比べて、移動装置の動作のための機構を簡易にすることができる。
また、レールは2以上の成膜グループに跨がる共通レールであって、各成膜グループに組み合わせたグループ付移動装置が共通のレールを使用する。そのため、各グループ付移動装置は、そのままレール上を移動させるだけで複数の成膜グループに亘って移動させることが可能になる。即ち、前述したように、グループ付移動装置が、組み合わせられた成膜グループでない成膜グループの基体を運搬する場合や、グループ付移動装置と成膜グループの組み合わせを変更する場合に、グループ付移動装置の適切な位置への移動が容易である。
【0025】
請求項5に記載の発明は、成膜グループに属する成膜チャンバーと基体仮置き装置は共通レールを跨いで配列され、移動台は、共通レールを跨ぐ双方向に対して基体の受渡しを行うことが可能である請求項4に記載のCVD装置である。
【0026】
本発明のCVD装置では、成膜グループに属する成膜チャンバーと基体仮置き装置は共通レールを跨いで配列し、グループ付移動装置の移動台が共通レールを跨ぐ双方向に対して基体の受渡しを行う構成で行うことが好適である。
なぜなら、CVD装置全体の成膜チャンバーの数を変えない場合、レールの片側にのみ成膜グループに属する成膜チャンバー及び基体仮置き装置を配する場合に比べて、CVD装置の総生産量を変えることなく、グループ付移動装置の移動距離を短くすることができる。即ち、基体の運搬に必要な時間を短縮することで、CVD装置の生産性を向上することができる。
【0027】
請求項6に記載の発明は、移動台は基体を収納する収納室を有し、前記収納室は基体を出し入れする収納室出入口を備え、前記収納室を回転可能であって、収納室出入口の方向を変更可能であることを特徴とする請求項4又は5に記載のCVD装置である。
【0028】
本発明のCVD装置では、移動台は基体を収納する収納室を有し、前記収納室は基体を出し入れする収納室出入口を備え、前記収納室を回転可能であって、収納室出入口の方向を変更可能である。
そのため、グループ付移動装置の収納室と成膜チャンバーの成膜室の出入口を連結し、基体を受け渡す際に、成膜室の出入口の向きに合わせて、移動装置の収納室の出入口の方向を変更することができる。また同様に、基体仮置き装置の基体搬送方向に合わせて移動装置の収納室の出入口の方向を変更することができる。
そのことから、成膜室の出入口の向きが異なる複数の成膜チャンバーや、搬送方向の向きが異なる複数の基体仮置き装置と、1台のグループ付移動装置で基体の受け渡しが可能となる。すなわち、各成膜チャンバーの成膜室の出入口の向きや、各基体仮置き装置の基体を搬送する向きに係わらず、グループ付移動装置を配置できるので、成膜チャンバーや基体仮置き装置を設置する際の制約を少なくできる。また、成膜チャンバーや基体仮置き装置を増設する場合も、既設の成膜チャンバーや基体仮置き装置と向きを揃える必要がないので、CVD装置の将来の増設に対する拡張性を高くできる。
【0029】
請求項7に記載の発明は、移動台は基体を収納する収納室を有し、前記収納室は基体を出し入れする収納室出入口を2か所に備え、共通レールを跨ぐ双方向に対して基体の出し入れを行うことができる請求項4乃至6のいずれかに記載のCVD装置である。
【0030】
本発明のCVD装置では、グループ付移動装置の収納室に出入口が2か所あり、共通レールを跨ぐ双方向に対して基体の出し入れを行うことができる。そのため、レールを挟んで対向する位置にある成膜チャンバー及び基体仮置き装置を配置した場合、グループ付移動装置との基体の受け取りや基体の受け渡しを容易に実行することができる。
【0031】
請求項8に記載の発明は、前記CVD装置は太陽電池モジュールの製造に用いられるものであって、前記太陽電池モジュールは、基板上に少なくとも第1導電膜層と、アモルファスシリコンを素材としてp層i層n層が積層された第1太陽電池層と、結晶質シリコンを素材としてp層i層n層が積層された第2太陽電池層と、第2導電膜層が積層されており、前記各層の少なくとも一部を光ビームによる加工によって複数のセルに分離し、相互に電気的に集積化してなる薄膜太陽電池モジュールであり、成膜チャンバーにおいて前記第1太陽電池層と前記第2導電膜層とを成膜可能であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のCVD装置である。
なお、本発明において結晶質の用語は、部分的に非晶質を含んでいるものも含むものとする。
【0032】
本発明のCVD装置は、太陽電池モジュールの製造においても好適に用いることができる。即ち、突発故障時においても大きく生産性が低下しない、生産効率の高い太陽電池モジュールの生産が可能となる。
【0033】
請求項9に記載の発明は、請求項1乃至8に記載のCVD装置を使用することを特徴とするCVD方法である。
【0034】
本発明のCVD方法では、請求項1乃至8に記載のCVD装置を使用する。したがって、全てのグループ付移動装置が休むことなく稼働するため効率がよい。また、各グループ付移動装置が複数の成膜グループに亘って基体を運搬するので、基体の運搬の作業時間を短縮することができる。さらに、いずれかのグループ付移動装置が故障しても、他のグループ付移動装置が故障したグループ付移動装置を補うことにより、CVD装置を停止させることなく運用することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明は、突発故障時においてCVD装置を停止させることなく運用可能であって、グループ付移動装置が休むことなく効率的に稼働する生産効率のよいCVD装置及びCVD方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかるCVD装置を示す概略図である。
【図2】本発明の実施形態にかかるCVD装置の一部分を示す斜視図である。
【図3】図1の成膜チャンバー、移動チャンバー及び基体仮置き装置が備える基体移動装置の要部の斜視図である。
【図4】図1の成膜チャンバーの内部構造を示す斜視図である。
【図5】図1の成膜チャンバーの内部構造を示す一部破断平面断面図である。
【図6】図1の成膜チャンバーに内蔵される電極の断面斜視図である。
【図7】図1の移動チャンバーを収納室出入口側から見た斜視図である。
【図8】図1の移動チャンバーの内部を示す斜視図である。
【図9】図1の移動チャンバーの内部構造を示す平面断面図である。
【図10】チャンバー移動装置の断面図である。
【図11】本発明の実施形態で使用する基体キャリアの斜視図である。
【図12】図11の基体キャリアの分解斜視図である。
【図13】図1の移動チャンバーから成膜チャンバーに基体キャリアが移動する状態を示す移動チャンバーと成膜チャンバーの一部破断斜視図である。
【図14】図1とは別のCVD装置を示す概略図である。
【図15】本発明の第2の実施形態にかかるCVD装置を示す概略図である。
【図16】本発明の第3の実施形態にかかるCVD装置を示す概略図である。
【図17】図7とは別の移動チャンバーを示す斜視図である。
【図18】図7及び図17とは別の移動チャンバーを示す斜視図である。
【図19】本発明の第4の実施形態にかかるCVD装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明の第1の実施形態に係るCVD装置及びCVD方法について、以下、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0038】
第1の実施形態のCVD装置1はガラス製の基体46に半導体膜を形成するものである。第1の実施形態のCVD装置1は、図1に示される様に、大きく分けて、2つの成膜グループ90,91と2つの移動チャンバー6,96によって構成されている。
成膜グループ90は、3つの基体仮置き装置2〜4と成膜チャンバー群42によって構成されている。また、成膜グループ91も成膜グループ90と同様の構成であって、3つの基体仮置き装置92〜94と、成膜チャンバー群41によって構成されている。
また、2つの移動チャンバー6,96は、それぞれ成膜グループ90,91と組み合わせられており、組み合わせられた成膜グループの基体仮置き装置と成膜チャンバーの間の基体の運搬を主に行うものである。
以下構造について説明するが、成膜グループ90と移動チャンバー6について説明し、成膜グループ91と移動チャンバー96については、同様の説明を省略する。
【0039】
上記したように、成膜グループ90は3つの基体仮置き装置2〜4を備えている。これらの基体仮置き装置2〜4は同一の構造をしたものである。以下構造について説明するが、基体仮置き装置2についてのみ説明し、基体仮置き装置3,4については同様の説明を省略する。なお、基体仮置き装置2は、移動チャンバー6又は移動チャンバー96への基体46の受け渡し専用の装置であり、基体仮置き装置3は、移動チャンバー6又は移動チャンバー96からの基体46の受け取り専用の装置であり、基体仮置き装置4は成膜チャンバー修理(定期メンテナンス)時の仮置き専用の装置である。
なお、この基体仮置き装置4は、成膜チャンバーの修理時に成膜チャンバー内から取り出した基体を仮置きするために用いるものであるが、後述の基体キャリア72に対してメンテナンスや洗浄を行う際に、図示しない装置との間で対象となる基体キャリア72を受け渡し、洗浄及びメンテナンスの終了した基体キャリア72に未成膜の基体46を載置して、移動チャンバー6(96)に受け渡すことが可能である。
【0040】
基体仮置き装置2は、例えば、図2に示される様に、ベース部材14に基体移動装置15が5基設けられたものである。
【0041】
それぞれの基体移動装置15は、例えば図3に示すような構成をしている。即ち、基体移動装置15は、高さの高いリブ16が平行に2本延びており、その間にガイド溝17が形成されている。また、ガイド溝17の中にはピニオンギア18が一定間隔をあけて複数設けられている。ピニオンギア18は、図示しない動力によって回転する。
【0042】
成膜チャンバー群42は成膜チャンバー7〜12によって構成され、これらの成膜チャンバー7〜12は同一の構造をしたものである。以下構造について説明するが、成膜チャンバー7についてのみ説明し、成膜チャンバー8〜12に関しては同様の説明を省略する。
【0043】
成膜チャンバー7の外観形状は、図2,4に示す様に天面、底面、左右側面、裏面の6面が囲まれた箱状であり、正面には開口が長方形の成膜室出入口19が設けられている。成膜室出入口19の開口端にはフランジ20が設けられている。
【0044】
フランジ20は、成膜室出入口19と相似形であって、長方形であるが、その4隅の内の対向する2角に穴13が設けられている。
【0045】
成膜室出入口19には、気密性を備えたシャッター21が設けられている。
【0046】
シャッター21は、スライド型ゲートバルブと称されるものが採用されており、扉状の部材が図4の矢印Xの方向にスライドする。
なお、このシャッター21は、上記したスライドゲートバルブに限定されるものではなく、例えば、スイング型ドアバルブと称されるものを適宜採用してもよい。
【0047】
成膜チャンバー7の内部は図4に示す様に、プラズマCVD法によって基体46に成膜する成膜室22となっている。そしてその内部には、図4,5に示す様に6基の板状の面ヒータ23a,b,c,d,e,fと、5基の電極25a,b,c,d,eが設けられている。即ち、図4,5において、ヒータ23は細い長方形として図示されており、電極25は太い長方形として図示されている。
【0048】
一方、電極25a,b,c,d,eは、図6に示すように枠体26の両面にシャワープレート27が取り付けられたものである。
【0049】
枠体26にはガスパイプ31が接続されており、図示しない原料ガス供給源に接続されている。また枠体26には、マッチング回路(MBX)を介して高周波電源に接続されている。
【0050】
また成膜室22の内部には、前記した基体移動装置15と同様の基体移動装置29が設けられている(図4)。基体移動装置29の数は、前記した基体仮置き装置2(あるいは基体仮置き装置3,4)の基体移動装置15の数と同一であり、その間隔も基体仮置き装置2(あるいは基体仮置き装置3,4)が備えている基体移動装置15の間隔と同一である。
【0051】
また図4に示すように、成膜室22には弁33を介して真空ポンプ(成膜室側減圧装置)34が接続されている。
【0052】
次に移動チャンバー6と、移動チャンバー6を動作させるチャンバー移動装置32について説明する。
【0053】
移動チャンバー6は、図7に示すように天面、底面、左右側面、裏面の6面が囲まれた箱状であり、正面には長方形の収納室出入口35が設けられている。収納室出入口35の開口端にはフランジ37が設けられている。
【0054】
収納室出入口35及びフランジ37の大きさ及び形状は、前記した成膜チャンバー7の成膜室出入口19およびフランジ20と等しい。
【0055】
移動チャンバー6の収納室出入口35には、これを遮蔽する部材が無く、収納室出入口35は常に開放されている。
なお、本実施形態では収納室出入り口35を開放する構成を採用したが、この構成に限定されるものではなく、気密性がなく外部からゴミの侵入等を防ぐだけの扉を取り付けてもよい。すなわち、気密性を備えた部材がなければよい。
【0056】
移動チャンバー6の内部は、図8に示す様に基体46を収納する収納室47となっている。
【0057】
収納室47の内部には、前記した基体移動装置15及び基体移動装置29と同様の基体移動装置49(図8,9参照)が設けられている。基体移動装置49の数は、前記した基体仮置き装置2〜4、及び成膜室22のそれと同一であり、その間隔も基体仮置き装置2〜4及び成膜室22のそれと同一である。
【0058】
また移動チャンバー6の収納室47内には、6基のヒータ43a,b,c,d,e,fが設けられている。6基のヒータ43a,b,c,d,e,fの構造は、前記した成膜チャンバー7の成膜室22に配された6基のヒータ23a,b,c,d,e,fと同様である。移動チャンバー6内の6基のヒータ43a,b,c,d,e,fの位置関係についても成膜チャンバー7の成膜室22に配された6基のヒータ23a,b,c,d,e,fと同一である。
なお、収納室47内のヒータ(ヒータ43a〜43f)の数や位置は上記構成に限定されるものではない。例えば、移動チャンバー6が成膜チャンバーと接続した際に、成膜チャンバーの電極25a,b,c,d,eに対向する位置に5基のヒータ43a,b,c,d,eを設けてもよい。この位置にヒータを設けると、収納室47に基体キャリア72を格納した際に、ヒータが空隙74に位置することになり、ヒータが基板46により近づくため加熱時間が短縮される。
【0059】
チャンバー移動装置32は、横列方向と、前後方向に移動チャンバー6を移動させるものであり、図2,7の様に横列方向の移動はレール50(共通レール)に沿って行われ、前後方向には直線ガイド51に沿って行われる。
【0060】
すなわちチャンバー移動装置32は、横列方向に延びる一対のレール50を有する。レール50は、公知の列車用レールと同様の断面形状をしている。レール50は、床面に設けられたまくら木54に公知のタイプレート等によって接続されている。
【0061】
そしてレール50の間には、図2,7の様に長尺のラック52が歯面を横方向に向けて取り付けられている。
【0062】
またレール50の端部には、図1,7の様にストッパ53が取り付けられている。ストッパ53は、後記する移動台車55の暴走を阻止するものであり、公知のショックアブゾーバが内蔵されている。
【0063】
そしてレール50には図2、7の様に移動台車55(グループ付移動装置)が載置されている。移動台車55は、ベース板60の下面に4個の車輪61が設けられたものである。第1の実施形態では、車輪61は、自由回転を許すものであり、車輪61は、レール50に載置されている。
【0064】
またベース板60の一部には、張出部62があり、ギャードモータ等の低速回転する電
動機63が設けられている。電動機63は、回転軸(図示せず)がベース板60の下面側
に突出された状態で取り付けられており、回転軸にはピニオンギア65が取り付けられて
いる。そしてピニオンギア65は、レール50の間に設けられたラック52と係合として
いる。
【0065】
したがって電動機63を回転すると、ピニオンギア65が回転し、ラック52から受ける反力によって移動台車55が自走する。なお第1の実施形態では、移動台車55に真空ポンプ44(図8)が搭載されている。
ここで、移動台車55を自走させる構成は、上記したラックアンドピニオン形式に限定されるものではなく、車輪を直接モータ等によって回転させる形式にしてもよい。
【0066】
移動台車55のベース板60の上面には、前記した直線ガイド51が設けられている。直線ガイド51は平行に二列設けられ、その方向は、床面のレール50に対して直行する。
【0067】
前記した直線ガイド51の上には、移動板67(移動台)が設けられている。そして前記した移動チャンバー6は、図7,10で示されるように移動板67に固定されている。
【0068】
また移動板67の正面側(移動チャンバー6の収納室出入口35側)の辺であって、その中央には、移動側ブラケット部68(図7、図10参照)が設けられている。移動側ブラケット部68は移動板67の下面側に突出する板体である。
【0069】
一方、ベース板60の上面側には、図10に示すように固定側ブラケット部70が設けられている。そして前記した固定側ブラケット部70と移動側ブラケット部68の間には、油圧又は空気圧シリンダー71が取り付けられている。そのためシリンダー71のロッドを伸縮させると、ベース板60上の移動板67が直線ガイド51に沿ってレール50と直行する方向に直線移動し、移動板67に載置された移動チャンバー6が前後方向(成膜チャンバー群42を構成するいずれかの成膜チャンバーに対して近接・離反方向)に直線移動する。
【0070】
また移動板67には図示しない真空ポンプ44(図8に図示。図2,7には作図の都合上、図示を省略。)が搭載されている。真空ポンプ44は、収納室側減圧装置として機能し、図7の様に移動チャンバー6の収納室47に接続されている。
【0071】
次に、基体46を運搬する基体キャリア72について説明する。
【0072】
図11に示されるように、基体キャリア72は、細長い台車に二枚の枠体77を対向して立設した様な形状をしている。すなわち基体キャリア72は、直方体のキャリアベース73を有し、その両側に合計8個の車輪75が設けられている。またキャリアベース73の底面には、ラック76が取り付けられている。
【0073】
キャリアベース73の上面側の長辺部には、二枚の枠体77が平行に対向して設けられている。枠体77どうしの間は空隙74となっている。すなわちキャリアベース73と二枚の枠体77によって上向きの「コ」の字形状をなしている。
【0074】
枠体77は、図11,12の様に、正方形の開口78が2個設けられたものであり、当該開口78の周囲にクリップ80が多数設けられている。
【0075】
基体キャリア72の枠体77には、図12に示すように、背板82と重ね合わせた状態で基体46たるガラス基板が取り付けられ、この二者をクリップ80が押さえている。
【0076】
したがって、基体46たるガラス基板の露出面は、対向する枠体77の内側を向いている。
【0077】
次に、第1の実施形態のCVD装置1の全体的なレイアウトについて説明する。
【0078】
第1の実施形態のCVD装置1では、図1のように、成膜グループ90と成膜グループ91が隣合わせで配置されており、成膜グループ90と成膜グループ91を構成する基体仮置き装置と成膜チャンバー群は、それぞれ中心部分から対称に配置されている。具体的には、中心部分に基体46の受け渡し専用である基体仮置き装置2と基体仮置き装置92が横列に並んで配置されており、そのそれぞれの外側に基体46の受け取り専用である基体仮置き装置3と基体仮置き装置93が配置されている。そして、さらに外側には成膜チャンバー群42と成膜チャンバー群41が配されており、2つ成膜チャンバー群の外側であり連続する2つ成膜グループの両端の部分には、修理時の仮置き専用の基体仮置き装置である基体仮置き装置4と基体仮置き装置94が配置されている。
【0079】
図1,2に示される様に、成膜チャンバー群42を構成する6個の成膜チャンバーは、いずれも成膜室出入口19を同一方向に向けた状態で横列に配置されている。同様に、成膜チャンバー41を構成する6個の成膜チャンバーも、いずれも成膜室出入口19を同一方向に向けた状態で横列に配置されている。
【0080】
また、各基体仮置き装置は、いずれもガイド溝15の長手方向の延長線がレール50と直交する様な状態で、横列に配置されている。
【0081】
各成膜チャンバー群を構成する合計12個の成膜チャンバー及び各基体仮置き装置は、いずれも床面にしっかりと固定されており、動かない。
【0082】
そして図2、7の様にチャンバー移動装置32のレール50が、成膜チャンバー群42及び基体仮置き装置2〜4の正面側に沿って設置されており、前記した様に移動チャンバー6と移動チャンバー96が、それぞれ移動台車55を介してレール50に載置されている。移動チャンバー6と移動チャンバー96の収納室出入口35は、成膜チャンバー7〜12,97〜102の成膜室出入口19に対して対向する方向を向いている。
【0083】
第1の実施形態では、チャンバー移動装置32の電動機63を回転すると、移動台車55が自走し、移動チャンバー6又は移動チャンバー96は、成膜チャンバー群41,42の列方向に移動する。
【0084】
またチャンバー移動装置32のシリンダー71を伸縮させると、移動チャンバー6又は移動チャンバー96は、成膜チャンバー群42に対して近接・離反方向に移動する。
【0085】
次に、第1の実施形態のCVD装置1を利用した、薄膜の製造方法について説明する。
【0086】
まず準備段階として、成膜チャンバー群41,42を構成する各6個の成膜チャンバー7〜12,97〜102の成膜室22内を減圧する。具体的には、それぞれ成膜室出入口19のシャッター21を閉じ、真空ポンプ(成膜室側減圧装置)34を起動すると共に、弁33を開いて成膜室22内の空気を排気する。また基体46を基体キャリア72に取り付けておく。
【0087】
ここで、基体仮置き装置2,92は移動チャンバー6,96への成膜前の基体46(基体キャリア72)の払い出し専用に使用され、基体仮置き装置3,93は移動チャンバー6,96からの成膜後の基体46(基体キャリア72)の受け取り専用に使用される。以下、基体仮置き装置2,92を払い出し用装置2,92と称し、基体仮置き装置3,93を受取用装置3,93と称す。
【0088】
まず、払い出し用装置2,92に基体キャリア72をセットする。具体的には、基体キャリア72を払い出し用装置2,92に載置し、払い出し用装置2,92の基体移動装置15のガイド溝17間に基体キャリア72の車輪75を嵌め込む。この時、基体キャリア72の底面に設けられたラック76が払い出し用装置2,92に設けられた基体移動装置15のピニオンギア18と係合する。
【0089】
そして以下の一連の作業工程は、図示しない制御装置によって自動的に行われる。
【0090】
すなわち図示しない制御装置によって払い出し用装置2,92、受取用装置3,93、移動チャンバー6,96、成膜チャンバー群42が有機的に動作し、基体46にシリコン系のp層、i層及びn層を成膜する。
【0091】
具体的に説明すると、基体キャリア72を払い出し用装置2に載置すると、払い出し用装置2の位置に移動チャンバー6が移動する。すなわち、移動チャンバー6は、成膜チャンバー群42の列方向に移動して払い出し用装置2の前で停止する。なお位置決めは、電動機63の回転数をカウントする方策や、公知のリミットスイッチを設けることによって行われる。
【0092】
同様に、基体キャリア72を払い出し用装置92に載置すると、払い出し用装置92の位置に移動チャンバー96が移動する。すなわち、移動チャンバー96は、成膜チャンバー群41の列方向に移動して払い出し用装置92の前で停止する。
【0093】
そして払い出し用装置2に設けられた基体移動装置15のピニオンギア18、及び移動チャンバー6に設けられた基体移動装置49のピニオンギア18が回転する。そのことにより、基体キャリア72が前進し、移動チャンバー6側に移動する。そして、移動チャンバー6側に移動した基体キャリア72は、移動チャンバー6側に入り込む。
【0094】
そして前記した様に、移動チャンバー6の基体移動装置49のピニオンギア18も回転しているから、基体キャリア72のラック76は、移動チャンバー6側のピニオンギア18と係合し、基体キャリア72は移動チャンバー6の収納室47内に引き込まれる。
【0095】
払い出し用装置2にセットされた5基の基体キャリア72が、全て移動チャンバー6側に移動し、払い出し用装置2上に基体キャリア72が無くなれば、再度成膜前の基体46を取り付けた基体キャリア72を払い出し用装置2に補充する。この補充作業は、自動的に実施され、基体キャリア72からの成膜後の基体46の取り外しや、成膜前の基体46の基体キャリア72への取り付けは、図示しないロボットによって実施される。
【0096】
また、同様の動作により、払い出し装置92上に載置された基体キャリア72が移動チャンバー96内へ移動する。そして、払い出し用装置2上に基体キャリア72が無くなると、再度基体キャリア72を払い出し用装置2に補充する。
【0097】
全ての基体キャリア72が移動チャンバー6及び移動チャンバー96側に移動したことが確認されると、移動チャンバー6が再度横列方向に移動し、隣接する位置の成膜チャンバー7の前で停止する。さらに、移動チャンバー96が移動チャンバー6の移動方向とは反対の横列方向に移動し、成膜チャンバー97の前で停止する。
【0098】
以下、移動チャンバーから成膜チャンバーへ基体を移動させる場合の動作について説明するが、成膜チャンバー7に基体キャリア72を移動させる場合についてのみ説明し、移動チャンバー6から成膜チャンバー8〜12のいずれかに基体キャリア72を移動させる場合、及び移動チャンバー96から成膜チャンバー97〜102のいずれかに基体キャリア72を移動させる場合については、同様の説明を省略する。
【0099】
移動チャンバー6のシリンダー71が伸び、移動チャンバー6が成膜チャンバー7に対して近接する方向に移動する。
【0100】
そして、図13に示される様に、移動チャンバー6の先端が成膜チャンバー7の先端と当接する。
【0101】
すなわち移動チャンバー6の収納室出入口35が、成膜チャンバー7の成膜室出入口19と合致し、移動チャンバー6のフランジ37が、成膜チャンバー7のフランジ20と合致して移動チャンバー6のフランジ37が、成膜チャンバー7のフランジ20を押しつける。
【0102】
前記した様に成膜チャンバー7の成膜室出入口19には気密性を備えたシャッター21が設けられているので、移動チャンバー6においては、収納室47と、成膜チャンバー7のシャッター21とによって囲まれた閉塞空間が形成される。
【0103】
移動チャンバー6のフランジ37と成膜チャンバー7のフランジ20が完全に結合されたことが確認されると、真空ポンプ(収納室側減圧装置)44を起動すると共に弁45を開き、前記した収納室47と、成膜チャンバー7のシャッター21とによって囲まれた閉塞空間から空気を排気し、減圧して真空にする。
【0104】
そして前記した閉塞空間が所定の真空度に達すると、移動チャンバー6の収納室47内に設けられた6基のヒータ43a,b,c,d,e,fを昇温し、内部の基体46を加熱昇温する。
【0105】
基体46が所定の温度になったことが確認されると、成膜チャンバー7のシャッター21が開かれる。ここで成膜チャンバー7の成膜室22は、先に高真空状態となっているが、前記した様に収納室47と、成膜チャンバー7のシャッター21とによって囲まれた閉塞空間から空気を排気して当該部分も真空状態であるから、成膜チャンバー7のシャッター21を開いても成膜室22内の真空度は維持される。
【0106】
そしてシャッター21が完全に開いたことが確認されると、移動チャンバー6側の基体移動装置49のピニオンギア18、及び成膜チャンバー7の成膜室22内に設けられた基体移動装置29のピニオンギア18を回転させる。なお今回のピニオンギア18の回転方向は、基体キャリア72を移動チャンバー6側に移動させる場合とは逆である。
【0107】
ピニオンギア18を回転させると基体キャリア72が収納室出入口35側に進む。すなわち基体キャリア72は、移動チャンバー6側から、成膜チャンバー7の成膜室22側に進み、成膜チャンバー7の成膜室22に入り込む。そして前記した様に、成膜チャンバー7側の基体移動装置29のピニオンギア18も回転しているから、基体キャリア72のラック76は、成膜チャンバー7側のピニオンギア18と係合し、基体キャリア72は成膜チャンバー7の成膜室22内に引き込まれる。
【0108】
このとき、図13に示される様に、基体キャリア72の長方形のキャリアベース73は、各電極25a,b,c,d,eの下部に設けられた隙間に入り込み、基体キャリア72の枠体77は、各電極25a,b,c,d,eの両脇に入り込む。そして、図5に示される様に、成膜室22の内部には6基のヒータ23a,b,c,d,e,fがあり、各電極25a,b,c,d,eとヒータ23a,b,c,d,e,fは互い違いに配されているので、各基体46が、いずれもヒータ23と電極25の間に挿入される。
【0109】
基体キャリア72の全てが成膜チャンバー7の成膜室22内に移動し、それぞれ所定の位置に配置されたことが確認されると成膜チャンバー7のシャッター21を閉じる。そして成膜チャンバー7の成膜室22内において、基体キャリア72の基体46にシリコン半導体が成膜される。
【0110】
すなわち電極25a,b,c,d,eの枠体26内に原料ガスを供給すると共に電極25a,b,c,d,eに高周波交流を印加し、電極25a,b,c,d,eと基体キャリア72の間にグロー放電を発生させて原料ガスを分解し、縦置きされた基体46の表面上に薄膜を形成させる。
【0111】
ここで、第1の実施形態では一つの成膜チャンバー7の成膜室22内で、太陽電池を構成する各薄膜層を形成させる。すなわち太陽電池は、p層、i層及びn層の各半導体層が積層されたものであるが、第1の実施形態では、一つの成膜チャンバー7の成膜室22内で、p層、i層及びn層の各半導体層を順次積層して行く。
【0112】
また成膜チャンバー7内で成膜工程が実行されている間に、基体キャリア72が排出されて空状態となり、且つ減圧状態の移動チャンバー6に大気又は窒素を導入して、収納室47内の圧力を外気圧と均衡化させる。
【0113】
そして収納室47内と外気との圧力差が解消すると、チャンバー移動装置32のシリンダー71を縮め、移動チャンバー6が成膜チャンバー7から離れる方向に移動する。すなわち接合状態であった移動チャンバー6を、成膜チャンバー7から分離する。
【0114】
そして移動チャンバー6の電動機63を再度回転させ、移動チャンバー6の移動台車55をレール50に沿って自走させて成膜チャンバー群42の列方向に移動し、払い出し用装置2の前で停止させる。
【0115】
その後は、先の工程と同様に払い出し用装置2にセットされた基体キャリア72を移動チャンバー6の収納室に移動させ、移動チャンバー6の移動台車55をレール50に沿って自走させて二番目の成膜チャンバーである成膜チャンバー8の前で停止し、移動チャンバー6の先端を成膜チャンバー8の先端と当接させる。そして、成膜チャンバー8へ基体キャリア72を移動して成膜を実施する。
【0116】
こうして次々に成膜チャンバー群42を構成する成膜チャンバー(成膜チャンバー7〜12)に基体46を搬入し、各成膜チャンバー内でp層、i層及びn層の各半導体層を積層する。
【0117】
そして積層工程が終了した成膜チャンバー(成膜チャンバー7〜12)から順次基体キャリア72を運び出し、受取用装置3に戻す。
【0118】
第1の実施形態ではこの戻し作業も移動チャンバー6又は移動チャンバー96を使用する。以下でこの戻し作業について説明するが、移動チャンバー6を用いて成膜チャンバー7で戻し作業を行う場合についてのみ説明し、移動チャンバー96を用いる場合や他の成膜チャンバーで戻し作業を行う場合については同様の説明を省略する。
【0119】
まず、成膜チャンバー7で全ての成膜作業が終了するか、成膜作業か終盤に差しかかった際に、基体キャリア72を内蔵せずに空状態の移動チャンバー6を成膜チャンバー7に接続する。
【0120】
つまり、移動チャンバー6の移動台車55をレール50に沿って自走させて、成膜チャンバー7の前で停止し、移動チャンバー6を前進させて移動チャンバー6の先端を成膜チャンバー7の先端と当接させ、移動チャンバー6のフランジ37を、成膜チャンバー7のフランジ20に押しつける。
【0121】
その後に真空ポンプ44によって収納室47と、成膜チャンバー7のシャッター21とによって囲まれた閉塞空間を減圧する。
【0122】
そしてシャッター21を開き、成膜が終了した基体46を成膜チャンバー7側から移動チャンバー6側に移動させる。すなわち成膜チャンバー7及び移動チャンバー6の基体移動装置15のピニオンギア18を先の場合とは逆に回転させ、基体キャリア72を成膜チャンバー7の成膜室出入口19側に移動させ、さらに移動チャンバー6の収納室47側に基体キャリア72を引き込む。
【0123】
すべての基体キャリア72が移動チャンバー6側に移動したことが確認されると、シャッター21を閉じ、移動チャンバー6に大気又は窒素が導入される。
【0124】
そして収納室47内と外気との圧力差が解消すると、移動チャンバー6のシリンダー71を縮め、移動チャンバー6を成膜チャンバー7から離れる方向に移動させ、移動チャンバー6を成膜チャンバー7から分離する。そしてチャンバー移動装置32の電動機63を再度回転させ、移動台車55をレール50に沿って自走させて成膜チャンバー群42の列方向に移動し、受取用装置3の前で停止させる。
【0125】
そして、移動チャンバー6内の基体移動装置49、及び受取用装置3の基体移動装置15のピニオンギア18を回転させ、移動チャンバー6内の基体キャリア72を受取用装置3側に移動させる。そのことにより、基体46(基体キャリア72)の戻し作業が終了する。
【0126】
このように、払い出し用装置2,92にセットされた基体キャリア72を移動チャンバー6,96へ移動し、それらの移動チャンバーによって成膜チャンバー群41,42のいずれかの成膜チャンバーに基体キャリア72を搬入し、基体キャリア72が保持する基体46に対して成膜を実施した後、再びいずれかの移動チャンバーによって基体キャリア72を受取用装置3,93へ戻す。この工程を繰り返すことにより、基体46に薄膜を積層する作業を行う。
【0127】
ここで第1の実施形態では、移動チャンバー6と移動チャンバー96が同じレール50上を移動する。即ち、2つの移動チャンバーはいずれも、払い出し用装置2,92のどちらからも基体キャリア72を受け取ることが可能であり、成膜チャンバー群41,42のどちらの成膜チャンバーにも基体キャリアを搬入・搬出可能であり、受取用装置3,93のどちらにも基体キャリアを受け渡すことができる。
【0128】
そのため、例えば、成膜グループ90と成膜グループ91で別種類の成膜を実施する等、成膜グループの間で成膜時間に差が発生した場合に、搬入や搬出が早く終了した一方の移動チャンバーに、他方の成膜グループの基体の搬入や搬出を行わせることで作業時間を短縮できるため効率のよい成膜を実施することができる。
【0129】
また、一方の移動チャンバーが故障した場合、故障した移動チャンバーが基体を運搬していた成膜グループの基体を、もう一方の移動チャンバーで運搬できる。したがって、移動チャンバーが故障してもCVD装置を停止しなくてもよいため、移動チャンバーの故障時に生産性が大きく低下しない。
【0130】
加えて、第1の実施形態では、通常の成膜工程で使用しない基体仮置き装置4,94を設けている。そのため、成膜チャンバー群41,42のいずれかのチャンバーで突発故障が発生しても、故障した成膜チャンバー内の基体キャリア72を一時的に基体仮置き装置4,94上に仮置きして、成膜チャンバーの修理を行うことができる。つまり、払い出し用や受け取り用の基体仮置き装置を、故障した成膜チャンバー内の基体キャリア72の仮置きに使用しなくてもよいため、いずれかの成膜チャンバーが故障しても成膜の各工程を継続して行うことができる。
【0131】
また、この基体仮置き装置4,94は成膜グループの端部に設けられている。そして、各移動チャンバーは、故障が発生しない場合の基体運搬時においてこの端部まで移動しない。そのため、CVD装置1に故障が発生しない場合において、基体仮置き装置4,94は成膜工程の一連の動作を妨げず、各移動チャンバーの移動時間に無駄が無い。
【0132】
上記した第1の実施形態では、修理時に使用する基体仮置き装置(基体仮置き装置4,94)は成膜グループに一つずつ設けたが、修理時に使用する基体仮置き装置の数はこれに限定されるものではない。例えば、図14に示されるように3つずつ設けてもよい。また、基体仮置き装置の数は適宜変更してよく、3つ以上でも3つ以下でもよい。
なお、図14に示されるように修理時に使用する基体仮置き装置を複数台設けると、修理時の各作業を各基体仮置き装置に分担することが可能なため、効率のよい修理(メンテナンス)作業を実行することができる。以下、3つの基体仮置き装置を使用して、基体キャリア72のメンテナンスを行う場合を例に詳細に説明する。
まず移動チャンバー6(96)が第1の基体仮置き装置4に対して、メンテナンス(洗浄)したい基体キャリア72を受け渡す。そして、第1の基体仮置き装置4は図示しない装置に、基体キャリア72を受け渡し、図示しない装置にて基体キャリア72のメンテナンス(洗浄)を行う。その間、移動チャンバー6(96)は通常の成膜作業を行う。続いて、図示しない装置が、第2の基体仮置き装置4に、メンテナンス(洗浄)が終了し、新たな基体46を積載した基体キャリア72を受け渡す。最後に、移動チャンバー6(96)は第2の基体仮置き装置4から基体キャリア72を受けとり、適宜の成膜チャンバーまで運搬する。
ここで上記したメンテナンス方法では、メンテナンスの対象となる基体キャリア72を移動チャンバー6(96)から受け取るための基体仮置き装置を第1の基体仮置き装置4とし、図示しない装置からメンテナンス後の基体キャリア72を受け取って、移動チャンバー6(96)に受け渡すための基体仮置き装置を第2の基体仮置き装置としている。そのことにより、例えば、移動チャンバー6がメンテナンス(洗浄)対象の基体キャリア72を第1の基体仮置き装置4に受け渡している間、移動チャンバー96が第2の基体仮置き装置4から、別のメンテナンス(洗浄)後の基体キャリア72を受け取ることができる。即ち、基体キャリア72のメンテナンスを連続で行っても、基体キャリア72の受け渡しと、基体キャリア72の受け取りを同時に行うことが可能なことにより、移動チャンバー6(96)に受け渡しのための待機時間が発生しない。したがって、効率のよい基体キャリア72のメンテナンスが可能となる。さらに、上記したメンテナンス方法では、通常動作しない第3の基体仮置き装置4を有しているので、基体キャリア72のメンテナンス中に成膜チャンバーにて突発故障が発生し、成膜チャンバー内の基体キャリア72を搬出しなければならない事態が発生した場合においても、成膜チャンバー内の基体キャリア72を第3の基体仮置き装置に仮置きすることにより、基体キャリア72のメンテナンスを妨げることなく、成膜チャンバーのメンテナンスを実行することができる。
【0133】
また、第1の実施形態の構成よれば、移動チャンバー6,96のように片側側面のみを開放したチャンバーを使用することができる。そのことにより、収納室側面の1方向のみを開放すればよいので、後述する移動チャンバー107等と比べて、移動チャンバーの製造コストを低くすることができる。加えて、熱が逃げにくく、ヒータによる加熱の効率が良くなるという利点がある。
【0134】
さらに、移動チャンバーに電源設備やガス供給のための設備を配する際、開放した側面と対向する側面の近傍に設備を集約して配することができる。そのため、そのような設備を、移動チャンバー等の動作を阻害しないように配置することが容易となり、CVD装置製造時の効率がよい。また、設備のメンテナンスを行う際に、一か所で行うことができるため作業が容易になる。
【0135】
また、第1の実施形態では、成膜チャンバー及び基体仮置き装置の向きを揃えて配置したが、成膜チャンバーや、基体仮置き装置の配置方法はこれに限定されるものではない。向きが揃っていなかったり、傾いていてもよい。その場合、後述する移動チャンバー106のように収納室出入口35の向きを変更できる移動チャンバーを使用することが望ましい。
【0136】
しかしながら、移動チャンバー106のように回転機構を備えると、移動チャンバーの製造コストが高くなってしまう。また、成膜チャンバーと基体をやり取りする際の位置合わせが難しくなってしまう。即ち、第1の実施形態の構成によれば、移動チャンバー6,96は直線状のレール50の長手方向に沿う方向と、その方向に直交する方向にのみ直線動作すればよいので、動作の制御が容易であり、精度の高い位置合わせを行うことが容易である。
【0137】
また、本発明のCVD装置の各成膜グループの配置方法は第1の実施形態の配置に限定されるものではない。以下では第2の実施形態から第4の実施形態を説明するが、特に説明がない限り、第1の実施形態におけるCVD装置1と同様の構造については、同様の符号を付して重複する説明を省略する。
【0138】
第2の実施形態のCVD装置201では、図15のように、成膜グループ90と成膜グループ91がレール50を跨いで対向するように設けられている。
具体的には、基体仮置き装置2(払い出し用装置2)と基体仮置き装置3(受取用装置3)が、成膜グループ90の図15における右端部分に、隣接した状態で列状に配置されている。また、3基の基体仮置き装置4(修理時の仮置き専用)が成膜グループ90の図15における左端部分に配置されている。そして、それらの基体仮置き装置の間に成膜チャンバー群42が配置されている。同様に、基体仮置き装置92(払い出し用装置92)と基体仮置き装置93(受取用装置93)が、成膜グループ91の図15における左端部分に、隣接した状態で列状に配置されている。また、3基の基体仮置き装置94(修理時の仮置き専用)が成膜グループ91の図15における右端部分に配置されている。そして、それらの基体仮置き装置の間に成膜チャンバー群41が配置されている。
そして、レール50上を移動可能な状態で、詳しくは後述する2つの移動チャンバー107が配置されている。
【0139】
第3の実施形態のCVD装置202では、図16で示される様に、成膜グループ90がCVD装置202の中心部分から左端部分までを形成しており、成膜グループ91がCVD装置202の中心部分から右端部分までを形成している。即ち、成膜グループ90と成膜グループ91は左右に並んで配置されている。そして、それぞれの成膜グループを、図16における上下方向に分断するようにレール50が設けられており、レール50上を移動可能な状態で、詳しくは後述する2つの移動チャンバー107が成膜グループ90及び成膜グループ91に属する移動装置として配置されている。成膜グループ90と成膜グループ91について以下具体的に説明する。
成膜グループ90では、レール50を跨いで対向するように同じ部材が設けられており、図16におけるレール50の上側には、左端部側から中心部分に向かって、3つの成膜チャンバー7〜9と、2つの基体仮置き装置(受取用装置3,払い出し用装置2)が列状に設けられている。また、図16におけるレール50の下側には、左端部側から中心部分に向かって、3つの成膜チャンバー12〜10と、2つの基体仮置き装置4(修理用の基体仮置き装置)が列状に設けられている。
成膜グループ91でもまた、レール50を跨いで対向するように同じ部材が設けられている。図16におけるレール50の上側には、右端部分から中心部分に向かって、3つの成膜チャンバー97〜99と、2つの基体仮置き装置(受取用装置93,払い出し用装置92)が列状に設けられている。そして、図16におけるレール50の下側には、右端部側から中心部分に向かって、3つの成膜チャンバー102〜100と、2つの基体仮置き装置94(修理用の基体仮置き装置)が列状に設けられている。
したがって、CVD装置203では、成膜グループ90と成膜グループ91の各部材が左右対称となるように配置されており、レール50の上下において、3つずつ列状に配置された成膜チャンバーの間に列状に配された4つの基体仮置き装置が位置している。そして、レール50の上側には払い出し用装置及び、受取用装置が設けられており、レール50の下側には修理用の基体仮置き装置が設けられている。即ち、それぞれの成膜グループの基体仮置き装置はCVD装置202の中心部分であって、列状に配された成膜チャンバーの間に位置している。また、別の成膜グループに属している、同じ役割の基体仮置き装置が近い位置に列状に設けられている。
【0140】
第2の実施形態や第3の実施形態のような構成によると、第1の実施形態のような構成と比べて、レール50の長手方向の長さを短くすることができる。そのため、CVD装置全体の長手方向の長さを短くすることができるので、CVD装置の設置場所の最大の長さ(一辺の長さ)を小さくできる。そのため、設置場所に必要な条件を減らすことができるので、CVD装置を導入し易くなる。
また、移動チャンバーが成膜グループ間を跨って基体を運搬する際の移動距離を短くすることができる。
【0141】
第2の実施形態のCVD装置201や第3の実施形態のCVD装置202の様にレールを跨いで複数の成膜グループを配した場合、移動チャンバーが移動可能な状態にレール50を2つ設けて、それぞれのレールに移動チャンバーを移動可能に設けてもよいが、移動チャンバー6,96に収納室出入口35の向きを変更できるものや、収納室出入口35を複数有する移動チャンバーを1つのレール50で使用することが望ましい。
【0142】
このような移動チャンバーには、例えば、図17に示される移動チャンバー106のように、図示しない機構によって直線ガイド85上で前後に移動可能であって且つ回転可能な円形台84を設け、円形台84の上に収納室47を設けたものが考えられる。
このような構成にすることで、収納室47は円形台84と共に回転可能となるので、収納室47の回転に伴って、収納室出入口35の向きを変更することができる。
【0143】
またさらに、図18に示される移動チャンバー107のように、対向する側面にフランジ37、ピン40及び収納室出入口35を設けたものが考えられる。
このような構成にすることで、収納室47は向きの異なる2つの方向からの基体キャリア72(基体46)の搬入と、同2つの方向への基体キャリア72の搬出を行うことができる。
またこの場合、各収納室出入口35に気密性を備えたシャッター86を設けることにより、上記した移動チャンバー6,96と同様に各成膜チャンバーと係合して収納室47内を真空状態とすることができる。なお、シャッター86は図18のY方向に開閉するものとしたが、開閉方向はこれに限定されるものではない。たとえばY方向と垂直な方向に開閉してもよい。
【0144】
ここで、上記した各実施形態のようにレール50は直線状でなくてもよい。
【0145】
第4の実施形態のCVD装置203では、図19のように、環状に配したレール50の外周近傍に2つの成膜グループが列状に配置されている。
【0146】
なお、第4の実施形態ではレール50の外周近傍に、各成膜グループを配したがこの場合の成膜グループの配し方はこれに限定されるものではない。レール50の内周近傍に成膜グループを配してもよい。
【0147】
しかしながら、直線状にレール50を設けた場合、第4の実施形態のように環状にレール50を設けた場合に比べて様々な利点がある。例えば、移動チャンバーの動作や成膜チャンバーの配置位置等の設計が容易であり、また、成膜チャンバー及び移動チャンバーのメンテナンス時に移動チャンバーの動作制御が簡単になる。さらに、移動チャンバーの動作を簡単にできるので位置合わせの精度が高くなる。そして、設置面積を小さくすることが可能である。
したがってレール50は、第1の実施形態や、第2の実施形態及び第3の実施形態のように直線状に設けることが望ましい。
【0148】
本発明のCVD装置及びCVD方法で製造される薄膜は、特に限定されるものではないが、例えば、所謂薄膜太陽電池の成膜にも好適に使用することが可能である。具体的には、多接合型太陽電池を加工してなる太陽電池モジュールであって、板上に少なくとも第1導電膜層と、アモルファスシリコンを素材としてp層i層n層が積層された第1太陽電池層と、結晶質シリコンを素材としてp層i層n層が積層された第2太陽電池層と、第2導電膜層が積層されており、前記各層の少なくとも一部を光ビームによる加工によって複数のセルに分離し、相互に電気的に集積化してなる薄膜太陽電池モジュールの製造に使用可能であって、上記第1太陽電池装置層及び第2太陽電池層を成膜できる。即ち、光ビームによる加工の前工程を行う装置として本発明のCVD装置を使用することができる。
【符号の説明】
【0149】
1 CVD装置
2〜4,92〜94 基体仮置き装置
7〜12,97〜102 成膜チャンバー
22 成膜室
35 収納室出入り口
47 収納室
50 レール(共通レール)
55 移動台車(グループ付移動装置)
67 移動板(移動台)
90,91 成膜グループ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CVD法によって基体に成膜する成膜室を備えた成膜チャンバーと、基体を仮置きする基体仮置き装置とをそれぞれ複数台備えて一群の成膜グループを構成し、当該成膜グループに属する成膜チャンバーと基体仮置き装置との間で基体の受渡しを行うグループ付移動装置を有し、
前記成膜グループとグループ付移動装置の組み合わせを複数組備えたCVD装置であって、
前記グループ付移動装置は、他の成膜グループに属する成膜チャンバー又は基体仮置き装置と相互に基体の受渡しを行うことが可能であることを特徴とするCVD装置。
【請求項2】
各成膜グループは、3以上の基体仮置き装置を備え、各成膜グループに属する成膜チャンバーは、基体仮置き装置の間に挟まれた位置に列状に並べられて配置されていることを特徴とする請求項1に記載のCVD装置。
【請求項3】
前記3以上の基体仮置き装置は、少なくとも1台のメンテナンス用基体仮置き装置を含み、前記メンテナンス用基体仮置き装置は、成膜チャンバーのメンテナンス時にメンテナンスを行う成膜チャンバー内の基体を仮置きすることを特徴とする請求項2に記載のCVD装置。
【請求項4】
2以上の成膜グループに跨がる共通レールを有し、各グループ付移動装置は基体を載置する移動台を備え、各グループ付移動装置は前記共通レールに沿って移動して他の成膜グループに属する成膜チャンバー又は基体仮置き装置と相互に基体の受渡しを行うことが可能である請求項1乃至3のいずれかに記載のCVD装置。
【請求項5】
成膜グループに属する成膜チャンバーと基体仮置き装置は共通レールを跨いで配列され、移動台は、共通レールを跨ぐ双方向に対して基体の受渡しを行うことが可能である請求項4に記載のCVD装置。
【請求項6】
移動台は基体を収納する収納室を有し、前記収納室は基体を出し入れする収納室出入口を備え、前記収納室を回転可能であって、収納室出入口の方向を変更可能であることを特徴とする請求項4又は5に記載のCVD装置。
【請求項7】
移動台は基体を収納する収納室を有し、前記収納室は基体を出し入れする収納室出入口を2か所に備え、共通レールを跨ぐ双方向に対して基体の出し入れを行うことができる請求項4乃至6のいずれかに記載のCVD装置。
【請求項8】
前記CVD装置は太陽電池モジュールの製造に用いられるものであって、前記太陽電池モジュールは、基板上に少なくとも第1導電膜層と、アモルファスシリコンを素材としてp層i層n層が積層された第1太陽電池層と、結晶質シリコンを素材としてp層i層n層が積層された第2太陽電池層と、第2導電膜層が積層されており、前記各層の少なくとも一部を光ビームによる加工によって複数のセルに分離し、相互に電気的に集積化してなる薄膜太陽電池モジュールであり、成膜チャンバーにおいて前記第1太陽電池層と前記第2導電膜層とを成膜可能であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のCVD装置。
【請求項9】
請求項1乃至8に記載のCVD装置を使用することを特徴とするCVD方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−122232(P2011−122232A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−283319(P2009−283319)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】