説明

エンコーダ装置、光学装置、露光装置、露光方法およびデバイス製造方法

【課題】小型であり、且つ回折格子で反射回折された回折光の光量の利用効率が従来よりも高いエンコーダ装置を提供する。
【解決手段】エンコーダヘッド20は、光源部から照明光がスケール5(回折格子)に照射されてスケール5で反射回折された+1次回折光を反射させて当該+1次回折光の回折角と等しい角度で再びスケール5に入射させる第1コーナーキューブ21と、スケール5で反射回折された−1次回折光を反射させて当該−1次回折光の回折角と等しい角度で再びスケール5に入射させる第2コーナーキューブ23とを有して構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象物の移動量を測定するエンコーダ装置、このエンコーダ装置を備えた光学装置および露光装置、並びにこの露光装置を用いた露光方法およびデバイス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回折格子が形成されたスケールを用いて測定対象物の移動量を高精度に計測するエンコーダ装置が種々提案されている(例えば、特許文献1を参照)。この種のエンコーダ装置では、半導体レーザ等からなる光源からの光をレンズでコリメートまたは集光し、偏光ビームスプリッターに入射させて二つの直線偏光(P偏光、S偏光)に分割し、そのP偏光およびS偏光をそれぞれ二つのミラーを用いてスケール(回折格子)に互いに等しい入射角で入射させるように構成されているものがある。このとき、P偏光の−1次回折光とS偏光の+1次回折光とが検出器に入射して干渉するように、全体の配置構成がなされている。ここで、スケールの位置が変わるとP偏光とS偏光の回折光の位相差が変化し、この位相差の変化により検出器で得られた干渉光の位相が変化するため、この干渉光の位相変化を観察することでスケールの位置の変化を測定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005‐308592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のようなエンコーダ装置では、光源からの照明光を二つの直線偏光に分割する光分割手段や、分割された直線偏光をそれぞれ回折格子に入射させる手段など、光源からの照明光を回折格子に照射するために複数の光学部材を有しているため、エンコーダ装置が大型化するという問題があった。また、光源から照明光が照射されて回折格子で回折された回折光のうち、所定次数の片側の回折光(例えば、+1次回折光)だけが測定に利用されていたため、測定光の光量が不足するという問題があった。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたもので、小型であり、且つ回折格子で反射回折された回折光の光量の利用効率が従来よりも高いエンコーダ装置、このエンコーダ装置を備えた光学装置および露光装置、並びにこの露光装置を用いた露光方法およびデバイス製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するため、本発明の第1の態様は、ベース部材に対して所定方向に直線移動する測定対象物の移動量を測定するエンコーダ装置であって、前記ベース部材および前記測定対象物のいずれか一方に設けられ、前記所定方向に所定間隔で配列された格子パターンを有する反射型の回折格子と、前記格子パターンに向けて照明光を射出する光源部と、前記ベース部材および前記測定対象物の他方に設けられ、前記光源部から射出された前記照明光が前記格子パターンに照射されて前記格子パターンで反射回折された±n次回折光(nは整数)を再び前記格子パターンに入射させるとともに、当該格子パターンで反射回折された二つの回折光を重ね合わせて干渉させ干渉光として射出するエンコーダヘッドと、前記エンコーダヘッドから射出された前記干渉光を受けて、前記干渉光の強度の変化を光電変換して出力する光検出部と、前記光検出部から出力された光強度信号から前記干渉光の位相値を算出し、算出した前記位相値に基づいて前記測定対象物の移動量を測定する移動量測定部とを備えて構成される。その上で、前記エンコーダヘッドは、前記格子パターンで反射回折された前記+n次回折光を反射させて前記+n次回折光の回折角と等しい角度で再び前記格子パターンに入射させる第1反射部と、前記格子パターンで反射回折された前記−n次回折光を反射させて前記−n次回折光の回折角と等しい角度で再び前記格子パターンに入射させる第2反射部とを有して構成される。
【0007】
本発明の第2の態様は、検査装置、測定装置等の光学装置であって、上記エンコーダ装置を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の第3の態様は、被露光体を所定の露光領域に対応する露光位置に移動させながら、レチクルに形成された所定のパターンを前記被露光体に投影して露光を行う露光装置であって、前記被露光体を支持するとともに所定方向に直線移動可能なステージと、前記所定方向への前記ステージの移動量を測定する上記エンコーダ装置と、前記ステージに支持された前記被露光体を前記露光位置に移動させるように、前記エンコーダ装置により測定された前記移動量に基づいて前記ステージの前記所定方向への移動を制御するステージ移動制御部とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の第4の態様は、露光方法であって、被露光体を支持するステージの所定方向への直線移動量を測定する上記エンコーダ装置の測定結果に基づいて前記ステージの前記所定方向への移動を制御して、前記ステージに支持された前記被露光体を所定の露光領域に対応する露光位置に移動させながら、レチクルに形成された所定のパターンを前記被露光体に投影して露光を行うことを特徴とする。
【0010】
本発明の第5の様態は、リソグラフィ工程を含むデバイス製造方法であって、前記リソグラフィ工程では、上記露光装置を用いてレチクルに形成された所定のパターンを被露光体に投影して露光を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、小型であり、且つ回折格子で反射回折された回折光の光量の利用効率が従来よりも高いエンコーダ装置、このエンコーダ装置を備えた光学装置および露光装置、並びにこの露光装置を用いた露光方法およびデバイス製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態に係る露光装置の構成図である。
【図2】上記露光装置の制御構成を示すブロック図である。
【図3】第1実施形態に係るエンコーダ装置の構成図である。
【図4】上記エンコーダ装置を構成するエンコーダヘッドを示す構成図である。
【図5】第2実施形態に係るエンコーダ装置を構成するエンコーダヘッドを示す構成図である。
【図6】上記第2実施形態に係るエンコーダヘッドにおいて、Z軸方向の位置測定について説明するための図である。
【図7】上記第2実施形態に係るエンコーダヘッドの変形例を示す構成図である。
【図8】上記第2実施形態に係るエンコーダヘッドの変形例の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1には、本実施形態に係るエンコーダ装置1を備えた露光装置100の構成を概略的に示している。露光装置100は、照明系110、レチクルステージ120、投影ユニット130、局所液浸装置140、ステージ装置150、および主制御装置200(図2を参照)を有して構成される。なお、以下においては、図1に記載した矢印X,Y,Zの方向をそれぞれX軸方向、Y軸方向、Z軸方向として説明する。
【0014】
照明系110は、光源、オプティカルインテグレータ等を備える照度均一化光学系、およびレチクルブラインド等を備える照明光学系(いずれも図示せず)を有し、レチクルブラインドで規定されたレチクルR上のスリット状の照明領域を照明光(露光光)により略均一な照度で照明するように構成されている。照明光としては、例えば、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)が用いられる。
【0015】
レチクルステージ120上には、回路パターンなどがそのパターン面(図1における下面)に形成されたレチクルRが、例えば真空吸着により固定保持されている。レチクルステージ120は、例えばリニアモータ等を備えるレチクルステージ駆動装置121(図2を参照)によってXY平面内で移動可能であるとともに、走査方向(ここではY軸方向とする)に所定の走査速度で移動可能に構成されている。
【0016】
レチクルステージ120のXY平面内の位置情報(Z軸回りの回転方向の回転情報を含む)は、レチクルステージ120に設けられたY軸に直交する反射面を有する第1反射鏡123およびX軸に直交する反射面を有する第2反射鏡(図示せず)を介して、レチクル干渉計125によって検出される。レチクル干渉計125により検出された当該位置情報は主制御装置200に送られ、主制御装置200は、その位置情報に基づいてレチクルステージ駆動装置121を介してレチクルステージ120の位置(および移動速度)を制御する。
【0017】
投影ユニット130は、レチクルステージ120の下方に配置され、鏡筒131、および鏡筒131内に保持された投影光学系135を有して構成される。投影光学系135は、照明光の光軸AXに沿って配列された複数の光学素子(レンズエレメント)を有し、両側テレセントリックで、所定の投影倍率(例えば1/4倍、1/5倍または1/8倍など)を有するように構成されている。このため、照明系110から射出された照明光によってレチクルR上の照明領域が照明されると、投影光学系135の物体面とパターン面が略一致して配置されるレチクルRを透過した照明光により、投影光学系135を介してその照明領域内のレチクルRのパターンの縮小像が、投影光学系135の像面側に配置されたウェハW上の露光領域(レチクルR上の照明領域に共役な領域)に形成される。そして、レチクルステージ120とウェハWを保持するステージ装置150との同期駆動によって、照明領域に対してレチクルRを走査方向(Y軸方向)に移動させるとともに、露光領域に対してウェハWを走査方向(Y軸方向)に移動させることで、ウェハW上の1つのショット領域の走査露光が行われ、そのショット領域にレチクルRのパターンが転写される。
【0018】
露光装置100には、液浸方式の露光を行うために局所液浸装置140が設けられている。局所液浸装置140は、図1および図2に示すように、液体供給装置141、液体回収装置142、液体供給管(図示せず)、液体回収管(図示せず)、およびノズルユニット145を有して構成される。ノズルユニット145は、投影光学系135を構成する最も像面側(ウェハ側)の光学素子、ここでは先端レンズ136を保持する鏡筒131の下端部周囲を取り囲むように、投影ユニット130を保持する不図示のフレーム部材(露光装置100を構成するフレーム部材)に支持されている。本実施形態では、ノズルユニット145は、図1に示されるように、その下端面が先端レンズ136の下端面と略同一面に設定されている。
【0019】
液体供給装置141は、液体を貯蔵するタンク、加圧ポンプ、温度制御装置、および液体の流量を制御するためのバルブを有して構成され、液体供給管(図示せず)を介してノズルユニット145に接続されている。液体回収装置142は、回収した液体を貯蔵するタンク、吸引ポンプ、および液体の流量を制御するためのバルブを有して構成され、液体回収管(図示せず)を介してノズルユニット145に接続されている。
【0020】
主制御装置200は、液体供給装置141を制御して液体供給管を介して先端レンズ136とウェハWとの間に液体(例えば、純水)を供給するとともに、液体回収装置142を制御して液体回収管を介して先端レンズ136とウェハWとの間から液体を回収する。このとき、主制御装置200は、供給される液体の量と回収される液体の量とが常に等しくなるように、液体供給装置141および液体回収装置142を制御する。したがって、先端レンズ136とウェハWとの間には、一定量の液体が常に入れ替わって保持され、これにより液浸領域(液浸空間)が形成される。露光装置100では、照明光を、液浸領域を形成する液体を介してウェハWに照射することによって、ウェハWに対する露光が行われる。
【0021】
ステージ装置150は、投影ユニット130の下方に配置されたウェハステージ151、ウェハステージ151を駆動するステージ駆動装置155を有して構成される。ウェハステージ151は、不図示のエアスライダにより数μm程度のクリアランスを有してベース部材105の上方に浮上支持され、ウェハステージ151の上面においてウェハWを真空吸着によって保持するように構成されている。そして、ウェハステージ151は、ステージ駆動装置155を構成するモータにより、ベース部材105の上面に沿ってXY平面内で移動可能になっている。
【0022】
ウェハステージ151のXY平面内の位置情報は後述するエンコーダ装置1によって検出される。エンコーダ装置1により検出された当該位置情報は主制御装置200に送られ、主制御装置200は、その位置情報に基づいてステージ駆動装置155を介してウェハステージ151の位置(および移動速度)を制御する。
【0023】
このように構成された露光装置100では、照明系110から射出された照明光によってレチクルR上の照明領域が照明されると、投影光学系135の物体面とパターン面が略一致して配置されるレチクルRを透過した照明光により、投影光学系135および局所液浸装置140により形成される液浸領域の液体を介してその照明領域内のレチクルRのパターンの縮小像が、ウェハステージ151上に支持されて投影光学系135の像面側に配置されたウェハW上の露光領域(レチクルR上の照明領域に共役な領域)に形成される。そして、レチクルステージ120とウェハWを支持するウェハステージ151との同期駆動によって、照明領域に対してレチクルRを走査方向(例えばY軸方向)に移動させるとともに、露光領域に対してウェハWを走査方向(例えばY軸方向)に移動させることで、ウェハW上の1つのショット領域の走査露光が行われ、そのショット領域にレチクルRのパターンが転写される。
【0024】
次に、ウェハステージ151のXY平面内の位置情報を検出するためのエンコーダ装置1について説明する。なお、エンコーダ装置1では、ウェハステージ151のX軸方向およびY軸方向の移動量をそれぞれ測定することが可能であるが、以下では、最初にY軸方向の測定について説明する。
【0025】
エンコーダ装置1は、図1および図3に示すように、ウェハステージ151の上面に設けられたスケール5と、投影ユニット130の下部にスケール5(ウェハステージ151)と対向するように設けられたエンコーダヘッド20と、エンコーダヘッド20に向けて照明光を射出する光源部10と、エンコーダヘッド20により照明光が照射されたスケール5からの反射光(回折光)を検出する光検出部50と、光検出部50からの検出信号に基づいてウェハステージ151のY軸方向の移動量を求める演算処理部210とを有して構成される。
【0026】
スケール5は、エンコーダヘッド20に対向してウェハステージ151の移動方向(Y軸方向)に延びるスケール面5aを有し、このスケール面5aに格子線がY軸方向およびX軸方向にそれぞれ所定のピッチ(間隔)で配列された反射型の2次元回折格子が形成されている。なお、スケール面5aに形成される回折格子の種類は、特に限定されるものではなく、例えば、溝(凹凸)等により光路差を生じさせるタイプや、屈折率の違いにより光路差を生じさせるタイプの回折格子が用いられる。また、スケール面5aに形成された回折格子のデューティ(Duty)比は1:1になっている。
【0027】
光源部10は、照明光として直線偏光を射出する光源11と、光源11から射出された照明光を平行光に変換するコリメータレンズ12とを有して構成される。光源11は、互いに直交する直線偏光成分を持ち、且つ互いに周波数の異なる二つの直線偏光(P偏光,S偏光)を照明光として射出するようになっている。なお、光源部10は、図1に示されるように、投影ユニット130もしくは露光装置100を構成するフレーム部材(図示せず)に支持されている。光源11から射出された照明光(互いに周波数の異なるP偏光,S偏光)は、コリメータレンズ12を透過して平行光となり、エンコーダヘッド20を透過してスケール5のスケール面5aに略垂直に入射する。
【0028】
エンコーダヘッド20は、光源部10から射出された照明光がスケール5のスケール面5aで反射回折した±1次回折光を再びスケール面5aに入射させるとともに、そこで反射回折された二つの回折光を重ね合わせて干渉させ光検出部50に向けて射出する光学系である。具体的には、エンコーダヘッド20は、図3および図4に示すように、光源部10からの照明光がスケール面5aで反射回折した+1次回折光が入射する位置に設けられた第1コーナーキューブ(第1レトロ反射手段)21と、第1コーナーキューブ21で反射した+1次回折光が入射する位置に設けられた偏光板22と、光源部10からの照明光がスケール面5aで反射回折した−1次回折光が入射する位置に設けられた第2コーナーキューブ(第2レトロ反射手段)23と、第2コーナーキューブ23で反射した−1次回折光が入射する位置に設けられた1/2波長板24と、偏光板22を透過した+1次回折光が再びスケール面5aで反射回折した回折光のうちの+1次回折光および1/2波長板24を透過した−1次回折光が再びスケール面5aで反射回折した回折光のうちの−1次回折光が入射する位置に設けられた偏光ビームスプリッター25とを有して構成される。
【0029】
第1コーナーキューブ21は、互いに直交する三つの反射面を用いて入射した光を180度回転させて入射光軸に対して平行に反射させる光学部材であり、光源部10からの照明光がスケール面5aで反射回折した+1次回折光を反射させて、当該+1次回折光の回折角と等しい角度で再びスケール面5aに入射させるように構成されている。なおこのとき、+1次回折光がスケール面5aに再度入射する位置は、光源部10からの照明光がスケール面5aに入射する位置と異なる位置である。
【0030】
偏光板22は、第1コーナーキューブ21で反射された+1次回折光がスケール面5aに再入射するまでの光路上に設けられており、当該+1次回折光におけるS偏光成分のみを透過させるように構成されている。
【0031】
第2コーナーキューブ23は、上記第1コーナーキューブ21と同様に、互いに直交する三つの反射面を用いて入射した光を180度回転させて入射光軸に対して平行に反射させる光学部材であり、光源部10からの照明光がスケール面5aで反射回折した−1次回折光を反射させて、当該−1次回折光の回折角と等しい角度で再びスケール面5aに入射させるように構成されている。なおこのとき、−1次回折光がスケール面5aに再度入射する位置は、光源部10からの照明光がスケール面5aに入射する位置と異なる位置であり、第1コーナーキューブ21で反射された+1次回折光がスケール面5aに再度入射する位置と同一位置である。
【0032】
偏光ビームスプリッター25は、第1コーナーキューブ21で反射されて偏光板22を透過した+1次回折光が再びスケール面5aで反射回折した回折光のうちの+1次回折光、および第2コーナーキューブ23で反射されて1/2波長板24を透過した−1次回折光が再びスケール面5aで反射回折した回折光のうちの−1次回折光が入射する位置に設けられており、入射した各回折光におけるP編光成分を透過させ、S編光成分を反射させる光学部材である。
【0033】
光源部10から射出された照明光(互いに周波数の異なるP偏光,S偏光)がスケール5のスケール面5aに略垂直に入射し、スケール面5aにおいて反射回折された回折光のうち+1次回折光(P偏光,S編光)は、第1コーナーキューブ21に入射して、第1コーナーキューブ21で入射光軸に対して平行に反射され、偏光板22を透過してP偏光成分がカットされて、再びスケール面5aに入射する。そして、スケール面5aに再入射された+1次回折光(S編光)は、スケール面5aにおいて再び反射回折され、その回折光のうちの+1次回折光(以下、第1測定光という)が偏光ビームスプリッター25に入射する。この第1測定光は、偏光板22によってP偏光成分がカットされているためS編光であり、偏光ビームスプリッター25で反射されて光検出部50に入射する。
【0034】
一方、光源部10から射出された照明光(互いに周波数の異なるP偏光,S偏光)がスケール5のスケール面5aに略垂直に入射し、スケール面5aにおいて反射回折された回折光のうち−1次回折光(P偏光,S編光)は、第2コーナーキューブ23に入射して、第2コーナーキューブ23で入射光軸に対して平行に反射され、1/2波長板24を透過してP偏光,S偏光がそれぞれS編光,P編光となり、再びスケール面5aに入射する。そして、スケール面5aに再入射された−1次回折光(S編光,P編光)は、スケール面5aにおいて再び反射回折され、その回折光のうちの−1次回折光(以下、第2測定光という)が偏光ビームスプリッター25に入射する。この第2測定光はS編光およびP編光の両偏光成分を含んでいるが、第2測定光のP偏光成分は偏光ビームスプリッター25を透過し、第2測定光のS偏光成分だけが偏光ビームスプリッター25で反射されて光検出部50に入射する。
【0035】
光検出部50は、図3に示すように、エンコーダヘッド20から射出された第1および第2測定光が重なり合って干渉した光(以下、干渉光という)の強度を光電変換して光強度信号を生成し、その光強度信号を演算処理部210に出力するフォトディテクタ51を有して構成される。ここで、光源部10から射出される照明光は互いに周波数の異なる二つの直線偏光であるため、フォトディテクタ51の受光面51aに受光した干渉光の強度は常に変化している。そのため、フォトディテクタ51は、その干渉光の強度変化をそれぞれ光電変換して光強度信号を演算処理部210に出力している。
【0036】
演算処理部210は、フォトディテクタ51から出力された光強度信号の変化から干渉光の位相値を算出する(ヘテロダイン位相解析法)。そして、演算処理部210は、算出した干渉光の位相値に基づいてスケール5とエンコーダヘッド20との相対位置の変化(エンコーダヘッド20に対するスケール5の移動量)を測定し、これによりウェハステージ151のY軸方向の位置情報を求める。なお、演算処理部210は、上記主制御装置200の一部として設けられている(図2を参照)。
【0037】
干渉光の位相値からスケール5とエンコーダヘッド20の相対位置を測定する原理については従来から良く知られているため、ここでは詳細な説明は書略するが、エンコーダヘッド20に対してスケール5が移動すると、スケール5のスケール面5aで反射回折した±1次回折光の位相差が変化するので、演算処理部210において算出される干渉光の位相値が変化する。そのため、この干渉光の位相値に基づいてスケール5とエンコーダヘッド20との相対位置の変化を測定し、これによりウェハステージ151のY軸方向の位置情報を求めることができる。
【0038】
なお、図3および図4では図示を省略しているが、エンコーダヘッド20には、第1コーナーキューブ21、偏光板22、第2コーナーキューブ23、1/2波長板24および偏光ビームスプリッター25がX軸方向にも配設され、さらに光検出部50にはX軸方向測定用のフォトディテクタ51が設けられており、エンコーダ装置1では、光源部10から射出された照明光がスケール面5aでX軸方向に反射回折した±1次回折光を利用して、ウェハステージ151のX軸方向の位置情報も求めることができるようになっている。
【0039】
ところで、エンコーダ装置1では、スケール面5aに形成された回折格子のデューティ比が1:1であるため、2次回折光がほとんど生じない一方、他の次数の回折光(例えば、0次回折光)が測定精度を低下させるノイズ光になることが考えられるが、エンコーダ装置1は、このノイズ光を抑えることが可能な構成となっている。以下、その構成について説明する。
【0040】
まず、照明光がスケール面5aで反射回折された回折光のうち+1次回折光が、第1コーナーキューブ21および偏光板22を介して再びスケール面5aに入射し、スケール面5aで再び反射回折された回折光のうちの+1次回折光(第1測定光)は偏光ビームスプリッター25で反射されて測定に使用されるが、当該回折光のうちの0次回折光はノイズ光として1/2波長板24に入射することになる。この0次回折光(S偏光)は、1/2波長板24を透過してS偏光からP偏光となり、第2コーナーキューブ23で反射されて、再びスケール面5a(光源部10からの照明光が入射する位置と同一位置)に入射する。そして、この0次回折光(P偏光)はスケール面5aにおいて再び反射回折され、その回折光のうちの0次回折光が第1コーナーキューブ21に入射するが、この0次回折光はP偏光であるため第1コーナーキューブ21で反射された後に偏光板22を透過せずに偏光板22でカットされる。
【0041】
次に、照明光がスケール面5aで反射回折された回折光のうち−1次回折光が、第2コーナーキューブ23および1/2波長板24を介して再びスケール面5aに入射し、スケール面5aで再び反射回折された回折光のうちの−1次回折光(第2測定光)は偏光ビームスプリッター25で反射されて測定に使用されるが、当該回折光のうちの0次回折光はノイズ光として偏光板22に入射することになる。この0次回折光(S偏光,P偏光)は、偏光板22を透過してP偏光成分がカットされ、第1コーナーキューブ21で反射されて再びスケール面5a(光源部10からの照明光が入射する位置と同一位置に)に入射する。そして、スケール面5aに再入射された0次回折光(S偏光)はスケール面5aで再び反射回折され、その回折光のうちの0次回折光が第2コーナーキューブ23に入射して、第2コーナーキューブ23で反射された後に1/2波長板24を透過してS偏光からP偏光となり、再びスケール面5aに入射する。そして、この0次回折光(P偏光)はスケール面5aにおいて再び反射回折され、その回折光のうちの−1次回折光が偏光ビームスプリッター25に入射するが、この回折光はP偏光であるため偏光ビームスプリッター25を透過して光検出部50では検出されない。
【0042】
このようにエンコーダ装置1では、照明光がスケール面5aで反射回折された回折光のうち+1次回折光が、第1コーナーキューブ21および偏光板22を介して再びスケール面5aに入射し、スケール面5aで再び反射回折された回折光のうちの0次回折光(S偏光)については、1/2波長板24によってS偏光からP偏光に変化させた後に、偏光板22によってカットするため、当該0次回折光は光検出部50では検出されない。また、照明光がスケール面5aで反射回折された回折光のうち−1次回折光が、第2コーナーキューブ23および1/2波長板24を介して再びスケール面5aに入射し、スケール面5aで再び反射回折された回折光のうちの0次回折光(S偏光,P偏光)については、まず偏光板22によってP偏光をカットし、残りのS偏光を1/2波長板24によってP偏光に変化させて偏光ビームスプリッター25を透過させるため、当該0次回折光も光検出部50では検出されない。したがって、エンコーダ装置1では、このような0次回折光(ノイズ光)が測定に影響を与えることがないので、測定精度を向上させることができる。
【0043】
なお、上述の実施形態において、偏光板22は、第1コーナーキューブ21で反射された+1次回折光がスケール面5aに再入射するまでの光路上に設けられているが、光源部10からの照明光がスケール面5aで反射回折した+1次回折光が第1コーナーキューブ21に入射するまでの光路上に設けられてもよい。また、偏光板22は、当該+1次回折光におけるS偏光成分のみを透過させるように構成されているが、S偏光成分ではなく、P偏光成分のみを透過させるように構成してもよい。なおその場合には、偏光ビームスプリッター25に代えて、P偏光成分のみを光検出部50に向けて導く光学部材(例えば、偏光プリズム)を配設すればよい。
【0044】
また、上述の実施形態において、1/2波長板24は、第2コーナーキューブ23で反射された−1次回折光がスケール面5aに再入射するまでの光路上に設けられているが、光源部10からの照明光がスケール面5aで反射回折した−1次回折光が第2コーナーキューブ23に入射するまでの光路上に設けられてもよい。また、1/2波長板24を、二つの1/4波長板によって構成してもよい。
【0045】
次に、第2実施形態に係るエンコーダ装置1′について説明する。このエンコーダ装置1′では、エンコーダヘッドの構成が上述の実施形態と異なり、それ以外の構成については上述の実施形態と同一構成である。そのため、上述の実施形態と共通する構成については同一の符号を付してその説明を省略し、ここでは上述の実施形態と異なるエンコーダヘッドの構成について説明する。
【0046】
エンコーダ装置1′は、図1に示すように、スケール5と、投影ユニット130の下部にスケール5(ウェハステージ151)と対向するように設けられたエンコーダヘッド220と、エンコーダヘッド220に向けて照明光を射出する光源部10と、エンコーダヘッド220により照明光が照射されたスケール5からの反射光(回折光)を検出する光検出部50と、演算処理部210(図2を参照)とを有して構成される。
【0047】
エンコーダヘッド220は、図5に示すように、光源部10からの照明光がスケール面5aで反射回折した+1次回折光が入射する位置に設けられた第1偏光ビームスプリッター221と、第1偏光ビームスプリッター221で反射した+1次回折光が入射する位置に設けられ、当該+1次回折光を第1偏光ビームスプリッター221に向けて反射させる第1コーナーキューブ222と、光源部10からの照明光がスケール面5aで反射回折した−1次回折光が入射する位置に設けられた反射ミラー223と、反射ミラー223で反射した−1次回折光が入射する位置に設けられた1/2波長板224と、1/2波長板224を透過した−1次回折光が入射する位置に設けられ、当該−1次回折光を反射ミラー223に向けて反射させる第2コーナーキューブ225と、第1偏光ビームスプリッター221および第1コーナーキューブ222で反射された+1次回折光が再びスケール面5aで反射回折した回折光のうちの+1次回折光並びに反射ミラー223および第2コーナーキューブ225で反射された−1次回折光が再びスケール面5aで反射回折した回折光のうちの−1次回折光が入射する位置に設けられた第2偏光ビームスプリッター226とを有して構成される。
【0048】
第1偏光ビームスプリッター221は、光源部10からの照明光がスケール面5aで反射回折した+1次回折光が入射する位置に設けられており、入射した+1次回折光におけるP偏光成分を透過させ、S偏光成分を第1コーナーキューブ222に向けて反射させる。そして、第1偏光ビームスプリッター221は、第1コーナーキューブ222で入射光軸に対して平行に反射されて戻ってきた+1次回折光(S偏光)を再び反射させて、当該+1次回折光の回折角と等しい角度で再びスケール面5aに入射させるように構成されている。なおこのとき、+1次回折光がスケール面5aに再度入射する位置は、光源部10からの照明光がスケール面5aに入射する位置と異なる位置である。
【0049】
反射ミラー223は、光源部10からの照明光がスケール面5aで反射回折した−1次回折光が入射する位置に設けられており、入射した−1次回折光を第2コーナーキューブ225に向けて反射させる。そして、反射ミラー223は、第2コーナーキューブ225で入射光軸に対して平行に反射されて戻ってきた−1次回折光を再び反射させて、当該−1次回折光の回折角と等しい角度で再びスケール面5aに入射させるように構成されている。なおこのとき、−1次回折光がスケール面5aに再度入射する位置は、光源部10からの照明光がスケール面5aに入射する位置と異なる位置であり、第1偏光ビームスプリッター221で反射された+1次回折光がスケール面5aに再度入射する位置と同一位置である。
【0050】
光源部10から射出された照明光(互いに周波数の異なるP偏光,S偏光)がスケール5のスケール面5aに略垂直に入射し、スケール面5aにおいて反射回折された回折光のうち+1次回折光(P偏光,S編光)は、第1偏光ビームスプリッター221に入射する。第1偏光ビームスプリッター221で反射された+1次回折光(S偏光)は、第1コーナーキューブ222に入射して、第1コーナーキューブ222で入射光軸に対して平行に反射され、再び第1偏光ビームスプリッター221で反射されて、スケール面5aに再入射する。そして、スケール面5aに再入射された+1次回折光(S編光)は、スケール面5aにおいて再び反射回折され、その回折光のうちの+1次回折光(以下、第1測定光という)が第2偏光ビームスプリッター226に入射する。この第1測定光は、S編光であるため、第2偏光ビームスプリッター226で反射されて光検出部50に入射する。
【0051】
一方、光源部10から射出された照明光(互いに周波数の異なるP偏光,S偏光)がスケール5のスケール面5aに略垂直に入射し、スケール面5aにおいて反射回折された回折光のうち−1次回折光(P偏光,S編光)は、反射ミラー223に入射する。反射ミラー223で反射された−1次回折光は、1/2波長板224を透過してP偏光,S偏光がそれぞれS編光,P編光となり、第2コーナーキューブ225で入射光軸に対して平行に反射され、再び反射ミラー223で反射されて、スケール面5aに再入射する。そして、スケール面5aに再入射された−1次回折光(S編光,P編光)は、スケール面5aにおいて再び反射回折され、その回折光のうちの−1次回折光(以下、第2測定光という)が第2偏光ビームスプリッター226に入射する。この第2測定光はS編光およびP編光の両偏光成分を含んでいるが、第2測定光のP偏光成分は第2偏光ビームスプリッター226を透過し、第2測定光のS偏光成分だけが第2偏光ビームスプリッター226で反射されて光検出部50に入射する。
【0052】
ここで、光源部10から射出される照明光は互いに周波数の異なる二つの直線偏光であるため、光検出部50のフォトディテクタ51では、エンコーダヘッド220から射出された第1および第2測定光が重なり合って干渉した光(以下、干渉光という)の強度変化をそれぞれ光電変換して光強度信号を生成し、その光強度信号を演算処理部210に出力している。そして、演算処理部210は、フォトディテクタ51から出力された光強度信号の変化から干渉光の位相値を算出(ヘテロダイン位相解析法)し、算出した干渉光の位相値に基づいてスケール5とエンコーダヘッド220との相対位置の変化(エンコーダヘッド220に対するスケール5の移動量)を測定し、これによりウェハステージ151のY軸方向の位置情報を求める。
【0053】
なお、図5では図示を省略しているが、エンコーダヘッド220には、第1偏光ビームスプリッター221、第1コーナーキューブ222、反射ミラー223、1/2波長板24、第2コーナーキューブ225および第2偏光ビームスプリッター226がX軸方向にも配設され、さらに光検出部50にはX軸方向測定用のフォトディテクタ51が設けられており、エンコーダ装置1′では、光源部10から射出された照明光がスケール面5aでX軸方向に反射回折した±1次回折光を利用して、ウェハステージ151のX軸方向の位置情報も求めることができるようになっている。
【0054】
また、エンコーダ装置1′では、第1偏光ビームスプリッター221を透過した光を利用して、ウェハステージ151のZ軸方向の移動量(位置情報)も測定することができるようになっており、その測定について以下に説明する。
【0055】
光源部10から射出された照明光(互いに周波数の異なるP偏光,S偏光)がスケール5のスケール面5aに略垂直に入射し、スケール面5aにおいて反射回折された回折光のうち+1次回折光(P偏光,S編光)は、第1偏光ビームスプリッター221に入射する。そして、図6に示すように、第1偏光ビームスプリッター221を透過した+1次回折光のP偏光成分(以下、第3測定光という)が光検出部50に入射するようになっている。
【0056】
一方、第1偏光ビームスプリッター221で反射された+1次回折光(S偏光)は、第1コーナーキューブ222に入射して、第1コーナーキューブ222で入射光軸に対して平行に反射され、再び第1偏光ビームスプリッター221で反射されて、スケール面5aに再入射する。そして、スケール面5aに再入射された+1次回折光(S編光)は、スケール面5aにおいて再び反射回折され、その回折光のうちの0次回折光が反射ミラー223に入射する。反射ミラー223で反射された0次回折光(S偏光)は、第2コーナーキューブ225で反射され、1/2波長板224を透過してS偏光からP偏光となり、反射ミラー223で反射されて再びスケール面5a(光源部10からの照明光が入射する位置と同一位置)に入射する。そして、スケール面5aに再入射された0次回折光(P偏光)は、スケール面5aにおいて再び反射回折され、その回折光のうちの0次回折光(以下、第4測定光という)が第1偏光ビームスプリッター221を透過して光検出部50に入射するようになっている。
【0057】
光検出部50には、エンコーダヘッド220から射出された第3および第4測定光が重なり合って干渉した光(以下、第2干渉光という)の強度を光電変換して光強度信号を生成し、その光強度信号を演算処理部210に出力するZ軸方向測定用のフォトディテクタ52が設けられている。ここで、光源部10から射出される照明光は互いに周波数の異なる二つの直線偏光であるため、フォトディテクタ52では、その第2干渉光の強度変化をそれぞれ光電変換して光強度信号を演算処理部210に出力している。そして、演算処理部210は、フォトディテクタ52から出力された光強度信号の変化から第2干渉光の位相値を算出(ヘテロダイン位相解析法)し、算出した第2干渉光の位相値に基づいてスケール5とエンコーダヘッド20との相対位置の変化(エンコーダヘッド20に対するスケール5の移動量)を測定し、これによりウェハステージ151のZ軸方向の位置情報を求める。
【0058】
このようにエンコーダ装置1′では、スケール面5aにおいて一回反射回折された回折光(第3測定光)と、スケール面5aにおいて三回反射回折された回折光(第4測定光)とを重ね合わせて干渉した干渉光(第2干渉光)の位相分布から、スケール5とエンコーダヘッド20とのZ軸方向の相対位置の変化を測定することができる。
【0059】
ここで、エンコーダ装置1′におけるノイズ光(0次回折光)を抑える構成について説明すると、まず、照明光がスケール面5aで反射回折された回折光のうち+1次回折光が、第1偏光ビームスプリッター221および第1コーナーキューブ222を介して再びスケール面5aに入射し、スケール面5aにおいて再び反射回折された回折光のうちの0次回折光(S偏光)については、上述のようにZ軸方向の測定に用いられる。
【0060】
次に、照明光がスケール面5aで反射回折された回折光のうち−1次回折光が、反射ミラー223、1/2波長板224および第2コーナーキューブ225を介して再びスケール面5aに入射し、スケール面5aで再び反射回折された回折光のうちの0次回折光(S偏光,P偏光)については、ノイズ光として第1偏光ビームスプリッター221に入射することになる。この0次回折光(ノイズ光)のうちP偏光成分は第1偏光ビームスプリッター221を透過し、S偏光成分だけが第1偏光ビームスプリッター221で反射されて第1コーナーキューブ222に入射する。第1コーナーキューブ222で反射された0次回折光(S偏光)は、再び第1偏光ビームスプリッター221で反射され、再びスケール面5a(照明光が入射する位置と同一位置)に入射する。そして、スケール面5aに再入射された0次回折光(S偏光)は、スケール面5aにおいて再び反射回折され、その回折光のうちの0次回折光が反射ミラー223に入射し、反射ミラー223で反射された後に1/2波長板224を透過してS偏光からP偏光となり、再びスケール面5aに入射する。その0次回折光(P偏光)はスケール面5aで再び反射回折され、その回折光のうちの−1次回折光が第2偏光ビームスプリッター226に入射するが、この回折光はP偏光であるため第2偏光ビームスプリッター226を透過して光検出部50では検出されない。
【0061】
このようにエンコーダ装置1′では、照明光がスケール面5aで反射回折された回折光のうち+1次回折光が、第1偏光ビームスプリッター221および第1コーナーキューブ222を介して再びスケール面5aに入射し、スケール面5aで再び反射回折された回折光のうちの0次回折光については、Z軸方向の測定に用いられる。また、照明光がスケール面5aで反射回折された回折光のうち−1次回折光が、反射ミラー223、1/2波長板224および第2コーナーキューブ225を介して再びスケール面5aに入射し、スケール面5aで再び反射回折された回折光のうちの0次回折光(S偏光,P偏光)については、第1偏光ビームスプリッター221によってP偏光をカットし、残りのS偏光を1/2波長板224によってP偏光に変化させて第2偏光ビームスプリッター226を透過させるため、当該0次回折光は光検出部50では検出されない。したがって、エンコーダ装置1′では、このような0次回折光(ノイズ光)が測定に影響を与えることがないので、測定精度を向上させることができる。
【0062】
なお、上述の第2実施形態において、図7に示すように、複数の第1偏光ビームスプリッター221および反射ミラー223を用いて構成してもよい。このように構成することで、図8に示すように、第1偏光ビームスプリッター221、第1コーナーキューブ222、反射ミラー223、1/2波長板224、第2コーナーキューブ225および第2偏光ビームスプリッター226を一体に形成することができ、これによりエンコーダヘッド220を小型化することができる。
【0063】
また、上述の第2実施形態において、1/2波長板224は、反射ミラー223で反射された−1次回折光が第2コーナーキューブ225に入射するまでの光路上に設けられているが、照明光がスケール面5aで反射回折された−1次回折光が反射ミラー223に入射するまでの光路上、第2コーナーキューブ225で反射された−1次回折光が反射ミラー223に再入射するまでの光路上、および反射ミラー223で反射された−1次回折光がスケール面5aに再入射するまでの光路上のいずれに設けられてもよい。また、1/2波長板224を、二つの1/4波長板によって構成してもよい。
【0064】
以上のようなエンコーダ装置1,1′によれば、光源部10からの照明光がスケール面5aに照射されてスケール面5aで反射回折された+1次回折光および−1次回折光の二つの回折光を利用して、スケール5とエンコーダヘッド20,220との相対位置の変化を測定するように構成されている。従来のエンコーダ装置では、照明光が照射されて回折格子で回折された回折光のうち、所定次数の片側の回折光(例えば、+1次回折光)だけが測定に利用されているのに対し、エンコーダ装置1,1′では、二つの回折光(±1次回折光)を利用するため、従来のエンコーダ装置よりも回折光の光量の利用効率が高くなる。また、エンコーダ装置1,1′では、エンコーダヘッド20,220において、照明光を二つの光に分割する光分割手段など、照明光をスケール面5aに照射するための光学部材を備えていないため、エンコーダヘッド20,220を小型化することができる。また、エンコーダ装置1,1′では、光源部10からの照明光がスケール面5aに照射されてスケール面5aの同じ位置で反射回折された±1次回折光をそれぞれ、異なる光路を介してスケール面5aの同じ位置(但し、照明光が入射する位置とは異なる位置)に再入射させる構成であるため、スケール5がエンコーダヘッド20,220に対して傾いたり、スケール5とエンコーダヘッド20,220の間隔が変化しても、測定に影響しない。
【0065】
本発明の一様態であるデバイス製造方法では、半導体デバイスは、デバイスの機能・性能設計を行う工程、シリコン材料からウェハを形成する工程、露光装置100によりレチクルRを介してウェハWを露光する工程を含むリソグラフィ工程、エッチング等の回路パターンを形成する工程、デバイス組立工程(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程を含む)、および検査工程等を経て製造される。
【0066】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれらの構成形態に限定されるものではない。例えば、上述の実施形態において、エンコーダ装置1,1′では、照明光がスケール面5aに照射されてスケール面5aで反射回折された±1次回折光を利用して、スケール5とエンコーダヘッド20,220との相対位置の変化を測定するように構成されているが、例えば±2次回折光や±3次回折光など、他の次数の回折光を利用して測定するように構成してもよい。
【0067】
また、上述の実施形態において、光源部10は、互いに周波数の異なる二つの直線偏光(P偏光,S偏光)を射出するように構成されているが、同一周波数の二つの直線偏光を射出するように構成されてもよい。なおその場合には、光検出部50は、1/4波長板と、1/4波長板を透過した測定光を少なくとも三つの測定光に分割する光分割手段と、それら三つの測定光をそれぞれ偏光板を介して検出する三つのフォトディテクタとを備え、初期位相の異なる少なくとも三つの干渉光を検出するように構成すればよい。
【0068】
また、上述の実施形態では、スケール5がウェハステージ151上に設けられ、エンコーダヘッド20,220が投影ユニット130側に設けれているが、これとは逆に、エンコーダヘッドをウェハステージ上に設け、スケール(回折格子)を投影ユニット側に設ける構成でもよい。また、本実施形態では、エンコーダ装置1,1′を、半導体デバイス製造用の露光装置100に設けた場合について説明したが、本発明に係るエンコーダ装置は、他の種々のデバイスを製造するための露光装置や、露光装置以外の検査装置、測定装置等の光学装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0069】
1,1′ エンコーダ装置
5 スケール(回折格子)
10 光源部
20 エンコーダヘッド(第1実施形態)
21 第1コーナーキューブ(第1反射部、レトロ反射光学系)
22 偏光板(第1偏光選択部)
23 第2コーナーキューブ(第2反射部、レトロ反射光学系)
24 1/2波長板(波長変換部)
25 偏光ビームスプリッター(第2偏光選択部)
50 光検出部
210 演算処理部(移動量測定部)
220 エンコーダヘッド(第2実施形態)
221 第1偏光ビームスプリッター
222 第1コーナーキューブ(第1レトロ反射光学系)
223 反射ミラー
224 1/2波長板(波長板)
225 第2コーナーキューブ(第2レトロ反射光学系)
226 第2偏光ビームスプリッター(偏光選択部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部材に対して所定方向に直線移動する測定対象物の移動量を測定するエンコーダ装置であって、
前記ベース部材および前記測定対象物のいずれか一方に設けられ、前記所定方向に所定間隔で配列された格子パターンを有する反射型の回折格子と、
前記格子パターンに向けて照明光を射出する光源部と、
前記ベース部材および前記測定対象物の他方に設けられ、前記光源部から射出された前記照明光が前記格子パターンに照射されて前記格子パターンで反射回折された±n次回折光(nは整数)を再び前記格子パターンに入射させるとともに、当該格子パターンで反射回折された二つの回折光を重ね合わせて干渉させ干渉光として射出するエンコーダヘッドと、
前記エンコーダヘッドから射出された前記干渉光を受けて、前記干渉光の強度の変化を光電変換して出力する光検出部と、
前記光検出部から出力された光強度信号から前記干渉光の位相値を算出し、算出した前記位相値に基づいて前記測定対象物の移動量を測定する移動量測定部とを備え、
前記エンコーダヘッドは、前記格子パターンで反射回折された前記+n次回折光を反射させて前記+n次回折光の回折角と等しい角度で再び前記格子パターンに入射させる第1反射部と、前記格子パターンで反射回折された前記−n次回折光を反射させて前記−n次回折光の回折角と等しい角度で再び前記格子パターンに入射させる第2反射部とを有して構成されること特徴とするエンコーダ装置。
【請求項2】
前記光源部は、互いに直交する偏光成分を有する二つの直線偏光を前記照明光として射出するように構成され、
前記エンコーダヘッドは、
前記+n次回折光が前記第1反射部により反射されて前記格子パターンに再入射するまでの+n次回折光路、および前記−n次回折光が前記第2反射部により反射されて前記格子パターンに再入射するまでの−n次回折光路のいずれか一方に設けられ、前記二つの直線偏光のうち一方の直線偏光のみを透過させる第1偏光選択部と、
前記+n次回折光路および前記−n次回折光路の他方に設けられ、前記二つの直線偏光の偏光成分をそれぞれ90度変化させる波長変換部と、
前記第1反射部により反射された前記+n次回折光および前記第2反射部により反射された前記−n次回折光が前記格子パターンに再入射されて当該格子パターンで反射回折された前記二つの回折光の光路に設けられ、前記第1偏光選択部において透過可能な直線偏光と同じ偏光成分を有する直線偏光のみを前記光検出部に向けて射出する第2偏光選択部とを有して構成されることを特徴とする請求項1に記載のエンコーダ装置。
【請求項3】
前記第1反射部および前記第2反射部はそれぞれ、入射光を180度回転させて入射光軸に対して平行に反射させるレトロ反射光学系により構成されることを特徴とする請求項1または2に記載のエンコーダ装置。
【請求項4】
前記光源部は、互いに直交する偏光成分を有する二つの直線偏光を前記照明光として射出するように構成され、
前記第1反射部は、前記+n次回折光が入射する位置に設けられ、前記二つの直線偏光のうち一方の直線偏光を反射させるとともに他方の直線偏光を透過させる第1偏光ビームスプリッターと、前記第1偏光ビームスプリッターで反射された前記+n次回折光が入射する位置に設けられ、入射された前記+n次回折光を180度回転させて入射光軸に対して平行に反射させる第1レトロ反射光学系とを有し、前記第1レトロ反射光学系で反射されて前記第1偏光ビームスプリッターに戻ってきた前記+n次回折光を前記第1偏光ビームスプリッターで反射させて前記格子パターンに再入射させるように構成され、
前記第2反射部は、前記−n次回折光が入射する位置に設けられた反射ミラーと、前記反射ミラーで反射された前記−n次回折光が入射する位置に設けられ、入射された前記−n次回折光を180度回転させて入射光軸に対して平行に反射させる第2レトロ反射光学系と、前記−n次回折光が前記格子パターンに再入射するまでの光路に設けられ、前記二つの直線偏光の偏光成分をそれぞれ90度変化させる波長板とを有し、前記第2レトロ反射光学系で反射されて前記反射ミラーに戻ってきた前記−n次回折光を前記反射ミラーで反射させて前記格子パターンに再入射させるように構成され、
前記エンコーダヘッドは、前記第1反射部および前記第2反射部により前記±n次回折光が前記格子パターンに再入射されて当該格子パターンで反射回折された前記二つの回折光の光路に設けられ、前記第1反射部の前記第1偏光ビームスプリッターにおいて反射される直線偏光と同じ偏光成分を有する直線偏光のみを前記光検出部に向けて射出する偏光選択部を有して構成されることを特徴とする請求項1に記載のエンコーダ装置。
【請求項5】
前記エンコーダヘッドは、前記照明光が前記格子パターンで反射回折されて前記第1反射部の前記第1偏光ビームスプリッターを透過した前記+n次回折光と、前記第1反射部により前記+n次回折光が前記格子パターンに再入射されて当該格子パターンで反射回折された回折光のうちの前記第2反射部に入射した回折光が前記第2反射部を介して再び前記格子パターンに入射されて当該格子パターンで反射回折され前記第1反射部に入射して前記第1偏光ビームスプリッターを透過した回折光とを重ね合わせて干渉させ第2干渉光として射出するように構成され、
前記光検出部は前記第2干渉光の強度変化を光電変換して前記移動量測定に出力し、前記移動量測定部は前記第2干渉光の位相値に基づいて前記格子パターンに垂直な方向の前記測定対象物の移動量を測定することを特徴とする請求項4に記載のエンコーダ装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のエンコーダ装置を備えることを特徴とする光学装置。
【請求項7】
被露光体を所定の露光領域に対応する露光位置に移動させながら、レチクルに形成された所定のパターンを前記被露光体に投影して露光を行う露光装置であって、
前記被露光体を支持するとともに所定方向に直線移動可能なステージと、
前記所定方向への前記ステージの移動量を測定する請求項1〜5のいずれかに記載のエンコーダ装置と、
前記ステージに支持された前記被露光体を前記露光位置に移動させるように、前記エンコーダ装置により測定された前記移動量に基づいて前記ステージの前記所定方向への移動を制御するステージ移動制御部とを備えることを特徴とする露光装置。
【請求項8】
被露光体を支持するステージの所定方向への直線移動量を測定する請求項1〜5のいずれかに記載のエンコーダ装置の測定結果に基づいて前記ステージの前記所定方向への移動を制御して、前記ステージに支持された前記被露光体を所定の露光領域に対応する露光位置に移動させながら、レチクルに形成された所定のパターンを前記被露光体に投影して露光を行うことを特徴とする露光方法。
【請求項9】
リソグラフィ工程を含むデバイス製造方法であって、
前記リソグラフィ工程では、請求項7に記載の露光装置を用いてレチクルに形成された所定のパターンを被露光体に投影して露光を行うことを特徴とするデバイス製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−49284(P2012−49284A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−189192(P2010−189192)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】