説明

エンジン及びエンジン作業機

【課題】
混合気を確実に遮断することによりエンジンの過回転を防止することができるリードバルブを備えたエンジンを提供する。
【解決手段】
気化器と、ピストンが往復運動する空間に開口する吸気開口を有し、気化器から供給される混合気をクランクケースに設けられたクランク室に供給する吸気ポートが形成されるシリンダブロックと、気化器とシリンダブロックとの間に設けられ、吸気ポートと気化器とを連通する吸気通路を有するインシュレータ19を有するエンジンにおいて、インシュレータに、磁性材料により製造されるリードバルブ21と、2つの磁極片25b、25cを有する鉄心と、鉄心の一部に巻かれたコイル26を有する電磁石27を組み込んだ(鋳込むようにした)。電磁石27は制御部によって制御され、通電することによってリードバルブ21を閉状態に保つことができるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刈払機やチェンソー等で用いられるリードバルブを備えたエンジンに関し、特に、リードバルブを電気的な制御により強制的に閉鎖させることができるようにしたエンジン及びエンジン作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
刈払機やチェンソー等の小型の作業機には、特許文献1に開示されるように動力源として小型のエンジン、特に2サイクルのエンジンが広く用いられている。図22は、エンジン作業機の一例である刈払機1001の外観図である。図22に示すように、携帯型のエンジン作業機への搭載に好適な小型の2サイクルエンジンをエンジンカバー1002の内部に搭載した刈払機1001は、操作桿1005の先端に回転刃1003が取り付けられ、操作桿1005の後端にエンジンとそれを覆うエンジンカバー1002が取り付けられる。エンジンの出力は、操作桿1005内に挿通させた図示しないドライブシャフトを介して回転刃1003に伝達される。作業者は操作桿1005に取り付けられたハンドル1004を把持して刈払機1001を操作する。
【0003】
刈払機1001で用いられるような2サイクルエンジンは、小型軽量で大きな出力を得ることができ、燃料を供給することにより長時間の作業が可能となる。しかしながら、2サイクルエンジンは、4サイクルエンジンと違ってシリンダに吸気バルブ及び排気バルブを有しないため、リードバルブを設けてクランクケースに流入した空気が逆流しないようにする技術が広く用いられている。さらに、エンジン回転数が所定回転数以上に上昇した場合に、混合気通路を遮断してエンジンの過回転の防止を行うガバナー装置を備えたものがある。例えば特許文献1ではインシュレータの外側に駆動体および遮断体を変位させる伝達機構を設け、エンジンの回転数に応じて混合気通路に設けられた遮断体を外部に設けられたモータにより開閉させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−253033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のようなガバナー装置は混合気通路の遮断性の確実さがやや不十分であり、この不確実さ等により混合気の流入を許してしまう恐れがあった。また、インシュレータの外部にガバナー装置を設けるためのスペースが必要である上、遮断体を変位させる伝達機構がやや複雑となり、寿命や信頼性の更なる向上を図る際のネックとなる。また、遮断体を制御により変位させるため、即応性に欠けるという問題があった。
【0006】
本発明は上記背景に鑑みてなされたもので、その目的は、混合気通路の混合気の流れを確実に遮断することによりエンジンの過回転を防止することができるリードバルブを備えたエンジン及びエンジン作業機を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、既存のリードバルブを電磁力によって任意のタイミングで閉鎖状態に保持することができるようにし、未燃焼ガスの排出を抑制することを可能としたエンジン及びエンジン作業機を提供することにある。
【0008】
本発明のさらに他の目的は、従来のエンジンで用いられるインシュレータにリードバルブの電磁閉鎖機構を組み込むことにより、インシュレータのサイズを変更することなく低コストで信頼性の高いエンジン及びエンジン作業機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願において開示される発明のうち代表的なものの特徴を説明すれば次の通りである。
【0010】
本発明の一つの特徴によれば、シリンダ内に燃料と空気の混合気を供給する気化器と、ピストンが往復運動可能なシリンダブロックと、クランク室が形成されたクランクケースを有するエンジンであって、混合気の通過する混合気通路に設けられ、磁性材料からなるリードバルブと、リードバルブに対向する少なくとも2つの磁極片を有する鉄心と、鉄心の一部に巻かれたコイルを有する電磁石と、電磁石を制御する制御部を設けた。2つの磁極片はリードバルブに接触する位置であって、混合気通路の内部または混合気通路の一部と接する部分に配置される。
【0011】
本発明の他の特徴によれば、2つの磁極片のリードバルブと接する面は円弧状に形成され、互いの凹部が混合気通路の軸線に対して対称となるように配置され、2つの磁極片はコイルが巻かれたU字状の鉄心にて接続される。気化器とシリンダブロックとの間には、吸気ポートと気化器とを連通する通路を有するインシュレータが更に設けられ、U字状の鉄心及びコイルは、インシュレータ内に埋め込まれる(鋳込まれる)と好ましい。
【0012】
本発明のさらに他の特徴によれば、2つの磁極片及びコイルは、混合気通路の内部に配置される。制御部は、シリンダ内の吸気開口が開くべきタイミングに電磁石に給電することによりリードバルブを閉鎖状態に維持する。制御部は、エンジンの回転数が目標回転数よりも高くなった場合に、電磁石に給電することにより吸気開口が開いている間にリードバルブを閉鎖状態に保つ回数が所定割合となるように制御する。この制御は、エンジンの第1の所定回転数を超える回転数を検出すると、吸気開口が開いている間に混合気通路を閉じる回数が増えるよう変更する。また、アイドリング状態の回転数を検出し、第1の所定回転数より低い第2の所定回転数を超える回転数を検出すると、制御部は、吸気開口が開いている間に混合気通路を閉じる回数が増えるよう制御する。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、2つの磁極片からの磁力線がリードバルブを介して伝わるように磁気的な閉ループが形成されるので、磁化の際に磁極片がリードバルブに当接することで優れた吸着力を実現できる。このため燃料通路の遮断性の不十分さからの混合気の流入の心配が無くなり、混合気を確実に遮断することができる。これにより、気化器からシリンダに供給される混合気を確実に遮断することでエンジンの回転数制御や効率的な燃焼制御を行うことが可能なエンジンを提供できる。
【0014】
請求項2の発明によれば、2つの磁極片又は電磁石の磁極片が、燃料通路の内部または燃料通路の一部と接する部分に配置されているので、コイルによる発熱を吸気される空気により効果的に冷却することができる。
【0015】
請求項3の発明によれば、2つの磁極片のリードバルブと接する面は円弧状に形成され、互いの凹部が混合気通路の軸線に対して対称となるように配置されるので、磁力による吸着領域を広く確保することができ、電磁石によりリードバルブを安定して閉鎖状態に保つことが可能となる。
【0016】
請求項4の発明によれば、U字状の鉄心及びコイルは、インシュレータ内に埋め込まれるので、がたつきやコイルの断線を起こすことが無く信頼性の高い長寿命なエンジンを実現できる。
【0017】
請求項5の発明によれば、2つの磁極片及びコイルは、混合気通路の内部に配置されるので、コイルによる発熱を吸入される空気によってきわめて効果的に冷却することができる。また、電磁石をインシュレータに鋳込む必要が無いのでインシュレータの製造原価を低減することができる。
【0018】
請求項6の発明によれば、制御部は、吸気開口が開くべきタイミングにおいて電磁石に給電することによりリードバルブを閉鎖状態に維持させるので、未燃ガスを発生させることなくエンジンの回転数を効果的に低下させる制御が可能となる。
【0019】
請求項7の発明によれば、制御部は、エンジンの回転数が目標回転数よりも高くなった場合に電磁石に給電し、吸気開口が開いている間にリードバルブを閉鎖状態に保つ回数が所定割合となるように制御するので、制御が難しい2サイクルエンジンにおいても確実にエンジン回転数の制限を行うことが可能となる。
【0020】
請求項8の発明によれば、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のエンジンを用いてエンジン作業機を実現するので、回転制御が容易で使い勝手の良いエンジン作業機を実現することができる。
【0021】
本発明の上記及び他の目的ならびに新規な特徴は、以下の明細書の記載及び図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施例に係るリードバルブを備えたエンジンの全体構成を示す縦断面図である。
【図2】図1のインシュレータ組立体(図1の点線Aで囲む部分)の拡大側面図である。
【図3】図1のインシュレータ組立体をシリンダブロック8側から見た(図2の矢印B方向から見た)側面図である。
【図4】図1のインシュレータ組立体の構造を示す部品展開図である。
【図5】図3のインシュレータ19を示す側面図であって、インシュレータ組立体からストッパ23とリードバルブ21を取り外した状態を示す図である。
【図6】図5のC−C部の端面図である。
【図7】図5のインシュレータ19の底面図であって、図5の矢印D方向から見た図である。
【図8】図1のインシュレータ組立体の電磁石27を帯びた時の状態を示す側面図でインシュレータ組立体からストッパ23とリードバルブ21を取り外した状態を示す図である。
【図9】図1のインシュレータ組立体の電磁石27を帯びた時の状態を示す底面図であって、図8のE方向から見た図である。
【図10】図1のインシュレータ組立体の鉄心25がリードバルブ21と吸着した際の磁力線の流れを示す図である。
【図11】図1のインシュレータ組立体のリードバルブ21が最大開口してストッパ23にと当接している状態を示す側面図である。
【図12】本発明の実施例に係るエンジン1の制御ブロック図である。
【図13】本発明の実施例に係るエンジン1のリードバルブ21の吸気開口とバルブ駆動部35の動作を示すタイミングチャート図である。
【図14】本発明の実施例に係るエンジン1のリードバルブ21の吸気開口とバルブ駆動部35の動作を示す別のタイミングチャート図である。
【図15】本発明の実施例に係るエンジン1のリードバルブ21の吸気開口とバルブ駆動部35の動作を示すさらに別のタイミングチャート図である。
【図16】本発明の第2の実施例に係るインシュレータ119の側面図である。
【図17】本発明の第3の実施例に係るインシュレータ組立体の側面図である。
【図18】本発明の第3の実施例に係るインシュレータ組立体の吸気ポート14側から見た側面図である。
【図19】本発明の第3の実施例に係るインシュレータ組立体の側面図であって、インシュレータ組立体からストッパ23とリードバルブ21を取り外した状態を示す図である。
【図20】本発明の第3の実施例に係るインシュレータ組立体の縦断面図である。
【図21】本発明の第4の実施例に係るインシュレータ組立体の縦断面図である。
【図22】エンジン作業機の一例である刈払機の外観図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0023】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。なお、以下の図において、同一の部分・部品には同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する。また、本明細書においては、上下左右の方向は図1に示す方向であるとして説明する。
【0024】
図1において、エンジンカバー2に収容されたエンジン1には、燃料タンク3から供給される燃料と空気を混合してエンジン1に混合気を供給する気化器4と、マフラー5と、クランク軸6に固定されたマグネトロータ7と、エンジン1のシリンダブロック8に固定されたイグニッションコイル(図示せず)と、イグニッションコイルに接続された点火プラグ10が取付けられる。シリンダブロック8の内部に形成されたシリンダボア11の内周壁には排気ポート12に接続する排気開口13と、吸気ポート14に接続する吸気開口15と、掃気通路(図示せず)に接続する掃気開口(図示せず)が開口する。
【0025】
シリンダボア11内にはピストン16が上下方向に往復運動可能に収容され、ピストン16が上下運動する際に、排気開口13、吸気開口15、掃気開口(図示せず)はそれぞれピストン16の側壁により開閉される。図1では、ピストン16が上死点位置にある状態を示しており、排気開口13は閉じられた状態であり、吸気開口15は完全に開いた状態である。ピストン16は、コンロッド18を介してシリンダブロック8の下方に取り付けられたクランクケース17に回転可能に支持されたクランク軸6に接続される。シリンダブロック8には、排気ポート12と連通するようにマフラー5が接続される。シリンダブロック8の吸気ポート14には、インシュレータ19を介して気化器4が接続される。
【0026】
図2は、図1のインシュレータ組立体(図1の点線Aで囲む部分)の拡大側面図である。ここで、“インシュレータ組立体”とは、シリンダブロック8と気化器4の間に組み込まれる部品の組立体であって、インシュレータ19と、インシュレータ19の吸気ポート14側に設けられるいくつかの部品(21、23、24:詳細は後述)、そして、本実施例において新たに追加される電磁石27によって構成される。インシュレータ19は、吸気ポート14と気化器4の間に介在されるもので、混合気通路の一部を形成するものであって、所定の長さの吸気通路20を形成することにより吸入効率を改善するものである。インシュレータ19は例えばプラスチック等の高分子樹脂の一体成形により製造される。
【0027】
インシュレータ19の吸気ポート14側の端部には、リードバルブ(吸気制御弁)21が設けられる。リードバルブ21は、ステンレスやベーナイト鋼等の弾性変形可能な板状の磁性体である。リードバルブ21は、インシュレータ19の吸気通路20の開口部分を完全に覆うのに十分な面積を有し、インシュレータ19の吸気ポート14側の端部に、リードバルブ21の吸気ポート14側に設けられるストッパ23とともにねじ24により片持ち支持される。リードバルブ21はピストン16が上昇してクランク室内と吸気通路20内の圧力差が所定値を越える(クランク室内が負圧になる)と吸気ポート14側に弾性変形し、吸気通路20が吸気ポート14と連通する。また、リードバルブ21が変形していない状態(図2に図示した状態)では、リードバルブ21が吸気通路20の吸気ポート側の開口部全体を覆うことにより吸気通路20を閉鎖する。
【0028】
インシュレータ19の吸気通路20の端部であって、リードバルブ21と対向する位置には電磁石27が設けられる。電磁石27は、リードバルブ21に所定の面積にて当接するような形状の鉄心25と、鉄心25の一部に巻かれたコイル26から構成される。電磁石27は、コイル26への通電のオンオフすることによって、磁力の発生と停止を任意のタイミングでコントロールするものであって、特に微小電気入力によって強力な吸引力を発生することができる。鉄心25の一部であってリードバルブ21と接触する磁極片部分は吸気通路20の内部に設けられ、鉄心25の残りの部分とコイル26はインシュレータ19の内部に埋め込まれる(鋳込まれる)ように配置される。
【0029】
図3は図1のインシュレータ組立体をシリンダブロック側から見た(図2の矢印B方向から見た)側面図である。インシュレータ19は吸気の流れと垂直な断面形状が略四角形であり、図3のように見た際にはほぼ中央付近に円形の吸気通路20が形成される。インシュレータ19の吸気ポート14側の端部19aには、リードバルブ(吸気制御弁)21が設けられる。リードバルブ21は吸気通路20の直径よりも十分大きく構成され、ストッパ23と共に2本のねじ24によってインシュレータ19の吸気ポート14側の端部19aに片持ち支持される。リードバルブ21の形状や大きさは、従来から用いられているリードバルブと同等で良い。電磁石27の鉄心25の一部であって磁極片となる部分は、吸気通路20の内部に設けられ、コイル26は、インシュレータ19の内部に埋め込まれるように配置される。
【0030】
図4はインシュレータ組立体の構造を示す部品展開図である。インシュレータ19には電磁石27が鋳込まれるように形成されるが、本図では形状がよくわかるようにインシュレータ19と電磁石27を別々に図示している。実際には合成樹脂の一体成形によりインシュレータ19を製造する際に電磁石27の大部分を鋳込むようにして製造する。インシュレータ19の吸気ポート14側の端部19aにはリードバルブ21を取り付けるための取付面19bが形成される。取付面19bはシリンダブロックへの位置決めのため段差状に吸気ポート14側に突出するもので、吸気ポート14の内側の形状に沿って、リードバルブ21よりもやや大きくなるようなサイズに設けられる。取付面19bの上側にはねじ24を固定するための2つのねじ穴19cが形成され、ねじ穴19cの内周には雌ねじが形成される。
【0031】
電磁石27は、鉄心25(25a〜25c)とコイル26により形成される。鉄心25は、2つの磁極片25b、25cと、これらを接続するU字状部分25aにより構成される。コイル26はU字状部分25aの中央付近(U字の底辺部)に巻かれるものであって、コイル26に通電することのより鉄心25に所定方向の磁束が発生させることができ、その結果、磁極片25bをN極に、磁極片25cをS極に帯磁させることができる。磁極片25b、25cは、その形状が弓形に湾曲した半円筒形であり、向かい合う磁極片25b、25cはお互いの凹部が向かい合うように、吸気通路20の軸線に対して対称となるように配置される。このように磁極片25b、25cは、非接触となるように所定の間隔を有して配置され、U字状部分25aに溶接等によって固定される。磁極片25b、25cは電磁石27がインシュレータ19に鋳込まれた際にも外部に露出するように配置され、本実施例では磁極片25b、25c部分は吸気通路20の内部に位置するように設けられる。本実施例では、磁極片25b、25cの外径は吸気通路20の内径と同じに形成される。尚、図4では図示していないがコイル26からは直流電流を流すための2本のリード線が引き出される。
【0032】
取付面19bにはリードバルブ21とストッパ23が2本のねじ24によって共に固定される。ストッパ23は、例えばステンレス板等の薄板を曲げて構成した部品であって、本実施例では折り目23aを形成することにより、リードバルブ21が弾性変形した際の最大角θ(図2参照)を決定する。ストッパ23は、リードバルブ21の所定量以上の弾性変形防止という役割から、リードバルブ21の接触によって変形しないように十分な強度を持つように構成するのが望ましい。
【0033】
図5は、インシュレータ19の吸気ポート14側から見た側面図であって、インシュレータ組立体からストッパ23とリードバルブ21を取り外した状態を示す図でもある。本実施例のインシュレータ19は、内部に電磁石27が鋳込まれている点を除けば、サイズ的には従来のインシュレータと同じサイズである。従って、従来のインシュレータと本実施例におけるインシュレータ19を置き換えることによって本発明を容易に実現することができる。尚、本明細書でのインシュレータ19の図では、インシュレータ19をシリンダブロック8に取り付けるためのねじを貫通させるねじ穴を図示していないが、必要に応じて2〜4本のねじ穴が設けられる。
【0034】
図6は図5のC−C部の端面図である。この図からインシュレータ19の吸気通路20の内径と、鉄心25の磁極片25b(25c)との大きさの関係が理解できるであろう。また、磁極片25b(25c)の吸気ポート14側の端部は、インシュレータ19の取付面19bと同一になるように配置されるので、リードバルブ21が閉じたときに磁極片25b、25cと良好に当接することが理解できるであろう。尚、吸気通路20の内部に磁極片25b、25cを設けたことにより吸気用の通路断面積が減少する。その場合は、吸気通路内に磁極片を設けない従来のインシュレータに対して、吸気通路20の内径をわずかに大きく構成すれば良い。磁極片25b、25cを固定する鉄心25のU字状部分25aの大部分はインシュレータ19内に鋳込まれることになる。またU字状部分25aに巻かれるコイル26の全部はインシュレータ19内に鋳込まれるので、オイル等で汚れたり振動によって断線したりすることを防止できる。
【0035】
図7はインシュレータ19の底面図であって、図5の矢印D方向から見た図である。本図から理解できるように、鉄心25及びコイル26はインシュレータ19の吸気ポート14に近い端部に設けられる。コイル26からは、コイル26に直流電流を供給するための2本の電源線26a、26bが設けられる。コイル26に電流を流して鉄心25の磁極片25b、25cに磁界を発生させると、磁極片25bがN極に、磁極片25cがS極に帯磁する。この状態を示すのが図8であり、帯磁することによりリードバルブ21を強力に吸着する吸着面が図8の斜線で示す部分(25b、25c)である。ここで、2つのねじ穴19cにおけるねじ固定に加えて斜線で示すようなほぼ円筒形の部分(この直径は吸気通路の外径と等しい)にて安定して保持される。
【0036】
図9は、図1のインシュレータ組立体の電磁石27を帯びた時の状態を示す底面図(図8のE方向から見た図)であって、磁極片25b(N極)から磁極片25c(S極)への磁力線40を示す図である。図9に示すように、磁極片25b(N極)から磁極片25c(S極)に向かう磁力線が、磁性体からなるリードバルブ21により導かれて閉路状態となる。そのため、リードバルブ21がインシュレータ19側に強力に吸着され、リードバルブ21が吸気通路20を閉じた状態で確実に保持される。電磁石27に供給される直流電流が少ない場合であっても、その吸着力は十分強力であるため、吸気ポート14側が大きく負圧になってもリードバルブ21が開状態となることはない。図10は、インシュレータ組立体の鉄心25がリードバルブ21と吸着した際の磁力線の流れを示す図である。リードバルブ21がインシュレータ19側に吸着されると、磁力線40は磁性体からなるリードバルブ21を介して磁極片25b(N極)から磁極片25c(S極)に向かう。従って、電磁石27のコイル26への電流の供給を停止しない限りクランク室の負圧によってリードバルブ21の自由端側がインシュレータ19の取付面19bから離れて開状態になることはない。
【0037】
図11はインシュレータ組立体のリードバルブ21が最大開口してストッパ23にと当接している状態を示す側面図である。通常、リードバルブ21はピストン16が上昇してクランク室内と吸気通路20内の圧力差が所定値を越える(クランク室内が負圧になる)と吸気ポート14側に弾性変形して吸気通路20を開く。この際のリードバルブ21の可動角度はθである。また、リードバルブ21が変形していない状態では、リードバルブ21は吸気通路20の吸気ポート側の端部を覆って吸気通路20を閉鎖することにより、クランクケース17圧縮時の燃料の吸気通路20への吹き返しを防止する。本実施例では図9で示したようにリードバルブ21が閉じている状態において、磁極片25b、25cに接した状態となることから、コイル26に電流を流すことによって図10に示した磁力線40はリードバルブ21を介して閉ループを形成し、リードバルブ21を強制的に保持することができ、クランク室内と吸気通路20内の圧力差が大きくなっても、吸気通路20を閉鎖することが可能となる。この結果、シリンダボア11側へ混合気を流入させたくない場合に、演算部36からバルブ駆動部35への電気的指示を出すだけで、確実に流入を防止することが可能となる。
【0038】
図12は本発明の実施例に係るエンジン1の制御ブロック図である。エンジン1に用いられる制御装置(制御手段)28は、エンジン1の回転数を検出する回転数検出部(運転状態検出手段)29と、エンジン1のクランク軸6の位置(クランク角あるいはピストン位置)を検出するクランク位置検出部(運転状態検出手段)30と、ハンドル1004に設けられたスロットルレバー31の位置を検出するスロットル位置検出部(運転状態検出手段、アイドリング状態検出手段、スロットル操作状態検出手段)32と、ハンドル1004に設けられたエンジン1を停止させるストップスイッチ33の位置を検出するストップスイッチ位置検出部(運転状態検出手段)34と、コイル26への通電を行うバルブ駆動部35と、演算部36を含んで構成される。
【0039】
回転数検出部29は、イグニッションコイルからの信号を検出してエンジン1の回転数を検出し、演算部36に回転数信号を出力する。クランク位置検出部30は電源回路37に接続され、電源回路37に電力を供給する充電用コイル38にマグネトロータ7のマグネット39が通過時に発生する電圧パルスを利用して、クランク軸6が所定の位置、例えば、上死点位置あるいは上死点手前の所定角度にある位置を検出し、クランク軸6が所定位置を通過した場合にクランク軸6の所定位置を示すクランク位置信号を演算部36に出力する。なお、クランク位置信号は、充電用コイル38を利用する代わりに、イグニッションコイルに発生する電圧パルスを利用してクランク軸6の位置を検出する構成でも良い。また、スロットル位置検出部32は、スロットルレバー31が操作されているか否かを検出してスロットル位置信号を演算部36に出力し、ストップスイッチ位置検出部34は、ストップスイッチ33が作動(エンジン停止)しているか否かを検出しストップスイッチ信号を演算部36に出力する。そして、演算部36には、回転数検出部29と、クランク位置検出部30と、スロットル位置検出部32と、ストップスイッチ位置検出部34から出力された信号が入力され、バルブ駆動部35にバルブを駆動する、つまり、コイル26に通電して電磁石27を作動させる信号をバルブ駆動部35に出力する。
【0040】
制御装置28は、スロットル位置検出部32がスロットルレバー31の操作されていない状態(スロットルが閉じている状態)を検出し、回転数検出部29がエンジン1の回転数がアイドリング回転数以下、例えば3000rpm以下であることを検出した場合には、図13に示すように、バルブ駆動部35を駆動しない。つまり、この状態においては、ピストンの上下動に伴う吸気開口15の開閉(図の上段)に対して、バルブ駆動部35が作動することは無く、リードバルブ21が吸気通路20を塞いだ状態に保持されることはない。
【0041】
この状態からエンジン1の回転数が上昇し、回転数検出部29によりアイドリング回転数より高い第1の回転数、例えば3500rpmを超える回転数を検出した場合、つまり、スロットル位置検出部32がスロットルレバー31の操作されていない状態(スロットルが閉じている状態)を検出し、回転数検出部29が第1回転数を超える回転数を検出した場合には、制御装置28はクランク位置検出部30のクランク位置信号と回転数検出部29のエンジン回転数信号に基づいて、吸気開口15の開くタイミングに合わせて、吸気開口15の開く回数に対する、吸気開口15が開いている間に吸気通路20を閉じる回数が1/2の所定値となるよう、バルブ駆動部35を図14に示すように駆動する。したがって、この状態においては、ピストンの上下動に伴う吸気開口15の開閉回数の1/2において、バルブ駆動部35の作動により吸気開口15の開口中にリードバルブ21が吸気通路20を塞いだ状態に保持される。なお、バルブ駆動部35を吸気開口15の開くタイミングより早めに作動させることで、リードバルブ21が吸気通路20を閉鎖した状態(リードバルブ21が変形していない状態)の間に通電してリードバルブ21を電磁石27に吸引することが好ましい。尚、リードバルブ21の開いている角度θが小さい状態であれば、電磁石27を通電させることで磁極片25b、25cから発生する磁束により、リードバルブ21を引きつけて吸着することも可能である。
【0042】
さらにエンジン1の回転数が上昇し、回転数検出部29により第1の回転数より高い第2の回転数、例えば3600rpmを超える回転数を検出した場合、つまり、スロットル位置検出部32がスロットルレバー31の操作されていない状態(スロットルが閉じている状態)を検出し、回転数検出部29が第2の回転数を超える回転数を検出した場合には、制御装置28はクランク位置検出部30のクランク位置信号と回転数検出部29のエンジン回転数信号に基づいて、吸気開口15の開くタイミングに合わせて、吸気開口の開く回数に対する、吸気開口が開いている間に吸気通路を閉じる回数が3/4の別の所定値となる(所定値を1/2から3/4に変更する)よう、バルブ駆動部35を図15に示すように駆動する。したがって、この状態においては、ピストンの上下動に伴う吸気開口15の開閉回数の3/4において、バルブ駆動部35の作動により吸気開口15の開口中にリードバルブ21が吸気通路20を塞いだ状態に保持される。なお、この場合においても、バルブ駆動部35を吸気開口15の開くタイミングより早めに作動させることで、リードバルブ21が吸気通路20を閉鎖した状態(リードバルブ21が変形していない状態)の間に通電してリードバルブ21を電磁石27に吸引することが好ましい。
【0043】
また、制御装置28は、スロットル位置検出部32がスロットルレバー31の操作されている状態を検出し、回転数検出部29が第3の回転数以下、例えば8000rpm以下であることを検出した場合には、図13に示すように、バルブ駆動部35を駆動しない。つまり、この状態においては、ピストンの上下動に伴う吸気開口15の開閉(図の上段)に対して、バルブ駆動部35が作動することは無く、リードバルブ21が吸気通路20を塞いだ状態に保持されることはない。この状態からエンジン1の回転数が上昇し、回転数検出部29により第3の回転数より高い第4の回転数、例えば9000rpmを超える回転数を検出した場合、つまり、回転数検出部29が第4回転数を超える回転数を検出した場合には、制御装置28はクランク位置検出部30のクランク位置信号と回転数検出部29のエンジン回転数信号に基づいて、吸気開口15の開くタイミングに合わせて、吸気開口15の開く回数に対する、吸気開口15が開いている間に吸気通路20を閉じる回数が1/2の所定値となるよう、バルブ駆動部35を図14に示すように駆動する。したがって、この状態においては、ピストンの上下動に伴う吸気開口15の開閉回数の1/2において、バルブ駆動部35の作動により吸気開口15の開口中にリードバルブ21が吸気通路20を塞いだ状態に保持される。なお、バルブ駆動部35を吸気開口15の開くタイミングより早めに作動させることで、リードバルブ21が吸気通路20を閉鎖した状態(リードバルブ21が変形していない状態)の間に通電してリードバルブ21を電磁石27に吸引することが好ましい。
【0044】
さらにエンジン1の回転数が上昇し、回転数検出部29により第4の回転数より高い第5の回転数、例えば9100rpmを超える回転数を検出した場合、つまり、回転数検出部29が第2の回転数を超える回転数を検出した場合には、制御装置28はクランク位置検出部30のクランク位置信号と回転数検出部29のエンジン回転数信号に基づいて、吸気開口15の開くタイミングに合わせて、吸気開口の開く回数に対する、吸気開口が開いている間に吸気通路を閉じる回数が3/4の別の所定値となる(所定値を1/2から3/4に変更する)よう、バルブ駆動部35を図15に示すように駆動する。したがって、この状態においては、ピストンの上下動に伴う吸気開口15の開閉回数の3/4において、バルブ駆動部35の作動により吸気開口15の開口中にリードバルブ21が吸気通路20を塞いだ状態に保持される。なお、この場合においても、バルブ駆動部35を吸気開口15の開くタイミングより早めに作動させることで、リードバルブ21が吸気通路20を閉鎖した状態(リードバルブ21が変形していない状態)の間に通電してリードバルブ21を電磁石27に吸引することが好ましい。
【0045】
さらに、制御装置28は、ストップスイッチ位置検出部34がストップスイッチ33の作動状態(エンジン1を停止させる状態)を検出し、回転数検出部29がエンジン1の回転している状態を検出すると、ピストンの上下動に伴う吸気開口15の開閉回数の全てにおいて、吸気開口15の開くタイミングに合わせて、吸気開口15が開いている間に吸気通路20が常に閉じるように、バルブ駆動部35を駆動する。なお、エンジン1の回転を検出せずに、単にストップスイッチ位置検出部34がストップスイッチ33の作動を検出した場合に、吸気開口15の開くタイミングに合わせて、吸気開口15が開いている間に吸気通路20が常に閉じるように例えば所定時間バルブ駆動部35を駆動するような構成としても良い。
【0046】
このように構成されたエンジン1によれば、アイドリング時にエンジン1の回転数が上昇した場合には、例えば3500rpmを超えた場合には、制御装置28は、まず吸気開口15の開閉回数の1/2において、バルブ駆動部35の作動により吸気開口15の開口中にリードバルブ21が吸気通路20を塞いだ状態に保持する。これにより、クランク室への混合気の供給を制限してエンジン1の回転数の上昇を抑え、アイドリング回転数3000rpmを保持するように制御することができる。そして、エンジン1の回転数が3500rpmを越えた場合には、吸気開口15の開閉回数の3/4において、バルブ駆動部35の作動により吸気開口15の開口中にリードバルブ21が吸気通路20を塞いだ状態に保持する。これにより、クランク室への混合気の供給をより制限してエンジン1の回転数の上昇をより抑え、アイドリング回転数3000rpmを保持するようにより効果的に制御することが可能になる。したがって、エンジン1のアイドリング状態を確実に維持することが可能となるうえ、始動直後に、アイドルアップ等の始動補助機構の動作により、アイドリング回転数が過度に上昇して遠心クラッチが繋がってしまうことを抑制することも可能となる。
【0047】
さらに、アイドリング回転時にエンジン1の回転数が上昇した場合には、制御装置28により段階的に、つまり、回転数に応じて強くなるように、クランク室への混合気の供給が制限されるので、エンジン1の駆動状態が急激に変化することが無く、作業者に違和感を与えることを抑制して操作性を向上させることもできる。また、アイドリング回転数上昇時には混合気の供給が抑えられるので、未燃焼ガスの排出を抑えることが可能となり低排出ガス特性を実現できるうえ、燃料消費の低減も可能となる。
【0048】
また、スロットルレバー31の操作中にエンジン1の回転数が過度に上昇した場合には、例えば9000rpmを超えた場合には、制御装置28は、まず吸気開口15の開閉回数の1/2において、バルブ駆動部35の作動により吸気開口15の開口中にリードバルブ21が吸気通路20を塞いだ状態に保持する。これにより、クランク室への混合気の供給を制限してエンジン1の回転数の過度な上昇を抑え、エンジン1の回転数が9000rpm以下になるよう制御することができる。
【0049】
そして、エンジン1の回転数が9500rpmを越えた場合には、吸気開口15の開閉回数の3/4において、バルブ駆動部35の作動により吸気開口15の開口中にリードバルブ21が吸気通路20を塞いだ状態に保持する。これにより、クランク室への混合気の供給をより制限してエンジン1の回転数の過度な上昇をより抑え、実用上限回転数9000rpmを保持するようにより効果的に制御することが可能になる。したがって、エンジン1の過回転を確実に抑制することが可能となる。
【0050】
尚、リードバルブ21は吸気開口15の開口中に常に吸気通路20を塞いだ状態に保持されることが無く、吸気開口15の開閉回数に対して少なくとも数分の1、例えば1/4はリードバルブ21が開いてクランク室内に混合気が供給されるようにした。したがって、クランク室内部に潤滑油が含まれる混合気を供給してクランク室内部の潤滑を行うことが可能となり、エンジン1の焼き付き等を抑制することが可能となる。また、エンジン回転時には混合気の供給が抑えられるものの、点火プラグ10による点火は毎回行われるので、未燃焼ガスの排出を抑えることが可能となり低排出ガス特性を実現できるうえ、燃料消費の低減も可能となる。
【0051】
さらに、ストップスイッチ33が作動しているにもかかわらず、エンジンが回転している場合には、ピストンの上下動に伴う吸気開口15の開閉回数の全てにおいて、吸気開口15の開くタイミングに合わせて、吸気開口15が開いている間に吸気通路20がリードバルブ21により常に閉じられる。したがって、エンジン1への余分な混合気の供給を止めて有害な排ガス成分の排出を抑制することが可能となるうえ燃料消費の低減も可能となり、ランオンやアフターファイアを効果的に防止することが可能となる。
【0052】
以上、本実施例によれば、電磁石27を用いてリードバルブ21を任意のタイミングで閉状態とすることができるので、エンジン1の意図しない回転数増大やランオンやアフターファイアを効果的に防止することが可能となる。しかも、インシュレータ19の外側に駆動機構を設ける必要が無く、インシュレータ19やエンジン1の周囲に装置を設置するための大きなスペースを要さず、組立ても単純で製品のコストを抑制することができる。また、クランク室が正圧の場合にはリードバルブ21は吸気通路20を閉鎖する状態にあるが、このリードバルブ21が閉状態時に電磁石27に通電しているので、電磁石27から離れたリードバルブ21を引き寄せる必要がなく、リードバルブ21と磁極片25b、25cとのギャップがゼロとなる閉状態時を維持するための力を発生させるだけで良いため、消費電力を一層抑えることもできるとともに、電磁石27を小型化することが可能となる。また、エンジン1は2サイクルエンジンであるため、吸排気バルブ等を備えず構成が簡素なまま、開閉タイミングを制御することができる。
【実施例2】
【0053】
図16は本発明の第2の実施例に係るエンジンのインシュレータ119の側面図である。第1の実施例においては、図5に示したように吸気通路120の内部に磁極片25b、25cが位置するように設けられた。しかしながら第2の実施例においては、図16に示すように磁極片125b、125cはインシュレータ119に鋳込まれるものの、その内周側壁面が吸気通路120の内壁面の一部となるように配置した。磁極片125b、125cは鉄心のU字状部分125aの先端部分に設けられており、外観上やコイル126の配置は、図4で示した電磁石27と同様の形状であるが、U字状部分125aは全体においてインシュレータ119の内部に鋳込まれるようにした。
【0054】
このように、インシュレータ119の吸気通路120の外側の一部を覆うように設けた円弧状の磁極片125b、125cが吸気通路120の内壁の一部を構成するので、コイル126に電流を流すことにより発生する熱が、U字状部分125aを介して磁極片125b、125cに伝わり、磁極片125b、125cから効果的に放熱することができる。尚、コイル126に電流を流すのはエンジン1が運転されているときであり、吸入空気が吸気通路120を十分流れるので、磁極片125b、125cの一部分からであっても十分な放熱効果を期待できる。
【0055】
以上、第2の実施例においては電磁石127を構成するほぼすべての部分がインシュレータ119の内部に鋳込まれるので、吸気通路120を通って吸気ポート14に流入する吸気に流れに悪影響を及ぼすことなく本発明を実現できる。また吸気通路120のサイズは従来のインシュレータと全く同一に構成することができ、吸気効率の低下の恐れもない。尚、第1の実施例と同様に、制御装置28にバルブ駆動部35を準備すれば、インシュレータ119を従来のエンジンのインシュレータと交換するだけで容易に本実施例を実現できる。
【実施例3】
【0056】
次に図17〜図20を用いて本発明の第3の実施例を説明する。第3の実施例においては、電磁石をインシュレータ219に鋳込むのではなく、成形した後のインシュレータ219に電磁石227(225a〜225c、226)を接着にて取り付けるようにした。そのためインシュレータ219の吸気ポート14側の出口付近に段差状に形成された窪み219dを形成し、この窪み219d部分に電磁石227を接着によって固定することにした。電磁石227は、インシュレータ219の吸気ポート14側に設けられるリードバルブ21と窪み219dの段差状の部分によって軸方向に挟まれることになるので、インシュレータ219から脱落することなく安定して保持される。尚、電磁石227のインシュレータ219への固定方法は、接着だけに限られずにねじ止めやその他の公知の方法によっても良い。電磁石227のコイル226から伸びる2本の電源線226a、226bは、インシュレータ219に形成される貫通溝を介して引き出すようにしても良い。
【0057】
図18は、インシュレータ組立体を吸気ポート14側から見た側面図である。インシュレータ219は吸気の流れと垂直な断面形状が略長方形であり、ほぼ中央付近に円形の吸気通路220が形成される。インシュレータ219の段差状になった動作面219bには、リードバルブ21が設けられる。リードバルブ21は第1の実施例と同じ部材を用いることができ、吸気通路220の直径よりも十分大きく構成される。リードバルブ21は、ストッパ23と共に2本のねじ24によってインシュレータ219に固定される。
【0058】
電磁石227の基本的な構成は第1及び第2の実施例で示した電磁石とほぼ同様であって、鉄心225(225a〜225c)にコイル226が取り付けられて構成される点も同じである。しかしながら、電磁石227の鉄心225の形状や、インシュレータ219への取付位置が異なる。図19は、図18の状態から2本のねじ24を取り外して、ストッパ23とリードバルブ21を取り外した状態を示す図である。ここで電磁石227の2つの磁極片225b、225cと、それらを接続するE字状部分225a、E字状部分225aの中央の突起部分に巻回されるコイル226が吸気通路220の内部に露出するように配置される。
【0059】
図20は図18のG−G部の端面図である。この図によって鉄心225の形状が明らかになるであろう。鉄心225は、図18の断面位置で見るとリードバルブ21側に磁気ギャップがくるように略E字状の断面形状を有し、真ん中の突出部分の周囲にコイル226が配置される。コイル226の所定方向に電流を流すことによって、円弧状に形成された磁極片225bがN極に、磁極片225cと反対方向に湾曲する円弧状の磁極片225cがS極に帯磁する。ここで、磁極片225bと磁極片225cによる円形外輪の外径は、吸気通路220の内径よりも小さくなるように形成し、磁極片225cの下側に所定の空間220bを確保できるように構成される。
【0060】
以上、第3の実施例では鉄心225の磁極片となる部分は、吸気通路220の内部に設けられ、その形状が向かい合う円弧状の形状となり、一方がN極で他方がS極となるのでコイル226に電流を流すだけで強力な磁界を発生させることができ、金属製のリードバルブ21を強力に吸着させることができる。
【実施例4】
【0061】
次に図21を用いて本発明の第4の実施例を説明する。図21はインシュレータ組立体の縦断面図である。第4の実施例では第3の実施例と同一の電磁石227を用いる。しかしながら、インシュレータ319の形状を一部変更し、吸気通路320の内径を、流入側(気化器4側)から空間320aのように徐々に径を絞り、電磁石227の下部においては小さな空間320bになるようにした。このようにインシュレータ319の吸気通路の中央付近に傾斜部319eを構成することによって、電磁石227の吸気の風上側(気化器4が配置される側)がすべてインシュレータ319の傾斜部319eにより覆われ、鉄心225の回りを巻回されるコイル226は、インシュレータ319の内部に埋め込まれるように配置されることになる。この結果、電磁石227による流入抵抗を抑制しながら、吸気通路320の中央側でリードバルブ21を強力に吸着させることが可能となる。また、電磁石227のコイル部分をオイルとガソリンを含む混合気に直接晒されることを防止できるので、電磁石227部分にゴミやほこりが堆積することを効果的に防止できる。また、上述のエンジン1を駆動源として搭載した刈払機(エンジン作業機)とすることで、小型で軽量な構成としながら、未燃焼ガスの排出を抑制した燃焼効率の良いエンジン作業機を提供することができる。
【0062】
以上、本発明を実施例に基づいて説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。例えば、本発明のでは、電磁石27とリードバルブ21は吸気通路20に設けられる構成としたが、2サイクルエンジンであれば、これを掃気通路に設けてもよい。このようにすれば、掃気工程において、クランクケース17から燃焼室内への混合気の流れを直接的に制御することが可能となる。尚、掃気通路においては、クランクケースとシリンダブロックの接合部に設けることが好ましい。またこの場合、バルブ駆動部35を掃気開口の開くタイミングより早めに作動させることで、リードバルブ21が掃気通路を閉鎖した状態(リードバルブ21が変形していない状態)の間に通電してリードバルブ21を電磁石27に吸引することが好ましい。また、本実施例では2サイクルエンジンに本発明を適用したが、4サイクルエンジンに適用しても良い。さらに、上述のエンジン1は刈払機の他にも、チェンソー、ブロワ、ヘッジトリマ等のエンジン作業機に広く搭載されても良い。
【符号の説明】
【0063】
1 エンジン 2 エンジンカバー 3 燃料タンク
4 気化器 5 マフラー 6 クランク軸
7 マグネトロータ 8 シリンダブロック 9 イグニッションコイル
10 点火プラグ 11 シリンダボア 12 排気ポート
13 排気開口 14 吸気ポート 15 吸気開口
16 ピストン 17 クランクケース 18 コンロッド
19 インシュレータ 19a 端部 19b 取付面
19c ねじ穴 20 吸気通路 21 リードバルブ
23 ストッパ 23a 折り目 24 ねじ
25 鉄心 25a U字状部分 25b 磁極片
25c 磁極片 26 コイル 26a、26b 電源線
27 電磁石 28 制御装置 29 回転数検出部
30 クランク位置検出部 31 スロットルレバー
32 スロットル位置検出部 33 ストップスイッチ
34 ストップスイッチ位置検出部 35 バルブ駆動部
36 演算部 37 電源回路 38 充電用コイル
39 マグネット 40 磁力線 119 インシュレータ
119b 取付面 119c ねじ穴 120 吸気通路
125a U字状部分 125b、125c 磁極片 126 コイル
127 電磁石 219 インシュレータ 219b 動作面
219d 窪み 220 吸気通路 220b 空間
225 鉄心 225a E字状部分
225b、225c 磁極片 225c 磁極片
226 コイル 226a、226b 電源線
227 電磁石 319 インシュレータ 319e 傾斜部
320 吸気通路 320a、320b 空間
1001 刈払機 1002 エンジンカバー 1003 回転刃
1004 ハンドル 1005 操作桿


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ内に燃料と空気の混合気を供給する気化器と、
ピストンが往復運動可能なシリンダブロックと、
クランク室が形成されたクランクケースと、
を有するエンジンであって、
混合気の通過する混合気通路に設けられ、磁性材料からなるリードバルブと、
前記リードバルブに対向する少なくとも2つの磁極片を有する鉄心と、前記鉄心の一部に巻かれたコイルを有する電磁石と、
前記電磁石を制御する制御部を備えた、
ことを特徴とするエンジン。
【請求項2】
前記2つの磁極片は、前記混合気通路の内部または前記混合気通路の一部と接する部分に配置した、ことを特徴とする請求項1に記載のエンジン。
【請求項3】
前記2つの磁極片の前記リードバルブと接する面は円弧状に形成され、互いの凹部が前記混合気通路の軸線に対して対称となるように配置され、
前記2つの磁極片は前記コイルが巻かれたU字状の鉄心にて接続されることを特徴とする請求項2に記載のエンジン。
【請求項4】
前記気化器と前記シリンダブロックとの間に吸気ポートと前記気化器とを連通する通路を有するインシュレータを更に備え、
前記U字状の鉄心及び前記コイルは、前記インシュレータ内に埋め込まれることを特徴とする請求項3に記載のエンジン。
【請求項5】
前記2つの磁極片及び前記コイルは、前記混合気通路の内部に配置されることを特徴とする請求項3に記載のエンジン。
【請求項6】
前記制御部は、前記リードバルブが変形するべきタイミングにおいて前記電磁石に給電することにより前記リードバルブを閉鎖状態に維持させることを特徴とする請求項1に記載のエンジン。
【請求項7】
前記制御部は、前記エンジンの回転数が目標回転数よりも高くなった場合に、前記電磁石に給電することにより前記混合気通路が開いている間に前記リードバルブを閉鎖状態に保つ回数が所定割合となるように制御することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のエンジン。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の前記エンジンを備えたことを特徴とするエンジン作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2013−24137(P2013−24137A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159806(P2011−159806)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(000005094)日立工機株式会社 (1,861)
【Fターム(参考)】