説明

X線センサーと、その製造方法と、X線センサーを用いたX線診断装置

【課題】本発明は、例えば、薄膜状電極、正孔注入阻止層などにキズや、ムラが発生した場合でも、それによる陰の出現が起きないようにすることを目的とするものである。
【解決手段】そしてこの目的を達成するために本発明は、下方面側がX線入射面となったX線透過性基板17と、このX線透過性基板17の上面の上方側に順次設けた薄膜状電極18、正孔注入阻止層19、光変換膜層20、電子注入阻止層21とを備え、前記電子注入阻止層21から前記X線透過性基板17の上方面に到達する凹部32を形成し、この凹部32内の前記X線透過性基板17の上方面には電子注入阻止層21を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、X線センサーとその製造方法と、それを用いたX線診断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
X線診断装置は、X線源と、このX線源に所定間隔おいて対向配置したX線センサーとを備え、X線源から放射したX線を人体に照射、通過させることにより、X線センサーで人体内部の状態を目視可能とするものである。
【0003】
このX線診断装置の構成要素であるX線センサーは、人体を通過したX線量を電気信号に変換するために多層構造で構成されたターゲット部を備えており、このターゲット部は、X線照射側よりX線透過性基板と、このX線透過性基板の他面側に順次設けた薄膜状電極、正孔注入阻止層、光変換膜層、電子注入阻止層より構成されている。
【0004】
このターゲット部が、X線量を電気信号に変換する際に、ターゲット部で余剰となった電荷が反射され、再びターゲット部内に入射し、これがノイズとなって、X線の映像信号に発生してしまうという課題がある。
【0005】
あるいは、薄膜状電極全体を一つの電源で制御し、画像信号を画素ごとに順次読み出した場合は、全体の映像信号の読み出しの処理時間が長くかかってしまうという課題もある。
【0006】
このような課題を解決するために、ターゲット部の薄膜状電極を複数のエリアに分割し、それぞれ異なる電源に接続して制御する方法が知られている。
【0007】
このような薄膜状電極を分割したターゲット部の製造方法としては、X線透過性基板上に薄膜状電極を成膜する第1の工程と、この成膜された薄膜状電極を、所定のエリアに分割するために、マスクしてエッチングする第2の工程と、この分割された薄膜状電極上に正孔注入阻止層を成膜する第3の工程と、成膜された正孔注入阻止層上に光変換膜層を成膜する第4の工程と、成膜された光変換膜層上に電子注入阻止層を成膜する第5の工程と、を備えたものとなっている。
【0008】
このようにして製造されたターゲット部を用いて画像ノイズを抑制したX線撮像管の技術が公開されている(例えば下記特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平5−343016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記従来の製造方法で製造したX線センサーの課題は、X線画像に白キズが発生してしまうことであった。
【0011】
すなわち、従来のX線センサーでは、ターゲット部の撮像エリアと非撮像エリアに分割するために、製造工程において、薄膜状電極をマスク/エッチングして分割を行った後、その分割された薄膜状電極上に正孔注入阻止層を成膜していたが、薄膜状電極をエッチングした際に発生したパーティクルが薄膜状電極上に残留した状態で正孔注入阻止層を成膜するので、薄膜状電極と正孔注入阻止層の間にパーティクルが残ってしまい、このパーティクルによって正孔注入防止効果が不十分になり、正孔が高圧電源側から流入し白キズとして出現してしまうのである。
【0012】
そこで本発明は、例えば、薄膜状電極と正孔注入阻止層の間のパーティクルの発生を抑制し、それによる白キズの出現が起きないようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そしてこの目的を達成するために本発明のX線センサーは、下方面側がX線入射面となったX線透過性基板と、このX線透過性基板の上面の上方側に順次設けた薄膜状電極、正孔注入阻止層、光変換膜層、電子注入阻止層とを備え、前記電子注入阻止層から前記X線透過性基板の上方面に到達する凹部を形成し、この凹部内の前記X線透過性基板の上方面には電子注入阻止層を形成し、これにより所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0014】
以上のように本発明の本発明のX線センサーは、下方面側がX線入射面となったX線透過性基板と、このX線透過性基板の上面の上方側に順次設けた薄膜状電極、正孔注入阻止層、光変換膜層、電子注入阻止層とを備え、前記電子注入阻止層から前記X線透過性基板の上方面に到達する凹部を形成し、この凹部内の前記X線透過性基板の上方面には電子注入阻止層を形成したものであるので、白キズの出現が起きないようにすることができる。
【0015】
すなわち、本発明のX線センサーは、X線透過性基板の上方側に薄膜状電極、正孔注入阻止層、光変換膜層、を順次成膜し、その状態で光変換膜層よりX線透過性基板に至るまでをエッチングして凹部を形成し、この凹部によって薄膜状電極を分割したので、薄膜状電極と正孔注入阻止層の間、或いは、正孔注入阻止層と光変換膜層の間のパーティクルを抑制できるので、これによる白キズの出現が起きないようにすることができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態にかかるX線診断装置の構成図
【図2】本発明の実施の形態にかかるX線診断装置のブロック図
【図3】本発明の実施の形態にかかるX線センサーの外観を示す斜視図
【図4】本発明の実施の形態にかかるX線センサーの断面図
【図5】本発明の実施の形態にかかるX線センサーの主要部の断面図
【図6】本発明の実施の形態にかかるX線センサーの制御ブロック図
【図7】本発明の実施の形態にかかるX線センサーの主要部の断面図
【図8】本発明の実施の形態にかかるX線センサーの製造方法の工程図
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明にかかるX線センサー、およびそのX線センサーを用いたX線診断装置の実施の一形態について、添付図面を交えて説明する。なお添付図面は、理解を容易にするために模式的な図を示している。
【0018】
まず、この実施の形態にかかるX線診断装置の全体構成について、図1および図2を用いて説明する。
【0019】
図1は本発明の実施の形態にかかるX線診断装置の構成図である。図1に示すように、X線診断装置は、X線源1と、X線源1から所定の間隔をおいて対向配置されるX線センサー2とを備え、X線源1から放射したX線を撮像対象者3に照射し、その撮像対象者3を透過したX線をX線センサー2に入射させることにより、撮像対象者3の内部の状態を可視化とするものである。
【0020】
具体的には、側面視したときの形状が略半円状のアーム4の一端にX線源1が設けられ、アーム4の他端にX線センサー2が設けられている。このようにしてX線源1とX線センサー2が所定の間隔をおいて対向配置されている。したがってアーム4によって、ベッド5に横たわった撮像対象者3を挟んでX線源1とX線センサー2とを対向配置させることができるので、X線源1から照射されて撮影対象者3を透過したX線を、X線センサー2で検出することができる。
【0021】
アーム4は、装置本体6に回動自在に取り付けられている。装置本体6は、アーム4を回動させる駆動装置(図示せず)を内蔵している。このようにすることで、撮像対象者3の内部の状態を様々な角度から可視化することが可能となる。
【0022】
図2は本発明の実施の形態にかかるX線診断装置のブロック図である。
【0023】
図2に示すように、X線源1はX線制御部7に接続されており、X線制御部7はコントローラ8に接続されている。コントローラ8は、X線診断装置全体の動作を統括的に制御するものである。X線制御部7は、コントローラ8からの指令信号に従って、X線源1によるX線の照射動作やX線の照射量を制御する。
【0024】
X線センサー2は画像処理部9に接続されている。画像処理部9は、X線センサー2から取り出された電気信号(光電変換信号)を検出して画像処理する。画像処理部9により処理された信号はコントローラ8に送信される。コントローラ8は、X線センサー2が検出したX線の光量(強度)に基づく画像、すなわち撮像対象者3の内部の状態を表示する画像をモニタ10に映し出す。
【0025】
またX線センサー2は、電子源制御部11にも接続されている。この電子源制御部11もコントローラ8に接続されている。電子源制御部11は、コントローラ8からの指令信号に従って、後述する電子源による電子線の照射動作や電子線の照射量を制御する。
【0026】
装置本体6に内蔵されているアーム4を回動させる駆動装置(図示せず)は移動制御部13に接続されており、移動制御部13はコントローラ8に接続されている。移動制御部13は、コントローラ8からの指令信号に従って、アーム4の回動動作を制御する。
【0027】
コントローラ8には、さらに入力部14が接続されている。コントローラ8は、入力部14から入力された指令に従って、X線診断装置全体の動作を統括的に制御する。
【0028】
続いて、この実施の形態にかかるX線センサー2について、図3ないし図6を用いて説明する。図3は本発明の実施の形態にかかるX線センサーの外観を示す斜視図であり、図4は本発明の実施の形態にかかるX線センサーの断面図であり、図5は本発明の実施の形態にかかるX線センサーのターゲット部12の断面図であり、図6は本発明の実施の形態にかかるX線センサーの制御ブロック図である。
【0029】
図3および図4に示すように、X線センサー2は、平面視したときの形状が矩形状の取り付け基板15を備える。また図4に示すように、取り付け基板15の主面上には、同じく矩形状の電子源16が設けられており、その電子源16の上部には、ターゲット部12が配置されている。
【0030】
このターゲット部12は、X線入射面となったX線透過性基板17と、このX線透過性基板のX線入射面の裏面側に順次設けた薄膜状電極18、正孔注入阻止層19、光変換膜層20、電子注入阻止層21より構成されている。
【0031】
より詳しくは、X線透過性基板17は、X線が入射される面(X線入射面)とは反対側の面が電子源16に向くように、取り付け基板15に対して対向配置されている。
【0032】
そして、ターゲット部12と電子源16は、X線の照射エネルギーを光電変換可能とするために、本体ケース19内に真空密封された状態で構成されている。
【0033】
図5に示すように、ターゲット部12は、X線透過性基板17の薄膜状電極18が形成されている面上に順次設けられた正孔注入阻止層19と、電荷増倍機能を持つ光導電性の光変換膜層20と、電子注入阻止層21とからなる。したがって、X線透過性基板17は、電子注入阻止層21が電子源16に向くように、取り付け基板15に対して対向配置される。これにより、電子源16は電子注入阻止層21側の面に向けて電子線を照射することができる。
【0034】
また、本実施形態における光変換膜層20は、感度層により構成されているが、さらには、X線入射面より順に、緩和層、正孔トラップ層、感度層より構成しても良い。
【0035】
正孔トラップ層は、X線や可視光などの照射によって発生した正孔をトラップする層であり、緩和層と正孔トラップ層が設けられているのは、正孔注入阻止層などにキズや膜厚ムラが発生している場合でも、それによる白キズの発生を抑えることができるようにするためである。
【0036】
なお、光変換膜層20の電荷増倍機能は、感度層によるものであり、光変換膜層20の構成要素としては、感度層のみで構成しても良い。
【0037】
ここで、薄膜状電極18には酸化インジウム・スズ(ITO)や酸化スズなどが使用される。また、正孔注入阻止層19には酸化セリウム(CeO)が、緩和層には非晶質セレン(a−Se)が、正孔トラップ層には非晶質セレン(a−Se)とフッ化リチウム(LiF)が、感度層には非晶質セレン(a−Se)が、電子注入阻止層21には硫化アンチモン(Sb)がそれぞれ使用される。
【0038】
図6に示すように、電子源16には、電子線を照射するための電圧Vdが供給される。さらに電子源16は、電子源制御部11に含まれるX走査ドライバ27とY走査ドライバ28に接続している。したがって、電子源16は、X走査ドライバ27とY走査ドライバ28により、ターゲット部12の電子注入阻止層26側の面に電子線を走査する。
【0039】
またX線センサー2は、図6に示すように、複数の開口が設けられたメッシュ29を備えてもよい。メッシュ29は、電子源16から照射される電子線を加速させたり、集束させたり、余剰電子を回収するために設けられる中間電極であり、電子源制御部11に含まれるメッシュ電圧印可部30に接続している。メッシュ電圧印可部30はメッシュ29に正電圧(メッシュ電圧)Vmeshを印可する。メッシュ29は、公知の金属材料、合金、半導体材料等で形成することができる。
【0040】
薄膜状電極18は、高電圧Vharpを供給する高電圧源31に接続している。この高電圧Vharpにより、ターゲット部12の光変換膜層20に高電界が印加される。さらに薄膜状電極18は画像処理部9に接続している。画像処理部9は、上述したように、薄膜状電極18から取り出された光電変換信号を検出して画像処理する。光電変換信号のレベルは、X線透過性基板17のX線入射面に入射される光の光量(強度)に応じて変化する。
【0041】
以上の説明で本実施形態における、基本的な構成及び作用が理解されたところで、以下、本実施形態における特徴点について説明をする。
【0042】
図7は、図5のターゲット部12の断面図における、凹部32付近を拡大した図である。
【0043】
図7に示す凹部32は、光変換膜層20からX線透過性基板17の上方面に到達する構成となっており、光変換膜層20からX線透過性基板17の上方面までを切削して形成していて、その上方に電子注入阻止層21が成膜された構成となっている。このため、凹部32において、薄膜状電極18は分割された構成となっているので、凹部32の上方に対応する薄膜状電極部分は、凹部32によって左右または前後に分離された状態となっている。
【0044】
図7においては、X線入射面は図面上の左側になっており、その反対面凹部32が形成されているので、ターゲット部12の断面形状は、図面上の右側が開口した状態の凹形状となっている。
【0045】
また、この凹部32の上面の開口部の幅Dは、凹部32の底面の幅dよりも広くなるように形成しており、この凹部32の上方面は電子注入阻止層21で覆われた構成となっている。このために、凹部32の表面からの2次電子の放出を抑制することが可能となるので、その結果、ターゲット部12の表面から発生する2次電子によるノイズを抑制することが可能となる。
【0046】
上述したX線センサーのターゲット部の製造方法を図8に示す。
【0047】
まず、第1の工程(a)では、X線透過性基板17のX線入射面とは反対面上に薄膜状電極18を成膜する。X線透過性基板17としてはX線を透過し、且つ、電気絶縁性の基板であればいかなる材料でも良く、ガラス系や樹脂系やセラミックス系などが使用可能である。薄膜状電極18は良導体でX線を透過する材料であれば良く、金(Au)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、白金(Pt)、酸化インジウム・スズ(ITO)や酸化スズ(SnO)などが使用可能で、形成方法としては、蒸着法やスパッタ法等を用いて形成することができる。
【0048】
次に、第2の工程(b)では、この成膜された薄膜状電極18上に正孔注入阻止層20を成膜する。正孔注入阻止層19としては、外部からの正孔注入が阻止を強化する材料であれば良く、酸化セリウム(CeO)などが使用可能で、成膜方法としては、蒸着法やスパッタ法等を用いて形成することができる。
【0049】
次に第3の工程(c)では、成膜された正孔注入阻止層19上に光変換膜層20を成膜する。光変換膜層20としては、非晶質セレン(a−Se)が使用可能であるが、使用目的に応じて、弗化リチウム(LiF)やテルル(Te)や砒素(As)などを一部乃至全体に添加しても良い。成膜方法としては、蒸着法やスパッタ法等を用いて形成することができる。
【0050】
次に、第4の工程(d)では、光変換膜層20からX線透過性基板17の上面まで凹部32を形成する。
【0051】
この凹部32の形成方法について一例を示す。まず、X線透過性基板17上に所望のレジストを均一に塗布し、その後、所望のパターンのフォトマスクを介して感光させ、所望のパターンを形成する。その後、ブラスト法やアルゴン、窒素、酸素などのドライエッチングやウェットエッチングでX線透過性基板17のフォトレジストで覆われていない部分をX線透過性基板17上面までエッチングして、レジストを除去して、凹部32を形成することが出来る。そのほか、ダイサーなどの研削や切削などを用いて凹部32を形成しても良い。また、凹部32を形成後に、洗浄をおこなっても良い。洗浄方法としては、オゾン水洗浄やスプレー洗浄や純水・中性洗剤・有機溶剤を用いた超音波洗浄などがあり、パーティクル等が除去できればいかなる方法を用いても良い。
【0052】
そして、第5の工程(e)では、光変換膜層20上および凹部32の上に電子注入阻止層21を成膜する。電子注入阻止層21としては、二次電子の放出を抑制する効果を持つ材料であればいかなる材料でも良く、材料としては、Zn、Cd、Ga、In、Si、Ge、Sn、As、Sb、Biからなる群の中から選ばれた少なくとも一者と、S、Sb、Te、の中の少なくとも一者からなる化合物が使用可能で、形成方法の一例として、不活性ガス中での蒸着により形成し、上記材料からなる多孔質性薄膜の膜厚、乃至は蒸着時の不活性ガス圧を可変することにより制御できる。或いは、上記材料からなる複数の多孔質性薄膜を積層して使用することも出来る。材料の一例として不活性ガス中蒸着で得られた硫化アンチモン(Sb)が使用可能である。
【0053】
以上のようにして、X線センサーのターゲット部12を製造していく。
【0054】
さらに、第4の工程(d)において形成された凹部32は、上面の開口部の幅Dは、凹部32の底面の幅dよりも広くなるように形成しているので、第5の工程(e)でこの凹部32の上に成膜される電子注入阻止層21は、凹部32の側壁を含めて凹部32全体を覆うことになるので、凹部32の表面からの2次電子の放出を抑制することが可能となり、その結果、ターゲット部12の表面から発生する2次電子によるノイズを抑制することが可能となる。
【0055】
以上説明したような製造方法によって、光変換膜層20からX線透過性基板17の上面まで凹部32を形成し、この凹部32によって薄膜状電極18を分割することが可能となるので、薄膜状電極自体をエッチングする必要がなくなり、そのエッチングによるパーティクルの発生がなくなるために、薄膜状電極18と正孔注入阻止層19の間、或いは、正孔注入阻止層と光変換膜層の間にパーティクルを抑制できるので、これによる白キズの出現が起きないようにすることができるのである。
【0056】
尚、本実施形態においては、X線センサーの方向性を便宜上、X線透過性基板17のX線入射面を下方と定義し、このX線透過性基板17の上方に薄膜状電極18、正孔注入阻止層19、光変換膜層20、電子注入阻止層21を順次成膜する構成としたが、この方向性については、X線の入射方向によって適宜変わるものであるので、特に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0057】
以上のように本発明の本発明のX線センサーは、下方面側がX線入射面となったX線透過性基板と、このX線透過性基板の上面の上方側に順次設けた薄膜状電極、正孔注入阻止層、光変換膜層、電子注入阻止層とを備え、前記電子注入阻止層から前記X線透過性基板の上方面に到達する凹部を形成し、この凹部内の前記X線透過性基板の上方面には電子注入阻止層を形成したものであるので、白キズの出現が起きないようにすることができる。
【0058】
すなわち、本発明のX線センサーは、X線透過性基板の上方側に薄膜状電極、正孔注入阻止層、光変換膜層、を順次成膜し、その状態で光変換膜層よりX線透過性基板に至るまで凹部を形成し、この凹部によって薄膜状電極を分割したので、薄膜状電極と正孔注入阻止層の間、或いは、正孔注入阻止層と光変換膜層の間のパーティクルを抑制できるので、これによる白キズの出現が起きないようにすることができるのである。
【0059】
したがって、X線センサーとそれを用いたX線診断装置への適用が大いに期待されるものである。
【符号の説明】
【0060】
1 X線源
2 X線センサー
3 撮像対象者
4 アーム
5 ベッド
6 装置本体
7 X線制御部
8 コントローラ
9 画像処理部
10 モニタ
11 電子源制御部
12 ターゲット部
13 移動制御部
14 入力部
15 取り付け基板
16 電子源
17 X線透過性基板
18 薄膜状電極
19 正孔注入阻止層
20 光変換膜層
21 電子注入阻止層
27 X走査ドライバ
28 Y走査ドライバ
29 メッシュ
30 メッシュ電圧印可部
31 高電圧源
32 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下方面側がX線入射面となったX線透過性基板と、このX線透過性基板の上面の上方側に順次設けた薄膜状電極、正孔注入阻止層、光変換膜層、電子注入阻止層とを備え、前記電子注入阻止層から前記X線透過性基板の上方面に到達する凹部を形成し、この凹部内の前記X線透過性基板の上方面には電子注入阻止層を形成したX線センサー。
【請求項2】
前記凹部の上面の開口部の幅は、凹部の底面の幅よりも広く構成した請求項1に記載のX線センサー。
【請求項3】
請求項1または2に記載のX線センサーの製造方法であって、
X線透過性基板上に薄膜状電極を成膜する第1の工程と、この成膜された薄膜状電極上に正孔注入阻止層を成膜する第2の工程と、成膜された正孔注入阻止層上に光変換膜層を成膜する第3の工程と、前記成膜された光変換膜層からX線透過性基板の上面まで凹部を形成する第4の工程と、この光変換膜層上および凹部の上に電子注入阻止層を成膜する第5の工程と、を備えたX線センサーの製造方法。
【請求項4】
X線源と、このX線源に所定間隔おいて対向配置したX線センサーとを備え、
前記X線センサーとして、請求項1または2に記載のX線センサーを用いたX線診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−229927(P2012−229927A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−96820(P2011−96820)
【出願日】平成23年4月25日(2011.4.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】