説明

サスペンションおよび鞍乗型車両

【課題】製造上有利なサスペンションの提案
【解決手段】このサスペンション100によれば、シリンダ111の一端の開口を覆うキャップ112は、シリンダ111の一端部の外周面に対して少し隙間を空けて対向し、シリンダ111の一端部を覆うカバー部145を備えている。そして、スプリングアジャスタ102の油室140は、カバー部145の内周面とシリンダ111の一端部の外周面との間の周状の溝146に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はダンパーと、スプリングアジャスタと、スプリングとを備えたサスペンションおよび当該サスペンションが取り付けられた鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
サスペンションは、二輪車用リヤクッションユニットなどに用いられている。かかるサスペンションにおいて、ダンパーと、スプリング(ばね)と、スプリングアジャスタ(ばね荷重を調整する機構)とを備えたサスペンションがある。かかるサスペンションは、例えば、実用新案登録第2573071号や、実公平7−12746号公報に開示されている。なお、以下、これらの公報に開示されたサスペンションの概要を説明する。
【0003】
実用新案登録第2573071号に開示された油圧緩衝器(サスペンション)では、ダンパーはシリンダの外周にばねシート(ばね座)を設けるとともに、ピストンロッド側にばね受け(ばね座)を設け、これらのばねシートとばね受けの間に懸架ばね(スプリング)を介在させている。このサスペンションでは、シリンダの外周に取り付けた油圧ジャッキ(スプリングアジャスタ)によって、シリンダの外周に設けられたばねシート(ばね座)を支持している。そして、スプリングアジャスタによって、シリンダの外周に設けられたばね座の位置を変更することによって、懸架ばねのばね荷重を変更している。同公報では、油圧ジャッキ(スプリングアジャスタ)は、シリンダの肉厚内に設けられた油室と、この油室に収容されるプランジャとからなり、プランジャにてばねシート(ばね座)を支持している。
【0004】
また、実公平7−12746号公報に開示されたサスペンション(リヤクッションユニット)では、ダンパシリンダの外周に環状のガイドが取り付けられている。ダンパシリンダの外周と環状のガイドとの間には環状の油室が形成されている。摺動部材は、当該油室の油圧を受けて軸方向に変位可能に構成されている。ピストンロッドの基端部と摺動部材はそれぞれスプリングシート(ばね座)が取り付けられており、ピストンロッドの基端部と摺動部材には懸架スプリング(スプリング)が取り付けられている。
【特許文献1】実用新案登録第2573071号
【特許文献2】実公平7−12746号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1に記載されたスプリングアジャスタは、シリンダの肉厚内に油室が設けられており、シリンダの形状が複雑になっているため製造が難しい。また、特許文献2に記載されたスプリングアジャスタは、ダンパシリンダの外周と環状のガイドの間に油室が設けられている。この構造では、当該油室のシールが多数必要になっているため製造が難しい。本発明は、スプリングアジャスタの油室の構造を今までにない全く新しい構造にすることで製造上有利なサスペンションを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このサスペンションは、ダンパーと、スプリングアジャスタと、スプリングとを備えている。ダンパーは、シリンダと、シリンダの一端の開口を覆うキャップと、シリンダに装着されたピストンと、ピストンからシリンダの他端側に延びたピストンロッドとを備えている。キャップは、シリンダの一端部の外周面に対向してシリンダの一端部を覆うカバー部を備えている。また、スプリングアジャスタは、カバー部の内周面とシリンダの一端部の外周面との間の周状の溝に形成された油室と、油室に装着されたリング状ピストンとを備えている。そして、スプリングは、リング状ピストンに設けられた第1ばね座と、ピストンロッドの先端部に取り付けられた第2ばね座との間に圧縮された状態で配設されている。
【発明の効果】
【0007】
このサスペンションによれば、シリンダの一端の開口を覆うキャップは、シリンダの一端部の外周面に対向し、シリンダの一端部を覆うカバー部を備えている。そして、スプリングアジャスタの油室は、カバー部の内周面とシリンダの一端部の外周面との間の周状の溝に形成されているので、製造が容易にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態に係るサスペンションを図面に基づいて説明する。なお、各図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付している。また、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0009】
このサスペンション100は、図1に示すように、鞍乗型車両10のリヤクッションユニットに用いられている。この実施形態では、鞍乗型車両10は、車体フレーム11に揺動自在に取り付けられたスイングアーム12の先端部に後輪13が取り付けられている。サスペンション100は、一端が車体フレーム11に取り付けられ、他端がスイングアーム12の揺動機構14に取り付けられている。なお、図1に示すように、この実施形態では、鞍乗型車両10は、車体フレーム11の上部にシート21が取り付けられており、シート21の前方に燃料タンク22が配設されており、燃料タンク22下のスペースにエンジンなどの駆動装置23が配設されている。
【0010】
このサスペンション100は、図2に示すように、ダンパー101と、スプリングアジャスタ102と、スプリング103とを備えている。
【0011】
ダンパー101は、シリンダ111と、キャップ112と、ピストン113と、ピストンロッド114とを備えている。
【0012】
シリンダ111は、この実施形態では、円筒形状の部材であり、シリンダ111の一端の開口111aはキャップ112で覆われている。シリンダ111内には、シリンダ111の一端とピストン113で囲まれた空間にダンパー101の油室120が形成されている。また、この実施形態では、シリンダ111の一端部の外側にスプリングアジャスタ102が設けられており、当該シリンダ111の一端部の外周にはスリーブ115が装着されている。
【0013】
ピストン113は、シリンダ111に装着されている。この実施形態では、ピストン113はピストンロッド114の軸方向に離れた位置に取り付けられた2つの部材121、122を備えている。シリンダ111の一端側に配設された第1部材121はシリンダ111内に形成されるダンパー101の油室120を完全には区切っておらず、一部に媒体が通過できる挿通部123を有している。シリンダ111の他端側に配設された第2部材122は、シリンダ111の内周面との間にシール124が介在しており、ダンパー101の油室120を完全に区切っている。この実施形態では、ピストン113は、シリンダ111にガイドされてシリンダ111の軸方向に摺動可能に装着されている。当該油室120には、粘性抵抗を生じさせる媒体が封入されている。ダンパー101は、ピストン113がシリンダ111内を移動する際に、油室120の媒体がピストン113の移動に抵抗を与えることによって、サスペンション100に入力された衝撃を効果的に緩和させることができる。
【0014】
ピストンロッド114は、ピストン113からシリンダ111の他端側に延びている。この実施形態では、シリンダ111の他端の開口には、当該開口を閉塞する閉塞部材131が取り付けられている。閉塞部材131は、ピストンロッド114が挿通する挿通孔132が形成されている。また、この実施形態では、シリンダ111の内周面にストッパ133が設けられている。ストッパ133は、シリンダ111の他端側においてピストン113の移動領域を規定している。ピストンロッド114の先端部には、取付部142が設けられており、このサスペンション100は当該取付部142を鞍乗型車両10のスイングアーム12に取り付けている。この実施形態では、取付部142にはボルトが挿通される挿通穴142aが形成されている。
【0015】
次に、キャップ112は、上述したようにシリンダ111の一端の開口111aを覆っており、ダンパー101の油室120を形成している。キャップ112には、鞍乗型車両10に取り付けられる取付部141が設けられており、この実施形態では、取付部141にはボルトが挿通される取付穴141aが形成されている。
【0016】
この実施形態では、キャップ112には、ダンパー101の油室120(シリンダ内)の油量を調整する第1減衰調整機構171と、スプリングアジャスタ102の油室140の油量を調整する第2減衰調整機構172とを備えている。キャップ112には、第1減衰調整機構171とダンパー101の油室120を連通させる油路173、および、第2減衰調整機構172とスプリングアジャスタ102の油室140を連通させる油路174がそれぞれ形成されている。第1減衰調整機構171と第2減衰調整機構172については後述する。
【0017】
また、この実施形態では、シリンダ111の一端の開口111aの周縁部とキャップ112の間には第1のシール143が装着されている。キャップ112は、シリンダ111の外周面に沿って軸方向に延在しており、キャップ112とシリンダ111の一端部の外周面(この実施形態では、スリーブ115の外周面)の間に第2のシール144が装着されている。
【0018】
キャップ112は、さらにシリンダ111の一端部の外周を覆うカバー部145を備えている。カバー部145の内周面とシリンダ111の一端部の外周面(この実施形態では、スリーブ115の外周面)の間には、周状の溝146が形成されている。この実施形態では、カバー部145はキャップ112の内周に設けられた段差147によってシリンダ111の一端部の外周面に対して少し隙間をあけて対向している。これにより、カバー部145の内周面とシリンダ111の一端部の外周面(この実施形態では、スリーブ115の外周面)との間に周状の溝146が形成されている。またキャップ112の内周に設けられた段差147は、周状の溝146の底部を形成している。また、当該周状の溝146の底部は、上述したようにキャップ112とスリーブ115の外周面との間に装着されたシール144によって封じられている。また、この実施形態では、シリンダ111の一端部の外周面は、スリーブ115が装着されているが、当該スリーブ115の外周面は所要の面粗度を有している。なお、この実施形態では、キャップ112は、鋳造で成形されており、キャップ112の内周面、特に、上記周状の溝146を形成する部分は切削により、所要の面粗度が確保されている。
【0019】
スプリングアジャスタ102は、当該周状の溝146に油室140が形成されている。当該油室140には、リング状ピストン150が装着されている。当該リング状ピストン150は、油室140を封止するように上記の周状の溝146に摺動自在に装着されている。この実施形態では、リング状ピストン150の内側にはカバー部145の内周面を摺動する第1シール148が装着されている。また、リング状ピストン150の外側には、シリンダ111の外周面(この実施形態では、スリーブ115の外周面)を摺動する第2シール149が装着されている。この第1シール148と第2シール149によって、スプリングアジャスタ102の油室140は封じられている。また、この実施形態では、リング状ピストン150には、第1ばね座161を受ける受け部151が設けられている。スプリングアジャスタ102の油室140の油量によって、リング状ピストン150が進退し、第1ばね座161の位置が変化する。
【0020】
スプリング103は、上述した受け部151に取り付けられた第1ばね座161と、ダンパー101のピストンロッド114の先端部に取り付けられた第2ばね座162との間に圧縮された状態で配設されている。スプリングアジャスタ102の油室140の油量を多くすると、リング状ピストン150および第1ばね座161が周状の溝146から進出する。この際、スプリング103は縮められて硬くなる。反対に、スプリングアジャスタ102の油室140の油量を減らすと、リング状ピストン150および第1ばね座161が周状の溝146から後退する。この際、スプリング103はその分だけ伸びた状態となって柔らかくなる。
【0021】
このように、この実施形態では、スプリングアジャスタ102の油室140の圧力に応じて、スプリング103の硬さが調整される。この実施形態では、第1ばね座161とカバー部145が重なる部位において、第1ばね座161の外側面に目盛り160が付けられている。この実施形態では、当該目盛り160を見ながらスプリングアジャスタ102を調整することができる。スプリングアジャスタ102は後述する第2減衰調整機構172によって調整される。なお、この実施形態では、スプリングアジャスタ102を調整する際に、カバー部145から見える第1ばね座161の外側面に目盛り160が付けられている。当該目盛りは、リング状ピストン150と第1ばね座161の取付構造によっては、リング状ピストン150に設けてもよい。
【0022】
次に、第1減衰調整機構171と第2減衰調整機構172を順に説明する。
【0023】
第1減衰調整機構171は、ダンパー101の硬さ(減衰性能)を調整する機構である。すなわち、この実施形態では、ダンパー101の硬さ(減衰性能)は、ダンパー101の油室120の油量を調整することによって調整される。ダンパー101の油室120の油量は第1減衰調整機構171によって調整される。第1減衰調整機構171は、チェック弁181と、圧力調整部182とを備えている。なお、この実施形態では、図示は省略するが、チェック弁181は、シリンダ型の容器内に構成されている。
【0024】
圧力調整部182は、キャップ112に形成された油路173およびチェック弁181を通して、ダンパー101の油室120に連通されている。圧力調整部182は、この実施形態では、チェック弁181を通じてダンパー101の油室120に連通した油室180を備えている。そして、当該油室180には、所定の気圧になるように気体(この実施形態では、窒素)が封入されたバルーン183が収容されており、バルーン183の周りに油が充填されている。
【0025】
この実施形態では、チェック弁181は、ダンパー101の油室120内の油圧が所定以上になると開いて、油室120内のオイルを圧力調整部182の油室180に逃がす。また、ダンパー101の油室120の油圧が所定以下であり、圧力調整部182の油室180の油圧が所定以上の場合にも、チェック弁181が開き、圧力調整部182からダンパー101に油が流入する。チェック弁181が開く圧力は、この実施形態では、シリンダ形状の容器を備えたチェック弁181の一端に設けられた調整ねじ185を操作することによって調整される。
【0026】
この第1減衰調整機構171は、チェック弁181が開く圧力を調整することによって、ダンパー101の油室120の油量を調整することができる。ダンパー101の油室120の油量を多くするとダンパー101は硬くなり、少なくするとダンパー101は柔らかくなる。例えば、鞍乗型車両10が主に市街地で走行するような場合では、スピードは遅い状態で使用されるので、ダンパー101が柔らかくなるように調整するとよい。また、高速走行やレースなどに使用されるような場合では、ダンパー101が硬くなるように調整するとよい。
【0027】
次に、第2減衰調整機構172は、スプリングアジャスタ102を調整する。この実施形態では、第2減衰調整機構172は、図3および図4に示すように、シリンダ191と、ピストン192と、ピストン192の位置を調整する位置調整機構193とを備えている。シリンダ191は、底を有する筒状の部材であり、ピストン192が装着されている。ピストン192の外周面には、軸方向に溝201が形成されており、他方シリンダ191には、径方向にねじ穴が形成されている。当該ねじ穴には、ねじ202が装着されており、ねじ202の先端はピストン192に形成された溝201に嵌っている。ピストン192はねじ202と溝201が係合していることによって、シリンダ191に対して回転できない。なお、ねじ穴は、シール203によって封じられている。
【0028】
ピストン192は、軸方向に雌ねじ205が形成された中空部を有している。位置調整機構193は、シリンダ191の開口部に装着されるキャップ210と、キャップ210に支持され、かつ、ピストン192の中空部の雌ねじ205に噛み合う調整ねじ211を備えている。この実施形態では、調整ねじ211は、ピストン192の中空部の雌ねじ205に噛み合う雄ねじ軸212と、当該雄ねじ軸212の一端に取り付けられ、雄ねじ軸212を操作する操作部213で構成されている。この第2減衰調整機構172は、操作部213を廻すことによって、調整ねじ211の雄ねじ軸212が回転する。ピストン192は、外周面に軸方向に形成された溝201に、シリンダ191に装着されたねじ202が嵌っており、シリンダ191に対して回転できない。位置調整機構193の雄ねじ軸212が回転すると、雄ねじ軸212に、ピストン192に形成された雌ねじ205が噛み合う。そして、当該ねじのピッチに応じてピストン192がシリンダ191に対して進退する。
【0029】
このシリンダ191とピストン192で囲まれた空間には油室200が形成されている。油室200は、ピストン192の外周面に装着されたシール215によって封じられている。
【0030】
当該油室200は、サスペンション100のキャップ112(図2参照)に形成された油路174を通じてスプリングアジャスタ102の油室140に連通している。そして、上述した位置調整機構193によって、ピストン192はシリンダ191に対して進退すると、第2減衰調整機構172の油室200の容積が増減する。すなわち、ピストン192をシリンダ191に対して押し込むと、第2減衰調整機構172の油室200の容積が減り、当該油室200の油はスプリングアジャスタ102の油室140に流入する。これにより、スプリングアジャスタ102の油室140の圧力が上がり、スプリング103が硬くなるように調整される。反対に、ピストン192をシリンダ191から引き上げ、第2減衰調整機構172の油室200の容積を増やすと、スプリングアジャスタ102の油が第2減衰調整機構172の油室200に引き込まれる。これにより、スプリングアジャスタ102の油室140の圧力が下がり、スプリング103が柔らかくなるように調整される。
【0031】
以上、このサスペンション100の構造を説明したが、このサスペンション100は、ダンパー101のシリンダ内の油量を調整する第1減衰調整機構171によってダンパー101の硬さ(減衰性能)を調整することができる。さらに、スプリングアジャスタ102の油室140の油量を調整する第2減衰調整機構172によってスプリング103の硬さ等が調整される。
【0032】
このサスペンション100によれば、図2に示すように、シリンダ111の一端の開口を覆うキャップ112は、シリンダ111の一端部の外周面に対して少し隙間を空けて対向し、シリンダ111の一端部を覆うカバー部145を備えている。そして、スプリングアジャスタ102の油室140は、カバー部145の内周面とシリンダ111の一端部の外周面(この実施形態では、スリーブ115の外周面)との間の周状の溝146に形成されている。シリンダ111は単純な筒形状でよく、また、キャップ112はカバー部を含めて製造が比較的容易な形状になる。この実施形態では、キャップ112はこのように成形が容易な形状を有しているので、鋳造により成形している。これにより、サスペンション100を比較的安価に製造できる。
【0033】
この実施形態では、上述したように、第1減衰調整機構171と第2減衰調整機構172は、それぞれシリンダ形状の容器を備えており、当該シリンダの長手方向が同じ方向に配設されている。これにより、省スペース化が図られている。この実施形態では、当該構成を実現するため、ダンパー101のキャップ112に、当該第1減衰調整機構171と第2減衰調整機構172のシリンダが同じ方向を向くように装着穴が形成されている。当該装着穴は、例えば、キャップ112を鋳造する時に形成することができる。さらに、この実施形態では、第1減衰調整機構171のチェック弁181の一端に設けられた調整ねじ185と、第2減衰調整機構172の一端に設けられた操作部213が同じ側面に配設されている。そして、図1に示すように、鞍乗型車両10にサスペンション100が取り付けられたときに、シート下のスペースから第1減衰調整機構171のチェック弁181の調整ねじ185(図2参照)と、第2減衰調整機構171の操作部213(図2参照)が操作できるように構成されている。これにより、サスペンション100の調整スペースの省スペース化が測られている。
【0034】
この実施形態では、ダンパー101の油室120と第1減衰調整機構171の油室180とを連通する油路173、および、スプリングアジャスタ102の油室140と第2減衰調整機構172の油室200を連通する油路174がそれぞれキャップ112に形成されている。これは、上述したように、キャップ112の形状が開口部から浅く、また開口も広いので、ドリル等によって当該油路173、174の穴を開けるのが比較的容易に行なえる。
【0035】
以上、本発明の一実施形態に係るサスペンションを説明したが、本発明に係るサスペンションは上述した実施形態に限定されない。
【0036】
例えば、ダンパーのシリンダやキャップ、また、スプリングアジャスタの各構成部材の具体的な構造は、種々の変更が可能である。また、この実施形態では、サスペンションは、鞍乗型車両のリヤクッションユニットに用いられているが、また、鞍乗型車両についても、4輪バギーなどの車両のクッションユニットに用いることができ、この場合、前輪のクッションユニットに用いることができる。なお、ここで、「鞍乗型車両」には、種々の自動二輪車、例えば、スクータ型の自動二輪車、原動機付自転車(モーターバイク)が含まれる。また、「鞍乗型車両」には、前輪および後輪の少なくとも一方を2輪以上にしてもよく、例えば、自動二輪車以外に、四輪バギー(ATV:All Terrain Vehicle(全地形型車両))や、スノーモービルが含まれる。さらに、このサスペンションは鞍乗型車両に限らず、種々の用途のクッションユニット(緩衝器)に用いることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態に係る鞍乗型車両のサスペンションの取付構造を示す側面図。
【図2】本発明の一の実施形態に係るサスペンションを示す図。
【図3】本発明の一実施形態に係るサスペンションの第2減衰調整機構を示す図。
【図4】本発明の一実施形態に係るサスペンションの第2減衰調整機構の使用状態を示す図。
【符号の説明】
【0038】
10 鞍乗型車両
11 車体フレーム
12 スイングアーム
13 後輪
14 揺動機構
100 サスペンション
101 ダンパー
102 スプリングアジャスタ
103 スプリング
111 シリンダ
111a シリンダの一端の開口
112 キャップ
113 ピストン
114 ピストンロッド
115 スリーブ
120 ダンパーの油室
121 第1部材
122 第2部材
123 挿通部
124 シール
131 閉塞部材
132 挿通孔
133 ストッパ
140 スプリングアジャスタの油室
141 取付部
141a 取付穴
142 取付部
142a 挿通穴
143 シール
144 シール
145 カバー部
146 溝
147 段差
148 第1シール
149 第2シール
150 リング状ピストン
151 受け部
161 第1ばね座
162 第2ばね座
171 第1減衰調整機構
172 第2減衰調整機構
173 油路
174 油路
180 第1減衰調整機構の油室
181 チェック弁
182 圧力調整部
183 バルーン
185 調整ねじ
191 第2減衰調整機構のシリンダ
192 第2減衰調整機構のピストン
193 位置調整機構
200 第2減衰調整機構の油室
201 溝
203 シール
210 キャップ
212 雄ねじ軸
213 操作部
215 シール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダンパーと、スプリングアジャスタと、スプリングとを備えたサスペンションであって、
前記ダンパーは、
シリンダと、
前記シリンダの一端の開口を覆うキャップと、
前記シリンダに装着されたピストンと、
前記ピストンから前記シリンダの他端側に延びたピストンロッドと
を備え、
前記キャップは、前記シリンダの一端部の外周面に対向し、前記シリンダの一端部を覆うカバー部を備え、
前記スプリングアジャスタは、
前記カバー部の内周面と前記シリンダの一端部の外周面との間の周状の溝に形成された油室と、
当該油室に装着されたリング状ピストンと
を備え、
前記スプリングは、
前記リング状ピストンに設けられた第1ばね座と、前記ピストンロッドの先端部に取り付けられた第2ばね座との間に圧縮された状態で配設されている、サスペンション。
【請求項2】
前記ダンパーのシリンダ内の油量を調整する第1減衰調整機構を備えた、請求項1に記載のサスペンション。
【請求項3】
前記キャップには前記ダンパーのシリンダと前記第1減衰調整機構とを連通する油路が形成されている、請求項2に記載のサスペンション。
【請求項4】
前記スプリングアジャスタの油室の油量を調整する第2減衰調整機構を備えた、請求項1に記載のサスペンション。
【請求項5】
前記キャップには前記スプリングアジャスタの油室と前記第1減衰調整機構とを連通する油路が形成されている、請求項4に記載のサスペンション。
【請求項6】
前記シリンダの一端部の外周には、少なくとも前記リング状ピストンが移動する領域にスリーブが装着されている、請求項1に記載のサスペンション。
【請求項7】
前記シリンダ内の油量を調整する第1減衰調整機構と、
前記油室の油量を調整する第2減衰調整機構と
を備え、
前記第1減衰調整機構と第2減衰調整機構は、それぞれシリンダ形状の容器を備えており、当該シリンダの長手方向が同じ方向に配設されている、請求項1に記載のサスペンション。
【請求項8】
前記カバー部とリング状ピストンまたは第1ばね座に、前記スプリングアジャスタの調整量を示す目盛りが設けられている、請求項1に記載のサスペンション。
【請求項9】
前記キャップは鋳造で成形されている、請求項1に記載のサスペンション。
【請求項10】
請求項1から8の何れか一つに記載されたサスペンションのキャップと、前記ピストンロッドの先端とが、車体フレームと後輪の揺動支持部材との間に取り付けられた、鞍乗型車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−138915(P2009−138915A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−319093(P2007−319093)
【出願日】平成19年12月11日(2007.12.11)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】