説明

シリコーン樹脂、シリコーン組成物、被覆基材、および補強シリコーン樹脂フィルム

【課題】改良された機械的かつ熱的特性を有する自立性シリコーン樹脂フィルムを提供する。
【解決手段】式 O(3-a)/21aSi−SiR1b(3-b)/2 (I)を有するジシリロキサン単位および粒子形状のシロキサン単位を含むシリコーン樹脂;シリコーン樹脂を含有するシリコーン組成物;硬化生成物またはシリコーン樹脂の酸化生成物を含む被覆基材;および補強シリコーン樹脂フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシリコーン樹脂、特にジシリロキサン単位と粒子形状のシロキサン単位を含むシリコーン樹脂に関する。本発明はまた、シリコーン樹脂を含むシリコーン組成物、シリコーン樹脂の硬化生成物または酸化生成物を含む被覆基材、および補強シリコーン樹脂フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーン樹脂は、高い熱安定性、良好な耐湿性、優れた柔軟性、高い酸素耐性、低い誘電率および高い透明性を含む、シリコーン樹脂固有の特性の組合せに基づいて、種々の用途において有用である。例えば、シリコーン樹脂は自動車、電子、建設、家電および航空宇宙産業で保護用または誘電体コーティング剤として広く使われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭59−96122号公報
【特許文献2】米国特許第5,801,262号明細書
【特許文献3】米国特許第6,376,078号明細書
【特許文献4】米国特許第4,761,454号明細書
【特許文献5】米国特許第5,371,139号明細書
【特許文献6】国際公開番号WO03/099828号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シリコーン樹脂コーティング剤は、種々の基材を保護し、絶縁し、または接着するために使われるが、自立性シリコーン樹脂フィルムは低い引裂強度、高い脆性、低いガラス転位点や高い熱膨張率のため利用が限られていた。その結果、改良された機械的かつ熱的特性を有する自立性シリコーン樹脂フィルムが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、式 O(3-a)/21aSi−SiR1b(3-b)/2 (I)(ここで、各R1は独立して−H、ヒドロカルビル、または置換ヒドロカルビルであり;aは0、1、または2であり;bは0、1、2、または3である)を有するジシリロキサン単位および粒子形状のシロキサン単位を含むシリコーン樹脂を対象とする。
【0006】
本発明はまた、前述のシリコーン樹脂および有機溶媒を含むシリコーン組成物を対象とする。
【0007】
本発明はさらに、基材およびその基材上の被覆、ここで被覆が前述のシリコーン樹脂の硬化生成物または酸化生成物である、を含む被覆基材を対象にする。
【0008】
本発明は今さらに、前述のシリコーン樹脂の硬化生成物および硬化生成物に埋め込まれた繊維補強材を含む補強シリコーン樹脂フィルムを対象とする。
【0009】
本発明のシリコーン樹脂は種々の有機溶媒に可溶であり、実質的にゲルを含まない。さらに、シリコーン樹脂は硬化して、種々の基材への良好な接着を示す被覆を製造する。
【0010】
本発明のシリコーン組成物は、好都合なことに良好な貯蔵安定性を有する一液型組成物として処方することができる。さらに、組成物は、例えばスピンコート法、印刷法、スプレー法、グラビアコート法およびスロットダイコート法などの従来からの高速法により基材に塗布することができる。
【発明の効果】
【0011】
被覆基材の被覆は非常に小さい表面粗さ、高い耐熱誘電亀裂性、および低い引張強度を示す。
【0012】
本発明の補強シリコーン樹脂フィルムは、同じシリコーン組成物から製造された非補強シリコーン樹脂フィルムと比較して、低熱膨張率、高引張強度、および高モジュラスを有する。また、補強および非補強シリコーン樹脂フィルムは同程度のガラス転移点を有するが、補強フィルムはガラス転移に相当する温度範囲で非常に小さいモジュラス変化を示す。
【0013】
本発明の補強シリコーン樹脂フィルムは、高い熱安定性、柔軟性、機械的強度、および透明性を有するフィルムが要求される用途で有用である。例えば、シリコーン樹脂フィルムは、フレキシブルディスプレー、太陽電池、フレキシブル電子基板、タッチスクリーン、耐火性壁紙、および耐衝撃性窓の不可欠な構成要素として使うことができる。フィルムは透明なまたは不透明な電極に適した基板でもある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
ここで用いられる用語「ジシリロキサン単位」は、式 O(3-a)/21aSi−SiR1b(3-b)/2 (I)(ここで、R1、a、およびbは以下に定義されている)を有するオルガノシリコン単位をさす。また,用語「ジシリロキサン単位のモル%」は、シリコーン樹脂中のシロキサン単位およびジシリロキサン単位のモル数の合計に対する、樹脂中の式(I)を有するジシリロキサン単位のモル数の比に、100を乗じたものとして定義される。さらに、用語「粒子形状のシロキサン単位のモル%」は、樹脂中のシロキサン単位およびジシリロキサン単位のモル数の合計に対する、樹脂中の粒子形状のシロキサン単位のモル数の比に、100を乗じたものとして定義される。
【0015】
本発明によるシリコーン樹脂は、式 O(3-a)/21aSi−SiR1b(3-b)/2 (I)を有するジシリロキサン単位および粒子形状のシロキサン単位を含む、ここで、各R1は独立して−H、ヒドロカルビル、または置換ヒドロカルビルであり;aは0、1、または2であり;bは0、1、2、または3である。
【0016】
1で表わされるヒドロカルビル基は典型的には1から10個の炭素原子、あるいは1から6個の炭素原子、あるいは1から4個の炭素原子を有する。少なくとも3個の炭素原子を有する非環式ヒドロカルビル基は分岐または非分岐構造を有していてもよい。ヒドロカルビル基の例として、以下に限定されないが、アルキル、例えばメチル、エチル、プロピル、1−メチルエチル、ブチル、1−メチルプロピル、2−メチルプロピル、1,1−ジメチルエチル、ペンチル、1−メチルブチル、1−エチルプロピル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1,2−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、およびデシルなど;シクロアルキル、例えばシクロペンチル、シクロヘキシル、およびメチルシクロヘキシルなど;アリール、例えばフェニルおよびナフチルなど;アルカリール、例えばトリルおよびキシリルなど;アラルキル、例えばベンジルおよびフェネチルなど;アルケニル、例えばビニル、アリルおよびプロペニルなど;アラルケニル、例えばスチリルおよびシンナミルなど;およびアルキニル、例えばエチニルおよびプロピニルなど、が挙げられる。
【0017】
1で表わされる置換ヒドロカルビル基は1個以上の同じまたは異なる置換基を含むことができる、ただし置換基は加アルコール分解生成物、加水分解物、またはシリコーン樹脂の形成を妨げてはならない。置換基の例として、以下に限定されないが、−F、−Cl、−Br、−I、−OH、−OR2、−OCH2CH2OR3、−CO23、−OC(=O)R2、−C(=O)NR32、ここでR2はC1からC8のヒドロカルビルであり、およびR3はR2または−Hである、が挙げられる。
【0018】
2で表わされるヒドロカルビル基は典型的には1から8個の炭素原子、あるいは3から6個の炭素原子を有する。少なくとも3個の炭素原子を有する非環式ヒドロカルビル基は分岐または非分岐構造を有していてもよい。ヒドロカルビル基の例として、以下に限定されないが、非分岐および分岐アルキル、例えばメチル、エチル、プロピル、1−メチルエチル、ブチル、1−メチルプロピル、2−メチルプロピル、1,1−ジメチルエチル、ペンチル、1−メチルブチル、1−エチルプロピル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1,2−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、ヘキシル、ヘプチル、およびオクチルなど;シクロアルキル、例えばシクロペンチル、シクロヘキシル、およびメチルシクロヘキシルなど;フェニル;アルカリール、例えばトリルおよびキシリルなど;アラルキル、例えばベンジルおよびフェネチルなど;アルケニル、例えばビニル、アリルおよびプロペニルなど;アリールアルケニル、例えばスチリルなど;およびアルキニル、例えばエチニルおよびプロピニルなど、が挙げられる。
【0019】
シリコーン樹脂は、式(I)を有するジシリロキサン単位および粒子形状のシロキサン単位両方を含む。シリコーン樹脂は、典型的には式(I)を有するジシリロキサン単位を少なくとも1モル%含む。例えば、シリコーン樹脂は典型的には式(I)を有するジシリロキサン単位を1から99モル%、あるいは10から70モル%、あるいは20から50モル%含む。
式(I)を有するジシリロキサン単位に追加して、シリコーン樹脂は典型的には粒子形状のシロキサン単位を最大で99モル%含む。例えば、シリコーン樹脂は典型的には粒子形状のシロキサン単位を0.0001から99モル%、あるいは1から80モル%、あるいは10から50モル%含む。粒子の組成や特性は、シリコーン樹脂の製造方法において下に記述される。
式(I)を有する単位および粒子形状のシロキサン単位に追加して、シリコーン樹脂は、最大で98.9モル%、あるいは最大で90モル%、あるいは最大で60モル%の他のシロキサン単位(すなわち、粒子形状ではないシロキサン単位)を含むことができる。他のシロキサン単位の例として、以下に限定されないが、R13SiO1/2、R12SiO2/2、R1SiO3/2、およびSiO4/2、(ここで、R1は上述され例示されているとおりである)から選ばれる式を有する単位が挙げられる。
【0020】
シリコーン樹脂は、典型的には200から500,000、あるいは500から150,000、あるいは1,000から75,000、あるいは2,000から12,000の数平均分子量を有する。ここで、分子量は、屈折率検出器およびポリスチレン標準液を用いてゲル透過クロマトグラフィーで測定される。
シリコーン樹脂は典型的には、29NMRで測定される、1から50%(w/w)、あるいは5から50%(w/w)、あるいは5から35%(w/w)、あるいは10から35%(w/w)、あるいは10から20%(w/w)のケイ素結合ヒドロキシ基を含む。
【0021】
シリコーン樹脂の例として、以下に限定されないが、以下の式を有する樹脂が挙げられる:(O2/2MeSiSiO3/20.1(PhSiO3/20.9、(O2/2MeSiSiMeO2/20.2(Me2SiO2/20.1(PhSiO3/20.7、(O2/2MeSiSiO3/20.1(O2/2MeSiSiMeO2/20.15(Me2SiO2/20.1(MeSiO3/20.65、(O1/2Me2SiSiO3/20.25(SiO4/20.5(MePhSiO2/20.25、(O2/2EtSiSiEt21/20.1(O2/2MeSiSiO3/20.15(Me3SiO1/20.05(PhSiO3/20.5(SiO4/20.2、(O2/2MeSiSiO3/20.3(PhSiO3/20.7、(O2/2MeSiSiO3/20.4(MeSiO3/20.6、(O3/2SiSiMeO2/20.5(Me2SiO2/20.5、(O3/2SiSiMeO2/20.6(Me2SiO2/20.4、(O3/2SiSiMeO2/20.7(Me2SiO2/20.3、(O3/2SiSiMe21/20.75(PhSiO3/20.25、(O3/2SiSiMeO2/20.75(SiO4/20.25、(O2/2MeSiSiMe21/20.5(O2/2MeSiSiO3/20.3(PhSiO3/20.2、(O2/2EtSiSiMeO2/20.8(MeSiO3/20.05(SiO4/20.15、(O2/2MeSiSiO3/20.8(Me3SiO1/20.05(Me2SiO2/20.1(SiO4/20.5、(O2/2MeSiSiEtO2/20.25(O3/2SiSiMeO2/20.6(MeSiO3/20.1(SiO4/20.05、(O1/2Me2SiSiMeO2/20.75(O2/2MeSiSiMeO2/20.25、(O1/2Et2SiSiEtO2/20.5(O2/2EtSiSiEtO2/20.5、(O1/2Et2SiSiEtO2/20.2(O2/2MeSiSiMeO2/20.8、および(O1/2Me2SiSiMeO2/20.6(O2/2EtSiSiEtO2/20.4、ここでMeはメチルであり、Etはエチルであり、Phはフェニルであり、樹脂は粒子形状のシロキサン単位を含み、および括弧外の下付き数字はモル分率を示す。また、前述の式で、単位の順序が特定されることはない。
【0022】
シリコーン樹脂は、(i)加アルコール分解生成物を製造するために有機溶媒の存在下で、式Z3-a1aSi−SiR1b3-bを有する少なくとも1種のハロジシランおよび任意で式R1bSiZ4-bを有する少なくとも1種のハロシランを、式R4OHを有する少なくとも1種のアルコールと反応させ(ここで、R1は独立して−H、ヒドロカルビル、または置換ヒドロカルビルであり、R4はアルキルまたはシクロアルキルであり、Zはハロゲンであり、a=0,1、または2、およびb=0,1,2、または3である);(ii)加水分解生成物を製造するために、0から40℃までの温度でシロキサン粒子の存在下で加アルコール分解生成物を水と反応させ;および(iii)樹脂を製造するために加水分解物を加熱することにより製造することができる。
【0023】
シリコーン樹脂の製造法の工程(i)で、有機溶媒の存在下で、式Z3-a1aSi−SiR1b3-bを有する少なくとも1種のハロジシランおよび任意で式R1bSiZ4-bを有する少なくとも1種のハロシランが、式R4OHを有する少なくとも1種のアルコールと反応し、加アルコール分解生成物を製造する、ここで、R1は独立して−H、ヒドロカルビル、または置換ヒドロカルビルであり、R4はアルキルまたはシクロアルキルであり、Zはハロゲンであり、a=0,1、または2、およびb=0,1,2、または3である。ここで用いられる用語「加アルコール分解生成物」とは、ハロジシランおよびハロシランが存在すればハロシラン中のケイ素結合ハロゲン原子を−OR4基(ここで、R4は以下に記述例示されるとおりである)で置換するによって形成される生成物をさす。
【0024】
ハロジシランは、式Z3-a1aSi−SiR1b3-bを有する少なくとも1種のハロジシランである、ここで、R1、a、およびbはシリコーン樹脂について上述され例示されたとおりであり、およびZはハロゲンである。Zで表わされるハロゲン原子の例として、−F、−Cl、−Br、および−Iが挙げられる。
【0025】
ハロジシランの例としては、以下に限定されないが、次の式を有するジシランが挙げられる:Cl2MeSiSiMeCl2、Cl2MeSiSiMe2Cl、Cl3SiSiMeCl2、Cl2EtSiSiEtCl2、Cl2EtSiSiEt2Cl、Cl3SiSiEtCl2、Cl3SiSiCl3、Br2MeSiSiMeBr2、Br2MeSiSiMe2Br、Br3SiSiMeBr2、Br2EtSiSiEtBr2、Br2EtSiSiEt2Br、Br3SiSiEtBr2、Br3SiSiBr3、I2MeSiSiMeI2、I2MeSiSiMe2I、I3SiSiMeI2、I2EtSiSiEtI2、I2EtSiSiEt2I、I3SiSiEtI2、およびI3SiSiI3、ここでMeはメチルであり、およびEtはエチルである。
【0026】
ハロジシランは、単一のハロジシランまたは2種以上の異なるハロジシランを含む混合物でもよく、各ハロジシランは式Z3-a1aSi−SiR1b3-bを有する(ここで、R1、a、およびbは上述され例示されたとおりである)。
【0027】
ハロジシランの製造法は当技術分野で周知であり;これら化合物の多くは市販されている。また、ハロジシランは、国際公開番号WO03/099828で教示されているように、メチルクロロシランを合成する直接法で製造された70℃を超える沸点を有する残渣から得ることができる。直接法残渣の分別蒸留がクロロジシランの混合物を含むメチルクロロジシラン流(Stream)を与える。
【0028】
任意のハロシランは式R1bSiZ4-bを有する少なくとも1種のハロシランである。ここで、R1は独立して−H、ヒドロカルビル、または置換ヒドロカルビルであり、Zはハロゲンであり、およびb=0,1,2、または3である。
【0029】
ハロシランの例として、以下に限定されないが、次の式を有するシランが挙げられる:SiCl4、SiBr4、HSiCl3、HSiBr3、MeSiCl3、EtSiCl3、MeSiBr3、EtSiBr3、Me2SiCl2、Et2SiCl2、Me2SiBr2、Et2SiBr2、Me3SiCl、Et3SiCl、Me3SiBr、およびEt3SiBrであり、ここでMeはメチルであり、Etはエチルである。
【0030】
ハロシランは単一のハロシランまたは2種以上の異なるハロシランを含む混合物でもよく、各ハロシランは、式R1bSiZ4-bを有する(ここで、R1、Z、およびbは上述され例示されているとおりである)。さらに、ハロシランの製造法は当技術分野で周知であり;これら化合物の多くは市販されている。
【0031】
アルコールは式R4OHを有する少なくとも1種のアルコールである。ここで、R4はアルキルまたはシクロアルキルである。アルコールの構造は直鎖状または分岐状でもよい。また、アルコール中のヒドロキシ基は第一級、第二級または第三級炭素原子に結合することができる。
【0032】
4で表わされるアルキル基は、典型的には1から8個の炭素原子、あるいは1から6個の炭素原子、あるいは1から4個の炭素原子を有する。少なくとも3個の炭素原子を有するアルキル基は分岐状または非分岐状構造を有していてもよい。アルキル基の例として、以下に限定されないが、メチル、エチル、プロピル、1−メチルエチル、ブチル、1−メチルプロピル、2−メチルプロピル、1,1−ジメチルエチル、ペンチル、1−メチルブチル、1−エチルプロピル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1,2−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、ヘキシル、ヘプチル、およびオクチルが挙げられる。
【0033】
2で表わされるシクロアルキル基は典型的には3から12個の炭素原子、あるいは4から10個の炭素原子、あるいは5から8個の炭素原子を有する。シクロアルキル基の例としては、以下に限定されないが、シクロペンチル、シクロヘキシル、およびメチルシクロヘキシルが挙げられる。
【0034】
アルコールの例としては、以下に限定されないが、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−ブタノール、1,1−ジメチル−1−エタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロへキサノール、ヘプタノール、およびオクタノールが挙げられる。アルコールは、単一アルコールまたは2種以上の異なるアルコールを含む混合物でもよく、各アルコールは上述され例示されたとおりである。
【0035】
有機溶媒は、本製法の条件下でハロジシラン、ハロシランまたはシリコーン樹脂生成物と反応しない、任意の非プロトン性有機溶剤または極性非プロトン性有機溶剤であり、かつハロジシラン、ハロシランおよびシリコーン樹脂と混和性である。有機溶媒は水と非混和性または混和性でもよい。ここで用いられる用語「非混和性」とは溶媒への水の溶解度が25℃でおよそ0.1g/溶媒100g未満であることを意味する。有機溶媒はまた、ハロジシランおよび任意であるハロシランと反応する、式R4OH(ここで、R4は上述され例示されているとおりである)を有するアルコールであり得る。
【0036】
有機溶媒の例としては、以下に限定されないが、飽和脂肪族炭化水素、例えばn−ペンタン、ヘキサン、n−ヘプタン、イソオクタンおよびドデカンなど;シクロ脂肪族炭化水素、例えばシクロペンタンおよびシクロヘキサンなど;芳香族炭化水素、例えばベンゼン、トルエン、キシレンおよびメシチレンなど;環状エーテル、例えばテトラヒドロフラン(THF)およびジオキサンなど;ケトン、例えばメチルイソブチルケトン(MIBK)など;ハロゲン化アルカン、例えばトリクロロエタンなど;ハロゲン化芳香族炭化水素、例えばブロモベンゼンおよびクロロベンゼンなど;およびアルコール、例えばメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−ブタノール、1,1−ジメチル−1−エタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ヘプタノール、およびオクタノールが挙げられる。
【0037】
有機溶媒は、単一有機溶媒または2種以上の異なる有機溶媒を含む混合物でもよく、各有機溶媒は上述され例示されているとおりである。
【0038】
加アルコール分解生成物を製造するためのハロジシランおよび任意であるハロシランとアルコールとの反応は、例えばハロシランをアルコールと接触させるに適する任意の標準反応器で行うことができる。適する反応器は、ガラスおよびテフロン(登録商標)ライニングガラス反応器である。好ましくは、反応器には撹拌手段、例えば撹拌機を備え付けられている。
【0039】
ハロジシラン、任意であるハロシラン、アルコール、および有機溶媒は、任意の順番で混合し得る。典型的には、ハロジシラン、任意であるハロシランおよび有機溶媒の混合物にアルコールを添加することにより、ハロジシランおよび任意であるハロシランが有機溶媒の存在下でアルコールと混合される。逆の添加、すなわちシランのアルコールへの添加もまた可能である。反応で副生成物として発生するハロゲン化水素ガス(例、HCl)は典型的には反応槽から酸中和トラップへ移させられる。
【0040】
ハロジシランおよび任意であるハロシランへのアルコールの添加速度は典型的に効率性の良い撹拌手段を備え付けた1000mL反応槽において、5mL/分から50mL/分である。添加速度が遅すぎると、反応時間が不必要に長くなる。添加速度が速すぎると、ハロゲン化水素ガスの激しい発生が危険となり得る。
【0041】
ハロジシランおよび任意であるハロシランとアルコールとの反応は典型的には室温(約23±2℃)で行われる。しかしながら、反応はそれより低い温度またはより高い温度で行うこともできる。例えば、反応は10℃から60℃までの温度で行うことができる。
【0042】
反応時間は、ハロジシランおよび任意であるハロシランの構造および温度を含む種々の因子に依存する。反応は、典型的にはハロジシランおよび任意であるハロシランの加アルコール分解が完結するに十分な時間行われる。ここで用いられる用語「加アルコール分解が完結する」とは、ハロジシランおよび任意であるハロシラン中に当初存在するケイ素結合ハロゲン原子の少なくとも85モル%が−OR2基で置換されることを意味する。例えば、反応時間は、典型的には10から60℃の温度で、5から180分、あるいは10から60分、あるいは15から25分である。最適な反応時間は、下記の実施例セクションで説明される方法を用いて日常的な実験により決定することができる。
【0043】
反応混合物中のハロジシランの濃度は典型的には反応混合物の合計重量に基づいて、5から95%(w/w)、あるいは20から70%(w/w)、あるいは40から60%(w/w)である。
【0044】
ハロジシランに対するハロシランのモル比は典型的には0から99、あるいは0.5から80、あるいは0.5から60、あるいは0.5から40、あるいは0.5から20、あるいは0.5から2である。
【0045】
ハロジシランおよび任意であるハロシラン中のケイ素結合ハロゲン原子に対するアルコールのモル比は典型的には0.5から10、あるいは1から5、あるいは1から2である。
【0046】
有機溶媒の濃度は典型的には反応混合物の合計重量に基づいて、0.01から95%(w/w)、あるいは5から88%(w/w)、あるいは30から50%(w/w)である。
【0047】
製法の工程(ii)では、加アルコール分解生成物が、0から40℃の温度でシロキサン粒子の存在下水と反応して、加水分解物を製造する。
【0048】
現製法のシロキサン粒子はシロキサン単位を含む任意の粒子であり得る。シロキサン単位は次の式で表わすことができる:R13SiO1/2単位(M単位)、R12SiO2/2単位(D単位)、R1SiO3/2単位(T単位)、およびSiO4/2単位(Q単位)、ここでR1は上述され例示されているとおりである。
【0049】
シロキサン粒子は典型的には0.001から500μm、あるいは0.01から100μmの中央値粒径(質量に基づいて)を有する。
【0050】
シロキサン粒子の形は重要ではないが、球形の形をもつ粒子が好ましく、それは一般的に他の形の粒子よりもシリコーン組成物に少ない粘度増加を与えることによる。
【0051】
シロキサン粒子の例として、以下に限定されないが、SiO4/2単位を含むシリカ粒子、例えばコロイドシリカ、分散された焼成(ヒュームド)シリカ、沈降シリカ、およびコアセルベートシリカなど;R1SiO3/2を含むシリコーン樹脂粒子、例えばMeSiO3/2単位を含む粒子、MeSiO3/2単位およびPhSiO3/2単位を含む粒子、およびMeSiO3/2単位およびMe2SiO2/2単位を含む粒子など;R12SiO2/2単位を含むシリコーンエラストマー粒子、例えばポリ(ジメチルシロキサン/メチルビニルシロキサン)およびポリ(水素メチルシロキサン/ジメチルシロキサン)の架橋生成物を含む粒子、ここでR1は上述され例示されている、が挙げられる。
【0052】
シロキサン粒子はまた、式(M+aa/2x(SiO4/2y(ここで、Mは電荷+aの金属陽イオンであり、aは1から7までの整数であり、xは0より大きく0.01までの値であり、yは0.99から1未満の値であり、合計x+y=1である)を有すポリケイ酸金属塩でもあり得る。金属の例としては、以下に限定されないが、アルカリ金属、例えばナトリウムおよびカリウムなど;アルカリ土類金属、例えばベリリウム、マグネシウム、およびカルシウムなど;遷移金属、例えば鉄、亜鉛、クロム、およびジルコニウムなど;およびアルミニウムが挙げられる。ポリケイ酸金属塩の例として、式(Na2O)0.01(SiO20.99を有するポリケイ酸塩がある。
【0053】
シロキサン粒子は、また有機ケイ素化合物で上記の粒子表面を処理して得られた処理シロキサン粒子でもあり得る。有機ケイ素化合物は典型的にはシリカ充填剤処理に用いられる任意の有機ケイ素化合物であり得る。有機ケイ素化合物の例としては、以下に限定されないが、有機クロロシラン、例えばメチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、およびトリメチルモノクロロシランなど;オルガノシロキサン、例えばヒドロキシ末端封鎖ジメチルシロキサンオリゴマー、ヘキサメチルジシロキサン、およびテトラメチルジビニルジシロキサンなど;オルガノシラザン、例えばヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザンなど;およびオルガノアルコキシシラン、例えばメチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、および3−メタアクリロキシプロピルトリメトキシシランなど、が挙げられる。
【0054】
現製法でのシロキサン粒子は、単一種のシロキサン粒子または次の特性のうち少なくとも一つが異なる2種以上のシロキサン粒子を含め得る:組成物、表面積、表面処理、粒径、および粒子の形状。
【0055】
シリコーン樹脂粒子およびシリコーンエラストマー粒子の製造法は当技術分野で周知である。例えば、シリコーン樹脂粒子は、米国特許第5,801,262号および米国特許第6,376,078号で例示されているとおり、アルカリ金属水溶液中でアルコキシシランの加水分解縮合により製造できる。シリコーンエラストマー粒子は、日本特許公開番号昭59−96122号で例示されているとおり、硬化性オルガノポリシロキサン組成物をスプレー乾燥し、硬化し;米国特許第4,761,454号で開示されているように、硬化性オルガノポリシロキサン組成物の水性エマルジョンをスプレー乾燥し;米国特許第5,371,139号で開示されているように、液状シリコーンラバーミクロ懸濁液エマルジョンを硬化し;または、架橋シリコーンラバーエラストマーを微粉砕することにより製造できる。
【0056】
加アルコール分解生成物は典型的には、加アルコール分解生成物を水およびシロキサン粒子の混合物に添加することにより、水と混合される。逆の添加、すなわち水のアルコール分解生成物への添加もまた可能である。しかしながら、逆添加は主にゲルの形成となり得る。
【0057】
水およびシロキサン粒子の混合物への加アルコール分解生成物の添加速度は、効率の良い撹拌手段を備えた1000mL反応槽において、典型的には2mL/分から100mL/分である。添加速度があまりにも遅いと、反応時間は不必要に長くなる。添加速度があまりにも早いと、反応混合物はゲルを形成することがあり得る。
【0058】
工程(ii)の反応は典型的には0から40℃、あるいは0から20℃、あるいは0から5℃の温度で行われる。温度が0℃未満のときは、反応速度は典型的には非常に遅い。温度が40℃を超えると、反応混合物はゲル化する可能性がある。
【0059】
反応時間は加アルコール分解生成物の構造および温度を含む種々の因子に依存する。反応は典型的には、加アルコール分解生成物の加水分解が完了するに十分な時間行われる。ここで用いられる用語「加水分解完了する」とは、加アルコール分解生成物中に当初存在するケイ素結合基−OR4の少なくとも85モル%がヒドロキシ基で置換されることを意味する。例えば、反応時間は、0から40℃の温度で、典型的には0.5分から5時間、あるいは1分から3時間、あるいは5分から1時間である。最適な反応時間は、下記の実施例セクションで説明される方法を用いて日常的な実験により決めることができる。
【0060】
反応混合物中の水の濃度は、典型的には加アルコール分解生成物の加水分解を生じるに十分な量である。例えば、水の濃度は典型的には、加アルコール分解生成物中のケイ素結合基−OR4の1モルあたり、1モルから50モル、あるいは5モルから20モル、あるいは8モルから15モルである。
【0061】
反応混合物中のシロキサン粒子の濃度は典型的には、反応混合物の合計重量に基づいて、0.0001から99%(w/w)、あるいは1から80%(w/w)、あるいは10から50%(w/w)である。
【0062】
シリコーン樹脂の製造方法の工程(iii)では、加水分解物は加熱され、シリコーン樹脂を製造する。加水分解物は典型的には40から100℃、あるいは50から85℃、あるいは55から70℃の温度で加熱される。加水分解物は、典型的には200から500,000の数平均分子量を有するシリコーン樹脂を製造するに十分な時間加熱される。例えば、加水分解物は典型的には、55℃から70℃の温度で1時間から2時間加熱される。
【0063】
製法はさらにシリコーン樹脂の回収を含めることができる。工程(iii)の混合物は水不混和性有機溶媒、例えばテトラヒドロフランなど、を含んでいるならば、シリコーン樹脂は、樹脂を含んでいる有機相を水相から分離することにより反応混合物から回収できる。分離は、混合物の撹拌を止めて、混合物を二層に分離させて、水相または有機相を除去することにより、行うことができる。有機相は典型的には水で洗浄される。水はさらに、水洗中に水相と有機相との間でエマルジョンの形成を最小にするために、中性無機塩、例えば塩化ナトリウムなどを含めることができる。水中の中性無機塩の濃度は最高飽和までとすることができる。有機相は、それを水と混合し、混合物を二層に分離させて、水層を除去することにより、洗浄することができる。有機相は、典型的には別々の水で1から5回洗浄される。1回の洗浄あたり水の量は典型的には有機相の量の0.5から2倍である。混合は従来からの方法、例えば撹拌または振盪で行うことができる。シリコーン樹脂は、さらなる単離もしくは精製することなく使用可能であり、またはシリコーン樹脂は従来の蒸発法によりほとんどの溶媒から分離可能である。
【0064】
工程(iii)の混合物が水混和性有機溶媒(例、メタノール)を含むならば、シリコーン樹脂は水溶液からシリコーン樹脂を分離することにより反応混合物から回収することができる。例えば、分離は混合物を大気圧下または大気圧以下で混合物を蒸留することにより行うことも可能である。蒸留は、0.5kPaの圧下で典型的には40から60℃、あるいは60から80℃で行われる。
【0065】
あるいは、シリコーン樹脂は、樹脂含有混合物を水不混和性有機溶媒、例えばメチルイソブチルケトンなどで抽出することにより、水溶液から分離することができる。シリコーン樹脂は、さらなる単離もしくは精製することなく使用可能であり、またはシリコーン樹脂は従来の蒸発法によりほとんどの溶媒から分離可能である。
【0066】
本発明によるシリコーン組成物は:
(A)式 O(3-a)/21aSi−SiR1b(3-b)/2 (I)を有するジシリロキサン単位および粒子形状のシロキサン単位を含む少なくとも1種のシリコーン樹脂(ここで、各R1は独立して−H、ヒドロカルビル、または置換ヒドロカルビルであり;aは0、1、または2であり;bは0、1、2、または3である);および
(B)有機溶媒
を含んでいる。
【0067】
成分(A)は、上述され例示された本発明のシリコーン樹脂である。成分(A)は単一のシリコーン樹脂または2種以上の異なるシリコーン樹脂を含む混合物でもよく、各シリコーン樹脂は上述されたとおりである。
【0068】
シリコーン組成物の成分(B)は少なくとも1種の有機溶媒である。有機溶媒は、シリコーン樹脂または任意である成分(例、架橋剤)とは反応しない、かつシリコーン樹脂と混和性である、任意のプロトン性、非プロトン性、または極性非プロトン性有機溶剤である。
【0069】
有機溶媒の例として、以下に限定されないが、アルコール、例えばメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−ブタノール、1−ペンタノール、およびシクロヘキサノールなど;
飽和脂肪族炭化水素、例えばn−ペンタン、ヘキサン、n−ヘプタン、イソオクタンおよびドデカンなど;シクロ脂肪族炭化水素、例えばシクロペンタンおよびシクロヘキサンなど;芳香族炭化水素、例えばベンゼン、トルエン、キシレンおよびメシチレンなど;環状エーテル、例えばテトラヒドロフラン(THF)およびジオキサンなど;ケトン、例えばメチルイソブチルケトン(MIBK)など;ハロゲン化アルカン、例えばトリクロロエタンなど;ハロゲン化芳香族炭化水素、例えばブロモベンゼンおよびクロロベンゼンなど、が挙げられる。有機溶媒は単一の有機溶媒または2種以上の異なる有機溶媒でもよく、各溶媒は上記定義されたとおりである。
【0070】
有機溶媒の濃度は、典型的にはシリコーン組成物の合計重量に基づいて、0.01から99.5重量%、あるいは40から95重量%、あるいは60から90重量%である。
【0071】
シリコーン組成物は追加成分を含むことができる、ただし同成分が下記に述べるとおり、硬化生成物または酸化生成物の形成を妨げてはならない。追加成分の例として、以下に限定されないが、接着促進剤;染料;顔料;酸化防止剤;熱安定剤;紫外線安定剤、難燃剤、流動調整剤、架橋剤、および縮合触媒が挙げられる。
【0072】
シリコーン組成物は、さらに架橋剤および/または縮合触媒を含めることができる。架橋剤は式R3qSiX4-q(ここで、R3はC1からC8個のヒドロカルビルであり、Xは加水分解性基であり、およびqは0または1である)を有していてもよい。R3で表わされるヒドロカルビル基は上述され例示されているとおりである。
【0073】
ここで用いられる用語「加水分解性基」とは、ケイ素結合基が触媒の不存在下室温(およそ23±2℃)から100℃の温度で数分、例えば30分以内に水と反応して、シラノール(SiOH)基を形成することを意味する。Xで表わされる加水分解性基の例としては、以下に限定されないが、−Cl、−Br、−OR3、−OCH2CH2OR4、CH3C(=O)O−、Et(Me)C=N−O−、CH3C(=O)N(CH3)−、および−ONH2、ここでR3またはR4は上述され例示されているとおりである。
【0074】
架橋剤の例として、以下に限定されないが、アルコキシシラン、例えばMeSi(OCH33、CH3Si(OCH2CH33、CH3Si(OCH2CH2CH33、CH3Si[O(CH23CH33、CH3CH2Si(OCH2CH33、C65Si(OCH33、C65CH2Si(OCH33、C65Si(OCH2CH33、CH2=CHSi(OCH33、CH2=CHCH2Si(OCH33、CF3CH2CH2Si(OCH33、CH3Si(OCH2CH2OCH33、CF3CH2CH2Si(OCH2CH2OCH33、CH2=CHSi(OCH2CH2OCH33、CH2=CHCH2Si(OCH2CH2OCH33、C65Si(OCH2CH2OCH33、Si(OCH34、Si(OC254、およびSi(OC374など;有機アセトキシシラン、例えばCH3Si(OCOCH33、CH3CH2Si(OCOCH33、およびCH2=CHSi(OCOCH33など;オルガノイミノオキシシラン、例えばCH3Si[O−N=C(CH3)CH2CH33、Si[O−N=C(CH3)CH2CH34、およびCH2=CHSi[O−N=C(CH3)CH2CH33など;オルガノアセトアミドシラン、例えばCH3Si[NHC(=O)CH33およびC65Si[NHC(=O)CH33など;アミノシラン、例えばCH3Si[NH(s−C49)]3およびCH3Si(NHC6113など;およびオルガノアミノキシシランが挙げられる。
【0075】
架橋剤は、単一シランまたは2種以上の異なるシランの混合物でもよく、各シランは上述されたとおりである。また、トリ−およびテトラ−官能性シランの製造法は当技術分野では周知であり;それらシランの多くは市販されている。
【0076】
架橋剤が存在するときは、シリコーン樹脂中の架橋剤の濃度はシリコーン樹脂を硬化(架橋)するに十分な量である。架橋剤の正確な量は所望する硬化程度に依存する。硬化程度は一般に、シリコーン樹脂中のケイ素結合ヒドロキシ基のモル数に対する架橋剤中のケイ素結合加水分解性基のモル数の比が増えるにつれて、増加する。典型的には、架橋剤の濃度は、シリコーン樹脂中のケイ素結合ヒドロキシ基1モルあたりケイ素結合加水分解性基0.2から4モルを与えるに十分な量である。架橋剤の最適量は日常的な実験により容易に決定することができる。
【0077】
上記したように、シリコーン組成物はさらに少なくとも1種の縮合触媒を含めることができる。縮合触媒は、ケイ素結合ヒドロキシ(シラノール)基の縮合を促進してSi−O−Si結合を形成するに典型的に使われている任意の縮合触媒でもよい。縮合触媒の例として、以下に限定されないが、アミン;およびカルボン酸の鉛、スズ、亜鉛、および鉄錯体が挙げられる。特に、縮合触媒はスズ(II)およびスズ(IV)化合物、例えばスズジラウラート、スズジオクトエート、およびテトラブチルスズなど;およびチタン化合物、例えばチタニウムテトラブトキシドなどから選ぶことができる。
【0078】
縮合触媒の濃度は典型的には、シリコーン樹脂の合計重量に基づいて、0.1から10%(w/w)、あるいは0.5から5%(w/w)、あるいは1から3%(w/w)である。
【0079】
上記のシリコーン組成物が縮合触媒を含むときは、組成物は典型的にはシリコーン樹脂と縮合触媒とが別のパーツにある二液性組成物である。
【0080】
本発明による被覆基材は;
基材;および
基材上の被覆、ここで、被覆は式 O(3-a)/21aSi−SiR1b(3-b)/2 (I)を有するジシリロキサン単位および粒子形状のシロキサン単位を含むシリコーン樹脂の硬化生成物または酸化生成物である(式中、各R1は独立して−H、ヒドロカルビル、または置換ヒドロカルビルであり;aは0、1、または2であり;bは0、1、2、または3である);
を含む。
【0081】
基材は、平面輪郭、複雑輪郭、またはでこぼこな輪郭を有する堅いまたは柔軟な任意の物質でよい。基材は、電磁スペクトルの可視領域(およそ400からおよそ700nm)の光に対し透明性または非透明性でもよい。また、基材は電導体、半導体、または不導体であり得る。基材の例として、以下に限定されないが、半導体、例えばシリコン、二酸化ケイ素の表面層を有するシリコン、炭化ケイ素、リン化インジウム、およびヒ化ガリウムなど;石英;溶融石英;酸化アルミニウム;セラミックス;ガラス;金属箔;ポリオレフィン、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、およびポリエチレンナフタレートなど;フルオロカーボン・ポリマー、例えばポリテトラフルオロエチレンおよびポリフッ化ビニルなど;ポリアミド、例えばナイロンなど;ポリイミド;ポリエステル、例えばポリメタクリル酸メチルなど;エポキシ樹脂;ポリエーテル;ポリカーボネート;ポリスルホン;およびポリエーテルスルホンが挙げられる。
【0082】
被覆基材の被覆は典型的には0.010μmから20μm、あるいは0.050μmから10μm、あるいは0.100μmから5μmの厚さを有する。被覆は多種の基材のでこぼこな表面を平らにし、誘電特性および接着特性とともに優れた耐熱分解性を有する。
【0083】
被覆がシリコーン樹脂の硬化生成物である被覆基材は、シリコーン樹脂またはシリコーン組成物(いずれも上述されたとおりである)を基材に塗布してフィルムを形成し、フィルムのシリコーン樹脂を硬化することにより製造することができる。シリコーン樹脂またはシリコーン組成物は、例えばスピンコート法、浸漬コート法、スプレーコート法、フローコート法、スクリーン印刷法、およびロールコート法などの従来からの方法を用いて、基材に塗布することができる。溶媒が存在するときは、溶媒は典型的には、フィルムが加熱される前に、被覆基材から蒸発させられる。蒸発に適する手段、例えば簡単な空気乾燥、真空の適用、または加熱(最高50℃まで)が用いられ得る。
【0084】
シリコーン樹脂はフィルムを加熱することにより硬化(すなわち、架橋)することができる。例えば、シリコーン樹脂は典型的には50から260℃、あるいは50から250℃、あるいは100から200℃の温度にフィルムを加熱することにより硬化する。シリコーン組成物が縮合触媒を含むときは、シリコーン樹脂は典型的にはそれより低い温度、例えば室温(およそ23±2℃)から200℃の温度で硬化可能である。シリコーン樹脂の構造に依存する加熱時間は、典型的には1から50時間、あるいは1から10時間、あるいは1から5時間である。フィルムは例えば石英管炉、対流式オーブン、または放射・マイクロ波エネルギーなど従来からの方法を用いて加熱することもできる。
【0085】
被覆がシリコーン樹脂の酸化生成物である被覆基材は、シリコーン樹脂またはシリコーン組成物(いずれも上述されたとおりである)を基材に塗布してフィルムを形成し、フィルムのシリコーン樹脂を酸化することにより製造することができる。
【0086】
シリコーン樹脂またはシリコーン組成物は上述されたように基材に塗布することができる。シリコーン樹脂は、フィルムを加熱し、またはフィルムを酸化剤の存在下紫外線放射に曝すことにより酸化することができる。例えば、シリコーン樹脂はフィルムを空気中で300から600℃の温度に加熱することにより酸化することができる。フィルムは典型的には、酸化された被覆の質量がフィルムのシリコーン樹脂の硬化により製造された被覆の質量よりも1から3%(w/w)多くなるような時間加熱される。例えば、フィルムは典型的には0.01から1時間、あるいは0.01から0.2時間加熱される。あるいは、シリコーン樹脂は、上述のとおり、フィルムのシリコーン樹脂を硬化し、その後硬化シリコーン樹脂を300から600℃の温度に加熱することにより酸化することができる。
【0087】
本発明による補強シリコーン樹脂フィルムは;
式 O(3-a)/21aSi−SiR1b(3-b)/2 (I)を有するジシリロキサン単位および粒子形状のシロキサン単位を含む、少なくとも一種のシリコーン樹脂の硬化生成物(ここで、各R1は独立して−H、ヒドロカルビル、または置換ヒドロカルビルであり;aは0、1、または2であり;bは0、1、2、または3である);および
硬化生成物に埋め込まれた繊維補強材
を含む。
【0088】
補強シリコーン樹脂フィルムは少なくとも1種のシリコーン樹脂、ここでシリコーン樹脂は上述され例示されているとおりである、の硬化生成物を含む。ここで用いられる用語「シリコーン樹脂の硬化生成物」とは、三次元網目構造を有する架橋されたシリコーン樹脂をさす。
【0089】
シリコーン樹脂の硬化生成物は、本発明の補強シリコーン樹脂フィルムの製造法で後述されるとおり、製造することができる。
【0090】
補強シリコーン樹脂フィルムはまたシリコーン樹脂の硬化生成物中に埋め込まれた繊維補強材を含んでいる。繊維補強材は繊維からなる任意の補強材でよく、補強材は高モジュラスおよび高引張強度を有する。繊維補強材は典型的には25℃で少なくとも3GPaのヤング係数を有する。例えば、補強材は典型的には25℃で3から1,000GPa、あるいは3から200GPa、あるいは10から100GPaのヤング係数を有する。さらに、補強材は典型的には25℃で少なくとも50MPaの引張強度を有する。例えば、補強材は典型的には25℃で50から10,000MPa、あるいは50から1,000MPa、あるいは50から500MPaの引張強度を有する。
【0091】
繊維補強材は、織物、例えば布;不織布、例えばマットまたはロービング;またはバラ(個別の)繊維(loose fiber)であり得る。補強材の繊維は典型的には円筒形であり、直径1から100μm、あるいは1から20μm、あるいは1から10μmを有する。バラ繊維は、繊維が一般に切れ目のない状態で補強シリコーン樹脂フィルム全体に渡って伸びていることを意味する連続的であっても、または切り刻まれていてもよい。
【0092】
繊維補強材は典型的には有機不純物を除去するために使用前に加熱処理されている。例えば、繊維補強材は典型的には空気中で高温、例えば575℃で適当な時間、例えば2時間加熱される。
【0093】
繊維補強材の例として、以下に限定されないが、ガラス繊維;石英繊維;グラファイト繊維;ナイロン繊維;ポリエステル繊維;アラミド繊維、例えばKevlar(登録商標)およびNomex(登録商標)など;ポリエチレン繊維;ポリプロピレン繊維;および炭化ケイ素繊維が挙げられる。
【0094】
本発明の補強シリコーン樹脂フィルムは典型的には、10から99%(w/w)、あるいは30から95%(w/w)、あるいは60から95%(w/w)、あるいは80から95%(w/w)の硬化シリコーン樹脂を含む。また、補強シリコーン樹脂フィルムは典型的には10から3,000μm、あるいは15から500μm、あるいは15から300μm、あるいは20から150μm、あるいは30から125μmの厚さを有する。
【0095】
補強シリコーン樹脂フィルムは典型的には、フィルムが3.2mm以下の直径を有する円筒形スチールマンドレル上に亀裂なく曲げられるように柔軟性を有する。柔軟性はASTM規格D522−93a、方法Bに記載されているとおりに測定される。
【0096】
補強シリコーン樹脂フィルムは低い線熱膨張率(CTE)、高い引張り強度、および高いモジュラスを有する。例えば、フィルムは典型的には、室温(およそ23±2℃)から200℃の温度で、0から80μm/m℃、あるいは0から20μm/m℃、あるいは2から10μm/m℃のCTEを有する。また、フィルムは典型的には25℃で、50から200MPa、あるいは80から200MPa、100から200MPaの引張強度を有する。さらに、補強シリコーン樹脂フィルムは典型的には25℃で2から10GPa、あるいは2から6GPa、あるいは3から5GPaのヤング率を有する。
【0097】
補強シリコーン樹脂フィルムの透明性は多くの因子、例えば硬化シリコーン樹脂の組成、フィルムの膜厚、および繊維補強材の屈折率などに依存する。補強シリコーン樹脂フィルムは典型的には電磁スペクトルの可視領域で、少なくとも10%、あるいは少なくとも60%、あるいは少なくとも75%、あるいは少なくとも85%の透明性(%透過率)を有する。
【0098】
本発明による補強シリコーン樹脂フィルムの製造方法は次の工程を含んでいる:
繊維補強材を(A)式 O(3-a)/21aSi−SiR1b(3-b)/2 (I)を有するジシリロキサン単位および粒子形状のシロキサン単位を含むシリコーン樹脂(ここで、各R1は独立して−H、ヒドロカルビル、または置換ヒドロカルビルであり、は0、1、または2であり、bは0、1、2、または3である)および(B)有機溶媒を含むシリコーン組成物に含浸させる工程;ならびに
含浸された繊維補強材のシリコーン樹脂を硬化する工程。
【0099】
補強シリコーン樹脂フィルムの製造方法の第一工程では、繊維補強材が(A)式 O(3-a)/21aSi−SiR1b(3-b)/2 (I)を有するジシリロキサン単位および粒子形状のシロキサン単位を含むシリコーン樹脂(ここで、各R1は独立して−H、ヒドロカルビル、または置換ヒドロカルビルであり、は0、1、または2であり、bは0、1、2、または3である)および(B)有機溶媒を含むシリコーン組成物に含浸される。
【0100】
補強シリコーン樹脂フィルムの製造方法におけるシリコーン組成物および繊維補強材はそれぞれ上述され例示されているとおりである。
【0101】
繊維補強材は各種の方法を用いてシリコーン組成物に含浸できる。例えば、一番目の方法によれば、繊維補強材は、(i)上述のシリコーン組成物を剥離ライナーに塗布してシリコーンフィルムを形成し;(ii)繊維補強材をフィルムに埋め込ませ;(iii)埋め込み繊維補強材を脱気し;および(iv)含浸した繊維補強材を形成するために、シリコーン組成物を脱気された埋め込み繊維補強材に塗布することにより、含浸することができる。
【0102】
工程(i)では、上述のシリコーン組成物が剥離ライナーに塗布され、シリコーンフィルムを形成する。剥離ライナーは、後述されるとおり、シリコーン樹脂が硬化した後、層間剥離により補強シリコーン樹脂フィルムが損傷せずに取り外すことができる表面を有する、堅いまたは柔軟な任意の物質であってもよい。剥離ライナーの例として、以下に限定されないが、ナイロン、ポリテレフタル酸エチレン、およびポリアミドが挙げられる。
【0103】
シリコーン組成物は従来からのコーティング技術、例えばスピンコート法、浸漬法、スプレー法、ハケ塗り法、またはスクリーン印刷法などを用いて剥離ライナーに塗布することができる。シリコーン組成物は、下記の工程(ii)の繊維補強材を埋め込ませるに十分な量を塗布される。
【0104】
工程(ii)では、繊維補強材がシリコーンフィルムに埋め込まれる。繊維補強材は、簡単に補強材をフィルムの上に置き、およびフィルムのシリコーン組成物を補強材に浸み込ませるようにすることによって、シリコーンフィルムに埋め込ませることができる。
【0105】
工程(iii)では、埋め込まれた繊維補強材が脱気される。埋め込まれた繊維補強材は、室温(およそ23±2℃)から60℃の温度で埋め込まれた補強材中に閉じ込められた空気を除去するに十分な時間真空下に置くことによって、脱気することができる。例えば、埋め込まれた繊維補強材は典型的には室温で5から60分間1,000から20,000Paの圧に置くことにより脱気することができる。
【0106】
工程(iv)では、シリコーン組成物が、脱気された埋め込み繊維補強材に塗布されて含浸繊維補強材を形成する。シリコーン組成物は、工程(i)で上記されている従来からの方法を用いて、脱気された埋め込み繊維補強材に塗布することができる。
【0107】
一番目の方法はさらに(v)含浸した繊維補強材を脱気する工程;(vi)脱気された埋め込み繊維補強材に二番目の剥離ライナーを施し、組立体を形成する工程;および(vii)組立体を圧搾する工程を含むことができる。
【0108】
組立体は圧搾されて、過剰のシリコーン組成物および/または閉じ込められた空気を除去し、および含浸した繊維補強材の厚さを減少することができる。組立体は従来からの装置、例えばステンレススチールロール、油圧プレス、ゴムロール、または貼り合わせロールなどを用いて、圧搾することができる。組立体は典型的には1,000Paから10MPaの圧力でかつ室温(およそ23±2℃)から50℃の温度で圧搾される。
【0109】
あるいは、二番目の方法によると、繊維補強材は、(i)剥離ライナ−上に繊維補強材を置き;(ii)上述されたシリコーン組成物中に繊維補強材を埋め込み;(iii)埋め込まれた繊維補強材を脱気し;および(iv)シリコーン組成物を脱気された埋め込み繊維補強材にシリコーン組成物を塗布することにより、シリコーン組成物中に含浸することができる。二番目の方法はさらに(v)含浸した繊維補強材を脱気する工程;(vi)脱気された埋め込み繊維補強材に二番目の剥離ライナーを施し、組立体を形成する工程;および(vii)組立体を圧搾する工程を含むことができる。二番目の方法で、工程(iii)から(vii)はシリコーン組成物中に繊維補強材を含浸する一番目の方法で上述されているとおりである。
【0110】
工程(ii)で、繊維補強材は上述のシリコーン組成物に埋め込まれる。補強材は、単に補強材をシリコーン組成物で被覆し、組成物で補強材を飽和させるようにして、シリコーン組成物に埋め込ますこともできる。
【0111】
さらに、繊維補強材が織物または不織布であるなら、補強材は、それをシリコーン組成物中に通過させることによりシリコーン組成物に含浸することができる。繊維は典型的には室温(およそ23±2℃)で、1から1,000cm/秒の速度でシリコーン組成物を通過する。
【0112】
補強シリコーン樹脂フィルムの製造方法の二番目の工程では、含浸された繊維補強材のシリコーン樹脂が硬化される。シリコーン樹脂は、含浸繊維補強材を50から250℃の温度に1から50時間加熱して硬化することができる。シリコーン組成物が縮合触媒を含んでいるなら、シリコーン樹脂は典型的にはそれより低い温度、例えば室温(およそ23±2℃)から200℃の温度で硬化可能である。
【0113】
含浸繊維補強材のシリコーン樹脂は、縮合硬化性シリコーン組成物への繊維補強材の含浸に使用される上記の方法に依存しつつ、大気圧または大気圧以下で硬化可能である。例えば、含浸繊維補強材が第一および第二剥離ライナ−間で取り囲まれていなければ、シリコーン樹脂は典型的には大気圧下空気中で硬化させられる。あるいは、含浸繊維補強材が第一および第二剥離ライナ−間で取り囲まれているならば、シリコーン樹脂は典型的には減圧下で硬化させられる。例えば、シリコーン樹脂は1,000から20,000Pa、あるいは1,000から5,000Paの圧下で加熱することができる。シリコーン樹脂は減圧下で従来からの真空バッグ法を用いて硬化可能である。典型的な方法では、ブリーダ(例、ポリエステル)が含浸繊維補強材上に付けられ、ブリーザ(例、ナイロン、ポリエステル)がブリーダの上に付けられ、真空ノズルが取り付けられた真空バッグフィルム(例、ナイロン)がブリーザの上に付けられ、組立体はテープで封止され、真空(例、1,000Pa)が封止された組立体に適用され、および、必要であるなら、空気が抜かれた組立体が上述のとおり加熱される。
【0114】
補強シリコーン樹脂フィルムの製造方法はさらに剥離ライナーからの硬化シリコーン樹脂の分離工程を含めることも可能である。硬化シリコーン樹脂は機械的に剥離ライナ−からフィルムをはがすことによって、剥離ライナ−から分離され得る。
【0115】
本発明のシリコーン樹脂は各種の有機溶媒に可溶である。例えば、シリコーン樹脂の有機溶媒への溶解度は、構造、分子量、およびケイ素結合ヒドロキシ基の含量に依存し、典型的には室温(およそ23±2℃)で、少なくとも2g/mL、あるいは少なくとも1g/mLである。特に、シリコーン樹脂のメチルイソブチルケトンへの溶解度は典型的には室温(およそ23±2℃)で、0.1から2g/mL、あるいは0.2から1g/mLである。
【0116】
シリコーン樹脂はまた実質的に可視光分光分析での測定でゲルを含まない。例えば、第一または第二シリコーン樹脂の16%(w/w)を含有する有機溶媒溶液は、電磁スペクトルの可視領域(およそ400からおよそ700nm)の光に関して、典型的には少なくとも60%、あるいは少なくとも80%、あるいは少なくとも90%のパーセント透過率(2.54cmの通路長さを有するセルを用いて測定された)を有する。
【0117】
本発明のシリコーン組成物は都合よく良好な貯蔵安定性を有する一液型組成物として処方できる。さらに、組成物は、従来からの高速方法、例えばスピンコート法、印刷法、およびスプレー法などにより、基材に塗布することができる。
【0118】
被覆基材の被覆は、非常に低い表面あらさ、熱誘電亀裂への高い抵抗性、および低い引張強度を示す。
【0119】
本発明の補強シリコーン樹脂フィルムは、同じシリコーン組成物から製造された非補強シリコーン樹脂フィルムと比べて、低い熱膨張率、高い引張強度、および高いモジュラスを有する。また、補強および非補強シリコーン樹脂フィルムは同程度のガラス転移点を有するが、補強フィルムの方がガラス転移に相応する温度範囲で非常に小さいモジュラス変化を示す。
【0120】
本発明の補強シリコーン樹脂フィルムは、高い熱安定性、柔軟性、機械強度、および透明性を有するフィルムが要求される用途で有用である。例えば、シリコーン樹脂フィルムは、フレキシブルディスプレー、太陽電池、フレキシブル電子基板、タッチスクリーン、耐火性壁紙、および耐衝撃性窓の不可欠な構成要素として使うことができる。フィルムはまた透明または不透明電極に適した基板でもある。
【実施例】
【0121】
以下の実施例は本発明のシリコーン樹脂、シリコーン組成物、および補強シリコーン樹脂フィルムをよりよく例証するために示されるが、添付の請求項に記述される発明を限定するように考えられてはならない。特に指摘されない限り、実施例で報告される部およびパーセントすべては、重量あたりである。以下の方法および物質は実施例で使われた。
【0122】
機械的特性の測定
ヤング率、引張強度、および破断点引張ひずみは、100−N荷重セルを備え付けられたMTSアライアンスRT/5試験架台を使用して測定した。ヤング率、引張強度、および引張ひずみは実施例2の試験片については室温(およそ23±2℃)で測定した。
【0123】
試験片を25mmの間隔を空けた2つの空気圧式グリップに取り付け、1mm/分のクロスヘッド速度で引っ張った。荷重および変位のデータは連続的に収集され た。荷重−変位曲線の初期区域の最急勾配をヤング率とした。ヤング率(GPa)、引張強度(MPa)、および引張ひずみ(%)の報告値は、それぞれ、同一のシリコーン樹脂フィルムからなる異なるダンベル状試験片について3回の測定の平均値を表わす。
【0124】
荷重−変位曲線の最も高い点を用いて、引張強度が次の式に従って算出された:
σ=F/(wb)
ここで、
σ=引張強度、MPa
F=最大荷重、N、
w=試験片の幅、mm、および
b=試験片の厚さ、mm。
【0125】
破断点引張ひずみは、次の式に従って、試験前後のグリップの間隔の差を初期間隔で割ることにより概算した:
ε=100(l2−l1)/l1
ここで、
ε=破断点引張ひずみ、%、
2=グリップの最後の間隔、mm、および
1=グリップの初期の間隔、mm。
【0126】
ジシラン組成物Aは、メチルクロロシラン合成の直接法で生産される残渣の分別蒸留で得られるクロロジシラン流である。組成物は合計重量に基づいて、C49SiMeCl2、7.1%、Me3Cl3Si2O、0.3%、Me4Cl2Si2、8.6%、Me2Cl4Si2O、1.9%、C10炭化水素、1.9%、Me3Cl3Si2、25.8%、およびMe2Cl4Si2、52.8%を含む。
【0127】
ジシラン組成物Bは、メチルクロロシラン合成の直接法で生産される残渣の分別蒸留で得られるクロロジシラン流である。組成物は合計重量に基づいて、Me4Cl2Si2、0.1%、Me3Cl3Si2、30.9%、およびMe2Cl4Si2、66.2%を含む。
【0128】
オルガノシリカゾル(商標)IPA−ST(Nisan Chemical社、米国テキサス州ヒューストン、から入手した)は、10−15nmの粒径を有しているコロイドシリカのイソプロピルアルコール分散液である。分散液は30%(w/w)のSiO2を含み、および2−4のpHかつ0.96−1.02の比重を有している。
【0129】
ガラス布(JPS Glass(米国サウスカロライナ州スレーター)から市販されている)は、平織で37.5μmの厚さを有する未処理106電気ガラス布である。
【0130】
実施例1
ジシラン組成物A(30g)を120gのメチルイソブチルケトン(MIBK)および38.4gの無水メタノールと混合した。反応から生成された塩化水素はフラスコの開口から漏出させられた。液状混合物はシールされた瓶に入れられ、氷水浴で冷却され、その後撹拌機および温度計を備え付けられた三口丸底フラスコの上部に取り付けられた添加漏斗に移した。120gの脱イオン水および51.8gのオルガノシリカゾル(商標)IPA−STがフラスコに入れられ、外部氷水浴で2から4℃に冷やされた。添加漏斗内の混合物を連続的に10分を掛けて脱イオン水/コロイドシリカの冷却混合物に添加した。添加している間に混合物の温度が3から5℃上昇した。添加完了後、混合物は氷浴中で1時間撹拌された。その後、フラスコは水浴で50から75℃に加熱され、その温度で1時間保持された。混合物は室温に冷やさせられ、10gの塩化ナトリウムの200mL水で4回洗浄された。各洗浄の後に水相が捨てられた。有機相は分離され、60℃で2.7kPa圧下で濃縮してシリコーン樹脂22.4%(w/w)含有するMIBK溶液を製造した。樹脂中のジシリロキサン単位に対するSiO4/2単位のモル比は、29SiNMRで測定されて、4.4である。
【0131】
実施例2
ガラス布(38.1cmx8.9cm)が、実施例1のシリコーン組成物に布を約5cm/秒の速度で通すことによって含浸された。含浸布は空気循環オーブン中に垂直につるされ、含浸布を室温から150℃に5℃/分で加熱し、150℃の温度で10分間保持してシリコーン樹脂を硬化した。オーブンを止めて、補強シリコーン樹脂フィルムを室温に冷やされた。含浸、硬化および冷却工程が、シリコーン樹脂が含浸布を室温から200℃に5℃/分で加熱し、200℃の温度で1時間保持して硬化されたことを除いて、二回追加繰り返された。補強シリコーン樹脂フィルムの機械特性が表1に示される。
【0132】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式 O(3-a)/21aSi−SiR1b(3-b)/2 (I)(ここで、各R1は独立して−H、ヒドロカルビル、または置換ヒドロカルビルであり;aは0、1、または2であり;bは0、1、2、または3である)を有するジシリロキサン単位および粒子形状のシロキサン単位を含むシリコーン樹脂。
【請求項2】
前記樹脂が10から70モル%の式(I)を有するジシリロキサン単位を含む、請求項1記載のシリコーン樹脂。
【請求項3】
前記樹脂が1から80モル%の粒子形状のシロキサン単位を含む、請求項1記載のシリコーン樹脂。
【請求項4】
前記粒子が0.001から500μmの中央値粒径を有する、請求項1記載のシリコーン樹脂。
【請求項5】
前記粒子がシリカ粒子、シリコーン樹脂粒子、シリコーンエラストマー粒子、およびポリケイ酸金属塩粒子から選ばれる、請求項1記載のシリコーン樹脂。
【請求項6】
(A)請求項1記載のシリコーン樹脂の少なくとも一種;および
(B)有機溶媒
を含むシリコーン組成物。
【請求項7】
さらに、架橋剤および縮合触媒の少なくとも一つを含む、請求項6記載のシリコーン組成物。
【請求項8】
基材および基材上の被覆を含む被覆基材であって、被覆が、式 O(3-a)/21aSi−SiR1b(3-b)/2 (I)(ここで、各R1は独立して−H、ヒドロカルビル、または置換ヒドロカルビルであり;aは0、1、または2であり;bは0、1、2、または3である)を有するジシリロキサン単位および粒子形状のシロキサン単位を含むシリコーン樹脂の硬化生成物または酸化生成物である、被覆基材。
【請求項9】
被覆が0.01から20μmの厚さを有する、請求項8記載の被覆基材。
【請求項10】
式 O(3-a)/21aSi−SiR1b(3-b)/2 (I)(ここで、各R1は独立して−H、ヒドロカルビル、または置換ヒドロカルビルであり;aは0、1、または2であり;bは0、1、2、または3である)を有するジシリロキサン単位および粒子形状のシロキサン単位を含む、少なくとも一種のシリコーン樹脂の硬化生成物;および
該硬化生成物に埋め込まれた繊維補強材
を含む補強シリコーン樹脂フィルム。
【請求項11】
前記フィルムが10から3000μmの厚さを有する、請求項10記載の補強シリコーン樹脂フィルム。
【請求項12】
前記樹脂が10から70モル%の式(I)を有するジシリロキサン単位を含む、請求項10記載の補強シリコーン樹脂フィルム。
【請求項13】
前記樹脂が1から80モル%の粒子形状のシロキサン単位を含む、請求項10記載の補強シリコーン樹脂フィルム。
【請求項14】
前記粒子が0.001から500μmの中央値粒径を有する、請求項10記載の補強シリコーン樹脂フィルム。
【請求項15】
前記粒子がシリカ粒子、シリコーン樹脂粒子、シリコーンエラストマー粒子、およびポリケイ酸金属塩粒子から選ばれる、請求項10記載の補強シリコーン樹脂フィルム。
【請求項16】
前記繊維補強材が織物、不織布およびバラ繊維から選ばれる、請求項10記載の補強シリコーン樹脂フィルム。
【請求項17】
前記繊維がガラス繊維を含む、請求項16記載の補強シリコーン樹脂フィルム。

【公表番号】特表2010−518226(P2010−518226A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−549075(P2009−549075)
【出願日】平成20年1月25日(2008.1.25)
【国際出願番号】PCT/US2008/000979
【国際公開番号】WO2008/097435
【国際公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願人】(596012272)ダウ・コーニング・コーポレイション (347)
【Fターム(参考)】