説明

シリコーンゴムシート、シリコーンゴム複層シートおよびこれらの製造方法

【課題】接着剤層が不要で、対象物との剥離性が向上したシリコーンゴムシートを提供する。
【解決手段】下記の第一加熱工程(H1)および第二加熱工程(H2)によって形成されたシリコーンゴム1層からなることを特徴とする、シリコーンゴムシート。第一加熱工程(H1):液状シリコーンを加熱して半硬化シリコーンゴムを形成させる工程。第二加熱工程(H2):半硬化シリコーンゴムを更に硬化させる工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーンゴムシート、このシリコーンゴムシートからなるシリコーンゴム複層シートならびにこれらの製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、例えば電子機器製造や光学機器製造に用いられるクッションシートに特に適した、シリコーンゴムシート、シリコーンゴム複層シートならびにこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、FPC(フレキシブルプリント基板)カバーレイフィルム熱圧着時、或いはLCD、PDP、有機ELなどへのACF(異方導電フィルム)熱圧着時、或いはプリント基板、電気絶縁板等の積層板製造時に均一な圧力を与えることを目的として、クッションシートが使用されている。
【0003】
このクッションシートには、滑り性、微粘着性、平滑性、耐熱性、クッション性、離型性、寸法安定性、耐久性、熱伝導性、導電性等が要求されている。
【0004】
クッションシートの材料としては、高温下での使用を考慮して、シリコーンゴム、フッ素ゴムが使用されることが多い。
【0005】
そのようなクッションシートとして、特開平07−214728号公報(特許文献1)、特開2001−315248号公報(特許文献2)、特開2006−297820公報(特許文献3)に記載の耐熱クッションシート等が提案されている。
【0006】
一般に、フッ素ゴムは硬度が硬く、加圧時の圧力斑が発生しやすいことから用途が限定されることがあり、また価格的にも不利である。シリコーンゴムに関しては、表面に粘着性が有り、その粘着性が過度である場合には対象物が密着してしまうことがあった。そして、異物が付着しやすくかつ除去がしにくい等の問題点が指摘されていた。
【0007】
剥離性が改良されたシートを得る方法としては、シボ付離型シートを用いる方法(特開平09−141783号公報(特許文献4))および粉体をシート表面に打粉する方法(特開2004−273669号公報(特許文献5))が提案されている。
【0008】
上記の特許文献4に記載のシートは、シリコーンゴム重合物を形成し、これと基材と積層する際に粘着剤の塗布を行うものであることからそのための工程が必要とされていた。また、引用文献5に記載のシートでは、粉体脱落を完全に防止することが難しいようである。
【特許文献1】特開平07−214728号公報
【特許文献2】特開2001−315248号公報
【特許文献3】特開2006−297820号公報
【特許文献4】特開平09−141783号公報
【特許文献5】特開2004−273669号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記の問題点を解決するものであって、特定の2つの加熱工程を採用してシリコーンの硬化を段階的に行い、前段の加熱工程で形成された半硬化シリコーンゴムの粘着性を利用して耐熱性基材を圧着し、後段の加熱工程で更に硬化を進行させることによって、接着剤層を不要にしたシリコーンゴム複層シートを提供するものであり、そして、特定の2つの加熱工程を採用してシリコーンの硬化を段階的に行い、前段の加熱工程で形成された半硬化シリコーンゴムにマット化処理表面形成用賦型フィルムまたはシートの圧着および剥離を行ってマット化処理表面が形成されたシリコーンゴムシートを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によるシリコーンゴムシートは、下記の第一加熱工程(H1)および第二加熱工程(H2)によって形成されたシリコーンゴム層からなることを特徴とするものである。 第一加熱工程(H1):液状シリコーンを加熱して半硬化シリコーンゴムを形成させる工程
第二加熱工程(H2):半硬化シリコーンを更に硬化させる工程
【0011】
このような本発明によるシリコーンゴムシートは、好ましくは、前記のシリコーンゴム層がマット化処理表面を有するもの、を包含する。
【0012】
そして、本発明によるシリコーンゴム複層シートは、耐熱性基材層と、前記のシリコーンゴム層とを有することを特徴とするもの、である。
【0013】
また、本発明による第一のシリコーンゴム複層シートの製造方法は、下記のシリコーン塗布工程(A1)、第一加熱工程(H1)、賦型工程(B1)、第二加熱工程(H2)および剥離工程(C1)からなることを特徴とするもの、である。
シリコーン塗布工程(A1):耐熱性基材に液状シリコーンを塗布する工程
第一加熱工程(H1):液状シリコーンを加熱して半硬化シリコーンゴムを形成させる工程
賦型工程(B1):半硬化シリコーンゴムとマット化処理表面形成用賦型フィルムまたはシートとを圧着して、半硬化シリコーンゴムにマット化処理表面を形成させる工程
第二加熱工程(H2):半硬化シリコーンゴムを更に硬化させる工程
剥離工程(C1):前記のマット化処理表面形成用賦型フィルムまたはシートを剥離する工程
【0014】
また、本発明による第二のシリコーンゴム複層シートの製造方法は、下記のシリコーン塗布工程(A2)、第一加熱工程(H1)、圧着工程(D2)、第二加熱工程(H2)および剥離工程(C2)からなることを特徴とするもの、である。
シリコーン塗布工程(A2):マット化処理表面形成用賦型フィルムまたはシートに液状シリコーンを塗布する工程
第一加熱工程(H1):液状シリコーンを加熱して半硬化シリコーンゴムを形成させる工程
圧着工程(D2):半硬化シリコーンゴムと耐熱性基材とを圧着する工程
第二加熱工程(H2):半硬化シリコーンゴムを更に硬化させる工程
剥離工程(C2):前記のマット化処理表面形成用賦型フィルムまたはシートを剥離する工程
【0015】
また、本発明による第三のシリコーンゴム複層シートの製造方法は、下記のシリコーン塗布工程(A3)、第一加熱工程(H1)、圧着工程(D3)および第二加熱工程(H2)からなることを特徴とするもの、である。
シリコーン塗布工程(A3):第一の耐熱性基材に液状シリコーンを塗布する工程
第一加熱工程(H1):液状シリコーンを加熱して半硬化シリコーンゴムを形成させる工程
圧着工程(D3):半硬化シリコーンゴムと第二の耐熱性基材とを圧着する工程
第二加熱工程(H2):半硬化シリコーンゴムを更に硬化させる工程
【0016】
また、本発明によるシリコーンゴムシートの製造方法は、下記のシリコーン塗布工程(A4)、第一加熱工程(H1)、賦型工程(B4)、第二加熱工程(H2)および剥離工程(C4)からなることを特徴とするもの、である。
シリコーン塗布工程(A4):第一のマット化処理表面形成用賦型フィルムまたはシートに液状シリコーンを塗布する工程
第一加熱工程(H1):液状シリコーンを加熱して半硬化シリコーンゴムを形成させる工程
賦型工程(B4):半硬化シリコーンゴムと第二のマット化処理表面形成用賦型フィルムまたはシートとを圧着して、半硬化シリコーンゴムにマット化処理表面を形成させる工程
第二加熱工程(H2):半硬化シリコーンゴムを更に硬化させる工程
剥離工程(C4):前記第一のマット化処理表面形成用賦型フィルムまたはシートおよび前記第二のマット化表面形成用賦型フィルムまたはシートを剥離する工程
【0017】
上記のシリコーンゴム複層シートは、好ましくは、前記のシリコーンゴム複層シートにフッ素ゴム層が表面層として形成されたもの、を包含する。
【0018】
そして、本発明による第四のシリコーンゴム複層シートの製造方法は、上記のシリコーンゴム複層シートの製造方法によって得られたシリコーンゴム複層シートの少なくとも一方の面にフッ素ゴム層を形成することを特徴とするもの、である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、特定の2つの加熱工程を採用してシリコーンの硬化を段階的に行い、前段の加熱工程で形成された半硬化シリコーンゴムの粘着性を利用して耐熱性基材を圧着し、後段の加熱工程で更に硬化を進行させるものであることから、接着剤や粘着剤等を用いることなくシリコーンゴムシートを得ることができる。このことから、接着剤や粘着剤等の塗布等のための工程を更に行う必要がない。そして、高温度条件において使用されても、接着剤や粘着剤の揮発等や、接着剤や粘着剤の劣化による問題点が発生しない。そして、半硬化シリコーンゴムと耐熱性基材との圧着状態において後段の加熱工程が実施されることから、耐熱性基材の接合強度が極めて良好なシリコーンゴムシートを得ることができる。
【0020】
また、本発明では、特定の2つの加熱工程を採用してシリコーンの硬化を段階的に行い、前段の加熱工程で形成された半硬化シリコーンゴムに耐熱性基材やマット化処理表面形成用賦型フィルムまたはシートの圧着を行うものであることから、半硬化シリコーンゴムの粘着性を利用して耐熱性基材やマット化処理表面形成用賦型フィルムまたはシートの圧着を行える。そして、半硬化シリコーンゴムと耐熱性基材やマット化処理表面形成用賦型フィルムまたはシートとの圧着状態において後段の加熱工程が実施されることから、耐熱性基材の接合強度が極めて良好かつ良好な付着防止表面性状を有するシリコーンゴムシートを得ることができる。
【0021】
したがって、本発明によれば、高温度条件において使用されても揮発成分の発生が抑制され、耐久性が優れ、かつ良好な付着防止性を有するシリコーンゴムシートを得ることができる。このような本発明によるシリコーンゴムシートは、例えば電子機器製造や光学機器製造に用いられるクッションシートに特に適したものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
<シリコーンゴムシート(その1)>
本発明によるシリコーンゴムシートは、下記の第一加熱工程(H1)および第二加熱工程(H2)によって形成されたシリコーンゴム層からなることを特徴とする。
第一加熱工程(H1):液状シリコーンを加熱して半硬化シリコーンゴムを形成させる工程
第二加熱工程(H2):半硬化シリコーンゴムを更に硬化させる工程
【0023】
<<第一加熱工程>>
液状シリコーン
液状シリコーンは、この第一加熱工程における加熱条件によって半硬化シリコーンゴムを形成可能なものであることが必要である。
好ましい液状シリコーンとしては、50〜90℃の温度条件下に、1〜10分間放置した後に、液状シリコーンが半硬化となるものを挙げることができる。
【0024】
液状シリコーンは、粘度が3000〜100000Cpであるものが好ましく、5000〜50000Cpであるものが特に好ましい。液状シリコーンには、必要に応じて溶媒を配合することができる。溶媒としては、たとえば有機溶媒、特にトルエン、キシレン、メチルエチルケトンが好ましい。このことによって、液状シリコーンの粘度を調整することができる。有機溶媒を使用する場合、作業性、厚み調整のし易さから、溶液の粘度が3000〜100000Cp、特に5000〜50000Cpとなるような量を使用することが好ましい。ここで、粘度は、JISK7117の規定より定められたものである。
【0025】
また、液状シリコーンには、必要に応じて金属粉を配合することができる。金属粉の配合によって、例えば熱伝導性の向上を図ることができる。金属粉の好ましい具体例としては、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、金、銀、銅等を挙げることができる。金属粉の粒経は任意であるが、5〜50μmが好ましく、20〜30μmが特に好ましい。金属粉の配合量は、シリコーンゴム100重量部に対し、10〜100重量部が好ましく、20〜50重量部が特に好ましい。
また、液状シリコーンには、必要に応じて硬化促進剤、硬化遅延剤を添加することができる。
【0026】
加熱条件
第一加熱工程(H1)は、前述の液状シリコーンを加熱して半硬化シリコーンゴムを形成させる工程である。ここで、「半硬化」とは、圧着しようとする材料を完全密着出来る粘着性を保持している状態であり、第二加熱工程(H2)によって形成されたシリコーンゴムの粘着性保持の値を「0」とした場合において、この第一加熱工程(H1)によって形成されたシリコーンゴムの粘着性保持の値が、40〜70の範囲内(好ましくは50〜60の範囲内)であることを意味する。粘着性の保持状態を、液状シリコーンが変形する比率で表した場合、第二加熱工程(H2)によって形成されたシリコーンゴムの変形率を「0」とした場合、この第一加熱工程(H1)によって形成されたシリコーンゴムの変形率の値が40〜70の範囲内(好ましくは50〜60の範囲内)であることを意味する。
【0027】
第一加熱工程における加熱温度は、50〜100℃が好ましく、特に50〜90℃が好ましい。加熱温度が100℃超過では半硬化の調整が困難であり、一方、50℃未満では半硬化に時間がかかるので好ましくない。加熱時間は、1〜10分が好ましく、特に3〜8分が好ましい。加熱時間が10分超過では作業性が悪いためであり、一方、1分未満では半硬化の調整が困難であることから好ましくない。
【0028】
このような第一加熱工程によって、液状シリコーンを加熱して半硬化シリコーンゴムを形成させることによって、好ましい粘着状態を有する半硬化シリコーンゴムを形成させることができる。
【0029】
<<第二加熱工程(H2)>>
第二加熱工程(H2)は、半硬化シリコーンゴムを更に硬化させる工程である。
第二加熱工程における加熱温度は、50〜100℃が好ましく、特に50〜90℃がこのましい。加熱温度が100℃超過ではマット化処理表面形成用賦型フィルムまたはシートの耐久性が心配であり、一方、50℃未満では硬化に時間がかかるので好ましくない。
【0030】
加熱時間は、1〜10分が好ましく、特に3〜8分が好ましい。加熱時間が10分超過では作業性が悪いためであり、一方、1分未満では硬化不足であることから好ましくない。
【0031】
<シリコーンゴムシート(その2)>
上記のシリコーンゴムシートは、そのシリコーンゴム層がマット化処理表面を有するものが好ましい。ここで、マット化処理表面とは、液状シリコーンの塗布および乾燥させることから形成された常法によるシリコーンゴムに比べて、シリコーンゴム表面のつやないし光沢が低減された表面をいい、表面粗さが0.2〜10Ra、好ましくは0.4〜5Raである表面を言う。ここで、Ra(算術平均粗さ)は、JISB0601の規定より定められたものである。
【0032】
<シリコーンゴム複層シート>
本発明によるシリコーンゴム複層シートは、耐熱性基材層と、上述のシリコーンゴム層とを有することを特徴とする。
耐熱性基材は、従来からこの種のクッションシートの基材層に用いられてきた物の中から適宜選択し、本発明において用いることができる。例えば、耐熱性繊維からなるもの、耐熱性樹脂から形成されたものおよび金属からなるものを用いることができる。耐熱性繊維としては、ガラス繊維、芳香族ポリアミド繊維またはこれらの混合物からなるものが好ましく、ネット状ないしクロス状の形態としているものが好ましい。厚みは30〜300μm、特に30〜200μmが好ましい。300μm以上ではクッション性が低下する場合があり、30μm未満では強度が低下する場合がある。
【0033】
耐熱性樹脂から形成されたものとしては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエテレン―パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエテレン―ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)およびポリイミドからなる群から選ばれた耐熱性樹脂が好ましい。特にPTFEおよびポリイミドが好ましい。
【0034】
これらの耐熱性樹脂には、必要に応じて導電性粉を配合することができる。これによって、導電性の付与ないし向上ならびに耐摩耗性の向上等を図ることができる。導電性粉の配合量は任意であるが、1〜20重量部、好ましくは5〜15重量部が好ましい。導電性粉の粒径も任意であるが、好ましくは5〜30μm、特に好ましくは10〜20μmである。
【0035】
また、本発明では、耐熱性基材として、耐熱性繊維と耐熱性樹脂との複合物を用いることも可能である。このような複合物の具体例としては、耐熱性樹脂中に耐熱性繊維を分散させたものを挙げることができ、そして、シート状の耐熱性繊維に耐熱性樹脂を含浸させて形成されたものを挙げることができる。後者の耐熱性基材は、耐熱性樹脂の溶液ないし懸濁液を調製し、これをシート状の耐熱性繊維に含浸させた後、常温または加熱条件下で溶剤乾燥および焼成を行うことによって得ることができる。
【0036】
金属からなる耐熱性基材としては、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、ステンレス(SUS)、金(Au)、銀(Ag)または銅(Cu)等からなるものを挙げることができる。この中では、特にアルミニウム(Al)が好ましい。
【0037】
耐熱性基材には、必要に応じて塗工面となる部分へ、予め活性化処理を施しておくことができる。好ましい活性化処理としては、シリカ粒子を付着焼成させる表面処理、金属ナトリウムエッチング表面処理、プラズマ放電処理、コロナ放電処理を挙げることが出来る。これらの活性化処理によって耐熱性基材とシリコーンゴムとの接着性を改善することができる。
【0038】
本発明による好ましいシリコーンゴム複層シートは、そのシリコーンゴム層がマット化処理表面を有するものである。ここで、マット化処理表面とは、液状シリコーンの塗布および乾燥させることから形成された常法によるシリコーンゴムに比べて、シリコーンゴム表面のつやないし光沢が低減された表面をいい、表面粗さが0.2〜10Ra、好ましくは0.4〜5Raである表面を言う。ここで、Ra(算術平均粗さ)は、JISB0601の規定より定められたものである。
【0039】
本発明によるシリコーンゴム複層シートは、耐熱性基材層とシリコーンゴム層とを有するが、耐熱性基材層およびシリコーンゴム層がそれぞれ1層であるもののみに限定されない。例えば、耐熱性基材層を複数有するものであっても、シリコーンゴム層を複数有するものであってもよい。特に好ましい具体例としては、耐熱性基材層の両面にシリコーンゴム層が積層されており、これらのシリコーンゴム層のそれぞれにマット化処理表面が形成されているものを挙げることができる。
【0040】
<シリコーンゴム複層シートの製造方法(その1)>
本発明によるシリコーンゴム複層シートを得るための、第一のシリコーンゴム複層シートの製造方法は、下記のシリコーン塗布工程(A1)、第一加熱工程(H1)、賦型工程(B1)、第二加熱工程(H2)および剥離工程(C1)からなることを特徴とする。
シリコーン塗布工程(A1):耐熱性基材に液状シリコーンを塗布する工程
第一加熱工程(H1):液状シリコーンを加熱して半硬化シリコーンゴムを形成させる工程
賦型工程(B1):半硬化シリコーンゴムとマット化処理表面形成用賦型フィルムまたはシートとを圧着して、半硬化シリコーンゴムにマット化処理表面を形成させる工程
第二加熱工程(H2):半硬化シリコーンゴムを更に硬化させる工程
剥離工程(C1):前記のマット化処理表面形成用賦型フィルムまたはシートを剥離する工程
【0041】
<<シリコーン塗布工程(A1)>>
このシリコーン塗布工程(A1)は、耐熱性基材に液状シリコーンを塗布する工程である。
【0042】
耐熱性基材
耐熱性基材は、従来からこの種のクッションシートの基材層に用いられてきた物の中から適宜選択し、本発明において用いることができる。例えば、耐熱性繊維からなるもの、耐熱性樹脂から形成されたものおよび金属からなるものを用いることができる。耐熱性繊維としては、ガラス繊維、芳香族ポリアミド繊維またはこれらの混合物からなるものが好ましく、ネット状ないしクロス状の形態としているものが好ましい。厚みは30〜300μm、特に30〜200μmが好ましい。300μm以上ではクッション性が低下する場合があり、30μm未満では強度が低下する場合がある。
【0043】
耐熱性樹脂から形成されたものとしては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエテレン―パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエテレン―ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)およびポリイミドからなる群から選ばれた耐熱性樹脂が好ましい。特にPTFEおよびポリイミドが好ましい。
【0044】
これらの耐熱性樹脂には、必要に応じて導電性粉を配合することができる。これによって、導電性の付与ないし向上ならびに耐摩耗性の向上等を図ることができる。導電性粉の配合量は任意であるが、1〜20重量部、好ましくは5〜15重量部が好ましい。導電性粉の粒径も任意であるが、好ましくは5〜30μm、特に好ましくは10〜20μmである。
【0045】
また、本発明では、耐熱性基材として、耐熱性繊維と耐熱性樹脂との複合物を用いることも可能である。このような複合物の具体例としては、耐熱性樹脂中に耐熱性繊維を分散させたものを挙げることができ、そして、シート状の耐熱性繊維に耐熱性樹脂を含浸させて形成されたものを挙げることができる。後者の耐熱性基材は、耐熱性樹脂の溶液ないし懸濁液を調製し、これをシート状の耐熱性繊維に含浸させた後、常温または加熱条件下で溶剤乾燥および焼成を行うことによって得ることができる。
【0046】
金属からなる耐熱性基材としては、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、金(Au)、ステンレス(SUS)、銀(Ag)または銅(Cu)からなるものを挙げることができる。この中では、特にアルミニウム(Al)が好ましい。
【0047】
耐熱性基材には、必要に応じて塗工面となる部分へ、予め活性化処理を施しておくことができる。好ましい活性化処理としては、シリカ粒子を付着焼成させる表面処理、金属ナトリウムエッチング表面処理、プラズマ放電処理、コロナ放電処理を挙げることが出来る。これらの活性化処理によって耐熱性基材とシリコーンとの接着性を改善することができる。
【0048】
液状シリコーン
液状シリコーンは、この第一加熱工程における加熱条件によって半硬化シリコーンゴムを形成可能なものであることが必要である。
好ましい液状シリコーンとしては、50〜90℃の温度条件下に、1〜10分間放置した後に、液状シリコーンが半硬化となるものを挙げることができる。
【0049】
液状シリコーンは、粘度が3000〜100000Cpであるものが好ましく、5000〜50000Cpであるものが特に好ましい。液状シリコーンには、必要に応じて溶媒を配合することができる。溶媒としては、たとえば有機溶媒、特にトルエン、キシレン、メチルエチルケトンが好ましい。このことによって、液状シリコーンの粘度を調整することができる。有機溶媒を使用する場合、作業性、厚み調整のし易さから、溶液の粘度が3000〜100000Cp、特に5000〜50000Cpとなるような量を使用することが好ましい。ここで、粘度は、JISK7117の規定により定められたものである。
【0050】
また、液状シリコーンには、必要に応じて金属粉を配合することができる。金属粉の配合によって、例えば熱伝導性の向上を図ることができる。金属粉の好ましい具体例としては、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、金、銀、銅等を挙げることができる。金属粉の粒経は任意であるが、5〜50μmが好ましく、20〜30μmが特に好ましい。金属粉の配合量は、シリコーンゴム100重量部に対し、10〜100重量部が好ましく、20〜50重量部が特に好ましい。
【0051】
また、液状シリコーンには、必要に応じて硬化促進剤、硬化遅延剤を添加することができる。
耐熱性基材に液状シリコーンを塗布する方法としては、特にコーティングが好ましい。
【0052】
<<第一加熱工程(H1)>>
第一加熱工程(H1)は、前述の液状シリコーンを加熱して半硬化シリコーンゴムを形成させる工程である。ここで、「半硬化」とは、圧着しようとする材料を完全密着出来る粘着性を保持している状態であり、第二加熱工程(H2)によって形成されたシリコーンゴムの粘着性保持の値を「0」とした場合において、この第一加熱工程(H1)によって形成されたシリコーンゴムの粘着性保持の値が、40〜70の範囲内(好ましくは50〜60の範囲内)であることを意味する。粘着性の保持状態を、液状シリコーンが変形する比率で表した場合、第二加熱工程(H2)によって形成されたシリコーンゴムの変形率を「0」とした場合、この第一加熱工程(H1)によって形成されたシリコーンゴムの変形率の値が40〜70の範囲内(好ましくは50〜60の範囲内)であることを意味する。
【0053】
第一加熱工程における加熱温度は、50〜100℃が好ましく、特に50〜90℃が好ましい。加熱温度が100℃超過では半硬化の調整が困難であり、一方、50℃未満では半硬化に時間がかかることから好ましくない。加熱時間は、1〜10分が好ましく、特に3〜8分が好ましい。加熱時間が10分超過では作業性が悪いためであり、一方、1分未満では半硬化の調整が困難であることから好ましくない。
【0054】
このような第一加熱工程によって、液状シリコーンを加熱して半硬化シリコーンゴムを形成させることによって、好ましい粘着状態を有する半硬化シリコーンゴムを形成させることができる。
【0055】
<<賦型工程(B1)>>
賦型工程(B1)は、半硬化シリコーンゴムとマット化処理表面形成用賦型フィルムまたはシートとを圧着して、半硬化シリコーンゴムにマット化処理表面を形成させる工程である。
【0056】
この賦型工程(B1)では、第一加熱工程(H1)で形成された半硬化シリコーンゴムに、その粘着性が保持された状態で、マット化処理表面形成用賦型フィルムまたはシートを圧着することによって、半硬化シリコーンゴム表面に当該賦型フィルムまたはシートに対応したマット化処理表面が形成される。したがって、半硬化シリコーンゴム表面に所望の表面形状が形成されるように、当該賦型フィルムまたはシートの表面には対応したマット化表面が予め形成されている。
【0057】
マット化処理表面形成用賦型フィルムまたはシートは、半硬化シリコーンゴムと圧着された状態で第二加熱工程(H2)に付されることになることから、第二加熱工程(H2)に適応した耐熱性を備えたものを用いることが好ましい。そのようなマット化処理表面形成用賦型フィルムまたはシートは、例えば、ポリエステル(PET)、高密度ポリエチレン(PE)等の耐熱性樹脂から形成することができる。
【0058】
上記の耐熱性樹脂のフィルムまたはシートが、マット化処理表面形成用賦型フィルムまたはシートとして利用可能な所定の表面形状を有しないときには、上記の耐熱性樹脂のフィルムまたはシートに対して適当な加工を施すことによって、マット化処理表面形成用賦型フィルムまたはシートとして適した表面形状にすることができる。そのための加工としては、例えばサンドブラスト法を挙げることができる。
【0059】
本発明のシリコーンゴム複層シートは、上記の通り表面粗さが0.2〜10Ra、好ましくは0.4〜5Raであることから、シリコーンゴムシートないしシリコーンゴム複層シートにそのような表面形状が形成されるように、対応した表面形状のマット化処理表面形成用賦型フィルムまたはシートを用いることができる。
【0060】
マット化処理表面形成用賦型フィルムまたはシートの厚さは、少なくとも第二加熱工程(H2)に付された後の剥離工程(C1)において破断等の問題が実質的に生じない厚さであれば任意である。
【0061】
<<第二加熱工程(H2)>>
第二加熱工程(H2)は、半硬化シリコーンゴムを更に硬化させる工程である。
第二加熱工程における加熱温度は、50〜100℃が好ましく、特に50〜90℃がこのましい。加熱温度が100℃超過ではマット化処理表面形成用賦型フィルムまたはシートの耐久性が心配であり、一方、50℃未満では硬化に時間がかかるので好ましくない。
【0062】
加熱時間は、1〜10分が好ましく、特に3〜8分が好ましい。加熱時間が10分超過では作業性が悪いためであり、一方、1分未満では硬化不足であることから好ましくない。
【0063】
<<剥離工程(C1)>>
この剥離工程(C1)によって、前記のマット化処理表面形成用賦型フィルムまたはシートが剥離されて、本発明によるシリコーンゴム複層シートが製造される。
耐熱性基材の両面にシリコーンゴム層が形成されたシリコーンゴム複層シートを得る場合には、上記剥離工程(C1)の後に、シリコーンゴム層が形成されていない耐熱性基材の面に対して、上記シリコーン塗布工程(A1)、第一加熱工程(H1)、賦型工程(B1)、第二加熱工程(H2)および剥離工程(C1)を行うことができる。このような本発明によれば、耐熱性基材層の両面にシリコーンゴム層が複層されており、これらのシリコーンゴム層のそれぞれにマット化処理表面が形成されたシリコーンゴム複層シートを得ることができる。
【0064】
<シリコーンゴム複層シートの製造方法(その2)>
本発明によるシリコーンゴム複層シートを得るための、第二のシリコーンゴム複層シートの製造方法は、下記のシリコーン塗布工程(A2)、第一加熱工程(H1)、圧着工程(D2)、第二加熱工程(H2)および剥離工程(C2)からなることを特徴とする。
シリコーン塗布工程(A2):マット化処理表面形成用賦型フィルムまたはシートに液状シリコーンを塗布する工程
第一加熱工程(H1):液状シリコーンを加熱して半硬化シリコーンゴムを形成させる工程
圧着工程(D2):半硬化シリコーンゴムと耐熱性基材とを圧着する工程
第二加熱工程(H2):半硬化シリコーンゴムを更に硬化させる工程
剥離工程(C2):前記のマット化処理表面形成用賦型フィルムまたはシートを剥離する工程
【0065】
<<シリコーン塗布工程(A2)>>
このシリコーン塗布工程(A2)は、マット化処理表面形成用賦型フィルムまたはシートに液状シリコーンを塗布する工程である。
【0066】
マット化処理表面形成用賦型フィルムまたはシート
マット化処理表面形成用賦型フィルムまたはシートは、半硬化シリコーンゴムと圧着された状態で第一加熱工程(H1)および第二加熱工程(H2)にふされることになることから、第一加熱工程(H1)および第二加熱工程(H2)に適応した耐熱性を備えたものを用いることが好ましい。そのようなマット化処理表面形成用賦型フィルムまたはシートは、例えばポリエステル(PET)、高密度ポリエチレン(PE)等の耐熱性樹脂から形成することができる。
【0067】
上記の耐熱性樹脂のフィルムまたはシートが、マット化処理表面形成用賦型フィルムまたはシートとして利用可能な所定の表面形状を有しないときには、上記の耐熱性樹脂フィルムまたはシートに対して適当な加工を施すことによって、マット化処理表面形成用賦型フィルムまたはシートとして適した表面形状にすることができる。そのための加工としては、例えばサンドブラスト法を挙げることができる。
【0068】
本発明のシリコーンゴムシートないしシリコーンゴム複層シートは、上記の通り表面粗さが0.2〜10Ra、好ましくは0.4〜5Raであることから、シリコーンゴムシートないしシリコーンゴム複層シートにそのような表面形状が形成されるように、対応した表面形状のマット化処理表面形成用賦型フィルムまたはシートを用いることができる。
【0069】
マット化処理表面形成用賦型フィルムまたはシートの厚さは、少なくとも第一加熱工程(H1)および第二加熱工程(H2)にふされた後の剥離工程(C2)において破断等の問題が実質的に生じない厚さであれば任意である。
【0070】
液状シリコーン
液状シリコーンは、第一加熱工程における加熱条件によって半硬化シリコーンゴムを形成可能なものであることが必要である。
好ましい液状シリコーンとしては、50〜90℃の温度条件下に、1〜10分間放置した後に、液状シリコーンが半硬化となるものを挙げることができる。
【0071】
液状シリコーンは、粘度が3000〜100000Cpであるものが好ましく、5000〜50000Cpであるものが特に好ましい。液状シリコーンには、必要に応じて溶媒を配合することができる。溶媒としては、たとえば有機溶媒、特にトルエン、キシレン、メチルエチルケトンが好ましい。このことによって、液状シリコーンの粘度を調整することができる。有機溶媒を使用する場合、作業性、厚み調整のし易さから、溶液の粘度が3000〜100000Cp、特に5000〜50000Cpとなるような量を使用することが好ましい。ここで、粘度は、JISK7117の規定より定められたものである。
【0072】
また、液状シリコーンには、必要に応じて金属粉を配合することができる。金属粉の配合によって、例えば熱伝導性の向上を図ることができる。金属粉の好ましい具体例としては、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、金、銀、銅等を挙げることができる。金属粉の粒経は任意であるが、5〜50μmが好ましく、20〜30μmが特に好ましい。金属粉の配合量は、シリコーンゴム100重量部に対し、10〜100重量部が好ましく、20〜50重量部が特に好ましい。
【0073】
また、液状シリコーンには、必要に応じて硬化促進剤、硬化遅延剤を添加することができる。
マット化処理表面形成用賦型フィルムまたはシートに液状シリコーンを塗布する方法としては、特にコーティングが好ましい。
【0074】
<<第一加熱工程(H1)>>
第一加熱工程(H1)は、前述の液状シリコーンを加熱して半硬化シリコーンゴムを形成させる工程である。ここで、「半硬化」とは、圧着しようとする材料を完全密着出来る粘着性を保持している状態であり、第二加熱工程(H2)によって形成されたシリコーンゴムの粘着性保持の値を「0」とした場合において、この第一加熱工程(H1)によって形成されたシリコーンゴムの粘着性保持の値が、40〜70の範囲内(好ましくは50〜60の範囲内)であることを意味する。粘着性の保持状態を、液状シリコーンが変形する比率で表した場合、第二加熱工程(H2)によって形成されたシリコーンゴムの変形率を「0」とした場合、この第一加熱工程(H1)によって形成されたシリコーンゴムの変形率の値が40〜70の範囲内(好ましくは50〜60の範囲内)であることを意味する。
【0075】
第一加熱工程における加熱温度は、50〜100℃が好ましく、特に50〜90℃が好ましい。加熱温度が100℃超過では半硬化の調整が困難であり、一方、50℃未満では半硬化に時間がかかることから好ましくない。加熱時間は、1〜10分が好ましく、特に3〜8分が好ましい。加熱時間が10分超過では作業性が悪いためであり、一方、1分未満では半硬化の調整が困難であることから好ましくない。
【0076】
このような第一加熱工程によって、液状シリコーンを加熱して半硬化シリコーンゴムを形成させることによって、好ましい粘着状態を有する半硬化シリコーンゴムを形成させることができる。
【0077】
<<圧着工程(D2)>>
この圧着工程(D2)は、半硬化シリコーンゴムと耐熱性基材とを圧着する工程である。この工程(D2)では、前記の第一加熱工程(H1)で形成された半硬化シリコーンゴムに、その粘着性が保持された状態で耐熱性基材が圧着される。
【0078】
<<第二加熱工程>>
第二加熱工程(H2)は、半硬化シリコーンゴムを更に硬化させる工程である。
第二加熱工程における加熱温度は、50〜100℃が好ましく、特に50〜90℃がこのましい。加熱温度が100℃超過ではマット化処理表面形成用賦型フィルムまたはシートの耐久性が心配であり、一方、50℃未満では硬化に時間がかかることから好ましくない。加熱時間は、1〜10分が好ましく、特に3〜8分が好ましい。加熱時間が10分超過では作業性が悪いためであり、一方、1分未満では硬化不足であることから好ましくない。
【0079】
<<剥離工程(C2)>>
この剥離工程(C2)によって、前記のマット化処理表面形成用賦型フィルムまたはシートが剥離されて、本発明によるシリコーンゴム複層シートが製造される。
【0080】
耐熱性基材の両面にシリコーンゴム層が形成されたシリコーンゴム複層シートを得る場合には、上記剥離工程(C2)の後に、シリコーンゴム層が形成されていない耐熱性基材の面に対し、上記のシリコーン塗布工程(A2)、第一加熱工程(H1)、圧着工程(D2)、第二加熱工程(H2)および剥離工程(C2)を行うことができる。このような本発明によれば、耐熱性基材層の両面にシリコーンゴム層が積層されており、これらのシリコーンゴム層のそれぞれにマット化処理表面が形成されたシリコーンゴム複層シートを得ることができる。
【0081】
<シリコーンゴム複層シートの製造方法(その3)>
本発明によるシリコーンゴム複層シートを得るための、第三のシリコーンゴム複層シートの製造方法は、下記のシリコーン塗布工程(A3)、第一加熱工程(H1)、圧着工程(D3)および第二加熱工程(H2)からなることを特徴とする。
シリコーン塗布工程(A3):耐熱性基材に液状シリコーンを塗布する工程
第一加熱工程(H1):液状シリコーンを加熱して半硬化シリコーンゴムを形成させる工程
圧着工程(D3):半硬化シリコーンゴムと耐熱性基材とを圧着する工程
第二加熱工程(H2):半硬化シリコーンゴムを更に硬化させる工程
【0082】
<<シリコーン塗布工程(A3)>>
このシリコーン塗布工程(A3)は、耐熱性基材に液状シリコーンを塗布する工程である。
【0083】
耐熱性基材
耐熱性基材は、従来からこの種のクッションシートの基材層に用いられてきた物の中から適宜選択し、本発明において用いることができる。例えば、耐熱性繊維からなるもの、耐熱性樹脂から形成されたものおよび金属からなるものを用いることができる。耐熱性繊維としては、ガラス繊維、芳香族ポリアミド繊維またはこれらの混合物からなるものが好ましく、ネット状ないしクロス状の形態としているものが好ましい。厚みは30〜300μm、特に30〜200μmが好ましい。300μm以上ではクッション性が低下する場合があり、30μm未満では強度が低下する場合がある。
【0084】
耐熱性樹脂から形成されたものとしては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエテレン―パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエテレン―ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)およびポリイミドからなる群から選ばれた耐熱性樹脂が好ましい。特にPTFEおよびポリイミドが好ましい。これらの耐熱性樹脂には、必要に応じて導電性粉を配合することができる。これによって、導電性の付与ないし向上ならびに耐摩耗性の向上等を図ることができる。導電性粉の配合量は任意であるが、1〜20重量部、好ましくは5〜15重量部が好ましい。導電性粉の粒径も任意であるが、好ましくは5〜30μm、特に好ましくは10〜20μmである。
【0085】
また、本発明では、耐熱性基材として、耐熱性繊維と耐熱性樹脂との複合物を用いることも可能である。このような複合物の具体例としては、耐熱性樹脂中に耐熱性繊維を分散させたものを挙げることができ、そして、シート状の耐熱性繊維に耐熱性樹脂を含浸させて形成されたものを挙げることができる。後者の耐熱性基材は、耐熱性樹脂の溶液ないし懸濁液を調製し、これをシート状の耐熱性繊維に含浸させた後、常温または加熱条件下で溶剤乾燥および焼成を行うことによって得ることができる。
【0086】
金属からなる耐熱性基材としては、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、ステンレス(SUS)、金(Au)、銀(Ag)または銅(Cu)からなるものを挙げることができる。この中では、特にアルミニウム(Al)が好ましい。
【0087】
耐熱性基材には、必要に応じて塗工面となる部分へ、予め活性化処理を施しておくことができる。好ましい活性化処理としては、シリカ粒子を付着焼成させる表面処理、金属ナトリウムエッチング表面処理、プラズマ放電処理、コロナ放電処理を挙げることが出来る。これらの活性化処理によって耐熱性基材とシリコーンとの接着性を改善することができる。
【0088】
液状シリコーン
液状シリコーンは、第一加熱工程における加熱条件によって半硬化シリコーンゴムを形成可能なものであることが必要である。
好ましい液状シリコーンとしては、50〜90℃の温度条件下に、1〜10分間放置した後に、液状シリコーンが半硬化となるものを挙げることができる。
【0089】
液状シリコーンは、粘度が3000〜100000Cpであるものが好ましく、5000〜50000Cpであるものが特に好ましい。液状シリコーンには、必要に応じて溶媒を配合することができる。溶媒としては、たとえば有機溶媒、特にトルエン、キシレン、メチルエチルケトンが好ましい。このことによって、液状シリコーンの粘度を調整することができる。有機溶媒を使用する場合、作業性、厚み調整のし易さから、溶液の粘度が3000〜100000Cp、特に5000〜50000Cpとなるような量を使用することが好ましい。ここで、粘度は、JISK7117の規定より定められたものである。
【0090】
また、液状シリコーンには、必要に応じて金属粉を配合することができる。金属粉の配合によって、例えば熱伝導性の向上を図ることができる。金属粉の好ましい具体例としては、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、金、銀、銅等を挙げることができる。金属粉の粒経は任意であるが、5〜50μmが好ましく、20〜30μmが特に好ましい。金属粉の配合量は、シリコーンゴム100重量部に対し、10〜100重量部が好ましく、20〜50重量部が特に好ましい。
【0091】
また、液状シリコーンには、必要に応じて硬化促進剤、硬化遅延剤を添加することができる。
耐熱性基材に液状シリコーンを塗布する方法としては、特にコーティングが好ましい。
【0092】
<<第一加熱工程(H1)>>
第一加熱工程(H1)は、前述の液状シリコーンを加熱して半硬化シリコーンゴムを形成させる工程である。ここで、「半硬化」とは、圧着しようとする材料を完全密着出来る粘着性を保持している状態であり、第二加熱工程(H2)によって形成されたシリコーンゴムの粘着性保持の値を「0」とした場合において、この第一加熱工程(H1)によって形成されたシリコーンゴムの粘着性保持の値が、40〜70の範囲内(好ましくは50〜60の範囲内)であることを意味する。粘着性の保持状態を、液状シリコーンが変形する比率で表した場合、第二加熱工程(H2)によって形成されたシリコーンゴムの変形率を「0」とすると、この第一加熱工程(H1)によって形成されたシリコーンゴムの変形率の値が40〜70の範囲内(好ましくは50〜60の範囲内)であることを意味する。
【0093】
第一加熱工程における加熱温度は、50〜100℃が好ましく、特に50〜90℃が好ましい。加熱温度が100℃超過では半硬化の調整が困難であり、一方、50℃未満では半硬化に時間がかかることから好ましくない。加熱時間は、1〜10分が好ましく、特に3〜8分が好ましい。加熱時間が10分超過では作業性が悪いためであり、一方、1分未満では半硬化の調整が困難であることから好ましくない。
【0094】
このような第一加熱工程によって、液状シリコーンを加熱して半硬化シリコーンゴムを形成させることによって、好ましい粘着状態を有する半硬化シリコーンゴムを形成させることができる。
【0095】
<<圧着工程(D3)>>
この圧着工程(D3)は、半硬化シリコーンゴムと耐熱性基材とを圧着する工程である。この工程(D3)では、前記の第一加熱工程(H1)で形成された半硬化シリコーンゴムに、その粘着性が保持された状態で耐熱性基材が圧着される。
【0096】
<<第二加熱工程(H2)>>
第二加熱工程(H2)は、半硬化シリコーンゴムを更に硬化させる工程である。
第二加熱工程における加熱温度は、50〜100℃が好ましく、特に50〜90℃がこのましい。加熱温度が100℃超過ではマット化処理表面形成用賦型フィルムまたはシートの耐久性が心配であり、一方、50℃未満では硬化に時間がかかることから好ましくない。加熱時間は、1〜10分が好ましく、特に3〜8分が好ましい。加熱時間が10分超過では作業性が悪いためであり、一方、1分未満では硬化不足であることから好ましくない。
【0097】
耐熱性基材の両面にシリコーンゴム層が形成されたシリコーンゴム複層シートを得る場合には、上記第二加熱工程(H2)の後に、シリコーンゴム層が形成されていない耐熱性基材の面に対し、上記のシリコーン塗布工程(A3)、第一加熱工程(H1)圧着工程(D3)および第二加熱工程(H2)を行うことができる。このような本発明によれば、耐熱性基材層の両面にシリコーンゴム層が積層されており、これらのシリコーンゴム層のそれぞれにマット化処理表面が形成されたシリコーンゴム複層シートを得ることができる。
【0098】
<シリコーンゴムシートの製造方法>
シリコーンゴム層がマット化処理表面を有する本発明によるシリコーンゴムシートを得るための好ましい製造方法としては、下記のシリコーン塗布工程(A4)、第一加熱工程(H1)、賦型工程(B4)、第二加熱工程(H2)および剥離工程(C4)からなるものを挙げることができる。この本発明によるシリコーンゴムシートの製造方法によれば、1層のシリコーンゴムシートの両面にマット化処理表面を有するシリコーンゴムシートを得ることができる。
シリコーン塗布工程(A4):第一のマット化処理表面形成用賦型フィルムまたはシートに液状シリコーンを塗布する工程
第一加熱工程(H1):液状シリコーンを加熱して半硬化シリコーンゴムを形成させる工程
賦型工程(B4):半硬化シリコーンゴムと第二のマット化処理表面形成用賦型フィルムまたはシートとを圧着して、半硬化シリコーンゴムにマット化処理表面を形成させる工程
第二加熱工程(H2):半硬化シリコーンゴムを更に硬化させる工程
剥離工程(C4):前記第一のマット化処理表面形成用賦型フィルムまたはシートおよび前記第二のマット化処理表面形成用賦型フィルムまたはシートを剥離する工程
【0099】
<<シリコーンゴム塗布工程(A4)>>
このシリコーンゴム塗布工程(A4)は、第一のマット化処理表面形成用賦型フィルムまたはシートに液状シリコーンを塗布する工程である。
【0100】
マット化処理表面形成用賦型フィルムまたはシート
シリコーンゴムシートの製造方法において用いられる第一のマット化処理表面形成用賦型フィルムまたはシートおよび第二のマット化処理表面形成用賦型フィルムまたはシートは、半硬化シリコーンゴムと圧着された状態で第一加熱工程(H1)および第二加熱工程(H2)に付されることになることから、第一加熱工程(H1)および第二加熱工程(H2)に適応した耐熱性を備えたものを用いることが好ましい。そのようなマット化処理表面形成用賦型フィルムまたはシートは、例えばポリエステル(PET)、高密度ポリエチレン(PE)等の耐熱性樹脂から形成することができる。
【0101】
上記の耐熱性樹脂のフィルムまたはシートが、マット化処理表面形成用賦型フィルムまたはシートとして利用可能な所定の表面形状を有しないときには、上記の耐熱性樹脂フィルムまたはシートに対して適当な加工を施すことによって、マット化処理表面形成用賦型フィルムまたはシートとして適した表面形状にすることができる。そのための加工としては、例えばサンドブラスト法を挙げることができる。
【0102】
本発明のシリコーンゴムシートないしシリコーンゴム複層シートは、上記の通り表面粗さが0.2〜10Ra、好ましくは0.4〜5Raであることから、シリコーンゴムシートないしシリコーンゴム複層シートにそのような表面形状が形成されるように、対応した表面形状のマット化処理表面形成用賦型フィルムまたはシートを用いることができる。
【0103】
マット化処理表面形成用賦型フィルムまたはシートの厚さは、少なくとも第一加熱工程(H1)および第二加熱工程(H2)に付された後の剥離工程(C4)において破断等の問題が実質的に生じない厚さであれば任意である。
【0104】
液状シリコーン
液状シリコーンは、この第一加熱工程における加熱条件によって半硬化シリコーンゴムを形成可能なものであることが必要である。
好ましい液状シリコーンとしては、50〜90℃の温度条件下に、1〜10分間放置した後に、液状シリコーンが半硬化となるものを挙げることができる。
【0105】
液状シリコーンは、粘度が3000〜100000Cpであるものが好ましく、5000〜50000Cpであるものが特に好ましい。液状シリコーンには、必要に応じて溶媒を配合することができる。溶媒としては、たとえば有機溶媒、特にトルエン、キシレン、メチルエチルケトンが好ましい。このことによって、液状シリコーンの粘度を調整することができる。有機溶媒を使用する場合、作業性、厚み調整のし易さから、溶液の粘度が3000〜100000Cp、特に5000〜50000Cpとなるような量を使用することが好ましい。ここで、粘度は、JISK7117の規定より定められたものである。
【0106】
また、液状シリコーンには、必要に応じて金属粉を配合することができる。金属粉の配合によって、例えば熱伝導性の向上を図ることができる。金属粉の好ましい具体例としては、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、金、銀、銅等を挙げることができる。金属粉の粒経は任意であるが、5〜50μmが好ましく、20〜30μmが特に好ましい。金属粉の配合量は、シリコーンゴム100重量部に対し、10〜100重量部が好ましく、20〜50重量部が特に好ましい。
【0107】
また、液状シリコーンには、必要に応じて硬化促進剤、硬化遅延剤を添加することができる。
第一のマット化処理表面形成用賦型フィルムまたはシートに液状シリコーンを塗布する方法としては、特にコーティングが好ましい。
【0108】
<<第一加熱工程(H1)>>
第一加熱工程(H1)は、前述の液状シリコーンを加熱して半硬化シリコーンゴムを形成させる工程である。ここで、「半硬化」とは、圧着しようとする材料を完全密着出来る粘着性を保持している状態であり、第二加熱工程(H2)によって形成されたシリコーンゴムの粘着性保持の値を「0」とした場合において、この第一加熱工程(H1)によって形成されたシリコーンゴムの粘着性保持の値が、40〜70の範囲内(好ましくは50〜60の範囲内)であることを意味する。粘着性の保持状態を、液状シリコーンが変形する比率で表した場合、第二加熱工程(H2)によって形成されたシリコーンゴムの変形率を「0」とした場合、この第一加熱工程(H1)によって形成されたシリコーンゴムの変形率の値が40〜70の範囲内(好ましくは50〜60の範囲内)であることを意味する。
【0109】
第一加熱工程における加熱温度は、50〜100℃が好ましく、特に50〜90℃が好ましい。加熱温度が100℃超過では半硬化の調整が困難であり、一方、50℃未満では半硬化に時間がかかることから好ましくない。
このような第一加熱工程によって、液状シリコーンを加熱して半硬化シリコーンゴムを形成させることによって、好ましい粘着状態を有する半硬化シリコーンゴムを形成させることができる。加熱時間は、1〜10分が好ましく、特に3〜8分が好ましい。加熱時間が10分超過では作業性が悪いためであり、一方、1分未満では半硬化の調整が困難であることから好ましくない。
【0110】
<<賦型工程(B4)>>
賦型工程(B4)は、半硬化シリコーンゴムとマット化処理表面形成用賦型フィルムまたはシートとを圧着して、半硬化シリコーンゴムにマット化処理表面を形成させる工程である。
【0111】
この賦型工程(B4)では、第一加熱工程(H1)で形成された半硬化シリコーンゴムに、その粘着性が保持された状態で、第二のマット化処理表面形成用賦型フィルムまたはシートを圧着することによって、半硬化シリコーンゴム表面に当該賦型シートに対応したマット化処理表面が形成される。したがって、半硬化シリコーンゴム表面に所望の表面形状が形成されるように、当該賦型フィルムまたはシートの表面には対応したマット化表面が予め形成されている。
【0112】
<<第二加熱工程(H2)>>
第二加熱工程(H2)は、半硬化シリコーンゴムを更に硬化させる工程である。
第二加熱工程における加熱温度は、50〜100℃が好ましく、特に50〜90℃がこのましい。加熱温度が100℃超過ではマット化処理表面形成用賦型フィルムまたはシートの耐久性が心配であり、一方、50℃未満では硬化に時間がかかることから好ましくない。加熱時間は、1〜10分が好ましく、特に3〜8分が好ましい。加熱時間が10分超過では作業性が悪いためであり、一方、1分未満では硬化不足であることから好ましくない。
【0113】
<<剥離工程(C4)>>
この剥離工程(C4)によって、前記の第一のマット化処理表面形成用賦型フィルムまたはシートおよび前記第二のマット化処理表面形成用賦型フィルムまたはシートが剥離されて、本発明によるシリコーンゴム複層シートが製造される。
【0114】
<シリコーンゴム複層シートおよびその製造方法>
上述した本発明によるシリコーンゴムシートおよび本発明によるシリコーンゴム複層シートには、フッ素ゴム層を表面層として形成することができる。
本発明は、そのようなフッ素ゴム層が表面層として形成されたシリコーンゴム複層シート、ならびに上記の第一〜第三のシリコーンゴム複層シートの製造方法によって得られたシリコーンゴム複層シートの少なくとも一方の面にフッ素ゴム層を形成することを特徴とするシリコーンゴム複層シートの製造方法に関するものである。
【0115】
フッ素ゴム層の形成方法としては、コーティングが好ましく、また、フッ素ゴム表面層の厚さは、好ましくは5〜50μm、特に好ましくは10〜20μm、である。
【実施例】
【0116】
本発明の二段階加熱法及び賦型フィルムまたはシートの使用による表面マット処理の利点、効果を示すため、下記の(1)シリコーンゴムとガラスクロスの複層体について、最適条件を示し、(1)シリコーンゴムとガラスクロスの複層体で得られた最適条件にて、以下のその他の実施例を実施した。
【0117】
<実施例1>
(1)シリコーンゴムとガラスクロスの複層体
前記複層体を得るための工程は、(イ)液状シリコーン調合、(ロ)液状シリコーンの基材への塗工、(ハ)第1加熱工程の最適加熱温度の設定、(ニ)第2加熱工程の最適加熱温度の設定、(ホ)前記の(ハ)、(ニ)最適条件での賦型工程の最適耐熱フィルムまたはシートの設定、(ヘ)前記の(ハ)、(ニ)、(ホ)最適条件での複層体作製の順で実施した。
【0118】
液状シリコーンAを得るために市販の液状シリコーン(信越社製 「KE1300」(商品名))100重量部へ熱伝導性の向上目的の酸化アルミニウム粉末を50重量部混合し、有機溶剤(トルエン)を10重量部混合し、市販の硬化剤(信越社製 「CAT1300」(商品名))を10重量部混合して粘度が50000Cpの液状高熱伝導性シリコーンAを得た。
【0119】
次に、連続塗工装置で平織りのガラスクロスの片面に前記液状高熱伝導性シリコーンAを塗工し、第1加熱炉(第1加熱工程)にて[表1]の条件で粘着性保持状態50%(完全硬化状態が粘着性保持状態0%とした場合)の半硬化状態にして状況を比較した。
【表1】

【0120】
第1加熱工程の条件は、実施例(D)が最も良いので、これを採用した。
【0121】
次に、前記と同じく連続塗工装置で平織りのガラスクロスの片面に前記液状高熱伝導性シリコーンAを塗工し、第2加熱炉(第2加熱工程)にて[表2]の条件で粘着性保持状態0%(半硬化状態が粘着性保持状態50%とした場合)の完全硬化状態にして状況を比較した。
【表2】

【0122】
第2加熱工程は、実施例(e)が最も良い。そのため、同温度で第1加熱工程と第2加熱工程を行なう場合、加熱時間を合計して2分に設定した。
【0123】
次に、[表1]、[表2]で得られた条件にて、前記と同じく連続塗工装置で平織りのガラスクロスの片面に前記液状高熱伝導性シリコーンAを塗工し、[表3]の条件で半硬化状態にする。前記、半硬化高熱伝導性シリコーンゴム表面へ[表3]の条件でマット化処理表面形成用賦型フィルムまたはシートを圧着用ロールにて圧着し、前記、マット化処理表面形成用賦型フィルムまたはシートを剥離させ、表面状態の状況を比較した。
【表3】

【0124】
評価方法
(i)滑り性
鏡面状ガラス板の上へシリコーンゴム複層シート表面を水平状態で置き、上から加圧用ロールにて一定荷重をかけ、鏡面状ガラス板とシリコーンゴム複層シートを垂直状態にして鏡面状ガラス板表面への貼り付きの有無を確認し比較した。
【0125】
(ii)表面付着性
PETフィルムを5mm角にカットし9枚並べ異物と見立て、上へシリコーンゴム複層シート表面を水平状態で置き、上から加圧用ロールにて一定荷重をかけ、シリコーンゴム複層シートの表面を垂直状態にして、前記5mm角のPETフィルムの付着状態を確認し、比較した。
【0126】
賦型はIIIが最も良く、採用した。外観ではIIも良く、表面粘着性を必要とする場合はIIの条件も採用できる。
【0127】
上記の結果より、連続塗工装置で平織りのガラスクロスの片面に前記液状高熱伝導性シリコーンAを塗工し、第1加熱炉にて90℃×1分間加熱し粘着性保持状態50%(完全硬化状態が粘着性状態0%とした場合)の半硬化状態にする。この半硬化高熱伝導性シリコーンA表面へ表面がサンドブラスト法にてマット状の表面粗さ3Raのポリエステルフィルム(以下、「マット状PETフィルム」と記す)を圧着用ロールにて圧着し、第2加熱炉にて90℃×1分間加熱硬化させた後、前記マット状PETフィルムを剥離し、前記マット状PETフィルムの表面形状を転写させた、複層体を得た。さらに、前記複層体のガラスクロスのもう片面へも前記と同じ作業を行い、両面の表面にマット処理を施した高熱伝導性に優れるシリコーンゴムとガラスクロスの複層体を得た。複層体全体の厚さは800μmであった。
【0128】
<実施例2>
(1)シリコーンゴムとガラスクロスの複層体
実施例1と同様のマット状PETフィルムへ実施例1と同様の液状高熱伝導性シリコーンAを塗工し、第1加熱炉にて90℃×1分間加熱し半硬化状態にする。この半硬化高熱伝導性シリコーンA表面へ実施例1と同様のガラスクロスを圧着用ロールにて圧着し、第2加熱炉にて90℃×1分間加熱硬化させ、前記マット状PETフィルムを剥離し、前記マット状PETフィルムの表面形状を転写させた、複層体を得た。さらに、前記複層体のガラスクロスのもう片面へも前記と同じ作業を行い、両面の表面にマット処理を施した高熱伝導性に優れるシリコーンゴムとガラスクロスの複層体を得た。複層体全体の厚さは800μmであった。
【0129】
<実施例3>
(2)シリコーンゴムと導電性フッ素樹脂含浸ガラスクロスの複層体
導電性フッ素樹脂含浸ガラスクロスを得るため、PTFE樹脂の水性懸濁液100重量部へカーボンブラック粉を混合し、導電性PTFE樹脂の水性懸濁液を得た。
次に、連続塗工装置で平織りのガラスクロスに前記PTFE樹脂の水性懸濁液を含浸させた後、80℃で乾燥し、350℃の温度で焼成させ、導電性フッ素樹脂含浸ガラスクロスを得た。
【0130】
導電性フッ素樹脂含浸ガラスクロスへ表面活性化処理を行なうため、シリカの水性懸濁液100重量部へPTFE樹脂の水性懸濁液100重量部を混合し表面処理液を得た。
水性懸濁液を塗布し、80℃で乾燥し、350℃の温度で焼成させ、シリカを付着焼成させて表面処理層を得た。
【0131】
液状シリコーンBを得るために市販の液状高熱伝導性シリコーン(東レダウ社製 「SE4450」(商品名))100重量部へ、有機溶剤(トルエン)を5重量部混合し、粘度が5000Cpの液状高熱伝導性シリコーンBを得た。
【0132】
次に、連続塗工装置で前記導電性フッ素樹脂含浸ガラスクロスの前記表面処理層面へ液状高熱伝導性シリコーンBを塗工し、第1加熱炉にて90℃×1分間加熱し半硬化状態にする。この半硬化高熱伝導性シリコーンB表面へ実施例1と同様のマット状PETフィルムを圧着用ロールにて圧着し、第2加熱炉にて90℃×1分間加熱硬化させ、前記マット状PETフィルムを剥離し、前記マット状PETフィルムの表面形状を転写させ、表面にマット処理を施した高熱伝導性に優れるシリコーンゴムと導電性フッ素樹脂含浸ガラスクロスの複層体を得た。複層体全体の厚さは250μmであった。
【0133】
<実施例4>
(2)シリコーンゴムと導電性フッ素樹脂含浸ガラスクロスの複層体
実施例1と同様のマット状PETフィルムへ実施例3と同様の液状高熱伝導性シリコーンBを塗工し、第1加熱炉にて90℃×1分間加熱し半硬化状態にする。この半硬化高熱伝導性シリコーンB表面へ実施例3と同様に導電性フッ素樹脂含浸ガラスクロスの表面処理層面を圧着用ロールにて圧着し、第2加熱炉にて90℃×1分加熱硬化させ、前記マット状PETフィルムを剥離し、前記マット状PETフィルムの表面形状を転写させ、表面にマット処理を施した高熱伝導性に優れるシリコーンゴムと導電性フッ素樹脂含浸ガラスクロスの複層体を得た。複層体全体の厚さは250μmであった。
【0134】
<実施例5>
(3)シリコーンゴムとアルミニウム箔の複層体
アルミニウム箔へ実施例3と同様の液状高熱伝導性シリコーンBを塗工し、第1加熱炉にて90℃×1分間加熱し半硬化状態にする。
この半硬化高熱伝導性シリコーンB表面へ実施例1と同様のマット状PETフィルムを圧着用ロールにて圧着し、第2加熱炉にて90℃×1分加熱硬化させ、前記マット状PETフィルムを剥離させ、前記マット状PETフィルムの表面形状を転写させ、表面にマット処理を施した高熱伝導性に優れるシリコーンゴムとアルミニウム箔の複層体を得た。複層体全体の厚さは300μmであった。
【0135】
<実施例6>
(3)シリコーンゴムとアルミニウム箔の複層体
実施例1と同様のマット状PETフィルムへ実施例3と同様の液状高熱伝導性シリコーンBを塗工し、第1加熱炉にて90℃×1分間加熱し半硬化状態にする。この半硬化高熱伝導性シリコーンB表面へアルミニウム箔を圧着用ロールにて圧着し、第2加熱炉にて90℃×1分加熱硬化させ、前記マット状PETフィルムを剥離し、前記マット状PETフィルムの表面形状を転写させ、表面にマット処理を施した高熱伝導性に優れるシリコーンゴムとアルミニウム箔の複層体を得た。複層体全体の厚さは300μmであった。
【0136】
<実施例7>
(4)シリコーンゴム+ポリイミドフィルムの複層体
ポリイミドフィルムへ実施例3と同様の液状高熱伝導性シリコーンBを塗工し、第1加熱炉にて90℃×1分間加熱し半硬化状態にする。この半硬化高熱伝導性液状シリコーンB表面へ実施例1と同様のマット状PETフィルムを圧着用ロールにて圧着し、第2加熱炉にて90℃×1分加熱硬化させ、前記マット状PETフィルムを剥離させ、前記マット状PETフィルムの表面形状を転写させ、表面にマット処理を施した高熱伝導性に優れるシリコーンゴムとポリイミドフィルムの複層体を得た。複層体全体の厚さは250μmであった。
【0137】
<実施例8>
(4)シリコーンゴム+ポリイミドフィルムの複層体
実施例1と同様のマット状PETフィルムへ実施例3と同様の液状高熱伝導性シリコーンBを塗工し、第1加熱炉にて90℃×1分間加熱し半硬化状態にする。この半硬化高熱伝導シリコーンB表面へポリイミドフィルムを圧着用ロールにて圧着し、第2加熱炉にて90℃×1分加熱硬化させ、前記マット状PETフィルムを剥離させ、前記マット状PETフイルムの表面形状を転写させ、表面にマット処理を施した熱伝導性前記シリコーンゴムとポリイミドフィルムの複層体を得た。複層体全体の厚さは250μmであった。
【0138】
<実施例9>
(5)シリコーンゴムとフッ素樹脂フィルムの複層体
導電性PTFEフィルムの片面へ金属ナトリウムエッチング表面処理を施し、この導電性PTFEフィルムの前記表面処理層面へ実施例3同様の液状高熱伝導性シリコーンBを塗工し、第1加熱炉にて90℃×1分間加熱し半硬化状態にする。
この半硬化高熱伝導性シリコーンB表面へ実施例1と同様のマット状PETフィルムを圧着用ロールにて圧着し、第2加熱炉にて90℃×1分加熱硬化させ、前記マット状PETフィルムを剥離させ、前記マット状PETフィルムの表面形状を転写させ、表面にマット処理を施した高熱伝導性に優れるシリコーンゴムと導電性PTFEフィルムの複層体を得た。複層体全体の厚さは250μmであった。
【0139】
<実施例10>
(5)シリコーンゴムとフッ素樹脂フィルムの複層体
実施例1と同様のマット状PETフィルムへ実施例3と同様の液状高熱伝導性シリコーンBを塗工し、第1加熱炉にて90℃×1分間加熱し半硬化状態にする。
この半硬化高熱伝導性シリコーンB表面へ導電性PTFEフィルムを圧着用ロールにて圧着し、第2加熱炉にて90℃×1分加熱硬化させ、前記マット状PETフィルムを剥離し、前記マット状PETフィルムの表面形状を転写させ、表面にマット処理を施した高熱伝導性シリコーンゴムと導電性PTFEフィルムの複層体を得た。複層体全体の厚さは250μmであった。
【0140】
<実施例11>
(6)ポリイミドフィルムとシリコーンゴムとフッ素樹脂フィルムの複層体
ポリイミドフィルムへ実施例3と同様の液状高熱伝導性シリコーンBを塗工し、第1加熱炉にて90℃×1分間加熱し半硬化状態にする。この半硬化高熱伝導性シリコーンB表面へ実施例9と同様の導電性PTFEフィルムを圧着用ロールにて圧着させ、第2加熱炉にて90℃×1分加熱硬化させ、高熱伝導性シリコーンBを接着剤とした、ポリイミドフィルムと高熱伝導性に優れるシリコーンゴムとフッ素樹脂フィルムの複層体を得た。複層体全体の厚さは250μmであった。
【0141】
<実施例12>
(7)フッ素樹脂フィルムとシリコーンゴムとフッ素樹脂フィルムの複層体
実施例9と同様の導電性PTFEフィルムへ実施例3と同様の液状高熱伝導性シリコーンBを塗工し、第1加熱炉にて90℃×1分間加熱し半硬化状態にする。この半硬化高熱伝導性シリコーンB表面へ別の導電性PTFEフィルムを圧着用ロールにて圧着させ、第2加熱炉にて90℃×1分加熱硬化し、高熱伝導性シリコーンBを接着剤とした、ポリイミドフィルムと高熱伝導性に優れるシリコーンゴムとフッ素樹脂フィルムの複層体をえた。複層体全体の厚さは250μmであった。
【0142】
<実施例13>
(8)(高熱伝導性削除)シリコーンゴムシート
実施例1と同様のマット状PETフィルムへ実施例1と同様の液状高熱伝導シリコーンAを塗工し、第1加熱炉にて90℃×1分間加熱し半硬化状態にする。
この半硬化高熱伝導シリコーンAの反対面へ別の実施例1と同様のマット状PETフィルムを圧着用ロールにて圧着し、第2加熱炉にて90℃×1分加熱硬化させた後、前記2枚のマット状PETフィルムを剥離し、前記マット状PETフィルムの表面形状を転写させ、両面の表面にマット処理を施した熱伝導性に優れるシリコーンゴムシートを得た。シートの厚さは250μmであった。
【0143】
<実施例14>
(9)フッ素ゴムとシリコーンゴムとガラスクロスの複層体
フッ素ゴムを得るために、市販の液状フッ素ゴム100重量部へ市販の硬化剤を5重量部混合し粘度が1000Cpの液状フッ素ゴムを得た。
次に、実施例1の「表面にマット処理を施した高熱伝導性に優れるシリコーンゴムとガラスクロスの複層体」へ、前記で得た液状フッ素ゴムを塗工し、150℃×30分加熱硬化し、複層体を得た。さらに、前記複層体のもう片面へも前記と同じ作業を行い、表面にマット処理を施した高熱伝導性に優れるシリコーンゴムとガラスクロスの複層体の表面へフッ素ゴムを複層した複層体を得た。複層体全体の厚さは840μmであった。
【0144】
上記の結果の様に、本発明によれば、滑り性、平滑性、微粘着性、耐熱性、クッション性、離型性、寸法安定性、耐久性、熱伝導性、導電性、揮発性が無いことのすくなくともいずれかの特性に優れる耐熱クッション複層シート及びその製造方法を提供される。
【図面の簡単な説明】
【0145】
【図1】実施例1および2の本発明によるシリコーンゴムシートの構造を示す断面図。
【図2】実施例3および4の本発明によるシリコーンゴムシートの構造を示す断面図。
【図3】実施例5および6の本発明によるシリコーンゴムシートの構造を示す断面図。
【図4】実施例7および8の本発明によるシリコーンゴムシートの構造を示す断面図。
【図5】実施例9および10の本発明によるシリコーンゴムシートの構造を示す断面図。
【図6】実施例11の本発明によるシリコーンゴムシートの構造を示す断面図。
【図7】実施例12の本発明によるシリコーンゴムシートの構造を示す断面図。
【図8】実施例13の本発明によるシリコーンゴムシートの構造を示す断面図。
【図9】実施例14の本発明によるシリコーンゴムシートの構造を示す断面図。
【符号の説明】
【0146】
1 シリコーンゴム
2 ガラス繊維
3 PTFE樹脂
4 ガラス繊維
5 アルミニウム箔
6 ポリイミドフィルム
7 PTFEフィルム
8 フッ素ゴム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の第一加熱工程(H1)および第二加熱工程(H2)によって形成されたシリコーンゴム層からなることを特徴とする、シリコーンゴムシート。
第一加熱工程(H1):液状シリコーンを加熱して半硬化シリコーンゴムを形成させる工程
第二加熱工程(H2):半硬化シリコーンゴムを更に硬化させる工程
【請求項2】
前記のシリコーンゴム層がマット化処理表面を有するものである、請求項1に記載のシリコーンゴムシート。
【請求項3】
耐熱性基材層と、請求項1に記載のシリコーンゴム層とを有することを特徴とする、シリコーンゴム複層シート。
【請求項4】
下記のシリコーン塗布工程(A1)、第一加熱工程(H1)、賦型工程(B1)、第二加熱工程(H2)および剥離工程(C1)からなることを特徴とする、シリコーンゴム複層シートの製造方法。
シリコーン塗布工程(A1):耐熱性基材に液状シリコーンを塗布する工程
第一加熱工程(H1):液状シリコーンを加熱して半硬化シリコーンゴムを形成させる工程
賦型工程(B1):半硬化シリコーンゴムとマット化処理表面形成用賦型フィルムまたはシートとを圧着して、半硬化シリコーンゴムにマット化処理表面を形成させる工程
第二加熱工程(H2):半硬化シリコーンゴムを更に硬化させる工程
剥離工程(C1):前記のマット化処理表面形成用賦型フィルムまたはシートを剥離する工程
【請求項5】
下記のシリコーン塗布工程(A2)、第一加熱工程(H1)、圧着工程(D2)、第二加熱工程(H2)および剥離工程(C2)からなることを特徴とする、シリコーンゴム複層シートの製造方法。
シリコーン塗布工程(A2):マット化処理表面形成用賦型フィルムまたはシートに液状シリコーンを塗布する工程
第一加熱工程(H1):液状シリコーンを加熱して半硬化シリコーンゴムを形成させる工程
圧着工程(D2):半硬化シリコーンゴムと耐熱性基材とを圧着する工程
第二加熱工程(H2):半硬化シリコーンゴムを更に硬化させる工程
剥離工程(C2):前記のマット化処理表面形成用賦型フィルムまたはシートを剥離する工程
【請求項6】
下記のシリコーン塗布工程(A3)、第一加熱工程(H1)、圧着工程(D3)および第二加熱工程(H2)からなることを特徴とする、シリコーンゴム複層シートの製造方法。
シリコーン塗布工程(A3):第一の耐熱性基材に液状シリコーンを塗布する工程
第一加熱工程(H1):液状シリコーンを加熱して半硬化シリコーンゴムを形成させる工程
圧着工程(D3):半硬化シリコーンゴムと第二の耐熱性基材とを圧着する工程
第二加熱工程(H2):半硬化シリコーンゴムを更に硬化させる工程
【請求項7】
下記のシリコーン塗布工程(A4)、第一加熱工程(H1)、賦型工程(B4)、第二加熱工程(H2)および剥離工程(C4)からなることを特徴とする、シリコーンゴムシートの製造方法。
シリコーン塗布工程(A4):第一のマット化処理表面形成用賦型フィルムまたはシートに液状シリコーンを塗布する工程
第一加熱工程(H1):液状シリコーンを加熱して半硬化シリコーンゴムを形成させる工程
賦型工程(B4):半硬化シリコーンゴムと第二のマット化処理表面形成用賦型フィルムまたはシートとを圧着して、半硬化シリコーンゴムにマット化処理表面を形成させる工程
第二加熱工程(H2):半硬化シリコーンゴムを更に硬化させる工程
剥離工程(C4):前記第一のマット化処理表面形成用賦型フィルムまたはシートおよび前記第二のマット化表面形成用賦型フィルムまたはシートを剥離する工程
【請求項8】
請求項3に記載のシリコーンゴム複層シートにフッ素ゴム層が表面層として形成された、シリコーンゴム複層シート。
【請求項9】
請求項4〜6のいずれか1項に記載のシリコーンゴム複層シートの製造方法によって得られたシリコーンゴム複層シートの少なくとも一方の面にフッ素ゴム層を形成することを特徴とする、シリコーンゴム複層シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−274274(P2009−274274A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−126248(P2008−126248)
【出願日】平成20年5月13日(2008.5.13)
【出願人】(000243331)本多産業株式会社 (11)
【Fターム(参考)】