説明

エンジンの廃熱制御装置

【課題】熱利用要求に応じた廃熱制御を実施し、しかも廃熱制御の実施に伴い生じるエンジン運転効率の低下等の不都合を最小限に抑える。
【解決手段】ECU40は、熱利用要求に基づいてエンジンの廃熱量を制御する。すなわち、ECU40は、エンジン10の廃熱量を増加させる廃熱量調整手段を複数備えており、複数の廃熱量調整手段のうちいずれの廃熱量調整手段により廃熱量を増加させるかを切り替える。例えば、複数の廃熱量調整手段は、各々廃熱量の増加分が相違するものとして設定されており、熱利用要求に伴う要求熱量に基づいて複数の廃熱量調整手段のうち少なくとも1つを選択的に用いて廃熱量を増加させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱利用要求に基づいてエンジンの廃熱量を制御するエンジンの廃熱制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車載エンジンにおいて、燃料の燃焼に伴い発生する燃焼エネルギには、車両走行に用いられる運動エネルギ以外に熱エネルギが多く含まれており、その熱エネルギを利用して車室内の暖房や触媒暖機等が行われている。例えば、エンジン冷却水に含まれるエンジン廃熱を回収するとともにその廃熱を利用して暖房を行う構成が知られている。
【0003】
また、エンジン運転中において、点火時期や吸排気バルブのバルブ開閉タイミングを制御することで排気温度を上昇させ、それにより触媒の早期暖機を図る技術が各種提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−324746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば、エンジン運転状態によっては点火時期の変更やバルブタイミングの変更が実施できない場合も生じる。この場合、所望とする排気温度の上昇が見込めず、結果として触媒の早期暖機等が実現できないことが懸念される。例えば、低負荷の領域では廃熱量が小さいため、適切な手段を用いないと要求廃熱量を満足できない。また、エンジン運転状態にかかわらず点火時期の変更やバルブタイミングの変更を実施すると、エンジン運転効率が過剰に低下する等の不都合が生じることが懸念される。
【0006】
本発明は、熱利用要求に応じた廃熱制御を実施でき、しかも廃熱制御の実施に伴い生じるエンジン運転効率の低下等の不都合を最小限に抑えることができるエンジンの廃熱制御装置を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果について説明する。
【0008】
本発明におけるエンジンの廃熱制御装置は、エンジンの廃熱量を増加させる廃熱量調整手段を複数備えるとともに、前記複数の廃熱量調整手段のうちいずれの廃熱量調整手段により廃熱量を増加させるかを切り替える廃熱制御手段を備えることを特徴とする。
【0009】
複数の廃熱量調整手段を備える構成では、それら各廃熱量調整手段について、エンジン運転状態による廃熱量調整の可否や、エンジンの運転効率(燃費性能)に対する影響、廃熱量の増量可能範囲(ダイナミックレンジ)、廃熱量変化の応答性等が相違することが考えられる。この点、上記のとおり複数の廃熱量調整手段のうちいずれの廃熱量調整手段により廃熱量を増加させるかを切り替えることにより、必要に応じた最適なる廃熱制御を実現できる。燃料消費量の視点から最適な廃熱量調整手段を選択することも可能となる。その結果、熱利用要求に応じた廃熱制御を実施でき、しかも廃熱制御の実施に伴い生じるエンジン運転効率の低下等の不都合を最小限に抑えることが可能となる。
【0010】
複数の廃熱量調整手段としては、エンジンの点火時期を調整することにより廃熱量を増加させる手段、エンジンの吸気バルブの開閉タイミングを調整することにより廃熱量を増加させる手段、エンジンの排気バルブの開閉タイミングを調整することにより廃熱量を増加させる手段等が含まれる。また、エンジン制御以外の廃熱量調整手段が含まれていてもよい。例えば、変速機のシフト制御を実施することにより廃熱量を増加させる手段が含まれてもよい。
【0011】
複数の廃熱量調整手段による廃熱量の増加手法として以下の各手法が適用できる。
(1)複数の廃熱量調整手段は、各々廃熱量の増加分が相違するものとして設定されており、熱利用要求に伴う要求熱量に基づいて複数の廃熱量調整手段のうち少なくとも1つを選択的に用いて廃熱量を増加させる(請求項2)。なお、各廃熱量調整手段は、点火時期を調整するもの、バルブタイミングを調整するもののように、1つのアクチュエータを制御対象とするもの以外に、点火時期及びバルブタイミングの両方を調整するもののように、複数のアクチュエータを同時に制御対象とするものであってもよい。
(2)複数の廃熱量調整手段は、エンジンの廃熱量の増量可能範囲(ダイナミックレンジ)が各々定められており、廃熱量の増量可能範囲が大きい廃熱量調整手段を優先的に用いて廃熱量を増加させる(請求項3)。
(3)熱利用要求に伴う要求熱量が大きいほど、前記複数の廃熱量調整手段のうち、廃熱制御に利用する廃熱量調整手段の数を多くする(請求項4)。
【0012】
上記(1)〜(3)によれば、熱利用要求に伴う要求熱量が相違しても、その時々の要求熱量に見合う廃熱量調整手段を選択できる。これにより、熱利用要求に十分に応えることができる。
【0013】
また、上記(1)によれば、各廃熱量調整手段の廃熱量の増加分をあらかじめ定めておくことで廃熱量調整手段の選択が容易となり、廃熱制御を簡易に実施できるという効果が得られる。
【0014】
上記(2)によれば、廃熱量の増量可能範囲が大きい廃熱量調整手段を優先的に用いることで、時間の経過に伴い要求熱量が多少変動しても廃熱量調整手段の変更が不要であり、廃熱量調整手段の変更を極力減らすことができる。これにより、廃熱量調整手段の切替に伴い生じるエンジン運転状態の変動(ドライバビリティの悪化を含む)を抑制できる。
【0015】
上記(3)によれば、要求熱量が比較的小さい場合には、利用される廃熱量調整手段の数が少ないため、複数の廃熱量調整手段を同時に用いることに起因する相互の影響(制御上の干渉)を抑制できる。また、要求熱量が比較的大きい場合には、利用される廃熱量調整手段の数が多いため、所望とする熱量の大幅増加を実現できる。
【0016】
請求項5に記載の発明では、複数の廃熱量調整手段は、主に冷却損失を増やすことで廃熱量を増加させる冷却損失増加手段と、主に排気損失を増やすことで廃熱量を増加させる排気損失増加手段とを含む。そして、熱利用要求の内容及び同熱利用要求に伴う要求熱量の少なくともいずれかに基づいて、冷却損失増加手段及び排気損失増加手段のいずれにより廃熱量を増加させるかを切り替える。
【0017】
熱利用要求には、冷却損失による熱エネルギを利用すると都合がよいものと、排気損失による熱エネルギを利用すると都合がよいものとが存在する。この場合、上記のとおり冷却損失増加手段と排気損失増加手段との選択が行われることにより、熱利用要求に即した廃熱制御を実現できる。
【0018】
請求項6に記載の発明では、複数の廃熱量調整手段ごとの、熱利用要求に伴い廃熱量を増加させる場合における燃料噴射量の変化分に対する廃熱量の増加比率を表す廃熱効率に基づいて、複数の廃熱量調整手段のうちいずれの廃熱量調整手段により廃熱量を増加させるかを切り替える。
【0019】
上記構成によれば、廃熱制御のパラメータとして、上述した廃熱効率(燃料噴射量の変化分に対する廃熱量の増加比率)が用いられることにより、燃料噴射量の変化に伴う燃費変化を監視しつつ、燃費悪化が最小限となるようにして廃熱制御を実施できる。補足すると、請求項6の発明は、燃料消費量の視点から廃熱量調整手段を選択するという着想からなされたものであり、必要以上に燃料消費量を増加(燃費を悪化)させることなく、適正な廃熱量調整手段の選択が可能となる。
【0020】
請求項7に記載の発明では、複数の廃熱量調整手段について前記廃熱効率を各々算出し、該算出した廃熱効率が良い廃熱量調整手段を優先的に用いて廃熱量を増加させる。これにより、廃熱制御を実施する場合の燃費低下を一層好適に抑制できる。
【0021】
エンジン運転状態が異なると、廃熱制御を実施した場合のエンジン運転効率への影響等が相違すると考えられる。それは、複数の廃熱量調整手段について個々にも言える。それ故に、複数の廃熱量調整手段ごとに、エンジン運転状態に基づいて前記廃熱効率を算出するとよい(請求項8)。これにより、エンジン運転状態を加味して一層適正な廃熱制御を実現できる。
【0022】
請求項9に記載の発明では、複数の廃熱量調整手段は、前記廃熱量の増量可能範囲(ダイナミックレンジ)が各々定められており、複数の廃熱量調整手段の廃熱効率に加えて、同廃熱量調整手段における前記廃熱量の増量可能範囲に基づいて、いずれの廃熱量調整手段により廃熱量を増加させるかを切り替える。これにより、燃費悪化が最小限となるようにして廃熱制御を実施できることに加え、要求熱量が比較的大きい場合において所望とする熱量の大幅増加を実現できる。
【0023】
エンジンの廃熱を積極的に利用する構成では、エンジンの運転効率の低下が生じることが考えられ、それに伴いエンジン出力(図示出力)の低下が生じることが懸念される。この点、請求項10に記載の発明では、廃熱制御が実施される場合において該廃熱制御の実施に伴うエンジンの出力低下分を増補する出力増補手段を備える。したがって、廃熱制御の実施時においてもエンジン出力が維持される。つまり、車両においては走行エネルギが維持され、ドライバビリティの悪化を抑制できる。
【0024】
ここで、請求項11に記載したように、複数の廃熱量調整手段のうち、廃熱制御に利用される廃熱量調整手段に関して燃料噴射量の増加総量を算出し、その燃料噴射量の増加総量に基づいてエンジンの出力制御を実施するとよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】発明の実施の形態における廃熱制御システムの概略を示す構成図。
【図2】バルブ開閉時期を説明するためのタイムチャート。
【図3】第1〜第3調整手段についてエンジン軸効率と発生熱効率との関係を示した図。
【図4】エンジン冷間始動時における廃熱制御の概要を説明するためのタイムチャート。
【図5】廃熱制御の処理手順を示すフローチャート。
【図6】エンジン出力と熱量との関係を示す図。
【図7】第2の実施形態において廃熱制御に関する機能ブロック図。
【図8】廃熱制御の処理手順を示すフローチャート。
【図9】廃熱制御の処理手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(第1の実施形態)
以下、火花点火式の多気筒ガソリンエンジンを搭載した車両に本発明を具体化した実施形態について図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態の廃熱制御システム(廃熱再利用システム)の概要を示す構成図である。
【0027】
図1において、エンジン10には、吸気管11と排気管12とが接続されており、吸気管11には気筒内への吸入空気量を調整するためのスロットルバルブ13が設けられている。スロットルバルブ13は、モータ等からなるスロットルアクチュエータ14により電気的に開閉駆動される空気量調整手段である。スロットルアクチュエータ14にはスロットルバルブ13の開度(スロットル開度)を検出するためのスロットルセンサが内蔵されている。
【0028】
エンジン10は、同エンジン10の各気筒に燃料を噴射供給する燃料噴射手段としてのインジェクタ15と、気筒ごとに設けられた点火プラグ16に点火火花を発生させる点火手段としてのイグナイタ(点火装置)17と、吸排気の各バルブの開閉タイミングを調整するバルブタイミング調整手段としての吸気側バルブ駆動機構18及び排気側バルブ駆動機構19とを備えている。本実施形態では、吸気ポート噴射式エンジンを採用しており、インジェクタ15が吸気ポート近傍に設けられる構成としているが、これに代えて、直噴式エンジンを採用し、インジェクタ15が各気筒のシリンダヘッド等に設けられる構成としてもよい。吸気側及び排気側の各バルブ駆動機構18,19は、エンジン10のクランク軸に対する吸気側及び排気側の各カム軸の進角量を調整するものであり、吸気側バルブ駆動機構18によれば、吸気バルブの開閉タイミングが進角側又は遅角側に変更され、排気側バルブ駆動機構19によれば、排気バルブの開閉タイミングが進角側又は遅角側に変更される。
【0029】
また、排気管12には、排気中の酸素濃度を検出する酸素濃度センサ(以下、A/Fセンサという)21が設けられるとともに、その下流側に排気浄化装置としての触媒22が設けられている。触媒22は例えば三元触媒であり、排気が通過する際に排気中の有害成分等を浄化する。また、排気管12において触媒22よりも下流側には、排気に含まれる熱エネルギ(排気熱)を回収する熱回収装置23が設けられている。熱回収装置23は、排気が有する熱をエンジン冷却水に伝えることで回収し、例えば車室内の暖房を実施する場合の熱源として利用されるものとなっている。
【0030】
また、本システムには、排気の一部をEGRガスとして吸気系に導入するEGR装置(排気再循環装置)が設けられている。すなわち、吸気管11と排気管12との間には一端が吸気管11のスロットルバルブ下流側に接続され、他端が排気管12の触媒下流側(上流側でも可)に接続されたEGR配管25が設けられ、そのEGR配管25の途中に電磁式のEGR弁26が設けられている。この場合、EGR弁26の開度を調整することで、EGRガス量が増減調整されるようになっている。
【0031】
次に、エンジン10の冷却系の構成について説明する。
【0032】
エンジン10のシリンダブロックやシリンダヘッドの内部にはウォータジャケット31が形成されており、このウォータジャケット31に冷却水が循環供給されることでエンジン10の冷却が行われるようになっている。ウォータジャケット31内の冷却水の温度(冷却水温)は水温センサ32により検出される。ウォータジャケット31には冷却水配管等からなる循環経路33が接続されており、その循環経路33には、冷却水を循環させるためのウォータポンプ34が設けられている。ウォータポンプ34は例えばエンジン10の回転に伴い駆動される機械式ポンプであるが、電動式ポンプであってもよい。また、ウォータポンプ34により冷却水量が調整できる構成であってもよい。
【0033】
循環経路33は、エンジン10(ウォータジャケット31)の出口側において熱回収装置23に向けて延び、熱回収装置23を経由して再びエンジン10に戻るようにして設けられている。循環経路33において熱回収装置23の下流側にはヒータコア35が設けられている。ヒータコア35には、図示しないブロアファンから空調風が送り込まれるようになっており、空調風がヒータコア35又はその付近を通過することで、ヒータコア35からの受熱により空調風が加熱され、温風が車室内に供給される。
【0034】
循環経路33はヒータコア35の下流側で二方に分岐され、その一方の循環経路33Aに大気放熱部としてのラジエータ36が設けられている。また、循環経路33の分岐部には、冷却水温度に応じて作動することで冷却水の流路を変更するサーモスタット37が設けられている。したがって、冷却水が低温(サーモスタット作動温度未満)である場合には、ラジエータ36側への冷却水の流入がサーモスタット37により阻止され、冷却水はラジエータ36で放熱されることなく循環経路33内を循環する。例えば、エンジン10の暖機完了前(暖機運転時)にはラジエータ36での冷却水の冷却(放熱)が抑制される。また、冷却水が高温(サーモスタット作動温度以上)になると、ラジエータ36側への冷却水の流入がサーモスタット37により許容され、冷却水はラジエータ36で放熱されつつ循環経路33内を循環する。これにより、エンジン運転状態下において冷却水が適温(例えば80℃程度)で維持される。
【0035】
本制御システムは、エンジン制御の中枢をなすECU(電子制御装置)40を備えており、そのECU40によりエンジン10の運転に関する各種制御が実施される。すなわち、ECU40は、周知の通りCPU、ROM、RAM等よりなるマイクロコンピュータを主体として構成され、ROMに記憶された各種の制御プログラムを実行することで、エンジン運転状態に応じてエンジン10の各種制御を実施する。本システムでは、エンジン運転状態を検出するための運転状態検出手段として、エンジン回転速度を検出する回転速度センサ41、吸入空気量や吸気管負圧といったエンジン負荷を検出する負荷センサ42等を備えており、これら各センサ41,42や上述したA/Fセンサ21、水温センサ32等の各検出信号がECU40に適宜入力される。
【0036】
そして、ECU40は、上述した各種センサから各々検出信号を入力し、それらの各種検出信号に基づいてインジェクタ15による燃料噴射制御、イグナイタ17による点火時期制御、バルブ駆動機構18,19によるバルブタイミング制御、スロットルバルブ13(スロットルアクチュエータ14)による空気量制御を実施する。かかる場合、上記の各種制御は、基本的にエンジン10の最高効率(最適燃費)が得られるようにして適合データ等に基づいて実施される。なお、エンジン10の効率特性は、エンジン回転速度やエンジン負荷等をパラメータとして定められている。
【0037】
また、本制御システムでは、エンジン10において燃料の燃焼により生じる燃料燃焼エネルギのうち、熱損失分となる熱エネルギ(運動エネルギ以外のエネルギ)を回収し再利用することで、システム全体としての燃費改善を図るようにしており、都度の熱利用要求とエンジン運転状態とに基づいてエンジン10の廃熱制御を実施する。
【0038】
特に本実施形態では、エンジン10の熱エネルギ(熱損失)である廃熱量(発生熱量)を増加させるための廃熱量調整手段を複数備えるとともに、暖房要求や触媒暖機要求など熱利用要求が生じた場合に、複数の廃熱量調整手段のうちいずれの廃熱量調整手段により廃熱量を増加させるかを切り替える構成としている。
【0039】
本廃熱制御においては、
・点火時期を遅角させると廃熱量が増加すること、
・吸気バルブの開弁時期を進角側に変更すると(すなわち吸気早開きにすると)廃熱量が増加すること、
・排気バルブの開弁時期を遅角側に変更すると(すなわち排気遅開きにすると)廃熱量が増加すること、
・点火時期の遅角に、吸気バルブや排気バルブの開閉時期制御(吸気早開きや排気遅開き)を組み合わせると、さらに大きな廃熱量が得られること、
を利用して廃熱量の増加を図る構成としている。この場合、廃熱量を大きくするには点火遅角が第1に有効な手段である。また、吸気バルブの早開きや排気バルブの遅開きを実施すると、吸排気の各バルブが共に開放状態となるバルブオーバーラップ期間が大きくなり、それに伴い内部EGR量が増えて廃熱量が大きくなる。ただし、エンジン運転状態等の条件によっては内部EGRの実施に起因してドライバビリティ悪化等の不都合が生じる。ゆえに、内部EGR増加にはエンジン運転状態等の制限がある。
【0040】
図2は、吸気バルブInと排気バルブExとの開閉時期を示すタイムチャートである。図2の(a)は両バルブの基本開閉時期を示している。これに対し、(b)は吸気バルブInの開閉時期を進角させて吸気早開きとした場合を示し、(c)は排気バルブExの開閉時期を遅角させて排気遅開きとした場合を示している。なお、(d)は、吸気早開きと排気遅開きとを同時に行い、バルブーバーラップ期間を最大とした状態を示している。
【0041】
本実施形態では、廃熱量調整手段として、第1調整手段、第2調整手段及び第3調整手段を想定している。具体的には、
(1)第1調整手段は、点火遅角と排気バルブの遅開きとを実施するものであり、
(2)第2調整手段は、点火遅角と吸気バルブの早開きとを実施するものであり、
(3)第1調整手段は、点火遅角を実施するものである。
【0042】
この場合、第1〜第3の各調整手段はそれぞれ、廃熱量調整可能なエンジン運転領域、或いは廃熱量調整を実施する上で有利なエンジン運転領域が相違する。そのため、本実施形態では、要求熱量やエンジン運転状態等に基づいて各調整手段を選択的に用いて廃熱制御を実施する。
【0043】
ここで、第1〜第3の各調整手段は、各調整手段により廃熱制御を実施した場合に増加する廃熱量が各々相違するものとして設定されており、熱利用要求に伴う要求熱量に基づいて複数の廃熱量調整手段のうち少なくとも1つを選択して廃熱量を増加させるようにしている。この場合、各調整手段によりどれほどの廃熱量の増加が見込めるか、またその廃熱量の増加によりどれほどの運転効率(燃費)の低下が生じるかはあらかじめ定められ、マップデータ等としてECU40のメモリに記憶されている。
【0044】
図3は、上記3つの廃熱量調整手段(第1〜第3の調整手段)についてエンジン軸効率(燃費に相当)と発生熱効率との関係を示した図である。なお、発生熱効率は、総燃料〔kW〕に対する発生熱量〔kW〕の比率である。
【0045】
図3には、第1調整手段(点火遅角+排気遅開き)による発生熱効率の特性(1)と、第2調整手段(点火遅角+吸気早開き)による発生熱効率の特性(2)と、第3調整手段(点火遅角)による発生熱効率の特性(3)とを示している。この場合、これら3つを比較すると概ね、第3調整手段(点火遅角)→第2調整手段(点火遅角+吸気早開き)→第1調整手段(点火遅角+排気遅開き)の順に発生熱効率が良くなることが確認できる。また、図3のGAは、第1調整手段と第2調整手段との実施限界を示しており、エンジン軸効率がGA以下の領域では、内部EGRの実施によりドライバビリティ悪化等の不都合が顕著になることから、これら第1調整手段と第2調整手段との実施が制限(禁止)されるようになっている。
【0046】
次に、エンジン10の冷間始動時における廃熱制御の概要を図4により説明する。図4は、エンジン冷間始動後における冷却水温の推移とその水温推移に応じて実施される廃熱制御の概要とを示すタイムチャートである。
【0047】
さて、図4では、エンジン始動に伴い冷却水温Twが常温付近から徐々に上昇し、エンジン10としての適正温度域に達する。本実施形態では、TH0〜TH1の温度域を冷却水温の適正温度域としており、この温度域ではエンジン10の適正な暖機状態が維持される。TH0はサーモスタット37の作動温度(開弁温度)であり、Tw≧TH0の状態になると、サーモスタット37が作動(開弁)する。これにより、ラジエータ36側への冷却水の循環が開始され、同ラジエータ36での放熱が行われる。なお、例えばTH0=90℃、TH1=80℃である。
【0048】
その後、タイミングt1で熱利用要求として暖房要求が発生すると、それに伴いヒータコア35での熱利用(温風の生成)が行われて冷却水温が低下する。そして、冷却水温Twが適正温度域の下限値でもあるTH1よりも低下すると、エンジン10の廃熱制御が実施される。すなわち、冷却水温Twが図示のように低下した状態では、その時の暖房要求に十分に応えることができないため、廃熱制御により冷却水温Twの上昇を図る。
【0049】
ここで、適正温度域よりも低温側には複数の温度判定値(TH2,TH3等)が設定されており、冷却水温Twがこれら温度判定値により規定される温度域のいずれにあるかに応じて廃熱制御の内容が切り替えられる。冷却水温Twと適正温度域との温度差は要求熱量に対応するものとなっている。
【0050】
図4の事例では、冷却水温Twが低下し、タイミングt2でTH1〜TH2の温度域に入ると、第1調整手段(点火遅角+排気遅開き)による廃熱制御が実施される。つまり、タイミングt2の時点では、冷却水温Twと適正温度域との温度差が比較的小さく、要求熱量がさほど大きくないことから、上記3つの調整手段のうち最も発生熱効率が高い第1調整手段が選択されて実行される。
【0051】
その後、さらに冷却水温Twが低下し、タイミングt3でTH2〜TH3の温度域に入ると、第1調整手段(点火遅角+排気遅開き)による廃熱制御に代えて第3調整手段(点火遅角)による廃熱制御が実施される。つまり、タイミングt3では、冷却水温Twと適正温度域との温度差が比較的大きくなり、要求熱量もそれに合わせて大きくなっていることから、上記3つの調整手段のうち最も大きな廃熱量の増加が見込める第3調整手段が選択されて実行される。言い加えると、タイミングt3では要求熱量が増加することから、その要求に応えるにはエンジン軸効率(燃費)の悪化が生じる。このとき、第1調整手段による廃熱制御を継続した場合に生じるドライバビリティ悪化等を回避する狙いもあって、第1調整手段から第3調整手段への切替が行われる。
【0052】
なお、冷却水温TwがTH1〜TH2の温度域に入った場合に、第1調整手段(点火遅角+排気遅開き)ではなく第2調整手段(点火遅角+吸気早開き)を実施するようにしてもよく、また、第1調整手段(点火遅角+排気遅開き)から第3調整手段(点火遅角)に移行する間に第2調整手段(点火遅角+吸気早開き)を実施することも可能である。
【0053】
その後、冷却水温Twが上昇に転じ、タイミングt4で冷却水温TwがTH2に達すると、第3調整手段(点火遅角)による廃熱制御から第1調整手段(点火遅角+排気遅開き)による廃熱制御に切り替えられる。さらに、タイミングt5で冷却水温TwがTH1に達すると、第1調整手段(点火遅角+排気遅開き)による廃熱制御が終了される。
【0054】
熱利用要求として、暖房要求以外に触媒暖機要求が発生した場合については図示による説明を省略するが、概要としては、例えば、触媒22の温度低下に伴い触媒暖機要求が生じた場合において、同触媒22の目標温度(触媒活性温度)と実触媒温度(センサによる測定値又は推定による算出値)との偏差に基づいて、その温度偏差が比較的小さければ(要求熱量が比較的小さければ)、第1調整手段(点火遅角+排気遅開き)による廃熱制御が実施される。また、触媒活性温度と実触媒温度との偏差が比較的大きければ(要求熱量が比較的大きければ)、第3調整手段(点火遅角)による廃熱制御が実施される。なお、触媒暖機要求は、触媒温度の低下をトリガとして生じる以外に、アイドルストップ制御のエンジン再始動時であること等に基づいて発生するものであってもよい。
【0055】
また、廃熱量調整手段として、排気バルブの開弁時期を進角側に変更して(すなわち排気早開きを実施して)廃熱量を増加させる手段を採用することも可能であり、この廃熱量調整手段を用いる場合には、触媒22の温度偏差(目標温度と実触媒温度との差)に基づいて、その温度偏差が比較的小さければ(要求熱量が比較的小さければ)、点火遅角による廃熱制御を実施し、同温度偏差が比較的大きければ(要求熱量が比較的大きければ)、点火遅角+排気早開きによる廃熱制御を実施する構成としてもよい。
【0056】
図5は、本実施形態における廃熱制御の処理手順を示すフローチャートであり、本処理はECU40により所定周期で繰り返し実行される。
【0057】
図5において、まずステップS11では、熱利用要求が生じているか否かを判定する。熱利用要求には、例えば、暖房要求や触媒暖機要求などが含まれる。暖房要求は、車室内の暖房が行われる場合に発生するものであり、車両搭乗者の操作又は自動空調制御の制御指令に基づき発生する。また、触媒暖機要求は、排気管12の触媒22が低温状態にある場合に発生するものであり、エンジン10の冷間始動時や車両運転途中の一時的な温度低下時に発生する。例えば、エンジン10のアイドルストップ制御(自動停止再始動制御)を実施するシステムでは、アイドルストップ中に触媒温度が低下することが考えられ、かかる場合、エンジン再始動後に触媒暖機要求が発生する。そして、ステップS11がNOであればそのまま本処理を終了し、ステップS11がYESであれば後続のステップS12に進む。
【0058】
ステップS12では、燃費最良点にて実施される通常のエンジン制御でその時の要求熱量を満足できるか否か、すなわち上述した第1〜第3の各調整手段により廃熱量を増加する必要がないか否かを判定する。例えば暖房要求が入っている場合においては、水温センサ32により検出した冷却水温Twが適正温度域(TH1〜TH0)よりも低温域にあるか否かを判定する。そして、ステップS12がYESであれば、要求熱量を満足できており廃熱量の増加が不要であるとしてそのまま本処理を終了し、ステップS12がNOであれば、要求熱量を満足できておらず廃熱量の増加を要するとして後続のステップS13に進む。
【0059】
ステップS13〜S17では、要求熱量を満足するために要する廃熱量の増加分(増加廃熱量)がどの程度かを判定するとともに、その増加廃熱量に基づいて廃熱制御を実施する。暖房要求が入っている場合を想定すると、適正温度域よりも低温側に設定された複数の温度判定値とその時々の冷却水温Twとを比較し、冷却水温Twがどの温度域にあるかを判定するとともに、該当する温度域に応じた内容で廃熱制御を実施する。
【0060】
詳しくは、
・ステップS13では、増加廃熱量が第1要求量K1以下であるか否かを判定し、
・ステップS14では、増加廃熱量が第2要求量K2以下であるか否かを判定する。なお、K2>K1である。増加廃熱量の要求判定値(K1,K2)は3つ以上設定しておくことも可能である。
【0061】
そして、増加廃熱量が第1要求量K1以下であればステップS15に進み、増加廃熱量が第1要求量K1より大きくかつ第2要求量K2以下であればステップS16に進み、増加廃熱量が第2要求量K2より大きければステップS17に進む。ステップS15〜S17では、増加廃熱量が各々相違する廃熱制御を選択的に実施する。すなわち、ステップS15では、増加廃熱量が比較的小さい廃熱制御として第1制御を実施し、ステップS16では、増加廃熱量が第1制御よりも大きい第2制御を実施し、ステップS17では、増加廃熱量が第2制御よりも大きい第3制御を実施する。
【0062】
ステップS13〜S17について暖房要求の場合でいえば、
・ステップS13では、冷却水温Twが第1温度域(図4のTH1〜TH2の温度域)にあるか否かを判定し、
・ステップS14では、冷却水温Twが第2温度域(図4のTH2〜TH3の温度域)にあるか否かを判定する。
【0063】
そして、冷却水温Twが第1温度域にある場合、第1制御として第1調整手段(点火遅角+排気遅開き)による廃熱制御を実施する(ステップS15)。また、冷却水温Twが第2温度域にある場合、第2制御として第3調整手段(点火遅角)による廃熱制御を実施する(ステップS16)。なおこの場合には、第3制御の実施は任意である。
【0064】
最後に、ステップS18では、エンジン出力増補処理を実施する。このエンジン出力増補処理は、上記のとおり廃熱制御が実施された場合においてその廃熱制御により低下したエンジン出力を増補するための処理であり、燃料噴射量の増量補正や空気量(スロットル開度)の増量補正が適宜実施される。
【0065】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0066】
暖房要求や触媒暖機要求などの熱利用要求が発生した場合に、複数の廃熱量調整手段(例えば第1〜第3の調整手段)のうちいずれの廃熱量調整手段により廃熱量を増加させるかを切り替える構成としたため、必要に応じた最適なる廃熱制御を実現できる。その結果、熱利用要求に応じた廃熱制御を実施でき、しかも廃熱制御の実施に伴い生じるエンジン運転効率の低下等の不都合を最小限に抑えることが可能となる。
【0067】
複数の廃熱量調整手段を、各々廃熱量の増加分が相違するものとして設定しておき、熱利用要求に伴う要求熱量に基づいて複数の廃熱量調整手段のうち少なくとも1つを選択して廃熱量を増加させる構成とした。これにより、熱利用要求に伴う要求熱量が都度相違しても、その時々の要求熱量に見合う廃熱量調整手段を選択できる。これにより、都度の熱利用要求に十分に応えることができる。この場合、各廃熱量調整手段の廃熱量の増加分をあらかじめ定めておくことで廃熱制御を簡易に実施できるという効果が得られる。
【0068】
廃熱制御が実施される場合において該廃熱制御の実施に伴うエンジンの出力低下分を増補する構成としたため、廃熱制御の実施時においてもエンジン出力が維持される。つまり、車両においては走行エネルギが維持され、ドライバビリティの悪化を抑制できる。
【0069】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について、上述した第1の実施形態との相違点を中心に説明する。本実施形態では、熱利用要求に伴い廃熱量を増加させる場合に、複数の廃熱量調整手段ごとの燃料噴射量の増加分に対する廃熱量の増加分(熱量増加量)の比率を表す廃熱効率ηを算出するとともに、その廃熱効率ηを制御パラメータとして、複数の廃熱量調整手段のうちいずれの廃熱量調整手段により廃熱量を増加させるかを切り替えるものである。
【0070】
ここで、廃熱効率ηは、
η=熱量増加量ΔQ〔kW〕/燃料増加量Δqf〔kW〕
で求められ、例えば百分率(%)で算出される。上式分子の熱量増加量ΔQ〔kW〕は、点火遅角やバルブタイミング制御等の廃熱量調整手段により創出可能な創出可能熱量であり、廃熱効率ηは、燃料増加量に対する創出可能熱量を表すものであるから熱創出効率とも言える。
【0071】
本実施形態では、複数の廃熱量調整手段について廃熱効率η1〜ηnを各々算出するとともに、該算出した各廃熱効率η1〜ηnを良好なもの順で並び替える(ソートする)。そして、熱利用要求に応じて要求される要求熱量に基づいて、上述した廃熱効率η1〜ηnの並び替え結果(ソート結果)に従い複数の廃熱量調整手段から少なくとも1つを選択する。この場合、廃熱効率ηが良い廃熱量調整手段を優先的に用いて廃熱制御が実施されることとなる。複数の廃熱量調整手段ごとの廃熱効率η1〜ηnは、都度のエンジン運転状態に基づいてそれぞれ算出される。また、複数の廃熱量調整手段ごとの熱量増加量ΔQ1〜ΔQnも同様に、都度のエンジン運転状態に基づいてそれぞれ算出される。
【0072】
また本実施形態では、廃熱制御が実施されることに伴うエンジン出力低下分を増補するためのエンジン出力増補処理として、廃熱制御に利用される廃熱量調整手段に関して燃料噴射量の増加総量を算出し、その燃料噴射量の増加総量に基づいてエンジンの出力制御を実施する。
【0073】
図6は、エンジン出力〔kW〕と熱量〔kW〕との関係を示す図であり、同図にはエンジン出力が大きいほど熱量が大きくなる関係が示されている。図6において、実線は燃費最良点でのエンジン特性を示している。
【0074】
例えばエンジン出力がAである時に要求熱量Qreが生じた場合を想定する。この場合、燃費最良点からすればΔQ分の熱量が不足する。このΔQの熱量不足分を補うべく、廃熱制御を実施する。ここで、要求熱量Qreを満足するには、燃費最良点よりも燃料増加側(燃費悪化側)に制御点を移行させる必要があり、その制御点の移行に際して、廃熱効率η1〜ηnに基づいて廃熱量調整手段の選択(切替)を実施する。また、熱量を増加させる場合には、エンジン出力の低下が招来されるため、そのエンジン出力低下分の増補が行われる。
【0075】
図7は、本実施形態における廃熱制御に関する機能ブロック図である。
【0076】
廃熱効率算出部M1では、廃熱量調整手段ごとに設定される複数の効率算出マップを用い、廃熱量調整手段ごとに都度のエンジン運転状態に基づいて廃熱効率η1〜ηnを算出する。エンジン運転状態を表すパラメータとしては、例えばエンジン回転速度NEやエンジン負荷(吸気管圧力や吸入空気量等)が含まれる。廃熱量調整手段ごとに異なる定数を設定しておいて個々に数式演算により廃熱効率η1〜ηnを算出することも可能である。
【0077】
また、熱量増加量算出部M2では、廃熱量調整手段ごとに設定される複数の熱量算出マップを用い、廃熱量調整手段ごとに都度のエンジン運転状態に基づいて熱量増加量ΔQ1〜ΔQnを算出する。廃熱量調整手段ごとに異なる定数を設定しておいて個々に数式演算により熱量増加量ΔQ1〜ΔQnを算出することも可能である。
【0078】
また、選択部M3では、廃熱効率算出部M1で算出した廃熱量調整手段ごとの廃熱効率η1〜ηnを効率の良いもの順に並び替えるとともに、その並び替え結果に基づいて効率のよいものを優先して今回の廃熱制御に用いる廃熱量調整手段を選択する。この場合、都度の要求熱量を満足する必要もあることから、熱量増加量算出部M2で算出した廃熱量調整手段ごとの熱量増加量ΔQ1〜ΔQnも加味される。すなわち、当該選択部M3では、複数の廃熱量調整手段から、廃熱効率η1〜ηnの効率の良いもの順であり、かつ要求熱量を満足できる熱量を発生できる廃熱量調整手段が選択される。そして、こうして選択部M3により選択された廃熱量調整手段(1つ又は複数の廃熱量調整手段)により廃熱制御が実施される。
【0079】
また、エンジン軸効率算出部M4では、選択部M3で選択した各廃熱量調整手段について廃熱量調整手段ごとのエンジン軸効率ηtを算出する。この場合、廃熱量調整手段ごとに設定される複数の効率算出マップ又は数式を用い、都度のエンジン運転状態(NEやエンジン負荷)に基づいてエンジン軸効率ηtを算出する。特に本実施形態では、廃熱量増加前のエンジン軸効率ηtAと廃熱量増加後のエンジン軸効率ηtBとを算出する。
【0080】
燃料補正量算出部M5では、エンジン軸効率算出部M4で算出したエンジン軸効率ηtに基づいて、選択部M3で選択した各廃熱量調整手段について燃料増加量Δqfを算出するとともに、その燃料増加量Δqfの総和(燃料噴射量の増加総量ΣΔqf)を燃料補正量Kfとして算出する。燃料増加量Δqfは、廃熱量増加前後のエンジン軸効率ηtA,ηtBと廃熱量増加後の燃料噴射量qfinとに基づいて以下のようにして算出される。
【0081】
Δqf=(1−ηtB/ηtA)×qfin
このとき、例えば廃熱量増加後にエンジン軸効率(燃費)が悪化する場合には、ηtB値が小さくなることに伴いΔqf値が大きくなる。これにより、燃費悪化分に対応する燃料増加量Δqfが算出される。
【0082】
燃料補正量Kf(増加総量ΣΔqf)は、廃熱制御が実施されることに伴うエンジン出力低下分を増補するための燃料補正量であり、この燃料補正量Kfを用いて出力増補処理としてのトルク補正処理が実施される。
【0083】
トルク補正部M6では、燃料補正量算出部M5で算出した燃料補正量Kfに基づいてスロットル開度補正を指令するとともに、同燃料補正量Kfに基づいて燃料噴射量補正を指令する。このとき、スロットル開度補正に関しては、目標空燃比と燃料補正量Kfとに基づいて空気量補正量が算出されるとともに、その空気量補正量に基づいてスロットル開度指令値が算出される。また、燃料噴射量に対しては燃料補正量Kfによる噴射量補正が行われる。
【0084】
図8は、本実施形態における廃熱制御の処理手順を示すフローチャートであり、本処理はECU40により所定周期で繰り返し実行される。
【0085】
図8において、まずステップS21では、熱利用要求が生じているか否かを判定し、続くステップS22では、燃費最良点にて実施される通常のエンジン制御でその時の要求熱量を満足できるか否かを判定する(図5のステップS11,S12と同様)。そして、熱利用要求が生じており、かつ要求熱量を満足できない場合に、後続のステップS23に進む。
【0086】
ステップS23では、複数の廃熱量調整手段についてそれら調整手段ごとの効率算出マップを用いて、廃熱効率η1〜ηnを算出する。続くステップS24では、複数の廃熱量調整手段についてそれら調整手段ごとの熱量算出マップを用いて、熱量増加量ΔQ1〜ΔQnを算出する。
【0087】
その後、ステップS25では、ステップS23で算出した廃熱効率η1〜ηnを効率の良いもの順に並び替えるとともに、効率のよいものを優先して今回の廃熱制御に用いる廃熱量調整手段を選択する。この場合、廃熱効率η1〜ηnの良いもの順であり、かつ現状の要求熱量を満足する熱量を発生できる廃熱量調整手段が選択される。
【0088】
ステップS26では、エンジン出力増補処理を実施する。具体的には、廃熱制御に利用される廃熱量調整手段に関して燃料噴射量の増加総量ΣΔqfを算出するとともに、その増加総量ΣΔqfを燃料補正量Kfとする。そして、その燃料補正量Kfに基づいて空気量の増量補正や燃料噴射量の増量補正を実施する。
【0089】
以上詳述した第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、都度の熱利用要求に応じた廃熱制御を実施でき、しかも廃熱制御の実施に伴い生じるエンジン運転効率の低下等の不都合を最小限に抑えることが可能となる。
【0090】
また、複数の廃熱量調整手段ごとに廃熱効率η1〜ηn(燃料噴射量の増加分に対する廃熱量の増加比率)を算出し、その廃熱効率η1〜ηnを制御パラメータとして廃熱制御を実施する構成とした。特に、廃熱効率η1〜ηnが良い廃熱量調整手段を優先的に用いて廃熱量を増加させる構成とした。これにより、燃料噴射量増加に伴う燃費変化を監視しつつ、燃費悪化が最小限となるようにして廃熱制御を実施できる。つまり、必要以上に燃料消費量を増加(燃費を悪化)させることなく、適正な廃熱量調整手段の選択が可能となる。
【0091】
各廃熱量調整手段の廃熱効率η1〜ηnをそれぞれエンジン運転状態に基づいて算出する構成としたため、各廃熱量調整手段の廃熱効率η1〜ηnがエンジン運転状態に応じて変動することを考慮して廃熱制御を実施することができ、一層適正な廃熱制御を実現できる。
【0092】
(他の実施形態)
本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施されてもよい。
【0093】
・複数の廃熱量調整手段について、エンジン10の廃熱量の増量可能範囲(ダイナミックレンジ)を各々定めておき、その増量可能範囲が大きい廃熱量調整手段を優先的に用いて廃熱量を増加させる構成としてもよい。例えば、第1の実施形態で説明した第1調整手段(点火遅角+排気遅開き)、第2調整手段(点火遅角+吸気早開き)、第3調整手段(点火遅角)について、第1調整手段→第2調整手段→第3調整手段の順に増量可能範囲が広くなる場合には、このうち第3調整手段を優先的に用いて廃熱制御を実施する。なお、廃熱量調整手段ごとに、エンジン運転状態に基づいて廃熱量の増量可能範囲が算出されるとよい。
【0094】
本構成によれば、時間の経過に伴い廃熱制御の開始当初(廃熱量増加当初)から要求熱量が多少変動したとしても廃熱量調整手段の変更が不要であり、廃熱量調整手段の変更を極力減らすことができる。これにより、廃熱量調整手段の切替に伴い生じるエンジン運転状態の変動(ドライバビリティの悪化を含む)を抑制できる。
【0095】
・複数の廃熱量調整手段について、熱利用要求に伴う要求熱量が大きいほど、複数の廃熱量調整手段のうち、廃熱制御に利用する廃熱量調整手段の数を多くする構成としてもよい。
【0096】
本構成によれば、要求熱量が比較的小さい場合(例えば、暖房要求時において適正温度域に対する温度偏差が小さい場合)には、利用される廃熱量調整手段の数が少ないため、複数の廃熱量調整手段を同時に用いることに起因する相互の影響(制御上の干渉)を抑制できる。また、要求熱量が比較的大きい場合(例えば、暖房要求時において適正温度域に対する温度偏差が大きい場合)には、利用される廃熱量調整手段の数が多いため、所望とする熱量の大幅増加を実現できる。
【0097】
・複数の廃熱量調整手段として、エンジン10の運転効率が各々異なる複数の廃熱量調整手段を設定してもよい。この場合、制御対象はいずれも同一であっても個々に運転効率を異ならせることで、複数の廃熱量調整手段を設定する。具体的には、制御対象をいずれも点火時期とする場合において、エンジン運転効率が各々異なる点火時期マップを複数用意しておき、都度の熱利用要求の内容や要求熱量に応じて点火時期マップを切り替えて使用する。この場合、エンジン運転効率が悪い点火時期マップほど点火遅角量が大きく、廃熱量が大きいものとなっている。本構成によっても、都度の熱利用要求に応じた廃熱制御を実施でき、しかも廃熱制御の実施に伴い生じるエンジン運転効率の低下等の不都合を最小限に抑えることが可能となる。
【0098】
・複数の廃熱量調整手段として、廃熱量変化の応答性が各々異なる廃熱量調整手段を設定してもよい。
【0099】
・複数の廃熱量調整手段として、主に冷却損失を増やすことで廃熱量を増加させる冷却損失増加手段と、主に排気損失を増やすことで廃熱量を増加させる排気損失増加手段とを設定しておき、熱利用要求の内容及び同熱利用要求に伴う要求熱量の少なくともいずれかに基づいて、冷却損失増加手段及び排気損失増加手段のいずれにより廃熱量を増加させるかを切り替える構成としてもよい。なお、冷却損失増加手段としては、EGR装置のEGRガス量を調整する、トルクを維持した状態で点火遅角を実施する等により燃料燃焼時における筒内温度(燃焼温度)を高める手段や、排気バルブの開弁時期を遅くすることで高温の燃焼ガスが筒内に滞在する滞在時間を長くする手段などが考えられる。また、排気損失増加手段としては、大幅点火遅角や排気早開きを行い、排気管内で燃焼を行わせる手段などが考えられる。その他、排気損失増加手段として、EGR量(内部EGR量、又はEGR装置による外部EGR量)を増やして燃焼を緩慢にする(燃焼速度を遅くする)手段を適用することも可能である。
【0100】
例えば、暖房要求に対しては、冷却損失による熱エネルギを利用するとよく、触媒暖機要求に対しては、排気損失による熱エネルギを利用するとよいと考えられる。したがって、暖房要求が入っている場合には冷却損失増加手段による廃熱量増加を図り、触媒暖機要求が入っている場合には排気損失増加手段による廃熱量増加を図る構成とする。上記構成によれば、冷却損失増加手段と排気損失増加手段との選択が行われることにより、都度の熱利用要求に即した廃熱制御を実現できる。
【0101】
・上記第2の実施形態において、複数の廃熱量調整手段の廃熱効率η1〜ηnだけでなく、同廃熱量調整手段における廃熱量の増量可能範囲(ダイナミックレンジ)を制御パラメータとし、これら廃熱効率η1〜ηnと廃熱量の増量可能範囲とに基づいて、いずれの廃熱量調整手段により廃熱量を増加させるかを切り替える構成としてもよい。これにより、燃費悪化が最小限となるようにして廃熱制御を実施できることに加え、要求熱量が比較的大きい場合に所望とする大熱量の実現が可能となる。
【0102】
・第2の実施形態における廃熱制御の処理手順を図9のように変更する。図9のフローチャートは、上述した図8の一部を変更したものであり、図8と同一の処理については同じステップ番号を付すとともに説明を簡略する。ステップS31,S32が追加処理である。
【0103】
図9において、熱利用要求が生じており、かつ要求熱量を満足できない場合(ステップS21がYES、S22がNOである場合)、ステップS31に進み、既にいずれかの廃熱量調整手段による廃熱量の増加が実施された後であるか否かを判定する。このとき、廃熱量増加から所定時間が経過していることを併せて判定するとよい。そして、廃熱量の増加前(又は、増加から所定時間の経過前)であれば、ステップS23に進み、前述のとおり廃熱効率η1〜ηnの算出、熱量増加量ΔQ1〜ΔQnの算出、廃熱効率η1〜ηnに基づく廃熱量調整手段の選択を実施する(ステップS23〜S25)。
【0104】
一方、廃熱量の増加後(又は、増加から所定時間の経過後)であれば、ステップS32に進み、廃熱制御の内容を変更する。つまり、廃熱量の増加後(又は、増加から所定時間の経過後)にあっても要求熱量を満足できない場合には、廃熱量をもっと増加させるべく廃熱制御の内容を変更する。この場合、現在利用している廃熱量調整手段で更なる熱量増加が可能であれば、同一手段での熱量増加を図り、同一手段では更なる熱量増加が不可能であれば、他の廃熱量調整手段の追加又は他の廃熱量調整手段への変更を実施する。
【0105】
図9のフローチャートを採用することにより、廃熱量増加の実施中において要求熱量が満たされているかどうかを監視しつつ、適正なる廃熱制御を実施できる。
【0106】
・第2の実施形態において、廃熱量を増加させる際に、燃料噴射量を減量する場合も想定される。このとき、廃熱効率ηが、
η=熱量増加量ΔQ〔kW〕/燃料減少量Δqf〔kW〕
として算出される。かかる場合にも、廃熱制御の実施に伴う燃費悪化が最小限となるようにして、廃熱効率ηに基づいて廃熱制御が実施されるとよい。
【0107】
・上記各実施形態では、エンジンの点火遅角、吸気バルブの早開き、排気バルブの遅開きにより廃熱量を増加させる構成を採用したが、廃熱量調整手段としてその他の構成を採用することも可能である。例えば、ノックに余裕がある領域で点火時期を過進角させることで廃熱量を増加させたり、EGR装置によるEGRガス量(外部EGR量)を増減させることで廃熱量を増加させたり、電動ウォータポンプによる流量制御を行うことで利用可能な廃熱量を増加させたり、エンジン吸気流を制御することで廃熱量を増加させたりすることも可能である。吸気流制御に関して具体的には、吸気管に設けられるTCV(タンブル制御弁)又はSCV(スワール制御弁)の開度を制御し、それによりエンジン10の廃熱量を調整するとよい。
【0108】
・エンジン制御以外に、変速機のシフト制御を実施することにより廃熱量を増加させる構成を採用することも可能である。
【0109】
・ディーゼルエンジンを備えるエンジンシステムにも適用可能である。ディーゼルエンジンの場合、複数の廃熱量調整手段として、例えば、
・排気バルブの開閉時期制御(早開き、遅開き)により廃熱量を増加させる廃熱量調整手段、
・吸気バルブの開閉時期制御(早開き、遅開き)により廃熱量を増加させる廃熱量調整手段、
・外部EGRの導入により廃熱量を増加させる廃熱量調整手段、
・ターボチャージャの過給圧制御により廃熱量を増加させる廃熱量調整手段、
・インタークーラの冷却水の流量制御により廃熱量を増加させる廃熱量調整手段、
等のうちいずれかを備える構成を採用する。
【0110】
・熱利用要求としては、暖房要求や触媒暖機要求以外に、車載バッテリの昇温要求など、車載部品の昇温要求が含まれる。例えば、車両の走行用モータの電源装置として高電圧バッテリが搭載されている場合において、高電圧バッテリによる電力供給の安定化を図るには当該バッテリを所定温度に保持することが考えられる。かかる場合、夜間や冬季の車両走行時において外気温が低温になると熱利用要求としてバッテリ昇温要求が生じ、そのバッテリ昇温要求に応えるべく、複数の廃熱量調整手段のうちいずれかにより廃熱制御が実施される。
【符号の説明】
【0111】
10…エンジン、13…スロットルバルブ、15…インジェクタ、17…イグナイタ、18,19…バルブ駆動機構、22…触媒、23…熱回収装置、33…循環経路、35…ヒータコア、40…ECU(廃熱量調整手段、廃熱制御手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの廃熱を再利用する廃熱再利用システムに適用され、熱利用要求に基づいてエンジンの廃熱量を制御するエンジンの廃熱制御装置において、
エンジンの廃熱量を増加させる廃熱量調整手段を複数備えるとともに、
前記複数の廃熱量調整手段のうちいずれの廃熱量調整手段により廃熱量を増加させるかを切り替える廃熱制御手段を備えることを特徴とするエンジンの廃熱制御装置。
【請求項2】
前記複数の廃熱量調整手段は、各々廃熱量の増加分が相違するものとして設定されており、
前記廃熱制御手段は、前記熱利用要求に伴う要求熱量に基づいて前記複数の廃熱量調整手段のうち少なくとも1つを選択的に用いて廃熱量を増加させる請求項1に記載のエンジンの廃熱制御装置。
【請求項3】
前記複数の廃熱量調整手段は、前記廃熱量の増量可能範囲が各々定められており、
前記廃熱制御手段は、前記廃熱量の増量可能範囲が大きい廃熱量調整手段を優先的に用いて廃熱量を増加させる請求項1又は2に記載のエンジンの廃熱制御装置。
【請求項4】
前記廃熱制御手段は、前記熱利用要求に伴う要求熱量が大きいほど、前記複数の廃熱量調整手段のうち、廃熱制御に利用する廃熱量調整手段の数を多くする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のエンジンの廃熱制御装置。
【請求項5】
前記複数の廃熱量調整手段は、主に冷却損失を増やすことで廃熱量を増加させる冷却損失増加手段と、主に排気損失を増やすことで廃熱量を増加させる排気損失増加手段とを含み、
前記廃熱制御手段は、前記熱利用要求の内容及び同熱利用要求に伴う要求熱量の少なくともいずれかに基づいて、前記冷却損失増加手段及び前記排気損失増加手段のいずれにより廃熱量を増加させるかを切り替える請求項1乃至4のいずれか一項に記載のエンジンの廃熱制御装置。
【請求項6】
前記廃熱制御手段は、前記複数の廃熱量調整手段ごとの、前記熱利用要求に伴い廃熱量を増加させる場合における燃料噴射量の変化分に対する廃熱量の増加比率を表す廃熱効率に基づいて、前記複数の廃熱量調整手段のうちいずれの廃熱量調整手段により廃熱量を増加させるかを切り替える請求項1に記載のエンジンの廃熱制御装置。
【請求項7】
前記廃熱制御手段は、前記複数の廃熱量調整手段について前記廃熱効率を各々算出し、該算出した廃熱効率が良い廃熱量調整手段を優先的に用いて廃熱量を増加させる請求項6に記載のエンジンの廃熱制御装置。
【請求項8】
前記複数の廃熱量調整手段ごとに、エンジン運転状態に基づいて前記廃熱効率を算出する手段を備える請求項6又は7に記載のエンジンの廃熱制御装置。
【請求項9】
前記複数の廃熱量調整手段は、前記廃熱量の増量可能範囲が各々定められており、
前記廃熱制御手段は、前記複数の廃熱量調整手段の廃熱効率に加えて、同廃熱量調整手段における前記廃熱量の増量可能範囲に基づいて、いずれの廃熱量調整手段により廃熱量を増加させるかを切り替える請求項6乃至8のいずれか一項に記載のエンジンの廃熱制御装置。
【請求項10】
前記廃熱制御手段による廃熱制御が実施される場合において該廃熱制御の実施に伴う前記エンジンの出力低下分を増補する出力増補手段を備える請求項1乃至9のいずれか一項に記載のエンジンの廃熱制御装置。
【請求項11】
前記出力増補手段は、前記複数の廃熱量調整手段のうち、廃熱制御に利用される廃熱量調整手段に関して燃料噴射量の増加総量を算出し、その燃料噴射量の増加総量に基づいてエンジンの出力制御を実施する請求項10に記載のエンジンの廃熱制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−242582(P2010−242582A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−90901(P2009−90901)
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】