説明

ZnO系半導体素子の製造方法及びZnO系半導体素子

【課題】ZnO系半導体層の表面平坦性低下は抑制しつつ、成長速度の向上が図られたZnO系半導体素子の製造方法を提供する。
【解決手段】ZnO系半導体素子の製造方法は、基板を準備する工程と、無電極放電管3aと5aにOとNを含むガスを導入し、放電して第1のビームを発生させる工程と、成長温度を600℃以上として、基板の上方に、Znソースガン2から、少なくともZnを供給するとともに、無電極放電管3aと5aから第1のビームを供給して、n型ZnO系半導体層を成長させる工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ZnO系半導体素子の製造方法及びZnO系半導体素子に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化亜鉛(ZnO)は、室温で3.37eVのバンドギャップエネルギーを持つ直接遷移型の半導体で、励起子の束縛エネルギーが60meVと他の半導体に比べ比較的大きい。また、原材料が安価であるとともに、環境や人体への悪影響が少ないという特徴を有する。このため、ZnOを用いた高効率、低消費電力で、環境性にも優れた発光素子の実現が期待されている。
【0003】
例えばサファイア基板等の絶縁性基板上に、基板側からn型半導体層、活性層、p型半導体層を積層して形成するZnO系発光素子について考える。例えば、p型半導体層上にp側電極が形成され、p型半導体層を掘り込んで露出したn型半導体層上にn側電極が形成される。
【0004】
このように、同一面内にp側電極とn側電極が配置されている構造で、n型半導体層の膜厚が電流広がりに対して十分に厚くないと、n型半導体層の比抵抗が高いことに伴い、n側電極に近いメサ構造の端に電流が集中し、メサ外周部しか発光しないこととなる。なお、このような問題について例えば特許文献1に記載されている。n型半導体層の膜厚は、例えば1μm以上とすることが好ましい。
【0005】
図7は、サファイア基板上に、MgOバッファ層及びZnOバッファ層を介して成長させたZnO層に対する、(0002)面及び(10−10)面のX線回折(XRD)によるロッキングカーブ測定結果を示すグラフである。横軸がZnO層の膜厚を示し、縦軸がロッキングカーブの半値幅を示す。
【0006】
ZnO層の膜厚の増加に伴い半値幅が減少する傾向がある。ロッキングカーブの半値幅は、膜中の転位密度に関係していることから、ZnO膜厚の増加とともに転位密度が低減する傾向にあることが分かる。例えばサファイア基板上にZnO層を成長させる場合、ZnO層の膜厚は1μm以上が好ましく、1.5μm以上がより好ましい。
【0007】
厚いZnO層を成長させるためには、成長速度を高めることが好ましい。ただし、それと同時に、ZnO層の表面平坦性も良好であることが望まれる。
【0008】
なお、Oリッチ条件におけるZnOの2次元成長について、非特許文献1に説明されている。
【0009】
なお、ZnOの成長において水素をサーファクタントとして用いる技術について、特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−173404号公報
【特許文献2】特開2004−221352号公報
【非特許文献1】H. Kato, M. Sano, K. Miyamoto, and T. Yao, “High-quality ZnO epilayers grown on Zn-face ZnO substrates by plasma-assisted molecular beam epitaxy”, J. Crystal Growth 265, p375-381 (2004)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の一目的は、ZnO系半導体層の表面平坦性低下は抑制しつつ、成長速度の向上が図られたZnO系半導体素子の製造方法を提供することである。
【0012】
本発明の他の目的は、ZnO系半導体素子の新規な製造技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一観点によれば、基板を準備する工程と、無電極放電管にOとNを含むガスを導入し、放電して第1のビームを発生させる工程と、成長温度を600℃以上として、前記基板の上方に、少なくともZnを供給するとともに、前記無電極放電管から前記第1のビームを供給して、n型ZnO系半導体層を成長させる工程とを有するZnO系半導体素子の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0014】
OとNを含むガスを導入した無電極放電管から第1のビームを照射して、成長温度600℃以上でn型ZnO系半導体層を成長させることにより、表面平坦性の低下を抑制しつつ、n型ZnO系半導体層の成長速度向上が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の実施例によるZnO系半導体素子の製造に用いられる結晶製造装置の概略断面図である。
【図2】図2は、第1〜第4の比較例、第1の実施例、第5の比較例、及び第2の実施例のサンプル構造を示す概略断面図である。
【図3−1】図3−1は、第1〜第4の比較例の結果をまとめた表である。
【図3−2】図3−1は、第1の実施例、第5の比較例、及び第2の実施例の結果をまとめた表である。
【図4】図4は、第6の比較例及び第3の実施例のZnO系半導体発光素子を示す概略断面図である。
【図5】図5は、第6の比較例及び第3の実施例の結果をまとめた表である。
【図6】図6A及び図6Bは、ZnO層の成長温度と成長速度に対する成長モードの関係を示すグラフである。
【図7】図7は、サファイア基板上のZnO層に対するXRDによるロッキングカーブ測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
まず、図1を参照して、本発明の実施例によるZnO系半導体素子の製造に用いられる結晶製造装置について説明する。図1は、結晶製造装置の概略断面図であり、分子線エピタキシ(MBE)で結晶成長を行なう。
【0017】
超高真空容器1内に、Znソースガン2、Oソースガン3、Mgソースガン4、Nソースガン5、及びGaソースガン6が備えられている。Znソースガン2、Mgソースガン4、及びGaソースガン6は、それぞれ、Zn、Mg、及びGaの固体ソースを収容するクヌーセンセルを含み、それぞれ、Znビーム、Mgビーム、及びGaビームを出射する。
【0018】
Oソースガン3及びNソースガン5は、それぞれ、ラジオ周波(例えば13.56MHz)を用いる無電極放電管3a、5aを含む。
【0019】
Oソースガン3の無電極放電管3aに、O用マスフローコントローラ7を介してOガスが導入されるとともに、N用マスフローコントローラ8を介してNガスが導入される。無電極放電管3aに放電して発生させたビームが、Oソースガン3から出射される。無電極放電管3aで発生したビームには、Oラジカル、及びその他N元素の関与する活性種が含まれるものと推測される。
【0020】
Nソースガン5の無電極放電管5aに、N用マスフローコントローラ9を介してNガスが導入される。Nソースガン5は、無電極放電管5aでNラジカルを生成し、Nラジカルビームを出射する。
【0021】
超高真空容器1内に、基板ヒータを含むステージ10が配置され、ステージ10が基板11を保持する。基板11上に、所望のタイミングで所望のビームを供給することにより、所望の組成のZnO系半導体層を成長させることができる。
【0022】
ZnO系半導体は、少なくともZn及びOを含む。Mgソースガン4から供給されるMgを添加しMgZnOとすることで、ZnOよりもバンドギャップを広げることができる。また、Nソースガン5から供給されるNをp型不純物として添加することができる。n型ZnO系半導体は、n型不純物を特に添加しなくとも得ることができるが、Gaソースガン6から供給されるGaを、n型不純物として添加することもできる。
【0023】
超高真空容器1にはまた、反射高速電子回折(RHEED)用のガン12、及びRHEEDの像を映すスクリーン13が取り付けられている。RHEED像から、基板11上に成長させた結晶層の表面の平坦性を評価できる。結晶が2次元成長し表面が平坦である場合は、RHEED像がストリークパターンを示し、結晶が3次元成長し表面が平坦でない場合は、RHEED像がスポットパターンを示す。
【0024】
排気ポンプが超高真空容器1内部を排気する。なお、超高真空とは、真空度が1×10−7Torr以下のことをいう。
【0025】
次に、ZnO結晶成長におけるストイキオメトリ条件、Znリッチ条件、及びOリッチ条件の定義について説明する。
【0026】
Znのフラックス強度をJZnとし、Oラジカルのフラックス強度をJとする。ZnO結晶のO終端面へのZnの付着しやすさを示す係数(Znの付着係数)をKZnとし、Zn終端面へのOの付着しやすさを示す係数(Oの付着係数)をKとする。
【0027】
Znの付着係数KZnとフラックス強度JZnとの積KZnZnが、基板の単位面積に単位時間当たりに付着するZn原子の個数に対応し、Oの付着係数Kとフラックス強度Jとの積Kが、基板の単位面積に単位時間当たりに付着するO原子の個数に対応する。
【0028】
本明細書(及び特許請求の範囲)では、特に断らない場合、付着係数を掛けたフラックス強度を、単にフラックス強度と呼ぶこととする。つまり、積KZnZnをZnビームフラックス強度と呼び、積KをOラジカルビームフラックス強度と呼ぶ。
【0029】
Znビームフラックス強度KZnZnに対するOラジカルビームフラックス強度Kの比であるK/KZnZnを、フラックス比と定義する。フラックス比が1に等しい場合をストイキオメトリ条件と呼び、フラックス比が1より大きい場合をOリッチ条件と呼び、フラックス比が1より小さい場合をZnリッチ条件と呼ぶ。
【0030】
なお、H. Kato, M. Sano, K. Miyamoto, and T. Yao, “High-quality ZnO epilayers grown on Zn-face ZnO substrates by plasma-assisted molecular beam epitaxy”, J. Crystal Growth 265, p375-381 (2004)に、 フラックス比が5.6と極端にOリッチ条件のときに、ZnO結晶が2次元成長したエピタキシャル膜が得られることが開示されている。
【0031】
次に、Oラジカルビームフラックス強度K等の求め方について説明する。ZnO結晶の成長速度Gは、次式(1)で表すことができる。
G=[(KZnZn−1+(K−1−1 −RZnO ・・・(1)
ここで、RZnOはZnOの再蒸発の項であり、例えば+c(Zn極性)でのZnOの成長では、基板温度が800℃以下ではほとんど無視できる。基板温度が900℃を超えるとRZnOは数十nm/hのオーダとなり、成長速度に影響を及ぼしてくる。また、Znの付着係数KZnも基板温度が800℃を超えると低下し始め、やはり成長速度に影響を及ぼしてくる。
【0032】
成長速度Gは、RZnOが無視でき、Znの付着係数KZnが一定である800℃以下の基板温度で、ZnO膜を実際に成長させて測定することができる。Znビームフラックス強度KZnZnについて、付着係数KZnは、基板温度800℃以下では一定であることから1と置き、フラックス強度JZnは膜厚モニタ等で測定できる。
【0033】
得られた成長速度GとZnビームフラックス強度KZnZnとを上式(1)に代入することにより、Oソースガンの設定条件(O流量、RFパワー等)におけるOラジカルビームフラックス強度Kを求めることができる。さらに、フラックス比が求められ、フラックス比がストイキオメトリ条件、Oリッチ条件、Znリッチ条件のいずれであるか判定される。
【0034】
次に、第1〜第4の比較例、第1の実施例、第5の比較例、及び第2の実施例によるZnO層の成長方法について説明する。
【0035】
図2は、これらの比較例及び実施例のサンプル構造を示す概略断面図である。これらの比較例及び実施例では、c面サファイア基板20上に、MgOバッファ層21及びZnOバッファ層22を介して、ZnO層23を成長させる。これらの比較例及び実施例で、それぞれZnO層23の成長条件が異なる。これらの比較例及び実施例に共通な、ZnOバッファ層22の形成工程まで説明する。
【0036】
まず、c面サファイア基板20にサーマルアニールを施し基板表面を洗浄した。サーマルアニールは、1×10−9Torrの高真空下において、900℃で30分行なった。
【0037】
次に、基板温度を500℃とし、Mgビーム及びOラジカルビームをc面サファイア基板20上に照射して、MgOバッファ層21を、厚さ8nm形成した。c面サファイア基板上に直接ZnO層を成長させると、表面がO極性面のZnO層が成長する。MgOバッファ層を挿入することで、表面がZn極性面のZnO層を成長させることができる。
【0038】
次に、基板温度を350℃とし、Znビーム及びOラジカルビームをMgOバッファ層21上に照射して、ZnOバッファ層22を形成した。次に、ZnOバッファ層22の結晶性を向上させるため、基板温度を800℃に上げて、20分のアニールを行なった。ZnOバッファ層22の厚さは、10nm程度とした。
【0039】
次に、第1の比較例のZnO層23の成長方法について説明する。第1の比較例では、OソースガンにOガスのみ導入して、Oラジカルビームを照射する。
【0040】
基板温度を700℃とし、Znビーム及びOラジカルビームをZnOバッファ層22上に照射して、厚さ1μmのZnO層23を成長させた。Znビームは、固体ソースとして純度7NのZnを用い、Znビームフラックス強度KZnZnを1.6×1014atoms/(cms)として照射した。
【0041】
Oラジカルビームは、純度6Nの純酸素ガスを3sccmで導入し、RFパワー300Wで照射した。この条件は、1.2×1015atoms/(cms)のOラジカルビームフラックス強度Kに相当し、フラックス比は、Oリッチ条件となる。
【0042】
次に、第2の比較例のZnO層23の成長方法について説明する。第2の比較例でも、第1の比較例と同様に、OソースガンにOガスのみ導入して、Oラジカルビームを照射する。ただし、第1の比較例よりも、Znビームフラックス強度KZnZnを高くする。
【0043】
基板温度を700℃とし、Znビーム及びOラジカルビームをZnOバッファ層22上に照射して、ZnO層23を成長させた。Znビームは、Znビームフラックス強度KZnZnを2×1015atoms/(cms)として照射した。
【0044】
Oラジカルビームは、Oガスを3sccmで導入し、RFパワーを300Wとし、第1の比較例と同様に、Oラジカルビームフラックス強度Kを1.2×1015atoms/(cms)として照射した。フラックス比は、Znリッチ条件となる。
【0045】
次に、第3の比較例のZnO層23の成長方法について説明する。第3の比較例でも、第1の比較例と同様に、OソースガンにOガスのみ導入して、Oラジカルビームを照射する。ただし、第1の比較例よりも、Znビームフラックス強度KZnZn及びOラジカルビームフラックス強度Kの両方を高くする。
【0046】
基板温度を700℃とし、Znビーム及びOラジカルビームをZnOバッファ層22上に照射して、ZnO層23を成長させた。Znビームは、第2の比較例と同様に、Znビームフラックス強度KZnZnを2×1015atoms/(cms)として照射した。
【0047】
さらに、Oラジカルビームは、Oガスを3sccmで導入し、RFパワーを400Wとし、Oラジカルビームフラックス強度Kを3×1015atoms/(cms)として照射した。フラックス比は、Oリッチ条件となる。
【0048】
次に、第4の比較例のZnO層23の成長方法について説明する。第4の比較例は、基板温度を1000℃として、その他は第3の比較例と同様な条件で、ZnO層23を成長させた。
【0049】
次に、第1の実施例のZnO層23の成長方法について説明する。第1の実施例では、OソースガンにOガスとNガスの混合ガスを導入して、Oラジカルビームを照射する。
【0050】
第2の比較例と同様に、基板温度を700℃とし、Znビームは、Znビームフラックス強度KZnZnを2×1015atoms/(cms)として照射した。
【0051】
Oラジカルビームは、Oガスを3sccmで導入するとともに、Nガスを0.05sccmで導入し、RFパワー300Wで照射した。つまり、第2の比較例と同様のO流量とRFパワーにおいて、さらにNを導入して、Oラジカルビームを照射した。
【0052】
第1〜第4の比較例、及び第1の実施例のZnO層23に対し、RHEED及び原子間力顕微鏡(AFM)で表面平坦性を評価し、目視で表面観察し、さらに、2次イオン質量分析(SIMS)により膜中の不純物濃度を測定した。また、膜厚と成長時間から成長速度を求めた。
【0053】
図3−1は第1〜第4の比較例の、図3−2は第1の実施例(と第5の比較例及び第2の実施例)の結果をまとめた表である。上側から、AFM像、RHEED像、目視観察の評価、不純物濃度、及び成長速度を示す。
【0054】
AFM像は、1μm角の領域を示し、この観察より表面粗さ(二乗平均平方根粗さ)Rmsを求めた。RHEED像は、[11−20]方向のものである。不純物濃度は、第1の比較例のものを基準とし、他のサンプルでは基準よりも混入量の多い元素を確認した。
【0055】
第1の比較例のZnO層は、AFM観察より、表面が平坦で、表面粗さRmsは0.34nmであった。RHEED像は2次元成長を示すストリークパターンであり、目視観察で透明であった。不純物の混入も少なく、良好なZnO層が得られている。しかし、成長速度が125nm/hと遅い。例えば1μm程度の膜厚を成長させるのに、8時間程度かかってしまう。
【0056】
第2の比較例のZnO層は、第1の比較例よりもZnビームフラックス強度KZnZnを増やしたことにより、成長速度増加が図られ、成長速度が648nm/hと速くなっている。しかし、AFM像は平坦でなく、表面粗さRmsは22.70nmであり、RHEED像は3次元成長を示すスポットパターンとなっており、表面平坦性が著しく低下している。Znリッチ条件下で、3次元成長となったものと考えられる。また、目視観察で白濁していた。
【0057】
第3の比較例のZnO層は、第1の比較例よりもZnビームフラックス強度KZnZn及びOラジカルビームフラックス強度Kの両方を増やしたことにより、第2の比較例よりもさらに成長速度増加が図られ、成長速度が1028nm/hまで速くなっている。しかし、AFM像は平坦でなく、表面粗さRmsは26.59nmであり、RHEED像は3次元成長を示すスポットパターンとなっており、表面平坦性が著しく低下している。また、目視観察で白濁していた。
【0058】
第3の比較例では、さらに、Siが濃度2×1019cm−3で混入している。これは、Oラジカルの供給量を増やすためOソースガンに印加するRFパワーを上げたことに起因して、石英製の無電極放電管の内壁がスパッタされて発生したSiがZnO層中に取り込まれたものと考えられる。
【0059】
第3の比較例は、Oリッチ条件ではあるがストイキオメトリ条件に近い程度のOリッチ条件であり、成長速度が非常に速く、そして膜中にSiが混入したこと等に起因して、3次元成長となったものと考えられる。
【0060】
第4の比較例では、第3の比較例において基板温度を1000℃に高めることにより、高い成長速度を維持しつつ表面平坦性の改善を図った。AFM像は第3の比較例に比べて平坦であり、表面粗さRmsは2.21nmに低下しており、RHEED像は2次元成長を示すストリークパターンとなっている。
【0061】
しかし、第3の比較例に比べ、平坦性は向上したものの、成長速度は低下してしまった。これは、成長温度を1000℃と高くしたことにより、Znの付着係数KZnが低下し、またZnOの再蒸発量が増加したことに起因すると考えられる。
【0062】
また、ピットが非常に多く、良好な膜とは言えない。目視観察で白濁しており、これはピットによるものと考えられる。第4の比較例でも、無電極放電管内壁のスパッタに起因するSiが、濃度2×1019cm−3で混入しており、Siがピット発生の一因と思われる。
【0063】
第1の実施例は、第2の比較例と同様なZnビームフラックス強度KZnZn、及び第2の比較例と同様なOソースガンのOガス導入量とRFパワー(Oソースガンに酸素のみ導入の場合の条件に対応させるとフラックス比はZnリッチ)であるが、Oソースガンに窒素も導入した。
【0064】
第1の実施例のZnO層は、AFM観察より、表面が平坦で、表面粗さRmsは0.33nmであった。なお、例えば、1μm角の領域のAFM観察で得られる表面粗さRmsが1.0nm以下である場合、表面が平坦であると判断される。
【0065】
RHEED像は2次元成長を示すストリークパターンであり、目視観察で透明であり、良好な膜が得られている。さらに、成長速度が1013nm/hと、1μm/h以上の非常に高い成長速度が得られている。また、Oソースガンに窒素を導入したことに伴い、Nが濃度3×1019cm−3で添加されている。なお、成長速度の増加から、Oソースガンに窒素を混入することにより、Oラジカルビームフラックス強度が増加しているものと予想される。
【0066】
このように、Oソースガンに酸素と窒素を含むガスを導入することにより、良好な表面平坦性に加え、非常に高い成長速度が得られることがわかった。成長速度が大幅に増加したにも拘らず、表面平坦性が良好であるのは、Oラジカルと同時に照射される、Nが関与した活性種のサーファクタント効果ではないかと推測される。ただし、これは1つの推測である。
【0067】
近年の薄膜成長の有力な研究手法の一つに、サーファクタント媒介エピタキシがある。これは、サーファクタントと呼ばれる表面活性剤(原子、分子等)を用いて、薄膜の成長様式を人工的に変化させる手法であり、エピタキシャル成長制御の有用な手段となっている。例えば、特開2004−221352号公報に、水素をサーファクタントとして用いる技術が開示されている。
【0068】
なお、Nは通常ZnOに対するp型不純物として添加されるが、実施例のZnO層は、Nが添加されていてもn型半導体層として機能する(後述の第3の実施例参照)。
【0069】
次に、第5の比較例のZnO層23の成長方法について説明する。第5の比較例では、第3の比較例の条件において、OソースガンにOガスのみを導入してOラジカルビームを照射すると同時に、NソースガンからNラジカルビームを照射する。
【0070】
基板温度を700℃とし、Znビーム及びOラジカルビームをZnOバッファ層22上に照射して、ZnO層23を成長させた。Znビームは、Znビームフラックス強度KZnZnを2×1015atoms/(cms)として照射した。
【0071】
Oラジカルビームは、Oガスを3sccmで導入し、RFパワーを400Wとし、Oラジカルビームフラックス強度Kを3×1015atoms/(cms)として照射した。さらに、Nラジカルビームを、Nガスを2sccmで導入し、RFパワー90Wで照射した。
【0072】
第5の比較例のZnO層23に対しても、RHEED及びAFMにより表面平坦性を評価し、目視で表面観察し、さらに、SIMSで膜中の不純物濃度を測定した。また、膜厚と成長時間から成長速度を求めた。
【0073】
図3−2に、第5の比較例の結果を示す。AFM像より、表面が平坦でなく3次元成長していることがわかる。表面粗さRmsは30.60nmであった。RHEED像は、3次元成長を示すスポットパターンであった。成長速度は995nm/hであった。第3の比較例と同様に、濃度2×1019cm−3でSiの混入が見られた。また、目視観察で白濁していた。
【0074】
第5の比較例では、Oラジカルの照射時に、NソースガンからNラジカルを照射したが、表面平坦性の向上効果は見られなかった。成長速度は、第3の比較例と同程度であり、成長速度の向上効果も見られなかった。
【0075】
次に、第2の実施例のZnO層23の成長方法について説明する。第2の実施例では、第1の実施例と同様に、OソースガンにOガスとNガスの混合ガスを導入して、Oラジカルビームを照射する。ただし、Oソースガンに導入するNガスの流量を、第1の実施例の0.05sccmよりも多い3sccm(体積比で、O:N=1:1)とした。他の条件は第1の実施例と同様である。
【0076】
第2の実施例のZnO層23に対しても、RHEED及びAFMにより表面平坦性を評価し、目視で表面観察し、さらに、SIMSで膜中の不純物濃度を測定した。また、膜厚と成長時間から成長速度を求めた。
【0077】
図3−2に、第2の実施例の結果を示す。AFM像より、表面が平坦であることがわかる。表面粗さRmsは0.35nmであった。RHEED像は2次元成長を示すストリークパターンであり、目視観察で透明であり、良好な膜が得られている。さらに、成長速度は非常に速く、1020nm/hであった。Nは濃度3×1019cm−3で添加されている。なお、Siの混入は見られない。
【0078】
このように、Oソースガンに導入するNガスの流量を、例えば体積比でO:N=1:1まで増加させても、第1の実施例と同様に、表面平坦性の向上効果及び成長速度の向上効果が見られた。
【0079】
良好な表面平坦性を維持しつつ高い成長速度が得られるためには、Oソースガンに導入するOとNの混合比(体積比)を、0<(N/O)<10の範囲とするのが好ましいこと(0.01≦(N/O)<10の範囲とするのがより好ましいこと)を、検討の結果把握した。N/O≧10の範囲では、成長速度の増加があまり見られない。
【0080】
とNの混合ガスの総量が多すぎると結晶成長装置内の真空度を高真空に維持できず、成長膜の結晶性を悪化させることや、無電極放電管内で放電が安定しないこと等の問題が生じてくるため、高真空を維持し放電の安定する範囲で、適宜O供給量とN供給量を調節することが好ましい。
【0081】
次に、第6の比較例及び第3の実施例のZnO系半導体発光素子について説明する。第6の比較例及び実施例では、c面サファイア基板上に、ZnO系半導体発光素子を作製する。まず、第6の比較例について説明する。第6の比較例では、OソースガンにOガスのみ導入して、Oラジカルビームを照射する。
【0082】
図4は、第6の比較例(及び第3の実施例)のZnO系半導体発光素子を示す概略断面図である。まず、c面サファイア基板30にサーマルアニールを施し基板表面を洗浄した。サーマルアニールは、1×10−9Torrの高真空下において、900℃で30分行なった。サファイア基板30は、絶縁性である。
【0083】
次に、基板温度を500℃とし、Mgビーム及びOラジカルビームをc面サファイア基板30上に照射して、MgOバッファ層31を、厚さ8nm形成した。
【0084】
次に、基板温度を350℃とし、Znビーム及びOラジカルビームをMgOバッファ層31上に照射して、ZnOバッファ層32を形成した。次に、ZnOバッファ層32の結晶性を向上させるため、基板温度を800℃に上げて、20分のアニールを行なった。ZnOバッファ層32の厚さは、10nm程度とした。
【0085】
次に、基板温度を700℃とし、Znビーム及びOラジカルビームをZnOバッファ層32上に照射して、厚さ1.5μmのn型ZnO層33を成長させた。Znビームは、固体ソースとして純度7NのZnを用い、Znビームフラックス強度KZnZnを1.6×1014atoms/(cms)として照射した。
【0086】
Oラジカルビームは、純度6Nの純酸素ガスを3sccmで導入し、RFパワー300Wで照射した。この条件は、1.2×1015atoms/(cms)のOラジカルビームフラックス強度Kに相当する。第6の比較例のn型ZnO層33に対するZnビーム及びOラジカルビームの照射条件は、第1の比較例と同様である。
【0087】
次に、基板温度700℃で、Znビーム、Oラジカルビーム、及びMgビームをn型ZnO層33上に照射して、n型MgZn1−xO(x=0.25)層34を成長させた。Znビームは、Znビームフラックス強度KZnZnを2×1015atoms/(cms)として照射した。
【0088】
Oラジカルビームは、Oガスを2sccmで導入し、RFパワー300Wで照射した。この条件は、1×1015atoms/(cms)のOラジカルビームフラックス強度Kに相当する。
【0089】
Mgビームは、固体ソースとして純度6NのMgを用い、Mgビームフラックス強度を1.7×1014atoms/(cms)として照射した。n型MgZn1−xO(x=0.25)層34の厚さは30nmとした。
【0090】
n型ZnO層33及びn型MgZn1−xO(x=0.25)層34には、Ga等のn型不純物を添加していないが、n型の導電型を得ることができる。
【0091】
次に、基板温度700℃で、Znビーム及びOラジカルビームをn型MgZn1−xO(x=0.25)層34上に照射して、ZnO活性層35を成長させた。Znビームは、Znビームフラックス強度KZnZnを1.6×1014atoms/(cms)として照射した。
【0092】
Oラジカルビームは、Oガスを3sccmで導入し、RFパワー300Wで照射した。この条件は、1.2×1015atoms/(cms)のOラジカルビームフラックス強度Kに相当する。ZnO活性層35の厚さは10nmとした。
【0093】
次に、基板温度700℃で、Znビーム、Oラジカルビーム、Mgビーム、及びNラジカルビームをZnO活性層35上に照射して、p型MgZn1−xO(x=0.25)層36を成長させた。
【0094】
Znビームは、Znビームフラックス強度KZnZnを9.5×1014atoms/(cms)として照射した。Oラジカルビームは、Oガスを2sccmで導入し、RFパワー300Wで照射して、Oラジカルビームフラックス強度Kを1×1015atoms/(cms)とした。
【0095】
Mgビームは、Mgビームフラックス強度を1.7×1014atoms/(cms)として照射した。Nラジカルビームは、純度7Nの純窒素ガスを0.5sccmで導入し、RFパワー90Wで照射した。
【0096】
p型MgZn1−xO(x=0.25)層36の厚さは30nmとした。このように成長させたp型MgZn1−xO(x=0.25)層36中のN濃度は、1×1020cm−3以上となる。
【0097】
次に、p型MgZn1−xO(x=0.25)36までの各層が積層されたサファイア基板30基板上に、レジスト膜あるいは保護膜を設け、n側電極形成部の形状の切り欠き窓を持つエッチングマスクを形成する。その後、例えばウエットエッチングやリアクティブイオンエッチングで、切り欠き窓内の半導体層を、n型ZnO層33が露出するまでエッチングする。
【0098】
次に、露出したn型ZnO層33上に、n側電極40を形成した。n側電極40は、例えば、厚さ10nmのチタン層上に、厚さ500nmのアルミニウム層を積層して形成される。
【0099】
次に、n側電極形成用のエッチングマスクを除去し、p型MgZn1−xO(x=0.25)層36上に、p側透明電極41を形成した。p側透明電極41は、例えば、厚さ1nmのニッケル層上に、厚さ10nmの金層を積層して形成される。そして、p側透明電極41上に、p側ボンディング電極42を形成した。p側ボンディング電極42は、例えば厚さ500nmの金層で形成される。なお、p側電極の形成にも、適宜レジスト等のマスクが用いられる。
【0100】
この後、例えば400℃の酸素雰囲気中で、例えば2分の電極合金化処理を行う。このようにして、第6の比較例のZnO系発光ダイオードを作製した。
【0101】
次に、第3の実施例のZnO系半導体発光素子について説明する。第3の実施例は、第6の比較例とn型ZnO層33の成長条件が異なり、他は第6の比較例と同様である。
【0102】
第3の実施例のn型ZnO層33は、第1の実施例と同様にして成長させた。すなわち、基板温度を700℃とし、Znビームは、Znビームフラックス強度KZnZnを2×1015atoms/(cms)として照射した。また、Oラジカルビームは、OソースガンにOガスを3sccmで導入するとともに、Nガスを0.05sccmで導入し、RFパワー300Wで照射した。n型ZnO層33の厚さは1.5μmとした。n型ZnO層33の厚さは、1μm以上が好ましく、1.5μm以上がさらに好ましい。
【0103】
第6の比較例及び第3の実施例の発光素子に対し、発光状態を観察し、I−V特性を測定した。また、p型MgZn1−xO(x=0.25)層36の表面平坦性を、電極形成前にAFMで評価した。さらに、n型ZnO層33のN濃度をSIMSで測定した。
【0104】
図5は、第6の比較例及び第3の実施例の結果をまとめた表である。上側から、I−V特性、AFM像、及びN濃度を示す。
【0105】
第6の比較例及び第3の実施例の発光素子とも、発光特性はほぼ同等であったが、I−V特性(順バイアスでの特性を示し、横軸が電圧、縦軸が電流を示す)は、第6の比較例でリーク電流がやや多く、第3の実施例の方が、良好なダイオード特性を示した。
【0106】
AFM像は、比較例及び実施例それぞれについて、左側に5μm角の領域を示し、右側に1μm角の領域を示す。5μm角及び1μm角の領域の観察より、それぞれ表面粗さRmsを求めた。
【0107】
第6の比較例のp型MgZnO層36には多数のピットが見られ、表面粗さRmsは、5μm角について2.32nm、1μm角について0.93nmであった。第3の実施例のp型MgZnO層36にはピットが非常に少なく、表面粗さRmsは、5μm角について1.04nm、1μm角について0.45nmであった。第3の実施例のn型ZnO層33のN濃度は、3×1019cm−3であった。
【0108】
第6の比較例でリーク電流が多いのは、ピットの発生量が多いことに対応しているものと思われる。第3の実施例でピット発生量が少ないのは、Oソースガンに導入した窒素によるサーファクタント効果が働いたためと考えられる。
【0109】
このように、Oソースガンに酸素と窒素を含むガスを導入する実施例の手法が、発光素子等のn型半導体層の成長に適用可能であり、ピット発生の抑えられた膜が得られ、素子のリーク電流低減等に効果があることがわかった。
【0110】
図6A及び図6Bは、ZnO層の成長温度と成長速度に対する成長モードの関係を確認した結果を示すグラフである。
【0111】
図6Aに示すように、Oソースガンの無電極放電管に酸素ガス単体を導入した場合に、平坦性に優れた2次元成長膜の得られる領域が、高温、低成長速度側に位置する領域I(左上りの斜線で示す)である。領域Iに対して、低温、高成長速度側では、多数のピットが発生したり、3次元成長しやすくなったりする傾向がある。
【0112】
図6Bに示すように、Oソースガンの無電極放電管にOとNの混合ガスを導入する実施例の手法により、平坦性に優れた2次元成長膜の得られる領域が、領域Iよりも低温、高成長速度側に広がった領域II(右上りの斜線で示す)となる(同じ成長速度で比較したとき、OソースガンにOのみ導入したときは3次元成長する領域でも、OとNの混合ガスを導入した場合は2次元成長する領域がある)。
【0113】
2次元成長において、実施例の手法により、所定の成長速度(例えば600nm/h)が得られる基板温度の下限が下がる。また、領域Iで実現できない高い成長速度(例えば800nm/h以上)が、実施例の手法により実現できる。
【0114】
2次元成長が得られる下限の基板温度は、成長速度が速くなるほど高くなる。例えば800nm/h以上の高い成長速度を得るため、成長温度は600℃以上とすることが好ましい。なお、2次元成長が得られる上限の基板温度は、成長速度が速くなるほど低くなる。成長温度が高いほど再蒸発及びZnの付着係数低下の影響が大きくなるので、成長速度を速くするのが難しくなる。
【0115】
なお、実施例の手法でn型ZnO層に添加されるN濃度についても検討したところ、Oラジカルビームフラックス強度Kに対してZnビームフラックス強度KZnZnが高くなるほど(フラックス比が小さくなるほど)、N濃度が高くなる傾向があることがわかった。N濃度は、1×1018cm−3〜7×1020cm−3の範囲となる。特に、1μm/h以上の高い成長速度を実現するO流量では、1×1018cm−3〜1×1020cm−3程度の範囲となる。
【0116】
以上説明したように、酸素と窒素を含む混合ガスを、同じソースガンの無電極放電管に導入して発生させたビームを供給して、ZnO層を成長させることにより、良好な表面平坦性を維持しつつ高い成長速度で、n型ZnO層を成長させることができる。例えば厚さ1μm以上の厚いn型ZnO層の成長が容易となる。
【0117】
十分に高い成長速度(例えば800nm/h以上)を得るために、成長温度を十分に高く(例えば600℃以上に)することが好ましい。なお、ZnOの再蒸発を抑制するために、成長温度は900℃以下とすることがさらに好ましい。
【0118】
例えば、1μm角の領域のAFM観察で得られる表面粗さRmsが1.0nm以下の、表面平坦性の高いn型ZnO層が得られる。このように成長されたn型ZnO層は、例えば1×1018cm−3以上の濃度でNを含む。
【0119】
なお、OソースガンにOとNの混合ガスを導入する例を説明したが、酸素と窒素を含むガスであれば、他のガス種を用いることもできよう。例えば、Oと混合させるガスとして、Nの他に、NO、NO、NO、N、N等の窒素酸化物やNH等を用いることができよう。これらは1種、あるいは複数種を混ぜて用いることができるであろう。
【0120】
あるいは、酸素と窒素を含むガスとして、NO、NO、NO、N、N等の窒素酸化物を用いることもできるであろう。さらに、酸素と窒素を含むガスとして窒素酸化物を用いつつ、窒素源となるガスあるいは酸素源となるガスを組み合わせて用いることも考えられる。
【0121】
なお、実施例ではn型ZnO層を成長させる例を説明したが、実施例の技術は、n型ZnO系半導体層の成長にも有効であろう。例えば、n型MgZnO層を、Oソースガンに酸素と窒素を含むガスを導入して成長させることにより、良好な表面平坦性と高い成長速度が期待される。ZnO系半導体としては、その他、例えばBeZnO、ZnCdO、ZnSeO、ZnSO等が挙げられる。
【0122】
さらに、実施例ではアンドープのn型ZnO層を成長させる例を説明したが、n型不純物として例えばGaやAl等を添加する場合でも、Oソースガンに酸素と窒素を含むガスを導入して成長させることにより、良好な表面平坦性と高い成長速度が期待される。
【0123】
なお、基板としてサファイア基板に限らず、例えばSiC基板やGaN基板等を用いることもできるであろう。
【0124】
なお、Oソースガンに酸素と窒素を含むガスを導入して成長させることによる、ZnO系半導体層の表面平坦性の低下抑制効果及び成長速度向上効果は、600℃より低い成長温度についても確かめている。
【0125】
なお、実施例の技術を利用して得られたn型ZnO系半導体層は、種々の製品に利用することができる。例えば、発光ダイオード(LED)やレーザダイオード(LD)及びその応用製品(例えば、各種インジケータや、LEDディスプレイ、LDディスプレイ、プロジェクター用RGB光源など)に利用できる。
【0126】
なお、発光素子以外であっても、例えば1μm以上の厚いZnO系半導体層が必要な用途に利用できるであろう。
【0127】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【符号の説明】
【0128】
1 超高真空容器
2 Znソースガン
3 Oソースガン
3a (Oソースガンの)無電極放電管
4 Mgソースガン
5 Nソースガン
5a (Nソースガンの)無電極放電管
6 Gaソースガン
7 O用マスフローコントローラ
8、9 N用マスフローコントローラ9
10 ステージ
11 基板
12 RHEED用ガン
13 RHEED用スクリーン
20 サファイア基板
21 MgOバッファ層
22 ZnOバッファ層
23 (n型)ZnO層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を準備する工程と、
無電極放電管にOとNを含むガスを導入し、放電して第1のビームを発生させる工程と、
成長温度を600℃以上として、前記基板の上方に、少なくともZnを供給するとともに、前記無電極放電管から前記第1のビームを供給して、n型ZnO系半導体層を成長させる工程と
を有するZnO系半導体素子の製造方法。
【請求項2】
前記基板は、サファイア基板、SiC基板、GaN基板のいずれかである請求項1に記載のZnO系半導体素子の製造方法。
【請求項3】
前記無電極放電管に導入するOとNを含むガスは、N、NO、NO、NO、N、N、及びNHのうちのいずれかを含む請求項1または2に記載のZnO系半導体素子の製造方法。
【請求項4】
前記無電極放電管に導入するOとNを含むガスは、OとNの混合ガスである請求項3に記載のZnO系半導体素子の製造方法。
【請求項5】
前記無電極放電管に導入するOとNの混合ガスの、OとNの体積比は、(N/O)<10の範囲である請求項4に記載のZnO系半導体素子の製造方法。
【請求項6】
前記n型ZnO系半導体層を成長させる工程は、分子線エピタキシを用いる請求項1〜5のいずれか1項に記載のZnO系半導体素子の製造方法。
【請求項7】
前記n型ZnO系半導体層を成長させる工程は、n型ZnO系半導体層を厚さ1μm以上成長させる請求項1〜6のいずれか1項に記載のZnO系半導体素子の製造方法。
【請求項8】
前記n型ZnO系半導体層を成長させる工程は、Znリッチ条件で行われる請求項1〜7のいずれか1項に記載のZnO系半導体素子の製造方法。
【請求項9】
前記n型ZnO系半導体層を成長させる工程で成長させたn型ZnO系半導体層は、1×1018cm−3以上の濃度でNを含む請求項1〜8のいずれか1項に記載のZnO系半導体素子の製造方法。
【請求項10】
前記n型ZnO系半導体層を成長させる工程で成長させるn型ZnO系半導体は、MgZnO、BeZnO、ZnCdO、ZnSeO、ZnSOのうちのいずれかである請求項1〜9のいずれか1項に記載のZnO系半導体素子の製造方法。
【請求項11】
1×1018cm−3以上の濃度でNを含み、厚さが1μm以上であるn型ZnO系半導体層を含むZnO系半導体素子。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−232324(P2010−232324A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−76884(P2009−76884)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】