説明

カーナビゲーション装置

【課題】安全に、かつ、迅速な右折を可能とするカーナビゲーション装置を提供する。
【解決手段】車両が路面電車の軌道に沿った道路から軌道を横切って右折するケースにおいて、右折車vcAが軌道を横切って右折しようとする右折交差点に対して、右折車vcAの後方から向かってくる路面電車scBを検知した場合には、カーナビゲーションシステムから右折車vcAの運転者に対して路面電車scBの接近情報を報知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーナビゲーション装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載のように、路面軌道車両(路面電車)の軌道が敷設された道路を車両が走行する際に、その車両のドライバの負担を軽減することを目的とした技術が提案されている。
【特許文献1】特開2006−258488号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
路面電車の軌道が道路中央に敷設されている場合、その道路から右折しようとする車両は、軌道を横切ることになる。ここで、路面電車の軌道が敷設されていない道路では、車両は道路中央付近まで進行し、対向車の有無を確認してから右折することになるが、前述のように道路中央に軌道が敷設された道路においては、道路中央の軌道上で停止すると路面電車の通行の障害となるため、軌道の手前まで進行し、対向車を確認することになる。
【0004】
従って、道路中央に軌道が敷設された道路で右折する場合、車両のドライバは、対向車の有無が確認しにくく、また、右折に時間を要し、その結果として生ずる、右折車両による交通渋滞が懸念されていた。そのため、安全に、かつ、迅速な右折を可能とするものが望まれていた。
【0005】
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたもので、安全に、かつ、迅速な右折を可能とするカーナビゲーション装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた請求項1に記載のカーナビゲーション装置は、路面軌道車両の軌道が敷設された道路を車両が走行する際に、当該車両の乗員に対して情報を報知するものであって、車両が軌道を横切ることができる横切り地点に向かってくる、軌道上を走行する路面軌道車両を検知する検知手段と、検知手段がその横切り地点に向かってくる、軌道上を走行する路面軌道車両を検知した場合に、横切り地点で軌道を横切ることが可能かどうかを車両の乗員が判断するための情報を乗員に報知する報知手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
これにより、車両の乗員は、カーナビゲーション装置から報知された情報により、路面軌道車両と衝突することなく、横切り地点を安全に横切れるか(横切り地点に安全に進入できるか)どうかを判断することができるため、横切ることができると判断した場合には、安全に、かつ、迅速な右折が可能となる。その結果、路面軌道車両の軌道を横切ろうとする右折車両による交通渋滞の解消が図れる。
【0008】
請求項2に記載のように、報知手段は、車両が軌道に沿って設けられた道路から横切り地点で右折又は左折して軌道を横切る場合に報知するものであることが好ましい。車両が軌道の手前まで進行し、対向車を確認してから軌道を横切る場合に、横切り地点を安全に横切ることができるかどうかの判断が可能となるからである。
【0009】
請求項3に記載のカーナビゲーション装置によれば、検知手段は、車両の少なくとも後方の軌道上から横切り地点に向かってくる路面軌道車両を検知することを特徴とする。これにより、乗員にとって確認しにくい車両後方から接近する路面軌道車両を検知することができる。
【0010】
請求項4に記載のカーナビゲーション装置は、車両が走行すべき、出発地から目的地までの経路を案内する経路案内手段を備え、報知手段は、経路案内手段の案内する経路が横切り地点を通る経路である場合に報知することを特徴とする。これにより、乗員は、経路案内中に、進むべき方向とともに横切り地点を安全に横切ることができるかどうかを判断することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明のカーナビゲーション装置の実施形態について図面を用いて説明する。本実施形態では、近年実用化が進んでいる路車間通信を用いて、路側と車両との移動通信を行うものである。図1は、車両に搭載されるカーナビゲーション装置10、路車間通信を行うためのビーコンアンテナ60、及びビーコン(路側器)70を示している。
【0012】
図2は、カーナビゲーション装置10とその周辺装置からなるカーナビゲーションシステムの全体構成を示している。カーナビゲーションシステムは、地図情報を格納したHDD(Hard Disk Drive)17又はDVD(Hard Disk Drive)18、これらの記憶媒体の読み書きを行うHDDコントローラ15、DVDコントローラ16を備え、DRAM(Dynamic Random Access Memory)13やフラッシュメモリ14に格納されたプログラムでCPU(Central Processing Unit)23が動作する。
【0013】
カーナビゲーションシステムは、GPSアンテナ50を介してGPS受信機21の受信したGPS(Global Positioning System)信号、ジャイロセンサ20にて検出した車両の進行方位、車両信号入力装置22に入力された車速信号から車両の現在位置を計算し、表示コントローラ11によるディスプレイ30の表示や音声出力装置12によるスピーカ40から出力される音響(音声)で、車両の運転者に車両の現在位置を知らせたり、出発地(又は現在位置)から目的地へ向かう経路の経路案内を行ったりするものである。
【0014】
また、カーナビゲーションシステムは、車両が、路上に設置されたビーコン70の通信エリアを通過したときに、ビーコンアンテナ60及びビーコン送受信機19を介して路側情報を受信する。
【0015】
ビーコン70は、図4に示すように、道路に設置されるビーコン70bほか、路面軌道車両(以下、路面電車)の軌道にも設置され(ビーコン70a、70c)、通過する車両や路面電車を検知する機能も備えており、車両や路面電車を検知した場合には、その車両の位置情報や進行方向の情報を含む路側情報を、所定のビーコンの通信範囲を通過する車両に送信する。
【0016】
例えば、図4において、ビーコン70cが路面電車scBを検知した場合には、ビーコン70bの通信エリアを通過する右折車vcAに対して、路面電車scBの位置情報及び進行方向情報を含む路側情報を送信する。なお、位置検出方法については、例えば特開2003−11819号公報に開示されている方法などを採用すればよい。
【0017】
次に、本実施形態の特徴部分について説明する。図3に、路面電車の軌道が道路中央に敷設された道路において車両が右折するケースを示す。このように、路面電車の軌道が道路中央に敷設される道路で車両が右折する場合には、路面電車の軌道を横切って右折することになる。
【0018】
ここで、路面電車の軌道が敷設されていない道路では、車両は道路中央付近まで進行し、対向車の有無を確認してから右折することになるが、道路中央に路面電車の軌道が敷設された道路においては、道路中央の軌道上で停止すると路面電車の通行の障害となるため、軌道の手前まで進行し、対向車の有無を確認することになる。従って、道路中央に路面電車の軌道が敷設された道路では、右折車vcAのドライバは、対向車の有無が確認しにくく、また、右折に時間を要していた。
【0019】
そこで、本実施形態では、図4に示すように、本カーナビゲーションシステムを搭載した右折車vcAが路面電車scBの軌道に沿った道路から軌道を横切って右折するケースにおいて、右折車vcAが軌道を横切って右折しようとする交差点(横切り地点)に対して、右折車vcAの後方から向かってくる路面電車scBを検知した場合には、カーナビゲーションシステムから右折車vcAの運転者に対して、路面電車scBの接近情報を報知する。
【0020】
例えば、図4に示すように、「後方より電車が来ます。交差点内に入らないで下さい。」といったような、交差点で軌道を安全に横切ることが可能かどうかを運転者が判断するための路面電車接近情報を表示や音声出力によって報知する。
【0021】
また、図5に示すように、横切り地点を路面電車scBが通過した場合には、カーナビゲーションシステムから右折車vcAの運転者に対して、「暫く電車が来ません。注意して右折して下さい。」といったような路面電車接近情報を表示や音声出力によって報知する。
【0022】
次に、本カーナビゲーションシステムによる路面電車接近情報の通知処理を図6のフローチャートを用いて説明する。図6のステップS1では、右折車vcAが車両検知機能及び路車間通信機能を備えるビーコン70bの通信エリア内に進入した場合、ステップS2に処理を進める。なお、ビーコン70bの通信エリア内に進入したかどうかは、自車両の現在位置から判断すればよい。
【0023】
ステップS2では、自車両がビーコン70b前方の直近の交差点を通過したかどうかを判断する。ここで、肯定判断した場合にはステップS9にて路面電車接近情報の表示や音声出力を終了する。一方、否定判断した場合にはステップS3へ処理を進める。ステップS3では、ビーコン70bから送信される、ビーコン70cにて検知された路面電車の位置及び進行方向を含む路側情報をビーコンアンテナ60で受信し、ビーコン送受信機19を介して取得する。
【0024】
ステップS4では、自車両が、路面電車の軌道を横切って、ビーコン70b前方の直近の交差点を右折する状態にあるかどうかを判断する。これは、カーナビゲーションシステムが経路案内を実行しており、この交差点において、路面電車の軌道を横切って右折する案内を行う場合や、自車両の右ウィンカーが点滅しているかどうかなどによって判断することができる。
【0025】
このステップS4において、否定判断(自車両がビーコン70b前方の直近の交差点を直進/左折する、或いは、この交差点での右折を完了して通過したと判断)した場合には、ステップS9に処理を進める。一方、ステップS4において、自車両がビーコン70b前方の直近の交差点(以下、右折交差点)を右折すると判断した場合には、ステップS5へ処理を進める。
【0026】
ステップS5では、ステップS3にて取得した路側情報により得られる路面電車の位置から、自車両(右折車vcA)の近傍に路面電車が存在するかどうかを判断する。ここで、肯定判断した場合にはステップS6に処理を進め、否定判断した場合にはステップS8へ処理を進める。
【0027】
ステップS6では、図4に示すように、右折車vcAの近傍に存在する路面電車scBの進行方向から、路面電車scBが右折交差点にむかってくるかどうかを判断する。ここで、肯定判断した場合にはステップS7へ処理を進め、否定判断した場合にはステップS8へ処理を進める。
【0028】
ステップS7では、図7に示すような路面電車接近情報をディスプレイ30に表示したり、その情報の音声を出力したりすることで、路面電車scBが右折交差点にむかってくる旨を報知する。なお、右折車vcAの前方から路面電車が右折交差点にむかってくる場合にも、図7に示すような路面電車接近情報を報知してもよい。ステップS8では、図8に示すような路面電車接近情報をディスプレイ30に表示したり、その情報の音声を出力したりすることで、暫く路面電車が来ない旨を報知する。
【0029】
この図7及図8に示した路面電車接近情報を報知することで、右折車vcAの運転者は、路面電車の軌道に進入してよいかどうかの判断を下すことが容易になり、安全且つ迅速に右折が可能になる。その結果、右折車両による交通渋滞の解消を図ることができる。
【0030】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することができる。
【0031】
例えば、本実施形態では、道路中央に路面電車の軌道が敷設された、左側通行の道路における例を説明したものであるが、右側通行道路においては、左折時に路面電車接近情報を報知すればよい。
【0032】
また、例えば、本実施形態では、路面電車の位置や進行方向の情報をビーコンから路車間通信によって取得するものであるが、車両に搭載したカメラで撮像した画像から路面電車の接近を検知するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】車両に搭載されるカーナビゲーション装置10及びビーコンアンテナ60と、ビーコン70を示した図である。
【図2】カーナビゲーションシステムの全体構成を示すブロック図である。
【図3】路面電車と右折車とが衝突するケースを説明するための図である。
【図4】路面電車が右折車後方から接近するケースを説明するための図である。
【図5】路面電車が右折車前方に通り過ぎたケースを説明するための図である。
【図6】路面電車接近情報の通知処理を説明するためのフローチャートである。
【図7】ディスプレイ30に表示される路面電車接近情報(警告表示)の表示例を示した図である。
【図8】ディスプレイ30に表示される路面電車接近情報(注意表示)の表示例を示した図である。
【符号の説明】
【0034】
10 カーナビゲーション装置
30 ディスプレイ
40 スピーカ
50 GPSアンテナ
60 ビーコンアンテナ
70 ビーコン(路側器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面軌道車両の軌道が敷設された道路を車両が走行する際に、当該車両の乗員に対して情報を報知するカーナビゲーション装置であって、
車両が前記軌道を横切ることができる横切り地点に向かってくる、前記軌道上を走行する路面軌道車両を検知する検知手段と、
前記検知手段が前記路面軌道車両を検知した場合に、前記横切り地点で前記軌道を横切ることが可能かどうかを前記車両の乗員が判断するための情報を前記乗員に報知する報知手段と、を備えることを特徴とするカーナビゲーション装置。
【請求項2】
前記報知手段は、前記車両が、前記軌道に沿って設けられた道路から前記横切り地点で右折又は左折して前記軌道を横切る場合に報知するものであることを特徴とする請求項1記載のカーナビゲーション装置。
【請求項3】
前記検知手段は、前記車両の少なくとも後方の前記軌道上から前記横切り地点に向かってくる路面軌道車両を検知することを特徴とする請求項2記載のカーナビゲーション装置。
【請求項4】
前記車両が走行すべき、出発地から目的地までの経路を案内する経路案内手段を備え、
前記報知手段は、前記経路案内手段の案内する経路が前記横切り地点を通る経路である場合に報知することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のカーナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−293269(P2008−293269A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−138046(P2007−138046)
【出願日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】