説明

キャリア付きプリプレグの製造方法、キャリア付きプリプレグ、薄型両面板の製造方法、薄型両面板、及び多層プリント配線板の製造方法

【課題】含浸性、厚み精度に優れ、特に、ビルドアップ方式の多層プリント配線板の製造に好適に用いられるキャリア付きプリプレグの製造方法と、この製造方法により得られたキャリア付きプリプレグ、及び、このキャリア付きプリプレグを用いた多層プリント配線板の製造方法を提供する。
【解決手段】繊維布の骨格材を含む絶縁樹脂層を有するキャリア付きプリプレグを連続的に製造する方法であって、(a)片面側に絶縁樹脂層が形成された第一及び第二の絶縁樹脂層付きキャリアの絶縁樹脂層側を、繊維布の両面側にそれぞれ重ね合わせ、減圧条件下でこれらを接合する工程と、(b)上記接合後に、前記絶縁樹脂の溶融温度以上の温度で加熱処理する工程とを有することを特徴とする、キャリア付きプリプレグの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリア付きプリプレグの製造方法、キャリア付きプリプレグ、及び多層プリント配線板の製造方法に関するものである。また、本発明は、薄型両面板の製造方法、薄型両面板、及び薄型両面板を有する多層プリント配線板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、多層プリント配線板は、高密度、高実装化と共に薄型化が求められている。
多層プリント配線板としては、プリプレグを金属箔とともに積層して加熱加圧成形した金属箔張積層板を回路形成して内層回路基板を製作し、その表裏側にビルドアップ材と呼ばれる絶縁層と、導体回路層とを交互に積層していくビルドアップ方式により製造されるものが主流となっている。
多層プリント配線板は、そのサイズが大型であったり、微細ピッチのフリップチップなどの半導体部品を搭載したりする場合には、実装信頼性を確保するために充分な機械的強度を有している必要がある。このため、内層回路基板として厚みの大きいものを用いる方法があるが、高集積・高実装化に伴う高多層化により、多層プリント配線板の全体の厚みは増加するという問題があった。
そこで、ビルドアップ材としてプリプレグを使用することにより、プリプレグの基材により機械的強度を付与することにより、内層回路基板を薄型化しつつ、実装信頼性等を確保する工法が考案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
内層回路板にプリプレグをビルドアップする方法としては、内層回路板とプリプレグとを積層し、これを平板プレス装置で加熱加圧して硬化成形する方法、内層回路板とプリプレグとをロールラミネート装置で圧着成形した後、加熱乾燥装置で硬化する方法、などが挙げられる。
このうち、平板プレス装置を用いる方法は、加熱加圧成形時の樹脂の流動が比較的大きいので、プリプレグが有している絶縁層の形態が変化しやすい傾向がある。
一方、ロールラミネート装置を用いる方法では、形成される絶縁層の厚み精度を制御でき、所望とする絶縁層を形成しやすく、また、連続的に実施できるので生産性の面で効率的であるという利点を有する。このため、ロールラミネート装置を用いる方法には、厚み精度、含浸性に優れたプリプレグを用いることが有効な手段であると考えられる。
しかし、従来のプリプレグの製造方法、例えば、通常の塗工装置を用いて、繊維布基材を樹脂ワニスに浸漬含浸・乾燥させる方法では、塗工方向にスジ状の凹凸が発生しやすく、厚み精度を確保することが困難であった。
このような問題に対し、厚み精度に優れたプリプレグの製造方法として、繊維布基材の表裏にキャリア付き絶縁樹脂をラミネートする方法(例えば、特許文献2参照。)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−342871号公報
【特許文献2】特開2004−123870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、繊維布基材の表裏にキャリア付き絶縁樹脂をラミネートする方法によれば、厚み精度に優れたプリプレグを得ることができる。
しかしながら、この方法では、繊維基材に対する樹脂成分の含浸性が充分ではなく、ボイドが残存したプリプレグとなりやすいため、このようなプリプレグを用いて多層プリント配線板を製造すると、絶縁信頼性が低下する場合があった。
さらに、多層プリント配線板は半導体部品を搭載するパッケージ用基板等にも用いられるが、高密度化、薄型化技術の進歩により、BGAなどの新しいパッケージの適用が増加し、パッケージ用基板に対しても耐熱性、低熱膨張性が要求され、このような特性を併せて付与できるプリプレグが要求されるようになっている。
本発明は、このような背景に鑑み、含浸性、厚み精度に優れ、特に、ビルドアップ方式の多層プリント配線板の製造に好適に用いられるキャリア付きプリプレグの製造方法と、この製造方法により得られたキャリア付きプリプレグ、及び、このキャリア付きプリプレグを用いた多層プリント配線板の製造方法を提供するものである。また、薄型両面板の製造方法および薄型両面板を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、以下の本発明(1)〜(40)により達成される。
(1) 繊維布の骨格材を含む絶縁樹脂層を有するキャリア付きプリプレグを連続的に製造する方法であって、
(a)片面側に絶縁樹脂層が形成された第一及び第二の絶縁樹脂層付きキャリアの絶縁樹脂層側を、繊維布の両面側にそれぞれ重ね合わせて積層体とし、減圧条件下でこれらを接合する工程と、
(b)前記接合後に、前記絶縁樹脂の溶融温度以上の温度で加熱処理する工程と、
を有することを特徴とする、キャリア付きプリプレグの製造方法。
(2) 前記工程(a)において、前記積層体を両面から少なくとも1対のラミネートロールで押圧して接合させる、(1)に記載の方法。
(3) 前記積層体の絶縁樹脂層がフィルムである、(2)に記載の方法。
(4) 前記第一及び第二の絶縁樹脂層付きキャリアは、前記繊維布よりも幅方向寸法が大きいキャリアを有するとともに、
前記第一及び第二の絶縁樹脂層付きキャリアは、前記繊維布よりも幅方向寸法が大きい絶縁樹脂層を有するものである(1)に記載のキャリア付きプリプレグの製造方法。
(5) 前記(a)工程において、
前記繊維布の幅方向寸法の内側領域においては、前記第一及び第二の絶縁樹脂層付きキャリアの絶縁樹脂層側を前記繊維布の両面側にそれぞれ接合するとともに、
前記繊維布の幅方向寸法の外側領域においては、前記第一及び第二の絶縁樹脂層付きキャリアの絶縁樹脂層どうしを接合する、(4)に記載のキャリア付きプリプレグの製造方法。
(6) 前記第一及び第二の絶縁樹脂層付きキャリアは、前記繊維布よりも幅方向寸法が大きいキャリアを有するとともに、
前記第一の絶縁樹脂層付きキャリアは、前記繊維布よりも幅方向寸法が大きい絶縁樹脂層を有するものである(1)に記載のキャリア付きプリプレグの製造方法。
(7) 前記(a)工程において、
前記繊維布の幅方向寸法の内側領域においては、前記第一及び第二の絶縁樹脂層付きキャリアの絶縁樹脂層側を前記繊維布の両面側にそれぞれ接合するとともに、
前記繊維布の幅方向寸法の外側領域においては、前記第一の絶縁樹脂層付きキャリアの絶縁樹脂層と、前記第二の絶縁樹脂層付きキャリアのキャリアとを接合する、(6)に記載のキャリア付きプリプレグの製造方法。
(8) 前記(a)工程は、真空ラミネート装置を用いて実施されるものである(1)ないし(5)のいずれかに記載のキャリア付きプリプレグの製造方法。
(9) 前記(b)工程は、前記(a)工程で接合したものに実質的に圧力を作用させることなく実施されるものである、(1)ないし(8)のいずれかに記載のキャリア付きプリプレグの製造方法。
(10) 前記繊維布は、ガラス織布である(1)ないし(9)のいずれかに記載のキャリア付きプリプレグの製造方法。
(11) 前記第一及び/又は第二の絶縁樹脂層付きキャリアは、前記絶縁樹脂層が形成される面に剥離可能な処理が施されたフィルムシートを有するものである(1)ないし(8)のいずれかに記載のキャリア付きプリプレグの製造方法。
(12) 前記第一及び/又は第二の絶縁樹脂層付きキャリアは、金属箔を有するものである(1)ないし(11)のいずれかに記載のキャリア付きプリプレグの製造方法。
(13) 前記絶縁樹脂層が、シアネート樹脂を含む樹脂組成物から形成される、(1)に記載のキャリア付きプリプレグの製造方法。
(14) 前記樹脂組成物が、エポキシ樹脂を含む樹脂組成物から形成される、(1)に記載のキャリア付きプリプレグの製造方法。
(15) 前記樹脂組成物が、フェノール樹脂を含む樹脂組成物から形成される、(1)に記載のキャリア付きプリプレグの製造方法。
(16) 前記樹脂組成物が、さらに、フェノキシ樹脂を含む樹脂組成物から形成される、(13)に記載のキャリア付きプリプレグの製造方法。
(17) 前記樹脂組成物がさらに、無機充填材を含む、(1)ないし(16)のいずれかに記載のキャリア付きプリプレグの製造方法。
(18) 繊維布の骨格材を含む絶縁樹脂層を有するキャリア付きプリプレグを連続的に製造する方法であって、
(a)片面側に絶縁樹脂層が形成された第一及び第二の絶縁樹脂層付きキャリアの絶縁樹脂層側を、繊維布の両面側にそれぞれ重ね合わせて積層体とし、減圧条件下でこれらを接合する工程と、
(b)前記接合後に、前記絶縁樹脂の溶融温度以上の温度で加熱処理する工程と、
を有し、
ここで前記絶縁樹脂層はフィルムであり、および前記工程(a)において、積層体を少なくとも1対のラミネートロール間に通して両面から押圧して接合させることを特徴とする、
キャリア付きプリプレグの製造方法。
(19) (1)ないし(18)のいずれかに記載の製造方法により得られたものであることを特徴とする、キャリア付きプリプレグ。
(20) (c)(19)に記載のキャリア付きプリプレグの少なくとも一方のキャリアを除去する工程と、
(d)キャリア付きプリプレグのキャリアが除去された側の絶縁樹脂層を、回路加工が施された内層回路基板に重ね合わせ、これらを成形する工程と、
を有することを特徴とする、多層プリント配線板の製造方法。
(21) 前記(d)工程は、キャリア付きプリプレグのキャリアが除去された側と反対側にキャリアを有した状態で実施されるものである(20)に記載の多層プリント配線板の製造方法。
(22) 薄型両面板を連続的に製造する方法であって、前記方法は繊維布の骨格材を含む絶縁樹脂層を含有する薄型両面板を得る工程を含み、前記繊維布の骨格材を含む絶縁樹脂層は繊維布の骨格材の両面側に第一および第二の絶縁樹脂層を含浸させることにより得られ、前記第一および第二の絶縁樹脂層は繊維布の骨格材に含浸させる反対側にキャリアを有するキャリア付き絶縁樹脂層であり、かつ前記繊維布の骨格材を含む絶縁樹脂層の厚みが50μm以下である、薄型両面板の製造方法。
(23) 前記薄型両面板の製造方法において、
(a)前記第一および第二のキャリア付き絶縁樹脂層の絶縁樹脂層側を、前記繊維布の骨格材の両面側にそれぞれ重ね合わせて積層体とし、減圧条件下でこれらを接合する工程と、
(b)前記接合後に、前記繊維布の骨格材を含む絶縁樹脂層を加熱硬化させて薄型両面板を得る工程と
を含む、(22)に記載の方法。
(24) 前記工程(a)において、前記積層体を両面から少なくとも1対のラミネートロールで押圧して接合させる、(23)に記載の方法。
(25) 前記積層体の絶縁樹脂層がフィルムである、(24)に記載の方法。
(26) 前記繊維布は、ガラス織布である(22)ないし(25)のいずれかに記載の薄型両面板の製造方法。
(27) 前記繊維布の厚みが48μm以下である、(22)ないし(26)のいずれかに記載の薄型両面板の製造方法。
(28) 前記絶縁樹脂層に用いる絶縁樹脂は、熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物で構成されている、(22)ないし(27)のいずれかに記載の薄型両面板の製造方法。
(29) 前記樹脂組成物がエポキシ樹脂を含む、(28)に記載の薄型両面板の製造方法。
(30) 前記樹脂組成物がフェノール樹脂を含む、(28)に記載の薄型両面板の製造方法。
(31) 前記樹脂組成物がフェノキシ樹脂を含む、(28)に記載の薄型両面板の製造方法。
(32) 前記樹脂組成物がシアネート樹脂、および/またはそのプレポリマーを含む、(28)に記載の薄型両面板の製造方法。
(33) 前記樹脂組成物がさらに無機充填材を含む、(22)ないし(32)のいずれかに記載の薄型両面板の製造方法。
(34) 前記無機充填材がシリカである、(33)に記載の薄型両面板の製造方法。
(35) 前記無機充填材の含有量が、樹脂組成物全重量に対して、30重量%以上80重量%以下である、(33)に記載の薄型両面板の製造方法。
(36) 前記キャリアは金属箔を有するものである、(22)ないし(35)のいずれかに記載の薄型両面板の製造方法。
(37) 前記キャリアは絶縁樹脂層が形成される面に剥離可能な処理が施されたフィルムシートを有するものである、(22)ないし(36)のいずれかに記載の薄型両面板の製造方法。
(38) 前記薄型両面板の製造方法において、
(a)前記第一および第二のキャリア付き絶縁樹脂層の絶縁樹脂層側を、前記繊維布の骨格材の両面側にそれぞれ重ね合わせ、減圧条件下でこれらを接合する工程と、
(b)前記接合後に、前記繊維布の骨格材を含む絶縁樹脂層を加熱硬化させて薄型両面板を得る工程と
を含み、ここで前記絶縁樹脂層はフィルムであり、および前記工程(a)において、前記積層体を少なくとも1対のラミネートロール間を通して両面からで押圧して接合させることを特徴とする、
薄型両面板の製造方法。
(39) (22)ないし(38)のいずれかに記載の製造方法により得られる薄型両面板。
(40) (39)に記載の薄型両面板を有する、多層プリント配線板。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、含浸性と厚み精度に優れたキャリア付きプリプレグを簡易に製造することができる。本発明のキャリア付きプリプレグは、高密度化、高多層化を要求される多層プリント配線板の製造に好適に用いられるものである。
【0008】
また、本発明によれば、薄型両面板を製造することもできる。本発明の薄型両面板は、高密度化、高多層化、または薄型化を要求される多層プリント配線板の製造に好適に用いられるものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
上述した目的、およびその他の目的、特徴および利点は、以下に述べる好適な実施の形態、およびそれに付随する以下の図面によってさらに明らかになる。
【0010】
【図1】本発明の製造方法に用いられるキャリア、絶縁樹脂層付きキャリア、及び、繊維布について、各々の位置関係を示す概略図である。
【図2】本発明の製造方法に用いられる、キャリア、絶縁樹脂層、及び、繊維布について、各々の幅方向寸法の形態例を示す概略図である。
【図3】本発明の製造方法に用いられる、キャリア、絶縁樹脂層、及び、繊維布について、各々の幅方向寸法の形態例を示す概略図である。
【図4】本発明の製造方法に用いられる、キャリア、絶縁樹脂層、及び、繊維布について、各々の幅方向寸法の形態例を示す概略図である。
【図5】(1)本発明の製造方法に用いられる、絶縁樹脂層付きキャリアを製造する装置形態の一例を示す概略側断面図であり、(2)本発明の製造方法に用いられる、キャリア付きプリプレグを製造する装置形態の一例を示す概略側断面図である。
【図6】実験例A5および実験例B9において用いられる装置の概略側断面図である。
【図7】本発明の薄型両面板の製造方法に用いられる、キャリア、絶縁樹脂層、及び、繊維布について、各々の幅方向寸法の形態例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明のキャリア付きプリプレグの製造方法、キャリア付きプリプレグ、ならびに、多層プリント配線板の製造方法について詳細に説明する。
【0012】
本発明に係るキャリア付きプリプレグの製造方法は、
繊維布の骨格材を含む絶縁樹脂層を有するキャリア付きプリプレグを連続的に製造する方法であって、
(a)片面側に絶縁樹脂層が形成された第一及び第二の絶縁樹脂層付きキャリアの絶縁樹脂層側を、繊維布の両面側にそれぞれ重ね合わせ、減圧条件下でこれらを接合する工程と、
(b)上記接合後に、上記絶縁樹脂の溶融温度以上の温度で加熱処理する工程と、を有することを特徴とするものである。
【0013】
まず、上記(a)工程について説明する。
上記(a)工程においては、第一及び第二の絶縁樹脂層付きキャリアと繊維布とを重ね合わせ、減圧条件下でこれらを接合する。
これにより、絶縁樹脂層付きキャリアの絶縁樹脂層と繊維布とを接合する際に、繊維布の内部、あるいは、絶縁樹脂層付きキャリアの絶縁樹脂層と繊維布との接合部位に非充填部分が存在しても、これを減圧ボイドあるいは実質的な真空ボイドとすることができる。
この減圧条件としては、常圧より700Torr以上減圧した条件下で実施することが好ましい。さらに好ましくは、常圧より740Torr以上減圧した条件下である。これにより、上記効果を高く発現させることができる。
【0014】
第一及び第二の絶縁樹脂層付きキャリアと繊維布とを接合する方法としては特に限定されないが、例えば、繊維布と絶縁樹脂層付きキャリアとを連続的に供給して重ね合わせながら接合する方法が挙げられる。
また、減圧条件下で接合する手法としては特に限定されないが、例えば、真空ラミネート装置、真空ボックス装置などを用いることができる。
これらの中でも、真空ラミネート装置を用いて、繊維布と絶縁樹脂層付きキャリアとを連続的に重ね合わせながら接合する方法が好ましい。これにより、連続的な処理ができ、簡易な装置で効率的にキャリア付きプリプレグを製造することができる。
【0015】
例えば、接合は、第一及び第二の絶縁樹脂層付きキャリアと樹脂を含浸させていない繊維布とを重ね合わせて積層体とし、該積層体を両面から少なくとも1対のラミネートロール間を通して両面から押圧しながら接合させることが好ましい。かかる方法を用いることにより、絶縁樹脂層の繊維布への十分な含浸が達成できる。
【0016】
また、好ましい態様において、ロールを用いた押圧および接合を容易にするという観点から、絶縁樹脂層はフィルムであることが好ましい。フィルムとすることで、ロールを用いた押圧および接合が容易になる。
【0017】
上記(a)工程において、絶縁樹脂層付きキャリアの絶縁樹脂層側と繊維布とを接合する際には、絶縁樹脂層が溶融可能な温度に加温することが好ましい。これにより、繊維布と絶縁樹脂層とを容易に接合することができる。また、絶縁樹脂層の少なくとも一部が溶融して繊維布内部に含浸することにより、含浸性の良好なキャリア付きプリプレグを得やすくなる。
ここで加温する方法としては特に限定されないが、例えば、接合する際に所定温度に加熱したラミネートロールを用いる方法などを好適に用いることができる。
ここで加温する温度としては、絶縁樹脂層を形成する樹脂の種類や配合により異なるため特に限定されないが、一例を挙げると、60〜100℃で実施することができる。
【0018】
上記(a)工程で用いられる絶縁樹脂層付きキャリアについて説明する。
図1(2)は、本発明で用いられる絶縁樹脂層付きキャリア3を例示したものである。
絶縁樹脂層付きキャリア3は、キャリア1の片面側に、絶縁樹脂層2が薄層状に形成されたものである。絶縁樹脂層2は、幅方向寸法8を有し、キャリア1の片面側に所定厚みで形成することができる。ここで、幅方向寸法8とは、キャリア1の搬送方向と直交方向における絶縁樹脂層2の寸法を指す。
【0019】
上記絶縁樹脂層付きキャリアに用いられるキャリアについて説明する。
図1(1)は、本発明で用いられる絶縁樹脂層付きキャリア3に適用されるキャリア1を例示したものである。
キャリア1は、矢印6側に連続的に搬送して供給することができ、幅方向寸法7を有している。ここで、幅方向寸法7とは、キャリア1の搬送方向と直交方向における寸法を指す。
このようなキャリア1としては、例えば、長尺状のシート形態のものを好適に用いることができる。
【0020】
上記キャリアの材質としては特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリイミドなどの熱可塑性樹脂から形成される熱可塑性樹脂フィルムシート、あるいは、銅または銅合金、アルミまたはアルミ合金、銀または銀合金のような金属から形成される金属箔を好適に用いることができる。
これらの中でも、熱可塑性樹脂フィルムシートを形成する熱可塑性樹脂としては、耐熱性に優れ、安価であることから、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
また、金属箔を形成する金属としては、導電性に優れ、エッチングによる回路形成が容易であり、また安価であることから銅または銅合金が好ましい。
【0021】
上記キャリアとして熱可塑性樹脂フィルムシートを用いる場合は、絶縁樹脂層が形成される面に剥離可能な処理が施されたものであることが好ましい。これにより、多層プリント配線板の製造時または製造後に、絶縁樹脂層とキャリアとを容易に分離することができる。
【0022】
この熱可塑性樹脂フィルムシートの厚みとしては、一例を挙げると、25〜75μmであるものを用いることができる。この場合、絶縁樹脂層付きキャリアを製造する際の作業性を良好なものとすることができる。
熱可塑性樹脂フィルムシートの厚みが小さすぎると、絶縁樹脂層付きキャリアを製造する際に機械的強度が充分でないことがある。また、厚みが大きすぎると、絶縁樹脂層付きキャリアの製造に際しては問題ないが、絶縁樹脂層付きキャリアの生産性が低下することがある。
【0023】
上記キャリアとして金属箔を用いる場合は、絶縁樹脂層が形成される面に剥離可能な処理が施されたものを用いてもよいし、このような処理が施されていないか、絶縁樹脂層との密着性を向上させる処理が施されたものを用いることもできる。
【0024】
上記キャリアとして、絶縁樹脂層が形成される面に剥離可能な処理が施された金属箔を用いた場合は、上記熱可塑性樹脂フィルムシートを用いた場合と同様の効果を発現させることができる。
この金属箔の厚みとしては、一例を挙げると、1〜70μmであるものを用いることができる。これにより、絶縁樹脂層付きキャリアを製造する際の作業性を良好なものとすることができる。
金属箔の厚みが小さすぎると、絶縁樹脂層付きキャリアを製造する際に機械的強度が充分でないことがある。また、厚みが大きすぎると、絶縁樹脂層付きキャリアの製造に際しては問題ないが、生産性が低下することがある。
【0025】
なお、上記キャリアとして熱可塑性樹脂フィルムシート、あるいは、絶縁樹脂層が形成される面に剥離可能な処理が施された金属箔を用いる場合、絶縁樹脂層が形成される側のキャリア表面の凹凸は、極力小さいものであることが好ましい。これにより、多層プリント配線板を製造した場合に、絶縁層の表面平滑性を高めることができるので、絶縁層表面を粗化処理した後に金属メッキ等により新たな導体層を形成する際に、微細な回路をより容易に加工形成することができる。
【0026】
一方、上記キャリアとして、剥離可能な処理が施されていないか、絶縁樹脂層との密着性を向上させる処理が施された金属箔を用いる場合は、多層プリント配線板の製造時に、この金属箔を回路形成のための導体層としてそのまま用いることができる。
このとき、絶縁樹脂層が形成される側のキャリア表面の凹凸としては、一例を挙げると、Ra:0.1〜0.5μmであるものを用いることができる。この場合は、絶縁層と金属箔との密着性を充分に確保できるとともに、この金属箔をエッチング処理等行うことにより、微細な回路を容易に加工形成することができる。
また、この金属箔の厚みとしては、一例を挙げると、1〜35μmであるものを好適に用いることができる。この金属箔の厚みが小さすぎると、絶縁樹脂層付きキャリアを製造する際に機械的強度が充分でないことがある。また、厚みが大きすぎると、微細な回路を加工形成し難くなることがある。
この金属箔は、キャリア付きプリプレグを製造するのに用いる絶縁樹脂層付きキャリアのうちの一方のキャリアに用いて、キャリア付きプリプレグを製造することができる。
なお、この用途で用いる金属箔としては、1つの層から形成される金属箔を用いることもできるし、金属箔どうしが剥離可能な2つ以上の層から構成される金属箔を用いることもできる。例えば、絶縁層に密着させる側の第1の金属箔と、絶縁層に密着させる側と反対側に第1の金属箔を支持できるような第2の金属箔とを、剥離可能に接合した2層構造の金属箔を用いることができる。
【0027】
次に、上記絶縁樹脂層付きキャリアの絶縁樹脂層を形成する絶縁樹脂材料について説明する。
絶縁樹脂層の形成に用いられる絶縁樹脂材料としては特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シアネート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂などの熱硬化性樹脂を好適に用いることができる。上記絶縁樹脂材料は特に、シアネート樹脂を含むものであることが好ましい。シアネート樹脂を用いることにより得られたキャリア付きプリプレグは、耐熱性と低熱膨張性を良好なものとすることができる。
このほか、必要に応じて、硬化剤、硬化促進剤、熱可塑性樹脂、無機充填材、有機充填材、カップリング剤などの添加剤を適宜配合することができる。
本発明で用いられる絶縁樹脂は、上記成分を有機溶剤等により溶解及び/又は分散させた液状形態で好適に用いることができる。
【0028】
このシアネート樹脂としては、例えば、ハロゲン化シアン化合物とフェノール類とを反応させたものや、これを加熱等の方法でプレポリマー化したもの等を用いることができる。
その具体的な形態としては、例えば、ノボラック型シアネート樹脂、ビスフェノールA型シアネート樹脂、ビスフェノールE型シアネート樹脂、テトラメチルビスフェノールF型シアネート樹脂等のビスフェノール型シアネート樹脂等を挙げることができる。
これらのシアネート樹脂の中でも、ノボラック型シアネート樹脂を用いると、架橋密度の増加により耐熱性をさらに向上させることができるとともに、キャリア付きプリプレグの骨格材である繊維布基材として薄いものを用いた場合でも、キャリア付きプリプレグの硬化物(以下、単に「硬化物」と呼称することがある)に優れた剛性を付与でき、特に加熱時における剛性を高めることができる。
そして例えば、このキャリア付きプリプレグを、半導体部品を実装したパッケージ基板に適用した場合には、その接続信頼性を向上させることができる。
また、ノボラック型シアネート樹脂を用いることにより、硬化物の難燃性を高めることができる。ノボラック型シアネート樹脂は、その構造上ベンゼン環の割合が高く、炭化しやすいためと考えられる。
【0029】
上記ノボラック型シアネート樹脂としては、例えば、下記一般式(I)で示されるものを使用することができる。
【0030】
【化1】

【0031】
上記一般式(I)で示されるノボラック型シアネート樹脂の繰り返し単位nとしては、例えば、1〜10であるものを用いることができ、2〜7であるものを特に好適に用いることができる。
これにより、ノボラック型シアネート樹脂の取り扱い性や、硬化物の架橋密度を良好なものとして、これらの特性のバランスに優れたものとすることができる。
上記n数が小さすぎると、結晶化しやすくなって、汎用溶媒に対する溶解性が小さくなり取り扱い性が低下することがある。一方、上記n数が大きすぎると、硬化物の架橋密度が過剰に高くなり、耐水性の低下や、硬化物が脆くなる等の現象を生じることがある。
【0032】
上記シアネート樹脂の分子量としては、例えば、重量平均分子量(Mw)で500〜4,500であるものを用いることができ、600〜3,000であるものを特に好適に用いることができる。
これにより、キャリア付きプリプレグを作製した場合の取り扱い性や、多層プリント配線板の製造時の成形性、層間ピール強度などを良好なものとして、これらの特性のバランスに優れたものとすることができる。
上記Mwが小さすぎると、キャリア付きプリプレグを作製した場合にタック性を生じて、取り扱い性が低下することがある。一方、上記Mwが大きすぎると、反応が速くなり、多層プリント配線板の製造時に成形不良を生じたり、層間ピール強度が低下したりすることがある。
上記シアネート樹脂としては、好ましくはMwが上記範囲内であるものを1種用いることもできるし、Mwが異なる2種以上を併用することもできる。
なお、上記シアネート樹脂のMwは、例えば、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)で測定することができる。
【0033】
上記シアネート樹脂の含有量は、樹脂組成物全体に対して、5〜50重量%であることが好ましく、特に10〜40重量%であることが好ましい。
これにより、絶縁樹脂層付きキャリアの樹脂層を容易に形成することができるとともに、硬化物の機械的強度を良好なものとして、これらの特性のバランスに優れたものとすることができる。
シアネート樹脂の含有量が少なすぎると、絶縁樹脂層付きキャリアの絶縁樹脂層を形成するのが難しくなることがある。一方、シアネート樹脂の含有量が多すぎると、硬化物の機械的強度が充分でないことがある。
【0034】
樹脂組成物には、エポキシ樹脂(実質的にハロゲン原子を含まない)を用いることもできる。
エポキシ樹脂としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アリールアルキレン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、アリールアルキレン型エポキシ樹脂が好ましい。これにより、硬化物の吸湿半田耐熱性を向上させることができる。
【0035】
ここで、アリールアルキレン型エポキシ樹脂とは、繰り返し単位中に一つ以上のアリールアルキレン基を有するエポキシ樹脂を指し、例えば、キシリレン型エポキシ樹脂、ビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、ビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂が好ましい。ビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂は、例えば下記一般式(II)で示すことができる。
【0036】
【化2】

【0037】
上記一般式(II)で示されるビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂の繰り返し単位nとしては、例えば、1〜10であるものを用いることができ、2〜5であるものを特に好適に用いることができる。
これにより、ビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂の取り扱い性や、多層プリント配線板を製造する際の成形性を良好なものとして、これらの特性のバランスに優れたものとすることができる。
上記n数が小さすぎると、結晶化しやすくなるため、汎用溶媒に対する溶解性が小さくなって取り扱い性が低下することがある。一方、上記n数が大きすぎると、流動性が低下するため、キャリア付きプリプレグを用いて多層プリント配線板を製造する際に成形不良の原因となることがある。
【0038】
上記エポキシ樹脂の含有量としては、例えば、樹脂組成物全体に対して1〜55重量%とすることができ、特に、2〜40重量%とすることが好ましい。
また、エポキシ樹脂をシアネート樹脂とともに用いた場合、上記含有量により、シアネート樹脂の反応性や、硬化物の諸特性を良好なものとして、これらの特性のバランスに優れたものとすることができる。エポキシ樹脂の含有量が少なすぎると、シアネート樹脂の反応性が低下したり、硬化物の耐湿性が低下したりすることがある。一方、エポキシ樹脂の含有量が多すぎると、硬化物の耐熱性が充分でないことがある。
【0039】
上記エポキシ樹脂の分子量としては、例えば、重量平均分子量(Mw)で500〜20,000であるものを用いることができ、800〜15,000であるものを特に好適に用いることができる。
これにより、キャリア付きプリプレグを作製した場合の取り扱い性や、繊維布基材への含浸性を良好なものとして、これらの特性のバランスに優れたものとすることができる。
上記Mwが小さすぎると、キャリア付きプリプレグを作製した場合にタック性を生じて、取り扱い性が低下することがある。一方、上記Mwが大きすぎると、繊維布基材への含浸性が低下することがある。
上記エポキシ樹脂としては、好ましくはMwが上記範囲内であるものを1種用いることもできるし、Mwが異なる2種以上を併用することもできる。
なお、上記エポキシ樹脂のMwは、例えば、GPCで測定することができる。
【0040】
樹脂組成物には、フェノール樹脂を用いることもできる。
フェノール樹脂としては、例えば、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、アリールアルキレン型フェノール樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、アリールアルキレン型フェノール樹脂が好ましい。これにより、硬化物の吸湿半田耐熱性をさらに向上させることができる。
【0041】
上記アリールアルキレン型フェノール樹脂としては、例えば、キシリレン型フェノール樹脂、ビフェニルジメチレン型フェノール樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、ビフェニルジメチレン型フェノール樹脂が好ましい。ビフェニルジメチレン型フェノール樹脂は、例えば下記一般式(III)で示すことができる。
【0042】
【化3】

【0043】
上記一般式(III)で示されるビフェニルジメチレン型フェノール樹脂の繰り返し単位nとしては、例えば、1〜12であるものを用いることができ、2〜8であるものを特に好適に用いることができる。
これにより、他の樹脂成分との相溶性や、硬化物の耐熱性を良好なものとして、これらの特性のバランスに優れたものとすることができる。
上記n数が小さすぎると、硬化物の耐熱性が低下することがある。一方、上記n数が大きすぎると、他の樹脂成分との相溶性が低下し、作業性が低下することがある。
【0044】
上記フェノール樹脂の含有量としては、例えば、樹脂組成物全体に対して1〜55重量%とすることができ、特に、5〜40重量%とすることが好ましい。
これにより、硬化物の耐熱性や低熱膨張性を良好なものとして、これらの特性のバランスに優れたものとすることができる。
フェノール樹脂の含有量が少なすぎると、硬化物の耐熱性が低下することがある。一方、フェノール樹脂の含有量が多すぎると、硬化物の低熱膨張の特性が充分ではなくなることがある。
【0045】
上記フェノール樹脂の分子量としては、例えば、重量平均分子量(Mw)で400〜18,000であるものを用いることができ、500〜15,000であるものを特に好適に用いることができる。
これにより、キャリア付きプリプレグを作製した場合の取り扱い性や、繊維布基材への含浸性を良好なものとして、これらの特性のバランスに優れたものとすることができる。
上記Mwが小さすぎると、キャリア付きプリプレグを作製した場合にタック性を生じて、取り扱い性が低下することがある。一方、上記Mwが大きすぎると、繊維布基材への含浸性が低下することがある。
上記フェノール樹脂としては、好ましくはMwが上記範囲内であるものを1種用いることもできるし、Mwが異なる2種以上を併用することもできる。
なお、上記フェノール樹脂のMwは、例えば、GPCで測定することができる。
【0046】
樹脂組成物には、上記シアネート樹脂、特に、ノボラック型シアネート樹脂とともに、あるいは、上記シアネート樹脂、特に、ノボラック型シアネート樹脂と、エポキシ樹脂とともに、フェノキシ樹脂を用いることができる。
これにより、絶縁樹脂層付きキャリアを製造する際の製膜性を向上させることができる。
【0047】
上記フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノール骨格を有するフェノキシ樹脂、ノボラック骨格を有するフェノキシ樹脂、ナフタレン骨格を有するフェノキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するフェノキシ樹脂等が挙げられる。また、これらの骨格を複数種有した構造を有するフェノキシ樹脂を用いることもできる。
これらの中でも、ビフェニル骨格と、ビスフェノールS骨格とを有するものを用いることができる。これにより、ビフェニル骨格が有する剛直性によりガラス転移温度を高くすることができるとともに、ビスフェノールS骨格により、多層プリント配線板を製造する際のメッキ金属の付着性を向上させることができる。
また、ビスフェノールA骨格とビスフェノールF骨格とを有するものを用いることができる。これにより、多層プリント配線板の製造時に内層回路基板への密着性を向上させることができる。
【0048】
また、上記ビフェニル骨格とビスフェノールS骨格とを有するものと、ビスフェノールA骨格とビスフェノールF骨格とを有するものとを、併用することができる。これにより、これらの特性をバランスよく発現させることができる。
上記ビスフェノールA骨格とビスフェノールF骨格とを有するもの(1)と、上記ビフェニル骨格とビスフェノールS骨格とを有するもの(2)とを併用する場合、その併用比率としては特に限定されないが、例えば、(1):(2)=2:8〜9:1とすることができる。
【0049】
フェノキシ樹脂の分子量としては特に限定されないが、重量平均分子量が5000〜70000であるものを用いることができる。
これにより、絶縁樹脂層付きキャリアを製造する際の製膜性を向上させる効果を充分に発現させることができるとともに、樹脂組成物を調製する際のフェノキシ樹脂の溶解性をも良好なものとすることができ、これらの特性のバランスに優れたものとすることができる。
フェノキシ樹脂の重量平均分子量が小さすぎると、フェノキシ樹脂により製膜性を向上させる効果が充分でないことがある。一方、重量平均分子量が大きすぎると、樹脂組成物中におけるフェノキシ樹脂の溶解性が低下する場合がある。
【0050】
フェノキシ樹脂の含有量としては、例えば、樹脂組成物全体の1〜40重量%とすることができ、特に、5〜30重量%とすることが好ましい。
これにより、絶縁樹脂層付きキャリアを製造する際の製膜性を向上させる効果を充分に発現させることができるとともに、低熱膨張性を付与することができ、これらの特性のバランスに優れたものとすることができる。
フェノキシ樹脂の含有量が小さすぎると、フェノキシ樹脂により製膜性を向上させる効果が充分でないことがある。一方、含有量が大きすぎると、相対的にシアネート樹脂の含有量が少なくなるため、低熱膨張性を付与する効果が低下する場合がある
【0051】
上記樹脂組成物は単独で用いてよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。上述したシアネート樹脂(特にノボラック型シアネート樹脂)と、上記フェノール樹脂(アリールアルキレン型フェノール樹脂、特にビフェニルジメチレン型フェノール樹脂)とを組み合わせて用いた場合、樹脂成分の架橋密度を制御することができ、また、本発明のキャリア付きプリプレグを用いて多層プリント配線板を製造する場合に、絶縁層と導体金属との密着性を向上させることができる。
さらに、上述したシアネート樹脂(特にノボラック型シアネート樹脂)と、上記エポキシ樹脂(アリールアルキレン型エポキシ樹脂、特にビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂)と、上記フェノール樹脂(アリールアルキレン型フェノール樹脂、特にビフェニルジメチレン型フェノール樹脂)とを組み合わせて用いた場合、上記効果に加えて、多層プリント配線板の寸法安定性を特に向上させることができる。
【0052】
また、上述したシアネート樹脂(特にノボラック型シアネート樹脂)と、上記エポキシ樹脂(アリールアルキレン型エポキシ樹脂、特にビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂)と、フェノキシ樹脂(特にビフェニル骨格と、ビスフェノールS骨格とを有するフェノキシ樹脂)とを組み合わせて用いることにより、上記効果に加えて、ガラス転移温度を高くすることができるとともに、絶縁樹脂層付きキャリアを製造する際の製膜性を向上させ、取り扱い性を良好なものとすることができる。
【0053】
樹脂組成物には、以上に説明した樹脂成分のほか、無機充填材を含有することができる。
これにより、薄い繊維布を用いた厚みの小さいキャリア付きプリプレグに適用した場合でも、硬化物の機械的強度を優れたものとできるとともに、低熱膨張化をさらに向上させることもできる。
【0054】
上記無機充填材としては例えば、タルク、アルミナ、ガラス、シリカ、マイカ等を挙げることができる。
これらの中でも、シリカが好ましく、溶融シリカが低熱膨張性に優れる点で好ましい。
溶融シリカの形状としては例えば、破砕形状、球状等があるが、特に、球状の溶融シリカを用いると、樹脂組成物の溶融粘度を低くすることができるので、繊維布基材への含浸性を向上させることができる。
【0055】
上記無機充填材の平均粒子径としては、例えば、0.01〜5.0μmであるものを用いることができ、特に、0.2〜2.0μmであるものを好適に用いることができる。
これにより、液状樹脂組成物を調製する際の作業性を良好なものとすることができる。
上記平均粒子径が小さすぎると、樹脂組成物を有機溶剤等により溶解及び/又は分散させた液状樹脂組成物を調製する際に、その粘度が高くなって作業性に影響を与えることがある。一方、上記平均粒子径が大きすぎると、液状樹脂組成物中で無機充填材の沈降が起こることがある。
上記無機充填剤としては、好ましくは平均粒子径が上記範囲内であるものを1種用いることもできるし、平均粒子径が異なる2種以上を併用することもできる。
この平均粒子径は、例えば、粒度分布測定装置(HORIBA社製・「LA−500」)により測定することができる。
【0056】
上記無機充填材としては、平均粒子径が0.01〜5.0μmである球状の溶融シリカ、特に、平均粒子径が0.2〜2.0μmである球状の溶融シリカを用いることが好ましい。
これにより、樹脂組成物中の無機充填剤の高充填性を向上させることができる。
【0057】
上記無機充填材の含有量としては、例えば、樹脂組成物全体に対して、30〜80重量%とすることができ、40〜70重量%とすることが好ましい。
これにより、無機充填材の配合による上記効果、特に、低熱膨張性を高めることができる。そして、硬化物の吸水性を小さなものとすることができるので、吸湿半田耐熱性を向上させることができる。
【0058】
本発明において用いられる樹脂組成物においては、特に、上記無機充填材を含有する場合、カップリング剤を配合することが好ましい。
このカップリング剤は、シアネート樹脂などの樹脂成分と、無機充填材との界面の濡れ性を向上させることができるので、繊維布に対して樹脂成分及び無機充填材を均一に定着させ、硬化物の耐熱性、特に吸湿後の半田耐熱性を高めることができる。
上記カップリング剤としては、通常用いられるものであれば何でも使用できるが、例えば、エポキシシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アミノシランカップリング剤、及び、シリコーンオイル型カップリング剤の中から選ばれる1種以上のカップリング剤を使用することが好ましい。これにより、上記濡れ性を高くすることができ、硬化物の耐熱性をより向上させることできる。
【0059】
カップリング剤を用いる場合、その含有量としては、例えば、上記無機充填材100重量部に対して、0.05〜3重量部とすることができ、特に、0.1〜2重量部とすることが好ましい。
これにより、無機充填材を被覆することによる作用効果を充分に発現できるとともに、硬化物特性を良好なものとすることができ、これらの特性のバランスに優れたものとすることができる。
カップリング剤の含有量が少なすぎると、無機充填材を被覆する作用が充分でないことがある。一方、カップリング剤の含有量が大きすぎると、樹脂成分の反応に影響を与え、硬化物の機械的強度が低下することがある。
【0060】
本発明で用いられる樹脂組成物には、このほか、必要に応じて硬化促進剤を用いることができる。
硬化促進剤としては公知のものを用いることができるが、例えば、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸スズ、オクチル酸コバルト、ビスアセチルアセトナートコバルト(II)、トリスアセチルアセトナートコバルト(III)等の有機金属塩、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン等の3級アミン類、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−〔2'−メチルイミダゾリル−(1')〕−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−(2'−ウンデシルイミダゾリル)−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−〔2'−エチル−4−メチルイミダゾリル−(1')〕−エチル−s−トリアジン、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール等のイミダゾール類、フェノール、ビスフェノールA、ノニルフェノール等のフェノール化合物、酢酸、安息香酸、サリチル酸、パラトルエンスルホン酸等の有機酸等、またはこの混合物が挙げられる。
これらの中でも、樹脂組成物として、シアネート樹脂と、エポキシ樹脂と、フェノキシ樹脂とを含有するものを用いた場合には、硬化促進剤として、イミダゾール化合物を好適に用いることができる。これにより、樹脂組成物の絶縁性を低下させることなく、シアネート樹脂やエポキシ樹脂の反応を促進することができる。
イミダゾール化合物としては、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、ヒドロキシアルキル基、及び、シアノアルキル基の中から選ばれる官能基を2個以上有しているイミダゾール化合物が好ましく、特に2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾールが好ましい。このようなイミダゾール化合物の使用により、樹脂組成物の耐熱性を向上させることができるとともに、多層プリント配線板に低熱膨張性、低吸水性を付与することができる。
【0061】
上記硬化促進剤を用いる場合、その配合量としては、例えば、樹脂組成物全体に対して0.05〜5重量%とすることができ、特に、0.2〜2重量%とすることが好ましい。
これにより、樹脂組成物の硬化を促進できるとともに、キャリア付きプリプレグの保存性を良好なものとすることができ、これらの特性のバランスに優れたものとすることができる。
硬化促進剤の含有量が少なすぎると、硬化促進する効果が充分に発現しないことがある。一方、硬化促進剤の含有量が多すぎると、キャリア付きプリプレグの保存性が低下する場合がある。
【0062】
本発明で用いられる樹脂組成物には、このほか、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂等の熱可塑性樹脂を併用することもできる。
また、必要に応じて、顔料、酸化防止剤等の上記成分以外の添加物を添加することもできる。
【0063】
本発明においては、上記成分からなる樹脂組成物を、有機溶剤等により溶解及び/又は分散させた液状樹脂組成物の形態として用いることができる。これにより、絶縁樹脂層付きキャリアの絶縁樹脂層を簡易に形成することができる。
【0064】
次に、上記絶縁樹脂層付きキャリアについて説明する。
本発明で用いられる絶縁樹脂層付きキャリアは、上記キャリアの片面側に、上記絶縁樹脂材料から形成された絶縁樹脂層を有するものである。その調製方法としては特に限定されないが、一例を挙げると、コンマコーター、ナイフコーターなど各種コーター装置を用いて、液状の絶縁樹脂をキャリアに塗工する方法、噴霧ノズルなどの各種スプレー装置を用いて、液状の絶縁樹脂をキャリアに塗工する方法、などが挙げられる。
これらの中でも、各種コーター装置を用いて、液状の絶縁樹脂をキャリアに塗工する方法が好ましい。これにより、簡易な装置で厚み精度に優れた絶縁樹脂層を形成することができる。
【0065】
絶縁樹脂層付きキャリアを製造する際には、キャリアに液状の絶縁樹脂を塗工後、必要に応じて、常温または加温下で乾燥させることができる。
これにより、液状の絶縁樹脂を調製する際に有機溶媒や分散媒体などを用いた場合は、これらを実質的に除去して、絶縁樹脂層表面のタック性をなくし、取り扱い性に優れた絶縁樹脂層付きキャリアとすることができる。
また、絶縁樹脂の硬化反応を中途まで進め、(a)工程、あるいは、後述する(b)工程における絶縁樹脂の流動性を調整することもできる。
上記加温下で乾燥させる方法としては特に限定されないが、例えば、熱風乾燥装置、赤外線加熱装置などを用いて連続的に処理する方法を好ましく適用することができる。
【0066】
本発明で用いられる絶縁樹脂層付きキャリアにおいて、絶縁樹脂層の厚みは、用いる繊維布の厚みなどに応じて適宜設定することができる。一例を挙げると、5〜100μmとすることができる。
なお、この絶縁樹脂層は、同じ絶縁樹脂を用いて一回又は複数回数の塗工で形成されてもよいし、異なる絶縁樹脂を用いて複数回数の塗工で形成されたものであってもよい。
【0067】
このようにして絶縁樹脂層付きキャリアを製造後、絶縁樹脂層を形成した上面側、すなわち、キャリアと反対面側に、絶縁樹脂層表面の保護のために、保護フィルムを重ね合わせることができる。
【0068】
次に、絶縁樹脂層付きキャリアと繊維布とを重ね合わせる際の形態について説明する。
図1(3)は、絶縁樹脂層付きキャリア3と、繊維布4とを重ね合わせる際の形態5を例示したものである。
繊維布4は、キャリア1の搬送方向と同じ方向に連続的に供給・搬送することができるものであり、幅方向寸法9を有している。ここで、幅方向寸法9とは、繊維布4の搬送方向と直交方向における繊維布4の寸法を指す。このような繊維布4としては、例えば、長尺状のシート形態のものを好適に用いることができる。
【0069】
上記繊維布の材質としては特に限定されないが、例えば、ガラス繊布、ガラス不繊布等のガラス繊維布、ガラス以外の無機化合物を成分とする繊布又は不繊布等の無機繊維布、芳香族ポリアミド樹脂、ポリアミド樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂等の有機繊維で構成される有機繊維布等が挙げられる。
これらの中でも、ガラス繊維布であるガラス織布を用いると、多層プリント配線板の機械的強度、耐熱性を良好なものとすることができる。
【0070】
上記繊維布としてガラス織布を用いる場合、その厚みとしては、一例を挙げると、15〜180μmのものを用いることができる。また、坪量(1mあたりの繊維布の重量)としては例えば、17〜209g/mのものを用いることができる。
そして、本発明の製造方法においては、特に、厚み15〜35μm、坪量17〜25g/mであるような薄手のガラス織布を用いることができる。そして、このようなガラス織布を用いた場合でも、繊維布を構成する繊維束に曲がりを生じにくいので、機械的特性や含浸性に優れたキャリア付きプリプレグとすることができる。
【0071】
従来のプリプレグの製造方法は、例えば、通常の塗工装置を用いて、繊維布を樹脂ワニスに浸漬含浸・乾燥させる方法では、多数の搬送ロールを通したり、繊維布に含浸させる絶縁樹脂量を調整したりする際に、繊維布に応力が作用しやすいという問題があった。
これは、特に上記のような薄手のガラス織布を用いた場合にはその影響が顕著であり、繊維束に曲がりを生じたり、縦糸と横糸との開き目の部分が拡大したりしやすい。このようなプリプレグは、内部歪を有することで、多層プリント配線板の反り、寸法安定性などの機械的特性に影響を与えたり、拡大した開き目の部分に局部的な樹脂充填欠損部を有することにより、多層プリント配線板の成形性が低下したりするという問題があった。
これに対して、本発明のキャリア付きプリプレグの製造方法では、繊維布の厚みや坪量に関わらず、繊維布に応力が作用しにくいので、繊維束の曲がり等が生じにくく、かつ、含浸性に優れたものとすることができる。そして、このキャリア付きプリプレグを用いると、機械的特性や成形性に優れた多層プリント配線板を製造することができるという利点を有するものである。また、絶縁樹脂としてシアネート樹脂を用いた場合には、さらに耐熱性、低熱膨張性が良好な多層プリント配線板を製造することができるという利点を有するものである。
【0072】
上記(a)工程においては、絶縁樹脂層付きキャリア3を2つ用いる。これらをそれぞれ、第一の絶縁樹脂層付きキャリア、及び、第二の絶縁樹脂層付きキャリアと呼称する。
そして、上記第一及び第二の絶縁樹脂層付きキャリアの絶縁樹脂層側を、樹脂を含浸させていない繊維布4の両面側にそれぞれ重ね合わせる。
上記(a)工程で用いる第一の絶縁樹脂層付きキャリアと第二の絶縁樹脂層付きキャリアとしては、同じものを用いることもできるし、異なるものを用いることもできる。
【0073】
次に、(b)工程について説明する。
この(b)工程は、繊維布基材の両面に絶縁樹脂層付きキャリアの絶縁樹脂層側を重ね合わせて、これらを接合した後、絶縁樹脂の溶融温度以上の温度で加熱処理するものである。
これにより、(a)工程において、絶縁樹脂層付きキャリアと繊維布とが接合した時点で残存していた、減圧ボイドあるいは実質的な真空ボイドを消失させることができ、非充填部分が非常に少ない、あるいは、非充填部分が実質的に存在しないキャリア付きプリプレグを製造することができる。
【0074】
上記加熱処理する方法としては特に限定されないが、例えば、熱風乾燥装置、赤外線加熱装置、加熱ロール装置、平板状の熱盤プレス装置などを用いて実施することができる。
熱風乾燥装置、赤外線加熱装置を用いた場合は、上記接合したものに実質的に圧力を作用させることなく実施することができる。
また、加熱ロール装置、平板状の熱盤プレス装置を用いた場合は、上記接合したものに所定の圧力を作用させることで実施することができる。
【0075】
これらの中でも、上記接合したものに実質的に圧力を作用させることなく実施する方法が好ましい。
この方法によれば、(b)工程で樹脂成分を過剰に流動させることがないので、所望とする絶縁層厚みを有し、かつ、この絶縁層厚みにおいて高い均一性を有したキャリア付きプリプレグを効率良く製造することができる。
また、樹脂成分の流動に伴って繊維布基材に作用する応力を最小限とすることができるので、内部歪を非常に少ないものとすることができる。
さらには、樹脂成分が溶融した際に、実質的に圧力が作用していないので、この工程における打痕不良の発生を実質的になくすことができる。
【0076】
上記加熱処理する際の温度は、用いる絶縁樹脂が溶融し、かつ、絶縁樹脂の硬化反応が急速に進行しないような温度域とすることが好ましい。
また、加熱処理する時間は、用いる絶縁樹脂の種類などにより異なるため特に限定されないが、一例を挙げると、1〜10分間処理することにより実施することができる。
【0077】
本発明の製造方法においては、キャリア、絶縁樹脂層、及び、繊維布を用いる。ここで、各々の幅方向寸法の関係について、その形態例を挙げて説明する。
本発明の製造方法において、キャリア、絶縁樹脂層、及び、繊維布としては、例えば、図2(1)〜(3)、図3(1)〜(3)、及び、図4(1)〜(3)に示したような、種々の幅方向寸法を有する形態で用いることができる。
【0078】
まず、図2(1)〜(3)に示した形態について説明する。
図2(1)〜(3)においては、第一の絶縁樹脂層付きキャリア3a、及び、第二の絶縁樹脂層付きキャリア3aとして、繊維布4よりも幅方向寸法が大きいキャリアを有するとともに、繊維布4よりも幅方向寸法が大きい絶縁樹脂層を有するものを用いている。ここで、キャリア、絶縁樹脂層、繊維布の各々の幅方向寸法の関係を図2(1)に示す。
この形態では、上記(a)工程において、繊維布4の幅方向寸法の内側領域、すなわち、幅方向で繊維布4が存在する領域においては、第一の絶縁樹脂層付きキャリア3aの絶縁樹脂層と繊維布4、及び、第二の絶縁樹脂層付きキャリア3aの絶縁樹脂層と繊維布4とをそれぞれ接合することができる。
また、繊維布4の幅方向寸法の外側領域、すなわち、繊維布が存在していない領域においては、第一の絶縁樹脂層付きキャリア3aが有する絶縁樹脂層面と、第二の絶縁樹脂層付きキャリア3aが有する絶縁樹脂層面とを直接接合することができる。この状態を図2(2)に示す。
そして、これらの接合を減圧下で実施するため、繊維布4の内部、あるいは、第一及び第二の絶縁樹脂層付きキャリア3a,3aの絶縁樹脂層と繊維布4との接合面などに非充填部分が残存していても、これらを減圧ボイドあるいは実質的な真空ボイドとすることができるので、(b)工程において、樹脂の溶融温度以上の温度域で加熱処理した場合、これを容易に消失させることができる。そして、(b)工程において、幅方向の周辺部から空気が侵入して新たなボイドが形成されるのを防ぐことができる。この状態を図2(3)に示す。
【0079】
次に、図3(1)〜(3)に示した形態について説明する。
図3(1)〜(3)においては、第一の絶縁樹脂層付きキャリア、及び、第二の絶縁樹脂層付きキャリアとして、繊維布4よりも幅方向寸法が大きいキャリアを有するとともに、2つの絶縁樹脂層付きキャリアのうちの一方、例えば第一の絶縁樹脂層付きキャリア3aとして、繊維布4よりも幅方向寸法が大きい絶縁樹脂層を有するものを用い、第二の絶縁樹脂層付きキャリア3bとして、繊維布4と幅方向寸法が同じ絶縁樹脂層を有するものを用いている。ここで、キャリア、絶縁樹脂層、繊維布の各々の幅方向寸法の関係を図3(1)に示す。
この形態では、上記(a)工程において、繊維布4の幅方向寸法の内側領域、すなわち、繊維布4が存在する領域においては、第一の絶縁樹脂層付きキャリア3aの絶縁樹脂層と繊維布4、及び、第二の絶縁樹脂層付きキャリア3bの絶縁樹脂層と繊維布4とをそれぞれ接合することができる。
また、繊維布4の幅方向寸法の外側領域、すなわち、繊維布が存在していない領域においては、第一の絶縁樹脂層付きキャリア3aが有する絶縁樹脂層面と、第二の絶縁樹脂層付きキャリア3bのキャリア面とを直接接合することができる。この状態を図3(2)に示す。
そして、これらの接合を減圧下で実施するため、繊維布4の内部、あるいは、第一及び第二の絶縁樹脂層付きキャリア絶縁樹脂層3a,3bと繊維布4との接合面などに非充填部分が残存していても、これらを減圧ボイドあるいは実質的な真空ボイドとすることができるので、(b)工程において、樹脂の溶融温度以上の温度域で加熱処理した場合、これを容易に消失させることができる。そして、(b)工程において、幅方向の周辺部から空気が侵入して新たなボイドが形成されるのを防ぐことができる。この状態を図3(3)に示す。
【0080】
次に、図4(1)〜(3)に示した形態について説明する。
図4(1)〜(3)においては、第一の絶縁樹脂層付きキャリア3b、及び、第二の絶縁樹脂層付きキャリア3bとして、繊維布4と幅方向寸法が同じ絶縁樹脂層を有するものを用いている。ここで、キャリア、絶縁樹脂層、繊維布の各々の幅方向寸法の関係を図4(1)に示す。
この形態では、上記(a)工程において、繊維布4の幅方向寸法の内側領域、すなわち、繊維布4が存在する領域においては、第一の絶縁樹脂層付きキャリア3bの絶縁樹脂層と繊維布4、及び、第二の絶縁樹脂層付きキャリア3bの絶縁樹脂層と繊維布4とをそれぞれ接合することができる。この状態を図4(2)に示す。
この形態では、上記(a)工程後、すなわち第一及び第二の絶縁樹脂層付きキャリア3b,3bと繊維布4とを接合した時点で、幅方向の端部位に存在する非充填部分と、幅方向の端部位以外の部位に存在する非充填部分とが連通しないようにしておくことが好ましい。
これにより、幅方向の端部位以外の部位に存在する非充填部分については、(a)工程を減圧下で実施しているため減圧ボイドあるいは実質的な真空ボイドとすることができ、(b)工程において、樹脂の溶融温度以上の温度域で加熱処理された場合、これを容易に消失させることができる。そして、(b)工程において、幅方向の周辺部から空気が侵入して新たなボイドが形成される場合でも、これを幅方向の端部位のみとすることができる。この状態を図4(3)に示す。
【0081】
本発明のキャリア付きプリプレグの製造方法においては、上記形態の中でも、図2(1)〜(3)に示した形態、あるいは、図3(1)〜(3)に示した形態が好ましい。すなわち、第一の絶縁樹脂層付きキャリア、及び、第二の絶縁樹脂層付きキャリアとして、繊維布よりも幅方向寸法が大きいキャリアを有するとともに、いずれか一方または両方の絶縁樹脂層付きキャリアが、繊維布よりも幅方向寸法が大きい絶縁樹脂層を有するものを用いることが好ましい。
これにより、(a)工程で、絶縁樹脂層により繊維布を封じて密閉することができ、繊維布が存在する領域全体において、ボイドが少ない、あるいは、実質的にボイドが存在しないキャリア付きプリプレグを製造することができる。
【0082】
特に、図2(1)〜(3)に示した形態、すなわち、第一の絶縁樹脂層付きキャリア3a、及び、第二の絶縁樹脂層付きキャリア3aとして、繊維布4よりも幅方向寸法が大きいキャリアを有するとともに、繊維布4よりも幅方向寸法が大きい絶縁樹脂層を有するものを用いることが好ましい。
この形態では、繊維布4の幅方向寸法の外側領域において、両方の絶縁樹脂層付きキャリアに絶縁樹脂層が存在するので、より簡易に、絶縁樹脂層により繊維布4を封じて密閉することができ、上記効果を効果的に発現させることができる。
【0083】
本発明のキャリア付きプリプレグの製造方法においては、上記(b)工程の後、必要に応じて、上記で得られたキャリア付きプリプレグを連続して巻き取る工程を有することができる。
これにより、キャリア付きプリプレグを巻物形態とすることができ、このキャリア付きプリプレグを用いて、多層プリント配線板などを製造する際の取り扱い作業性を向上させることができる。
【0084】
次に、本発明のキャリア付きプリプレグの製造装置について、好適な実施の形態を図面により説明する。
図5は、本発明の製造方法を適用することができる装置の一例を示す断面側面図である。
【0085】
図5(1)は、本発明のキャリア付きプリプレグの製造に用いられる絶縁樹脂層付きキャリアを製造する形態の一例を示すものである。
図5(1)において、キャリア1aは、例えば長尺のシート品を巻物形態としたものなどを用い、これより連続的に巻き出すことにより供給することができる。
液状の絶縁樹脂11は、図示されない絶縁樹脂の供給装置により、所定量が連続的にキャリア1a上に供給される。絶縁樹脂11の塗工量は、コンマロール12と、コンマロール12のバックアップロール13とのクリアランスにより制御することができる。
所定量の絶縁樹脂が塗工されたキャリア1bは、横搬送型の熱風乾燥装置14、14の内部を移送し、液状の絶縁樹脂中に含有される有機溶剤などを実質的に乾燥除去し、必要に応じて、硬化反応を途中まで進めた絶縁樹脂層付きキャリア1cとすることができる。好ましい実施態様において、ここで得られる絶縁樹脂層付きキャリアの絶縁樹脂層はフィルムであってもよい。
絶縁樹脂層付きキャリア1cは、そのまま巻き取ることもできるが、図5(1)の形態においては、ラミネートロール16、16により、絶縁樹脂層が形成された側に保護フィルム15を重ね合わせ、保護フィルム15がラミネートされた絶縁樹脂層付きキャリア1dとし、これを巻き取って巻物形態の絶縁樹脂層付きキャリア17を得ている。
【0086】
図5(2)は、本発明の製造方法の(a)〜(b)工程を実施できる装置の一例を示す断面側面図であり、具体的には、樹脂を含浸させていない繊維布の両面側に絶縁樹脂層付きキャリアの絶縁樹脂層側を重ね合わせ、減圧条件下で接合した後、絶縁樹脂の溶融温度以上の温度で加熱処理して、これを連続して巻き取り、キャリア付きプリプレグを製造する形態の一例を示すものである。
【0087】
図5(2)において(a)工程は、真空ラミネート装置20を使用して実施される。
真空ラミネート装置20の内部は、図示されない真空ポンプなどの減圧手段により、所定の減圧条件に設定されている。
真空ラミネート装置20の内部には、上記(a)工程で得られた絶縁樹脂層付きキャリア17、17と、繊維布21とが、それぞれ連続的に供給可能に設置されている。
絶縁樹脂層付きキャリア17、17は、絶縁樹脂層表面に前記保護フィルムがラミネートされているので、巻き取りロール23により、当該保護フィルムを剥離しながら連続的に供給される(1e、1e)。また、繊維布21aは、巻物形態の繊維布21から連続的に供給される。
保護フィルムが剥離除去された絶縁樹脂層付きキャリア1e、1eと、繊維布21aとは、絶縁樹脂層付きキャリア1e、1eのそれぞれ絶縁樹脂層側で繊維布21aを挟む形態で重ね合わされ、ラミネートロール24、24により接合される。このとき、絶縁樹脂層は繊維布21aに含浸される。
ラミネートロール24、24間のクリアランスは、絶縁樹脂層付きキャリアと繊維布との接合に際して、実質的に圧力が作用しない程度に設定することもできるし、任意の圧力が作用するように設定することもできる。
接合後の接合物22aは、そのまま次工程に送ることもできるし、ラミネートロール25、25、同26、26、同27、27により、温度と圧力を作用させて、絶縁樹脂層付きキャリアと繊維布との接合程度を調整することもできる。
なお、図5(2)において、ラミネートロール17、17は、真空ラミネート装置20の内部を所定の減圧条件に維持するため、真空ラミネート装置20の外部から内部への空気の侵入を抑制するシールロールとしての機能をも有している。
接合後の接合物22bは、横搬送型の熱風乾燥装置28、28間を移送し、絶縁樹脂の溶融温度以上の温度で加熱処理する。これにより、接合物の内部に残存している非充填部分を消失させることができる。
加熱処理後のキャリア付きプリプレグ22cは、ピンチロール29、29で挟みながら、これを連続的に巻き取ることにより、巻物形態のキャリア付きプリプレグ30とすることができる。
【0088】
次に、本発明のキャリア付きプリプレグについて説明する。
本発明のキャリア付きプリプレグは、上記本発明のキャリア付きプリプレグの製造方法により得られたものであることを特徴とする。
【0089】
次に、本発明の多層プリント配線板の製造方法について説明する。
本発明の多層プリント配線板の製造方法は、
(c)上記本発明のキャリア付きプリプレグの少なくとも一方のキャリアを除去する工程と、
(d)キャリア付きプリプレグのキャリアが除去された側の絶縁樹脂層を、回路加工が施された内層回路基板に重ね合わせ、これらを成形する工程と、
を有することを特徴とする。
【0090】
まず、上記(c)工程について説明する。
上記(c)工程は、キャリア付きプリプレグの少なくとも内層回路基板の回路形成面と重ね合わせる側のキャリアを除去して、絶縁樹脂面を露出させる工程である。
【0091】
次に、上記(d)工程について説明する。
上記(d)工程は、キャリア付きプリプレグのキャリアが除去された側の絶縁樹脂層を、回路加工が施された内層回路基板に重ね合わせ、これらを加熱加圧成形する工程である。
【0092】
上記(c)〜(d)工程の実施方法としては特に限定されないが、例えば、内層回路基板、キャリア付きプリプレグとも、連続的に供給して、キャリア付きプリプレグについては内層回路基板側のキャリアを除去しながら、キャリア付きプリプレグと内層回路基板とを真空ラミネート装置などを用いて連続的に成形し、その後、熱風乾燥装置等で加熱硬化させる方法により製造することができる。
ここで成形する条件としては特に限定されないが、一例を挙げると、温度60〜160℃、圧力0.2〜3MPaで実施することができる。また、加熱硬化させる条件としては特に限定されないが、一例を挙げると、温度140〜240℃、時間30〜120分間で実施することができる。
【0093】
本発明の多層プリント配線板の製造方法において、上記(d)工程は、キャリア付きプリプレグのキャリアが除去された側と反対側にキャリアを有した状態で実施することが好ましい。
これにより、キャリアと接している側の絶縁樹脂層は、キャリア表面と実質的に同等の平滑性を維持することができるので、絶縁樹脂の硬化時に、繊維布表面の凹凸に沿った絶縁樹脂層の凹凸が発生することを防ぎ、表面平滑性に優れた絶縁樹脂層を有した多層プリント配線板を製造することができる。
【0094】
上記で得られた多層プリント配線板は、絶縁樹脂層表面のキャリアを剥離除去して、絶縁樹脂層表面を過マンガン酸塩、重クロム酸塩等の酸化剤などにより粗化処理した後、金属メッキにより新たな導電回路を形成することができる。
また、キャリアとして絶縁樹脂層が形成される面に剥離可能な処理が施されていないか、絶縁樹脂層との密着性を向上させる処理が施された金属箔を用いる場合は、この金属箔をエッチング処理することにより、所定の導体回路を形成することができる。
【0095】
なお、多層プリント配線板を得る際に用いられる内層回路板は、例えば、銅張積層版の両面に、エッチング等により所定の導体回路を形成し、導体回路部分を黒化処理したものを好適に用いることができる。
【0096】
本発明はさらに、薄型両面板の製造方法および薄型両面板を提供するものである。以下に本発明の薄型両面板の製造方法および該方法により製造された薄型両面板について詳細に説明する。
本発明に係る薄型両面板の製造方法は、繊維布の骨格材を含む絶縁樹脂層を含有する薄型両面板を得る工程を含み、該繊維布の骨格材を含む絶縁樹脂層は繊維布の骨格材の両面側に第一および第二の絶縁樹脂層を含浸させることにより得られ、該第一および第二の絶縁樹脂層は繊維布の骨格材に含浸させる反対側にキャリアを有するキャリア付き絶縁樹脂層であり、かつ該繊維布の骨格材を含む絶縁樹脂の厚みが50μm以下である。
従来、プリプレグを製造した後に銅箔等のキャリアを貼り付けるというような方法が採られていた。しかしながら、このような方法では薄型の基板を得ることが困難であり、また、樹脂を繊維布に塗布、含浸させるときに十分に含浸させることができないという問題があった。一方、上記方法によれば、繊維布の骨格材を含む絶縁樹脂層の厚みが50μm以下の非常に薄型の両面板を得ることができる。ここで、本発明でいう薄型両面板とは、繊維布の骨格材を含む絶縁樹脂層を加熱硬化させることにより得られるものをいう。
【0097】
前記薄型両面板の製造方法は例えば、
(a)上記第一および第二のキャリア付き絶縁樹脂層の絶縁樹脂側を、上記繊維布の骨格材の両面側にそれぞれ重ね合わせ、減圧条件下でこれらを接合する工程と、
(b)上記接合後に、上記繊維布の骨格材を含む絶縁樹脂層を加熱硬化させて薄型両面板を得る工程と
を含む。
本発明の方法により形成される繊維布の骨格材を含む絶縁樹脂層の厚さは、用いる繊維布の厚みなどの応じて適宜設定することができるが、好ましくは50μm以下であり、さらに好ましくは12μm以上50μm以下、さらに好ましくは20μm以上40μm以下である。上記方法により、このような薄型両面板を製造することが可能になる。
また、樹脂を含浸させる繊維布の厚みは、好ましくは48μm以下であり、さらに好ましくは10μm以上48μm以下、さらに好ましくは15μm以上35μm以下である。
【0098】
ここで用いられる繊維布は、特に限定されないが、上記に記載のものと同様のものを用いることができる。好ましくは、ガラス織布が用いられる。ここで用いられる繊維布は樹脂を含浸させていない繊維布である。
【0099】
絶縁樹脂層に用いられる樹脂材料は、特に限定されないが、上記に記載のものと同様のものを用いることができる。好ましくは、絶縁樹脂層は熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物で構成され、例えばシアネート樹脂および/またはそのプレポリマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂である。
【0100】
樹脂組成物には、さらに無機充填材を含むことができ、これにより、薄い繊維布を用いた厚みの小さい薄型両面板に適用した場合でも、硬化物の機械的強度を優れたものとできるとともに、低熱膨張化をさらに向上させることもできる。
無機充填材としては、上記と同様のものを用いることができるが、これらの中でも、シリカが好ましい。さらに、溶融シリカが低熱膨張性に優れる点で好ましい。
溶融シリカの形状としては例えば、破砕形状、球状等があるが、特に、球状の溶融シリカを用いると、樹脂組成物の溶融粘度を低くすることができるので、繊維布基材への含浸性を向上させることができる。
【0101】
無機充填材の含有量は、例えば、樹脂組成物全体に対して、30〜80重量%とすることができ、40〜70重量%とすることが好ましい。これにより、無機充填材の配合による上記効果、特に、低熱膨張性を高めることができる。そして、硬化物の吸水性を小さなものとすることができるので、吸湿半田耐熱性を向上させることができる。
その他、無機充填材に関しては上述した通りである。
【0102】
無機充填材を含有する場合、カップリング剤を配合することが好ましい。カップリング剤としては、上記と同様のものを用いることができる。
【0103】
また、樹脂組成物は硬化促進剤を含むことができ、硬化促進剤に関しては上述した通りである。さらに、上述した通り、樹脂組成物には、このほか、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂等の熱可塑性樹脂を併用することもできる。また、必要に応じて、顔料、酸化防止剤等の上記成分以外の添加物を添加することもできる。
【0104】
キャリアは上記と同様のものを用いることができ、特に限定されないが、例えば金属箔や剥離可能な処理が施されたフィルムシートである。
【0105】
減圧条件下で接合する手法も上記に記載のものと同様のものを用いることができる。例えば、接合は、第一及び第二の絶縁樹脂層付きキャリアと繊維布とを重ね合わせて積層体とし、該積層体を両面から少なくとも1対のラミネートロール間を通して両面から押圧しながら接合させることが好ましい。かかる方法を用いることにより、絶縁樹脂層の繊維布への十分な含浸が達成できる。
【0106】
また、絶縁樹脂層は好ましくはフィルムである。フィルムとすることで、ロールを用いた押圧および接合が容易になる。
【0107】
加熱硬化する手法としては、特に限定されないが、例えば、熱風乾燥装置内で130℃、150℃、180℃でそれぞれ2分間処理した後に、200℃で30分間処理する方法が挙げられる。ここで、熱風乾燥装置内にロールを設置しておき、このロールに這わせることにより短い熱風乾燥装置内で長時間の加熱硬化処理を行うことができる。
【0108】
図7は、本発明の方法により製造された薄型両面板の1の形態を示す概略図である。図2(1)〜(3)においては、第一の絶縁樹脂層付きキャリア30a、及び、第二の絶縁樹脂層付きキャリア30aとして、繊維布40よりも幅方向寸法が大きいキャリアを有するとともに、繊維布4よりも幅方向寸法が大きい絶縁樹脂層を有するものを用いている。ここで、キャリア、絶縁樹脂層、繊維布の各々の幅方向寸法の関係を図7(1)に示す。
本発明の薄型両面板の製造方法においては、上記形態のほかに、2つの絶縁樹脂層付きキャリアのうちの一方、例えば第一の絶縁樹脂層付きキャリアとして、繊維布4よりも幅方向寸法が大きい絶縁樹脂層を有するものを用い、第二の絶縁樹脂層付きキャリアとして、繊維布4と幅方向寸法が同じ絶縁樹脂層を有するものを用いてもよい。さらに、他の形態として、第一の絶縁樹脂層付きキャリア、及び、第二の絶縁樹脂層付きキャリアとして、繊維布4と幅方向寸法が同じ絶縁樹脂層を有するものを用いてもよい。
これらの形態の中でも、第一の絶縁樹脂層付きキャリア、及び、第二の絶縁樹脂層付きキャリアとして、繊維布よりも幅方向寸法が大きいキャリアを有するとともに、いずれか一方または両方の絶縁樹脂層付きキャリアが、繊維布よりも幅方向寸法が大きい絶縁樹脂層を有するものを用いることが好ましい。
【0109】
また、薄型両面板は多層プリント配線板の製造に用いることができる。本発明の多層プリント配線板の製造方法について以下に説明する。
本発明の多層プリント配線板の製造方法としては、例えば、以下のような方法がある。本発明の薄型両面板に層間接続用のスルーホールを形成し、サブトラクティブ工法により回路を製作する。その後、任意のビルドアップ材を積層して、アディティブ工法により層間接続及び回路形成する工程を繰り返し、多層プリント配線板を製造する。ここで、本発明の薄型両面板は連続的に製造することができるため、多層プリント配線板の製造方法も連続して行うことが可能となる。
【0110】
以上に説明したように、本発明の製造方法によれば、繊維布の骨格材を含む絶縁樹脂層を有するキャリア付きプリプレグを連続的に製造する方法が提供され、この方法により、含浸性、厚み精度に優れたキャリア付きプリプレグを簡易に製造することができる。特に、厚みが薄い繊維布を用いた場合でも、内部歪が少なく、含浸性に優れたものとすることができる。
そして、本発明のキャリア付きプリプレグを用いた多層プリント配線板は、反り、寸法安定性などの機械的特性、成形性に優れたものであり、高密度化、高多層化が要求されるプリント配線板など信頼性が要求される用途に好適に用いることができるものである。また、シアネート樹脂を用いた場合のキャリア付きプリプレグは、さらに耐熱性、低熱膨張性が良好であり、薄型化が要求されるプリント配線板などの信頼性が要求される用途に好適に用いることができる。
【0111】
さらに、本発明の製造方法によれば、繊維布の骨格材を含む絶縁樹脂層を有する薄型両面板を連続的に製造する方法が提供され、この方法により、含浸性、厚み精度に優れた薄型両面板を簡易に製造することができる。特に、厚みが薄い繊維布を用いた場合でも、内部歪が少なく、含浸性に優れたものとすることができる。
【実施例】
【0112】
以下、本発明を実験例により説明するが、本発明はここで例示された形態に限定されるものではない。
【0113】
A−1.絶縁樹脂層形成用の液状樹脂組成物a1の調製
樹脂成分として、エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製・「Ep5048」)100重量部、硬化剤(ジシアンジアミド)2重量部、及び硬化促進剤(2−エチル−4−メチルイミダゾール)0.1重量部をメチルセルソルブ100重量部に溶解させて樹脂ワニスを調整した。
【0114】
A−2.絶縁樹脂層付きキャリアの製造
(1)絶縁樹脂層付きキャリアA1の製造
キャリアとして厚み35μm、幅480mmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた。
図5(1)に示した形態の装置を用いて、上記キャリアに、上記で得られた液状樹脂組成物a1をコンマコーター装置で塗工し、170℃の乾燥装置で3分間乾燥させ、厚さ20μm、幅410mmの絶縁樹脂層からなるフィルムを、幅方向においてキャリアの中心に位置するように形成した。
この絶縁樹脂層側に、保護フィルム(ポリエチレン)をラミネートして、絶縁樹脂層付きキャリアを製造した。
【0115】
(2)絶縁樹脂層付きキャリアA2の製造
キャリアとしては上記絶縁樹脂層付きキャリアA1と同じものを用いた。
図5(1)に示した形態の装置を用いて、上記キャリアに、上記で得られた液状樹脂組成物a1をコンマコーター装置で塗工し、170℃の乾燥装置で3分間乾燥させ、厚さ20μm、幅360mmの絶縁樹脂層からなるフィルムを、幅方向においてキャリアの中心に位置するように形成した。
この絶縁樹脂層側に、保護フィルム(ポリエチレン)をラミネートして、絶縁樹脂層付きキャリアを製造した。
【0116】
A−3.キャリア付きプリプレグの製造
<実験例A1>
繊維布としてガラス織布(ユニチカグラスファイバー社製・「E02Z−SK」、幅360mm、坪量17g/m)を用いた。
また、上記で得られた絶縁樹脂層付きキャリアA1(2枚)を、第一及び第二の絶縁樹脂層付きキャリアとして用いた。
図5(2)に示した形態の装置を用いて、第一及び第二の絶縁樹脂層付きキャリアの保護フィルムをはがしながら、絶縁樹脂層付きキャリアの絶縁樹脂層側を繊維布の両面側に、繊維布が幅方向においてキャリアの中心に位置するようにそれぞれ重ね合わせ、750Torrの減圧条件下で、80℃のラミネートロール(24)を用いて接合した。
ここで、繊維布の幅方向寸法の内側領域においては、第一及び第二の絶縁樹脂層付きキャリアの絶縁樹脂層側を繊維布の両面側にそれぞれ接合するとともに、繊維布の幅方向寸法の外側領域においては、第一及び第二の絶縁樹脂層付きキャリアの絶縁樹脂層どうしを接合した。
次いで、上記接合したものを、120℃に設定した横搬送型の熱風乾燥装置内を2分間通して加熱処理し、圧力を作用させることなく絶縁樹脂層を溶融させることにより、キャリア付きプリプレグを製造した。
【0117】
<実験例A2>
繊維布としては実験例A1と同じものを用いた。
また、上記で得られた絶縁樹脂層付きキャリアA1を第一の絶縁樹脂層付きキャリア、絶縁樹脂層付きキャリアA2を第二の絶縁樹脂層付きキャリアとして用いた。
図5(2)に示した形態の装置を用いて、第一及び第二の絶縁樹脂層付きキャリアの保護フィルムをはがしながら、絶縁樹脂層付きキャリアの絶縁樹脂層側を繊維布の両面側に、繊維布が幅方向においてキャリアの中心に位置するようにそれぞれ重ね合わせ、750Torrの減圧条件下で、80℃のラミネートロール(24)を用いて接合した。
ここで、繊維布の幅方向寸法の内側領域においては、第一及び第二の絶縁樹脂層付きキャリアの絶縁樹脂層側を繊維布の両面側にそれぞれ接合するとともに、繊維布の幅方向寸法の外側領域においては、第一の絶縁樹脂層付きキャリアの絶縁樹脂層と、第二の絶縁樹脂層付きキャリアのキャリアとを接合した。
次いで、上記接合したものを、120℃に設定した横搬送型の熱風乾燥装置内を2分間通して加熱処理し、圧力を作用させることなく絶縁樹脂層を溶融させることにより、キャリア付きプリプレグを製造した。
【0118】
<実験例A3>
繊維布としては実験例A1と同じものを用いた。
また、上記で得られた絶縁樹脂層付きキャリアA2(2枚)を、第一及び第二の絶縁樹脂層付きキャリアとして用いた。
図5(2)に示した形態の装置を用いて、第一及び第二の絶縁樹脂層付きキャリアの保護フィルムをはがしながら、絶縁樹脂層付きキャリアの絶縁樹脂層側を繊維布の両面側に、繊維布が幅方向においてキャリアの中心に位置するようにそれぞれ重ね合わせ、750Torrの減圧条件下で、80℃のラミネートロール(24)を用いて接合した。
ここで、繊維布の幅方向寸法の内側領域においては、第一及び第二の絶縁樹脂層付きキャリアの絶縁樹脂層側を繊維布の両面側にそれぞれ接合した。
次いで、上記接合したものを、120℃に設定した横搬送型の熱風乾燥装置内を2分間通して加熱処理し、圧力を作用させることなく絶縁樹脂層を溶融させることにより、キャリア付きプリプレグを製造した。
【0119】
<実験例A4>
実験例A1において、第一及び第二の絶縁樹脂層付きキャリアと繊維布とを、730Torrの減圧条件下で接合した以外は、実験例A1と同様にしてキャリア付きプリプレグを製造した。
【0120】
<実験例A5>
繊維布としては実験例A1と同じものを用いた。
また、上記で得られた絶縁樹脂層付きキャリアA1(2枚)を、第一及び第二の絶縁樹脂層付きキャリアとして用いた。
図6に示した形態の装置(図中、図5(2)の構成と共通するものには、図5(2)で用いた符号と同じものを付した)を用いて、第一及び第二の絶縁樹脂層付きキャリアの保護フィルムをはがしながら、絶縁樹脂層付きキャリアの絶縁樹脂層側を繊維布の両面側に、繊維布が幅方向においてキャリアの中心に位置するようにそれぞれ重ね合わせ、常圧条件下で、80℃のラミネートロール(24)を用いて接合し、キャリア付きプリプレグ31を製造した。
【0121】
<実験例A6>
繊維布としては実験例A1と同じものを用いた。
また、上記で得られた絶縁樹脂層付きキャリアA1(2枚)を、第一及び第二の絶縁樹脂層付きキャリアとして用いた。
図5(2)に示した形態の装置を用いて、第一及び第二の絶縁樹脂層付きキャリアの保護フィルムをはがしながら、絶縁樹脂層付きキャリアの絶縁樹脂層側を繊維布の両面側に、繊維布が幅方向においてキャリアの中心に位置するようにそれぞれ重ね合わせ、常圧条件下で、80℃のラミネートロール(24)を用いて接合した。
次いで、上記接合したものを、120℃に設定した横搬送型の熱風乾燥装置内を2分間通して加熱処理し、圧力を作用させることなく絶縁樹脂層を溶融させることにより、キャリア付きプリプレグを製造した。
【0122】
A−4.多層プリント配線板の製造
内層回路基板として、絶縁層厚み0.6mm、回路厚み12μm、回路幅及び回路間幅:L/S=50/50の回路加工が施されたプリント配線板を用いた。
実験例で得られたキャリア付きプリプレグのうち、片側のキャリアを剥離除去し、絶縁樹脂層を露出させ、もう一方の側はキャリアを有した状態とした。上記内層回路基板の両面側に、キャリア付きプリプレグの絶縁樹脂層側をそれぞれ重ね合わせ、温度120℃、圧力1.5MPa、750Torrの減圧下の条件で成形した。その後、200℃の乾燥装置で加熱処理して、多層プリント配線板を製造した。
【0123】
A−5.評価
上記実験例で得られたキャリア付きプリプレグ及び多層プリント配線板について、特性評価を行った。結果を表1に示す。
【0124】
【表1】

【0125】
評価方法は、以下の通りである。
(1)含浸性
実験例で得られたキャリア付きプリプレグの断面を蛍光浸透液に浸漬した後、蛍光浸透液の浸透の有無を顕微鏡で観察した。
また、キャリア付きプリプレグをPCT処理(121℃/100%/120分)した後、260℃の半田槽に30秒間浸漬し、フクレの発生の有無を確認した。
(2)厚み精度
実験例で得られたキャリア付きプリプレグの断面を顕微鏡で観察し、幅方向において120mmピッチで3箇所について厚みを測定し、その平均値と標準偏差値を算出した。
【0126】
実験例A1〜A4は、本発明のキャリア付きプリプレグであり、含浸性、厚み精度に優れたものであった。特に、実験例A1、A2、A4は、第一及び第二の絶縁樹脂層付きキャリアとして、繊維布よりも幅方向寸法が大きいキャリアを有するとともに、いずれか一方または両方が、繊維布よりも幅方向寸法が大きい絶縁樹脂層を有するものを用いたので、含浸性に特に優れたものとなった。
実験例A5は、絶縁樹脂層付きキャリアと繊維布とを常圧下で接合したものであるが、含浸性において劣るものとなった。
実験例A5は、絶縁樹脂層付きキャリアと繊維布とを常圧下で接合した後、これを加熱処理したものであるが、加熱処理中にフクレが発生したため、厚み精度の測定に至らず、キャリア付きプリプレグの製造ができなかった。
【0127】
B−1.液状樹脂組成物の原料
用いた液状樹脂組成物の原料は以下の通りである。
(1)シアネート樹脂1:ノボラック型シアネート樹脂(ロンザジャパン社製、「プリマセット PT−30」、Mw約700)
(2)シアネート樹脂2:ノボラック型シアネート樹脂(ロンザジャパン社製、「プリマセット PT−60」、Mw約2,600)
(3)シアネート樹脂3:ビスフェノールA型シアネート樹脂(旭化成エポキシ社製、「AroCyB−30」)
(4)エポキシ樹脂:ビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂(日本化薬社製、「NC−3000」、エポキシ当量275)
(5)フェノール樹脂:ビフェニルジメチレン型フェノール樹脂(日本化薬社製、「GPH−103」、水酸基当量203)
(6)フェノキシ樹脂1/ビフェニルエポキシ樹脂とビスフェノールSエポキシ樹脂との共重合体であり、末端部はエポキシ基を有している:ジャパンエポキシレジン社製・「YX−8100H30」、重量平均分子量30000)
(7)フェノキシ樹脂2/ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂との共重合体であり、末端部はエポキシ基を有している:ジャパンエポキシレジン社製・「エピコート4275」、重量平均分子量60000)
(8)硬化促進剤/イミダゾール化合物:四国化成工業社製・「1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール」
(9)無機充填材1:球状溶融シリカ(電気化学工業社製、「SFP−10X」、平均粒径0.3μm)
(10)無機充填材2:球状溶融シリカ(アドマテックス社製、「SO−32R」、平均粒径1.5μm)
(11)無機充填材3:球状溶融シリカ(アドマテックス社製、「SO−25R」、平均粒径0.5μm)
(12)カップリング剤:エポキシシラン型カップリング剤(日本ユニカー社製、「A−187」)
【0128】
B−2.シアネート樹脂を含む絶縁樹脂層形成用の液状樹脂組成物の調製
以下、各成分の配合量は固形分基準である。
2.1 絶縁樹脂層形成用の液状樹脂組成物b1の調製
シアネート樹脂1を15重量部、シアネート樹脂2を5重量部、エポキシ樹脂を10重量部、フェノール樹脂を10重量部、各々用い、これらを常温でメチルエチルケトンに溶解した。
次いで、無機充填材1を10重量部、無機充填材2を50重量部、及び、無機充填材1と無機充填材2との合計100重量部に対して、カップリング剤を0.5重量部添加し、高速攪拌装置を用いて10分間攪拌混合して液状樹脂組成物b1を調製した。
【0129】
2.2 絶縁樹脂層形成用の液状樹脂組成物b2の調製
シアネート樹脂1を25重量部、エポキシ樹脂を25重量部、フェノキシ樹脂1を10重量部、硬化促進剤を0.4重量部、各々用い、これらを常温でメチルエチルケトンに溶解した。
次いで、無機充填材3を40重量部、及び、無機充填材3の100重量部に対して、カップリング剤を0.5重量部添加し、高速攪拌装置を用いて10分間攪拌混合して液状樹脂組成物b2を調製した。
【0130】
2.3 絶縁樹脂層形成用の液状樹脂組成物b3の調製
シアネート樹脂1を25重量部、エポキシ樹脂を25重量部、フェノキシ樹脂1を5重量部、フェノキシ樹脂2を5重量部、硬化促進剤を0.4重量部、各々用い、これらを常温でメチルエチルケトンに溶解した。
次いで、無機充填材3を40重量部、及び、無機充填材3の100重量部に対して、カップリング剤を0.5重量部添加し、高速攪拌装置を用いて10分間攪拌混合して液状樹脂組成物b3を調製した。
【0131】
2.4 絶縁樹脂層形成用の液状樹脂組成物b4の調製
シアネート樹脂3を20重量部、エポキシ樹脂を12重量部、フェノール樹脂を8重量部、各々用い、これらを常温でメチルエチルケトンに溶解した。
次いで、無機充填材1を10重量部、無機充填材2を50重量部、及び、無機充填材1と無機充填材2との合計100重量部に対して、カップリング剤を0.5重量部添加し、高速攪拌装置を用いて10分間攪拌混合して液状樹脂組成物b4を調製した。
【0132】
2.5 絶縁樹脂層形成用の液状樹脂組成物b5の調製
エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製・「Ep5048」)100重量部、硬化剤(ジシアンジアミド)2重量部、及び硬化促進剤(2−エチル−4−メチルイミダゾール)0.1重量部をメチルセルソルブ100重量部に溶解させて液状樹脂組成物b5を調整した。
【0133】
B−3.絶縁樹脂層付きキャリアの製造
3.1 絶縁樹脂層付きキャリアB−1の製造
キャリアとして厚み35μm、幅480mmのポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱化学ポリエステル社製・ダイヤホイル)を用いた。
図5(1)に示した形態の装置を用いて、上記キャリアに、上記で得られた液状樹脂組成物1をコンマコーター装置で塗工し、150℃の乾燥装置で3分間乾燥させ、厚さ20μm、幅410mmの絶縁樹脂層からなるフィルムを、幅方向においてキャリアの中心に位置するように形成した。得られた絶縁樹脂層はフィルムであった。
この絶縁樹脂層側に、保護フィルム(ポリエチレン)をラミネートして、絶縁樹脂層付きキャリアB−1を製造した。
【0134】
3.2 絶縁樹脂層付きキャリアB−2の製造
液状樹脂組成物b1の代わりに、液状樹脂組成物b2を用いた以外は、上記3.1と同様にして、絶縁樹脂層付きキャリアB−2を製造した。
【0135】
3.3 絶縁樹脂層付きキャリアB−3の製造
液状樹脂組成物b1の代わりに、液状樹脂組成物b3を用いた以外は、上記3.1と同様にして、絶縁樹脂層付きキャリアB−3を製造した。
【0136】
3.4 絶縁樹脂層付きキャリアB−4の製造
液状樹脂組成物b1の代わりに、液状樹脂組成物b4を用いた以外は、上記3.1と同様にして、絶縁樹脂層付きキャリアB−4を製造した。
【0137】
3.5 絶縁樹脂層付きキャリアCの製造
キャリアとしては上記絶縁樹脂層付きキャリアBと同じものを用いた。
図5(1)に示した形態の装置を用いて、上記キャリアに、上記で得られた液状樹脂組成物3をコンマコーター装置で塗工し、150℃の乾燥装置で3分間乾燥させ、厚さ20μm、幅360mmの絶縁樹脂層を、幅方向においてキャリアの中心に位置するように形成した。得られた絶縁樹脂層はフィルムであった。
この絶縁樹脂層側に、保護フィルム(ポリエチレン)をラミネートして、絶縁樹脂層付きキャリアCを製造した。
【0138】
3.6 絶縁樹脂層付きキャリアDの製造
キャリアとしては上記絶縁樹脂層付きキャリアBと同じものを用いた。
図5(1)に示した形態の装置を用いて、上記キャリアに、上記で得られた液状樹脂組成物5をコンマコーター装置で塗工し、170℃の乾燥装置で3分間乾燥させ、厚さ20μm、幅410mmの絶縁樹脂層を、幅方向においてキャリアの中心に位置するように形成した。得られた絶縁樹脂層はフィルムであった。
この絶縁樹脂層側に、保護フィルム(ポリエチレン)をラミネートして、絶縁樹脂層付きキャリアDを製造した。
【0139】
B−4.キャリア付きプリプレグの製造
4.1 <実験例B1>
繊維布としてガラス織布(ユニチカグラスファイバー社製・「E02Z−SK」、幅360mm、坪量17g/m)を用いた。
また、上記で得られた絶縁樹脂層付きキャリアB−1(2枚)を、第一及び第二の絶縁樹脂層付きキャリアとして用いた。
図5(2)に示した形態の装置を用いて、第一及び第二の絶縁樹脂層付きキャリアの保護フィルムをはがしながら、絶縁樹脂層付きキャリアの絶縁樹脂層側を繊維布の両面側に、繊維布が幅方向においてキャリアの中心に位置するようにそれぞれ重ね合わせ、750Torrの減圧条件下で、80℃のラミネートロール24を用いて接合した。
ここで、繊維布の幅方向寸法の内側領域においては、第一及び第二の絶縁樹脂層付きキャリアの絶縁樹脂層側を繊維布の両面側にそれぞれ接合するとともに、繊維布の幅方向寸法の外側領域においては、第一及び第二の絶縁樹脂層付きキャリアの絶縁樹脂層どうしを接合した。
次いで、上記接合したものを、120℃に設定した横搬送型の熱風乾燥装置内を2分間通すことによって、圧力を作用させることなく加熱処理して、キャリア付きプリプレグを製造した。
【0140】
4.2 <実験例B2>
絶縁樹脂層付きキャリアB−1の代わりに、絶縁樹脂層付きキャリアB−2を用いた以外は、実験例B1と同様にして、キャリア付きプリプレグを製造した。
【0141】
4.3 <実験例B3>
絶縁樹脂層付きキャリアB−1の代わりに、絶縁樹脂層付きキャリアB−3を用いた以外は、実験例B1と同様にして、キャリア付きプリプレグを製造した。
【0142】
4.4 <実験例B4>
絶縁樹脂層付きキャリアB−1の代わりに、絶縁樹脂層付きキャリアB−4を用いた以外は、実験例B1と同様にして、キャリア付きプリプレグを製造した。
【0143】
4.5 <実験例B5>
繊維布としては実験例B1と同じものを用いた。
また、上記で得られた「絶縁樹脂層付きキャリアB−3」を第一の絶縁樹脂層付きキャリア、「絶縁樹脂層付きキャリアC」を第二の絶縁樹脂層付きキャリアとして用いた。
図5(2)に示した形態の装置を用いて、第一及び第二の絶縁樹脂層付きキャリアの保護フィルムをはがしながら、絶縁樹脂層付きキャリアの絶縁樹脂層側を繊維布の両面側に、繊維布が幅方向においてキャリアの中心に位置するようにそれぞれ重ね合わせ、750Torrの減圧条件下で、80℃のラミネートロール24を用いて接合した。
ここで、繊維布の幅方向寸法の内側領域においては、第一及び第二の絶縁樹脂層付きキャリアの絶縁樹脂層側を繊維布の両面側にそれぞれ接合するとともに、繊維布の幅方向寸法の外側領域においては、第一の絶縁樹脂層付きキャリアの絶縁樹脂層と、第二の絶縁樹脂層付きキャリアのキャリアとを接合した。
次いで、上記接合したものを、120℃に設定した横搬送型の熱風乾燥装置内を2分間通すことによって、圧力を作用させることなく加熱処理して、キャリア付きプリプレグを製造した。
【0144】
4.6 <実験例B6>
繊維布としては実験例B1と同じものを用いた。
また、上記で得られた「絶縁樹脂層付きキャリアC」(2枚)を、第一及び第二の絶縁樹脂層付きキャリアとして用いた。
図5(2)に示した形態の装置を用いて、第一及び第二の絶縁樹脂層付きキャリアの保護フィルムをはがしながら、絶縁樹脂層付きキャリアの絶縁樹脂層側を繊維布の両面側に、繊維布が幅方向においてキャリアの中心に位置するようにそれぞれ重ね合わせ、750Torrの減圧条件下で、80℃のラミネートロール24を用いて接合した。
ここで、繊維布の幅方向寸法の内側領域においては、第一及び第二の絶縁樹脂層付きキャリアの絶縁樹脂層側を繊維布の両面側にそれぞれ接合した。
次いで、上記接合したものを、120℃に設定した横搬送型の熱風乾燥装置内を2分間通すことによって、圧力を作用させることなく加熱処理して、キャリア付きプリプレグを製造した。
【0145】
4.7 <実験例B7>
実験例B1において、第一及び第二の絶縁樹脂層付きキャリアと繊維布とを、740Torrの減圧条件下で接合した以外は、実験例B1と同様にしてキャリア付きプリプレグを製造した。
【0146】
4.8 <実験例B8>
繊維布としては実験例B1と同じものを用いた。
また、上記で得られた絶縁樹脂層付きキャリアD(2枚)を、第一及び第二の絶縁樹脂層付きキャリアとして用いた。
図5(2)に示した形態の装置を用いて、第一及び第二の絶縁樹脂層付きキャリアの保護フィルムをはがしながら、絶縁樹脂層付きキャリアの絶縁樹脂層側を繊維布の両面側に、繊維布が幅方向においてキャリアの中心に位置するようにそれぞれ重ね合わせ、750Torrの減圧条件下で、80℃のラミネートロール24を用いて接合した。
ここで、繊維布の幅方向寸法の内側領域においては、第一及び第二の絶縁樹脂層付きキャリアの絶縁樹脂層側を繊維布の両面側にそれぞれ接合するとともに、繊維布の幅方向寸法の外側領域においては、第一及び第二の絶縁樹脂層付きキャリアの絶縁樹脂層どうしを接合した。
次いで、上記接合したものを、120℃に設定した横搬送型の熱風乾燥装置内を2分間通すことによって、圧力を作用させることなく加熱処理して、キャリア付きプリプレグを製造した。
【0147】
4.9 <実験例B9>
繊維布としては実験例B1と同じものを用いた。
また、上記で得られた絶縁樹脂層付きキャリアB−1(2枚)を、第一及び第二の絶縁樹脂層付きキャリアとして用いた。
図6に示した形態の装置を用いて、第一及び第二の絶縁樹脂層付きキャリアの保護フィルムをはがしながら、絶縁樹脂層付きキャリアの絶縁樹脂層側を繊維布の両面側に、繊維布が幅方向においてキャリアの中心に位置するようにそれぞれ重ね合わせ、常圧条件下で、80℃のラミネートロール(24)を用いて接合し、キャリア付きプリプレグ31を製造した。
【0148】
4.10 <実験例B10>
繊維布としては実験例B1と同じものを用いた。
また、上記で得られた絶縁樹脂層付きキャリアB−1(2枚)を、第一及び第二の絶縁樹脂層付きキャリアとして用いた。
図5(2)に示した形態の装置を用いて、第一及び第二の絶縁樹脂層付きキャリアの保護フィルムをはがしながら、絶縁樹脂層付きキャリアの絶縁樹脂層側を繊維布の両面側に、繊維布が幅方向においてキャリアの中心に位置するようにそれぞれ重ね合わせ、常圧条件下で、80℃のラミネートロール24を用いて接合した。
次いで、上記接合したものを、120℃に設定した横搬送型の熱風乾燥装置内を2分間通すことによって、圧力を作用させることなく加熱処理して、キャリア付きプリプレグを製造した。
【0149】
B−5.多層プリント配線板の製造
内層回路基板として、絶縁層厚み0.6mm、回路厚み12μm、回路幅及び回路間幅:L/S=50μm/50μmの回路加工が施されたプリント配線板を用いた。
実験例で得られたキャリア付きプリプレグの、片側のキャリアを剥離除去し、絶縁樹脂層を露出させ、もう一方の側はキャリアを有した状態とした。
上記内層回路基板の両面側に、キャリア付きプリプレグの絶縁樹脂層側をそれぞれ重ね合わせ、名機製作所社製「ベクレルラミネータ MVLP」を用いて、常圧から750Torr減圧した条件下で、80℃、0.5MPaで30秒間、次いで、120℃、1.5MPaで60秒間成形を行った。その後、200℃の乾燥装置で1時間加熱処理して、評価用の多層プリント配線板を製造した。
【0150】
B−6.評価
上記実験例で得られたキャリア付きプリプレグ及び多層プリント配線板について、特性評価を行った。結果を表2に示す。
【0151】
【表2】

【0152】
評価方法は、以下の通りである。
(1)含浸性
実験例で得られたキャリア付きプリプレグの断面を蛍光浸透液に浸漬した後、蛍光浸透液の浸透の有無を顕微鏡で観察した。
また、キャリア付きプリプレグをPCT処理(121℃/100%/120分)した後、260℃の半田槽に30秒間浸漬し、膨れの発生の有無を確認した。
(2)厚み精度
実験例で得られたキャリア付きプリプレグの断面を顕微鏡で観察し、幅方向において120mmピッチで3箇所について厚みを測定し、その平均値と標準偏差値を算出した。
(3)プリプレグの面方向の熱膨張係数
実験例で得られたキャリア付きプリプレグの面方向の熱膨張係数を、TMA装置(TAインスツルメント社製)を用いて、昇温速度10℃/分で測定した。
(4)吸湿半田耐熱性
実験例で得られたキャリア付きプリプレグを用いて製造した多層プリント配線板から、50mm×50mmサイズの試験片を切り出し、PCT処理(121℃/100%/120分)した後、260℃の半田槽に30秒間浸漬させて、膨れの発生の有無を確認した。膨れが発生しなかったものを「なし」、膨れが発生したものを「膨れ」とした。
【0153】
実験例B1〜B7は、本発明のキャリア付きプリプレグであり、含浸性、厚み精度に優れたものであった。特に、実験例B1〜B5は、第一及び第二の絶縁樹脂層付きキャリアとして、繊維布よりも幅方向寸法が大きいキャリアを有するとともに、いずれか一方または両方が、繊維布よりも幅方向寸法が大きい絶縁樹脂層を有するものを用い、また、常圧より740Torr以上減圧した条件下で成形を行ったため、含浸性に特に優れたものとなった。
そして、実験例B1〜B7は、シアネート樹脂を含有する樹脂組成物を用いたので、プリプレグを低熱膨張化することができたとともに、良好な含浸性との相乗的効果により、多層プリント配線板の耐熱性を向上させることができた。
実験例B8は、シアネート樹脂を含有しない樹脂組成物を用いたものであり、キャリア付きプリプレグの含浸性、厚み精度を優れたものとすることができた。
実験例B9は、シアネート樹脂を含有する樹脂組成物を用いた絶縁樹脂層付きキャリアと繊維布とを常圧下で接合したものであるが、含浸性において劣るものとなった。
実験例B10は、シアネート樹脂を含有する樹脂組成物を用いた絶縁樹脂層付きキャリアと繊維布とを常圧下で接合した後、これを加熱処理したものであるが、加熱処理中にフクレが発生したため、厚み精度の測定に至らず、キャリア付きプリプレグの製造ができなかった。
【0154】
C−1.液状樹脂組成物の原料
本実験例の液状樹脂組成物の原料には、B−1と同じものを用いた。
【0155】
C−2. 絶縁樹脂層形成用の液状樹脂組成物c1の調製
シアネート樹脂1を25重量部、エポキシ樹脂を25重量部、フェノキシ樹脂1を10重量部、硬化促進剤を0.4重量部、各々用い、これらを常温でメチルエチルケトンに溶解した。次いで、無機充填材3を40重量部、及び、無機充填材3の100重量部に対して、カップリング剤を0.5重量部添加し、高速攪拌装置を用いて10分間攪拌混合して液状樹脂組成物を調製した。
【0156】
C−3.絶縁樹脂層付きキャリアの製造
3.1 絶縁樹脂層付き銅箔1の製造
キャリアとして厚み12μm、幅480mmの銅箔(日本電解社製・F2WS−12)を用いた。図5(1)に示した形態の装置を用いて、上記キャリアに、上記で得られた液状樹脂組成物c1をコンマコーター装置で塗工し、150℃の乾燥装置で3分間乾燥させ、絶縁樹脂層の厚さ14μm、幅410mmの絶縁樹脂層を、幅方向においてキャリアの中心に位置するように形成した。得られた絶縁樹脂層はフィルム状であった。
この絶縁樹脂層側に、保護フィルム(ポリエチレン)をラミネートして、絶縁樹脂層付き銅箔1を製造した。
【0157】
3.2 絶縁樹脂層付き銅箔2の製造
絶縁樹脂層の厚みを11.5μmにした以外は、上記3.1と同様にして、絶縁樹脂層付き銅箔2を製造した。
【0158】
3.3 絶縁樹脂層付き銅箔3の製造
絶縁樹脂層の厚みを9μmにした以外は、上記3.1と同様にして、絶縁樹脂層付き銅箔3を製造した。
【0159】
3.4 絶縁樹脂層付き銅箔4の製造
絶縁樹脂層の厚みを7μmにした以外は、上記3.1と同様にして、絶縁樹脂層付き銅箔4を製造した。
【0160】
C−4.薄型両面板の製造
4.1 <実験例C1>
繊維布としてガラス織布(ユニチカグラスファイバー社製・「E02Z−SK」、幅360mm、坪量17g/m)を用いた。
また、上記で得られた絶縁樹脂層付き銅箔1(2枚)を、第一及び第二の絶縁樹脂層付きキャリアとして用いた。
図5(2)に示した形態の装置を用いて、第一及び第二の絶縁樹脂層付きキャリアの保護フィルムをはがしながら、絶縁樹脂層付きキャリアの絶縁樹脂層側を繊維布の両面側に、繊維布が幅方向においてキャリアの中心に位置するようにそれぞれ重ね合わせて積層体とし、750Torrの減圧条件下で、80℃のラミネートロール24で前記積層体を両面から押圧して接合させた。
ここで、繊維布の幅方向寸法の内側領域においては、第一及び第二の絶縁樹脂層付きキャリアの絶縁樹脂層側を繊維布の両面側にそれぞれ接合するとともに、繊維布の幅方向寸法の外側領域においては、第一及び第二の絶縁樹脂層付きキャリアの絶縁樹脂層どうしを接合した。
次いで、上記接合したものを、横搬送型の熱風乾燥装置内に130℃及び150℃、180℃でそれぞれ2分間通した。続いて、200℃で30分間通すことによって、圧力を作用させることなく加熱硬化して、薄型両面板である両面銅張り板を製造した。
【0161】
4.2 <実験例C2>
絶縁樹脂層付き銅箔1の代わりに、絶縁樹脂層付き銅箔2を用いた以外は、実施例C1と同様にして、両面銅張り板を製造した。
【0162】
4.3 <実験例C3>
絶縁樹脂層付き銅箔1の代わりに、絶縁樹脂層付き銅箔3を用いた以外は、実施例C1と同様にして、両面銅張り板を製造した。
【0163】
4.4 <実験例C4>
絶縁樹脂層付き銅箔1の代わりに、絶縁樹脂層付き銅箔4を用いた以外は、実施例C1と同様にして、両面銅張り板を製造した。
【0164】
5.評価
上記実施例で得られた両面銅張り板について、厚み評価を行った。ここで板厚とは、繊維布の骨格材を含む絶縁樹脂層の厚みと銅箔の厚みとを合わせたものである。結果を表1に示す。
【0165】
【表3】

【0166】
実験例C1〜C4で得られた両面銅張り板は、本発明の薄型両面板であり、、繊維布を含む絶縁樹脂層の厚み精度に優れたものであった。また、常圧より740Torr以上減圧した条件下で成形を行ったため、含浸性に特に優れたものとなった。そして、加熱硬化することにより十分に薄い薄型両面板を得ることができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維布の骨格材を含む絶縁樹脂層を有するキャリア付きプリプレグを連続的に製造する方法であって、
(a)片面側に絶縁樹脂層が形成された第一及び第二の絶縁樹脂層付きキャリアの絶縁樹脂層側を、繊維布の両面側にそれぞれ重ね合わせて積層体とし、減圧条件下でこれらを接合する工程と、
(b)前記接合後に、前記絶縁樹脂の溶融温度以上の温度で加熱処理する工程と、
を有することを特徴とする、キャリア付きプリプレグの製造方法。
【請求項2】
前記工程(a)において、前記積層体を両面から少なくとも1対のラミネートロールで押圧して接合させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記積層体の絶縁樹脂層がフィルムである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第一及び第二の絶縁樹脂層付きキャリアは、前記繊維布よりも幅方向寸法が大きいキャリアを有するとともに、
前記第一及び第二の絶縁樹脂層付きキャリアは、前記繊維布よりも幅方向寸法が大きい絶縁樹脂層を有するものである請求項1に記載のキャリア付きプリプレグの製造方法。
【請求項5】
前記(a)工程において、
前記繊維布の幅方向寸法の内側領域においては、前記第一及び第二の絶縁樹脂層付きキャリアの絶縁樹脂層側を前記繊維布の両面側にそれぞれ接合するとともに、
前記繊維布の幅方向寸法の外側領域においては、前記第一及び第二の絶縁樹脂層付きキャリアの絶縁樹脂層どうしを接合する、請求項4に記載のキャリア付きプリプレグの製造方法。
【請求項6】
前記第一及び第二の絶縁樹脂層付きキャリアは、前記繊維布よりも幅方向寸法が大きいキャリアを有するとともに、
前記第一の絶縁樹脂層付きキャリアは、前記繊維布よりも幅方向寸法が大きい絶縁樹脂層を有するものである請求項1に記載のキャリア付きプリプレグの製造方法。
【請求項7】
前記(a)工程において、
前記繊維布の幅方向寸法の内側領域においては、前記第一及び第二の絶縁樹脂層付きキャリアの絶縁樹脂層側を前記繊維布の両面側にそれぞれ接合するとともに、
前記繊維布の幅方向寸法の外側領域においては、前記第一の絶縁樹脂層付きキャリアの絶縁樹脂層と、前記第二の絶縁樹脂層付きキャリアのキャリアとを接合する、請求項6に記載のキャリア付きプリプレグの製造方法。
【請求項8】
前記(a)工程は、真空ラミネート装置を用いて実施されるものである請求項1ないし5のいずれかに記載のキャリア付きプリプレグの製造方法。
【請求項9】
前記(b)工程は、前記(a)工程で接合したものに実質的に圧力を作用させることなく実施されるものである、請求項1ないし8のいずれかに記載のキャリア付きプリプレグの製造方法。
【請求項10】
前記繊維布は、ガラス織布である請求項1ないし9のいずれかに記載のキャリア付きプリプレグの製造方法。
【請求項11】
前記第一及び/又は第二の絶縁樹脂層付きキャリアは、前記絶縁樹脂層が形成される面に剥離可能な処理が施されたフィルムシートを有するものである請求項1ないし8のいずれかに記載のキャリア付きプリプレグの製造方法。
【請求項12】
前記第一及び/又は第二の絶縁樹脂層付きキャリアは、金属箔を有するものである請求項1ないし11のいずれかに記載のキャリア付きプリプレグの製造方法。
【請求項13】
前記絶縁樹脂層が、シアネート樹脂を含む樹脂組成物から形成される、請求項1に記載のキャリア付きプリプレグの製造方法。
【請求項14】
前記樹脂組成物が、エポキシ樹脂を含む樹脂組成物から形成される、請求項1に記載のキャリア付きプリプレグの製造方法。
【請求項15】
前記樹脂組成物が、フェノール樹脂を含む樹脂組成物から形成される、請求項1に記載のキャリア付きプリプレグの製造方法。
【請求項16】
前記樹脂組成物が、さらに、フェノキシ樹脂を含む樹脂組成物から形成される、請求項13に記載のキャリア付きプリプレグの製造方法。
【請求項17】
前記樹脂組成物がさらに、無機充填材を含む、請求項1ないし16のいずれかに記載のキャリア付きプリプレグの製造方法。
【請求項18】
繊維布の骨格材を含む絶縁樹脂層を有するキャリア付きプリプレグを連続的に製造する方法であって、
(a)片面側に絶縁樹脂層が形成された第一及び第二の絶縁樹脂層付きキャリアの絶縁樹脂層側を、繊維布の両面側にそれぞれ重ね合わせて積層体とし、減圧条件下でこれらを接合する工程と、
(b)前記接合後に、前記絶縁樹脂の溶融温度以上の温度で加熱処理する工程と、を有し、
ここで前記絶縁樹脂層はフィルムであり、および前記工程(a)において、積層体を少なくとも1対のラミネートロール間に通して両面から押圧して接合させることを特徴とする、
キャリア付きプリプレグの製造方法。
【請求項19】
請求項1ないし18のいずれかに記載の製造方法により得られたものであることを特徴とする、キャリア付きプリプレグ。
【請求項20】
(c)請求項19に記載のキャリア付きプリプレグの少なくとも一方のキャリアを除去する工程と、
(d)キャリア付きプリプレグのキャリアが除去された側の絶縁樹脂層を、回路加工が施された内層回路基板に重ね合わせ、これらを成形する工程と、
を有することを特徴とする、多層プリント配線板の製造方法。
【請求項21】
前記(d)工程は、キャリア付きプリプレグのキャリアが除去された側と反対側にキャリアを有した状態で実施されるものである請求項20に記載の多層プリント配線板の製造方法。
【請求項22】
薄型両面板を連続的に製造する方法であって、前記方法は繊維布の骨格材を含む絶縁樹脂層を含有する薄型両面板を得る工程を含み、前記繊維布の骨格材を含む絶縁樹脂層は繊維布の骨格材の両面側に第一および第二の絶縁樹脂層を含浸させることにより得られ、前記第一および第二の絶縁樹脂層は繊維布の骨格材に含浸させる反対側にキャリアを有するキャリア付き絶縁樹脂層であり、かつ前記繊維布の骨格材を含む絶縁樹脂層の厚みが50μm以下である、薄型両面板の製造方法。
【請求項23】
前記薄型両面板の製造方法において、
(a)前記第一および第二のキャリア付き絶縁樹脂層の絶縁樹脂層側を、前記繊維布の骨格材の両面側にそれぞれ重ね合わせて積層体とし、減圧条件下でこれらを接合する工程と、
(b)前記接合後に、前記繊維布の骨格材を含む絶縁樹脂層を加熱硬化させて薄型両面板を得る工程と
を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記工程(a)において、前記積層体を両面から少なくとも1対のラミネートロールで押圧して接合させる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記積層体の絶縁樹脂層がフィルムである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記繊維布は、ガラス織布である請求項22ないし25のいずれかに記載の薄型両面板の製造方法。
【請求項27】
前記繊維布の厚みが48μm以下である、請求項22ないし26のいずれかに記載の薄型両面板の製造方法。
【請求項28】
前記絶縁樹脂層に用いる絶縁樹脂は、熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物で構成されている、請求項22ないし27のいずれかに記載の薄型両面板の製造方法。
【請求項29】
前記樹脂組成物がエポキシ樹脂を含む、請求項28に記載の薄型両面板の製造方法。
【請求項30】
前記樹脂組成物がフェノール樹脂を含む、請求項28に記載の薄型両面板の製造方法。
【請求項31】
前記樹脂組成物がフェノキシ樹脂を含む、請求項28に記載の薄型両面板の製造方法。
【請求項32】
前記樹脂組成物がシアネート樹脂、および/またはそのプレポリマーを含む、請求項28に記載の薄型両面板の製造方法。
【請求項33】
前記樹脂組成物がさらに無機充填材を含む、請求項22ないし32のいずれかに記載の薄型両面板の製造方法。
【請求項34】
前記無機充填材がシリカである、請求項33に記載の薄型両面板の製造方法。
【請求項35】
前記無機充填材の含有量が、樹脂組成物全重量に対して、30重量%以上80重量%以下である、請求項33に記載の薄型両面板の製造方法。
【請求項36】
前記キャリアは金属箔を有するものである、請求項22ないし35のいずれかに記載の薄型両面板の製造方法。
【請求項37】
前記キャリアは絶縁樹脂層が形成される面に剥離可能な処理が施されたフィルムシートを有するものである、請求項22ないし36のいずれかに記載の薄型両面板の製造方法。
【請求項38】
前記薄型両面板の製造方法において、
(a)前記第一および第二のキャリア付き絶縁樹脂層の絶縁樹脂層側を、前記繊維布の骨格材の両面側にそれぞれ重ね合わせ、減圧条件下でこれらを接合する工程と、
(b)前記接合後に、前記繊維布の骨格材を含む絶縁樹脂層を加熱硬化させて薄型両面板を得る工程と
を含み、ここで前記絶縁樹脂層はフィルムであり、および前記工程(a)において、前記積層体を少なくとも1対のラミネートロール間を通して両面からで押圧して接合させることを特徴とする、
薄型両面板の製造方法。
【請求項39】
請求項22ないし38のいずれかに記載の製造方法により得られる薄型両面板。
【請求項40】
請求項39に記載の薄型両面板を有する、多層プリント配線板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−132535(P2011−132535A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49555(P2011−49555)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【分割の表示】特願2007−538722(P2007−538722)の分割
【原出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】