説明

タンパク質のミスフォールディングを修正する小分子及びその使用

【課題】in vivoでミスフォールディングされたタンパク質を修正することによってタンパク質形態障害を治療若しくは予防する際に有用な組成物及び方法、並びに真核生物細胞中で組換えタンパク質の発現を強化する方法であって、当該組換えタンパク質が生化学的に機能的な形態において発現される方法の提供。
【解決手段】11−シス−レチナール、9−シス−レチナール又は7環ロックされた11−シス−レチナールの異性体と共に、プロテアソーム阻害剤、オートファジー阻害剤、リソソーム阻害剤、ER(小胞体)からゴルジ体へのタンパク質輸送の阻害剤、Hsp90シャペロン阻害剤、熱ショック応答活性化剤、グリコシダーゼ阻害剤及びヒストンデアセチラーゼ阻害剤からなる群から選択される少なくとも1つの化合物を投与することを含んでなる方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本特許出願は、米国仮特許出願第60/703,068号(2005年7月27日に出願)の優先権を主張し、これら各々の全開示内容を本願明細書に参照により援用する。
【0002】
(連邦の支援により行われた本発明の権利に関する声明)
本発明は国立眼研究所により、承認番号EY016070−01として支援されたものである。したがって、政府は本発明に関して一定の権利を有する。
【0003】
(技術分野)
本発明は、タンパク質のミスフォールディングを修正する小分子及びその使用に関する。
【背景技術】
【0004】
タンパク質は、生物学的機能を提供するためはそれらの正しい三次元立体構造にフォールディングされなければならない。ポリペプチドの天然の立体構造はそのアミノ酸配列の一次構造としてコードされ、アミノ酸配列の単一の突然変異により、タンパク質のその適当な形態を採る能力が損なわれることさえあり得る。タンパク質が正しくフォールディングされなければ、生物学的及び臨床的効果が得られない。タンパク質凝集及びミスフォールディングは、多くのヒト疾患(例えば常染色体優性色素性網膜炎、アルツハイマー病、α1−抗トリプシン欠乏、嚢胞性線維症、腎生成尿崩症及びプリオン媒介による感染症)の主要な原因となる。疾患は、ある特定の生化学的経路において機能することが必要となるタンパク質濃度の不足から生じうると考えられ、例えば嚢胞性線維症などの場合、嚢胞性線維症膜内外コンダクタンス制御因子(CFTR)、上皮細胞上の頂端膜で発現するcAMP活性化塩素イオンチャネルの突然変異により、その機能を必要とする原形質膜におけるその形成、プロセシング及び埋め込みに影響が及ぶ。他のタンパク質のフォールディングと関係する障害においては、疾患はミスフォールドタンパク質の有する細胞障害性効果によって生じ、例えばアルツハイマー病などの場合、アミロイド斑の凝集によってニューロン傷害が生じる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、in vivoでミスフォールディングされたタンパク質を修正することによってタンパク質形態障害を治療若しくは予防する際に有用な組成物及び方法、並びに真核生物細胞中で組換えタンパク質の発現を強化する方法であって、当該組換えタンパク質が生化学的に機能的な形態において発現される方法の提供に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は広義には、タンパク質形態障害(PCD)(α1−抗トリプシン欠乏、嚢胞性線維症、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病、アルツハイマー病、腎生成尿崩症、癌及びジェイコブ−クロイツフェルト疾患)に罹患する患者(例えば哺乳類(ヒトなど))の治療方法を特徴とする。当該方法には、プロテアソーム阻害剤、オートファジー阻害剤、リソソーム阻害剤、ER(小胞体)からゴルジ体へのタンパク質輸送の阻害剤、Hsp90シャペロン阻害剤、熱ショック応答活性化剤、グリコシダーゼ阻害剤及びヒストンデアセチラーゼ阻害剤からなる群から選択される少なくとも1つの化合物を投与することを含んでなり、当該化合物は患者の治療に十分な量において投与される。
【0007】
一実施態様では、PCDは、α1−抗トリプシン欠乏、嚢胞性線維症、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病、アルツハイマー病、腎生成尿崩症、癌及びジェイコブ−クロイツフェルト疾患からなる群のうちの1つ以上である。他の実施態様では、当該方法は更に、患者に11−シス−レチナール、9−シス−レチナール又は7環ロックされた11−シス−レチナールの異性体を投与することを含んでなる。これらの化合物、並びに、11−シス−レチナール、9−シス−レチナール若しくは11−シス−レチナールの7環ロックされた異性体のうちの少なくとも1つの組合せは、特に色素性網膜炎及び加齢黄斑変性の治療に有用である。
【0008】
他の実施態様では、PCDが嚢胞性線維症である場合、当該方法は更に、抗生物質、ビタミンA、D、E及びKサプリメント、アルブテロール気管支拡大、ドルナーゼ及びイブプロフェンからなる群から選択される薬剤の投与を伴う。またPCDがハンチントン舞踏病である場合、当該方法は更に、ハロペリドール、フェノチアジン、レセルピン、テトラベナジン、アマンタジン及びコエンザイムQ10からなる群から選択される薬剤の投与を伴う。またPCDがパーキンソン病である場合、当該方法は更に、レボドパ、アマンタジン、ブロモクリプチン、ペルゴリド、アポモルヒネ、ベンゼラジド、リスライド、メスレルジン、リスリド、レルゴトリル、メマンチン、メタエルゴリン、ピリベジル、チラミン、チロシン、フェニルアラニン、ブロモクリプチンメシラート、ペルゴリドメシラート、抗ヒスタミン剤、抗うつ薬及びモノアミンオキシダーゼ阻害剤からなる群から選択される薬剤の投与を伴う。またPCDがアルツハイマー病である場合、当該方法は更にドネペジル、リバスチグミン、ガランタミン及びタクリンからなる群から選択される薬剤の投与を伴う。またPCDが腎生成尿崩症である場合、当該方法は更にクロロチアジド/ヒドロクロロチアジド、アミロライド及びインドメタシンからなる群から選択される薬剤の投与を伴う。PCDが癌である場合、当該方法は更に、酢酸アビラテロン、アルトレタミン、無水ビンブラスチン、アウリスタチン、ベキサロテン、ビカルタミド、BMS184476、2,3,4,5,6−ペンタフルオロ−N−(3−フルオロ−4−メトキシフェニル)ベンゼンスルフォンアミド、ブレオマイシン、N,N−ジメチル−L−バリル−L−バリル−N−メチル−L−バリル−L−プロリ−1−L−プロリン−t−ブチルアミド、カケクチン、セマドチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、3’,4’−ジデヒドロ−4’−デオキシ−8’−ノルヴィン−カロイコブラスチン、ドセタキソール、ドキセタキセル、シクロホスファミド、カルボプラチン、カルマスティン(BCNU)、シスプラチン、クリプトフィシン、シタラビン、ダカルバジン(DTIC)、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドラスタチン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、エトポシド、5−フルオロウラシル、フィナステリド、フルタミド、ヒドロキシ尿素及びヒドロキシ尿素タキサン、イホスファミド、リアロゾール、ロニダミン、ロムスチン(CCNU)、メクロレタミン(ナイトロジェンマスタード)、メルファラン、イセチオン酸ミボブリン、リゾキシン、セルテネフ、ストレプトゾシン、マイトマイシン、メトトレキサート、ニルタミド、オナプリストン、パクリタキセル、プレドニムスチン、プロカルバジン、RPR109881、ストラムスチンリン酸塩、タモキシフェン、タソネルミン、タキソール、トレチノイン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、硫酸ビンデシン及びビンフルニンからなる群から選択される薬剤の投与を伴う。
【0009】
関連する本発明の態様では、色素性網膜炎であると診断された患者の治療方法の提供に関する。当該方法は、当該患者に11−シス−レチナール若しくは9−シス−レチナールを投与し、更にプロテアソーム阻害剤、オートファジー阻害剤、リソソーム阻害剤、ERからゴルジ体へのタンパク質輸送の阻害剤、Hsp90シャペロン阻害剤、熱ショック応答活性化剤、グリコシダーゼ阻害剤及びヒストンデアセチラーゼ阻害剤からなる群選択される少なくとも1つの化合物を投与することを含んでなり、11−シス−レチナール若しくは9−シス−レチナールと当該化合物とを、各々患者の治療に十分な量において、同時若しくは14日以内に投与することを含んでなる。
【0010】
上記の態様の幾つかの実施形態では、11−シス−レチナール若しくは9−シス−レチナール並びに当該化合物を、各々24時間以内、各々5、10若しくは14日以内に投与するか、又は同時に投与する。上記の態様のその他の実施形態では、11−シス−レチナール若しくは9−シス−レチナール並びに当該化合物を眼に(例えば眼内に)投与する。上記の態様の他の実施形態では、11−シス−レチナール若しくは9−シスレチナール並びに当該化合物を、それらを徐々に放出する組成物(例えばマイクロカプセル、ナノカプセル又はナノエマルジョン)中に各々添加するか、又は薬剤輸送手段を使用してそれらを長期放出させてもよい。上記の態様の他の実施形態では、当該方法はビタミンAサプリメントを投与することを更に含んでなる。
【0011】
更に本発明の他の態様は、細胞内において、生化学的に機能的な形態のタンパク質を増加させる方法の提供に関する。当該方法は、プロテアソーム阻害剤、オートファジー阻害剤、リソソーム阻害剤、ERからゴルジ体へのタンパク質輸送の阻害剤、Hsp90シャペロン阻害剤、熱ショック応答活性化剤、グリコシダーゼ阻害剤及びヒストンデアセチラーゼ阻害剤からなる群から選択される少なくとも1つの化合物を、有効量において細胞と接触させることと、生化学的に機能的な形態のタンパク質の増加を確認することを含んでなる。一実施形態では、当該方法は更に11−シス−レチナール、9−シス−レチナール又は7−環ロックされた11−シス−レチナールの異性体と細胞を接触させることを含んでなる。他の実施形態では、当該細胞(in vitro又はin vivoで、例えば哺乳類又はヒト細胞)は、凝集又は原線維タンパク質を形成する変異タンパク質(例えばオプシン、ミオシリン、リポフスシン、βigH3)を含んでなる。
【0012】
更に本発明の他の態様は、有効量の11−シス−レチナール若しくは9−シス−レチナール、並びに有効量の、プロテアソーム阻害剤、オートファジー阻害剤、リソソーム阻害剤、ERからゴルジ体へのタンパク質輸送の阻害剤、Hsp90シャペロン阻害剤、熱ショック応答活性化剤、グリコシダーゼ阻害剤及び薬理学的に許容できる添加剤のヒストンデアセチラーゼ阻害剤からなる群から選択される少なくとも1つの化合物を更に含んでなる、眼性PCDの治療用の医薬組成物の提供に関する。
【0013】
更に他の態様では、本発明は、色素性網膜炎の治療用の医薬組成物であって、有効量の11−シス−レチナール若しくは9−シス−レチナール、並びに有効量の、プロテアソーム阻害剤、オートファジー阻害剤、リソソーム阻害剤、ERからゴルジ体へのタンパク質輸送の阻害剤、Hsp90シャペロン阻害剤、熱ショック応答活性化剤、グリコシダーゼ阻害剤及び薬理学的に許容できる添加剤のヒストンデアセチラーゼ阻害剤からなる群から選択される少なくとも1つの化合物を更に含んでなる医薬組成物の提供に関する。
【0014】
本発明の別の態様は、眼性PCDの治療用のキットの提供に関する。当該キットは、有効量の11−シス−レチナール若しくは9−シス−レチナール、並びに有効量の、プロテアソーム阻害剤、オートファジー阻害剤、リソソーム阻害剤、ERからゴルジ体へのタンパク質輸送の阻害剤、Hsp90シャペロン阻害剤、熱ショック応答活性化剤、グリコシダーゼ阻害剤及びヒストンデアセチラーゼ阻害剤からなる群から選択される少なくとも1つの化合物を更に含んでなる。
【0015】
本発明は更に他の態様は、色素性網膜炎の治療用のキットの提供に関する。当該キットは、有効量の11−シス−レチナール若しくは9−シス−レチナール、並びに有効量の、プロテアソーム阻害剤、オートファジー阻害剤、リソソーム阻害剤、ERからゴルジ体へのタンパク質輸送の阻害剤、Hsp90シャペロン阻害剤、熱ショック応答活性化剤、グリコシダーゼ阻害剤及びヒストンデアセチラーゼ阻害剤からなる群から選択される少なくとも1つの化合物を更に含んでなる。更に他の態様では、本発明は、眼性PCDに罹患する患者の治療に有用な化合物を同定する方法の提供に関する。当該方法は、候補化合物と、ミスフォールドタンパク質を発現する細胞をin vitroで接触させることと、コントロールの細胞と比較して、細胞において正しくフォールディングされたタンパク質の収率を測定することを含んでなり、接触させた当該細胞における、正しくフォールディングされたタンパク質の収率の増加を、PCDに罹患する患者の治療に有用な化合物であることの指標とすることを特徴とする。
【0016】
本発明の更に他の態様は、色素性網膜炎に罹患する患者の治療に有用な化合物を同定する方法の提供に関する。当該方法は、in vitroで、ミスフォールドタンパク質を発現する細胞を、
(i)11−シス−レチナール若しくは9−シス−レチナール、及び
(ii)候補化合物
と接触させ、コントロールの細胞と比較して、細胞において正しくフォールディングされたタンパク質の収率を測定することを含んでなり、接触させた当該細胞における、正しくフォールディングされたタンパク質の収率の増加を、色素性網膜炎に罹患する患者の治療に有用な化合物であることの指標とすることを特徴とする。一実施形態では、ミスフォールドタンパク質(例えばオプシン)は突然変異(例えばP23H突然変異)を有する。
【0017】
本発明の更に他の態様は、タンパク質形態障害(PCD)に罹患する患者の治療方法の提供に関する。当該方法は、患者の治療に有効な量のプロテアソーム阻害剤若しくはオートファジー阻害剤を、患者に投与することを含んでなる。
【0018】
本発明の更に他の態様は、色素性網膜炎に罹患する患者の治療方法の提供に関する。当該方法は、患者の治療に有効な量のプロテアソーム阻害剤若しくはオートファジー阻害剤(例えば3−メチルアデニン)を患者に投与することを含んでなる。一実施形態では、当該プロテアソーム阻害剤はプロテアソームの可逆的阻害剤(例えばMG132)である。他の実施形態では、当該オートファジー阻害剤は、3−メチルアデニン、3−メチルアデノシン、アデノシン、オカダ酸、N6−メルカプトプリンリボシド(N6−MPR)、アミノチオール化されたアデノシンアナログ、5−アミノ−4−イミダゾールカルボキサミドリボシド(AICAR)及びバフィロマイシンA1からなる群から選択される。
【0019】
本発明の更に他の態様は、生化学的に機能的な形態の組換えタンパク質の産生方法の提供に関する。当該方法は、組換えタンパク質を発現する細胞(例えば真核生物細胞、酵母細胞、哺乳動物細胞)と、プロテアソーム阻害剤、オートファジー阻害剤、リソソーム阻害剤、ERからゴルジ体へのタンパク質輸送の阻害剤、Hsp90シャペロン阻害剤、熱ショック応答活性化剤、グリコシダーゼ阻害剤及びヒストンデアセチラーゼ阻害剤からなる群から選択される化合物とを接触させることと、当該細胞から組換えタンパク質を単離することを含んでなり、当該方法により生化学的に機能的な形態の組換えタンパク質が産生されることを特徴とする。一実施形態では、当該方法は更に、タンパク質の生物学的活性を測定することを含んでなる。他の実施形態では、当該生物学的活性は酵素アッセイ又は分光光度測定を使用して検出される。他の実施形態では、当該方法は更に、11−シス−レチナール(例えば、7−環ロックされた11−シス−レチナールの異性体)と細胞を接触させることを含んでなる。
【0020】
上記の態様のあらゆる実施形態において、当該プロテアソーム阻害剤(例えばプロテアソームの可逆的阻害剤)は、MG132、ラクトシスチン、クラスト−ラクトシスチン−β−ラクトン、PSI、MG−115、MG−101、N−アセチル−Leu−Leu−Met−CHO、N−カルボベンゾイル−Gly−Pro−Phe−Leu−CHO、N−カルボベンゾイル−Gly−Pro−Ala−Phe−CHO、N−カルボベンゾイル−Leu−Leu−Phe−CHO、並びにその塩若しくはアナログのうちの1つ以上であり、当該オートファジー阻害剤は、3−メチルアデニン、3−メチルアデノシン、アデノシン、オカダ酸、N6−メルカプトプリンリボシド(N6−MPR)、5−アミノ−4−イミダゾールカルボキサミドリボシド(AICAR)、バフィロマイシンA1、並びにその塩若しくはアナログのうちの1つ以上であり、当該リソソーム阻害剤は、ロイペプチン、トランス−エポキシスクシニル−L−ロイシルアミド−(4−グアニジノ)ブタン、L−メチオニンメチルエステル、塩化アンモニウム、メチルアミン、クロロキン、並びにその塩若しくはアナログのうちの1つ以上であり、当該ERからゴルジ体へのタンパク質輸送の阻害剤は、ブレフェルジンA、並びにその塩若しくはアナログであり、当該Hsp90シャペロン阻害剤は、ベンゾキノンアンサマイシン抗生物質、ゲルダナマイシン、17−アリルアミノ−17−デメトシキゲルダナマイシン、ラジシコール、ノボビオシン及びHsp90 ATP/ADPポケットと結合するHsp90阻害剤、並びにその塩若しくはアナログのうちの1つ以上であり、当該熱ショック応答活性化剤は、セラストロール、セラストロールメチルエステル、ジヒドロセラストロールジアセテート、セラストロールブチルエステル及びジヒドロセラストロールからなる群から選択され、当該グリコシダーゼ阻害剤は、塩酸アウストラリン、カスタノスペルミン、6−アセタミド−6−デオキシ−カスタノスペルミン、塩酸デオキシフコノジリマイシン(DFJ)、デオキシノジリマイシン(DNJ)、塩酸デオキシガラクトノジリマイシン(DGJ)、塩酸デオキシマンノジリマイシン(DMJ)、2R,5R−ビス(ヒドロキシメチル)−3R,4R−ジヒドロキシピロリジン(DMDP)1,4−ジデオキシ−1,4−イミノ−D−マンニトール塩酸塩、3R,4R,5R,6R)−3,4,5,6−テトラヒドロキシアゼパン塩酸塩、1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−キシリトール、キフネンシン、N−ブチルデオキシノジリマイシン(BDNJ)、N−ノニルDNJ(NDNJ)、N−ヘキシルDNJ(HDNJ)、N−メチルデオキシノジリマイシン(MDNJ)、並びにその塩若しくはアナログのうちの1つ以上であり、当該ヒストンデアセチラーゼ阻害剤は、スクリプタイド、APHAコンパウンド8、アピシジン、酪酸ナトリウム、(−)−デプデシン、サーチノール、トリコスタチンA、並びにその塩若しくはアナログのうちの1つ以上である。上記の態様のあらゆる実施形態において、当該眼性PCDは、加齢黄斑変性、色素性網膜炎、緑内障、角膜ジストロフィー、網膜分離症、Stargardt疾患、常染色体優位ドルーゼン又はBest黄斑ジストロフィーのいずれか、又は眼細胞中におけるタンパク質凝集又は原線維の蓄積を特徴とする他のいかなる眼性疾患のうちの1つである。様々な態様では、これらの凝集又は原繊維を形成する変異タンパク質は、オプシン、ミオシリン、リポフスシン又はBIGH3βigH3である。上記の態様の他のいずれかの実施形態では、当該患者はタンパク質のフォールディングに影響を及ぼす突然変異(例えばオプシンの突然変異(例えばP23H突然変異))を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
定義
「タンパク質形態障害」とは、その病理がミスフォールドタンパク質の存在に関連する疾患若しくは障害のことを意味する。一実施形態では、ミスフォールドタンパク質が細胞、組織又は器官の通常の生物学的活性を妨げる場合、タンパク質形態障害が生じる。
【0022】
「プロテアソーム阻害剤」とは、プロテアソームの活性(例えばユビキチン化(ubiquinated)されたタンパク質の分解)を減少させる化合物のことを意味する。
【0023】
「オートファジー阻害剤」とは、ある構成要素を内包する細胞による、その細胞構成要素の分解を減少させる化合物のことを意味する。
【0024】
「リソソーム阻害剤」とは、高分子のリソソームによる細胞内分解を減少させる化合物のことを意味する。一実施形態では、当該リソソーム阻害剤はリソソームによるタンパク質の分解活性を減少させる。
【0025】
「ER−ゴルジ体のタンパク質輸送の阻害剤」とは、ERからゴルジ体、又はゴルジ体からERへのタンパク質の輸送を減少させる化合物のことを意味する。
【0026】
「Hsp90シャペロン阻害剤」とは、Hsp90のシャペロン活性を減少させる化合物のことを意味する。一実施形態では、当該阻害剤はHsp90 ATP/ADPポケットへのタンパク質結合を変化させる。
【0027】
「熱ショック応答活性化剤」とは、熱ショック応答経路を構成する要素のシャペロン活性又は発現を増加させる化合物のことを意味する。熱ショック経路の構成要素としては、限定はされないが、Hsp100、Hsp90、Hsp70、Hsp60、Hsp40及び小分子のHSPファミリーが挙げられる。
【0028】
「グリコシダーゼ阻害剤」とは、グリコシド結合を切断する酵素活性を減少させる化合物のことを意味する。
【0029】
「ヒストンデアセチラーゼ阻害剤」とは、ヒストンを脱アセチル化する酵素活性を減少させる化合物のことを意味する。
【0030】
「減少する」又は「増加する」とはそれぞれ、少なくとも10%、25%、50%、75%又は100%マイナス若しくはプラスになることを意味する。
【0031】
「生化学的に機能的な形態」とは、あるタンパク質が、そのタンパク質が生物学的活性を発揮できる三次構造を有することを意味する。変異タンパク質が生化学的に機能的な形態をとるとき、その生物学的活性は増加する。したがって、生化学的に機能的な形態を有する変異タンパク質は、ある程度は機能的な野生型タンパク質の代わりになりえる。
【0032】
本発明の方法
一実施形態では、本発明は疾患及び/若しくは障害又はその徴候を治療する方法の提供に関し、当該方法は、本願明細書に記載の化合物を含んでなる医薬組成物を治療的有効量で患者(例えば哺乳類、例えばヒト)に投与することを含んでなる。すなわち、一実施形態は、タンパク質形態障害若しくは疾患、又はその徴候を有するか、又はそれに影響されやすい患者を治療する方法に関する。
【0033】
当該方法は、本発明に係る化合物を、疾患又は障害が治療される条件下で、哺乳類に治療的に有効な量で投与し、疾患又は障害又はその徴候を治療することを含んでなる。本発明の方法は、本願明細書に記載の化合物、又はかかる効果を得るための本願明細書に記載されている組成物を、患者(かかる治療を必要と診断された患者を含む)に有効量で投与することを含んでなる。かかる治療を必要とする患者の診断は、患者又は健康管理専門家の主観的な判断(例えば意見など)によってもよく、また客観的(試験又は診断法による測定など)によってもよい。
【0034】
本発明の用語「処置する」、「処置すること」、「治療」などは、障害及び/若しくは症状、又はそれに関連する徴候を減少させるか又は改善することを指す。当然ながら、障害若しくは症状の治療とは、それと関連する障害、症状又は徴候を完全に排除することを必要とするものではないが、そうであってもよい。
【0035】
本発明の用語「予防する」「予防すること」こと、「予防」「予防的処置」などは、患者の障害又は症状が進行する確率を低下させることを指し、当該患者は、当該障害又は症状を進行させる危険を有するか、又は影響されやすい患者である。
【0036】
本発明の治療法(予防的処置を含む)は通常、哺乳類(例えば動物、ヒト)などの患者(特にヒト)に、本願明細書に記載の化合物を、治療的有効量で投与することを含んでなる。かかる治療は、当該疾患、障害又はその徴候に罹患する、有する、影響されやすい、又は罹患する危険を有する患者(特にヒト)に投与することが適切である。「危険を有する」患者の判定は、診断試験、又は患者若しくは健康ケア提供者による客観的若しくは主観的な意見、又は意見(例えば遺伝子検査、酵素又はタンパク質標識、マーカー(本明細書で定義)、家族歴など)に基づき行うことができる。本願明細書に記載の化合物は、タンパク質のフォールディング(ミスフォールディングを含む)が関係しうる他のいかなる障害の治療にも使用できる。
【0037】
本発明は、ミスフォールディングされたタンパク質のin vivoでの修復に有用な組成物及び方法の提供に関する。ミスフォールディングタンパク質は、通常の細胞機能を妨げ、ヒトのタンパク質形態障害(Protein Conformational Disease(PCD))をもたらすことがある。PCDとしては、α1−抗トリプシン欠乏、嚢胞性線維症、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病、アルツハイマー病、腎生成尿崩症、癌及びプリオン関連の障害(例えばジェイコブ−クロイツフェルト疾患)などが挙げられる。本発明の組成物及び方法は特に眼性PCDの予防又は治療に有用であり、当該PCDとしては色素性網膜炎、加齢黄斑変性、緑内障、角膜ジストロフィー、網膜精神分裂症患者、Stargardt疾患、常染色体優位ドルーゼン、Bestの黄斑ジストロフィー及び角膜ジストロフィーなどが挙げられる。本発明の組成物は、PCDの治療、PCDによって生じる症状の緩和、影響を受けた細胞死の遅延又はPCDの初期発症の予防に使用できる。
【0038】
本発明は広義には、11−シス−レチナールと、プロテアソーム阻害剤、オートファジー阻害剤、リソソーム阻害剤、ERからゴルジ体へのタンパク質輸送の阻害剤、Hsp90シャペロン阻害剤、熱ショック応答活性化剤又はヒストンデアセチラーゼ阻害剤との組み合わせにより、ミスフォールドオプシンタンパク質の立体構造が修復されるか、又は正しくフォールディングされたタンパク質の細胞中レベルが増加するという発見に基づく。具体的には、11−シス−レチナールと、プロテアソーム阻害剤のMG132、オートファジー阻害剤の3−メチルアデニン、リソソーム阻害剤の塩化アンモニウム、ER−ゴルジ輸送阻害剤のブレフェルジンA、Hsp90阻害剤のゲルダナマイシン、熱ショック応答活性化剤のセラストロール又はヒストンデアセチラーゼ阻害剤のスクリプタイドの組み合わせにより、P23H変異オプシンタンパク質が、生化学的に機能的な形態をとるようになり、更に11−シス−レチナールと結合してロドプシンを形成する。更に、プロテアソーム阻害剤MG132及びオートファジー阻害剤3−メチルアデニンを各々独立に用い、変異体P23Hオプシンの形態を修復させ、ロドプシンを形成させてもよい。
【0039】
プロテアソーム阻害剤
26Sのプロテアソームは、短いペプチドにユビキチン化されたタンパク質を切断する多触媒性プロテアーゼである。プロテアソーム阻害剤は、独立に、又は11−シス−レチナール、9−シス−レチナール又は7−環ロックされた11−シス−レチナールの異性体と組み合わせてPCDの治療に使用できる、化合物の1分類である。1つにはMG−132が挙げられ、それは独立に、又は11−シス−レチナール、9−シス−レチナール又は7−環ロックされた11−シス−レチナールの異性体と組み合わせて使用できる。MG−132は、特にタンパク質凝集又はタンパク質ミスフォールディングに関連する色素性網膜炎及び他の眼性疾患の治療に有用である。本発明の方法に有用な他のプロテアソーム阻害剤としては、ラクトシスチン(LC)クラスト−ラクトシスチン−β−ラクトン、PSI(N−カルボベンゾイル−Ile−Glu−(OtBu)−Ala−Leu−CHO)、MG−132(N−カルボベンゾイル−Leu−Leu−Leu−CHO)、MG−115(N−カルボベンゾイル−Leu−Leu−Nva−CHO)、MG−101(N−Aceryl−Leu−Leu−norLeu−CHO)、ALLM(N−アセチル−Leu−Leu−Met−CHO)、N−カルボベンゾイル−Gly−Pro−Phe−Leu−CHO、N−カルボベンゾイル−Gly−Pro−Ala−Phe−CHO、N−カルボベンゾイル−Leu−Leu−Phe−CHO、並びにその塩若しくはアナログが挙げられる。他のプロテアソーム阻害剤及びそれらの使用法は、例えば米国特許第6492333号に記載されている。
【0040】
オートファジー阻害剤
オートファジーは、細胞質中で細胞構成要素を分解させるための、進化的に保存された機構であり、細胞飢餓の際の細胞生存メカニズムとして機能する。オートファジーの間、細胞質の一部が細胞膜により封入され、リソソームと融合してオートファジー空胞が形成され、最終的にその内容物が分解される。オートファジー阻害剤は独立に使用してもよく、又はPCDの治療用の11−シス−レチナール、9−シス−レチナール又は7−環ロックされた11−シス−レチナールの異性体と組み合わせて使用してもよい。オートファジー阻害剤の3−メチルアデニンは、特にミスフォールディングタンパク質又はタンパク質凝集に関連する色素性網膜炎又は他の眼性疾患の治療に有用である。本発明の方法に有用なオートファジー阻害剤としては、3−メチルアデニン、3−メチルアデノシン、アデノシン、オカダ酸、N6−メルカプトプリンリボシド(N6−MPR)、アミノチオール化されたアデノシンアナログ、5−アミノ−4−イミダゾールカルボキサミドリボシド(AICAR)、バフィロマイシンA1、並びにその塩若しくはアナログが挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
リソソーム阻害剤
リソソームは、細胞内でタンパク質分解が行われる主要な部位である。細胞内に侵入したタンパク質、及び形質膜タンパク質の、レセプタの媒介によるエンドサイトーシス若しくはピノサイトーシスによって、リソソームにおける分解が行われる。リソソーム阻害剤(例えば塩化アンモニウム、ロイペプチン、トランス−エポキシスクシニル−L−ロイシルアミド−(4−グアニジノ)ブタン、L−メチオニンメチルエステル、塩化アンモニウム、メチルアミン、クロロキン、並びにその塩若しくはアナログ)は、11−シス−レチナール、9−シス−レチナール又は7−環ロックされた11−シス−レチナールの異性体との組み合わせにより、PCDの治療に有用性を発揮する。
【0042】
ER−ゴルジ体輸送阻害剤
新しく合成されたタンパク質は、ER(小胞体)に生合成−分泌経路に供される。ERから放出されるためには、タンパク質は適切にフォールディングされる必要がある。ミスフォールディングしたタンパク質は、ER中に保持される。ER−ゴルジ体輸送阻害剤は、PCDの治療に有用である。ブレフェルジンAは、本発明の方法において有用である、典型的なER−ゴルジ輸送阻害剤の一例である。
【0043】
HSP90シャペロン阻害剤
熱ショックタンパク質90(Hsp90)は、細胞シグナリング、増殖及び生存に関係するタンパク質のシャペロンとしての役割を果たし、高次構造の安定性及び多くのタンパク質の機能にとり重要な分子である。HSP−90阻害剤は、PCDの治療用の11−シス−レチナール、9−シス−レチナール又は7−環ロックされた11−シス−レチナールの異性体との組み合わせにより有用性を発揮する。HSP−90阻害剤としてはベンゾキノンアンサマイシン抗生物質(例えばゲルダナマイシン及び17−アリルアミノ−17−デメトシキゲルダナマイシン(17−AAG))が挙げられ、それは特にHsp90と結合し、その機能を改変し、基質タンパク質のタンパク質分解を促進する。別のHSP−90阻害剤としては、ラジシコール、ノボビオシン及びHsp90 ATP/ADPポケットと結合するあらゆるHsp90阻害剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
熱ショック応答活性化剤
セラストロール(キノンメチドトリテルペン)は、ヒト熱ショック応答を活性化させる。11−シス−レチナール、9−シス−レチナール又は7環ロックされた11−シス−レチナールの異性体との組み合わせで、セラストロール及び他の熱ショック応答活性化剤はPCDの治療に有用性を発揮する。熱ショック応答活性化剤としては、限定はされないが、セラストロール、セラストロールメチルエステル、ジヒドロセラストロールジアセテート、セラストロールブチルエステル、ジヒドロセラストロール、並びにその塩若しくはアナログが挙げられる。
【0045】
ヒストンデアセチラーゼ阻害剤
遺伝子発現の調節は、動的なアセチル化及び脱アセチル化によるヒストンの翻訳後修飾などの、幾つかの機構により媒介される。可逆的アセチル化/−脱アセチル化のプロセスに関与する酵素は、それぞれヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HATs)及びヒストンデアセチラーゼ(HDACs)である。ヒストンデアセチラーゼ阻害剤としては、スクリプタイド、APHAコンパウンド8、アピシジン、ナトリウム酪酸塩、(−)−デプデシン、サーチノール、トリコスタチンA、並びにその塩若しくはアナログが挙げられる。
【0046】
グリコシダーゼ阻害剤
グリコシダーゼ阻害剤は、特に11−シス−レチナール、9−シス−レチナール又は7−環ロックされた11−シス−レチナールの異性体との組み合わせで投与することによりタンパク質形態疾患の治療に有用性を発揮しうる化合物の1分類である。カスタノスペルミン(植物供給源から単離される多価アルカロイド)は、配糖体の酵素的な加水分解を阻害する。カスタノスペルミン及びその誘導体は、特にPCD(例えば色素性網膜炎)の治療に有用である。また、本発明の方法で有用な他のグリコシダーゼ阻害剤としては、塩酸アウストラリン、6−アセタミド−6−デオキシ−カスタノスペルミン(ヘキソサミニダーゼのA強力な阻害剤)、塩酸デオキシフコノジリマイシン(DFJ)、デオキシノジリマイシン(DNJ)(グルコシダーゼI及びIIを阻害する)、塩酸デオキシガラクトノジリマイシン(DGJ)(α−D−ガラクトシダーゼを阻害)、塩酸デオキシマンノジリマイシン(DMJ)、2R,5R−ビス(ヒドロキシメチル)−3R,4R−ジヒドロキシピロリジン(DMDP)(別名2,5−ジデオキシ−2,5−イミノ−D−マンニトール)、1,4−ジデオキシ−1,4−イミノ−D−マンニトール塩酸塩、3R,4R,5R,6R)−3,4,5,6−テトラヒドロキシアゼパン塩酸塩(β−N−アセチルグルコサミニダーゼを阻害)、1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−キシリトール(β−グルコシダーゼを阻害)、及びキフネンシン(マンノシダーゼ1の阻害剤)などが挙げられる。また、9−シス−レチナール又は11−シス−レチナールとの組み合わせで有用性を発揮するものとしては、N−ブチルデオキシノジリマイシン(BDNJ)、N−ノニルDNJ(NDNJ)、N−ヘキシルDNJ(HDNJ)、N−メチルデオキシノジリマイシン(MDNJ)及び他のグリコシダーゼ阻害剤が公知である。グリコシダーゼ阻害剤は、例えばIndustrial Research社(ウエリントン、ニュージーランド)から市販品を入手でき、それらの使用方法に関しては例えば米国特許第4894388号、第5043273号、第5103008号、第5844102号及びだい6831176号、及び米国特許出願公開第2002/0006909号に記載されている。
【0047】
眼性タンパク質高次構造的な障害
本発明の組成物はまた、特に実質的に全ての眼性のタンパク質高次構造的な障害(PCD)の治療に有用である。かかる障害は、眼内のタンパク質凝集体又はフィブリルとしてのミスフォールディングタンパク質の蓄積を特徴とする。色素性網膜炎は、オプシン(例えばP23Hオプシン)(GenBank Accession番号.NM_000539及びNP_000530)のミスフォールディング、並びに、炭酸脱水酵素IV(CA4)(GenBank Accession番号.NM_000717及びNP_000708)(Rebelloら、4月27日Proc Natl Acad Sci USA.2004、101(17):6617−22)の突然変異を伴う典型的な眼性PCDである。CA4は、ヒトの眼内の脈絡毛細管において高発現するグリコシルホスファチジルイノシトールアンカーされたタンパク質である。R14W突然変異はCA4タンパク質のミスフォールディングをもたらし、この突然変異に罹患する患者は常染色体優性色素性網膜炎を患う。CA4ポリペプチド変異体の形態の分解を強化する本発明の組成物は、CA4ポリペプチドの突然変異と関連した常染色体優性色素性網膜炎の治療に有用である。
【0048】
Xリンク若年性網膜分離(RS)は他の眼性PCDである。RSは男性の少年期の黄斑変性の主な原因である。RS1(NM_000330、NP_000321)の突然変異又は網膜分離は、Xリンク網膜分離(男性の一般の、開始前半黄斑変性)の原因となり、網膜の内側層の分裂及び視野の重大な損失をもたらす。RS1の突然変異は、タンパク質フォールディング(3月18日、J Biol Chem.2005、280(11):10721−30)を崩壊させる。RS1の変異体形の分解を強化する本発明の組成物は、網膜分離の治療に有用である。
【0049】
緑内障は、ミオシリンの突然変異と関連する眼性PCDである。ミオシリンは多くのヒト器官(目を含む)において、偏在して発現する未知の機能の分泌型糖タンパク質である。この突然変異により、ミオシリンタンパク質が緑内障の1つの形態として形成され、世界的な失明の主要な原因となる。変異体ミオシリンは、不溶性の凝集体(Aroca−Aguilarら、6月3日、Biol Chem.2005、280(22):21043−51、 GenBank Accession番号:NMJ300261及びNP_000252)として、トランスフェクション細胞の細胞質網状構造に蓄積する。ミオシリンの変異体の形態の分解を強化する本発明の組成物は、ミオシリン関連緑内障の治療に有用である。
【0050】
Stargardt様黄斑変性は、ELO VL4の突然変異と関連する眼性PCDである。ELO VL4(長鎖脂肪酸4の伸長)はELOファミリータンパク質のメンバーであって、非常に長い鎖長の脂肪酸の生合成に関連するものである。ELO VL4の突然変異は、常染色体優性Stargardt様黄斑変性(STGD3/adMD)患者において同定されている。ELOVL4変異タンパク質は、トランスフェクション細胞中で、顕著に凝集体として蓄積する(Graysonら、J Biol Chem.2005 Jul21、Epub)(GenBank Accession番号:NM_022726及びNP_073563)。変異形態ELO VL4の低下を強化する本発明の組成物は、Stargardt様黄斑変性の治療に有用である。
【0051】
Malattia Leventinese(mL)及びDoyneハネコムレチナールジストロフィー(DHRD)は、網膜色素上皮(RPE)の下に蓄積するドルーゼンとして公知の黄色沈着物によって特徴づけられる2つの常染色体優性PCDsに関連する。EFEMP1は網膜ドルーゼン形成において一定の役割を果たし、黄斑変性の病因に関連する(Stoneら、Nat Genet.1999 Jun;22(2):199−202)(GenBank Accession番号:NM_004105及びNP_004096)。変異体EFEMP1は細胞中でミスフォールディングされ、保持される。変異体形EFEMP1の分解を強化する本発明の組成物は、常染色体優位なドルーゼンの治療に有用である。
【0052】
Bestの黄斑ジストロフィーはVMD2(hBEST1)の突然変異によって生じる常染色体優位なPCDであり、それはベストロフィンをコードする(Gomezら、DNA Seq.2001 Dec;12(5−6):431−5)(GenBank Accession Nos:NM_004183及びNP_004174)。ベストロフィンの突然変異によって、おそらくタンパク質ミスフォールディングが生じる。正しくフォールディングされたベストロフィンの変異体形の分解を強化する本発明の組成物は、Bestの黄斑ジストロフィーの治療に有用である。
【0053】
5q31リンク角膜ジストロフィーは、角膜のタンパク質沈着物の年齢依存的な累積によって特徴づけられる常染色体優位なPCDsであり、視覚障害をもたらす。BIGHS遺伝子(GenBank Accession No:NM_000358)(またTGFBI(トランスフォーミング成長因子β誘導)とも呼ばれる)における突然変異は、この全症状群の原因となる。Arg−124及び他の残基の置換は、コードされたタンパク質(GenBank Accession番号NP_000349)の異なる凝集経路を介した角膜特異的な堆積をもたらし、角膜組織のタンパク質のターンオーバーの変化をもたらす。正しくフォールディングされたTGFBIタンパク質の変異体の形態の分解を強化する本発明の組成物は、5q31リンク角膜ジストロフィーの治療に有用である。
【0054】
一実施形態では、本発明は治療経過をモニターする方法を提供する。当該方法は、タンパク質フォールディング(ミスフォールディングを含む)に関連する疾患、障害又はその兆候に罹患するか又は罹患しやすい患者における臨床マーカー(例えば本願明細書に化合物により調節され、本願明細書に詳述されるいかなる目標、タンパク質又はそのインジケータなど)、又は臨床的数値(例えばスクリーン、アッセイ)を測定することを含んでなり、当該患者に治療的有効量の本発明の化合物を投与し、当該疾患又はその兆候を治療することを特徴とする。当該方法で測定されるマーカーのレベルを、適切なコントロール、又は他の罹患患者のマーカーによる周知のレベルと比較して、患者の疾患状況を決定することができる。好ましい実施態様において、患者のマーカーの第2のレベルは第1のレベルの測定より後の時点で測定され、2つのレベルを比較して疾患の原因又は治療の有効性をモニターできる。好ましい具体的実施態様では、患者における治療前のマーカーのレベルは、本発明によって治療を開始する前に測定される、この処理前のマーカーのレベルは、治療開始後の患者のマーカーのレベルと比較し、処理の有効性を決定することができる
【0055】
医薬組成物
本発明は薬理学的に許容できる担体と共に化合物を含んでなる医薬品の提供に関し、当該化合物の存在により、生化学的に機能的な形態の変異タンパク質が得られる。かかる調製物は治療及び予防用途に用いられる。一実施形態では、当該医薬組成物は、少なくとも1つの更なる化合物(すなわちプロテアソーム阻害剤、オートファジー阻害剤、リソソーム阻害剤、ERからゴルジ体へのタンパク質輸送の阻害剤、Hsp90シャペロン阻害剤、熱ショック応答活性化剤、グリコシダーゼ阻害剤又はヒストンデアセチラーゼ阻害剤)との組み合わせで、11−シス−レチナール若しくは9−シス−レチナールを含んでなる。11−シス−レチナール若しくは9−シス−レチナール、並びに第2の化合物は一緒に又は別々に製剤化される。他の実施形態では、当該医薬組成物はプロテアソーム阻害剤又はオートファジー阻害剤を含んでなる。本発明の化合物は、医薬組成物の一部として投与してもよい。組成物は無菌でなければならず、患者への投与に適する単位重量若しくは単位体積当たりのポリペプチドの治療的有効量を含有する必要がある。本発明の組成物及び組合せは製薬パックの一部であってもよく、化合物の各々は個々の投与量で存在する。
【0056】
予防若しくは治療的な投与に使用される本発明の医薬組成物は無菌である必要がある。無菌性はγ線照射、除菌膜(例えば0.2μm膜)による濾過によって容易に得られ、又は当業者に公知の他の適切な手段で無菌処理を行ってもよい。治療的なポリペプチド組成物は、一般に無菌のアクセスポート(例えば皮下注射針によって貫通可能なストッパーを有する静脈注射用溶液バッグ又はバイアル)を有する容器に充填される。これらの組成物は通常、水溶液として、又は再調製のための凍結乾燥製剤として、単回投与又は複数回投与用の容器(例えば密閉されたアンプル又はバイアル)中に保存される。
【0057】
化合物は任意に、薬理学的に許容できる賦形剤と組み合わせてもよい。本明細書中で使用される用語「薬理学的に許容できる賦形剤」とは、ヒトへの投与に適する1つ以上の適合性を有する固体若しくは液体の充填材、希釈剤又は封入用物質を意味する。用語「担体」は有機若しくは無機の、天然若しくは合成された成分であって、それを活性成分と組み合わせることによって投与を容易にする成分を意味する。医薬成分を本発明の分子と共に混合してもよいが、各々が相互に反応し、所望の薬効を実質的に弱めることのない態様で混合するのが好ましい。
【0058】
本発明の化合物を、薬理学的に許容できる賦形剤中に含有させてもよい。賦形剤は、好ましくは例えば等張性及び化学安定性を増強する物質を添加物として微量含有させる。かかる材料は、採用された投与量及び濃度で受容者に対する中毒性を有さず、リン酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、酢酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、及び他の有機酸若しくはそれらの塩などのバッファー、トリスヒドロキシメチルアミノメタン(TRIS)、重炭酸塩、炭酸塩、並びに他の有機塩基及びそれらの塩、酸化防止剤(例えばアスコルビン酸)、低分子量(例えば約10未満の残基)ポリペプチド(例えばポリアルギニン、ポリリシン、ポリグルタミン酸塩及びポリアスパラギン酸塩、タンパク質(例えば血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリン)、親水性ポリマー(例えばポリビニルピロリドン(PVP)、ポリプロピレングリコール(PPGs)及びポリエチレングリコール(PEGs))、アミノ酸(例えばグリシン、グルタミン酸、アスパラギン酸、ヒスチジン、リジン又はアルギニン)、単糖類、二糖類及び他の炭水化物(セルロース又はその誘導体、グルコース、マンノース、蔗糖、デキストラン)、硫化炭水化物誘導体(ヘパリン、コンドロイチン硫酸又はデキストラン硫酸)、多価金属イオン(例えばカルシウムイオン、マグネシウムイオン及びマンガンイオンなどの二価金属イオン)、キレート剤(エチレンジアミン四酢酸、EDTAなど)、糖アルコール(例えばマンニトール又はソルビトール)、反イオン(例えばナトリウム又はアンモニウム)、及び/又は非イオン系界面活性剤(例えばポリソルベート又はポロキサマー)。安定化剤、抗菌物質、不活性ガス、流体及び栄養を含む補充液(すなわちリンゲルのブドウ糖)、電解質補充液などの他の添加剤を、通常使用される量で含有させてもよい。
【0059】
上記の通り組成物を有効量で投与してもよい。有効量は、投与様式、治療対象となる具体的な症状及び所望の結果に依存する。更に症状のステージ、患者の年齢及び体調、並列治療の性質(もしあらば)、並びに医師に周知の各種の要因に依存しうる。治療的用途の場合、医学的に望ましい結果を提供するのに十分な量で用いられる。
【0060】
タンパク質形態疾患又は障害に罹患する患者の場合、有効量とは、細胞内の正しくフォールディングされたタンパク質のレベルを上昇させるのに十分な量である。ミスフォールドタンパク質に関連する患者又は障害を有する疾患の場合、有効量とは、病理と関係している症状を安定化、遅延又は軽減させるのに十分な量である。通常、本発明の化合物の投与量は、1日あたり約0.01mg/kg〜1日あたり約1000mg/kgである。約50〜約2000mg/kgの投与量が適切であると考えられる。特定の投与形態(例えば静脈内投与)の場合、低用量でなされる。初回投与量で患者の反応が不十分である場合、患者に許容される程度まで、高用量(又は異なる局所的な投与経路による高い効果を有する投与量)を使用してもよい。1日当たりの多回投与量は、本発明の組成物の適当な全身レベルを提供するために考察される。
【0061】
様々な投与経路を利用できる。本発明の方法は、一般的に、医学的に許容できるいかなる投与様式を使用して実施してもよく、それは臨床的に容認できない副作用を引き起こすことのない活性化合物の有効レベルを提供するいかなる形式をも意味する。好ましい実施形態では、本発明の組成物は眼内に投与される。他の投与様式としては、経口、直腸、局所、眼内、バッカル、膣内、大槽内で、脳室内、気管内、鼻腔内、経皮、インプラント内若しくはインプラント上又は非経口経路が挙げられる。「非経口」という用語には、皮下、クモ膜下腔内、静脈、腹膜内、筋肉内又は注入が包含される。本発明の組成物を含有する組成物は、生理的流体、例えば硝子体内ユーモアに添加してもよい。CNS投与の場合、手術又は注入による破壊を有する血液脳バリアにおける治療薬の転送を促進し、一過的に粘着力接触を開く薬をCNS脈管構造内皮細胞と接触させ、化合物のかかる細胞間の移動を容易にするために、様々な技術を利用できる。予防治療の場合、投与計画と同様に患者への便宜上の理由から、経口投与が好ましい。
【0062】
患者の投与による副作用が生じない限り、本発明の医薬組成物は要望通り1つ以上の添加されたタンパク質(血漿タンパク質、プロテアーゼ及び他の生物学的材料など)を更に任意に含有させてもよい。適切なタンパク質又は生物学的材料は公知で、当業者が利用できる任意の精製方法によって、ヒト又は哺乳類の血漿から得られる。例えば、組換え組織培養の上澄、抽出液又は溶解物、ウイルス、酵母、バクテリア等(標準的な組み換えDNA技術に従って、ヒト又は哺乳類の血漿タンパク質を発現する遺伝子を導入されたもの)、又は、流体(例えば血液、牛乳、リンパ、尿等)又は標準的なトランスジェニック技術に従ってヒト血漿タンパク質を発現する遺伝子を導入されたトランスジェニック動物が挙げられる。
【0063】
本発明の医薬組成物は、製剤のpHを例えば約5.0〜約8.0の範囲で、生理的pHを反映する所定レベルに維持するために、1つ以上のpH緩衝化合物を含有させてもよい。水溶液製剤において使用するpH緩衝化合物は、アミノ酸若しくはアミノ酸の混合物(例えばヒスチジン若しくはアミノ酸の混合物(例えばヒスチジン及びグリシン))であってもよい。あるいは、pH緩衝化合物は、例えば製剤のpHを約5.0〜約8.0などの所定レベルで維持し、カルシウムイオンをキレート化しない薬剤が好ましい。かかるpH緩衝化合物例としては、限定されないがイミダゾール及び酢酸イオンが挙げられる。製剤のpHを所定レベルに維持するために、pH緩衝化合物を適切な量で添加させてもよい。
【0064】
本発明の医薬組成物は、1つ以上の浸透圧調整剤(すなわち受容者個人の血流及び血球が許容できるレベルに製剤の浸透特性(例えば浸透性、オスモル濃度及び/又は浸透圧)を調節する化合物)を含有させてもよい。浸透圧調整剤はカルシウムイオンをキレート化しない物質であってもよい。浸透圧調整剤は、製剤の浸透特性を調節する公知又は当業者が利用できるいかなる化合物であってもよい。当業者は、本発明の製剤用に用いる浸透圧調整剤の適合性を経験的に決定してもよい。適切なタイプの浸透圧調整剤の例としては、限定されないが、塩(例えば塩化ナトリウム及びナトリウム酢酸塩)、糖(例えば蔗糖、ブドウ糖及びマンニトール)、アミノ酸(例えばグリシン)、及びこれらの物質の1つ以上及び/又は物質のタイプの混合物が挙げられる。1つ以上の浸透圧調整剤は、製剤の浸透特性を調節するのに十分ないかなる濃度で添加してもよい。
【0065】
本発明の化合物を含有する組成物として、多価金属イオン(例えばカルシウムイオン、マグネシウムイオン及び/又はマンガンイオン)を含有させてもよい。組成物を安定化させ、受容者個人に悪影響を与えないいかなる多価金属イオンを使用してもよい。当業者であれば、これらの2つの基準に基づいて経験的に適切な金属イオンを決定でき、またかかる金属イオンの適切な供給源は公知で、無機及び有機塩が挙げられる。
【0066】
本発明の医薬組成物は、水を含まない液体製剤であってもよい。含まれる1つ以上の有効成分に安定性がもたらされるならば、いかなる適切な非水性液体を使用してもよい。好ましい非水性の液体は、親水性液体である。適切な非水性液体の例としては、グリセロール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ポリジメチルシロキサン(PMS)、エチレングリコール(例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール)、ポリエチレングリコール(「PEG」)200、PEG300及びPEG400、及びプロピレングリコール、例えばジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール(「PPG」)425、PPG725、PPG1000、PPG2000、PPG3000及びPPG4000が挙げられる。
【0067】
本発明の医薬組成物は、水性/非水性液体製剤の混合物でもあってもよい。使用される水性/非水性液体製剤の混合物は、含まれる化合物に安定性を提供するものであれば、いかなる適切な非水性液体製剤(例えば上記のそれら)を、いかなる水性液体製剤(例えば上記のそれら)に添加して用いてもよい。好ましくは、かかる製剤の非水性液体は親水性液体である。適切な非水性液体の例としては、グリセロール、DMSO、PMS、エチレン、グリコール(例えばPEG200、PEG300及びPEG400)、及びプロピレングリコール(例えばPPG425、PPG725、PPG1000、PPG2000、PPG3000及びPPG4000)が挙げられる。
【0068】
製剤の安定化を適切に行うことにより、有効成分の凍結状態若しくは非凍結状態での保存が可能となる。安定液体製剤は−70℃以上の温度で保存できるが、0℃以上のより高い温度でも保存でき、又は組成物の特性に応じて0.1℃〜42℃の範囲で保存できる。タンパク質及びポリペプチドがpH、温度、並びに治療有効性に影響を及ぼしうる多数の他の因子の変化に影響されることは、当業者にとり自明である。
【0069】
特定の実施形態では、肺エアゾールによる投与経路が望ましいこともある。ポリペプチドを含有するエアゾール輸送システムを調製する方法は当業者にとり周知である。かかるシステムでは通常、抗体の生物学的特性(例えばパラトープ結合能)が顕著に損なれわないような成分を利用する必要がある(Sciarra及びCutie,”Aerosols,”in Remington’s Pharmaceutical Sciences.18th edition,1990,pp1694−1712(本発明に援用)を参照)。当業者であれば、過度の実験を行うことなく、ポリペプチドエアゾールの生産における様々なパラメータ及び条件を容易に変更できる。
【0070】
他の輸送システムとしては、放出調節、遅延放出又は徐放性輸送システムが挙げられる。かかるシステムは本発明の組成物の繰り返し投与を回避でき、患者及び医師の便宜を増加させる。徐放性輸送システムの多くのタイプが利用でき、当業者に公知である。例えばポリマーベースシステム(例えばポリ乳酸(米国特許第3773919号、欧州特許番号58481)、ポリ(ラクチド−グリコリド)コポリオキサレート、ポリカプロラクトン、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル、ポリD−(−)−3−ヒドロキシ酪酸(欧州特許第133988号)、L−グルタミン酸及びγ−エチル−L−グルタミン酸(Sidman、K.R.ら、Biopolymers 22:547−556)の共重合体、ポリ(メタクリル酸2−ヒドロキシエチル)又はエチレン酢酸ビニルなどのポリヒドロキシ酪酸酸、を含む(Langer、R.ら、J.Biomed.Mater.Res.15:267−277、Langer、R.Chem.Tech.12:98−105及びポリ無水物が挙げられる。
【0071】
持続性組成物の他の例としては、成形された物品(例えばフィルム又はマイクロカプセル)の形態の半透性ポリマーマトリックスが挙げられる。輸送システムは非ポリマーシステムであってもよく、例えば、コレステロール、コレステロールエステルのようなステロール及び脂肪酸又は中性脂肪(脂質モノ、ジ及びトリグリセリドなど)、ヒドロゲル放出システム(例えば生体再吸収性ヒドロゲル(すなわちキチン質ヒドロゲル又はキトサンヒドロゲル)の生物学的誘導体))、サイラスティック(sylastic)システム、ペプチドベースのシステム、ワックスコーティング、従来の結合剤及び添加剤を使用した圧縮錠剤、部分的に融合したインプラントなどが挙げられる。具体例としては、限定されないが、(a)米国特許第4452775号、第4667014号、第4748034号及び第5239660号に記載のような、マトリックス中に薬剤が含有される形の浸食システム、及び(b)米国特許第3832253号及び第3854480号に記載のような、活性成分がポリマーから制御された速度で浸透する拡散システムなどが挙げられる。
【0072】
本発明の方法及び組成物に使用可能な輸送システムの他のタイプは、コロイド分散体システムである。コロイド分散体システムとしては、油中水型エマルジョン、ミセル、混合ミセル及びリポソームなどの脂質ベースのシステムが挙げられる。リポソームは人工膜容器であり、in vivo若しくはin vitroでの輸送媒体として有用である。大きな単一ラメラ小胞(LUV)(0.2〜4.0μmのサイズで調節可能)は水性の内部に高分子をカプセル化でき、生物学的に活性な形態で細胞に輸送できる(Fraley,R.,及びPapahadjopoulos,D.,Trends Biochem.Sci.6:77−80)。
【0073】
リポソームを特異的なリガンド(例えば単クローン抗体、糖、糖脂質又はタンパク質)と結合させ、特定の組織を標的とするリポソームとすることができる。例えば、リポソームはLIPOFECTIN(商標)及びLIPOFECTACE(商標)としてギブコBRLから市販され、それはカチオン脂質(例えば臭化(DDAB)N−[1−(2、3ジオールエチルオキシ)−プロピル]−N、N、N−トリメチルアンモニウム塩化物(DOTMA)及びジメチルジオクタデシルアンモニウム)から形成される。リポソームの調製方法は公知技術で、例えばドイツ共和国特許第3218121号、Epsteinら、Proc. Natl. Acad. Sci. (USA)82:3688−3692(1985)、Hwangら、Proc. Natl. Acad. Sci. (USA)77:4030−4034(1980)、欧州特許第52322号、第36676号、第88046号、第143949号、第142641号、日本国特許出願第83−118008号、米国特許第4485045号及び第4544545号、及び欧州特許第102324号などの多くの刊行物に記載されている。リポソームはまた、Gregoriadis、G.、Trends Biotechnol.、3:235−241でレビューされている。
【0074】
ビヒクルの他のタイプは、哺乳類の受容者へのインプラントに適する生物学的適合性の微粒子又はインプラント材である。この方法に有用である典型的な生物学的適合性のインプラントは、国際出願番号US/03307号(国際公開第95/24929号、「Polymeric Gene Delivery System」)に記載されている。国際出願番号/US/03307号では、適当なプロモータ制御下の外生遺伝子を含有する、生物学的適合性、好ましくは生分解性の重合マトリックスを記載している。重合マトリックスは、患者の外生遺伝子又は遺伝子産物の徐放性を提供するために用いることができる。
【0075】
高分子マトリックスは、好ましくはマイクロカプセルなどの微粒子(薬剤が固体高分子マトリックスの全体にわたって分散)又はマイクロカプセル(薬剤が重合シェルの中心において保存される)の形である。例えば、薬剤を含有する前述のポリマーのマイクロカプセルは米国特許第5075109号に記載されている。薬剤を含有する高分子マトリックスの他の形としては、フィルム、コーティング、ゲル、インプラント及びステントが挙げられる。高分子マトリックス手段のサイズ及び組成は、マトリックスが導入される組織の好ましい放出動力学となるような態様で選択される。高分子マトリックスの寸法は更に、採用する輸送方法に従って選択される。好ましくは、エアゾールを使用する場合、高分子マトリックス及び組成物は界面活性剤担体中に含有される。高分子マトリックス組成物は、好ましい分解速度を有する態様で選択され、バイオ接着剤としての、輸送効率を更に増加させる材料から形成される。あるいは、分解しないが、拡散による長期間にわたる放出が得られる態様でマトリックス組成物を選択してもよい。輸送システムは局所的、部位特異的輸送に適している生物学的適合性のマイクロカプセルであってもよい。かかるマイクロカプセルは、Chickering、D.E.ら、Biotechnol.Bioeng.、52:96−101、Mathiowitz、E.ら、Nature 386:410−414において開示される、。
【0076】
生分解性、及び生分解可能な重合マトリックスを用いて、本発明の組成物を患者に輸送してもよい。かかるポリマーは、天然若しくは合成ポリマーであってもよい。ポリマーは、所望の放出時間に基づいて通常、2、3時間のオーダーから1年のオーダーまでで選択される。通常は、2、3時間から3〜12ヵ月の間の放出時間が最も望ましい。ポリマーは任意に、その重量に対して最高約90%の水を吸収できるヒドロゲルの形であり、更に、任意に多価イオン又は他のポリマーと架橋する。
【0077】
生分解可能な輸送システムの形成に使用できる典型的な合成ポリマーとしては、ポリアミド類、ポリカーボネート、ポリアルキレン、ポリアルキレングリコール、酸化ポリアルキレン、ポリアルキレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ハロゲン化ポリビニル、ポリビニルピロリドン、ポリグリコリド、ポリシロキサン、ポリウレタン及びそのコポリマー、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、ニトロセルロース、アクリル及びメタクリル酸エステルのポリマー、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、セルロースアセテートブチレート、フタル酸酢酸セルロース、カルボキシエチルセルロース、セルローストリアセテート、セルロース硫酸ナトリウム塩、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(メタクリル酸エチル)、ポリ(ブチルメタクリル酸)、ポリ(メタクリル酸イソブチル)、ポリ(ヘキシルメタクリル酸)、ポリ(メタクリル酸イソデシル)、ポリ(ラウリルメタクリル酸塩)、ポリ(メタクリル酸フェニル)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリル酸塩)、ポリ(イソブチルアクリル酸塩)、ポリ(オクタデシルアクリル酸塩)ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(酸化エチレン)、ポリ(エチレンテレフタル酸塩)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、及び乳酸及びグリコール酸のポリマー、ポリ無水物、ポリ(オルト)エステル、ポリ(ブチル酸)、ポリ(吉草酸)及びポリ(ラクチド−コカプロラクトン)、及び、アルギン酸塩及びその他多糖類(デキストラン及びセルロース)、コラーゲン、その化学誘導体(置換、化学基(例えばアルキル、アルキレン、ヒドロキシル化、酸化)の付加、及び当業者に公知の他の修飾による)、アルブミン及び他の親水性タンパク質、ゼイン及びプロラミン及び疎水性タンパク質、それらの共重合体及び混合物などの天然ポリマーが挙げられる。これらの材料は通常、in vivoにおける酵素加水分解若しくは水への曝露のいずれかによっても、又は表面若しくはバルクの浸食によって劣化する。
【0078】
眼輸送方法
本発明の組成物(例えばオートファジーエンハンサ、mTOR阻害剤(例えばラパマイシン、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤(FTI−277など)))は、特に眼性タンパク質形態疾患(例えば緑内障、色素性網膜炎、加齢黄斑変性、緑内障、角膜ジストロフィー、網膜精神分裂症患者、Stargardt疾患、常染色体優位ドルーゼン及びBest黄斑ジストロフィー)の治療に適している。
【0079】
1つの方法において、本発明の組成物は、目の硝子体への直接のインプラントに適する眼科用装置により投与される。本発明の組成物を、例えば米国特許第5672659号及び第5595760号記載の徐放性組成物において提供してもよい。かかる装置により、有害な局所及び全身性の副作用の危険性を伴うことなく、目の治療に様々な組成物の制御徐放が提供される。現在の眼への輸送方法の課題は、インプラント期間を延長するために、そのサイズを最小化すると共に、眼内装置又はインプラントに含まれる薬剤の量を最大にすることである。米国特許5378475号、第6375972号及び第6756058号、並びに米国特許出願公開第2005/0096290号及び第2005/01269448号を参照。かかるインプラントは、生分解可能及び/又は生物学的適合性のインプラントであってもよく、又は生分解性でないインプラントであってもよい。生分解可能な眼インプラントは、例えば米国特許出願公開第2005/0048099号に記載されている。インプラントは有効成分浸透性であっても浸透性でなくともよく、目の眼房、例えば前眼房又は後眼房に挿入してもよく、又は強膜、トランス脈絡膜空間又は無血管の硝子体領域外部にインプラントしてもよい。あるいは、本発明の組成物の貯蔵材として機能するコンタクトレンズを、薬物輸送に使用してもよい。
【0080】
好ましい実施態様において、インプラントを例えば強膜などの無血管領域に設け、それにより例えば目の眼内空間及び黄斑などの所望の部位への薬剤の強膜経由の拡散を行わせる。更にまた、強膜経由の拡散を行う部位は、好ましくは黄斑に近接する部位である。組成物の輸送のためのインプラントの例としては、米国特許第3416530号、第3828777号、第4014335号、第4300557号、第4327725号、第4853224号、第4946450号、第4997652号、第5147647号、第5164188号、第5178635号、第5300114号、第5322691号、第5403901号、第5443505号、第5466466号、第5476511号、第5516522号、第5632984号、第5679666号、第5710165号、第5725493号、第5743274号、第5766242号、第5766619号、第5770592号、第5773019号、第5824072号、第5824073号、第5830173号、第5836935号、第5869079号、第5902598号、第5904144号、第5916584号、第6001386号、第6074661号、第6110485号、第6126687号、第6146366号、第6251090号及び第6299895号、並びに国際公開第01/30323号及び第01/28474号において記載されている装置が挙げられるが、これらに限定されるものではない
【0081】
例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない。徐放性薬剤輸送システムであって、所望の局所的若しくは全身の生理的若しくは薬理学的効果を得るのに有効な量の薬剤を含む内側貯蔵部を含んでなるシステム。薬品を通過させないインナーチューブ。第1および第2の端部を有し、少なくとも一部の内側貯蔵部を被覆する前記インナーチューブ。自身の重量を保持できる態様でサイズを設定され、材料を選択された前記インナーチューブ。インナーチューブ第1端部に設けられる非浸透性部材。インナーチューブ第1端部を通って貯蔵部から薬剤が通過するのを防止する前記非浸透性部材。インナーチューブ第2端部に設けられる浸透性部材。インナーチューブ第2端部を通って貯蔵部から薬剤が拡散する浸透性部材。目の部位に本発明の化合物を投与する方法。目の硝子体に本発明の化合物輸送する徐放性手段、又は本発明の化合物を目の部位に投与する移植可能な徐放性装置をインプラントする処理を含んでなる前記方法。徐放性薬剤輸送手段であって、a)診断効果又は所望の局所的若しくは全身性の生理的若しくは薬理学的効果を得るのに効果的な、少なくとも1つの第1薬剤の治療的有効量を含有する薬剤コアと、b)薬剤コアを保持して内部区画を画定する、薬剤を基本的に通過させない少なくとも1つのユニタリーカップであって、ユニタリーカップの開いた頂端部の少なくとも若干の部分の周辺に、少なくとも1つの中断された溝を有する開いた頂端部を含んでなるユニタリーカップと、c)薬剤を浸透させる浸透性プラグであって、当該浸透性プラグがユニタリーカップの開いた頂端部に設けられ、当該溝が当該浸透性プラグと相互作用してその位置に保持し、開いた頂端部を閉口させ、当該薬剤コアから、浸透性プラグを通して薬剤を透過させ、ユニタリーカップの開いた頂端部から放出させる浸透性プラグと、d)診断効果又は所望の局所的若しくは全身性の生理的若しくは薬理学的効果を得るのに効果的な、少なくとも1つの治療的有効量の第2薬剤、又は、徐放性薬剤輸送手段であって、所望の可溶性及びポリマーコーティング層を有する有効量の薬剤を含有する内核、薬品が浸透するポリマー層を含んでなり、ポリマーコーティング層が完全に内核を被覆する前記徐放性薬剤輸送手段。
【0082】
他の眼への輸送方法は、眼への、好ましくは網膜色素上皮細胞及び/又はブルッフ膜を本発明の化合物の標的とする、リポソームの使用が挙げられる。例えば、化合物は上記のリポソーム法と組合せてもよく、この化合物/リポソーム複合体は所望の眼組織又は細胞に化合物を輸送するために静脈注射により眼性PCD患者に注射される。網膜色素上皮細胞又はブルッフ膜の付近に直接リポソーム複合体を注入することにより、眼性PCDの若干の形態に対する、複合体のターゲティングが可能となる。具体的な実施態様では、当該化合物は眼内での遅延輸送(例えばVITRASERT又はENVISION)を介して投与される。具体的な実施態様では、当該化合物を、後部結膜下注入によって輸送する。他の具体的な実施態様では、本発明の組成物を含有するミクロエマルジョン粒子は、ブルッフ膜、網膜色素上皮細胞又はその両方からの脂質取り込みを通じて眼組織に輸送される。
【0083】
ナノ粒子は、血清半減期が長い、封入された薬剤の効能を高めることが知られているコロイド担体システムである。ポリアルキルシアノアクリレート(PACAs)ナノ粒子は、現在臨床的に開発されているポリマー性コロイド薬剤輸送システムであり、Stellaら、J.Pharm.Sci.,2000.89:p.1452−1464;Briggerら、Int.J.Pharm.,2001.214:p.37−42;Calvoら、Pharm.Res.,2001.18:p.1157−1166及びLiら、Biol.Pharm.Bull.,2001.24:p.662−665に記載されている。生分解可能なポリ(ヒドロキシル酸)、例えばポリ(乳酸)(PLA)とポリ(ラクチックコグリコリド)(PLGA)の共重合体が生物学的若しくは医学的用途で広範囲に用いられ、臨床応用におけるFDA認可を受けている。更に、PEG−PLGAナノ粒子は、
(i)封入される薬剤が、全担体システムの相当に高重量フラクション(ローディング)を含んでなること、
(ii)薬剤の量が、カプセル化プロセスの第一段階において使用したうちの相当に高いレベルで最終担体に組み込まれる(高い取り込み効率)こと、
(iii)担体が凍結乾燥可能で、溶液中で凝集を起こさずに再構成される能力を有すること、
(iv)担体が生分解可能であること、
(v)担体システムが小型であること、
(vi)担体が粒子の安定性を強化すること
など、多くの望ましい担体としての機能を有する。ナノ粒子は、血清半減期が長い、封入された薬剤の効能を高めることが知られているコロイド担体システムである。
【0084】
ナノ粒子は、公知技術のいかなる生分解可能なシェルを使用して完全に合成される。一実施形態では、ポリマー、例えばポリ(乳酸)(PLA)又はポリ(乳酸−コ−グリコール酸)(PLGA)が用いられる。かかるポリマーは、生物学的適合性及び生分解性を有し、望ましくはナノ粒子の光化学物質有効性及び循環寿命を増加させるために修飾される。一実施形態では、ポリマーの末端のカルボン酸基(COOH)を修飾し、粒子の負電荷を増加させ、それにより負に荷電した核酸アプタマーとの相互作用を制限する。ナノ粒子はポリエチレングリコール(PEG)によっても修飾され、同様に循環の際の粒子の半減期及び安定性を増加させる。あるいは、COOH基をN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステルに変換させ、アミン修飾アプタマーとの共有結合コンジュゲーションを行わせてもよい。
【0085】
本発明の組成物及び方法に有用な生物学的適合性のポリマーとしては、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアルキレン、ポリアルキレングリコール、酸化ポリアルキレン、ポリアルキレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ハロゲン化ポリビニル、ポリビニルピロリドン、ポリグリコリド、ポリシロキサン、ポリウレタン及びその共重合体、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、ニトロセルロース、アクリル及びメタクリル酸エステルのポリマー、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、カルボキシルエチルセルロース、セルローストリアセテート、セルロース硫酸ナトリウム塩、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(エチルメタクリル酸)、ポリ(ブチルメタクリル酸)ポリ(イソブチルメタクリル酸)、ポリ(ヘキシルメタクリル酸)、ポリ(イソデシルメタクリル酸)、ポリ(ラウリルメタクリル酸)、ポリ(メタクリル酸フェニル)、ポリ(メチルアクリレート)ポリ(イソプロピルアクリル酸)、ポリ(イソブチルアクリル酸)、ポリ(オクタデシルアクリル酸)、ポリエチレン、ポリプロピレンポリ(エチレングリコール)、ポリ(酸化エチレン)、ポリ(エチレンテレフタル酸)ポリビニルアルコール)、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニルポリスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリヒアルロン酸、カゼイン、ゼラチン、グルチン、ポリ無水物、ポリアクリル酸、アルギン酸、キトサン、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(エチルメタクリル酸)、ポリ(ブチルメタクリル酸)、ポリ(イソブチルメタクリル酸)、ポリ(ヘキシルメタクリル酸)、ポリ(メタクリル酸イソデシル)、ポリ(ラウリルメタクリル酸)、ポリ(メタクリル酸フェニル)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリル酸)、ポリ(イソブチルアクリル酸)、ポリ(オクタデシルアクリル酸)及びこれらのいずれかの組合せが挙げられるが、それらに限定されない。一実施形態では、本発明のナノ粒子はPEG−PLGAポリマーを含有する。
【0086】
本発明の組成物は、局所的に輸送されたもよい。局所輸送の場合、眼輸送において承認されるいかなる薬理学的に許容できる賦形剤中に組成物を添加してもよい。好ましくは、組成物は目への点眼の形で輸送される。若干の用途では、組成物の輸送は、角膜を経由して目の内部に化合物を拡散させることにより行う。
【0087】
当業者であれば、眼性PCDの治療に本発明の化合物を使用する場合の最高の治療計画を容易に決定できると認識する。これは実験を行う程のことではなく、むしろ最適化の問題であり、医療現場において日常的に行われることである。ヌードマウスのin vivo試験により、投与量及び輸送療法を最適化するための治療開始の時期が明らかにされる。注入の頻度は、マウスによる試験の結果を踏まえ、最初は週一度である。しかしながら、この頻度は、特定の患者の最初の臨床試験及びニーズを踏まえて、毎日〜2週間に一度〜1ヶ月に一度の頻度で適宜調節できる。
【0088】
ヒトへの投与量は、マウスに使用する化合物量から推定することにより一旦決定することができる。なぜなら、当業者であれば、動物モデルとの比較によりヒトへの投与量を決定することは、従来技術におけるルーチン作業であることを認識しているからである。具体的な実施態様では、投薬量は約1mg化合物/Kg体重〜約5000mg化合物/Kg体重の間、又は約5mg/Kg体重〜約4000mg/Kg体重、又は約10mg/Kg体重〜約3000mg/Kg体重、又は約50mg/Kg体重〜約2000mg/Kg体重、又は約100mg/Kg体重〜約1000mg/Kg体重、又は約150mg/Kg体重〜約500mg/Kg体重などの範囲で調節できる。他の実施態様では、この投与量は例えば1、5、10、25、50、75、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1050、1100、1150、1200、1250、1300、1350、1400、1450、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000mg/Kg体重であってもよい。他の実施態様では、高い投与量を使用することもあり、かかる投与量としては約5mg化合物/Kg体重〜20mg化合物/Kg体重の範囲であってもよい。他の実施態様では、投与量は8、10、12、14、16若しくは18mg/Kg体重であってもよい。もちろん、この投与量は上方若しくは下方へ調整でき、特定の患者の最初の臨床試験の結果及びニーズに応じて、適宜治療プロトコルに従って行うことができる。
【0089】
スクリーニングアッセイ
本願明細書に述べられるように、ミスフォールディングタンパク質によって細胞の通常の生物学的機能が妨げられ、PCDが生じる。多くの場合、タンパク質凝集体中のミスフォールディングタンパク質の蓄積は細胞傷害及び細胞毒性を生じさせる。有用な化合物は、生化学的に活性な形態を有する変異タンパク質の量を増加させることにより、タンパク質ミスフォールディングを修復若しくは又は防止する。かかる化合物を確認するため、多くの方法によりスクリーニングアッセイを実施できる。1つのアプローチとしては、野生型タンパク質の形態をとれなかった変異タンパク質を、細胞内(例えばin vitro、又はin vivoの細胞)で発現させ、当該細胞を候補化合物と接触させ、変異タンパク質の形態に与える化合物の効果を、従来技術において公知の、又は本願明細書に記載の方法を使用してアッセイする。当該化合物と接触させなかったコントロール細胞と比較して、接触させた細胞中に存在する正しくフォールディングされたタンパク質の収率が増加している場合、その化合物は、本発明の方法に有用であるとみなすことができる。例えば、正しくフォールディングされたタンパク質量の増加は、あるタンパク質に特徴的な波長の吸光度(例えばロドプシンでは500nm)を測定すること、細胞内タンパク質凝集の減少を細胞毒性の減少により測定すること、PCD関連の表現型の減少を測定することによって、又は標準的方法を使用してタンパク質の生物学的活性の増加(例えば酵素の活性、リガンドとの結合)を測定することによってアッセイすることができる。関連するアプローチでは、11−シス−レチナール、9−シス−レチナール又はそのアナログ若しくは誘導体の存在下でスクリーンニングを実施する。有用な化合物は、少なくとも10%、15%又は20%、又は、好ましくは25%、50%又は75%、又は好ましくは少なくとも100%、200%、300%又は最大400%で、生化学的に機能的な形態のタンパク質の量を増加させる。
【0090】
必要に応じて、同定された化合物の有効性を、PCDのモデル動物(例えば色素性網膜炎、嚢胞性線維症、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病、アルツハイマー病、腎生成尿崩症、癌(例えばp53突然変異に関連する癌)及びプリオン関連の障害(例えばジェイコブ−クロイツフェルト疾患)を有するモデル動物)を用いてアッセイする。
【0091】
試験化合物及び抽出
一般に、ミスフォールディングタンパク質の量を減少させ、又はかかるタンパク質の細胞における選択的な分解を増加させることを可能にする化合物は、天然若しくは合成(又は半合成)抽出物の大規模なライブラリー、又は公知技術の方法による化学ライブラリーから同定する。創薬及び医薬開発の分野における当業者であれば、試験抽出物若しくは化合物の正確な供給源は、本発明の1つ以上のスクリーニング方法においてそれ程重要ではないと理解する。したがって、実質的に全ての化学抽出物又は化合物を、本願明細書に記載の方法を使用してスクリーニングできる。かかる抽出物又は化合物の例としては、植物、菌類、原核生物若しくは動物細胞からの抽出物、培養液及び合成化合物質、並びに既存の化合物の修飾物が挙げられるが、これらに限定されない。多くの方法を利用して、いかなる数の化合物のランダム若しくは誘導された合成物(例えば半合成又は完全合成)を生成でき、それには糖質、脂質、ペプチド及び核酸ベースの化合物が挙げられるがこれに限定されない。合成化合物ライブラリーは、Brandon Associates社(メリマック、N.H.)及びAldrich Chemical社(ミルウォーキー、ウィスコンシン)から市販されている。あるいは、細菌、菌類、植物及び動物の抽出物の形態の天然化合物のライブラリーが多くの供給源から市販されており、例えばBiotics社(サセックス、英国)、Xenova(Slough、英国)、Harber Branch Oceangraphics Institute(フィートピアス、Fla)及びPharmaMar USA(ケンブリッジ、マサチューセッツ)が挙げられる。更に、標準的な抽出及び分画法によって、天然及び合成的に生成されたライブラリーを、必要に応じて、従来技術において公知の方法に従って作成してもよい。更に、必要に応じていかなるライブラリー又は化合物も、標準的な化学的、物理的、生化学方法を使用して直ちに修飾できる。
【0092】
更に、創薬若しくは医薬開発の当業者であれば、容易に既知物質の同定方法(例えば、分類学上の同定、生物学的同定及び化学的同定、又はそれらのあらゆる組み合わせ)、又はミスフォールドタンパク質の修正においてそれらの活性が公知の同定物又は既知の材料の繰り返しの除去方法を、必要に応じて使用する必要がある
【0093】
粗抽出物がミスフォールドタンパク質形態を修正することがわかれば、陽性のリード抽出物を更に分画することにより、観察された効果をもたらす化学成分を単離することが必要となる。すなわち、抽出、分画及び精製プロセスの課題は、粗抽出物中における化学物質の慎重な解析及び同定であり、それにより正しくフォールディングされたタンパク質の収率が上昇する。かかる不均一な抽出物の分画及び精製方法は、従来技術において周知である。必要に応じて、ミスフォールドタンパク質又はタンパク質凝集に関連するいかなる病理の治療に有用な薬剤であると示される化合物を、公知技術の方法に従って化学的に修飾してもよい。
【0094】
併用療法
PCD(色素性網膜炎、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病、アルツハイマー病、腎生成尿崩症、癌及びプリオン関連の障害で例えばある、例えばジェイコブ−クロイツフェルト疾患)の治療に有用な本発明の組成物は、必要に応じて、公知のいかなる標準的な治療方法との組合せで投与されてもよい。色素性網膜炎の場合、標準的な治療方法としてはビタミンAサプリメントの使用が挙げられる。パーキンソン病の場合、標準的な治療としては、レボドパ/カルビドパ、アマンタジン、ブロモクリプチン、ペルゴリド、アポモルヒネ、ベンセラジド、リスライド、メルレルジン、リスリド、レルゴトリル、メマンチン、メタエルゴリン、ピジベジル、チラミン、チロシン、フェニルアラニン、ブロモクリプチンメシラート、ペルゴリドメシラートなどのドーパミン受容体アゴニストの1つ以上の投与が挙げられ、他の標準的治療方法としては、抗ヒスタミン剤、抗うつ薬、ドーパミンアゴニスト、モノアミンオキシダーゼ阻害薬の使用が挙げられる。ハンチントン舞踏病の場合、標準的治療方法としてはハロペリドール、フェノチアジン、レセルピン、テトラベナジン、アマンタジン及びコエンザイムQ10のうちの1つ以上の投与が挙げられる。アルツハイマー病の場合、標準的治療方法としては、ドネペジル(アリセプト)、トリバスチグミン(エクセロン)、ガランタミン(ラザジン)及びタクリン(コグネックス)のうちの1つ以上の投与が挙げられる。腎生成尿崩症の場合、標準的な治療方法としては、クロロチアジド/ヒドロクロロチアジド、アミロライド及びインドメタシンのうちの1つ以上の投与が挙げられる。癌の場合、標準的治療方法としては、酢酸アビラテロン、アルトレタミン、無水ビンブラスチン、アウリスタチン、ベキサロテン、ビカルタミド、BMS184476、2,3,4,5,6−ペンタフルオロ−N−(3−フルオロ−4−メトキシフェニル)ベンゼンスルフォンアミド、ブレオマイシン、N,N−ジメチル−L−バリル−L−バリル−N−メチル−L−バリル−L−プロリ−1−L−プロリン−t−ブチルアミド、カケクチン、セマドチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、3’,4’−ジデヒドロ−4’−デオキシ−8’−ノルヴィン−カロイコブラスチン、ドセタキソール、ドキセタキセル、シクロホスファミド、カルボプラチン、カルマスティン(BCNU)、シスプラチン、クリプトフィシン、シタラビン、ダカルバジン(DTIC)、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドラスタチン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、エトポシド、5−フルオロウラシル、フィナステリド、フルタミド、ヒドロキシ尿素及びヒドロキシ尿素タキサン、イホスファミド、リアロゾール、ロニダミン、ロムスチン(CCNU)、メクロレタミン(ナイトロジェンマスタード)、メルファラン、イセチオン酸ミボブリン、リゾキシン、セルテネフ、ストレプトゾシン、マイトマイシン、メトトレキサート、ニルタミド、オナプリストン、パクリタキセル、プレドニムスチン、プロカルバジン、RPR109881、ストラムスチンリン酸塩、タモキシフェン、タソネルミン、タキソール、トレチノイン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、硫酸ビンデシン及びビンフルニンのうちの1つ以上の投与が挙げられる。
【0095】
キット
本発明は、PCD若しくはその徴候の治療若しくは予防用のキットを提供する。一実施形態では、当該キットは、有効量の11−シス−レチナール若しくは9−シス−レチナール、並びにプロテアソーム阻害剤(例えばMG132)、オートファジー阻害剤(例えば3−メチルアデニン)、リソソーム阻害剤(例えば塩化アンモニウム)、ERからゴルジへのタンパク質輸送の阻害剤(例えばブレフェルジンA)、Hsp90シャペロン阻害剤(例えばゲルダナマイシン)、熱ショック応答活性化剤(例えばセラストロール)、グリコシダーゼ阻害剤(例えばカスタノスペルミン)、及びヒストンデアセチラーゼ阻害剤(例えばスクリプタイド)のうちの1つ以上を含んでなる医薬パックを含んでなる。好ましくは、組成物は単位用量形態で調製される。幾つかの実施形態では、当該キットは、治療的もしくは予防的な組成物を含有させる無菌容器を含んでなり、かかる容器は、従来技術において公知のボックス、アンプル、ボトル、バイアル、チューブ、バッグ、ポーチ、ブリスターパック又は他の適切な容器の形態であってもよい。かかる容器は、薬剤の保持に適するプラスチック、ガラス、ラミネートペーパー、金属箔又は他の材料で作製してもよい。
【0096】
必要に応じて、本発明の組成物又はそれらの組み合わせと、PCDに罹患若しくは罹患するおそれのある患者にそれらを投与する際の説明書とを併せて包含させてもよい。説明書には通常、PCDの治療若しくは予防用の化合物の使用に関する情報が記載されている。他の実施態様では、説明書には、少なくとも化合物又は化合物の組合せの説明、PCD又はその徴候の治療用の投与計画及び投与方法、注意事項、警告事項、指示、禁止事項、過剰投与に関する情報、逆作用、動物における薬理学、臨床研究結果、及び/又は参照のうちの1つ以上が記載されている。説明書は、容器(存在する場合)に、又は容器に貼り付けるラベルに直接印刷してもよく、又はシート、パンフレット、カード又はフォルダとして容器に梱包してもよい。
【0097】
以下の実施例は本発明を例示するためのものであり、本発明を限定するものではない。当業者に理解されるように、下で提供される具体的な構成は多様に変化させることもできるが、それらは化合物又はその組み合わせによる重要な特性を維持しつつ、上記の発明と整合する態様であることが条件となる。
【0098】
組換えポリペプチドの発現
本発明の組成物により生化学的に活性形態の組換えポリペプチドへの修復が増加するため、それらは公知技術のいかなる組換えポリペプチド発現の実質的な強化にも有用である。特に、本発明の組成物は、不活性タンパク質として凝集するか、又は封入体を形成する傾向がある生物学的活性ポリペプチドの修復を強化するのに有用である。かかる生物学的活性形態のタンパク質の修復を促進するため、少なくとも1つ以上の本発明の組成物を、組換えタンパク質を発現する細胞(例えば真核生物細胞、哺乳動物細胞又は酵母細胞)を培養する培地に、タンパク質合成が誘導される時点で添加する。かかる組成物としては、プロテアソーム阻害剤、オートファジー阻害剤、リソソーム阻害剤、ERからゴルジ体へのタンパク質輸送の阻害剤、Hsp90シャペロン阻害剤、グリコシダーゼ阻害剤、熱ショック応答活性化剤又はヒストンデアセチラーゼ阻害剤が挙げられる。組換え型又は変異体オプシンの発現を増加させるため、11−シス−レチナール若しくは9−シス−レチナールを誘導時に培地に添加してもよい。
【0099】
組換えポリペプチドは通常、適切な発現ベクター中に存在する、当該ポリペプチドをコードする核酸分子の全部若しくは一部、又は断片で適切な宿主細胞を形質転換することにより調製する。分子生物学の領域の当業者であれば、多種多様な発現システムのいずれかを用いて、組換えタンパク質を調製できると理解するであろう。具体的にどの宿主細胞を使用するかは、本発明にとってはさほど重大ではない。組換えポリペプチドは、実質的に全ての真核生物宿主(例えば酵母、昆虫細胞、Sf21細胞又は哺乳動物細胞(例えばNIH3T3、HeLa)又は好ましくはCOS細胞)において産生させることができる。かかる細胞は、広範囲な供給源(例えばthe American Type Culture Collection,Rockland,Md.、also,see,e.g.,Ausubelら、Current Protocol in Molecular Biology,New York:John Wiley and Sons,1997など)から入手可能である。トランスフェクション方法及び発現ベクターの選択は、選択される宿主のシステムに依存する。形質転換方法は例えばAusubelら(上記)の文献に記載されており、また発現ベクターは例えばCloning Vectors:A Laboratory Manual(P.H.Pouwelsら、1985,Supp.1987)に記載されているものを選択できる。
【0100】
組換えポリペプチドの産生に使用できる、様々な発現システムが存在する。かかるポリペプチドの生産に有用な発現ベクターとしては、限定されないが、染色体、エピソーム及びウイルスに由来するベクターが挙げられ、例えば、細菌プラスミド、バクテリオファージ、トランスポゾン、酵母エピソーム、挿入配列、酵母染色体配列、ウイルス(バキュロウイルス、パポバウイルス(例えばSV40)、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、狂犬病ウイルス及びレトロウイルスなど)に由来するベクター、並びにそれらのベクターの組み合わせが挙げられる。
【0101】
組換えポリペプチドを発現させた後、例えばアフィニティクロマトグラフィを使用して単離する。一例として、ポリペプチドを認識する抗体(例えば、本願明細書に記載されているものとしてできる)を作製し、カラムに結合させ、それを用いて組換えポリペプチドを単離することができる。アフィニティクロマトグラフィ前の、ポリペプチドを含有する細胞の溶解及び分画は、標準的な方法(Ausubelら、上記)により実施できる。単離後、組換えタンパク質を必要に応じて、例えば高速液体クロマトグラフィによって更に精製できる(Fisher, Laboratory Techniques In Biochemistry and Molecular Biology,eds.,Work and Burdon,Elsevier,1980)。
【実施例】
【0102】
色素性網膜炎(RP)には異質な群の遺伝性網膜障害が含まれ、桿体光受容器の死につながる。光受容器の死は、色素性網膜炎を患っている患者の周辺視野の亢進的な損失を原因とする夜盲及びそれに続くトンネル視をもたらす。常染色体優位性色素性網膜炎(ADRP)の患者の20〜25%はロドプシン遺伝この突然変異を有し、最も一般的にはP23H突然変異を有する。P23H突然変異は、11−シス−レチナールと結合の結合能が損なわれ、ミスフォールドオプシンタンパク質の生成に結びつく。P23Hミスフォールドタンパク質は細胞中で保持され、やがて凝集体を形成する(Salibaら、2002.JCS 115:2907−2918、Illingら、2002.JBC 277:34150−34160)。この凝集は、P23Hをはじめとする幾つかのRP突然変異が、タンパク質形態障害(PCD)と分類される。
【0103】
以下の実施例では、ミスフォールディングタンパク質の凝集を減少させ、正しくフォールディングされたタンパク質の収率を増加させる化合物の同定のための、P23H変異タンパク質の使用に関して記載するが、本発明はその態様に限定されるものではない。細胞内における、正しくフォールディングされたP23Hの収率の増加に有用であるとして同定された化合物は、色素性網膜炎の治療にのみ有用であるわけではない。かかる化合物はいかなるミスフォールディングタンパク質の収率も増加させると考えられ、実質的に全てのタンパク質形態障害の治療に有用である。
【0104】
特異的な薬理学的シャペロンを使用した、ミスフォールディングして凝集したタンパク質のレスキューに関して多くの報告がなされている。競争的酵素阻害剤が、薬理学的シャペロンとして用いられたこともあり、しばしば疾患(例えばFabryのGM1−ガングリオシド蓄積症、Gaucher、Tay−sachs及びRP17)における特異的な化学シャペロンとも称される。タンパク質のフォールディング、輸送及び分解において、細胞内で通常用いられるプロセスを阻害することにより、細胞内における適切にフォールディングされたタンパク質の収率が増加するか否かを決定するため、以下の種類の典型的な化合物を試験した:プロテアソーム阻害剤、オートファジー阻害剤、リソソーム阻害剤、ERからゴルジ体へのタンパク質輸送の阻害剤、Hsp90シャペロン阻害剤、熱ショック応答活性化剤、グリコシダーゼ阻害剤及びヒストンデアセチラーゼ阻害剤。
【0105】
過去の研究において、9−シス−レチナール及び7−環ロックされた11−シス−レチナールの異性体と同様に、天然の発色団である11−シス−レチナールが、P23Hオプシンのin vivoフォールディング及び安定化を量的に増加させすることが示されている(Noorwezら、J Biol Chem.2003 Apr 18、278(16):14442−50)。すなわち野生型タンパク質と同様、レスキューされた変異体P23Hタンパク質は色素を形成し、グリコシル化により成熟し、細胞表面へ輸送された。本発明における試験では、P23Hオプシンの細胞内における処理に関与する様々な細胞内酵素及び経路のの阻害剤による効果を解析した。
【0106】
<実施例1>:P23Hオプシンを表している細胞系の、タンパク質フォールディングアッセイへの使用
11シス−レチナール及び様々な阻害剤の存在下で、HEK293細胞のテトラサイクリン誘導型の安定発現株中で、変異体P23H及び野生型オプシンを別々に発現させた。48時間目に、フォールディングタンパク質を免疫アフィニティ精製し、UV分光測定により定量した。オプシンタンパク質量を280nmで測定した。生化学的に機能性の形態を有するロドプシン量を500nmで測定した。また免疫蛍光顕微鏡検査を行い、細胞内の当該タンパク質の位置を解析した。
【0107】
<実施例2>:プロテアソーム阻害による、適正にフォールディングされたP23Hのリカバリー増加
実施例1に記載のHEK293細胞株の誘導時に、培地にMG132(可逆的プロテアソーム阻害剤)を添加した。プロテアソームの阻害により、図1Aに示すように、200〜250%以上でロドプシンがリカバリーされた。一方、野生型ロドプシンの収率増加はわずか35〜40%であった(図1B)。
【0108】
<実施例3>:オートファジー阻害による、適正にフォールディングされたP23Hのリカバリー増加
誘導時に培地に3−メチルアデニンを添加し、実施例1のHEK293細胞におけるオートファジーをブロックした。P23Hロドプシンのリカバリーが350〜400%で増加したが、一方野生型ロドプシンのリカバリーは50〜60%に留まった(図2A及び2B)。
【0109】
<実施例4>:リソソーム阻害による、正しくフォールディングされたP23Hのリカバリー増加
実施例1のHEK293細胞においてP23Hタンパク質合成を誘導する際、培地に塩化アンモニウム(リソソーム阻害剤)を添加した。興味深いことに、リソソーム阻害により、P23Hロドプシンの30%のリカバリー増加、及び野生型ロドプシンの10%のリカバリー増加がなされた(図3A及び3B)。
【0110】
<実施例5>:ER−ゴルジ体輸送のブロックによる、正しくフォールディングされたP23Hの収率増加
実施例1のHEK293細胞の誘導時に、ブレフェルジンAを添加し、ERからゴルジへのタンパク質の順行性輸送をブロックした。この処理により、P23Hロドプシンの収率が2倍増加した(図4A)。対応する野生型ロドプシンの収率の増加は約60%であった(図4B)。
【0111】
<実施例6>:Hsp90阻害による、正しくフォールディングされたP23Hのリカバリー増加
実施例1に記載のHEK293細胞の誘導時に、特異的なHsp90シャペロン阻害剤(ゲルダナマイシン)を培地に添加した。野生型を及びP23Hオプシン発現する細胞に対するゲルダナマイシンの投与により、P23Hロドプシンの60%のリカバリー増加がなされた(図5A)。野生型ロドプシンごくわずかなリカバリー増加に留まった(図5B)。
【0112】
<実施例7>:熱ショック応答の活性化による、正しくフォールディングされたP23Hの収率増加
実施例1のHEK293細胞の誘導時にセラストロールを添加し、熱ショック応答を活性化した。この処理により、P23Hロドプシンの40%の増加がもたらされた(図6A)。セラストロールは、野生型ロドプシンのリカバリーに対しては効果を示さなかった(〜5〜7%)(図6B)。
【0113】
<実施例8>:ジヒドロ−セラストロールによる、野生型及びP23Hロドプシンリカバリー増加
ジヒドロセラストロール(セラストロールの誘導体)のP23Hロドプシンのリカバリーに対する効果を、実施例1のHEK293細胞を用いて解析した。ジヒドロセラストロールは、野生型及びP23Hロドプシンのリカバリーを約5〜10%増加させた(図7A及び7B)。
【0114】
<実施例9>:ヒストンデアセチラーゼ阻害による、野生型及びP23Hロドプシンのリカバリー増加
実施例1に記載のHEK293細胞の誘導時に、培地にヒストンデアセチラーゼ阻害剤(スクリプタイド)を添加した。スクリプタイドは、野生型及びP23Hロドプシンのリカバリーを約30%増加させた(図8A及び8B)。
【0115】
<実施例10>:阻害剤の存在下での、11−シス−レチナールによるオプシンのレスキュー増加
表1に示すように、以下の各々に対する阻害剤は、11−シス−レチナールの存在下で、フォールディングされたロドプシンのリカバリーを増加させた:グルコシダーゼ1及び2(カスタノスペルミン)、ERからゴルジへの順行輸送(ブレフェルジンA)、Hsp90(ゲルダナマイシン)、プロテアソーム(MG132)、オートファジー(3−MA)、及びリソソーム(塩化アンモニウム)。MG132及び3−メチルアデニンは、フォールディングされたロドプシンのリカバリーに対して最も劇的な効果を示した。
表1:ロドプシンリカバリーに対する各種阻害剤の効果
【表1】

【0116】
阻害剤の作用にとり特異的なシャペロン11−シス−レチナールの存在が必要か否かを解析するため、各々の阻害剤を単独で試験した。MG132(プロテアソーム阻害剤)は、11−シス−レチナールの非存在下でも、正しくフォールディングされたP23Hロドプシンのリカバリーを150%増加させた。3−メチルアデニン(オートファジー阻害剤)は、11−シス−レチナールの非存在下でも、正しくフォールディングされたP23Hロドプシンのリカバリーを200%増加させた。他阻害剤の存在下、11−シス−レチナールの非存在下で細胞を増殖させたときも、正しくフォールディングされたP23Hオプシンの低下した収率がリカバリーされた。
【0117】
P23H突然変異によってオプシンが不安定となり、細胞内でその凝集が生じる。正しくフォールディングされなかったP23Hはその天然のリガンド(11−シス−レチナール)と結合できない。P23H変異体を発現する細胞を含む培地への11−シス−レチナールの添加により、初期フォールディング中のオプシン中間体へのリガンドのアクセスが可能となり、ロドプシンの収率が5〜6倍増加する。この効果は変異体に特異的であり、11−シス−レチナールが野生型オプシンを発現する細胞を含む培地に添加しても効果が見られない。11−シス−レチナールと、プロテアソーム阻害剤、オートファジー阻害剤、リソソーム阻害剤、ERからゴルジ体へのタンパク質輸送の阻害剤、Hsp90シャペロン阻害剤、熱ショック応答活性化剤又はヒストンデアセチラーゼ阻害剤との各々の組合せは、生化学的に機能的な形態のP23Hのリカバリーを増加させた。
【0118】
生化学的に機能的な形態を有するP23Hタンパク質は、機能性アッセイにおいて野生型タンパク質と同様の生物学的活性を呈する。例えば、P23Hタンパク質は、本願明細書に記載のように発現させたとき、光により活性化し、メタロドプシンIIに変換されうる。この変換は、分光光度計を用いてモニターできる。更にP23Hタンパク質は、本願明細書に記載のように発現させたとき、細胞膜の一部として単離してもよい。P23Hを含有する単離された膜にトランスデューシンを添加すると、P23Hタンパク質は、ヘテロ三量体Gタンパク質トランスデューシンを活性化し、トランスデューシンのサブユニットによるGDPからGTPへの変換を誘導することができる。色素性網膜炎のモデル動物を用いた場合、本発明の組成物(例えば11−シス−レチナールと、プロテアソーム阻害剤、オートファジー阻害剤、リソソーム阻害剤、ERからゴルジ、Hsp90シャペロン阻害剤、熱ショック応答活性化剤、グリコシダーゼ阻害剤又はヒストンデアセチラーゼ阻害剤へのタンパク質輸送の阻害剤の1つ以上との組み合わせ)の投与により、色素性網膜炎の表現型を伴う徴候を機能的にレスキュー又は改善すると考えられる。
【0119】
材料及び方法細胞株及び培養条件
安定に野生型及びP23Hオプシンを発現するHEK293細胞系を、Flp−In T−Rexシステム(Invitrogen社製)を用いて作製した。8%のCO、37℃の条件下で、10%の胎児のウシ血清、抗生物質−抗真菌剤溶液、5μg/mlブラスティシジン及びハイグロマイシンを添加したDMEM 高グルコース含有培地中でHEK293細胞を増殖させた。
【0120】
オプシン産生の誘導及び阻害剤の添加
オプシンを発現するHEK293細胞系をコンフルエンスとなるまで培養し、培地交換後、1μg/mlテトラサイクリンにより誘導した。赤色光下で誘導した後、10μMの11−シス−レチナールを直ちに添加し、同時に各種阻害剤を表2(下記)に示す濃度で添加した。
表2
【表2】

プレートを48時間インキュベートした。赤色光下で、第1の添加の24時間後に更に10μMのレチナールを添加した。
【0121】
細胞の回収及びロドプシンの精製
誘導及び阻害剤添加の48時間後、HEK293細胞を回収し、実質的にNoorwezらの方法によりロドプシンを精製した(J Biol Chem.2004 Apr 16、279(16):16278−84)。Varian Gary50分光光度計を用いて、分光光度測定を行った。
【0122】
他の実施態様
前述の説明から、本願明細書に記載されている本発明を、様々な用途及び条件に適合させるように適宜変更及び修飾を行ってもよいことは自明である。かかる実施態様は添付の特許請求の範囲にも含まれる。
【0123】
本願明細書に列記した変更可能な定義に関する、全ての要素の説明には、いかなる1つの部材又は列記した部材のいかなる組合せ(又は部分的な組合せ)としての定義も包含される。本願明細書に記載の実施態様には、いかなる1つの実施態様又はその他のいかなる実施態様若しくはその部分との組合せが包含される。
【0124】
本願明細書において記載した全ての特許及び刊行物は、あたかもそれらの特許及び刊行物が具体的及び個別的に参照により援用されると明記された場合と同程度に、参照により本願明細書に援用される。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1A】MG132及び11−シス−レチナールによる、変異体P23H及び野生型ロドプシンの吸光度に与える効果を示す吸収スペクトル。
【図1B】同上。
【図2A】3−メチルアデニン及び11−シス−レチナールによる、変異体P23H及び野生型ロドプシンの吸光度に与える効果を示す吸収スペクトル。
【図2B】同上。
【図3A】塩化アンモニウム及び11−シス−レチナールによる、変異体P23H及び野生型ロドプシンの吸光度に与える効果を示す吸収スペクトル。
【図3B】同上。
【図4A】ブレフェルジンA及び11−シス−レチナールによる、変異体P23H及び野生型ロドプシンの吸光度に与える効果を示す吸収スペクトル。
【図4B】同上。
【図5A】ゲルダナマイシン及び11−シス−レチナールによる、変異体P23H及び野生型ロドプシンの吸光度に与える効果を示す吸収スペクトル。
【図5B】同上。
【図6A】セラストロール及び11−シス−レチナールによる、変異体P23H及び野生型ロドプシンの吸光度に与える効果を示す吸収スペクトル。
【図6B】同上。
【図7A】ジヒドロ−セラストロール及び11−シス−レチナールによる、変異体P23H及び野生型ロドプシンの吸光度に与える効果を示す吸収スペクトル。
【図7B】同上。
【図8A】スクリプタイド及び11−シス−レチナールによる、変異体P23H及び野生型ロドプシンの吸光度に与える効果を示す吸収スペクトル。
【図8B】同上。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質形態障害(PCD)に罹患する患者の治療方法であって、プロテアソーム阻害剤、オートファジー阻害剤、リソソーム阻害剤、ERからゴルジ体へのタンパク質輸送の阻害剤、Hsp90シャペロン阻害剤、熱ショック応答活性化剤、グリコシダーゼ阻害剤及びヒストンデアセチラーゼ阻害剤からなる群から選択される少なくとも1つの化合物を投与することを含んでなり、当該化合物が患者の治療に十分な量において投与される方法。
【請求項2】
前記PCDが、色素性網膜炎、加齢黄斑変性、緑内障、角膜ジストロフィー、網膜精神分裂症患者、Stargardt疾患、常染色体優位ドルーゼン及びBest黄斑ジストロフィーからなる群から選択される眼性PCDである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記方法が更に、患者に11−シス−レチナール、9−シス−レチナール又は7環ロックされた11−シス−レチナールの異性体を投与することを含んでなる、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記眼性PCDが色素性網膜炎又は加齢黄斑変性である、請求項2記載の方法。
【請求項5】
色素性網膜炎であると診断された患者の治療方法であって、
a)当該患者に11−シス−レチナール若しくは9−シス−レチナールを投与し、
b)更に、プロテアソーム阻害剤、オートファジー阻害剤、リソソーム阻害剤、ERからゴルジ体へのタンパク質輸送の阻害剤、Hsp90シャペロン阻害剤、熱ショック応答活性化剤、グリコシダーゼ阻害剤及びヒストンデアセチラーゼ阻害剤からなる群選択される少なくとも1つの化合物を投与することを含んでなり、11−シス−レチナール若しくは9−シス−レチナール、並びに当該化合物を、各々患者の治療に十分な量において、同時若しくは14日以内に投与する方法。
【請求項6】
前記11−シス−レチナールが、7環ロックされた11−シス−レチナールの異性体である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記患者がタンパク質のフォールディングに影響を及ぼす突然変異を有する、請求項1又は5記載の方法。
【請求項8】
前記突然変異がオプシンにおける突然変異である、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記オプシンがP23H突然変異を有する、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記プロテアソーム阻害剤が、MG132、ラクトシスチン、クラスト−ラクトシスチン−β−ラクトン、PSI、MG−115、MG−101、N−アセチル−Leu−Leu−Met−CHO、N−カルボベンゾイル−Gly−Pro−Phe−Leu−CHO、N−カルボベンゾイル−Gly−Pro−Ala−Phe−CHO、N−カルボベンゾイル−Leu−Leu−Phe−CHO、並びにその塩若しくはアナログからなる群から選択される、請求項1又は5記載の方法。
【請求項11】
前記プロテアソーム阻害剤が可逆的プロテアソーム阻害剤である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記可逆的プロテアソーム阻害剤がMG132である、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記オートファジー阻害剤が、3−メチルアデニン、3−メチルアデノシン、アデノシン、オカダ酸、N6−メルカプトプリンリボシド(N6−MPR)、5−アミノ−4−イミダゾールカルボキサミドリボシド(AICAR)、バフィロマイシンA1、並びにその塩若しくはアナログからなる群から選択される、請求項1又は5記載の方法。
【請求項14】
前記オートファジー阻害剤が3−メチルアデニンである、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記リソソーム阻害剤が、ロイペプチン、トランス−エポキシスクシニル−L−ロイシルアミド−(4−グアニジノ)ブタン、L−メチオニンメチルエステル、塩化アンモニウム、メチルアミン、クロロキン、並びにその塩若しくはアナログからなる群から選択される、請求項1又は5記載の方法。
【請求項16】
前記リソソーム阻害剤が塩化アンモニウムである、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記ERからゴルジ体へのタンパク質輸送の阻害剤が、ブレフェルジンA、並びにその塩若しくはアナログである、請求項1又は5記載の方法。
【請求項18】
前記Hsp90シャペロン阻害剤が、ベンゾキノンアンサマイシン抗生物質、ゲルダナマイシン、17−アリルアミノ−17−デメトシキゲルダナマイシン、ラジシコール、ノボビオシン及びHsp90 ATP/ADPポケットと結合するHsp90阻害剤、並びにその塩若しくはアナログからなる群から選択される、請求項1又は5記載の方法。
【請求項19】
前記Hsp90シャペロン阻害剤がゲルダナマイシンである、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記熱ショック応答活性化剤が、セラストロール、セラストロールメチルエステル、ジヒドロセラストロールジアセテート、セラストロールブチルエステル及びジヒドロセラストロールからなる群から選択される、請求項1又は5記載の方法。
【請求項21】
前記熱ショック応答活性化剤がセラストロールである、請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記熱ショック応答活性化剤がジヒドロセラストロールである、請求項20記載の方法。
【請求項23】
前記グリコシダーゼ阻害剤が、塩酸アウストラリン、カスタノスペルミン、6−アセタミド−6−デオキシ−カスタノスペルミン、塩酸デオキシフコノジリマイシン(DFJ)、デオキシノジリマイシン(DNJ)、塩酸デオキシガラクトノジリマイシン(DGJ)、塩酸デオキシマンノジリマイシン(DMJ)、2R,5R−ビス(ヒドロキシメチル)−3R,4R−ジヒドロキシピロリジン(DMDP)、1,4−ジデオキシ−1,4−イミノ−D−マンニトール塩酸塩、3R,4R,5R,6R)−3,4,5,6−テトラヒドロキシアゼパン塩酸塩、1,5−ジデオキシ−1,5イミノキシリトール、キフネンシン、N−ブチルデオキシノジリマイシン(BDNJ)、N−ノニルDNJ(NDNJ)、N−ヘキシルDNJ(HDNJ)、N−メチルデオキシノジリマイシン(MDNJ)、並びにその塩若しくはアナログからなる群から選択される、請求項1又は5記載の方法。
【請求項24】
前記グリコシダーゼ阻害剤がカスタノスペルミンである、請求項20記載の方法。
【請求項25】
前記ヒストンデアセチラーゼ阻害剤が、スクリプタイド、APHAコンパウンド8、アピシジン、ナトリウム酪酸塩、(−)−デプデシン、サーチノール、トリコスタチンA、並びにその塩若しくはアナログからなる群から選択される、請求項1又は5記載の方法。
【請求項26】
前記ヒストンデアセチラーゼ阻害剤がスクリプタイドである、請求項25記載の方法。
【請求項27】
11−シス−レチナール若しくは9−シス−レチナール、並びに前記化合物が、各々10日以内に投与される、請求項3又は5記載の方法。
【請求項28】
11−シス−レチナール若しくは9−シス−レチナール、並びに更なる前記化合物が、各々5日以内に投与される、請求項27記載の方法。
【請求項29】
11−シス−レチナール若しくは9−シス−レチナール、並びに更なる前記化合物が、各々24時間以内に投与される、請求項28記載の方法。
【請求項30】
11−シス−レチナール若しくは9−シス−レチナール、並びに前記化合物が同時に投与される、請求項29記載の方法。
【請求項31】
11−シス−レチナール若しくは9−シス−レチナール、並びに前記化合物が眼に投与される、請求項30記載の方法。
【請求項32】
前記投与が眼内に行われる、請求項31記載の方法。
【請求項33】
11−シス−レチナール若しくは9−シス−レチナール、並びに前記化合物が、それらを長期放出させる組成物中に各々添加される、請求項30から32のいずれか1項記載の方法。
【請求項34】
前記組成物がマイクロカプセル、ナノカプセル又はナノエマルジョンである、請求項30記載の方法。
【請求項35】
前記長期放出が薬物輸送手段によりなされる、請求項34記載の方法。
【請求項36】
前記方法が更に、ビタミンAサプリメントを投与することを含んでなる、請求項5から36のいずれか1項記載の方法。
【請求項37】
前記PCDがα1−抗トリプシン欠乏、嚢胞性線維症、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病、アルツハイマー病、腎生成尿崩症、癌及びジェイコブ−クロイツフェルト疾患からなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項38】
前記PCDが嚢胞性線維症であり、前記方法が更に抗生物質、ビタミンA、D、E及びKサプリメント、アルブテロール気管支拡張剤、ドルナーゼ、イブプロフェンからなる群から選択される薬剤を投与することを含んでなる、請求項37記載の方法。
【請求項39】
前記PCDがハンチントン舞踏病であり、前記方法が更にハロペリドール、フェノチアジン、レセルピン、テトラベナジン、アマンタジン、コエンザイムQ10からなる群から選択される薬剤を投与することを含んでなる、請求項38記載の方法。
【請求項40】
前記PCDがパーキンソン病であり、前記方法が更に、レボドパ、アマンタジン、ブロモクリプチン、ペルゴリド、アポモルヒネ、ベンゼラジド、リスライド、メスレルジン、リスリド、レルゴトリル、メマンチン、メタエルゴリン、ピリベジル、チラミン、チロシン、フェニルアラニン、ブロモクリプチンメシラート、ペルゴリドメシラート、抗ヒスタミン剤、抗うつ薬及びモノアミンオキシダーゼ阻害剤からなる群から選択される薬剤を投与することを含んでなる、請求項37記載の方法。
【請求項41】
前記PCDがアルツハイマー病であり、前記方法が更に、ドネペジル、リバスチグミン、ガランタミン及びタクリンからなる群から選択される薬剤からなる群から選択される薬剤を投与することを含んでなる、請求項37記載の方法。
【請求項42】
前記PCDが腎生成尿崩症であり、前記方法が更に、クロロチアジド/ヒドロクロロチアジド、アミロライド及びインドメタシンからなる群から選択される薬剤を投与することを含んでなる、請求項37記載の方法。
【請求項43】
前記PCDが癌であり、前記方法が更に、酢酸アビラテロン、アルトレタミン、無水ビンブラスチン、アウリスタチン、ベキサロテン、ビカルタミド、BMS184476、2,3,4,5,6−ペンタフルオロ−N−(3−フルオロ−4−メトキシフェニル)ベンゼンスルフォンアミド、ブレオマイシン、N,N−ジメチル−L−バリル−L−バリル−N−メチル−L−バリル−L−プロリ−1−L−プロリン−t−ブチルアミド、カケクチン、セマドチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、3’,4’−ジデヒドロ−4’−デオキシ−8’−ノルヴィン−カロイコブラスチン、ドセタキソール、ドキセタキセル、シクロホスファミド、カルボプラチン、カルマスティン(BCNU)、シスプラチン、クリプトフィシン、シタラビン、ダカルバジン(DTIC)、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドラスタチン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、エトポシド、5−フルオロウラシル、フィナステリド、フルタミド、ヒドロキシ尿素及びヒドロキシ尿素タキサン、イホスファミド、リアロゾール、ロニダミン、ロムスチン(CCNU)、メクロレタミン(ナイトロジェンマスタード)、メルファラン、イセチオン酸ミボブリン、リゾキシン、セルテネフ、ストレプトゾシン、マイトマイシン、メトトレキサート、ニルタミド、オナプリストン、パクリタキセル、プレドニムスチン、プロカルバジン、RPR109881、ストラムスチンリン酸塩、タモキシフェン、タソネルミン、タキソール、トレチノイン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、硫酸ビンデシン及びビンフルニンからなる群から選択される薬剤を投与することを含んでなる、請求項37記載の方法。
【請求項44】
細胞内において生化学的に機能的な形態のタンパク質を増加させる方法であって、
a)プロテアソーム阻害剤、オートファジー阻害剤、リソソーム阻害剤、ERからゴルジ体へのタンパク質輸送の阻害剤、Hsp90シャペロン阻害剤、熱ショック応答活性化剤、グリコシダーゼ阻害剤及びヒストンデアセチラーゼ阻害剤からなる群から選択される少なくとも1つの化合物を、有効量において細胞と接触させることと、
b)生化学的に機能的な形態のタンパク質の増加を確認することを含んでなる方法。
【請求項45】
前記方法が更に、11−シス−レチナール、9−シス−レチナール又は7環ロックされた11−シス−レチナールの異性体と細胞とを接触させることを含んでなる、請求項44記載の方法。
【請求項46】
前記細胞が凝集又は原線維を形成する変異タンパク質を含んでなる、請求項45記載の方法。
【請求項47】
前記細胞が変異体オプシンタンパク質を含んでなる、請求項46記載の方法。
【請求項48】
前記細胞が変異体ミオシリンタンパク質を含んでなる、請求項46記載の方法。
【請求項49】
前記細胞が変異体リポフスシンタンパク質を含んでなる、請求項46記載の方法。
【請求項50】
前記細胞が変異体β−H3タンパク質を含んでなる、請求項46記載の方法。
【請求項51】
前記細胞がin vitroの細胞である、請求項44から50のいずれか1項記載の方法。
【請求項52】
前記細胞がin vivoの細胞である、請求項44から50のいずれか1項記載の方法。
【請求項53】
前記細胞が哺乳動物細胞である、請求項44から52のいずれか1項記載の方法。
【請求項54】
前記細胞がヒト細胞である、請求項53記載の方法。
【請求項55】
有効量の11−シス−レチナール若しくは9−シス−レチナールと、有効量の、プロテアソーム阻害剤、オートファジー阻害剤、リソソーム阻害剤、ERからゴルジ体へのタンパク質輸送の阻害剤、Hsp90シャペロン阻害剤、熱ショック応答活性化剤、グリコシダーゼ阻害剤及びヒストンデアセチラーゼ阻害剤からなる群から選択される少なくとも1つの更なる化合物とを、薬理学的に許容できる賦形剤中に含有する、眼性PCDの治療用の医薬組成物。
【請求項56】
有効量の11−シス−レチナール若しくは9−シス−レチナールと、有効量の、プロテアソーム阻害剤、オートファジー阻害剤、リソソーム阻害剤、ERからゴルジ体へのタンパク質輸送の阻害剤、Hsp90シャペロン阻害剤、熱ショック応答活性化剤、グリコシダーゼ阻害剤及びヒストンデアセチラーゼ阻害剤からなる群から選択される少なくとも1つの更なる化合物とを、薬理学的に許容できる賦形剤中に含有する、色素性網膜炎の治療用の医薬組成物。
【請求項57】
前記プロテアソーム阻害剤が、MG132、ラクトシスチン、クラスト−ラクトシスチン−β−ラクトン、PSI、MG−115、MG−101、N−アセチル−Leu−Leu−Met−CHO、N−カルボベンゾイル−Gly−Pro−Phe−Leu−CHO、N−カルボベンゾイル−Gly−Pro−Ala−Phe−CHO、N−カルボベンゾイル−Leu−Leu−Phe−CHO、並びにその塩若しくはアナログからなる群から選択される、請求項55又は56記載の医薬組成物。
【請求項58】
前記プロテアソーム阻害剤が可逆的プロテアソーム阻害剤である、請求項57記載の医薬組成物。
【請求項59】
前記可逆的プロテアソーム阻害剤がMG132である、請求項55又は56記載の医薬組成物。
【請求項60】
前記オートファジー阻害剤3−メチルアデニン、3−メチルアデノシン、アデノシン、オカダ酸、N6−メルカプトプリンリボシド(N6−MPR)、5−アミノ−4−イミダゾールカルボキサミドリボシド(AICAR)、バフィロマイシンA1、並びにその塩若しくはアナログからなる群から選択される、請求項55又は56記載の医薬組成物。
【請求項61】
前記オートファジー阻害剤が3−メチルアデニンである、請求項60記載の医薬組成物。
【請求項62】
前記リソソーム阻害剤が、ロイペプチン、トランス−エポキシスクシニル−L−ロイシルアミド−(4−グアニジノ)ブタン、L−メチオニンメチルエステル、塩化アンモニウム、メチルアミン、クロロキン、並びにその塩若しくはアナログからなる群から選択される、請求項55又は56記載の医薬組成物。
【請求項63】
前記リソソーム阻害剤が塩化アンモニウムである、請求項62記載の医薬組成物。
【請求項64】
前記ERからゴルジ体へのタンパク質輸送の阻害剤がブレフェルジンA、並びにその塩若しくはアナログである、請求項55又は56記載の医薬組成物。
【請求項65】
前記Hsp90シャペロン阻害剤が、ベンゾキノンアンサマイシン抗生物質、ゲルダナマイシン、17−アリルアミノ−17−デメトシキゲルダナマイシン、ラジシコール、ノボビオシン及びHsp90 ATP/ADPポケットと結合するHsp90阻害剤、並びにその塩若しくはアナログからなる群から選択される、請求項55又は56記載の医薬組成物。
【請求項66】
前記Hsp90シャペロン阻害剤がゲルダナマイシンである、請求項65記載の医薬組成物。
【請求項67】
前記熱ショック応答活性化剤が、セラストロール、セラストロールメチルエステル、ジヒドロセラストロールジアセテート、セラストロールブチルエステル及びジヒドロセラストロールからなる群から選択される、請求項55又は56記載の医薬組成物。
【請求項68】
前記熱ショック応答活性化剤がセラストロールである、請求項67記載の医薬組成物。
【請求項69】
前記熱ショック応答活性化剤がジヒドロセラストロールである、請求項67記載の医薬組成物。
【請求項70】
前記グリコシダーゼ阻害剤が、塩酸アウストラリン、カスタノスペルミン、6−アセタミド−6−デオキシ−カスタノスペルミン、塩酸デオキシフコノジリマイシン(DFJ)、デオキシノジリマイシン(DNJ)、塩酸デオキシガラクトノジリマイシン(DGJ)、塩酸デオキシマンノジリマイシン(DMJ)、2R,5R−ビス(ヒドロキシメチル)−3R,4R−ジヒドロキシピロリジン(DMDP)1,4−ジデオキシ−1,4−イミノ−D−マンニトール塩酸塩、3R,4R,5R,6R)−3,4,5,6−テトラヒドロキシアゼパン塩酸塩、1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−キシリトール、キフネンシン、N−ブチルデオキシノジリマイシン(BDNJ)、N−ノニルDNJ(NDNJ)、N−ヘキシルDNJ(HDNJ)、N−メチルデオキシノジリマイシン(MDNJ)、並びにその塩若しくはアナログからなる群から選択される、請求項55又は56の組成物、
【請求項71】
前記グリコシダーゼ阻害剤がカスタノスペルミンである、請求項70記載の医薬組成物。
【請求項72】
前記ヒストンデアセチラーゼ阻害剤が、スクリプタイド、APHAコンパウンド8、アピシジン、酪酸ナトリウム、(−)−デプデシン、サーチノール、トリコスタチンA、並びにその塩若しくはアナログからなる群から選択される、請求項55又は56の組成物
【請求項73】
前記ヒストンデアセチラーゼ阻害剤がスクリプタイドである、請求項72記載の医薬組成物。
【請求項74】
前記眼性PCDが、加齢黄斑変性、色素性網膜炎、緑内障、角膜ジストロフィ、網膜分離症、Stargardt疾患、常染色体優位ドルーゼン又はBest黄斑ジストロフィーからなる群から選択される、請求項55から73のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項75】
眼性PCDの治療用のキットであって、有効量の11−シス−レチナール若しくは9−シス−レチナールと、有効量の、プロテアソーム阻害剤、オートファジー阻害剤、リソソーム阻害剤、ERからゴルジ体へのタンパク質輸送の阻害剤、Hsp90シャペロン阻害剤、熱ショック応答活性化剤、グリコシダーゼ阻害剤及びヒストンデアセチラーゼ阻害剤からなる群から選択される少なくとも1つの更なる化合物を含んでなるキット。
【請求項76】
色素性網膜炎の治療用のキットであって、有効量の11−シス−レチナール若しくは9−シス−レチナールと、有効量の、プロテアソーム阻害剤、オートファジー阻害剤、リソソーム阻害剤、ERからゴルジ体へのタンパク質輸送の阻害剤、Hsp90シャペロン阻害剤、熱ショック応答活性化剤、グリコシダーゼ阻害剤及びヒストンデアセチラーゼ阻害剤からなる群から選択される少なくとも1つの更なる化合物を含んでなるキット。
【請求項77】
前記プロテアソーム阻害剤が、MG132、ラクトシスチン、クラスト−ラクトシスチン−β−ラクトン、PSI、MG−115、MG−101、N−アセチル−Leu−Leu−Met−CHO、N−カルボベンゾイル−Gly−Pro−Phe−Leu−CHO、N−カルボベンゾイル−Gly−Pro−Ala−Phe−CHO、N−カルボベンゾイル−Leu−Leu−Phe−CHO、並びにその塩若しくはアナログからなる群から選択される、請求項75又は76記載のキット。
【請求項78】
前記プロテアソーム阻害剤が可逆的プロテアソーム阻害剤である、請求項75又は76記載のキット。
【請求項79】
前記可逆的プロテアソーム阻害剤がMG132である、請求項78記載のキット。
【請求項80】
前記オートファジー阻害剤が、3−メチルアデニン、3−メチルアデノシン、アデノシン、オカダ酸、N6−メルカプトプリンリボシド(N6−MPR)、5−アミノ−4−イミダゾールカルボキサミドリボシド(AICAR)、バフィロマイシンA1、並びにその塩若しくはアナログからなる群から選択される、請求項75又は76記載のキット。
【請求項81】
前記オートファジー阻害剤が3−メチルアデニンである、請求項80記載のキット。
【請求項82】
前記リソソーム阻害剤が、ロイペプチン、トランス−エポキシスクシニル−L−ロイシルアミド−(4−グアニジノ)ブタン、L−メチオニンメチルエステル、塩化アンモニウム、メチルアミン、クロロキン、並びにその塩若しくはアナログからなる群から選択される、請求項75又は76記載のキット。
【請求項83】
前記リソソーム阻害剤が塩化アンモニウムである、請求項82記載のキット。
【請求項84】
前記ERからゴルジ体へのタンパク質輸送の阻害剤がブレフェルジンA、並びにその塩若しくはアナログである、請求項75又は76記載のキット。
【請求項85】
前記Hsp90シャペロン阻害剤が、ベンゾキノンアンサマイシン抗生物質、ゲルダナマイシン、17−アリルアミノ−17−デメトシキゲルダナマイシン、ラジシコール、ノボビオシン及びHsp90 ATP/ADPポケットと結合するHsp90阻害剤、並びにその塩若しくはアナログからなる群から選択される、請求項75又は76記載のキット。
【請求項86】
前記Hsp90シャペロン阻害剤がゲルダナマイシンである、請求項85記載のキット。
【請求項87】
熱ショック応答活性化剤が、セラストロール、セラストロールメチルエステル、ジヒドロセラストロールジアセテート、セラストロールブチルエステル、そして、ジヒドロセラストロールからなる群から選択される、請求項75又は76記載のキット。
【請求項88】
前記熱ショック応答活性化剤がセラストロールである、請求項87記載のキット。
【請求項89】
前記熱ショック応答活性化剤がジヒドロセラストロールである、請求項87記載のキット。
【請求項90】
前記グリコシダーゼ阻害剤が、アウストラリン塩酸塩、カスタノスペルミン、6−アセタミド−6−デオキシ−カスタノスペルミン、デオキシフコノジリマイシン塩酸塩(DFJ)、デオキシノジリマイシン(DNJ)、デオキシガラクトノジリマイシン塩酸塩(DGJ)、デオキシマンノジリマイシン塩酸塩(DMJ)、2R,5R−ビス(ヒドロキシメチル)−3R,4R−ジヒドロキシピロリジン(DMDP)1,4−ジデオキシ−1,4−イミノ−D−マンニトール塩酸塩、3R,4R,5R,6R)−3,4,5,6−テトラヒドロキシアゼパン塩酸塩、1,5−ジデオキシ−1,5−イミノキシリトール、キフネンシン、N−ブチルデオキシノジリマイシン(BDNJ)、N−ノニルDNJ(NDNJ)、N−ヘキシルDNJ(HDNJ)、N−メチルデオキシノジリマイシン(MDNJ)、並びにその塩若しくはアナログからなる群から選択される、請求項75又は76記載のキット。
【請求項91】
前記グリコシダーゼ阻害剤がカスタノスペルミンである、請求項90記載のキット。
【請求項92】
前記ヒストンデアセチラーゼ阻害剤がスクリプタイド、APHAコンパウンド8、アピシジン、ナトリウム酪酸塩、(−)−デプデシン、サーチノール、トリコスタチンA、並びにその塩若しくはアナログからなる群から選択される、請求項75又は76記載のキット。
【請求項93】
前記ヒストンデアセチラーゼ阻害剤がスクリプタイドである、請求項92記載のキット。
【請求項94】
眼性PCDに罹患する患者の治療に有用な化合物を同定する方法であって、
a)候補化合物と、ミスフォールドタンパク質を発現する細胞をin vitroで接触させることと、
b)コントロールの細胞と比較して、細胞において正しくフォールディングされたタンパク質の収率を測定することを含んでなり、接触させた当該細胞における、正しくフォールディングされたタンパク質の収率の増加を、PCDに罹患する患者の治療に有用な化合物であることの指標とする方法。
【請求項95】
色素性網膜炎に罹患する患者の治療に有用な化合物を同定する方法であって、
a)in vitroで、ミスフォールドタンパク質を発現する細胞を、
(i)11−シス−レチナール若しくは9−シス−レチナール、及び
(ii)候補化合物
と接触させ、
b)コントロールの細胞と比較して、細胞において正しくフォールディングされたタンパク質の収率を測定することを含んでなり、接触させた当該細胞における、正しくフォールディングされたタンパク質の収率の増加を、色素性網膜炎に罹患する患者の治療に有用な化合物であることの指標とする方法。
【請求項96】
前記11−シス−レチナールが、7環ロックされた11−シス−レチナールの異性体である、請求項94又は95記載の方法。
【請求項97】
前記ミスフォールドタンパク質が突然変異を有する、請求項94又は95記載の方法。
【請求項98】
前記ミスフォールドタンパク質がオプシンである、請求項94又は95記載の方法。
【請求項99】
前記オプシンがP23H突然変異を有する、請求項98記載の方法。
【請求項100】
タンパク質形態障害(PCD)に罹患する患者の治療方法であって、前記患者に患者の治療に有効な量のプロテアソーム阻害剤又はオートファジー阻害剤を投与することを含んでなる方法。
【請求項101】
色素性網膜炎に罹患する患者の治療方法であって、前記患者に患者の治療に有効な量のプロテアソーム阻害剤又はオートファジー阻害剤を投与することを含んでなる方法。
【請求項102】
前記プロテアソーム阻害剤が可逆的プロテアソーム阻害剤である、請求項100又は101記載の方法。
【請求項103】
前記可逆的プロテアソーム阻害剤がMG132である、請求項102記載の方法。
【請求項104】
前記オートファジー阻害剤が、3−メチルアデニン、3−メチルアデノシン、アデノシン、オカダ酸、N6−メルカプトプリンリボシド(N6−MPR)、アミノチオール化されたアデノシンアナログ、5−アミノ−4−イミダゾールカルボキサミドリボシド(AICAR)及びバフィロマイシンA1からなる群から選択される、請求項100又は101記載の方法。
【請求項105】
前記オートファジー阻害剤が3−メチルアデニンである、請求項104記載の方法。
【請求項106】
生化学的に機能的な形態の組換えタンパク質の調製方法であって、
a)組換えタンパク質を発現する細胞と、プロテアソーム阻害剤、オートファジー阻害剤、リソソーム阻害剤、ERからゴルジ体へのタンパク質輸送の阻害剤、Hsp90シャペロン阻害剤、熱ショック応答活性化剤、グリコシダーゼ阻害剤及びヒストンデアセチラーゼ阻害剤からなる群から選択される化合物とを接触させることと、
b)前記細胞から組換えタンパク質を単離することを含んでなり、それにより生化学的に機能的な形態の組換えタンパク質が得られる方法。
【請求項107】
タンパク質の生物学的活性を測定することを更に含んでなる、請求項107記載の方法。
【請求項108】
前記生物学的活性が酵素アッセイを使用して検出される、請求項107記載の方法。
【請求項109】
前記生物学的活性が分光光度測定で検出される、請求項107記載の方法。
【請求項110】
11−シス−レチナールと細胞を接触させることを更に含んでなる、請求項107記載の方法。
【請求項111】
前記細胞が真核生物細胞である、請求項107記載の方法。
【請求項112】
前記細胞が酵母細胞である、請求項111記載の方法。
【請求項113】
前記細胞が哺乳動物細胞である、請求項111記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【公表番号】特表2009−502954(P2009−502954A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−524192(P2008−524192)
【出願日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際出願番号】PCT/US2006/029402
【国際公開番号】WO2007/014327
【国際公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(500360769)ユニバーシティ オブ フロリダ リサーチ ファウンデーション,インコーポレイティド (16)
【Fターム(参考)】