説明

サスペンション用アッパサポートおよびそれを用いた自動車用懸架装置

【課題】組み付け作業が容易で、耐久性能や非線形なばね特性が十分に得られ、振動低減効果や異音抑制効果、操縦安定性が有利に発揮され得る、新規な構造のアッパサポートと該アッパサポートを用いた新規な構造の懸架装置を提供する。
【解決手段】アウタ筒部材14のフランジ状部28に車両ボデー22に対する取付部30,32を周方向で略等間隔に3つ設けると共に、インナ部材12の軸方向両端部分で外周側に突出する上ストッパ部24および下ストッパ部54を設ける一方、支持ゴム弾性体16において、アウタ筒部材14から軸方向上方および下方に突出して上下のストッパ部24,54に当接する上当接突起42aおよび下当接突起42bをそれぞれ周方向で略等間隔に3つ形成すると共に、軸方向上方および下方に突出して上下のストッパ部24,54に対して軸方向に所定距離を隔てて対向位置する上控え突部44aおよび下控え突部44bをそれぞれ形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の懸架系に採用されて、緩衝器のピストンロッドを車両ボデーに対して防振支持せしめるサスペンション用アッパサポートに係り、特に、緩衝器のピストンロッドを車両ボデーに対してサスペンションスプリングから独立して弾性支持せしめる入力分離型の懸架系に採用されるサスペンション用アッパサポートとかかるアッパサポートを用いた自動車用懸架装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の懸架装置は、サスペンションスプリングと緩衝器を含んで構成されており、車輪に連結されたサスペンションアーム等を車両ボデーに対して揺動可能に防振支持せしめた構造とされている。そこにおいて、従来から、緩衝器を通じての車両ボデーへの振動伝達を低減するために、緩衝器の車両ボデーへの取付部位に装着されるサスペンション用アッパサポートが知られている。
【0003】
サスペンション用アッパサポートは、例えば特許文献1(特開平10−220519号公報)や特許文献2(特開2002−81503号公報)、特許文献3(特開2001−280400号公報)にも示されているように、緩衝器のピストンロッドが取り付けられるインナ金具の軸直角方向外方に離隔して車両ボデーに取り付けられるアウタ筒金具を配設せしめて、それらインナ金具とアウタ筒金具を支持ゴム弾性体で連結した構造とされている。また、アウタ筒金具の軸直角方向両側部分において内周側に突出する上下のストッパ部が設けられていると共に、インナ金具から軸方向両側に突出してアウタ筒金具のストッパ部に対してそれぞれ当接される上側弾性突出部や下側弾性突出部が設けられている。かかるアッパサポートでは、インナ金具とアウタ筒金具の間に入力されるバウンド方向やリバウンド方向の荷重が小さいときに、弾性突出部がストッパ部に当接された状態で圧縮変形することによって、柔らかいばね特性が発揮されて、良好な乗り心地が実現される一方、入力荷重が大きいときに、弾性突出部よりもばね定数が大きな支持ゴム弾性体等の別部材がストッパ部に当接されることによって、硬いばね特性が発揮されて、優れた操縦安定性が実現されることとなる。
【0004】
ところで、サスペンション用アッパサポートでは、車両ボデー乃至はタイヤの姿勢や路面状況などに応じて、バウンド荷重やリバウンド荷重が軸方向や軸直角方向、斜め方向、こじり方向等の各種の方向から入力されることとなり、そのような各種の方向の荷重入力に際して弾性突出部の弾性変形作用や荷重−撓み特性の非線形性等が有効に発揮されるために、前述の特許文献1〜3にも示されているように、複数の弾性突出部を、それぞれ周方向に所定の距離を隔てて配設した構造が提案されている。
【0005】
ところが、上述の特許文献1〜3を含む従来構造のアッパサポートにあっては、アウタ筒金具の車両ボデーに対する固定部と各弾性突出部との相対的な位置関係について特別に考慮されておらず、特にアウタ筒金具の固定部が周方向に略等間隔に複数設けられた構造において、アウタ筒金具が中心軸回りに回転して各固定部の車両ボデーに対する取付位置が予定の位置と異なる位置に位置決めされた場合に、各弾性突出部の配置が予定の位置と異なることがあった。その結果、所期のばね特性や弾性突出部の弾性変形作用が発揮されなくなって、目的とする振動低減効果や非線形なばね特性に基づく操縦安定性等が有利に発揮され難くなるおそれがあった。このような従来構造のアッパサポートでは、上記問題が惹起されないために、車両への装着状態下で各弾性突出部が突出する位置を認識して組み付ける必要があったのであり、それによって、組み付けが面倒であるという問題があった。
【0006】
加えて、アッパサポートが装着される自動車の懸架装置では、車種やサスペンション構造の違い或いはジオメトリー変化により、バウンド側とリバウンド側でこじり方向が異なることがあった。そのため、こじり方向に比較的に大きな荷重が入力された際に、支持ゴム弾性体や複数の弾性突出部に局所的に応力や歪みが発生して、耐久性能や非線形特性が十分に発揮され難くなる問題を内在していた。その結果、所期の振動低減効果や操縦安定性が安定して得られ難くなることに加えて、弾性突出部のストッパ部への当接に伴う異音が発生し易くなる問題があったのである。
【0007】
【特許文献1】特開平10−220519号公報
【特許文献2】特開2002−81503号公報
【特許文献3】特開2001−280400号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここにおいて、本発明は、上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、車両に対する組み付け作業が容易とされることに加え、耐久性能や非線形なばね特性が十分に得られることによって、目的とする振動低減効果や異音抑制効果、操縦安定性が有利に発揮され得る、新規な構造のサスペンション用アッパサポートと該サスペンション用アッパサポートを用いた新規な構造の自動車用懸架装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。また、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに限定されることなく、明細書全体および図面に記載されたもの、或いはそれらの記載から当業者が把握することの出来る発明思想に基づいて認識されるものであることが理解されるべきである。
【0010】
(アッパサポートに関する本発明の態様1)
アッパサポートに関する本発明の態様1の特徴とするところは、緩衝器のピストンロッドが取り付けられるインナ部材の軸直角方向外方に離隔して、車両ボデーに取り付けられるアウタ筒部材を配設せしめて、それらインナ部材とアウタ筒部材を支持ゴム弾性体で連結して、該緩衝器のピストンロッドを該車両ボデーに対してサスペンションスプリングから独立して弾性支持せしめるようにしたサスペンション用アッパサポートにおいて、前記アウタ筒部材にフランジ状部を設けて該フランジ状部において車両ボデーに対する取付部を周方向で略等間隔に3つ設けると共に、前記インナ部材の軸方向両端部分で外周側に突出する上ストッパ部および下ストッパ部を設ける一方、前記支持ゴム弾性体において、該アウタ筒部材から軸方向上方および下方に突出して該インナ部材の該上ストッパ部および該下ストッパ部に当接する上当接突起および下当接突起をそれぞれ周方向で略等間隔に3つ形成すると共に、それら各3つの該上当接突起および該下当接突起における互いに周方向で隣り合う中間位置において、軸方向上方および下方に突出して該インナ部材の該上ストッパ部および該下ストッパ部に対して軸方向に所定距離を隔てて対向位置する上控え突部および下控え突部をそれぞれ形成すると共に、それら上控え突部および下控え突部をそれぞれ周方向で略等間隔に3つ位置決め配置したことにある。
【0011】
このような本態様に従う構造とされたサスペンション用アッパサポートにおいては、バウンド荷重やリバウンド荷重が入力されると、初期状態で上下のストッパ部に当接されている上下の当接突起が圧縮変形されることとなり、その弾性変形量が所定量の大きさに達した後に、各ストッパ部と所定距離を隔てて対向位置せしめられていた上下の控え突部が、ストッパ部に当接されて圧縮変形されることとなる。従って、入力荷重が小さいときには、当接突起による柔らかいばね特性が発揮されて、車両における良好な乗り心地が実現される一方、入力荷重が大きくなると、控え突部がストッパ部に当接して硬いばね特性が発揮されることにより、優れた操縦安定性が発揮され得る。
【0012】
特に、上当接突起および下当接突起がそれぞれ周方向で略等間隔に3つ形成されていることによって、バウンド側乃至はリバウンド側で軸方向や軸直角方向、斜め方向、こじり方向等の各種の方向の荷重入力に応じて、当接突起の弾性変形作用が有利に発揮され、柔らかいばね特性が十分に発揮され得る。しかも、各3つの上当接突起および下当接突起における互いに周方向で隣り合う中間位置に上控え突部および下控え突部が、それぞれ形成されていることによって、周方向で隣り合う各一対の当接突起の間の広いスペースにおいて各控え突部がストッパ部に安定して当接して弾性変形されることとなり、硬いばね特性が十分に発揮され得るのである。
【0013】
また、例えば、車両への装着に際して、周方向で隣り合う各一対の当接突起の間に大きなこじり方向等の荷重が入力されるようにすれば、かかる荷重に伴う当接突起の応力や歪みの発生が効果的に抑えられることとなり、当接突起の耐久性能が有利に向上され得る。
【0014】
さらに、本態様では、アウタ筒部材の車両ボデーに対する取付部が周方向で略等間隔に3つ設けられていることによって、アウタ筒部材と車両ボデーの固定部位における荷重が効率的に分散され、かかる固定部位の応力や歪みが抑えられることとなり、耐久性が有利に向上される。
【0015】
そこにおいて、上下の当接突起や上下の控え突部の各3つが、アウタ筒部材に対してそれぞれ周方向で略等間隔に形成されていることによって、アウタ筒部材における各取付部と各突起乃至は各突部との周方向の相対的な位置関係が規定されている。従って、車両への装着に際して、アウタ筒部材が中心軸回りに回転して各取付部の車両ボデーに対する取付位置が予定の位置と異なる位置に位置決めされた場合にも、装着状態下での各当接突起や各控え突部の車両ボデーに対する配設位置が不変であることから、目的とするばね特性や当接突起や控え突部の弾性変形作用が十分に発揮される。
【0016】
それ故、車両に組み付ける際に取付部の車両ボデーに対する位置を特別に配慮する必要がなくなって、組み付けが容易とされるのであり、しかも、所期の振動低減効果や異音抑制効果、非線形なばね特性に基づく操縦安定性が安定して得られるのである。
【0017】
(アッパサポートに関する本発明の態様2)
アッパサポートに関する本発明の態様2の特徴とするところは、本発明の態様1に係るサスペンション用アッパサポートにおいて、前記上当接突起および前記下当接突起が、何れも、突出方向の先端側に行くに従って次第に細くなる先細形状とされていることにある。
【0018】
このような本態様においては、当接突起のばね定数が大きくされて、当接突起のストッパ部への当接に基づく柔らかいばね特性が一層有利に発揮されることから、乗り心地の更なる向上が図られ得る。
【0019】
(アッパサポートに関する本発明の態様3)
アッパサポートに関する本発明の態様3の特徴とするところは、本発明の態様1又は2に係るサスペンション用アッパサポートにおいて、前記上控え突部および前記下控え突部が、何れも、所定面積の略平坦な突出先端面を備えた台地形状とされていることにある。
【0020】
このような本態様においては、控え突部のボリュームが大きくなって、控え突部のストッパ部への当接乃至は圧縮変形に際して一層硬いばね特性が発揮されることとなり、それによって、操縦安定性の更なる向上が図られ得る。また、前述の態様1又は2に係るアッパサポートでは、特に本態様3のような台地形状の控え突部が採用される場合においても、控え突部が周方向で隣り合う各一対の当接突起の間の広いスペースに形成されることにより、当接突起の弾性変形と控え突部の弾性変形が互いに干渉することが軽減乃至は回避されて、優れたばね特性が得られるのである。
【0021】
(アッパサポートに関する本発明の態様4)
アッパサポートに関する本発明の態様4の特徴とするところは、本発明の態様1乃至3の何れかに係るサスペンション用アッパサポートにおいて、前記アウタ筒部材においてそれぞれ周方向で略等間隔に3つ位置せしめられた前記上当接突起と前記下当接突起が周方向で互いに異なる位相で形成されていることにある。
【0022】
このような本態様においては、上下の当接突起の位置が周方向で互いに異ならされていることによって、これら上下の当接突起をバウンド側とリバウンド側で荷重が大きくなる位置を各別に避けるようにして配置せしめることが出来、当接突起の耐久性能が一層有利に向上され得る。それ故、例えば、バウンド側とリバウンド側でこじり方向が異なる自動車等に対して好適に採用されるのである。
【0023】
(アッパサポートに関する本発明の態様5)
アッパサポートに関する本発明の態様5の特徴とするところは、本発明の態様1乃至3の何れかに係るサスペンション用アッパサポートにおいて、前記上当接突起および前記下当接突起と前記上控え突部および前記下控え突部が、それぞれ前記アウタ筒部材を挟んで軸方向で対向位置せしめられていることにある。
【0024】
このような本態様においては、上下の当接突起や上下の控え突部がそれぞれ軸方向で対向位置せしめられていることによって、非常に短いストロークで緩衝作用が発揮されることとなり、打音の発生が一層有利に抑えられる。
【0025】
(アッパサポートに関する本発明の態様6)
アッパサポートに関する本発明の態様6の特徴とするところは、本発明の態様1乃至5の何れかに係るサスペンション用アッパサポートにおいて、前記支持ゴム弾性体が前記アウタ筒部材に加硫接着されていると共に、前記上当接突起や前記下当接突起が該支持ゴム弾性体と一体形成されている一方、該上下の当接突起が前記インナ部材の前記上下のストッパ部に対してそれぞれ当接状態で弾性変形して保持せしめられていることによって、これら上下の当接突起に予圧縮が及ぼされていることにある。
【0026】
このような本態様においては、当接突起のストッパ部への当接に伴う打音の防止効果が一層有利に発揮され得る。また、当接突起に予圧縮が及ぼされることを利用して、ばね特性をチューニング変更することが可能となる。
【0027】
(アッパサポートに関する本発明の態様7)
アッパサポートに関する本発明の態様7の特徴とするところは、本発明の態様1乃至6の何れかに係るサスペンション用アッパサポートにおいて、前記インナ部材を前記上下のストッパ部の何れか一方が端部に一体形成された筒状部材にて構成し、該インナ部材を前記支持ゴム弾性体に圧入固定して、該ストッパ部を、前記上下の当接突起の何れか一方に当接させると共に、前記上下の控え突部の何れか一方と軸方向で所定距離を隔てて対向位置せしめたことにある。
【0028】
このような本態様においては、インナ部材やストッパ部の組み付けが容易となる。また、インナ部材の支持ゴム弾性体に対する圧入位置を調整することによって、全体的に大きな設計変更を伴うことなく、当接突起をストッパ部に当接して圧縮変形せしめる変形量や控え突部とストッパ部の対向面間距離などの設定変更が容易になるという利点がある。
【0029】
(アッパサポートに関する本発明の態様8)
アッパサポートに関する本発明の態様8の特徴とするところは、本発明の態様7に係るサスペンション用アッパサポートにおいて、前記支持ゴム弾性体の内周面に中間スリーブを加硫接着して該中間スリーブに前記インナ部材を圧入固定したことにある。
【0030】
このような本態様においては、インナ部材と支持ゴム弾性体の固着状態がより安定とされて、インナ部材と支持ゴム弾性体の相対的な変位に伴うインナ部材と支持ゴム弾性体の両当接面の滑り等が軽減乃至は回避される。それ故、かかる滑りに起因する異音の発生が効果的に抑制される。
【0031】
しかも、インナ部材と支持ゴム弾性体の確実な固定に基づいて、インナ部材と支持ゴム弾性体、延いてはインナ部材に設けられたストッパ部とアウタ筒部材に設けられた当接突起や控え突部との軸方向の相対的な位置が正確に規定される。これにより、振動低減効果や異音抑制効果の更なる向上が図られ得る。
【0032】
(自動車用懸架装置に関する本発明の態様1)
自動車用懸架装置に関する本発明の態様1の特徴とするところは、サスペンションスプリングと緩衝器を含んで構成されており、車輪に連結されたサスペンションアーム等を車両ボデーに対して揺動可能に防振支持せしめた自動車用懸架装置において、本発明の態様1乃至8の何れかに係るサスペンション用アッパサポートを前記緩衝器の前記車両ボデーへの取付部位に装着するに際して、該サスペンション用アッパサポートにおける前記上当接突起および前記下当接突起が、バウンド側およびリバウンド側に入力される各こじり方向の荷重が大きな位置を避けるように位置決めされた自動車用懸架装置にある。
【0033】
このような本態様に従う構造とされた自動車用懸架装置においては、前述の態様1乃至8の何れかに係るサスペンション用アッパサポートが採用されることによって、かかるサポートの装着に際して、アウタ筒部材が中心軸回りに回転して各取付部の車両ボデーに対する取付位置が予定の位置と異なる位置に位置決めされた場合にも、装着状態における当接突起や控え突部の各突出位置が不変とされていることから、所期のばね特性や当接突起や控え突部の弾性変形作用が安定して得られる。それ故、取付部の車両ボデーに対する位置を特別に考慮しなくて良いことに基づき、組み付けが簡便とされることに加えて、目的とする振動低減効果や異音抑制効果、非線形なばね特性に基づく操縦安定性等が有利に発揮され得るのである。
【0034】
また、本態様では、上下の当接突起が、バウンド側およびリバウンド側に入力される各こじり方向の荷重が大きくなる位置を避けるように位置決めされていることによって、各当接突起の局所的な応力や歪みが抑えられることとなり、当接突起の耐久性が十分に発揮されて、振動や異音の目的とする低減効果が安定して得られる。
【0035】
(自動車用懸架装置に関する本発明の態様2)
自動車用懸架装置に関する本発明の態様2の特徴とするところは、本発明の態様1に係る自動車用懸架装置において、前記サスペンション用アッパサポートにおける各3つの前記上当接突起および前記下当接突起の互いに周方向で隣り合う中央部分に前記上控え突部および前記下控え突部をそれぞれ形成すると共に、これら上控え突部および下控え突部が、バウンド側およびリバウンド側に入力される各こじり方向の荷重が大きな位置に位置決めされたことにある。
【0036】
このような本態様においては、ストッパ部においてこじり荷重の大きい箇所が控え突部に確実に当接されることとなり、ストッパ部が該控え突部よりもばね定数が小さな部位に当接されることに起因して、大きな異音が発生したり、ばね定数が急激に立ち上がって荷重−撓み特性の非線形性が発揮され難くなったりすることが好適に防止される。それ故、異音抑制効果や乗り心地、操縦安定性等の更なる改善が図られ得るのである。
【発明の効果】
【0037】
上述の説明から明らかなように、本発明に従う構造とされたサスペンション用アッパサポートにおいては、装着に際して、アウタ筒部材が中心軸回りに回転して各取付部の車両ボデーに対する取付位置が予定の位置と異なる位置に位置決めされた場合にも、装着状態における当接突起や控え突部の各突出位置が不変とされていることから、所期のばね特性や当接突起や控え突部の弾性変形作用が安定して得られる。それ故、取付部の車両ボデーに対する位置を特別に考慮しなくて良いことに基づき、組み付けが簡便とされることに加えて、目的とする振動低減効果や異音抑制効果、非線形なばね特性に基づく操縦安定性等が有利に発揮され得るのである。
【0038】
また、本発明に従う構造とされた自動車用懸架装置においては、本発明に係るサスペンション用アッパサポートが採用されることによって、組み付けの簡便化が有利に図られ得る。しかも、かかるサポートに設けられた各当接突起が大きなこじり荷重を避ける位置に位置決めされていることによって、当接突起の耐久性が有利に向上されると共に、ストッパ部と当接突起の滑り等に起因する異音の発生が有利に防止され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について説明する。先ず、図1〜2には、本発明の一実施形態としての自動車用サスペンションアッパサポート10が示されている。このアッパサポート10は、インナ部材としてのインナ金具12の周囲に、アウタ筒部材としてのアウタ筒金具14が離隔して設けられていると共に、それらインナ金具12とアウタ筒金具14が支持ゴム弾性体16で相互に弾性連結された構造とされている。アッパサポート10は、インナ金具12が自動車のサスペンション機構の一部を構成する緩衝器としてのショックアブソーバ18のピストンロッド20に固定される一方、アウタ筒金具14が自動車のボデー22に固定されることによって、ショックアブソーバ18をボデー22に対して防振支持せしめるようになっている(図6参照。)。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、上下方向は、図1,6中の上下方向をいう。
【0040】
より詳細には、インナ金具12は、略有底円筒形状を有していると共に、金属材等の剛性部材を用いて形成されている。また、インナ金具12の上端部には、上ストッパ部としての軸直角方向外方(図1中、左右)に略円環板形状に広がるリバウンドストッパ部24が一体形成されている。即ち、インナ金具12が、軸方向一方(図1中、上)の端部にリバウンドストッパ部24を一体的に備えた筒状部材にて構成されており、例えばプレス成形品等を用いて好適に形成される。また、インナ金具12の軸直角方向外方に所定距離を隔てて、アウタ筒金具14が配設されている。
【0041】
アウタ筒金具14は、大径の略円筒形状を有しており、金属材等の剛性部材を用いて形成されている。アウタ筒金具14の軸方向長さは、インナ金具12のそれよりも小さくされている。また、アウタ筒金具14の軸方向下端部には、鍔状部26が一体形成されている。鍔状部26は、軸方向下方に向かって次第に径寸法が大きくなる略逆テーパ形状を呈しているが、例えば軸直角方向に平行に広がる円環板形状とされていても良い。
【0042】
また、アウタ筒金具14の軸方向上端部には、フランジ状部28が一体形成されている。フランジ状部28は、大径の略円環板形状を呈しており、アウタ筒金具14の軸方向下端部に形成された鍔状部26よりも軸方向外方に大きく広がっている。更に、フランジ状部28には、略円孔形状のボルト嵌着孔30が、周方向に略等間隔に3つ貫設されている。更にまた、各ボルト嵌着孔30には、下側から取付ボルト32が圧入固定されて、取付ボルト32の先端螺子部が上方に突出している。本実施形態では、アウタ筒金具14のフランジ状部28に設けられた車両ボデーに対する取付部が、ボルト嵌着孔30や取付ボルト32を含んで構成されていると共に、周方向で略等間隔に3つ設けられている。
【0043】
さらに、アウタ筒金具14の内側には、軸直角方向に所定距離を隔てて、中間スリーブとしての金属スリーブ34が配設されている。金属スリーブ34は、小径の略円筒形状を有しており、その中心軸がアウタ筒金具14の中心軸と略同一線上に位置せしめられるように配置されている。これらアウタ筒金具14と金属スリーブ34の間には支持ゴム弾性体16が配されている。
【0044】
支持ゴム弾性体16は、厚肉の略円筒形状を有していると共に、その内周面が金属スリーブ34の外周面に加硫接着されている。また、支持ゴム弾性体16の径方向中間部分には、アウタ筒金具14が略全体に亘って埋設された状態で加硫接着されている。要するに、本実施形態では、支持ゴム弾性体16が、図3〜5にも示されているように、アウタ筒金具14と金属スリーブ34を備えた一体加硫成形品36として形成されている。なお、支持ゴム弾性体16には、軸方向にある程度の低ばね特性が発揮されると共に、軸直角方向に高ばね特性が発揮される弾性材料が採用されることが好ましい。具体的には、支持ゴム弾性体16の材料には、例えばNRやBR、SBR等が好適に採用され得、ゴム硬さは、Hs(JIS A)値で50〜70とすることが望ましい。また、金属スリーブ34と加硫接着された支持ゴム弾性体16の内周縁部には、周方向に略一定の凹状断面で連続して延びる周溝38の一対が、軸方向上下にそれぞれ開口して形成されており、それによって、支持ゴム弾性体16の内周縁部の応力集中が回避されるようになっている。
【0045】
また、支持ゴム弾性体16の一体加硫成形品36が形成されることに伴い、アウタ筒金具14のフランジ状部28の内周側基端部には、支持ゴム弾性体16の外周縁部が加硫接着されていると共に、アウタ筒金具14の鍔状部26が、支持ゴム弾性体16の外周部分に略全体に亘って埋設された状態で加硫接着されている。それによって、アウタ筒金具14の上端部からフランジ状部28の径方向中間部分に至る部位と、アウタ筒金具14の下端部から鍔状部26の外周縁部に至る部位には、支持ゴム弾性体16と一体形成された略平面視円環形状の上弾性ブロック40aおよび下弾性ブロック40bがそれぞれ被着形成されている。
【0046】
さらに、上下の弾性ブロック40a,40bには、上当接突起42aと下当接突起42bが、それぞれ一体形成されて、軸方向外方(図1中、上下)に向かって突出している。これら当接突起42a,42bは、何れも、略円錐状を有していることに基づき、略平面視円形状を呈していると共に、突出方向(図1中、上下)の先端側に行くに従って次第に細くなる先細形状とされている。
【0047】
そこにおいて、上下の当接突起42a,42bが、各弾性ブロック40にそれぞれ周方向に略等間隔に3つ形成されている。換言すると、上下の弾性ブロック40a,40bには、各3つの上当接突起42aおよび下当接突起42bが、互いに周方向で隣り合う各一対の当接突起42,42の間の中心軸に対する角度が略120°とされた形態で、周方向に離隔して突設されている。
【0048】
さらに、上下の弾性ブロック40a,40bには、軸方向外方(図1中、上下)に突出する上控え突部44aおよび下控え突部44bがそれぞれ一体形成されている。上控え突部44aおよび下控え突部44bは、略四角錐状を呈していることに基づき、略平面視矩形状とされていると共に、突出方向(図1中、上下)の先端側に行くに従って次第に細くされている。また、各控え突部44の高さ寸法は、各当接突起42の高さ寸法よりも小さくされている。それによって、上控え突部44aおよび下控え突部44bが、何れも、略平面視矩形状を呈する所定面積の略平坦な突出先端面を備えた台地形状とされている。
【0049】
これら上控え突部44aおよび下控え突部44bは、上下の弾性ブロック40a,40bに略等間隔に3つ形成された各当接突起42における互いに周方向で隣り合う略中央部分に形成されていることによって、それぞれ各弾性ブロック40に周方向で略等間隔に3つ位置決め配置されている。
【0050】
特に本実施形態では、上当接突起42aおよび下控え突部44bと上控え突部44aおよび下当接突起42bが、アウタ筒金具14を挟んで軸方向で対向位置せしめられている。即ち、略等間隔に位置せしめられた各3つの上当接突起42aと下当接突起42bや上控え突部44aと下控え突部44bが、それぞれ周方向に異なる位相で形成されている。
【0051】
また、本実施形態では、各3つの上当接突起42aと下控え突部44bが、フランジ状部28のボルト嵌着孔30および取付ボルト32を含んでなる取付部と、それぞれ径方向で所定距離を隔てて対向位置せしめられている。
【0052】
また、これら上下の当接突起42a,42bおよび控え突部44a,44bが各弾性ブロック40a,40bに形成されていることによって、弾性ブロック40における各当接突起42と控え突部44の間には、該控え突部44の高さ寸法よりも小さな略平坦形状の平坦部46が形成されている。即ち、各弾性ブロック40a,40bには、平坦部46の6つが、周方向に略等間隔に離隔して設けられている。また、各平坦部46の周方向中央部分には、径方向に略楕円状に延びる凹溝48が形成されている。
【0053】
また、各弾性ブロック40の表面には、上下の当接突起42a,42bや控え突部44a,44bを除いた略全面に亘って多数の弾性小突起50が一体形成されている。これら弾性小突起50は、例えば半球形状等の先細形状とされている。
【0054】
このような支持ゴム弾性体16の一体加硫成形品36における金属スリーブ34に対して、上方からインナ金具12が圧入固定されている。これにより、インナ金具12とアウタ筒金具14が、それらの中心軸が略同一線上に位置せしめられるようにして径方向に互いに離隔配置されていると共に、支持ゴム弾性体16によって相互に弾性連結されている。
【0055】
かかるインナ金具12の圧入固定に際して、インナ金具12の上端部乃至はインナ金具12と一体形成されたリバウンドストッパ部24の内周縁部が金属スリーブ34の上端部に当接されて、リバウンドストッパ部24とアウタ筒金具14の上端部乃至はフランジ状部28の基端部が軸方向に所定距離を隔てて対向位置せしめられている。また、アウタ筒金具14の上端部に形成された3つの上当接突起42a,42a,42aが、インナ金具12のリバウンドストッパ部24に当接した状態で圧縮変形して保持せしめられていることによって、各上当接突起42aに予圧縮が及ぼされている。更に、アウタ筒金具14の上端部に形成された3つの上控え突部44a,44a,44aが、インナ金具12のリバウンドストッパ部24と軸方向に僅かな距離を隔てて対向位置せしめられている。
【0056】
また、インナ金具12の軸方向下端部には、バウンドストッパ金具52が固設されている。バウンドストッパ金具52は、略逆向き有底円筒形状を有している。バウンドストッパ金具52(筒状部56)の外径寸法がインナ金具12の外径寸法よりも大きくされていることによって、バウンドストッパ金具52の上底部が、インナ金具12の下底部よりも大きな円板形状とされている。
【0057】
そして、支持ゴム弾性体16の一体加硫成形品36に圧入固定されたインナ金具12とバウンドストッパ金具52が略同一中心軸上に位置せしめられていると共に、インナ金具12の下底部にバウンドストッパ金具52の上底部が重ね合わせられて溶接等で固着されている。これにより、インナ金具12の下端部には、該下端部から軸直角方向外方に略円環板形状に広がるバウンドストッパ金具52の上底部で構成されたバウンドストッパ部54が設けられている。そして、バウンドストッパ部54とアウタ筒金具14の下端部乃至は鍔状部26が軸方向で所定距離を隔てて対向位置せしめられている。また、バウンドストッパ部54の外周縁部と一体形成されて、バウンドストッパ金具52の一部を構成する略円筒形状の筒状部56が、軸方向下方(図1中、下)に向かって延びている。
【0058】
また、バウンドストッパ金具52がインナ金具12に固着されるに際して、アウタ筒金具14の下端部に形成された3つの下当接突起42b,42b,42bが、インナ金具12のバウンドストッパ部54に当接した状態で圧縮変形して保持せしめられていることによって、各下当接突起42bに予圧縮が及ぼされている。更に、アウタ筒金具14の下端部に形成された3つの下控え突部44b,44b,44bが、インナ金具12のバウンドストッパ部54と軸方向に僅かな距離を隔てて対向位置せしめられている。また、軸方向に相互に重ね合わせられたインナ金具12の下底部とバウンドストッパ金具52の上底部の中央部分には、挿通孔58が貫設されている。
【0059】
このような構造とされたサスペンションアッパサポート10においては、図6にも示されているように、自動車用懸架装置60に対して装着される。本実施形態に係る自動車用懸架装置60は、公知の構造であることから、その詳細な説明を省略するが、ショックアブソーバ18とサスペンションスプリング62を含んで構成されており、ショックアブソーバ18におけるシリンダ64の軸方向端部が、図示しないサスペンションアーム乃至は車輪側のハブキャリアに対してボルト等で固定されるようになっている。
【0060】
また、インナ金具12およびバウンドストッパ金具52の挿通孔58にショックアブソーバ18のピストンロッド20が挿通されて、バウンドストッパ金具52の底部とピストンロッド20の軸方向中間部分に形成された段差部66が互いに重ね合わせられると共に、ピストンロッド20の先端部に固定ナット68が螺着固定される。また、発泡弾性体からなる略円筒形状のバンパスプリング70が、バウンドストッパ金具52の筒状部56に内嵌されて、筒状部56とピストンロッド20の段差部66の間に径方向に挟圧配置されて吊り下げ支持せしめられており、それによって、ショックアブソーバ18におけるシリンダ64の先端部と軸方向で離隔して対向位置せしめられる。また、弾性乃至は可撓性を有する略円筒形状のダストカバー72が、ショックアブソーバ18およびバウンドストッパ金具52に外挿されて、支持ゴム弾性体16がダストカバー72の上端部に圧入固定される。更に、ダストカバー72の上端部に一体形成された鍔部74が、アウタ筒金具14のフランジ状部28に下方から重ね合わせられる。また、サスペンションスプリング62がショックアブソーバ18に外挿されて、サスペンションリング62の上端部が、ダストカバー72の鍔部74延いてはアウタ筒金具14のフランジ状部28に重ね合わせられて支持される。更に、サスペンションリング62の下端部が、シリンダ64の中間部分に外嵌固定された略円環板形状乃至は傘形状の受け金具76に重ね合わせられて支持される。それによって、サスペンションスプリング62が、ショックアブソーバ18のシリンダ64とピストンロッド20の間に軸方向の付勢力を与える状態で装着されるようになっている。
【0061】
これにより、自動車用懸架装置60が、サスペンションアッパサポート10がショックアブソーバ18の車両ボデー22への取付部位に装着された形態で、これらアッパサポート10やショックアブソーバ18、サスペンションスプリング62を含んで構成されている。
【0062】
また、車両ボデー22に設けられた平坦な取付板部78には、ボルト挿通孔80が周方向で略等間隔に3つ形成されている。ボルト挿通孔80の外径寸法は、アウタ筒金具14に固着された取付ボルト32の外径寸法よりも大きくされていると共に、3つのボルト挿通孔80,80,80における互いに周方向で隣り合う各一対のボルト挿通孔80,80の離隔距離が、アウタ筒金具14の3つの取付ボルト32,32,32における互いに周方向で隣り合う各一対の取付ボルト32,32の離隔距離と略同一とされている。
【0063】
そして、アウタ筒金具14のフランジ状部28が、車両ボデー22側の取付板部78に対して下面から重ね合わせられて、3つの取付ボルト32,32,32が取付板部78の3つのボルト挿通孔80,80,80に挿通されていると共に、各取付ボルト32に固定ナット82が螺着固定される。これにより、自動車用懸架装置60が自動車のサスペンション系の一部を構成して、自動車に装着されるようになっている。なお、本実施形態では、自動車の右側のリアサスペンションに適用される自動車用懸架装置60が図6に示されており、図6中の上下方向が、車両上下方向とされていると共に、図6中の左右方向が、車両の外内方向とされていて、車両への装着状態で、サスペンションアッパサポート10およびショックアブソーバ18の中心軸84が、上方から下方に向かって車両外方に所定の角度で傾斜せしめられている。
【0064】
このようにして自動車に装着されることによって、サスペンションアッパサポート10は、ショックアブソーバ18を車両ボデー22(取付板部78)に対して弾性的に連結支持せしめて、ショックアブソーバ18を通じて車輪側から車両ボデー22側に伝達される振動を軽減し得るようになっている。また、アッパサポート10は、サスペンションスプリング62も車両ボデー22に対して弾性的に連結支持せしめて、サスペンションスプリング62を通じて車輪側から車両ボデー22側に伝達される振動も低減し得るようになっている。
【0065】
そこにおいて、特に本実施形態では、サスペンションアッパサポート10が、ショックアブソーバ18の車両ボデー22への取付部位に装着されて、アウタ筒金具12のフランジ状部28が車両ボデー22にボルト固定される際に、こじり方向の荷重が大きくなる箇所が、各3つの上当接突起42aおよび下当接突起42bを避けて、各当接突起42の互いに周方向で隣り合う一対の当接突起42,42の周方向中央部分に位置せしめられた各3つの上控え突部44aおよび下控え突部44bの少なくとも一部に位置せしめられるようにして、アッパサポート10が装着されている。
【0066】
上述の如き構造とされたサスペンションアッパサポート10においては、バウンド荷重やリバウンド荷重が入力されると、初期状態でリバウンドストッパ部24およびバウンドストッパ部54に当接されている上当接突起42aおよび下当接突起42bが圧縮変形されることとなり、その弾性変形量が所定量の大きさに達した後に、リバウンドストッパ部24およびバウンドストッパ部54と軸方向に所定距離を隔てて対向位置せしめられていた上控え突部44aおよび下控え突部44bが、各ストッパ部24,54に当接されて圧縮変形されることとなる。従って、入力荷重が小さいときには、当接突起42による柔らかいばね特性が発揮されて、車両における良好な乗り心地が実現される一方、入力荷重が大きくなると、控え突部44がストッパ部に当接して硬いばね特性が発揮されることにより、優れた操縦安定性が発揮され得る。
【0067】
特に本実施形態では、上当接突起42aおよび下当接突起42bがそれぞれ周方向で略等間隔に3つ形成されていると共に、当接突起42が突出方向の先端側に行くに従って次第に細くなる先細形状とされていることによって、バウンド側乃至はリバウンド側で軸方向や軸直角方向、斜め方向、こじり方向等の各種の方向の荷重入力に応じて、当接突起42の弾性変形作用が有利に発揮され、柔らかいばね特性が十分に発揮され得る。
【0068】
さらに、各3つの上当接突起42aおよび下当接突起42bにおける互いに周方向で隣り合う中央部分に上控え突部44aおよび下控え突部44bが、それぞれ形成されていると共に、控え突部44が、所定面積の略平坦な突出先端面を備えた略台地形状とされている。これにより、ゴムボリュームが十分に確保された控え突部44が、周方向で隣り合う各一対の当接突起42,42の間の広いスペースにおいて、リバウンドストッパ部24およびバウンドストッパ部54に安定して当接して圧縮変形されることとなり、それによって、硬いばね特性が十分に発揮され得るのである。
【0069】
そこにおいて、本実施形態に従う構造とされたアッパサポート10では、上下の当接突起42a,42bや上下の控え突部44a,44bの各3つが、アウタ筒金具14のフランジ状部28に対してそれぞれ周方向で略等間隔に形成されていることによって、フランジ状部28における3つの取付ボルト32,32,32と各上下の当接突起42a,42bおよび控え突部44a,44bとの周方向の相対的な位置関係が規定されている。
【0070】
従って、サスペンションアッパサポート10を備えた懸架装置60の車両への装着に際して、アウタ筒金具14乃至はショックアブソーバ18が中心軸回りに回転して、各取付ボルト32が車両ボデー22に挿通される予定の各ボルト挿通孔80と異なるボルト挿通孔80に挿通されて、ボルト固定された場合にも、装着状態における各当接突起42や各控え突部44の車両ボデー22に対する配設位置が変わらないことから、目的とするばね特性や当接突起や控え突部の弾性変形作用が十分に発揮される。
【0071】
それ故、車両に組み付ける際に、各取付ボルトの車両ボデー22に対する取付位置を特別に配慮する必要がなくなって、組み付けが容易とされるのであり、しかも、所期の振動低減効果や異音抑制効果、非線形なばね特性に基づく操縦安定性が安定して得られるのである。
【0072】
また、本実施形態では、バウンド側とリバウンド側で入力される荷重のこじり方向が異なる自動車に対して適用されるものであるが、略等間隔に位置せしめられた各3つの上当接突起42aと下当接突起42bや上控え突部44aと下控え突部44bが、それぞれ周方向に異なる位相で形成されていることによって、バウンド側とリバウンド側で異なるこじり方向の荷重に対して各当接突起42乃至は控え突部44の弾性変形作用が巧く発揮されるように配置することが容易に可能となる。
【0073】
しかも、当該実施形態では、こじり方向の荷重が大きくなる箇所が、各3つの上当接突起42aおよび下当接突起42bを避けて、各当接突起42の互いに周方向で隣り合う一対の当接突起42,42の周方向中央部分に位置せしめられた各3つの上控え突部44aおよび下控え突部44bの少なくとも一部に位置せしめられるようにして、アッパサポート10が自動車に装着されている。
【0074】
その結果、上当接突起42aおよび下当接突起42bの局所的な応力や歪みが抑えられることとなって、当接突起42の耐久性能が十分に発揮されることに加え、リバウンドストッパ部24またはバウンドストッパ部54においてこじり荷重の大きい箇所が上控え突部44aまたは下控え突部44bに確実に当接されることとなり、大きなこじり荷重の入力に際して、当接突起42が圧縮変形した後に、ばね定数が急激に立ち上がるような現象が好適に抑えられる。それ故、振動乃至は異音の低減効果や乗り心地、操縦安定性等の更なる向上が図られ得るのである。
【0075】
また、本実施形態では、リバウンドストッパ部24を備えたインナ金具12が支持ゴム弾性体16の一体加硫成形品36における金属スリーブ34に圧入固定されると共に、インナ金具12の底部にバウンドストッパ金具52が固着されることによって、インナ金具12がアウタ筒金具14と支持ゴム弾性体16で弾性連結されていると共に、リバウンドストッパ部24およびバウンドストッパ部54と上当接突起42aおよび上控え突部44aや下当接突起42bおよび下控え突部44bとの位置関係が規定されている。
【0076】
すなわち、本実施形態に従えば、前述の特許文献1(特開平10−220519号公報)や特許文献2(特開2002−81503号公報)、特許文献3(特開2001−280400号公報)等に示される従来構造のアッパサポートのように、上下のストッパ部の一方が、アウタ筒金具と一体形成されてアウタ筒金具の軸方向一方の端部から内周側に突出すると共に、上下のストッパ部の他方が、平板形状とされてアウタ筒金具の軸方向他方の端部に設けられたフランジ状部に重ね合わせられてボルト等で固定されていることによって、上下のストッパ部が、インナ金具の軸方向両側に突設された各弾性突出部と、それぞれ軸方向で対向位置せしめた構造を採用する必要がない。それ故、かかる従来構造に比して、全体構造が簡略化されると共に、リバウンドストッパ部24やバウンドストッパ部54の一体加硫成形品36に対する組み付け位置が高度に規定されることから、製品安定性や製造コストの低減化が有利に図られ得るのである。
【0077】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、これはあくまでも例示であり、かかる実施形態における具体的な記載によって、本発明は、何等限定されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様で実施可能である。また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
【0078】
例えば、前記実施形態では、各周方向で隣り合う一対の当接突起42,42の間の周方向中央部分に控え突部44が形成されていたが、控え突部44はこれら一対の当接突起42,42の間においてかかる中央部分を外れた位置に設けられていても良い。
【0079】
また、当接突起42や控え突部44における形状や大きさ、構造、更にはそれら当接突起42や控え突部44のアウタ筒金具14の各取付ボルト32に対する相対的な位置関係等の形態が、例示の如きものに限定されるものでない。
【0080】
すなわち、本発明に係る当接突起42や控え突部44の形態は、装着される対象部材の配設スペースや要求される各種の荷重入力方向に対する特性に応じて、適宜に設定変更され得るものである。
【0081】
従って、前記実施形態では、上当接突起42aおよび下控え突部44bと上控え突部44aと下当接突起42bが、それぞれアウタ筒金具14を挟んで軸方向で対向位置せしめられていたが、前記実施形態に係る自動車と異なる車種やサスペンション構造に採用されてこじり方向の荷重が変更される場合等に応じて、例えば、上当接突起および下当接突起と上控え突部および下控え突部が、ぞれぞれアウタ筒金具14を挟んで軸方向で対向位置せしめられていたり、各3つの上下の当接突起および控え突部が、軸方向で対向位置せしめられていなくとも良い。
【0082】
また、前記実施形態では、インナ金具12が、支持ゴム弾性体16の内周面に加硫接着された金属スリーブ34に圧入固定されることによって、支持ゴム弾性体16に固定されていたが、例えば金属スリーブ34を採用せずに、支持ゴム弾性体に設けた嵌着孔にインナ金具を直接に圧入固定せしめることも可能である。
【0083】
また、前記実施形態では、各当接突起42と各控え突部44の間に平坦部46が形成されていたが、かかる平坦部46は必須の部材でなく、例えば当接突起や控え突部の形状や大きさ等の設計変更によって、当接突起と控え突部が周方向で隣り合うようにし、当接突起と控え突部の間に平坦部を設けないようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の一実施形態としてのサスペンションアッパサポートを示す縦断面説明図であって、図2のI−I断面に相当する図である。
【図2】図1におけるサスペンションアッパサポートを示す平面説明図である。
【図3】図1におけるサスペンションアッパサポートの一部を構成する第二の取付金具および金属スリーブを備えた支持ゴム弾性体の一体加硫成形品を示す平面説明図である。
【図4】図3におけるIV−IV断面図である。
【図5】図3における第二の取付金具および金属スリーブを備えた支持ゴム弾性体の一体加硫成形品を示す底面説明図である。
【図6】図1におけるサスペンションアッパサポートを自動車に装着した状態を示す縦断面説明図である。
【符号の説明】
【0085】
10 サスペンションアッパサポート
12 インナ金具
14 アウタ筒金具
16 支持ゴム弾性体
18 ショックアブソーバ
20 ピストンロッド
22 車両ボデー
24 リバウンドストッパ部
28 フランジ状部
30 ボルト嵌着孔
32 取付ボルト
42a 上当接突起
42b 下当接突起
44a 上控え突部
44b 下控え突部
54 バウンドストッパ部
62 サスペンションスプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
緩衝器のピストンロッドが取り付けられるインナ部材の軸直角方向外方に離隔して、車両ボデーに取り付けられるアウタ筒部材を配設せしめて、それらインナ部材とアウタ筒部材を支持ゴム弾性体で連結して、該緩衝器のピストンロッドを該車両ボデーに対してサスペンションスプリングから独立して弾性支持せしめるようにしたサスペンション用アッパサポートにおいて、
前記アウタ筒部材にフランジ状部を設けて該フランジ状部において車両ボデーに対する取付部を周方向で略等間隔に3つ設けると共に、前記インナ部材の軸方向両端部分で外周側に突出する上ストッパ部および下ストッパ部を設ける一方、前記支持ゴム弾性体において、該アウタ筒部材から軸方向上方および下方に突出して該インナ部材の該上ストッパ部および該下ストッパ部に当接する上当接突起および下当接突起をそれぞれ周方向で略等間隔に3つ形成すると共に、それら各3つの該上当接突起および該下当接突起における互いに周方向で隣り合う中間位置において、軸方向上方および下方に突出して該インナ部材の該上ストッパ部および該下ストッパ部に対して軸方向に所定距離を隔てて対向位置する上控え突部および下控え突部をそれぞれ形成すると共に、それら上控え突部および下控え突部をそれぞれ周方向で略等間隔に3つ位置決め配置したことを特徴とするサスペンション用アッパサポート。
【請求項2】
前記上当接突起および前記下当接突起が、何れも、突出方向の先端側に行くに従って次第に細くなる先細形状とされている請求項1に記載のサスペンション用アッパサポート。
【請求項3】
前記上控え突部および前記下控え突部が、何れも、所定面積の略平坦な突出先端面を備えた台地形状とされている請求項1又は2に記載のサスペンション用アッパサポート。
【請求項4】
前記アウタ筒部材においてそれぞれ周方向で略等間隔に3つ位置せしめられた前記上当接突起と前記下当接突起が周方向で互いに異なる位相で形成されている請求項1乃至3の何れかに記載のサスペンション用アッパサポート。
【請求項5】
前記上当接突起および前記下当接突起と前記上控え突部および前記下控え突部が、それぞれ前記アウタ筒部材を挟んで軸方向で対向位置せしめられている請求項1乃至3の何れかに記載のサスペンション用アッパサポート。
【請求項6】
前記支持ゴム弾性体が前記アウタ筒部材に加硫接着されていると共に、前記上当接突起や前記下当接突起が該支持ゴム弾性体と一体形成されている一方、該上下の当接突起が前記インナ部材の前記上下のストッパ部に対してそれぞれ当接状態で弾性変形して保持せしめられていることによって、これら上下の当接突起に予圧縮が及ぼされている請求項1乃至5の何れかに記載のサスペンション用アッパサポート。
【請求項7】
前記インナ部材を前記上下のストッパ部の何れか一方が端部に一体形成された筒状部材にて構成し、該インナ部材を前記支持ゴム弾性体に圧入固定して、該ストッパ部を、前記上下の当接突起の何れか一方に当接させると共に、前記上下の控え突部の何れか一方と軸方向で所定距離を隔てて対向位置せしめた請求項1乃至6の何れかに記載のサスペンション用アッパサポート。
【請求項8】
前記支持ゴム弾性体の内周面に中間スリーブを加硫接着して該中間スリーブに前記インナ部材を圧入固定した請求項7に記載のサスペンション用アッパサポート。
【請求項9】
サスペンションスプリングと緩衝器を含んで構成されており、車輪に連結されたサスペンションアーム等を車両ボデーに対して揺動可能に防振支持せしめた自動車用懸架装置において、
請求項1乃至8の何れかに記載のサスペンション用アッパサポートを前記緩衝器の前記車両ボデーへの取付部位に装着するに際して、該サスペンション用アッパサポートにおける前記上当接突起および前記下当接突起が、バウンド側およびリバウンド側に入力される各こじり方向の荷重が大きな位置を避けるように位置決めされたことを特徴とする自動車用懸架装置。
【請求項10】
前記サスペンション用アッパサポートにおける各3つの前記上当接突起および前記下当接突起の互いに周方向で隣り合う中央部分に前記上控え突部および前記下控え突部をそれぞれ形成すると共に、これら上控え突部および下控え突部が、バウンド側およびリバウンド側に入力される各こじり方向の荷重が大きな位置に位置決めされた請求項9に記載の自動車用懸架装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−264425(P2006−264425A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−82986(P2005−82986)
【出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】