説明

サスペンション装置

【課題】車室内容積を容易に大きく確保することができるサスペンション装置を提供することである。
【解決手段】本発明の課題解決手段は、棒状の捩じりばね部5と捩じりばね部5の一端5aから伸びる腕6とを備えたトーションバー1と、捩じりばね部5が挿通されるとともに腕6の回転が伝達される筒状の中空シャフト2と、中空シャフト2が回転自在に挿通されるとともに捩じりばね部5の他端に対して周方向へ回転不能な筒状のケース3と、ケース3に対して中空シャフト2の周方向への回転を抑制する減衰力発生機構4とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サスペンション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のサスペンション装置にあっては、直動片ロッド型の油圧ダンパと、油圧ダンパの外周に装着される懸架ばねとしてのコイルばねを備えて構成されて、車両の車体と車軸との間に介装されて使用される(特許文献1参照)。
【0003】
懸架ばねは、車体を弾性支持しており、車両走行中に路面の凹凸を乗り越える際に、車輪に生じた振動の車体への伝達を抑制する。しかしながら、懸架ばねは、振動エネルギを弾性エネルギとして一旦は吸収するが、その後、弾性エネルギを解放して車体を振動させ続けてしまうので、この振動を減衰するために油圧ダンパが懸架ばねに並列して設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−188548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、車両にはサスペンションやエンジンといった走行に必要な機器の他にも多くの電子機器が搭載されるようになっており、ハイブリッド車に至ってはエンジンの他にモータが搭載される。このように車両には様々な多くの機器が搭載される一方、車室内のスペースも大きく確保することが要望されている。機器量の増加は、車室スペースを減少させることになるため、個々の機器を小型化することが要望され、サスペンション装置についても同様に小型化することが望まれる。
【0006】
しかしながら、従来のサスペンション装置では、直動型の油圧ダンパと、油圧ダンパの外周に懸架ばねを配置する関係上、縦置きに使用しなくてはならず、これが車室内容積を圧迫している。また、油圧ダンパはピストンに内部圧力を作用させることで減衰力を発生する関係上、ピストン径の小型化には限界があり、ストローク長も確保する必要があるため、油圧ダンパの外径及び全長の小型化にも限度がある。また、油圧ダンパの小型化が難しいのでこの外周に配置される懸架ばねの外径の小型化もおのずと限界がある。このように、従来のサスペンション装置にあっては、縦置き配置で、これ以上の小型化が難しいことから、車室内容積を確保しづらいという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、上記した不具合を改善するために創案されたものであって、その目的とするところは、車室内容積を容易に大きく確保することができるサスペンション装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するために、本発明の課題解決手段は、棒状の捩じりばね部と当該捩じりばね部の一端から伸びる腕とを備えたトーションバーと、上記捩じりばね部が挿通されるとともに上記腕の回転が伝達される筒状の中空シャフトと、当該中空シャフトが回転自在に挿通されるとともに上記捩じりばね部の他端に対して周方向へ回転不能な筒状のケースと、当該ケースに対して中空シャフトの周方向への回転を抑制する減衰力発生機構とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のサスペンション装置によれば、縦置きにしか搭載できなかった従来のサスペンション装置と異なり、車両の邪魔にならない箇所へ搭載することができ、車室内を圧迫することがなく、車室内容積を容易に大きく確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】一実施の形態におけるサスペンション装置の縦断面図である。
【図2】一実施の形態におけるサスペンション装置の横断面図である。
【図3】一実施の形態におけるサスペンション装置を車両の車体と車輪との間に介装した状態を示す図である。
【図4】他例の減衰力発生機構を搭載したサスペンション装置の拡大横断面図である。
【図5】別例の減衰力発生機構を搭載したサスペンション装置の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。図1および図2に示すように、一実施の形態におけるサスペンション装置Sは、トーションバー1と、トーションバー1が挿通されるとともにこのトーションバー1に固定される筒状の中空シャフト2と、中空シャフト2が挿通される筒状のケース3と、ケース3に対して中空シャフト2の周方向への回転を抑制する減衰力発生機構4とを備えて構成されている。
【0012】
そして、このサスペンション装置Sは、図3に示すように、ケース3を車両における車体Bに固定し、トーションバー1を車輪Wに連結して使用され、捩じりばねであるトーションバー1が車体Bを弾性支持する懸架ばねとして機能し、トーションバー1が捩じられることで中空シャフト2がケース3に対して周方向へ相対回転し、当該中空シャフト2のケース3に対する相対回転を減衰力発生機構4で抑制することとで、車体Bと車輪Wの図中上下方向の相対変位を抑制するようになっている。
【0013】
以下、サスペンション装置Sの各部について詳細に説明する。トーションバー1は、棒状の捩じりばね部5と、当該捩じりばね部5の一端5aから垂直方向へ伸びる腕6とを備えて構成されている。そして、捩じりばね部5の他端5bをケース3に固定している。また、腕6の先端が車輪Wを回転自在に保持するナックルスピンドルNにヒンジ結合等によって回転可能に連結されている。なお、腕6は、トルクが作用した場合に、少なくとも、捩じりばね部5にこれをねじるトルクを作用させることができるようになっていればよいので、捩じりばね部5の軸線方向と一致しない方向へ伸びていればよく、捩じりばね部5とは別部品で構成して、捩じりばね部5の一端5aに固定できるようにしてもよい。さらに、トーションバー1は、図示したところでは、中実とされているが、捩じりばね部5の捩じり剛性と腕6の曲げ剛性を高めたい場合には、捩じりばね部5および腕6を筒状としてもよい。
【0014】
なお、上記したナックルスピンドルNは、車体Bに揺動可能に連結されたアッパーアーム10とロアアーム11とにヒンジ結合されており、これにより、車輪Wは、車体Bに対して図3中上下方向へ相対移動することができるようになっている。
【0015】
このように、車輪Wが車体Bへ相対移動すると、腕6がナックルスピンドルNを介して車輪Wに連結されていることから、車輪Wの動きに合わせて腕6の先端が図3中上下方向へ揺動する。他方、捩じりばね部5の他端5bは、ケース3に固定されていて、ケース3が上述のように車体Bに固定されているので、捩じりばね部5が捩じられて、腕6の揺動を抑制する弾発力を発揮するようになっている。この捩じりばね部5の弾発力を利用することで車体Bを車輪Wに対して弾性支持することができ、トーションバー1は懸架ばねとして機能する。上記したところでは、捩じりばね部5の他端5bをケース3に固定するようにしているが、ケース3にではなく、車体Bに固定してもよく、上記捩じりばね部5の他端5bがケース3に対して周方向へ回転不能となるようにトーションバー1とケース3とを連結すればよい。したがって、捩じりばね部5の他端5bがケース3に対して周方向へ回転不能であればよいから、捩じりばね部5の他端5bとケース3とを車体B等を介して間接的に連結してもよいのである。また、腕6は、ナックルスピンドルNの他、アッパーアーム10やロアアーム11と言った車輪Wと共に車体Bに対して揺動運動を呈するサスペンションアームに連結するようにしてもよい。
【0016】
つづいて、中空シャフト2は、筒状であって、内部に挿通される捩じりばね部5の一端5aに一端2aを固定して、トーションバー1と一体化されている。また、中空シャフト2の他端2bの内周には、トーションバー1の捩じりばね部5の他端5bの外周を回転自在に保持するベアリングとしてのボールベアリング7が装着されており、当該ねじりばね部5の捩じり運動を妨げないようになっている。ボールベアリング7を用いることで、中空シャフト2が捩じりばね部5の他端5bに対して滑らかに抵抗少なく回転することが可能となる利点がある。なお、捩じりばね部5の他端5bの外周を回転自在に保持するベアリングは、ボールやころを備えない筒状のベアリングとすることも可能である。
【0017】
さらに、ケース3は、この場合、有底筒状であって内周に中空シャフト2が挿通されており、ケース3の両端内周と中空シャフト2の両端外周の間には、筒状のスライドベアリング8,9と、環状のシール12,13が設けられていて、ケース3と中空シャフト2との間に環状隙間Rが形成されている。上記スライドベアリング8,9およびシール12,13は、ケース3の内周と中空シャフト2の外周の一方に固定して、他方に摺接するようになっており、ケース3の内周と中空シャフト2の外周のいずれに固定してもよい。
【0018】
また、ケース3は、車体Bへ取り付けることができるように、ブラケット3aを備えており、当該ブラケット3aを車体Bにボルト結合する等して、車体Bに軸方向を車両の前後方向へ沿わせて固定される。
【0019】
そして、ケース3の底部には、円形以外の形状の孔3bが設けられていて、当該孔3bには捩じりばね部5の他端5bに設けた嵌合部5cが嵌合している。この嵌合部5cは、その断面形状が上記孔3bの形状に符合する形状とされており、孔3bに嵌合すると、ケース3とねじりばね部5の他端5bとが互いに周方向へ回転不能に連結される。
【0020】
また、環状隙間Rは、上記シール12,13によって、密閉されており、内部には、粘性流体が充填されていて、中空シャフト2がケース3に対して周方向へ回転すると環状隙間R内の粘性流体の粘度によって、中空シャフト2のケース3に対する周方向の回転を抑制する。このように、この実施の形態にあっては、減衰力発生機構4は、中空シャフト2と、ケース3と、中空シャフト2とケース3との間に形成される環状隙間Rと、当該環状隙間R内に密封される粘性流体とで構成されており、中空シャフト2がケース3に対して周方向の回転運動を呈すると、当該回転運動を抑制する減衰力を発揮する。また、粘性流体は、油等の高粘度の液体を使用することができる。
【0021】
なお、中空シャフト2とケース3との間の環状隙間Rに磁気粘性流体を密封して、中空シャフト2とケース3とに異なる磁極を設けて環状隙間Rに磁界を作用させることで、粘度をさらに高めてより高い減衰力を発生するようにしてもよい。この場合、環状隙間Rへ磁界を作用させる磁界発生手段は、中空シャフト2とケース3に、それぞれ、異なる磁極同士が対向するように取り付けた磁石や電磁石でよく、電磁石を用いる場合には、磁界の大きさを変化させることで磁気粘性流体の粘度を制御して発生減衰力を調整することができる。このように、減衰力発生機構4は、中空シャフト2と、ケース3と、中空シャフト2とケース3との間に形成される環状隙間Rと、当該環状隙間R内に密封される磁気粘性流体と、環状隙間Rへ磁界を作用させる磁界発生手段とで構成される。
【0022】
また、中空シャフト2とケース3との間の環状隙間Rに電気粘性流体を密封して、中空シャフト2とケース3とに電位差を設けて環状隙間Rに電界を作用させることで、粘度をさらに高めてより高い減衰力を発生するようにしてもよい。この場合、環状隙間Rへ電界を作用させる電界発生手段は、中空シャフト2とケース3のいずれかを一方を接地し、他方に電圧を印加する構成であってもよいし、中空シャフト2とケース3とを電気的に接続してこれらの中間に電源を設ける構成とされてもよく、いずれにしても、印加電圧の大きさを変化させることで電気粘性流体の粘度を制御して発生減衰力を調整することができる。このように、減衰力発生機構4は、中空シャフト2と、ケース3と、中空シャフト2とケース3との間に形成される環状隙間Rと、当該環状隙間R内に密封される電気粘性流体と、環状隙間Rへ電界を作用させる電界発生手段とで構成される。
【0023】
さらには、図4に示すように、中空シャフト2の外周とケース3の内周の一方に中空シャフト2の外周とケース3の内周の他方へ摺接する隔壁14を設けておき、中空シャフト2の外周とケース3の内周の他方に中空シャフト2の外周とケース3の内周の一方へ摺接するベーン15を設けておき、当該隔壁14とベーン15で環状隙間R内を一方室R1と他方室R2に仕切り、当該一方室R1と他方室R2とを連通するとともに通過する流体に抵抗を与える減衰通路16を設けるようにしてもよい。この図4に示した減衰力発生機構4は、中空シャフト2と、ケース3と、中空シャフト2の外周とケース3の内周の一方に設けられて中空シャフト2の外周とケース3の内周の他方へ摺接する隔壁14と、中空シャフト2の外周とケース3の内周の他方に設けられて中空シャフト2の外周とケース3の内周の一方へ摺接するベーン15と、当該隔壁14とベーン15で環状隙間R内に仕切られた一方室R1と他方室R2と、当該一方室R1と他方室R2とを連通するとともに通過する流体に抵抗を与える減衰通路16とで構成される。
【0024】
この図4の減衰力発生機構4は、中空シャフト2がケース3に対して周方向へ反時計方向へ回転すると、一方室R1が圧縮され、他方室R2が拡大するので、一方室R1内の流体は、減衰通路16を介して他方室R2へ移動する。減衰通路16は、その途中に減衰弁16aを備えていて、通過する流体の流れに抵抗を与えるので、一方室R1内の圧力が上昇して一方室R1と他方室R2との間に差圧が生じて、この差圧をベーン15と隔壁14で受けて中空シャフト2のケース3に対する回転を抑制する減衰力を発揮する。反対に、中空シャフト2がケース3に対して周方向へ時計方向へ回転すると、他方室R2が圧縮され、一方室R1が拡大するので、他方室R2内の流体は、減衰通路16を介して一方室R1へ移動する。減衰通路16は、通過する流体の流れに抵抗を与えるので、他方室R2内の圧力が上昇して他方室R2と一方室R1との間に差圧が生じて、この差圧をベーン15と隔壁14で受けて中空シャフト2のケース3に対する回転を抑制する減衰力を発揮する。このように、図4に示した減衰力発生機構4にあっても、中空シャフト2のケース3に対する回転運動を抑制する減衰力を発揮することができる。なお、隔壁14とベーン15は、複数設けられていてもよく、周方向に交互に配置されればよい。また、減衰通路16は、設置箇所は任意で、隔壁14やベーン15の他に、中空シャフト2やケース3の肉内やケース3外に設置してもよく、さらに、複数設けられていてもよい。減衰通路16を複数設ける場合には、一部を一方室R1から他方室R2へ向かう流体の流れのみを許容するように設定して、残りを他方室R2から一方室R1へ向かう流体の流れのみを許容するように設定してもよく、中空シャフト2の回転方向によって減衰力特性(回転速度に対する減衰力の特性)を異ならしめるようにしてもよい。また、この図4の減衰力発生機構4においては、一方室R1と他方室R2に充填される流体は、油、水、水溶液、気体といった種々の流体を用いることができる。
【0025】
またさらには、図5に示すように、中空シャフト2の外周とケース3の内周の一方に磁石を設け、中空シャフト2の外周とケース3の内周の他方に磁石に対向するコイルを設けてもよい。この図5に示した減衰力発生機構4は、中空シャフト2と、ケース3と、中空シャフト2の外周とケース3の内周の一方に設けられた磁石17,18と、中空シャフト2の外周とケース3の内周の他方に設けられて磁石17,18に対向するコイル20とで構成された電磁ダンパである。なお、コイル20は、周方向に複数のスロットを持つ鉄心19に巻回されている。
【0026】
この図5の減衰力発生機構4は、中空シャフト2がケース3に対して周方向へ回転すると、磁石17,18で発生する磁界をコイル20が横切ることで、コイル20に誘起電力が生じて、コイル20に電流が流れて磁石17,18のコイル20に対する移動を抑制する電磁力が発生する。この電磁力を中空シャフト2のケース3に対する回転運動を抑制する減衰力として利用することで、減衰力発生機構4は、減衰力を発揮することができる。なお、減衰力発生機構4は、コイル20を短絡しておけば、減衰力を発揮することができるが、コイル20へ電力供給することで磁石17,18を回転させるようにすれば減衰力発生機構4をモータとしても機能させることができ、この減衰力発生機構4をアクチュエータとしても利用することができる。このように、減衰力発生機構4をアクチュエータとしても機能させることで、サスペンション装置Sをアクティブサスペンションとしても機能させることができる。
【0027】
サスペンション装置Sは、上記したように構成されるが、ケース3を車体Bに固定し、トーションバー1の腕6をナックルスピンドルNへ回転自在に連結することで、車両のサスペンションに組み込まれる。
【0028】
そして、車両の走行中に路面の凹凸を通過したり、路面のうねり等の通過によって、車輪Wが車体Bに対して上下方向へ振動させられると、腕6が車輪Wの上下動にあわせて揺動する。捩じりばね部5の他端5bは、車体Bへケース3を介して固定されているので、腕6の上下動に併せて、トーションバー1の捩じりばね部5が捩じられ、車輪Wの上下動を抑制する弾発力を発揮する。さらに、ケース3は車体Bに固定されているので、捩じりばね部5の一端5aに固定される中空シャフト2は、腕6の揺動角度とほぼ一致した角度だけ、腕6とともにケース3に対して腕6の揺動方向へ回転する。この中空シャフト2のケース3に対する周方向の回転によって減衰力発生機構4は、減衰力を発揮して中空シャフト2の回転運動を抑制する減衰力を発揮する。この減衰力は、中空シャフト2が捩じりばね部5の一端5aに固定されているので、腕6の上記揺動を抑制するように働き、車輪Wと車体Bの上下方向の相対移動が抑制される。
【0029】
また、トーションバー1における捩じりばね部5の他端5bは、ケース3を介して車体Bに連結されているので、腕6を車輪Wへ連結することで、車体Bの重量によって捩じりばね部5が捩じられて、これに拮抗する弾発力を発揮しており、トーションバー1は、車体Bを弾性支持する懸架ばねとして機能している。
【0030】
このように、このサスペンション装置Sは、懸架ばねとダンパの機能を兼ねており、ケース3をケース3の軸方向を車両の前後方向へ沿わせて車体に固定し、腕6を車輪Wやサスペンションアームに連結することで、車両に搭載することができる。これにより、本発明のサスペンション装置Sでは、縦置きにしか搭載できなかった従来のサスペンション装置と異なり、車両の邪魔にならない箇所へ搭載することができ、車室内を圧迫することがない。この結果、本発明のサスペンション装置によれば、車室内容積を容易に大きく確保することができる。
【0031】
さらに、このサスペンション装置Sは、懸架ばねにトーションバー1を利用することができ、全てをケース3内に収める構成となっているので、コイルばねを油圧ダンパの外周に設ける従来のサスペンション装置に比較して外径を小径とすることができ、省スペースとなる。
【0032】
なお、中空シャフト2は、捩じりばね部5の途中に固定されてもよいが、この実施の形態のように、中空シャフト2をトーションバー1の捩じりばね部5の腕6が設けられる一端5aに固定することで、腕6の揺動を中空シャフト2に効率よく伝達でき、減衰力の発生応答性の点で有利となるとともに、腕6の揺動角度に対して中空シャフト2のケース3に対する揺動角度にロスが生じにくいので、発生減衰力を大きくできる点でも有利となる。
【0033】
また、中空シャフト2は腕6の回転が伝達されるようにすればよいので、捩じりばね部5に固定するだけでなく、腕6に固定してもよいし、また、腕6の回転を増幅して伝達できるように、腕6と中空シャフト2との間、或いは、捩じりばね部5と中空シャフト2との間に減速機を介装するようにしてもよい。減速機としては、具体的にはたとえば、プラネタリギア等の歯車機構を用いることができる。プラネタリギアを用いる場合、腕6や捩じりばね部5に複数の遊星歯車を取り付け、中空シャフト2の外周にこれら遊星歯車の内周に位置してこれら遊星歯車に歯合する太陽歯車を設け、ケース3の内周にこれら遊星歯車の外周に配置されてこれら遊星歯車に歯合する内歯車を設けて、プラネタリギアを構成してもよいし、また、ケース3に複数の遊星歯車を取り付け、中空シャフト2の外周にこれら遊星歯車の内周に位置してこれら遊星歯車に歯合する太陽歯車を設け、腕6にこれら遊星歯車の外周に配置されてこれら遊星歯車に歯合する内歯車を設けて、プラネタリギアを構成してもよい。
【0034】
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、種々の用途のロータリダンパに利用でき、たとえば、車両のサスペンションに使用されるロータリダンパに利用することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 トーションバー
2 中空シャフト
2a 中空シャフトの一端
3 ケース
4 減衰力発生機構
5 捩じりばね部
5a 捩じりばね部の一端
5b 捩じりばね部の他端
6 腕
7 ベアリングとしてのボールベアリング
14 隔壁
15 ベーン
16 減衰通路
17,18 磁石
20 コイル
R 環状隙間
R1 一方室
R2 他方室
S サスペンション装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状の捩じりばね部と当該捩じりばね部の一端から伸びる腕とを備えたトーションバーと、上記捩じりばね部が挿通されるとともに上記腕の回転が伝達される筒状の中空シャフトと、当該中空シャフトが回転自在に挿通されるとともに上記捩じりばね部の他端に対して周方向へ回転不能な筒状のケースと、当該ケースに対して中空シャフトの周方向への回転を抑制する減衰力発生機構とを備えたことを特徴とするサスペンション装置。
【請求項2】
上記減衰力発生機構は、上記中空シャフトと上記ケースとの間に形成される環状隙間に粘性流体を密封して形成した粘性流体ダンパであることを特徴とする請求項1に記載のサスペンション装置。
【請求項3】
上記減衰力発生機構は、上記中空シャフトと上記ケースの一方に設けられて他方へ摺接する隔壁と、上記中空シャフトと上記ケースの他方に設けられて一方へ摺接して上記中空シャフトと上記ケースとの間に流体が充填される一方室と他方室とを区画するベーンと、上記一方室と上記他方室とを連通するとともに通過する流体の流れに抵抗を与える減衰通路とを備えたロータリダンパであることを特徴とする請求項1に記載のサスペンション装置。
【請求項4】
上記減衰力発生機構は、上記中空シャフトと上記ケースの一方に設けた磁石と、上記中空シャフトと上記ケースの他方に設けられて上記磁石に対向するコイルとを備えた電磁ダンパであることを特徴とする請求項1に記載のサスペンション装置。
【請求項5】
上記中空シャフトの一端を上記捩じりばね部の一端に固定するとともに、上記中空シャフトの他端内周に上記捩じりばね部の他端を回転自在に保持するベアリングを設けたことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のサスペンション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−187988(P2012−187988A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−52402(P2011−52402)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】