説明

コンピュータプログラム及び数値計算装置

【課題】分布定数系の微分方程式を少ない演算量で解けるようにする。
【解決手段】全ての計算時刻について値が与えられる第1の変数と、初期値のみが与えられる第2の変数とで定義される被積分関数に関する積分演算をコンピュータで実行し、各計算時刻で使用する前記第2の変数の値を算出するために、以下の処理を実行する。まず、被積分関数を第2の変数について偏微分して求めた偏導関数を記憶装置から読み出す。各計算時刻では、初期値又は直前回の計算時刻に算出された第2の変数の値と、現計算時刻に与えられる第1の変数の値を、被積分関数と偏導関数にそれぞれ代入して現計算時刻における被積分関数の値と偏導関数の値をそれぞれ算出する。この後、算出された被積分関数の値を初期値とし、かつ、当該被積分関数の値に偏導関数の値を乗算して算出された値を傾きとする指数関数を用い、次回計算時刻に使用する第2の変数の値を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微分方程式の近似解を求めるために使用する数値計算技術に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の吸気系や油圧系における状態推定には流体計算が必要である。現在、流体計算のための演算方法の分野では、分布定数系の偏微分方程式の解法に関するものが多々発明されている。例えば引用文献1には、局所補間微分オペレータ法により計算精度を向上る手法が開示されている。より具体的には、ラグランジュ法を移流項に適用するセミラグランジュ移流を、時間積分する変数に関する補間関数についての偏微分方程式の移流項に適用することにより、変数を時間積分する手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−197949号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】”Internal Combustion Engine Fundamentals”, John B. Heywood, Apr.1,1988
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
引用文献1は、(1)式に表す偏微分方程式を安定的に解くための数値計算手法に関する。
【0006】
【数1】

【0007】
この微分方程式は、1次元の流体の計算にしばしば用いられる。ここで、fは密度、uは速度を意味する。(1)式を安定的に解くには、以下の2つの条件が求められる。
【0008】
(条件1)∂uf/∂xを精度よく求めるための偏微分のスムース化
(条件2)精度良くfを求めるための−∂uf/∂xの時間tに関する積分の安定化
【0009】
引用文献1の手法は、(条件1)に関するものであり、(条件2)は依然として解決されていない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、(2)式で表される集中定数系の常微分方程式の安定した数値計算の実現手法に着目する。(2)式で表される集中定数系の常微分方程式の安定した数値計算の実現には、(2)式を積分型で表した(3)式を高精度に計算する必要がある。
【0011】
【数2】

【0012】
【数3】

【0013】
そこで、本発明者は、数値計算に要する負荷の増加を抑制しつつ、(3)式で表される積分を高精度に算出することができる数値計算手法を発明した。すなわち、本発明者は、全ての計算時刻について値が与えられる第1の変数と、初期値のみが与えられる第2の変数とで定義される被積分関数を時刻について積分演算し、各計算時刻で使用する第2の変数の値を算出する数値計算手法として、以下に示す処理を有するものを発明した。
【0014】
(1)被積分関数を第2の変数について偏微分して求めた偏導関数を、記憶装置から読み出す処理
(2)各計算時刻において、
(2-1) 初期値又は直前回の計算時刻に算出された第2の変数の値と、現計算時刻に与えられる第1の変数の値を、記憶装置から読み出した被積分関数に代入して現計算時刻における被積分関数の値を算出し、算出結果を記憶装置に記憶する処理
(2-2) 初期値又は直前回の計算時刻に算出された第2の変数の値と、現計算時刻に与えられる第1の変数の値を、記憶装置から読み出した偏導関数に代入して現計算時刻における偏導関数の値を算出し、算出結果を記憶装置に記憶する処理
(2-3) 算出された現計算時刻における被積分関数の値を初期値とし、かつ、当該被積分関数の値に偏導関数の値を乗算して算出された値を傾きとする指数関数を記憶装置に記憶する処理
(2-4) 記憶装置から読み出した指数関数に基づいて、次回計算時刻に使用する第2の変数の値を算出する処理
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、全ての計算時刻について値が与えられる第1の変数と、初期値のみが与えられる第2の変数とで定義される被積分関数の時刻に関する積分演算を、数値計算に要する負荷の増加を抑制しつつ高精度に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】内燃機関とその制御系の概略構成例を示す図。
【図2】内燃機関の制御の概要を説明するフローチャート。
【図3】内燃機関の制御処理を説明するフローチャート。
【図4】本発明による数値計算の概念を説明する図。
【図5】油圧ブレーキとその制御系の概略構成例を示す図。
【図6】油圧ブレーキの制御処理を説明するフローチャート。
【図7】油圧ブレーキの制御例を示す図表。
【図8】油圧ブレーキの制御と判定速度との関係を説明する図。
【図9】油圧ブレーキの制御に伴う弁の制御例を説明する図。
【図10】本発明による数値計算の概念を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づいて、本発明の実施例を説明する。なお、後述する装置構成や処理動作の内容は発明を説明するための一例である。本発明には、後述する装置構成や処理動作を組み合わせた発明、後述する装置構成や処理動作に既知の技術を組み合わせた発明、後述する装置構成や処理動作の一部を既知の技術と置換した発明も含まれる。また、本発明は、(2)式を満たす微分方程式の変数を数値計算により求める場合に適用できる。以下の実施例では、内燃機関の空燃比制御(実施例1)と油圧ブレーキの制御(実施例2)を例に、本発明を説明する。
【0018】
(実施例1)
(内燃機関とその制御系)
図1は、内燃機関とその制御系の概略構成を示している。内燃機関は、燃料の吸入、圧縮、燃焼・膨張、排気を1サイクルとし、気筒105の内部で燃料が燃焼されるときに発生するピストン116の押下げ力を動力として取り出す。ここで、気筒105に対する燃料を含む空気の流入は吸気弁104が制御し、燃焼ガスの気筒105からの排気を排気弁121が制御する。また、気筒105内におけるピストン116の上下運動は、コネクティングロッド117及びクランクピン118を通じてクランク軸119の回転運動に変換される。
【0019】
空気は、スロットル弁101及び吸気管102を通じて気筒105に導かれる。吸筒管102は、より多くの空気を気筒105に供給できるように、空気の流れに勢いをつけるのに適した長さに調整されている。吸筒管102のうち気筒105の手前付近では、空気の量にほぼ比例した燃料を燃料噴射装置103が噴射する。噴出された燃料は空気と混合され、混合気体として気筒105に吸気される。点火装置106は、空気と燃料の混合気体が気筒105内で圧縮されたタイミングで点火し、混合気体を燃焼させる。この燃焼に伴うエネルギーが動力としてクランク軸119に伝達され、クランク軸119が回転駆動される。クランク軸119にはリングギヤ120が同軸に取り付けられており、このリングギヤ120の回転数がエンジン回転数センサ115を通じて計測される。
【0020】
ところで、気筒105に供給される空気量は、スロットル弁101の開放角度(スロットル角)の大きさにより調節される。スロットル弁101のスロットル角θと吸気管102内の圧力Pm の関係は(4)式により、気筒105に取り込まれる吸気量Mc と吸気管圧力Pm の関係は(5)式により表すことができる。これらの関係は、非特許文献1等で説明されている。
【0021】
【数4】

【0022】
【数5】

なお、式中の各記号は、それぞれ以下の値を示している。
Pm :吸気管の圧力 Tm :吸気管の温度 Vm :吸気管の体積
P0 :大気圧 T0 :大気温度
Vc :気筒体積 Neng :エンジン回転数
Cd :流量計数 At :スロットル弁の断面積
R:気体定数 γ:比熱比 η:吸気効率
【0023】
吸気量Mc に応じて噴出すべき燃料の量、すなわち燃料噴射量Mf は、吸気量Mcを目標空燃比λc で除算することにより算出することができる。この実施例の場合、目標空燃比λc は、空燃比マップ108から読み出す手法を採用する。空燃比マップ108には、吸気管圧力Pm とエンジン回転数Neng の組み合わせと、目標空燃比λc との対応関係が事前に格納されている。
【0024】
内燃機関の制御は、エンジン制御ユニット107が実行する。本実施例の場合、エンジン制御ユニット107はコンピュータで構成され、その制御プログラムはROM122に格納されている。後述する燃料噴射量の制御は、当該制御プログラムに基づく計算処理として実行される。
【0025】
(燃料噴射量の制御)
以下では、測定値として与えられるスロットル弁101の開度、エンジン(内燃機関)の回転数及び大気の状態に基づいて気筒105に供給する燃料噴射量Mf を算出し、算出された燃料噴射量を実際に噴出制御するまでの一連の制御手順を説明する。図2に、対応する制御手順の概要を示す。
【0026】
(ステップ201)
一般に、スロットル弁101には、例えばポテンショメータで構成されるスロットル開度センサ114が取り付けられている。スロットル開度センサ114は、スロットル弁101のスロットル角θを計測し、計測されたスロットル角θをエンジン制御ユニット(ECU)107に与える。このスロットル角θを、以下、「開度」ともいう。
【0027】
(ステップ202)
多くの場合、内燃機関が大気から取り込む空気の圧力は1気圧と考えることができる。しかし、山岳地帯のように高度の高い地点で使われる場合には、大気から取り込まれる空気の圧力は1気圧より低くなる。このような場合も考慮し、内燃機関には、大気圧センサ112が配置される。大気圧センサ112で計測された気圧は、計測値P0 としてエンジン制御ユニット107に与えられる。
【0028】
(ステップ203)
空気流路のうちスロットル弁101の上流側には大気温センサ111が配置される。一方、空気流路のうちスロットル弁101の下流側(図1の場合、吸気管102側)には、吸気温センサ113が配置される。各温度センサは例えば熱電対で構成される。大気温センサ111では大気温度T0 が測定され、吸気温センサ113では吸気管温度Tmが測定される。エンジン制御ユニット107は、測定された大気温度T0 及び吸気管温度Tmをそれぞれ取り込む。
【0029】
(ステップ204)
リングギヤ120の歯車の近接位置には、エンジン回転数センサ115が配置されている。エンジン回転数センサ115の出力には、リングギヤ120の回転数に同期した脈動が出現する。この脈動の回数を数えることにより、エンジンの回転数が計測される。この計測値は、エンジン回転数Neng としてエンジン制御ユニット107に取り込まれる。
【0030】
(ステップ205)
エンジン制御ユニット107は、以上のステップで計測された数値を(4)式に代入し、各計算時刻における吸気管圧力Pmを数値計算により算出(予測)する。ここでの数値計算が、発明者が提案する手法の核心部分であり、その詳細については後述する。また、ここでの数値計算を実行するエンジン制御ユニット107が、特許請求の範囲における「数値計算装置」の一例に対応する。
【0031】
(ステップ206)
吸気管圧力Pmが算出されると、エンジン制御ユニット107は、算出された吸気管圧力Pm、計測された吸気管温度Tm、計測されたエンジン回転数Neng を(5)式に代入し、吸気量Mcを算出する。
【0032】
(ステップ207)
エンジン制御ユニット107は、吸気管圧力Pmとエンジン回転数Neng の組み合わせに対応する目標空燃比λc を空燃比マップ108から検索し、現在の運転状態に応じた目標空燃比λc を計算する。
【0033】
(ステップ208)
エンジン制御ユニット107は、ステップ206で算出された吸入空気量Mcをステップ207で読み出された目標空燃比λc で除算し、燃料噴射量Mfを算出する。
【0034】
(ステップ209)
エンジン制御ユニット107は、算出された燃料噴射量Mfに応じて燃料噴射装置103の開弁時間を制御し、燃料噴射量Mfが所定量になるように制御する。
【0035】
(吸気管圧力Pmの数値計算方法)
以下では、ステップ205で実行される数値計算の詳細手順を説明する。この処理は、(4)式の近似解を数値計算により求めることを意味する。従来の手法では、(4)式を(6)式に示す差分方程式に変換し、差分方程式を再帰的に解くことで吸気管圧力Pmを算出していた。
【0036】
【数6】

【0037】
しかし、差分方程式を解く方法は、時間刻みΔをかなり細かく設定しない限り、計算が発散してしまう。そこで、本実施例に係るステップ205の場合には、図3に示す手順により数値計算を実行する。
【0038】
(ステップ301)
予め各計算時刻における圧力値を計算する前に、被積分関数(すなわち、(4)式の右辺)F(Pm(t),Qm(t))の吸気管圧力Pmについて偏微分した偏導関数K(Pm(t),Qm(t))を求めておく。被積分関数F(Pm(t),Qm(t))を(7)式に示し、偏導関数K(Pm(t),Qm(t))を(8)式に示す。因みに、被積分関数(Pm(t),Qm(t))及び偏導関数K(Pm(t),Qm(t))におけるQmは、各計算時刻における各種センサの測定値を意味する。(9)式に、本実施例におけるQmの定義式を示す。
【0039】
【数7】

【0040】
【数8】

【0041】
【数9】

【0042】
ここで、(7)式で与えられる被積分関数F(Pm(t),Qm(t))のうち、吸気管圧力Pmが特許請求の範囲における第2の変数に対応し、測定値Qm(t)が特許請求の範囲における第1の変数に対応する。
【0043】
なお、(8)式で表される偏導関数K(Pm(t),Qm(t))の算出処理は、吸気管圧力Pmの算出処理が開始される前に1度だけ実行されていれば良い。図3の場合には、ステップ205の先頭処理として制御プログラムが実行するように表しているが、その算出自体は、ステップ205より以前に実行されていても良い。好ましくは、偏導関数K(Pm(t),Qm(t))は、数式処理のような方法で予め導出し、制御プログラムを記憶するROM122に格納しておけば良い。
【0044】
(ステップ302)
時刻t を、計算の開始時刻tsに設定する。ここから、時間刻みΔ毎に吸気管圧力Pmの計算が開始される。この際、吸気管圧力Pmの初期値もROM122から読み出される。また、開始時刻tsに各種のセンサから取り込まれた測定値Qm(ts)も記憶領域(RAM)から読み出される。
【0045】
(ステップ303)
まず、制御プログラムは、時刻tにおける被積分関数F(Pm(t),Qm(t))の値を算出する。この算出計算は、(7)式に、吸気管圧力Pmの初期値と、各種のセンサの測定値Qmを代入することにより実行される。なお、初回以外の計算時刻においては、直前回の計算時刻t-Δに算出された吸気管圧力Pmの値と現計算時刻tに各種のセンサから取り込まれた測定値Qm(t)が記憶領域(RAM)から読み出される。
【0046】
(ステップ304)
同様に、制御プログラムは、時刻tにおける偏導関数K(Pm(t),Qm(t))の値を算出する。この算出計算は、(8)式に、吸気管圧力Pmの初期値と、各種のセンサの測定値Qmを代入することにより実行される。やはり、初回以外の計算時刻においては、直前回の計算時刻t-Δに算出された吸気管圧力Pmの値と現計算時刻tに各種のセンサから取り込まれた測定値Qm(t)が記憶領域(RAM)から読み出される。
【0047】
(ステップ305)
次に、制御プログラムは、ステップ303及び304で算出された値を用い、現計算時刻tから次回計算時刻t+Δまでの間で適用可能な被積分関数F(Pm(t),Qm(t))を予測する。具体的には、被積分関数F(Pm(t),Qm(t))を、初期値と傾きを以下で定義した指数関数として予測する。
【0048】
初期値=F(Pm(t),Qm(t))
傾き=F(Pm(t),Qm(t))*K(Pm(t),Qm(t))
【0049】
予測された関数(結果)は、図4に点線で示される軌跡で与えられる。なお、図中の矢印は算出される傾きを示す。予測された関数F(t+τ)は、(10)式で表される。
【0050】
【数10】

【0051】
この後、制御プログラムは、予測された関数F(t+τ)を記憶領域(RAM)に保存する。
【0052】
(ステップ306)
次に、制御プログラムは、予測された関数F(t+τ)を記憶領域から読み出した後、時間区間[t,t+Δ]について積分し、その積分値(図中領域Iの面積)を算出する。その後、制御プログラムは、算出された積分値を現計算時刻tの吸気管圧力Pm(t)に加算し、次回計算時刻t+Δの吸気管圧力Pm(t+Δ)を算出する。予測される次回計算時刻t+Δの吸気管圧力Pm(t+Δ)を(11)式に示す。
【0053】
【数11】

【0054】
算出された吸気管圧力Pm(t+Δ)は記憶領域(RAM)に保存され、次のステップ206において読み出される。
【0055】
(ステップ307)
制御プログラムは、現計算時刻tに時間刻みΔを加算し、計算処理上の現在時刻を更新する。この現在時刻の更新後、制御プログラムはステップ303に戻り、計算を繰り返す。
【0056】
(まとめ)
以上説明したように、微分方程式(被積分関数)の形式で表現された変数(吸気管圧力Pm)は、図4に曲線で表したように、本来滑らかに変化するものである。そして、現計算時刻tから次回計算時刻t+Δまでの区間の積分値は、図4の領域Iの部分の面積を求めることに当たる。
【0057】
従来の積分方法は、図4における積分区間先頭の高さF(Pm(t),Qm(t))と時間刻みΔで与えられる長方形の面積を求め、当該面積を現計算時刻tにおける吸引管圧力Pmに加算する方法に該当する。このため、従来の積分方法では、図4の領域IIに該当する部分が誤差分となる。なお、従来の積分方法において、誤差分を小さくするには、時間刻みΔを小さくすることが有効である。しかし、前述したように、時間刻みΔを小さくすることは、数値計算のための負荷が非常に大きくなる問題を有している。
【0058】
これに対し、本実施例の場合には、被積分関数の区間内の遷移を初期値と傾きで定義される指数関数によって予測し、予測した関数を現計算時刻tから次回計算時刻t+Δまで積分する。これにより、領域Iに対応する面積だけを求めることができる。このため、時間刻みΔを大きくしても誤差の少ない、すなわち積分値の予測精度を高めることができる。
【0059】
換言すると、(2)式で示されるような微分方程式、より具体的には(4)式で示されるような初期値だけが与えられる変数と各計算時刻における数値が外部から与えられる微分方程式を安定的に数値計算することが可能になる。
【0060】
本実施例では、この数値計算方法を内燃機関における吸気管圧力Pmの推定に適用したことで、吸気管圧力Pmの推定値が安定になる。また、この吸気管圧力Pmに基づいて数値計算される吸気量Mc及び燃料噴射量Mfが安定になる。すなわち、内燃機関の空燃比制御が安定になるという効果が実現される。
【0061】
(実施例2)
(ブレーキの油圧システムとその制御系)
図5は、ブレーキの油圧システムとその制御系の概略構成を示している。ブレーキの油圧システムは、マスターシリンダ502と、ホイールシリンダ505と、リザーバ507と、保持弁503と、減圧弁504と、ポンプ506とから構成される。
【0062】
マスターシリンダ502は、ドライバのブレーキペダル501の操作を油圧に変換する手段である。ホイールシリンダ505は、油圧をブレーキ力に変換する手段である。リザーバ507は、作動油を貯める手段である。保持弁503は、マスターシリンダ502とホイールシリンダ505の間を連結する作動油の配管路上に位置し、同区間における作動油の流れを開閉制御する手段である。減圧弁504は、ホイールシリンダ505とリザーバ507の間を連結する作動油の配管路上に位置し、同区間における作動油の流れを開閉制御する手段である。ポンプ506は、リザーバ507とマスターシリンダ502の間を連結する作動油の配管路上に配置され、リザーバ507からマスターシリンダ502に対して作動油を戻すために用いられる手段である。
【0063】
油圧システムの制御系は、車輪速センサ510と、マスターシリンダ圧センサ512と、油圧制御ユニット511から構成される。
【0064】
ドライバがブレーキペダル501を踏むと、マスターシリンダ502内の油圧が増加する。この油圧の増加は、開状態に制御された保持弁503を通じてホイールシリンダ505に伝えられる。このホイールシリンダ505の内圧の増加に伴い、ブレーキパッド508が車輪509に押し付けられる。ABS(アンチロックブレーキシステム)では、車輪509のロックを防ぐため、車輪速V を車輪速センサ510により計測し、保持弁503と減圧弁504の開度を制御する。すなわち、開度の調整により、ブレーキの効き具合を制御する。
【0065】
この油圧の制御は、油圧制御ユニット511が実行する。油圧制御ユニット511は、マスターシリンダ圧センサ512で計測された圧力、車輪速センサ510で計測された車輪509の速度、保持弁の開度及び減圧弁の開度を入力条件とし、これらの値に基づいてホイールシリンダ505の圧力を制御する。具体的には、保持弁503と減圧弁504の開度具合を制御する。本実施例の場合、油圧制御ユニット511は、コンピュータで構成され、その制御プログラムはROM513に格納されている。後述するホイールシリンダの油圧の制御は、当該制御プログラムに基づく計算処理として実行される。
【0066】
(油圧ブレーキの制御)
以下では、測定値として与えられるマスターシリンダ圧力、保持弁の開度、減圧弁の開度に基づいてホイールシリンダ圧力を算出し、算出されたホイールシリンダ圧力が実現されるように油圧を制御するまでの一連の制御手順を説明する。図6に、対応する制御手順の概要を示す。
【0067】
(ステップ601)
油圧制御ユニット511は、マスターシリンダ圧センサ512から入力される油圧信号に基づいてブレーキペダル501が踏み込まれたことを検知する。ブレーキペダル501が踏み込まれたことを検出した制御プログラムは、その瞬間の車輪速V0を車輪速センサ510から入力される速度信号を通じて計測し、不図示の記憶領域(RAM)に記憶する。
【0068】
(ステップ602)
油圧制御ユニット511は、制御周期毎に、車輪速センサ510から入力される速度信号に基づいて車輪速V を計測し、不図示の記憶領域(RAM)に記憶する。
【0069】
(ステップ603)
油圧制御ユニット511は、ブレーキペダル501が踏み込まれた時刻からの経過時間tと車輪509の初期速度V0に基づいて、以下に示すように制御に必要な4種類の基準速度V1、V2、V3、V4を算出する。
【0070】
(i)疑似車体速度V1=V0−α×t
(ii)増圧下限速度V2=V0−α×t−U2
(iii)減圧上限速度V3=V0−α×t−U3
(iv)減圧下限速度V4=V0−α×t−U4
ただし、α、U2、U3、U4は事前に実験等により設定された値であり、油圧制御ユニット511のROM513等に記憶されている。なお、U2<U3<U4であるものとする。この場合、4種類の基準速度の間には、V1>V2>V3>V4の関係が成立する。
【0071】
(ステップ604)
油圧制御ユニット511は、算出された4種類の基準速度(V1、V2、V3、V4)と、車輪速センサ510で計測された車輪速V との大小関係を比較する処理と、車輪速V が増加しているか減少しているか(増減方向)を判定する処理と、比較結果と判定結果に基づいて目標ホイールシリンダ圧力Prを制御する処理とを実行する。図7に、各基準速度と車輪速度との比較結果と車輪速度の増減方向との組み合わせに対応付けた目標ホイールシリンダ圧力Prの制御内容を示す。
【0072】
例えば一連の車輪速V の変化が減速中を示し、かつ、車輪速V が擬似車体速度V1より大きいとき、油圧制御ユニット511は、目標ホイールシリンダ圧力Prを単位変化圧ΔP だけ増加させるように制御する。すなわち、油圧を増やして更に減速させる。なお、この場合だけは、図7の図表に示すように、車輪速V を擬似車体速度V1に制御する。減速中の場合にあって、「V1>V>V2」のときは目標ホイールシリンダ圧力Prを単位変化圧ΔP だけ増加させ、「V2>V>V3」のときは目標ホイールシリンダ圧力Prを現在値に保持し、「V3>V>V4」のときは目標ホイールシリンダ圧力Prを単位変化圧ΔP だけ減らし、「V4>V」のときは目標ホイールシリンダ圧力Prを現在値に保持する。一方、加速中の場合にあって、「V1>V>V2」のときだけは目標ホイールシリンダ圧力Prを単位変化圧ΔP 分増加させ、それ以外のときは基本的に現在値を保持する。
【0073】
この目標ホイールシリンダ圧力Prの算出は、ブレーキ制御のポイントである。そこで、図8を用いて具体的に説明する。図8の上段は、目標ホイールシリンダ圧力Prに追従するように油圧を制御した場合における車速の変化を示す。図8の下段は、ホイールシリンダ圧力の変化を示す。
【0074】
ここでは、初期速度V0においてブレーキペダル501の踏み込みが開始される。ブレーキペダル501を踏み始めると、ブレーキの利きを強くするためにホイールシリンダ505内の油圧は増加する。これに伴い、車速は減少を開始し、車輪速Vは擬似車体速度V1より小さくなる。
【0075】
時刻t1からt2の間で、車輪速V が増圧下限速度V2より小さくなると、油圧制御ユニット511は、目標ホイールシリンダ圧力Prの増加を停止し、直前値を保持する。油圧を維持しても、ブレーキの利きは変わらないので車速はだんだん減少する。
【0076】
時刻t2からt3の間で、車輪速V が減圧上限速度V3より小さくなると、油圧制御ユニット511はブレーキの利きを緩めるため、目標ホイールシリンダ圧力Prを減少させる。
【0077】
時刻t3からt4の間で、車輪速V が減圧下限速度V4より小さくなると、油圧制御ユニット511は減速し過ぎと判断する。この結果、油圧制御ユニット511はブレーキの利き維持して速度が回復されるように目標ホイールシリンダ圧力Prを直前値に保持する。この制御は、車輪速V が増圧下限速度V2を超えるまで維持される。
【0078】
時刻t4からt5の間で、車輪速V が増圧下限速度V2を超えると、再びブレーキを強めるため、油圧制御ユニット511は、目標ホイールシリンダ圧力Prを増加させる。
【0079】
時刻t5以降も、車輪速V が疑似車体速度V1を超えるまでは、油圧制御ユニット511によるブレーキを強める制御は継続される。やがて、車輪速V が疑似車体速度V1を超えると、油圧制御ユニット511は、ブレーキの利きを維持するため、目標ホイールシリンダ圧力Prを維持する。
【0080】
図8に示すように、目標ホイールシリンダ圧力Prを一定の範囲内で上下動させることにより、路面に対してタイヤがスリップしない範囲内でホイールシリンダ圧力を制御することができる。このような繰り返し実行される制御のルールを表形式に整理したものが図7である。ステップ604における制御動作は図7の表に集約できる。
【0081】
(ステップ605)
油圧制御ユニット511は、マスターシリンダ圧センサ512によって計測されたマスターシリンダ圧力Pmを不図示の記憶領域(RAM)等に記憶する。
【0082】
(ステップ606)
油圧制御ユニット511は、マスターシリンダ圧力Pmの計測値、保持弁503の開度Am、減圧弁504の開度Arを(12)式に代入し、次回計算時刻のホイールシリンダ圧力Pwcを数値計算により算出する。
【0083】
【数12】

【0084】
ここでの数値計算が、発明者が提案する手法の核心部分であり、その詳細については後述する。また、ここでの数値計算を実行する油圧制御ユニット511が、特許請求の範囲における「数値計算装置」の一例に対応する。
【0085】
(ステップ607)
油圧制御ユニット511は、ステップ606で算出されたホイールシリンダ圧力Pwc(推定値)と目標ホイールシリンダ圧力Pr とを比較し、保持弁503と減圧弁504の開度をそれぞれ制御する。保持弁503と減圧弁504の開度に関する制御は、数値計算により算出されるホイールシリンダ圧力Pwcと目標ホイールシリンダ圧力Pr の大小関係により閉状態が切り替わる。図9に、推定値と目標値の大小関係に応じた開度の制御例を示す。
【0086】
(a) Pr>Pwcの場合
図9の(a)に示すように、油圧制御ユニット511は、減圧弁504を全閉に保った状態で、保持弁503をPID制御する。すなわち、保持弁503の開度をフィードバック制御する。
【0087】
(b) Pr<Pwcの場合
図9の(b)に示すように、油圧制御ユニット511は、保持弁503を全閉に保った状態で、減圧弁504をPID制御する。すなわち、減圧弁504の開度をフィードバック制御する。
油圧制御ユニット511は、次の制御周期(計算時刻)が到来すると、ステップ602に戻り、一連の処理動作を繰り返し実行する。
【0088】
(ホイールシリンダ圧力Pwcの数値計算方法)
以下では、ステップ606で実行される数値計算の詳細手順を説明する。この処理は、(12)式の近似解を数値計算により求めることを意味する。従来の手法では、(12)式を(13)式に示す差分方程式に変換し、差分方程式を再帰的に解くことでホイールシリンダ圧力Pwcを算出する。
【0089】
【数13】

【0090】
しかし、差分方程式を解く方法は、時間刻みΔをかなり細かく設定しない限り、計算が発散してしまう。そこで、本実施例に係るステップ606の場合には、図10に示す手順により数値計算を実行する。
【0091】
(ステップ1001)
予め各計算時刻における圧力値を計算する前に、(14)式で表される被積分関数(すなわち、(12)式の右辺)g(Pwc(t),Qm(t))のホイールシリンダ圧力Pwcについて偏微分した偏導関数h(Pwc(t),Qm(t))を求めておく。偏導関数h(Pwc(t),Qm(t))を(15)式に示す。因みに、被積分関数g(Pwc(t),Qm(t))及び偏導関数h(Pwc(t),Qm(t))におけるQmは、各計算時刻における各種センサの測定値を意味する。(16)式に、この実施例におけるQmの定義式を示す。
【0092】
【数14】

【0093】
【数15】

【0094】
【数16】

【0095】
ここで、(14)式で与えられる被積分関数g(Pwc(t),Qm(t))のうち、ホイールシリンダ圧力Pwcが特許請求の範囲における第2の変数に対応し、測定値Qm(t)が特許請求の範囲における第1の変数に対応する。
【0096】
なお、(15)式で表される偏導関数h(Pwc(t),Qm(t))の算出処理は、ホイールシリンダ圧力Pwcの算出処理が開始される前に1度だけ実行されていれば良い。図10の場合には、ステップ1001の先頭処理として制御プログラムが実行するように表しているが、その算出自体は、ステップ606より以前に実行されていても良い。好ましくは、偏導関数h(Pwc(t),Qm(t))は、数式処理のような方法で予め導出し、制御プログラムを記憶するROM513に格納しておけば良い。
【0097】
(ステップ1002)
時刻tを、計算の開始時刻tsに設定する。ここから、時間刻みΔ毎にホイールシリンダ圧力Pwcの計算が開始される。この際、ホイールシリンダ圧力Pwcの初期値もROM513から読み出される。また、開始時刻tsに各種のセンサから取り込まれた測定値Qm(ts)も記憶領域(RAM)から読み出される。
【0098】
(ステップ1003)
まず、制御プログラムは、時刻tにおける被積分関数g(Pwc(t),Qm(t))の値を算出する。この算出計算は、(14)式に、ホイールシリンダ圧力Pwcの初期値と、各種のセンサの測定値Qmを代入することにより実行される。なお、初回以外の計算時刻においては、直前回の計算時刻t-Δに算出されたホイールシリンダ圧力Pwcの値と現計算時刻tに各種のセンサから取り込まれた測定値Qm(t) が記憶領域(RAM)から読み出される。
【0099】
(ステップ1004)
同様に、制御プログラムは、時刻tにおける偏導関数h(Pwc(t),Qm(t))の値を算出する。この算出計算は、(15)式に、ホイールシリンダ圧力Pwcの初期値と、各種のセンサの測定値Qmを代入することにより実行される。やはり、初回以外の計算時刻においては、直前回の計算時刻t-Δに算出されたホイールシリンダ圧力Pwcと現計算時刻t に各種のセンサから取り込まれた測定値Qm(t) が記憶領域(RAM)から読み出される。
【0100】
(ステップ305)
次に、制御プログラムは、ステップ1003及び1004で算出された値を用い、現計算時刻tから次回計算時刻t+Δまでの区間で適用可能な補正係数を予測する。補正係数とは、従来の差分方程式を適用する場合に算出される積分値を補正するために用いられる係数である。具体的には、補正係数を、現計算時刻tにおける被積分関数の値g(Pwc(t),Qm(t))に時間刻みΔを乗算した面積(図4の領域I+領域II)に対する真に求めるべき面積(図4の領域I)の比として定義する。ここで、真に求めるべき面積(図4の領域Iの面積)は、(11)式の右辺第2項で与えられる。従って、補正係数は、(17)式として計算される。
【0101】
【数17】

【0102】
この後、制御プログラムは、算出された補正係数を記憶領域(RAM)に保存する。
【0103】
(ステップ1006)
制御プログラムは、現計算時刻tにおける被積分関数の値g(Pwc(t),Qm(t))に、時間刻みΔと、ステップ1005で算出された補正係数を乗算し、現計算時刻tから次回計算時刻t+Δまでの時間区間における面積の増分値を算出する。
【0104】
(ステップ1007)
次に、制御プログラムは、ステップ1006で算出された増分値を、現計算時刻tのホイールシリンダ圧力Pwc(t)に加算し、次回計算時刻t+Δのホイールシリンダ圧力Pwc(t+Δ)を算出する。(18)式に算出式を示す。
【0105】
【数18】

【0106】
算出されたホイールシリンダ圧力Pwc(t+Δ)は記憶領域(RAM)に保存され、次のステップ607において読み出される。
【0107】
(ステップ1007)
制御プログラムは、現計算時刻tに時間刻みΔを加算し、計算処理上の現在時刻を更新する。この現在時刻の更新後、制御プログラムはステップ1003に戻り、計算を繰り返す。
【0108】
(まとめ)
以上説明したように、この実施例2は、補正係数を用いる数値計算を実行する点で、被積分関数を予測して積分する実施例1の数値計算と異なる。しかしながら、見かけ上の計算手法が異なるだけで、数式的には等価な計算と考えることができる。従って、この実施例2の場合にも、(2)式で示されるような微分方程式、より具体的には(12)式で示されるような微分方程式を安定に数値計算することができる。その結果、ブレーキ油圧系のホイールシリンダ圧力の推定が安定になり、この圧力に基づくブレーキ制御が安定になる。
【0109】
(他の実施例)
前述した実施例の場合には、実施例1に示す積分型の数値計算を吸気管圧力の算出に適用したが、積分型の数値計算をホイールシリンダ圧力の算出に適用することもできる。この場合、初期値のみが与えられる変数としてホイールシリンダ圧力を用い、全ての計算時刻について測定値が与えられる変数としてマスターシリンダ圧力、保持弁の開度及び減圧弁の開度を用いれば良い。
【0110】
同様に、前述した実施例の場合には、実施例2に示す補正係数型の数値計算をホイールシリンダ圧力の算出に適用したが、補正係数型の数値計算を吸気管圧力の算出に適用することもできる。この場合、初期値のみが与えられる変数として吸気管圧力を用い、全ての計算時刻について測定値が与えられる変数として内燃機関のスロットル弁の開度、内燃機関の回転数及び大気の状態を用いれば良い。
【0111】
また、前述の実施例においては、発明に係る数値計算を、内燃機関及び油圧ブレーキの制御に適用する場合について説明したが、数値計算に求められる要件を満たす限り、任意の分野で用いることができる。勿論、発明に係る数値計算を適用する微分方程式を構成する変数には、必ずしも測定値を用いなくても良い。
【符号の説明】
【0112】
101:スロットル弁
102:吸気管
103:燃料噴射装置
104:吸気弁
105:気筒
106:点火装置
107:エンジン制御ユニット(ECU)
108:空燃比マップ
111:大気温センサ
112:大気圧センサ
113:吸気温センサ
114:スロットル開度センサ
115:エンジン回転数センサ
116:ピストン
117:コネクティングロッド
118:クランクピン
119:クランク軸
120:リングギヤ
121:排気弁
122:ROM
501:ブレーキペダル
502:マスターシリンダ
503:保持弁
504:減圧弁
505:ホイールシリンダ
506:ポンプ
507:リザーバ
508:ブレーキパッド
509:車輪
510:車輪速センサ
511:油圧制御ユニット
512:マスターシリンダ圧センサ
513:ROM

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全ての計算時刻について値が与えられる第1の変数と、初期値のみが与えられる第2の変数とで定義される被積分関数の時刻に関する積分演算をコンピュータに実行させ、各計算時刻で使用する前記第2の変数の値を算出する、内燃機関のためのコンピュータプログラムであって、
前記被積分関数を前記第2の変数について偏微分して求めた偏導関数を、記憶装置から読み出す処理と、
各計算時刻において、
前記初期値又は直前回の計算時刻に算出された前記第2の変数の値と、現計算時刻に与えられる前記第1の変数の値を、前記記憶装置から読み出した前記被積分関数に代入して現計算時刻における被積分関数の値を算出し、算出結果を記憶装置に記憶する処理と、
前記初期値又は直前回の計算時刻に算出された前記第2の変数の値と、現計算時刻に与えられる前記第1の変数の値を、前記記憶装置から読み出した前記偏導関数に代入して現計算時刻における偏導関数の値を算出し、算出結果を記憶装置に記憶する処理と、
前記算出された現計算時刻における被積分関数の値を初期値とし、かつ、当該被積分関数の値に前記偏導関数の値を乗算して算出された値を傾きとする指数関数を記憶装置に記憶する処理と、
記憶装置から読み出した前記指数関数に基づいて、次回計算時刻に使用する前記第2の変数の値を算出する処理とを有し、
記憶装置から読み出した前記指数関数に基づいて、次回計算時刻に使用する前記第2の変数の値を算出する前記処理は、
前記指数関数を現計算時刻から次回計算時刻まで積分し、算出された積分値を記憶装置に記憶する処理と、
記憶装置から読み出された前記積分値を現計算時刻における第2の変数の値に加算し、次回計算時刻に使用する前記第2の変数の値を算出し、算出値を記憶装置に記憶する処理と
を有し、
前記第1の変数はスロットル弁の開度、機関回転数及び大気の状態を表す変数であり、
前記第2の変数は吸気管の圧力である
ことを特徴とする、内燃機関のためのコンピュータプログラム。
【請求項2】
全ての計算時刻について値が与えられる第1の変数と、初期値のみが与えられる第2の変数とで定義される被積分関数の時刻に関する積分演算をコンピュータに実行させ、各計算時刻で使用する前記第2の変数の値を算出する、内燃機関のためのコンピュータプログラムであって、
前記被積分関数を前記第2の変数について偏微分して求めた偏導関数を、記憶装置から読み出す処理と、
各計算時刻において、
前記初期値又は直前回の計算時刻に算出された前記第2の変数の値と、現計算時刻に与えられる前記第1の変数の値を、前記記憶装置から読み出した前記被積分関数に代入して現計算時刻における被積分関数の値を算出し、算出結果を記憶装置に記憶する処理と、
前記初期値又は直前回の計算時刻に算出された前記第2の変数の値と、現計算時刻に与えられる前記第1の変数の値を、前記記憶装置から読み出した前記偏導関数に代入して現計算時刻における偏導関数の値を算出し、算出結果を記憶装置に記憶する処理と、
前記算出された現計算時刻における被積分関数の値を初期値とし、かつ、当該被積分関数の値に前記偏導関数の値を乗算して算出された値を傾きとする指数関数を記憶装置に記憶する処理と、
記憶装置から読み出した前記指数関数に基づいて、次回計算時刻に使用する前記第2の変数の値を算出する処理とを有し、
記憶装置から読み出した前記指数関数に基づいて、次回計算時刻に使用する前記第2の変数の値を算出する前記処理は、
前記指数関数を現計算時刻から次回計算時刻まで積分し、算出された積分値を記憶装置に記憶する処理と、
記憶装置から読み出された前記積分値に基づいて補正係数を算出し、算出された補正係数を記憶装置に記憶する処理と、
現計算時刻について算出された前記被積分関数の値を記憶装置から読み出し、当該被積分関数の値に、前記補正係数と、現計算時刻から次回計算時刻までの時間とを乗算して増分値を算出し、算出された増分値を記憶装置に記憶する処理と、
記憶装置から読み出された前記増分値を現計算時刻における第2の変数の値に加算し、次回計算時刻に使用する前記第2の変数の値を算出し、算出値を記憶装置に記憶する処理と
を有し、
前記第1の変数はスロットル弁の開度、機関回転数及び大気の状態を表す変数であり、
前記第2の変数は吸気管の圧力である
ことを特徴とする、内燃機関のためのコンピュータプログラム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のコンピュータプログラムであって、
各計算時刻について算出される吸気管の圧力に基づいて、次回計算時刻における気筒への吸気量を計算し、計算結果を記憶装置に記憶する処理と、
記憶装置から読み出される次回計算時刻における気筒への吸気量に基づいて燃料噴射量を制御する処理と
を更にコンピュータに実行させることを特徴とする、内燃機関のためのコンピュータプログラム。
【請求項4】
全ての計算時刻について値が与えられる第1の変数と、初期値のみが与えられる第2の変数とで定義される被積分関数の時刻に関する積分演算をコンピュータに実行させ、各計算時刻で使用する前記第2の変数の値を算出する、油圧ブレーキシステムのためのコンピュータプログラムであって、
前記被積分関数を前記第2の変数について偏微分して求めた偏導関数を、記憶装置から読み出す処理と、
各計算時刻において、
前記初期値又は直前回の計算時刻に算出された前記第2の変数の値と、現計算時刻に与えられる前記第1の変数の値を、前記記憶装置から読み出した前記被積分関数に代入して現計算時刻における被積分関数の値を算出し、算出結果を記憶装置に記憶する処理と、
前記初期値又は直前回の計算時刻に算出された前記第2の変数の値と、現計算時刻に与えられる前記第1の変数の値を、前記記憶装置から読み出した前記偏導関数に代入して現計算時刻における偏導関数の値を算出し、算出結果を記憶装置に記憶する処理と、
前記算出された現計算時刻における被積分関数の値を初期値とし、かつ、当該被積分関数の値に前記偏導関数の値を乗算して算出された値を傾きとする指数関数を記憶装置に記憶する処理と、
記憶装置から読み出した前記指数関数に基づいて、次回計算時刻に使用する前記第2の変数の値を算出する処理とを有し、
記憶装置から読み出した前記指数関数に基づいて、次回計算時刻に使用する前記第2の変数の値を算出する前記処理は、
前記指数関数を現計算時刻から次回計算時刻まで積分し、算出された積分値を記憶装置に記憶する処理と、
記憶装置から読み出された前記積分値を現計算時刻における第2の変数の値に加算し、次回計算時刻に使用する前記第2の変数の値を算出し、算出値を記憶装置に記憶する処理と
を有し、
前記第1の変数はマスターシリンダの油圧、保持弁の開度及び減圧弁の開度を表す変数であり、
前記第2の変数はホイールシリンダの油圧である
ことを特徴とする、油圧ブレーキシステムのためのコンピュータプログラム。
【請求項5】
全ての計算時刻について値が与えられる第1の変数と、初期値のみが与えられる第2の変数とで定義される被積分関数の時刻に関する積分演算をコンピュータに実行させ、各計算時刻で使用する前記第2の変数の値を算出する、油圧ブレーキシステムのためのコンピュータプログラムであって、
前記被積分関数を前記第2の変数について偏微分して求めた偏導関数を、記憶装置から読み出す処理と、
各計算時刻において、
前記初期値又は直前回の計算時刻に算出された前記第2の変数の値と、現計算時刻に与えられる前記第1の変数の値を、前記記憶装置から読み出した前記被積分関数に代入して現計算時刻における被積分関数の値を算出し、算出結果を記憶装置に記憶する処理と、
前記初期値又は直前回の計算時刻に算出された前記第2の変数の値と、現計算時刻に与えられる前記第1の変数の値を、前記記憶装置から読み出した前記偏導関数に代入して現計算時刻における偏導関数の値を算出し、算出結果を記憶装置に記憶する処理と、
前記算出された現計算時刻における被積分関数の値を初期値とし、かつ、当該被積分関数の値に前記偏導関数の値を乗算して算出された値を傾きとする指数関数を記憶装置に記憶する処理と、
記憶装置から読み出した前記指数関数に基づいて、次回計算時刻に使用する前記第2の変数の値を算出する処理とを有し、
記憶装置から読み出した前記指数関数に基づいて、次回計算時刻に使用する前記第2の変数の値を算出する前記処理は、
前記指数関数を現計算時刻から次回計算時刻まで積分し、算出された積分値を記憶装置に記憶する処理と、
記憶装置から読み出された前記積分値に基づいて補正係数を算出し、算出された補正係数を記憶装置に記憶する処理と、
現計算時刻について算出された前記被積分関数の値を記憶装置から読み出し、当該被積分関数の値に、前記補正係数と、現計算時刻から次回計算時刻までの時間とを乗算して増分値を算出し、算出された増分値を記憶装置に記憶する処理と、
記憶装置から読み出された前記増分値を現計算時刻における第2の変数の値に加算し、次回計算時刻に使用する前記第2の変数の値を算出し、算出値を記憶装置に記憶する処理と
を有し、
前記第1の変数はマスターシリンダの油圧、保持弁の開度及び減圧弁の開度を表す変数であり、
前記第2の変数はホイールシリンダの油圧である
ことを特徴とする、油圧ブレーキシステムのためのコンピュータプログラム。
【請求項6】
請求項4又は5に記載のコンピュータプログラムであって、
各計算時刻について算出されるマスターシリンダ圧に基づいて、次回計算時刻における前記保持弁及び前記減圧弁の開度を制御する処理と
を更にコンピュータに実行させることを特徴とする、油圧ブレーキシステムのためのコンピュータプログラム。
【請求項7】
全ての計算時刻について値が与えられる第1の変数と、初期値のみが与えられる第2の変数とで定義される被積分関数の時刻に関する積分演算をコンピュータに実行させ、各計算時刻で使用する前記第2の変数の値を算出するコンピュータプログラムであって、
前記被積分関数を前記第2の変数について偏微分して求めた偏導関数を、記憶装置から読み出す処理と、
各計算時刻において、
前記初期値又は直前回の計算時刻に算出された前記第2の変数の値と、現計算時刻に与えられる前記第1の変数の値を、前記記憶装置から読み出した前記被積分関数に代入して現計算時刻における被積分関数の値を算出し、算出結果を記憶装置に記憶する処理と、
前記初期値又は直前回の計算時刻に算出された前記第2の変数の値と、現計算時刻に与えられる前記第1の変数の値を、前記記憶装置から読み出した前記偏導関数に代入して現計算時刻における偏導関数の値を算出し、算出結果を記憶装置に記憶する処理と、
前記算出された現計算時刻における被積分関数の値を初期値とし、かつ、当該被積分関数の値に前記偏導関数の値を乗算して算出された値を傾きとする指数関数を記憶装置に記憶する処理と、
記憶装置から読み出した前記指数関数に基づいて、次回計算時刻に使用する前記第2の変数の値を算出する処理と
をコンピュータに実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項8】
請求項7に記載のコンピュータプログラムであって、
記憶装置から読み出した前記指数関数に基づいて、次回計算時刻に使用する前記第2の変数の値を算出する前記処理は、
前記指数関数を現計算時刻から次回計算時刻まで積分し、算出された積分値を記憶装置に記憶する処理と、
記憶装置から読み出された前記積分値を現計算時刻における第2の変数の値に加算し、前記次回計算時刻に使用する前記第2の変数の値を算出し、算出値を記憶装置に記憶する処理と
を有することを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項9】
請求項7に記載のコンピュータプログラムであって、
記憶装置から読み出した前記指数関数に基づいて、次回計算時刻に使用する前記第2の変数の値を算出する前記処理は、
前記指数関数を現計算時刻から次回計算時刻まで積分し、算出された積分値を記憶装置に記憶する処理と、
記憶装置から読み出された前記積分値に基づいて補正係数を算出し、算出された補正係数を記憶装置に記憶する処理と、
現計算時刻について算出された前記被積分関数の値を記憶装置から読み出し、当該被積分関数の値に、前記補正係数と、現計算時刻から次回計算時刻までの時間とを乗算して増分値を算出し、算出された増分値を記憶装置に記憶する処理と、
記憶装置から読み出された前記増分値を現計算時刻における第2の変数の値に加算し、次回計算時刻に使用する前記第2の変数の値を算出し、算出値を記憶装置に記憶する処理と
を有することを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項10】
記憶装置と演算装置とを有し、全ての計算時刻について値が与えられる第1の変数と、初期値のみが与えられる第2の変数とで定義される被積分関数の時刻に関する積分演算を前記演算装置で実行し、各計算時刻で使用する前記第2の変数の値を算出する、内燃機関のための数値計算装置であって、
前記被積分関数を前記第2の変数について偏微分して求めた偏導関数を前記記憶装置から読み出す処理と、
各計算時刻において、前記演算装置が、
前記初期値又は直前回の計算時刻に算出された前記第2の変数の値と、現計算時刻に与えられる前記第1の変数の値を、前記記憶装置から読み出した前記被積分関数に代入して現計算時刻における被積分関数の値を算出し、算出結果を記憶装置に記憶する処理と、
前記初期値又は直前回の計算時刻に算出された前記第2の変数の値と、現計算時刻に与えられる前記第1の変数の値を、前記記憶装置から読み出した前記偏導関数に代入して現計算時刻における偏導関数の値を算出し、算出結果を記憶装置に記憶する処理と、
前記算出された現計算時刻における被積分関数の値を初期値とし、かつ、当該被積分関数の値に前記偏導関数の値を乗算して算出された値を傾きとする指数関数を記憶装置に記憶する処理と、
記憶装置から読み出した前記指数関数に基づいて、次回計算時刻に使用する前記第2の変数の値を算出する処理とを実行し、
記憶装置から読み出した前記指数関数に基づいて、次回計算時刻に使用する前記第2の変数の値を算出する前記処理は、
前記指数関数を現計算時刻から次回計算時刻まで積分し、算出された積分値を記憶装置に記憶する処理と、
記憶装置から読み出された前記積分値を現計算時刻における第2の変数の値に加算し、次回計算時刻に使用する前記第2の変数の値を算出し、算出値を記憶装置に記憶する処理と
を有し、
前記第1の変数はスロットル弁の開度、機関回転数及び大気の状態を表す変数であり、
前記第2の変数は吸気管の圧力である
ことを特徴とする、内燃機関のための数値計算装置。
【請求項11】
記憶装置と演算装置とを有し、全ての計算時刻について値が与えられる第1の変数と、初期値のみが与えられる第2の変数とで定義される被積分関数の時刻に関する積分演算を前記演算装置で実行し、各計算時刻で使用する前記第2の変数の値を算出する、内燃機関のための数値計算装置であって、
前記被積分関数を前記第2の変数について偏微分して求めた偏導関数を、前記記憶装置から読み出す処理と、
各計算時刻において、前記演算装置が、
前記初期値又は直前回の計算時刻に算出された前記第2の変数の値と、現計算時刻に与えられる前記第1の変数の値を、前記記憶装置から読み出した前記被積分関数に代入して現計算時刻における被積分関数の値を算出し、算出結果を記憶装置に記憶する処理と、
前記初期値又は直前回の計算時刻に算出された前記第2の変数の値と、現計算時刻に与えられる前記第1の変数の値を、前記記憶装置から読み出した前記偏導関数に代入して現計算時刻における偏導関数の値を算出し、算出結果を記憶装置に記憶する処理と、
前記算出された現計算時刻における被積分関数の値を初期値とし、かつ、当該被積分関数の値に前記偏導関数の値を乗算して算出された値を傾きとする指数関数を記憶装置に記憶する処理と、
記憶装置から読み出した前記指数関数に基づいて、次回計算時刻に使用する前記第2の変数の値を算出する処理とを実行し、
記憶装置から読み出した前記指数関数に基づいて、次回計算時刻に使用する前記第2の変数の値を算出する前記処理は、
前記指数関数を現計算時刻から次回計算時刻まで積分し、算出された積分値を記憶装置に記憶する処理と、
記憶装置から読み出された前記積分値に基づいて補正係数を算出し、算出された補正係数を記憶装置に記憶する処理と、
現計算時刻について算出された前記被積分関数の値を記憶装置から読み出し、当該被積分関数の値に、前記補正係数と、現計算時刻から次回計算時刻までの時間とを乗算して増分値を算出し、算出された増分値を記憶装置に記憶する処理と、
記憶装置から読み出された前記増分値を現計算時刻における第2の変数の値に加算し、次回計算時刻に使用する前記第2の変数の値を算出し、算出値を記憶装置に記憶する処理と
を有し、
前記第1の変数はスロットル弁の開度、機関回転数及び大気の状態を表す変数であり、
前記第2の変数は吸気管の圧力である
ことを特徴とする、内燃機関のための数値計算装置。
【請求項12】
記憶装置と演算装置とを有し、全ての計算時刻について値が与えられる第1の変数と、初期値のみが与えられる第2の変数とで定義される被積分関数の時刻に関する積分演算を前記演算装置が実行し、各計算時刻で使用する前記第2の変数の値を算出する、油圧ブレーキシステムのための数値計算装置であって、
前記被積分関数を前記第2の変数について偏微分して求めた偏導関数を、前記記憶装置から読み出す処理と、
各計算時刻において、前記演算装置が、
前記初期値又は直前回の計算時刻に算出された前記第2の変数の値と、現計算時刻に与えられる前記第1の変数の値を、前記記憶装置から読み出した前記被積分関数に代入して現計算時刻における被積分関数の値を算出し、算出結果を記憶装置に記憶する処理と、
前記初期値又は直前回の計算時刻に算出された前記第2の変数の値と、現計算時刻に与えられる前記第1の変数の値を、前記記憶装置から読み出した前記偏導関数に代入して現計算時刻における偏導関数の値を算出し、算出結果を記憶装置に記憶する処理と、
前記算出された現計算時刻における被積分関数の値を初期値とし、かつ、当該被積分関数の値に前記偏導関数の値を乗算して算出された値を傾きとする指数関数を記憶装置に記憶する処理と、
記憶装置から読み出した前記指数関数に基づいて、次回計算時刻に使用する前記第2の変数の値を算出する処理とを実行し、
記憶装置から読み出した前記指数関数に基づいて、次回計算時刻に使用する前記第2の変数の値を算出する前記処理は、
前記指数関数を現計算時刻から次回計算時刻まで積分し、算出された積分値を記憶装置に記憶する処理と、
記憶装置から読み出された前記積分値を現計算時刻における第2の変数の値に加算し、前記次回計算時刻に使用する前記第2の変数の値を算出し、算出値を記憶装置に記憶する処理と
を有し、
前記第1の変数はマスターシリンダの油圧、保持弁の開度及び減圧弁の開度を表す変数であり、
前記第2の変数はホイールシリンダの油圧である
ことを特徴とする、油圧ブレーキシステムのための数値計算装置。
【請求項13】
記憶装置と演算装置とを有し、全ての計算時刻について値が与えられる第1の変数と、初期値のみが与えられる第2の変数とで定義される被積分関数の時刻に関する積分演算を前記演算装置が実行し、各計算時刻で使用する前記第2の変数の値を算出する、油圧ブレーキシステムのための数値計算装置であって、
前記被積分関数を前記第2の変数について偏微分して求めた偏導関数を、前記記憶装置から読み出す処理と、
各計算時刻において、前記演算装置が、
前記初期値又は直前回の計算時刻に算出された前記第2の変数の値と、現計算時刻に与えられる前記第1の変数の値を、前記記憶装置から読み出した前記被積分関数に代入して現計算時刻における被積分関数の値を算出し、算出結果を記憶装置に記憶する処理と、
前記初期値又は直前回の計算時刻に算出された前記第2の変数の値と、現計算時刻に与えられる前記第1の変数の値を、前記記憶装置から読み出した前記偏導関数に代入して現計算時刻における偏導関数の値を算出し、算出結果を記憶装置に記憶する処理と、
前記算出された現計算時刻における被積分関数の値を初期値とし、かつ、当該被積分関数の値に前記偏導関数の値を乗算して算出された値を傾きとする指数関数を記憶装置に記憶する処理と、
記憶装置から読み出した前記指数関数に基づいて、次回計算時刻に使用する前記第2の変数の値を算出する処理とを実行し、
記憶装置から読み出した前記指数関数に基づいて、次回計算時刻に使用する前記第2の変数の値を算出する前記処理は、
前記指数関数を現計算時刻から次回計算時刻まで積分し、算出された積分値を記憶装置に記憶する処理と、
記憶装置から読み出された前記積分値に基づいて補正係数を算出し、算出された補正係数を記憶装置に記憶する処理と、
現計算時刻について算出された前記被積分関数の値を記憶装置から読み出し、当該被積分関数の値に、前記補正係数と、現計算時刻から次回計算時刻までの時間とを乗算して増分値を算出し、算出された増分値を記憶装置に記憶する処理と、
記憶装置から読み出された前記増分値を現計算時刻における第2の変数の値に加算し、次回計算時刻に使用する前記第2の変数の値を算出し、算出値を記憶装置に記憶する処理と
を有し、
前記第1の変数は油圧ブレーキシステムにおけるマスターシリンダの油圧、保持弁の開度及び減圧弁の開度を表す変数であり、
前記第2の変数はホイールシリンダの油圧である
ことを特徴とする、油圧ブレーキシステムのための数値計算装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−32959(P2012−32959A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−171028(P2010−171028)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】