クリーニング方法及び成膜方法
【課題】ポリイミドの炭化を防止でき、成膜容器内にパーティクルが残ることなくポリイミドを除去することができるクリーニング方法を提供する。
【解決手段】酸二無水物よりなる第1の原料を気化させた第1の原料ガスと、ジアミンよりなる第2の原料を気化させた第2の原料ガスとを成膜容器60内に供給することによって、成膜容器60内に搬入している基板にポリイミド膜を成膜する成膜装置10におけるクリーニング方法であって、成膜容器60内を酸素雰囲気にした状態で、成膜容器60を加熱機構62により360〜540℃の温度に加熱することによって、成膜容器60内に残留しているポリイミドを酸化して除去する。
【解決手段】酸二無水物よりなる第1の原料を気化させた第1の原料ガスと、ジアミンよりなる第2の原料を気化させた第2の原料ガスとを成膜容器60内に供給することによって、成膜容器60内に搬入している基板にポリイミド膜を成膜する成膜装置10におけるクリーニング方法であって、成膜容器60内を酸素雰囲気にした状態で、成膜容器60を加熱機構62により360〜540℃の温度に加熱することによって、成膜容器60内に残留しているポリイミドを酸化して除去する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に膜を成膜する成膜装置におけるクリーニング方法、及び、基板に膜を成膜する成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスに用いられる材料は、近年無機材料から有機材料へと幅を広げつつあり、無機材料にはない有機材料の特質等から半導体デバイスの特性や製造プロセスをより最適なものとすることができる。
【0003】
このような有機材料の1つとして、ポリイミドが挙げられる。ポリイミドは、絶縁性が高い。従って、基板の表面にポリイミドを成膜して得られるポリイミド膜は、絶縁膜として用いることができ、半導体デバイスにおける絶縁膜として用いることも可能である。
【0004】
このようなポリイミド膜を成膜する方法としては、原料モノマーとして例えばピロメリット酸二無水物(PMDA)と、例えば4,4'−オキシジアニリン(ODA)を含む4,4'−ジアミノジフェニルエーテルを用いた蒸着重合による成膜方法が知られている。蒸着重合は、原料モノマーとして用いられるPMDA及びODAを基板の表面で熱重合反応させる方法である(例えば特許文献1参照)。特許文献1では、PMDA及びODAのモノマーを気化器で蒸発させ、蒸発させたそれぞれの蒸気を蒸着重合室に供給し、基板上で蒸着重合させてポリイミド膜を成膜する成膜方法が開示されている。
【0005】
また、蒸着重合によるポリイミド膜の成膜方法では、成膜処理の際に成膜容器に付着したポリイミドを除去するクリーニング工程が必要である。例えば成膜容器を加熱機構により加熱し、付着したポリイミドを熱分解させる方法がある(例えば特許文献2参照)。また、ポリイミド樹脂を含酸素雰囲気中で加熱し、熱分解させる方法がある(例えば特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許4283910号公報
【特許文献2】特開平9−255791号公報
【特許文献3】特開2006−169344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ポリイミド膜を成膜する成膜装置の成膜容器に付着したポリイミドを除去するクリーニング工程には、以下のような問題がある。
【0008】
酸素を遮断した状態で加熱を行うときは、ポリイミドを含む有機化合物は熱分解するにとどまり、炭化して炭素となって残る。残った炭素はパーティクルの発生要因となるため、このような成膜装置により成膜処理を行うと、ポリイミド膜が成膜された基板にパーティクルが付着することになる。そして、パーティクルが付着した基板は、検査工程で不良と判断されるため、成膜装置の装置歩留まりが低下する。
【0009】
また、酸素雰囲気中でクリーニングを行う場合であっても、供給される酸素の量が少ないときは、酸素が不足した状態で加熱を行うことになるため、ポリイミドを含む有機化合物は熱分解するにとどまり、炭化して炭素となって残る。
【0010】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、ポリイミドの炭化を防止でき、成膜容器内にパーティクルが残ることなくポリイミドを除去することができるクリーニング方法及び成膜方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために本発明では、次に述べる各手段を講じたことを特徴とするものである。
【0012】
本発明の一実施例によれば、酸二無水物よりなる第1の原料を気化させた第1の原料ガスと、ジアミンよりなる第2の原料を気化させた第2の原料ガスとを成膜容器内に供給することによって、前記成膜容器内に搬入している基板にポリイミド膜を成膜する成膜装置におけるクリーニング方法であって、前記成膜容器内を酸素雰囲気にした状態で、前記成膜容器を加熱機構により360〜540℃の温度に加熱することによって、前記成膜容器内に残留しているポリイミドを酸化して除去する、クリーニング方法が提供される。
【0013】
また、本発明の他の一実施例によれば、成膜容器内に原料ガスを供給することによって、前記成膜容器内に搬入されている前記基板に膜を成膜する成膜方法において、基板を前記成膜容器内に搬入し、密着促進剤を気化させた密着促進剤ガスを前記成膜容器内に供給し、前記成膜容器内に搬入した前記基板の表面を密着促進剤ガスにより処理し、酸二無水物よりなる第1の原料を気化させた第1の原料ガスと、ジアミンよりなる第2の原料を気化させた第2の原料ガスとを前記成膜容器内に供給することによって、密着促進剤により表面を処理した前記基板にポリイミド膜を成膜し、ポリイミド膜を成膜した前記基板を前記成膜容器内から搬出する処理工程と、前記成膜容器内を酸素雰囲気にした状態で、前記成膜容器を加熱機構により加熱することによって、前記成膜容器内に残留しているポリイミドを酸化して除去するクリーニング工程とを有する、成膜方法が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ポリイミドの炭化を防止でき、成膜容器内にパーティクルが残ることなくポリイミドを除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1の実施の形態に係るクリーニング方法及び成膜方法を行うための成膜装置を概略的に示す縦断面図である。
【図2】ローディングエリアを概略的に示す斜視図である。
【図3】ボートの一例を概略的に示す斜視図である。
【図4】成膜容器の構成の概略を示す断面図である。
【図5】密着促進剤供給機構の構成を模式的に示す図である。
【図6】第1の実施の形態に係る成膜装置を用いた成膜処理における各工程の手順を説明するためのフローチャートである。
【図7】密着促進剤としてシランカップリング剤を用いたときのウェハの表面における反応を示す図である。
【図8】ポリイミドが熱分解する様子又はポリイミドが酸化する様子を示す図である。
【図9】昇温脱離法によりポリイミドを昇温しながらガス脱離させ、発生したガスの量を質量分析法により計測した結果を示すグラフである。
【図10】積層体が形成されたウェハのクリーニング処理の前後の状態を示す断面図である。
【図11】第2の実施の形態に係るクリーニング方法及び成膜方法を行うための成膜装置を概略的に示す平面図である。
【図12】処理容器、密着促進剤供給機構及び排気機構の構成を示す正面図である。
【図13】成膜容器、供給機構及び排気機構の構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明を実施するための形態について図面と共に説明する。
(第1の実施の形態)
最初に、図1から図10を参照し、本発明の第1の実施の形態に係るクリーニング方法及び成膜方法について説明する。本実施の形態に係る成膜方法は、例えばピロメリット酸二無水物(Pyromellitic Dianhydride、以下「PMDA」と略す。)を気化させた第1の原料ガスと、例えば4,4'−3オキシジアニリン(4,4'-Oxydianiline、以下「ODA」と略す。)を気化させた第2の原料ガスとを、成膜容器内に供給して、半導体ウェハ(以下、単に「ウェハ」という。)にポリイミド膜を成膜する成膜方法に適用することができる。
【0017】
図1は、本実施の形態に係るクリーニング方法及び成膜方法を行うための成膜装置10を概略的に示す縦断面図である。図2は、ローディングエリア40を概略的に示す斜視図である。図3は、ボート44の一例を概略的に示す斜視図である。
【0018】
成膜装置10は、載置台(ロードポート)20、筐体30、及び制御部110を有する。
【0019】
載置台(ロードポート)20は、筐体30の前部に設けられている。筐体30は、ローディングエリア(作業領域)40及び成膜容器60を有する。ローディングエリア40は、筐体30内の下方に設けられており、成膜容器60は、筐体30内であってローディングエリア40の上方に設けられている。また、ローディングエリア40と成膜容器60との間には、ベースプレート31が設けられている。なお、後述する供給機構70は、成膜容器60に接続されるように設けられている。
【0020】
ベースプレート31は、成膜容器60の後述する反応管61を設置するための例えばSUS製のベースプレートであり、反応管61を下方から上方に挿入するための図示しない開口部が形成されている。
【0021】
載置台(ロードポート)20は、筐体30内へのウェハWの搬入搬出を行うためのものである。載置台(ロードポート)20には、収納容器21、22が載置されている。収納容器21、22は、前面に図示しない蓋を着脱可能に備えた、複数枚例えば50枚程度のウェハWを所定の間隔で収納可能な密閉型収納容器(フープ)である。
【0022】
また、載置台20の下方には、後述する移載機構47により移載されたウェハWの外周に設けられた切欠部(例えばノッチ)を一方向に揃えるための整列装置(アライナ)23が設けられていてもよい。
【0023】
ローディングエリア(作業領域)40は、収納容器21、22と後述するボート44との間でウェハWの移載を行い、ボート44を成膜容器60内に搬入(ロード)し、ボート44を成膜容器60から搬出(アンロード)するためのものである。ローディングエリア40には、ドア機構41、シャッター機構42、蓋体43、ボート44、基台45a、45b、昇降機構46、及び移載機構47が設けられている。
【0024】
なお、蓋体43及びボート44は、本発明における基板保持部に相当する。
【0025】
ドア機構41は、収納容器21、22の蓋を取外して収納容器21、22内をローディングエリア40内に連通開放するためのものである。
【0026】
シャッター機構42は、ローディングエリア40の上方に設けられている。シャッター機構42は、蓋体43を開けているときに、後述する成膜容器60の開口63から高温の炉内の熱がローディングエリア40に放出されるのを抑制ないし防止するために開口63を覆う(又は塞ぐ)ように設けられている。
【0027】
蓋体43は、保温筒48及び回転機構49を有する。保温筒48は、蓋体43上に設けられている。保温筒48は、ボート44が蓋体43側との伝熱により冷却されることを防止し、ボート44を保温するためのものである。回転機構49は、蓋体43の下部に取り付けられている。回転機構49は、ボート44を回転するためのものである。回転機構49の回転軸は蓋体43を気密に貫通し、蓋体43上に配置された図示しない回転テーブルを回転するように設けられている。
【0028】
昇降機構46は、ボート44のローディングエリア40から成膜容器60に対する搬入、搬出に際し、蓋体43を昇降駆動する。そして、昇降機構46により上昇させられた蓋体43が成膜容器60内に搬入されているときに、蓋体43は、後述する開口63に当接して開口63を密閉するように設けられている。そして、蓋体43に載置されているボート44は、成膜容器60内でウェハWを水平面内で回転可能に保持することができる。
【0029】
なお、成膜装置10は、ボート44を複数有していてもよい。以下、本実施の形態では、図2を参照し、ボート44を2つ有する例について説明する。
【0030】
ローディングエリア40には、ボート44a、44bが設けられている。そして、ローディングエリア40には、基台45a、45b及びボート搬送機構45cが設けられている。基台45a、45bは、それぞれボート44a、44bが蓋体43から移載される載置台である。ボート搬送機構45cは、ボート44a、44bを、蓋体43から基台45a、45bに移載するためのものである。
【0031】
ボート44a、44bは、例えば石英製であり、大口径例えば直径300mmのウェハWを水平状態で上下方向に所定の間隔(ピッチ幅)で搭載するようになっている。ボート44a、44bは、例えば図3に示すように、天板50と底板51の間に複数本例えば3本の支柱52を介設してなる。支柱52には、ウェハWを保持するための爪部53が設けられている。また、支柱52と共に補助柱54が適宜設けられていてもよい。
【0032】
移載機構47は、収納容器21、22とボート44a、44bの間でウェハWの移載を行うためのものである。移載機構47は、基台57、昇降アーム58、及び、複数のフォーク(移載板)59を有する。基台57は、昇降及び旋回可能に設けられている。昇降アーム58は、ボールネジ等により上下方向に移動可能(昇降可能)に設けられ、基台57は、昇降アーム58に水平旋回可能に設けられている。
【0033】
図4は、成膜容器60の構成の概略を示す断面図である。
【0034】
成膜容器60は、例えば、複数枚の被処理基板例えば薄板円板状のウェハWを収容して所定の処理例えばCVD処理等を施すための縦型炉とすることができる。成膜容器60は、反応管61、ヒータ62、供給機構70、密着促進剤供給機構80、パージガス供給機構90、排気機構95及びクリーニングガス供給機構100を有する。
【0035】
なお、ヒータ62は、本発明における加熱機構に相当する。
【0036】
反応管61は、例えば石英製であり、縦長の形状を有しており、下端に開口63が形成されている。ヒータ(加熱装置)62は、反応管61の周囲を覆うように設けられており、反応管61内を所定の温度例えば50〜1200℃に加熱制御可能である。
【0037】
供給機構70は、原料ガス供給部71、及び、成膜容器60内に設けられたインジェクタ72を含む。インジェクタ72は、供給管73aを含む。原料ガス供給部71は、インジェクタ72の供給管73aに接続されている。
【0038】
本実施の形態では、供給機構70は、第1の原料ガス供給部71a及び第2の原料ガス供給部71bを有していてもよい。このとき、第1の原料ガス供給部71a及び第2の原料ガス供給部71bは、それぞれバルブ71c、71dを介し、インジェクタ72(供給管73a)に接続されている。第1の原料ガス供給部71aは、例えばPMDA原料を気化するための第1の気化器74aを有し、PMDAガスを供給することができる。また、第2の原料ガス供給部71bは、例えばODA原料を気化するための第2の気化器74bを有し、ODAガスを供給することができる。
【0039】
供給管73aには成膜容器60内に開口する供給孔75が形成されている。インジェクタ72は、原料ガス供給部71から供給管73aを流れる第1の原料ガス及び第2の原料ガスを、供給孔75を介して成膜容器60内に供給する。
【0040】
また、供給管73aは、上下方向に延在するように設けられていてもよい。そして、供給管73aには、複数の供給孔75が形成されていてもよい。なお、供給孔75の形状は、円形、楕円形、矩形等各種の形状であってもよい。
【0041】
インジェクタ72は、内側供給管73bを含むことが好ましい。内側供給管73bは、供給管73aの供給孔75が形成されている部分よりも上流側の部分に収容されていてもよい。そして、内側供給管73bの下流側の端部付近には、供給管73aの内部空間に第1の原料ガス及び第2の原料ガスのいずれか一方の原料ガスを供給するための開口76が形成されていてもよい。このような構造を有する内側供給管73bを含むことによって、第1の原料ガスと第2の原料ガスとを供給孔75から成膜容器60内に供給する前に、予め供給管73aの内部空間において第1の原料ガスと第2の原料ガスとを十分混合させることができる。
【0042】
なお、以下では、供給管73aに第1の原料ガスを供給し、内側供給管73bに第2の原料ガスを供給する場合を例示して、説明する。しかし、内側供給管73bに第1の原料ガスを供給し、供給管73aに第2の原料ガスを供給してもよい。
【0043】
また、開口76の形状は、円形、楕円形、矩形等各種の形状であってもよい。
【0044】
本実施の形態は、ボート44が複数のウェハWを上下方向に所定の間隔で保持する例について説明するものである。このとき、供給管73aとともに、内側供給管73bも、上下方向に延在するように設けられていてもよい。更に、下方側を上流側、上方側を下流側とするときは、内側供給管73bは、供給管73aの供給孔75が形成されている部分よりも下方側の部分において、供給管73aの内部に収容されるように設けられていてもよい。そして、内側供給管73bの上端部付近には、供給管73aの内部空間と連通するための開口76が設けられていてもよい。
【0045】
供給機構70は、例えば供給管73aに第1の原料ガスを流すとともに、内側供給管73bに第2の原料ガスを流す。そして、内側供給管73bを流れる第2の原料ガスを、開口76を介して供給管73aに合流させ、第1の原料ガスと第2の原料ガスとを混合させた状態で、供給孔75を介して成膜容器60内に供給する。
【0046】
図5は、密着促進剤供給機構80の構成を模式的に示す図である。なお、図5では、成膜容器60、ボート44及び密着促進剤供給機構80以外の図示を省略している。
【0047】
図5に示すように、密着促進剤供給機構80は、気化器81及び成膜容器60内に設けられた供給管82を含む。気化器81は、バルブ81aを介し、供給管82に接続されている。密着促進剤供給機構80は、密着促進剤を気化させた密着促進剤ガスを成膜容器60内に供給し、ウェハWの表面を密着促進剤ガスにより処理するためのものである。
【0048】
気化器81は、保持容器83、ガス導入部84及びガス導出部85を有する。
【0049】
保持容器83の内部には、例えばシランカップリング剤等の密着促進剤SCが充填可能に設けられている。保持容器83の内部には、加熱機構86が設けられており、保持容器83の内部に充填された密着促進剤SCを、加熱機構86により加熱して気化することができる。なお、加熱機構86としてヒータ等を用いることができる。また、保持容器83を加熱することができればよく、加熱機構86は、保持容器83の任意の場所に設けることができる。
【0050】
ガス導入部84は、保持容器83に、保持容器83で気化した密着促進剤ガスを搬送するための例えば窒素(N2)ガス等の不活性ガスよりなる密着促進剤キャリアガスを、密着促進剤キャリアガス供給部87から導入する。ガス導入部84は、ガス導入管84a及びガス導入口84bを有する。ガス導入管84aは、密着促進剤ガスを搬送する密着促進剤キャリアガスを保持容器83の外部から保持容器83の内部へ導入するための配管である。ガス導入管84aは、保持容器83の上面を貫通するように保持容器83の上面に取り付けられるとともに、保持容器83の内部を上方から下方に延在するように設けられている。また、ガス導入管84aは、一端が保持容器83の底部において開口するとともに、他端が保持容器83の外部で密着促進剤キャリアガス供給部87に接続されている。ガス導入口84bは、ガス導入管84aの下端に形成された開口である。
【0051】
図5では、ガス導入口84bが密着促進剤SCの液面よりも下方にあり、ガス導入口84bから供給された密着促進剤キャリアガスが密着促進剤をバブリングする場合を例示している。しかし、ガス導入口84bは、密着促進剤SCの液面よりも上方にあってもよく、ガス導入口84bから供給された密着促進剤キャリアガスが密着促進剤SCをバブリングしなくてもよい。
【0052】
ガス導出部85は、保持容器83から、密着促進剤キャリアガスとともに気化した密着促進剤ガスを導出する。ガス導出部85は、ガス導出管85a及びガス導出口85bを有する。ガス導出管85aは、密着促進剤ガスおよび密着促進剤キャリアガスを保持容器83の内部から保持容器83の外部へ導出するための配管である。ガス導出管85aは、保持容器83の上面を貫通するように保持容器83の上面に取り付けられている。また、ガス導出管85aは、一端が保持容器83の内部上方で開口されるように設けられており、他端が成膜容器60の内部に設けられた供給管82に接続されている。ガス導出口85bは、ガス導出管85aの下端に形成された開口である。
【0053】
供給管82は、反応管61の側壁を内側へ貫通して上方向へ屈曲されて延びる石英管よりなる。供給管82の先端には、成膜容器60内に開口する供給孔82aが形成されている。供給管82は、気化器81から供給管82を流れる気化した密着促進剤ガスを、供給孔82aを介して成膜容器60内に供給する。供給孔82aは、ボート44に搭載されたウェハWの近傍に、1箇所設けられているのが好ましい。これにより、供給孔82aより吐出された密着促進剤ガスを、成膜容器60内に一様に拡散させることができる。
【0054】
パージガス供給機構90は、パージガス供給部91、及びパージガス供給管92を含む。パージガス供給部91は、パージガス供給管92を介して成膜容器60に接続されており、成膜容器60内にパージガスを供給する。また、パージガス供給管92の途中には、パージガス供給部91と成膜容器60の内部とを連通又は遮断するためのバルブ93、及び、パージガスの流量を制御するMFC94が設けられている。パージガスとして、窒素(N2)ガスを用いることができる。
【0055】
排気機構95は、排気装置96及び排気管97を含む。排気機構95は、成膜容器60内から排気管97を介してガスを排気するためのものである。
【0056】
クリーニングガス供給機構100は、クリーニングガス供給部101、及びクリーニングガス供給管102を含む。クリーニングガス供給部101は、クリーニングガス供給管102を介して成膜容器60に接続されており、成膜容器60内にクリーニングガスを供給する。また、クリーニングガス供給管102の途中には、クリーニングガス供給部101と成膜容器60の内部とを連通又は遮断するためのバルブ103、及び、クリーニングガスの流量を制御するMFC104が設けられている。クリーニングガスとして、酸素(O2)ガスを用いることができる。
【0057】
本実施の形態では、クリーニングガス供給機構100からのクリーニングガスの供給流量をMFC104により制御し、パージガス供給機構90からのパージガスの供給流量をMFC94により制御し、成膜容器60からの排気流量を図示しないバルブにより制御する。これにより、成膜容器60内を酸素雰囲気にすることができ、酸素分圧を所定の分圧に調整することができる。
【0058】
制御部110は、例えば、図示しない演算処理部、記憶部及び表示部を有する。演算処理部は、例えばCPU(Central Processing Unit)を有するコンピュータである。記憶部は、演算処理部に、各種の処理を実行させるためのプログラムを記録した、例えばハードディスクにより構成されるコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。表示部は、例えばコンピュータの画面よりなる。演算処理部は、記憶部に記録されたプログラムを読み取り、そのプログラムに従って、ボート44(基板保持部)、ヒータ62、供給機構70、密着促進剤供給機構80、パージガス供給機構90、排気機構95、及びクリーニングガス供給機構100を構成する各部に制御信号を送り、後述するような成膜処理を実行する。
【0059】
次に、本実施の形態に係る成膜装置を用いた成膜処理について説明する。図6は、本実施の形態に係る成膜装置を用いた成膜処理における各工程の手順を説明するためのフローチャートである。
【0060】
成膜処理開始後、ステップS11として、成膜容器60内にウェハWを搬入する(搬入工程)。図1に示した成膜装置10の例では、例えばローディングエリア40において、移載機構47により収納容器21からボート44aへウェハWを搭載し、ウェハWを搭載したボート44aをボート搬送機構45cにより蓋体43に載置することができる。そして、ボート44aを載置した蓋体43を昇降機構46により上昇させて成膜容器60内に搬入することにより、ウェハWを搬入することができる。
【0061】
次に、ステップS12では、成膜容器60の内部を減圧する(減圧工程)。排気装置96の排気能力又は排気装置96と排気管97との間に設けられている図示しない流量調整バルブを調整することにより、排気管97を介して成膜容器60を排気する排気量を増大させる。そして、成膜容器60の内部を所定圧力例えば大気圧(760Torr)から例えば0.3Torrに減圧する。
【0062】
次に、ステップS13では、ウェハWの温度を、ウェハWにポリイミド膜を成膜するときの所定温度(成膜温度)まで上昇させる(リカバリ工程)。ボート44aを成膜容器60の内部に搬入した後、ヒータ62に電力を供給することによって、ボート44aに搭載されているウェハWの温度を成膜温度まで上昇させる。
【0063】
本実施の形態では、リカバリ工程において、ウェハWの表面を密着促進剤により処理してもよい。このとき、ヒータ62によりウェハWを加熱するとともに、密着促進剤供給機構80により成膜容器60内に密着促進剤ガスを供給し、供給された密着促進剤ガスと、加熱されているウェハWとを、水分を含まない雰囲気中で反応させることによって、ウェハWの表面を処理する(表面処理工程)。
【0064】
図7は、密着促進剤としてシランカップリング剤を用いたときのウェハWの表面における反応を示す図である。
【0065】
シランカップリング剤として、分子中に例えばアルコキシ基(RO−(R;アルキル基))を有するオルガノシランを用いることが好ましい。図7では、分子中に例えばメトキシ基(CH3O−)を有するオルガノシランを用いた例を示す。そして、図7(a)に示すように、表面が水酸基すなわちヒドロキシ基(−OH)で終端されたSiウェハを用いるときは、シランカップリング剤のメトキシ基が、ウェハ表面のヒドロキシ基と熱反応してメタノール(CH3OH)が生成することによって、ウェハ表面に吸着する。また、図7(b)に示すように、表面が水素原子(H)で終端されたSiウェハを用いるときは、シランカップリング剤のメトキシ基が、ウェハ表面の水素原子と熱反応してメタン(CH4)が生成することによって、ウェハ表面に吸着する。
【0066】
オルガノシランとして、下記式(1)
【0067】
【化1】
に示す、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン(以下、「SC剤A」という。)を用いることができる。または、オルガノシランとして、下記式(2)
【0068】
【化2】
に示す、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(以下、「SC剤B」という。)を用いることができる。このうち、SC剤Aを用いることがより好ましい。SC剤Aを用いることにより、表面が水素原子(H)で終端されたSiウェハを用いるときも、成膜されたポリイミド膜の密着性を向上させることができる。
【0069】
リカバリ工程とともに行う表面処理工程では、気化器81において例えばSC剤A又はSC剤Bよりなる密着促進剤を気化させ、気化した密着促進剤ガスを供給管82に形成された供給孔82aを介して成膜容器60内に供給する。例えばSC剤Aを用いるときは、加熱機構86により保持容器83の温度を例えば150℃に加熱することによって、0.3g/分の気化量を得ることができる。また、例えばSC剤Bを用いるときは、加熱機構86により保持容器83の温度を例えば100℃に加熱することによって、0.3g/分の気化量を得ることができる。なお、このとき、密着促進剤キャリアガスであるN2ガスを例えば0.1slmの流量で導入してもよく、全く導入しなくてもよい。
【0070】
次に、ステップS14では、ポリイミド膜を成膜する(成膜工程)。
【0071】
制御部110により、供給管73aに第1の原料ガスを流す第1の流量F1と、内側供給管73bに第2の原料ガスを流す第2の流量F2とを予め設定しておく。そして、回転機構49によりウェハWを回転させた状態で、設定した第1の流量F1で第1の原料ガス供給部71aから第1の原料ガスを供給管73aに流し、設定した第2の流量F2で第2の原料ガス供給部71bから第2の原料ガスを内側供給管73bに流すことによって、第1の原料ガスと第2の原料ガスとを所定の混合比で混合させた状態で成膜容器60内に供給する。そして、ウェハWの表面でPMDAとODAを重合反応させ、ポリイミド膜を成膜する。具体的には、例えば第1の流量F1を900sccmとし、第2の流量F2を900sccmとすることができる。
【0072】
このときの、PMDAとODAとの重合反応は、次の式(3)に従う。
【0073】
【化3】
次に、ステップS15では、第1の原料ガス供給部71aからのPMDAガスの供給及び第2の原料ガス供給部71bからのODAガスの供給を停止し、成膜容器60の内部をパージガスによりパージする(パージ工程)。
【0074】
バルブ71cを閉じ、第1の原料ガス供給部71aからの第1の原料ガスの供給を停止する。また、バルブ71dを閉じ、第2の原料ガス供給部71bからの第2の原料ガスの供給を停止する。そして、パージガス供給機構90と排気機構95とを制御することにより、成膜容器60の内部の原料ガスをパージガスに置換する。
【0075】
例えば、排気装置96の排気能力又は排気装置96と排気管97との間に設けられている図示しない流量調整バルブを調整して排気量を増やすことにより、成膜容器60の内部を例えば0.3Torrに減圧する。その後、排気量を減少させるか、又は排気量を0にして排気を停止した状態で、成膜容器60内の内部の圧力が例えば5.0Torrになるまで、バルブ93を開いてパージガス供給機構90によりパージガスを成膜容器60内に供給する。これにより、成膜容器60内の原料ガスをパージガスに置換できる。また、排気機構95による減圧と、パージガス供給機構90によるパージガスの供給とを1回行った後、更に減圧とパージガスの供給を複数回繰り返してもよい。これにより、成膜容器60内の原料ガスを、更に確実にパージガスに置換できる。
【0076】
本実施の形態では、パージ工程において、ウェハW上に成膜されたポリイミド膜をヒータ62により熱処理してもよい。熱処理は、成膜後、膜中のイミド化していない部分をイミド化するために行う。ポリイミドは高い絶縁性を有するため、膜中のポリイミドの割合であるイミド化率を上昇させることによって、成膜したポリイミド膜の絶縁性を向上させることができる。
【0077】
次に、ステップS16では、成膜容器60の内部を大気圧に復圧する(復圧工程)。排気装置96の排気能力又は排気装置96と排気管97との間に設けられている図示しない流量調整バルブを調整することにより、成膜容器60を排気する排気量を減少させ、成膜容器60の内部を例えば0.3Torrから例えば大気圧(760Torr)に復圧する。
【0078】
なお、ポリイミド膜の熱処理は、ポリイミド膜を成膜した後、後述する搬出工程の前に、成膜容器60の内部で行えばよく、復圧工程の際、又は、復圧工程の後に行ってもよい。
【0079】
次に、ステップS17では、成膜容器60からウェハWを搬出する(搬出工程)。図1に示した成膜装置10の例では、例えばボート44aを載置した蓋体43を昇降機構46により下降させて成膜容器60内からローディングエリア40に搬出することができる。そして、移載機構47により、搬出した蓋体43に載置されているボート44aから収納容器21へウェハWを移載することによって、ウェハWを成膜容器60から搬出することができる。
【0080】
なお、複数のバッチについて連続して成膜処理を行うときは、更に、ローディングエリア40において、移載機構47により収納容器21からウェハWをボート44へ移載し、再びステップS11に戻り、次のバッチの成膜処理を行う。
【0081】
このように、ステップS11(搬入工程)からステップS17(搬出工程)までを行うことにより、あるバッチについて成膜処理を行うことができる。なお、ステップS11(搬入工程)からステップS17(搬出工程)までの工程は、本発明における処理工程に相当する。
【0082】
次に、ステップS18では、成膜容器60内に残留しているポリイミドを酸化して除去する(クリーニング工程)。
【0083】
前述したように、クリーニングガス供給機構100により、酸素ガスよりなるクリーニングガスを成膜容器60内に供給する。このとき、クリーニングガス供給機構100からのクリーニングガスの供給流量をMFC104により制御し、パージガス供給機構90からのパージガスの供給流量をMFC94により制御し、成膜容器60からの排気流量を図示しないバルブにより制御する。これにより、成膜容器60内を酸素雰囲気にすることができ、酸素分圧を所定の分圧に調整することができる。
【0084】
このようにして成膜容器60内を酸素雰囲気にした状態で、ヒータ62により、成膜容器60を加熱する。ここで、成膜容器60を360〜540℃の温度に加熱することによって、成膜容器60内に付着したポリイミド膜あるいは付着したポリイミド膜が剥がれ落ちたものを含め、成膜容器60内に残留しているポリイミドを酸化して除去する。これにより、後述するように、成膜容器60内に残留しているポリイミドが熱分解により炭化することを防止できる。
【0085】
また、成膜容器60内を、酸素分圧が0.2気圧以上である酸素雰囲気にした状態で、ヒータ62により、成膜容器60を加熱することが好ましい。これにより、成膜容器60内に残留しているポリイミドがより酸化しやすくなるため、熱分解により炭化することをより防止できる。
【0086】
なお、処理工程(ステップS11〜ステップS17)を複数回繰り返して行うときは、処理工程とクリーニング工程(ステップS18)とを交互に繰り返してもよい。これにより、次の処理工程を行う前に、成膜容器内に残留しているポリイミドを常に酸化して除去することができる。
【0087】
あるいは、処理工程(ステップS11〜ステップS17)を所定回数繰り返した後に、クリーニング工程(ステップS18)を1回行うようにしてもよい。そして、処理工程を繰り返す所定回数を、クリーニング工程の直前の処理工程において成膜処理されるウェハに付着するパーティクルの数が、所定の上限値を超えないように設定することにより、成膜容器60内をクリーニングしつつ、成膜処理の時間を短縮することができる。
【0088】
このようにして、処理工程とクリーニング工程を行った後、成膜処理を終了する。
【0089】
次に、本実施の形態におけるクリーニングによれば、ポリイミドの炭化を防止でき、成膜容器内にパーティクルが残ることなくポリイミドを除去することができることについて説明する。
【0090】
図8は、ポリイミドが熱分解する様子又はポリイミドが酸化する様子を示す図である。図8(a)は、ポリイミドが熱分解する様子を示し、図8(b)は、ポリイミドが酸化する様子を示す。
【0091】
成膜容器中を酸素雰囲気にしない状態、すなわち例えば窒素雰囲気にした状態で、ヒータ62により成膜容器60を加熱する場合を考える。すると、図8(a)に示すように、熱エネルギーによりポリイミドの分子中の各所で化学結合が切られ、ポリイミドは熱分解する。この際に、ポリイミドの分子中の炭素原子の一部が炭化して煤状になって残る。
【0092】
一方、成膜容器60中を酸素雰囲気にした状態で、ヒータ62により成膜容器60を加熱する場合を考える。すると、図8(b)に示すように、ポリイミドの分子中の炭素原子は酸素と化合、すなわち酸化して例えば二酸化炭素(CO2)となって気化するため、ポリイミドは除去される。
【0093】
図9は、昇温脱離法(Temperature Programmed Desorption;TPD)によりポリイミドを昇温しながらガス脱離(発生)させ、発生したガスの量(発生量)を質量分析法(Mass Spectrometry;MS)により計測した結果を示すグラフである。図9(a)のグラフは、酸素分圧が20%、すなわち0.2気圧の結果を示し、図9(b)のグラフは、酸素分圧が0%、すなわち0気圧の結果を示す。
【0094】
図9(b)に示すように、酸素分圧が0%すなわち0気圧であるときは、温度上昇に伴って、490℃で二酸化炭素(CO2)ガスの発生が始まるものの、近い温度である540℃でアニリン又はフェノール等の有機化合物と推定されるガス(有機化合物ガス)の発生が始まる。また、有機化合物ガスの発生量に対するCO2ガス及び一酸化炭素(CO)ガスの発生量は、相対的に小さい。また、この条件は、明らかにクリーニング工程の後、煤状のパーティクルが成膜容器60内に残る条件であり、ポリイミドの熱分解反応が発生する条件である。
【0095】
一方、図9(a)に示すように、酸素分圧が20%すなわち0.2気圧であるときは、温度上昇に伴って、360℃でCO2ガスの発生が始まるものの、有機化合物ガスの発生は、580℃までは始まらない。また、有機化合物ガスの発生量に対するCO2ガス及びCOガスの発生量は、相対的に小さい。
【0096】
更に、酸素分圧を20%以上にしたときも、図9(a)と略同様の傾向を示す。従って、酸素分圧が20%すなわち0.2気圧以上の酸素雰囲気にした状態で、360〜540℃の温度に加熱することによって、有機化合物に熱分解させることなくポリイミドを酸化して除去することができる。
【0097】
ただし、温度範囲は、成膜容器の構成、ポリイミド膜の成膜条件等に依存するため、上記した条件に限られるものではない。例えば、540〜700℃の温度に加熱する場合であっても、酸素分圧が40%すなわち0.4気圧よりも大きい状態で行うときは、有機化合物に熱分解させることなくポリイミドを酸化して除去することができる。
【0098】
また、酸素分圧が100%すなわち1気圧であることが好ましい。これにより、成膜容器内を大気圧より増加させることなく、ポリイミドを酸化して除去することができる。
【0099】
更に、本実施の形態では、前述したように、密着促進剤によりウェハWの表面を処理する表面処理工程を行う場合でも、成膜容器内にパーティクルが残ることなくポリイミド及び密着促進剤を酸化して除去することができる。
【0100】
ここで、複数回成膜処理を行って、密着促進剤SCとポリイミド膜PIが複数積層された積層体も、本実施の形態におけるクリーニング方法により酸化して除去できるか否かの評価を行った。評価用サンプルとして、成膜容器に代え、ウェハW上に、密着促進剤SCとポリイミド膜PIが複数積層された積層体LMが形成されたものを用いた。図10は、積層体LMが形成されたウェハWのクリーニング処理の前後の状態を示す断面図である。
【0101】
一例として、SiウェハよりなるウェハWを200℃に保持した状態で、前述したSC剤Aを150℃に加熱して0.3g/分の流量でSiウェハWに供給し、600秒間表面処理を行った。その上に、膜厚250nmのポリイミド膜PIを成膜した。そして、更に、密着促進剤SCによる表面処理、ポリイミド膜PIの成膜、密着促進剤SCによる表面処理の順に繰り返すことによって、図10の左側に示すように積層体LMが形成されたウェハWを得た。
【0102】
このウェハWに対し、酸素分圧100%すなわち1気圧になるように、酸素ガスの流量及び成膜容器からの排気流量を調整した。例えば、酸素ガスの流量を30slmとした。そして、700℃で120分間クリーニング処理を行った。クリーニング処理後のウェハWの表面を、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope)により観察したところ、パーティクル等は残っていないことが確認された。
【0103】
以上、本実施の形態によれば、ポリイミド膜を成膜する成膜装置において、成膜容器内を酸素雰囲気にした状態で、成膜容器を加熱機構により加熱することによって、成膜容器内に残留しているポリイミドを酸化して除去する。これにより、成膜容器内にパーティクルが残ることなく密着促進剤を含めたポリイミドを除去することができる。また、ポリイミド膜の成膜処理と密着促進剤による表面処理とを繰り返してなる積層体が形成されている場合でも、成膜容器内にパーティクルが残ることなく密着促進剤とポリイミドとを除去することができる。
(第2の実施の形態)
次に、図11から図13を参照し、本発明の第2の実施の形態に係るクリーニング方法及び成膜方法について説明する。
【0104】
本実施の形態に係るクリーニング方法及び成膜方法を行うための成膜装置は、成膜容器が枚葉処理を行うためのものであるとともに、成膜容器とは別に表面処理のための処理容器を有している点で、第1の実施の形態に係る成膜方法を行うための成膜装置と相違する。
【0105】
図11は、本実施の形態に係るクリーニング方法及び成膜方法を行うための成膜装置120を概略的に示す平面図である。図12は、処理容器130、密着促進剤供給機構80及び排気機構95aの構成を示す正面図である。図13は、成膜容器60b、供給機構70及び排気機構95bの構成を示す平面図である。
【0106】
図11に示すように、本実施の形態に係る成膜装置120は、ポート121A〜121C、ローダ122、ロードロック123A、123B、搬送室124、複数の表面処理部125、及び成膜部126を有する。
【0107】
ポート121A〜121Cには、ローダ122が接続されている。ローダ122には、ロードロック123A、123Bが接続されている。ロードロック123A、123Bには、搬送室124が接続されている。搬送室124には、表面処理部125が2つ接続されており、成膜部126が1つ接続されている。また、搬送室124には、ウェハをロードロック123A、123Bと表面処理部125及び成膜部126との間で搬送するための搬送アーム124aが設けられている。
【0108】
なお、表面処理部125と成膜部126の数は、特に限定されるものではなく、スループットを向上させるために、表面処理及び成膜処理の条件に応じて、任意の数に変更可能である。
【0109】
図11及び図12に示すように、表面処理部125は、処理容器130と、密着促進剤供給機構80及び排気機構95aとを有する。
【0110】
密着促進剤供給機構80は、気化器81及び供給管82を含み、供給管82が処理容器130内に設けられている点を除き、第1の実施の形態に係る密着促進剤供給機構80と同様にすることができる。また、排気機構95aは、排気装置96及び排気管97を含み、第1の実施の形態に係る成膜容器60に設けられた排気機構95と同様にすることができる。
【0111】
処理容器130は、処理室131、ヒータ(加熱装置)132、基板保持部133及び排気機構95aを有する。ヒータ(加熱装置)132は、表面処理の際にウェハWを加熱するためのものである。基板保持部133は、ウェハWを保持するためのものである。ただし、基板保持部133は、ウェハWを1枚保持可能に設けられている。なお、ヒータ(加熱装置)132は、基板保持部133内に設けられていてもよい。
【0112】
図13に示すように、成膜部126は、成膜容器60b、供給機構70、パージガス供給機構90、排気機構95b及びクリーニングガス供給機構100を有する。パージガス供給機構90は、パージガス供給部91、パージガス供給管92、バルブ93及びMFC94を含み、第1の実施の形態におけるパージガス供給機構90と同様にすることができる。排気機構95bは、排気装置96及び排気管97を含み、第1の実施の形態における排気機構95と同様にすることができる。クリーニングガス供給機構100は、クリーニングガス供給部101、及びクリーニングガス供給管102、バルブ103及びMFC104を含み、第1の実施の形態におけるクリーニングガス供給機構100と同様にすることができる。
【0113】
成膜容器60bは、反応室61、ヒータ(加熱装置)62及び基板保持部44cを有する。基板保持部44cは、ウェハWを保持可能であってかつ回転可能に設けられている。ただし、基板保持部44cは、ウェハWを1枚保持可能に設けられている。
【0114】
供給機構70は、第1の原料ガス供給部71a、第2の原料ガス供給部71b、インジェクタ72を含む。第1の原料ガス供給部71a、第2の原料ガス供給部71bは第1の実施の形態と同様にすることができる。
【0115】
インジェクタ72は、供給管73a及び内側供給管73bを含む。原料ガス供給部71は、インジェクタ72の供給管73aに接続されている。供給管73aと内側供給管73bとは、水平方向に延在するように設けられている点を除き、第1の実施の形態に係るインジェクタ72と同様にすることができる。すなわち、供給管73aには、複数の供給孔75が形成されている。内側供給管73bの下流側の端部付近には、供給管73aの内部空間に第1の原料ガスを供給するための開口76が形成されている。
【0116】
なお、図13では、内側供給管73bに第1の原料ガス供給部71aから第1の原料ガスを供給し、供給管73aに第2の原料ガス供給部71bから第2の原料ガスを供給する例を示している。しかし、供給管73aに第1の原料ガスを供給し、内側供給管73bに第2の原料ガスを供給してもよい。
【0117】
また、制御部110は、第1の実施の形態と同様にすることができる。
【0118】
本実施の形態に係る成膜処理では、成膜部126により成膜処理を行う前に、表面処理部125を用いて密着促進剤による表面処理を行う。
【0119】
搬送室124に設けられた搬送アーム124aによりウェハWを表面処理部125の処理容器130内に設けられた基板保持部133に受け渡し、ウェハWを保持する。そして、排気機構95aにより、処理容器130の内部を減圧する。
【0120】
次に、制御部110によりヒータ132に供給する電力を制御することによって、ウェハWの温度を表面処理するための処理温度まで上昇させる。そして、ウェハWを加熱するとともに、処理容器130内に密着促進剤ガスを供給し、供給された密着促進剤ガスと、加熱されているウェハWとを、水分を含まない雰囲気中で反応させることによって、ウェハWの表面を処理する(表面処理工程)。
【0121】
本実施の形態でも、密着促進剤としてシランカップリング剤を用いることが好ましい。また、本実施の形態でも、シランカップリング剤として、分子中に例えばアルコキシ基を有するオルガノシランを用いることが好ましい。オルガノシランとして、式(1)、式(2)に示したSC剤A、SC剤Bを用いることが好ましい。また、SC剤Aを用いることにより、表面が水素原子(H)で終端されたSiウェハを用いるときも、成膜されたポリイミド膜の密着性を向上させることができる。
【0122】
このようにして表面処理部125を用いて密着促進剤による表面処理を行った後、成膜部126により成膜処理を行う。成膜部126により成膜処理は、成膜処理がバッチ処理に代え枚葉処理である点を除き、第1の実施の形態の成膜工程と同様にすることができる。
【0123】
そして、本実施の形態でも、成膜処理の後、成膜容器60b内に残留しているポリイミドを酸化して除去する(クリーニング工程)。
【0124】
第1の実施の形態と同様に、クリーニングガス供給機構100により、酸素ガスよりなるクリーニングガスを成膜容器60b内に供給する。このとき、クリーニングガス供給機構100からのクリーニングガスの供給流量をMFC104により制御し、パージガス供給機構90からのパージガスの供給流量をMFC94により制御し、成膜容器60bからの排気流量を図示しないバルブにより制御する。これにより、成膜容器60b内を酸素雰囲気にすることができ、酸素分圧を所定の分圧に調整することができる。
【0125】
このようにして成膜容器60b内を酸素雰囲気にした状態で、ヒータ62により、成膜容器60bを加熱する。ここで、成膜容器60bを360〜540℃の温度に加熱することによって、成膜容器60b内に付着したポリイミド膜あるいは付着したポリイミド膜が剥がれ落ちたものを含め、成膜容器60b内に残留しているポリイミドを酸化して除去する。これにより、成膜容器60b内に残留しているポリイミドが熱分解により炭化することを防止できる。
【0126】
また、成膜容器60b内を、酸素分圧が0.2気圧以上である酸素雰囲気にした状態で、ヒータ62により、成膜容器60bを加熱することが好ましい。これにより、成膜容器60b内に残留しているポリイミドがより酸化しやすくなるため、熱分解により炭化することをより防止できる。
【0127】
本実施の形態でも、ポリイミド膜を成膜する成膜装置において、成膜容器内を酸素雰囲気にした状態で、成膜容器を加熱機構により加熱することによって、成膜容器内に残留しているポリイミドを酸化して除去する。これにより、成膜容器内にパーティクルが残ることなくポリイミド及び密着促進剤を酸化して除去することができる。
【0128】
以上、本発明の好ましい実施の形態について記述したが、本発明はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0129】
10 成膜装置
43 蓋体(基板保持部)
44、44a、44b ボート(基板保持部)
60 成膜容器
62 ヒータ
70 供給機構
71 原料ガス供給部
80 密着促進剤供給機構
90 パージガス供給機構
95 排気機構
100 クリーニングガス供給機構
110 制御部
W ウェハ
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に膜を成膜する成膜装置におけるクリーニング方法、及び、基板に膜を成膜する成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスに用いられる材料は、近年無機材料から有機材料へと幅を広げつつあり、無機材料にはない有機材料の特質等から半導体デバイスの特性や製造プロセスをより最適なものとすることができる。
【0003】
このような有機材料の1つとして、ポリイミドが挙げられる。ポリイミドは、絶縁性が高い。従って、基板の表面にポリイミドを成膜して得られるポリイミド膜は、絶縁膜として用いることができ、半導体デバイスにおける絶縁膜として用いることも可能である。
【0004】
このようなポリイミド膜を成膜する方法としては、原料モノマーとして例えばピロメリット酸二無水物(PMDA)と、例えば4,4'−オキシジアニリン(ODA)を含む4,4'−ジアミノジフェニルエーテルを用いた蒸着重合による成膜方法が知られている。蒸着重合は、原料モノマーとして用いられるPMDA及びODAを基板の表面で熱重合反応させる方法である(例えば特許文献1参照)。特許文献1では、PMDA及びODAのモノマーを気化器で蒸発させ、蒸発させたそれぞれの蒸気を蒸着重合室に供給し、基板上で蒸着重合させてポリイミド膜を成膜する成膜方法が開示されている。
【0005】
また、蒸着重合によるポリイミド膜の成膜方法では、成膜処理の際に成膜容器に付着したポリイミドを除去するクリーニング工程が必要である。例えば成膜容器を加熱機構により加熱し、付着したポリイミドを熱分解させる方法がある(例えば特許文献2参照)。また、ポリイミド樹脂を含酸素雰囲気中で加熱し、熱分解させる方法がある(例えば特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許4283910号公報
【特許文献2】特開平9−255791号公報
【特許文献3】特開2006−169344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ポリイミド膜を成膜する成膜装置の成膜容器に付着したポリイミドを除去するクリーニング工程には、以下のような問題がある。
【0008】
酸素を遮断した状態で加熱を行うときは、ポリイミドを含む有機化合物は熱分解するにとどまり、炭化して炭素となって残る。残った炭素はパーティクルの発生要因となるため、このような成膜装置により成膜処理を行うと、ポリイミド膜が成膜された基板にパーティクルが付着することになる。そして、パーティクルが付着した基板は、検査工程で不良と判断されるため、成膜装置の装置歩留まりが低下する。
【0009】
また、酸素雰囲気中でクリーニングを行う場合であっても、供給される酸素の量が少ないときは、酸素が不足した状態で加熱を行うことになるため、ポリイミドを含む有機化合物は熱分解するにとどまり、炭化して炭素となって残る。
【0010】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、ポリイミドの炭化を防止でき、成膜容器内にパーティクルが残ることなくポリイミドを除去することができるクリーニング方法及び成膜方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために本発明では、次に述べる各手段を講じたことを特徴とするものである。
【0012】
本発明の一実施例によれば、酸二無水物よりなる第1の原料を気化させた第1の原料ガスと、ジアミンよりなる第2の原料を気化させた第2の原料ガスとを成膜容器内に供給することによって、前記成膜容器内に搬入している基板にポリイミド膜を成膜する成膜装置におけるクリーニング方法であって、前記成膜容器内を酸素雰囲気にした状態で、前記成膜容器を加熱機構により360〜540℃の温度に加熱することによって、前記成膜容器内に残留しているポリイミドを酸化して除去する、クリーニング方法が提供される。
【0013】
また、本発明の他の一実施例によれば、成膜容器内に原料ガスを供給することによって、前記成膜容器内に搬入されている前記基板に膜を成膜する成膜方法において、基板を前記成膜容器内に搬入し、密着促進剤を気化させた密着促進剤ガスを前記成膜容器内に供給し、前記成膜容器内に搬入した前記基板の表面を密着促進剤ガスにより処理し、酸二無水物よりなる第1の原料を気化させた第1の原料ガスと、ジアミンよりなる第2の原料を気化させた第2の原料ガスとを前記成膜容器内に供給することによって、密着促進剤により表面を処理した前記基板にポリイミド膜を成膜し、ポリイミド膜を成膜した前記基板を前記成膜容器内から搬出する処理工程と、前記成膜容器内を酸素雰囲気にした状態で、前記成膜容器を加熱機構により加熱することによって、前記成膜容器内に残留しているポリイミドを酸化して除去するクリーニング工程とを有する、成膜方法が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ポリイミドの炭化を防止でき、成膜容器内にパーティクルが残ることなくポリイミドを除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1の実施の形態に係るクリーニング方法及び成膜方法を行うための成膜装置を概略的に示す縦断面図である。
【図2】ローディングエリアを概略的に示す斜視図である。
【図3】ボートの一例を概略的に示す斜視図である。
【図4】成膜容器の構成の概略を示す断面図である。
【図5】密着促進剤供給機構の構成を模式的に示す図である。
【図6】第1の実施の形態に係る成膜装置を用いた成膜処理における各工程の手順を説明するためのフローチャートである。
【図7】密着促進剤としてシランカップリング剤を用いたときのウェハの表面における反応を示す図である。
【図8】ポリイミドが熱分解する様子又はポリイミドが酸化する様子を示す図である。
【図9】昇温脱離法によりポリイミドを昇温しながらガス脱離させ、発生したガスの量を質量分析法により計測した結果を示すグラフである。
【図10】積層体が形成されたウェハのクリーニング処理の前後の状態を示す断面図である。
【図11】第2の実施の形態に係るクリーニング方法及び成膜方法を行うための成膜装置を概略的に示す平面図である。
【図12】処理容器、密着促進剤供給機構及び排気機構の構成を示す正面図である。
【図13】成膜容器、供給機構及び排気機構の構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明を実施するための形態について図面と共に説明する。
(第1の実施の形態)
最初に、図1から図10を参照し、本発明の第1の実施の形態に係るクリーニング方法及び成膜方法について説明する。本実施の形態に係る成膜方法は、例えばピロメリット酸二無水物(Pyromellitic Dianhydride、以下「PMDA」と略す。)を気化させた第1の原料ガスと、例えば4,4'−3オキシジアニリン(4,4'-Oxydianiline、以下「ODA」と略す。)を気化させた第2の原料ガスとを、成膜容器内に供給して、半導体ウェハ(以下、単に「ウェハ」という。)にポリイミド膜を成膜する成膜方法に適用することができる。
【0017】
図1は、本実施の形態に係るクリーニング方法及び成膜方法を行うための成膜装置10を概略的に示す縦断面図である。図2は、ローディングエリア40を概略的に示す斜視図である。図3は、ボート44の一例を概略的に示す斜視図である。
【0018】
成膜装置10は、載置台(ロードポート)20、筐体30、及び制御部110を有する。
【0019】
載置台(ロードポート)20は、筐体30の前部に設けられている。筐体30は、ローディングエリア(作業領域)40及び成膜容器60を有する。ローディングエリア40は、筐体30内の下方に設けられており、成膜容器60は、筐体30内であってローディングエリア40の上方に設けられている。また、ローディングエリア40と成膜容器60との間には、ベースプレート31が設けられている。なお、後述する供給機構70は、成膜容器60に接続されるように設けられている。
【0020】
ベースプレート31は、成膜容器60の後述する反応管61を設置するための例えばSUS製のベースプレートであり、反応管61を下方から上方に挿入するための図示しない開口部が形成されている。
【0021】
載置台(ロードポート)20は、筐体30内へのウェハWの搬入搬出を行うためのものである。載置台(ロードポート)20には、収納容器21、22が載置されている。収納容器21、22は、前面に図示しない蓋を着脱可能に備えた、複数枚例えば50枚程度のウェハWを所定の間隔で収納可能な密閉型収納容器(フープ)である。
【0022】
また、載置台20の下方には、後述する移載機構47により移載されたウェハWの外周に設けられた切欠部(例えばノッチ)を一方向に揃えるための整列装置(アライナ)23が設けられていてもよい。
【0023】
ローディングエリア(作業領域)40は、収納容器21、22と後述するボート44との間でウェハWの移載を行い、ボート44を成膜容器60内に搬入(ロード)し、ボート44を成膜容器60から搬出(アンロード)するためのものである。ローディングエリア40には、ドア機構41、シャッター機構42、蓋体43、ボート44、基台45a、45b、昇降機構46、及び移載機構47が設けられている。
【0024】
なお、蓋体43及びボート44は、本発明における基板保持部に相当する。
【0025】
ドア機構41は、収納容器21、22の蓋を取外して収納容器21、22内をローディングエリア40内に連通開放するためのものである。
【0026】
シャッター機構42は、ローディングエリア40の上方に設けられている。シャッター機構42は、蓋体43を開けているときに、後述する成膜容器60の開口63から高温の炉内の熱がローディングエリア40に放出されるのを抑制ないし防止するために開口63を覆う(又は塞ぐ)ように設けられている。
【0027】
蓋体43は、保温筒48及び回転機構49を有する。保温筒48は、蓋体43上に設けられている。保温筒48は、ボート44が蓋体43側との伝熱により冷却されることを防止し、ボート44を保温するためのものである。回転機構49は、蓋体43の下部に取り付けられている。回転機構49は、ボート44を回転するためのものである。回転機構49の回転軸は蓋体43を気密に貫通し、蓋体43上に配置された図示しない回転テーブルを回転するように設けられている。
【0028】
昇降機構46は、ボート44のローディングエリア40から成膜容器60に対する搬入、搬出に際し、蓋体43を昇降駆動する。そして、昇降機構46により上昇させられた蓋体43が成膜容器60内に搬入されているときに、蓋体43は、後述する開口63に当接して開口63を密閉するように設けられている。そして、蓋体43に載置されているボート44は、成膜容器60内でウェハWを水平面内で回転可能に保持することができる。
【0029】
なお、成膜装置10は、ボート44を複数有していてもよい。以下、本実施の形態では、図2を参照し、ボート44を2つ有する例について説明する。
【0030】
ローディングエリア40には、ボート44a、44bが設けられている。そして、ローディングエリア40には、基台45a、45b及びボート搬送機構45cが設けられている。基台45a、45bは、それぞれボート44a、44bが蓋体43から移載される載置台である。ボート搬送機構45cは、ボート44a、44bを、蓋体43から基台45a、45bに移載するためのものである。
【0031】
ボート44a、44bは、例えば石英製であり、大口径例えば直径300mmのウェハWを水平状態で上下方向に所定の間隔(ピッチ幅)で搭載するようになっている。ボート44a、44bは、例えば図3に示すように、天板50と底板51の間に複数本例えば3本の支柱52を介設してなる。支柱52には、ウェハWを保持するための爪部53が設けられている。また、支柱52と共に補助柱54が適宜設けられていてもよい。
【0032】
移載機構47は、収納容器21、22とボート44a、44bの間でウェハWの移載を行うためのものである。移載機構47は、基台57、昇降アーム58、及び、複数のフォーク(移載板)59を有する。基台57は、昇降及び旋回可能に設けられている。昇降アーム58は、ボールネジ等により上下方向に移動可能(昇降可能)に設けられ、基台57は、昇降アーム58に水平旋回可能に設けられている。
【0033】
図4は、成膜容器60の構成の概略を示す断面図である。
【0034】
成膜容器60は、例えば、複数枚の被処理基板例えば薄板円板状のウェハWを収容して所定の処理例えばCVD処理等を施すための縦型炉とすることができる。成膜容器60は、反応管61、ヒータ62、供給機構70、密着促進剤供給機構80、パージガス供給機構90、排気機構95及びクリーニングガス供給機構100を有する。
【0035】
なお、ヒータ62は、本発明における加熱機構に相当する。
【0036】
反応管61は、例えば石英製であり、縦長の形状を有しており、下端に開口63が形成されている。ヒータ(加熱装置)62は、反応管61の周囲を覆うように設けられており、反応管61内を所定の温度例えば50〜1200℃に加熱制御可能である。
【0037】
供給機構70は、原料ガス供給部71、及び、成膜容器60内に設けられたインジェクタ72を含む。インジェクタ72は、供給管73aを含む。原料ガス供給部71は、インジェクタ72の供給管73aに接続されている。
【0038】
本実施の形態では、供給機構70は、第1の原料ガス供給部71a及び第2の原料ガス供給部71bを有していてもよい。このとき、第1の原料ガス供給部71a及び第2の原料ガス供給部71bは、それぞれバルブ71c、71dを介し、インジェクタ72(供給管73a)に接続されている。第1の原料ガス供給部71aは、例えばPMDA原料を気化するための第1の気化器74aを有し、PMDAガスを供給することができる。また、第2の原料ガス供給部71bは、例えばODA原料を気化するための第2の気化器74bを有し、ODAガスを供給することができる。
【0039】
供給管73aには成膜容器60内に開口する供給孔75が形成されている。インジェクタ72は、原料ガス供給部71から供給管73aを流れる第1の原料ガス及び第2の原料ガスを、供給孔75を介して成膜容器60内に供給する。
【0040】
また、供給管73aは、上下方向に延在するように設けられていてもよい。そして、供給管73aには、複数の供給孔75が形成されていてもよい。なお、供給孔75の形状は、円形、楕円形、矩形等各種の形状であってもよい。
【0041】
インジェクタ72は、内側供給管73bを含むことが好ましい。内側供給管73bは、供給管73aの供給孔75が形成されている部分よりも上流側の部分に収容されていてもよい。そして、内側供給管73bの下流側の端部付近には、供給管73aの内部空間に第1の原料ガス及び第2の原料ガスのいずれか一方の原料ガスを供給するための開口76が形成されていてもよい。このような構造を有する内側供給管73bを含むことによって、第1の原料ガスと第2の原料ガスとを供給孔75から成膜容器60内に供給する前に、予め供給管73aの内部空間において第1の原料ガスと第2の原料ガスとを十分混合させることができる。
【0042】
なお、以下では、供給管73aに第1の原料ガスを供給し、内側供給管73bに第2の原料ガスを供給する場合を例示して、説明する。しかし、内側供給管73bに第1の原料ガスを供給し、供給管73aに第2の原料ガスを供給してもよい。
【0043】
また、開口76の形状は、円形、楕円形、矩形等各種の形状であってもよい。
【0044】
本実施の形態は、ボート44が複数のウェハWを上下方向に所定の間隔で保持する例について説明するものである。このとき、供給管73aとともに、内側供給管73bも、上下方向に延在するように設けられていてもよい。更に、下方側を上流側、上方側を下流側とするときは、内側供給管73bは、供給管73aの供給孔75が形成されている部分よりも下方側の部分において、供給管73aの内部に収容されるように設けられていてもよい。そして、内側供給管73bの上端部付近には、供給管73aの内部空間と連通するための開口76が設けられていてもよい。
【0045】
供給機構70は、例えば供給管73aに第1の原料ガスを流すとともに、内側供給管73bに第2の原料ガスを流す。そして、内側供給管73bを流れる第2の原料ガスを、開口76を介して供給管73aに合流させ、第1の原料ガスと第2の原料ガスとを混合させた状態で、供給孔75を介して成膜容器60内に供給する。
【0046】
図5は、密着促進剤供給機構80の構成を模式的に示す図である。なお、図5では、成膜容器60、ボート44及び密着促進剤供給機構80以外の図示を省略している。
【0047】
図5に示すように、密着促進剤供給機構80は、気化器81及び成膜容器60内に設けられた供給管82を含む。気化器81は、バルブ81aを介し、供給管82に接続されている。密着促進剤供給機構80は、密着促進剤を気化させた密着促進剤ガスを成膜容器60内に供給し、ウェハWの表面を密着促進剤ガスにより処理するためのものである。
【0048】
気化器81は、保持容器83、ガス導入部84及びガス導出部85を有する。
【0049】
保持容器83の内部には、例えばシランカップリング剤等の密着促進剤SCが充填可能に設けられている。保持容器83の内部には、加熱機構86が設けられており、保持容器83の内部に充填された密着促進剤SCを、加熱機構86により加熱して気化することができる。なお、加熱機構86としてヒータ等を用いることができる。また、保持容器83を加熱することができればよく、加熱機構86は、保持容器83の任意の場所に設けることができる。
【0050】
ガス導入部84は、保持容器83に、保持容器83で気化した密着促進剤ガスを搬送するための例えば窒素(N2)ガス等の不活性ガスよりなる密着促進剤キャリアガスを、密着促進剤キャリアガス供給部87から導入する。ガス導入部84は、ガス導入管84a及びガス導入口84bを有する。ガス導入管84aは、密着促進剤ガスを搬送する密着促進剤キャリアガスを保持容器83の外部から保持容器83の内部へ導入するための配管である。ガス導入管84aは、保持容器83の上面を貫通するように保持容器83の上面に取り付けられるとともに、保持容器83の内部を上方から下方に延在するように設けられている。また、ガス導入管84aは、一端が保持容器83の底部において開口するとともに、他端が保持容器83の外部で密着促進剤キャリアガス供給部87に接続されている。ガス導入口84bは、ガス導入管84aの下端に形成された開口である。
【0051】
図5では、ガス導入口84bが密着促進剤SCの液面よりも下方にあり、ガス導入口84bから供給された密着促進剤キャリアガスが密着促進剤をバブリングする場合を例示している。しかし、ガス導入口84bは、密着促進剤SCの液面よりも上方にあってもよく、ガス導入口84bから供給された密着促進剤キャリアガスが密着促進剤SCをバブリングしなくてもよい。
【0052】
ガス導出部85は、保持容器83から、密着促進剤キャリアガスとともに気化した密着促進剤ガスを導出する。ガス導出部85は、ガス導出管85a及びガス導出口85bを有する。ガス導出管85aは、密着促進剤ガスおよび密着促進剤キャリアガスを保持容器83の内部から保持容器83の外部へ導出するための配管である。ガス導出管85aは、保持容器83の上面を貫通するように保持容器83の上面に取り付けられている。また、ガス導出管85aは、一端が保持容器83の内部上方で開口されるように設けられており、他端が成膜容器60の内部に設けられた供給管82に接続されている。ガス導出口85bは、ガス導出管85aの下端に形成された開口である。
【0053】
供給管82は、反応管61の側壁を内側へ貫通して上方向へ屈曲されて延びる石英管よりなる。供給管82の先端には、成膜容器60内に開口する供給孔82aが形成されている。供給管82は、気化器81から供給管82を流れる気化した密着促進剤ガスを、供給孔82aを介して成膜容器60内に供給する。供給孔82aは、ボート44に搭載されたウェハWの近傍に、1箇所設けられているのが好ましい。これにより、供給孔82aより吐出された密着促進剤ガスを、成膜容器60内に一様に拡散させることができる。
【0054】
パージガス供給機構90は、パージガス供給部91、及びパージガス供給管92を含む。パージガス供給部91は、パージガス供給管92を介して成膜容器60に接続されており、成膜容器60内にパージガスを供給する。また、パージガス供給管92の途中には、パージガス供給部91と成膜容器60の内部とを連通又は遮断するためのバルブ93、及び、パージガスの流量を制御するMFC94が設けられている。パージガスとして、窒素(N2)ガスを用いることができる。
【0055】
排気機構95は、排気装置96及び排気管97を含む。排気機構95は、成膜容器60内から排気管97を介してガスを排気するためのものである。
【0056】
クリーニングガス供給機構100は、クリーニングガス供給部101、及びクリーニングガス供給管102を含む。クリーニングガス供給部101は、クリーニングガス供給管102を介して成膜容器60に接続されており、成膜容器60内にクリーニングガスを供給する。また、クリーニングガス供給管102の途中には、クリーニングガス供給部101と成膜容器60の内部とを連通又は遮断するためのバルブ103、及び、クリーニングガスの流量を制御するMFC104が設けられている。クリーニングガスとして、酸素(O2)ガスを用いることができる。
【0057】
本実施の形態では、クリーニングガス供給機構100からのクリーニングガスの供給流量をMFC104により制御し、パージガス供給機構90からのパージガスの供給流量をMFC94により制御し、成膜容器60からの排気流量を図示しないバルブにより制御する。これにより、成膜容器60内を酸素雰囲気にすることができ、酸素分圧を所定の分圧に調整することができる。
【0058】
制御部110は、例えば、図示しない演算処理部、記憶部及び表示部を有する。演算処理部は、例えばCPU(Central Processing Unit)を有するコンピュータである。記憶部は、演算処理部に、各種の処理を実行させるためのプログラムを記録した、例えばハードディスクにより構成されるコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。表示部は、例えばコンピュータの画面よりなる。演算処理部は、記憶部に記録されたプログラムを読み取り、そのプログラムに従って、ボート44(基板保持部)、ヒータ62、供給機構70、密着促進剤供給機構80、パージガス供給機構90、排気機構95、及びクリーニングガス供給機構100を構成する各部に制御信号を送り、後述するような成膜処理を実行する。
【0059】
次に、本実施の形態に係る成膜装置を用いた成膜処理について説明する。図6は、本実施の形態に係る成膜装置を用いた成膜処理における各工程の手順を説明するためのフローチャートである。
【0060】
成膜処理開始後、ステップS11として、成膜容器60内にウェハWを搬入する(搬入工程)。図1に示した成膜装置10の例では、例えばローディングエリア40において、移載機構47により収納容器21からボート44aへウェハWを搭載し、ウェハWを搭載したボート44aをボート搬送機構45cにより蓋体43に載置することができる。そして、ボート44aを載置した蓋体43を昇降機構46により上昇させて成膜容器60内に搬入することにより、ウェハWを搬入することができる。
【0061】
次に、ステップS12では、成膜容器60の内部を減圧する(減圧工程)。排気装置96の排気能力又は排気装置96と排気管97との間に設けられている図示しない流量調整バルブを調整することにより、排気管97を介して成膜容器60を排気する排気量を増大させる。そして、成膜容器60の内部を所定圧力例えば大気圧(760Torr)から例えば0.3Torrに減圧する。
【0062】
次に、ステップS13では、ウェハWの温度を、ウェハWにポリイミド膜を成膜するときの所定温度(成膜温度)まで上昇させる(リカバリ工程)。ボート44aを成膜容器60の内部に搬入した後、ヒータ62に電力を供給することによって、ボート44aに搭載されているウェハWの温度を成膜温度まで上昇させる。
【0063】
本実施の形態では、リカバリ工程において、ウェハWの表面を密着促進剤により処理してもよい。このとき、ヒータ62によりウェハWを加熱するとともに、密着促進剤供給機構80により成膜容器60内に密着促進剤ガスを供給し、供給された密着促進剤ガスと、加熱されているウェハWとを、水分を含まない雰囲気中で反応させることによって、ウェハWの表面を処理する(表面処理工程)。
【0064】
図7は、密着促進剤としてシランカップリング剤を用いたときのウェハWの表面における反応を示す図である。
【0065】
シランカップリング剤として、分子中に例えばアルコキシ基(RO−(R;アルキル基))を有するオルガノシランを用いることが好ましい。図7では、分子中に例えばメトキシ基(CH3O−)を有するオルガノシランを用いた例を示す。そして、図7(a)に示すように、表面が水酸基すなわちヒドロキシ基(−OH)で終端されたSiウェハを用いるときは、シランカップリング剤のメトキシ基が、ウェハ表面のヒドロキシ基と熱反応してメタノール(CH3OH)が生成することによって、ウェハ表面に吸着する。また、図7(b)に示すように、表面が水素原子(H)で終端されたSiウェハを用いるときは、シランカップリング剤のメトキシ基が、ウェハ表面の水素原子と熱反応してメタン(CH4)が生成することによって、ウェハ表面に吸着する。
【0066】
オルガノシランとして、下記式(1)
【0067】
【化1】
に示す、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン(以下、「SC剤A」という。)を用いることができる。または、オルガノシランとして、下記式(2)
【0068】
【化2】
に示す、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(以下、「SC剤B」という。)を用いることができる。このうち、SC剤Aを用いることがより好ましい。SC剤Aを用いることにより、表面が水素原子(H)で終端されたSiウェハを用いるときも、成膜されたポリイミド膜の密着性を向上させることができる。
【0069】
リカバリ工程とともに行う表面処理工程では、気化器81において例えばSC剤A又はSC剤Bよりなる密着促進剤を気化させ、気化した密着促進剤ガスを供給管82に形成された供給孔82aを介して成膜容器60内に供給する。例えばSC剤Aを用いるときは、加熱機構86により保持容器83の温度を例えば150℃に加熱することによって、0.3g/分の気化量を得ることができる。また、例えばSC剤Bを用いるときは、加熱機構86により保持容器83の温度を例えば100℃に加熱することによって、0.3g/分の気化量を得ることができる。なお、このとき、密着促進剤キャリアガスであるN2ガスを例えば0.1slmの流量で導入してもよく、全く導入しなくてもよい。
【0070】
次に、ステップS14では、ポリイミド膜を成膜する(成膜工程)。
【0071】
制御部110により、供給管73aに第1の原料ガスを流す第1の流量F1と、内側供給管73bに第2の原料ガスを流す第2の流量F2とを予め設定しておく。そして、回転機構49によりウェハWを回転させた状態で、設定した第1の流量F1で第1の原料ガス供給部71aから第1の原料ガスを供給管73aに流し、設定した第2の流量F2で第2の原料ガス供給部71bから第2の原料ガスを内側供給管73bに流すことによって、第1の原料ガスと第2の原料ガスとを所定の混合比で混合させた状態で成膜容器60内に供給する。そして、ウェハWの表面でPMDAとODAを重合反応させ、ポリイミド膜を成膜する。具体的には、例えば第1の流量F1を900sccmとし、第2の流量F2を900sccmとすることができる。
【0072】
このときの、PMDAとODAとの重合反応は、次の式(3)に従う。
【0073】
【化3】
次に、ステップS15では、第1の原料ガス供給部71aからのPMDAガスの供給及び第2の原料ガス供給部71bからのODAガスの供給を停止し、成膜容器60の内部をパージガスによりパージする(パージ工程)。
【0074】
バルブ71cを閉じ、第1の原料ガス供給部71aからの第1の原料ガスの供給を停止する。また、バルブ71dを閉じ、第2の原料ガス供給部71bからの第2の原料ガスの供給を停止する。そして、パージガス供給機構90と排気機構95とを制御することにより、成膜容器60の内部の原料ガスをパージガスに置換する。
【0075】
例えば、排気装置96の排気能力又は排気装置96と排気管97との間に設けられている図示しない流量調整バルブを調整して排気量を増やすことにより、成膜容器60の内部を例えば0.3Torrに減圧する。その後、排気量を減少させるか、又は排気量を0にして排気を停止した状態で、成膜容器60内の内部の圧力が例えば5.0Torrになるまで、バルブ93を開いてパージガス供給機構90によりパージガスを成膜容器60内に供給する。これにより、成膜容器60内の原料ガスをパージガスに置換できる。また、排気機構95による減圧と、パージガス供給機構90によるパージガスの供給とを1回行った後、更に減圧とパージガスの供給を複数回繰り返してもよい。これにより、成膜容器60内の原料ガスを、更に確実にパージガスに置換できる。
【0076】
本実施の形態では、パージ工程において、ウェハW上に成膜されたポリイミド膜をヒータ62により熱処理してもよい。熱処理は、成膜後、膜中のイミド化していない部分をイミド化するために行う。ポリイミドは高い絶縁性を有するため、膜中のポリイミドの割合であるイミド化率を上昇させることによって、成膜したポリイミド膜の絶縁性を向上させることができる。
【0077】
次に、ステップS16では、成膜容器60の内部を大気圧に復圧する(復圧工程)。排気装置96の排気能力又は排気装置96と排気管97との間に設けられている図示しない流量調整バルブを調整することにより、成膜容器60を排気する排気量を減少させ、成膜容器60の内部を例えば0.3Torrから例えば大気圧(760Torr)に復圧する。
【0078】
なお、ポリイミド膜の熱処理は、ポリイミド膜を成膜した後、後述する搬出工程の前に、成膜容器60の内部で行えばよく、復圧工程の際、又は、復圧工程の後に行ってもよい。
【0079】
次に、ステップS17では、成膜容器60からウェハWを搬出する(搬出工程)。図1に示した成膜装置10の例では、例えばボート44aを載置した蓋体43を昇降機構46により下降させて成膜容器60内からローディングエリア40に搬出することができる。そして、移載機構47により、搬出した蓋体43に載置されているボート44aから収納容器21へウェハWを移載することによって、ウェハWを成膜容器60から搬出することができる。
【0080】
なお、複数のバッチについて連続して成膜処理を行うときは、更に、ローディングエリア40において、移載機構47により収納容器21からウェハWをボート44へ移載し、再びステップS11に戻り、次のバッチの成膜処理を行う。
【0081】
このように、ステップS11(搬入工程)からステップS17(搬出工程)までを行うことにより、あるバッチについて成膜処理を行うことができる。なお、ステップS11(搬入工程)からステップS17(搬出工程)までの工程は、本発明における処理工程に相当する。
【0082】
次に、ステップS18では、成膜容器60内に残留しているポリイミドを酸化して除去する(クリーニング工程)。
【0083】
前述したように、クリーニングガス供給機構100により、酸素ガスよりなるクリーニングガスを成膜容器60内に供給する。このとき、クリーニングガス供給機構100からのクリーニングガスの供給流量をMFC104により制御し、パージガス供給機構90からのパージガスの供給流量をMFC94により制御し、成膜容器60からの排気流量を図示しないバルブにより制御する。これにより、成膜容器60内を酸素雰囲気にすることができ、酸素分圧を所定の分圧に調整することができる。
【0084】
このようにして成膜容器60内を酸素雰囲気にした状態で、ヒータ62により、成膜容器60を加熱する。ここで、成膜容器60を360〜540℃の温度に加熱することによって、成膜容器60内に付着したポリイミド膜あるいは付着したポリイミド膜が剥がれ落ちたものを含め、成膜容器60内に残留しているポリイミドを酸化して除去する。これにより、後述するように、成膜容器60内に残留しているポリイミドが熱分解により炭化することを防止できる。
【0085】
また、成膜容器60内を、酸素分圧が0.2気圧以上である酸素雰囲気にした状態で、ヒータ62により、成膜容器60を加熱することが好ましい。これにより、成膜容器60内に残留しているポリイミドがより酸化しやすくなるため、熱分解により炭化することをより防止できる。
【0086】
なお、処理工程(ステップS11〜ステップS17)を複数回繰り返して行うときは、処理工程とクリーニング工程(ステップS18)とを交互に繰り返してもよい。これにより、次の処理工程を行う前に、成膜容器内に残留しているポリイミドを常に酸化して除去することができる。
【0087】
あるいは、処理工程(ステップS11〜ステップS17)を所定回数繰り返した後に、クリーニング工程(ステップS18)を1回行うようにしてもよい。そして、処理工程を繰り返す所定回数を、クリーニング工程の直前の処理工程において成膜処理されるウェハに付着するパーティクルの数が、所定の上限値を超えないように設定することにより、成膜容器60内をクリーニングしつつ、成膜処理の時間を短縮することができる。
【0088】
このようにして、処理工程とクリーニング工程を行った後、成膜処理を終了する。
【0089】
次に、本実施の形態におけるクリーニングによれば、ポリイミドの炭化を防止でき、成膜容器内にパーティクルが残ることなくポリイミドを除去することができることについて説明する。
【0090】
図8は、ポリイミドが熱分解する様子又はポリイミドが酸化する様子を示す図である。図8(a)は、ポリイミドが熱分解する様子を示し、図8(b)は、ポリイミドが酸化する様子を示す。
【0091】
成膜容器中を酸素雰囲気にしない状態、すなわち例えば窒素雰囲気にした状態で、ヒータ62により成膜容器60を加熱する場合を考える。すると、図8(a)に示すように、熱エネルギーによりポリイミドの分子中の各所で化学結合が切られ、ポリイミドは熱分解する。この際に、ポリイミドの分子中の炭素原子の一部が炭化して煤状になって残る。
【0092】
一方、成膜容器60中を酸素雰囲気にした状態で、ヒータ62により成膜容器60を加熱する場合を考える。すると、図8(b)に示すように、ポリイミドの分子中の炭素原子は酸素と化合、すなわち酸化して例えば二酸化炭素(CO2)となって気化するため、ポリイミドは除去される。
【0093】
図9は、昇温脱離法(Temperature Programmed Desorption;TPD)によりポリイミドを昇温しながらガス脱離(発生)させ、発生したガスの量(発生量)を質量分析法(Mass Spectrometry;MS)により計測した結果を示すグラフである。図9(a)のグラフは、酸素分圧が20%、すなわち0.2気圧の結果を示し、図9(b)のグラフは、酸素分圧が0%、すなわち0気圧の結果を示す。
【0094】
図9(b)に示すように、酸素分圧が0%すなわち0気圧であるときは、温度上昇に伴って、490℃で二酸化炭素(CO2)ガスの発生が始まるものの、近い温度である540℃でアニリン又はフェノール等の有機化合物と推定されるガス(有機化合物ガス)の発生が始まる。また、有機化合物ガスの発生量に対するCO2ガス及び一酸化炭素(CO)ガスの発生量は、相対的に小さい。また、この条件は、明らかにクリーニング工程の後、煤状のパーティクルが成膜容器60内に残る条件であり、ポリイミドの熱分解反応が発生する条件である。
【0095】
一方、図9(a)に示すように、酸素分圧が20%すなわち0.2気圧であるときは、温度上昇に伴って、360℃でCO2ガスの発生が始まるものの、有機化合物ガスの発生は、580℃までは始まらない。また、有機化合物ガスの発生量に対するCO2ガス及びCOガスの発生量は、相対的に小さい。
【0096】
更に、酸素分圧を20%以上にしたときも、図9(a)と略同様の傾向を示す。従って、酸素分圧が20%すなわち0.2気圧以上の酸素雰囲気にした状態で、360〜540℃の温度に加熱することによって、有機化合物に熱分解させることなくポリイミドを酸化して除去することができる。
【0097】
ただし、温度範囲は、成膜容器の構成、ポリイミド膜の成膜条件等に依存するため、上記した条件に限られるものではない。例えば、540〜700℃の温度に加熱する場合であっても、酸素分圧が40%すなわち0.4気圧よりも大きい状態で行うときは、有機化合物に熱分解させることなくポリイミドを酸化して除去することができる。
【0098】
また、酸素分圧が100%すなわち1気圧であることが好ましい。これにより、成膜容器内を大気圧より増加させることなく、ポリイミドを酸化して除去することができる。
【0099】
更に、本実施の形態では、前述したように、密着促進剤によりウェハWの表面を処理する表面処理工程を行う場合でも、成膜容器内にパーティクルが残ることなくポリイミド及び密着促進剤を酸化して除去することができる。
【0100】
ここで、複数回成膜処理を行って、密着促進剤SCとポリイミド膜PIが複数積層された積層体も、本実施の形態におけるクリーニング方法により酸化して除去できるか否かの評価を行った。評価用サンプルとして、成膜容器に代え、ウェハW上に、密着促進剤SCとポリイミド膜PIが複数積層された積層体LMが形成されたものを用いた。図10は、積層体LMが形成されたウェハWのクリーニング処理の前後の状態を示す断面図である。
【0101】
一例として、SiウェハよりなるウェハWを200℃に保持した状態で、前述したSC剤Aを150℃に加熱して0.3g/分の流量でSiウェハWに供給し、600秒間表面処理を行った。その上に、膜厚250nmのポリイミド膜PIを成膜した。そして、更に、密着促進剤SCによる表面処理、ポリイミド膜PIの成膜、密着促進剤SCによる表面処理の順に繰り返すことによって、図10の左側に示すように積層体LMが形成されたウェハWを得た。
【0102】
このウェハWに対し、酸素分圧100%すなわち1気圧になるように、酸素ガスの流量及び成膜容器からの排気流量を調整した。例えば、酸素ガスの流量を30slmとした。そして、700℃で120分間クリーニング処理を行った。クリーニング処理後のウェハWの表面を、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope)により観察したところ、パーティクル等は残っていないことが確認された。
【0103】
以上、本実施の形態によれば、ポリイミド膜を成膜する成膜装置において、成膜容器内を酸素雰囲気にした状態で、成膜容器を加熱機構により加熱することによって、成膜容器内に残留しているポリイミドを酸化して除去する。これにより、成膜容器内にパーティクルが残ることなく密着促進剤を含めたポリイミドを除去することができる。また、ポリイミド膜の成膜処理と密着促進剤による表面処理とを繰り返してなる積層体が形成されている場合でも、成膜容器内にパーティクルが残ることなく密着促進剤とポリイミドとを除去することができる。
(第2の実施の形態)
次に、図11から図13を参照し、本発明の第2の実施の形態に係るクリーニング方法及び成膜方法について説明する。
【0104】
本実施の形態に係るクリーニング方法及び成膜方法を行うための成膜装置は、成膜容器が枚葉処理を行うためのものであるとともに、成膜容器とは別に表面処理のための処理容器を有している点で、第1の実施の形態に係る成膜方法を行うための成膜装置と相違する。
【0105】
図11は、本実施の形態に係るクリーニング方法及び成膜方法を行うための成膜装置120を概略的に示す平面図である。図12は、処理容器130、密着促進剤供給機構80及び排気機構95aの構成を示す正面図である。図13は、成膜容器60b、供給機構70及び排気機構95bの構成を示す平面図である。
【0106】
図11に示すように、本実施の形態に係る成膜装置120は、ポート121A〜121C、ローダ122、ロードロック123A、123B、搬送室124、複数の表面処理部125、及び成膜部126を有する。
【0107】
ポート121A〜121Cには、ローダ122が接続されている。ローダ122には、ロードロック123A、123Bが接続されている。ロードロック123A、123Bには、搬送室124が接続されている。搬送室124には、表面処理部125が2つ接続されており、成膜部126が1つ接続されている。また、搬送室124には、ウェハをロードロック123A、123Bと表面処理部125及び成膜部126との間で搬送するための搬送アーム124aが設けられている。
【0108】
なお、表面処理部125と成膜部126の数は、特に限定されるものではなく、スループットを向上させるために、表面処理及び成膜処理の条件に応じて、任意の数に変更可能である。
【0109】
図11及び図12に示すように、表面処理部125は、処理容器130と、密着促進剤供給機構80及び排気機構95aとを有する。
【0110】
密着促進剤供給機構80は、気化器81及び供給管82を含み、供給管82が処理容器130内に設けられている点を除き、第1の実施の形態に係る密着促進剤供給機構80と同様にすることができる。また、排気機構95aは、排気装置96及び排気管97を含み、第1の実施の形態に係る成膜容器60に設けられた排気機構95と同様にすることができる。
【0111】
処理容器130は、処理室131、ヒータ(加熱装置)132、基板保持部133及び排気機構95aを有する。ヒータ(加熱装置)132は、表面処理の際にウェハWを加熱するためのものである。基板保持部133は、ウェハWを保持するためのものである。ただし、基板保持部133は、ウェハWを1枚保持可能に設けられている。なお、ヒータ(加熱装置)132は、基板保持部133内に設けられていてもよい。
【0112】
図13に示すように、成膜部126は、成膜容器60b、供給機構70、パージガス供給機構90、排気機構95b及びクリーニングガス供給機構100を有する。パージガス供給機構90は、パージガス供給部91、パージガス供給管92、バルブ93及びMFC94を含み、第1の実施の形態におけるパージガス供給機構90と同様にすることができる。排気機構95bは、排気装置96及び排気管97を含み、第1の実施の形態における排気機構95と同様にすることができる。クリーニングガス供給機構100は、クリーニングガス供給部101、及びクリーニングガス供給管102、バルブ103及びMFC104を含み、第1の実施の形態におけるクリーニングガス供給機構100と同様にすることができる。
【0113】
成膜容器60bは、反応室61、ヒータ(加熱装置)62及び基板保持部44cを有する。基板保持部44cは、ウェハWを保持可能であってかつ回転可能に設けられている。ただし、基板保持部44cは、ウェハWを1枚保持可能に設けられている。
【0114】
供給機構70は、第1の原料ガス供給部71a、第2の原料ガス供給部71b、インジェクタ72を含む。第1の原料ガス供給部71a、第2の原料ガス供給部71bは第1の実施の形態と同様にすることができる。
【0115】
インジェクタ72は、供給管73a及び内側供給管73bを含む。原料ガス供給部71は、インジェクタ72の供給管73aに接続されている。供給管73aと内側供給管73bとは、水平方向に延在するように設けられている点を除き、第1の実施の形態に係るインジェクタ72と同様にすることができる。すなわち、供給管73aには、複数の供給孔75が形成されている。内側供給管73bの下流側の端部付近には、供給管73aの内部空間に第1の原料ガスを供給するための開口76が形成されている。
【0116】
なお、図13では、内側供給管73bに第1の原料ガス供給部71aから第1の原料ガスを供給し、供給管73aに第2の原料ガス供給部71bから第2の原料ガスを供給する例を示している。しかし、供給管73aに第1の原料ガスを供給し、内側供給管73bに第2の原料ガスを供給してもよい。
【0117】
また、制御部110は、第1の実施の形態と同様にすることができる。
【0118】
本実施の形態に係る成膜処理では、成膜部126により成膜処理を行う前に、表面処理部125を用いて密着促進剤による表面処理を行う。
【0119】
搬送室124に設けられた搬送アーム124aによりウェハWを表面処理部125の処理容器130内に設けられた基板保持部133に受け渡し、ウェハWを保持する。そして、排気機構95aにより、処理容器130の内部を減圧する。
【0120】
次に、制御部110によりヒータ132に供給する電力を制御することによって、ウェハWの温度を表面処理するための処理温度まで上昇させる。そして、ウェハWを加熱するとともに、処理容器130内に密着促進剤ガスを供給し、供給された密着促進剤ガスと、加熱されているウェハWとを、水分を含まない雰囲気中で反応させることによって、ウェハWの表面を処理する(表面処理工程)。
【0121】
本実施の形態でも、密着促進剤としてシランカップリング剤を用いることが好ましい。また、本実施の形態でも、シランカップリング剤として、分子中に例えばアルコキシ基を有するオルガノシランを用いることが好ましい。オルガノシランとして、式(1)、式(2)に示したSC剤A、SC剤Bを用いることが好ましい。また、SC剤Aを用いることにより、表面が水素原子(H)で終端されたSiウェハを用いるときも、成膜されたポリイミド膜の密着性を向上させることができる。
【0122】
このようにして表面処理部125を用いて密着促進剤による表面処理を行った後、成膜部126により成膜処理を行う。成膜部126により成膜処理は、成膜処理がバッチ処理に代え枚葉処理である点を除き、第1の実施の形態の成膜工程と同様にすることができる。
【0123】
そして、本実施の形態でも、成膜処理の後、成膜容器60b内に残留しているポリイミドを酸化して除去する(クリーニング工程)。
【0124】
第1の実施の形態と同様に、クリーニングガス供給機構100により、酸素ガスよりなるクリーニングガスを成膜容器60b内に供給する。このとき、クリーニングガス供給機構100からのクリーニングガスの供給流量をMFC104により制御し、パージガス供給機構90からのパージガスの供給流量をMFC94により制御し、成膜容器60bからの排気流量を図示しないバルブにより制御する。これにより、成膜容器60b内を酸素雰囲気にすることができ、酸素分圧を所定の分圧に調整することができる。
【0125】
このようにして成膜容器60b内を酸素雰囲気にした状態で、ヒータ62により、成膜容器60bを加熱する。ここで、成膜容器60bを360〜540℃の温度に加熱することによって、成膜容器60b内に付着したポリイミド膜あるいは付着したポリイミド膜が剥がれ落ちたものを含め、成膜容器60b内に残留しているポリイミドを酸化して除去する。これにより、成膜容器60b内に残留しているポリイミドが熱分解により炭化することを防止できる。
【0126】
また、成膜容器60b内を、酸素分圧が0.2気圧以上である酸素雰囲気にした状態で、ヒータ62により、成膜容器60bを加熱することが好ましい。これにより、成膜容器60b内に残留しているポリイミドがより酸化しやすくなるため、熱分解により炭化することをより防止できる。
【0127】
本実施の形態でも、ポリイミド膜を成膜する成膜装置において、成膜容器内を酸素雰囲気にした状態で、成膜容器を加熱機構により加熱することによって、成膜容器内に残留しているポリイミドを酸化して除去する。これにより、成膜容器内にパーティクルが残ることなくポリイミド及び密着促進剤を酸化して除去することができる。
【0128】
以上、本発明の好ましい実施の形態について記述したが、本発明はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0129】
10 成膜装置
43 蓋体(基板保持部)
44、44a、44b ボート(基板保持部)
60 成膜容器
62 ヒータ
70 供給機構
71 原料ガス供給部
80 密着促進剤供給機構
90 パージガス供給機構
95 排気機構
100 クリーニングガス供給機構
110 制御部
W ウェハ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸二無水物よりなる第1の原料を気化させた第1の原料ガスと、ジアミンよりなる第2の原料を気化させた第2の原料ガスとを成膜容器内に供給することによって、前記成膜容器内に搬入している基板にポリイミド膜を成膜する成膜装置におけるクリーニング方法であって、
前記成膜容器内を酸素雰囲気にした状態で、前記成膜容器を加熱機構により360〜540℃の温度に加熱することによって、前記成膜容器内に残留しているポリイミドを酸化して除去する、クリーニング方法。
【請求項2】
前記成膜容器内を、酸素分圧が0.2気圧以上である酸素雰囲気にした状態で、前記成膜容器を加熱することによって、前記ポリイミドを酸化して除去する、請求項1に記載のクリーニング方法。
【請求項3】
成膜容器内に原料ガスを供給することによって、前記成膜容器内に搬入されている前記基板に膜を成膜する成膜方法において、
基板を前記成膜容器内に搬入し、密着促進剤を気化させた密着促進剤ガスを前記成膜容器内に供給し、前記成膜容器内に搬入した前記基板の表面を密着促進剤ガスにより処理し、酸二無水物よりなる第1の原料を気化させた第1の原料ガスと、ジアミンよりなる第2の原料を気化させた第2の原料ガスとを前記成膜容器内に供給することによって、密着促進剤により表面を処理した前記基板にポリイミド膜を成膜し、ポリイミド膜を成膜した前記基板を前記成膜容器内から搬出する処理工程と、
前記成膜容器内を酸素雰囲気にした状態で、前記成膜容器を加熱機構により加熱することによって、前記成膜容器内に残留しているポリイミドを酸化して除去するクリーニング工程と
を有する、成膜方法。
【請求項4】
前記処理工程と前記クリーニング工程とを交互に繰り返す、請求項3に記載の成膜方法。
【請求項5】
前記処理工程を所定回数繰り返した後に、前記クリーニング工程を1回行うものである、請求項3に記載の成膜方法。
【請求項6】
前記処理工程は、
複数の基板を上下方向に所定の保持間隔で保持している基板保持部を前記成膜容器内に搬入することによって、前記複数の基板を前記成膜容器内に搬入するものであり、
前記基板保持部を前記成膜容器内から搬出することによって、ポリイミド膜を成膜した前記複数の基板を前記成膜容器内から搬出するものである、請求項3から請求項5のいずれかに記載の成膜方法。
【請求項7】
前記クリーニング工程は、前記成膜容器を加熱機構により360〜540℃の温度に加熱することによって、前記ポリイミドを酸化して除去するものである、請求項3から請求項6のいずれかに記載の成膜方法。
【請求項8】
前記クリーニング工程は、前記成膜容器内を、酸素分圧が0.2気圧以上である酸素雰囲気にした状態で、前記成膜容器を加熱することによって、前記ポリイミドを酸化して除去するものである、請求項3から請求項7のいずれかに記載の成膜方法。
【請求項1】
酸二無水物よりなる第1の原料を気化させた第1の原料ガスと、ジアミンよりなる第2の原料を気化させた第2の原料ガスとを成膜容器内に供給することによって、前記成膜容器内に搬入している基板にポリイミド膜を成膜する成膜装置におけるクリーニング方法であって、
前記成膜容器内を酸素雰囲気にした状態で、前記成膜容器を加熱機構により360〜540℃の温度に加熱することによって、前記成膜容器内に残留しているポリイミドを酸化して除去する、クリーニング方法。
【請求項2】
前記成膜容器内を、酸素分圧が0.2気圧以上である酸素雰囲気にした状態で、前記成膜容器を加熱することによって、前記ポリイミドを酸化して除去する、請求項1に記載のクリーニング方法。
【請求項3】
成膜容器内に原料ガスを供給することによって、前記成膜容器内に搬入されている前記基板に膜を成膜する成膜方法において、
基板を前記成膜容器内に搬入し、密着促進剤を気化させた密着促進剤ガスを前記成膜容器内に供給し、前記成膜容器内に搬入した前記基板の表面を密着促進剤ガスにより処理し、酸二無水物よりなる第1の原料を気化させた第1の原料ガスと、ジアミンよりなる第2の原料を気化させた第2の原料ガスとを前記成膜容器内に供給することによって、密着促進剤により表面を処理した前記基板にポリイミド膜を成膜し、ポリイミド膜を成膜した前記基板を前記成膜容器内から搬出する処理工程と、
前記成膜容器内を酸素雰囲気にした状態で、前記成膜容器を加熱機構により加熱することによって、前記成膜容器内に残留しているポリイミドを酸化して除去するクリーニング工程と
を有する、成膜方法。
【請求項4】
前記処理工程と前記クリーニング工程とを交互に繰り返す、請求項3に記載の成膜方法。
【請求項5】
前記処理工程を所定回数繰り返した後に、前記クリーニング工程を1回行うものである、請求項3に記載の成膜方法。
【請求項6】
前記処理工程は、
複数の基板を上下方向に所定の保持間隔で保持している基板保持部を前記成膜容器内に搬入することによって、前記複数の基板を前記成膜容器内に搬入するものであり、
前記基板保持部を前記成膜容器内から搬出することによって、ポリイミド膜を成膜した前記複数の基板を前記成膜容器内から搬出するものである、請求項3から請求項5のいずれかに記載の成膜方法。
【請求項7】
前記クリーニング工程は、前記成膜容器を加熱機構により360〜540℃の温度に加熱することによって、前記ポリイミドを酸化して除去するものである、請求項3から請求項6のいずれかに記載の成膜方法。
【請求項8】
前記クリーニング工程は、前記成膜容器内を、酸素分圧が0.2気圧以上である酸素雰囲気にした状態で、前記成膜容器を加熱することによって、前記ポリイミドを酸化して除去するものである、請求項3から請求項7のいずれかに記載の成膜方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−209393(P2012−209393A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73192(P2011−73192)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
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