説明

サーボ制御装置

【課題】工作機械等に適用するサーボ制御装置において、送り機構や機械要素で発生する捩れや撓みに起因する遅れや振動を抑制する。
【解決手段】制御回路20,30と電流制御部3とサーボモータ1と送り機構10とテーブル2を含むサーボ制御系Iの周波数特性を測定する。しかも、テーブル2の移動範囲を多数に区分した各区間に対応して周波数特性を測定する。この周波数特性と逆特性となっている逆周波数特性を、各区間毎に求める。そして、実作業時には、テーブル2が位置している区間に対応した逆周波数特性をディジタルフィルタ121に設定する。そうすると、ディジタルフィルタ121とサーボ制御系Iを合わせた伝達関数が1となり、送り機構や機械要素で発生する捩れや撓みに起因する遅れや振動を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はサーボ制御装置に関し、工作機械等において、モータの回転運動を送り機構により直線運動に変換して移動体(テーブルやサドル)を直線移動させる場合に、送り機構や機械構造で発生する「捩れ」や「撓み」等に起因する遅れや振動を効果的に抑制することができるように工夫したものである。
【背景技術】
【0002】
工作機械では、サーボモータの回転運動を、送り機構により直線運動に変換して、移動体(テーブルやサドル)を直線移動させている。
【0003】
ここで図5を参照して、工作機械に使用されている送り機構10を説明する。
図5に示すようにサーボモータ1の回転運動を、直線運動に変換して、テーブル2を直線移動させるために、送り機構10が用いられている。
【0004】
送り機構10では、サーボモータ1の回転力が、ギヤ11を介してボールねじ軸12に伝達される。ボールねじ軸12は、支持部13a,13bによりベッド14上で回転自在に支持されている。テーブル2にはボールねじナット15が固定されており、ボールねじナット15がボールねじ軸12に螺合している。
したがって、サーボモータ1が回転駆動してボールねじ軸12が回転されると、ボールねじナット15及びこれに固定されているテーブル2が直線移動する。なお、ボールねじ軸12とボールねじナット15を合わせて、ボールねじ送り機構16が構成されている。
【0005】
サーボモータ1は、電流制御部3から指令電流指令Icに応じた電流が供給されて回転駆動する。またサーボモータ1には、パルスエンコーダ4が取り付けられており、パルスエンコーダ4は、サーボモータ1の回転速度を示すモータ速度信号ωMを出力する。
一方、位置検出器5は、テーブル2の位置を示す移動体位置信号θLを出力する。
モータ速度信号ωM及び移動体位置信号θLは、次に述べるように、テーブル2を位置制御するのに使用される。
【0006】
テーブル2を位置制御するには、古典制御理論を基にしたフィードバック制御が一般的に使用されており、更に、遅れ補償をするためにフィードフォワード制御が追加される。
【0007】
ここで、テーブル2をフィードバック制御するフィードバック制御回路20を備えたサーボ制御装置を、図6を参照して説明する。
図6に示すように、フィードバック制御回路20は、減算器21と、乗算器22と、減算器23と、比例積分演算器24を有している。
【0008】
減算器21は、テーブル2の目標移動位置を示す指令位置信号θと、移動体位置信号θLとの差である偏差位置信号Δθを出力する。
乗算器22は、偏差位置信号Δθに位置ループゲインKpを乗算して偏差速度信号ΔVを出力する。
減算器23は、偏差速度信号ΔVとモータ速度信号ωMとの偏差である指令速度信号Vを出力する。
【0009】
比例積分演算器24は、指令速度信号Vを比例積分演算して指令電流指令Icを出力する。即ち、比例積分演算器24は、速度ループ比例ゲインKVと速度ループ積分ゲインKViを用いて、Ic=V×(KV+KVi/s)という演算をして、指令電流指令Icを求めている。なお、sはラプラス演算子である(なお以降の説明においても「s」はラプラス演算子を示す)。
【0010】
サーボモータ1は、電流制御部3から電流制御信号Iに応じた電流が供給されて回転駆動する。
【0011】
結局、移動体位置信号θLをフィードバックして位置フィードバック制御を行うと共に、モータ速度信号ωMをフィードバックして速度フィードバック制御を行っている。
【0012】
ところでフィードバック制御回路20を用いてフィードバック制御をしていても、指令位置信号θが示す指令位置に対して、テーブル2の実際の位置(機械位置)は遅れて追従する。
【0013】
このような遅れを補償するため、図7に示すように、フィードフォワード制御回路30を追加することが行われている。
【0014】
フィードフォワード制御回路30は、微分器31と、乗算器32と、微分器33と、乗算器34と、加算器35,36を有している。
そして、指令位置信号θを微分して位置制御ループ遅れ補償係数αを掛けた位置フィードフォワード信号Xを、加算器35により偏差速度信号ΔVに加算している。更に、位置フィードフォワード信号Xを微分して速度制御ループ遅れ補償係数βを掛けた速度フィードフォワード信号Yを、加算器36により指令電流指令Icに加算している。
【0015】
このようにフィードフォワード制御回路30を用いてフィードフォワード制御を付加することにより、サーボモータ1の位置制御系及び速度制御系の遅れをほぼ完全に補償することができる。
【0016】
しかし、フィードバック制御にフィードフォワード制御を付加したとしても、送り機構10やテーブル2の撓みや捩れ等の動的な変形による遅れや振動は補償することができない。
例えば、ボールねじ送り機構16(ボールねじ軸12及びボールねじナット15)の剛性は有限であるため、軸移動などの運動時にはボールねじ送り機構16において捩れや撓みが発生し、これが加工精度の悪化の原因となっていた。
【0017】
そこで、モータや、ボールねじ送り機構や、移動体(テーブル等)を理論的にモデルにより近似し、そのモデルの逆特性となっている伝達関数(逆伝達関数)を備えた補償回路を備えてフィードフォワード補償する手法が提案されている(特許文献1,2参照)。
【0018】
図8はサーボモータ1とテーブル2をモデル化した制御回路であり、図9はサーボモータ1と、ボールねじ送り機構16(ボールねじ軸12及びボールねじナット15)と、テーブル2をモデル化した制御回路である。
【0019】
図8,図9に示すように、サーボモータ1の特性をモデル化して伝達関数で示すと、ブロック1−1とブロック1−2で示される。なお、JMはモータイナーシャを示し、DMはモータ粘性を示す。
ブロック1−1からはモータ速度信号ωMが出力され、ブロック1−2からはモータ位置信号θMが出力される。
【0020】
また移動体であるテーブル2の特性をモデル化して伝達関数で示すと、ブロック2−1とブロック2−2とブロック2−3とで示される。なお、JLは移動体(テーブル)のイナーシャを示し、DLは移動体(テーブル)の粘性を示し、CLは移動体(テーブル)のばね粘性を示し、KLは移動体(テーブル)のばね剛性を示す。
ブロック2−3からは移動体位置信号θLが出力される。
【0021】
更に、図9に示すように、ボールねじ送り機構16の特性をモデル化して伝達関数で示すと、ブロック16−1とブロック16−2とブロック16−3とで示される。なお、JBはボールねじ送り機構のイナーシャを示し、DBはボールねじ送り機構の粘性を示し、CBはボールねじ送り機構のばね粘性を示し、KBはボールねじ送り部のばね剛性を示す。
ブロック16−3からは送り機構位置信号θBが出力される。
【0022】
このようにして、サーボモータ1やテーブル2やボールねじ送り機構16をモデル化して伝達関数を求める。更に、この伝達関数の逆特性となっている伝達関数(逆伝達関数)特性を備えた補償回路を作製し、この補償回路を加えることで、送り機構10やテーブル2の撓みや捩れ等の動的な変形による遅れや振動を補償することが提案されている。
【0023】
【特許文献1】特許第3351990号公報
【特許文献2】特許第3739749号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
しかし、サーボモータ1やテーブル2やボールねじ送り機構16の特性を完全に近似したモデルを形成することは困難であり、また仮に完全に近似できたとしても、そのモデルにおける各部位の物理定数(イナーシャ、剛性、摩擦係数(粘性係数)、減衰係数など)を適正に把握することは困難であった。このため、逆伝達関数を備えた補償回路を付加したとしても、送り機構や機械構造において発生する捩れや撓み等の機械変形により発生する遅れを完全に補償することは難しいのが現状であった。
【0025】
本発明は、上記従来技術に鑑み、制御対象である送り系や機械系をモデル化して伝達関数を求め、その逆伝達関数特性を有する補償回路を付加するのではなく、制御回路から移動体(テーブルや、テーブル等の移動体に備えられ工具も含む)に至る周波数特性、即ち、制御回路,電流制御部,サーボモータ,送り機構及び移動体を含むサーボ制御系全体の周波数特性を把握して、サーボ制御装置全体として遅れを補償することができるようにした、サーボ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上記課題を解決する本発明の構成は、
サーボモータと、
前記サーボモータによる回転運動を直線運動に変換する送り機構と、
前記送り機構の直線運動により直線移動する移動体と、
位置フィードバック制御と速度フィードバック制御を少なくとも行い、指令位置信号で示す目標移動位置に前記移動体を移動させるための指令電流指令を出力する制御回路と、
前記指令電流指令に応じた電流を前記サーボモータに供給して前記サーボモータを回転駆動する電流制御部と、
を有するサーボ制御装置において、
前記制御回路よりも前段に配置されると共に逆周波数特性が設定されるようになっており、設定された前記逆周波数特性により前記指令位置信号を補償してから前記制御回路に送るディジタルフィルタと、
前記移動体の直線移動範囲を複数の区間に区分し、各区間毎に各区間に対応した逆周波数特性が記憶されており、前記移動体の位置を示す位置信号が入力されると、その位置信号で示す位置が含まれる区間に対応して記憶した逆周波数特性を、前記ディジタルフィルタに設定する逆周波数特性記憶・設定装置とを有し、
前記逆周波数特性の演算は、前記移動体を各区間に位置させた状態において、前記制御回路にsin波スイープ加振信号を入力したときに、前記移動体の位置を示す位置信号であるsin波スイープ加振出力信号を検出し、前記sin波スイープ加振信号と前記sin波スイープ加振出力信号を基に、前記制御回路から前記移動体に至る周波数特性を演算し、演算した周波数特性からその逆特性となっている逆周波数特性を各区間毎に求めていることを特徴とする。
【0027】
また本発明の構成は、
前記移動体の位置を示す位置信号とは、前記移動体の位置を検出する位置検出器から出力される移動体位置信号であること、
または、前記移動体の位置を示す位置信号とは、前記移動体に備えられたセンサから出力される位置信号であること、
または、前記移動体の位置を示す位置信号とは、前記移動体に取り付けた工具に備えたセンサから出力される位置信号であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、制御回路から移動体に至る系の周波数特性と逆の特性となっている逆周波数特性を有するディジタルフィルタを、制御回路よりも前段に配置した。このため、全体としての伝達関数が1となり、送り機構や機械要素で発生する捩れや撓みに起因する遅れや振動を抑制することができ、正確なサーボ制御を行うことができる。
したがって、工作機械のサーボ制御装置に本発明を適用すると、加工精度の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下に本発明を実施するための最良の形態を実施例に基づき詳細に説明する。
【実施例1】
【0030】
本発明の実施例1に係る工作機械のサーボ制御装置を、図1及び図2を参照して説明する。
【0031】
まず最初に図1を参照して、サーボ制御系Iの周波数特性を測定・演算して、その周波数特性の逆周波数特性を求める手法を先に説明する。
サーボ制御系Iとは、制御回路(フィードバック制御回路20a及びフィードフォワード制御回路30),電流制御部3,サーボモータ1,送り機構10及び移動体(テーブル2等)を含む構成系統をいう。
このようにサーボ制御系Iの周波数特性を測定・演算して、その逆周波数特性を求める工程は、工作機械で実作業をする前の段階で行う。
【0032】
なお図1に示すフィードバック制御回路20aは、図6及び図7に示すフィードバック制御回路20と略同じ構成となっている。
異なる部分は、フィードバック制御回路20では、パルスエンコーダ4から出力されたモータ速度信号ωMを用いて速度フィードバック制御をしているが、フィードバック制御回路20aでは、モータ1のモータ位置信号θMを微分器25で微分して得たモータ速度信号ωMを用いて速度フィードバック制御をしている点である。
フィードバック制御回路20aの他の部分の構成は、フィードバック制御回路20と同じであり、更に、サーボ制御系Iの他の部分は図6,図7に示すものと同じであるので、図6,図7に示すものと同一機能を果たす部分には同一符号を付して重複する説明は省略する。
【0033】
周波数特性測定装置100は、sin波スイープ加振信号源101からsin波スイープ加振信号S1を出力し、このsin波スイープ加振信号S1を、加算器110を介して、サーボ制御系Iのフィードバック制御回路20a及びフィードフォワード制御回路30に入力する。
なおsin波スイープ加振信号S1は、波形がsin波であり、その周波数が低周波数から高周波数にまで時間の経過と共に漸増する信号である。
【0034】
このようにしてsin波スイープ加振信号S1をサーボ制御系Iに入力すると、位置検出器5から出力される移動体位置信号θLが変動し、この変動した移動体位置信号θLをsin波スイープ加振出力信号S2とする。
このsin波スイープ加振出力信号S2は、sin波スイープ加振出力信号入力部102を介して周波数特性測定装置100に取り込まれる。
【0035】
サーボ制御系Iの周波数特性を演算する周波数特性演算部103は、サーボ制御系Iに入力したsin波スイープ加振信号S1と、サーボ制御系Iから出力されたsin波スイープ加振出力信号S2を基に、サーボ制御系I(即ち、制御回路20a,30から移動体(テーブル2)に至る系統)の周波数特性である周波数ゲイン特性と周波数位相特性を演算する。
【0036】
この場合、移動体であるテーブル2の直線移動範囲を複数の区間に区分し、指令位置信号θにより、テーブル2の位置を各区間内に位置させる。
そして、テーブル2を各区間内に位置させた各状態において、sin波スイープ加振信号S1をサーボ制御系Iに入力して、その時にサーボ制御系Iから出力されたsin波スイープ加振出力信号S2を取り込み、各区間毎に対応したサーボ制御系Iの周波数特性を演算する。
【0037】
周波数特性記憶部104は、演算されたサーボ制御系Iの周波数特性を、各区間毎に対応させて記憶する。
【0038】
逆周波数特性演算・記憶部105は、各区間毎に対応したサーボ制御系Iの周波数特性から、それぞれ逆周波数特性を演算する。即ち、各区間毎に対応した逆周波数特性を演算する。更にこのようにして演算した逆周波数特性を各区間毎に対応して記憶する。
なお、逆周波数特性の周波数ゲイン特性と周波数位相特性は、元の周波数特性の周波数ゲイン特性と周波数位相特性の逆の特性になっている。
【0039】
次に図2を参照して実施例1に係る工作機械のサーボ制御装置を説明する。
実施例1では、サーボ制御系Iと周波数特性測定装置100の他に、逆周波数特性記憶・設定装置120とディジタルフィルタ121が備えられている。
なお図2の状態は、工作機械により実作業をしている状態であり、このときには、周波数特性測定装置100による周波数特性測定は行わない。
【0040】
逆周波数特性記憶・設定装置120には、周波数特性測定装置100の逆周波数特性演算・記憶部105に既に記憶されている「各区間毎に対応したサーボ制御系Iの逆周波数特性」が伝送されて、この「各区間毎に対応したサーボ制御系Iの逆周波数特性」が記憶される。
更に、逆周波数特性記憶・設定装置120には、移動体位置信号θLが入力される。
【0041】
逆周波数特性記憶・設定装置120は、入力された移動体位置信号θLを基に、移動体であるテーブル2の直線移動範囲を複数に区分した区間のうちの、どの区間にテーブル2が位置しているかを判定する。
そして判定した区間に対応するサーボ制御系Iの逆周波数特性を、ディジタルフィルタ121に設定する。
【0042】
ディジタルフィルタ121は、サーボ制御系Iの制御回路20a,30よりも前段に配置されており、指令位置信号θを、設定された逆周波数特性により補償してから、サーボ制御系Iに送っている。つまり、指令位置信号θを逆周波数特性となっているフィルタによりフィルタリングしてから、サーボ制御系Iに送っている。
なお、ディジタルフィルタ121に、逆周波数特性記憶・設定装置120から、新たな逆周波数特性が設定されると、以前に設定されていた逆周波数特性は消去され、最新の逆周波数特性が設定されるようになっている。
【0043】
したがって、テーブル2が移動していったときには、テーブル2が位置する区間に対応した逆周波数特性が、ディジタルフィルタ121に次々と設定されていく。
【0044】
ディジタルフィルタ121とサーボ制御系Iとを連結した系統を、補償サーボ制御系IIとすると、補償サーボ制御系IIの伝達関数は1となる。
これは、ディジタルフィルタ121には、サーボ制御系Iの周波数特性に対して逆特性となっている逆周波数特性(テーブル2が位置する区間に対応する逆周波数特性)が設定されているからであり、サーボ制御系Iの周波数特性とディジタルフィルタ121の逆周波数特性とが直列的に連結した補償サーボ制御系の伝達関数が1となるのである。
【0045】
このように補償サーボ制御系IIの伝達関数が1となるため、指令位置信号θに対する制御対象(テーブル2)の遅れは0となる。
この結果、送り機構10やテーブル2で発生する捩れや撓み等に起因する遅れや振動を効果的に抑制することができる。
【0046】
このように本実施例では、制御対象をモデル化により近似するのではなく、周波数特性によりその応答性を捉え、その逆周波数特性を有するディジタルフィルタ121をサーボ制御系Iの前段に挿入することにより、制御対象において発生する機械要素の撓みや捩れに起因する遅れや振動をより正確に抑制することが可能となる。
しかも、逆周波数特性は簡単かつ正確に求めることができるので、本実施例を実機に対して確実・容易に適用することができる。
【実施例2】
【0047】
次に本発明の実施例2に係るサーボ制御装置を図3を参照して説明する。
実施例2のフィードバック制御回路20bは、セミクローズド制御になっている。即ち、位置フィードバック制御をするためにフィードバックする信号として、移動体位置信号θLではなくモータ位置信号θMを採用している。
【0048】
また、加速度センサや変位センサなどのセンサ40を、テーブル2の端部に設置し、このセンサ40から出力される位置信号θsを、移動体(テーブル2)の位置を示す位置信号として用いている。
なお、センサ40として加速度センサなどを用いる場合には、移動体(テーブル2)の位置を正確に検出できないこともあるため、この場合には逆周波数特性記憶・設定装置120には移動体(テーブル2)の位置を判定するための信号としてモータ位置信号θMが入力される。
他の部分の構成は、図1に示す実施例1と同様である。
【0049】
実施例2も実施例1と同様に、逆周波数特性を有するディジタルフィルタ121をサーボ制御系Iの前段に挿入することにより、制御対象において発生する機械要素の撓みや捩れに起因する遅れや振動をより正確に抑制することが可能となる。
また実施例2では、機械(テーブル)の端部に機械位置を検出する位置検出器が無いセミクローズドループでも、本願発明を適用することができる。
【実施例3】
【0050】
次に本発明の実施例3に係るサーボ制御装置を図4を参照して説明する。
実施例3では、移動体に備えた工具41に、加速度センサや変位センサなどのセンサ42を設置し、このセンサ42から出力される位置信号θs1を、移動体(テーブル2)の位置を示す位置信号として用いている。
なお、実施例3においてもセンサ40として加速度センサなどを用いる場合には、移動体(テーブル2)の位置を正確に検出できないこともあるため、この場合には逆周波数特性記憶・設定装置120には移動体(テーブル2)の位置を判定するための信号として移動体位置信号θLが入力される。
他の部分の構成は、図1に示す実施例1と同様である。
【0051】
実施例3も実施例1と同様に、逆周波数特性を有するディジタルフィルタ121をサーボ制御系Iの前段に挿入することにより、制御対象において発生する機械要素の撓みや捩れに起因する遅れや振動をより正確に抑制することが可能となる。
また実施例3では、工具41もサーボ制御系Iに含め、サーボ制御系Iの周波数特性は制御回路20,30から工具41に至る特性としているため、移動に伴う工具41の変位や振動も抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明のサーボ制御装置は、工作機械に適用されるサーボ制御装置のみならず、移動体(負荷)の位置をサーボ制御する各種のサーボ制御装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】サーボ制御系及び周波数特性測定装置を示すブロック構成図。
【図2】本発明の実施例1に係るサーボ制御装置を示すブロック構成図。
【図3】本発明の実施例2に係るサーボ制御装置を示すブロック構成図。
【図4】本発明の実施例3に係るサーボ制御装置を示すブロック構成図。
【図5】送り機構を示す構成図。
【図6】従来のサーボ制御装置を示すブロック構成図。
【図7】従来のサーボ制御装置を示すブロック構成図。
【図8】制御対象をモデル化して表した従来のサーボ制御装置を示すブロック構成図。
【図9】制御対象をモデル化して表した従来のサーボ制御装置を示すブロック構成図。
【符号の説明】
【0054】
1 サーボモータ
2 テーブル
3 電流制御部
4 パルスエンコーダ
5 位置検出器
10 送り機構
20 フィードバック制御回路
30 フィードフォワード制御回路
40,42 センサ
41 工具
100 周波数特性測定装置
120 逆周波数特性記憶・設定装置
121 ディジタルフィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーボモータと、
前記サーボモータによる回転運動を直線運動に変換する送り機構と、
前記送り機構の直線運動により直線移動する移動体と、
位置フィードバック制御と速度フィードバック制御を少なくとも行い、指令位置信号で示す目標移動位置に前記移動体を移動させるための指令電流指令を出力する制御回路と、
前記指令電流指令に応じた電流を前記サーボモータに供給して前記サーボモータを回転駆動する電流制御部と、
を有するサーボ制御装置において、
前記制御回路よりも前段に配置されると共に逆周波数特性が設定されるようになっており、設定された前記逆周波数特性により前記指令位置信号を補償してから前記制御回路に送るディジタルフィルタと、
前記移動体の直線移動範囲を複数の区間に区分し、各区間毎に各区間に対応した逆周波数特性が記憶されており、前記移動体の位置を示す位置信号が入力されると、その位置信号で示す位置が含まれる区間に対応して記憶した逆周波数特性を、前記ディジタルフィルタに設定する逆周波数特性記憶・設定装置とを有し、
前記逆周波数特性の演算は、前記移動体を各区間に位置させた状態において、前記制御回路にsin波スイープ加振信号を入力したときに、前記移動体の位置を示す位置信号であるsin波スイープ加振出力信号を検出し、前記sin波スイープ加振信号と前記sin波スイープ加振出力信号を基に、前記制御回路から前記移動体に至る周波数特性を演算し、演算した周波数特性からその逆特性となっている逆周波数特性を各区間毎に求めていることを特徴とするサーボ制御装置。
【請求項2】
請求項1のサーボ制御装置において、
前記移動体の位置を示す位置信号とは、前記移動体の位置を検出する位置検出器から出力される移動体位置信号であることを特徴とするサーボ制御装置。
【請求項3】
請求項1のサーボ制御装置において、
前記移動体の位置を示す位置信号とは、前記移動体に備えられたセンサから出力される位置信号であることを特徴とするサーボ制御装置
【請求項4】
請求項1のサーボ制御装置において、
前記移動体の位置を示す位置信号とは、前記移動体に取り付けた工具に備えたセンサから出力される位置信号であることを特徴とするサーボ制御装置

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−123018(P2010−123018A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−297580(P2008−297580)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】