説明

はんだ接合層

【課題】
クリープ変形に対する抵抗力の大きいはんだ接合層を開発する。
【解決手段】
Snを含有するはんだ用いて部材を接合する際に形成される接合層であって、前記接合層はSnおよびAuの他に、Pb,Cu、Ag、Bi、Znから選択されるいずれか1種又は2種以上を含有し、さらに、前記接合層にはSnとAuを主成分として構成される金属間化合物が接合断面の面積分率として5〜50%の割合で分散しているはんだ接合層である。また、二個以上の部材を接合する際に、少なくとも一個以上の部材の表面をAuからなる層とし、一個以上の前記部材にはんだを載置し、前記はんだを加熱して前記Auをはんだ中に溶解させて得た,前記はんだ接合層を備えた接合部材である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精密素子のはんだ接合層に関する。詳細には、電子デバイス,光デバイス,レーザモジュール,半導体装置のはんだ接合層に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、Sn−Pb系の(Sn:63重量%)共晶合金は、優れたぬれ性と適当な融点を備えているため、プリント基板や搭載部材、精密素子における部材間の接合に好適なはんだとして用いられてきた。ところが、Sn−Pb共晶合金に含まれている鉛に有害性があることから、鉛を用いない(以後鉛フリーと言う)はんだへの転換がなされている。
【0003】
そこで、Sn−Ag系の鉛フリーはんだが安定性、及び信頼性の高いことで高信頼性を必要とする電子機器に用いられるようになった。しかし、このはんだを用いると、融点が高く(221℃)、プリント基板の電極との濡れ性が共晶はんだに比べて劣るので、従来型のプロセスでは十分な接合ができない。現在、融点を下げるために、Sn−Ag系にCu、Biを少量添加したものや、Sn−Zn系、Sn−Bi系のはんだも開発されている。
【0004】
ところで、精密素子には、長期間にわたり部材間の位置関係が変化しないような高い位置精度が要求される。ところが、はんだ材料は,素子を構成する他の部材、例えばCu−W系合金やステンレス鋼に比べてクリープ強度は低い値である。そのため、精密素子の使用中にはんだ部が変形して被接合部材が動いてしまい、部材の位置関係が経年変化するという問題があった。
【0005】
そこで、はんだに強度を持たせるために、特開2000−190090号公報には、Sn、Cuが0.1〜2.5重量%、Bi及び/又はInが1〜15重量%、Ni、Ge、Pd、Au、Ti、Feの何れか1種以上を0.01〜2重量%含有する合金はんだについて、Pd、Au、Ti、Feと、SnやCuとの金属間化合物を生成させることにより、マトリクスの結晶粒界でのすべりを防止して、接合層の機械的強度を向上させる技術が開示されている。
【0006】
特開平7−128550号公報には、Auによる脆性化合物が接合強度を弱くするため、これを避ける方法についての技術が開示されている。
【特許文献1】特開平7−128550号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記従来技術に関して説明する。Snは容易にAuと反応して、例えばSn4Au金属間化合物を形成する。この金属間化合物は脆いのではんだ接合層の機械的強度を劣化させる。そのため、はんだ付け時に、この金属間化合物の生成を抑制することが従来技術の課題であった。本発明では、逆にこの化合物を利用することとした。
【0008】
すなわち、Sn−Au系金属間化合物は脆いが硬いため、接合層が破壊にまで達するような高い応力に対しては存在しない方が望ましい。しかしながら、そこまでの高い応力を必要とせず、かつ、部材の位置変動がないことを必要とするような場合には、硬いSn−Au系の金属間化合物が有効に作用し、はんだの変形抵抗が向上する。
【0009】
前記のように、精密素子には長期にわたって部材間の位置関係が変化しないような高い位置精度が要求される。ところが、はんだ材料はクリープ強度が低いため、精密素子の使用中にはんだ部が変形して被接合部材が動いてしまう。
【0010】
従って、本発明では、クリープ変形に対する抵抗力の大きいはんだ接合層を開発することを目的とする。一般に、はんだのクリープ曲線はクリープ初期に大きく変位を生じるので、このクリープ初期の変形量が小さいはんだ接合層を開発することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、本発明の第1の態様は、ペルチェ素子を搭載したベースと該ペルチェ素子間、及び該ペルチェ素子とレーザモジュールのパッケージ間が、Snを含有するはんだを用いて接合される際に形成される接合層であって、前記接合層はSnおよびAuの他に、Pb、Cu、Ag、Bi、Znから選択されるいずれか1種または2種以上を含有し、さらに、前記接合層中に、SnとAuを主成分として構成されるSn4Au、Sn2Au、SnAu、SnAu5、SnAu9のいずれかからなる金属間化合物を含み、接合断面中に存在する前記金属間化合物の面積分率の合計として、5%を超えて50%までの割合で分散しているはんだ接合層を介して接合されている軸ずれの生じないレーザモジュールである。
【0012】
本発明の第2の態様は、ペルチェ素子を搭載したベースと該ペルチェ素子間、及び該ペルチェ素子とレーザモジュールのパッケージ間が、Snを含有するはんだを用いて接合される際に形成される接合層であって、前記接合層はSnおよびAuの他に、Pb、Cu、Ag、Bi、Znから選択されるいずれか1種または2種以上を含有し、さらに、前記接合層中に、SnとAuを主成分として構成されるSn4Au、Sn2Au、SnAu、SnAu5、SnAu9のいずれかからなる金属間化合物を含み、前記金属間化合物の結晶粒径が30μm以下の大きさで、且つ接合断面中に存在する前記金属間化合物の面積分率の合計として、5%を超えて50%までの割合で分散しているはんだ接合層を介して接合されている軸ずれの生じないレーザモジュールである
【0013】
本発明の第3の態様は、レーザモジュールにおけるペルチェ素子を搭載したベースと該ペルチェ素子間、及び該ペルチェ素子とレーザモジュールのパッケージ間の接合方法であって、少なくとも一方の部材の表面をAuからなる層とし、少なくとも一方の前記部材にSnを含有するはんだを載置し、前記Snを含有するはんだを加熱して前記Auを前記はんだ中に溶解させて前記Snと反応させ、前記Snと前記Auを主成分として構成されるSn4Au、Sn2Au,SnAu、SnAu5,SnAu9のいずれか1種以上の金属間化合物を、合計で5%を超えて50%までの割合ではんだ接合層中に分散させる軸ずれの生じない接合方法である。
【0014】
本発明の第4の態様は、レーザモジュールにおけるペルチェ素子を搭載したベースと該ペルチェ素子間、及び該ペルチェ素子とレーザモジュールのパッケージ間の接合方法であって、少なくとも一方の部材の表面をAuからなる層とし、少なくとも一方の前記部材にSnを含有するはんだを載置し、前記Snを含有するはんだを加熱して前記Auを前記はんだ中に溶解させて前記Snと反応させ、前記Snと前記Auを主成分として構成される結晶粒径が30μm以下のSn4Au、Sn2Au,SnAu、SnAu5,SnAu9のいずれか1種以上の金属間化合物を、合計で5%を超えて50%までの割合ではんだ接合層中に分散させる軸ずれの生じない接合方法である。
【0015】
本発明の第5の態様は、請求項3又は請求項4に記載の軸ずれの生じない接合方法において、少なくとも一方の部材の表面のAuからなる層の厚さが1.0〜5.0μmとし、少なくとも一方のはんだを載置する前記部材の厚さを30〜60μmに形成することを特徴とするレーザモジュールにおけるペルチェ素子を搭載したベースと該ペルチェ素子間、及び該ペルチェ素子とレーザモジュールのパッケージ間の接合方法である。
【発明の効果】
【0016】
本実施の接合層とすることにより、クリープ変形が小さい接合層とすることができ,精密素子の接合において被接合部材の位置変化を極めて小さく抑えることが可能である。また,はんだ部の変動によって軸ずれを生じやすいレーザモジュールにおいても、軸ずれしない高信頼性な接合層とすることができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施の形態を以下に説明する。本発明のはんだ接合層は、Snを含有するはんだを用いて部材を接合する際に形成される接合層であって、前記接合層はSnおよびAuの他に、Pb,Cu、Ag、Bi、Znから選択されるいずれか1種又は2種以上を含有し、さらに、前記接合層にはSnとAuを主成分として構成される金属間化合物が接合断面の面積分率として5〜50%の割合で分散して高い変形強度を備えている。
【0018】
本実施の形態では、Snを含有するはんだ合金は、SnにPb、Cu、Ag、Bi、Znから選択されるいずれか1種又は2種以上を含有している合金であれば良い。Pb、Cu、Ag、Bi、Znから選択する元素、および添加割合は以下のように選ぶことができる。例えば、Sn−Bi系合金、Sn−Zn系合金、Sn−Pb系合金、Sn−Ag系合金、Sn−Ag−Cu系合金、Sn−Ag−Cu−Bi系合金、その他の上記元素を組合わせた合金を適宜選択すれば良い。
【0019】
本発明で言う接合層とは、接合時に溶融した領域であって、溶融しない領域は含まない。例えば、Auめっきがはんだ層に溶け込み、Auの下地のNiめっき層や被接合部材のCu板が溶けていない場合、接合層は、Auを含んだはんだ層全域であり、Niめっき層やCu板は接合層に入らない。
【0020】
すなわち、被接合部材同士を前記のSnを含有するはんだを用いて接合した際にできる接合部のことで、接合層はSnの他にAuを必須とし、Pb,Cu、Ag、Bi、Znから選択されるいずれか1種又は2種以上を含有するものである。
【0021】
本実施の形態では、接合層にAuを含有させる方法例を以下に示す。第1は、接合前にAuを含まないはんだを用い、接合時にはんだを溶融する際にAuを含有させる方法である。例をあげると以下のようである。
【0022】
被接合部にAuめっきを施してから、はんだ付けする。この際に、Auめっきの厚みは、接合される部材の全めっき厚さとして0.05〜8.0μm、はんだ接合層の厚さは10〜100μmの範囲とすることが望ましい。より望ましくは、Auめっきの厚みは、接合される部材の全めっき厚さとして1.0〜5.0μm、はんだ接合層の厚さは30〜60μmの範囲とすることが望ましい。
【0023】
被接合部にスパッタリング等によりAu蒸着処理を施してから、はんだ付けする。この際にも、Au蒸着層の厚みは、接合される部材の全蒸着層厚さとして0.05〜8.0μm、はんだ接合層の厚さは10〜100μmの範囲とすることが望ましい。より望ましくは、Au蒸着層の厚みは、接合される部材の全蒸着層厚さとして1.0〜5.0μm、はんだ接合層の厚さは30〜60μmの範囲とすることが望ましい。
【0024】
さらに、Au粉末を振りかけたはんだを用いたり、はんだにAu箔、Au板、Au線を載せて用いることもできる。
【0025】
第2に、接合前のはんだ箔、はんだペースト、はんだ線等にあらかじめAuを含有させる方法である。Auは3〜30重量%程度含有させることが望ましい。あらかじめ、Auを含有させた上記はんだ合金の用い方は、通常のはんだ付け作業に準じて行えば良い。
【0026】
第3に、上記第1および第2を合わせて用いる方法である。
【0027】
本実施の形態では、接合時のはんだを溶融する際にAuを含有させることが望ましい。そのため、はんだ合金の加熱方法としては、以下のような例があげられる。まず、被接合部材同士それぞれに、はんだを加熱し固着させてはんだ層を形成する。次に、被接合部材同士のはんだ層の位置を合わせ、再加熱して部材同士を接合する。
【0028】
まず、被接合部材の片方に、はんだを加熱して固着させてはんだ層を形成する。次に、もう一方の被接合部材の所定の位置にはんだ層を合わせ、再加熱して部材同士を接合する。被接合部材の間にはんだを配置し、加熱して部材同士を接合する。なお、接合条件としては、はんだの溶融温度を合金の共晶温度に10〜60℃高い温度とし、はんだの溶融時間を10秒から5分間に選択することが望ましい。
【0029】
ところで、Sn中へのAuの拡散については、拡散速度が速いために金属間化合物を作りやすい。Sn−Auを含有する金属間化合物には、例えば、Sn4Au、Sn2Au、SnAu、SnAu5、SnAu9などある。接合層にはSn−Auを含有する金属間化合物が分散している。金属間化合物が分散した状態とは、接合層にAuが含まれ,このAuがSnとの金属間化合物の形で存在し,その化合物がはんだ接合層全域に分散した状態となっていることである。
【0030】
なお、AuがSnとSn−Au金属間化合物を形成するメカニズムは、Auが例えばめっき層の場合、はんだを加熱して溶融する際に、Auが溶融したはんだ中に拡散し、すなわち、はんだに溶解し、Snと反応して金属間化合物を形成するものと思われる。したがって、Auは、接合部材表面にめっき層で形成されたものであっても、はんだにあらかじめ合金成分として添加されたものであっても用いることが可能である。
【0031】
このように、Sn4Au金属間化合物のような変形抵抗の高い金属間化合物をはんだ接合層に分散させることにより、はんだの高温における変形抵抗を向上させることができる。
【0032】
本発明の実施形態では、接合層にはSn−Auを含有する金属間化合物が接合断面の面積分率にして5〜50%の割合で分散していることが望ましい。ここで、接合断面とは2個以上の部材(被接合体)が接合された接合層を含む断面であって、接合体と接合層の複数の界面はほぼ平行な関係であるものとし、その界面に垂直な面を接合断面と定義する。
【0033】
本願発明では、面積分率とは接合断面における接合層の中に占めるSn−Au化合物相の面積の比率を言う。面積分率は、以下のようにして求めることができる。例えば、SEMにおけるEDX,あるいはEPMAにより接合層を含む接合断面内の構成元素を測定し、Sn−Au化合物相の組織を特定する。図1には、本実施の形態例における接合層断面の反射電子像を示した。写真の黒実線長さが10μmの長さに該当する。次に、接合層のSEM写真、もしくは反射電子像写真において、Sn−Au化合物相と他の部分をニ値化により分離し、接合層の中に占めるSn−Au化合物相の面積分率を算出する。図2には、図1で示したSn−Au層領域を白色で表わし、他の領域を黒色にニ値化した像を示した。
【0034】
面積分率を算出するために用いるSEMあるいは反射電子像写真については、接合界面に垂直な向きを写真縦軸とし、接合界面に平行な向きを写真横軸と決める。かつ、写真縦の全長は接合層の厚みすべてが入るようにし、接合時に溶融しなかっためっき層、被接合材は写真に入れないものとする。写真横軸の長さは縦軸の長さの2倍とする。また、接合時の溶融層と非溶融層の界面が平坦ではない、または、二つの被接合材が平行ではない場合については、それに応じた領域を写真とする。
【0035】
以上の操作を同一断面の別な部位から、あるいは、同一試料の別断面の部位から合計5回以上実施し、その平均値をその試料の断面におけるSn−Au化合物相の面積分率と定義する。
【0036】
ここで、面積分率を5〜50%とする理由は以下のようである。5%未満では効果がなく、50%を超えると、クリープ抵抗は高まるが脆化し、少量のひずみで破壊してしまうからである。5〜50%の範囲では初期クリープが小さくなり、クリープ抵抗が大きく、位置ずれに対する信頼性が高くなる。
【0037】
本実施の形態では、接合層の金属間化合物の結晶粒径は30μm以下の大きさであることが望ましい。結晶粒径の大きさは、上記の接合断面の観察時に求めることができる。ここで、結晶粒径を30μm以下とする理由は、30μmを超えると結晶粒界を亀裂が伝播しやすくなるためである。
【0038】
本発明の第2の実施形態を以下に示す。本発明では、二個以上の部材を接合する際に、少なくとも一個以上の部材の表面をAuからなる層とし、一個以上の前記部材表面にはんだを載置し、前記はんだを加熱して前記Auをはんだ中に溶解させて得た接合層を備える接合部材である。
【0039】
本実施の形態では、少なくとも一個以上の部材の最表面層をAu層からなる表面とする。本実施の形態では、接合層中にAuが含まれるようにするには、第1の実施形態で説明した方法を用いれば良い。
【0040】
このように、表面にめっき層を形成し、部材間にSnを含有するはんだ合金を載置し、前記はんだ合金を加熱溶融して部材表面のAuを溶融はんだ中に溶解させることによりSn−Auを含有する金属間化合物が分散した接合層を備える接合品が得られる。例えば、電子デバイス,光デバイス,レーザモジュール,半導体装置に本実施の形態の接合層を備える接合品を得ることができる。
【実施例1】
【0041】
はんだとしてSn−Pb(Sn:63重量%)共晶合金を用いた。試験方法としては、図3で示したようなリング−ピン剪断試験用の銅製試験片を用意し一方には、試験片の接合面にNiめっきを施し、その上にAuめっきをした。もう一方は、めっき処理しないものとした。この2種の試料を用い、上記はんだを用いてリング部のはんだ接合層を形成した。図3中のリング−ピン試験片31は、リング部33とピン部35からなり、リング部33の中央にピン部とのはんだ接合層37を形成したものである。リング部の厚みは3mm、外形は15mmであり、ピン部の直径は4mmで、長さが20mmである。
【0042】
接合層については接合断面を観察した。その結果、めっきをしないものの接合層にはSn相とPbリッチ相が認められた。めっき処理したものは、Sn相とPbリッチ相に加えて結晶粒径が20μmのSn−Au金属間化合物相が分散していた。また、めっき処理したもののSn−Au金属化合物相の面積分率を求めた。その結果、面積分率の値は15%であった。
【0043】
上記のめっきをしたものと、めっきをしないものについて、クリープ試験を行った。クリープ試験方法の概略図41を図4に示した。リビングーピン試験片43のピンは図4の上方向に、ピンは図4の下方向に荷重を掛けて試験した。試験温度は室温と100℃の2種類とした。室温(25℃)で剪断応力を7.5MPaとした試験結果を図5に、100℃で剪断応力を1.7MPaとした試験結果を図6に示した。
【0044】
各図の横軸は、時間(破断までの時間で規格化)を示す。縦軸は、剪断ひずみを示す。これから、めっきしたものは、めっきしないものに比べて、初期クリープが極めて小さく、剪断ひずみが少ないことがわかる。
【0045】
なお、図8として示した表1にSn−Au相の分布状態とクリープ変形抵抗について評価した結果を示した。すなわち、Sn−Au相が接合層全域にわたって均一に分散している場合には、Auめっきは界面に残存しておらず、このような場合には変形抵抗が極めて高い傾向にあった。反対に、Sn−Au相が被接合体と接合層の界面に偏って分布している場合には、Auめっきが界面に残像しており、このような場合には、早期に破断した。
【実施例2】
【0046】
次に、本発明を適用してレーザ波長が1.48μmのレーザモジュールを試作した。レーザモジュールの模式図を図7に示した。レーザモジュール71の、はんだの使用箇所は、ベース79とペルチェ素子81間の接合箇所85、およびペルチェ素子81とパッケージ83間の接合箇所87であり、両者ともに同じ種類のはんだを用いた。用いたはんだは、図9としての表2に示した。
【0047】
金属接合部のAu−Sn金属間化合物量を変化させるために、レーザモジュールのベース、ペルチェ、パッケージ表面のAuめっき厚さを調整して、Au−Sn化合物の量を変えた。はんだを加熱して溶融させる工程で、Auめっき部は全て溶融はんだ内に溶け込んでいた。
【0048】
また、表1に示すように実施例及び比較例の合計11種類のモジュールを11個ずつ試作し、各1個については、接合層の断面組織を観察して、金属間化合物量を確認した。接合層断面におけるAu−Sn化合物の面積分率(%)を示した。
【0049】
試作したモジュールの残り10個については、85℃に1000時間保持する高温放置試験を実施した。試験後、レーザの出力を調べた。出力が試験前と比べて80%以下にまで低下した試料は不良とし、80%を超えるものを良品とした。その結果も表2に合わせて示した。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】接合層断面の反射電子像を示した。
【図2】図1のSn−Au相領域を白、他の領域を黒にニ値化した像を示した。
【図3】リング−ピンせん断試験片を示した。
【図4】リング−ピンせん断クリープ試験の模式図である。
【図5】室温におけるせん断クリープ試験結果である。
【図6】100℃におけるせん断クリープ試験結果である。
【図7】レーザモジュールの模式図である。
【図8】図8として示した表1であり、Sn−Au相の分布状態とクリープ変形抵抗を示した。
【図9】図9として示した表2であり、はんだ種、Sn−Au化合物相の面積分率、および高温放置試験後の不良率を示した。
【符号の説明】
【0051】
31 リング−ピン剪断試験片
33 リング部
35 ピン部
37 はんだ接合層
41 クリープ試験方法概略図
43 リング−ピン剪断試験片
71 レーザモジュール
73 光ファイバ
75 レンズ
77 レーザ
79 ベース
81 ペルチェ素子
83 パッケージ
85 はんだ接合層
87 はんだ接合層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペルチェ素子を搭載したベースと該ペルチェ素子間、及び該ペルチェ素子とレーザモジュールのパッケージ間が、Snを含有するはんだを用いて接合される際に形成される接合層であって、前記接合層はSnおよびAuの他に、Pb、Cu、Ag、Bi、Znから選択されるいずれか1種または2種以上を含有し、さらに、前記接合層中に、SnとAuを主成分として構成されるSn4Au、Sn2Au、SnAu、SnAu5、SnAu9のいずれかからなる金属間化合物を含み、接合断面中に存在する前記金属間化合物の面積分率の合計として、5%を超えて50%までの割合で分散しているはんだ接合層を介して接合されている軸ずれの生じないレーザモジュール。
【請求項2】
ペルチェ素子を搭載したベースと該ペルチェ素子間、及び該ペルチェ素子とレーザモジュールのパッケージ間が、Snを含有するはんだを用いて接合される際に形成される接合層であって、前記接合層はSnおよびAuの他に、Pb、Cu、Ag、Bi、Znから選択されるいずれか1種または2種以上を含有し、さらに、前記接合層中に、SnとAuを主成分として構成されるSn4Au、Sn2Au、SnAu、SnAu5、SnAu9のいずれかからなる金属間化合物を含み、前記金属間化合物の結晶粒径が30μm以下の大きさで、且つ接合断面中に存在する前記金属間化合物の面積分率の合計として、5%を超えて50%までの割合で分散しているはんだ接合層を介して接合されている軸ずれの生じないレーザモジュール。
【請求項3】
レーザモジュールにおけるペルチェ素子を搭載したベースと該ペルチェ素子間、及び該ペルチェ素子とレーザモジュールのパッケージ間の接合方法であって、少なくとも一方の部材の表面をAuからなる層とし、少なくとも一方の前記部材にSnを含有するはんだを載置し、前記Snを含有するはんだを加熱して前記Auを前記はんだ中に溶解させて前記Snと反応させ、前記Snと前記Auを主成分として構成されるSn4Au、Sn2Au,SnAu、SnAu5,SnAu9のいずれか1種以上の金属間化合物を、合計で5%を超えて50%までの割合ではんだ接合層中に分散させる軸ずれの生じない接合方法。
【請求項4】
レーザモジュールにおけるペルチェ素子を搭載したベースと該ペルチェ素子間、及び該ペルチェ素子とレーザモジュールのパッケージ間の接合方法であって、少なくとも一方の部材の表面をAuからなる層とし、少なくとも一方の前記部材にSnを含有するはんだを載置し、前記Snを含有するはんだを加熱して前記Auを前記はんだ中に溶解させて前記Snと反応させ、前記Snと前記Auを主成分として構成される結晶粒径が30μm以下のSn4Au、Sn2Au,SnAu、SnAu5,SnAu9のいずれか1種以上の金属間化合物を、合計で5%を超えて50%までの割合ではんだ接合層中に分散させる軸ずれの生じない接合方法。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載の軸ずれの生じない接合方法において、少なくとも一方の部材の表面のAuからなる層の厚さが1.0〜5.0μmとし、少なくとも一方のはんだを載置する前記部材の厚さを30〜60μmに形成することを特徴とするレーザモジュールにおけるペルチェ素子を搭載したベースと該ペルチェ素子間、及び該ペルチェ素子とレーザモジュールのパッケージ間の接合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−194630(P2007−194630A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−6058(P2007−6058)
【出願日】平成19年1月15日(2007.1.15)
【分割の表示】特願2002−89141(P2002−89141)の分割
【原出願日】平成14年3月27日(2002.3.27)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】