説明

コーティング層を有するゴムロールの製造方法

【課題】従来のゴムロールの製造方法では、塗布工程と加熱硬化工程を別工程にしなければならないため、装置が大型になるとともに、ゴムロールの製造に多くの時間を要していた。
【解決手段】 周面にゴム層が形成されたパイプ状コアの内部に加熱手段を挿入し、パイプ状コアを、軸を中心として回転させ、パイプ状コアの上方においてパイプ状コアの軸方向に沿って移動する塗布ノズルから、ゴム層に液状コーティング材料をかけ流すと共に、塗布ノズルと共に移動するブレードを液状コーティング材料に当てて、液状コーティング材料の厚さを調節し、さらに、ブレードによって厚さが調節された液状コーティング材料の表面に補助ブレードを接触させて、液状コーティング材料の表面からスパイラル模様を無くすと共に、ゴム層の周面に液状コーティング材料の塗布層を形成した後、加熱手段によってパイプ状コアの内部から塗布層を加熱して硬化させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として電子写真装置、プリンターの定着ロール、加圧ロール等に使用されるコーティング層を有するゴムロールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のゴムロールの製造方法としては、芯金を筒状成形型の軸芯部に挿入し、成形型内に液状ゴム原料を注入し、加熱して液状ゴム原料を硬化させることによって、芯金の周りにゴム層を形成するものがある(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。また、ゴムロールの表面にコーティングを施す技術も開示されている(例えば、特許文献3および特許文献4参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−039452号公報
【特許文献2】特開平05−192934号公報
【特許文献3】特開2008−049460号公報
【特許文献4】特開平11−218121号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のゴムロールにおけるコーティング層の形成は、デッピング、スプレー等によりゴムロールの表面に液状コーティング材料を塗布した後、ゴムロールを別工程に運搬し、該液状コーティング材料を加熱して硬化させていた。
かかるゴムロールの製造方法では、塗布工程と加熱硬化工程を別工程にしなければならないため、装置が大型になるとともに、ゴムロールの製造に多くの時間を要していた。また、液状コーティング材料を塗布したゴムロールの運搬中に、ゴムロールに塗布した液状コーティング材料にゴミ、埃等が付着するという問題もあった。
【0005】
本発明は、前記した全ての問題を解決するためになされたものであって、コーティング層の形成を容易にしたゴムロールの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(第1発明)
第1発明に係るコーティング層を有するゴムロールの製造方法は、周面にゴム層が形成されたパイプ状コアの内部に加熱手段を挿入し、パイプ状コアを軸を中心として回転させ、パイプ状コアの上方においてパイプ状コアの軸方向に沿って移動する塗布ノズルから、ゴム層に液状コーティング材料をかけ流すと共に、塗布ノズルと共に移動するブレードを液状コーティング材料に当てて、液状コーティング材料の厚さを調節し、さらに、ブレードによって厚さが調節された液状コーティング材料の表面に補助ブレードを接触させて、液状コーティング材料の表面からスパイラル模様を無くすと共に、ゴム層の周面に液状コーティング材料の塗布層を形成した後、加熱手段によってパイプ状コアの内部から塗布層を加熱して、塗布層を硬化させるものである。
【0007】
かかる構成により、ゴム層の周面(表面)へのコーティング層の形成、すなわち、液状コーティング材料の塗布および加熱硬化を1つの工程でできるため、ゴムロールの製造コストおよび製造装置を安価にできる。
さらに、一般的なフローコート法で見られる液状材料表面のスパイラル模様を、補助ブレードにより無くすことができるので、ゴムロールを画像形成装置で使用しても、スパイラル模様に起因した筋が画像にあらわれるという現象が発生しない。
【0008】
尚、加熱手段は、液状コーティング材料を硬化させる温度(硬化温度)と、該温度よりも低い(液状コーティング材料を硬化させるまでに至らない)温度(予備加熱温度)の2段階に切り換えられるものであっても良い。
【0009】
つまり、ゴムロールへの液状コーティング材料の塗布段階(塗布工程)においては、液状コーティング材料の流動性を増すために、加熱手段によりゴムロールを予備加熱温度で予備加熱し、ゴムロールへ液状コーティング材料を塗布した後の加熱硬化段階(加熱硬化工程)においては、ゴムロールの表面に塗布された液状コーティング材料を硬化温度で硬化させても良い。このように、加熱手段の温度を2段階に切り換えることにより、ゴムロールの製造を効率良くできる。
【0010】
また、補助ブレードは、ブレードによって厚さが調節された液状コーティング材料の表面に形成されたスパイラル模様を消去するためのものであるので、ブレードの厚みよりも薄い方が望ましい。
【0011】
(第2発明)
第2発明に係るコーティング層を有するゴムロールの製造方法は、周面にゴム層が形成されたパイプ状コアの内部に加熱手段を挿入し、パイプ状コアを軸を中心として回転させ、パイプ状コアの上方においてパイプ状コアの軸方向に沿って移動する塗布ノズルから、ゴム層に液状コーティング材料をかけ流すと共に、塗布ノズルと共に移動するブレードを液状コーティング材料に当てて、液状コーティング材料の厚さを調節し、さらに、ブレードによって厚さが調節された液状コーティング材料の表面に、パイプ状コアの軸方向とは垂直な方向に回転軸を有する回転部材を接触させて、液状コーティング材料の表面からスパイラル模様を無くすと共に、ゴム層の周面に液状コーティング材料の塗布層を形成した後、加熱手段によってパイプ状コアの内部から塗布層を加熱して、塗布層を硬化させるものである。
【0012】
(第3発明)
第3発明に係るコーティング層を有するゴムロールの製造方法は、周面にゴム層が形成されたパイプ状コアの内部に加熱手段を挿入し、パイプ状コアを軸を中心として回転させると共に、軸方向に移動させ、パイプ状コアの上方において塗布ノズルからゴム層に液状コーティング材料をかけ流すと共に、ブレードを液状コーティング材料に当てて液状コーティング材料の厚さを調節し、さらに、ブレードによって厚さが調節された液状コーティング材料の表面に補助ブレードを接触させて、液状コーティング材料の表面からスパイラル模様を無くすと共に、ゴム層の周面に液状コーティング材料の塗布層を形成した後、加熱手段によってパイプ状コアの内部から塗布層を加熱して、塗布層を硬化させるものである。
【0013】
(第4発明)
第4発明に係るコーティング層を有するゴムロールの製造方法は、周面にゴム層が形成されたパイプ状コアの内部に加熱手段を挿入し、パイプ状コアを軸を中心として回転させると共に、軸方向に移動させ、パイプ状コアの上方において塗布ノズルからゴム層に液状コーティング材料をかけ流すと共に、ブレードを液状コーティング材料に当てて液状コーティング材料の厚さを調節し、さらに、ブレードによって厚さが調節された液状コーティング材料の表面に、パイプ状コアの軸方向とは垂直な方向に回転軸を有する回転部材を接触させて、液状コーティング材料の表面からスパイラル模様を無くすと共に、ゴム層の周面に液状コーティング材料の塗布層を形成した後、加熱手段によってパイプ状コアの内部から塗布層を加熱して、塗布層を硬化させるものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、ゴムロールの製造方法を簡略化し、製造装置を簡素化できるため、ゴムロールの製造コストを安価にできる。また、フローコート法で見られる液状材料表面のスパイラル模様を、補助ブレードまたは回転部材により無くすことができるので、スパイラル模様に起因した筋が画像にあらわれるという現象を無くし、高品質の画像形成ができるという効果を奏する。
【0015】
また、本発明に係る製造方法は、パイプ状コアの内部から加熱手段によって液状コーティング材料を加熱するので、ゴム層の周りに形成されている液状コーティング材料からなる塗布層の加熱硬化に要する熱エネルギーの効率を大幅に向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(作用)
表面にゴム層が形成されたパイプ状コアの内部に加熱手段を挿入し、パイプ状コアを軸を中心として回転させる。そして、パイプ状コアの上方を軸方向に沿って移動するノズルから液状コーティング材料を、ゴム層の周面にかけ流してゴム層の周面に液状コーティング材料の塗布層を形成する。
【0017】
そして、液状コーティング材料からなる塗布層は、パイプ状コアの内部に挿入された加熱手段によって液状コーティング材料が硬化する硬化温度にまで加熱焼付けされ、硬化してコーティング層となる。このようにしてゴム層の周面にコーティング層が形成されたゴムロールを製造することができる。本発明を以下に詳細に説明する。
【実施例1】
【0018】
図1は本実施例1に係るゴムロールを製造するための装置の正面図、図2は本実施例1に係るゴムロールを製造するための装置の側面図(図1におけるA−A断面図)、図3、図4および図5はゴムロールの断面図である。
尚、図3、図4および図5は、説明を分かり易くするため、パイプ状コア1のみにハッチングをかけている。
【0019】
(ゴムロールの製造装置)
まず、本発明に係るゴムロールを製造するための装置について説明する。
図1に示すように、周面にゴム層6が形成されたパイプ状コア1の両端は、先端コーン形状のチャック2Aおよび2Bによって支持されている。このパイプ状コア1は、直径が20〜30mmのスチール、ステンレススチール、アルミニウム等の金属からなり、あらかじめ洗浄液によって洗浄され、乾燥されている。
【0020】
チャック2A、2Bは、ぞれぞれ支持枠3A、3Bにボールベアリング4A、4Bを介して回転可能に支持されている。そして、一方のチャック2Aは、支持枠3Aに摺動自在に支持されており、図示しないエアシリンダー、油圧シリンダー、スプリング等の押圧手段によって、図1における矢印イの向きに(チャック2Bに向かって)押圧されている。チャック2Aの軸5は、図示しないモータ等の駆動手段によって、図2における矢印ニの向きに回転させられる。尚、駆動手段の回転速度は可変可能である。
【0021】
前記したように、ゴム層6が表面に形成されたパイプ状コア1は、一対のチャック2A、2Bによって押圧状態で、かつ、パイプ状コア1の軸を中心として回転可能に支持されている。
【0022】
また、他方のチャック2Bの中心には、加熱手段としてのヒータ37の一端が取付けられている。ヒータ37は、例えば、電熱式、電磁波加熱方式、遠赤外線放射方式等の周知の加熱手段が適用できる。このヒータ37は、図示しない制御装置に配線により接続されている。尚、加熱手段は、予備加熱温度(例えば、60℃)と、予備加熱温度より高温であり後述する液状コーティング材料が硬化する硬化温度(例えば、約320℃)の2段階に温度が切り換えられるようになっている。
【0023】
また、パイプ状コア1の直上には、塗布ノズル7Aが配置されている。この塗布ノズル7Aの先端と、ゴム層6の周面との間隔は、ゴム層6の周面に塗布する液状コーティング材料の種類によって適宜変更される。
【0024】
塗布ノズル7Aは、液状コーティング材料をゴム層6にかけ流すために、可動枠8の上端に昇降枠9、摺動枠10を介して矢印ロに示す昇降可能および矢印ハに示す前後摺動可能に取付けられている。そして、ノズル7Aは、ダイヤル11によって上下位置が調節可能にされ、ダイヤル12によって前後位置が調節可能にされている。尚、昇降枠9と摺動枠10の昇降、摺動機構は図示しないが、ネジとめネジとの組合せ、ラックとピ二オンとの組合せ等の周知の機構を採用できる。
【0025】
可動枠8は、基台13上をパイプ状コア1の軸方向に沿って移動させる移動手段としての移動台14上に立設されている。この移動台14にはネジ孔15があけられており、ネジ孔15には、図示しないモータ等の駆動源によって回転速度可変に正逆回転させられる長尺ネジ16が入れられており、この長尺ネジ16を図示しない駆動源によって所定の回転数で正回転または逆回転させることによって、移動台14はパイプ状コア1の軸方向に沿って所定の速度で移動させられる。
【0026】
尚、移動台14は、基台13上に設けられたレール17によってガイドされている。また、前記したネジ孔15および長尺ネジ16は、一般に市販されているボールネジを用いて構成しても良い。
また、移動台14上の摺動台19からは、パイプ状コア1に向けてブレード20と、このブレード20に隣接して設けられた補助ブレード23が突出している。そして、摺動台19は、ダイヤル21を操作して前後(図2の矢印ハ方向)に摺動可能に構成されている。
【0027】
ここで、ブレード20は、塗布ノズル7Aからゴム層6にかけ流された液状コーティング材料に当て付けて厚みを調節するためのものである。
また、補助ブレード23は、ブレード20によって厚みが調節された液状コーティング材料の表面に接触させて、液状コーティング材料の表面にできたスパイラル模様を消すためのものである。
このように、2つのブレードの機能が異なることから、補助ブレード23の板厚は、ブレード20の板厚よりも薄い方が望ましい。例えば、ブレード20の板厚が2mmに対して、補助ブレードの板厚を1mmにする。
【0028】
尚、ブレード20および/または補助ブレード23に超音波振動子等の振動装置が取付られていても良い。ブレード20および/または補助ブレード23が振動することにより、前記した液状コーティング材料の厚みの調節および/またはスパイラル模様の消去が振動装置の振動によって容易になるからである。
【0029】
前記したゴムロールの製造装置は、ダイヤル11、12および21を操作して、塗布ノズル7Aの上下前後位置(ノズル7Aの先端とゴム層6の周面間の距離)およびブレード20および補助ブレード23の前後位置(ブレード20の先端および補助ブレード23の先端とゴム層6の周面間の距離)を予め調節しておく。
【0030】
次に、本発明に係るゴムロールの製造方法について説明する。
(パイプ状コア)
まず、周面にゴム層が形成されたパイプ状コアの製造方法について説明する。
図3に示すように、直径が20〜30mmのスチール、ステンレススチール、アルミニウム等の金属からなるパイプ状コア1の表面(周面)をアルコール等を用いて脱脂する。
【0031】
その後、パイプ状コア1の表面にLSR(リキッド・シリコン・ラバー)用プライマー(例えば、東レDC社製 DY39−051等)をブラシ等で2〜3μm塗布して、当該LSR用プライマーを室温で風乾する。そして、150℃で1時間、オーブンで焼成すると、パイプ状コア1の表面にプライマー層P1ができる。
【0032】
そして、特許文献1、2で示したような内部加熱成形用金型にプライマー層P1が形成されたパイプ状コア1をセットし、LSR(例えば、東レDC社製 CF9379等)を注型する。その後、内部加熱成形用金型を140℃で7分間一次加硫した後、内部加熱成形用金型を冷却して、ゴムロールを当該内部加熱成形用金型から取り出す。そして、さらに200℃で4時間、オーブンで二次加硫すると、図3に示すパイプ状コア1の表面にゴム層6が形成されたパイプ状コア30が完成する。
【0033】
(ゴムロールの製造方法)
次に、前記したパイプ状コア30の表面にコーティング層を形成したゴムロールの製造方法について説明する。以下に説明する工程は、プライマー層P2を形成する第1工程と、コーティング層33を形成する第2工程とからなるが、ゴム層6とコーティング層33の接着性が良ければ、第1工程を省略して第2工程のみでも良い。
【0034】
〔第1工程〕
第1工程は、パイプ状コア1に形成されたゴム層6の表面にプライマーとして官能基を導入した変性テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(変性PFA)水性ディスパージョン(PFAプライマー)を塗布し、PFAプライマー層P2を形成するものである。ゴム層6の表面にPFAプライマー層P2を形成する前に、アルコール等を用いてゴム層6の表面を洗浄しても良い。
【0035】
変性PFAに導入される官能基としては、エポキシ基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基等がある。この官能基を導入することによって、変性PFAは前記したゴム層6と、後述する第2工程において形成されるPFA離型層33の双方に良好な接着性を示す。水性ディスパージョンの溶媒としては、水あるいは水とメタノール、エタノール、イソプロパンノール、アセトン等の水可溶性有機溶媒との混合溶媒が使用され、分散安定剤として界面活性剤の若干量が添加される。
【0036】
本第1工程において、塗布ノズルは、PFAプライマー専用の塗布ノズル7Bを使用し、塗布ノズル7Bには、図示しないPFAプライマータンクからチューブ22Bを介して図示しない定量ポンプによりPFAプライマーが供給される。これらPFAプライマータンクおよび定量ポンプは、一般に市販されている公知のものを用いることができる。
【0037】
塗布ノズル7Bは、パイプ状コア1の上方において、所定の速度(例えば、5mm/秒)でパイプ状コア1の軸方向に沿って、ゴム層6の一端(チャック2Bの近傍)から他端(チャック2Aの近傍)に向かって移動する。そして、PFAプライマーは、所定の流量(例えば、0.08g/10秒)でゴム層6の表面にかけ流されて塗布される。この際、パイプ状コア1は、所定の回転数(例えば、140rpm)で回転される。
【0038】
PFAプライマーの塗布後は、パイプ状コア1の回転(例えば、140rpm)を維持しつつ、通常、ゴム層6の周面温度50℃〜70℃、1分〜2分程度の予備乾燥を行なう。PFAプライマー層P2の厚みは20μm以下程度に設定する。加熱手段(ヒータ37)により、PFAプライマーを200℃に加熱して硬化させても良い。
【0039】
〔第2工程〕
第2工程は、前記した第1工程におけるPFAプライマー層P2の表面にPFA水性ディスパージョンを塗布し、PFA離型層33を形成する。本第2工程で用いるPFA水性ディスパージョンは、変性されていないPFAを上記PFAプライマーと同様な溶媒に分散させたものである。尚、前記した第1工程を省略した場合は、本第2工程のみでゴム層6の表面にコーティング層33を形成しても良い。
【0040】
本第2工程においても、塗布ノズルはPFA水性ディスパージョン専用の塗布ノズル7Aを使用し、塗布ノズル7Aには図示しないPFAディスパージョンタンクから図示しない定量ポンプによってチューブ22Aを介してPFA水性ディスパージョンが供給される。これらPFAディスパージョンタンクおよび定量ポンプは、一般に市販されている公知のものを用いることができる。
【0041】
そして、塗布ノズル7Aは、所定の速度(例えば、5mm/秒)でパイプ状コア1の軸方向に沿って、パイプ状コア1のゴム層6の一端(チャック2Bの近傍)から他端(チャック2Aの近傍)に向かって移動し、PFA水性ディスパージョンがPFAプライマー層P2またはゴム層6の表面に所定の流量(例えば、0.25g/10秒)でかけ流し塗布される。この際、パイプ状コア1は、所定の回転数(例えば、140rpm)で回転される。
【0042】
PFA水性ディスパージョン塗布後は、加熱手段によって、ゴム層6の周面温度(液状コーティング材料の温度)を300℃〜400℃に上昇させ、5〜15分の焼付けを行なう。本実施例においては、パイプ状コア1の内部にあるヒータ37によってPFA水性ディスパージョンを320℃に加熱した。
【0043】
前記した第1工程および第2工程、または第2工程のみにより、PFA水性ディスパージョンが表面に塗布されPFA離型層33が形成された図4に示すゴムロール35または図5に示すゴムロール31を製造することができる。
【0044】
さらに、これらのゴムロール35、31について、以下の第3工程を行うことができる。
〔第3工程〕
第3工程においては、このようにしてPFA離型層33を表面に形成したゴム層6を有するパイプ状コア1をゴムロールの製造装置からはずして加熱炉に導入しても良い。この場合は、通常150℃〜250℃、3時間〜5時間の加熱処理を行なう。上記加熱処理においてもコーティング層33は完全に硬化する、そしてコーティング層(PFA離型層)33の厚みは通常5μm〜50μmに設定される。
【0045】
以上説明した工程により、例えば、図5に示したようなパイプ状コア1の周面にプライマー層P1を介してゴム層6が形成され、このゴム層6の表面にはPFAプライマー層P2を介してPFA離型層33が形成されているゴムロール31が製造される。ゴム層6の厚みは通常1mm以下に設定されるが、加圧ロールの場合は、ゴム層6の厚みは5mm以下に設定される。
【0046】
本発明にあっては、かけ流し塗布したプライマー、液状コーティング材料等を流拡平滑化するのにブレードおよび補助ブレードを用いたが、それに代えてエアー吹付けを行なってもよい。また、ゴムロールに、所望なれば離型層としてPFAチューブを被着し、加熱溶融させてもよい。
【0047】
さらに、クラウン形状あるいは逆クラウン形状を有するゴムロールを製造する場合には、第2工程における塗布ノズル7Aの移動速度を変更して液状コーティング材料の塗布量を調節する。即ちクラウン形状の場合には、塗布ノズル7Aの移動速度を一端から中央にかけて徐々に遅くし、中央から他端にかけて徐々に早くし、逆クラウン形状の場合には、塗布ノズル7Aの移動速度を一端から中央にかけて徐々に早くし、中央から他端にかけて徐々に遅くする。
【0048】
塗布ノズル7Aの移動速度を調節する以外に、塗布ノズル7Aから液状コーティング材料の吐出量を調節してもよい。
【実施例2】
【0049】
本発明の他の実施例を図6を用いて詳細に説明する。
図6は、本実施例2に係るゴムロールを製造するための装置の正面図である。
尚、説明を分かり易くするため、実施例1に係るゴムロールの製造装置と同一の部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0050】
(ゴムロールの製造装置)
本実施例2に係るゴムロールの製造装置における実施例1との主な相違点は、補助ブレード23の代わりに回転部材24を設けた点である。
図6に示すように、回転部材24は、パイプ状コア1の軸方向とは垂直な方向に回転軸を有し、昇降枠9に取付けられたモータ25により回転される。
【0051】
回転部材24の回転速度は、20000〜30000rpmが望ましく、本第2実施例においては、パイプ状コア1の回転数125rpmに対して、回転部材24の回転数を30000rpmとした。また、塗布ノズル7Aおよび回転部材24の移動速度を8mm/秒、回転部材24とパイプ状コア1の間隔(隙間)を1μmとした。尚、回転部材の回転方向は、正方向、逆方向のどちらであっても良い。
【0052】
(ゴムロールの製造方法)
その他の条件を実施例1と同じにし、直径25mmのパイプ状コア1の表面にゴム層6が形成された図3に示すパイプ状コア30を用いて、前記した第2工程により、図4に示すゴムロール35を製造した。
【0053】
すなわち、図6に示す様に、ゴム層6が周面に形成されたパイプ状コア30の内部に加熱手段としてのヒータ37を挿入し、製造装置にセットした。
そして、パイプ状コア1を、軸を中心として125rpmで回転させ、パイプ状コア1の上方においてパイプ状コア1の軸方向に沿って8mm/秒で移動する塗布ノズル7Aから、ゴム層6に液状コーティング材料を0.25g/10秒でかけ流すと共に、塗布ノズル7Aと共に移動するブレード20を液状コーティング材料に当てて、液状コーティング材料の厚さを調節した。
【0054】
そして、さらに、ブレード20によって厚さが調節された該液状コーティング材料の表面に、パイプ状コア1の軸方向とは垂直な方向に回転軸を有する回転部材24(回転数=30000rpm)を接触させてブレード20と共に移動させ、液状コーティング材料の表面からスパイラル模様を無くすと共に、ゴム層6の外周に液状コーティング材料の塗布層33を形成した。
【0055】
その後、加熱手段の温度を320℃にして、塗布層33を硬化させた。その結果、表面にスパイラル模様の無い図4に示すゴムロール35を製造することができた。
【実施例3】
【0056】
本発明の他の実施例を図7および図8を用いて詳細に説明する。
図7は本第3実施例に係るゴムロールの製造装置の正面図、図8は本第3実施例に係るゴムロールの製造装置の側面図(図7におけるB−B断面図)である。
尚、説明を分かり易くするため、実施例1に係るゴムロールの製造装置と同一の部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0057】
(ゴムロールの製造装置)
本実施例4に係るゴムロールの製造装置における実施例1との主な相違点は、移動台14の上に支持枠3Aおよび3Bを載せ、パイプ状コア1自体が移動する点である。
【0058】
パイプ状コア1の両端は、先端コーン形状のチャック2Aおよび2Bによって支持されている。そして、チャック2A、2Bは、ぞれぞれ支持枠3A、3Bにボールベアリング4A、4Bを介して回転可能に支持されている。
一方のチャック2Aは、支持枠3Aに摺動自在に支持されており、図示しないエアシリンダー、油圧シリンダー、スプリング等の押圧手段によって、図8における矢印イの向きに(チャック2Bに向かって)押圧されている。さらに、チャック2Aの軸5は、図示しないモータ等の駆動手段によって、図9における矢印ニの向きに回転させられる。
【0059】
これらの図示しない押圧手段および駆動手段は、パイプ状コア1が移動手段としての移動台14によりパイプ状コア1の軸方向に移動する関係上、移動台14または支持枠3Aに取り付けられた支持台26に固定されている。
【0060】
移動台14にはネジ孔15があけられており、ネジ孔15には、図示しないモータ等の駆動源によって回転速度可変に正逆回転させられる長尺ネジ16が入れられており、この長尺ネジ16を図示しない駆動源によって所定の回転数で正回転または逆回転させることによって、移動台14はパイプ状コア1の軸方向に沿って所定の速度(例えば、5mm/秒)で移動させられる。
【0061】
尚、移動台14は、基台13上に設けられたレール17によってガイドされている。また、前記したネジ孔15および長尺ネジ16は、一般に市販されているボールネジを用いて構成しても良い。
また、図8に示す様に、摺動台19および可動枠8は、基台13に直接固定されている。すなわち、実施例1に係るゴムロールの製造装置は、塗布ノズル7A、ブレード20および補助ブレード23がパイプ状コア1に対して移動台14によって移動するのに対し、本実施例4に係るゴムロールの製造装置は、パイプ状コア1が塗布ノズル7A、ブレード20および補助ブレード23に対して移動台14によって移動するのである。
【0062】
(ゴムロールの製造方法)
かかる製造装置を用いてゴムロールを製造する方法を以下に説明する。
パイプ状コア1の表面にゴム層6が形成された図3に示すパイプ状コア30を、図7および図8に示す様に、パイプ状コア1の内部に加熱手段としてのヒータ37を挿入し、前記した製造装置にセットした。
【0063】
その後、パイプ状コア1(パイプ状コア30)を、軸を中心として140rpmで回転させると共に、パイプ状コア1を5mm/秒で移動させ、パイプ状コア1の上方において塗布ノズル7Aから、ゴム層6に液状コーティング材料を0.25g/10秒でかけ流すと共に、ブレード20を液状コーティング材料に当てて、液状コーティング材料の厚さを調節した。
【0064】
さらに、ブレード20によって厚さが調節された液状コーティング材料の表面に補助ブレード23を接触させて、液状コーティング材料の表面からスパイラル模様を無くすと共に、ゴム層6の周面に液状コーティング材料の塗布層(コーティング層)33を形成した。
【0065】
その後、パイプ状コア1の内部のヒータ37により、塗布層33を320℃に加熱して、塗布層33を硬化させた。その結果、表面にスパイラル模様の無い図4に示すコーティング層33を有するゴムロール35を製造することができた。
【実施例4】
【0066】
本発明の他の実施例を図9を用いて詳細に説明する。
図9は、本実施例4に係るゴムロールの製造装置の正面図である。
尚、説明を分かり易くするため、実施例1に係るゴムロールの製造装置と同一の部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0067】
(ゴムロールの製造装置)
本実施例4に係るゴムロールの製造装置における実施例3との主な相違点は、補助ブレード23の代わりに回転部材24を設けた点である。
図9に示すように、回転部材24は、パイプ状コア1の軸方向とは垂直な方向に回転軸を有し、昇降枠9に取り付けられたモータ25により回転される。
【0068】
回転部材24の回転速度は、20000〜30000rpmが望ましく、本第5実施例においては、パイプ状コア1の回転数125rpmに対して、回転部材24の回転数を30000rpmとした。また、塗布ノズル7Aおよび回転部材24の移動速度を8mm/秒、回転部材24とパイプ状コア1の間隔(隙間)を1μmとした。尚、回転部材の回転方向は、正方向、逆方向のどちらであっても良い。
【0069】
(ゴムロールの製造方法)
パイプ状コア1の表面にゴム層6が形成されたパイプ状コア30を、図6に示す様に、パイプ状コア1の内部に加熱手段としてのヒータ37を挿入し、前記した製造装置にセットした。
【0070】
その後、パイプ状コア1(パイプ状コア30)を、軸を中心として125rpmで回転させると共に、パイプ状コア1の軸方向に沿って8mm/秒で移動させ、パイプ状コア1の上方において塗布ノズル7Aから、ゴム層6に液状コーティング材料を0.25g/10秒でかけ流すと共に、ブレード20を液状コーティング材料に当てて、液状コーティング材料の厚さを調節した。
【0071】
そして、さらに、ブレード20によって厚さが調節された該液状コーティング材料の表面に、パイプ状コア1の軸方向とは垂直な方向に回転軸を有する回転部材24(回転数=30000rpm)を接触させて、液状コーティング材料の表面からスパイラル模様を無くすと共に、ゴム層6の外周に液状コーティング材料の塗布層33を形成した。その後、加熱手段により液状コーティング材料を320℃に加熱して、塗布層33を硬化させた。その結果、表面にスパイラル模様の無い図4に示すゴムロール35を製造することができた。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、電子写真装置、プリンターの定着ロール等に使用されるコーティング層を有するゴムロールの製造方法で利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】ゴムロールの製造装置の正面図(実施例1)
【図2】ゴムロールの製造装置の側面図(実施例1)
【図3】パイプ状コアの一部側断面図(実施例1)
【図4】ゴムロールの一部側断面図(実施例1〜4)
【図5】ゴムロールの一部側断面図(実施例1)
【図6】ゴムロールの製造装置の正面図(実施例2)
【図7】ゴムロールの製造装置の正面図(実施例3)
【図8】ゴムロールの製造装置の正面図(実施例3)
【図9】ゴムロールの製造装置の側面図(実施例4)
【符号の説明】
【0074】
1 パイプ状コア
2A,2B チャック
7A,7B 塗布ノズル
14 移動台(移動手段)
20 ブレード
23 補助ブレード
24 回転部材
31 ゴムロール
35 ゴムロール
37 ヒータ(加熱手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周面にゴム層が形成されたパイプ状コアの内部に加熱手段を挿入し、
該パイプ状コアを、軸を中心として回転させ、
該パイプ状コアの上方において該パイプ状コアの軸方向に沿って移動する塗布ノズルから、該ゴム層に液状コーティング材料をかけ流すと共に、該塗布ノズルと共に移動するブレードを該液状コーティング材料に当てて、該液状コーティング材料の厚さを調節し、
さらに、該ブレードによって厚さが調節された該液状コーティング材料の表面に補助ブレードを接触させて、該液状コーティング材料の表面からスパイラル模様を無くすと共に、該ゴム層の周面に該液状コーティング材料の塗布層を形成した後、
前記加熱手段によって前記パイプ状コアの内部から該塗布層を加熱して硬化させることを特徴とするコーティング層を有するゴムロールの製造方法
【請求項2】
周面にゴム層が形成されたパイプ状コアの内部に加熱手段を挿入し、
該パイプ状コアを、軸を中心として回転させ、
該パイプ状コアの上方において該パイプ状コアの軸方向に沿って移動する塗布ノズルから、該ゴム層に液状コーティング材料をかけ流すと共に、該塗布ノズルと共に移動するブレードを該液状コーティング材料に当てて、該液状コーティング材料の厚さを調節し、
さらに、該ブレードによって厚さが調節された該液状コーティング材料の表面に、前記パイプ状コアの軸方向とは垂直な方向に回転軸を有する回転部材を接触させて、該液状コーティング材料の表面からスパイラル模様を無くすと共に、該ゴム層の周面に該液状コーティング材料の塗布層を形成した後、
前記加熱手段によって前記パイプ状コアの内部から該塗布層を加熱して硬化させることを特徴とするコーティング層を有するゴムロールの製造方法
【請求項3】
周面にゴム層が形成されたパイプ状コアの内部に加熱手段を挿入し、
該パイプ状コアを、軸を中心として回転させると共に、軸方向に移動させ、
該パイプ状コアの上方において塗布ノズルから該ゴム層に液状コーティング材料をかけ流すと共に、ブレードを該液状コーティング材料に当てて該液状コーティング材料の厚さを調節し、
さらに、該ブレードによって厚さが調節された該液状コーティング材料の表面に補助ブレードを接触させて、該液状コーティング材料の表面からスパイラル模様を無くすと共に、該ゴム層の周面に該液状コーティング材料の塗布層を形成した後、
前記加熱手段によって前記パイプ状コアの内部から該塗布層を加熱して硬化させることを特徴とするコーティング層を有するゴムロールの製造方法
【請求項4】
周面にゴム層が形成されたパイプ状コアの内部に加熱手段を挿入し、
該パイプ状コアを、軸を中心として回転させると共に、軸方向に移動させ、
該パイプ状コアの上方において塗布ノズルから該ゴム層に液状コーティング材料をかけ流すと共に、ブレードを該液状コーティング材料に当てて該液状コーティング材料の厚さを調節し、
さらに、該ブレードによって厚さが調節された該液状コーティング材料の表面に、前記パイプ状コアの軸方向とは垂直な方向に回転軸を有する回転部材を接触させて、該液状コーティング材料の表面からスパイラル模様を無くすと共に、該ゴム層の周面に該液状コーティング材料の塗布層を形成した後、
前記加熱手段によって前記パイプ状コアの内部から該塗布層を加熱して硬化させることを特徴とするコーティング層を有するゴムロールの製造方法

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−241264(P2009−241264A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−87286(P2008−87286)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000251288)鈴鹿富士ゼロックス株式会社 (156)
【Fターム(参考)】