説明

シートパッド及びその製造方法

【課題】シートバックパッドの上部に形成される肉厚部を有するフランジ部にボイドが成形されず、かつ、成形時に発泡成形型の型割り位置に補強材がかみ込むことのないシートパッドを提供する
【解決手段】パッド本体部11及びパッド本体部11の上端から後方に突出して延在する張り出し部12、張り出し部12からパッド本体部11の下方向に向かって折曲して延在するとともにパッド本体部11の下方向に移行するに従ってパッド本体部11の後方向に漸次肉厚が増大する肉厚部13c及び肉厚部13cから連続するとともに漸次肉厚が減少する段差部13dを介して端縁がパッド本体部11の下方向に凸状に形成された先端部14を有するフランジ部13を備え、先端部14が先端部充填体20で形成され、かつ、先端部充填体20が補強材16の端部を押さえ込むとともに補強材16がシートパッドの内側面に張設される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートパッド、特に、自動車の前部座席のシートバック部を形成するシートパッド及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用の前部座席は、例えば、乗員の臀部を支持するシートクッション部、背部を支持するシートバック部を備える。シートバック部は、ウレタンフォーム等の弾力性を有する発泡体で成形されるシートバックパッドが補強材を介してシートバックフレームに被覆されるとともに、シートバックパッドの外面が織編物や皮革等の表皮で被覆されて形成される。そして、シートバックパッドの上部には、シートパッドの後方向に突出して延在する張り出し部、及び張り出し部から下方向に屈曲するとともに下方向に移行するに従って漸次肉厚が増大する肉厚部を有するフランジ部が形成されており、シートバック部の後面視における意匠的効果を高めている。
【0003】
ところで、このシートバックパッドの成形には、発泡成形型が使用される。発泡成形型は、シートバックパッドの前面を成形する下型を備えるとともに、下型に対して開閉可能な上型及び中子型を備える。そして、これらの各型の間に形成されるキャビティにおいて発泡樹脂材料を発泡させて、シートバックパッドを成形する。この発泡成形型を使用してシートバックパッドを成形すると、下型と中子型との間に形成されるキャビティに発泡樹脂材料が流入充填されて下型の成形面によってシートバックパッドの前面が成形され、肉厚部を有するフランジ部は上型の成形面によって成形される。このような発泡成形型においては、フランジ部を成形する上型と中子型との間で形成されるキャビティには発泡樹脂材料の流入が効率よく実現されず、発泡樹脂材料に混在する空気や、発泡時に発生する炭酸ガスの流動性が低くなり、肉厚部の表面に気泡が集まりやすくなって肉厚部にボイド(欠肉)が発生することがある。このボイドが発生すると、ボイドに後から肉盛り加工を施して補修する必要が生じるので、シートバックパッドの成形効率、成形精度が低下する。そこで、ボイドの発生を防止してシートバックパッドの成形性を高めるための技術が、種々提案されている。
【0004】
特許文献1として、肉厚部が成形される部分のキャビティに、補強材を介して発泡樹脂迂回部材を配置して成形されたシートパッドが開示されている。この特許文献1で開示されるシートパッドの概要を、図7に基づいて説明する。
【0005】
図7は、シートバックパッドの上部の概略断面図である。図示のように、シートバックパッド100の上方部分は、乗員の背もたれ面となる前面部101a及びこの前面部101aと対向する背面部101bを有するパッド本体部101、パッド本体部101の上端から矢線Aで示すシートバックパッド100の後面側に延在する張り出し部102、張り出し部102からシートバックパッド100の下方向に折曲形成されてパッド本体部101と所定間隔離間して延在するフランジ部103を有して、これらが断面視略U字状に一体形成される。
【0006】
フランジ部103は、パッド本体部101の下方向に移行するに従ってパッド本体部101の後方向に漸次肉厚が増大する肉厚部103a、肉厚部103aから連続するとともに漸次肉厚が減少する段差部103bが形成され、段差部103bから段差部103bを介して更に肉厚が減少して端部絞り部となる先端部104を有して一体成形される。先端部104の下方向には、バックボード111が延在して、パッド本体部101の背面部101bが被覆される。
【0007】
シートバックパッド100は、その全体が表皮110によって被覆される。そして、シートバックパッド100の内側面には、背面部101bから先端部104の内側面全域に亘って、フェルト、不織布等を素材とする補強材105が張設されている。この補強材105は、発泡樹脂材料の発泡によって成形されたウレタンフォームと一体化して成形付与されて、シートバックパッド100とシートバックフレームとの摩擦による異音の発生やシートバックパッド100の損傷が防止される。
【0008】
そして、この補強材105に固定されるとともに補強材105の幅方向に延在する発泡樹脂迂回部材106が、発泡樹脂材料の発泡によって成形されたウレタンフォームと一体化して肉厚部103aの内部に埋設される。
【0009】
このシートバックパッド100の成形について説明する。図8(a)〜(c)は、シートバックパッド100の成形概略を説明する図である。図8(a)で示すように、発泡成形型200は、下型201、上型202、中子型203を備える。上型202は、下型201にヒンジ205を介して揺動自在に軸支され、中子型203は、上型202と中子型203とを接離可能に支持するシリンダ204を介して上型202に連結される。下型201に対して上型202、中子型203を型締め方向に移動させて型締めすると、これらの型の間にキャビティが構成されるとともに、上型202と中子型203との接触面に型分割線PL(パーティングライン)が形成される。
【0010】
まず、先端部104の内側面が成形される中子型203の成形面203aに、先端部104の内側面に配置される補強材105の端部105a側に固定された発泡樹脂迂回部材106を配置する。そして、下型201の成形面201aに発泡樹脂材料Mを注入するとともに、下型201に上型202及び中子型203を型締めする。発泡樹脂材料Mを加熱すると、この発泡樹脂材料Mがキャビティに流入充填されて、フランジ部103が成形される。このとき、発泡樹脂迂回部材106が配置されているので、上型202と中子型203との間に形成されるキャビティに流入充填される発泡樹脂材料Mが、発泡樹脂迂回部材106に衝突して、この発泡樹脂迂回部材106を迂回しながら上型202の成形面202aに沿って流れるとともに、発泡樹脂材料Mに混在した空気は型分割線PLから発泡成形型200外に排出され、肉厚部103aの成形部分には発泡樹脂材料が充填されてボイドの発生が回避される。従って、成形性の精度の高いシートバックパッド100を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−82909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記特許文献1に記載されたシートパッドによると、発泡樹脂材料が肉厚部13bの成形部分に充填されてボイドの発生が回避される。
【0013】
しかし、シートバックパッド10を成形する際、図8(b)で示すように、上型202及び中子型203を型開き状態とすると、上型202及び中子型203が、下型201に対して傾斜状態となる。このとき、フランジ部103の肉厚部103aに対応する補強材105の部分に発泡樹脂迂回部材106が配置されると、発泡樹脂迂回部材106は、傾斜状態となった中子型203の成形面を補強材105とともに滑り落ちる。従って、補強材105の肉厚部103a及び先端部104に対応する部分が型分割線PL側に引きずり込まれて、その端部105aが上型202と中子型203との型分割線PLに入り込む恐れがある。
【0014】
その結果、上型202及び中子型203を型締め方向に移動させて下型201に型締めすると、図8(c)で示すように型分割線PLが補強材105の端部105a側をかみ込んでしまう可能性がある。従って、発泡樹脂迂回部材106が固定された補強材105を中子型203に再度配置し直す必要があるので、シートバックパッド100の成形効率が悪化することが懸念される。
【0015】
従って、かかる点に鑑みてなされた本発明の目的は、シートバックパッドのフランジ部における肉厚部にボイドが発生することなく、かつ、成形時に発泡成形型の型割り位置に補強材がかみ込むことのないシートパッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明によるシートパッドは、背もたれ部を形成するパッド本体部と、該パッド本体部の上端から後方に突出して延在する張り出し部と、該張り出し部から前記パッド本体部の下方向に向かって折曲して延在するとともに前記パッド本体部の下方に移行するに従って該パッド本体部の後方向に漸次肉厚が増大する肉厚部及び該肉厚部から更に下方に連続するとともに漸次肉厚が減少する端部絞り部を有するフランジ部と、該フランジ部及び前記張り出し部及び前記パッド本体部の内側面の全域に亘って張設される補強材と、を備えるシートパッドにおいて、前記端部絞り部の先端部分には、前記パッド本体部の幅方向に延在して前記端部絞り部の先端部分に充填される先端部充填体が配置されたことを特徴とする。
【0017】
一般的に、シートパッドは、下型及びこの下型に対して型締めされる上型、中子型を備える発泡成形型で成形される。そして、シートパッドの端部絞り部の先端部分は、上型及び中子型により形成される成形空間で成形されるが、この構成によれば、フランジ部に形成された端部絞り部の先端部分が先端部充填体によって形成されるので、発泡成形型の型締め状態において、端部絞り部の先端部分の成形空間に、先端部充填体が余剰の空間を生ぜしめることなく充填配置されてシートパッドの発泡成形が実行される。従って、シートパッドの成形時に補強材が引っ張られてずれ下がるスペースが生じることがなく、補強材が発泡成形型にかみ込まれることがないので、シートパッドの成形効率が向上する。
【0018】
請求項2に記載の発明によるシートパッドは、請求項1に記載のシートパッドにおいて、前記先端部充填体は、断面略矩形状に形成されるとともに前記補強材と接触して前記肉厚部内に突出して配置されることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、先端部充填体が肉厚部内に突出するので、シートパッドの成形時に発泡樹脂材料が先端部充填体に衝突して、肉厚部の成形部分に発泡樹脂材料が流入充填されて、肉厚部の肉厚量が十分に確保される。従って、成形性の精度の高い、高品質なシートパッドを得ることができる。また、先端部充填体が断面略矩形状に形成されているので、シートパッドの成形時において先端部充填体を発泡成形型に配置する際の位置決めが容易になされる。
【0020】
請求項3に記載の発明によるシートパッドは、請求項1または2に記載のシートパッドにおいて、前記先端部充填体は、発泡ポリスチレンで形成され、前記パッド本体部の背面は、前記フランジ部の前記端部絞り部の外側面の対向位置を基端として前記パッド本体部に沿って延在するバックボードで被覆されることを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、先端部分を充填する先端部充填体が、発泡樹脂材料の発泡により成形されるウレタンフォームよりも硬度の高い発泡ポリスチレンで形成されているので、バックボードの取り付けの際の位置決めが容易になされるとともに、バックボードの設置の安定を図ることができる。また、先端部充填体は、少なくとも一部がバックボードで被覆されており、乗員が直接触れることが防止されるので、先端部充填体の潰れや割れ等による破壊の可能性が低減される。更に、軽量な発泡ポリスチレンで先端部充填体を形成することで、シートパッド全体の軽量化にも資する。
【0022】
請求項4に記載の発明によるシートパッドの製造方法は、請求項1〜3に記載のシートパッドを下型及び該下型に型締めされる上型及び中子型を備える発泡成形型で成形するシートパッドの製造方法であって、前記補強材の端部に前記先端部充填体を接合する先端部充填体接合工程と、前記中子型における前記端部絞り部の先端部分を形成する成形面に先端部充填体を配置する先端部充填体配置工程と、前記補強材を前記中子型の成形面に張設する補強材張設工程と、前記下型の前記成形面に発泡樹脂材料を注入する発泡樹脂材料注入工程と、前記上型及び中子型を型締め方向に移動させて型締めする型締め工程と、該型締め工程の後に前記発泡樹脂材料を所定時間加熱して発泡させてシートパッドを成形する樹脂材料発泡成形工程と、前記上型及び中子型を型開き方向に移動させて型開きするとともに前記樹脂材料発泡成形工程により成形された前記シートパッドを前記上型及び中子型から離型する離型工程と、を備えることを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、フランジ部に形成された端部絞り部の先端部分が先端部充填体によって形成されるので、シートパッドの成形時に、発泡成形型の端部絞り部の成形面に先端部充填体が配置されることとなる。従って、端部絞り部の先端部分の成形空間に、先端部充填体が余剰の空間を生ぜしめることなく充填配置されるので、シートパッドの成形時に補強材が引っ張られてずれ下がるスペースが生じることがない。また、補強材が先端部充填体を介して中子型に押圧されることで、補強材のずれ下がりが防止される。これにより、シートパッドの成形時に補強材が引っ張られてずれ下がることがなく、補強材の発泡成形型へのかみ込みが防止されて、シートパッドの成形効率が向上する。
【0024】
また、端部絞り部の先端部分に先端充填体が配置されるので、発泡樹脂材料が端部絞り部の先端部分に流入することがなく、肉厚部の膨出量が十分に確保される。従って、成形性の精度の高い、高品質なシートパッドを得ることができる。
【発明の効果】
【0025】
この発明によると、フランジ部に形成された端部絞り部の先端部分が先端部充填体によって形成されるので、シートパッドの成形時に、発泡成形型における上型及び中子型により形成される前記端部絞り部の先端部分の成形空間に先端部充填体が、余剰の空間を生ぜしめることなく充填配置される。従って、シートパッドの成形時に補強材が引っ張られてずれ下がることがなく、補強材が発泡成形型にかみ込まれることがないので、シートパッドの成形効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態に係るシートパッドが使用された自動車用シートの概略を説明する図である。
【図2】同じく、本発明の実施の形態に係るシートバックパッドの概略断面図である。
【図3】図2の矢線Bで示す要部拡大図である。
【図4】図2の矢線Cで示す方向から見たシートバックパッドの概略後面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係るシートバックパッドを成形する発泡成形型の概略を説明する図である。
【図6】本発明の実施の形態に係るシートバックパッドの成形過程の概略を説明する図である。
【図7】従来のシートバックパッドの要部拡大図である。
【図8】同じく、従来のシートバックパッドの成形過程の概略を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、図1〜図6を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明の一実施の形態として、シートパッドが自動車の前部座席のシートバック部のシートバックパッドであることを例として説明する。
【0028】
図1は、自動車の前部座席の概略を説明する図であり、図2は、シートバックパッドの概略断面図である。図示のように、前部座席1は、乗員の臀部を支持するシートクッション部2、背部を支持するシートバック部3を備える。シートバック部3は、図示しないシートバックフレームにシートバックパッド10が被覆されるとともに、シートバックパッド10の外側面が織編物や皮革等の表皮3aで被覆されて形成される。
【0029】
シートバックパッド10は、パッド本体部11、張り出し部12、フランジ部13を備え、発泡樹脂部材を発泡させたウレタンフォームによって断面視略C字状に一体成形される。乗員の背もたれ部となるパッド本体部11は、前面部11a及び前面部11aと対向する背面部11bを有するとともに、下端がシートバックパッド10の後方側に屈曲形成されたシートバックフレーム係合部11cが形成される。
【0030】
また、シートバックパッド10の裏面に該当するパッド本体部11の背面部11bは、フランジ部13の下方からシートバックフレーム係合部11cまで延在するバックボード15によって被覆される。
【0031】
図3は、図2の矢線Bで示すシートバックパッド10の要部拡大図であり、図4は、図2の矢線Cで示す方向から見たシートバックパッド10の概略後面図である。図示のように、シートバックパッド10の内側面には、その全域に亘って補強材16が張設される。補強材16は、パッド本体部11の背面部11bから上方に延在して、パッド本体部11の後方に屈曲して張り出し部内側面12bに亘って延在する。更に、この補強材16は、張り出し部内側面12bからパッド本体部11の下方向に屈曲して断面凹状の肉厚部内側面13bを介して先端部内側面14bに延在するとともに端部絞り部である先端部14の角部14cに亘って延在する。
【0032】
シートバックパッド10の外側面は、パッド本体部11の上下方向に延在して乗員の背もたれ面となる前面部11a、前面部11aからパッド本体部11aの後方に屈曲してパッド本体部11の上端を形成して延在するパッド本体部外側面11c、パッド本体部外側面11cから連続して延在する張り出し部外側面12a、張り出し部外側面12aから下方向に湾曲して延在するフランジ部外側面13a、フランジ部外側面13aから連続するとともに下方向に移行するに従ってパッド本体部11の背面部11bから漸次離間する肉厚部13c、肉厚部13cから下方向に移行するに従って背面部11bに漸次近接する段差部13dを備える。
【0033】
更に外側面は、段差部13dから屈曲部13eを介して下方向に延在する先端部外側面14a、先端部外側面14aから連続して背面部11b方向に屈曲するとともに先端部14の角部14cに接続してシートバックパッド10の内側面に連続する端部絞り部の先端部分である先端部底面14dを備える。
【0034】
そして、上記断面形状を有するシートバックパッド10は、このシートバックパッド10の幅方向に延在して一体形成される。
【0035】
先端部14は、発泡樹脂材料の発泡によって成形されたウレタンフォームに包含されるように埋設保持された先端部充填体20で形成される。この先端部充填体20は、発泡ポリスチレンであるEPS素材で形成され、上面20a、底面20b、上面20a及び底面20bに対して上下方向に長い第1側面20c、第2側面20dを有する断面略長方形状で、シートバックパッド10の幅方向に延在して形成される。すなわち、底面20bが先端部底面14d、第1側面20cの下方部分が先端部14の先端部内側面14b、第2側面20dの下方部分が先端部14の先端部外側面14aに対応する。また、先端部充填体20の第1側面20cは、補強材16の端部に固定されて補強材16を押圧するとともに、第2側面20dと対向して肉厚部内側面13bに沿って延在しており、上部20aが肉厚部13cの内部に突出する。
【0036】
次に、シートバックパッド10を成形する発泡成形型30について説明する。図5(a)〜(c)は、発泡成形型30の概略を説明する図である。図5(a)及び(b)で示すように、発泡成形型30は、下型31、上型32、中子型33、を備える。
【0037】
下型31は、底部31a、第1壁部31b、第2壁部31cを有して上部31dが一部切り欠かれて成形面31Aが形成された側面視略凹状に形成されるとともに、第1壁部31b側の上部31dから第2壁部31c方向に上型支持部31Bが突出して、抜け勾配に対してアンダーカット形成される。
【0038】
上型32は、成形面32A及び成形面32Aから連続して側面視凹状に形成された中子型接触面32Bを有して形成され、基端が下型31の第2壁部31cに形成されたヒンジ36を介して揺動自在に軸支されて、ヒンジ36を揺動中心として上型32が下型31に対して型開き及び型締め方向に移動する。
【0039】
中子型33は、中子型本体部33a及び中子型本体部33aから下型31の第1壁部31b方向に突出する突起部33bを有して一体形成されるとともに、周回して連続形成された成形面33A及び上型接触面33Bを有して形成される。中子型33は、中子型33の上型接触面33Bと上型32の中子型接触面32Bとを接離可能に支持するシリンダ37を介して上型32に連結される。
【0040】
次に、発泡成形型30の成形面31A、32A、33Aについて説明する。
【0041】
下型31の成形面31Aは、シートバックフレーム係合部11cの外面側を形成するシートバックフレーム係合部外面成形面31Aa、シートバックフレーム係合部外面成形面31Aaから連続して底部31a方向に湾曲するとともにパッド本体部11の前面部11aを成形する前面部成形面31Ab、前面部成形面31Abから連続して上方向に湾曲して延在するとともにパッド本体部11のパッド本体部外側面11cから張り出し部外側面12aを成形する張り出し部外側面成形面31Ac、張り出し部外側面成形面31Acから連続して下型31の第2壁部31c方向に湾曲するとともにフランジ部13の肉厚部13cの最大肉厚部分までを成形する肉厚部第1成形面31Adを備える。
【0042】
そして、下型31と上型32との間に形成される後述の型分割線PL3を介して、肉厚部第1成形面31Adから連続して肉厚部13cの最大肉厚部分から段差部13dまでを成型する肉厚部第2成形面32Aa、肉厚部第2成形面32Aaから連続して先端部充填体20の第2側面20dと当接する第1当接面32Abを備えて上型32の成形面32Aが形成される。
【0043】
中子型33の成形面33Aは、発泡成形型30の型締め状態において、上型32の第1当接面32Abから下型31の底部31a方向に折曲して先端部充填体20の底面20bと当接する第2当接面33Aa、第2当接面33Aaから第1壁部31b方向に折曲して連続するとともに先端部充填体20の第1側面20cと当接する第3当接面33Ab、第3当接面33Abから連続して湾曲するとともに張り出し部内側面12bを成形する張り出し部内側面成形面33Ac、張り出し部内側面成形面33Acから連続してパッド本体部11の背面部11bを成形する背面部成形面33Ad、背面部成形面33Adから連続してシートバックフレーム係合部11cの内面側を形成するシートバックフレーム係合部内面成形面33Aeを備える。
【0044】
上型32を型締め方向に移動させて上型支持部31Bと下型係合部32Cを嵌合させるとともにシリンダ37を作動させると、中子型33の上型接触面33Bと中子型接触面32Bが面で接合される。この状態において、下型31と中子型32との間に第1キャビティ34が形成され、中子型33と上型32との間に第2キャビティ35(成形空間)が形成される。また、上型32の中子型接触面32Bの中子型接触面第1傾斜部32Baと、中子型33の上型接触面33Bの上型接触面第1傾斜部33Baとが接合して型分割線PL1が形成され、上型32の中子型接触面32Bの中子型接触面第2傾斜部32Bbと、中子型33の上型接触面33Bの上型接触面第2傾斜部33Bbとが接合して型分割線PL2が形成される。
【0045】
図5(c)は、図5(b)の矢線C部の拡大図である。図示のように、下型31の上型支持部31Bは、上型31方向に突出する下型突起部31Baを有する側面視凸状で、下型31の幅方向に延在して形成される。上型32の下型係合部32Cは、下型33方向に突出する上型突起部32Caを有する側面視凹状で、上型32の幅方向に延在して形成される。そして、上型32を型締め方向に移動させて型締めすると、下型突起部31Baの上面31Bbと、上型突起部32Caの下面32Cbとが当接して、下型31及び上型32との間に所定の微小な間隔を有して、側面視略階段状の型分割線PL3が形成される。
【0046】
次に、シートバックパッド10の成形について説明する。図6(a)及び(b)は、シートバックパッド10の成形過程を説明する図である。図6(a)で示すように、補強材16の端部に先端部充填体20を両面テープや接着剤等の接着部材で固定する(先端部充填体接合工程)。そして、中子型33をシリンダ37によって上型32に接合させた上で、先端部充填体20の底面20bが中子型33の成形面33Aの第2当接面33Aaに当接し、先端部充填体20の第1側面20cが中子型33の成形面33Aの第3当接面33Abに当接するように配置する(先端部充填体配置工程)。そして、補強材16を張り出し部内側面成形面33Ac、背面部成形面33Ad、シートバックフレーム係合部内面成形面33Aeへと、例えば、両面テープ等を用いて順次貼付していく(補強材張設工程)。
【0047】
その後、図6(b)で示すように、下型31の成形面31Aの前面成形面31Abに発泡樹脂材料Mを所定量注入する(発泡樹脂材料注入工程)。そして、上型32を下型31への型締め方向に移動させる(型締め工程)。このとき、先端部充填体20の第2側面20dが、上型32の成形面32Aの第1接触面32Abによって圧接され、先端部充填体20と中子型33との間で補強材16が強固に挟み込まれる。
【0048】
この状態で、発泡樹脂材料Mに所定時間加熱して発泡させ、第1キャビティ34内に発泡樹脂材料Mが流入充填されるとともに、発泡樹脂材料Mが先端部充填体20の上部20aに衝突するので、肉厚部第1成形面31Ad及び肉厚部第2成形面32Aaに沿って第2キャビティ35内に流入充填されて肉厚部13aの肉厚量が十分に確保される。このとき、肉厚部13aの最大肉厚点の成形面には、微小な間隙を有する型分割線PL3が形成されているので、肉厚部13aに集まりやすい気泡や炭酸ガスがこの型分割線PL3から発散されて、ボイドの発生が回避される。
【0049】
そして、第2キャビティ35に配置される先端部充填体20は、第2キャビティ35に流入した発泡樹脂材料Mによって包含されるように保持されるとともに、発泡樹脂材料Mが硬化されてウレタンフォームが生成され、シートバックパッド10が成形される(樹脂材料発泡成形工程)。
【0050】
そして、上型32及び中子型33を型開き方向に移動させてシートバックパッド10を下型31から離型させるとともに、中子型33からも離型させる(離型工程)。
【0051】
以上のような構成とすることにより、先端部充填体20の第2側面20dが、上型32の成形面32Aの第1当接面32Abに押圧され、先端部充填体20と中子型33との間に補強材16が強固に挟み込まれるので、シートバックパッド10の成形時に、先端部充填体20とともに補強材16が引きずられて上型32と中子型33との型分割線PL1に入り込むことがない。従って、シートバックパッド10の成形時に補強材16のかみ込みが生じないので、シートバックパッド10の成形効率が向上する。
【0052】
そして、フランジ部13の先端部14が先端部充填体20によって形成されているので、シートバックパッド10の成形時に、第2キャビティ35内における先端部14の成形箇所に発泡樹脂材料Mが流入することはない。また、先端部充填体20が肉厚部13cの内部に突出するように配置されているので、シートバックパッド10の成形時に、発泡樹脂材料Mが先端部充填体20の上面20aに衝突する。従って、発泡樹脂材料Mが、下型31の肉厚部第1成形面31Ae及び上型32の肉厚部第2成形面32Aaに沿って流れ、肉厚部13cの膨出量が十分に確保される。このとき、発泡樹脂材料Mに混在する空気や炭酸ガスが、肉厚部13cの最大肉厚点の成形面に微小な間隔を有して形成された型分割線PL3から発散されるので、肉厚部13cにボイドの成形が回避されて成形性の精度の高い、高品質なシートバックパッド10を得ることができる。
【0053】
また、先端部充填体20は、軽量性に優れるEPS素材で形成されており、シートバックパッド10の軽量化にも資する。このとき、先端部14はフランジ部13の屈曲部13eからシートバックフレーム係合部11cまで延在するバックボード15によって被覆されており、乗員が先端部14に直接触れることが防止されるので、EPS素材で形成された先端部充填体20の割れや潰れ等の破損の可能性が低減される。バックボード15を屈曲部13dに取り付ける際には、先端部充填体20が、発泡樹脂材料Mの発泡により成形されるウレタンフォームより硬度の高い発泡ポリスチレンで形成されているので、バックボード15の取り付けの際の位置決めが容易になされるとともに、バックボード15の設置の安定を図ることができる。
【0054】
更に、シートバックパッド10に乗員が直接手を触れる部分は全て発泡樹脂材料Mによって成形されたウレタンフォームで形成されるので、乗員がシートバックパッド10に触れたときの触感や質感が向上する。
【0055】
また、先端部充填体20が断面略矩形でシートバックパッド10の幅方向に延在して形成されているので、シートバックパッド10の成型時において、先端部充填体20を中子型33の第2当接面33Aa及び第3当接面33Abに配置する際の位置決めが容易になされる。
【0056】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることはなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、上記実施の形態では、シートパッドが自動車の前部座席1のシートバック部3のシートバックパッド10であることを例として説明したが、自動車の後部座席のシートバック部のシートバックパッドであってもよく、更に、航空機や船舶、列車等のシートバック部のシートバックパッドにも適用できる。
【0057】
また、先端部充填体20の断面形状を略矩形状である場合を例として説明したが、先端部14を形成する形状であれば断面略矩形状に限定されない。また、先端部材20がEPS素材で形成されることを例として説明したが、例えば、スラブウレタンやEPP等の、発泡樹脂材料Mよりも軽量な素材を用いてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 前部座席
3 シートバック部
10 シートバックパッド
11 パッド本体部
12 張り出し部
13 フランジ部
13c 肉厚部
13d 段差部
14 先端部(端部絞り部)
14d 先端部底面(先端)
15 バックボード
16 補強材
20 先端部充填体
20a 上部
20b 底面
20c 第1側面
20d 第2側面
30 発泡成形型
31 下型
31A 成形面
31B 上型支持部
32 上型
32A 成形面
32C 下型係合部
33 中子型
33A 成形面
M 発泡樹脂材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
背もたれ部を形成するパッド本体部と、
該パッド本体部の上端から後方に突出して延在する張り出し部と、
該張り出し部から前記パッド本体部の下方向に向かって折曲して延在するとともに前記パッド本体部の下方に移行するに従って該パッド本体部の後方向に漸次肉厚が増大する肉厚部及び該肉厚部から更に下方に連続するとともに漸次肉厚が減少する端部絞り部を有するフランジ部と、
該フランジ部及び前記張り出し部及び前記パッド本体部の内側面の全域に亘って張設される補強材と、を備えるシートパッドにおいて、
前記端部絞り部の先端部分には、
前記パッド本体部の幅方向に延在して前記端部絞り部の先端部分に充填される先端部充填体が配置されたことを特徴とするシートパッド。
【請求項2】
前記先端部充填体は、
断面略矩形状に形成されるとともに前記補強材と接触して前記肉厚部内に突出して配置されることを特徴とする請求項1に記載のシートパッド。
【請求項3】
前記先端部充填体は、発泡ポリスチレンで形成され、
前記パッド本体部の背面は、
前記フランジ部の前記端部絞り部の外側面の対向位置を基端として前記パッド本体部に沿って延在するバックボードで被覆されることを特徴とする請求項1または2に記載のシートパッド。
【請求項4】
請求項1〜3に記載のシートパッドを下型及び該下型に型締めされる上型及び中子型を備える発泡成形型で成形するシートパッドの製造方法であって、
前記補強材の端部に前記先端部充填体を接合する先端部充填体接合工程と、
前記中子型における前記端部絞り部の先端部分を形成する成形面に先端部充填体を配置する先端部充填体配置工程と、
前記補強材を前記中子型の成形面に張設する補強材張設工程と、
前記下型の前記成形面に発泡樹脂材料を注入する発泡樹脂材料注入工程と、
前記上型及び中子型を型締め方向に移動させて型締めする型締め工程と、
該型締め工程の後に前記発泡樹脂材料を所定時間加熱して発泡させてシートパッドを成形する樹脂材料発泡成形工程と、
前記上型及び中子型を型開き方向に移動させて型開きするとともに前記樹脂材料発泡成形工程により成形された前記シートパッドを前記上型及び中子型から離型する離型工程と、
を備えることを特徴とするシートパッドの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−227302(P2010−227302A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−78356(P2009−78356)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】