説明

エンジンの排気熱回収装置

【課題】酸化触媒の活性化を損ねることなく、熱回収を効率よく行うことが可能な排気熱回収装置を提供する。
【解決手段】排気通路20に排気中のPMを捕集するDPF21を備えるとともに、DPF21の上流側の排気通路20に排気中の成分に対して酸化能を有するDOC22を備えたエンジン1の排気熱回収装置であって、DOC22とDPF21との間の主排気通路51に並列に接続されたバイパス路52と、バイパス路52に備えられ、バイパス路52を通過する排気と熱媒体との間で熱交換させる熱交換器53と、バイパス路52に並列した主排気通路51を開閉する開閉弁54と、少なくとも開閉弁を作動制御するECU40と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの排気熱回収装置に係り、詳しくは、排気通路に備えられた熱交換器による熱回収技術に関する。
【背景技術】
【0002】
希薄燃焼で運転可能なエンジン、例えばディーゼルエンジンの排気を浄化する排気後処理装置として、ディーゼルパティキュレートフィルタ(以下、DPFという)が知られている。DPFは、排気通路に設けられ、排気中の微粒子状物質(パティキュレートマター、以下、PMという)を捕集するものである。また、排気通路に酸化触媒を設け、この酸化触媒に未燃燃料を流入させて酸化反応を起こさせ、これに伴う反応熱により排気温度を上昇させて、排気中のPMやDPFに捕集されたPMを燃焼・除去させる技術が知られている。
【0003】
また、エンジンの排気通路に熱交換器を備え、排気熱を回収して冷却水をあたためることで、暖機運転時間を短縮させる技術が知られている。具体的には、排気通路にバイパス路を設けて、当該排気通路に熱交換器を配置するとともに、排気通路とバイパス路の接続部に流路切換弁を備え、エンジンから排出した排気が熱交換器を通過、または通過しないように切り換える機能を有している(特許文献1)。
【0004】
このように構成することにより、例えば暖機完了後では排気が熱交換器を通過させないようにすることで、冷却水の必要以上の昇温を防止するとともに、熱交換器の下流側に設けた三元触媒に流入する排気温度の低下を抑制して排気浄化性能を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−127435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1では、通常燃焼のガソリンエンジンにおける排気熱を回収可能としているが、ディーゼルエンジンについても、同様に暖機運転時間の短縮化が要求されている。しかしながら、一般的にディーゼルエンジンの排気通路には、三元触媒ではなく、上記のように酸化触媒やDPFが備えられており、熱交換器の適切な配置が検討されていなかった。例えば、熱交換器が排気通路の下流に配置されると熱交換率が低下し、上流側に配置されるとその下流側の触媒の冷態始動時における早期活性を妨げる要因となってしまう。
【0007】
本発明は、この様な問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、排気通路に酸化触媒及びDPFを備えた希薄燃焼エンジンにおいて、酸化触媒の活性化を損ねることなく、熱回収を効率よく行うことが可能な排気熱回収装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1のエンジンの排気熱回収装置は、排気通路に排気中の微粒子状物質を捕集する第1のフィルタを備えるとともに、第1のフィルタの上流側の排気通路に排気中の成分に対して酸化能を有する酸化触媒を備えたエンジンの排気熱回収装置であって、酸化触媒と第1のフィルタとの間の排気通路に並列に接続されたバイパス路と、バイパス路に備えられ、バイパス路を通過する排気と熱媒体との間で熱交換させる熱交換手段と、酸化触媒を通過した排気の流入先を、バイパス路に並列した排気通路とバイパス路との間で切換える切換手段と、少なくとも切換手段を作動制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、請求項2のエンジンの排気熱回収装置は、請求項1において、制御手段は、第1のフィルタの再生時には、酸化触媒を通過した排気がバイパス路に並列した排気通路を通過するように、切換手段を作動制御することを特徴とする。
また、請求項3のエンジンの排気熱回収装置は、請求項2において、熱交換手段の熱交換率を検出する熱交換率検出手段を備え、制御手段は、熱交換率を制御可能であって、第1のフィルタの再生時において、切換手段を作動制御して酸化触媒を通過した排気をバイパス路に通過させる場合には、熱交換率検出手段により検出された熱交換率を所定値以下とすることを特徴とする。
【0010】
また、請求項4のエンジンの排気熱回収装置は、請求項3において、熱交換手段には、貴金属が担持されていることを特徴とする。
また、請求項5のエンジンの排気熱回収装置は、請求項1〜4のいずれか1項において、熱交換手段の上流側の前記バイパス路に、排気中の微粒子状物質を捕集する第2のフィルタを備えたことを特徴とする。
【0011】
また、請求項6のエンジンの排気熱回収装置は、請求項5において、第2のフィルタにおける微粒子状物質の堆積量を検出する堆積量検出手段を備え、制御手段は、堆積量検出手段により検出した微粒子状物質の堆積量が所定量以上である場合には、第1のフィルタの再生時において、酸化触媒を通過した排気がバイパス路を通過するように、切換手段を作動制御することを特徴とする。
【0012】
また、請求項7のエンジンの排気熱回収装置は、請求項6において、制御手段は、酸化触媒を通過した排気をバイパス路に通過させる場合には、切換手段を全開状態から全閉状態まで開度を連続的に徐変制御することを特徴とする。
また、請求項8のエンジンの排気熱回収装置は、請求項6において、第2のフィルタには、貴金属が担持されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、エンジンの排気通路に設けられた酸化触媒と第1のフィルタとの間の排気通路に熱交換手段を有するバイパス路が設けられるので、排気がバイパス路を通過するように切換手段を作動制御することで、熱交換手段によって排気熱を回収することができる。したがって、例えば熱媒体がエンジンの冷却水である場合には、排気の熱エネルギーによって冷却水を暖めて、暖機運転時間を短縮させることができる。
【0014】
特に、熱交換手段が酸化触媒の下流側に配置されるので、例えば冷態始動時において、酸化触媒を優先して活性化させ、排気浄化性能を迅速に確保することができるとともに、酸化触媒より下流側での排気の温度上昇を促すことができる。また、熱交換手段が第1のフィルタの上流側に配置されるので、熱交換手段における排気熱の回収効率を向上させることができる。なお、一般的にフィルタは、温度低下による捕集効率の低下が比較的少ないので、下流側に配置することで第1のフィルタの機能低下を招く虞は少ない。
【0015】
このように熱交換手段を酸化触媒と第1のフィルタとの間に備えることで、酸化触媒及び第1のフィルタの機能低下を抑えつつ、熱交換手段における排気熱の回収効率を向上させることができる。
また、請求項2の発明によれば、第1のフィルタの再生時には、酸化触媒を通過した排気がバイパス路に並列した排気通路を通過するので、第1のフィルタに流入する排気の温度が熱交換手段によって低下することが回避され、第1のフィルタの再生時間を低減させることができる。
【0016】
また、請求項3の発明によれば、熱交換手段に排気中の微粒子状物質が堆積して熱交換率が低下した場合には、第1のフィルタの再生時において、酸化触媒を通過した排気がバイパス路を通過するので、熱交換手段に堆積した微粒子状物質を燃焼除去し、熱交換手段の熱交換率を回復させることができる。
また、請求項4の発明によれば、熱交換手段に貴金属が担持されているので、熱交換手段に堆積した微粒子状物質の燃焼除去を促進させることができる。
【0017】
また、請求項5の発明によれば、熱交換手段の上流側のバイパス路に、排気中の微粒子状物質を捕集する第2のフィルタを備えたので、熱交換手段に微粒子状物質が堆積することを防止し、熱交換手段の熱交換率を維持することができる。
また、請求項6の発明によれば、第2のフィルタに微粒子状物質が所定量以上堆積した場合に、第1のフィルタの再生時において酸化触媒を通過した排気がバイパス路を通過するので、第2のフィルタに堆積した微粒子状物質を燃焼除去し、第2のフィルタを再生することができる。これにより、排気熱回収時における第2のフィルタでの圧損を低下させ、燃費低下を抑制することができる。また、過度にPMが堆積した状態で燃焼した場合に発生する虞のある第2のフィルタの焼損を未然に防止することができる。
【0018】
また、請求項7の発明によれば、酸化触媒を通過した排気をバイパス路に通過させる際に、切換手段を全開状態から全閉状態まで開度を連続的に徐変制御するので、第2のフィルタの再生開始直後では、第2のフィルタを通過する排気の流量を抑えて、圧損の大幅な上昇を抑え、再生が進行して第2のフィルタから微粒子状物質が除去され圧損が低下するに伴って第2のフィルタを通過する排気の流量を増加して、迅速な再生完了を図ることができる。
【0019】
また、請求項8の発明によれば、第2のフィルタに貴金属が担持されているので、第2のフィルタにおける微粒子状物質の燃焼除去を促進させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施形態の排気熱回収装置が適用されたディーゼルエンジンの吸排気系の構成図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の排気熱回収装置の構造図である。
【図3】本発明の第2の実施形態の排気熱回収装置の構造図である。
【図4】PMフィルタ再生時における開閉弁の開度の推移を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態の排気熱回収装置が適用されたディーゼルエンジン(以下、エンジン1という)の吸排気系の構成を示している。
エンジン1は、例えば車両に搭載されたコモンレール式直列多気筒のディーゼルエンジンである。エンジン1のシリンダヘッド2には、燃焼室3内に燃料を噴射する電磁式の燃料噴射弁4が気筒毎に設けられている。各燃料噴射弁4は図示しないコモンレールに接続されており、コモンレールから、高圧の燃料が供給される。
【0022】
エンジン1の吸気通路10には、吸入空気量を調節する電磁式の吸気絞り弁11と、その上流側に吸気流量を検出するエアフローセンサ12が設けられている。
エンジン1の排気通路20には、排気中の微粒子状物質(PM)を捕集するディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF21:本発明の第1のフィルタに該当する)が備えられている。DPF21は、例えば、ハニカム担体の通路の上流側及び下流側を交互にプラグで閉鎖し、通路を形成する多孔質の壁にプラチナ(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)等の触媒貴金属を担持して形成されている。
【0023】
また、DPF21の上流側の排気通路20には、酸化触媒(以下、DOC22という)が設けられている。DOC22は、例えば、通路を形成する多孔質の壁にプラチナ(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)等の触媒貴金属を担持して形成されており、排気中のCO及びHCを酸化させてCO2及びH2Oに変換させるとともに、排気中のNOを酸化させてNO2を生成する機能を有する。
【0024】
また、酸化触媒22の下流側には、酸化触媒22を通過した直後の排気温度を検出する排気温度センサ30が備えられている。DPF21の下流側には、DPF21通過直後の排気温度を検出する排気温度センサ31が設けられている。更に、DPF21の上流側と下流側との差圧を検出する差圧センサ32が設けられている。
電子コントロールユニット(以下、ECU40という)(制御手段、熱交換率検出手段、堆積量検出手段)は、エンジン1の運転制御をはじめとして総合的な制御を行うための制御装置であり、入出力装置、記憶装置(ROM、RAM、不揮発性RAM等)、中央処理装置(CPU)等を含んで構成されている。
【0025】
ECU40の入力側には、上述したエアフローセンサ12、排気温度センサ30,31及び差圧センサ32の他に、クランク角を検出するクランク角センサ33、アクセルペダルの踏込量を検出するアクセルポジションセンサ34、及び車速を検出する車速センサ35等が接続されており、これらセンサ類からの検出情報が入力される。
一方、ECU40の出力側には、燃料噴射弁4、吸気絞り弁11等の各種出力デバイスが接続されており、これら各種出力デバイスには各種センサ類からの検出情報に基づきECU40において演算された燃料噴射量、燃料噴射時期等がそれぞれ出力され、これにより、適正なタイミングで吸気絞り弁11及び燃料噴射弁4等の制御が実施される。
【0026】
上記のようにDPF21の上流にDOC22が配置されていると、通常のエンジン運転時には、DOC22において生成されたNO2がDPF21に流入し、DPF21に捕集され堆積しているPM中の炭素成分である煤と反応してこれを酸化させる。酸化した煤はCO2となり、DPF21から除去され、これによりDPF21が連続的に再生される連続再生が行われる。
【0027】
一方、エンジン1の運転状況によっては、上記連続再生だけではDPF21の再生が十分に行われない場合がある。そこで、ECU40は、エンジン1の運転を制御してDPF21を強制再生させる機能を有している。
詳しくは、ECU40は、差圧センサ32にて検出される差圧よりDPF21におけるPMの堆積量を算出する。算出された堆積量が予め実験にて設定された許容堆積量以上となると、排気温度センサ31により検出したDPF21通過後の排気温度、即ちDPF21の温度が、強制再生温度の目標値である目標再生温度となるように強制再生温度を昇温させる。
【0028】
当該強制再生は、エンジン1の運転時における燃料の主噴射の後の例えば膨張行程以降に強制再生温度となるように燃料のポスト噴射(副噴射)を行い、未燃燃料(HC、CO等)を含んだ排気を排気通路20に排出させることによって行われる。排気中に混入された未燃燃料は、DOC22に流入して酸化され、酸化の反応熱によって排気温度を上昇させる。これにより、高温の排気が排気下流側のDPF21に流入して当該DPF21に堆積したPMを加熱し燃焼させ、DPF21を強制的に再生させることが可能である。
【0029】
更に、本実施形態では、排気熱を回収して有効利用するための排気熱回収装置50を備えている。
排気熱回収装置50は、DOC22とDPF21との間の排気通路20の一部である主排気通路51に対して並列に設けられたバイパス路52と、バイパス路52に設けられた熱交換器53(熱交換手段)と、主排気通路51とバイパス路52との分岐部に設けられた開閉弁54(切換手段)とにより構成されている。
【0030】
熱交換器53は、エンジン1の冷却水が導入されており、バイパス路52を通過する排気と冷却水との間で熱交換を行う機能を有する。
開閉弁34は、ECU40により作動制御され、主排気通路51を開閉する機能を有し、主排気通路51を全開とする全開状態と主排気通路51を全閉とする全閉状態との間で切り換え可能である。バイパス通路52は主排気通路51より流路断面積が小さく、また熱交換器53が備えられているため、流路抵抗が大きいので、開閉弁54が全開状態では酸化触媒22から排出された排気の多くが主排気通路51を通過する。一方、開閉弁54が全閉状態では、酸化触媒22から排出された排気は全てバイパス通路52を通過する。したがって、開閉弁54は、酸化触媒22から排出された排気がバイパス路52、及び主排気通路51のいずれかを通過するように流路を切換える機能と同等の機能を有する。
【0031】
そして、ECU40がバイパス路52を排気が通過するように開閉弁54を作動制御することで、熱交換器53によって、バイパス路52を通過する排気と冷却水との間で熱交換が行われ、排気熱を回収することができる。
ECU40は、エンジン1の冷態始動時(例えば、冷却水温度が所定温度以下である場合)において、バイパス路52を排気が通過するように開閉弁34を閉作動制御する。これにより、エンジン1の冷却水が暖められるので、エンジン1の冷態始動時において、排気熱を利用して暖機を促し、暖機運転時間を短縮させることができる。
【0032】
また、ECU40は、バイパス路52を排気が通過するように開閉弁54を作動制御して排気熱を回収しているときに、熱交換器53の熱交換率を監視する機能を有している。熱交換率は、熱交換器53における熱交換性能を表す指標であり、例えば熱交換器53を流通する冷却水の流量と、熱交換器53の上流側の冷却水温と下流側の冷却水温との差を積算して求められた熱回収量から判定すればよい。
【0033】
そして、ECU40は、熱交換器53の熱交換率が許容範囲の下限値に近い所定値以下となった場合には、次回のDPF21の強制再生時において、所定時間バイパス路52を排気が通過するように開閉弁54を制御する。
これにより、熱交換率が低下した熱交換器53に対して、強制再生時に酸化触媒22から高温の排気が熱交換器53に流入し、熱交換器53に堆積したPMを燃焼除去して、熱交換器53を再生させ、熱交換器53の熱交換率を回復させることができる。
【0034】
更に、熱交換器53を通過させる冷却水の流量を制御する流量制御弁を設け、熱交換器53の再生時に冷却水の流量を制限するとよい。このようにすれば、熱交換器53における熱交換量が抑えられるので、熱交換器53の再生時間の短縮化を図ることができる。
また、熱交換器53を再生することで、熱交換器53の非再生時と比較してDPF21の入口の排気温度が変化してしまうので、熱交換器53の再生時においてもDPF21が再生に適した温度となるように、ポスト噴射の噴射量を制御するとよい。このようにすれば、熱交換器53の再生時において同時にDPF21の再生も可能となり、熱交換器53及びDPF21の総再生時間を短縮することができる。
【0035】
次に、図3を用いて本発明の第2の実施形態について説明する。
本発明の第2の実施形態の排気熱回収装置60は、上記第1の実施形態の排気熱回収装置50に対して、熱交換器53の上流側のバイパス路52にPMフィルタ61(第2のフィルタ)を備えたことが異なる。
PMフィルタ61は、DPF21と同様にPMを捕集する機能を有し、DPF21よりも小型で容量が低く設定されている。
【0036】
本実施形態では、熱交換器53の上流側にPMフィルタ61が備えられているので、熱交換器53にPMが堆積し難くなり、熱交換器53の熱交換率を維持させることができる。しかしながら、PMフィルタ61にPMが堆積するので、熱交換器53の再生の代わりにPMフィルタ61の再生を必要とする。
PMフィルタ61の再生は、ECU40により、PMフィルタ61におけるPMの堆積量を推定し、当該堆積量の推定値が許容範囲の上限値に近い所定量以上となった場合に実行される。PMフィルタ61におけるPMの堆積量の推定値は、例えば前回のPMフィルタ61の再生からPMフィルタ61を通過した排気流量の積算値に基づいて推定すればよい。排気流量の積算値は、エアフローセンサ12により検出した吸気流量と燃料噴射弁から噴射した燃料噴射量とに基づいて演算された排気流量と、開閉弁54の開度とに基づいて演算すればよい。あるいは、PMフィルタ61の再生開始を、前回のPMフィルタ61の再生からのエンジン1の運転時間に基づいて簡易的に判定してもよい。
【0037】
そして、ECU40は、PMフィルタ61におけるPMの堆積量が所定量以上となった場合には、次回のDPF21の強制再生時において、所定時間バイパス路52を排気が通過するように開閉弁54を閉作動制御する。
これにより、PMが所定量以上堆積したPMフィルタ61に対して、強制再生時に酸化触媒22から高温の排気がPMフィルタ61に流入し、PMフィルタ61に堆積したPMを燃焼除去して、PMフィルタ61を再生させることができる。よって、PMフィルタ61における圧損を低下させ、冷態始動時における燃費低下を抑制することができる。また、過度にPMが堆積した状態でPMが燃焼した場合において発生する虞のあるPMフィルタ61の焼損を、未然に防止することができる。
【0038】
更に、排気熱回収装置60において、開閉弁54の開度を連続的に制御するとよい。具体的には、ECU40によって、開閉弁54が全開状態から全閉状態まで開度を連続的に制御可能とする。全開状態から全閉状態までの遷移については、PMフィルタ61に堆積したPM堆積量に基づいて連続的に開度制御することが望ましいが、簡略化のため経過時間に基づいて制御してもよい。
【0039】
図4は、PMフィルタ61の再生時における開閉弁54の開度の推移を示すグラフである。
ECU40は、PMフィルタ61の再生時において、図4に示すように、再生開始から全閉にするのではなく、徐々に開度を低下させるようにしている。
これは、比較的容量の少ないPMフィルタ61にPMが堆積した状態で多量に排気を通過させると、圧損が大幅に上昇するので、エンジン1の出力が大きく変化してドライバビリティが低下するとともに燃費低下を招く虞があるためである。また、堆積したPMが急激に燃焼し、PMフィルタ61の溶損を招く虞があることも考慮されている。
【0040】
このように開閉弁54の開度を徐々に全閉にすることで、PMフィルタ61の再生開始直後では、PMフィルタ61を通過する排気の流量を抑えて、圧損の大幅な上昇を抑え、再生が進行してPMフィルタ61からPMが除去され圧損が低下するに伴ってPMフィルタ61を通過する排気の流量を増加して、迅速な再生完了を図ることができる。
また、以上の実施形態において、熱交換器53やPMフィルタ61に、プラチナ(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)等の貴金属を担持させるとよい。このようにすれば、熱交換器53やPMフィルタ61の再生時におけるPMの燃焼除去を促進させ、再生時間を短縮することができる。更に、熱交換器53やPMフィルタ61にセリウム(Ce)等の希土類を担持させるとよい。これにより、希土類の酸素貯蔵能力を利用して、再生時における酸素の安定した供給を図ることができ、再生時間の更なる短縮を図ることができる。
【0041】
以上で発明の実施形態の説明を終えるが、本発明の形態は上記実施形態に限定されるものではない。
例えば上記実施形態では、主排気通路51を開閉する開閉弁54によって、排気の流路を切換えているが、バイパス路52に開閉弁を設けてもよいし、主排気通路51とバイパス路52の下流側との接続部に開閉弁を設けてもよい。
【0042】
また、本実施形態では、熱交換器53によってエンジン1の冷却水を暖め、排気の熱を冷態始動時における暖機に利用しているが、始動時だけでなく通常運転時に暖房等の用途に利用したり、あるいは冷却水以外の熱媒体を介して排気の熱エネルギーをその他の機器や用途に利用したりしてもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 エンジン
20 排気通路
21 DPF
22 DOC
40 ECU
50、60 排気熱回収装置
52 バイパス路
53 熱交換器
54 開閉弁
61 PMフィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気通路に排気中の微粒子状物質を捕集する第1のフィルタを備えるとともに、前記第1のフィルタの上流側の前記排気通路に排気中の成分に対して酸化能を有する酸化触媒を備えたエンジンの排気熱回収装置であって、
前記酸化触媒と前記第1のフィルタとの間の前記排気通路に並列に接続されたバイパス路と、
前記バイパス路に備えられ、前記バイパス路を通過する排気と熱媒体との間で熱交換させる熱交換手段と、
前記酸化触媒を通過した排気の流入先を、前記バイパス路に並列した前記排気通路と前記バイパス路との間で切換える切換手段と、
少なくとも前記切換手段を作動制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とするエンジンの排気熱回収装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記第1のフィルタの再生時には、前記酸化触媒を通過した排気が前記バイパス路に並列した前記排気通路を通過するように、前記切換手段を作動制御することを特徴とする請求項1に記載のエンジンの排気熱回収装置。
【請求項3】
前記熱交換手段の熱交換率を検出する熱交換率検出手段を備え、
前記制御手段は、前記熱交換率を制御可能であって、前記第1のフィルタの再生時において、前記切換手段を作動制御して前記酸化触媒を通過した排気を前記バイパス路に通過させる場合には、前記熱交換率検出手段により検出された熱交換率を所定値以下とすることを特徴とする請求項2に記載のエンジンの排気熱回収装置。
【請求項4】
前記熱交換手段には、貴金属が担持されていることを特徴とする請求項3に記載のエンジンの排気熱回収装置。
【請求項5】
前記熱交換手段の上流側の前記バイパス路に、排気中の微粒子状物質を捕集する第2のフィルタを備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のエンジンの排気熱回収装置。
【請求項6】
前記第2のフィルタにおける微粒子状物質の堆積量を検出する堆積量検出手段を備え、
前記制御手段は、前記堆積量検出手段により検出した微粒子状物質の堆積量が所定量以上である場合には、前記第1のフィルタの再生時において、前記酸化触媒を通過した排気が前記バイパス路を通過するように、前記切換手段を作動制御することを特徴とする請求項5に記載のエンジンの排気熱回収装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記酸化触媒を通過した排気を前記バイパス路に通過させる場合には、前記切換手段を全開状態から全閉状態まで開度を連続的に徐変制御することを特徴とする請求項6に記載のエンジンの排気熱回収装置。
【請求項8】
前記第2のフィルタには、貴金属が担持されていることを特徴とする請求項6に記載のエンジンの排気熱回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−100758(P2013−100758A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244379(P2011−244379)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】