説明

シリコンウェーハの表面浄化方法

【課題】少ない薬品の使用量で、ウェーハ表面に付着した有機物および金属等の微粒子をより精度高く除去することができるシリコンウェーハの表面浄化方法を提供する。
【解決手段】オゾンガスをウェーハ表面に接触させ、ウェーハ表面に酸化膜を形成させ(ステップS1)、フッ化水素ガスをウェーハ表面に接触させ、ウェーハ表面に形成された酸化膜を除去し(ステップS2)、シュウ酸またはクエン酸のジカルボン酸の薬液を用いてウェーハ表面を洗浄し、微粒子の再付着防止と金属粒子の除去とを行い(ステップS3)、さらに、オゾン水を用いてウェーハ表面を洗浄して微粒子を除去するとともに、更なる酸化膜の形成を行う(ステップS4)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンウェーハの表面浄化方法に関し、特に、シリコンウェーハ表面に付着した有機物および金属等の微粒子を除去するのに好適な表面浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンウェーハ(以下、「ウェーハ」とも呼ぶ)の製造工程では、種々の製造プロセスの前後でウェーハの洗浄を行う。例えば、エピタキシャル成長処理前には、研磨工程で残留したシリカの砥粒や装置から付着した有機物等の微粒子を除去するために、枚葉洗浄として、オゾン水とフッ酸水とを用いて繰り返し洗浄を行っている。この表面浄化方法は、ウェーハを回転させながらウェーハの表面にオゾン水とフッ酸水とを交互に供給し、ウェーハ表面に付着した有機物や金属などの微粒子を薬液とともに洗浄除去するものである。
【0003】
また、酸化性ガスをウェーハに接触させてウェーハ表面上に酸化膜を形成し、その後、ウェーハを有機溶剤蒸気と水蒸気との混合蒸気に接触させて、ウェーハ上に混合蒸気の液膜を形成した状態で、エッチングガスをウェーハに接触させて酸化膜をエッチングして除去することによって、ウェーハを洗浄する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−19787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、オゾン水とフッ酸水とを用いた従来の表面浄化方法では、液体の有する表面張力のために、ウェーハ表面に存在する微小な凹部の中や微粒子の裏側まで薬液が入り込むことができず、付着した微粒子、特に、小さいサイズの粒子の除去が不十分であった。また、ウェーハ表面を清浄化するには相当量の薬液が必要となり、高コストになるという問題点があった。
【0006】
また、酸化膜を形成するために酸化性ガスを用いる特許文献1に記載の方法では、酸化膜を除去する工程の前に、有機溶剤蒸気と水蒸気とをウェーハに接触させてウェーハ上に液膜を形成する。しかし、エッチングガスの分子は液膜内に均等に浸透しないため、エッチングが面内均一に進行せず、微粒子のウェーハからの離間(リフトオフ)が効率的に行われないという問題点を有する。
【0007】
したがって、これらの点に着目してなされた本発明の目的は、少ない薬液の使用量で、ウェーハ表面に付着した有機物および金属等の微粒子をより残留微粒子が少なくなるように除去することができるシリコンウェーハの表面浄化方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明に従うシリコンウェーハの表面浄化方法は、
酸化作用のあるガスをシリコンウェーハの表面に接触させて、該ウェーハ表面を含む表層を第1の酸化膜とする第1表層改質処理工程と、
エッチング作用のあるガスを前記ウェーハ表面に接触させて、前記第1の酸化膜を除去する表層除去工程と、
酸化作用のある薬液を、前記第1の酸化膜を除去したウェーハ表面に接触させて該ウェーハ表面に残存する微粒子の除去と第2の酸化膜の形成を行う第2表層改質処理工程と
を有することを特徴とするものである。
【0009】
上述のシリコンウェーハの表面浄化方法においては、酸化作用のあるガスは、オゾンガスであることが好ましい。
【0010】
上述のエッチング作用のあるガスは、フッ化水素含有ガスであることが好ましい。さらに、フッ化水素含有ガスに、メタノール、エタノール、または、イソプロピルアルコールの蒸気などを含有させる、あるいはクエン酸ガス、または、シュウ酸ガスを含有させる、あるいは、メタノール、エタノール、または、イソプロピルアルコールの蒸気のいずれかと、クエン酸ガス、または、シュウ酸ガスのいずれかを含有させることが好適である。
【0011】
また、酸化作用のある薬液は、オゾン水または過酸化水素水であることが好ましい。
【0012】
さらに、本発明の実施形態としては、第2表層改質処理工程に続いて、純水によりシリコンウェーハを洗浄する純水リンス工程と洗浄したシリコンウェーハを乾燥させる乾燥工程とをさらに有することが好ましい。
【0013】
また、表層除去工程と第2表層改質処理工程との間に、有機酸の薬液を用いてウェーハ表面を洗浄し、金属粒子の除去を行う有機酸リンス工程をさらに有することが好ましく、有機酸の薬液は、シュウ酸、クエン酸、コハク酸、エチレンジアミン四酢酸、酒石酸、サリチル酸、ギ酸、マレイン酸、プロピオン酸、酢酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、安息香酸、アクリル酸、アジピン酸、マロン酸、リンゴ酸、グリコール酸、フタル酸、テレフタル酸あるいはフマル酸であることが好適である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、酸化作用のあるガスをウェーハ表面に接触させて、該ウェーハ表面を含む表層を第1の酸化膜とし、次いで、エッチング作用のあるガスをウェーハ表面に接触させて、第1の酸化膜を除去し、さらに、酸化作用のある薬液を用いてウェーハ表面に残留する微粒子の除去と、第2の酸化膜の形成を行うようにしたので、少ない薬品の使用量で、ウェーハ表面に付着した有機物および金属等の微粒子をより残留微粒子が少なくなるように除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る方法を実施する際に使用する洗浄装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図1の洗浄装置本体の概略構成図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る方法を実施する際の手順を示すフローチャートである。
【図4】シリコンウェーハの表面浄化原理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施の形態について、図1〜図4を参照して説明する。
【0017】
先ず、図1および図2を参照して、本発明の洗浄方法を適用する際に使用する洗浄装置の構成を説明する。図1は、本発明の一実施の形態に係る方法を実施する際に使用する洗浄装置の概略構成を示すブロック図である。また、図2は、図1の洗浄装置本体の概略構成図である。
【0018】
ウェーハ洗浄装置10は、図1に示すように、研磨後のウェーハが装填される密閉可能な枚葉式の洗浄装置本体11と、オゾンガスを供給する第1ガス供給管系12と、洗浄装置本体11に窒素ガスまたは窒素ガスとフッ化水素ガスおよび/もしくは有機溶剤蒸気との混合ガスを供給するための第2ガス供給管系13と、オゾン水、有機酸薬液、または純水を供給するための液系供給管系14とを備える。
【0019】
第1ガス供給管系12は、オゾンガス供給部16、オゾンガス供給部16と洗浄装置本体11とを連結する配管17、および、配管17に配設された流量調節器18を備える。
【0020】
また、第2ガス供給管系13は、窒素ガス供給部20とフッ化水素ガス供給部21と有機溶剤蒸気供給部22とを有する。窒素ガス供給部20は、配管23を介して洗浄装置本体11と接続しており、配管23の窒素ガス供給部20および洗浄装置本体11側のそれぞれの元部には開閉弁24および流量調節器25が配設されている。配管23の開閉弁24および流量調節器25の間には、それぞれ、一端がフッ化水素ガス供給部21および有機溶剤蒸気供給部22に接続された配管26および配管27の他端が接続されている。さらに、配管26および配管27には、それぞれ開閉弁28および開閉弁29が設けられている。
【0021】
また、液系供給管系14は、配管31、有機酸薬液供給部32、オゾン水供給部33および純水供給部34を備える。配管31は一端が洗浄装置本体11内のノズルに連通し、他方の端部側は3つに分岐してそれぞれ、有機酸薬液供給部32、オゾン水供給部33および純水供給部34に接続される。さらに、配管31の3つに分岐した部分には、それぞれ、流量調節器35、36および37が配設されている。
【0022】
洗浄装置本体11内の洗浄処理チャンバ40は、図2に示すように、ウェーハ41を装填するためのステージ42を有する。ステージ42は、ウェーハ41を端面で支持するウェーハ支持部43と、ステージの下部中央から下方へ延びるシャフト44を有する。シャフト44は図示しない回転モータに接続され、該モータの回転駆動によりステージ42を任意の速度で回転させることができる。また、洗浄処理チャンバ40には、流量調節器18を介して配管17が連通し、第1ガス供給管系12よりオゾンガスが供給され、流量調節器25を介して配管23が連通し、第2ガス供給管系12より窒素ガス、フッ化水素ガス、有機溶剤蒸気が供給される。さらに、洗浄処理チャンバ40内のウェーハ41の上方には配管31に接続されたノズル45の先端が設けられ、流量調節器35、36または37を介して液系供給管系14よりオゾン水、有機酸薬液、または、純水をウェーハ上面に供給する。また、洗浄処理チャンバ40の下部には、開閉弁46を介して排ガスを排気する排気管47と、開閉弁48を介して廃液を排出する廃液管49が連通している。
【0023】
次に、図1、図2に加え、図3および図4を参照して、本発明に係るウェーハ表面浄化方法を説明する。図3は、本実施の形態に係るウェーハ表面浄化方法を実施する際の手順を示すフローチャートである。また、図4は、本発明の方法によるシリコンウェーハの表面浄化原理を説明する図であり、図4(a)−(d)は、洗浄処理の所定の段階におけるシリコンウェーハの一部の垂直断面図である。
【0024】
本実施の形態のシリコンウェーハの表面浄化方法は、以下の手順に従って実施する。先ず、ウェーハ洗浄装置10のチャンバ内のステージ42に洗浄対象のシリコンウェーハ41を装填する。次に、流量調節器18を操作して、配管17を介してオゾンガス供給部16から酸化作用のあるガスであるオゾンガスを洗浄装置本体11内に導入し、これをウェーハ41の表面に接触させ、該ウェーハ表面を含む表層に酸化膜(第1の酸化膜)を形成する第1表層改質処理工程を行う(ステップS1)。
【0025】
図4(a)に示すように、第1表層改質処理後には、微粒子52が固着しているシリコンウェーハ41の表面を含む表層が、第1の酸化膜である酸化膜53となっている。気体であるオゾンガス54が微粒子52の下側に回り込むことによって、微粒子52の下側にも酸化膜が形成されている。
【0026】
酸化作用のあるガスにオゾンガスを用いる場合の濃度は、好ましくは、50〜300g/mである。オゾンガスの濃度が50g/mより低いと、ウェーハ表面上に十分な厚さの酸化膜が形成されず、300g/mより高いと表面状態の悪化に繋がる恐れがある。また、ウェーハ洗浄装置にオゾンガスを供給する時間は、好ましくは、5秒以上である。ガス供給時間を5秒より短くすると、ウェーハ表面上に十分な厚さの酸化膜が形成できない恐れがある。ここで、次工程のエッチング工程時における微粒子とウェーハとの離間距離を確保する観点から、10Å以上の酸化膜を形成することが望ましい。
【0027】
次に、開閉弁24および流量調節器25を操作して、配管23を介して窒素ガス供給部20から窒素ガスを洗浄処理チャンバ40内に導入することにより、排気管47を介してオゾンガスを洗浄処理チャンバ40内から排出する。その後、フッ化水素ガス供給部21から配管26および23を介してエッチング作用のあるガスである、フッ化水素含有ガスを洗浄処理チャンバ40内に導入して、シリコンウェーハ41の表面に接触させてエッチングを行いウェーハ上の酸化膜を除去する表層除去工程を行う(ステップS2)。これによって、図4(b)に示すように、微粒子52はシリコンウェーハ41と離間(リフトオフ)される。
【0028】
エッチング作用のあるガスとしては、無水フッ化水素ガスを用いることが好ましい。フッ化水素ガスは、窒素ガスに混合して供給され、そのガス濃度は、1000〜400000ppmが好ましい。フッ化水素ガスのガス濃度が、1000ppmよりも低いと、ウェーハ表面の酸化膜が十分にエッチングされ難く、400000ppmよりも高いと、腐食性が高くなる。この時のppmとは体積比を表したものであり、10000ppmは1vol%である。また、ウェーハ洗浄装置にフッ化水素ガスを供給する時間は、好ましくは、10秒以上である。ガス供給時間を10秒より短くすると、ウェーハ表面上の酸化膜を十分にエッチング除去することが困難となる。
【0029】
また、フッ化水素ガスに、メタノール、エタノール、または、イソプロピルアルコールの蒸気などを含有させることにより乾燥効果を高めることができ、フッ化水素含有ガスに、クエン酸ガス、または、シュウ酸ガスを含有させることにより、微粒子52の電位が安定化し、微粒子52の除去効果を高めることができる。これらの有機溶剤のガスは、配管27および23を介して有機溶剤蒸気供給部22から洗浄処理チャンバ40に供給される。
【0030】
さらに、ステップ2で導入されたフッ化水素ガス雰囲気下で、シリコンウェーハ41が装填されたステージ42を回転させながら、有機酸薬液供給部32から配管31およびノズル45を介してシリコンウェーハ41上に有機酸の薬液を供給することによって、ウェーハ表面のリンス工程を行う(ステップS3)。これによって、微粒子の再付着を防止し、金属粒子の除去を行う。
【0031】
有機酸の薬液としては、シュウ酸、クエン酸、コハク酸、エチレンジアミン四酢酸、酒石酸、サリチル酸、ギ酸、マレイン酸、プロピオン酸、酢酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸 、エナント酸、カプリル酸、安息香酸、アクリル酸、アジピン酸、マロン酸、リンゴ酸、グリコール酸、フタル酸、テレフタル酸あるいはフマル酸を用いることが好ましい。特に、ウェーハ表面の金属粒子の除去効果を向上させる観点から、電位を持ち非イオン性であるジカルボン酸を用いることが望ましく、シュウ酸あるいはクエン酸等を用いることが好ましい。
【0032】
なお、有機酸の薬液を用いたウェーハ表面のリンス工程は、省略することが可能である。この工程が無い場合でも、次の第2表層改質処理工程によって、シリコンウェーハ41からの微粒子の除去を行うことができる。有機酸リンス工程を加えることによって、有機酸の有するキレート効果により、ウェーハ表面からより効果的に金属微粒子の除去作用を高めることが可能になる。
【0033】
次に、配管23を介して窒素ガス供給部20から窒素ガスを洗浄処理チャンバ40内に導入するとともに、排気管47を介してフッ化水素含有ガスを洗浄処理チャンバ40内から排出する。その後、シリコンウェーハ41が装填されたステージ42を回転させながら、オゾン水供給部33から配管31およびノズル45を介してシリコンウェーハ41上に酸化作用のある薬液であるオゾン水を供給する第2表層改質処理工程を行う(ステップS4)。
【0034】
図4(c)に示すように、ウェーハ41上にオゾン水56を供給することによって、ウェーハ表面を洗浄し、ステップ3の後にシリコンウェーハ41上に残留した微粒子52、または、ステップ3を省略した場合は、ステップS2でシリコンウェーハ41から離間された微粒子52を、シリコンウェーハ41表面上から除去するとともに、図4(d)に示すように、シリコンウェーハ41の表層部に第2の酸化膜である酸化膜57が形成される。
【0035】
酸化作用のある薬液として用いるオゾン水溶液は、オゾン水濃度が、0.5ppmよりも低いと、微粒子が十分に除去され難く、また、純水へのオゾンの溶解限界は約25ppmであるため、オゾン水の濃度が0.5〜25ppmであることが望ましい。この時のppmとは重量比を表したものであり、10000ppmは1wt%である。
【0036】
さらに、第2表層改質処理工程の後、洗浄処理チャンバ40内のシリコンウェーハ41を回転させつつ、純水供給部34から配管31およびノズル45を介してシリコンウェーハ41上に純水を供給して、ウェーハ表面を洗浄するリンス工程を行う(ステップS5)。その後、シリコンウェーハ41の回転速度を上げて遠心力により純水を振り切るとともに洗浄チャンバ40内の温度を加熱させるなどして、ウェーハを乾燥させる乾燥工程を行う(ステップS6)。なお、ステップS5のリンス工程は、省略することができる。
【0037】
以上説明したように、本実施の形態によれば、酸化作用のあるオゾンガスによりウェーハ表面を含む表層を酸化膜とし、エッチング作用のあるフッ化水素含有ガスによりその酸化膜をエッチングすることによって、液体では到達が難しかったウェーハ表面の微小凹部や微粒子の裏側への酸化膜形成とその除去が可能になり、ウェーハに付着した微粒子を効果的にウェーハ表面から離間させることができる。さらに、酸化作用のあるオゾン水を用いて、ウェーハ表面から離間された微粒子の除去とウェーハ表面の親水化を同時に行い、ウェーハ表面に保護膜を形成することができる。この技術によって従来の技術では除去が難しかった小さなサイズの微粒子を効率よく除去させることが可能になり、残留微粒子が少なく、より高い表面品質を持ったウェーハを提供することができる。
【0038】
すなわち、ガスを用いた酸化膜形成とガスを用いたエッチングとによる微粒子のウェーハからの離間、および、酸化作用のある薬液によるウェーハの洗浄の相乗作用により、より効果的な微粒子の除去を可能にしている。
【0039】
また、液体を用いる工程を減らす事により、薬液、純水の使用量を減らし、洗浄工程に係るコストを低減することができる。さらに、表層除去工程と第2表層改質処理工程との間に、有機酸の薬液を用いてウェーハ表面を洗浄することにより、より効果的に金属微粒子を除去することができる。
【0040】
なお、本発明は、上記実施の形態にのみ限定されるものではなく、幾多の変更または変形が可能である。たとえば、上記おいてウェーハの洗浄は、枚葉式洗浄装置を用いるものとしたがこれに限られず、バッチ式の洗浄装置にも適用することができる。また、酸化作用のあるガスはオゾンガスを用いたがこれに限られず、エッチング作用のあるガスはフッ化水素含有ガスを用いたがこれに限られない。さらに、酸化作用のある薬液としては、オゾン水を用いたがこれに限られず、過酸化水素水等を用いることもできる。
【実施例】
【0041】
以下、本発明に係るシリコンウェーハの表面浄化方法を適用したウェーハの洗浄結果と、従来方法に基づくシリコンウェーハの洗浄結果とを比較し、本願発明に係る方法の効果を検証した結果を示す。
【0042】
(実施例1)
実施例1では、ステップS1,S2およびS4の各工程の処理条件を以下とし、ステップS3については行わずに、各ステップS1,S2,S4−S6を実行して直径300mmのウェーハの表面浄化を行った。
ステップ1:第1表層改質処理工程
使用するガス :オゾンガス
ウェーハの温度 :25℃
オゾンガスの濃度 :200g/m
ガス供給時間 :30秒
ステップ2:表層除去工程
使用するガス :フッ化水素ガス
ウェーハの温度 :25°C
フッ化水素ガスの濃度 :10000ppm(1vol%)(残部N
ガス供給時間 :15秒
ステップ4:第2表層改質処理工程
使用する薬液 :オゾン水
ウェーハの温度 :25°C
オゾン水の濃度 :10ppm(0.001wt%)
液供給時間 :30秒
【0043】
(実施例2)
実施例1のステップ2の表層除去工程におけるフッ化水素ガスを、無水フッ化水素ガスに置き換えた条件でウェーハの表層浄化を行った。無水フッ化水素ガスの濃度は、1vol%とした。その他の条件は、実施例1と同じとした。
【0044】
(実施例3)
実施例1のステップ2の表層除去工程におけるフッ化水素ガスを、フッ化水素ガスとイソプロピルアルコールの蒸気との混合ガスに置き換えてウェーハの表面浄化を行った。このときの混合ガスの濃度は15000ppmとした。また、その他の条件は、実施例1と同じとした。
【0045】
(実施例4)
実施例1のステップ4における酸化作用のある薬液として、オゾン水に代えて過酸化水素水を用いてウェーハの表面浄化を行った。このときの過酸化水素水の濃度は、3wt%とした。また、その他の条件は、実施例1と同じとした。
【0046】
(実施例5)
実施例1のステップ2とステップ4との間に、ステップ3の有機酸リンス工程を加えてウェーハの表面浄化を行った。その他の条件は、実施例1と同じとした。使用する有機酸薬液としては、濃度0.05wt%のシュウ酸を用いた。
【0047】
(比較例1)
ウェーハ表面に、オゾン水とフッ酸水とを交互に供給して、ウェーハ表面の微粒子の除去を行った。この時、濃度が10ppm(0.001wt%)のオゾン水と、濃度が3wt%のフッ酸水を用いてそれぞれの薬液を10秒ずつ3回交互に供給して処理を行った。
【0048】
(比較例2)
引用文献1に準じて、酸化性ガスとウェーハを接触させてウェーハ表面上に酸化膜を形成し、その後、ウェーハを有機溶剤蒸気と水蒸気の混合蒸気に接触させて、ウェーハ上に混合蒸気の液膜を形成した状態で、エッチングガスをウェーハに接触させて酸化膜をエッチングして除去した。この時、最初に濃度が100g/mのオゾンガスで10秒間処理してウェーハ表面上に酸化膜を形成し、次に濃度50vol%の水蒸気と濃度20vol%のイソプロピルアルコールの蒸気の混合ガスを10秒間ウェーハに接触させて表面上に液膜を形成させ、その後濃度が20vol%のフッ化水素ガスで10秒間処理し酸化膜をエッチングさせて除去した。
【0049】
以上のそれぞれの実施例および比較例において、ウェーハ表面に残留した50ナノメートル以上の有機物微粒子、および、銅原子の密度を測定した。測定結果を表1に纏めた。
【0050】
【表1】

【0051】
表1に示すように、実施例1−5では、比較例1、2に対して優れた微粒子の除去効果が得られた。さらに、有機酸リンス工程を含む実施例5では、実施例1と比較して優れた金属微粒子の除去効果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明によれば、酸化作用のあるガスをウェーハ表面に接触させて、該ウェーハ表面を含む表層を第1の酸化膜とし、次いで、エッチング作用のあるガスをウェーハ表面に接触させて、第1の酸化膜を除去し、さらに、酸化作用のある薬液を用いてウェーハ表面に残留する微粒子の除去と、第2の酸化膜の形成を行うようにしたので、少ない薬品の使用量で、ウェーハ表面に付着した有機物および金属等の微粒子をより残留微粒子が少なくなるように除去することができる。
【符号の説明】
【0053】
10 ウェーハ洗浄装置
11 洗浄装置本体
12 第1ガス供給管系
13 第2ガス供給管系
14 液系供給管系
16 オゾンガス供給部
17 配管
18 流量調節器
20 窒素ガス供給部
21 フッ化水素ガス供給部
22 有機溶剤蒸気供給部
23 配管
24 開閉弁
25 流量調節器
26,27 配管
28,29 開閉弁
31 配管
32 有機酸薬液供給部
33 オゾン水供給部
34 純水供給部
35,36,37 流量調節器
40 洗浄処理チャンバ
41 シリコンウェーハ
42 ステージ
43 ウェーハ支持部
44 シャフト
45 ノズル
46 開閉弁
47 排気ライン
48 開閉弁
49 廃液ライン
52 微粒子
53 酸化膜
54 オゾンガス
55 フッ化水素ガス
56 オゾン水
57 酸化膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化作用のあるガスをシリコンウェーハの表面に接触させて、該ウェーハ表面を含む表層を第1の酸化膜とする第1表層改質処理工程と、
エッチング作用のあるガスを前記ウェーハ表面に接触させて、前記第1の酸化膜を除去する表層除去工程と、
酸化作用のある薬液を、前記第1の酸化膜を除去したウェーハ表面に接触させて該ウェーハ表面に残存する微粒子の除去と第2の酸化膜の形成を行う第2表層改質処理工程と
を有することを特徴とするシリコンウェーハの表面浄化方法。
【請求項2】
前記酸化作用のあるガスは、オゾンガスであることを特徴とする請求項1に記載のシリコンウェーハの表面浄化方法。
【請求項3】
前記エッチング作用のあるガスは、フッ化水素含有ガスであることを特徴とする請求項1または2に記載のシリコンウェーハの表面浄化方法。
【請求項4】
前記フッ化水素含有ガスは、メタノール、エタノール、または、イソプロピルアルコールの蒸気をさらに含有することを特徴とする請求項3に記載のシリコンウェーハの表面浄化方法。
【請求項5】
前記フッ化水素含有ガスは、クエン酸ガス、またはシュウ酸ガスをさらに含有することを特徴とする請求項3または請求項4に記載のシリコンウェーハの表面浄化方法。
【請求項6】
前記酸化作用のある薬液は、オゾン水または過酸化水素水であることを特徴とする請求項1−5のいずれか1項に記載のシリコンウェーハの表面浄化方法。
【請求項7】
前記第2表層改質処理工程に続いて、純水により前記シリコンウェーハを洗浄する純水リンス工程と、洗浄したシリコンウェーハを乾燥させる乾燥工程をさらに有することを特徴とする請求項1−6のいずれか1項に記載のシリコンウェーハの表面浄化方法。
【請求項8】
前記表層除去工程と前記第2表層改質処理工程との間に、有機酸の薬液を用いて前記ウェーハ表面を洗浄し、金属粒子の除去を行う有機酸リンス工程をさらに有することを特徴とする請求項1−7のいずれか1項に記載のシリコンウェーハの表面浄化方法。
【請求項9】
前記有機酸の薬液は、シュウ酸、クエン酸、コハク酸、エチレンジアミン四酢酸、酒石酸、サリチル酸、ギ酸、マレイン酸、プロピオン酸、酢酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、安息香酸、アクリル酸、アジピン酸、マロン酸、リンゴ酸、グリコール酸、フタル酸、テレフタル酸あるいはフマル酸であることを特徴とする請求項8に記載のシリコンウェーハの表面浄化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−146460(P2011−146460A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−4801(P2010−4801)
【出願日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【出願人】(302006854)株式会社SUMCO (1,197)
【Fターム(参考)】