説明

RFIDタグ、RFIDタグの製造方法、及び金型

【課題】小型で耐性のある高性能なRFIDタグを提供する。
【解決手段】本発明は、無線通信を行うRFIDタグであって、リードフレームで形成されたアンテナと、前記リードフレームの上に搭載された半導体デバイスと、前記半導体デバイスを覆う熱硬化性樹脂と、前記リードフレームの第1の面側から射出成形された第1の熱可塑性樹脂と、前記リードフレームの前記第1の面とは反対の第2の面側から射出成形された第2の熱可塑性樹脂とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFIDタグ、RFIDタグの製造方法、及びRFIDタグを製造するための金型に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ID情報が書き込まれたタグからリーダライタを使用し、無線通信を介して情報のやり取りを行うためのRFIDタグ(無線ICタグ)が広く用いられている。近年は、その利便性から、電池を搭載しないタイプのRFIDタグが使用されることが多い。このため、RFIDタグの通信距離は短くなってしまい、その通信距離を向上させるには、アンテナの断面積(表面積)を大きくする必要がある。しかし、有機フィルム、PCB基板、又は、セラミック基板等の基板上にアンテナを形成しようとすると、アンテナの厚さを大きく(例えば35μm以上)することができない。このため、RFIDタグの通信距離を向上させるには、アンテナ線の幅を大きくするか、又は、アンテナ線の長さを長くする必要がある。その結果、アンテナに必要な平面の面積は大きくなり、RFIDタグの小型化が妨げられる。
【0003】
この点に関し、特許文献1には、リードフレームを用いてアンテナを形成したRFIDタグが開示されている。所定の厚さを有するリードフレームを用いてアンテナを形成することにより、有機フィルム等の上にアンテナを形成する場合に比べて、アンテナ線の幅を大きくしたりアンテナ線の長さを長くしたりすることなく所望の通信距離を確保することができる。また、リードフレームを用いることにより、RFIDタグの耐性が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3980697号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、リードフレームで形成されたアンテナを樹脂封止してRFIDタグを製造する場合、その封止樹脂内におけるアンテナの位置(樹脂の厚さ方向におけるアンテナの位置)に応じて、そのアンテナの性能は大きく変化する。このため、RFIDタグの性質や使用態様に応じて、封止樹脂内におけるアンテナの位置を正確に制御する必要があるが、特許文献1に開示されている構成では、アンテナの位置を制御することは困難であり、良好な性能を確保できないおそれがある。
【0006】
そこで本発明は、小型で耐性のある高性能なRFIDタグ、その製造方法、及び、RFIDタグを製造するための金型を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面としてのRFIDタグは、無線通信を行うRFIDタグであって、リードフレームで形成されたアンテナと、前記リードフレームの上に搭載された半導体デバイスと、前記半導体デバイスを覆う熱硬化性樹脂と、前記リードフレームの第1の面側から射出成形された第1の熱可塑性樹脂と、前記リードフレームの前記第1の面とは反対の第2の面側から射出成形された第2の熱可塑性樹脂とを有する。
【0008】
本発明の他の側面としてのRFIDタグの製造方法は、無線通信を行うRFIDタグの製造方法であって、リードフレームでアンテナを形成する工程と、前記リードフレームの上に半導体デバイスを搭載する工程と、前記半導体デバイスを熱硬化性樹脂で覆う工程と、前記リードフレームの第1の面側から第1の熱可塑性樹脂を射出成形する工程と、前記リードフレームの前記第1の面とは反対の第2の面側から第2の熱可塑性樹脂を射出成形する工程とを有する。
【0009】
本発明の他の側面としての金型は、RFIDタグを製造するための金型であって、第1の樹脂流路及び第1の高さを有する第1の突起部が設けられ、該第1の突起部でアンテナを形成するリードフレームを第1の面側から押さえ付ける第1の一方金型と、第2の高さを有する第2の突起部が設けられ、該第2の突起部で前記リードフレームを前記第1の面とは反対の第2の面側から押さえ付ける第1の他方金型と、第2の樹脂流路を備え、前記リードフレームを前記第1の面側から押さえ付ける第2の一方金型と、凹部が設けられ、前記リードフレームを前記第2の面側から押さえ付ける第2の他方金型とを有し、前記第1の一方金型及び前記第1の他方金型は、半導体デバイスを搭載した前記リードフレームをクランプし、前記第1の樹脂流路から第1の熱可塑性樹脂を射出成形するために用いられ、前記第2の一方金型及び前記第2の他方金型は、前記第1の熱可塑性樹脂の成形後の前記リードフレームをクランプし、前記第2の樹脂流路から第2の熱可塑性樹脂を射出成形するために用いられる。
【0010】
本発明の他の目的及び特徴は、以下の実施例において説明される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、アンテナをリードフレームとすることで、小型で安価な高性能なRFIDタグ、その製造方法、及び、RFIDタグを製造するための金型を提供することができる。また、半導体デバイスを熱硬化性樹脂で覆った後に熱可塑性樹脂で全面を覆うことにより、RFIDタグの耐水性、耐候性、及び、耐衝撃性が向上し、安定した通信が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施例におけるRFIDタグに用いられるリードフレームの平面図である。
【図2】本実施例におけるRFIDタグの製造工程(リードフレーム抜きからリードフレームのカットまで)を示す平面図及び側面図である。
【図3】本実施例におけるRFIDタグの別の実施形態(リードフレームのカット)を示す平面図及び側面図である。
【図4】本実施例におけるRFIDタグの二次成形の説明図である。
【図5】本実施例におけるRFIDタグの二次成形時に用いられる金型の平面図である。
【図6】本実施例におけるRFIDタグの三次成形の説明図である。
【図7】本実施例におけるRFIDタグの別の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0014】
まず、本実施例におけるRFIDタグ(Radio Frequency Identification)に用いられるリードフレームの構成について説明する。図1は、本実施例におけるRFIDタグに用いられるリードフレーム10の平面図である。図1(a)は、リードフレーム10の外観図である。図1(a)に示されるリードフレーム10は、後述の工程を経て個片化されることにより、破線150に囲まれた領域が1つのRFIDタグを製造するために用いられるリードフレーム10となる。すなわち、図1(a)には、個片化後に4つのRFIDタグに用いられることになる多連リードフレームが示されている。
【0015】
図1(b)は、図1(a)に示されるリードフレーム10のうち、破線150で囲まれた領域(1つのRFIDタグに用いられる部分)の拡大図である。図1(b)において、10aはRFIDタグのアンテナである。本実施例のアンテナ10aは、金属からなるリードフレーム10で構成されている。従来のように、RFIDタグのアンテナを有機フィルム、RCB基板、又は、セラミックの上に形成する場合には、アンテナの厚さを例えば0.035mm(35μm)以上にすることができない。このため、RFIDタグの通信距離を向上させるには、アンテナ(アンテナ線)の幅を大きくするか、又は、アンテナの長さを長くする必要がある。この場合、アンテナに要する面積が大きくなるため、RFIDタグの小型化が困難である。
【0016】
一方、本実施例のリードフレーム10は、例えば0.15mmの厚さを有する。このため、リードフレーム10を用いることにより、有機フィルム上にアンテナを形成する場合では困難であった0.035mm以上の厚さを有するアンテナ10aを構成することができる。このように、0.035mm以上の厚さを有するアンテナ10aを用いることにより、RFIDタグの小型化が可能となる。なお、本実施例のリードフレーム10は0.15mmの厚さを有するが、これに限定されるものではなく他の厚さを有するものであってもよい。例えば、0.5mm以上の厚さを有するリードフレームを用いることもできる。リードフレーム10の厚さを厚くし、リード幅及びリード間ピッチを狭くすれば、RFIDタグをより小型化することができる。
【0017】
10bは、後述の半導体デバイスとアンテナ10aとの間を電気的に接続するためのアンテナ導出部である。本実施例では、四本のアンテナ導出部10bが設けられており、四つの角部に配置されているアンテナ10aのそれぞれと接続される。また本実施例では、アンテナ導出部10bもリードフレーム10で構成されている。
【0018】
なお、本実施例のアンテナ10aは渦巻き状であるが、これに限定されるものではなく、他の形状であってもよい。また、本実施例において、一つのアンテナ10aに接続されるアンテナ導出部10bは一本の直線形状を有するが、これに限定されるものではない。アンテナ導出部10bは、二本以上の直線形状又はその他の形状を有するものであってもよい。
【0019】
12は、後述の半導体デバイスの電極をアンテナ導出部10b(アンテナ10a)に電気的に接続するための端子接続部である。本実施例では四つのアンテナ導出部10b(アンテナ10a)が設けられているため、四つの端子接続部12が四つのアンテナ導出部10bの先端部にそれぞれ設けられている。
【0020】
14はダムバー(樹脂漏れ防止手段)である。ダムバー14は、後述の熱硬化性樹脂を用いて半導体デバイスを樹脂封止する際に、熱硬化性樹脂の樹脂漏れを防止するために設けられている。ダムバー14は、リードフレーム10で構成されており、隣り合うアンテナ導出部10bに接続されて全体で正方形の形状を有する。後述のように、ダムバー14の一部は熱硬化性樹脂による樹脂封止後に切断され、アンテナ導出部10b同士の絶縁性が確保される。
【0021】
次に、本実施例におけるRFIDタグの製造工程について説明する。図2は、RFIDタグの製造工程(リードフレーム抜きからリードフレームのカットまで)を示す平面図及び側面図である。RFIDタグは、図2(a)〜図2(e)に示される工程順に製造される。
【0022】
まず、図2(a)に示されるように、リードフレーム抜き工程が行われる。リードフレーム抜き工程により、リードフレーム10で構成される各部位(アンテナ10a、アンテナ導出部10b、端子接続部12、及び、ダムバー14)が形成される。
【0023】
続いて、図2(b)に示されるように、チップマウント工程が行われる。チップマウント工程においては、半導体デバイス20がリードフレーム10の端子接続部12の上に実装され、半田22によって接続される。本実施例の半導体デバイス20として、好ましくは、ICチップ(ベアチップ)を樹脂封止した半導体パッケージ(ICパッケージ)が用いられ、特に面実装型半導体パッケージが用いられる。半導体デバイス20として半導体パッケージを用いた場合、例えば以下の三つのメリットがある。すなわち、RFIDタグをクリーンルームで製造する必要はなく、RFIDタグの製造時における製造コストが低くなる。また、半導体デバイス20として良品のみを選択してリードフレーム10の上に実装することができる。さらに、端子接続部12にメッキ等の表面処理を行う必要がない。
【0024】
ただし本実施例はこれに限定されるものではなく、半導体デバイス20としてパッケージ化されていないベアチップを用いてもよい。ベアチップを用いた場合、フリップチップ実装又はワイヤボンディングにより端子接続部12との間の電気的接続をとることができる。
【0025】
次に、図2(c)に示されるように、一次成形が行われる。一次成形では、熱硬化性樹脂30を用いて、少なくとも、リードフレーム10の上に搭載した半導体デバイス20、半田22、及び、端子接続部12を樹脂封止する(覆う)。本実施例では、熱硬化性樹脂30による一次成形はトランスファモールドにより行われるが、これに限定されるものではなく、例えば、ポッティング成形又は圧縮成形により行うこともできる。なお、トランスファモールドの他方金型を掘り込むことにより、リード裏側露出のない樹脂封止を行うことも可能である。
【0026】
本実施例におけるトランスファモールドは、不図示の一方金型と他方金型とでリードフレーム10をクランプしながら液状の樹脂を充填して行われる。熱硬化性樹脂30は、不図示のプランジャを動作させて溶融した樹脂を圧送することにより、一方金型と他方金型との間に充填される。プランジャによって樹脂が圧送された液状の樹脂は、ランナ34及びゲート32を介して、一方金型と他方金型との間に形成されるキャビティへ供給され、キャビティ内の空間が熱硬化性樹脂30で充填される。
【0027】
後述の二次成形で用いられる熱可塑性樹脂は、その溶融温度が200〜300℃であるため、二次成形時に半田22の接合を破壊する可能性がある。一方、熱硬化性樹脂の溶融温度は160℃程度であるため、半田22の溶融温度に達しない。このため、熱硬化性樹脂を用いた一次成形を行うことにより、後述の熱可塑性樹脂を用いた樹脂封止の際(二次成形時)に半田22が融けるのを防止することができる。また、熱可塑性による樹脂封止の場合、熱硬化性樹脂の場合よりも射出圧が高い。このため、一次成形を行うことにより、半導体デバイス20とリードフレーム10(端子接続部12)との間の接合破壊を防止することができる。さらに、熱可塑性樹脂は、一般的に0.3mm以下の小さな隙間に充填することは困難である。このため、半導体デバイス20とリードフレーム10との間の半田接合部の近傍に空洞(エアだまり)が生じやすい。このような空洞が存在すると、温度変化によるエアの膨張及び収縮により半田接合部が破壊される可能性がある。一方、熱硬化性樹脂は、例えば数μmの小さな隙間にも充填可能である。
【0028】
このように、熱硬化性樹脂30を用いた一次成形は、半導体デバイス20とリードフレーム10との間の接合(半田22)を後述の二次成形時における熱及び射出圧等から保護するために行われる。なお、本実施例において、一次成形に用いられる熱硬化性樹脂30としては例えばエポキシ樹脂が用いられるが、これに限定されるものではなく、フォノール系樹脂やシリコーン系樹脂等を用いてもよい。また、半導体デバイスと端子リード間のみをアンダーフィル成形してもよいし、半導体デバイスを全体的に樹脂で覆ってもよい。
【0029】
熱硬化性樹脂30による樹脂封止後(一次成形後)、図2(d)に示されるように、リードフレーム10の該当部位をカットする。本実施例のリードフレーム10は、アンテナ10aと周辺部との間の四つのカット部40a、及び、アンテナ導出部10bとダムバー14との間の八つのカット部40bでカットされる。このようなカットにより、リードフレーム10の周辺部(不要部)は分離され、また、四本のアンテナ導出部10b同士の絶縁性が確保される。図2(e)は、カット部40a、40bにてリードフレーム10をカットした後の構成を示している。
【0030】
図3は、本実施例におけるRFIDタグの別の実施形態(リードフレーム10のカット)を示す平面図及び側面図である。図3(a)はリードフレーム10のカット部位を示し、図3(b)は該当部位をカットした後の構成を示す。図3(a)、(b)は、それぞれ図2(d)、(e)に対応する。図3に示されるように、本実施形態のリードフレーム10は、ダムバー14において四つのカット部40cを有する。カット部40cをカットすることにより、ダムバー14の全てがカットされる。
【0031】
次に、本実施例におけるRFIDタグの二次成形について説明する。図4は、本実施例における二次成形の説明図である。図4(a)は、二次成形後のRFIDタグの平面図である。図4(b)は、二次成形の際に用いられる金型の構成を示す断面図である。図4(c)は、リードフレームを金型でクランプして樹脂封止した構成を示す断面図である。図4(b)、(c)の断面は、図4(a)のA−A切断面である。また、図5は二次成形時に用いられる金型の平面図である。図5(a)は一方金型の平面図を示し、図5(b)は他方金型の平面図を示す。
【0032】
二次成形は、一方金型50(第1の一方金型)と他方金型55(第1の他方金型)とで、半導体デバイス20が搭載されたリードフレーム10(半導体デバイス20が熱硬化性樹脂30で覆われた構成を有するリードフレーム)をクランプし、熱可塑性樹脂を射出成形することにより行われる。図4(b)及び図5(a)に示されるように、一方金型50は、所定の高さ(第1の高さ)を有する突起部51(第1の突起部)を備える。本実施例では、三角形状を有する突起部51が四つごとにまとまって突起群を構成し、それらの突起部51の表面が一つのアンテナ10aの上面に当接するように構成されている。本実施例では四つのアンテナ10aが設けられているため、四つの突起群が右上、右下、左上、左下の角部に形成されている。また、一方金型50には熱可塑性樹脂60(第1の熱可塑性樹脂)を射出するための二つのスプル52(第1の樹脂流路)が設けられている。
【0033】
図4(b)に示されるように、スプル52が設けられた一方金型50は、リードフレーム10の第1の面100a側(半導体デバイス20の搭載面側)からリードフレーム10を押さえ付ける。他方金型55は、第1の面100aとは反対の第2の面100b側からリードフレーム10を押さえ付ける。このため、熱可塑性樹脂60は、リードフレーム10の第1の面100a側から射出成形される。
【0034】
図4(b)及び図5(b)に示されるように、他方金型55には、所定の高さ(第2の高さ)を有する突起部56(第2の突起部)が設けられている。他方金型55の突起部56は、一方金型50の突起部51に対応する位置に配置されている。このため、突起部56は、突起部51と同様の形状を有し、突起部51の同じ数だけ設けられている。本実施例では、熱可塑性樹脂60の射出成形時において、リードフレーム10で形成されたアンテナ10aを突起部51と突起部56とでクランプする。すなわち、突起部51はアンテナ10aの上面(第1の面)に当接し、突起部56はアンテナ10aの下面(第2の面)に当接する。また本実施例では、他方金型55の突起部56の高さは、一方金型50の突起部51の高さよりも低い。
【0035】
突起部56の上には、ダムブロック57が形成されている。ダムブロック57は、渦巻き状のアンテナ10aの隙間に挿入されるように構成されている。ダムブロック57は、クランプ時に一方金型50の突起部51に当接しないように、リードフレーム10(アンテナ10a)の厚さよりも0.1mm程度短めの高さを有する。
【0036】
ダムブロック57が設けられていることにより、一方金型50と他方金型55とでリードフレーム10をクランプした際に、アンテナ10aの位置合わせを行うことができる。このとき、ダムブロック57とアンテナ10aとの間に二次成形による熱可塑性樹脂60が入り込まないように、ダムブロック57とアンテナ10aとの隙間は0.3mm以下、好ましくは0.1〜0.2mm程度以下に設定される。このように、アンテナ間にダムブロック57を入れることで、成形時の樹脂流れによるアンテナの位置ずれが防止でき、位置精度の高い成形が可能となる。
【0037】
他方金型55の中央部には突起部58が設けられている。突起部58は、ダムバー14を取り囲むように四箇所に配置されており、突起部58により、ダムバー14の位置が固定され、リードフレーム10と他方金型55との間の位置合わせが行われる。一方金型50と他方金型55とでリードフレーム10をクランプしてスプル52から樹脂を射出すると、図4(c)に示されるように、一次成形後のリードフレーム10は熱可塑性樹脂60(第1の熱可塑性樹脂)により射出成形される(二次成形)。二次成形では、突起部51、56、及び、ダムブロック57により、アンテナ10aの一部は熱可塑性樹脂60で充填されない。このため、図4(a)に示されるように、二次成形後のRFIDタグの表面には開口部51aが形成され、アンテナ10aの一部が熱可塑性樹脂60で覆われることなく露出している。
【0038】
二次成形において、リードフレーム10の第1の面100a側は、正規の厚さ(最終製品としてのRFIDタグのパッケージ厚さと同一の厚さ)で成形され、第2の面100b側は、後述の三次成形が行われるため、正規の厚さよりも薄い厚さで成形される。第2の面100b側の厚さと三次成形の厚さは、最終製品になったときのRFIDタグの反りを考慮し、それぞれの厚さが決定される。本実施例では、熱可塑性樹脂としてPP樹脂(ポリプロピレン樹脂)を用いているが、これに限定されるものではなく、弾性を有したエラストマー樹脂等の他の樹脂でもよい。また、熱可塑性樹脂の成形厚さは、使用する樹脂の樹脂特性によっても異なる。
【0039】
次に、本実施例におけるRFIDタグの三次成形について説明する。図6は、本実施例における三次成形の説明図である。図6(a)は、二次成形後のRFIDタグの平面図である。図6(b)は、三次成形時の構成を示す断面図である。図6(c)は、三次成形後のRFIDタグの平面図である。
【0040】
図6(a)に示されるように、二次成形後(熱可塑性樹脂60による樹脂封止後)のRFIDタグにおいて、アンテナ10aの一部は、熱可塑性樹脂60で覆われずに露出している。本実施例における三次成形は、二次成形と同様に、熱可塑性樹脂を射出成形することにより行われる。
【0041】
図6(b)に示されるように、二次成形後のリードフレーム10(成形品)は、三次成形用の一方金型70(第2の一方金型)と他方金型75(第2の他方金型)とでクランプされる。一方金型70は二次成形後のリードフレーム10を第2の面100b側から押さえ付け、他方金型75はリードフレーム10を第1の面100a側から押さえ付ける。
【0042】
一方金型70にはスプル71(第2の樹脂流路)が設けられており、三次成形用の樹脂はスプル71を通って射出される。三次成形に用いられる金型(一方金型70、他方金型75)には、突起部が設けられていない。他方金型75には、凹部が設けられており、二次成形後のリードフレーム10はこの凹部に収容される。三次成形(射出成形)により、熱可塑性樹脂80(第2の熱可塑性樹脂)が所定の領域に充填される。三次成形が終了すると、図6(c)に示されるような、表面にリードフレームの露出の無いRFIDタグが完成する。
【0043】
なお、二次成形と三次成形は、同一種類の熱可塑性樹脂を使用することにより、RFIDタグでの境目がなくなる。このため、二次成形後のRFIDタグをひっくり返すロボット機構を射出成形装置に組込み、金型を二次成形部分と三次成形部分を分けることにより、1台の射出成形装置でそれぞれを順次成形することも可能である。 図6(b)に示されるように、他方金型75は、リードフレーム10の第1の面100a側(半導体デバイス20の搭載面側)からリードフレーム10をクランプする。スプル71が設けられた一方金型70は、第1の面100aとは反対の第2の面100b側からリードフレーム10をクランプする。このため、熱可塑性樹脂80は、リードフレーム10の第2の面100a側から射出成形される。このように、三次成形の際の熱可塑性樹脂80は、リードフレーム10の第2の面100b側から射出され、その射出方向は、第1の面100a側から射出される熱可塑性樹脂60の場合と反対方向となる。
【0044】
本実施例では、熱可塑性樹脂60、80によりRFIDタグのパッケージが構成される。熱可塑性樹脂60、80を射出成形することにより、リードフレーム10の第2の面100b側におけるRFIDタグのパッケージの厚さは、突起部56の高さよりも厚くなる。
【0045】
樹脂封止されたアンテナ10aは、RFIDタグのパッケージ(熱可塑性樹脂60、80)の厚さ方向における位置に応じて、その性能(通信可能な距離)が異なる。例えば、パッケージの厚さ(熱可塑性樹脂60、80を合わせた厚さ)が3.0mmでリードフレーム10の厚さが0.15mmの場合、アンテナ10aの位置がパッケージの厚さ方向に理想的な位置から0.2mm変位したとき、UHF帯による無線通信において、通信可能な距離は10mから8m〜9m程度というように10〜20%程度低下する。アンテナ10aの理想的な位置は、例えば、パッケージの中央(厳密な中央位置を基準としてパッケージの厚さの±5%の範囲を含む)である。上述の例では、アンテナ10aはパッケージの一方の面から1.4〜1.5mm程度の位置に配置されていることが好ましい。ただし、アンテナ10aの理想的な位置は、樹脂の中央に限定されるものではなく、使用形態等に応じて適宜変更される。
【0046】
本実施例では、熱可塑性樹脂60がリードフレーム10の第1の面100a側から射出成形され、熱可塑性樹脂80が第1の面100aとは反対の第2の面100b側から射出成形される。このため、樹脂の厚さ方向におけるアンテナ10aの位置を制御することができ、アンテナ10aの位置を任意に設定することが可能となる。例えば、二次成形時における突起部51の高さ又は突起部56の高さを変更することにより、アンテナ10aをRFIDタグのパッケージの厚さ方向において任意の位置に配置可能となる。図6(c)に示されるRFIDタグは、識別対象物に両面テープ等で接着することにより識別使用される。
【0047】
図7は、本実施例におけるRFIDタグの別の実施形態を示す図である。図7に示されるRFIDタグにはフランジ部90及びネジ孔91が設けられている。フランジ部90は、リードフレーム10で一体的に形成され、ネジにより簡便な工程で識別対象物への取り付けが可能である。フランジ部90を備えたRFIDタグによれば、RFIDタグを取り付ける際の利便性が向上する。
【0048】
なお、本実施例では、一次成形樹脂として熱硬化性樹脂が用いられるが、半田接続部の信頼性が確保される場合には熱可塑性樹脂を用いてもよい。
【0049】
以上のとおり、本実施例のRFIDタグでは、リードフレーム10を用いてアンテナ10aが形成される。このため、アンテナの断面における厚みが増し、アンテナの小型化を図ることができる。また、半導体デバイス20は熱硬化性樹脂30で覆われているため、半導体デバイス20を効果的に保護することが可能である。また、RFIDタグは熱可塑性樹脂60、80を用いて外装されている。このため、耐性(耐衝撃性、耐候性、耐水性)に優れたRFIDタグを提供することができる。また、本実施例のRFIDタグの製造方法によれば、外装樹脂(熱可塑性樹脂60、80)の厚み方向におけるアンテナの位置を制御することができ、アンテナを適切な位置に配置させることが可能となる。
【0050】
このため、本実施例によれば、小型で耐性のある高性能なRFIDタグ及びその製造方法を提供することができる。
【0051】
以上、本発明の実施例について具体的に説明した。ただし、本発明は上記実施例として記載された事項に限定されるものではなく、本発明の技術思想を逸脱しない範囲内で適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0052】
10 リードフレーム
10a アンテナ
10b アンテナ導出部
12 端子接続部
14 ダムバー
20 半導体デバイス
22 半田
30 熱硬化性樹脂
32 ゲート
34 ランナ
50 一方金型
55 他方金型
60 熱可塑性樹脂
80 熱可塑性樹脂
90 フランジ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信を行うRFIDタグであって、
リードフレームで形成されたアンテナと、
前記リードフレームの上に搭載された半導体デバイスと、
前記半導体デバイスを覆う熱硬化性樹脂と、
前記リードフレームの第1の面側から射出成形された第1の熱可塑性樹脂と、
前記リードフレームの前記第1の面とは反対の第2の面側から射出成形された第2の熱可塑性樹脂と、を有することを特徴とするRFIDタグ。
【請求項2】
前記半導体デバイスは、ベアチップを樹脂封止して形成された半導体パッケージであり、
前記半導体パッケージは、半田によって前記リードフレームの端子接続部に接続され、
前記熱硬化性樹脂は、トランスファモールドで前記半導体パッケージを覆っていることを特徴とする請求項1に記載のRFIDタグ。
【請求項3】
前記第1の熱可塑性樹脂及び前記第2の熱可塑性樹脂により前記RFIDタグのパッケージが構成され、
前記アンテナは、前記パッケージの厚さ方向において中央に位置していることを特徴とする請求項1又は2に記載のRFIDタグ。
【請求項4】
無線通信を行うRFIDタグの製造方法であって、
リードフレームでアンテナを形成する工程と、
前記リードフレームの上に半導体デバイスを搭載する工程と、
前記半導体デバイスを熱硬化性樹脂で覆う工程と、
前記リードフレームの第1の面側から第1の熱可塑性樹脂を射出成形する工程と、
前記リードフレームの前記第1の面とは反対の第2の面側から第2の熱可塑性樹脂を射出成形する工程と、を有することを特徴とするRFIDタグの製造方法。
【請求項5】
前記半導体デバイスは、ベアチップを樹脂封止して形成された半導体パッケージであり、
前記熱硬化性樹脂は、前記リードフレームで形成された樹脂漏れ防止手段で該熱硬化性樹脂の漏れを防止しながら、トランスファモールドで前記半導体デバイスを覆うことを特徴とする請求項4に記載のRFIDタグの製造方法。
【請求項6】
前記第1の熱可塑性樹脂は、第1の高さを有する第1の突起部を設けた一方金型と、第2の高さを有する第2の突起部を設けた他方金型とを用い、前記アンテナを該第1の突起部と該第2の突起部とでクランプすることにより射出成形されることを特徴とする請求項4又は5に記載のRFIDタグの製造方法。
【請求項7】
前記第2の熱可塑性樹脂は、突起部を設けない金型を用いて射出成形されることを特徴とする請求項6に記載のRFIDタグの製造方法。
【請求項8】
前記第1の熱可塑性樹脂及び前記第2の熱可塑性樹脂を射出成形することにより、前記リードフレームの前記第2の面側における前記RFIDタグのパッケージの厚さは、前記第2の突起部の前記第2の高さよりも厚くなることを特徴とする請求項6又は7に記載のRFIDタグの製造方法。
【請求項9】
前記第1の突起部の前記第1の高さ又は前記第2の突起部の前記第2の高さを変更することにより、前記アンテナは、前記RFIDタグのパッケージの厚さ方向において任意の位置に配置可能であることを特徴とする請求項6乃至8のいずれか一に記載のRFIDタグの製造方法。
【請求項10】
前記第1の熱可塑性樹脂及び前記第2の熱可塑性樹脂を射出成形した後、前記アンテナは、前記RFIDタグのパッケージの厚さ方向において中央に位置していることを特徴とする請求項6乃至9のいずれか一に記載のRFIDタグの製造方法。
【請求項11】
RFIDタグを製造するための金型であって、
第1の樹脂流路及び第1の高さを有する第1の突起部が設けられ、該第1の突起部でアンテナを形成するリードフレームを第1の面側から押さえ付ける第1の一方金型と、
第2の高さを有する第2の突起部が設けられ、該第2の突起部で前記リードフレームを前記第1の面とは反対の第2の面側から押さえ付ける第1の他方金型と、
第2の樹脂流路を備え、前記リードフレームを前記第1の面側から押さえ付ける第2の一方金型と、
凹部が設けられ、前記リードフレームを前記第2の面側から押さえ付ける第2の他方金型と、を有し、
前記第1の一方金型及び前記第1の他方金型は、半導体デバイスを搭載した前記リードフレームをクランプし、前記第1の樹脂流路から第1の熱可塑性樹脂を射出成形するために用いられ、
前記第2の一方金型及び前記第2の他方金型は、前記第1の熱可塑性樹脂の成形後の前記リードフレームをクランプし、前記第2の樹脂流路から第2の熱可塑性樹脂を射出成形するために用いられることを特徴とする金型。
【請求項12】
前記第2の高さは、前記第1の高さよりも低いことを特徴とする請求項11に記載の金型。
【請求項13】
前記第1の他方金型の前記第2の突起部の上には、前記アンテナの位置合わせを行うためのダムブロックが設けられていることを特徴とする請求項11又は12に記載の金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−113517(P2011−113517A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−272243(P2009−272243)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(000144821)アピックヤマダ株式会社 (194)
【Fターム(参考)】