説明

はんだ付け状態の検査方法

【課題】従来の、ワークのはんだ付け部形状と予め登録されたはんだ付け部形状とをパターンマッチングさせてはんだ付け状態を検査する方法では、実際は良品であるのに不良品とする過剰判定が生じてしまう恐れがあり、はんだ付け状態を判別分析により検査する方法では、はんだ付け部の形状が予め登録できない不良モード等に属する形状であると誤判定が生じる恐れがあった。
【解決手段】はんだ付け状態の良否を、はんだ付け部のパターン形状により判定する、はんだ付け状態の検査方法であって、検査対象となるワーク内に存在する複数の同一パターンのはんだ付け部のうち、あるはんだ付け部のパターン形状を示す、はんだ付け部の形状を撮像したパターン画像等の情報と、他のはんだ付け部のパターン形状を示す前記情報とを比較することにより、前記はんだ付け部のはんだ付け状態の良否を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、はんだ付け状態の良否を、該はんだ付け部のフィレット形状により検査する、はんだ付け状態の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント回路基板上に表面実装される半導体集積回路等の各種実装部品においては、該実装部品が備える多数のリードピンがプリント配線基板のランドにはんだ付けされている。
各種実装部品が実装された前記プリント配線基板においては、各実装部品のはんだ付け状態の良否が、プリント配線基板を組み込んだ製品の動作状態や信頼性を左右するため、前記はんだ付け状態の良否を検査することが行われている。
【0003】
リードピンのはんだ付け状態の検査としては、例えば、はんだ付け部におけるリードピンの先端部に形成されるフィレットの形状と、予め登録されているフィレット形状とをパターンマッチングさせて、そのマッチング度合いによりはんだ付け状態の良否を判定することが行われている。パターンマッチングにより行われているはんだ付け状態の検査の例としては、例えば特許文献1に示すようなものがある。
【0004】
また、リードピンのはんだ付け状態の検査としては、例えば、はんだ付け部におけるリードピンの先端部に形成されるフィレットの形状が、予め登録されている良品形状と複数に分類化された不良形状との何れに属するかの判定を判別分析により行うことで、はんだ付け状態の良否を判定しているものもある。判別分析により行われているはんだ付け状態の検査の例としては、例えば特許文献2に示すようなものがある。
【特許文献1】特開2006−177723号公報
【特許文献2】特開2004−085216号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記実装部品をプリント回路基板上に実装する場合、プリント回路基板上へのはんだの印刷状態や、実装部品のマウント状態や、はんだ付け時のリフロー条件等といった製造条件のばらつき、および実装部品等の各部品の寸法のばらつき等の影響により、はんだ付け状態が良好なフィレットの形状としては、種々の形状が存在する。つまり、良品のフィレット形状の分布は広くなっている。
【0006】
しかし、前述のようにはんだ付け状態の良否判定をパターンマッチングにより行う場合は、予め登録された所定のフィレット形状と、各リードピンのフィレット形状とを比較して、そのマッチング度合いを判定するため、はんだ付け状態が良好な(良品の)リードピンであったとしても、そのフィレット形状と予め登録されたフィレット形状とのマッチング度合いが低いと、はんだ付け状態が不良であると判断されてしまう場合がある。
つまり、パターンマッチングによりはんだ付け状態の良否判定を行う場合、実際は良品であるのに不良品として判定してしまう過剰判定が生じてしまう恐れがあり、プリント回路基板の生産性低下を招いてしまうこととなる。
【0007】
また、はんだ付け状態の良否判定を判別分析により行う場合は、リードピンのフィレット形状が、予め登録されている良品形状(良カテゴリ)と不良形状(否カテゴリ)との何れに属するかを判断しているため、再現が困難で予め登録しておくことができない不良モードや現れる形状が予測できない不良モードに属する形状は、良品形状(良カテゴリ)および不良形状(否カテゴリ)の何れに属するかが予測できないため、誤判定が生じる恐れがある。
【0008】
そこで、本発明においては、過剰判定を行うことなく、登録しておくことができない不良モードや現れる形状が予測できない不良モードに属する形状であっても誤判定することなく適正に判定することが可能なはんだ付け状態の検査方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するはんだ付け状態の検査方法は、以下の特徴を有する。
即ち、請求項1記載の如く、はんだ付け状態の良否を、はんだ付け部のパターン形状により検査する、はんだ付け状態の検査方法であって、検査対象となるワーク内に存在する複数の同一パターンのはんだ付け部のうち、あるはんだ付け部のパターン形状を示す情報と、他のはんだ付け部のパターン形状を示す情報とを比較することにより、前記はんだ付け部のはんだ付け状態の良否を判定する。
これにより、はんだ付け時の製造条件や部品の寸法ばらつきなどにより、はんだ付け状態が良好なはんだ付け部のパターン形状が、ワーク毎で異なった場合などでも、各はんだ付け部のパターン形状のマッチング度合いを比較するのは、同一ワーク内(同一の製造ロットで製造されたワーク内を含む)の当該はんだ付け部と他のはんだ付け部との間であるので、ワーク毎でのフィレット形状のばらつきに影響を受けることがなく、はんだ付け部のはんだ付け状態の良否を過剰判定することなく適切に判定することができる。
従って、例えば予め登録しておいた基準はんだ付け部のフィレット形状と、ワークの各はんだ付け部のパターン形状とを比較した場合のように、ある製造ロットで製造されたワークにおけるはんだ付け状態が良好なはんだ付け部のパターン形状と基準はんだ付け部のパターン形状とのマッチング度合いが、他の製造ロットで製造されたワークにおける前記マッチング度合いよりも低くなって、該はんだ付け部のはんだ付け状態が不良であると誤判断されることもない。
また、本検査方法は、判別分析にてはんだ付け状態の良否判定を行った場合のように、良品形状(良カテゴリ)と不良形状(否カテゴリ)とを予め登録しておいて、これらの何れに属するかを判断するものではないため、はんだ付け状態が不良であるはんだ付け部のパターン形状が、再現が困難で予め登録しておくことができない不良モードや現れる形状が予測できない不良モードに属する形状であったとしても対応することができ、あるはんだ付け部のパターン形状と他のはんだ付け部のパターン形状を比較して、その形状の異同を判断することで、はんだ付け状態の良否を適正に判定することが可能である。
【0010】
また、請求項2記載の如く、前記はんだ付け部のパターン形状を示す情報として、前記ワークにおけるはんだ付け部のパターン画像を取得し、前記ワーク内に存在する複数の同一パターン形状のはんだ付け部のうち、あるはんだ付け部のパターン画像と、他のはんだ付け部のパターン画像とを比較して、両者のマッチング度合いを求め、
求めたマッチング度合いに基づいてはんだ付け状態の良否を判定する。
これにより、はんだ付け時の製造条件や部品の寸法ばらつきなどにより、はんだ付け状態が良好なはんだ付け部のパターン形状が、ワーク毎で異なった場合などでも、各はんだ付け部のパターン形状のマッチング度合いを比較するのは、同一ワーク内(同一の製造ロットで製造されたワーク内を含む)の当該はんだ付け部と他のはんだ付け部との間であるので、ワーク毎でのフィレット形状のばらつきに影響を受けることがなく、はんだ付け部のはんだ付け状態の良否を過剰判定することなく適切に判定することができる。
従って、例えば予め登録しておいた基準はんだ付け部のフィレット形状と、ワークの各はんだ付け部のパターン形状とを比較した場合のように、ある製造ロットで製造されたワークにおけるはんだ付け状態が良好なはんだ付け部のパターン形状と基準はんだ付け部のパターン形状とのマッチング度合いが、他の製造ロットで製造されたワークにおける前記マッチング度合いよりも低くなって、該はんだ付け部のはんだ付け状態が不良であると誤判断されることもない。
また、本検査方法は、判別分析にてはんだ付け状態の良否判定を行った場合のように、良品形状(良カテゴリ)と不良形状(否カテゴリ)とを予め登録しておいて、これらの何れに属するかを判断するものではないため、はんだ付け状態が不良であるはんだ付け部のパターン形状が、再現が困難で予め登録しておくことができない不良モードや現れる形状が予測できない不良モードに属する形状であったとしても対応することができ、あるはんだ付け部のパターン形状と他のはんだ付け部のパターン形状を比較して、その形状の異同を判断することで、はんだ付け状態の良否を適正に判定することが可能である。
【0011】
また、請求項3記載の如く、前記はんだ付け部のパターン形状を示す情報として、前記ワークにおけるはんだ付け部のパターン画像と、予め登録された基準はんだ付け部のパターン画像とのマッチング度合いを示すマッチングスコアを求め、前記ワーク内に存在する複数の同一パターンのはんだ付け部のうち、あるはんだ付け部のマッチングスコアと、他のはんだ付け部のマッチングスコアとを比較して、前記マッチングスコアの差分値を算出し、算出した前記マッチングスコアの差分値に基づいてはんだ付け状態の良否を判定する。
これにより、はんだ付け時の製造条件や部品の寸法ばらつきなどにより、はんだ付け状態が良好なはんだ付け部のパターン形状が、ワーク毎で異なった場合などでも、各はんだ付け部のパターン形状の良否判断は、同一のワーク内(同一の製造ロットで製造されたワーク内を含む)のはんだ付け部間での前記マッチング度合いの差分値を用いて行うので、ワーク間で「マッチングスコア」の値自体に差があったとしてもその影響を受けることなく、過剰判定を防止して正確にはんだ付け状態の良否判定を行うことが可能となる。
例えば、従来のごとく、単純に、予め登録しておいた基準はんだ付け部のパターン形状と、ワークの各はんだ付け部のパターン形状とのマッチング度合いに基づいてはんだ付け状態の良否を判定した場合のように、ある製造ロットで製造されたワークにおけるはんだ付け状態が良好なはんだ付け部のパターン形状と基準はんだ付け部のパターン形状とのマッチング度合いが、他の製造ロットで製造されたワークにおける前記マッチング度合いよりも低くなって、該端子のはんだ付け状態が不良であると誤判断されることもない。
また、本検査方法は、判別分析にてはんだ付け状態の良否判定を行った場合のように、良品形状(良カテゴリ)と不良形状(否カテゴリ)とを予め登録しておいて、これらの何れに属するかを判断するものではないため、はんだ付け状態が不良であるはんだ付け部のパターン形状が、再現が困難で予め登録しておくことができない不良モードや現れる形状が予測できない不良モードに属する形状であったとしても対応することができ、隣接する端子間のマッチング度合いの差分値を算出し、その差分値の大小を判断することで、はんだ付け状態の良否を適正に判定することが可能となる。
【0012】
また、請求項4記載の如く、前記マッチング値の差分値に基づくはんだ付け状態の良否の判定は、各端子におけるマッチング値の差分値を母集団とする分布の標準偏差を定数倍した値を基準値として行う。
これにより、異なる製造ロットで製造された複数のはんだ付け部に対して検査を行う場合でも、各はんだ付け部のパターン形状の良品形状のばらつき等に対応して適切な値を基準値として設定することが可能となり、はんだ付け部のはんだ付け状態の良否判定を、より正確に行うことが可能となる。
【0013】
また、請求項5記載の如く、前記はんだ付け部のパターン形状が、良カテゴリまたは否カテゴリの何れに属するかの判定を、はんだ付け部毎に算出した判別分析スコアを用いて判別分析により行い、判別分析による判定の結果、良カテゴリに属するはんだ付け部について、該はんだ付け部のパターン形状を示す情報として前記判別分析スコアを用い、前記ワーク内に存在する複数の同一パターンのはんだ付け部のうち、あるはんだ付け部の判別分析スコアと、他のはんだ付け部の判別分析スコアとの差分値を算出し、算出した前記判別分析スコアの差分値に基づいてはんだ付け状態の良否を判定する。
これにより、判別分析にて予め設定された不良モード以外の不良形状を有したはんだ付け部端子を検出することができるとともに、良品であるはんだ付け部を過剰判定により不良であると判定することがなく、はんだ付け部のはんだ付け状態の良否の判断を高精度に行うことが可能となる。
【0014】
また、請求項6記載の如く、前記判別分析スコアの差分値に基づくはんだ付け状態の良否の判定は、各端子における前記判別分析スコアの差分値を母集団とする分布の標準偏差を定数倍した値を基準値として行う。
これにより、各はんだ付け部の良品形状のばらつき等に対応して適切な値を基準値として設定することが可能であるため、はんだ付け部のはんだ付け状態の良否判定を、より正確に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、はんだ付け部のはんだ付け状態の良否を過剰判定することなく適切に判定することができる。
また、はんだ付け状態が不良であるはんだ付け部のパターン形状が、再現が困難で予め登録しておくことができない不良モードや現れる形状が予測できない不良モードに属する形状であったとしても対応することができ、はんだ付け状態の良否を適正に判定することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明を実施するための形態を、添付の図面を用いて説明する。
【0017】
図1には、プリント回路基板1に表面実装された実装部品である半導体集積回路11を示しており、該半導体集積回路11に備えられる多数のリードピン12(第1ピン12a、第2ピン12b、第3ピン・・・)は、プリント回路基板1の表面に形成されるランド2・2・・・に、それぞれはんだ付けされている。
前記ランド2にはんだ付けされるリードピン12の先端部には、該ランド2とリードピン12とを接続しているはんだによりフィレット21が形成されている。
本はんだ付け状態の検査方法は、検査対象となるワークのはんだ付け部のパターン形状によりはんだ付け状態の良否を判定するが、本例でははんだ付け部のパターン形状として、前記半導体集積回路11の各リードピン12のランド2とのはんだ付け部におけるフィレット21の形状が適用される。
【0018】
[第1の実施形態]
本実施形態におけるはんだ付け状態の検査方法は、前記リードピン12のはんだ付け部のはんだ付け状態の良否を、該はんだ付け部のフィレット21の形状により検査するものであり、検査対象となるワークとしての半導体集積回路11のあるリードピン12に形成されるフィレット21の形状を示す情報と、他のリードピン12のフィレット21の形状を示す情報とを比較して、両者のマッチング度合い(一致度合い)を各リードピン12について求め、求めたマッチング度合いに基づいてはんだ付け状態の良否を判定するようにしている。
【0019】
また、本例の場合、前記他のリードピン12は、前記あるリードピン12に隣接するリードピン12としており、前記フィレット21の形状を示す情報としては、該フィレット21の形状を撮像したパターン画像を用いている。
つまり、本例では、各リードピン12に形成されるフィレット21の形状のパターン画像と、該各リードピン12に隣接するリードピン12のフィレット21の形状のパターン画像とのマッチング度合い(一致度合い)をそれぞれ求め、求めたマッチング度合いに基づいてはんだ付け状態の良否を判定するようにしている。
【0020】
また、図1には、本検査方法を実現するための手段であるはんだ付け状態検査装置5が示されており、該はんだ付け状態検査装置5は、各リードピン12および各リードピンのフィレット21の形状を撮像可能な撮像装置58と、前記撮像装置58にて撮像されたパターン画像に基づいて、各リードピン12に形成されるフィレット形状と、該各リードピン12に隣接するリードピン12のフィレット形状とのマッチング度合いをそれぞれ求めるとともに、求めたマッチング度合いに基づいてはんだ付け状態の良否を判定する判定装置50と、前記判定装置50におけるはんだ付け状態の良否の判定結果等を表示するモニタ等の表示装置59とを備えている。
【0021】
前記判定装置50は、前記撮像装置58にて撮像されたパターン画像等を記憶するハードディスク等の記憶部52と、前記撮像装置58にて撮像されたパターン画像を用いて隣接するリードピン12のフィレット21形状のマッチング度合いを求めるマッチング処理部53と、前記マッチング処理部53にて求められたマッチング度合いに基づいて各リードピン12のはんだ付け状態の良否を判定する判定部54とを備えている。
【0022】
前記はんだ付け状態の検査方法において、前記各リードピン12(第1ピン12a、第2ピン12b、第3ピン12c・・・)は、図1における左端側から右方へ向って、第1ピン12a、第2ピン12b、第3ピン12c・・・の順に配置されており、前記マッチング処理部53によるマッチング処理は、具体的には、前記撮像装置58にて撮像された各リードピン12に形成されるフィレット形状のパターン画像を用いて、例えば第1ピン12aと該第1ピン12aに隣接する第2ピン12bとのフィレット21形状のマッチング度合い、第2ピン12bと該第2ピン12bに隣接する第3ピン12cとのフィレット21形状のマッチング度合い、第3ピン12cと該第3ピン12cに隣接する第4ピン12dとのフィレット21形状のマッチング度合い、といったように、隣接するリードピン12同士のフィレット形状のマッチング度合いを求めることで行われる。
【0023】
この場合、第1ピン12aと該第1ピン12aに隣接する第2ピン12bとのフィレット21形状のマッチング度合いを、第1ピン12aにおける「隣接端子マッチングスコア」にて表わし、第2ピン12bと該第2ピン12bに隣接する第3ピン12cとのフィレット21形状のマッチング度合いを、第2ピン12bにおける「隣接端子マッチングスコア」にて表わし、第3ピン12cと該第3ピン12cに隣接する第4ピン12dとのフィレット21形状のマッチング度合いを、第2ピン12bにおける「隣接端子マッチングスコア」にて表わしている。以降のリードピンについても同様である。
【0024】
図2に示すように、前記「隣接端子マッチングスコア」はリードピン12毎に求められており、隣接するリードピン12のフィレット21形状の一致度合いが高いほど数値が大きく、一致度合いが低いほど数値が小さくなっている。また、「隣接端子マッチングスコア」は、例えば0〜100の範囲の数値にて表わされている。
なお、前記マッチング処理部53にて求められる各リードピン12間の「隣接端子マッチングスコア」は、前記表示装置59に表示することが可能である。
【0025】
図2によると、前記第1ピン12aの「隣接端子マッチングスコア」は「95」となり、第2ピン12bの「隣接端子マッチングスコア」は「30」となり、第3ピン12cの「隣接端子マッチングスコア」は「32」となり、第4ピン12dの「隣接端子マッチングスコア」は「93」であり、第5ピン12eの「隣接端子マッチングスコア」は「94」となっている。
【0026】
また、本例のはんだ付け状態の検査方法においては、前記判定部54において、各リードピン12の「隣接端子マッチングスコア」の値と予め設定され前記記憶部5に記憶された所定の基準値tの値とを比較することにより、当該「隣接端子マッチングスコア」が求められたリードピン12のはんだ付け状態の良否を判定するようにしている。
本例の場合、例えば前記基準値tが70に設定されていたとすると、第1ピン12a、第4ピン12d、および第5ピン12eが前記基準値tよりも大きい値となり、第2ピン12bおよび第3ピン12cが前記基準値tよりも小さい値となる。
【0027】
このように第1ピン12a、第4ピン12d、および第5ピン12eの「隣接端子マッチングスコア」の値が前記基準値tよりも大きい値であるということは、該第1ピン12aと第2ピン12bとのフィレット21形状のマッチング度合い、第4ピン12dと第5ピン12eとのフィレット21形状のマッチング度合い、および第5ピン12eと該第6ピン12fとのフィレット21形状のマッチング度合いが高く、略同様の形状であるということを示している。
また、第2ピン12bおよび第3ピン12cの「隣接端子マッチングスコア」の値が前記基準値tよりも小さい値であるということは、第2ピン12bと第3ピン12cとのフィレット21形状のマッチング度合い、第3ピン12cと第4ピン12dとのフィレット21形状のマッチング度合いが小さく、異なった形状であるということを示している。
【0028】
ここで、半導体集積回路11をプリント回路基板1に実装した場合、同一の半導体集積回路11内における各リードピン12・12・・・は、同等のはんだ塗布条件、同等のはんだ付け条件、同等の部品寸法ばらつきではんだ付けされているため、各リードピン12・12・・・が正常にはんだ付けされていれば、各リードピン12・12・・・のフィレット21の形状は略同じになる。
また、何れかのリードピン12にはんだ付け異常がありフィレット21形状が不良であった場合、該リードピン12のフィレット21の形状は、隣接する正常なリードピン12のフィレット21の形状と異なることとなる。
【0029】
従って、各リードピン12において得られた「隣接端子マッチングスコア」の値が前記基準値t以上であった場合には、そのリードピン12のはんだ付け状態は良好であると考えられ、得られた「隣接端子マッチングスコア」の値が前記基準値tよりも小さかった場合には、そのリードピン12のはんだ付け状態は不良である可能性があると考えられる。
【0030】
本例の場合、第1ピン12a、第4ピン12d、および第5ピン12eの「隣接端子マッチングスコア」の値が前記基準値tよりも大きい値であるため、該第1ピン12a、第4ピン12d、および第5ピン12eのはんだ付け状態が良好であると判断できる。
また、第2ピン12bおよび第3ピン12cの「隣接端子マッチングスコア」の値が前記基準値tよりも小さい値であるため、該第2ピン12bおよび第3ピン12cのはんだ付け状態が不良である可能性があると考えられる。
【0031】
前記はんだ付け状態検査装置5においては、このはんだ付け状態が不良である可能性があると考えられる第2ピン12bおよび第3ピン12cについて、前記判定部54にて「はんだ付け状態が不良である可能性がある」旨の判定を行い、前記表示装置59に表示することが可能となっている。
その後、検査員が表示装置59に表示された判定結果をみて、不良可能性の判定を受けたリードピン12(第2ピン12bおよび第3ピン12c)を目視で確認し、当該リードピン12のはんだ付け状態や不良モード等をさらに検査することができる。
【0032】
また、前記判定部54にてはんだ付け状態が不良である可能性があると判定された第2ピン12bおよび第3ピン12cについて、さらに前記判定部54においてはんだ付け状態の良否の判断を行うことができる。
つまり、前述のように、第2ピン12bと第3ピン12cとのフィレット21形状のマッチング度合いを示す、該第2ピン12bの「隣接端子マッチングスコア」の値は基準値tよりも小さく、両者の形状が異なっていることがわかる。
また、前記第2ピン12bの第3ピン12c側とは反対側に隣接する第1ピン12aが、前述のようにはんだ付け状態が良好であると判断できるとともに、該第1ピン12aの「隣接端子マッチングスコア」の値が基準値t以上であるため、第1ピン12aのフィレット21形状と前記第2ピン12bのフィレット21形状とは略同じで、前記第2ピン12bははんだ付け状態が良好であるといえる。その結果、第3ピン12cのはんだ付け状態が不良であると判断できる。
なお、この第3ピン12cのはんだ付け状態が不良であると判断した判定結果は、前記表示装置59に表示することが可能である。
【0033】
このように、本例の検査方法では、半導体集積回路11の各リードピン12に形成されるフィレット形状と、該各リードピン12に隣接するリードピン12のフィレット形状とのマッチング度合いを示す「隣接端子マッチングスコア」をそれぞれ求め、求めた「隣接端子マッチングスコア」が前記基準値tよりも小さいか否かで、はんだ付け状態が不良である異常リードピン12を検出するようにしている。
【0034】
従って、はんだ付け時の製造条件や部品の寸法ばらつきなどにより、はんだ付け状態が良好なリードピン12のフィレット21形状が半導体集積回路11毎、または製造されたロットが異なる半導体集積回路11毎で異なった場合などでも、各リードピン12のフィレット21形状のマッチング度合いを比較するのは、同一の半導体集積回路内の当該リードピン12と隣接するリードピン12のフィレット21形状であるので、半導体集積回路11毎でのフィレット21形状のばらつきに影響を受けることがなく、リードピン12のはんだ付け状態の良否を適切に判定することができる。
これにより、例えば予め登録しておいた基準リードピン(マスターピン)のフィレット形状と、各リードピン12のフィレット形状とを比較した場合のように、半導体集積回路11のロットによっては、はんだ付け状態が良好なリードピン12のフィレット21形状と基準リードピンのフィレット形状とのマッチング度合いが低くなって、該リードピン12のはんだ付け状態が不良であると誤判断されることもない。
【0035】
つまり、同じ半導体集積回路11、または同じロットで製造された半導体集積回路11に備えられる各リードピン12・12・・・は、同等のはんだ付け条件や同等の寸法ばらつきの部品にてはんだ付けされたものであるため、はんだ付け状態が良好なリードピン12同士であればフィレット形状が大きく異なることがなく、高いマッチング度合いを示すこととなるため、はんだ付け状態が不良であると誤って判断されることがない。
【0036】
また、本例の検査方法は、判別分析にてはんだ付け状態の良否判定を行った場合のように、良品形状(良カテゴリ)と不良形状(否カテゴリ)とを予め登録しておいて、これらの何れに属するかを判断するものではないため、はんだ付け状態が不良であるリードピン12のフィレット21形状が、再現が困難で予め登録しておくことができない不良モードや現れる形状が予測できない不良モードに属する形状であったとしても対応することができ、隣接するリードピン12のフィレット21形状を比較して、その形状の異同を判断することで、はんだ付け状態の良否を適正に判定することが可能となっている。
【0037】
なお、本検査方法によりはんだ付け状態が不良であると判断されたリードピン12(本例の場合第3ピン12c)については、前記はんだ付け状態検査装置5による検査後に検査員が表示装置59に表示された判定結果をみて、不良判定を受けたリードピン12(第3ピン12c)を目視で実際に確認し、当該リードピン12のはんだ付け状態や不良モード等を検査することもできる。
このように、はんだ付け状態検査装置5による判定結果と合わせて、検査員による検査を行うことで、より確実に、また、より詳細にリードピン12のはんだ付け状態を検査することができる。
【0038】
また、本例では、各リードピン12のはんだ付け状態の検査を隣接するリードピン12同士を比較することで行っているが、これに限るものではなく、任意の複数のリードピン12を選択して比較することも可能である。
【0039】
[第2の実施形態]
本実施形態におけるはんだ付け状態の検査方法は、前記はんだ付け状態検査装置5により、前記リードピン12のはんだ付け部のはんだ付け状態の良否を、はんだ付け部のフィレット21の形状により検査するものであり、検査対象となるワークとしての半導体集積回路11の各リードピン12に形成されるフィレット21の形状を撮像したパターン画像と、予め登録された基準リードピンの良品フィレット21の形状を撮像したパターン画像とのマッチング度合い(一致度合い)を、各リードピン12のはんだ付け部におけるパターン形状を示す情報としてそれぞれ求め、あるリードピン12の前記マッチング度合いと、他のリードピン12の前記マッチング度合いとの差分値を算出し、算出した前記マッチング度合いの差分値に基づいてはんだ付け状態の良否を判定するようにしている。
なお、本例の場合、前記他のリードピン12は、前記あるリードピン12に隣接するリードピン12としている。
また、前記基準リードピンの良品フィレット形状を撮像したパターン画像は、前記はんだ付け状態検査装置5における判定装置50の記憶部52に記憶されている。
【0040】
本はんだ付け状態の検査方法においては、具体的には、図3に示すように、前記各リードピン12(第1ピン12a、第2ピン12b、第3ピン12c・・・)のフィレット21形状を前記撮像装置58にて撮像し、撮像した各リードピン12のフィレット21形状のパターン画像と、前記記憶部52に予め登録されている基準リードピンの良品フィレット形状のパターン画像との比較をマッチング処理部53にて行い、該フィレット形状のマッチング度合いを求める。
この場合、各リードピン12のフィレット21形状と前記基準リードピンの良品フィレット形状とのマッチング度合いを「マッチングスコア」にて表わしている。
前記「マッチングスコア」は、各リードピン12のフィレット21形状と、前記基準リードピンの良品フィレット形状との一致度合いが高いほど数値が大きく、一致度合いが低いほど数値が小さくなっている。また、「マッチングスコア」は、例えば0〜100の範囲の数値にて表わされている。
なお、前記マッチング処理部53にて求められる各リードピン12の「マッチングスコア」は、前記表示装置59に表示することが可能である。
【0041】
図4によると、第1サンプルにおける第1ピン12aの「マッチングスコア」は「95」となり、第2ピン12bの「マッチングスコア」は「92」となり、第3ピン12cの「マッチングスコア」は「32」となり、第4ピン12dの「隣接端子マッチングスコア」は「93」となり、第5ピン12eの「隣接端子マッチングスコア」は「94」となっている。
【0042】
本例の検査方法においては、さらに、各リードピン12について求めた「マッチングスコア」と、当該リードピン12に隣接するリードピン12の「マッチングスコア」との差分値を、マッチング処理部53にて算出するようにしている。
例えば、第1ピン12aの「マッチングスコア」と第2ピン12bの「マッチングスコア」との差分値が、第1ピン12aの「マッチングスコア差」として表わされ、第2ピン12bの「マッチングスコア」と第3ピン12cの「マッチングスコア」との差分値が、第2ピン12bの「マッチングスコア差」として表わされ、第3ピン12cの「マッチングスコア」と第4ピン12dの「マッチングスコア」との差分値が、第3ピン12cの「マッチングスコア差」として表わされ、第4ピン12dの「マッチングスコア」と第5ピン12eの「マッチングスコア」との差分値が、第4ピン12dの「マッチングスコア差」として表わされ、第5ピン12eの「マッチングスコア」と第6ピン12fの「マッチングスコア」との差分値が、第5ピン12eの「マッチングスコア差」として表わされている。
なお、前記マッチング処理部53にて求められる各リードピン12の「マッチングスコア差」は、前記表示装置59に表示することが可能である。
【0043】
図4によると、前記第1ピン12aの「マッチングスコア差」は「−3」となり、第2ピン12bの「マッチングスコア差」は「−60」となり、第3ピン12cの「マッチングスコア差」は「61」となり、第4ピン12dの「マッチングスコア差」は「1」となり、第5ピン12eの「マッチングスコア差」は「5」となっている。
【0044】
本例のはんだ付け状態の検査方法においては、前記判定部54にて、各リードピン12の「マッチングスコア差」の絶対値と、予め設定しておいた所定の基準値tの値とを比較することにより、当該リードピン12のはんだ付け状態の良否を判定するようにしている。
図5に示すように、前記基準値tは、複数のリードピン12を備えたあるサンプル(例えば第1サンプル)内における、はんだ付け状態が良品であるリードピン12の「マッチングスコア差」の値の分布に基づいて定められ、具体的には前記分布の標準偏差σを定数倍した値を基準値tとしている。
すなわち、基準値tは、次の[数1]にて表わされる。
【0045】
【数1】

なお、[数1]におけるxは定数を示している。
また、前記基準値tは、例えば前記マッチング処理部53にて「マッチングスコア差」が算出された後、該マッチング処理部53にて設定され、前記記憶部52に記憶される。
この場合、前記定数xは、検査開始前に予め所定の値に設定され記憶部52に記憶されており、マッチング処理部53は、この定数xと、前述のように算出された「マッチングスコア差」に基づいて求められる標準偏差σとを用いて、前記基準値tを求める。
【0046】
ここで、前述のように同一の半導体集積回路11内、または同一の製造ロットの半導体集積回路11内における各リードピン12・12・・・が正常にはんだ付けされていれば、各リードピン12・12・・・のフィレット21の形状は略同じになるため、各リードピン12・12・・・の基準リードピンに対する「マッチングスコア」も略同じ値となる。従って、隣接するリードピン12・12のはんだ付け状態がともに良好であれば前記「マッチングスコア差」の値は小さくなる。
また、何れかのリードピン12にはんだ付け異常があった場合、異常があったリードピン12の「マッチングスコア」の値と、正常なリードピン12の「マッチングスコア」値とには大きな差が生じるため、隣接するリードピン12・12の一方のはんだ付け状態が良好で他方が不良であれば前記「マッチングスコア差」の値は大きくなる。
【0047】
従って、各リードピン12の「マッチングスコア差」の値が前記基準値t以下であれば当該リードピンのはんだ付け状態は良好であると考えられ、各リードピン12の「マッチングスコア差」の値が前記基準値tよりも大きければ当該リードピン12のはんだ付け状態は不良であると考えられる。
【0048】
図4には、互いに製造ロットが異なり、はんだ付け条件等の製造条件や、部品の寸法のばらつきがある、第1サンプル〜第3サンプルの半導体集積回路11についての「マッチングスコア」および「マッチングスコア差」を示しているが、本例の第1サンプルの場合、例えば「マッチングスコア差」の値の分布の標準偏差σを2.5とし、定数xを3に設定すると、前記基準値tは7.5となる。
この基準値tに基づいて判断すると、第1ピン12a、第4ピン12d、および第5ピン12eの「マッチングスコア差」が前記基準値tよりも小さい値となっているため、該第1ピン12a、第4ピン12d、および第5ピン12eのはんだ付け状態が良好であると判断できる。
また、第2ピン12bおよび第3ピン12cの「マッチングスコア差」が前記基準値tよりも大きい値となっているため、該第2ピン12bおよび第3ピン12cのはんだ付け状態が不良である可能性があると考えられる。
なお、本例では、前記定数xを3に設定して、各リードピン12が良品となる「マッチングスコア差」の値の範囲が、該「マッチングスコア差」の分布の−3σ〜+3σの範囲となるようにしているが、この範囲に限るものではなく、はんだ付け状態の良否を判定する基準の厳しさ等に応じて前記定数xを2や4等の他の値に設定することも可能である。
【0049】
前記はんだ付け状態検査装置5においては、本例の場合も、はんだ付け状態が不良である可能性があると考えられる第2ピン12bおよび第3ピン12cについて、前記判定部54にて「はんだ付け状態が不良である可能性がある」旨の判定を行い、前記表示装置59に表示することが可能となっている。
その後、検査員が表示装置59に表示された判定結果をみて、不良可能性の判定を受けたリードピン12を前述のように目視で検査することができる。
【0050】
また、前記判定部54にてはんだ付け状態が不良である可能性があると判定された第2ピン12bおよび第3ピン12cについて、さらに前記判定部54においてはんだ付け状態の良否の判断を行うことができる。
つまり、前述のように、第2ピン12bの「マッチングスコア」と第3ピン12cの「マッチングスコア」との差分を示す、該第2ピン12bの「マッチングスコア差」の値は基準値tよりも大きく、両者のフィレット21形状が異なっていることがわかる。
また、前記第2ピン12bの第3ピン12cとは反対側に隣接する第1ピン12aが、前述のようにはんだ付け状態が良好であると判断できるとともに、第1ピン12aのフィレット21形状と前記第2ピン12bのフィレット21形状とは略同じで、前記第2ピン12bははんだ付け状態が良好であるといえる。その結果、第3ピン12cのはんだ付け状態が不良であると判断できる。
【0051】
また、図4によると、本例における第2サンプルについても、第1サンプルの場合と同様に「マッチングスコア」および「マッチングスコア差」が求められている。
つまり、第2サンプルにおける第1ピン12aの「マッチングスコア」は「50」となり、第2ピン12bの「マッチングスコア」は「55」となり、第3ピン12cの「マッチングスコア」は「40」となり、第4ピン12dの「マッチングスコア」は「52」となり、第5ピン12eの「マッチングスコア」は「53」となっている。
さらに、第2サンプルにおける第1ピン12aの「マッチングスコア差」は「5」となり、第2ピン12bの「マッチングスコア差」は「−15」となり、第3ピン12cの「マッチングスコア差」は「12」となり、第4ピン12dの「マッチングスコア差」は「1」となり、第5ピン12eの「マッチングスコア差」は「5」となっている。
【0052】
前記第2サンプルの場合、例えば「マッチングスコア差」の値の分布の標準偏差σを2.2とし、定数xを第1サンプルの場合と同様に3に設定すると、前記基準値tは6.6となる。
この基準値tに基づいて判断すると、第1ピン12a、第4ピン12d、および第5ピン12eの「マッチングスコア差」が前記基準値tよりも小さい値となっているため、該第1ピン12a、第4ピン12d、および第5ピン12eのはんだ付け状態が良好であると判断できる。
また、第2ピン12bおよび第3ピン12cの「マッチングスコア差」が前記基準値tよりも大きい値となっているため、該第2ピン12bおよび第3ピン12cのはんだ付け状態が不良である可能性があると考えられるが、前述のように、第1ピン12aは「マッチングスコア差」の値が基準値tよりも小さくはんだ付け状態が良好であると判断できるので、第2ピン12bもはんだ付け状態が良好であるといえ、結果的に第3ピン12cのはんだ付け状態が不良であると判断できる。
【0053】
また、図4によると、本例における第3サンプルについても、第1サンプルの場合と同様に「マッチングスコア」および「マッチングスコア差」が求められている。
つまり、第3サンプルにおける第1ピン12aの「マッチングスコア」は「75」となり、第2ピン12bの「マッチングスコア」は「76」となり、第3ピン12cの「マッチングスコア」は「65」となり、第4ピン12dの「隣接端子マッチングスコア」は「74」となり、第5ピン12eの「隣接端子マッチングスコア」は「74」となっている。
さらに、第2サンプルにおける第1ピン12aの「マッチングスコア差」は「1」となり、第2ピン12bの「マッチングスコア差」は「−11」となり、第3ピン12cの「マッチングスコア差」は「9」となり、第4ピン12dの「マッチングスコア差」は「0」となり、第5ピン12eの「マッチングスコア差」は「2」となっている。
【0054】
前記第3サンプルの場合、例えば「マッチングスコア差」の値の分布の標準偏差を1.8とし、定数xを第1サンプルの場合と同様に3に設定すると、前記基準値tは5.4となる。
この基準値tに基づいて判断すると、第1ピン12a、第4ピン12d、および第5ピン12eの「マッチングスコア差」が前記基準値tよりも小さい値となっているため、該第1ピン12a、第4ピン12d、および第5ピン12eのはんだ付け状態が良好であると判断できる。
また、第2ピン12bおよび第3ピン12cの「マッチングスコア差」が前記基準値tよりも大きい値となっているため、該第2ピン12bおよび第3ピン12cのはんだ付け状態が不良である可能性があると考えられるが、前述のように、第1ピン12aは「マッチングスコア差」の値が基準値tよりも小さくはんだ付け状態が良好であると判断できるので、第2ピン12bもはんだ付け状態が良好であるといえ、結果的に第3ピン12cのはんだ付け状態が不良であると判断できる。
【0055】
以上のごとく、本例の検査方法では、半導体集積回路11の各リードピン12に形成されるフィレット形状と、予め判定装置50の記憶部52に登録された基準リードピンの良品フィレット形状とのマッチング度合いを示す「マッチングスコア」をそれぞれ求め、隣接するリードピン12・12間での前記「マッチングスコア」の差分値を示す「マッチングスコア差」を算出し、算出した前記「マッチングスコア差」に基づいて、はんだ付け状態が不良である異常リードピン12を検出するようにしている。
【0056】
このように行われる本例のはんだ付け状態の検査方法には、次のような利点がある。
つまり、例えば異なる半導体集積回路11のリードピン12、または異なる製造ロットにて製造された半導体集積回路11のリードピン12においては、はんだ付け条件等の製造条件や、部品の寸法のばらつき等により、はんだ付け状態が良好なリードピン12であってもフィレット21の形状に違いが生じることがあるため、同じ基準リードピンの良品フィレット形状との「マッチングスコア」を求めた場合、異なる半導体集積回路11間、または異なる製造ロットにて製造された半導体集積回路11間で「マッチングスコア」値の分布に違いがでる場合がある。
【0057】
例えば前述の図4における第1サンプルにおいては、良品の各リードピン12の「マッチングスコア」の値は略90台の値を示しているが、第2サンプルにおいては、略50台の値を示している。
このような第1サンプルおよび第2サンプルについて、従来のように、各リードピン12のフィレット21形状と、基準リードピンの良品フィレット形状との「マッチングスコア」を求めて、単に求めた「マッチングスコア」の値が、予め設定されたある基準値より大きいか否かではんだ付け状態の良否を判断した場合、例えば、基準値を70に設定したとすると、第1サンプルの良品の各リードピン12は良品と判断されるが、第2サンプルの良品の各リードピン12は、良品であるにもかかわらず不良であると判断されてしまい、過剰判定により誤判定が生じることとなる。
【0058】
しかし、本例のはんだ付け状態の検査方法においては、各リードピン12のフィレット21形状と、基準リードピンの良品フィレット形状との「マッチングスコア」を求めた後に、さらに、隣接するリードピン12間の「マッチングスコア」の差分値を示す「マッチングスコア差」を算出し、算出した前記「マッチングスコア差」の値が、該「マッチングスコア差」値の分布の標準偏差σを定数倍して設定された基準値tより大きいか否かにより、はんだ付け状態が不良である異常リードピン12を検出するようにしているので、つまり、同一製品や同一ロット内における「マッチングスコア差」の分布を表わす標準偏差σを用いて良否判断の基準値tを算出しているので、例えば異なる製造ロットのサンプル間で「マッチングスコア」の値自体に差があったとしてもその影響を受けることなく、過剰判定を防止して正確にはんだ付け状態の良否判定を行うことが可能となっている。
【0059】
また、本例の検査方法の場合も、判別分析にてはんだ付け状態の良否判定を行った場合とは異なり、不良モードが予め登録しておくことができなかったり、現れる形状が予測できなかったりする場合でも、はんだ付け状態の良否を適正に判定することが可能となっている。
【0060】
なお、本例の場合も第1の実施形態の場合と同様に、はんだ付け状態が不良であると判断されたリードピン12について、前記はんだ付け状態検査装置5による判定結果を検査員がみて、不良判定を受けたリードピン12を目視で実際に確認して、検査することもできる。
【0061】
また、各リードピン12における前記「マッチングスコア差」の値に基づくはんだ付け状態の良否の判定は、各リードピン12における「マッチングスコア差」の値を母集団とする分布の標準偏差を定数倍した値を基準値tとして行うようにしているので、各リードピン12の良品形状のばらつき等に対応して適切な値を基準値tとして設定することが可能であるため、リードピン12のはんだ付け状態の良否判定を、より正確に行うことが可能となっている。
【0062】
なお、本例では、各リードピン12のはんだ付け状態の検査を隣接するリードピン12同士の「マッチングスコア」を比較して「マッチングスコア差」を算出することで行っているが、これに限るものではなく、任意の複数のリードピン12の「マッチングスコア」を選択して比較することも可能である。
例えば、半導体集積回路11内で最も「マッチングスコア」値が大きいリードピン12を基準ピンとして選択し、該基準ピンの「マッチングスコア」と、その他の各リードピン12の「マッチングスコア」とを比較して「マッチングスコア差」を算出することも可能である。
【0063】
[第3の実施形態]
本実施形態におけるはんだ付け状態の検査方法は、前記はんだ付け状態検査装置5により、前記リードピン12のはんだ付け部のはんだ付け状態の良否を、はんだ付け部のフィレット21の形状により検査するものであり、検査対象となる半導体集積回路11の各リードピン12に形成されるフィレット21形状が、良カテゴリ(良品形状が属するカテゴリ)または否カテゴリ(ある特定の不良形状が属するカテゴリ)の何れに属するかの判定を、リードピン12毎に算出した「判別分析スコア」を用いて判別分析により行い、判別分析による判定の結果、良カテゴリに属するリードピン12について、あるリードピン12の「判別分析スコア」と、他のリードピン12の「判別分析スコア」との差分値を算出し、算出した前記「判別分析スコア」の差分値に基づいてはんだ付け状態の良否を判定するようにしている。
なお、本例の場合、前記他のリードピン12は、前記あるリードピン12に隣接するリードピン12としている。
また、本例においては、前記はんだ付け状態検査装置5の判定装置50は、前記記憶部52および判定部54と、分析部55とを備えている。
【0064】
本はんだ付け状態の検査方法においては、具体的には、図6に示すように、前記各リードピン12(第1ピン12a、第2ピン12b、第3ピン12c・・・)のフィレット21形状を前記撮像装置58にて撮像し、撮像した各リードピン12のフィレット21形状のパターン画像に基づき、判定装置50の分析部55にて各リードピン12の「判別分析スコア」を算出する。
「判別分析スコア」は、リードピン12のフィレット21形状のなかで、特定の不良モードを有するフィレット21の形状と良品のフィレット21の形状との間で差異が見られる複数箇所の部分の形状を数値化したものを合計して得られる数値である。
【0065】
このようにして各リードピン12の「判別分析スコア」を算出すると、前記特定の不良モードを有するリードピン12の「判別分析スコア」の群(否カテゴリ)Ga、および良品のリードピン12の「判別分析スコア」の群(良カテゴリ)Gbは、例えば図7のように二つに分離した分布を示し、前記否カテゴリGaはスコア値が比較的小さな部分に分布し、前記良カテゴリGbはスコア値が比較的大きな部分に分布する。
従って、判別分析においては、前記否カテゴリGaと良カテゴリGbとの間に位置する所定のスコア値を閾値taとして設定し、各リードピン12の「判別分析スコア」が前記閾値ta以下であれば、当該リードピン12は前記特定の不良モードについて否カテゴリGaに属していて、はんだ付け状態が不良であると判断し、前記閾値taよりも大きければ当該リードピン12は前記特定の不良モードについて良カテゴリGaに属していて、はんだ付け状態が良好であると判断している。
【0066】
しかし、予め登録されているある特定の不良モードについては良品であって、判別分析にて良カテゴリGaに属していると判断されたリードピン12であっても、該判別分析を行うに際して予め登録されていない不良モードについては「判別分析スコア」が不明であり、判別分析にてはんだ付け状態の良否を判定することができない。
従って、判別分析によりある特定の不良モードについて良カテゴリGaに属しているとして良品判定を受けたリードピン12においても、他の不良モードについては不良である可能性がある。
【0067】
本例の検査方法では、このように、ある特定の不良モードについては良カテゴリGaに属していて良品判定を受けているが、他の登録されていない不良モードについて不良形状を有しているリードピン12をも検出するものである。
【0068】
図9の第1サンプルの欄には、判別分析において、前記ある特定の不良モードについて良カテゴリGaであると判定された、第1サンプルの各リードピン12の「判別分析スコア」が表示されており、例えば第1ピン12aでは「250」、第2ピン12bでは「255」、第3ピン12cでは「85」、第4ピン12dでは「248」、および第5ピン12eでは「252」となっている。
【0069】
本例の検査方法では、判別分析において前記ある特定の不良モードについて良カテゴリGaであると判定された各リードピン12の「判別分析スコア」と、当該リードピン12に隣接するリードピン12の「判別分析スコア」との差分値を、分析部55にて算出するようにしている。
【0070】
例えば、第1ピン12aの「判別分析スコア」と第2ピン12bの「判別分析スコア」との差分値が、第1ピン12aの「判別分析スコア差」として表わされ、第2ピン12bの「判別分析スコア」と第3ピン12cの「判別分析スコア」との差分値が、第2ピン12bの「判別分析スコア差」として表わされ、第3ピン12cの「判別分析スコア」と第4ピン12dの「判別分析スコア」との差分値が、第3ピン12cの「判別分析スコア差」として表わされ、第4ピン12dの「判別分析スコア」と第5ピン12eの「判別分析スコア」との差分値が、第4ピン12dの「判別分析スコア差」として表わされ、第5ピン12eの「判別分析スコア」と第6ピン12fの「判別分析スコア」との差分値が、第5ピン12eの「判別分析スコア差」として表わされている。
なお、前記分析部55にて算出される各リードピン12の「判別分析スコア」、および「判別分析スコア差」は、前記表示装置59に表示することが可能である。
【0071】
図9によると、前記第1ピン12aの「判別分析スコア差」は「5」となり、第2ピン12bの「判別分析スコア差」は「−170」となり、第3ピン12cの「判別分析スコア差」は「163」となり、第4ピン12dの「判別分析スコア差」は「4」となり、第5ピン12eの「判別分析スコア差」は「5」となっている。
【0072】
さらに、本例のはんだ付け状態の検査方法においては、前記判定部54にて、各リードピン12の「判別分析スコア差」の絶対値と、予め設定しておいた所定の基準値tの値とを比較することにより、当該リードピン12のはんだ付け状態の良否を判定するようにしている。
前記基準値tは、あるサンプル(例えば第1サンプル)において良カテゴリGaに判別された(ある特定の不良モードについて良品であると判断された)リードピン12の「判別分析スコア差」の値の分布に基づいて定められ、具体的には、前述の第2の実施形態の説明において[数1]にて示した場合と同様に、前記「判別分析スコア差」の値の分布の標準偏差σを定数倍した値を基準値tとしている(定数=x)。
また、前記基準値tは、前記分析部55にて、算出された「判別分析スコア差」および予め設定されている定数を用いて求められ、前記記憶部52に記憶される。
【0073】
ここで、前記「判別分析スコア」は、リードピン12のフィレット21形状を数値化したものであるので、各リードピン12のフィレット21が同様の形状をしていれば「判別分析スコア」の値も略同じ値となる。
従って、隣接するリードピン12・12のはんだ付け状態がともに良好でフィレット21形状が略同じであれば、前記「判別分析スコア差」の値は小さくなる。
逆に、良カテゴリGaに属するリードピン12が、判別分析において予め登録されている不良モードとは異なるモードの不良形状を有していて、隣接するリードピン12・12のフィレット21形状が互いに異なっていれば、前記「判別分析スコア差」の値は大きくなる。
【0074】
従って、各リードピン12の「判別分析スコア差」の値が前記基準値t以下であれば、隣接するリードピン12同士のフィレット21形状は略同じで、当該リードピン12のはんだ付け状態は良好であると考えられ、隣接するリードピン12の「判別分析スコア差」の値が前記基準値tよりも大きければ、当該リードピン12のフィレット21が何らかのモードの不良形状を有していて、隣接するリードピン12のフィレット21形状と異なる形状をしているものと考えられる。
【0075】
図9における本例の第1サンプルの場合、例えば「判別分析スコア差」の値の分布の標準偏差σを2.1とし、例えば定数xを3に設定すると、前記基準値tは6.3となる。
この基準値tに基づいて判断すると、第1ピン12a、第4ピン12d、および第5ピン12eの「判別分析スコア差」が前記基準値tよりも小さい値となっているため、該第1ピン12a、第4ピン12d、および第5ピン12eは、はんだ付け状態が良好であると判断できる。
また、第2ピン12bおよび第3ピン12cの「判別分析スコア差」が前記基準値tよりも大きい値となっているため、該第2ピン12bおよび第3ピン12cが、判別分析において予め登録されている不良モードとは異なるモードの不良形状を有していてはんだ付け状態が不良である可能性があると考えられる。
なお、本例の場合も、前記定数xは3に限るものではなく、2や4等の他の値に設定することが可能である。
【0076】
前記はんだ付け状態検査装置5においては、このはんだ付け状態が不良である可能性があると考えられる第2ピン12bおよび第3ピン12cについて、前記判定部54にて「はんだ付け状態が不良である可能性がある」旨の判定を行い、前記表示装置59に表示することが可能となっている。
その後、検査員が表示装置59に表示された判定結果をみて、不良可能性の判定を受けたリードピン12を、前述のように目視検査することができる。
【0077】
また、前記判定部54にてはんだ付け状態が不良である可能性があると判定された第2ピン12bおよび第3ピン12cについて、さらに前記判定部54においてはんだ付け状態の良否の判断を行うことができる。
つまり、前述のように、第2ピン12bの「判別分析スコア」と第3ピン12cの「判別分析スコア」との差分を示す、該第2ピン12bの「判別分析スコア差」の値は基準値tよりも大きく、両者のフィレット21の形状が異なっていることがわかる。
また、前記第2ピン12bと第3ピン12cとは反対側に隣接する第1ピン12aが、前述のようにはんだ付け状態が良好であると判断できるとともに、第1ピン12aのフィレット21形状と前記第2ピン12bのフィレット21形状とは略同じで、前記第2ピン12bははんだ付け状態が良好であるといえる。その結果、第3ピン12cのはんだ付け状態が不良であると判断できる。
【0078】
また、図9によると、本例における第2サンプルについても、第1サンプルの場合と同様に「判別分析スコア」および「判別分析スコア差」が求められている。
つまり、第2サンプルにおける第1ピン12aの「判別分析スコア」は「318」となり、第2ピン12bの「判別分析スコア」は「314」となり、第3ピン12cの「判別分析スコア」は「483」となり、第4ピン12dの「判別分析スコア」は「315」となり、第5ピン12eの「判別分析スコア」は「317」となっている。
さらに、第2サンプルにおける第1ピン12aの「判別分析スコア差」は「4」となり、第2ピン12bの「判別分析スコア差」は「169」となり、第3ピン12cの「判別分析スコア差」は「168」となり、第4ピン12dの「判別分析スコア差」は「2」となり、第5ピン12eの「判別分析スコア差」は「−3」となっている。
【0079】
前記第2サンプルの場合、例えば「判別分析スコア差」の値の分布の標準偏差σを2.8とし、定数xを第1サンプルの場合と同様に3に設定すると、前記基準値tは8.4となる。
この基準値tに基づいて判断すると、第1ピン12a、第4ピン12d、および第5ピン12eの「判別分析スコア差」が前記基準値tよりも小さい値となっているため、該第1ピン12a、第4ピン12d、および第5ピン12eのはんだ付け状態が良好であると判断できる。
【0080】
また、第2ピン12bおよび第3ピン12cの「判別分析スコア差」が前記基準値tよりも大きい値となっているため、該第2ピン12bおよび第3ピン12cは、判別分析において予め登録されている不良モードとは異なるモードの不良形状を有していてはんだ付け状態が不良である可能性があると考えられるが、前述のように、第1ピン12aは「判別分析スコア差」の値が基準値tよりも小さくはんだ付け状態が良好であると判断できるので、第2ピン12bもはんだ付け状態が良好であるといえ、結果的に第3ピン12cのはんだ付け状態が不良であると判断できる。
【0081】
以上のごとく、本例の検査方法では、半導体集積回路11の各リードピン12のフィレット21形状について算出した「判別分析スコア」を用いて、該各リードピン12が良カテゴリまたは否カテゴリの何れに属するかを判別分析により判定し、判別分析による判定の結果、良カテゴリに属するリードピン12について、隣接するリードピン12との判別分析スコアの差分値(「判別分析スコア差」)を算出し、算出した前記「判別分析スコア差」に基づいてはんだ付け状態の良否を判定するようにしている。
【0082】
このような判定を行うことで、例えば図7に示す第1サンプルの場合のように、ある特定の不良モードについての「判別分析スコア」は前記閾値taよりも大きく良カテゴリGaに属してはいるが、該「判別分析スコア」が良カテゴリGaにおけるの分布の中心から前記閾値ta側へ大きく離れていて、前記特定の不良モード以外の不良形状を備えていると考えられる第3ピン12cを、前記良カテゴリGaにおけるの分布の中心近くに位置する他の第1ピン12a、第2ピン12b、第4ピン12d、第5ピン12eと分離して検出することができる。
【0083】
また、図8に示す第2サンプルの場合のように、ある特定の不良モードについての「判別分析スコア」は前記閾値taよりも大きく良カテゴリGaに属してはいるが、該「判別分析スコア」が良カテゴリGaにおけるの分布の中心から前記閾値ta側とは反対側へ大きく離れていて、前記特定の不良モード以外の不良形状を備えていると考えられる第3ピン12cを、前記良カテゴリGaにおけるの分布の中心近くに位置する他の第1ピン12a、第2ピン12b、第4ピン12d、第5ピン12eと分離して検出することができる。
【0084】
これにより、判別分析にて予め設定された不良モード以外の不良形状を有したリードピン12を検出することができ、逆に良品であるリードピン12を過剰判定により不良であると判定することもないので、リードピン12のはんだ付け状態の良否の判断を高精度に行うことが可能となっている。
【0085】
また、例えば異なる半導体集積回路11のリードピン12、または異なる製造ロットにて製造された半導体集積回路11のリードピン12においては、はんだ付け条件等の製造条件や、部品の寸法のばらつき等により、はんだ付け状態が良好なリードピン12であってもフィレット21の形状に違いが生じることがあるため、異なる半導体集積回路11間、または異なる製造ロットにて製造された半導体集積回路11間で、判別分析により良品と判断されたリードピン12の「判別分析スコア」値の分布に違いがでる場合がある。
例えば、図9の第1サンプルと第2サンプルとは、異なる半導体集積回路11間、または異なる製造ロットにて製造された半導体集積回路11であるが、第1サンプルにおける各リードピン12の「判別分析スコア」は概ね「250」前後の値を示しており、第2サンプルにおける各リードピン12の「判別分析スコア」は概ね「315」前後の値を示している。
【0086】
このような第1サンプルおよび第2サンプルについて、例えば、単に各リードピン12の「判別分析スコア」の値が、予め設定されたある基準値tより大きいか否かではんだ付け状態の良否を判断した場合、例えば、基準値tを「300」に設定したとすると、第2サンプルの良品の各リードピン12は良品と判断されるが、第1サンプルの良品の各リードピン12は、良品であるにもかかわらず不良であると判断されてしまうこととなる。
【0087】
しかし、本例のはんだ付け状態の検査方法においては、隣接するリードピン12間の「判別分析スコア」の差分値を示す「判別分析スコア差」を算出し、算出した前記「判別分析スコア差」の値が、該「マッチングスコア差」値の分布の標準偏差σを定数倍して設定された基準値tより大きいか否かにより、はんだ付け状態が不良である異常リードピン12を検出するようにしているので、つまり、同一製品や同一ロット内における「マッチングスコア差」の分布を表わす標準偏差σを用いて良否判断の基準値tを算出しているので、例えば異なる製造ロットのサンプル間で良品の「判別分析スコア」の値自体に差があったとしてもその影響を受けることなく、過剰判定を防止して正確にはんだ付け状態の良否判定を行うことが可能となっている。
【0088】
また、各リードピン12における前記「判別分析スコア差」の値に基づくはんだ付け状態の良否の判定は、各リードピン12における「判別分析スコア差」の値を母集団とする分布の標準偏差σを定数倍した値を基準値tとして行うようにしているので、各リードピン12の良品形状のばらつき等に対応して適切な値を基準値tとして設定することができ、リードピン12のはんだ付け状態の良否判定を、より正確に行うことが可能となっている。
【0089】
なお、本例では、各リードピン12のはんだ付け状態の検査を隣接するリードピン12同士の「判別分析スコア」を比較して「判別分析スコア差」を算出することで行っているが、これに限るものではなく、任意の複数のリードピン12の「マッチングスコア」を選択して比較することも可能である。
例えば、「判別分析スコア」値が、半導体集積回路11内で最も良カテゴリGaの分布の中心に近いリードピン12を基準ピンとして選択し、該基準ピンの「判別分析スコア」と、その他の各リードピン12の「判別分析スコア」とを比較して「判別分析スコア差」を算出することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】第1の実施形態にかかるはんだ付け状態の検査方法を実施するためのはんだ付け状態検査装置および半導体集積回路のリードピンを示す斜視図である。
【図2】第1の実施形態にかかるはんだ付け状態の検査方法における各リードピンの「隣接端子マッチングスコア」を示す図である。
【図3】第2の実施形態にかかるはんだ付け状態の検査方法を実施するためのはんだ付け状態検査装置および半導体集積回路のリードピンを示す斜視図である。
【図4】第2の実施形態にかかるはんだ付け状態の検査方法における各リードピンの「マッチングスコア」および「マッチングスコア差」を示す図である。
【図5】第2の実施形態にかかるはんだ付け状態の良否を判断する基準値を示す図である。
【図6】第3の実施形態にかかるはんだ付け状態の検査方法を実施するためのはんだ付け状態検査装置および半導体集積回路のリードピンを示す斜視図である。
【図7】第3の実施形態にかかる第1サンプルの判別分析における良カテゴリ分布および不良カテゴリ分布を示す図である。
【図8】第3の実施形態にかかる第2サンプルの判別分析における良カテゴリ分布および不良カテゴリ分布を示す図である。
【図9】第3の実施形態にかかるはんだ付け状態の検査方法における各リードピンの「判別分析スコア」および「判別分析スコア差」を示す図である。
【符号の説明】
【0091】
1 プリント回路基板
2 ランド
11 半導体集積回路
12 リードピン
12a・12b・・・ (リードピンの)第1ピン・第2ピン・・・
50 はんだ付け状態検査装置
51 判定装置
52 記憶部
53 マッチング処理部
54 判定部
55 分析部
58 撮像装置
59 表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
はんだ付け状態の良否を、はんだ付け部のパターン形状により判定する、はんだ付け状態の検査方法であって、
検査対象となるワーク内に存在する複数の同一パターンのはんだ付け部のうち、あるはんだ付け部のパターン形状を示す情報と、他のはんだ付け部のパターン形状を示す情報とを比較することにより、前記はんだ付け部のはんだ付け状態の良否を判定する、
ことを特徴とするはんだ付け状態の検査方法。
【請求項2】
前記はんだ付け部のパターン形状を示す情報として、前記ワークにおけるはんだ付け部のパターン画像を取得し、
前記ワーク内に存在する複数の同一パターン形状のはんだ付け部のうち、あるはんだ付け部のパターン画像と、他のはんだ付け部のパターン画像とを比較して、両者のマッチング度合いを求め、
求めたマッチング度合いに基づいてはんだ付け状態の良否を判定する、
ことを特徴とする請求項1に記載のはんだ付け状態の検査方法。
【請求項3】
前記はんだ付け部のパターン形状を示す情報として、前記ワークにおけるはんだ付け部のパターン画像と、予め登録された基準はんだ付け部のパターン画像とのマッチング度合いを示すマッチングスコアを求め、
前記ワーク内に存在する複数の同一パターンのはんだ付け部のうち、あるはんだ付け部のマッチングスコアと、他のはんだ付け部のマッチングスコアとを比較して、前記マッチングスコアの差分値を算出し、
算出した前記マッチングスコアの差分値に基づいてはんだ付け状態の良否を判定する、
ことを特徴とする請求項1に記載のはんだ付け状態の検査方法。
【請求項4】
前記マッチング値の差分値に基づくはんだ付け状態の良否の判定は、
各はんだ付け部におけるマッチング値の差分値を母集団とする分布の標準偏差を定数倍した値を基準値として行う、
ことを特徴とする請求項3に記載のはんだ付け状態の検査方法。
【請求項5】
前記はんだ付け部のパターン形状が、良カテゴリまたは否カテゴリの何れに属するかの判定を、はんだ付け部毎に算出した判別分析スコアを用いて判別分析により行い、
判別分析による判定の結果、良カテゴリに属するはんだ付け部について、
該はんだ付け部のパターン形状を示す情報として前記判別分析スコアを用い、
前記ワーク内に存在する複数の同一パターンのはんだ付け部のうち、あるはんだ付け部の判別分析スコアと、他のはんだ付け部の判別分析スコアとの差分値を算出し、
算出した前記判別分析スコアの差分値に基づいてはんだ付け状態の良否を判定する、
ことを特徴とする請求項1に記載のはんだ付け状態の検査方法。
【請求項6】
前記判別分析スコアの差分値に基づくはんだ付け状態の良否の判定は、
各はんだ付け部における前記判別分析スコアの差分値を母集団とする分布の標準偏差を定数倍した値を基準値として行う、
ことを特徴とする請求項5に記載のはんだ付け状態の検査方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−191106(P2008−191106A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−28499(P2007−28499)
【出願日】平成19年2月7日(2007.2.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000243881)名古屋電機工業株式会社 (107)
【Fターム(参考)】