説明

オリーブポリフェノール濃縮物

オリーブオイル抽出物の副産物からオリーブポリフェノール濃縮物が得られるプロセスであって、(a)副産物を極性溶媒と混合して副産物/溶媒混合物を得て、(b)該混合物からポリフェノールを抽出してオリーブポリフェノール溶液と抽出固体とを得て、(c)膜分離法技術により該溶液を濃縮してオリーブポリフェノール濃縮物を収量するステップを含んでなり、存在するポリフェノールの濃縮物が少なくとも10wt%であり、さらに脱脂ステップが行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はオリーブポリフェノールに富んだオリーブ製品で、始めの材料がオリーブ油抽出工程の副産物から得る工程に関するものであり、特に液状および粉状のオリーブポリフェノール濃縮物を製造する工程に関するものである。
【背景技術】
【0002】
EUは世界中のオリーブ生産の約74%を生産しており、その内スペインは49%で総耕作面積が2150000Haである。世界のオリーブ生産は過去10年間に9〜15百万トンの間を変動しており、その内90〜95%がオリーブ油とアルペオルホ油の生産に使われている。
【0003】
オリーブ油の生産においては、オリーブ油工場やオリーブプレス機で発生される副産物の利用という大きな問題がある。3段階方式のオリーブ油抽出も「古い方法」として知られており、粉引き、打解、プレスおよび遠心分離の操作を含んでいる。オルホ50〜60%湿分およびアルペチンがプレス工程で得られる。2段階方式は「新方法」として知られており、粉引き、デカントおよび遠心分離の操作を含んでいる。この場合アルペオルホがデカント工程で得られる(60〜74wt%湿分)。
【0004】
最近異なる製品がオリーブから引き出されており、オリーブ粉(3〜6wt%湿分)が登場した。この製品は人間の消費用である。オリーブ粉については特許が取られている(英国特許出願第0314294.0号)。
【特許文献1】英国特許出願第0314294.0号
【0005】
これらの3種の副産物の乾燥組成は同じであり、ポリフェノール2〜4wt%、繊維50〜60wt%、油脂10〜20wt%、蛋白質10〜15wt%、炭水化物10〜15wt%およびミネラル3〜6wt%である。ポリフェノールがこれらの副産物から抽出され得るプロセスを開発するのが有利である。
【0006】
数種のオリーブ成分が人間の健康上重要な役割を示すことがよく認められている。これらの成分中でポリフェノールは非常に重要な部分である。それらはオリーブ油の安定性と知覚特性に深く関与している。しかも薬理学的な性質を具えたそれらは天然の抗酸化物であり、グラム陽性微生物を抑制する。
【0007】
オリーブ果物は1000gのサンプル当り80mgまでのポリフェノールを含有できる。これらのポリフェノールは純粋なオリーブ油の独特な芳香に深く関与している。総フェノール含有量とフェノール成分の分布とは栽培、成長場所および成熟程度などにより影響される。ポリフェノールの一例としてオレウロペインがある。オレウロペイン含有量はオリーブ果物が成熟するにしたがって低減するが、ジメチルオレウロペインと2.4−ジヒドロキシ・フェニルエタノールの含有量は増加する。
【0008】
セコイルドイド、オレウロペイン、ジメチルオレウロペインおよびリグストロサイドは主たるフェノールグルコサイドであり、ベルバコサイド(ヒドロキシチロソールのカフェ油脂ハモノシグルコサイド)はオリーブ果物から引き出される主たるヒドロキシナム酸である。オレウロペインのアグリコーンは2−(4−ジヒドロキシフェニル)−エタノール(ヒドロキシチロソール)を有したエレノール酸のエステルであり、リグストロサイドのアグリコーンは2−(4−ヒドロキシフェニル)−エタノール(チロソール)(図1)を具えたエレノール酸のエステルである。
【0009】
オレウロペインはオリーブ果物の苦さに深く関与する主要なフェノール成分である。しかもヒドロキシチロソール(3,4−DHPEA)およびチロソール(p−HPEA)などのフェニルアルコールやベルスコサイドおよびフェノール酸(ヒドロキシナミック、ヒドロキシゼンゾイック、ヒドロキシカフェイックおよびヒドロキシフェニル酢酸を含む)はオリーブ果物中で報告されている。
【0010】
オリーブの乳酸醗酵はオレウロペインおよびルテオリン7−グルコサイドのヒドロキシルチロソール、チロソールおよびルテオリンへの完全な加水分解を齎す。これはラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)株からのβグルコシダーゼおよびエステラーゼによって触媒作用される。
【0011】
ギリシャ、ポルトガル、イタリーおよびスペインテーブルオリーブのヒドロキシチロソールおよびヒドロキシチロソール誘導体(オレウロペイン、オレウロペインアグリコーン、ジメチル・オレウロペインおよびヒドロキシチロソール グルコサイド)の含有量はそれぞれ100〜430mg/Kgおよび3670〜5610mg/Kgの範囲にある。
【0012】
最近、Blekas他がカラマタおよびスパニッシュタイプオリーブ油に関して高レベルのヒドロキシチロソール(250〜760mg/Kg)を検出した(2002年)。イタリア栽培のオリーブ果物中のベルバスコサイドの含有量は160〜3200mg/Kgであるが、ルチンおよびルテオリン7−グルコサイド、2種の主オリーブ果物中のフラボノイドの濃度はそれぞれ110〜660および5〜600mg/Kgである。
【0013】
オリーブポリフェノールはオリーブ油の酸化安定性を高める役目を果たし、かつまた人間の健康にポジティブな効果を有することが発見されている。実験室内の研究ではヒドロキシチロソールが人間の低密度リポ蛋白質(LDL)酸化を抑制すること、遊離基を捕捉すること、小板状集合および人間neutrophyls(抗炎症性を示す)のleucotrieneの製造を抑制すること、細胞保護を与えることが示されている。またヒドロキシチロソールが実験では呼吸および腸における感染を引き起こすグラム陽性およびグラム陰性バクテリアに対して逆らって働くことが示されている。
【0014】
オリーブポリフェノールは極性溶媒に可溶である。それらは一般に単純な可溶化処理により抽出される。しかし最終抽出物中に存在するポリフェノール濃度は通常乾燥抽出物中の濃度の2〜3倍に過ぎない。何故かというと、それらは通常のフィルターを通過するオリーブ中に存在する他の化合物があるからである。それらの不純物は除去してフェノール分留を純粋化しなければならない。
【0015】
EP−A−1369407号には水性抽出物へのクロマトグラフィー分離処理を使ってオリーブ副産物から特定のポリフェノール、ヒドロキシチロソールを抽出する方法を開示している。該処理は、第1のイオン交換ステップと極性と分子サイズに基づいたポリマー吸収剤選択性を使った第2のステップとを、含んでいる。これにより単一のポリフェノールが分離されるが、これはポリフェノールが食品用に使用される場合には必要ではない。
【特許文献2】EP−A−1369407号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
この発明の目的はオリーブ油製造の副産物中に存在する全ての異なるポリフェノールを該副産物から集団として分離でき、しかも望ましくない不純物は除去できるプロセスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この発明が提供するプロセスにおいては、オリーブオイル抽出物の副産物からオリーブポリフェノール濃縮物が得られるものであって、(a)極性溶媒と副産物とを混合して副産物/溶媒混合物を形成するステップと、(b)該混合物からポリフェノールを抽出してオリーブポリフェノール溶液と抽出固体とを得るステップと、(c)膜分離技術によりオリーブポリフェノール溶液を濃縮して存在するポリフェノールの濃度が少なくとも10wt%のオリーブポリフェノール濃縮物を得るステップとを含んでなり、さらに脱脂ステップを含んだものである。
【0018】
「抽出物のオリーブの副産物」という用語はオリーブ油抽出3段階プロセスで得られるオルホおよび/またはアルペチン、オリーブ油抽出2段階方法で得られるアルペオルホ、オルホまたはアルペオルホから形成されるこれらの半固体または微粒子物質のどれかからの水性抽出物を言うものである。
【0019】
GB−A−0314294.0に開示されたオリーブ粉は適切な粒子状出発材料の一例である。このオリーブ粉は水性オリーブペーストを低温で乾燥および乾燥粉砕により処理することにより得られるものである。該水性ペーストは全てのオリーブ果物、オルホおよびアルペオルホから形成することができる。準備プロセスでは酵素処理の選択的な予備ステップを含んでいる。例えば該粉は少なくとも99wt%粒サイズが0.55mm未満であるという性質を具えている。
【特許文献3】GB−A−0314294.0
【0020】
3段階オリーブ油抽出で得られるオルホの収量はほぼ60〜75%であり、アルペチンの収量はほぼ30%である。平均して、オルホは基本的に水25%、油10.2%、炭水化物44.2%、全繊維13.5%、蛋白質3.7%、灰2.47%である。オルホ中のポリフェノールの含有量は0〜1%の間で変動し、アルペチンは一般にほぼ0.62%のポリフェノール平均含有量である。
【0021】
2段階オリーブ油抽出で得られるアルペオルホの収量は一般に70〜80%である。平均して、アルペオルホは基本的に水60.68%、油5.34%、炭水化物23.18%、全繊維7.08%、蛋白質1.94%、灰1.82%である。アルペオルホは通常0.4%までの全ポリフェノールを含有している。
【0022】
ある種のアルマサラ(almazara)はアルペオルホまたはオルホの製造中に核を除去する。湿ったアルペオルホまたはオルホから除かれた核の収量はオリーブの種類および使用された篩の直径により10〜20wt%の範囲で変動する。この発明に関しては除去された核は選択的である。
【0023】
この発明における最終製品のサンプル中のポリフェノールの含有量を測定するにはいくつかの方法が使用される。オリーブサンプル中のポリフェノールの総含有量を測定する最も一般的な方法はFolin−Ciocalteau法であり、その結果はwt%で表わされる(Singleton他、1999年)。その他にもポリフェノールを識別・定量する方法としては、HPLCシステムおよび重量分光計、LC−MS、UV検知に組み合わされたHPLC、超臨界流体抽出(SFE)、ダイオードアレイ分光学および重量分光学によるダブルオンライン検知を使用するHPLC(HPLC−DAS−MS)およびLC−NMRがある。
【0024】
この発明の第1のステップ(a)は副産物を極性溶媒と混合して、存在するポリフェノールを溶液中に行かせることである。使用される極性溶媒は好ましくは人間の消費のためにCodex−Alimentariusにより認可されたものである。より好ましくは溶媒は水、エタノールまたはそれらの混合物である。このステップの結果は副産物/溶媒混合物である。
【0025】
選択的にステップ(a)の後で、酵素非活性化ステップを含めることもできる。このステップを含めることにより、プロセス中にポリフェノールオキシダーゼ(PPO)酵素を非活性化または抑制するのである。PPOは好ましくない反応であるオリーブポリフェノールの重合に深く関与するもので、そのような酵素非活性化ステップはいくつかの方法をとることができる。
【0026】
酵素反応を抑制するひとつの方法は反応の本質的な成分のひとつを除去することである。ポリフェノールオキシダーゼにより触媒作用をされる反応は基質、酵素それ自身、酸素および銅の存在を必要とする。この発明の一実施例においては、プロセス中に酸素が除かれる。これを行うには真空処理または二酸化炭素または窒素などの異なる気体を使っての置換がある。
【0027】
酵素非活性化ステップの他の実施例においては、銅に対する親和性を具えたキレート剤の添加により銅を反応から除去する。適切なキレート剤としては、クエン酸、アスコルビン酸、EDTAがある。これらの処理剤はまた反応媒体のpHを低下させるので好ましい。
【0028】
さらなるPPO酵素の非活性化方法としては、加熱ステップを行うものである。この方法が採用された場合には、75〜100℃の温度範囲と5〜10分の時間範囲で漂白を行うのが好ましい。そのような加熱の採用により酵素が変性される。
【0029】
上記した実施例がポリフェノールオキシダーゼ酵素が非活性化または抑制される例に過ぎないことを当業者は理解するであろう。
【0030】
ステップ(a)に続いて、副産物/溶媒混合物は抽出ステップに掛けられて存在するポリフェノールが抽出される。数種の異なる副産物がステップ(a)に掛けられている場合には、ステップ(b)において結合または個別に処理できる。
【0031】
この発明の好ましき実施例においては、溶媒を添加して爾後液体と固体とを分離してオリーブポリフェノールは副産物/溶媒混合物から固体−液体抽出により抽出される。
【0032】
オリーブポリフェノールを抽出するには数種の溶媒を使用でき、好ましくはCodex Alimentariusの認可した人間の消費のためのものが使われる。好ましくは水、エタノールまたはそれらの混合物が使用される。
【0033】
副産物からポリフェノールを抽出するには、溶媒に対する低減ポリフェノールオキシダーゼ活性を具えた副産物の重量比は1/3〜1/30の範囲内にある。より具体的には副産物がアルペオルホまたはオルホである場合には、低減ポリフェノールオキシダーゼ活性/溶媒を具えた副産物との間の該重量比は好ましくは1/3〜1/30であり、例えば1/10である。ポリフェノールがオリーブ粉から抽出される場合には、低減ポリフェノールオキシダーゼ活性溶媒を具えた副産物との間の該重量比は好ましくは1/10〜1/30、例えば1/20である。
【0034】
プロセス中のポリフェノール重合化および酸化を回避するには、抽出温度は好ましくは85℃未満、例えば30〜70℃である。抽出にあっては、低減ポリフェノールオキシダーゼ活性を具えた副産物と溶媒との混合物は攪拌する必要がある。抽出ステップ(b)は食品産業用の適宜な装置内で起きる。例えばステンレス鋼からなる316L反応器またはステンレス鋼からなる304L反応器である。
【0035】
抽出ステップの時間の長さはプロセスの効率により変動する。単一ステップ抽出のための適切な時間は少なくとも2時間であり、例えば3〜5時間である。できることなら、複バッチ抽出を使って同じサンプルからポリフェノールを抽出するのがよい。例えば、サンプルは1ステップで抽出でき、爾後オリーブポリフェノール溶液と抽出された固体とはデカント(デカンターにより)または濾過により分離され、ついで所望の抽出の収量に応じて抽出された固体を使って作業を2または3回行う。消費された固体中の水分量は通常55〜70wt%である。産業用デカンターは市販されている(例えばWestfalia Separator Inc.またはAlfa Laval Inc.)。従来のデカンターを使って混合物から固体分留を除去でき、3000〜5000rpm(2000〜3000G)で動作する。
【0036】
低減ポリフェノールオキシダーゼ活性を具えた副産物のデカンター分離は0.1wt%、好ましくは3wt%、より好ましくは5wt%を越える総溶解固体を含んだ溶液を形成する。
【0037】
溶液中のポリフェノール含有量は総溶解固体の2〜15wt%であり、例えば7wt%である。該溶液は通常初期の副産物中に存在する他の可溶成分を含んでおり、それらもプロセス中で抽出される。可溶液体状中のオリーブポリフェノール溶液が抽出および固体分離プロセス後に得られる。
【0038】
抽出ステップ(b)もまたデカント前に選択的予備固体−液体分離ステップを含むことがあり、そこでは固体が除去されて液体が回収される。これを達成するには口径が10〜150μm、好ましくは0.2〜30μmの範囲のステンレス鋼、紙またはセルローズフィルタ−などにより濾過する。例えば適切なフィルターとしてはBachiller S.A(スペイン)製造のNutchaタイプのフィルターなどが挙げられる。
【0039】
デカントおよび/または濾過ステップ後に得られたオリーブポリフェノール溶液は通常、懸濁固体を含んでおり、その粒径は4μmで99vol%の分布である。これらの固体は懸濁はしているが溶解はしていない。それらは0.45μmより大きい。そのような固体は単純な濾過では除去できず、もし除去するなら、別の技術を用いる必要がある。
【0040】
オリーブポリフェノール溶液中に懸濁状で残った該固体を除去するには遠心分離またはミクロ濾過(MF)が使える。
【0041】
デカンタプロセスなどの遠心分離は2種の材料の分離に基づいており、その駆動メカニズムは2種の材料の比重の差からくるものであり、印加される力は角速度の変化からくるものである。ディスクタイプの遠心分離機は10000Gまで作用し、この技術により0.45μmより大きな全ての可溶性固体はオリーブポリフェノール溶液から除去できる。この種の遠心分離機はまた浄化機またはデスランガー(deslunger)として知られており、市販入手可能である(例えばWestfalia Separator Inc.またはAlfa Laval Inc.)。
【0042】
ミクロ濾過はクロスフロー分離プロセスおよび従来式のデッドエンド濾過として行える。好ましくはこの発明では、懸濁固体の粒径が0.05μmを越えバクテリアと油脂小球だけが通常拒否される物質であるクロスフロー原理を用いたミクロ濾過が採用される。
【0043】
ミクロ濾過は、大分子量で粒径が0.05〜10μmの懸濁またはコロイド粒子を分離するには、低圧を用いる。MF膜孔の直径は通常0.1〜10μmであり100〜860kPaの圧力で作動する。10000ドルトンを越える分子量の化合物は通常ミクロ濾過により分離される。ミクロ濾過ステップを含むことにより濾過プロセスの故に部分脱脂に至る。
【0044】
ミクロ濾過ステップに使える数種の膜がある。例えば金属膜が使える。これらの膜は安定な孔マトリックスを有しており、圧縮焼結される。好ましくは、膜は精密なバブルポイント制御、均一な透過性、均一な有孔性、高効率、二方向フローを有しており、かつ標準316Lステンレス鋼から形成されている。例えば、これらの種類の膜としてはMott corp(例えば316Lステンレス鋼、ニッケル、インコメル、ハステロイ、チタン)、Graver Technologies(例えばScepter)、Atech Innovations GmbHなどがある。
【0045】
ミクロ濾過にはセラミックの膜も使用できる。セラミック膜は筒状であってかつマルチチャンネル状である。支持材は通常純粋なa−Al23からなっている。多孔性膜層はa−Al23、TiO2またはZrO2から形成されている。これらの種類の膜は化学的に安定(有機溶媒を用いてPH0−14)であり、熱的に安定であり(>100℃蒸気により消毒)、機械的に安定であり、化学的に不活性である。例挙するとAtech Innovations GmbH、Pall Corporation(例えばMembralox)製などがある(いかなるサイズの膜が使われるか?)。
【0046】
ミクロ濾過にはポリマー膜も使用できる。これらの種類の膜は通常ポリプロピレン、ポリビニリデン、フッ化物、ポリテトラフルオロエチレンまたはポリアクリロニトリルから形成される。例挙するとKoch(例えばMFK−618、MFK−601)、Alfa Lavalおよび他製などがある。
【0047】
遠心分離やミクロ濾過ステップを行う効果は、オリーブポリフェノール溶液がさらなる純化が行われて好ましくない組成が除去される、ことにある。繊維や他の不溶性化合物はデカント/濾過および遠心分離/ミクロ濾過のプロセス中に除去される。実際にはオリーブポリフェノール溶液中に残っているポリフェノールや蛋白や炭水化物やミネラルや油脂などの全ての固体は可溶性の化合物である。
【0048】
ステップ(b)後のポリフェノールの含有量はオリーブポリフェノール溶液中の総溶解固体の5〜20wt%であり、例えば7wt%である。固体の可溶化と固体除去の後は、ポリフェノール濃度はほぼ2〜5倍に増加する。好ましくは、初期副産物出発材料中の乾燥抽出物に基づいて少なくとも3倍の増加である。
【0049】
ステップ(b)におけるポリフェノールの損失は、初期の副産物出発材料中の乾燥抽出物を基にして、15wt%を越えてはならず、好ましくは10wt%未満でなければならない。
【0050】
乾燥抽出物として表される副産物中のオイルの含有量は50wt%未満、好ましくは25wt%、例えば15wt%でなければならない。原材料中のオイルの含有量はオリーブオイル抽出プロセスにおいて制御される。初期の材料中に存在するオイルの全てがオリーブオイル抽出プロセスで除去された訳ではない。
【0051】
オリーブオイルは油脂である。したがって、抽出ステップ(b)で溶媒が使われた場合には、オリーブオイルはその極性の故に溶媒には溶解できない。前記したように、副産物はまだある種のオリーブオイルを含んでいる。オリーブオイルの融点は−10℃であり、したがって通常のプロセス温度では、液状である。極性溶媒中ではオリーブオイルはエマルジョンを形成しないので、プロセスから除去しなければならない。したがって、脱脂ステップはこの発明において必須である。脱脂ステップが含まれなければならないが、その含まれる段階は選択的である。一実施例においては、油脂はステップ(a)前に除かれる。油脂の除去は部分的または完全に行なわれる。
【0052】
脱脂ステップに用いられる適宜な方法としては溶媒抽出がある。副産物が粒状、例えばオリーブ粉の場合には、この技術は特に好ましい。
【0053】
ステップ(a)前に溶媒抽出プロセスを使ってオリーブ粉を脱脂できる。オリーブ粉は14〜20wt%のオリーブオイルを含んでいる。食品産業での使用に適したヘキサン、ジエチルエーテル、酢酸エチルまたは他の非極性溶媒などはオリーブオイルを抽出する溶媒として使用できる。ヘキサンが好ましい。
【0054】
他の一実施例においては、脱脂ステップはオリーブポリフェノール溶液についてステップ(c)の前にステップ(b)の最終段階として行われる。この場合には、オリーブポリフェノール溶液は短時間(つまり、2〜24時間)容器中で室温、好ましくは25℃未満の温度で貯蔵される。この期間油脂が分離して溶液の上面に上る。オリーブポリフェノール溶液は底に残っている。この分離は単純なデカント、例えば反応器下の弁を開いて容器中に残っている油脂から懸濁粒子を含んだ液体を分離することにより、簡単に達成できる。分離後、油脂は簡単に除去できてオリーブオイルを得る。
【0055】
これに代えて、オリーブポリフェノール溶液を容器中でオリーブオイルの融点より低い温度(<−10℃)で凍結させる。この操作は油脂分留が固体になるので、デカントプロセスにおける油脂分留の分離には好ましい。オリーブポリフェノール溶液を凍結するには、熱交換または直接ガス膨張(例えば窒素)が使える。このプロセスは低温分離として知られている。得られた他の分留は脱脂オリーブポリフェノール溶液である。
【0056】
ステップ(b)を行って得られたオリーブポリフェノール溶液は高比率の初期出発材料中に存在したポリフェノールを含んでいる。しかし該溶液は非常に希薄であり、したがって濃縮ステップ(c)を行うことが必要である。従来は真空蒸着またはクロマトグラフィー法が使われてきたが、膜分離技術を採用したのがこの発明の必須の特徴である。
【0057】
クロマトグラフィーカラムに代えて、膜技術を使用することにより、粒状ポリフェノールを抽出または純化するよりも存在するポリフェノールを濃縮する効果がある。つまり、オリーブポリフェノール濃縮物中に存在するポリフェノールは初期副産物出発材料中に存在するそれと本質的に同じである。勿論酵素処理ステップが行われると、分布は変化する。これにより、各ポリフェノールを個別に分離することなしに、ポリフェノールのファミリーとしての分離を促進する。
【0058】
好ましき実施例においては、超濾過(UF)プロセスがステップ(c)において採用されて、オリーブポリフェノールから最大の分子を分離する。超濾過は選択的分離ステップであり、大きな分子を除去することにより製品を濃縮・純化する。UFにおいては低圧で適切な膜を使用する。UF膜孔の直径は通常0.01〜0.1μmであり、480〜1380kPaの範囲内の圧力で作用する。分子量が10000を越える化合物は通常そのようなプロセスで分離される。塩、砂糖、有機酸およびより小さなペプチドは通過するが、蛋白質、油脂および多糖類は通されない。このシステムは50000ドルトンより大きな分子を分離できなければならない。
【0059】
いく種類かの異なる膜が使用に適している。UF膜は通常セラミック、セルロース、ポリスルホンおよびポリビニリデンフルオライドなどから形成されている。例えば、筒状、中空繊維、板および渦巻き状膜が市販されている。この種の膜を例挙するとKoch Inc.(例えばHFM−116/100、HFM−180/513、HFK−618))、Alfa Laval Inc、Inge AG Inc.(例えばDizzerシリーズ)製などがある。これらの膜は140〜690kPa(20〜100psi)の圧力で作用する。
【0060】
この発明において言及されたUFにおいては、実際に全てのポリフェノールが膜を通過し、少しの分留だけが残留物中に残る。残留物中のポリフェノールの損失は10wt%を越えてはならなく、好ましくは抽出されたオリーブポリフェノールの総溶解固体に基づいて5wt%を越えてはならない。選択的に残留物は抽出タンク戻されて、前記の作業に再び通される。副産物から抽出されたオリーブポリフェノールの分子量は100〜600ドルトンである。
【0061】
出発材料としてアルペチンを用いた場合には、超濾過法は成功しないという従来の知識にも拘わらず、アルペチンを極性溶媒と混合して(ステップa)かつポリフェノールを抽出する(ステップb)前のステップが採用された場合には、驚いたことに、超濾過ステップが成功するのである。理論に囚われなければ、除かないと膜を塞ぐであろうアルペチン中に存在する大きな懸濁固体の除去によるものと仮定される。またアルペチンが使用された副産物である場合には、ステップ(c)の前に脱脂ステップが導入されれば、超濾過ステップは成功するだろう。
【0062】
UF作業の後、オリーブポリフェノール透過物の総溶解固体中のポリフェノールの濃度は15wt%、好ましくは20wt%を越える、例えば35wt%にも至る。
【0063】
好ましくは、前のUF作業で得られたオリーブポリフェノール透過物はナノ濾過(NF)膜を通過して、溶液から溶解したミネラルを除去する。NFは逆浸透(RO)は秀れた分離プロセスではなく、選択性の若干少ない膜を使う。
【0064】
選択的に,RO用の膜も使える。分子のサイズと形状によっては、NFによれば、大きなイオンと無機成分は拒否するものの、小さなイオンが通過する。NF膜孔の直径は通常0.001〜0.1μmであり、膜は690〜4140kPaの圧力で使用される。1900ドルトンを越える分子量を有した化合物は通常分離され、かつ非常に薄いNF膜は100ドルトンを越える分子量の化合物を分離できる。この発明で使用されるNFは100ドルトンを越える分子量限界を有している。
【0065】
NF膜は通常薄いフィルム合成物やセルロース化合物から形成されている。NFに使える膜は例えば中空繊維や渦巻き膜である。この種の膜を例挙するとKoch Inc.(例えばTFC−RO、TFC−S、TFC−SR3、SelROシリーズ)、PCI Membrane System Inc.(例えばB1 module、C10 module、AFC99)、Alfa Laval Inc.製などがある。NFに用いられる膜は0.001〜0.01μmで作用する。この発明で言及するNFは2000〜4800kPa(300〜700psi)で作用する。
【0066】
この発明で言及されるNFにおいては、実際に全てのポリフェノールが残留物中に残留する。UF作業の後に得られた透過物の総溶解固体を基にして、透過物中のポリフェノールの損失は10wt%を越えてはならず、好ましくは5wt%未満でなければならない。
【0067】
NF作業の後、残留物の総溶解固体中のポリフェノールの濃度は20wt%に達し、好ましくは40wt%を越え、例えば65wt%である。
【0068】
NF作業において、水の顕著な部分は除かれる。爾後、残留物中の総溶解固体は初期のUF透過物中より高い。残留物中の総溶解固体は5wt%を越え、好ましくは10wt%を越え、例えば20wt%にも至る。
【0069】
一実施例においては、UFオリーブポリフェノール透過物とNFオリーブポリフェノール残留物またはこれらの混合物はさらなる真空濃縮に掛けられて、オリーブポリフェノール濃縮物を得る。この実施例においては、真空ドライヤーシステムを採用できる。オリーブポリフェノール濃縮物をさらに濃縮すべく、種々の工業用真空ドライヤー(例えば水平ドライヤーまたは垂直ドライヤー)が市販入手可能である。プロセス温度は70℃未満、好ましくは60℃未満、例えば40℃である。溶媒としての水を除く作業圧力は30kPa(300mbar)未満、好ましくは20kPa(200mbar)未満である。
【0070】
溶媒の除去後、総溶解固体が20wt%を越える、好ましくは総溶解固体の25wt%を超え、例えば総溶解固体の45および65wt%の製品が得られる。総オリーブポリフェノール含有量は使われた副産物によって決まる。好ましくは総ポリフェノール含有量は少なくとも10wt%である。
【0071】
最後のステップとして、最終応用目的に応じて、オリーブポリフェノール濃縮物を乾燥して固体、好ましくは粉を得るのが好ましい。乾燥後の最終水分量は6wt%未満、好ましくは3wt%未満、例えば1wt%でなければならない。
【0072】
一実施例においては、オリーブポリフェノール濃縮物はパン真空ドライヤーを用いて乾燥する。乾燥後、硬い塊が得られる。好ましくは、該塊を製粉前にすりつぶして、粉を作るために粒子サイズを低減する。製粉にはハンマーまたはナイフタイプの製粉機が使える。粉化にはハンマーミル、ピンミル、クラシフィケーター分離ミルまたはミルの組合せを採用して粉化を行う。最終粒サイズ分布は300μmで99vol%、好ましくは200μmで99vol%、100μmでは99vol%、例えば75μmで99vol%でなければならない。
【0073】
他の実施例においては、オリーブポリフェノール濃縮物がスプレードライヤーを用いて乾燥される。スプレー乾燥プロセスにおけるキャリアーとしては、いくつかの安定剤(例えばグアーガム)が使える。最終粉は10wt%未満、好ましくは3wt%未満、例えば1wt%の安定剤を含むべきである。
【0074】
選択的に、他の実施例においては、グルコシダーゼまたはエステラーゼ活性を具えた酵素を使って酵素処理ステップが行われる。この目的は存在するオレウロペインおよび/またはジメチルオレウロペインを加水分解して、主としてヒドロキシチロソール、チロソール、エレアノ酸およびグルコーゼを誘導体として得ることにある。オリーブポリフェノール誘導体は苦味が少ないので、よりよい抗酸化剤でありより容易に人間の身体に吸収されるからである。
【0075】
オレウロペインおよび/またはジメチルオレウロペイン加水分解は2種の酵素、β−グリコシドおよびエステラーゼを使って行われる。β−グリコシダーゼはグリコシダーゼ結合を破壊してグルコース分子を解放しアグリコン(図1中の結合b)を形成する。よく知られているが、グルコースを付着したポリフェノールに比べて、アグリコンポリフェノールは消化器内の身体により容易に吸収される。エステラーゼはエステル結合を破壊して、ヒドロキシチロソールおよびエレアノリン酸モノーテルペン(図1中の結合a)を解放する。エストラーゼ活性とグリコシダーゼ活性とが同時に起きるのが好ましい。
【0076】
この発明においては、分離したβ−グリコシダーゼとエステラーゼとを使用できる。好ましくは、微生物源から酵素が分離される。
【0077】
加えて、βーグリコシダーゼとエステラーゼを含む酵素の混合物または発酵によりポリフェノールを加水分解できる微生物が使用できる。分離した酵素は一般に改変された生物から得られる。Briante他(2000年)により使用された酵素が使用できる。酵素の混合物は菌または微生物源から得られる。例えばCandida molischianaおよびLactobacillus Plantarumである。直接の微生物を使う場合には、製品を発酵させる必要がある。適切な酵素は市販入手可能である(例えばDSMまたはNovozymes)。
【0078】
オリーブが熟すると、オレウロペイン含有量は低減しヒドロキシチロソールの含有量は増加する。したがって、副産物の早期の熟し段階の場合には、ポリフェノール含有物を加水分解する必要はない。
【0079】
副産物中のオリーブポリフェノールの加水分解はステップ(b)中またはステップ(b)の前にできる。選択的な酵素非活性化ステップが含まれる場合には、このステップの後で、ポリフェノール酸化酵素非活性化がすでに行われているように、グリコシダーゼおよびエステラーゼ活性を具えた酵素を副産物に加える必要がある。これによりグリコシダーゼおよびエステラーゼ活性を具えた酵素がステップ(a)においてまた活性化されないことを確実にできる。
【0080】
ステップ(c)の後で酵素処理ステップを行うこともできる。この場合には、オリーブポリフェノール濃縮物が加熱されて、最適温度に達するようになり、加水分解または発酵のために時間が保たれる。反応の条件、例えば温度、pHおよび濃度および時間を最適にして、適切なレベルの酵素反応を達成するようにする。通常、β−グリコシダーゼは35〜45℃、pH4〜6.5で最も活性である。熱安定酵素例えば組換えグリコシダーゼを使うこともでき、これは60〜70℃で最適の活性を有する。同様に、エステラーゼも使うことができ、生理学的な温度で活性であるか、熱的に安定であり、65℃までの「温度で活性である。
【0081】
加水分解後の加水分解オレウロペインおよび/またはジメチルオレウロペイン(セコロイド、secoroids)の含有量は一般に50wt%を越え、好ましくは70wt%を越えなければならず、例えば95wt%である。酵素処理ステップは20〜80℃、好ましくは35〜65℃、より好ましくは50〜60℃の範囲の温度で行われる。
【0082】
この発明のプロセスで得られたオリーブポリフェノール濃縮物は種々の用途があり、例えば多くの食品の成分として使える。オリーブポリフェノールは食品に強い苦味を付与する。加えて食品に抗酸化活性を与えて、酸化を低減して貯蔵期間を増加する。
【0083】
さらにオリーブポリフェノールは抗微生物性を有しており微生物の成長を防止し、これにより食品の貯蔵期間を増加することを示した。オリーブポリフェノール濃縮物はまた、健康的な性質の故に、多くの食品において機能的な性質を増加するサプリメントとして使用でき、かつピル、カプセルその他の製品の製造において栄養補助食品(nutraceuticals)として使用できる。
【実験例1】
【0084】
60%湿度と0.85%総ポリフェノールと0.1%ヒドロキシチロソールを含む1000Kgのアルペオルホを5000Kgの蒸留水と20m3 316Lステンレス鋼容器中で混合した。混合物を85℃に5分間加熱して(漂白)ポリフェノールオキシダーゼを非活性化した。漂白処理の直後、混合物を55℃で冷却した。β−グルコシダーゼ(21213mU/mLのβ−グルコシダーゼ活性)とエステラーゼを含む300gの市販酵素を添加し、混合物を3時間加水分解した。
【0085】
ついで混合物を75℃で加熱してポリフェノールを抽出した。抽出後、デカンターを使って固体を分離した。ついでディスク遠心分離機(Westfalia Separator Inc.)で純化して26g/Lの総固体を含んだオリーブポリフェノール抽出物を4540 l得た。Folin−Ciocalteau法で測定したらこの7wt%は総ポリフェノールであった。
【0086】
オリーブポリフェノール抽出物をついで非常に開いた超濾過に通して、高マクロ分子(HFM−116/100 Koch.30psi)を分離した。爾後4500 lの透過物が得られた。この透過物は910g/Lの固体を20wt%の総ポリフェノールとともに含んでいた。
【0087】
ついで、UFプロセスで得られた透過物をナノ濾過に通して透過物をさらに濃縮した(TFC−S Koch.400psi)。爾後160 lの残留物が得られた。これは100g/Lの固体を50wt%の総ポリフェノールとともに含んでいた。
【0088】
NF残留物を水平真空ドライヤー中で55℃、300mbarで濃縮した。乾燥後、35%の総溶解固体(TDS)を含んだ45 lの液状オリーブポリフェノール濃縮物が得られた。この50wt%は総ポリフェノール濃縮物であった。
【実験例2】
【0089】
GB314294.0の実験例2に記載されたプロセスによりアルペオルホからオリーブ粉を得た。特に、1000Kgのアルペオルホを予処理して微生物劣化を回避し、80kgのエタノールを添加して1080kgの安定化アルペオルホを得た。安定化アルペオルホの1080kgは65℃で15分間漂白して、PPOを非活性化した。漂白されたペースト状耐熱性のβ−グルコシダーゼを加水分解オレウロペインに3時間・60℃で添加した。加水分解の直後ペーストを55℃、10mmHg(1.3kg)で火中で乾燥した。乾燥は同時に2個の各500kg容量のGueduドライヤーで起きた。各バッチについて12時間であり、エネルギー消費は約1kw/kg湿ペーストであった。
【0090】
400kgの乾燥アルペオルホと680kgの濃縮物が回収された。0.500mm寸法より高い粒子を分離して400kgの乾燥アルペオルホをふるいにかけた。240kgのピットが分離され、160Kgの乾燥フレッシュが得られた。該フレッシュをピンミル中で−10℃未満の温度の低温冷却システムで粉化し、粒子の99%の寸法を0.075mm未満に低減した。
【0091】
5wt%の水分、3%総ポリフェノールおよび1%ヒドロキシチロソールを含むこのオリーブ粉1000Kgを10000Kgの溶媒(水:エタノール=1:1)で抽出した。混合物を75℃で加熱してポリフェノールを抽出した。
【0092】
抽出後、デカンターを使って固体が分離され9080 lの溶液が得られた。次にミクロ濾過膜(membralox Pall Corp.30psi)を用いて固体を浄化した。爾後9000 lのオリーブポリフェノール溶液が得られた。この溶液は25g/lの固体を含み、12.4%が総ポリフェノールであった。
【0093】
該溶液を非常に開いた超濾過に掛けて高分子(HFM−116/100 Koch.30psi )を分離した。爾後8.940リットルの透過物が得られた。この透過物は25wt%の総ポリフェノールの11.70g/Lの固体を含んでいた。
【0094】
次いで、UFプロセスで得られた透過物をナノ濾過に通して透過物を濃縮した(TFC−S Koch、400psi)。ナノ濾過プロセス後に290リットルの残留物が得られた。この残留物は150g/Lの固体を含み、その60wt%が総ポリフェノールであった。
【0095】
NF残留物を水平真空ドライヤー中で55℃・300mbarで濃縮した。乾燥後、40%の総溶解固体(TDS)を含んだ液状オリーブポリフェノール濃縮物130 lが得られ、その50wt%が総ポリフェノール濃縮物であった(ほぼ26kgのポリフェノール)。
【0096】
爾後5%のグアーガムをNF残留物に添加してスプレー乾燥した。3%水分と43wt%総ポリフェノールを有した粉化オリーブポリフェノール濃縮物が60Kg得られた。
【実験例3】
【0097】
Romero他(2000年)により開示された方法を用いて実験例2のプロセスにより得られたオリーブポリフェノール濃縮物を分析した。得られたクロマトグラムを図8に示す。この図はオリーブポリフェノールの典型的な分布を示している。ヒドロキシチロソール(6.981min)とチロソール(8.949min)が明らかに識別される。通常35minで現われるオレウロペインが存在しない。これは酵素処理ステップの採用とオレウロペインの成分の変態を示している。
【産業上の利用可能性】
【0098】
この発明はオリーブポリフェノール濃縮物を製造産業で広く応用できる。
【非特許文献1】GB 0314294.0 (Patent Application). Olive Powder.
【非特許文献2】Abstracts. 2003. First Polyphenol Conference on Health. 18 to 21 November, Vichy, France.
【非特許文献3】Amiot M., Fleuriet A., and Macheix . 1986. Importance and evolution of phenolic compounds in olive during growth and maturation. J. Agric. Food Chem. 34:823−826.
【非特許文献4】Angerosa F, d‘Alessandro N., Corana F. and Malleiro G. 1996. Characterization of phenolic and secoiridoid aglycons present in virgin oil by gas chromatography−chemical ionization mass spectrophotometry. J. Chromatog. 736: 195−203.
【非特許文献5】Bianco A. and Uccella N. 2000. Biophenolic compounds in olive. Food Res Int. 33: 475−485.
【非特許文献6】Blekas G., Vassilakis C, Harizanis C, Tsimidou M. and Boskou D. 2002. Biophenols in table olives. J. Agric. Food Chem. 50: 3688:3692
【非特許文献7】Briante R., Patumi M., Limongelli S., Febbraio F., Vaccaro C., Di Salle A., La Cara F. and Nucci R. 2002. Changes in phenolic and enzymatic activities content during fruit ripening in two Italian cultivars of Olea europea. Plant Science 162, 791 − 798.
【非特許文献8】Harwood J. and Aparicio R. 2000. Handbook of olive oil. Analysis and properties. Aspen publishers, Inc. Gaithersburg, Maryland.
【非特許文献9】Improlive Project. 2000. Improvements of treatments and validation of the liquid−solid waste from the two−phase olive oil extraction. Final report. FAIR CT96 1420.
【非特許文献10】Kiritsakis A. 1991. El aceite de oliva. Ed. A. Madrid. Spain.
【非特許文献11】Maestro−Duran R., Leon R. and Ruiz V. 1994. Phenolic compounds from olive (Olea europea). Grasas Aceites 45, 265−269.
【非特許文献12】Romero, Concepcion, Pedro Garcia, et al. 2002. Phenolic compounds in natural black Spanish olive varieties. Eur Food Res Technol 215:489−496.
【非特許文献13】Singleton V., Orthofer R. and Lamuela−Raventos R. 1999. Methods in Enzymology. Academic Press. 0076−6879199.
【非特許文献14】Visioli F., Romani A., Mulinnacci N., Zarini S., Conte D., Vincieri F. and Galli C. 1999. Antioxidant and other biological activities of olive mill waste water. J. Agric. Food Chem. 41 , 5181−5187.
【非特許文献13】Visioli F., Bellomo G., and Galli C. 1998. Free radical scavenging properties of olive oil polyphenols. Biochem. Biophys Res. Commun. 247, 60−64.
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】オリーブ中の原理的フェノール化合物の化学構造を示す。
【図2】ステップ(b)の一実施例のグラフである。
【図3】ステップ(b)の一部として行われる第2の抽出ステップのグラフである。
【図4】ステップ(c)の一例のグラフである。
【図5】さらなるナノ濾過が行われるステップ(c)のグラフである。
【図6】ステップ(c)で行われる乾燥ステップのグラフである。
【図7】粉状オリーブポリフェノール濃縮物を与えるための最終乾燥ステップのグラフである。
【図8】実験例3の結果を示すクロマトグラムである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オリーブ油抽出物の副産物からオリーブポリフェノール濃縮物が得られる工程であって、(a)副産物を極性溶媒と混合して副産物/溶媒混合物を得て、(b)副産物/溶媒混合物からポリフェノールを抽出してオリーブポリフェノール溶液と抽出された固体を得て、(c)膜分離技術を使ってオリーブポリフェノール溶液を濃縮してオリーブポリフェノール濃縮物を収量するステップを含んでなり、存在するポリフェノールの濃度が少なくとも10wt%であり、かつ脱脂ステップを含んだものであることを特徴とする工程。
【請求項2】
極性溶媒が人間による消費を意図されたものとしてCodex Alimentariusにより承認されたものであり、かつ好ましくは水、エタノールまたはこれらの混合物であることを特徴とする請求項1に記載の工程。
【請求項3】
ステップ(a)において酵素非活性化ステップが行われることを特徴とする請求項1または2に記載の工程。
【請求項4】
酵素非活性化ステップ(a)において、副産物が貯蔵されている環境から酸素を除くことを特徴とする請求項3に記載の工程。
【請求項5】
酵素非活性化ステップにおいて、温度75〜100℃の範囲でかつ時間5〜10分の範囲で水中の副産物により漂白が行われることを特徴とする請求項3に記載の工程。
【請求項6】
酵素非活性化ステップにおいて胴イオンに関して副産物と親和性のあるキレート剤を添加することを特徴とする請求項3に記載の工程。
【請求項7】
副産物がオルホ、アルペチン、アルペオルホまたは粒状オリーブ材料であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかひとつに記載の工程。
【請求項8】
ステップ(b)において溶媒を使ってポリフェノールが抽出されることを特徴とする請求項1〜7のいずれかひとつに記載の工程。
【請求項9】
溶媒が水またはエタノールまたはこれらの混合物であることを特徴とする請求項6に記載の工程。
【請求項10】
溶媒に対する低減ポリフェノールオキシダーゼ活性を有した副産物の比が重量にして1:3〜1:30であり、抽出が85℃以下の温度で行われ、抽出中連続攪拌が行われることを特徴とする請求項6または7に記載の工程。
【請求項11】
ステップ(b)において、ポリフェノールが遠心分離または濾過により抽出されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかひとつに記載の工程。
【請求項12】
ステップ(b)において予備の可溶化ステップが行われることを特徴とする請求項1〜11いずれかひとつに記載の工程。
【請求項13】
ステップ(c)の前にステップ(b)で得られたオリーブポリフェノール抽出物がさらなる抽出ステップに掛けられることを特徴とする請求項1〜12のいずれかひとつに記載の工程。
【請求項14】
さらなる抽出ステップにおいて遠心分離またはミクロ濾過が行われることを特徴とする請求項11に記載の工程。
【請求項15】
ステップ(c)において、使用された膜分離技術が超濾過であって、オリーブポリフェノール超濾過透過物であるオリーブポリフェノール濃縮物を与えることを特徴とする請求項1〜14のいずれかひとつに記載の工程。
【請求項16】
オリーブポリフェノール透過物であるオリーブポリフェノール濃縮物はナノ濾過ステップに掛けられてオリーブポリフェノールナノ濾過残留物であるオリーブポリフェノール濃縮物を与えることを特徴とする請求項13に記載の工程。
【請求項17】
ステップ(c)で得られたオリーブポリフェノール超濾過透過物またはナノ濾過残留物がさらに真空蒸発により濃縮されることを特徴とする請求項13、14に記載の工程。
【請求項18】
脱脂ステップがステップ(a)の前に行われることを特徴とする請求項1〜17のいずれかひとつに記載の工程。
【請求項19】
脱脂ステップにおいて溶媒抽出が採用されることを特徴とする請求項16に記載の工程。
【請求項20】
使用された溶媒がヘキサンであることを特徴とする請求項17に記載の工程。
【請求項21】
脱脂ステップがステップ(c)の前に最終段階としてステップ(b)の一部として行われることを特徴とする請求項1〜15のいずれかひとつに記載の工程。
【請求項22】
ステップ(b)のオリーブポリフェノール抽出物が25℃未満の温度に冷却されて油脂を分離させて表面に浮上させ、該油脂がついでデカントにより除去されることを特徴とする請求項19に記載の工程。
【請求項23】
さらにグリコシダーゼ活性とエステラーゼ活性を有した酵素を用いて酵素処理ステップが行われ、オレウロペインがヒドロキシチロソールまたはチロソールに変換されて、オリーブ副産物中間物を収量し、加水分解したオレウロペインおよび/またはジメチルオレウロペインの含有量が副産物中の初期のセコロイド含有量の50wt%であることを特徴とする請求項1〜22のいずれかひとつに記載の工程。
【請求項24】
酵素処理ステップがステップ(b)の前に行われることを特徴とする請求項21に記載の工程。
【請求項25】
酵素処理ステップがステップ(b)中に行われることを特徴とする請求項21に記載の工程。
【請求項26】
酵素処理ステップにおいて、副産物または低減ポリフェノールオキシダーゼ活性副産物が酵素混合物と接触し、エステラーゼ活性およびグリコシダーゼ活性が同時に起きることを特徴とする請求項21〜23のいずれかひとつに記載の工程。
【請求項27】
酵素混合物が微生物源から分離された酵素を含んでいることを特徴とする請求項24に記載の工程。
【請求項28】
酵素処理ステップが20〜80℃、好ましくは35〜65℃、より好ましくは50〜60℃の温度範囲で行われることを特徴とする請求項21〜25のいずれかひとつに記載の工程。
【請求項29】
オリーブポリフェノール濃縮物を乾燥する最終のステップが行われて、固体、好ましくは粉状オリーブポリフェノール濃縮物が得られることを特徴とする請求項1〜28のいずれかひとつに記載の工程。
【請求項30】
乾燥ステップにおいてスプレー乾燥または真空乾燥が行われることを特徴とする請求項27に記載の工程。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−502339(P2008−502339A)
【公表日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−516059(P2007−516059)
【出願日】平成17年4月20日(2005.4.20)
【国際出願番号】PCT/IB2005/001076
【国際公開番号】WO2006/005986
【国際公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(506414864)ナトラセウティカル インダストリアル エセ.エレ.ウ. (1)
【Fターム(参考)】