説明

ケースの製造方法、及びケース

【課題】軸方向に沿って外径が大きく変化するファンケース1を製造する場合であっても、複合材料の強度低下に繋がるしわや繊維の蛇行の発生を抑えて、ファンケース1の強度及び剛性を十分に高めること。
【解決手段】織物25をマンドレル7の成形面S側に巻付ける織物巻付工程と、ロービング35をマンドレル7の周方向に対して−10〜+10度の傾斜角βを保った状態でマンドレル7の成形面S側に螺旋状に巻付けるロービング巻付工程を交互に複数回繰り返すこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素繊維,アラミド繊維,又はガラス繊維等の強化繊維とエポキシ樹脂,フェノール樹脂,又はポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂との複合材料からなるケースを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、新素材に関する研究開発の活発化に伴い、強化繊維と熱硬化性樹脂との複合材料(FRP)が軽量で高強度を有する素材として注目されており、航空機エンジンのファンケースの構成材料に複合材料を適用する研究開発がなされている。そして、複合材料からなるファンケースを製造する方法の先行技術として特許文献1に示すものがあり、先行技術に係るケースの製造方法の内容は、次のようになる。
【0003】
即ち、外周側にファンケースの最終形状に対応する形状の成形面を有したマンドレルを用い、マンドレルを軸心周りに回転させつつ、ファンケースの軸長に対応する幅を有した織物をマンドレルへ供給することにより、織物をマンドレルの成形面側に巻付けて、ファンケースの最終形状と同形状の成形体を成形する。そして、成形体を加熱することにより、成形体に予め含浸させた熱硬化性樹脂を硬化させる。これにより、複合材料からなるファンケースを製造することができる。なお、ファンケースの製造後に、ファンケースをマンドレルから取り外しておく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/0098337号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、成形体のねじり強度及びねじり剛性を十分に確保するために、一般に、織物の構成要素の中に繊維配向角が−10〜+10度の強化繊維(繊維配向角−10〜+10度の強化繊維)を含める必要がある。一方、織物の構成要素の中に繊維配向角−10〜+10度の強化繊維を含めると、単純円筒形状のファンケースを適切に製造することができるものの、軸方向(ファンケースの軸方向)に沿って外径が大きく変化するファンケースを製造する場合に、ファンケースの最大外径部で繊維配向角−10〜+10度の強化繊維の周方向の長さが規定されることもあって、外径が小さい箇所では繊維配向角−10〜+10度の強化繊維の長さが余剰になり、しわや繊維の蛇行が生じて、複合材料の強度低下を招くことになる。つまり、前述の場合には、ファンケースの強度及び剛性を十分に高めることが困難であるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、前述の問題を解決することができる、新規な構成のケースの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の特徴は、強化繊維と熱硬化性樹脂との複合材料からなる筒状のケースを製造する方法において、外周側に前記ケースの最終形状に対応する形状の成形面を有したマンドレルを用い、前記マンドレルを軸心周りに回転させつつ、繊維配向角が−70〜−20度及び/又は+20〜+70度(繊維配向角−70〜−20度及び/又は+20〜+70度)の強化繊維(強化繊維の繊維帯)からなりかつ前記ケースの軸長に対応する幅を有した織物を前記マンドレルへ供給することにより、前記織物を前記マンドレルの成形面側に巻付ける織物巻付工程と、前記織物巻付工程の終了後に、前記マンドレルを軸心周りに回転させつつ、強化繊維のロービング(繊維束)を前記マンドレルの軸方向へ前記マンドレルに対して相対的に移動させながら前記マンドレルへ供給することにより、前記ロービングを前記マンドレルの成形面側に前記マンドレルの周方向に対して−10〜+10度の傾斜角を保った状態で螺旋状に巻付けるロービング巻付工程と、前記織物巻付工程及び前記ロービング巻付工程の終了後に、前記織物巻付工程と前記ロービング巻付工程を交互に繰り返すことにより、前記ケースの最終形状と同形状の成形体を成形する繰り返し工程と、前記繰り返し工程の終了後に、前記成形体を加熱することにより、前記成形体に予め含浸させた熱硬化性樹脂を硬化させる加熱工程と、を具備したことを要旨とする。
【0008】
ここで、前記ケースとは、航空機エンジンのファンケースのみならず、複合材料からなる種々の筒状のケースを含む意であって、前記ケースの軸長に対応する幅とは、前記ケースと同じ軸長の前記成形体を成形するための幅のことをいう。また、繊維配向角とは、前記織物の長手方向、換言すれば、前記ケースの周方向に対する強化繊維の鋭角側の傾斜角のことをいい、例えば前記織物の長手方向に対して時計回り方向へ傾斜している場合には正の繊維配向角となり、前記織物の長手方向に対して反時計回り方向へ傾斜している場合には負の繊維配向角となる。更に、前記ロービングの傾斜角とは、前記マンドレルの周方向に対する前記ロービングの鋭角側の傾斜角のことをいい、例えば前記マンドレルの周方向に対して時計回り方向へ傾斜している場合には正の傾斜角となり、前記マンドレルの周方向に対して反時計回り方向へ傾斜している場合には負の傾斜角となる。
【0009】
本発明の特徴によると、前記織物を前記マンドレルの成形面側に巻付ける織物巻付工程と、前記ロービングを前記マンドレルの周方向に対して−10〜+10度の傾斜角を保った状態で前記マンドレルの成形面側に螺旋状に巻付けるロービング巻付工程を交互に繰り返すことにより、前記ケースの最終形状と同形状の前記成形体を成形しているため、繊維配向角が−10〜+10度(繊維配向角−10〜+10度)の強化繊維を前記織物の構成要素から除外しても、前記ロービングによって前記成形体のねじり強度及びねじり剛性を確保することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、繊維配向角−10〜+10度の強化繊維を前記織物の構成要素から除外しても、前記ロービングによって前記成形体のねじり強度及びねじり剛性を確保できるため、軸方向(前記ケースの軸方向)に沿って外径が大きく変化する前記ケースを製造する場合であっても、前記複合材料の強度低下に繋がるしわや繊維の蛇行の発生を抑えて、前記ケースの強度及び剛性を十分に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係るケースの製造方法における織物巻付工程を説明する模式的な斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係るケースの製造方法におけるロービング巻付工程を説明する模式的な斜視図である。
【図3】織物の部分平面図であって、一部を破断してある。
【図4】ロービングをマンドレルの成形面側に巻付ける際におけるマンドレルの周方向に対するロービングの傾斜角を説明する模式的な図である。
【図5】本発明の実施形態に係るケースの製造方法の実施に用いられるマンドレル回転装置、織物供給装置、及びロービング供給装置を説明する模式的な斜視図である。
【図6】本発明の実施形態に係るケース製造方法の実施に用いられるマンドレル及びマンドレル回転装置を説明する模式的な断面図である。
【図7】航空機エンジンの模式的な断面図である。
【図8】本発明の実施形態の変形例に係るファンケースの部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態について図1から図7を参照して説明する。なお、図面中、「FF」は、前方向、「FR」は、後方向、「L」は、左方向、「R」は、右方向をそれぞれ指してある。
【0013】
まず、本発明の実施形態に係るケースの製造方法の製造対象であるファンケースについて簡単に説明する。
【0014】
図7に示すように、本発明の実施形態に係るケースの製造方法の製造対象である筒状のファンケース1は、航空機エンジン3に用いられ、航空機エンジン3における複数のファンブレード5を覆うものである。また、ファンケース1は、炭素繊維,アラミド繊維,又はガラス繊維等の強化繊維とエポキシ樹脂,フェノール樹脂,又はポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂との複合材料からなるものであって、軸方向(ファンケース1の軸方向)に沿って外径が大きく変化するようになっている。
【0015】
続いて、本発明の実施形態に係るケースの製造方法の実施に用いられる装置等について説明する。
【0016】
図6に示すように、本発明の実施形態に係るマンドレル7は、筒状のマンドレル本体9、及びマンドレル本体9の端部に着脱可能に設けられたエンド型11を備えている。また、マンドレル7は、外周側に、ファンケース1の最終形状に対応する成形面Sを有している。
【0017】
図5及び図6に示すように、適宜位置には、マンドレル7を回転させるマンドレル回転装置13が配設されており、このマンドレル回転装置13の具体的な構成は、次のようになる。
【0018】
即ち、適宜位置には、一対の側板15が左右に対向して設けられており、一対の側板15には、左右方向へ延びた回転軸17が回転可能に設けられており、この回転軸17は、マンドレル7を一体的にセット可能である。また、左寄り側板15には、回転軸17を軸心周りに回転させる回転モータ19が設けられており、この回転モータ19の出力軸には、主動ギア21が一体的に設けられてあって、回転軸17の左端部(一端部)には、この主動ギア21に噛合可能な従動ギア23が一体的に設けられている。ここで、例えば一対の側板15の上側部分を上下方向へ開閉可能又は切離可能にしたり、一対の側板15にその他適宜の構成を付加したりすることによって、回転軸17は一対の側板15に対して着脱できるようになっている。
【0019】
マンドレル回転装置13の前方には、織物25をマンドレル7へ供給する織物供給装置27が設けられており、この織物供給装置27の具体的な構成は、次のようになる。
【0020】
即ち、マンドレル回転装置13の前方には、フロントフレーム29が配設されており、このフロントフレーム29の上部には、一対のボビン支持部材31が左右に対向して設けられており、右寄りのボビン支持部材31は、左右方向へ位置調節可能になっている。また、一対のボビン支持部材31の間には、織物25を巻いたボビン33が回転自在に支持されている。ここで、例えば一対のボビン支持部材31の上側部分を上下方向へ開閉可能又は切離可能にしたり、一対のボビン支持部材31にその他適宜の構成を付加したりすることによって、ボビン33は一対のボビン支持部材31に対して着脱できるようになっている。なお、織物25の詳細については、後述する。
【0021】
マンドレル回転装置13の後方には、炭素繊維,アラミド繊維,又はガラス繊維等の強化繊維のロービング(繊維束)35をマンドレル7へ供給するロービング供給装置37が設けられており、このロービング供給装置37の具体的な構成は、次のようになる。
【0022】
即ち、マンドレル回転装置13の後方には、リアフレーム39が配設されており、リアフレーム39の上部には、左右方向へ延びた一対のガイドレール41が設けられている。また、一対のガイドレール41には、ロービング35の供給位置を可変する供給ヘッド43が左右方向へ移動可能に設けられており、この供給ヘッド43は、左右移動モータ等の左右移動アクチュエータ(図示省略)の駆動によって左右方向へ移動するものである。
【0023】
なお、説明の都合上、織物供給装置27及びロービング供給装置37はマンドレル回転装置13に対して反対側に配設されているが、織物供給装置27及びロービング供給装置37の位置関係は特に限定はなく、種々の位置関係で実施可能である。
【0024】
続いて、本発明の実施形態に係るケースの製造方法について説明する。
【0025】
本発明の実施形態に係るケースの製造方法は、炭素繊維等の強化繊維とエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂との複合材料からなる筒状のファンケース1を製造する方法であって、織物巻付工程、ロービング巻付工程、繰り返し工程、及び加熱工程を具備している。そして、各工程の具体的な内容は、次のようになる。
【0026】
織物巻付工程
図1に示すように、外周側にファンケース1の最終形状に対応する形状の成形面Sを有したマンドレル7を用い、回転モータ19の駆動によりマンドレル7を軸心周りに回転軸17と一体的に回転させつつ、マンドレル7の回転に連動してボビン33を回転させて、織物25をマンドレル7へ供給する。これにより、織物25をマンドレル7の成形面S側に巻付けることができる。
【0027】
ここで、図3に示すように、織物25は、炭素繊維,アラミド繊維,又はガラス繊維等の強化繊維の2軸の繊維帯45,47からなるノンクリンプ構造であって、ファンケース1の軸長に対応する幅を有している。また、2軸の繊維帯45,47の繊維配向角αは、−70〜−20度及び/又は+20〜+70度(好ましくは、−60〜−30度及び/又は+30〜+60度、具体的には、+45度及び/又は−45度)になっている。2軸の繊維帯45,47の繊維配向角αの絶対角が20度未満であると、ファンケース1にしわや繊維の蛇行の発生が懸念されるからであり、一方、2軸の繊維帯45,47の繊維配向角αの絶対角が70度を超えると、後述の成形体1F(図6参照)のねじり強度及びねじり剛性を確保することが困難になるからである。更に、マンドレル7の成形面S側に巻付ける織物25には、予めエポキシ樹脂,フェノール樹脂,又はポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂が含浸されている。
【0028】
なお、織物25の形態は、ノンクリンプ構造に限られるものでなく、平織り構造、綾織り構造等であっても構わなく、図3における破線で示した部位は、ステッチング部である。また、織物巻付工程において、織物25の巻層数は、単数又は複数を問わない。
【0029】
ロービング工程
織物巻付工程の終了後に、図2に示すように、回転モータ19の駆動によりマンドレル7を軸心周りに回転軸17と一体的に回転させつつ、左右移動アクチュエータの駆動により供給ヘッド43を左右方向させて、炭素繊維等の強化繊維のロービング35をマンドレル7の軸方向(左右方向)へ移動させながらマンドレル7へ供給する。これにより、ロービング35をマンドレル7の成形面S側に螺旋状に巻付けることができる。
【0030】
ここで、図4に示すように、ロービング35を巻付ける際に、マンドレル7の周方向に対するロービング35の傾斜角βは−10〜+10度、好ましくは、−10〜−2度及び/又は+2〜+10度に保っている。ロービング35の傾斜角βの絶対角が10度を超えると、後述の成形体1Fをねじり強度及びねじり剛性を確保することが困難になるからである。また、マンドレル7の成形面S側に巻付けるロービング35には、予めエポキシ樹脂,フェノール樹脂,又はポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂が含浸されている。
【0031】
なお、ロービング巻付工程において、ロービング35の巻層数は、単数又は複数を問わない。
【0032】
繰り返し工程
織物巻付工程及びロービング巻付工程の終了後に、織物巻付工程とロービング巻付工程を交互に複数回繰り返す。これにより、ファンケース1の最終形状と同形状の成形体を成形することができる。
【0033】
加熱工程
繰り返し工程の終了後に、回転軸17を一対の側板15から離脱させて、マンドレル7を回転軸17から取り外す。次に、マンドレル7を成形体1Fと共に加熱炉(図示省略)の所定位置にセットする。そして、加熱炉のヒータ(図示省略)によって成形体1Fを熱硬化性樹脂の所定の硬化温度まで加熱する。これにより、成形体に予め含浸させた熱硬化性樹脂を硬化させることができる。
【0034】
以上により、強化繊維と熱硬化性樹脂との複合材料からなるファンケース1を製造することができる。そして、ファンケース1の製造後に、マンドレル本体9からエンド型11を離脱させて、ファンケース1をマンドレル本体9から取り外しておく。
【0035】
なお、前述のように、マンドレル7の成形面S側に巻付ける織物25及びロービング35に予め熱硬化性樹脂が含浸させる代わりに、繰り返し工程の終了後であって加熱工程の開始前に、溶融状態のエポキシ樹脂,フェノール樹脂,又はポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂を注入によって成形体1F内に含浸させる含浸工程を具備するようにしても構わない。また、織物巻付工程とロービング工程の順番を逆にしても構わない。
【0036】
続いて、本発明の実施形態の作用及び効果について説明する。
【0037】
織物25をマンドレル7の成形面S側に巻付ける織物巻付工程と、ロービング35をマンドレル7の周方向に対して−10〜+10度の傾斜角βを保った状態でマンドレル7の成形面S側に螺旋状に巻付けるロービング巻付工程を交互に複数回繰り返すことにより、ファンケース1の最終形状と同形状の成形体1Fを成形しているため、繊維配向角α−10〜10度の強化繊維を織物25の構成要素から除外しても、ロービング35によって成形体1Fのねじり強度及びねじり剛性を確保することができる。
【0038】
従って、本発明の実施形態に係るケースの製造方法によれば、軸方向に沿って外径が大きく変化するファンケース1を製造する場合であっても、成形体1Fのねじり強度及びねじり剛性を確保しつつ、複合材料の強度低下に繋がるしわや繊維の蛇行の発生を抑えて、ファンケース1の強度及び剛性を十分に高めることができる。
【0039】
本発明の実施形態の変形例について図8を参照して説明する。
【0040】
図8に示すように、本発明の実施形態の変形例に係るファンケース49は、本発明の実施形態に係るケースの製造方法によって製造されたファンケース1と同じものであるが、別の方面からファンケース49を特定している。
【0041】
即ち、ファンケース49は、ファンケース1と同様に、炭素繊維,アラミド繊維,又はガラス繊維等の強化繊維とエポキシ樹脂,フェノール樹脂,又はポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂との複合材料からなるものであって、軸方向(ファンケース49の軸方向)に沿って外径が大きく変化するようになっている。そして、ファンケース49は、織物25(図1参照)を含む複数の織物層51と、複数の織物層51に交互に積層されかつロービング35(図2参照)を含むロービング層53とを具備している。ここで、各織物25は、繊維配向角(ファンケース1Aの周方向に対する傾斜角)が70〜−20度及び/又は+20〜+70度(好ましくは、−60〜−30度及び/又は+30〜+60度、具体的には、+45度及び/又は−45度)の強化繊維からなるものである。また、各ロービング35は、ファンケース1Aの周方向に対する傾斜角が−10〜+10度(好ましくは、−10〜−2度及び/又は+2〜+10度)の強化繊維からなるものである。なお、各織物層51は、単層構造又は複層構造のいずれであっても構わない。
【0042】
従って、ファンケース49が繊維配向角−70〜−20度及び/又は+20〜+70度の強化繊維からなる織物25を含む複数の織物層51と傾斜角−10〜+10度の強化繊維からなるロービング35を含む複数のロービング層53とを交互に積層してなるため、繊維配向角−10〜10度の強化繊維を織物25の構成要素から除外しても、ロービング35によって成形体1F(図6参照)のねじり強度及びねじり剛性を確保することができる。よって、本発明の実施形態の変形例によれば、本発明の実施形態の効果と同様の効果を奏するものである。
【0043】
なお、本発明は、前述の実施形態の説明に限られるものではなく、適宜の変更を行うことにより、種々の態様で実施可能である。また、本発明に包含される権利範囲は、これらの実施形態に限定されないものである。
【符号の説明】
【0044】
α 織物の繊維配向角
β マンドレルの周方向に対する傾斜角
S 成形面
1 ファンケース
1F 成形体
3 航空機エンジン
5 ファンブレード
7 マンドレル
9 マンドレル本体
11 エンド型
13 マンドレル回転装置
15 側板
17 回転軸
19 回転モータ
25 織物
27 織物供給装置
29 フロントフレーム
31 ボビン支持部材
33 ボビン
35 ロービング
37 ロービング供給装置
39 リアフレーム
43 供給ヘッド
45 繊維帯
47 繊維帯
49 ファンケース
51 織物層
53 ロービング層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
強化繊維と熱硬化性樹脂との複合材料からなる筒状のケースを製造する方法において、
外周側に前記ケースの最終形状に対応する形状の成形面を有したマンドレルを用い、前記マンドレルを軸心周りに回転させつつ、繊維配向角が−70〜−20度及び/又は+20〜+70度の強化繊維からなりかつ前記ケースの軸長に対応する幅を有した織物を前記マンドレルへ供給することにより、前記織物を前記マンドレルの成形面側に巻付ける織物巻付工程と、
前記マンドレルを軸心周りに回転させつつ、強化繊維のロービングを前記マンドレルの軸方向へ前記マンドレルに対して相対的に移動させながら前記マンドレルへ供給することにより、前記ロービングを前記マンドレルの成形面側に前記マンドレルの周方向に対して−10〜+10度の傾斜角を保った状態で螺旋状に巻付けるロービング巻付工程と、
前記織物巻付工程及び前記ロービング巻付工程の終了後に、前記織物巻付工程と前記ロービング巻付工程を交互に繰り返すことにより、前記ケースの最終形状と同形状の成形体を成形する繰り返し工程と、
前記繰り返し工程の終了後に、前記成形体を加熱することにより、前記成形体に予め含浸させた熱硬化性樹脂を硬化させる加熱工程と、を具備したことを特徴とするケースの製造方法。
【請求項2】
前記マンドレルの周方向に対する前記ロービングの傾斜角は、−10〜−2度及び/又は+2〜+10度であることを特徴とする請求項1に記載のケースの製造方法。
【請求項3】
前記マンドレルの成形面側に巻付ける前記織物及び前記ロービングには、予め熱硬化性樹脂が含浸されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のケースの製造方法。
【請求項4】
前記繰り返し工程の終了後であって前記加熱工程の開始前に、溶融状態の熱硬化性樹脂を注入によって前記成形体内に含浸させる含浸工程と、を具備したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のケースの製造方法。
【請求項5】
前記織物は、ノンクリンプ構造であることを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれかの請求項に記載のケースの製造方法。
【請求項6】
前記ケースは、航空機エンジンに用いられるファンケースであることを特徴とする請求項1から請求項5のうちのいずれかの請求項に記載のケースの製造方法。
【請求項7】
強化繊維と熱硬化性樹脂との複合材料からなる筒状のケースにおいて、
繊維配向角が−70〜−20度及び/又は+20〜+70度の強化繊維からなる織物を含む複数の織物層と、
複数の前記織物層に交互に積層され、周方向に対する傾斜角が−10〜+10度の強化繊維のロービングを含む複数のロービング層と、具備したことを特徴とするケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−98524(P2011−98524A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−255309(P2009−255309)
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、財団法人日本航空機エンジン協会委託研究「平成20年度エネルギー使用合理化技術開発等(次世代航空機エンジン用構造部材創製・加工技術開発)作業」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【出願人】(500302552)株式会社IHIエアロスペース (298)
【Fターム(参考)】