説明

エンジンシステム

【課題】排ガスを良好に浄化しながらも、エンジンの運転状態を好適な状態に維持するエンジンシステムを提供する。
【解決手段】燃焼室22にて混合気Mを燃焼させるエンジン20と、燃焼室22から排出される排ガスEを浄化処理する触媒浄化装置33とを備えたエンジンシステムであって、排ガス温度に対する閾値であって、排ガス温度が当該閾値よりも低くなった場合にエンジン運転状態を変更する必要が生じる閾値を、排ガス流量の減少をもたらすエンジン運転状態の変更に対応して低温側に閾値が設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼室にて混合気を燃焼させるエンジンと、前記燃焼室から排出される排ガスを浄化処理する触媒浄化装置とを備えたエンジンシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンの排ガスを浄化するエンジンシステムとして、燃焼室にて混合気を燃焼させるエンジンと、当該燃焼室から排出される排ガスを浄化する排ガス浄化触媒とを備えたエンジンシステムが知られている(特許文献1を参照)。
通常、特許文献1に示す様なエンジンシステムでは、エンジンは、エンジン出力(例えば、軸出力)が、要求される出力となる好適なエンジン運転状態で運転される。この好適なエンジン運転状態は、エンジンが当該出力を出す上で、エンジン特性等のエンジン側の要因からエンジン効率が最も高くできるように決定される。このとき、エンジンの排ガス温度は、エンジン出力が大きい場合に高くなり、エンジン出力が小さい場合に低くなる。そして、当該排ガスを浄化する排ガス浄化触媒の温度は、この排ガス温度に依存する。
ここで、一般的な排ガス浄化触媒は、その活性が高くなる活性温度域があり、特に、その温度が活性温度域の下限閾値を下回ると、活性が低下する。
このため、特許文献1に開示の技術では、例えば、エンジン出力を低出力側に変更する場合に、その変更に従って排ガス温度が低下し、排ガス温度が、一定値とされる排ガス浄化触媒の活性温度域の下限閾値よりも低くなる状況では、排ガス温度を排ガス浄化触媒の活性温度域の下限閾値以上とするように、エンジンの運転状態を排ガス浄化触媒側の理由から制御している。当該制御は、排ガス浄化触媒を良好に働かせるために不可避的な制御である。即ち、エンジンの運転状態を、排ガス浄化触媒の活性起因の要因により変更せざるを得ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61−87945号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示の技術では、上述のように、排ガス温度が排ガス浄化触媒の活性温度域の下限閾値よりも低くなった場合、エンジンの運転状態を変更する必要が生じ、必ずしも、このような場合に、出力とエンジンの運転状態とが好適な関係に維持されるとは言えない。即ち、エンジン効率の高い状態で常にエンジンを運転できているわけではない。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、排ガスを良好に浄化しながらも、エンジンの運転状態を好適な状態に維持することができるエンジンシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためのエンジンシステムは、燃焼室にて混合気を燃焼させるエンジンと、前記燃焼室から排出される排ガスを浄化処理する触媒浄化装置とを備えたエンジンシステムであって、その特徴構成は、
排ガス温度に対する閾値であって、前記排ガス温度が当該閾値よりも低くなった場合にエンジン運転状態を変更する必要が生じる閾値を、排ガス流量の減少をもたらす前記エンジン運転状態の変更に対応して低温側に設定する点にある。
即ち、排ガス流量の減少をもたらすエンジン運転状態の変更に対して、前記閾値は、低温側に設定される。ここで、この閾値の低温側への変更下限は、新たに設定される低温側の閾値の温度で、排ガス浄化触媒を活性が低下した状態で使用したとしても、エンジン運転状態の変更後の状態で、排出されてくる排ガスの浄化が可能な下限温度となる。
【0007】
排ガス流量の減少をもたらすエンジン運転状態の変更の代表例を「出力の低下」として本願を説明すると、出力の低下に伴って閾値は低下側に設定される。即ち、一般に出力の低下は、エンジンにおける燃料燃焼量の低下に繋がり、排ガス温度の低下に繋がる。そして、従来のように、閾値を一定値としておいた場合、この一定閾値より排ガス温度が低下した場合に、エンジンの運転状態を、排ガス浄化触媒を良好に働かせるために変更することが必要となる。即ち、エンジンの運転状態が排ガス浄化触媒起因の要因に基づいて決定せざるを得なくなる。
これに対して、本願においては、出力の低下を行った場合、閾値も低下させるため、排ガス温度が低下したとしても、排ガス温度が閾値を下回る状態の発生が遅れる。
結果、出力の低下変更に対応して、閾値を一定値としていた場合に排ガス温度が閾値以下となる出力範囲でも、エンジンの運転状態をその要因に基づいて変更する必要はなくなり、エンジン特性から決定される好適なエンジン運転状態でエンジンの運転を継続することができ、排ガスを良好に浄化しながらも、エンジンの運転状態を好適な状態に維持することができる。換言すると、この状態におけるエンジンの運転状態の選択性が広がる。
【0008】
このようなことが可能となる理由は、触媒の浄化量は、処理対象の排ガス量と触媒量との関係に基づいて決定されるが、本件においては、上に説明した出力を低下側に変更する場合のように排ガス流量が低下する状況においては、排ガス浄化触媒により浄化すべき処理量が低下しているため、触媒活性の指標である、所謂、SV値((処理する排ガス量Nm3/h)/(触媒量m3))自体が低下し、触媒の活性が低下した領域でもその浄化処理を良好に行えるためである。
【0009】
本発明のエンジンシステムの更なる特徴構成は、
前記排ガス流量の減少をもたらす前記エンジン運転状態の変更が、出力の低下側への変更、エンジン回転速度の低速側への変更もしくは、スロットルバルブの閉側への変更の何れか一つ以上であり、前記何れか一つ以上の変更をおこなった場合に、低温側に前記閾値が設定されている点にある。
【0010】
上記特徴構成によれば、出力の低下側への変更、エンジン回転速度の低速側への変更もしくは、スロットルバルブの閉側への変更を行った場合、本願が問題とする排ガス流量の低下が発生する。従って、先に説明したように、このように排ガス流量が低下した場合、浄化処理対象の排ガス流量が低下しているのであるから、触媒の活性が低下した状態でも良好に排ガスを処理できる。結果、排ガスを良好に浄化しながらも、エンジンの運転状態を好適な状態に維持することができる。換言すると、この状態におけるエンジンの運転状態の選択性が広がる。
【0011】
本発明のエンジンシステムの更なる特徴構成は、
前記触媒浄化装置に設けられた触媒は、前記排ガスを三元触媒方式で浄化する三元触媒であり、
前記閾値は、前記三元触媒の下限側の温度の閾値である触媒下限閾値である点にある。
【0012】
上記特徴構成によれば、触媒を、排ガスを三元触媒方式で浄化する三元触媒とし、閾値を三元触媒の下限側の温度の閾値である触媒下限閾値に設定することで、比較的温度条件の厳しい三元触媒において、その触媒下限閾値を排ガス流量に対応させて適切に設定することで、三元触媒を、排ガスを浄化することができるように、適切に働かせることができる。
【0013】
本発明のエンジンシステムの更なる特徴構成は、
前記燃焼室から排出された前記排ガスを前記燃焼室に還流させるEGR手段が設けられ、高出力領域において前記EGR手段を働かせて、当該高出力領域において排ガス流量を一定に維持する構成とされるとともに、前記高出力領域より出力が低い低出力領域において、前記EGR手段を運転したまま出力低下に伴って排ガス流量が低下される構成とされ、
前記閾値が、前記高出力領域で一定に、前記低出力領域で、前記高出力領域における一定値から出力低下に伴って低下されている点にある。
【0014】
この構成では、高出力領域、低出力領域の両方で、EGR手段を働かせて排ガスの保有する熱を利用してエンジン効率を高い状態に維持する。ここで、低出力領域では出力の低下に伴って排ガス流量が低下される。この状態で、排ガス温度も低下することとなる。
【0015】
高出力領域のように、排ガス流量が一定で出力が下がる条件では触媒の閾値を一定にする。一方、この高出力領域より出力が低い低出力領域においては排ガス温度が出力の低下に伴って低下するため閾値自体を出力の低下に伴って低下させる。結果、低出力領域においては閾値が低下されるため、これまで説明してきたように触媒の活性が低下した状態でも低下した流量の排ガスを充分浄化できる。よって、この領域におけるエンジンの運転状態を、排ガス浄化触媒側の要因を考慮することなく決定することができ、エンジン運転状態の選択性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態に係るエンジンシステムの概略構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る閾値設定を説明するためのグラフ図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係るエンジンシステムの概略構成図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る閾値設定を説明するためのグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔第1実施形態〕
本願の第1実施形態に係るエンジンシステムを、図1、2に基づいて説明する。
本発明に係るエンジンシステムは、エンジン運転状態を好適な状態に維持しながらも、触媒にて適切な浄化性能を発揮させるべく、排ガス温度に対する閾値であって、排ガス温度が当該閾値よりも低くなった場合にエンジン運転状態を変更する必要が生じる閾値を、排ガス流量の減少を発生するエンジン運転状態の変更に対応して低温側に設定する点に特徴がある。
そこで、以下では、図1、2に基づいて、エンジンシステムの基本構成について説明した後、排ガス温度に対する閾値の設定について説明する。
【0018】
図1に示すエンジンシステムは、混合気Mを圧縮して燃焼させる燃焼室22と、当該燃焼室22から排出された排ガスEを三元触媒方式で処理する三元触媒を備えた三元触媒部33(本願における触媒浄化装置)とを備え、燃焼室22において混合気Mをストイキ燃焼させ、当該ストイキ燃焼において燃焼室22から排出された排ガスEを三元触媒部33に通流させて浄化処理するように構成されている。
【0019】
エンジン20は、ピストン24をシリンダ内で往復運動させると共に、吸気バルブ21及び排気バルブ25を開閉動作させて、燃焼室22において吸気、圧縮、燃焼・膨張、排気の諸行程を行い、ピストン24の往復動を連結棒によってクランク軸の回転運動として出力するように構成されており、かかる構成は通常の4ストロークエンジンと変りはない。また、燃焼室22では、燃焼室22に導かれる混合気Mに火花点火方式にて点火するように点火プラグ23が設けられている。当該点火プラグ23による火花点火のタイミングを変更することにより、点火時期が制御可能に構成されており、当該点火時期の制御等により、エンジンの回転速度を変更可能になっている。
尚、図示は省略するが、エンジン20の回転速度は、クランク角センサにて検出可能に構成されており、検出した回転速度は制御装置40に送られる。
【0020】
燃焼室22に吸気バルブ21を介して接続された吸気路10には、当該吸気路10を縮径させたベンチュリ構造を有するミキサ13が設けられている。当該ミキサ13は、吸気路10を通流する空気Aが上記ベンチュリ構造を高速で通過することで圧力低下を発生させ、この圧力低下を利用して、気体燃料である都市ガス(13A)である燃料Gを、吸気路10を通流する空気Aに供給して、吸気路10に混合気Mを形成するように構成されている。即ち、ミキサ13は、当該空気Aの流量に略比例した状態で燃料Gを供給可能になっている。
さらに、このミキサ13に燃料Gを導く燃料供給路14には、ミキサ13への燃料供給量を調整可能な燃料制御弁12が設けられている。即ち、燃料制御弁12の開度を制御することで、吸気路10に導かれる燃料Gの流量を変更可能に構成されている。
【0021】
吸気路10のミキサ13の上流側には、吸気路10を通流する空気Aの流量を調整可能なスロットルバルブ11が設けられている。当該スロットルバルブ11の開度を閉側に設定することにより、その下流側に導かれる空気Aの流量が減少し、開き側に設定することにより、その下流側に導かれる空気Aの流量が増加する。
【0022】
燃焼室22に排気バルブ25を介して接続された排気路30には、当該排気路30を通流する排ガス流量を測定する排ガス流量センサ31が設けられている。
排ガス流量センサ31の下流側には、排ガスEを三元触媒方式で浄化処理する三元触媒部33が設けられている。制御装置40は、当該排ガス流量センサ31の測定結果に基づいて、閾値の設定を実行する。ここで、使用する排ガス流量と閾値との関係は、図2に示す触媒下限閾値C1と排ガス流量Lとの関係である。
三元触媒部33は、理論空燃比の排ガスE、即ち含有する酸化性成分と還元性成分とが釣り合った状態である排ガスEを、三元触媒に通流させて、その排ガスEに含まれるNOx、CO、及びHCを同時除去するように構成されている。上記三元触媒としては、白金やロジウムを含む触媒等の公知の三元触媒を利用することができる。
三元触媒は、その温度が、触媒上限閾値より高くとなると劣化してしまい、触媒下限閾値未満となると活性が低下して処理できる排ガス流量が減少する。そこで、三元触媒部33には、その温度を測定する温度センサ32が設けられており、制御装置40は、当該温度センサ32の温度に基づいて、三元触媒部33の温度が、本願の閾値である触媒下限閾値C1よりも低くなった場合に、排ガス温度を上昇させるようにエンジン運転状態を制御する。
【0023】
エンジン運転状態は、エンジン出力(例えば、軸出力)が要求される出力となる好適な条件で制御される。
当該エンジン運転状態の制御は、主に、出力の変更をもたらす燃料供給量の変更、エンジン回転速度の変更、スロットルバルブ11の開度の変更にて行われる。
ここで、出力の変更は、主に燃料制御弁12の開度を変更することにより、燃焼室22に導かれる燃料Gの流量を制御することにより、実現できる。
また、エンジン回転速度の変更は、燃料制御弁12、吸気バルブ21、排気バルブ25の開閉時期、点火プラグ23による点火時期を変更すること等により、実現できる。
スロットルバルブ11の開度の変更は、燃料供給量の変更に伴って、燃焼室22に供給される燃料を適切な空燃比で燃焼すべく、当該燃料供給量の変更に対応して行われる。
本例では、三元触媒を利用して排ガス浄化を行うため、空気過剰率λ(実際に燃焼室に供給される空気量/燃料量に対応した理論空気量)を1とする空燃比制御が下記する制御装置40で実行される。
【0024】
さらに、制御装置40は、エンジン運転状態を好適な状態に維持しながらも、比較的出力が低い低出力領域でも三元触媒部33にて適切に排ガスを浄化すべく、以下のような制御を行っている。
即ち、制御装置40は、図2に示すように、排ガス温度に対する閾値であって、排ガス温度が当該閾値よりも低くなった場合にエンジン運転状態を変更する必要が生じる閾値として、三元触媒部33に設けられている三元触媒の触媒下限閾値C1を、三元触媒部33に導かれる排ガス流量の減少をもたらすエンジン運転状態の変更に対応して低温側に設定している。
この例では、出力の全領域で、出力の低下に伴って閾値が低下設定されている。
ここで、三元触媒部33に導かれる排ガスEの流量の減少を発生するエンジン運転状態の変更とは、エンジン出力の低下側への変更、エンジン回転速度の低速側への変更、スロットルバルブ11の閉側への変更のいずれか一つ以上である。
【0025】
上述のように、三元触媒の触媒下限閾値C1が設定されていることにより、エンジン運転状態は、排ガス浄化触媒の状態に影響を受けることなく、エンジン特性等から見て、エンジンに要求出力に適したエンジン運転状態を選択できる。
以下、本発明と従来技術とを比較して、排ガス温度に対する閾値であって、排ガス温度が当該閾値よりも低くなった場合にエンジン運転状態を変更する必要が生じる閾値と、排ガス温度、排ガス流量との関係について説明する。
〔本発明の構成〕
本発明においては、図2に示すように、出力の低下を行った場合、触媒下限閾値C1は予め低下設定される。この状況では、出力の低下に伴って、排ガス温度(図2で直線T)が低下するが、このように低下したとしても、排ガス温度が触媒下限閾値C1を下回ることはない。即ち、排ガス温度が触媒下限閾値C1を下回る状態の発生が遅れる。
結果、触媒を適切に働かせて排ガスを良好に浄化しながらも、エンジンの運転状態をエンジン特性に応じた好適な状態で使用できる。換言すると、この状態におけるエンジンの運転状態の選択性が広がる。即ち、エンジンをより効率のよい状態で運転できる。
〔特許文献1に示す従来技術の場合〕
図2に、一点鎖線で従来技術における触媒下限閾値C2を示した。触媒下限閾値C2は、出力の低下変更に拘らず従来は一定である。一般に、出力の低下は、エンジン20における燃料燃焼量の低下に繋がり、排ガス温度(図2で直線T)の低下に繋がる。触媒下限閾値C2を一定としておいた場合、この一定閾値より排ガス温度が低下した場合(同図においてP点より右側に出力が低下した場合)に、エンジンの運転状態を、触媒を良好に働かせるために変更する必要が生じる。具体的には、エンジンの運転状態を、排ガス温度Tが一定の触媒下限閾値C2(図2で直線C2)より高くなるように、変更する。
このような変更は、エンジン性能自体に基づいた運転状態の変更とは言えず、排ガス浄化触媒要因の制約を受けた運転状態の変更と言え、事実上、エンジン運転状態の選択性が規制を受けることとなり、必ずしもエンジンをより効率のよい状態で運転できるとはかぎらない。
【0026】
〔第2実施形態〕
当該第2実施形態は、燃焼室22から排出された排ガスEを燃焼室22に還流させるEGR流路(排ガス再循環流路)50及びEGR量(排ガス再循環量)を制御するEGR制御弁(排ガス再循環制御弁)51(EGR手段(排ガス再循環手段)の一例)を設けた構成において、三元触媒の触媒下限閾値C1の設定に関するものである。
そこで、以下では、EGR(排ガス再循環)に関連する部分について、重点的に説明し、上記第1実施形態と同様の構成、及び同様の制御については、説明を割愛することがある。
【0027】
図3に示すように、EGR流路50は、排気路30で三元触媒部33の下流側の空間と、吸気路10のミキサ13と吸気バルブ21との間の空間とを連通するように設けられている。これにより、排気路30に排出された排ガスEの一部を、このEGR流路50及び吸気路10を通じて燃焼室22に再循環する所謂EGRを行う。更に、このEGR流路50にはEGR制御弁51が設けられており、このEGR制御弁51の開度調整により、燃焼室22への排ガスEの供給量、すなわちEGR量を調整する。
当該EGR流路50及びEGR制御弁51にて、EGRを実行することにより、燃焼室22には、新気(空気A及び燃料G)と排ガスEとの混合気Mが導かれることとなり、EGRを実行しない場合に比較すると、結果的に、1サイクル当りに燃焼室22に導かれる新気の流量が減少するため、その出力は低減する。
即ち、制御装置40は、EGRを実行するように、EGR制御弁51を制御することにより、エンジン20の出力を低減する制御を実行できる。
【0028】
第2実施形態においても、制御装置40は、図4に示すように、三元触媒の触媒下限閾値C1を、三元触媒部33に導かれる排ガス流量の減少をもたらすエンジン運転状態の変更に対応して低温側に設定する領域(低出力領域)を設けている。
図4に示すように、第2実施形態において出力領域は出力が高い高出力領域と、その高出力領域より出力が低い低出力領域とに分けられている。そして、上記のEGR手段のそれら両領域で働かせる構成を採用する。結果、エンジンを効率よく運転できる。
そして、高出力領域においては、EGR手段が働く状態で排ガス流量を一定に維持する運転を実行する。一方、低出力領域においては、前記EGR手段を運転したまま出力低下に伴って排ガス流量が低下される運転を実行する。この低出力領域は、新気の流量減少度合いが大きく、EGRを行ったとしても、排ガス流量が全体として低下する領域である。即ち、EGR流量の増加のみでは達成できない低出力を、エンジン回転速度の低速側の変更、及びスロットルバルブ11の閉側への変更により達成する領域である。
そして、高出力領域では、前記閾値が一定に、低出力領域では、前記高出力領域における一定値から出力低下に伴って低下される構成が採用されている。
【0029】
以下、さらに詳細に説明する。
〔エンジン運転状態の変更:EGRの流量増加〕
図4の点線の左側に示す高出力領域では、出力を低下させるのに、エンジン運転状態の変更として、EGR流量の増加を実行する。この状態では、スロットルバルブ11の開度が一定でエンジンの回転速度は保持される。このとき、EGR流量が増加した分だけ、新気の流量は減少することになるが、新気は、ベンチュリーミキサー13により空気過剰率λ(実際に燃焼室に供給される空気量/燃料量に対応した理論空気量)が1に保たれた状態で、供給される。EGRの流量の増加により、三元触媒部33に導かれる排ガスEの流量は実質的に一定(図4で点線の左側の直線L)に維持される。このため、当該エンジン運転状態の変更は、排ガス流量の減少をもたらすエンジン運転状態の変更に該当しないため、三元触媒の触媒下限閾値C1は一定(図4で点線の左側の直線C1)としている。
これにより、第2実施形態のエンジンシステムにあっては、高出力領域では、三元触媒の触媒下限閾値C1は、従来技術の触媒の触媒下限閾値C2と同じく、一定の値とする。
即ち、エンジン20の出力が比較的高い場合であって、排ガス温度が触媒下限閾値C1よりも十分に高いときには、EGRにてエンジン20の出力を低下させることで、従来型の閾値設定とするだけで、排ガスの浄化を適切に行なえる。
【0030】
〔エンジン運転状態の変更:出力の低下等〕
図4の点線の右側に示す低出力領域では、出力を低下させるのに、エンジンの運転状態の変更として、出力の低下側への変更(燃料供給量の低下変更、スロットルバルブ11の閉側への変更、EGR開度は一定に維持)を行なって、エンジンの回転速度の低速側への変更を行う。当該エンジン運転状態の変更においては、三元触媒部33に導かれる排ガス流量(図4で点線の右側の直線L)は減少させる。このため、当該エンジン運転状態の変更は、排ガス流量の減少を発生するエンジン運転状態の変更に該当するため、三元触媒の触媒下限閾値(図4で点線の右側の直線C1)は、出力の低下側への変更に伴って閾値を低温側に設定する。
これにより、低出力領域で、第1実施形態と同様に、出力の低下に伴って、排ガス温度(図2で直線T)が低下するが、このように低下したとしても、排ガス温度が触媒下限閾値C1を下回ることはない。即ち、排ガス温度が触媒下限閾値C1を下回る状態の発生が遅れる。
結果、触媒を適切に働かせて排ガスを良好に浄化しながらも、エンジンの運転状態をエンジン特性に応じた好適な状態で使用できる。換言すると、この状態におけるエンジンの運転状態の選択性が広がる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明のエンジンシステムは、触媒にて適切に排ガスを浄化しながらも、エンジン運転状態の制約を緩和して運転効率を向上できるエンジンシステムとして、有効に利用可能である。
【符号の説明】
【0032】
20 :エンジン
22 :燃焼室
33 :三元触媒
50 :EGR流路
51 :EGR制御弁
C1 :触媒下限閾値
E :排ガス
M :混合気

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼室にて混合気を燃焼させるエンジンと、前記燃焼室から排出される排ガスを浄化処理する触媒浄化装置とを備えたエンジンシステムであって、
排ガス温度に対する閾値であって、前記排ガス温度が当該閾値よりも低くなった場合にエンジン運転状態を変更する必要が生じる閾値を、排ガス流量の減少をもたらす前記エンジン運転状態の変更に対応して低温側に前記閾値が設定されているエンジンシステム。
【請求項2】
前記排ガス流量の減少をもたらす前記エンジン運転状態の変更が、出力の低下側への変更、エンジン回転速度の低速側への変更もしくは、スロットルバルブの閉側への変更の何れか一つ以上であり、前記何れか一つ以上の変更をおこなった場合に、低温側に前記閾値が設定されている請求項1に記載のエンジンシステム。
【請求項3】
前記触媒浄化装置に設けられた触媒は、前記排ガスを三元触媒方式で浄化する三元触媒であり、
前記閾値は、前記三元触媒の下限側の温度の閾値である触媒下限閾値である請求項1又は2に記載のエンジンシステム。
【請求項4】
前記燃焼室から排出された前記排ガスを前記燃焼室に還流させるEGR手段が設けられ高出力領域において前記EGR手段を働かせて、当該高出力領域においては排ガス流量を一定に維持する構成とされるとともに、前記高出力領域より出力が低い低出力領域において、前記EGR手段を運転したまま出力低下に伴って排ガス流量が低下される構成とされ、
前記閾値が、前記高出力領域で一定に、前記低出力領域で、前記高出力領域における一定値から出力低下に伴って低下されている請求項1乃至3の何れか一項に記載のエンジンシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−207582(P2012−207582A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73456(P2011−73456)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】