説明

LOXタンパク質とNRAGEタンパク質との通常の共発現と相互作用を復元させる物質

本発明は、LOXタンパク質とNRAGEタンパク質の通常の共発現とこれらの間の相互作用を復元する物質に関する。
本発明は、特に、増殖と分化とアポトーシスの細胞現象の間のバランスを制御するために、特にこれらの現象の間のバランスが崩れている場合にまた特にLOXとNRAGEとの間の相互作用が欠乏しているか変化している場合に制御するためにLOXタンパク質とNRAGEタンパク質間の相互作用を変化させる組成物の製造のための、配列識別番号1のLOXの発現及び/又は活性を変化させる及び/又は配列識別番号2のNRAGEの発現及び/又は活性を変化させる少なくとも一種の物質の有効量の使用方法に関する。
本発明によれば、特に、皮膚加齢、扁平苔癬、移植片対宿主反応(GVH)、湿疹、乾癬、及び癌、特に上皮癌、更に特に基底細胞型または有棘細胞型の皮膚上皮癌の治療及び/又は予防が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LOXタンパク質とNRAGEタンパク質との通常の共発現と相互作用を復元させる物質の利用に関する。
【背景技術】
【0002】
1)背景
多細胞生物では、細胞増殖と、特定の機能に向けた細胞分化とプログラム及び非プログラム細胞死とのバランスで、恒常性が維持されている。
【0003】
例えば、皮膚は、外的な攻撃からその生物を保護する特異な機能を有する器官であると考えられる。死細胞からなる高度に角質化した角膜層により、物質が外部へ透過しないように保証されている。したがって、表皮細胞、またはケラチン合成細胞の一生のリズムは、次のように、角質化死細胞への分化に至る連続的な変化により支配されている:(1)初期細胞の維持(表皮の基底細胞層の「幹」細胞)、(2)不斉分裂(各幹細胞が二個の姉妹細胞を与える)、(3)分化(「初期幹」細胞の一つより表皮の基底上細胞層の形成)、(4)アポトーシス性細胞死に対する抵抗性の獲得、(5)角化細胞への変化、及び(6)表皮上方細胞層のプログラム細胞死。このバランスのいずれかが崩れると、病気が発生することとなる。
【0004】
細胞の増殖と分化とアポトーシスの現象のいくつかの側面を説明するいくつかの生物学的メカニズムや分子が、当業界の熟練者には知られている。しかしながら、これらの3つの現象を相互に関連付けるメカニズムであって、疾病の制御や防止の目的での標的となるうるものに関する情報については、データがまったくない。
【0005】
2) LOX (タンパク質)
LOXは、リジルオキシダーゼ(LO)群に属する銅依存性のアミンオキシダーゼである。現在までに、五種のLO遺伝子、LOX、LOXL LOXL2、LOXL3とLOXL4が同定されている。LOXは、その細胞内及び細胞外におけるコラーゲン架橋の役割で知られるが、LOXLは、明らかに弾性繊維の恒常性に関与している。なお、他のアイソフォームの細胞内での役割は不明である。
LO類は、様々な細胞、例えば繊維芽細胞や平滑筋細胞、内皮細胞、ケラチン合成細胞で合成されている。この酵素は、したがって、皮膚や肝臓、腎臓、脾臓、大動脈など多くの組織に、細胞外及び細胞内レベルの両方で存在している。
【0006】
2.1)細胞外マトリックスの安定化−細胞外の役割
LOXの細胞外での役割はよく知られており、結合組織の細胞外マトリックス(ECM)の安定化を含んでいる。LOXの実際の機能は、繊維性コラーゲンとエラスチンの架橋である。このために、このタンパク質は、繊維性プロコラーゲン分子とトロポエラスチンのリジル基とヒドロキシリジル基の酸化的脱アミノ化を触媒する。なお、この反応はアンモニアと過酸化水素の放出を伴っている。生成するアルデヒド基は、次いで近くのアルデヒド基またはアミン基と自発的に縮合し、分子内及び分子間結合を形成する。これらの縮合反応により、コラーゲンやエラスチン繊維に見られる架橋が形成される。このため、LOXとLOは、ECMの変化を伴う生物医学的な分野(加齢、繊維症、癌、損傷部修復、骨関節性疾患や心臓血管性疾患、血管形成)で研究されている。
【0007】
有機ニトリル類がLOXの不可逆阻害剤となることが、細胞外で証明されている。したがって、β−アミノプロピオニトリル(β−APN)は、アルキルアミン基質と競争的にLOXの活性サイトに結合してシッフ塩基を形成する(LOはp−APNを基質として利用している)が、アルデヒド生成物を放出することなく、共有的に活性サイトをブロックして合成作用を持たない。この現象をもとに、本発明者らは、細胞培養の際に系統的に起こる特定の細胞型(軟骨細胞等)の脱分化を避けるための、β−APNを含むいろいろなリジルオキシダーゼ阻害剤の使用について記載している。(Farjanel et al., フランス特許01.10443, CNRS, 細胞培養と組織培養のためのリジルオキシダーゼ阻害剤の利用、出願:2001年8月3日、公開番号: 2828206)。しかしながら、上記文書はリジルオキシダーゼ一般に関するもので、LOXアイソフォームに特異的なものではない。また、これは、インビトロで培養された細胞の脱分化の阻害のみに関するものであり、増殖と分化とアポトーシスのバランスの維持におけるリジルオキシダーゼの役割やLOXの役割についての記はがなく、またリジルオキシダーゼまたはLOXの新たなパートナーまたは基質についての記述もない。
【0008】
2.2)細胞内での役割
LOXの、またLO類一般の細胞内での役割は、よくわかっているとはいいがたい。LOXは、細胞の発生、分化、運動性または老化の制御に関係していると考えられている(Csiszar、リジルオキシダーゼ:新らしい多単官能性アミンオキシダーゼ群. Nucleic Acid Research and Molecular Biology. 2001, 70, 2-28)が、その背後にある分子的なメカニズムはいまだに不明である。
【0009】
2.2.1)LOXと細胞の恒常性
LOXが細胞の恒常性の調整(増殖と分化とアポトーシスの間の生理学的なバランスの維持)に関与している可能性があることは、広く認められている(Jeay et al.. リジルオキシダーゼはNF−KBの活性化を抑制してRas仲介の形質転換を阻害する。Mol. Cell. Biol., 2003, 23, 2251-2263)が、その背後のメカニズムは、当業界の熟練者には依然として不明である。
【0010】
現在、当業界の熟練者は、LOXと分化との間の関係、またLOXと細胞の増殖/形質転換の間の関係の可能性を示唆するいくつかのデータを有している。しかしながら、先行技術には、LOXとアポトーシスとの間の関係の可能性についての記載はない。
2.2.2)LOXと表皮の分化
LOXは、表皮中に存在し、その発現はケラチン合成細胞の分化のレベルの関数として制御されているとされる(Noblesse et al., リジルオキシダーゼ様酵素とリジルオキシダーゼが合成皮膚の真皮と表皮に存在し、弾性繊維と関係している、J. Invest. Dermatol., 2004. 122. 621-630)。しかしながら、現在までの研究では、ケラチン合成細胞はコラーゲンまたはエラスチンを全く作らないか、作っても極く少量であるため、ケラチン合成細胞中でのLOXの役割を規定したり、そのパートナーをスクリーニングすることはできなかった。
【0011】
2.2.3)LOXと細胞の形質転換
LOX遺伝子は、明らかに細胞の非腫瘍性表現型の維持に関与している。
【0012】
LOXの保有するこの役割を説明するのに、二つの仮説が提出された。第一の仮説は、ECMの架橋が非腫瘍状態の維持に適した三次元環境をもたらすというものである。この仮説は、癌が侵襲性になるとLOXとLOXLの発現が停止するがこれらは上皮内癌中には存在するという事実により支持される(Peyrol et al., 非侵襲性および侵襲性の腺管乳癌に対する間質反応におけるリジルオキシダーゼ遺伝子の発現、Am. J. Pathol. Feb., 150(2), 497-507, 1997)。もう一つの仮説は、細胞内でのLOの基質に対する役割に関するものであるが、現在まだ当業界の熟練者にも不明である(Li et al., 線維形成誘導性細胞の核内のリジルオキシダーゼの場所と活性の決定、Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 1997. Nov. 25, 94(24), 12817-22)。
【0013】
事実、LOX酵素がrasオンコジーンのサプレッサーであること、また遺伝子中の体細胞突然変異は各種の癌に関連していることが示された(Contente et al., rrg遺伝子の発現は、LTR−c−H−rasで形質転換したNIH 3T3の復帰に関係している。Science, 1990, 249, 796-798; Csiszar et al., 結腸直腸の腫瘍における染色体5q23.1上のリジルオキシダーゼ遺伝子の体細胞突然変異。Int. J. Cancer, 2002. 97, 636-642)。最近の研究では、rasで形質転換された繊維芽細胞中での低レベルのLOXの発現がFGF−2オートクリン増殖因子の活性に由来するものであり、抗腫瘍薬スラミンはこの酵素の発現を再誘導できることがわかっている(Palamakumbura et al., 形質転換された繊維芽細胞内におけるリジルオキシダーゼ発現のオートクライン増殖因子調節、J. Biol. Chem., 2003, Aug. 15, 278(33), 30781-7; Epub 2003 Jun. 4)。別途、これらの繊維芽細胞におけるLOXの再発現が、AKTタンパク質の位置の調節によりNF−kBシグナル経路上に作用して、この細胞の軟質寒天内での成長を阻害することが明らかとなった(Jeay et al., リジルオキシダーゼが、NF−Bの活性化を防ぎRas仲介の形質転換を阻害する、Mol. Cell Biol., 23, 2251-2263, 2003)。
【0014】
他の腫瘍サプレッサの場合と同様に、LOXは、細胞内の基質とパートナーの量とその制御に応じて作用しているようではあるが、後者は当業界の熟練者にとって依然として不明である。
【0015】
2.2.4)アポトーシス
「アポトーシス」という用語は、形態学的特徴が壊死とは異なる特定の形式の細胞死をいう。
【0016】
アポトーシスは、カスパーゼの獲得が必要な計画的な細胞死のプロセスである。このプロセスにおいて、細胞は特に目覚しい形態学的特徴を示し、例えばクロマチンが縮合して核の分裂が起こり、その結果自己破壊が起こって、近くの細胞に損傷を与えることなくその組織から消滅する。
【0017】
アポトーシスは、発達中またはホメオスタシスの間に起こる自然な細胞死に相当する。
【0018】
先行技術には、アポトーシスや分化などの細胞プロセスを用いて細胞サイクルを制御する場合に使用される薬品やメカニズムが数多く示されている。
【0019】
3)NRAGE (タンパク質)
細胞サイクルや分化、アポトーシスの制御に関与する一群のタンパク質が、特によく知られている。これは、MAGE(黒色腫関連抗原)タンパク質であり、その中の一群であるNRAGEタンパク質(「ニューロトロフィン・レセプター共役MAGE同属体」とも呼ばれる)は、特にその神経栄養性因子NGFを経由する好アポトーシス的な役割で有名である。
【0020】
このNRAGEタンパク質は、778個のアミノ酸からなる。このタンパク質は、中央領域にMAGEタンパク質に特有の第一ドメイン、即ちMAGE相同性ドメイン(MHD−1)を有し、N末端領域に特定のアイソフォームの形で存在する第二ドメイン、即ちMHD−2を有している。これらの二つのドメインは、リジル基を多く含むゾーンを有している。これらの二つのドメインの間に、IRD (散在反復ドメイン)と呼ばれる領域があるが、この領域は、現在既知の他のタンパク質のいずれにも存在しない。
【0021】
このNRAGEタンパク質は、いろいろな経路によりアポトーシスの制御に関与している。
・ NRAGEは、p75NTR、即ち好中球性因子(NGF)またはTNFに対する「低親和性」レセプターと相互作用して、細胞サイクルの進行を抑え、カスパーゼ経路を経て好アポトーシス性となる。
・ NRAGEは、アポトーシスタンパク質IAPの細胞質内阻害剤と相互作用して、好アポトーシス性となる。
・ NRAGEは、組織の形態発生的な調節に加わる核のホメオ因子、例えばMsx因子やDlx因子の活性に直接作用することもある。
【0022】
NRAGEの発現は至るところで起こるが、先行技術には、皮膚中の存在場所についての、またLOXとアポトーシスの間の関係やLOXとNRAGEとの間の関係について情報がない。
【0023】
4)先行技術についての結論
先行技術には、LOXに対する新たなパートナーまたは基質、特に増殖と分化とアポトーシスとの間の細胞のバランスの維持に関与するものが記載されていない。また、先行技術では、上皮細胞(特にケラチン合成細胞)中のあるいは他の細胞型中のこれらの新しいパートナーまたは基質の名称を開示していない。
【0024】
また、先行技術は、表皮中で起こりうるLOX(特にケラチン合成細胞で発現されるLOX)の発現の変動と、加齢との関係、UVや他の種類の攻撃への暴露の有無との関係、あるいは皮膚に影響を及ぼす疾患(乾癬、移植片対宿主反応、癌など)との関係についての情報を示していない。
【0025】
先行技術は、アポトーシスへのLOXの関与について述べていない。
【0026】
先行技術は、健全な皮膚、加齢した皮膚、UVまたは他の種類の攻撃に暴露された皮膚、または病気の皮膚などの皮膚中のNRAGEの存在についての情報を提供していない。
【0027】
先行技術は、上皮由来細胞中または表皮中に存在するNRAGEを研究するモデルを提供していない。
【0028】
先行技術は、いかなる組織におけるLOXとNRAGE間のいかなる相互作用についての情報も提供していない。
【0029】
先行技術は、ケラチン合成細胞におけるLOX及び/又はNRAGEの発現を変化させることが可能な活性成分を同定するためのモデルを提供していない。
【0030】
また、ヨーロッパでは、特定の用途では動物試験が現在禁止されており、人体実験は倫理的な議論の的となっている。したがって、本発明者らには、動物または人間を用いるスクリーニング法を実施することが許されなかった。
【0031】
三次元モデルであるマイムスキン(R)(コレチカ、フランス)においては、LOXは表皮中で発現され、その発現は、ケラチン合成細胞の分化のレベルに応じて制御されていた(Noblesse et al., 2004)。これらの研究には、NRAGEの発現や、LOXとアポトーシスの間にある可能性のある関係の研究は含まれていない。したがって、当業界の熟練者が、増殖と分化とアポトーシスのバランスが崩れた(加齢、ストレス、疾患)場合にこれを元に戻すことを目的に、細胞のLOX及び/又はNRAGEの発現を変化させて恒常性を制御することに興味を持つかどうか不明である。また、これは新たな技術的な問題でもある。
【0032】
したがって、先行技術では、LOXの細胞内パートナーの発現を変化させることの可能な活性成分(例えばNRAGE)を提供することができない。また、この細胞内パートナーが、細胞の調節の目的でのLOXの発現の変化に関係するかどうかも不明である。この点で、これらの活性成分のインパクトを評価する客観的な基準を得ることは非常に難しい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0033】
本発明の主たる目的は、上述の技術的な問題を解決することであり、特に、LOXとNRAGEとの間の相互作用が欠乏しているか変化している場合にLOXタンパク質とNRAGEタンパク質間の相互作用を改善する活性成分を同定する方法に関する技術的問題を解決することである。
【0034】
特に本発明の目的は、加齢による変化した皮膚、またはUVまたは他の種類の攻撃に曝された皮膚、及び/又は乾癬、湿疹、移植片対宿主反応、扁平苔癬及び/又は癌疾患などの症状の皮膚の場合のように、増殖と分化とアポトーシスとの間の細胞のバランスが崩れた場合、それを制御することである。
【0035】
本発明はまた、増殖と分化とアポトーシスとの間の細胞のバランスを、特に例えば加齢による変化した皮膚、またはUVまたは他の種類の攻撃に曝された皮膚、及び/又は乾癬、湿疹、移植片対宿主反応、扁平苔癬及び/又は癌疾患などの皮膚の場合で、そのバランスが崩れた場合に制御するために、LOX及び/又はNRAGEの発現を変化させる活性成分の利用に関する。特に、本発明は、LOXとNRAGEとの間の相互作用が欠乏しているか変化している場合における、LOXタンパク質とNRAGEタンパク質間の相互作用を改善するための活性成分に関する。
【0036】
本発明により、NRAGEの発現位置を決めこの発現を追跡する方法、特に皮膚の細胞モデルにおける方法に関わる技術的な問題を解決することができる。本発明によりまた、LOXとNRAGEとの間の相互作用の調節が不良の状態を診断する方法を提供する場合の技術的な問題を解決することができる。
【課題を解決するための手段】
【0037】
本明細書に用いる用語の、本発明者らが意図する意味を、以下に述べる:
「LOX」:ヒトリジルオキシダーゼタンパク質のアイソフォーム、特にアミノ配列識別番号1で規定されるLOX;
「NRAGE」:ヒトタンパク質のNRAGH、特にアミノ配列識別番号2で規定されるもの:
「LOXの発現の変化」:LOXをコードする遺伝子の変化、特にLOXをコードするメッセンジャーRNAの発現の変化、このメッセンジャーRNAからのLOXの合成の変化、及びLOX活性の変化。
「NRAGEの発現の変化]:NRAGEをコードする遺伝子の変化、特にRAGEをコードするメッセンジャーRNAの発現の変化、および、メッセンジャーRNAからNRAGEの合成の変化とNRAGEの生物学的効果の変化。
【0038】
増殖と分化とアポトーシスとの間のバランスが崩れた場合、これらの変化によりそのバランスのとれた状態を再誘導できなければならない。
【0039】
LOXに対して効果的と考えられる活性成分は、少なくとも一種の細胞種がこれらの活性成分と接触して大きなLOX発現及び/又は活性を示すモデルにおいて、コントロールモデル(一般的には活性成分に非接触)のLOX発現及び/又は活性レベルと比較して、好ましくはLOXのmRNAの発現で約±50%の差異を与えるもの及び/又はLOXの発現及び/又はLOX活性に約±15%の差異を与えるものである。
【0040】
NRAGEに対して効果的と考えられる活性成分は、少なくとも一種の細胞種がこれらの活性成分と接触して大きなLOX発現及び/又は活性を示すモデルで、コントロールモデル(一般的には活性成分に非接触)のNRAGE発現及び/又は活性レベルと比較して、好ましくはNRAGEのmRNAの発現に約±50%の差異を与えるもの及び/又はNRAGEの発現及び/又はNRAGEの生物学的効果に約±15%の差異を与えるものである。
【0041】
したがって、本発明の第一の側面は、増殖と分化とアポトーシスの細胞現象の間のバランスを制御するために、特にこれらの現象の間のバランスが崩れている場合にまた特にLOXとNRAGEとの間の相互作用が欠乏しているか変化している場合に制御するためにLOXタンパク質とNRAGEタンパク質間の相互作用を変化させる組成物の製造のための、配列識別番号1のLOXの発現及び/又は活性を変化させる及び/又は配列識別番号2のNRAGEの発現及び/又は活性を変化させる少なくとも一種の物質の有効量の使用方法に関する。
【0042】
本発明は、LOXとNRAGEとの間の相互作用が欠乏しているか変化している場合にLOXタンパク質とNRAGEタンパク質間の相互作用を改善するための組成物の製造のための配列識別番号1のLOXの発現及び/又は活性を変化させる及び/又は配列識別番号2のNRAGEの発現及び/又は活性を変化させる少なくとも一種の物質配列の有効量の使用方法に関する。
【0043】
本発明はさらに、増殖と分化とアポトーシスとの間の細胞のバランスが欠乏しているか変化している少なくとも一種の状態を予防又は治療する組成物の製造のための、少なくとも配列識別番号2のNRAGEタンパク質の発現及び/又は活性を変化させ、必要に応じて配列識別番号1のLOXタンパク質の発現及び/又は活性を変化させる少なくとも一種の物質の有効量の使用方法に関する。
【0044】
好ましくは、LOX及び/又はNRAGEの発現が、上皮細胞内で、特にケラチン合成細胞内で変化させられる。
【0045】
好ましくは、上記の物質の目的がLOXタンパク質とNRAGEタンパク質との間の相互作用を変化させることであり、この相互作用が、特にNRAGEタンパク質のIRDドメイン中で起こる。
【0046】
好ましくは、LOXとNRAGEとの相互作用が、LOXで誘起された酵素触媒によるNRAGEの重合、特に二量体化を含む。
【0047】
好ましくは、LOXとNRAGEとの間の相互作用が、LOXの酵素活性の結果起こるH22の生産を含み、このH22が、他の分子、特に中性のスフィンゴミエリナーゼまたはNF−kBの活性剤となる。
【0048】
好ましくは、LOXとNRAGEとの間の相互作用が、LOXの非酵素的な活性、特にLOXのプロ領域(A22〜D169)により発揮される活性である。
【0049】
好ましくは、上記物質の目的が、細胞のストレスへの暴露、特に細胞の熱への暴露または細胞の放射線、特に太陽放射線への暴露、または細胞の毒性薬品、例えば化学薬品または微生物薬品への暴露、皮膚の加齢、扁平苔癬、移植片対宿主反応(GVH)、湿疹、乾癬及び癌、特に上皮癌からなる群から選ばれる条件の治療及び/又は予防である。
【0050】
好ましくは、上記物質の目的が、細胞の過剰増殖の場合、特に癌の場合、特に上皮癌、更に特に基底細胞または有棘細胞型の皮膚上皮癌、乾癬または湿疹の場合の細胞増殖の抑制である。
【0051】
好ましくは、上記物質の目的が、特に皮膚加齢や、皮膚のストレスへの暴露、特に熱への、または皮膚の放射線、特に太陽放射線への暴露、または皮膚の毒性薬品、例えば化学薬品または微生物薬品への暴露、または移植片対宿主反応(GVH)による実質的なアポトーシス場合に、表皮中でのアポトーシスを抑制することである。
【0052】
好ましくは、上記物質の目的が、特に加齢や、皮膚の熱への暴露、皮膚の放射線、特に太陽放射線ヘの暴露、または移植片対宿主反応(GVH)による表皮中の細胞の低増殖の場合、細胞増殖を増加させることである。
【0053】
好ましくは、上記物質の目的が、皮膚加齢や、皮膚のストレスヘの暴露、特に熱への暴露、または皮膚の放射線、特に太陽放射線への暴露、または皮膚の毒性薬品、例えば化学薬品または微生物薬品への暴露、または移植片対宿主反応(GVH)の際のLOXの発現の増加と、必要に応じて行うNRAGRの発現の阻害である。
【0054】
好ましくは、上記物質の目的が、乾癬または湿疹の予防あるいは治療のための、表皮中でのNRAGEの発現及び/又は活性の増加と、必要に応じて行うLOXの発現及び/又は活性の阻害である。
【0055】
好ましくは、上記物質の目的が、癌、特に上皮癌、更に特に基底細胞型または有棘細胞型の皮膚上皮癌、または扁平苔癬の予防又は治療のために、LOXとNRAGEの発現を増加させることである。
【0056】
好ましくは、上記組成物が化粧用、栄養補助、皮膚医薬または医薬組成物である。
【0057】
好ましくは、上記の増殖と分化とアポトーシスと間の細胞のバランスが、ケラチン合成細胞の増殖と分化とアポトーシスの間のバランスである。
【0058】
好ましくは、活性成分の製造に用いる出発原料が、植物 (好ましくは根、茎、皮、花、果実、種子、胚、樹脂、浸出物、葉または植物全体)またはタンパク質である場合、放射線、例えばベータ線またはガンマ線で、好ましくは照射量5kGyで滅菌してもしなくてもよく、また必要なら、例えば室温で粉砕して粉末としてもよい。この粉末を、次いで、例えば2〜5%(重量)、好ましくは5%の量で、粉体として、極性溶媒、例えば水、アルコール、ブチレングリコールなどのグリコール、ポリオール、及び/又は極性溶媒の混合物中に、好ましくはいろいろな比率の水とアルコール、グリコールまたはポリオール(例えばエタノール、グリセリン、ブチレングリコール、グリコール、キシリトールなど)との混合物、好ましくは75/25または50/5の比率の水/ブチレングリコール混合物、またはアルカンなどの非極性溶剤、または非極性溶剤の混合物、極性溶媒と非極性溶剤の混合物に分散する。好ましくは、少なくとも2時間攪拌後、例えば磁気攪拌後、必要なら溶剤を加熱した後、試料を、好ましくはデカンテーションまたは遠心分離で清澄化させ、次いで、好ましくは0.45μm〜0.22μmのフィルターで濾過する。
【0059】
好ましくは、活性成分の生産に用いる出発原料が、構造の明確な分子(例えば、合成分子または半合成分子、精製して得られた生体内分子)である場合、溶剤に、好ましくは水またはスルホキシドに溶解する(当該分子に応じて、濃度は、好ましくは10-6M〜10-2M、特に好ましくは10-4Mのオーダー、または好ましくは1重量%〜5重量%)。得られた溶液は、必要に応じて濾過、好ましくは0.45μmまたは0.22μmのフィルターで濾過する。
【0060】
好ましくは、上述の方法の一つで得られた活性成分は、最終濃度が好ましくは0.01%体積/体積(v/v)で、特に好ましくは0.1%〜1% (v/v)で使用される。
【0061】
好ましくは、上記物質は、ダイズエキスやマオウエキス、ホップエキス、シナモンエキスからなる群から選ばれる。
【0062】
本発明の第二の側面は、増殖と分化とアポトーシスとの間の細胞のバランスが欠乏しているか変化している少なくとも一種の状態を予防又は治療するために、LOXとNRAGEとの間の相互作用を変化させる少なくとも一種の活性成分を同定する方法であって、
−この活性成分をLOXタンパク質(配列識別番号1)及び/又はNRAGEタンパク質(配列識別番号2)を発現可能な少なくとも一種の生細胞と接触させること、及び
−特に、増殖と分化とアポトーシスとの間の細胞のバランスの改善を目的に、LOX及び/又はNRAGEの発現及び/又は活性を変化させる活性成分を特定するために、LOX及び/又はNRAGEの発現を分析することを含むことを特徴とする方法に関する。
【0063】
本発明はさらに、LOXとNRAGEとの間の相互作用が欠乏しているか変化している場合、LOXタンパク質とNRAGEタンパク質間の相互作用を改善する目的で、LOXとNRAGEとの間の相互作用を変化させる少なくとも一種の活性成分を同定する方法であって、
−この活性成分をLOXタンパク質(配列識別番号1)及び/又はNRAGEタンパク質(配列識別番号2)を発現可能な少なくとも一種の生細胞と接触させること、及び
−特に、LOXとNRAGEとの間の相互作用が欠乏しているか変化している場合に、LOXタンパク質とNRAGEタンパク質間の相互作用を改善する目的で、LOX及び/又はNRAGEの発現及び/又は活性を変化させる活性成分を特定するために、LOX及び/又はNRAGEの発現を分析することを含む方法に関する。
【0064】
LOX及び/又はNRAGEタンパク質の発現が可能な上記生細胞の増殖と分化とアポトーシスのバランスが、またはLOXタンパク質とNRAGEタンパク質間の相互作用が、活性成分と接触させられる前に、なくなっているか変化していることが好ましい。
【0065】
好ましくは、上記生細胞が、上皮細胞、特にケラチン合成細胞である。
好ましくは、上記方法が、LOX及び/又はNRAGEのメッセンジャーRNAの発現を分析することを含む。
【0066】
好ましくは、上記方法が以下のプライマーを用いる定量的RT−PCRを用いる:
LOX遺伝子用:
センス:ACGTACGTGCAGAAGATGTCC
アンチセンス:GGCTGGGTAAGAAATCTGATG
NRAGE遺伝子用:
センス:TGCACAGACATCAGCAGATGG
アンチセンス:TTCACGGATGATATCTCTCAGC。
【0067】
好ましくは、本方法は、例えば定量RT−PCRによるメッセンジャーRNAの速度論的分析を含んでいる。
【0068】
本発明はさらに、少なくとも一種の細胞型において細胞の増殖と分化とアポトーシスの現象間バランスが崩れている患者の化粧的手入れまたは治療を行う方法であって、LOX及び/又はNRAGEの発現を変化させる物質を塗布又は投与することで上記LOXとNRAGEとの間の相互作用を改善させることを含む方法に関する。
【0069】
本発明はさらに、LOXとNRAGEとの間の相互作用が欠乏しているか変化している被験者の化粧的手入れまたは治療を行う方法であって、配列識別番号1のLOXの発現及び/又は活性を変化させる及び/又は配列識別番号2のNRAGEの発現及び/又は活性を変化させる物質を塗布又は投与することを含む方法に関する。
【0070】
本発明はさらに、LOXとNRAGEとの間の相互作用が欠乏しているか変化している被験者の化粧的手入れまたは治療を行う方法であって、NRAGEの発現及び/又は活性を変化させ、必要の応じてLOXの発現及び/又は活性を変化させる物質の塗布又は投与を含む方法に関する。
【0071】
本発明の第三の側面は、組成物の製造方法であって、
−増殖と分化とアポトーシスとの間の細胞のバランスの改善を目的に、LOX及び/又はNRAGEの発現及び/又は活性を変化させる活性成分を同定するために上記に記載の同定方法を使用すること、及び
−増殖と分化とアポトーシスとの間の細胞のバランスが欠乏しているか変化している少なくとも一種の状態を予防又は治療するための化粧用、栄養補助、皮膚医薬または医薬組成物を製造するために、この活性成分を少なくとも一種の賦形剤と混合することを含むことを特徴とする組成物の製造方法に関する。
【0072】
本発明はさらに、
−LOXタンパク質とNRAGEタンパク質との間の相互作用の改善を目的に、LOX及び/又はNRAGEの発現及び/又は活性を変化させる活性成分を同定するために上記に記載の同定方法を使用すること、及び
−LOXタンパク質とNRAGEタンパク質との間の相互作用が欠乏しているか変化している場合に、LOXタンパク質とNRAGEタンパク質との間の相互作用を改善するための化粧用、栄養補助、皮膚医薬または医薬組成物を製造するために、この活性成分を少なくとも一種の賦形剤と混合することを含むことを特徴とする組成物の製造方法に関する。
【0073】
本発明の第四の側面は、少なくともケラチン合成細胞を含む再構成皮膚モデル中における、または皮膚の切片、好ましくは増殖と分化とアポトーシスとの間の細胞のバランスが欠乏しているか変化している状態の表皮をもつ人由来の皮膚の切片中におけるNRAGEの存在を検出し位置決めをするために、少なくとも一種の抗NRAGE抗体を使用することを特徴とする、NRAGEの位置を決定する方法に関する。
【0074】
本発明の第五の側面は、細胞レベルで、特に上皮細胞での、好ましくはケラチン合成細胞でのNRAGHの発現の変化を検出するための組成物の製造における抗NRAGE抗体を使用する方法に関する。
【0075】
好ましくは、上記組成物の目的が、増殖と分化とアポトーシスとの間の細胞のバランスまたはLOXとNRAGEとの間の相互作用が、特に表皮中において、欠乏しているか変化している状態を検出することである、なお、上記状態は、細胞のストレスへの暴露、特に細胞の熱への暴露または細胞の放射線、特に太陽放射線への暴露、または細胞の毒性薬品、例えば化学薬品または微生物薬品への暴露、皮膚加齢、扁平苔癬、移植片対宿主反応(GVH)、湿疹、乾癬及び癌、特に上皮癌、更に特に基底細胞型または有棘細胞型の皮膚上皮癌からなる群から選ばれる。
【0076】
好ましくは、上記組成物は、さらに細胞レベルで、特に上皮細胞中で、好ましくはケラチン合成細胞中でLOXの発現の変化を検出する抗LOX抗体を含んでいる。
【0077】
好ましくは、上記組成物は、更にケラチン合成細胞中でのLOXの発現の変化を検出する抗LOX抗体を含んでいる。
【0078】
好ましくは、上記ケラチン合成細胞はヒトケラチン合成細胞である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0079】
予期せずに、本発明者らはLOXタンパク質とNRAGEタンパク質との間の相互作用を見出した。この発見が基本であり、本発明の原点である。この発見により、LOXが、増殖や分化、アポトーシスの経路の交点に存在して細胞の恒常性を支配するタンパクであることが明らかとなった。
【0080】
また、本発明者らは、このNRAGEタンパク質が、特に表皮に存在し、特にケラチン合成細胞で発現されていることを見出した。この発見により、このLOXとNRAGEとの間の相互作用を、細胞の恒常性が乱された場合にそれを回復させるための化粧用手入れまたは治療の作用標的とすることが可能となった。
【0081】
1)生体外でのLOX/NRAGE相互作用の発見とその評価
表皮中のLOXの存在の発見(Noblesse et al.,リジルオキシダーゼ様酵素及びリジルオキシダーゼが合成皮膚及び人皮膚の真皮と表皮に存在し、弾性繊維に会合している, J. Invest. Dermatol., 122, 621-630, 2004)の後、これらの細胞は、LOXが存在するレベルでコラーゲンまたはエラスチンを殆どあるいはまったく含んでいないため、これらの細胞中では、LOXが、その主たる既知の役割、即ちコラーゲンとエラスチンの架橋を果たしている可能性が低いため、本発明者らは、このレベルでLOXが果たす役割について検討を加えた。
【0082】
この目的のために、酵母ツーハイブリッド法を用いて、LOXタンパク質のパートナーを検索するとともに、正常のヒト皮膚ケラチン合成細胞cDNAのライブラリを、ルアのGAL4 BD−hLOXmatでスクリーニングして、NRAGEがLOXの潜在的なパートナーであることを特定できるようにした(実施例1参照)。
【0083】
Hela細胞中でのツーハイブリッド法により、本発明者らは、この協調関係が哺乳類細胞中で観測されることを示した(実施例2参照)。
【0084】
次のステップでは、このLOXとNRAGEとの間の潜在的な協調関係の同定が、これらの二つのタンパク質の直接的な物理的相互作用に相当するものかを検討した。これは、特に、これらの遺伝子をcos7細胞に移入後に生産されるLOXタンパク質とNRAGEタンパク質の共免疫沈降を用いる方法で行った。この結果、LOXとNRAGEとの間の物理的相互作用の存在が確認されるとともに、LOXが、IRD(散在反復ドメイン)と呼ばれるNRAGEの特定の領域と、即ちMAGEタンパク質群の中に存在するNRAGEに特異的な領域と相互作用を示すことが明らかとなった(実施例3参照)。
【0085】
この点で、現段階では、一つに、このNRAGEタンパク質が、LOXの触媒作用により二量化しやすいサイトであるリジル基を多く含む二つのドメインを有しているという点、また他方、NRAGEの機能が発揮されるのは二量体の形態であるという点を考えるとき、LOXとNRAGEとの間の相互作用の発見は、特に非常に興味あることであるといえる。
【0086】
本発明者らは、このように細胞外において、NRAGEのIRD領域におけるLOXとNRAGEとの間の直接的な物理的相互作用の存在を見出したが、生体内においてもこの相互作用が働いているのかどうかを検討した。前述のように、LOXとは異なって、NRAGEが皮膚中に存在することは過去には知られていなかったことを銘記すべきである。
【0087】
2)正常のヒト皮膚中のNRAGEの存在の確認と再構成の正常ヒト皮膚
本発明者らは、皮膚の真皮と表皮の両方においてNRAGEの発現を確認した(実施例4と実施例5を参照)。
【0088】
本発明においては、本発明者らは、皮膚でのNRAGEの発現位置を決定する方法を用いた。
【0089】
予想外にも、本発明者らは、表皮においては、一般的にその存在がユビキタスであるといわれるタンパク質に予想されるように、NRAGEが均一に発現されるのでなく、ある傾斜を持って発現されていることを見出した。
【0090】
表皮の構造:
表皮は、基底膜上にある重層の上皮であり、この基底膜は真皮と結合している。その平均厚は、60〜100μm内で変動し、底部から表面にむけてケラチン合成細胞の分化段階の進んだ次の四種の連続的な層からなっている。
−基底細胞層(単一列の細胞)
−有棘細胞層(5〜6枚の単細胞層)
−顆粒層( 1〜3枚の単細胞層)
−角質層(5〜10枚の単細胞層)
したがって、NRAGEは基底細胞層には存在せず、分化したケラチン合成細胞の第1層で現れて、その含量は角質層で増加する。表皮の第一基底上細胞層のラベリングは、LOXのラベリングに相当し、基底細胞層から上方に表れる。一方、LOXのラベリングは、 NRAGEが存在している表皮上層では減少し、下の3ゾーンとは大きく異なる:
−LOXのみが発現されている、基底細胞層と第一の増殖性基底上細胞層とからなる表皮下方のゾーン;
−LOXとNRAGEとがともに発現されている、第一の非増殖性基底上細胞層から第一の単細胞性角質層に伸びる中間体ゾーン;
−NRAGEのみが発現されている表皮上方のゾーン。
【0091】
細胞レベルでの観察の結果、 LOXとNRAGEとが細胞の周辺に、特に亜膜性領域に出現し、NRAGEは細胞質中にも出現する(実施例4と実施例5を参照)。
【0092】
したがって、本発明者らは、NRAGEが皮膚中に、それも真皮と表皮の両方の中に存在することを初めて発見した。
【0093】
また、表皮中には、LOXタンパク質とNRAGEタンパク質とがともに発現され、特にケラチン合成細胞中では、細胞レベルで同一場所を共有し、その場所が周辺の亜膜性ゾーンである(NRAGEは細胞質にも存在する)ことを発見した。
【0094】
したがって、本発明者らは、細胞外で見出した直接的相互作用に好適な条件を、表皮中のLOXとNRAGEとが共存するゾーンにおいて達成することができることを示した。
3)加齢に伴うまた特定の病理条件における表皮中でのLOX及び/又はNRAGEの発現阻害の確認
【0095】
本発明者らはまた、予期せずして、皮膚の加齢やいくつかの病理条件により、表皮中でのLOX及び/又はNRAGHの発現の阻害が起こることを示した。
【0096】
3.1)表皮中でのLOXとNRAGEの状態
3.1.1)年配の人の皮膚
年配の人の皮膚は、表皮の増殖が遅いこと(細胞層数の減少)と高ケラチン化に特徴がある。
【0097】
本発明者らは、加齢皮膚中には、(用いた方法で検出できる)LOXが全く存在しないことを発見した。
【0098】
一方、NRAGEは強く発現されて細胞質中に存在し、第一の基底上細胞層から上方に、発現の傾斜なしに存在しているようであった。
【0099】
したがって、本発明によれば、特にLOXとNRAGEの共発現ゾーンを復元することで、NRAGEの発現(及び/又は活性)の阻害の有無に関係なく、制御された分化ゾーン及び/又はアポトーシスゾーンが再誘導できるように、LOXの発現(及び/又は活性)を増加させることができる。この結果、皮膚、特に表皮が薄くなる。
【0100】
したがって、本発明の目的は、特に皮膚の加齢効果を矯正し防止することである。
【0101】
3.1.2)GVH(移植片対宿主)反応
GVHは、造血幹細胞の同種移植の後に起こる疾患である。これは、患者の正常な器官(特に、皮膚や肝臓、消化管)上の移植片内に含まれている免疫細胞(リンパ球)の影響に関係している。皮膚中では、斑状丘疹性、痒疹性で炎症性の皮疹の形で現れる。
この疾患を持つ患者は、皮膚が非常に薄く、高度にアポトーシス性である表皮を有している。
【0102】
本発明者らによる組織学的な研究では、LOXの欠失と非常に多量のNRAGEの存在が認められ、NRAGEは、細胞質中及び第一の基底上細胞層が上方に存在していた。
【0103】
したがって、本発明によれば、NRAGEの発現(及び/又は活性)の阻害の有無に関係なくLOXとNRAGEの共発現ゾーンを再誘導して、これらが相互作用を示すようにし、もって皮膚上でのGVHの症状発現を抑え、特に皮膚の、特に表皮の肥厚をもたらすように、LOXの発現(及び/又は活性)を増加させることができる。
【0104】
したがって、本発明により、GVH患者の皮膚上での、この疾患の症状発現を抑えることができる。
【0105】
3.1.3)扁平苔癬
苔癬は、未知の原因で引き起こされる皮膚疾患であり、紫色の平坦で固体状で乾燥した非常に痒疹性の丘疹を特徴とし、その直径は数ミリメーターである。
【0106】
本発明者らは、LOX発現の極めて大幅な減少または完全な消失と非常に不規則なNRAGEの発現を発見した。これらの観測は、もちろん、検討したこれら二つのタンパク質間の相互作用が消失していることあるいは非常に低レベルであることと関係したものである。
【0107】
このため、本発明によれば、NRAGEの発現(及び/又は活性)の阻害の有無に関係なく、LOXとNRAGEの共発現ゾーンを再誘導して、これらが相互作用を示すようにし、もって通常の表皮状態に回復させることができるようにLOXの発現(及び/又は活性)を増加させることができる。
【0108】
したがって、本発明により、扁平苔癬の患者が、この疾患を治療、軽減、予防することが可能となる。
【0109】
3.1.4)乾癬
癬は、紅斑落屑性の病変を特徴とする慢性皮膚疾患である。この疾患の基本的な特徴としては、ケラチン合成細胞の増殖速度の増加があげられ、この結果、表皮の再生と肥厚が速やかとなる。
【0110】
組織学的には、末端分化の第一段階に関連する細胞の過剰増殖、即ち不完全な末端分化が認められ、その結果、アポトーシスが消失するか非常に弱くなる。
【0111】
本発明者らは、LOXの非常に強い発現を検出し、一方、NRAGEの存在は弱く、問題のゾーンのラベリングはほぼ均一であって、傾斜発現は起こっていなかった。通常とは異なる発現強度を示すこれらの特徴は、問題のタンパク質の位置に影響を及ぼす更に重要な異常と連動している。したがって、乾癬の皮膚では、LOXは表皮下部で主に発現され、NRAGEのみが上部で発現され、その結果、これらのタンパク質の発現が、健全な皮膚で通常認められる重複なしへとシフトする。細胞レベルでは、NRAGEは、細胞質内にのみ観察され、亜膜性周辺ゾーンには観測されない。
【0112】
したがって、乾癬においては、LOXとNRAGEタンパク質の両方が表皮中に存在するが、これらが物理的に同一場所に存在していないため、相互に直接的な相互作用を持っていないことがわかる。このように相互作用がない結果、表皮中に機能不全が観察される。このことは、表皮の恒常性を維持する上でのLOXとNRAGEとの間の相互作用の役割を反映している。
【0113】
したがって、LOXの発現(及び/又は活性)の阻害及び/又は更に、NRAGEの発現(及び/又は活性)の刺激、好ましくは部分的な刺激を行うことで、特に、制御された増殖ゾーンを再誘導してケラチン合成細胞におけるアポトーシスを促進して過剰増殖を減少させるために、LOXとNRAGE発現の重複ゾーンを得ることが可能となる。
【0114】
また、NRAGHの発現(及び/又は活性)の刺激及び/又はLOXの発現(及び/又は活性)の阻害、好ましくは部分的な阻害により、特に、ケラチン合成細胞におけるアポトーシスを促進させて過剰増殖を抑制することを可能とするために、LOXとNRAGEの発現の重複ゾーンを得ることが可能となる。
【0115】
したがって、本発明により、乾癬の予防及び/又は治療、またはその効果の一部を軽減することが可能となる。
【0116】
3.1.5)湿疹
湿疹とは、臨床的には、強いかゆみを伴う、皮膚の斑点や、ある程度の局所的な膨潤、かさぶたを形成しやすい湿潤性水泡を特徴とする皮膚症状である。慢性の湿疹は、肥厚を伴う皮膚の変性のためより重篤となる。表皮中でのアポトーシスは低下する。
【0117】
本発明者らは、細胞周辺におけるLOXの非常に強固な発現を発見した。他方、NRAGEの発現は弱く、細胞質にのみに観察される。このことは、もちろん、これら二つのタンパク質間の相互作用が存在しないか非常に弱いレベルであることを反映している。
【0118】
したがって、NRAGEの発現(及び/又は活性)の刺激、及び/又はLOXの発現(及び/又は活性)の阻害、好ましくは部分的な阻害により、アポトーシスを増加させ、湿疹症状の一部を減少させることができるようになる。
【0119】
したがって、本発明により、湿疹の予防及び/又は治療が、特に症状の一部の軽減が可能となる。
【0120】
3.1.6)上皮皮膚癌
二種の上皮皮膚癌を区別する必要がある。
−一つは、基底細胞癌(症例の90%)で、転移する恐れのない本質的に局所的で低増殖性の腫瘍である。これは、基底細胞層のケラチン合成細胞の非制御な増殖により引き起こされる。
−他方は、有棘細胞癌(症例の10%)で、局所的に侵略的な増殖をし、転移することもある。有棘細胞層のケラチン合成細胞の非制御な増殖により引き起こされる。
【0121】
本発明者らは、上記二種の癌(基底細胞癌及び有棘細胞癌)の侵襲性細胞中にはLOXとNRAGEが存在しないこと、また腫瘍付近の表皮中では腫瘍に近いほどLOXとNRAGEが更に減少することを発見した。本発明者らはまた、腫瘍の周りの間質反応においてLOXが強く発現されるがNRAGEはこの反応で発現されていないことを見出した。
【0122】
まとめると、このようなLOXの発現の停止は、これらの二種の癌の場合に過去に認められていなかったものであり、予想外なものである。LOXは一般的には上皮内癌に存在すると考えられているため、この現象は、上皮癌に特異的なものであるかもしれない。
【0123】
INRAGEの発現の停止は、全く新たな発見であり、過去いずれの癌においてもこのような記載はない。
【0124】
したがって、NRAGEの発現(及び/又は活性)とLOXの発現(及び/又は活性)の刺激により、恒常性の復元が可能となる。特に上皮皮膚癌において、腫瘍の表現型の復帰をもたらすことも可能である。
【0125】
3.2)病理組織の研究の結論
このような観察の結果、本発明者らは、増殖と分化とアポトーシスのバランスの異常で引き起こされる状況は、もし、この異常が年配の被験者の表皮中のものであっても、あるいは表皮に影響を与える他の疾患を持つ患者の表皮中であったとしても、組織的には、LOX及び/又はNRAGEの発現の不良にその特徴があり、この不良により、これらの間の相互作用が変化したり、相互作用が不可能となったりすることを、見出した。
【0126】
この発見の結果、本発明者らは、LOXまたはNRAGEによる制御、好ましくはLOXとNRAGEの両方の制御を利用して、増殖と分化とアポトーシスのバランスを元に戻す方法を検討した。
【0127】
したがって、これらの予期しない発見を元に、本発明者らは、それらの相互作用を通じてこれらのタンパク質により行われている制御を復元するために、また組成物の、特に化粧用組成物または医薬組成物の製造のための有効成分を特定するために、LOX及び/又はNRAGEの発現を調整する有効成分を特定する方法を提供する。
【0128】
このように、非常に薄い表皮とLOXが非発現であることを特徴とする表皮の過少増殖(加齢皮膚、GVH)の場合には、NRAGEの発現の阻害の有無とは無関係に、LOXの発現を刺激し、LOXとNRAGEとの共発現を調整して制御された分化とアポトーシスゾーンを再誘導し、皮膚の肥厚をもたらす。
【0129】
NRAGEが発現量が少なくて表皮が過剰増殖である(乾癬、湿疹)の場合、LOX発現の阻害の有無とは無関係に、NRAGEの発現を刺激し、制御された増殖ゾーン(LOX/NRAGEオーバラップ)を再誘導して過剰増殖を停止させて、アポトーシスを促進させる。
【0130】
表皮中でのアポトーシスが高レベル(加齢皮膚、皮膚のストレスへの暴露、特に熱への暴露、または皮膚の放射線、特に太陽放射線への暴露、または皮膚のa毒性試薬、例えば化学品または微生物剤への暴露、または移植片対宿主反応− GVH)であり、NRAGEが過剰に発現されている場合には、LOXの発現の刺激の有無とは無関係に、NRAGEの発現を阻害する。
【0131】
4)細胞のアポトーシスにおけるLOXの関与の確認
予想外に、本発明者らは、従来知られていなかったLOXとアポトーシスとの間の関係の存在を見出した。したがって、得られたデータは、LOXのケラチン合成細胞における抗アポトーシス性の役割を示唆し、その役割とは、特に好アポトーシス性のタンパク質NRAGEの制御に関係している。
【0132】
5)活性成分の探索
活性成分は、特に培養ケラチン合成細胞、好ましくはヒトケラチン合成細胞上でのLOXとNRAGEのメッセンジャーRNAの発現を分析して同定した。活性を調べたい活性成分を、培養ケラチン合成細胞に適当な条件下で接触させ、接触が有効となるまで十分な時間放置する。これらの活性成分は、いろいろな濃度で試験すべきであり、このようにすることで濃度の影響がある場合にその検出が可能となる。
【0133】
本発明においては、スクリーニングに用いる活性成分には、特に化学合成に伴う問題を避けるために、好ましくは植物由来のものを用いた。 植物由来の活性成分の利点は、当業界の、特に医薬品や皮膚医薬品、栄養医薬物、化粧品業界の熟練者には公知である。
【0134】
活性成分のスクリーニングは、具体的には、トータルRNAを抽出し、定量的RT−PCRを行って実施する。特に、好ましいプライマー配列は、実施例13に示すものであるが、これらに限定されるわけではない。
【0135】
各アッセイ中のcDNAの量を、アクチンcDNAの量に対してプロットする。次いで、活性成分の存否の効果を比較する。もしNRAGE及び/又はLOXの発現及び/又は活性が、コントロールに対して変化している(刺激または阻害)場合、その物質は活性成分となりうる。好ましくは、活性成分は、LOX及び/又はNRAGEのメッセンジャーRNAの発現を少なくとも50%、またはLOX及び/又はNRAGEの発現及び/又は活性を少なくとも15%、変化させることができる。
【0136】
本発明に係る化合物は、組成物の形で、特に化粧用組成物、皮膚医薬組成物または医薬組成物の形で製造される。これらの組成物の賦形剤としては、例えば、保存料や、軟化剤、乳化剤、界面活性剤、保湿剤、増粘剤、コンディショナー、艶消し材、安定剤、酸化防止剤、テキスチャー剤、増白剤、フィルム成形剤、溶解剤、顔料、着色料、香料、太陽フィルターからなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物があげられる。これらの賦形剤は、好ましくはアミノ酸及びその誘導体、ポリグリセロール類、エステル類、セルロースポリマー類およびその誘導体、ラノリン誘導体、リン脂質類、ラクトフェリン類、ラクトパーオキシダーゼ類、ショ糖系安定剤、ビタミンEとその誘導体、天然および合成ワックス類、植物性油脂類、トリグリセリド類、不鹸化物類、植物ステロール類、植物エステル類、シリコーン類およびその誘導体、タンパク質加水分解物類.ホホバ油およびその誘導体、脂溶性/水溶性エステル類、ベタイン類、アミンオキシド類、植物エキス類、ショ糖エステル類、二酸化チタン、グリシン類およびパラベン類からなる群から選ばれ、特に好ましくは、ブチレングリコール、ステアレス−2、ステアレス−21、グリコール−15ステアリルエーテル、セテアリルアルコール、フェノキシエタノール、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、ブチレングリコール、天然のトコフェロール類、グリセリン、ナトリウムジヒドロキシセチルホスフェート、イソプロピルヒドロキシセチルエーテル、グリコールステアレート、トリイソノナノイン、ヤシ脂肪酸オクチル、ポリアクリルアミド、イソパラフィン、ラウレス−7、カルボマー、プロピレングリコール、グリセリン、ビサボロール、ジメチコン、水酸化ナトリウム、PEG−30ジポリヒドロキシステアレート、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド類.オクタン酸セタリル、ジブチルアジペート、グレープシード油、ホホバ油、硫酸マグネシウム、EDTA、シクロメチコン、ザンタンガム、クエン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、鉱物ワックス類及び油類、イソステアリルイソステアレート、プロピレングリコールジペラルゴネート、プロピレングリコールイソステアレート、PEG−8ミツロウ、水添ヤシ核グリセリド類、水添ヤシグリセリド類、ラノリン油、ごま油、セチルラクテート、ラノリンアルコール、ヒマシ油、二酸化チタン、乳糖、ショ糖、低密度ポリエチレン、等張食塩水からなる群から選ばれる。
【0137】
好ましくは、上記の組成物は、水性または油性溶液、クリーム状または水性または油性ゲル、特にポットまたはチューブ充填物、特にシャワーゲルまたはシャンプー; 乳液; エマルジョン、マイクロエマルジョンまたはナノエマルジョン、特に、水中油型または油中水型の、多成分のまたはシリコーンエマルジョン; ローション、特にガラスまたはプラスチック瓶充填物;調合ボトルまたはエアゾール;アンプル; シロップ; 液体石鹸;低アレルギー性クレンジングバー; 軟膏; 発泡体; 注射液; 無水で、好ましくは液体、ペースト状または固体状の製品、例えばスティック状、特に口紅の形態; 粉末;及び錠剤からなる群から選ばれる形態で調合される。
【0138】
添付図において:
−図1は、NRAGEタンパク質の配列と構造を示す;
−図2は、ツーハイブリッド相互作用に関して実施例2で得られた結果の平均を示す;
−図3は、再構成皮膚中のLOXとNRAGEの存在の同定を示す;
−図4は、共焦点顕微鏡によるヒト皮膚切片上のLOXとNRAGEの位置の観測結果である;
−図5は、91齢のドナーのヒト皮膚切片上のLOXとNRAGEの検出を示す;
−図6は、移植片対宿主反応の患者の皮膚上のLOXとNRAGEの検出を示す;
−図7は、基底細胞型または有棘細胞型癌の患者の皮膚上のLOXとNRAGEの検出を示す;
−図8は、扁平苔癬患者の皮膚上のLOXとNRAGEの検出を示す;
−図9は、乾癬患者の皮膚中のLOXとNRAGEの位置の同定を示す;
−図10は、湿疹患者の皮膚中のLOXとNRAGEの位置の同定を示す;
図11は、エバンスブルーを用いた再構成皮膚グローバルラベリング(表皮層:赤、細胞:青、皮膚基質繊維:赤、真皮表皮接合部:点線)を示す。
図12は、再構成の皮膚上のサイトケラチン10の免疫組織学的な検出(強い発現の細胞:赤ラベル、核:青、真皮表皮接合部:点線)を示す。
図13は、再構成の皮膚上のトランスグルタミナーゼの免疫組織学的検出(強い発現の細胞:赤ラベル、核:青、真皮表皮接合部:点線)を示す。
【0139】
本発明の他の目的や特徴、利点は、以下の実施例中の説明により、当業界の熟練者には明らかとなろう。ただし、これらは、単に説明のためのものであり本発明の範囲をなんら限定するものではない。
【0140】
これらの実施例は、本発明の不可欠な要素であり、本明細書の実施例を含むすべてに記載されている、先行技術と比較して新規ないずれの性質も、その機能及びその一般的な用途に関して、本発明の不可欠の要素を構成する。
【0141】
各実施例は、ある一般的な範囲を有している。
【0142】
また以下の実施例において、特に断りのない限り、すべての百分率は、質量ベースであり、温度は、摂氏温度であり、圧力は気圧である。
【実施例】
【0143】
実施例1:酵母ツーハイブリッド法のよるNRAGEのクローニング
本発明では、まず、ケラチン合成細胞におけるLOXの潜在パートナーを調べた。酵母ツーハイブリッド法(Y2H)を用いた。このY2H法で、「ルア」タンパク質と「標的」潜在パートナーとの間の相互作用の存在とその性質の把握が可能となる。このケースの場合、ルアは、Gai4遺伝子のDNA結合ドメイン(BD)に融合した成熟LOX領域である。一個あるいは複数の標的は、ヒトケラチン合成細胞の相補DNAライブラリによりコードされている遺伝子であり、Gal4遺伝子の活性化ドメイン(AD)に融合しているものである。ルア(LOX)のドメインとライブラリ配列でコードされているドメインとの間の相互作用により、Gal4プロモーターの結合と活性化され、AH109酵母に栄養素要求性を与える各種の遺伝子の制御可能となり、欠乏培地での成長が可能となり、ガラクトシダーゼ活性を活性化が可能となる。このように、相互作用を示すものを選定するこの方法により、LOXへの候補パートナーであるタンパク質をコードする遺伝子である、細胞内タンパク質の黒色腫関連抗原D1(MAGE−D1)またはNRAGEが同定された(図1)。
【0144】
ルアのGAL4 BD−hLOXmat(ヒト成熟LOX)を用いた、酵母ツーハイブリッド法によるケラチン合成細胞のライブラリのスクリーニング
ベクターPGAD−10中の正常ヒト皮膚ケラチン合成細胞のcDNAライブラリを用いた。このスクリーニングに選択したルアは、信号ペプチドまたはプロ領域を持たないLOX酵素のヒトcDNA領域によりコードされるLOXmatであった。この塩基配列を、ベクターPBD−Gal4 Cam中のGAL4転写因子のDNA結合ドメイン(BD)に挿入した。挿入するLOXフラグメント+494〜+1254を、PCR (ポリメラーゼ連鎖反応)で増幅し、ベクターpGal4−BDのGal4結合ドメインに、次のプライマーを用いて挿入した:
【0145】
1) ggg ate cgc atg gtg ggc gac gac (BamHIを導入)
2) ttg tcg act aat acg gtg aaa ttg tgc (保存されたストップにSalIを導入)。
【0146】
増幅されたフラグメントを、まずベクターTOPOに導入し、ついでpGal4−BDに挿入した。BD−LOXmat融合タンパク質の発現を確認するため、このAH109酵母をルアプラスミドPBD−LOXmatで形質転換させた。
【0147】
この形質転換された酵母をスクリーニングした。AH109酵母6.88 ×106cfu(欠乏培地で培養)中、アデニン、ヒスチジン、トリプトファ及びロイシン欠乏培地で成長するクローンを80種選択し、うち増殖が強い23種を保存した。
【0148】
実施例2:哺乳類ツーハイブリッド法(M2H)によるLOXとNRAGEとの間の相互作用の確認
Hela細胞にプラスミドのpActとpAct−NRAGEを移入させるとともに、別途リポフェクタミンの存在下、 pBindとpBind−LOXmatを移入させた。48時間後にルシフェラーゼ活性を試験し、その結果を、コントロールに対するルシフェラーゼ活性比率(空pBindベクター)で表した。この実験を三回繰返し、その結果の平均を図2に示した。
【0149】
実施例1で酵母ツーハイブリッドスクリーニングに使用したhLOX配列を、哺乳類用ツーハイブリッド相互作用用のpBindベクター(Promega、Madison、USA)中のGal4結合ドメインに挿入した。
【0150】
次いで、NRAGEルアをpActベクター(Promega)中のVP16Gal4活性化ドメインに挿入した。挿入は、アミノ酸152 (ヌクレオチド458)から出発する。
【0151】
実施例3:哺乳類細胞中でのLOXとNRAGEとの共免疫沈降
Cos7細胞(哺乳類腎臓上皮細胞)に、コンストラクトpcLOX32−V5His (LOX)、pcLOX36−V5HisまたはpcLOX27−V5Hisを用いて、LOX遺伝子 (ヒト完全、ヒト成熟領域及びマウス成熟領域)を共移入させ、またコンストラクトpNM3−HA (完全なNRAGE)またはpNM7−HA (IRD領域)を用いてNRAGE遺伝子を共移入させる。遺伝子の移入は、リポフェクタミンを用いて、直径が100 mmのペトリ皿中で行う。48時間後、移入後の細胞は、500μlの溶解バッファー中で溶解する。細胞溶解液中のタンパク質を、抗V5モノクローナル抗体または抗HAモノクローナル抗体とともに培養する。これらの抗V5または抗HAモノクローナル抗体は、4℃の細胞溶解液に、1/250の比率で、1時間30分かけて攪拌しながら添加する。
【0152】
このようにして形成した免疫錯体(IC)は、プロテインG−セファロースも用いて、1時間かけて4℃で振盪しながら沈殿させる。溶解バッファーで10分間の洗浄を三回繰り返し、SDS−PAGEバッファーで溶出したのち、全免疫錯体を10%SDS−PAGEゲル上で電気泳動にかけ、ウェスタンブロッティングを行う。免疫錯体をPVDF (ポリフッ化ビニリデン)膜に転写し、現像する。
−NRAGEには、1/1000希釈の抗HA抗体、次いで1/20,000希釈の抗マウス−HRP (ホースラディッシュペルオキシダーゼ)を使用する。
−LOXには、1/5000希釈抗V5−HRPを使用する。
【0153】
最終的な検出は、HRPの化学発光でおこなう。
【0154】
得られた結果は、完全な形のNRAGE(NM3−HA)が、ヒト完全LOX(LOX32H)、成熟ヒトLOX(LOX 36H)、及び成熟マウスLOX(LOX27H)と共免疫沈澱を起こすことを示す。さらに、NRAGE(NM7−HA)は、IRD領域に相当するが、同様に、これらの3つの遺伝子組み換えタンパク質と共免疫沈澱し、この領域が相互作用に関与していることを示す。
【0155】
実施例4:免疫組織化学による再構成の皮膚モデル内のLOXとNRAGEの存在の確認
正常のヒト繊維芽細胞を接種した皮膚材料(コラーゲン/グリコサミノグリカン類/キトサン、ミメディスク(R)、エンゲルハード、リヨン、フランス)で作成した再構成皮膚モデル(「ミメムスキン」、エンゲルハード、リヨン、フランス)を使用し、その表面に正常ヒトケラチン合成細胞を載せて、この確認を行う。
【0156】
気液界面に暴露してケラチン合成細胞の分化をさせながら45日間培養後、試料をブワン固定液またはホルムアルデヒドで固定し、次いでパラフィンで覆う。
【0157】
切片を、以下に述べる抗体で免疫ラベルする。
−Sommer et al. (マウス住血吸虫症における肝臓筋線維芽細胞によるリジルオキシダーゼの一時的な発現、Laboratory Investigation, 69, 460-470, 1993)に記載の方法により精製した上記抗LOX抗体、
−抗NRAGE抗体(ヤギポリクローナルIgG)
−ウサギ抗ヤギ第二抗体。
【0158】
これらの免疫錯体は、ジアミノベンジジンを基質として用い、ヘマトキシリンで後染色することにより、ペルオキシダーゼ共役型抗ウサギIgGで検出する。
【0159】
図3は、再構成皮膚上でのLOXとNRAGEの免疫組織化学的な検出を示すものである。
【0160】
真皮表皮接合部の位置を実線で、皮膚基板の位置を矢印で、ケラチン合成細胞の位置を矢じりで示す。
【0161】
LOXの発現は、基底細胞層から上方に認められ、基底上細胞層には存在するが、分化した層ではどんどん消失していく。 NRAGEの発現は少しシフトしている。これは、非増殖性基底上細胞層から上方に発現し、顆粒層及び角質層で大きく増加し、ここではLOXは発現されていない。
【0162】
これらのタンパク質は、再構成皮膚のマイムスキン(R)モデルの表皮の非増殖性基底上細胞層に、付随している。正常のヒト皮膚上でも、免疫組織学(IH)的にこの共存が確認された。
【0163】
本発明者らは、LOXとNRAGEタンパク質が、表皮中で、有棘細胞層中の共存位置ゾーンで発現されていることを示した。
【0164】
実施例5:共焦点顕微鏡法による正常ヒト皮膚中のLOXとNRAGEとの共存の確認
手術的に切除して得た正常ヒト皮膚試料(包皮)の凍結切片を調整した。
実施例4の抗LOXと抗NRAGEの第一抗体を用いて、LOXとNRAGEの発現を検出した。
【0165】
使用した第二の抗体は以下の通りである:
−ロバ抗ウサギIgG−FlTC、緑フルオレセインラベル用、
−ロバ抗ヤギIgG−R、赤ローダミンラベル用。
【0166】
第一抗体の非存在下で、ネガティブコントロールを調整した。
【0167】
二重ラベリングを、ZEISS AXIOPLAN 2 LSM510共焦点直立顕微鏡を用いて観察した。なお、画像は、画像ブラウザソフトウェアのZEISS LSM5を用いて獲得した。
【0168】
図4は、共焦点顕微鏡法による正常のヒト皮膚中のLOXとNRAGEの免疫検出を示す。
【0169】
この観察により、実施例4の結果が確認され、正常のヒト皮膚の表皮の有棘細胞層におけるLOXとNRAGEとの共存とLOXとNRAGEのほぼ完全な並列発現が示された。細胞レベルでの観察の結果、LOXとNRAGEが細胞の周辺(周辺亜膜性ゾーン)に現れ、NRAGEは細胞質にも出現することが明らかとなった。
【0170】
したがって、本発明者らは、インビトロで認められる直接相互作用の条件を、双方のLOXとNRAGEの両方が存在するゾーンの表皮中において満たすことができることを示した。
【0171】
実施例6:年齢の異なる人の皮膚中のLOXとNRAGEの位置の確認
異なる年齢グループ(20才未満と60才を超える)に属する人の皮膚の切片を用いて、実施例4に記載の方法による免疫組織学的な検討を行った
図5は、91才のドナーの皮膚で実施したラベリングを示す。この観察結果は、非常に薄い低増殖性の表皮(数枚の細胞層まで減少)と高ケラチン化を示している。
本発明者らは、LOXが全く存在しない(使用した方法で検出可能な量)ことを見出した。他方、NRAGEは強く発現されており、細胞質にまた第一基底上細胞層から上方に発現の傾斜なしに存在していた。
【0172】
実施例7:移植片対宿主反応(GVH)の患者の皮膚中のLOXとNRAGEの検出
実施例4に記載の方法により移植片対宿主反応(GVH)の患者のヒト皮膚の切片を用いて免疫組織学的検討を行った。この試験には5人の異なるドナーが参加した。
【0173】
図6は、表皮中でのほほ完全なLOXの消滅(真皮における発現は不変)と細胞質及び第一基底上細胞層から上方における非常に多量のNRAGEの存在とを示している。
【0174】
実施例8:基底細胞型癌と有棘細胞型癌の患者の皮膚中のLOXとNRAGEの検出
実施例4に記載の方法により基底細胞癌または有棘細胞癌を呈する患者の皮膚試料を用いて免疫組織学的研究を行った。
【0175】
図7は、両種の癌において次のことを示している:
−腫瘍の周辺の表皮中でのLOXとNRAGEの発現の漸減
−表皮の侵襲性の細胞中におけるLOXとNRAGEの非存在、
−腫瘍の周囲の皮膚の間質反応におけるLOXの強固な発現、
−腫瘍の周囲の皮膚の間質反応におけるNRAGEの非存在。
【0176】
実施例9:扁平苔癬患者の皮膚中のLOXとNRAGEの検出
実施例4に記載の方法により扁平苔癬の患者三人の皮膚の切片を用いて免疫組織学的研究を行った。
【0177】
図8に、表皮中でのLOXの発現の大幅な減少または完全な消失が示されている。この変動は表皮中でのNRAGEの発現の変動と対応している。
【0178】
実施例10:乾癬患者の皮膚におけるLOXとNRAGEの位置の特定
実施例4に記載の方法により乾癬患者五人の皮膚切片を用いて免疫組織学的研究を行った。
【0179】
図9に、観察したすべての切片を示すが、表皮中でのLOXの非常に強固な発現とNRAGEのいくらかの存在が認められる。また、当該ゾーンはかなり均一にラベリングされており、発現の傾斜は認められない。発現強度が通常の値から反れるというこのような特徴は、問題のタンパク質の位置に影響を与えるもっと重要な異常と関連している。したがって、乾癬の皮膚の場合、LOXは特に表皮の下方部分で殆ど発現され、NRAGEは上方部分で発現されるが、これらのタンパク質の発現は、健全な皮膚では通常認められる重複ゾーンなしにシフトする。細胞レベルでは、NRAGEは細胞質のみに観測され、周辺の亜膜性ゾーンには観測されない。
【0180】
実施例11:湿疹患者の皮膚におけるLOXとNRAGEの位置の特定
実施例4に記載の方法により湿疹患者の皮膚を用いて免疫組織学的研究を行った。
【0181】
図10では、表皮の細胞周囲での非常に強固なLOXの発現が認められる。他方、NRAGEの発現は弱く、細胞質のみに観測される。このことは、細胞レベルでこれらが共存しなくなっていることを反映している。
【0182】
実施例12:アポトーシスの阻害に対するLOXの関与の特定
試験は、コンフルエンス状態の分化ヒトケラチン合成細胞の単層培養上で行った。通常条件下又は好アポトーシス性条件(45℃±0.5℃の温度に1時間30分暴露の熱ショック)下で、β−APN (0.02%w/v(重量/体積))を添加して活性を阻害することでLOXのアポトーシスに与える影響を特定した。
【0183】
アポトーシスによる細胞死を、TUNEL法(末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ仲介dUTPニック末端標識)を用いて検出・定量した。なお、この方法は、アポトーシスを伴うDNA欠失の標識によるものである。
【0184】
第一段階では、DNA切断箇所をTdTで標識する(末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ、DNAの遊離の3’OH末端にフルオレセインで標識をしたヌクレオチドを重合する反応を触媒する)。第二段階では、フルオレセインにアルカリフォスファターゼ共役型抗フルオレセイン抗体を加えて培養することでフロオレセインを検出する。
【0185】
この実験は、DNAをDNase溶液でフラグメント化して得られるポジティブコントロールとリン酸緩衝液に添加したネガティブコントロールとを用いて確認される。
【0186】
得られた結果を、以下の表に示す。
【0187】
【表1】

【0188】
この結果は、次のことを示している。
−熱ショック(45℃±0.5℃、1時間30分)が大きく細胞のアポトーシスを誘導する。
−p−APNによるLOXの酵素活性の阻害によりアポトーシスが大きく増加する。
【0189】
これらの結果は、LOX活性の抗アポトーシス的な効果を示している。
【0190】
実施例13:カルシウム培地中での培養における活性を試験する活性成分の接触の有無とは無関係に、分化ケラチン合成細胞によるLOXとNRAGEメッセンジャーRNAの発現の分析(分析は、例えば定量的RT−PCRと活性成分のスクリーニングで実施)
これらの活性成分は、若い被験者の正常ヒト包皮のケラチン合成細胞 (正常のヒト包皮の表皮ケラチン合成細胞のコレクション、クローンチクス)を用いて試験した。
【0191】
これらのケラチン合成細胞を、抗生物質を添加したK−SFM (ケラチン合成細胞無血清培地)中で37℃、5%のCO2下で三回増幅する。
細胞は、例えば96ウェル板上で培養し、40,000細胞/cm2の濃度から約80%コンフルエンスまで培養する。これらの細胞は、高カルシウム培地(1.7mM−CaCl2、37℃、5%のCO2)で培養し、細胞分化を誘導した。
【0192】
活性成分を調整するのに使用した出発原料が植物(好ましくは、根、茎、皮、花、果実、種子、胚、樹脂、浸出物、葉または植物全体)またはタンパク質の場合は、放射線、例えばベータ線またはガンマ線で、好ましくは5kGyの用量で滅菌してもよく、また滅菌しなくてもよく、その後、必要なら、例えば室温で粉砕して粉末としてもよい。この粉末を、2〜5%(重量)、好ましくは5%の濃度で、水またはブチレングリコールなどの極性溶媒及び/又は極性溶媒の混合物中に、好ましくは水とアルコールグリコールまたはポリオール(例えば、エタノール、グリセリン、ブチレングリコール、他のグリコール、キシリトール等)との任意の比率の混合物中に、更に好ましくは、75/25または50/50の比率の水/ブチレングリコール混合物、またはアルカンなどの非極性溶剤、非極性溶剤の混合物、または極性溶媒と非極性溶剤の混合物中に分散する。少なくとも2時間、攪拌、例えば磁気攪拌後、試料を、デカンテーションまたは遠心分離で清澄化させ、好ましくは0.45μmまたは0.22μmのフィルターで濾過する。
【0193】
活性成分の調整に使用した出発原料が組成のはっきりとした分子(例えば、合成分子または半合成分子、精製して得られた生体内分子)である場合は、溶剤に、好ましくは水またはスルホキシドに溶解する(濃度は、その分子にもよるが、好ましくは106M〜102Mで、特に好ましくは104Mのオーダー、または好ましくは1重量%〜5重量%)。 得られた溶液は、次いで好ましくは0.45μmまたは0.22μmフィルターで濾過する。
【0194】
上記の方法のいずれかにより得られた活性成分は、最終濃度が好ましくは0.01%体積/体積(v/v)〜10% (v/v)、好ましくは0.1%〜1% (v/v)、例えば1%(v/v)で試験される。
【0195】
細胞存在下の培養は、好ましくは、高カルシウムK−SFM中で無増殖因子で24時間実施される。この細胞をリン酸緩衝液pH 7.4で洗浄後、−80℃で凍結乾燥する。
トータルRNAの抽出
トータルRNAは、SVトータルRNA分離システム(プロメガ、メラン、フランス)を用い、 製造業者の方法に準じて、96ウェル板条件で抽出した。
【0196】
遺伝子の発現は、各遺伝子のアクチン(ハウスキーピング遺伝子)に対する相対的発現量を測定し、未処理ネガティブコントロールの%で表示し、リアルタイムRT−PCRで調整した。
【0197】
定量リアルタイムRT−PCR(Q−RT−PCR)
5ng/μlで10μlのトータルRNAを、40μlのPCRミックス(25μlのSYBRグリーンバッファーミックス2×、0.5μlの酵素ミックス、最終濃度が0.5μMのセンスプライマーと、最終濃度が0.5μMのアンチセンスプライマーと、RNaseとDNaseを含まない水からなる、合計:40μl)に添加する。
【0198】
RT−PCRは、50℃、30分のレトロ転写、95℃、15分のポリメラーゼ活性化、及びPCRサイクルの実施(95℃、15秒; 60℃、30秒; 72℃、30秒)×50サイクルからなる異なるステップで進行する。
【0199】
融合曲線の作成
90℃、1分
30℃、1分
50℃〜95℃、10 s/℃(融合曲線)
刺激率または阻害率(百分率)は、未処理のコントロール(試験物質の非存在下)に対するものである。
【0200】
アクチン遺伝子−ハイブリダイゼーション60℃
センス:GTGGGGCGCCCCAGGCACCA
アンチセンス:CTCCTTAATGTCACGCACGATTTC
LOX遺伝子−ハイブリダイゼーション60℃
センス:ACGTACGTGCAGAAGATGTCC
アンチセンス:GGCTGGGTAAGAAATCTGATG
NRAGE遺伝子−ハイブリダイゼーション60℃
センス:TGCACAGACATCAGCAGATGG
アンチセンス:TTCACGGATGATATCTCTCAGC
インボルクリン遺伝子−ハイブリダイゼーション60℃
センス:TGTTCCTCCTCCAGTCAATACCC
アンチセンス:ATTCCTCATGCTGTTCCCAGTGC
【0201】
存在する細胞集団を考慮して、すべての結果は、ハウスキーピング遺伝子として用いた「アクチン」信号と比較した。実験によっては、C(T)の測定閾値(サイクル閾値)は、Tが0.05〜0.01の値に固定した。また、各々の遺伝子に対する測定単位は、下記式により求めた。

Sgene<<X>>107 ×(1/2)C(T)gene<<X>>

C(T)gene<<X>>は、遺伝子<<X>>が蛍光閾値の0.01〜0.05に達するのに必要なサイクル数を表す。
【0202】
これらの対象遺伝子の数値は、次の比率で計算した「アクチン」信号と比較した。

R = Sgene<<X>>/Sactin
【0203】
これらの比率を、処理品と未処理品とで比較した。ただし、<<X>>は、アクチン、LOXまたはNRAGE遺伝子である。
【0204】
活性成分のスクリーニング
【0205】
各アッセイのcDNAの量を、アクチンcDNAの量、またさらにネガティブコントロール(活性成分を含まない)と比較する。測定された効果が約2倍に達する場合、この結果はかなり大きいと考えられる。調べた120種の活性成分のうち、3種が試験濃度で本条件下のこれらの基準を満たした。これらの活性成分を下の表に示す。
【0206】
【表2】

【0207】
好ましくは、このマオウエキスは、植物全体の抽出によるものであり、特に水または水/ブチレングリコール混合物(例えば、75/25または50/50)、好ましくは水などの極性溶媒で抽出したものであることが好ましい。
このホップエキスは、球果を、特に水または水/ブチレングリコール混合物(75/25または50/50)、好ましくは水などの極性溶媒で抽出したものが好ましい。
【0208】
このダイズエキスは、種子を、特に水またはa水/ブチレングリコール混合物(75/25または50/50)、好ましくは水などの極性溶媒で抽出したものが好ましい。
【0209】
結論
本条件下で考察した120種の活性成分の中で、
−1活性成分は、 NRAGEとLOXをコードする遺伝子のmRNAの合成速度を大きく増加させることができる。
−1活性成分は、NRAGEをコードする遺伝子のmRNAの合成速度をかなり大きく増加させることができるが、LOXをコードする遺伝子には効果がない。
−また、1活性成分は、LOXをコードする遺伝子のmRNAの合成速度をかなり大きく増加させるが、NRAGEをコードする遺伝子には効果がない。
【0210】
この研究により、増殖と分化とアポトーシスのバランスを、少なくともケラチン合成細胞でのそれを調整することのできる活性成分の選択が可能となった。
【0211】
マオウエキスは、例えば癌、好ましくは皮膚上皮癌(基底細胞または有棘細胞)、または扁平苔癬などの疾患の治療に使用でき、また場合によっては、特定の皮膚のGVHの症状の治療や皮膚の加齢効果の低下に使用できる。
【0212】
ダイズエキスは、皮膚上皮癌(基底細胞または有棘細胞)などの癌、GVHまたは扁平苔癬のなどの疾患の治療に使用でき、また加齢の治療予防に使用できる。ダイズエキスは、特に細胞の過剰増殖の治療に使用できる。
【0213】
ホップエキスは、例えば、皮膚上皮癌(基底細胞のまたは有棘細胞)などの癌や湿疹または乾癬なとの疾患の治療に使用できる。ホップエキスは特に、細胞の増殖低下の治療に使用できる。
【0214】
ダイズエキスとホップエキスは、皮膚上皮癌(基底細胞または有棘細胞)などの癌または苔癬などの疾患の治療に併用できる。
【0215】
ダイズエキスとマオウエキスは、皮膚上皮癌(基底細胞のまたは有棘細胞)などの癌や扁平苔癬の治療に併用できる。
【0216】
ホップエキスとマオウエキスは、例えば皮膚上皮癌(基底細胞のまたは有棘細胞)などの癌や扁平苔癬などの疾患の治療に併用できる。
【0217】
実施例14:定量的RT−PCRによる、カルシウム分化中のケラチン合成細胞上でのNRAGEとLOXのメッセンジャーRNAの発現の速度論的解析と活性成分の発現速度に及ぼす影響
80%コンフルエンスで細胞を得るのに使用した実験条件は、実施例13に記載のものと同じである。カルシウム(1.7mMのCaCl2)と活性成分の存在下で分化が起こる。分析は、培養2日、3日及び4日後にQ−RT−PCR (実施例13に記載の方法)で行った。
【0218】
このようにして、他の九種の物質を試験した。そのうちの一つのシナモンエキスは、検討した実験条件下では、LOXとNRAGEの両方に対して阻害した。
【0219】
【表3】

【0220】
好ましくは、このシナモンエキスは、茎の抽出、特に水または水/ブチレングリコール混合物(75/25または50/50)、好ましくは水などの極性溶媒で抽出して得る。
【0221】
結論
シナモンエキスは、例えば、乾癬などの疾患の治療に使用できる。
【0222】
シナモンエキスとダイズエキス(その効果は前記実施例で検出)は、例えば、特定の皮膚のGVHの症状、湿疹または乾癬等の疾患の治療や、または皮膚の加齢効果の低下に併用できる。
【0223】
実施例15:試験対象の活性成分との接触に有無とは無関係に、カルシウム分化非存在下での培養におけるケラチン合成細胞によるLOXメッセンジャーRNAの発現の解析(例えば定量RT−PCRと活性成分スクリーニングによる分析)
手術的切除によるヒト生検の酵素抽出により若い被験者から得た正常のヒトケラチン合成細胞を用い、抗生物質を添加したK−SFM培地(ケラチン合成細胞血清を含まないサプリメント含有培地)中で、37℃、5%のCO2下で、単層として培養したものを用いて活性成分を試験した。
【0224】
この細胞を、24−ウェル板上で、例えば30000細胞/cm2から約95%コンフルエンスまで二回培養する。試験対象の活性成分の接触前に、細胞層を、リン酸緩衝液pH7.4、好ましくはカルシウム及びマグネシウム添加緩衝液で、または抗生物質以外のサプリメントを含まないK−SFM培地で希釈した参照ポジティブコントロールで洗浄する。
【0225】
いろいろな起源の活性成分(例えば、植物性、バイオテクノロジー由来または合成分子)を、0.1%体積/体積(v/v)〜1%(v/v)で試験した。植物由来の活性成分は、例えば1%(v/v)で、合成分子は、例えば0.1%(v/v)で試験した。
【0226】
特に、植物性由来の活性成分は、溶剤または溶媒混合物に、好ましくは100:0〜0:100の水/(アルコール、グリコールまたはポリオール) (例えば、エタノール、グリセリン、ブチレングリコール、他のグリコール、キシリトール等)混合物に、植物(好ましくは根、根茎、茎、皮、花、果実、種子、胚または葉)を2〜5%(w/w)で浸漬することで得られるエキスである。この得られたエキスから濾過又は蒸留により可溶性画分を得て、さらに好ましくは0.45μmで濾過する。バイオテクノロジー的加水分解物は、微生物の存在下で、好ましくは乳酸桿菌またはサッカロミセス族の微生物の存在下で植物エキスを発酵することで得られる。これらの加水分解物は、好ましくは0.45μmのフィルターで濾過する。
【0227】
培養は、好ましくは抗生物質を含み増殖因子を含まないK−SFM培地中で、37℃、5%のCO2下で24時間実施する。ネガティブコントロールは、培養培地そのもの、または試験エキスを抽出の方法に用いた溶媒を0.1% (v/v)〜1% (v/v)含む培養培地である。細胞分化の誘導に用いられる参照のポジティブコントロールは、塩化カルシウム溶液(CaCl2:最終濃度:1.7mM)である。
【0228】
未処理の細胞(NTコントロール)は、pH7.4のリン酸緩衝液で洗浄後 −80℃で凍結乾燥する。活性生物またはコントロールの存在下に24時間処理後、細胞sをpH7.4のリン酸緩衝液で洗浄後 −80℃で凍結乾燥する。
【0229】
トータルRNAの抽出
トータルRNAは、SVトータルRNA分離システム(プロメガ、メラン、フランス)を用いて、製造業者の方法に準じて24ウェル板の条件で抽出した。
【0230】
遺伝子発現の調整を、アクチン(ハウスキーピング遺伝子)に対する各遺伝子の相対発現量を測定して、未処理のネガティブコントロール(IST)の%で表示して、リアルタイムRT−PCRにより行った。
【0231】
定量リアルタイムRT−PCR(Q−RT−PCR)
10μlの5ng/μl濃度のトータルRNAを、40μlのPCRミックス(25μlのSYBRグリーンバッファーミックス2×、0.5μlの酵素ミックス、最終濃度が0.5μMのセンスプライマーと最終濃度が0.5μMのアンチセンスプライマーと、RNAseとDNaseを含まない水からなり、合計:40μl)に添加した。
【0232】
RT−PCRは、50℃、30分のレトロ転写と、95℃、15分のポリメラーゼ活性化、PCRサイクル(95℃−15秒、60℃−30秒、72℃−63秒、78℃−30秒)×50サイクルをからなる異なる工程で実施した。
【0233】
溶融曲線の作成
90℃、1分
30℃、1分
50℃ 〜 95℃、10秒/℃ (溶融曲線)
【0234】
使用したプライマー:
アクチン遺伝子−ハイブリダイゼーション、60℃
センス:GTG GGG CGC CCC AGG CAC CA
アンチセンス:CTC CTT AAT GTC ACG CAC GAT TTC
LOX遺伝子−ハイブリダイゼーション、60℃
センス:ACG TAC GTG CAG AAG ATG TCC
アンチセンス:GGC TGC GTA AGA AAT CTG ATG
【0235】
存在する細胞集団を考慮して、すべての結果は、ハウスキーピング遺伝子として用いた「アクチン」信号と比較したものである。実験により、0.05〜0.01のTに対する閾値C(T)(サイクル閾値)を決定し、次いで、各遺伝子に対する任意の測定単位を次式により求めた:

Sgene“LOX”107×(1/2)C(T)gene“LOX”
【0236】
なお、C(T)gene“LOX”は、“LOX”遺伝子の蛍光閾値が0.01〜0.05に達するのに必要なサイクル数を意味する。
これらの対象遺伝子の値は、次式で求めた「アクチン」信号に対する相対比率である。

R = Sgene“LOX”/ Sactine

これらの比率は、処理物と未処理物間で比較した。
【0237】
活性成分のスクリーニング
各試験のcDNA量は、アクチンのcDNA量に対する相対値であり、またネガティブコントロール(NT)に対する相対値である。測定効果が約2倍(刺激)または0.5倍(阻害)の変動である場合、この結果は大きいと考える。試験した60種の活性成分のうち、30種は、上記の条件下でこの基準に合致する。これらの活性成分は、次のようなもので、次式にまとめる。
【0238】
【表4】

【0239】
結論
考慮した条件下では、手持ちの60種の活性成分中で、
−3種の活性成分が、LOXをコードする遺伝子のmRNAの合成速度を大きく阻害することが可能であった。
−28種の活性成分は、LOXをコードする遺伝子のmRNAの合成速度を大幅に増加させることが可能であった。
【0240】
この研究で、増殖と分化とアポトーシスの平衡を、少なくともケラチン合成細胞レベルで変化させることが可能な活性成分を選択することができた。
【0241】
実施例16:再構成皮膚モデルにおける、活性を調べたい活性成分との接触の有無による、表皮の分化/増殖/恒常性の調節に関与するタンパク質の発現の組織学的分析(マオウエキスで例示)
正常のヒト繊維芽細胞を接種した皮膚の基質(コラーゲン/グリコサミノグリカン/キトサン(MIMEDISK(登録商標)、エンゲルハード、リヨン、フランス)から調整した再構成皮膚モデル(MIMESKIN(登録商標)、エンゲルハード、リヨン、フランス)において、増殖または分化のラべリングを行った。なお、表面に接種した細胞は、手術的切除で得た生検を酵素処理して抽出して得た正常ヒトケラチン合成細胞である。
【0242】
この再構成皮膚モデルは、特に次の方法により調整した:
0.5〜1.106個の正常ヒト皮膚の繊維芽細胞をコラーゲン/グリコサミノグリカン/キトサンからなるマトリックス基質に接種し、ある栄養培地、例えば10%コウシ血清、アスコルビン酸、好ましくは最終濃度で1mM; EGF(表皮成長因子)、好ましくは最終濃度で10ng/ml:ノルモシン、好ましくは最終濃度で100μg/mlを含むDMEM−グルタマックス中で21日間培養した。
【0243】
0.5〜1.106個の正常ヒト皮膚の繊維芽細胞を、この皮膚等価物に接種し、栄養培地、例えばコウシ血清、アスコルビン酸、好ましくは最終濃度が1mM; EGF(表皮の増殖因子)、好ましくは最終濃度が10ng/ml;ハイドロコルチゾン、好ましくは最終濃度が0.4/μg/ml;ウムリン、好ましくは最終濃度が0.12IU/ml;イスプレル、好ましくは最終濃度が0.4μg/mg;トリヨードチロニン、好ましくは最終濃度が2.10-9M;アデニン、好ましくは最終濃度が24.3μg/ml;ノルモシン、好ましくは最終濃度が100μg/mlを含むDMEM−グルタマックスとHam F−12の混合培地(比率:3:1v/v)中で培養した。浸漬条件下で、培養を7日間継続した。その後、コウシ血清、ハイドロコルチゾン、イスプレル、トリヨードチロニン、ウムリン以外は上記の浸漬培養と同一である培地を用いて、培養物を、気液界面においてさらに14日間培養した。
【0244】
活性成分(マオウエキス)は、好ましくは上述の培養培地にそれぞれ0.5と1%で希釈して、繊維芽細胞とケラチン合成細胞の接種後それぞれ3日後から使用する(即ち、3〜21日目と24〜42日目)。ポジティブコントロールとしては、好ましくは、表皮の分化を刺激するため、再構成皮膚が出現する段階で(即ち、28〜42日目)、塩化カルシウムを最終濃度1.5mMで添加する。
【0245】
培養終了後、試料を凍結し、感熱性樹脂と混合し、5μmに凍結切断した。
切片のラベリングは、以下の試薬を使用して実施した:
−ヒト第一抗トランスグルタミナーゼ抗体
−ヒト第一抗サイトケラチン10抗体
−アレクサフルオール共役第二抗体
−エバンスブルー
−Dapi
【0246】
免疫ラベリングは、光子顕微鏡(アキオスコープ2プラス−ツァイス、ドイツ)で観察し、トランスグルタミナーゼ免疫ラベリングの定量を、画像解析(ルシア−ニロン、フランス)で行って、活性成分処理の効果を評価した(ホルム・サイダック統計検定、p<0.01)。
【0247】
【表5】

【0248】
これらの結果は、この活性成分が、一定の容量効果関係でもって、ポジティブコントロールと同じタイプの表皮分化を誘導することを示している。実際、処理された皮膚では、トランスグルタミナーゼを発現するケラチン合成細胞層の数、特にいわゆる顆粒層中で発現するケラチン合成細胞層の数が増加している。また、表皮部拡大図に示されるように、得られたラベリングはより強く、また輪郭がはっきりしている。定量結果は、処理後、特に1%活性成分濃度での処理後(2回誘導)に、このタンパク質の誘導が起こっていることを示している。
【0249】
図11に、エバンスブルーを用いた再構成皮膚のグローバルラベリングの結果を示す(赤の表皮層、青の細胞、赤の皮膚基質の繊維、点線の真皮表皮接合部)。
【0250】
これらの結果は、ある容量効果関係でもって、この活性成分がポジティブコントロールと同じタイプの表皮分化を誘導することを示している。実際、処理された皮膚では、トランスグルタミナーゼを発現するケラチン合成細胞層の数、特にいわゆる顆粒層中で発現するケラチン合成細胞層の数が増加が認められる。また、マオウエキスで処理した皮膚では、繊維芽細胞密度に興味ある効果が認められた。
【0251】
図12は、再構成皮膚上でのサイトケラチン10の免疫組織学的な検出の結果を示している(細胞は濃赤色ラベル、核は青、真皮表皮接合部は点線で示す)。
【0252】
これらの結果は、この活性成分が、一定の容量効果関係でもって、ポジティブコントロールと同じタイプの表皮分化を誘導することを示している。実際、処理された皮膚では、トランスグルタミナーゼを発現するケラチン合成細胞層の数、特にいわゆる顆粒層中で発現するケラチン合成細胞層の数が増加している。
【0253】
図13は、再構成皮膚上でのトランスグルタミナーゼの免疫組織学的な検出結果を示している(細胞は濃赤ラベル、核は青、真皮表皮接合部は点線で示す)。
【0254】
実施例17:本発明の製品の水中油エマルジョン型の化粧用のまたは医薬用製剤としての利用
【0255】
製剤17a:

A 水 合計100
ブチレングリコール 2
グリセリン 3
ナトリウムジヒドロキシセチルホスフェート 2
イソプロピルヒドロキシセチルエーテル

B グリコールステアレートSE 14
トリイソノナノイン 5
ココア脂肪酸オクチル 6

C ブチレングリコール、メチルパラベン、 2
エチルパラベン、プロピルパラベン、
pH、5.5に調整

D 本発明の製品 0.01 〜 10%
【0256】
製剤17b:

A 水 合計100
ブチレングリコール 2
グリセリン 3
ポリアクリルアミド、イソパラフィン、 2.8
ラウレス−7

B ブチレングリコール、メチルパラベン、 2
エチルパラベン、プロピルパラベン
フェノキシエタノール、メチルパラベン、 2
プロピルパラベン、ブチルパラベン、
エチルパラベン
ブチレングリコール 0.5

D 本発明の製品 0.01 〜 10%
【0257】
製剤17c:

A カルボマー 0.50
プロピレングリコール 3
グリセリン 5
水 合計で100

B ヤシ脂肪酸オクチル 5
ビサボロール 0.30
ジメチコン 0.30

C 水酸化ナトリウム 1.60

D フェノキシエタノール、メチルパラベン、 0.50
プロピルパラベン、ブチルパラベン、
エチルパラベン

E 香料 0.30

F 本発明の製品 0.01 〜 10%
【0258】
本発明の実施例18:油中水型の本発明の製剤の利用

A PEG−30 ジポリヒドロキシステアレート 3
カプリン酸トリグリセリド 3
オクタン酸セテアリル 4
ジブチルアジペート 3
グレープシード油 1.5
ホホバ油 1.5
フェノキシエタノール、メチルパラベン、 0.5
プロピルパラベン、ブチルパラベン、
エチルパラベン

B グリセリン 3
ブチレングリコール 3
硫酸マグネシウム 0.5
EDTA 0.05
水 合計で100

C シクロメチコン 1
ジメチコン 1

D 香料 0.3

E 本発明の製品 0.01 〜 10%
【0259】
本発明の実施例19:シャンプーまたはシャワーゲル型製剤の本発明の製品の利用

A ザンタンガム 0.8
水 合計で100

B ブチレングリコール、メチルパラベン、 0.5
エチルパラベン、プロピルパラベン
フェノキシエタノール、メチルパラベン、 0.5
プロピルパラベン、ブチルパラベン、
エチルパラベン

C クエン酸 0.8

D ナトリウムラウレススルフェート 40.0

E 本発明の製品 0.01〜10%
【0260】
本発明の実施例20:口紅型製剤や他の無水製品の本発明の製品の利用

A 鉱物ワックス 17.0
イソステアリルイソステアレート 31.5
プロピレングリコールジペラルゴネート 2.6
プロピレングリコールイソステアレート 1.7
PEG−8ミツロウ 3.0
水添パーム核油 3.4
グリセリド、
水添ヤシ油グリセリド
ラノリン油 3.4
ごま油 1.7
セチルラクテート 1.7
鉱油、ラノリンアルコール 3.0

B ヒマシ油 合計で100
二酸化チタン 3.9
Cl 15850:1 0.616
Cl 45410:1 0.256
Cl 19140:1 0.048
Cl 77491 2.048

C 本発明の製品 0.01〜5%
【0261】
本発明の実施例21:水性ゲル製剤(アイ・コンチュアゲル、スリムゲル等)の本発明の製品の利用

A 水 合計で100
カルボマー 0.5
ブチレングリコール 15
フェノキシエタノール、メチルパラベン、 0.5
プロピルパラベン、ブチルパラベン、
エチルパラベン

B 本発明の製品 0.01〜10%
【0262】
本発明の実施例22:三エマルジョン型製剤の本発明の製品の利用

第一エマルジョンW1/O
A PEG−30ジポリヒドロキシステアレート 4
カプリル酸トリグリセリド 7.5
イソヘキサデカン 15
PPG−15ステアリルエーテル 7.5

B 水 65.3

C フェノキシエタノール、メチルパラベン. 0.7
プロピルパラベン、ブチルパラベン、
エチルパラベン

第二エマルジョンW1/O/W2

A 第一エマルジョン 60

B ポロキサマー407 2
フェノキシエタノール、メチルパラベン、 0.3
プロピルパラベン、2−ブロモ−2−
ニトロプロパン−1,3−ジオール
水 合計で100

C カルボマー 15

D トリエタノールアミン pH 6.0〜6.5
【0263】
本発明の実施例23:本発明の製品を含む医薬製剤の調整

製剤23a:錠剤の調整
A 賦形剤 錠剤当たり
乳糖 0.359
ショ糖 0.240

B 本発明の製品* 0.001〜0.1
*本発明の製品は、実施例13に記載の抽出方法と続く乾燥工程により得られたものである。
【0264】
製剤23b:軟膏の調整

A 賦形剤
低密度ポリエチレン 5.5
流動パラフィン 合計で100

B 本発明の製品* 0.001〜0.1
*本発明の製品は、実施例13に記載の抽出方法と続く乾燥工程により得られたものである。
【0265】
製剤23c:注射剤の調整

A 賦形剤
等張食塩水 5ml

B 本発明の製品* 0.001〜0.1g
*本発明の製品は、実施例13に記載の抽出方法と続く乾燥工程により得られたものである。
【0266】
実施例24:本発明の対象を含む製剤の化粧品としての適性の評価
実施例2のようにして得られた化合物を0.5%キサンタンゲルに10%の濃度で添加して、その毒性試験を、ウサギでの接眼評価や、ラットでの単一経口投与による異常毒性の不在の評価、モルモットによる感作の評価により行った。
【0267】
ウサギにおける主皮膚刺激の評価:
「皮膚に対する急性の刺激腐食作用」の試験に関するOECD指令で推奨の方法により、上述の製剤を希釈せずに、0.5mlの量でウサギの皮膚に塗布する。
【0268】
これらの製品は、OJRF(21/02/82)に記載の指令1/2/1982に定義される基準に従って評価分類した。
【0269】
この結果、本発明の製品が皮膚に対する刺激性を有さないという結論となった。
【0270】
ウサギにおける眼球刺激の評価:
「眼に対する急性刺激腐食作用」に関するOECD指令No. 405(24 February 1987)で推奨する方法により。上述の製剤を、三匹のウサギの眼に0.1mlの量で一回投与した。
【0271】
この試験の結果、そのままあるいは希釈して使用する場合、指令91/326 EECにおいて、眼に対して非刺激的であると考えられるという結論となった。
ラットにおける単一経口投与による異常毒性の欠如の試験:
OFCD指令No. 401(1987年2月24日)をもとに化粧品用に採用された方法により、上記の製剤を5g/kg体重の用量で5匹のオスラットと5匹のメスラットに単一経口投与した。
LD0とLD50は、それぞれ5000mg/kgより大きかった。試験した製剤は、摂取が危険な製剤には分類されなかった。
【0272】
モルモットにおける皮膚の感作性の評価:
上記の製剤を、マグヌソンとクリグマンの方法、即ちOECD指令No.406の方法による感作性試験に供した。
【0273】
これらの製剤は、皮膚と接触しても感作性がないと分類された。
【図面の簡単な説明】
【0274】
【図1】図1:NRAGEタンパク質の配列と構想(ニューロトロフィン−レセプター共役MAGE同属体またはMAGE D1)
【図2】図2:哺乳類用のツーハイブリッド相互作用
【図3】図3:再構成の皮膚中のLOXとNRAGEの存在の確認(対物レンズ×25)
【図4】図4:共焦点顕微鏡によるヒト皮膚切片上のLOXとNRAGEの共存
【図5】図5:ヒト皮膚切片(91歳ドナー)上のLOXとNRAGEの免疫検出
【図6】図6:移植片対宿主反応(GVH)患者のLOXとNRAGEの検出
【図7】図7:基底細胞癌及び有棘細胞型癌の患者の皮膚中のLOXとNRAGEの検出
【図8】図8:扁平苔癬患者の皮膚中のLOXとNRAGEの検出
【図9】図9:乾癬患者の皮膚中のLOXとNRAGEの同定
【図10】図10:湿疹患者の皮膚中のLOXとNRAGEの同定
【図11】図11に、エバンスブルーを用いた再構成皮膚のグローバルラベリングの結果を示す(赤の表皮層、青の細胞、赤の皮膚基質の繊維、点線の真皮表皮接合部)。
【図12】図12は、再構成皮膚上でのサイトケラチン10の免疫組織学的な検出の結果を示している(細胞は濃赤色ラベル、核は青、真皮表皮接合部は点線で示す)。
【図13】図13は、再構成皮膚上でのトランスグルタミナーゼの免疫組織学的な検出結果を示している(細胞は濃赤ラベル、核は青、真皮表皮接合部は点線で示す)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
増殖と分化とアポトーシスの細胞現象の間のバランスを制御するために、特にこれらの現象の間のバランスが崩れている場合に、また特にLOXとNRAGEとの間の相互作用が欠乏しているか変化している場合に制御するためにLOXタンパク質とNRAGEタンパク質間の相互作用を変化させる組成物の製造のための、配列識別番号1のLOXの発現及び/又は活性を変化させる及び/又は配列識別番号2のNRAGEの発現及び/又は活性を変化させる少なくとも一種の物質の有効量の使用方法。
【請求項2】
LOXとNRAGEとの間の相互作用が欠乏しているか変化している場合にLOXタンパク質とNRAGEタンパク質間の相互作用を改善する組成物の製造のための、配列識別番号1のLOXの発現及び/又は活性を変化させる及び/又は配列識別番号2のNRAGEの発現及び/又は活性を変化させる少なくとも一種の物質の有効量の使用方法。
【請求項3】
増殖と分化とアポトーシスとの間の細胞のバランスが欠乏しているか変化している少なくとも一種の状態を予防又は治療する組成物の製造のための、少なくとも配列識別番号2のNRAGEタンパク質の発現及び/又は活性を変化させ、必要に応じて配列識別番号1のLOXタンパク質の発現及び/又は活性を変化させる少なくとも一種の物質の有効量の使用方法。
【請求項4】
LOXの発現及び/又は活性、及び/又はMRAGEの発現及び/又は活性が、上皮細胞内で、特にケラチン合成細胞内で変化させられることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の使用方法。
【請求項5】
上記の物質の目的がLOXタンパク質とNRAGEタンパク質との間の相互作用を変化させることであり、この相互作用が、特にNRAGEタンパク質のIRDドメイン中で起こることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の使用方法。
【請求項6】
LOXとNRAGEとの相互作用が、LOXで誘起された酵素触媒によるNRAGEの重合、特に二量体化を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の使用方法。
【請求項7】
LOXとNRAGEとの間の相互作用が、LOXの酵素活性の結果起こるH22の生産を含み、このH22が、他の分子、特に中性のスフィンゴミエリナーゼまたはNF−kBの活性剤となることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の使用方法。
【請求項8】
LOXとNRAGEとの間の相互作用が、LOXの非酵素的な活性、特にLOXのプロ領域により発揮される活性であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の使用方法。
【請求項9】
細胞のストレスへの暴露、特に細胞の熱への暴露または細胞の放射線、特に太陽放射線への暴露、または細胞の毒性薬品、例えば化学薬品または微生物薬品への暴露、皮膚の加齢、扁平苔癬、移植片対宿主反応(GVH)、湿疹、乾癬及び癌、特に上皮癌からなる群から選ばれる条件の治療及び/又は予防のための請求項1〜8のいずれか1項に記載の使用方法。
【請求項10】
細胞増殖の場合、特に癌の場合、特に上皮癌、更に特に基底細胞または有棘細胞型の皮膚上皮癌、乾癬または湿疹の場合の過剰増殖の抑制のための請求項1〜9のいずれか1項に記載の使用方法。
【請求項11】
特に皮膚加齢や、皮膚のストレスへの暴露、特に熱への、または皮膚の放射線、特に太陽放射線への暴露、または皮膚の毒性薬品、例えば化学薬品または微生物薬品への暴露、または移植片対宿主反応(GVH)による実質的なアポトーシス場合に、表皮中でのアポトーシスを抑制するための請求項1〜9のいずれか1項に記載の使用方法。
【請求項12】
特に加齢や、皮膚の熱への暴露、皮膚の放射線、特に太陽放射線ヘの暴露、または移植片対宿主反応(GVH)により表皮中の細胞が低増殖の場合に、細胞増殖を増加させるための請求項1〜9のいずれか1項に記載の使用方法。
【請求項13】
皮膚加齢や、皮膚のストレスヘの暴露、特に熱への暴露、または皮膚の放射線、特に太陽放射線への暴露、または皮膚の毒性薬品、例えば化学薬品または微生物薬品への暴露、または移植片対宿主反応(GVH)の際の、LOXの発現の増加と必要に応じてNRAGRの発現の阻害のための請求項1〜9のいずれか1項に記載の使用方法。
【請求項14】
乾癬または湿疹の予防あるいは治療の目的での、表皮中でのNRAGEの発現及び/又は活性の増加と、必要に応じてLOXの発現及び/又は活性の阻害のための請求項1〜4のいずれか1項に記載の使用方法。
【請求項15】
癌、特に上皮癌、更に特に基底細胞型または有棘細胞型の皮膚上皮癌、または扁平苔癬の予防又は治療のために、LOXとNRAGEの発現を増加させるための請求項1〜9のいずれか1項に記載の使用方法。
【請求項16】
上記組成物が化粧用、栄養補助、皮膚医薬または医薬組成物であることを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載の使用方法。
【請求項17】
上記の増殖と分化とアポトーシスと間の細胞のバランスが、ケラチン合成細胞の増殖と分化とアポトーシスの間のバランスである請求項1〜16のいずれか1項に記載の使用方法。
【請求項18】
上記物質が、ダイズエキス、マオウエキス(Ephedra sinica)、ホップエキス(Humidus Lupulus)、シナモンエキス(Cinnamomum spp)、カスミソウエキス(Gypsophila ssp)、赤ビャクダンエキス(シタン(Pterocarpus santalius))、普通ブリオニアエキス(ホワイトブリオニー)、ナギイカダエキス(Ruscus aculeatus)、レモンエキス(レモン(Citrus lemonia))、タンジェリンエキス(Citrus reticulata)、エチルトランス3−ヘキサノエート、ケーラエキス(Amni Visnaga)、アルギン酸、人参エキス(Daucus carota)、メチル−2−メチルブチレート、ダイウイキョウエキス(Illicium verum)サイプレスエキス(Cuprcssus sempervirens)、アサックフェチダガムエキス、キシリトール、リンボクエキス(Prunus spinosa)、イチゴノキエキス(Arbutus unedo)、オオウメガサソウエキス(Chimaphila umbellata)、クルマバソウエキス(Aspcrula odorata)マグワートエキス(Artemisia vulgaris)、普通エルダーベリーエキス(Sambucus nigra)、チャイニーズキャベツエキス(Brassica Brassica campestris var. Pekinensis)、ビターアッシュ(Cassia amara)、カカオノキエキス(Theobroma cacao)、シルクエキス(Serica)、ジャマイカサルサバリラ(Smilax ornata)、アカフサスグリエキス(Ribes rubrum)、ペリトリーエキス(Annacyclus pyrethrum)、及びスイートフェンネルエキス(Foeniculum)からなる群から選ばれることを特徴とする請求項1〜17のいずれか1項に記載の使用方法。
【請求項19】
増殖と分化とアポトーシスとの間の細胞のバランスが欠乏しているか変化している少なくとも一種の状態を予防又は治療するために、LOXとNRAGEとの間の相互作用を変化させる少なくとも一種の活性成分を同定する方法であって、
−上記活性成分をLOXタンパク質(配列識別番号1)及び/又はNRAGEタンパク質(配列識別番号2)を発現可能な少なくとも一種の生細胞と接触させること、及び
−特に、増殖と分化とアポトーシスとの間の細胞のバランスの改善を目的に、LOX及び/又はNRAGEの発現及び/又は活性を変化させる活性成分を特定するために、LOX及び/又はNRAGEの発現を分析することを含むことを特徴とする方法。
【請求項20】
LOXとNRAGEとの間の相互作用が欠乏しているか変化している場合に、LOXタンパク質とNRAGEタンパク質間の相互作用を改善するためにLOXとNRAGEとの間の相互作用を変化させる少なくとも一種の活性成分を同定する方法であって、
−この活性成分をLOXタンパク質(配列識別番号1)及び/又はNRAGEタンパク質(配列識別番号2)を発現可能な少なくとも一種の生細胞と接触させること、及び
−特に、LOXとNRAGEとの間の相互作用が欠乏しているか変化している場合に、LOXタンパク質とNRAGEタンパク質間の相互作用を改善するために、LOX及び/又はNRAGEの発現及び/又は活性を変化させる活性成分を特定するために、LOX及び/又はNRAGEの発現を分析することを含む方法。
【請求項21】
LOXタンパク質及び/又はNRAGEタンパク質の発現が可能な上記生細胞の増殖と分化とアポトーシスのバランスが、またはLOXタンパク質とNRAGEタンパク質間の相互作用が、活性成分と接触させられる前に、なくなっているか変化していることを特徴とする請求項19または20に記載の同定方法。
【請求項22】
上記生細胞が、上皮細胞、特にケラチン合成細胞であることを特徴とする、請求項19〜21のいずれか1項に記載の同定方法
【請求項23】
上記方法が、LOX及び/又はNRAGEのメッセンジャーRNAの発現を分析することを含むことを特徴とする請求項19〜22のいずれか1項に記載の同定方法。
【請求項24】
以下のプライマー:
LOX遺伝子用:
センス:ACGTACGTGCAGAAGATGTCC
アンチセンス:GGCTGGGTAAGAAATCTGATG
NRAGE遺伝子用:
センス:TGCACAGACATCAGCAGATGG
アンチセンス:TTCACG GATGATATCTCTCAGC
を用いる定量的RT−PCRを用いることを含む請求項19〜23のいずれか1項に記載の同定方法。
【請求項25】
−増殖と分化とアポトーシスとの間の細胞のバランスの改善を目的に、LOX及び/又はNRAGEの発現及び/又は活性を変化させる活性成分を同定するために請求項19〜24のいずれか1項に記載の同定方法を使用すること、及び
−増殖と分化とアポトーシスとの間の細胞のバランスが欠乏しているか変化している少なくとも一種の状態を予防又は治療するための化粧用、栄養補助、皮膚医薬または医薬組成物を製造するためにこの活性成分を少なくとも一種の賦形剤と混合することを含むことを特徴とする組成物の製造方法。
【請求項26】
−増殖と分化とアポトーシスとの間の細胞のバランスの改善を目的に、LOX及び/又はNRAGEの発現及び/又は活性を変化させる活性成分を同定するために請求項19〜24のいずれか1項に記載の同定方法を使用すること、及び
−LOXとNRAGEとの間の相互作用が欠乏しているか変化している場合にLOXタンパク質とNRAGEタンパク質間の相互作用を改善することを目的に、化粧用、栄養補助、皮膚医薬または医薬組成物を製造するために上記活性成分を少なくとも一種の賦形剤と混合することを含むことを特徴とする組成物の製造方法。
【請求項27】
少なくともケラチン合成細胞を含む再構成皮膚モデル中における、または皮膚の切片、好ましくは増殖と分化とアポトーシスとの間の細胞のバランスが欠乏しているか変化している状態の表皮をもつ人由来の皮膚の切片中におけるNRAGEの存在を検出し位置決めをするために、少なくとも一種の抗NRAGE抗体を使用することを特徴とする、NRAGEの位置を決定する方法。
【請求項28】
細胞レベルで、特に上皮細胞での、好ましくはケラチン合成細胞でのNRAGHの発現の変化を検出するための組成物の製造に抗NRAGE抗体を使用する方法。
【請求項29】
上記組成物の目的が、増殖と分化とアポトーシスとの間の細胞のバランスまたはLOXとNRAGEとの間の相互作用が、特に表皮中において、欠乏しているか変化している状態を検出することであり、上記状態が、細胞のストレスへの暴露、特に細胞の熱への暴露または細胞の放射線、特に太陽放射線への暴露、または細胞の毒性薬品、例えば化学薬品または微生物薬品への暴露、皮膚加齢、扁平苔癬、移植片対宿主反応(GVH)、湿疹、乾癬及び癌、特に上皮癌、更に特に基底細胞型または有棘細胞型の皮膚上皮癌からなる群から選ばれることを特徴とする請求項28に記載の使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2009−521401(P2009−521401A)
【公表日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−537164(P2008−537164)
【出願日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際出願番号】PCT/FR2006/051117
【国際公開番号】WO2007/048985
【国際公開日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【出願人】(508129850)ビーエーエスエフ、ビューティー、ケア、ソルーションズ、フランス、エスエーエス (2)
【出願人】(508129872)
【出願人】(508129861)
【Fターム(参考)】