説明

タンパク質キナーゼ阻害剤としての化合物および組成物

本発明は、異常なまたは脱制御されたキナーゼ活性が関係する疾患または障害、特にc-kit、PDGFRαおよびPDGFRβキナーゼの異常な活性化が関係する疾患または障害を処置するまたは予防するための、新規のクラスの化合物、該化合物を含む医薬組成物、および該化合物の使用方法を提供する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互引用
本出願は、米国仮特許出願第60/864,378号(2006年11月3日出願)についての優先権の利益を主張している。この出願の全ての開示は、言及することによって、全ての目的について、その全体が組み込まれる。
【0002】
本発明の背景
本発明の分野
本出願は、異常なまたは脱制御されたキナーゼ活性が関係する疾患または障害、特にc-kit、PDGFRαおよびPDGFRβキナーゼの異常な活性化が関係する疾患または障害を処置するまたは予防するための、新規のクラスの化合物、該化合物を含む医薬組成物、および該化合物の使用方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
背景
タンパク質キナーゼは、広範囲の細胞過程の調節および細胞機能の制御の維持に中心的な役割を果たすタンパク質の大きなファミリーを代表する。これらのキナーゼの部分的非制限的リストは、受容体チロシンキナーゼ、例えば血小板由来増殖因子受容体キナーゼ(PDGF-R)、神経成長因子受容体、trkB、および線維芽細胞増殖因子受容体、FGFR3、B-RAF;非受容体チロシンキナーゼ、例えばAblおよび融合キナーゼBCR-Abl、Lck、Bmxおよびc-src;およびセリン/トレオニン・キナーゼ、例えばc-RAF、sgk、MAPキナーゼ(例えばMKK4、MKK6など)およびSAPK2αおよびSAPK2βを含む。良性および悪性増殖障害を含む多くの疾病状態ならびに免疫系および神経系の不適切な活性化に起因する疾患において、異常なキナーゼ活性が観察されている。
【0004】
本発明の新規化合物は、1種以上のタンパク質キナーゼの活性を阻害し、従って、キナーゼ関連疾患の処置に有用であると予測される。
【発明の概要】
【0005】
本発明の概要
一つの態様において、本発明は、式I:
【化1】

[式中、
Xは、結合およびNHから選択され;
Yは、結合およびNHから選択され;
【0006】
は、シクロヘキシル、ピリジニル、キノリニル、イソキノリニルおよびフェニルから選択され;ここで、Rのシクロヘキシル、ピリジニル、キノリニル、イソキノリニルまたはフェニルは、所望によりハロ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロ置換C1−6アルキル、ハロ置換C1−6アルコキシ、−NR5a5b、−OXNR5a5bおよびヘテロシクリルから独立して選択される1から3個の基で置換されていてもよく;ここで、Xは、結合およびC1−4アルキレンから独立して選択され;R5aおよびR5bは、水素、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロ置換C1−6アルキルおよびハロ置換C1−6アルコキシから独立して選択され;
は、ハロ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロ置換C1−6アルキルおよびハロ置換C1−6アルコキシから選択され;
【0007】
は、ハロ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロ置換C1−6アルキルおよびハロ置換C1−6アルコキシから選択され;
は、ハロ、シアノ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロ置換C1−6アルキル、ハロ置換C1−6アルコキシ、C6−10アリール−C0−4アルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、−XNR、−XNROR、−XNROR、−XNRC(O)NR、−XS(O)NR、−XS(O)、−XNR、−XNROR、−XC(O)R、−XOXOR、−OX、−X、−XC(O)OR、−XORおよび−XOXORから独立して選択される1から3個の基で置換されているヘテロアリールであり;ここで、それぞれのXは、結合およびC1−4アルキレンから独立して選択され;XはC1−4アルキレンであり;それぞれのRは、水素、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C3−12シクロアルキル、C6−10アリール−C0−4アルキル、ヘテロアリール−C0−4アルキルおよびヘテロシクリルから独立して選択され;
ここで、Rのアリール、シクロアルキル、ヘテロアリールまたはヘテロシクリル置換基は、所望によりハロ、ヒドロキシ、シアノ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロ置換C1−6アルキル、ハロ置換C1−6アルコキシ、−L−OR、−L−C(O)OR、−L−C(O)NRおよび−L−Rから独立して選択される1から3個の基でさらに置換されていてもよく;ここで、Lは、結合およびC1−4アルキレンから選択され;Rは、水素、C1−6アルキルおよびヘテロシクリルから選択される。ただし、Rは、トリフルオロメチル基によって置換されているピリジン−3−イルではない。]
の化合物、およびそのN−オキシド誘導体、プロドラッグ誘導体、保護誘導体、個々の異性体および異性体混合物;および該化合物の薬学的に許容される塩および溶媒和物(例えば水和物)を提供する。
【0008】
第二の態様において、本発明は、1種以上の適切な賦形剤と混合した、式Iの化合物またはそのN−オキシド誘導体、個々の異性体および異性体混合物;またはそれらの薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を提供する。
【0009】
第三の態様において、本発明は、動物において、キナーゼ活性、特にc-kit、PDGFRαおよび/またはPDGFRβ活性の阻害により、疾患の病状および/または症候を予防、阻害または寛解し得る疾患を処置する方法であって、該動物に、治療有効量の式Iの化合物またはそのN−オキシド誘導体、個々の異性体および異性体混合物、またはそれらの薬学的に許容される塩を投与することを含む方法を提供する。
【0010】
第四の態様において、本発明は、動物において、キナーゼ活性、特にc-kit、PDGFRαおよび/またはPDGFRβ活性が、疾患の病状および/または症候に寄与する疾患を処置する医薬の製造における、式Iの化合物の使用を提供する。
【0011】
第五の態様において、本発明は、式Iの化合物、およびそのN−オキシド誘導体、プロドラッグ誘導体、保護誘導体、個々の異性体および異性体混合物、およびそれらの薬学的に許容される塩の製造方法を提供する。
【0012】
本発明の詳細な説明
定義
基としての、および他の基(例えばハロ置換アルキルおよびアルコキシ)の構成要素としての“アルキル”は、直鎖であっても分枝鎖であってもよい。C1−4−アルコキシは、メトキシ、エトキシなどを含む。ハロ置換アルキルは、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、トリフルオロエトキシ(およびその異性体)などを含む。
【0013】
“アリール”は、6から10個の環炭素原子を含む、単環式または縮合二環式芳香環を意味する。例えば、アリールは、フェニルであってもナフチルであってもよく、好ましくはフェニルである。“アリーレン”は、アリール基から誘導される二価の基を意味する。
【0014】
“ヘテロアリール”は、−O−、−N=、−NR−、−C(O)−、−S−、−S(O)−または−S(O)−(ここで、Rは、水素、C1−4アルキルまたは窒素保護基である。)から独立して選択される1から3個のヘテロ原子を含む5から10員の不飽和の環系である。本出願で用いられる例は、ピラゾリル、ピリジニル、インドリル、チアゾリル、3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン−6−イル、フラニル、ベンゾ[b]フラニル、ピロリル、1H−インダゾリル、イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル、オキサゾリル、ベンゾ[d]チアゾール−6−イル、1H−ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール−5−イル、キノリニル、1H−インドリル、3,4−ジヒドロ−2H−ピラノ[2,3−b]ピリジニルおよび2,3−ジヒドロフロ[2,3−b]ピリジニル、3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン−7−イルなどを含み、これらに限定されない。
【0015】
“シクロアルキル”は、示された数の環原子を含む、飽和または部分的に不飽和の、単環式、縮合二環式または架橋多環式環を意味する。例えば、C3−10シクロアルキルは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどを含む。
【0016】
“ヘテロシクリル”は、−O−、−N=、−NR−、−C(O)−、−S−、−S(O)−または−S(O)−(ここで、Rは、水素、C1−4アルキルまたは窒素保護基である。)から独立して選択される1から3個のヘテロ原子を含む、5から10員の飽和または部分的に不飽和の環系を意味する。例えば、本発明の化合物を表記するために本出願で用いられるヘテロシクリルは、モルホリノ、ピロリジニル、アゼパニル、ピペリジニル、イソキノリニル、テトラヒドロフラニル、ピロリジニル、ピロリジニル−2−オン、ピペラジニル、ピペリジニルオン(piperidinylone)、1,4−ジオキサ−8−アザ−スピロ[4.5]デカ−8−イル、3,4−ジヒドロイソキノリン−2(1H)−イルなどを含む。
【0017】
“ハロゲン”(またはハロ)は、好ましくはクロロまたはフルオロを表すが、ブロモまたはヨードであってもよい。
【0018】
“キナーゼ・パネル”は、Abl(ヒト)、Abl(T315I)、JAK2、JAK3、ALK、JNK1α1、ALK4、KDR、Aurora-A、Lck、Blk、MAPK1、Bmx、MAPKAP-K2、BRK、MEK1、CaMKII(ラット)、Met、CDK1/サイクリンB、p70S6K、CHK2、PAK2、CK1、PDGFRα、CK2、PDK1、c-kit、Pim-2、c-RAF、PKA(h)、CSK、PKBα、cSrc、PKCα、DYRK2、Plk3、EGFR、ROCK-I、Fes、Ron、FGFR3、Ros、Flt3、SAPK2α、Fms、SGK、Fyn、SIK、GSK3β、Syk、IGF-1R、Tie-2、IKKβ、TrKB、IR、WNK3、IRAK4、ZAP-70、ITK、AMPK(ラット)、LIMK1、Rsk2、Axl、LKB1、SAPK2β、BrSK2、Lyn(h)、SAPK3、BTK、MAPKAP-K3、SAPK4、CaMKIV、MARK1、Snk、CDK2/サイクリンA、MINK、SRPK1、CDK3/サイクリンE、MKK4(m)、TAK1、CDK5/p25、MKK6(h)、TBK1、CDK6/サイクリンD3、MLCK、TrkA、CDK7/サイクリンH/MAT1、MRCKβ、TSSK1、CHK1、MSK1、Yes、CK1d、MST2、ZIPK、c-Kit (D816V)、MuSK、DAPK2、NEK2、DDR2、NEK6、DMPK、PAK4、DRAK1、PAR-1Bα、EphA1、PDGFRβ、EphA2、Pim-1、EphA5、PKBβ、EphB2、PKCβI、EphB4、PKCδ、FGFR1、PKCη、FGFR2、PKCθ、FGFR4、PKD2、Fgr、PKG1β、Flt1、PRK2、Hck、PYK2、HIPK2、Ret、IKKα、RIPK2、IRR、ROCK-II(ヒト)、JNK2α2、Rse、JNK3、Rsk1(h)、PI3 Kγ、PI3 KδおよびPI3-Kβを含むキナーゼのリストである。本発明の化合物は、キナーゼ・パネル(野生型および/またはその変異体)に対してスクリーニングされ、当該パネルの少なくとも1種のメンバーの活性を阻害する。
【0019】
“BCR-Abl変異体”は、野生型の配列からの1個または多数のアミノ酸変化を意味する。BCR-ABLの変異は、タンパク質と阻害剤(例えばGleevecなど)の不可欠な接触点を乱すことによって、より多くの場合には、不活性な状態から活性状態、すなわちBCR-ABLとGleevecが結合できないコンホメーションへの変化を誘発することによって作用する。臨床サンプルの分析から、耐性表現型に関係して見出される変異のレパートリーは、時間の経過と共に、ゆっくりと、しかし確実に増大している。変異は、4個の主要な領域に集中して起こるようである。変異の1つのグループ(G250E、Q252R、Y253F/H、E255K/V)は、ATPのためのホスフェート結合ループ(P−ループとしても知られている)を形成するアミノ酸を含む。第2のグループ(V289A、F311L、T315I、F317L)は、Gleevec結合部位で見出され、水素結合またはVan der Waals相互作用を介して、阻害剤と直接相互作用する。変異の第3のグループ(M351T、E355G)は、触媒ドメイン近くで集中して起こる。変異の第4のグループ(H396R/P)は、活性化ループに位置し、そのコンホメーションはキナーゼの活性化/不活性化を制御する分子スイッチである。CMLおよびALL患者で検出されるGleevec耐性に関係するBCR-ABL点変異は、M224V、L248V、G250E、G250R、Q252R、Q252H、Y253H、Y253F、E255K、E255V、D276G、T277A、V289A、F311L、T315I、T315N、F317L、M343T、M315T、E355G、F359V、F359A、V379I、F382L、L387M、L387F、H396P、H396R、A397P、S417Y、E459K、およびF486Sを含む(1文字表記によって示されるアミノ酸の位置は、GenBank配列受付番号AAB60394のものであり、ABL型1aに対応する; Martinelli et al., Haematologica/The Hematology Journal, 2005, April; 90-4)。本発明について特記しない限り、Bcr-Ablは、該酵素の野生型および変異体を言う。
【0020】
“処置する”、“処置すること”および“処置”は、疾患および/またはそれに付随する症候を緩和または寛解する方法を言う。
【0021】
好ましい態様の記載
c-kit遺伝子は、受容体チロシンキナーゼをコードし、該c-kit受容体のリガンドは、幹細胞因子(SCF)と呼ばれる。幹細胞因子は肥満細胞の主要な増殖因子である。c-kit受容体タンパク質チロシンキナーゼの活性は、正常細胞を制御し、c-kit遺伝子産物の正常な機能的活性は、正常な造血発生の維持、メラニン形成、遺伝子原性、ならびに肥満細胞の増殖および分化に必須である。SCF結合のないc-kitキナーゼ活性の構成的活性化を引き起こす変異は、喘息から悪性のヒトの癌の範囲の種々の疾患に関与している。
【0022】
一つの態様において、式Iの化合物に関して、式Ia:
【化2】

[式中、
Xは、結合およびNHから選択され;Yは、結合およびNHから選択され;ここで、XまたはYの何れかは結合であるが両方とも結合ではなく;
【0023】
は、ハロ、メチル、メトキシ、トリフルオロメチルおよびトリフルオロメトキシから選択され;
は、ハロ、シアノ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロ置換C1−6アルキル、ハロ置換C1−6アルコキシ、C6−10アリール−C0−4アルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、−XNR、−XNROR、−XNROR、−XNRC(O)NR、−XS(O)NR、−XS(O)、−XNR、−XNROR、−XC(O)R、−XOXOR、−OX、−X、−XC(O)OR、−XORおよび−XOXORから独立して選択される1から3個の基で置換されているヘテロアリールであり;ここで、それぞれのXは、結合およびC1−4アルキレンから独立して選択され;XはC1−4アルキレンであり;それぞれのRは、水素、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C3−12シクロアルキル、C6−10アリール−C0−4アルキル、ヘテロアリール−C0−4アルキルおよびヘテロシクリルから独立して選択され;
ここで、Rのアリール、シクロアルキル、ヘテロアリールまたはヘテロシクリル置換基は、所望によりハロ、ヒドロキシ、シアノ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロ置換C1−6アルキル、ハロ置換C1−6アルコキシ、−L−OR、−L−C(O)OR、−L−C(O)NRおよび−L−Rから独立して選択される1から3個の基でさらに置換されていてもよく;ここで、Lは、結合およびC1−4アルキレンから選択され;Rは、水素、C1−6アルキルおよびヘテロシクリルから選択され;
【0024】
は、水素であり;Rは、水素、ハロ、メトキシ、アミノ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメチル、ピロリジニル、モルホリノ、2−メチル−モルホリノ、2,6−ジメチル−モルホリノ、シアノ、−NR5a5bおよびメチルから選択されるか;またはRおよびRは、RおよびRが結合している炭素原子と一体となってフェニルを形成し;ここで、R5aおよびR5bは、水素、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロ置換C1−6アルキルおよびハロ置換C1−6アルコキシから独立して選択され;
は、水素、モルホリノ、ハロ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロ置換C1−6アルキル、ハロ置換C1−6アルコキシ、−NR5a5b、−OXNR5a5bおよびヘテロシクリルから選択され;ここで、Xは、結合およびC1−4アルキレンから独立して選択され;R5aおよびR5bは、水素、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロ置換C1−6アルキルおよびハロ置換C1−6アルコキシから独立して選択される。]
の化合物である。
【0025】
別の態様において、
がメチルであり;
が、ピラゾリル、ピリジニル、インドリル、インドリン−2−イル、チエニル、チアゾリル、3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン−6−イル、フラニル、ベンゾ[b]フラニル、1,3,4−チアジアゾリル、ベンゾ[b]チオフェニル、ピロリル、1H−インダゾリル、イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル、オキサゾリル、ベンゾ[d]チアゾール−6−イル、1H−ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール−5−イル、キノリニル、1H−インドリル、3,4−ジヒドロ−2H−ピラノ[2,3−b]ピリジニル、3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン−7−イルまたは2,3−ジヒドロフロ[2,3−b]ピリジニルであり;
ここで、Rのヘテロアリールは、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、メチル、アミノ、フェニル、ヒドロキシ−エチル(メチル)アミノ、ピペリジニル、トリフルオロメチル、2−メチルアリルオキシ、シクロプロピル−メチル(プロピル)アミノ−メチル、トリフルオロメトキシ、3,4−ジヒドロイソキノリン−2(1H)−イル、アミノ−カルボニル−メチル(エチル)アミノ−メチル、ピリジニル−メチル(エチル)−アミノ−メチル、イソプロピル(エチル)−アミノ−メチル、プロピル(エチル)−アミノ−メチル、モルホリノ、ブチル(メチル)アミノ−メチル、イソブチル(メチル)アミノ−メチル、ベンジル(エチル)アミノ−メチル、ピリジニル、ピロリジニル、アゼパニル、ヒドロキシ−プロピルオキシ、エチル、メトキシ、メチル−カルボニル、エトキシ、プロピルオキシ、t−ブチル、ベンジル、プロピル、イソプロピルオキシ、イソプロピル、ジエチルアミノ−スルホニル、メチル−スルホニル、イソプロピル−スルホニル、ジエチル−アミノ−メチル、トリフルオロエトキシ、ピペリジニル、イソキノリニル、(ヒドロキシ−エチル)(メチル)アミノ、ジフルオロ−エトキシ、シクロプロピル、シクロプロピル−メトキシおよびテトラヒドロフラニル−オキシから独立して選択される1から3個の基で置換されており;
ここで、Rのアリール、シクロアルキル、ヘテロアリールまたはヘテロシクリル置換基は、所望によりハロ、メチル、ピロリジニル−メチル、トリフルオロメチル、ヒドロキシ−メチル、ヒドロキシおよびシアノから独立して選択される1から3個の基でさらに置換されていてもよい。
【0026】
別の態様において、Rは、水素およびジメチル−アミノ−プロピルオキシから選択される。
【0027】
別の態様において、
N−(3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)−4−メチルフェニル)−5−クロロ−1H−インドール−2−カルボキサミド;
N−(3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)−4−メチルフェニル)−1−エチル−3−メチル−1H−ピラゾール−5−カルボキサミド;
N−(3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)−4−メチルフェニル)−1,3−ジメチル−1H−ピラゾール−5−カルボキサミド;
N−(3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)−4−メチルフェニル)−5−(トリフルオロメチル)−2−メチルオキサゾール−4−カルボキサミド;
N−(3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)−4−メチルフェニル)−2−モルホリノピリジン−4−カルボキサミド;
N−(3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)−4−メチルフェニル)−6−メトキシピリジン−3−カルボキサミド;
N−(3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)−4−メチルフェニル)−6−メトキシピリジン−3−カルボキサミド;
N−(3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)−4−メチルフェニル)−1,5−ジメチル−1H−ピラゾール−3−カルボキサミド;
N−(3−(4−(5−メチルピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)−4−メチルフェニル)−1,5−ジメチル−1H−ピラゾール−3−カルボキサミド;
N−(3−(4−(5−メトキシピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)−4−メチルフェニル)−1,5−ジメチル−1H−ピラゾール−3−カルボキサミド;
2−(2,2−ジフルオロエトキシ)−N−(3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)−4−メチルフェニル)ピリジン−4−カルボキサミド;
6−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−N−(3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)−4−メチルフェニル)ピリジン−3−カルボキサミド;
3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)−N−(3,4−ジヒドロ−3−オキソ−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン−6−イル)−4−メチルベンズアミド;および
N−(3−(4−(5−メトキシピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)−4−メチルフェニル)−1,5−ジメチル−1H−ピラゾール−3−カルボキサミド;
から選択される化合物である。
【0028】
本発明の化合物の代表例は、下記の実施例および表Iに記載されている。
【0029】
一つの態様において、本発明は、c-kitおよびPDGFRα/βキナーゼ受容体によって調節される疾患または状態を処置する方法であって、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩、あるいはその医薬組成物を投与することを含む方法を提供する。
【0030】
本発明の化合物および組成物を用いて調節されるc-kit介在疾患または状態の例は、腫瘍性障害、アレルギー性障害、炎症性障害、自己免疫性障害、移植片対宿主病、マラリア原虫関連疾患、肥満細胞関連疾患、代謝症候群、CNS関連障害、神経変性障害、疼痛状態、薬物乱用障害、プリオン病、癌、心臓疾患、線維性疾患、特発性動脈性高血圧(IPAH)、または原発性肺高血圧(PPH)を含み、これらに限定されない。
【0031】
本発明の化合物および組成物を用いて処置され得るマラリア原虫関連疾患の例は、マラリアを含み、これに限定されない。
【0032】
本発明の化合物および組成物を用いて処置され得る肥満細胞関連疾患の例は、挫瘡およびアクネ菌、進行性骨化性線維異形成症(FOP)、化学兵器または生物兵器(例えば炭疽菌および硫黄マスタード)への曝露によって誘発される炎症および組織破壊、嚢胞性線維症;腎臓疾患、炎症性筋肉障害、HIV、II型糖尿病、脳虚血、肥満細胞症、薬物依存および退薬症候、CNS障害、脱毛の予防および最少化、細菌感染、間質性膀胱炎、炎症性腸疾患、腫瘍血管新生、自己免疫疾患、炎症性疾患、多発性硬化症(MS)、アレルギー性障害(喘息を含む)、過敏性腸症候群(IBS)、鼻ポリープ、および骨量減少を含み、これらに限定されない。
【0033】
本発明の化合物および組成物を用いて処置され得る腫瘍性障害の例は、肥満細胞症、胃腸間質性腫瘍、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、急性骨髄球性白血病、急性リンパ性白血病、骨髄異形成症候群、慢性骨髄性白血病、結腸直腸癌、胃癌、精巣癌、神経膠芽腫、または星状細胞腫を含み、これらに限定されない。
【0034】
本発明の化合物および組成物を用いて処置され得るアレルギー性障害の例は、喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性副鼻腔炎、アナフィラキシー症候群、蕁麻疹、血管浮腫、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、結節性紅斑、多形性紅斑(erythema multifonne)、皮膚壊死性細静脈炎、昆虫刺傷皮膚炎症、または吸血性寄生虫侵入を含み、これらに限定されない。
【0035】
本発明の化合物および組成物を用いて処置され得る炎症性障害の例は、関節リウマチ、結膜炎、リウマチ性脊椎炎、骨関節炎または痛風性関節炎を含み、これらに限定されない。
【0036】
本発明の化合物および組成物を用いて処置され得る自己免疫障害の例は、多発性硬化症、乾癬、腸炎症性疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、関節リウマチ、多発性関節炎、局所または全身性強皮症、全身性エリテマトーデス、円板状エリテマトーデス、皮膚狼瘡、皮膚筋炎、多発性筋炎、シェーグレン症候群、結節性汎動脈炎、自己免疫性腸疾患または増殖性糸球体腎炎を含み、これらに限定されない。
【0037】
本発明の化合物および組成物を用いて処置され得る移植片対宿主病の例は、臓器移植片拒絶反応、例えば腎臓移植、膵臓移植、肝臓移植、心臓移植、肺移植または骨髄移植の拒絶反応を含み、これらに限定されない。
【0038】
本発明の化合物および組成物を用いて処置され得る代謝症候群の例は、I型糖尿病、II型糖尿病または肥満を含み、これらに限定されない。
【0039】
本発明の化合物および組成物を用いて処置され得るCNS関連障害の例は、鬱病、気分変調性障害、気分循環性障害、摂食障害、過食症、月経前症候群、閉経後症候群、精神遅延(mental slowing)、集中力喪失、悲観的心配(pessimistic worry)、煽動(agitation)、自己卑下(self-deprecation)、および性欲減退、不安障害、精神障害または統合失調症を含み、これらに限定されない。
【0040】
本発明の化合物および組成物を用いて処置され得る鬱状態の例は、双極性鬱病、重度またはメランコリー型鬱病、非定型鬱病、難治性鬱病、または季節性鬱病を含み、これらに限定されない。本発明の化合物および組成物を用いて処置され得る不安障害の例は、過呼吸および不整脈に関連する不安症、恐怖症、強迫性障害、外傷後ストレス障害、急性ストレス障害および全般性不安障害を含み、これらに限定されない。本発明の化合物および組成物を用いて処置され得る精神障害の例は、精神病を含むパニック発作;妄想障害、転換性障害、恐怖症、躁病、譫妄;解離性健忘、解離性遁走および解離性自殺行為を含む解離性エピソード、自己無視、暴力または攻撃的行動、トラウマ、境界性人格障害および急性精神障害、例えば妄想型統合失調症、解体型統合失調症、緊張型統合失調症および未分化統合失調症を含む統合失調症を含み、これらに限定されない。
【0041】
本発明の化合物および組成物を用いて処置され得る神経変性障害の例は、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、プリオン病、運動神経疾患(MND)、または筋萎縮性側索硬化症(ALS)を含み、これらに限定されない。
【0042】
本発明の化合物および組成物を用いて処置され得る疼痛状態の例は、急性疼痛、術後疼痛、慢性疼痛、侵害受容性疼痛、癌性疼痛、神経因性疼痛または心因性疼痛症候群を含み、これらに限定されない。
【0043】
本発明の化合物および組成物を用いて処置され得る薬物使用障害の例は、薬物中毒、薬物乱用、薬物嗜癖、薬物依存、退薬症状または過剰投与を含み、これらに限定されない。
【0044】
本発明の化合物および組成物を用いて処置され得る癌の例は、黒色腫、胃腸間質性腫瘍(GIST)、小細胞肺癌、結腸直腸癌または他の固形腫瘍を含み、これらに限定されない。
【0045】
本発明の化合物および組成物を用いて処置され得る線維性疾患の例は、C型肝炎(HCV)、肝線維症、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝硬変、肺線維症、心臓線維症または骨髄線維症を含み、これらに限定されない。
【0046】
別の態様において、本発明は、c-kitキナーゼ受容体によって調節される疾患または状態を処置する方法であって、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩、またはそれらの医薬組成物を投与することを含む方法を提供する。
【0047】
薬理および有用性
本発明の化合物は、キナーゼの活性を調節し、それ自体、キナーゼが疾患の病状および/または症候に寄与する疾患または障害の処置に有用である。本明細書に記載された化合物および組成物によって阻害される、および本明細書に記載された方法が有用であるキナーゼの例は、c-kit、Abl、Lyn、MAPK14(p38δ)、PDGFRα、PDGFRβ、ARG、BCR-Abl、BRK、EphB、Fms、Fyn、KDR、LCK、b-Raf、c-Raf、SAPK2、Src、Tie2およびTrkBキナーゼを含み、これらに限定されない。
【0048】
マラリアは、Plasmodium属の寄生性原虫によって引き起こされる。Plasmodium属の4種:Plasmodium falciparum;Plasmodium vivax;Plasmodium ovale;およびPlasmodium malariaは、種々の形態の疾患を生じさせ得る。P. falciparumは、最も流行しており危険な種であって、処置しなければ致死性の脳性マラリアを引き起こし得る。タンパク質チロシンキナーゼ活性は、P. falciparum寄生虫成熟期の全ての段階に寄与し、そして本発明のキナーゼ阻害剤は、マラリア原虫関連疾患を処置するために用いられ得る。本発明のチロシンキナーゼ阻害剤、特にc-kit阻害剤は、Plasmodium falciparumの成長阻害による、マラリア原虫関連疾患を処置するための経路であり得る。下記のin vitroアッセイは、種々のマラリア寄生種に対する、本発明の化合物の活性を決定するための手段として用いられる。
【0049】
肥満細胞(MC)は、種々のメディエーターを産生する造血幹細胞の特定のサブセットから誘導される組織要素であり、そのメディエーターの大部分が強い炎症促進活性を有する。MCは、身体のほぼ全ての部位に分布しているため、活性化された要素によるメディエーターの過剰分泌は、多臓器不全を引き起こし得る。従って、肥満細胞は、多くの疾患に関与する中心的な役割を有する。本発明は、肥満細胞関連疾患を処置する方法であって、肥満細胞を減少させ得る化合物または肥満細胞の脱顆粒を阻害する化合物を、当該処置が必要なヒトに投与することを含む方法に関する。該化合物は、c-kit阻害剤から、より特定的には非毒性の選択的な強力なc-kit阻害剤から選択され得る。好ましくは、当該阻害剤は、IL-3存在下で培養されたIL-3依存性細胞死を促進できない。
【0050】
肥満細胞関連疾患は、次に示すものを含み、これらに限定されない:挫瘡およびアクネ菌(挫瘡は、アクネ菌によって誘発されるものを含む、全ての形態の慢性皮膚炎症を含む);進行性骨化性線維異形成症(FOP)として知られる、非常にまれな無能化遺伝性結合組織障害;化学兵器または生物兵器(例えば炭疽菌、硫黄マスタードなど)への曝露によって誘発される炎症および組織破壊の有害な効果;嚢胞性線維症(肺、消化器系および生殖器系遺伝性疾患);腎臓疾患、例えば急性腎炎症候群、糸球体腎炎、腎アミロイドーシス、間質性腎線維症(種々の腎症における末期腎疾患を導く最終的な一般的経路);筋炎および筋ジストロフィーを含む炎症性筋肉障害;HIV (例えばHIV感染した肥満細胞の減少は、HIV感染および関連疾患を処置するための新しい経路となり得る);II型糖尿病、肥満および関連障害の処置(肥満細胞は、高血糖、高コレステロール血症、高血圧、内皮細胞機能不全、インシュリン抵抗性、および血管リモデリングを含む、アテローム性動脈硬化症の進行に寄与する幾つかのプロセスを制御する);脳虚血;肥満細胞症(主に皮膚および骨髄、さらに脾臓、肝臓、リンパ節および消化器中の異なる組織における肥満細胞の異常な集積によって特徴付けられる非常に異質な障害のグループ);薬物依存および退薬症状(特に薬物中毒、薬物乱用、薬物嗜癖、薬物依存、退薬症状および過剰投与);CNS障害(特に鬱病、統合失調症、不安症、偏頭痛、記憶喪失、疼痛および神経変性疾患);毛髪成長の促進(脱毛の予防および最少化を含む);細菌感染(FimH発現細菌によって引き起こされる感染);間質性膀胱炎(特に膀胱の内側の細胞の間の間隙で組織損傷をもたらす膀胱の壁の慢性炎症);炎症性腸疾患(一般的に4種の腸疾患、すなわちクローン病、潰瘍性大腸炎、不定形大腸炎および感染性大腸炎に適用される);腫瘍血管新生;自己免疫疾患(特に多発性硬化症、潰瘍性大腸炎、クローン病、関節リウマチ、多発性関節炎、強皮症、エリテマトーデス、皮膚筋炎、天疱瘡、多発性筋炎、血管炎および移植片対宿主病);炎症性疾患、例えば関節リウマチ(RA);多発性硬化症(MS);アレルギー性障害(特にアレルギー性鼻炎、アレルギー性副鼻腔炎、アナフィラキシー症候群、蕁麻疹、血管浮腫、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、結節性紅斑、多形性紅斑、皮膚壊死性細静脈炎および昆虫刺傷皮膚炎症、気管支性喘息);および骨量減少。
【0051】
アベルソン・チロシンキナーゼ(すなわちAbl、c-Abl)は、細胞周期の制御、遺伝毒性ストレスに対する細胞応答、およびインテグリン・シグナル伝達を介した細胞環境についての情報伝達に関与する。全体的にみて、Ablタンパク質は、種々の細胞外および細胞内供給源からのシグナルを統合する、および細胞周期およびアポトーシスに関する決定に影響を与える細胞モジュールとしての複雑な役割を果たすようである。アベルソン・チロシンキナーゼは、サブタイプ誘導体、例えば脱制御されたチロシンキナーゼ活性を有するキメラ融合物(腫瘍性タンパク質)BCR-Ablまたはv-Ablを含む。BCR-Ablは、慢性骨髄性白血病(CML)の95%、および急性リンパ性白血病の10%の病因として重要である。STI 571 (Gleevec)は、発癌性BCR-Ablチロシンキナーゼの阻害剤であり、慢性骨髄性白血病(CML)の処置に用いられる。しかし、CMLの急性転化の患者には、BCR-Ablキナーゼの変異により、STI-571抵抗性であるものがいる。現在、22を越える変異が報告されており、その最も一般的なものは、G250E、E255V、T315I、F317LおよびM351Tである。
【0052】
幾つかの本発明の化合物は、ablキナーゼ、特にv-ablキナーゼを阻害する。幾つかの本発明の化合物はまた、野生型BCR-AblキナーゼおよびBCR-Ablキナーゼ変異体を阻害し、そのために、Bcr-abl-ポジティブの癌および腫瘍疾患、例えば白血病(例えば慢性骨髄性白血病および急性リンパ芽球性白血病(特にアポトーシス・メカニズムの作用が見られる場合))の処置に適切である。幾つかの本発明の化合物はまた、白血病幹細胞のサブグループに対して有効であり、また、該細胞の除去(例えば骨髄除去)後にこれらの細胞をin vitroで精製し、癌細胞を除去した後、細胞を再移植する(例えば精製骨髄細胞の再移植)のに有用である可能性がある。
【0053】
Ras-Raf-MEK-ERKシグナル伝達経路は、増殖シグナルに対する細胞応答を仲介する。Rasは、ヒトの癌の約15%において発癌形態に変異している。Rafファミリーは、セリン/トレオニン・タンパク質キナーゼに属し、それは3個のメンバー、すなわちA-Raf、B-Rafおよびc-Raf (またはRaf-1)を含む。医薬標的であるRafへの焦点は、Rasの下流エフェクターとしてのRafの関係に絞られている。しかし、B-Rafは、活性化Ras対立遺伝子を必要とせずに、ある種の腫瘍の形成に顕著な役割を有し得る(Nature 417, 949 - 954 (01 Jul 2002)。特に、B-Raf変異は、大部分の悪性黒色腫で検出されている。
【0054】
現存する黒色腫の医学的処置は、特に後期黒色腫でそれらの効果が限定されている。本発明の化合物はまた、b-Rafキナーゼが関与する細胞過程を阻害し、ヒトの癌、例えば黒色腫の処置における新規の治療の機会を提供する。
【0055】
本発明の化合物はまた、c-Rafキナーゼが関与する細胞過程を阻害する。c-Rafは、ras発癌遺伝子によって活性化され、これは多くのヒトの癌において変異している。従って、c-Rafのキナーゼ活性の阻害は、ras介在腫瘍増殖を妨げる方法を提供し得る [Campbell, S. L., Oncogene, 17, 1395 (1998)]。
【0056】
PDGF(血小板由来増殖因子)は、一般的に存在する増殖因子であり、これは、正常な増殖、ならびに例えば発癌および血管の平滑筋細胞の疾患(例えばアテローム性動脈硬化症および血栓症)で見られる病理学的細胞増殖の両方で重要な役割を果たす。本発明の化合物は、PDGF受容体(PDGFR)活性を阻害でき、従って、腫瘍疾患、例えば神経膠腫、肉腫、前立腺癌、ならびに結腸、乳房および卵巣の腫瘍;過好酸球増加症;線維症;肺高血圧;および心血管疾患の処置に適切である。
【0057】
本発明の化合物は、例えば小細胞肺癌における腫瘍阻害物質としてのみではなく、非悪性増殖性障害、例えばアテローム性動脈硬化症、血栓症、乾癬、強皮症および線維症を処置する薬物としても用いられ得る。本発明の化合物はまた、幹細胞の保護のために、例えば化学療法薬(例えば5−フルオロウラシル)の血液毒性効果と戦う薬物としても、また喘息においても用いられ得る。本発明の化合物は、特に、PDGF受容体キナーゼの阻害に応答する疾患の処置に使用され得る。
【0058】
本発明の化合物は、移植、例えば同種移植の結果として生じる障害、特に組織拒絶反応、例えば特に閉塞性細気管支炎(OB)、すなわち同種肺移植の慢性拒絶反応の処置に有用な効果を示す。OBを有しない患者と比較して、OBを有する患者は、しばしば、気管支肺胞洗浄液中のPDGF濃度の上昇を示す。
【0059】
本発明の化合物はまた、血管平滑筋細胞遊走および増殖と関連する疾患(PDGFおよびPDGF-Rがしばしば役割を果たしているもの)、例えば再狭窄およびアテローム性動脈硬化症に有効である。in vitro および in vivo での血管平滑筋細胞の増殖または遊走におけるこれらの効果およびその結果は、本発明の化合物の投与によって、および in vivo での物理的外傷後の血管内膜肥厚化に対するその効果を調べることによって証明され得る。
【0060】
ニューロトロフィン受容体のtrkファミリー(trkA、trkB、trkC)は、神経組織および非神経組織の生存、増殖および分化を促進する。TrkBタンパク質は、小腸および結腸の神経内分泌型細胞中で、膵臓のアルファ細胞中で、リンパ節および脾臓の単球およびマクロファージ中で、および表皮の顆粒層中で発現される(Shibayama and Koizumi, 1996)。TrkBタンパク質の発現は、ウィルムス腫瘍および神経芽細胞腫の好ましくない進行と関連している。TkrBは、さらに、癌性前立腺細胞で発現されるが正常細胞では発現されない。trk受容体の下流のシグナル伝達経路は、Shc、活性化Ras、ERK-1およびERK-2遺伝子を介したMAPK活性化カスケードおよびPLC-γ伝達経路に関与している(Sugimoto et al., 2001)。
【0061】
キナーゼc-Srcは、多くの受容体の発癌シグナルを伝達する。例えば、腫瘍におけるEGFRまたはHER2/neuの過剰発現は、c-srcの構成的な活性化をもたらす。これは悪性細胞に特徴的であって、正常細胞ではみられない。他方、c-src発現欠損マウスは、大理石骨病の表現型を示し、このことは、破骨細胞機能におけるc-srcの重要な関与、および関連障害への関わりの可能性を示す。
【0062】
TecファミリーキナーゼであるBmxは、非受容体タンパク質チロシンキナーゼであり、乳房上皮癌細胞の増殖を制御する。
【0063】
線維芽細胞増殖因子受容体3は、骨成長に対する負の調節効果および軟骨細胞増殖の阻害を行うことが示された。致死性骨異形成症は、線維芽細胞増殖因子受容体3の異なる変異によって引き起こされ、1つの変異TDII FGFR3は、構成的チロシンキナーゼ活性を有し、これは転写因子Stat1を活性化して、細胞周期阻害因子の発現、増殖停止および異常骨成長をもたらす(Su et al., Nature, 1997, 386, 288-292)。FGFR3はまた、しばしば、多発性骨髄腫型癌において発現される。FGFR3活性の阻害剤は、関節リウマチ(RA)、コラーゲンII型関節炎、多発性硬化症(MS)、全身性エリテマトーデス(SLE)、乾癬、若年発症糖尿病、シェーグレン病、甲状腺疾患、サルコイドーシス、自己免疫性ブドウ膜炎、炎症性腸疾患(クローン病および潰瘍性大腸炎)、セリアック病および重症筋無力症を含む(これらに制限されない)、T細胞介在炎症性または自己免疫性疾患の処置に有用である。
【0064】
血清およびグルココルチコイド制御キナーゼ(SGK)の活性は、混乱したイオンチャネル活性、特に混乱したナトリウムおよび/またはカリウムチャネル活性と相関しており、本発明の化合物は、高血圧を処置するのに有用であり得る。
【0065】
Lin et al (1997) J. Clin. Invest. 100, 8: 2072-2078 および P. Lin (1998) PNAS 95, 8829-8834 は、乳癌および黒色腫の異種移植片モデルにおいて、腫瘍増殖および血管新生の阻害、および、アデノウイルス感染時またはTie-2(Tek)の細胞外ドメイン注射時の肺転移の減少を示している。Tie2阻害剤は、血管新生が不適切に起こる状況(すなわち、糖尿病性網膜症、慢性炎症、乾癬、カポジ肉腫、慢性血管新生(黄斑変性症、関節リウマチ、小児血管腫および癌による))において用いられ得る。
【0066】
Lckは、T細胞シグナル伝達に役割を果たす。Lck遺伝子欠損マウスは、胸腺細胞を発育させる能力が低い。T細胞シグナル伝達の正のアクチベーターとしてのLckの機能は、Lck阻害剤が自己免疫性疾患(例えば関節リウマチ)を処置するのに有用であることを示唆している。
【0067】
他のMAPK類と同様に、JNKは、癌、トロンビン誘発血小板凝集、免疫不全障害、自己免疫性疾患、細胞死、アレルギー、骨粗鬆症および心臓疾患に対する細胞応答を仲介するのに役割を有することが示唆されている。JNK経路の活性化に関する治療標的は、慢性骨髄性白血病(CML)、関節リウマチ、喘息、骨関節炎、虚血、癌および神経変性疾患を含む。肝臓疾患または肝臓虚血エピソードと関連するJNK活性化の重要性の結果として、本発明の化合物はまた、種々の肝臓障害を処置するのに有用であり得る。JNKが種々の形態の心臓ストレスに対する肥大応答を仲介することを示していることから、心血管疾患、例えば心筋梗塞または鬱血性心不全におけるJNKの役割もまた報告されている。JNKカスケードはまた、IL-2プロモーターの活性化を含むT細胞活性化に役割を果たすことが実証されている。従って、JNKの阻害剤は、病理学的免疫応答を変化させる点で治療的価値があり得る。種々の癌でのJNK活性化の役割もまた確立されており、癌におけるJNK阻害剤の使用の可能性を示唆している。例えば構造的に活性化されたJNKは、腫瘍形成を仲介するHTLV-1と関連している[Oncogene 13:135-42 (1996)]。JNKは、カポジ肉腫(KS)に役割を果たす。KS増殖に関係する他のサイトカイン、例えば血管内皮増殖因子(VEGF)、IL-6、およびTNFαの他の増殖効果もまた、JNKが仲介し得る。さらに、p210 BCR-ABL形質転換細胞中のc-jun遺伝子の制御は、JNKの活性と対応しており、慢性骨髄性白血病(CML)の処置におけるJNK阻害剤の役割を示唆している[Blood 92:2450-60 (1998)]。
【0068】
ある異常増殖状態は、raf発現と関連すると考えられており、従って、raf発現の阻害に応答性であると考えられている。異常に高いレベルのrafタンパク質発現はまた、形質転換および異常細胞増殖に関係している。これらの異常増殖状態もまた、raf発現の阻害に応答性であると考えられている。例えば、全肺癌細胞株の60%で異常に高レベルのc-raf mRNAとタンパク質が発現していると報告されているため、c-rafタンパク質発現は、異常細胞増殖に役割を果たすと考えられている。異常増殖状態のさらなる例は、過剰増殖障害、例えば癌、腫瘍、過形成、肺線維症、血管新生、乾癬、アテローム動脈硬化症、血管中の平滑筋細胞増殖、例えば狭窄または血管形成術後の再狭窄である。rafがその一部である細胞シグナル伝達経路はまた、T細胞増殖(T細胞活性化および増殖)によって特徴付けられる炎症性障害、例えば組織移植拒絶反応、内毒素ショック、および糸球体腎炎などに関係している。
【0069】
ストレス活性化タンパク質キナーゼ(SAPK)は、c-jun転写因子の活性化およびc-junによって制御される遺伝子の発現をもたらすシグナル伝達経路の最後から2番目の段階を代表するタンパク質キナーゼのファミリーである。特に、c-junは、遺伝子毒性傷害により損傷したDNAの修復に関与するタンパク質をコードする遺伝子の転写に関与している。従って、細胞中のSAPK活性を阻害する薬物はDNAの修復を妨げ、かつ、DNA損傷を誘発するかまたはDNA合成を阻害して細胞のアポトーシスを誘発する薬物または細胞増殖を阻害する薬物に対して細胞を感受性とする。
【0070】
マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)は、転写因子、翻訳因子および種々の細胞外シグナルに応答する他の標的分子を活性化する保存されたシグナル伝達経路のメンバーである。MAPKは、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ・キナーゼ(MKK)による、配列Thr-X-Tyrを有する二重リン酸化モチーフでのリン酸化によって活性化される。より高等な真核生物では、MAPKシグナル伝達の生理学的役割は、細胞の事象、例えば増殖、発癌、発育および分化と相関している。従って、これらの経路を介して(特にMKK4およびMKK6を介して)、シグナル伝達を制御する能力は、MAPKシグナル伝達と関連するヒトの疾患、例えば炎症性疾患、自己免疫性疾患および癌のための処置および予防的治療の発展をもたらし得る。
【0071】
ヒトのリボソームS6タンパク質キナーゼのファミリーは、少なくとも8個のメンバー(RSK1、RSK2、RSK3、RSK4、MSK1、MSK2、p70S6Kおよびp70S6 Kb)からなる。リボソームタンパク質S6タンパク質キナーゼは、重要な多面発現機能を果たし、とりわけタンパク質生合成の際のmRNA翻訳の制御において重要な役割を有する (Eur. J. Biochem 2000 November; 267(21): 6321-30, Exp Cell Res. Nov. 25, 1999; 253 (1):100-9, Mol Cell Endocrinol. May 25, 1999;151(1-2):65-77)。S6リボソームタンパク質のp70S6によるリン酸化はまた、細胞運動性(Immunol. Cell Biol. 2000 August;78(4):447-51)および細胞増殖(Prog. Nucleic Acid Res. Mol. Biol., 2000;65:101-27)の制御に関与しており、従って、腫瘍転移、免疫応答、組織修復ならびに他の疾病状態に重要であり得る。
【0072】
SAPK(“jun N末端キナーゼ”または“JNK”とも呼ばれる)は、c-jun転写因子の活性化およびc-junによって制御される遺伝子の発現をもたらすシグナル伝達経路の最後から二番目の段階を代表するタンパク質キナーゼのファミリーである。特に、c-junは、遺伝子毒性傷害によって損傷したDNAの修復に関与しているタンパク質をコードする遺伝子の転写に関与している。細胞中のSAPK活性を阻害する薬物は、DNA修復を妨げ、DNA損傷を誘発することによって作用する癌治療モダリティーに対して細胞を感受性とする。
【0073】
BTKは、自己免疫性および/または炎症性疾患、例えば全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ、多発性脈管炎(multiple vasculitides)、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、重症筋無力症、および喘息に役割を果たす。B細胞活性化におけるBTKの役割のために、BTK阻害剤は、B細胞介在病理学的活性、例えば自己抗体産生の阻害剤として有用であり、そしてB細胞リンパ腫および白血病の処置に有用である。
【0074】
CHK2は、セリン/トレオニン・タンパク質キナーゼのチェックポイント・キナーゼ・ファミリーのメンバーであり、DNA損傷、例えば環境変異誘発物質および内在性活性酸素種によって引き起こされる損傷の監視に用いられるメカニズムに関与している。結果として、それは、腫瘍抑制物質および癌治療の標的に関与する。
【0075】
CSKは、癌細胞、特に結腸癌の転移の可能性に影響を与える。
【0076】
Fesは、種々のサイトカインシグナル伝達経路ならびに骨髄細胞の分化に関与している非受容体タンパク質チロシンキナーゼである。Fesはまた、顆粒球分化機構の重要な要素である。
【0077】
Flt3受容体チロシンキナーゼ活性は、白血病および骨髄異形成症候群に関与している。AMLの約25%において、白血病細胞は、細胞表面に構成的に活性な形態の自己リン酸化(p)FLT3チロシンキナーゼを発現する。p-FLT3の活性は、白血球細胞に増殖および生存率の改善をもたらす。白血病細胞がp-FLT3キナーゼ活性を発現している急性白血病を有する患者は、全体的臨床成績が悪い。p-FLT3キナーゼ活性の阻害は、白血病細胞のアポトーシス(プログラムされた細胞死)を誘発する。
【0078】
IKKαおよびIKKβ(1および2)の阻害剤は、関節リウマチ、移植拒絶反応、炎症性腸疾患、骨関節炎、喘息、慢性閉塞性肺疾患、アテローム性動脈硬化症、乾癬、多発性硬化症、卒中、全身性エリテマトーデス、アルツハイマー病、脳虚血、外傷性脳傷害、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、くも膜下出血、または脳および中枢神経系における炎症性メディエーターの過剰産生と関連する他の疾患または障害を含む疾患のための治療薬である。
【0079】
Metは、主要なヒトの癌のほとんどのタイプと関連しており、その発現は、しばしば悪い予後および転移と相関している。Metの阻害剤は、癌、例えば肺癌、NSCLC(非小細胞肺癌)、骨の癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頚部癌、皮膚または眼内黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門部の癌、胃癌、結腸癌、乳癌、婦人科腫瘍(例えば子宮肉腫、卵管の癌腫、子宮内膜の癌腫、子宮頚の癌腫、膣の癌腫または外陰部の癌腫)、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌系の癌(例えば甲状腺、副甲状腺または副腎の癌)、柔組織の肉腫、尿道の癌、陰茎の癌、前立腺癌、慢性または急性白血病、小児固形腫瘍、リンパ球性リンパ腫、膀胱癌、腎臓または尿管の癌(例えば腎臓細胞癌腫、腎盂の癌)、小児悪性腫瘍、中枢神経系の腫瘍(例えば原発性CNSリンパ腫、脊髄の軸の腫瘍、脳幹神経膠腫または下垂体腺腫)、血液の癌、例えば急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病など、バレット食道(前癌性症候群)、腫瘍性皮膚疾患、乾癬、菌状息肉腫および良性前立腺肥大症、糖尿病関連疾患、例えば糖尿病性網膜症、網膜虚血、および網膜血管新生、肝硬変、心血管疾患、例えばアテローム性動脈硬化症、免疫学的疾患、例えば自己免疫性疾患および腎臓疾患を含む疾患のための治療薬である。好ましくは、該疾患は、癌、例えば急性骨髄性白血病および結腸直腸癌である。
【0080】
Nima関連キナーゼ2(Nek2)は、中心体に局在化する、有糸分裂開始時に最大活性を有する細胞周期制御タンパク質キナーゼである。機能の研究により、Nek2が、中心体分離および紡錘体形成の制御に関連付けられた。Nek2タンパク質は、子宮頚癌、卵巣癌、前立腺癌、特に乳癌を含む様々なヒトの腫瘍に由来する細胞株において、2〜5倍上昇している。
【0081】
p70S6K介在疾患または状態は、増殖性障害、例えば癌および結節性硬化症を含み、これらに限定されない。
【0082】
前記によって、本発明は、さらに、処置の必要な対象において、上記の疾患または障害の何れかを予防するまたは処置する方法であって、該対象に、治療有効量(以下の“投与および医薬組成物”を参照のこと)の式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む方法を提供する。上記の使用の何れにおいても、必要な投与量は、投与方法、処置されるべき特定の状態および望ましい効果に依存して変化する。
【0083】
投与および医薬組成物
一般的に、本発明の化合物は、当業界で既知の何れかの有用かつ許容される方法を介して、単独でまたは1種以上の治療薬と組み合わせて、治療有効量で投与される。治療有効量は、疾患の重症度、対象の年齢および相対的健康状態、用いられる化合物の力価、および他の因子に依存して、広く変化し得る。一般的に、全身に、約0.03から2.5mg/kg体重の1日用量で、満足のいく結果が得られることが示されている。より大きな哺乳動物(例えばヒト)において適応される1日用量は、約0.5mgから約100mgの範囲であり、便宜的には、例えば1日4回までの分割投与で、または徐放形で投与される。経口投与のための適切な単位投与形は、約1から50mgの活性成分を含む。
【0084】
本発明の化合物は、何れかの慣用の経路で、特に経腸で、例えば、錠剤またはカプセル剤などの形態で、経口で;または、例えば注射用溶液または懸濁液の形態で、非経腸で;例えばローション、ゲル、軟膏またはクリームの形態で、局所で;または鼻腔内で;吸入剤または坐剤の形態で、医薬組成物として投与され得る。少なくとも1種の薬学的に許容される担体または希釈剤と組み合わせて、遊離形または薬学的に許容される塩形の本発明の化合物を含む医薬組成物は、慣用の方法で、混合、顆粒化、またはコーティング法によって製造され得る。例えば、経口の組成物は、a)希釈剤、例えばラクトース、デキストロース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロースおよび/またはグリシン;b)滑沢剤、例えばシリカ、タルク、ステアリン酸、そのマグネシウムもしくはカルシウム塩、および/またはポリエチレングリコール;錠剤のためには、さらにc)結合剤、例えばケイ酸マグネシウムアルミニウム、澱粉ペースト、ゼラチン、トラガカント・ゴム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース ナトリウム、および/またはポリビニルピロリドン;所望によりd)崩壊剤、例えば澱粉、寒天、アルギン酸もしくはそのナトリウム塩、または発泡性混合物;および/またはe)吸収剤、着色料、風味剤および甘味料と共に、活性成分を含む錠剤またはゼラチンカプセルであり得る。注射用組成物は、水性等張性溶液または懸濁液であり得る。そして坐剤は、脂肪性エマルジョンまたは懸濁液から製造され得る。該組成物は、滅菌されてもよく、そして/またはアジュバント、例えば保存料、安定剤、湿化剤、または乳化剤、溶解促進剤、浸透圧調節のための塩および/または緩衝剤を含んでもよい。さらに、それらはまた、他の治療的に有益な物質を含んでもよい。経皮適用に適切な製剤は、担体と共に有効量の本発明の化合物を含む。担体は、宿主の皮膚を通過するのを助けるための吸収可能な薬理学的に許容される溶媒を含み得る。例えば、経皮デバイスは、裏打ち材(backing member)、所望により担体と共に本化合物を含むリザーバー、所望により制御されたおよび予め決められた速度で長時間に亘って本化合物を宿主の皮膚に送達する速度制御障壁、ならびに皮膚へデバイスを固定するための手段を含む包帯の形態である。マトリックス経皮用製剤もまた用いられ得る。例えば皮膚および眼への局所適用に適切な製剤は、好ましくは当業界で周知の水溶液、軟膏、クリームまたはゲルである。これらは、溶解剤、安定剤、張性増加剤(tonicity enhancing agent)、緩衝剤および保存料を含んでもよい。
【0085】
本発明の化合物は、1種以上の治療薬(医薬組成物)と組み合わせて、治療有効量で投与され得る。例えば、他の喘息治療薬、例えばステロイドおよびロイコトリエン・アンタゴニストと相乗効果が起こり得る。
【0086】
例えば、他の免疫調節物質または抗炎症物質と、例えばシクロスポリン、ラパマイシンまたはアスコマイシン、またはその免疫抑制アナログ(例えばシクロスポリンA(CsA)、シクロスポリンG(CsG)、FK-506、ラパマイシン)、または同等な化合物、コルチコステロイド、シクロホスファミド、アザチオプリン、メトトレキサート、ブレキナール(brequinar)、レフルノミド、ミゾリビン、ミコフェノール酸、ミコフェノール酸モフェチル、15−デオキシスパガリン(15-deoxyspergualin)、免疫抑制抗体、特に白血球受容体のためのモノクローナル抗体、例えばMHC、CD2、CD3、CD4、CD7、CD25、CD28、B7、CD45、CD58またはそのリガンド、または他の免疫調節化合物、例えばCTLA41gと組み合わせて用いた場合に、相乗効果が起こり得る。本発明の化合物が他の治療と併用投与される場合、併用投与される化合物の投与量は、用いられる併用薬のタイプ、用いられる特定の薬物、処置される状態などに依存して、当然に変化する。
【0087】
本発明はまた、薬学的組み合わせのための、例えば、a)本明細書で開示された遊離形または薬学的に許容される塩形の本発明の化合物である第1薬物、およびb)少なくとも1種の併用薬を含むキットを提供する。該キットは、それの投与のための指示書を含み得る。
【0088】
用語“併用投与”または“組み合わせ投与”などは、本明細書で用いるとき、一人の患者への選択された複数の治療薬の投与を含むことを意味し、該薬物が必ずしも同じ投与経路によってまたは同時に投与されるのではない処置レジメを含むことを意図している。
【0089】
用語“薬学的組み合わせ”は、本明細書で用いるとき、1種以上の活性成分の混合または組み合わせにより得られる製剤を意味し、複数活性成分の固定化されたおよび固定化されていない組み合わせの両方を含む。用語“固定化された組み合わせ”は、複数活性成分、例えば式Iの化合物および併用薬が、両方とも1人の患者に同時に1個のものまたは投与形で投与されることを意味する。用語“固定化されていない組み合わせ”は、複数活性成分、例えば式Iの化合物および併用薬が、同時に(simultaneously)、一緒に(concurrently)、または特に時間の制限なく連続的に、別個のものとして両方とも1人の患者に投与される。ここで、このような投与は、患者の体内で治療有効量の2つの化合物を提供する。後者はまた、カクテル療法、例えば3種以上の活性成分の投与に適用される。
【0090】
本発明の化合物の製造方法
本発明はまた、本発明の化合物の製造方法を含む。記載された反応において、最終生成物中で反応性官能基(例えばヒドロキシ、アミノ、イミノ、チオまたはカルボキシ基)が望ましいとき、望ましくない反応への関与を避けるために、これらを保護する必要があり得る。慣用の保護基は、標準的な実施に従って用いられ得る。例えば、T.W. Greene and P. G. M. Wuts in “Protective Groups in Organic Chemistry”, John Wiley and Sons, 1991を参照のこと。
【0091】
Yが結合であり、XがNHである式Iの化合物は、下記の反応スキームIの通りに進めることによって製造され得る:
反応スキームI
【化3】

ここで、R、R、RおよびRは、本発明の概要に記載された通りである。
【0092】
式Iの化合物は、式3の化合物と、適切な溶媒(例えばDMFなど)、適切なカップリング剤(例えばHATUなど)および適切な塩基(例えばDIEAなど)の存在下で反応させることによって製造され得る。該反応は、約0℃から約60℃の範囲の温度で行われ、また完了には24時間以下かかる。
【0093】
Xが結合であり、YがNHである式Iの化合物は、下記の反応スキームIIの通りに進めることによって製造され得る:
反応スキームII
【化4】

ここで、R、R、RおよびRは、本発明の概要に記載された通りである。
【0094】
式Iの化合物は、式4の化合物を、式5の化合物と、適切な溶媒(例えばDMFなど)、適切なカップリング剤(例えばHATUなど)および適切な塩基(例えばDIEAなど)の存在下で反応させることによって製造され得る。該反応は、約0℃から約60℃の温度範囲で行われ、完了には24時間以下かかる。
【0095】
式Iの化合物の合成の詳細な例は、下記の実施例で見出され得る。
【0096】
本発明の化合物の付加的製造方法
本発明の化合物は、遊離塩基形の本化合物を薬学的に許容される無機または有機酸と反応させることによって、薬学的に許容される酸付加塩として製造され得る。あるいは、本発明の化合物の薬学的に許容される塩基付加塩は、遊離酸形の本化合物を薬学的に許容される無機または有機塩基と反応させることによって製造され得る。あるいは、塩形の本発明の化合物は、出発物質または中間体の塩を用いて製造され得る。
【0097】
遊離酸形または遊離塩基形の本発明の化合物は、それぞれ対応する塩基付加塩または酸付加塩から製造され得る。例えば、本発明の化合物の酸付加塩は、適当な塩基(例えば水酸化アンモニウム溶液、水酸化ナトリウムなど)で処理することによって、対応する遊離塩基に変換され得る。本発明の化合物の塩基付加塩は、適当な酸(例えば塩酸など)で処理することによって、対応する遊離酸に変換され得る。
【0098】
非酸化形の本発明の化合物は、本発明の化合物のN−オキシドから、還元剤(例えば硫黄、二酸化硫黄、トリフェニルホスフィン、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、三塩化リン、三臭化リンなど)で、適当な不活性有機溶媒(例えばアセトニトリル、エタノール、水性ジオキサンなど)中で、0から80℃で処理することによって製造され得る。
【0099】
本発明の化合物のプロドラッグ誘導体は、当業者に既知の方法によって製造され得る(例えば、さらなる詳細については、Saulnier et al., (1994), Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters, Vol. 4, p. 1985を参照のこと)。例えば、適切なプロドラッグは、誘導体化されていない本発明の化合物を、適当なカルバミル化剤(例えば1,1−アシルオキシアルキルカルボノクロリデート、パラ−ニトロフェニル カーボネートなど)と反応させることによって製造され得る。
【0100】
本発明の化合物の保護誘導体は、当業者に既知の方法によって製造され得る。保護基の付加および除去に適応可能な技術の詳細な記載は、T. W. Greene, “Protecting Groups in Organic Chemistry”, 3rd edition, John Wiley and Sons, Inc., 1999 で見出され得る。
【0101】
本発明の化合物は、簡便には、本発明の製造の間で、溶媒和物(例えば水和物)として製造され得るか、または形成され得る。本発明の化合物の水和物は、簡便には、水性/有機性溶媒混合物(ここで、有機溶媒には、例えばジオキシン、テトラヒドロフランまたはメタノールを用いる。)から、再結晶することによって製造され得る。
【0102】
本発明の化合物は、本化合物のラセミ混合物を光学的に活性な分割剤と反応させ、1対のジアステレオアイソマー化合物を形成し、ジアステレオマーを分離し、光学的に純粋なエナンチオマーを回収することによって、個々の立体異性体として製造され得る。エナンチオマーの分離は、本発明の化合物の共有結合ジアステレオマー誘導体を用いて行うことができるが、分離可能な複合体が好ましい(例えば結晶性ジアステレオマー塩)。ジアステレオマーは、固有の物理学的性質(例えば融点、沸点、溶解度、反応性など)を有し、これらの相違点を利用することによって、容易に分離可能である。ジアステレオマーは、クロマトグラフィーによって、または好ましくは溶解度の違いに基づく分離/分割法によって、分離され得る。次いで、ラセミ化を起こさない何れかの実用的な手段によって、分割剤と共に光学的に純粋なエナンチオマーを回収する。ラセミ混合物からの化合物の立体異性体の分離に適応可能な方法のより詳細な記載は、Jean Jacques, Andre Collet, Samuel H. Wilen, “Enantiomers, Racemates and Resolutions”, John Wiley And Sons, Inc., 1981 で見出し得る。
【0103】
要約すると、式Iの化合物は、次に掲げるものを含む工程によって合成され得る:
(a) 反応スキームIおよびIIの工程;ならびに
(b) 所望により本発明の化合物を薬学的に許容される塩に変換すること;
(c) 所望により本発明の化合物の塩形を非塩形に変換すること;
(d) 所望により酸化されていない本発明の化合物を薬学的に許容されるN−オキシドに変換すること;
(e) 所望により本発明の化合物のN−オキシドをその酸化されていない形態に変換すること;
(f) 所望により本発明の化合物の個々の異性体を異性体混合物から分離すること;
(g) 所望により誘導体化されていない本発明の化合物を、薬学的に許容されるプロドラッグ誘導体に変換すること;および
(h) 所望により本発明の化合物のプロドラッグ誘導体をその誘導体化されていない形態に変換すること。
【0104】
出発物質の製造が特に記載されていない場合は、本化合物は、既知であるか、または当業者に既知の方法と類似の方法または下記の実施例に記載された方法によって製造され得る。
【0105】
上記の変換は、本発明の化合物の製造方法の単なる代表例であり、周知の他の方法も同様に用いられ得ることが、当業者に明らかであろう。
【0106】
実施例
本発明は、さらに、本発明の式Iの化合物の製造を説明する下記の実施例によって例示されるが、これに限定されない。
【0107】
中間体の製造
6−メチル−N1−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イル)ベンゼン−1,3−ジアミン(5)の合成
【化5】

【0108】
n−ブタノール(29ml)中の2−アミノ−4−ニトロトルエン()(0.033mol)に、2.1gの65%硝酸水溶液を加え、硝酸塩を形成し、続いて水(2ml)中のシアナミド(0.047mmol)と縮合させる。得られた混合物を、25時間還流する。0℃まで冷却した後、沈殿物を濾過によって集め、エタノール/ジエチルエーテル(1:1(v/v), 30ml)で洗浄し、2−メチル−5−ニトロフェニルグアニジン硝酸エステル()を得る。
【0109】
n−ブタノール(15ml)中の2−メチル−5−ニトロフェニルグアニジン()(0.0074mol)に、(0.0074mol)および水酸化ナトリウムのフレーク(0.008mol)を加える。得られた混合物を12時間還流する。0℃まで冷却した後、沈殿物を濾過によって集め、イソプロパノール(6ml)で、そしてメタノール(3ml)で洗浄し、を得る。
1H NMR (400MHz, d6-DMSO) δ 9.31 (s, 1H), 9.24 (s, 1H), 8.78 (m, 1H), 8.70 (m, 1H), 8.61 (m, 1H), 8.47 (m, 1H), 7.88 (m, 1H), 7.55 (m, 3H), 2.39 (s, 3H).
【0110】
反応剤を以下の手順によって得る。3−アセチルピリジン(2.47mol)およびN,N−ジメチルホルムアミド ジメチルアセタール(240ml)の混合物を、16時間還流する。溶媒を真空で除去し、ヘキサン(100ml)を残渣に加え、固体を結晶化させる。該固体をジクロロメタン−ヘキサンから再結晶し、3−ジメチルアミノ−1−(3−ピリジル)−2−プロペン−1−オンを得る。
1H NMR (400MHz, d-クロロホルム) δ 9.08 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 8.66 (m, 1H), 8.20 (m, 1H), 7.87 (m, 1H), 7.37 (m, 1H), 5.68 (d, J = 16.4 Hz, 1H), 3.18 (s, 3H), 2.97 (s, 3H).
【0111】
反応容器に濃塩酸(17ml)を入れ、続いて塩化錫二水和物(0.03mol)を入れる。該混合物を10分間撹拌し、次いで0〜5℃に冷却する。温度を0〜5℃に維持しながら、酢酸エチル(3ml)中の化合物(5.6mmol)の溶液をゆっくりと加える(3〜4分かけて)。該反応混合物を室温に至らしめ、1.5時間撹拌する。これに水(50ml)を加え、続いて50%水酸化ナトリウム溶液(40ml)をゆっくりと加える。得られた混合物をクロロホルム(2×25ml)で抽出する。有機層を水で徹底的に洗浄し、蒸発させる。残渣を酢酸エチル(2ml)に溶解し、0〜10℃まで冷却し、この温度で1時間維持する。得られた沈殿物を濾過によって集め、酢酸エチル(1ml)で洗浄し、1.0gのを得る。
1H NMR (400MHz, d-クロロホルム) δ 9.26 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 8.71 (m, 1H), 8.48 (d, J = 6.8 Hz, 1H), 8.34 (m, 1H), 7.59 (d, J = 4.0 Hz, 1H), 7.41 (m, 1H), 7.12 (m, 1H), 7.04 (m, 1H), 6.42 (m, 1H), 3.50 (bs, 2H), 2.24 (s, 3H).
【0112】
3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)−4−メチル安息香酸(9)の合成
【化6】

【0113】
n−BuOH(50ml)中の3−アミノ−4−メチル−安息香酸メチルエステル(0.6mol)の溶液に、70% 硝酸(2.7ml)を加え、硝酸塩を形成し、続いてシアナミド水溶液(50%wt., 7ml, 0.09mol)と縮合させる。得られた混合物を16時間還流し、室温まで冷却し、続いてジエチルエーテル(100ml)を添加する。0℃で30分間冷却した後、濾過し、メタノール/ジエチルエーテル(1:1(v/v), 120ml)で洗浄し、3−グアニジノ−4−メチル−安息香酸メチル硝酸エステル()を得る。
【0114】
n−BuOH(40ml)中の3−グアニジノ−4−メチル−安息香酸メチル硝酸エステル()(0.02mol)に、(0.02mol)および水酸化ナトリウム・フレーク(0.02mol)を加える。得られた混合物を、12時間還流し、を得る。1N NaOH水溶液(20ml)を、のn−BuOH溶液に加え、30分間還流する。室温まで冷却した後、1N 水性HCl(20ml)を、勢いよく撹拌しながら該混合物にゆっくりと加える。生成物を濾過によって集め、水で洗浄し、を得る。
1H NMR (400MHz, d6-DMSO) δ 9.28 (d, J = 1.8 Hz, 1H), 9.08 (s, 1H), 8.7 (dd, J = 4.7, 1.5 Hz, 1H), 8.55 (d, J = 5.1 Hz, 1H), 8.46 (dt, J = 8.0, 1.8 Hz, 1H), 8.31 (s, 1H), 7.65 (dd, J = 7.8, 1.5 Hz, 1H), 7.54 (dd, J = 7.7, 4.7 Hz, 1H), 7.49 (d, J = 5.2 Hz, 1H), 7.37 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 3.08 (s, 3H).
MS (m/z) (M+1)+: 307.2.
【0115】
3−(4−(5−メトキシピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)−4−メチル安息香酸(43)の製造に関して、同じプロトコルを用いて、ピリジン環上で置換されたタイプの化合物を合成する。
【化7】

【0116】
N1−(4−(5−メトキシピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イル)−6−メチルベンゼン−1,3−ジアミン(14)の合成
【化8】

【0117】
乾燥トルエン(15ml)中の、3−ブロモ−5−メトキシピリジン(3g, 16mmol)、トリブチル(1−エトキシビニル)スタンナン(7ml, 21mmol)およびPd(PPh)(0.92g, 0.8mmol)の溶液を、マイクロ波中、150℃で30分間加熱する。冷却後、該混合物を、MeOHと共にセライトで濾過し、濃縮し、残渣を得る。これをシリカゲルのクロマトグラフィーによって精製し(酢酸エチル:ヘキサン=1:1(v/v))、1−(5−メトキシピリジン−3−イル)エタノン(11)を得る(1.6g, 66%)。
MS (m/z) (M+1)+: 152.1。
【0118】
(E)−3−(ジメチルアミノ)−1−(5−メトキシピリジン−3−イル)プロパ−2−エン−1−オン(12)を、の合成と同様の手順を用いて製造する。N−(2−メチル−5−ニトロフェニル)−4−(5−メトキシピリジン−3−イル)ピリミジン−2−アミン(13)を、の合成と同様の手順を用いて製造する。
【0119】
MeOH(20ml)中の、N−(2−メチル−5−ニトロフェニル)−4−(5−メトキシピリジン−3−イル)ピリミジン−2−アミン(13)(5.0mmol)の溶液に、Pd(5%, 炭素上, 50%湿潤, 10重量%)を加える。懸濁液を水素下で2時間撹拌する。該反応物をセライトで濾過し、セライトのケーキをMeOHで洗浄する。溶媒を減圧下で除去し、14を得る。これをさらに精製することなく用いる。
MS (m/z) (M+1)+: 308.2。
【0120】
アニリン(14)を用いて、アニリン()で行われるのと同じ種類の化合物を合成し得る。
【0121】
N−(3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)−4−メチルフェニル)−2−クロロピリジン−4−カルボキサミド(A−1)の合成
【化9】

【0122】
6−メチル−N1−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イル)ベンゼン−1,3−ジアミン()(5mmol)、2−クロロ−イソニコチン酸(6mmol)およびHATU(6mmol)を、乾燥DMF(5ml)に、室温で溶解する。ジイソプロピルエチルアミン(6mmol)を、該溶液に滴下する。30分後、該混合物を飽和水性NaHCOにゆっくりと加える。固体を濾過し、水で洗浄し、真空下で終夜乾燥し、生成物A1を明黄色の固体として得る。
1H NMR (400MHz, d4-メタノール) δ 9.3 (s, 1H), 8.65 (m, 1H), 8.6 (m, 1H), 8.55 (d, J = 5.1 Hz, 1H), 8.48 (d, J = 5.2 Hz, 1H), 8.28 (s, 1H), 7.95 (s, 1H), 7.84 (d, J = 5.1 Hz, 1H), 7.56 (m, 1H), 7.4 (dd, J = 8.2, 2.1 Hz, 1H), 7.37 (d, J = 5.2 Hz, 1H), 7.28 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 2.33 (s, 3H).
MS (m/z) (M+1)+: 417.1。
【0123】
中間体、すなわち6−クロロ−N−(4−メチル−3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル)ニコチンアミド(15)、5−ホルミル−N−(4−メチル−3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル)フラン−2−カルボキサミド(16)および5−ブロモ−N−(4−メチル−3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル)ニコチンアミド(17)の製造で、同様の手順を用い得る。
【化10】

【0124】
N−(3−(4−クロロピリミジン−2−イルアミノ)−4−メチルフェニル)−1H−インダゾール−3−カルボキサミド(22)の合成
【化11】

【0125】
2−クロロ−4−メトキシピリミジン(18)(10.0mmol)、2−メチル−5−ニトロベンゼンアミン(15.0mmol)、Pd(OAc)(1mmol)、DPE−Phos(1.5mmol)およびNaO−tBu(20.0mmol)の混合物に、窒素下、1,4−ジオキサン(15ml)を加える。得られた混合物を、マイクロ波条件下で、150℃で20分間加熱する。該反応混合物をセライトのパッドで濾過し、濾液を酢酸エチル(100ml)に希釈し、水で洗浄し、NaSOで乾燥し、濃縮する。粗生成物を、シリカゲルのカラムクロマトグラフィーによって精製し(酢酸エチル:ヘキサン=1:4(v/v))、4−メトキシ−N−(2−メチル−5−ニトロフェニル)ピリミジン−2−アミン(19)を、明黄色の固体として得る。
MS (m/z) (M+1)+: 261.1。
【0126】
MeOH(20ml)中の4−メトキシ−N−(2−メチル−5−ニトロフェニル)ピリミジン−2−アミン(19)(5.0mmol)の溶液に、Pd(5%, 炭素上, 50%湿潤, 10重量%)を加える。該懸濁液を、水素下、2時間撹拌する。該反応物をセライトで濾過し、セライトのケーキをMeOHで洗浄する。溶媒を減圧下で除去し、粗生成物(20)を得る。これを、さらに、シリカゲルのカラムクロマトグラフィーによって精製する(酢酸エチル:ヘキサン=1:2(v/v))。
MS (m/z) (M+1)+: 231.1。
【0127】
N1−(4−メトキシピリミジン−2−イル)−6−メチルベンゼン−1,3−ジアミン(20)(0.65mmol)、1H−インダゾール−3−カルボン酸(0.68mmol)およびHATU(0.79mmol)を、乾燥DMF(4.0ml)に、室温で溶解する。ジイソプロピルエチルアミン(4mmol)を、該溶液に加える。1時間後、該混合物を水(100ml)で希釈する。沈殿物を濾過し、水で洗浄し、真空下で乾燥し、21を明黄色の固体として得る。
MS (m/z) (M+1)+: 375.1。
【0128】
ACN(2ml)中の、N−(3−(4−メトキシピリミジン−2−イルアミノ)−4−メチルフェニル)−1H−インダゾール−3−カルボキサミド(21)(0.53mmol)、TMSCl(THF中2M, 2.12mmol)およびNaI(2.12mmol)の混合物を、マイクロ波条件下で、140℃で20分間加熱する。該反応混合物に、2M 水性NaCO(50ml)を加え、次いで酢酸エチル(100ml×2)で抽出する。有機層を水で洗浄し、NaSOで乾燥し、濃縮し、残渣を得る。この残渣にPOCl(5ml)を加え、得られた混合物を15分間還流する。過剰のPOClを真空で除去する。残渣を酢酸エチル(100ml)に溶解し、NaCO溶液で洗浄し、NaSOで乾燥し、濾過する。溶媒を真空で蒸発させ、粗生成物22を得る。これを、シリカゲルのカラムクロマトグラフィーによって精製する(酢酸エチル:ヘキサン=1:2(v/v))。
1H NMR (400MHz, d-クロロホルム) δ 8.9 (s, 1H), 8.43 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 8.22-8.29 (m, 3H), 7.43-7.58 (m, 3H), 7.33 (t, J = 7.2 Hz, 1H), 7.21 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 2.31 (s, 3H).
MS (m/z) (M+1)+: 379.1。
【0129】
22と類似の化合物を、化合物20を、25の製造におけるカルボン酸類とは異なるカルボン酸類とカップリングさせることによって合成され得る。
【0130】
N−(3−(4−クロロピリミジン−2−イルアミノ)−4−メチルフェニル)−1−エチル−3−メチル−1H−ピラゾール−5−カルボキサミド(25)の合成
【化12】

【0131】
N1−(4−メトキシピリミジン−2−イル)−6−メチルベンゼン−1,3−ジアミン(23)(0.65mmol)、1−エチル−3−メチル−1H−ピラゾール−5−カルボン酸(0.68mmol)およびHATU(0.79mmol)を、乾燥DMF(4.0ml)に、室温で溶解させる。ジイソプロピルエチルアミン(4mmol)を該溶液に加える。1時間後、該混合物を水(100ml)で希釈する。沈殿物を濾過し、水で洗浄し、真空下で乾燥し、24を明黄色の固体として得る。
1H NMR (400MHz, d-クロロホルム) δ 8.49 (s, 1H), 8.12 (d, J = 5.8 Hz, 1H), 7.69 (s, 1H), 7.14-7.20 (m, 2H), 6.94 (bs, 1H), 6.38 (s, 1H), 6.21 (d, J = 5.8 Hz, 1H), 4.50-4.56 (m, 2H), 3.98 (s, 3H), 2.31 (s, 3H), 2.29 (s, 3H), 1.43 (t, J = 7.2 Hz, 3H).
MS (m/z) (M+1)+: 367.2。
【0132】
ACN(2ml)中の、N−(3−(4−メトキシピリミジン−2−イルアミノ)−4−メチルフェニル)−1−エチル−3−メチル−1H−ピラゾール−5−カルボキサミド(24)(0.53mmol)、TMSCl(THF中2M, 2.12mmol)およびNaI(2.12mmol)の混合物を、マイクロ波条件下で、140℃で20分間加熱する。該反応混合物に、2M 水性NaCO(50ml)を加え、酢酸エチル(100ml×2)で抽出する。有機層を水で洗浄し、NaSOで乾燥し、濃縮し、残渣を得る。残渣にPOCl(5ml)を加え、得られた混合物を15分間還流する。過剰のPOClを真空で除去する。残渣を酢酸エチル(100ml)に溶解し、NaCO溶液で洗浄し、NaSOで乾燥し、濾過する。溶媒を真空で蒸発させ、粗生成物25を得る。これを、さらに、シリカゲルのカラムクロマトグラフィーによって精製する(酢酸エチル:ヘキサン=1:2(v/v))。
MS (m/z) (M+1)+: 371.1。
【0133】
1−(4−シアノフェニル)−3−メチル−1H−ピラゾール−5−カルボン酸(28)の合成
【化13】

【0134】
ジクロロメタン中の4−ヒドラジニルベンゾニトリル塩酸塩(26)(2.06mmol)の溶液に、0℃で、炭酸カリウム(1.59mmol)を加え、続いて2,4−ジオキソペンタン酸エチル(3.16mmol)を加える。該反応混合物を室温で終夜撹拌する。該反応混合物をジクロロメタンで希釈し、水で、そして塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を除去し、粗生成物27を得る。これをさらに精製することなく用いる。
【0135】
1−(4−シアノフェニル)−3−メチル−1H−ピラゾール−5−カルボン酸エチル(27)を、THF/MeOH/HO(3:2:1(v/v))の溶液に溶解し、6N 水酸化リチウム(3当量)を加える。該混合物を終夜撹拌する。溶媒を真空で除去し、残渣をHOに希釈し、ジクロロメタン(3回)で抽出し、水層のpHをpH 5に調節する。沈殿物を濾過し、乾燥し、1−(4−シアノフェニル)−3−メチル−1H−ピラゾール−5−カルボン酸(28)を得る。これを、A−71A−73を合成するために用いる。
MS (m/z) (M+1)+: 228.1。
【0136】
6−メチル−N1−(4−(5−モルホリノピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イル)ベンゼン−1,3−ジアミン(33)の合成
【化14】

【0137】
(E)−1−(5−ブロモピリジン−3−イル)−3−(ジメチルアミノ)プロパ−2−エン−1−オン(30)を、29から、の合成と同様の手順を用いて製造する。4−(5−ブロモピリジン−3−イル)−N−(2−メチル−5−ニトロフェニル)ピリミジン−2−アミン(31)を、30から、の合成と同様の手順を用いて製造する。
【0138】
化合物31(152mg, 0.4mmol)、モルホリン(1.2mmol)、KPO(168mg, 0.8mmol)、CuI(15mg, 0.04mmol)およびL−プロリン(19mg, 0.08mmol)を、乾燥DMSO中、窒素下、90℃で16時間加熱する。該混合物をEtOAcで希釈し、水で洗浄する。溶媒を真空で除去した後、主に32を含む残渣を、さらに精製することなく次の段階に用いる。
MS (m/z) (M+1)+: 393.2。
【0139】
粗製のN−(2−メチル−5−ニトロフェニル)−4−(5−モルホリノピリジン−3−イル)ピリミジン−2−アミン(32)を、SnCl(0.78g, 4mmol)と共に、EtOH(5ml)中で、2時間還流する。1N 水性NaOHをpH>14になるまで加える。該混合物を濾過し、ジクロロメタンで洗浄する。合わせた有機相を濃縮し、分取HPLCによって精製し、33を得る。
MS (m/z) (M+1)+: 363.2。
【0140】
化合物31を異なるアミン類とカップリングすることによって、33に類似する化合物を合成し得る。
【0141】
N1−(4−(5−(ジフルオロメトキシ)ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イル)−6−メチルベンゼン−1,3−ジアミン(36)の合成
【化15】

【0142】
4−(5−メトキシピリジン−3−イル)−N−(2−メチル−5−ニトロフェニル)ピリミジン−2−アミン(13)(3g, 10mmol)を、乾燥ジクロロメタン中に懸濁する。BBr(3ml, 32mmol)を室温でゆっくりと導入する。該混合物を3日間撹拌し、氷水にゆっくりと添加することによってクエンチする。固体のNaOHをpH>14になるまで加える。該混合物をジクロロメタンで抽出する。水性濃塩酸を水相にpH=7までゆっくりと加える。固体を濾過し、真空下で乾燥し、34を得る。これをさらに精製することなく用いる。
【0143】
5−(2−(2−メチル−5−ニトロフェニルアミノ)ピリミジン−4−イル)ピリジン−3−オール(34)(97mg, 0.3mmol)を、NaOH(24mg, 0.6mmol)およびClCFCONa(92mg, 0.6mmol)と共に、乾燥DMF(1ml)中で、マイクロ波オーブン中、180℃で45分間加熱する。残渣を酢酸エチルに溶解し、水で洗浄する。濃縮後、粗製の混合物を、シリカゲルのカラムクロマトグラフィーによって精製し(酢酸エチル:ヘキサン=1:1(v/v))、35を得る。
MS (m/z) (M+1)+: 374.1。
【0144】
35(50mg, 0.13mmol)を、SnCl(0.39g, 2mmol)と共に、EtOH(2ml)中で2時間還流する。1N NaOHをpH>14になるまで加える。該混合物を濾過し、ジクロロメタンで洗浄する。合わせた有機相を濃縮し、36を得る。これをさらに精製することなく用いる。
MS (m/z) (M+1)+: 344.2。
【0145】
N1−(4−(イソキノリン−4−イル)ピリミジン−2−イル)−6−メチルベンゼン−1,3−ジアミン(40)の合成
【化16】

【0146】
ACN(10ml)中の、19(1g, 3.8mmol)、TMSCl(ジクロロメタン中1M, 6.7ml, 6.7mmol)およびNaI(1.45g, 7.7mmol)の混合物を、マイクロ波条件下で、120℃で20分間加熱する。該反応混合物に、2M 水性NaCO(50ml)およびジクロロメタン(2×100ml)を加える。有機層を分離し、水で洗浄し、NaSOで乾燥し、濃縮し、粗製の2−(2−メチル−5−ニトロフェニルアミノ)ピリミジン−4−オール(37)の残渣を得る。この残渣にPOCl(5ml)を加え、得られた混合物を2時間還流する。過剰のPOClを真空で除去する。残渣をジクロロメタン(100ml)に溶解し、NaCO溶液で洗浄し、NaSOで乾燥し、濾過する。溶媒を真空で蒸発させ、粗生成物38を得る。これをさらに精製することなく用いる。
MS (m/z) (M+1)+: 265.2, 267.2。
【0147】
4−クロロ−N−(2−メチル−5−ニトロフェニル)ピリミジン−2−アミン(38)(1g, 4mmol)、イソキノリン−4−イルボロン酸(1g, 4mmol)およびPd(PPh)Cl(140mg, 0.2mmol)を、スターラー・バーを備えた40mlのバイアルに加える。該バイアルを5回排気し窒素を再充填する。1,4−ジオキサン(20ml)および3M 水性NaCO(8ml, 24mmol)を、シリンジによって加える。バイアルを密封し、マイクロ波条件下、150℃で10分間加熱する。該混合物を濾過し、ジクロロメタンで希釈する。1N NaOH(50ml)で洗浄した後、有機相を1N HCl(20ml)で洗浄する。水相を終夜冷蔵庫に保存し、生成物39を固体沈殿物として得て、それを濾過し、乾燥する。
MS (m/z) (M+1)+: 358.2。
【0148】
4−(イソキノリン−4−イル)−N−(2−メチル−5−ニトロフェニル)ピリミジン−2−アミン(39)(200mg, 0.55mmol)を、MeOH(10ml)に溶解し、室温で、1atmの水素下で、5% Pd/C(140mg)の存在下で、3時間撹拌する。濾過後、溶媒を除去し、N−1−(4−(イソキノリン−4−イル)ピリミジン−2−イル)−6−メチルベンゼン−1,3−ジアミン(40)を得る。これをさらに精製することなく用いる。
MS (m/z) (M+1)+: 328.2。
【0149】
N−(3−(4−(5−ブロモピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)−4−メチルフェニル)−2−メチル−5−(トリフルオロメチル)オキサゾール−4−カルボキサミド(42)の合成
【化17】

【0150】
4−(5−ブロモピリジン−3−イル)−N−(2−メチル−5−ニトロフェニル)ピリミジン−2−アミン(31)(210mg, 0.55mmol)を、SnCl(311mg, 1.64mmol)と共に、EtOH(5ml)中で2時間還流する。1N 水性NaOHをpH>14になるまで加える。該混合物を濾過し、ジクロロメタンで洗浄する。合わせた有機相を濃縮し、41を得る。これをさらに精製することなく用いる。
MS (m/z) (M+1)+: 356.2, 358.2。
【0151】
粗製のN−1−(4−(5−ブロモピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イル)−6−メチルベンゼン−1,3−ジアミン(41)(0.5mmol)を、2−メチル−5−(トリフルオロメチル)オキサゾール−4−カルボン酸(107mg, 0.55mol)、HATU(251mg, 0.66mmol)およびDIPEA(0.35ml, 2mmol)と共に、乾燥DMF(2ml)中で、室温で30分間撹拌する。該混合物を分取HPLCによって精製し、N−(3−(4−(5−ブロモピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)−4−メチルフェニル)−2−メチル−5−(トリフルオロメチル)オキサゾール−4−カルボキサミド(42)を得る。
MS (m/z) (M+1)+: 533.3, 535.3。
【実施例】
【0152】
実施例1
N−(3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)−4−メチルフェニル)−5−クロロ−1H−インドール−2−カルボキサミド(A−6)
【化18】

【0153】
6−メチル−N1−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イル)ベンゼン−1,3−ジアミン()(0.27mmol)、5−クロロインドール−2−カルボン酸(0.30mmol)およびHATU(0.32mmol)を、乾燥DMF(1.5ml)に、室温で溶解する。ジイソプロピルエチルアミン(6mmol)を溶液に加える。12時間後、該混合物をメタノール(5ml)で希釈する。沈殿物を濾過し、メタノールで洗浄し、真空下で乾燥し、明黄色の固体を得る。次いでこれをメタノール中に懸濁し、HCl(0.2ml, 1,4−ジオキサン中2.0M溶液)で処理する。1時間後、該混合物を乾固するまで減らし、真空下で乾燥し、生成物A6を明橙色の固体として得る。
1H NMR (400MHz, d6-DMSO) δ 11.96 (s, 1H), 10.30 (s, 1H), 9.43 (bs, 1H), 9.14 (s, 1H), 8.85 (m, 2H), 8.60 (d, J = 4.8 Hz, 1H), 8.16 (bs, 1H), 7.85 (bs, 1H), 7.77 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 7.52 (m, 2H), 7.48 (d, J = 8.5 Hz, 1H) 7.43 (bs, 1H), 7.25 (d, J = 6.0 Hz, 1H), 7.23 (dd, J = 8.5, 2.0 Hz, 1H), 2.25 (s, 3H).
MS (m/z) (M+1)+: 455.1。
【0154】
アニリン類14333640または同様の方法で合成される他のアニリン類を用いて、他のタイプAの最終化合物を、A−6を中間体から合成するのと同様の手順を用いて合成する。
【0155】
実施例2
N−(3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)−4−メチルフェニル)−2−モルホリノピリジン−4−カルボキサミド(B−1)
【化19】

【0156】
N−(3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)−4−メチルフェニル)−2−クロロピリジン−4−カルボキサミド(A−1)(2mmol)、モルホリン(10mmol)およびジイソプロピルエチルアミン(4mmol)を、マイクロ波オーブン中、250℃で8分間加熱する。該混合物を分取HPLCによって精製する(ACN/水, 濃度勾配10〜70%)。合わせた生成物の溶液を濃縮し、固体のNaCOをpH=10になるまで加える。ジクロロメタンで抽出し、無水KCOで乾燥し、濃縮後、固体と油状物の混合物を得る。これを、さらに、MeOH/EtO中で磨砕する。濾過後、生成物B1を灰白色の固体として得る。
1H NMR (400MHz, d6-アセトン) δ 9.47 (s, 1H), 9.22 (s, 1H), 8.56 (dd, J = 4.7, 1.6 Hz, 1H), 8.45 (m, 1H), 8.41 (m, 1H), 8.4 (m, 1H), 8.15 (d, J = 5.1 Hz, 1H), 7.87 (s, 1H), 7.37 (m, 2H), 7.3 (d, J = 5.1 Hz, 1H), 7.17 (s, 1H), 7.11 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 7.03 (dd, J = 5.1, 1.2 Hz, 1H), 3.63 (t, J = 4.7 Hz, 4H), 3.44 (t, J = 4.7 Hz, 1H), 2.24 (s, 3H).
MS (m/z) (M+1)+: 468.1。
【0157】
同様の手順を用いて、6−クロロ−N−(4−メチル−3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル)ニコチンアミド(15)を中間体として用いて、実施例B−12およびB−13B−16およびB−17を製造する。
【0158】
実施例3
2−(3−ヒドロキシプロポキシ)−N−(3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)−4−メチルフェニル)ピリジン−4−カルボキサミド(C−2)
【化20】

【0159】
N−(3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)−4−メチルフェニル)−2−クロロピリジン−4−カルボキサミド(A1)(0.048mmol)を、DMSO(1ml)中のプロパン−1,3−ジオール(0.48mmol)およびNaH(0.24mmol)の混合物に加え、該反応混合物を150℃で2時間加熱する。該混合物を分取HPLCによって精製し(ACN/水, 濃度勾配10〜70%)、対応する生成物C2をTFA塩として得る。
1H NMR (400MHz, d6-DMSO) δ 10.40 (s, 1H), 9.41 (d, J = 1.44 Hz, 1H), 9.14 (s, 1H), 8.83-8.88 (m, 2H), 8.60 (d, J = 5.2 Hz, 1H), 8.15 (s, 1H), 7.83-7.88 (m, 1H), 7.53 (d, J = 5.2 Hz, 1H), 7.41-7.49 (m, 2H), 7.32 (s, 1H), 7.23 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 4.38 (t, J = 6.5 Hz, 2H), 3.57 (t, J = 6.2 Hz, 2H), 2.24 (s, 3H), 1.85-1.93 (m, 2H).
MS (m/z) (M+1)+: 457.1。
【0160】
同様の手順を用いて、6−クロロ−N−(4−メチル−3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル)ニコチンアミド(15)を中間体として用いて、実施例C−9からC−12を製造する。
【0161】
実施例4
3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)−N−(3,4−ジヒドロ−3−オキソ−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン−6−イル)−4−メチルベンズアミド(D−2)
【化21】

【0162】
3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)−4−メチル安息香酸()(0.1mmol)、6−アミノ−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン−3(4H)−オン(0.1mmol)およびHATU(0.15mmol)を、乾燥DMF(0.5ml)に、室温で溶解する。ジイソプロピルエチルアミン(0.50mmol)を、該溶液に加える。該反応混合物を室温で1時間撹拌する。HPLCで精製し、標的化合物D2をTFA塩として得る。
1H NMR (400MHz, d6-DMSO) δ 10.78 (s, 1H), 10.15 (s, 1H), 9.29 (d, J = 1.7 Hz, 1H), 9.18 (s, 1H), 8.74 (dd, J = 1.4, 4.9 Hz, 1H), 8.52-8.58 (m, 2H), 8.23 (d, J = 1.3 Hz, 1H), 7.71 (dd, J = 1.7, 7.9 Hz, 1H), 7.59-7.64 (m, 1H), 7.54 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 7.49 (d, J = 5.2 Hz, 1H), 7.40 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 7.23 (dd, J = 2.4, 8.7 Hz, 1H), 6.92 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 4.54 (s, 2H), 2.34 (s, 3H).
MS (m/z) (M+1)+: 453.2。
【0163】
同様の手順を用いて、3−(4−(5−メトキシピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)−4−メチル安息香酸(43)を中間体として用いて、実施例D−5からD−12を製造する。
【0164】
実施例5
N−(3−(4−(5−メトキシピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)−4−メチルフェニル)−1−エチル−3−メチル−1H−ピラゾール−5−カルボキサミド(E−4)
【化22】

【0165】
N−(3−(4−クロロピリミジン−2−イルアミノ)−4−メチルフェニル)−1−エチル−3−メチル−1H−ピラゾール−5−カルボキサミド(25)(0.021mmol)、3−メトキシ−5−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ピリジン(0.025mmol)およびPd(PPh)Cl(0.0014mmol)を、スターラー・バーを備えた10mlのシュレンク・フラスコに加える。該フラスコを5回排気し窒素を再充填する。1,4−ジオキサン(0.8ml)および水性NaCO(3.1M, 0.12mmol)を、シリンジによって加える。シュレンク・フラスコを密封し、マイクロ波条件下で、150℃で10分間加熱する。HPLCで精製し、生成物E4をTFA塩として得る。
1H NMR (400MHz, d4-メタノール) δ 9.12 (s, 1H), 8.64 (s, 1H), 8.59-8.62 (m, 1H), 8.55 (d, J = 5.4 Hz, 1H), 8.23 (s, 1H), 7.54 (d, J = 5.4 Hz, 1H), 7.27-7.35 (m, 2H), 6.70 (s, 1H), 4.45-4.52 (m, 2H), 4.03 (s, 3H), 2.33 (s, 3H), 2.28 (s, 3H), 1.36 (t, J = 7.1 Hz, 3H).
MS (m/z) (M+1)+: 444.2。
【0166】
同様の手順を用いて、N−(3−(4−クロロピリミジン−2−イルアミノ)−4−メチルフェニル)−1H−インダゾール−3−カルボキサミド(22)を中間体として用いて、実施例E−1からE−3を製造する。
【0167】
実施例6
5−((ジエチルアミノ)メチル)−N−(4−メチル−3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル)フラン−2−カルボキサミド(F−1)
【化23】

【0168】
ジクロロメタン(0.5ml)中の、N−(3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)−4−メチルフェニル)−4−ホルミルシクロペンタ−1,3−ジエンカルボキサミド(16)(0.03mmol)、ジエチルアミン(0.09mmol)および過剰のNaSOの混合物を、室温で1時間撹拌する。次いでNaBH(OAc)(0.15mmol)を加え、終夜撹拌する。該混合物を分取HPLCによって精製し(ACN/水, 濃度勾配10〜70%)、対応する生成物F1をTFA塩として得る。
1H NMR (400MHz, d6-DMSO) δ 10.14 (s, 1H), 9.28 (s, 1H), 9.01 (s, 1H), 8.70 (d, J = 3.6 Hz, 1H), 8.52 (m, 2H), 7.99 (s, 1H), 7.57 (m, 1H), 7.44 (m, 1H), 7.23 (m, 1H), 6.94 (m, 1H), 4.50 (s, 2H), 3.13 (m, 4H), 2.55 (s, 3H), 1.25 (t, J = 7.2 Hz, 6H).
MS (m/z) (M+1)+: 479.2。
【0169】
実施例7
N−(4−メチル−3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル)−5−モルホリノニコチンアミド(G−1)
【化24】

【0170】
オーブン乾燥したバイアルに、Pd(dba)(0.011mmol)、2'−(ジシクロヘキシルホスフィノ)−N,N−ジメチルビフェニル−2−アミン(0.013mmol)およびN−(3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)−4−メチルフェニル)−5−ブロモピリジン−3−カルボキサミド(0.216mmol)を入れる。該バイアルを排気しNを再充填する。次いでLiN(TMS)溶液(THF中1M, 1.0ml)、1,4−ジオキサン(1ml)およびモルホリン(0.26mmol)を、シリンジを介して加える。該混合物を、マイクロ波条件下、140℃で45分間加熱する。得られた混合物を分取HPLCによって精製し(ACN/水, 濃度勾配10〜70%)、対応する生成物G1をTFA塩として得る。
1H NMR (400MHz, d6-DMSO) δ 10.5 (s, 1H), 9.35 (s, 1H), 9.07 (s, 1H), 8.76 (d, J = 4.0 Hz, 1H), 8.62 (m, 3H), 8.10 (m, 1H), 8.02 (s, 1H), 7.67 (m, 1H), 7.48 (m, 1H), 7.23 (m, 1H), 3.79 (t, J = 4.8 Hz, 4H), 3.35 (t, J = 4.8 Hz, 4H), 2.25 (s, 3H).
MS (m/z) (M+1)+: 468.2。
【0171】
実施例8
1−(3−(4−(5−メトキシピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)−4−メチルフェニル)−3−(ピリジン−2−イル)ウレア(H−6)
【化25】

【0172】
ピリジン−2−アミン(5mg, 0.05mmol)を、乾燥THF中のトリホスゲン(4.9mg, 0.017mmol)と混合し、室温で20分間混合する。N−1−(4−(5−メトキシピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イル)−6−メチルベンゼン−1,3−ジアミン(14)(15mg, 0.05mmol)を加え、20分後にMeOHを添加することによって、反応をクエンチする。溶媒を除去し、残渣を分取HPLCによって精製し、ウレアH−6を得る。
1H NMR (400MHz, d6-DMSO) δ 10.46 (s, 1H), 8.98 (s, 1H), 8.91 (s, 1H), 8.54 (d, J = 5 Hz, 1H), 8.44 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 8.05 (s, 1H), 7.9 (s, 1H), 7.78 (t, J = 6.8 Hz, 1H), 7.48 (m, 2H), 7.2 (m, 2H), 7.03 (1H, J = 5.7 Hz, 1H), 3.86 (s, 3H), 2.55 (s, 1H), 2.21 (s, 3H).
MS (m/z) (M+1)+: 434.2。
【0173】
同様の方法で合成したアニリン類14333640またはその他のものを用いて、H−6を中間体14から合成する手順と同様の手順を用いて、他のタイプHの最終化合物を合成する。
【0174】
実施例9
N−(3−(4−(5−((2S,6R)−2,6−ジメチルモルホリノ)ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)−4−メチルフェニル)−2−メチル−5−(トリフルオロメチル)オキサゾール−4−カルボキサミド(I−1)
【化26】

【0175】
化合物42(30mg, 0.056mmol)、ジメチルモルホリン(13mg, 0.12mmol)、KPO(24mg, 0.11mmol)、CuI(2.2mg, 0.006mmol)およびL−プロリン(2.7mg, 0.012mmol)を、乾燥DMSO中、窒素下、90℃で16時間加熱する。該混合物を濾過し、分取HPLCによって精製し、I−1を得る。
1H NMR (400MHz, d6-DMSO) δ 10.52 (s, 1H), 9.04 (s, 1H), 8.7 (dd, J = 5.5, 3.4 Hz, 1H), 8.5 (m, 2H), 8.06 (s, 1H), 8.02 (s, 1H), 7.53 (d, J = 6.8 Hz, 1H), 7.48 (d, J = 3.6 Hz, 1H), 7.21 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 3.68 (m, 2H), 2.6 (s, 3H), 2.34 (m, 4H), 2.21 (s, 3H), 1.13 (d, J = 5.3 Hz, 6H).
MS (m/z) (M+1)+: 568.3。
【0176】
上記の実施例で記載した手順を繰り返して、適切な出発物質を用いて、表1に示した下記の式Iの化合物を得る。
【表1】

【0177】
【表2】

【0178】
【表3】

【0179】
【表4】

【0180】
【表5】

【0181】
【表6】

【0182】
【表7】

【0183】
【表8】

【0184】
【表9】

【0185】
【表10】

【0186】
【表11】

【0187】
【表12】

【0188】
【表13】

【0189】
【表14】

【0190】
【表15】

【0191】
【表16】

【0192】
【表17】

【0193】
【表18】

【0194】
【表19】

【0195】
【表20】

【0196】
【表21】

【0197】
【表22】

【0198】
【表23】

【0199】
【表24】

【0200】
【表25】

【0201】
【表26】

【0202】
【表27】

【0203】
【表28】

【0204】
【表29】

【0205】
【表30】

【0206】
【表31】

【0207】
【表32】

【0208】
【表33】

【0209】
【表34】

【表35】

【0210】
実施例11
3−(2−メトキシ−フェニル)−N−[4−メチル−3−(4−ピリジン−3−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−フェニル]−プロピオンアミド
【化27】

【0211】
N,N−ジメチルホルムアミド中の、約50%の無水プロピルリン酸を含む溶液(0.77ml, 〜1.2mmol)を、2mlのN,N−ジメチルアセトアミド中の4−メチル−N3−[4−(3−ピリジニル)−2−ピリミジニル]−1,3−ベンゼンジアミン(221.9mg, 0.8mmol)、3−(2−メトキシ−フェニル)−プロピオン酸(144.2mg, 0.8mmol)およびトリエチルアミン(0.887ml, 6.4mmol)の混合物に、撹拌しながら、20分以内で3回に分けて加える。室温で24時間撹拌した後、該混合物を、炭酸水素ナトリウムの半飽和水溶液で処理し、酢酸エチルで3回抽出する。合わせた有機抽出物を乾燥し(NaSO)、溶媒を減圧下で蒸発させる。粗生成物をアセトンから結晶化することによって精製し、表題化合物を褐色がかった固体として得る。
MS: 440.2 [M+H]+;
tR (HPLC, Nucleosil C18; 5-100% CH3CN+0.1%TFA/H2O+0.1%TFA, 5分間, 流速1.5ml/分): 3.91分;
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6, δ): 2.16 (s, 3H); 2.55 (t, 2H); 2.84 (t, 2H); 3.78 (s; 3H); 6.83 (t, 1H); 6.93 (d, 1H); 7.09-7.19 (m, 3H); 7.26 (m, 1H); 7.41 (d, 1H); 7.49 (dd, 1H); 7.87 (m, 1H); 8.45 (m, 1H); 8.49 (d, 1H); 8.67 (dd, 1H); 8.91 (s, 1H); 9.24 (m, 1H); 9.80 (s,1H).
【0212】
実施例12
1−エチル−7−メチル−4−オキソ−1,4−ジヒドロ−[1,8]ナフチリジン−3−カルボン酸 [4−メチル−3−(4−ピリジン−3−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−フェニル]−アミド
【化28】

【0213】
N,N−ジメチルホルムアミド中約50%の無水プロピルリン酸を含む溶液(0.77ml, 〜1.2mmol)を、20分以内で3回に分けて、2mlのN,N−ジメチルアセトアミド中の、4−メチル−N3−[4−(3−ピリジニル)−2−ピリミジニル]−1,3−ベンゼンジアミン(221.9mg, 0.8mmol)、1−エチル−7−メチル−4−オキソ−1,4−ジヒドロ−[1,8]ナフチリジン−3−カルボン酸(185.8mg, 0.8mmol)およびトリエチルアミン(0.887ml, 6.4mmol)の混合物に、撹拌しながら加える。室温で24時間撹拌した後、該混合物を、炭酸水素ナトリウム半飽和水溶液と酢酸エチルの層間に分配する。該沈殿物を濾過して取り、HOで、メタノールで、そしてジエチルエーテルで洗浄し、真空で乾燥し、表題化合物を褐色がかった固体として得る。
MS: 492.1 [M+H]+;
tR (HPLC, Nucleosil C18; 5-100% CH3CN+0.1%TFA/H2O+0.1%TFA, 5分間, 流速1.5ml/分): 4.23分;
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6, δ): 1.41 (t, 3H); 2.22 (s, 3H); 2.67 (s, 3H); 4.61 (q, 2H); 7.21 (d, 1H); 7.41 (m, 1H); 7.45 (d, 1H); 7.50-7.58 (m, 2H); 8.07 (d, 1H); 8.47-8.55 (m, 2H); 8.63 (d, 1H); 8.68 (dd, 1H); 8.96 (s, 1H); 9.10 (s, 1H); 9.28 (m, 1H); 12.19 (s,1H).
【0214】
実施例13
1−メチル−1H−インドール−2−カルボン酸 [4−メチル−3−(4−ピリジン−3−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−フェニル]−アミド
【化29】

【0215】
表題化合物を、実施例11に記載された方法と類似の方法で、3−(2−メトキシ−フェニル)−プロピオン酸の代わりに1−メチル−1H−インドール−2−カルボン酸を用いて製造する。
褐色がかった固体;
MS: 435.1 [M+H]+;
tR (HPLC, Nucleosil C18; 5-100% CH3CN+0.1%TFA/H2O+0.1%TFA, 5分間, 流速1.5ml/分): 4.15分;
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6, δ): 2.22 (s, 3H); 4.00 (s, 3H); 7.11 (t, 1H); 7.20 (d, 1H); 7.29 (m, 2H); 7.41-7.58 (m, 4H); 7.68 (d, 1H); 8.06 (d, 1H); 8.14 (dd, 1H); 8.46-8.52 (m, 2H); 8.68 (dd, 1H); 8.99 (s, 1H); 9.30 (m, 1H); 10.28 (s,1H).
【0216】
実施例14
5−ニトロ−フラン−2−カルボン酸 [4−メチル−3−(4−ピリジン−3−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−フェニル]−アミド
【化30】

【0217】
表題化合物を、実施例11に記載された方法と類似の方法で、3−(2−メトキシ−フェニル)−プロピオン酸の代わりに5−ニトロ−フラン−2−カルボン酸を用いて製造する。
褐色がかった固体;
MS: 417.1 [M+H]+;
tR (HPLC, Nucleosil C18; 5-100% CH3CN+0.1%TFA/H2O+0.1%TFA, 5分間, 流速1.5 ml/分): 3.65分;
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6, δ): 2.22 (s, 3H); 7.22 (d, 1H); 7.41-7.54 (m, 3H); 7.63 (d, 1H); 7.80 (d, 1H); 8.02 (m, 1H); 8.44 (dt, 1H); 8.51 (d, 1H); 8.67 (dd, 1H); 9.02 (s, 1H); 9.25 (d, 1H); 10.59 (s,1H).
【0218】
実施例15
{2−[4−メチル−3−(4−ピリジン−3−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−ベンゾイルアミノ]−チアゾール−4−イル}−酢酸エチルエステル
【化31】

【0219】
N,N−ジメチルホルムアミド中約50%の無水プロピルリン酸を含む溶液(0.674ml, 〜1.05mmol)を、20分以内で3回に分けて、2mlのN,N−ジメチルホルムアミド中の、4−メチル−3−(4−ピリジン−3−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−安息香酸(214.4mg, 0.7mmol)、(2−アミノ−チアゾール−4−イル)−酢酸エチルエステル(130.4mg, 0.7mmol)およびトリエチルアミン(0.776ml, 5.6mmol)の混合物に、撹拌しながら加える。室温で24時間撹拌した後、該混合物を炭酸水素ナトリウム半飽和水溶液と酢酸エチルの層間に分配する。該沈殿物を濾過して取り、HOで、そして酢酸エチルで洗浄し、真空で乾燥し、表題化合物をベージュ色の固体として得る。
MS: 475.1 [M+H]+;
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6, δ): 1.16 (t, 3H); 2.32 (s, 3H); 3.71 (s, 2H); 4.06 (q, 2H); 7.02 (s, 1H); 7.38 (d, 1H); 7.47-7.55 (m, 2H); 7.85 (dd, 1H); 8.38-8.46 (m, 2H); 8.54 (m, 1H); 8.68 (dd, 1H); 9.11 (s, 1H); 9.26 (m, 1H); 12.58 (br. s,1H).
【0220】
実施例16
5−メチル−2−フェニル−2H−[1,2,3]トリアゾール−4−カルボン酸 [4−メチル−3−(4−ピリジン−3−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−フェニル]−アミド
【化32】

【0221】
N,N−ジメチルホルムアミド中約50%の無水プロピルリン酸を含む溶液(0.70ml, 〜1.08mmol)を、20分以内で3回に分けて、2mlのN,N−ジメチルホルムアミド中の、4−メチル−N3−[4−(3−ピリジニル)−2−ピリミジニル]−1,3−ベンゼンジアミン(200mg, 0.72mmol)、5−メチル−2−フェニル−2H−[1,2,3]トリアゾール−4−カルボン酸(146.3mg, 0.72mmol)およびトリエチルアミン(0.798ml, 5.76mmol)の混合物に、撹拌しながら加える。室温で72時間撹拌した後、溶媒を真空で除去し、残渣を炭酸水素ナトリウム半飽和水溶液と酢酸エチルの層間に分配する。沈殿物を濾過して取り、HOで、そして酢酸エチルで洗浄し、真空で乾燥し、表題化合物をベージュ色の固体として得る。
MS: 463.1 [M+H]+;
tR (HPLC, Nucleosil C18; 5-100% CH3CN+0.1%TFA/H2O+0.1%TFA, 5分間, 流速1.5 ml/分): 4.49分;
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6, δ): 2.23 (s, 3H); 2.57 (s, 3H); 7.22 (d, 1H); 7.41-7.63 (m, 6H); 8.12 (m, 2H); 8.17 (m, 1H); 8.46-8.54 (m, 2H); 8.68 (dd, 1H); 8.98 (s, 1H); 9.27 (d, 1H); 10.32 (s,1H).
【0222】
実施例17
6−ヒドロキシ−N−[4−メチル−3−(4−ピリジン−3−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−フェニル]−ニコチンアミド
【化33】

【0223】
表題化合物を、実施例16に記載された方法と類似の方法で、5−メチル−2−フェニル−2H−[1,2,3]トリアゾール−4−カルボン酸の代わりに6−ヒドロキシ−ニコチン酸を用いて製造する。濾過した沈殿物を、HOで、メタノールで、CHClで、そしてジエチルエーテルで洗浄し、真空で乾燥し、表題化合物をベージュ色の粉末として得る。
MS: 399.2 [M+H]+;
tR (HPLC, Nucleosil C18; 5-100% CH3CN+0.1%TFA/H2O+0.1%TFA, 5分間, 流速1.5ml/分): 2.99分;
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6, δ): 2.21 (s, 3H); 6.40 (d, 1H); 7.19 (d, 1H); 7.37-7.54 (m, 3H); 7.93-8.02 (m, 2H); 8.18 (m, 1H); 8.43-8.53 (m, 2H); 8.68 (dd, 1H); 8.90 (s, 1H); 9.27 (d, 1H); 9.90 (s, 1H); 12.02 (br. s,1H).
【0224】
実施例18
2−ヒドロキシ−N−[4−メチル−3−(4−ピリジン−3−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−フェニル]−ニコチンアミド
【化34】

【0225】
表題化合物を、実施例16に記載された方法と類似の方法で、5−メチル−2−フェニル−2H−[1,2,3]トリアゾール−4−カルボン酸の代わりに2−ヒドロキシ−ニコチン酸を用いて製造する。
褐色がかった固体;
MS: 399.2 [M+H]+;
tR (HPLC, Nucleosil C18; 5-100% CH3CN+0.1%TFA/H2O+0.1%TFA, 5分間, 流速1.5ml/分): 3.29分;
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6, δ): 2.22 (s, 3H); 6.57 (m, 1H); 7.19 (d, 1H); 7.30-7.60 (m, 3H); 7.77 (m, 1H); 8.07 (m, 1H); 8.39-8.55 (m, 3H); 8.67 (m, 1H); 8.92 (s, 1H); 9.26 (m, 1H); 12.17 (s,1H); 12.72 (br. S, 1H).
【0226】
実施例19
3−ヒドロキシ−ピリジン−2−カルボン酸 [4−メチル−3−(4−ピリジン−3−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−フェニル]−アミド
【化35】

【0227】
表題化合物を、実施例16に記載された方法と類似の方法で、5−メチル−2−フェニル−2H−[1,2,3]トリアゾール−4−カルボン酸の代わりに3−ヒドロキシ−ピリジン−2−カルボン酸を用いて製造する。酢酸エチル層をCHCl/メタノール(9:1)で希釈し、NaSOで乾燥し、真空で蒸発させる。このようにして得られた残渣をメタノールで結晶化し、表題化合物をベージュ色の固体として得る。
MS: 399.2 [M+H]+;
tR (HPLC, Nucleosil C18; 5-100% CH3CN+0.1%TFA/H2O+0.1%TFA, 5分間, 流速1.5ml/分): 3.89分;
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6, δ): 2.24 (s, 3H); 7.23 (d, 1H); 7.41-7.61 (m, 5H); 8.25 (m, 2H); 8.45-8.55 (m, 2H); 8.68 (dd, 1H); 8.97 (s, 1H); 9.31 (d, 1H); 10.82 (s, 1H); 12.17 (s, 1H).
【0228】
実施例20
2−メチル−N−[4−メチル−3−(4−ピリジン−3−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−フェニル]−ニコチンアミド
【化36】

【0229】
N,N−ジメチルホルムアミド中約50%の無水プロピルリン酸を含む溶液(0.77ml, 〜1.2mmol)を、20分以内で3回に分けて、2mlのN,N−ジメチルホルムアミド中の、4−メチル−N3−[4−(3−ピリジニル)−2−ピリミジニル]−1,3−ベンゼンジアミン(221.9mg, 0.8mmol)、2−メチル−ニコチン酸(109.7mg, 0.8mmol)およびトリエチルアミン(0.887ml, 6.4mmol)の混合物に、撹拌しながら加える。室温で24時間撹拌した後、該混合物を炭酸水素ナトリウム半飽和水溶液で処理し、酢酸エチルで3回抽出する。合わせた有機抽出物を乾燥し(NaSO)、溶媒を減圧下で蒸発させる。粗生成物をCHCl/ジエチルエーテルから結晶化することによって精製し、表題化合物を褐色がかった固体として得る。
MS: 397.2 [M+H]+;
tR (HPLC, Nucleosil C18; 5-100% CH3CN+0.1%TFA/H2O+0.1%TFA, 5分間, 次いで100% CH3CN+0.1%TFA, 2分間, 流速1.5 ml/分): 2.91分;
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6, δ): 2.21 (s, 3H); 2.57 (s, 3H); (q, 4H); 7.20 (d, 1H); 7.30-7.54 (m, 4H); 7.84 (m, 1H); 8.06 (m, 1H); 8.42-8.57 (m, 3H); 8.68 (dd, 1H); 9.00 (s, 1H); 9.26 (d, 1H); 10.40 (s,1H).
【0230】
アッセイ
本発明の化合物を、野生型のBa/F3細胞ならびにTel c-kitキナーゼおよびTel PDGFR融合チロシンキナーゼで形質転換されたBa/F3細胞の増殖を選択的に阻害する能力を測定するためにアッセイする。さらに、本発明の化合物は、Mo7e細胞におけるSCF依存性増殖を選択的に阻害する。さらに、本化合物を、Abl、ARG、BCR-Abl、BRK、EphB、Fms、Fyn、KDR、c-Kit、LCK、PDGF-R、b-Raf、c-Raf、SAPK2、Src、Tie2およびTrkBキナーゼを阻害する能力を測定するためにアッセイする。
【0231】
Ba/F3 FL FLT3増殖アッセイ
使用したマウス細胞株は、全長FLT3コンストラクトを過剰発現するBa/F3マウスpro-B細胞株である。これらの細胞を、ペニシリン 50μg/mL、ストレプトマイシン 50μg/mLおよびL−グルタミン 200mMを加えたRPMI 1640/10%ウシ胎児血清(RPMI/FBS)中で維持し、マウスのリコンビナントIL3を加える。Ba/F3全長FLT3細胞をIL3飢餓に16時間置いて、次いで384ウェルTCプレートに、25μl/ウェルの培地中5,000細胞で播種し、試験化合物を0.06nMから10μMで加える。化合物添加後、FLT3リガンドまたは細胞毒性コントロールのためのIL3を、25μl/ウェルの培地中で、適切な濃度で加える。次いで、該細胞を、37℃、5% COで48時間インキュベートする。細胞をインキュベートした後、25μlのBRIGHT GLO(登録商標)(Promega)を、製造者の指示書に従ってそれぞれのウェルに加え、Analyst GT−発光モード−50000積分時間、RLUを用いて該プレートを測定する。
【0232】
ヒトTG-HA-VSMC増殖アッセイ
ヒトTG-HA-VSMC細胞(ATCC)を、10% FBSを加えたDMEM中で、80〜90%コンフルエンスまで増殖させた後、1% FBSおよび30ng/mlのリコンビナントのヒトPDGF-BBを6e4細胞/mlで加えたDMEM中に再度懸濁する。次いで、細胞を384ウェル・プレートに50μl/ウェルで入れ、37℃で20時間インキュベートし、次いで0.5μlの100×化合物で、37℃で48時間処理する。処理後、25μLのCellTiter-Gloをそれぞれのウェルに15分間加え、次いで該プレートをCLIPR(Molecular Devices)で測定する。
【0233】
増殖アッセイ:BaF3ライブラリー-Bright glo読み出しプロトコル
wt Ba/F3細胞およびTel融合チロシンキナーゼで形質転換したBa/F3細胞の増殖を阻害する能力について、化合物を試験する。形質転換していないBa/F3細胞を、リコンビナントのIL3を含む培地中に維持する。384ウェルTCプレートに、50μl/ウェルの培地中5,000細胞で、細胞を播種し、試験化合物を0.06nMから10μMで加える。次いで細胞を、37℃で5% COで、48時間インキュベートする。細胞をインキュベートした後、25μlのBRIGHT GLO(登録商標)(Promega)を、製造者の指示書に従ってそれぞれのウェルに加え、Analyst GT−発光モード−50000積分時間、RLUを用いて該プレートを測定する。50%阻害に必要な化合物の濃度であるIC50値を、用量応答曲線から決定する。
【0234】
Mo7eアッセイ
96ウェル・フォーマット中で内在的にc-kitを発現したMo7e細胞を用いて、SCF依存性増殖の阻害について、本明細書で記載した化合物を試験する。簡単には、ヒトのリコンビナントSCFで刺激したMo7e細胞の抗増殖活性について、2倍連続希釈した試験化合物(Cmax=10μM)を評価する。37℃で48時間インキュベートした後、細胞生存率を、MTT比色アッセイ(Promega)を用いることによって測定する。
【0235】
細胞のBcr-Abl依存性増殖の阻害(高スループット法)
用いたマウス細胞株は、BCR-Abl cDNA(32D-p210)で形質転換した32D造血性前駆細胞株である。これらの細胞は、ペニシリン 50μg/mL、ストレプトマイシン 50μg/mLおよびL−グルタミン 200mMを加えたRPMI/10%ウシ胎児血清(RPMI/FCS)中で維持する。形質転換していない32D細胞を、IL3供給源として15%のWEHI馴化培地を添加して同様に維持する。
【0236】
50μlの32Dまたは32D-p210細胞懸濁液を、Greiner 384 ウェル・マイクロプレート(黒色)に、5000細胞/ウェルの密度で播種する。50nlの試験化合物(DMSOストック溶液中1mM)をそれぞれのウェルに加える(STI571をポジティブ・コントロールとして含む)。細胞を37℃、5% COで72時間インキュベートする。10μlの60% Alamar Blue溶液(Tek diagnostics)をそれぞれのウェルに加え、細胞をさらに24時間インキュベートする。蛍光強度(励起 530nm, 放出 580nm)を、Acquest(商標)システム(Molecular Devices)を用いて定量する。
【0237】
細胞のBCR-Abl依存性増殖の阻害
32D-p210細胞を、96ウェルTCプレートに、15,000細胞/ウェルの密度で播種する。50μlの試験化合物の2倍連続希釈液(Cmaxは40μMである)をそれぞれのウェルに加える(STI571をポジティブ・コントロールとして含む)。細胞を37℃、5% COで48時間インキュベートした後、15μLのMTT(Promega)をそれぞれのウェルに加え、細胞をさらに5時間インキュベートする。570nmの光学密度を分光学的に定量し、IC50値、すなわち50%阻害に必要な化合物の濃度を、用量応答曲線から決定する。
【0238】
細胞周期分布に対する効果
32Dおよび32D-p210細胞を、6ウェルTCプレートに、5mlの培地中2.5×10細胞/ウェルの密度で播種し、試験化合物を1または10μMで加える(STI571をコントロールとして含む)。次いで細胞を37℃、5% COで、24または48時間インキュベートする。2mlの細胞懸濁液をPBSで洗浄し、70% EtOHで1時間固定化し、PBS/EDTA/RNAアーゼ Aで、30分間処理する。ヨウ化プロピジウム(Cf=10μg/ml)を加え、蛍光強度を流動細胞計測法によって、FACScalibur(商標)システム(BD Biosciences)で定量する。本発明の試験化合物は、32D-p210細胞に対してアポトーシス効果を示すが、親32D細胞においてはアポトーシスを誘発しない。
【0239】
細胞のBCR-Abl自己リン酸化に対する効果
BCR-Abl自己リン酸化を、捕捉Elisaで、c-abl特異的捕捉抗体および抗ホスホチロシン抗体を用いて定量する。32D-p210細胞を、96ウェルTCプレートに、50μLの培地中2×10細胞/ウェルで播種する。50μLの試験化合物の2倍連続希釈液(Cmaxは10μMである)を、それぞれのウェルに加える(STI571をポジティブ・コントロールとして含む)。細胞を37℃、5%COで90分間インキュベートする。次いで細胞を、氷上で、プロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤を含む150μlの溶解緩衝液(50mM Tris-HCl(pH 7.4)、150mM NaCl、5mM EDTA、1mM EGTAおよび1% NP-40)で1時間処理する。50μLの細胞溶解物を、予め抗abl特異的抗体でコートして遮断した96ウェルoptiplatesに加える。該プレートを4℃で4時間インキュベートする。TBS-Tween 20緩衝液で洗浄後、50μlのアルカリホスファターゼ結合抗ホスホチロシン抗体を加え、該プレートをさらに4℃で終夜インキュベートする。TBS-Tween 20緩衝液で洗浄後、90μlの発光基質を加え、発光をAcquest(商標)システム(Molecular Devices)を用いて定量する。BCR-Abl発現細胞の増殖を阻害する本発明の試験化合物は、投与量に依存して、細胞のBCR-Abl自己リン酸化を阻害する。
【0240】
Bcr-ablの変異体形態を発現する細胞の増殖に対する効果
BCR-Ablの野生型、またはSTI571耐性を有するかまたはSTI571への感受性が減退した変異体(G250E、E255V、T315I、F317L、M351T)の何れかの形態を発現するBa/F3細胞に対する抗増殖効果について、本発明の化合物を試験する。変異体BCR-Abl発現細胞および非形質転換細胞に対するこれらの化合物の抗増殖効果を、上記の通りに、10、3.3、1.1および0.37μMで試験する(IL3がない培地中)。非形質転換細胞に対する毒性がない化合物のIC50値を、上記の通りに得られる用量応答曲線から決定する。
【0241】
FGFR3 (酵素アッセイ)
精製FGFR3(Upstate)でのキナーゼ活性アッセイは、キナーゼ緩衝液(30mM Tris-HCl(pH 7.5)、15mM MgCl、4.5mM MnCl、15μM NaVOおよび50μg/ml BSA)中0.25μg/mLの酵素および基質(5μg/mL ビオチン−ポリ−EY(Glu, Tyr)(CIS-US, Inc.)および3μM ATP)を含む最終容積10μLにおいて行う。2個の溶液を調製する:キナーゼ緩衝液中のFGFR3酵素を含む5μlの第1溶液は、始めに384フォーマット ProxiPlate(登録商標) (Perkin-Elmer)に入れ、続いて50nlのDMSOに溶解させた化合物を添加し、次いでキナーゼ緩衝液中の基質(ポリ−EY)およびATPを含む5μlの第2溶液を、それぞれのウェルに加える。反応物を室温で1時間インキュベートし、10μLのHTRF検出混合物[30mM Tris-HCl(pH 7.5)、0.5M KF、50mM ETDA、0.2mg/ml BSA、15μg/ml ストレプトアビジン−XL665 (CIS-US, Inc.)および150ng/ml クリプテート結合抗ホスホチロシン抗体(CIS-US, Inc.)を含む]を添加することによって反応を停止させる。ストレプトアビジン−ビオチン相互作用を可能にするために室温で1時間インキュベートした後、時間分解蛍光シグナルをAnalyst GT (Molecular Devices Corp.)で測定する。12種の濃度(50μMから0.28nMの1:3希釈)でのそれぞれの化合物の%阻害の線形回帰分析によってIC50値を計算する。このアッセイにおいて、本発明の化合物は、10nMから2μMの範囲のIC50を有する。
【0242】
FGFR3 (細胞アッセイ)
FGFR3細胞キナーゼ活性に依存する形質転換Ba/F3-TEL-FGFR3細胞増殖を阻害し得る能力について、本発明の化合物を試験する。Ba/F3-TEL-FGFR3を、培養培地として10%ウシ胎児血清を加えたRPMI 1640を含む懸濁液中で800,000細胞/mLまで培養する。細胞を384ウェル・フォーマット・プレートに、50μlの培養培地中5000細胞/ウェルで入れる。本発明の化合物をジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解し、希釈する。12種の1:3連続希釈液をDMSOで調製し、典型的には10mMから0.05μMの範囲の濃度勾配を作成する。細胞を50nLの希釈された化合物と共に加え、細胞培養インキュベーター中で48時間インキュベートする。細胞を増殖させることによって作り出される還元環境をモニターするために用いられ得るAlamarBlue(登録商標)(TREK Diagnostic Systems)を、10%の最終濃度で細胞に加える。37℃細胞培養インキュベーター中でさらに4時間インキュベートした後、還元されたAlamarBlue(登録商標)による蛍光シグナル(励起 530nm、放出 580nm)を、Analyst GT (Molecular Devices Corp.)で定量する。12種の濃度でのそれぞれの化合物の%阻害の線形回帰分析によってIC50値を計算する。
【0243】
FLT3およびPDGFRβ(細胞アッセイ)
FLT3およびPDGFRβの細胞活性に対する本発明の化合物の効果は、Ba/F3-TEL-FGFR3を用いる代わりに、それぞれBa/F3-FLT3-ITDおよびBa/F3-Tel-PDGFRβを用いる以外、FGFR3細胞活性について上で記載した方法と同一の方法を用いて行う。
【0244】
b-Raf酵素アッセイ
b-Rafの活性を阻害する能力について、本発明の化合物を試験する。該アッセイは、黒壁および透明底を有する384ウェル MaxiSorp プレート(NUNC)中で行う。基質であるIκBαをDPBS(1:750)で希釈し、15μlをそれぞれのウェルに加える。プレートを4℃で終夜インキュベートし、EMBLAプレート洗浄機を用いてTBST(25mM Tris(pH 8.0)、150mM NaClおよび0.05% Tween-20)で3回洗浄する。プレートを Superblock (15μl/ウェル)によって室温で3時間ブロックし、TBSTで3回洗浄し、軽打して乾かす(pat-dried)。20μM ATP(10μl)を含むアッセイ緩衝液をそれぞれのウェルに加え、続いて100nlまたは500nlの化合物を加える。B-Rafをアッセイ緩衝液で希釈し(1μlを25μlに)、10μlの希釈されたb-Rafをそれぞれのウェルに加える(0.4μg/ウェル)。プレートを室温で2.5時間インキュベートする。TBSTでプレートを6回洗浄することによって、キナーゼ反応を停止させる。ホスホ−IκBα(Ser32/36)抗体をSuperblock(1:10,000)で希釈し、15μlをそれぞれのウェルに加える。プレートを4℃で終夜インキュベートし、TBSTで6回洗浄する。AP結合ヤギ抗マウスIgGを Superblock (1:1,500)で希釈し、15μlをそれぞれのウェルに加える。プレートを室温で1時間インキュベートし、TBSTで6回洗浄する。15μlの蛍光Attophos AP基質(Promega)をそれぞれのウェルに加え、プレートを室温で15分間インキュベートする。AcquestまたはAnalyst GTで、蛍光強度プログラム(励起 455nm、励起 580nm)を用いてプレートを測定する。
【0245】
b-Raf細胞アッセイ
A375細胞中でMEKのリン酸化を阻害する能力について、本発明の化合物を試験する。A375細胞株(ATCC)は、ヒトの黒色腫患者に由来し、B-Raf遺伝子上にV599E変異を有する。リン酸化されたMEKの濃度は、B-Rafの変異により上昇する。サブコンフルエントからコンフルエントのA375細胞を、血清を含まない培地中で、化合物と共に、37℃で2時間インキュベートする。次いで、細胞を冷PBSで1回洗浄し、1% Triton X100を含む溶解緩衝液で溶解させる。遠心分離後、上清をSDS-PAGEにかけ、次いでニトロセルロース膜に移す。次いで膜を抗ホスホ−MEK抗体(ser217/221)(Cell Signaling)でウェスタン・ブロットにかける。リン酸化MEKの量を、ニトロセルロース膜上のホスホ−MEKバンドの密度によってモニターする。
【0246】
Upstate KinaseProfiler(商標)−放射性酵素フィルター結合アッセイ
キナーゼ・パネルの個々のメンバーを阻害する能力について、本発明の化合物を評価する。この一般的なプロトコルに従って、最終濃度10μMで本化合物を2回試験する。キナーゼ緩衝液の組成と基質は、“Upstate KinaseProfiler(商標)”パネルに含まれる種々のキナーゼに対して変えることに注意する。キナーゼ緩衝液(2.5μl, 10×, 必要な場合はMnClを含む)、活性なキナーゼ(0.001〜0.01単位;2.5μl)、キナーゼ緩衝液中特異的またはポリ(Glu4-Tyr)ペプチド(5〜500μMまたは.01mg/ml)、およびキナーゼ緩衝液(50μM;5μl)を氷上でエッペンドルフ中で混合する。Mg/ATP混合物(10μl、67.5(または33.75)mM MgCl、450(または225)μM ATPおよび1μCi/μl [γ−32P]−ATP(3000Ci/mmol))を加え、反応物を約30℃で約10分間インキュベートする。反応混合物を、2cm×2cm P81(ホスホセルロース, 正電荷ペプチド基質)またはWhatman No.1(ポリ(Glu4-Tyr)ペプチド基質)試験紙切片(square)上にスポット(20μl)する。アッセイ切片を、0.75% リン酸で、それぞれ5分間4回洗浄し、そしてアセトンで5分間1回洗浄する。アッセイ切片をシンチレーション・バイアルに移し、5mlのシンチレーション・カクテルを加え、ペプチド基質に対する32P組み込み(cpm)を、Beckmanシンチレーション計数機で定量する。%阻害をそれぞれの反応について計算する。
【0247】
SYBR Green Iを用いた抗マラリアアッセイ
感染した赤血球中の寄生虫血症の増殖を阻害する能力を測定するために、本発明の化合物をアッセイし得る。該増殖は、二重鎖DNAに高い親和性を有するSYBR Green I (Invitrogen)(登録商標) 色素を添加することによって定量される。
【0248】
薬物スクリーニングのために、ヒトの血清を含まない20μlのスクリーニング培地を、3個のアッセイ・プレートに入れる。次いで、抗マラリア・コントロール(クロロキンおよびアーテミシニン(artimesinin))を含む、50nlのそれぞれの本発明の化合物を、アッセイ・プレートに移す。50nlのDMSOをベースラインおよびバックグラウンド・コントロール・プレートに移す。次いで、30μlのスクリーニング培地中のP. falciparum感染ヒト赤血球の懸濁液を、最終ヘマトクリット2.5%、最終寄生虫血症3%となるように、アッセイ・プレートおよびベースライン・コントロール・プレートに入れる。感染していない赤血球を、最終ヘマトクリットが2.5%となるようバックグラウンド・コントロール・プレートに入れる。該プレートを、93% N、4% COおよび3% Oガス混合物と共に、37℃のインキュベーター中で72時間置く。10μlの10×溶液のSYBR Green I (登録商標)を該プレートに入れる。該プレートを密封し、赤血球を溶解させるために−80℃の冷凍庫中で終夜置く。該プレートを解凍し、最適染色のために室温で終夜放置する。Acquest system (Molecular Devices)を用いて、蛍光強度を測定する(励起 497nm, 放出 520nm)。それぞれの化合物について%阻害を計算する。
【0249】
遊離形または薬学的に許容される塩形の式Iの化合物は、例えば、本明細書に記載されたin vitro試験によって示される有益な薬理学的性質を示す。
【0250】
本明細書に記載された例および態様は、例示の目的のためのみであり、それに照らした種々の修飾または変更は当業者に示唆されており、またこの明細書および請求の範囲の精神および範囲に含まれるべきである。本明細書で引用された全ての文献、特許および特許明細書は、全ての目的について、言及することによって本明細書に組み込まれている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

[式中、
Xは、結合およびNHから選択され;
Yは、結合およびNHから選択され;
は、シクロヘキシル、ピリジニル、キノリニル、イソキノリニルおよびフェニルから選択され;ここで、Rのシクロヘキシル、ピリジニル、キノリニル、イソキノリニルまたはフェニルは、所望によりハロ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロ置換C1−6アルキル、ハロ置換C1−6アルコキシ、−NR5a5b、−OXNR5a5bおよびヘテロシクリルから独立して選択される1から3個の基で置換されていてもよく;ここで、Xは、結合およびC1−4アルキレンから独立して選択され;R5aおよびR5bは、水素、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロ置換C1−6アルキルおよびハロ置換C1−6アルコキシから独立して選択され;
は、ハロ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロ置換C1−6アルキルおよびハロ置換C1−6アルコキシから選択され;
は、ハロ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロ置換C1−6アルキルおよびハロ置換C1−6アルコキシから選択され;
は、ハロ、シアノ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロ置換C1−6アルキル、ハロ置換C1−6アルコキシ、C6−10アリール−C0−4アルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、−XNR、−XNROR、−XNROR、−XNRC(O)NR、−XS(O)NR、−XS(O)、−XNR、−XNROR、−XC(O)R、−XOXOR、−OX、−X、−XC(O)OR、−XORおよび−XOXORから独立して選択される1から3個の基で置換されているヘテロアリールであり;ここで、それぞれのXは、結合およびC1−4アルキレンから独立して選択され;XはC1−4アルキレンであり;それぞれのRは、水素、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C3−12シクロアルキル、C6−10アリール−C0−4アルキル、ヘテロアリール−C0−4アルキルおよびヘテロシクリルから独立して選択され;
ここで、Rのアリール、シクロアルキル、ヘテロアリールまたはヘテロシクリル置換基は、所望によりハロ、ヒドロキシ、シアノ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロ置換C1−6アルキル、ハロ置換C1−6アルコキシ、−L−OR、−L−C(O)OR、−L−C(O)NRおよび−L−Rから独立して選択される1から3個の基でさらに置換されていてもよく;ここで、Lは、結合およびC1−4アルキレンから選択され;Rは、水素、C1−6アルキルおよびヘテロシクリルから選択される。ただし、Rは、トリフルオロメチル基によって置換されているピリジン−3−イルではない。]
の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
請求項1に記載された式Ia:
【化2】

[式中、
Xは、結合およびNHから選択され;Yは、結合およびNHから選択され;ここで、XまたはYの何れかは結合であるが両方とも結合ではなく;
は、ハロ、メチル、メトキシ、トリフルオロメチルおよびトリフルオロメトキシから選択され;
は、ハロ、シアノ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロ置換C1−6アルキル、ハロ置換C1−6アルコキシ、C6−10アリール−C0−4アルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、−XNR、−XNROR、−XNROR、−XNRC(O)NR、−XS(O)NR、−XS(O)、−XNR、−XNROR、−XC(O)R、−XOXOR、−OX、−X、−XC(O)OR、−XORおよび−XOXORから独立して選択される1から3個の基で置換されているヘテロアリールであり;ここで、それぞれのXは、結合およびC1−4アルキレンから独立して選択され;XはC1−4アルキレンであり;それぞれのRは、水素、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C3−12シクロアルキル、C6−10アリール−C0−4アルキル、ヘテロアリール−C0−4アルキルおよびヘテロシクリルから独立して選択され;
ここで、Rのアリール、シクロアルキル、ヘテロアリールまたはヘテロシクリル置換基は、所望によりハロ、ヒドロキシ、シアノ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロ置換C1−6アルキル、ハロ置換C1−6アルコキシ、−L−OR、−L−C(O)OR、−L−C(O)NRおよび−L−Rから独立して選択される1から3個の基でさらに置換されていてもよく;ここで、Lは、結合およびC1−4アルキレンから選択され;Rは、水素、C1−6アルキルおよびヘテロシクリルから選択され;
は、水素であり;Rは、水素、ハロ、メトキシ、アミノ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメチル、ピロリジニル、モルホリノ、2−メチル−モルホリノ、2,6−ジメチル−モルホリノ、シアノ、−NR5a5bおよびメチルから選択されるか;またはRおよびRは、RおよびRが結合している炭素原子と一体となってフェニルを形成し;ここで、R5aおよびR5bは、水素、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロ置換C1−6アルキルおよびハロ置換C1−6アルコキシから独立して選択され;
は、水素、モルホリノ、ハロ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロ置換C1−6アルキル、ハロ置換C1−6アルコキシ、−NR5a5b、−OXNR5a5bおよびヘテロシクリルから選択され;ここで、Xは、結合およびC1−4アルキレンから独立して選択され;R5aおよびR5bは、水素、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロ置換C1−6アルキルおよびハロ置換C1−6アルコキシから独立して選択される。]
の化合物。
【請求項3】
がメチルであり;
が、ピラゾリル、ピリジニル、インドリル、インドリン−2−イル、チエニル、チアゾリル、3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン−6−イル、フラニル、ベンゾ[b]フラニル、1,3,4−チアジアゾリル、ベンゾ[b]チオフェニル、ピロリル、1H−インダゾリル、イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル、オキサゾリル、ベンゾ[d]チアゾール−6−イル、1H−ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール−5−イル、キノリニル、1H−インドリル、3,4−ジヒドロ−2H−ピラノ[2,3−b]ピリジニル、3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン−7−イルまたは2,3−ジヒドロフロ[2,3−b]ピリジニルであり;
ここで、Rのヘテロアリールは、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、メチル、アミノ、フェニル、ヒドロキシ−エチル(メチル)アミノ、ピペリジニル、トリフルオロメチル、2−メチルアリルオキシ、シクロプロピル−メチル(プロピル)アミノ−メチル、トリフルオロメトキシ、3,4−ジヒドロイソキノリン−2(1H)−イル、アミノ−カルボニル−メチル(エチル)アミノ−メチル、ピリジニル−メチル(エチル)−アミノ−メチル、イソプロピル(エチル)−アミノ−メチル、プロピル(エチル)−アミノ−メチル、モルホリノ、ブチル(メチル)アミノ−メチル、イソブチル(メチル)アミノ−メチル、ベンジル(エチル)アミノ−メチル、ピリジニル、ピロリジニル、アゼパニル、ヒドロキシ−プロピルオキシ、エチル、メトキシ、メチル−カルボニル、エトキシ、プロピルオキシ、t−ブチル、ベンジル、プロピル、イソプロピルオキシ、イソプロピル、ジエチルアミノ−スルホニル、メチル−スルホニル、イソプロピル−スルホニル、ジエチル−アミノ−メチル、トリフルオロエトキシ、ピペリジニル、イソキノリニル、(ヒドロキシ−エチル)(メチル)アミノ、ジフルオロ−エトキシ、シクロプロピル、シクロプロピル−メトキシおよびテトラヒドロフラニル−オキシから独立して選択される1から3個の基で置換されており;
ここで、Rのアリール、シクロアルキル、ヘテロアリールまたはヘテロシクリル置換基は、所望によりハロ、メチル、ピロリジニル−メチル、トリフルオロメチル、ヒドロキシ−メチル、ヒドロキシおよびシアノから独立して選択される1から3個の基でさらに置換されていてもよい、
請求項2に記載された化合物。
【請求項4】
が、水素およびジメチル−アミノ−プロピルオキシから選択される、請求項3に記載された化合物。
【請求項5】
N−(3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)−4−メチルフェニル)−5−クロロ−1H−インドール−2−カルボキサミド;
N−(3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)−4−メチルフェニル)−1−エチル−3−メチル−1H−ピラゾール−5−カルボキサミド;
N−(3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)−4−メチルフェニル)−1,3−ジメチル−1H−ピラゾール−5−カルボキサミド;
N−(3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)−4−メチルフェニル)−5−(トリフルオロメチル)−2−メチルオキサゾール−4−カルボキサミド;
N−(3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)−4−メチルフェニル)−2−モルホリノピリジン−4−カルボキサミド;
N−(3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)−4−メチルフェニル)−6−メトキシピリジン−3−カルボキサミド;
N−(3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)−4−メチルフェニル)−6−メトキシピリジン−3−カルボキサミド;
N−(3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)−4−メチルフェニル)−1,5−ジメチル−1H−ピラゾール−3−カルボキサミド;
N−(3−(4−(5−メチルピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)−4−メチルフェニル)−1,5−ジメチル−1H−ピラゾール−3−カルボキサミド;
N−(3−(4−(5−メトキシピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)−4−メチルフェニル)−1,5−ジメチル−1H−ピラゾール−3−カルボキサミド;
2−(2,2−ジフルオロエトキシ)−N−(3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)−4−メチルフェニル)ピリジン−4−カルボキサミド;
6−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−N−(3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)−4−メチルフェニル)ピリジン−3−カルボキサミド;
3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)−N−(3,4−ジヒドロ−3−オキソ−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン−6−イル)−4−メチルベンズアミド;および
N−(3−(4−(5−メトキシピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)−4−メチルフェニル)−1,5−ジメチル−1H−ピラゾール−3−カルボキサミド;
から選択される、請求項4に記載された化合物。
【請求項6】
薬学的に許容される賦形剤と組み合わせた、治療有効量の請求項1に記載された化合物を含む医薬組成物。
【請求項7】
該薬学的に許容される賦形剤が非経腸投与に適切である、請求項6に記載された医薬組成物。
【請求項8】
該薬学的に許容される賦形剤が経口投与に適切である、請求項6に記載された医薬組成物。
【請求項9】
キナーゼ活性を調節する方法であって、それが必要な系または対象に、治療有効量の請求項1に記載された化合物またはその薬学的に許容される塩、またはそれらの医薬組成物を投与し、それによってキナーゼ活性を調節することを含む方法。
【請求項10】
該キナーゼが、c-kit、Abl、Lyn、MAPK14 (p38δ)、PDGFRα、PDGFRβ、ARG、BCR-Abl、BRK、EphB、Fms、Fyn、KDR、LCK、PDGF-R、b-Raf、c-Raf、SAPK2、Src、Tie2およびTrkB、またはその組み合わせから選択される、請求項9に記載された方法。
【請求項11】
該キナーゼがc-kitキナーゼ受容体である、請求項9に記載された方法。
【請求項12】
請求項1に記載された化合物を、c-kit、PDGFRαおよび/またはPADGRβキナーゼ受容体と直接接触させる、請求項11に記載された方法。
【請求項13】
該接触をin vitroまたはin vivoで行う、請求項12に記載された方法。
【請求項14】
キナーゼ活性の調節が、疾患または状態の病状および/または症候を予防する、阻害するまたは改善する疾患または状態を処置する方法であって、対象に、治療有効量の請求項1に記載された化合物またはその薬学的に許容される塩、またはそれらの医薬組成物、および所望により治療有効量の第2薬物を投与することを含む方法。
【請求項15】
該キナーゼが、c-kit、PDGFRαおよびPADGRβキナーゼ受容体から選択される、請求項14に記載された方法。
【請求項16】
第2薬物が、気管支拡張剤、抗炎症剤、ロイコトリエン・アンタゴニストまたはIgEブロッカーである、請求項14に記載された方法。
【請求項17】
請求項1に記載された化合物を、第2薬物の前に、同時に、または後に投与する、請求項14に記載された方法。
【請求項18】
該疾患または状態が、腫瘍性障害、アレルギー性障害、炎症性障害、自己免疫障害、マラリア原虫関連疾患、肥満細胞関連疾患、移植片対宿主病、代謝性症候群、CNS関連障害、神経変性障害、疼痛状態、薬物乱用障害、プリオン病、癌、心臓疾患、線維性疾患、特発性動脈性高血圧(IPAH)または原発性肺高血圧(PPH)である、請求項14に記載された方法。
【請求項19】
該腫瘍性障害が、肥満細胞症、胃腸間質性腫瘍、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、急性骨髄球性白血病、急性リンパ性白血病、骨髄異形成症候群、慢性骨髄性白血病、結腸直腸癌、胃癌、精巣癌、神経膠芽腫、または星状細胞腫である、請求項18に記載された方法。
【請求項20】
該アレルギー性障害が、喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性副鼻腔炎、アナフィラキシー症候群、蕁麻疹、血管浮腫、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、結節性紅斑、多形性紅斑、皮膚壊死性細静脈炎、昆虫刺傷皮膚炎症、または吸血性寄生虫侵入である、請求項18に記載された方法。
【請求項21】
該炎症性障害が、関節リウマチ、結膜炎、リウマチ性脊椎炎、骨関節炎または痛風性関節炎である、請求項18に記載された方法。
【請求項22】
該自己免疫障害が、多発性硬化症、乾癬、腸炎症性疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、関節リウマチ、多発性関節炎、局所または全身性強皮症、全身性エリテマトーデス、円板状エリテマトーデス、皮膚狼瘡、皮膚筋炎、多発性筋炎、シェーグレン症候群、結節性汎動脈炎、自己免疫性腸疾患または増殖性糸球体腎炎である、請求項18に記載された方法。
【請求項23】
該移植片対宿主病が、臓器移植拒絶反応である、請求項18に記載された方法。
【請求項24】
臓器移植が、腎臓移植、膵臓移植、肝臓移植、心臓移植、肺移植または骨髄移植である、請求項18に記載された方法。
【請求項25】
該代謝症候群が、I型糖尿病、II型糖尿病または肥満である、請求項18に記載された方法。
【請求項26】
該CNS関連障害が、鬱病、気分変調性障害、気分循環性障害、摂食障害、過食症、月経前症候群、閉経後症候群、精神遅延、集中力喪失、悲観的心配、煽動、自己卑下および性欲減退、不安障害、精神障害または統合失調症である、請求項18に記載された方法。
【請求項27】
該神経変性障害が、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、プリオン病、運動神経疾患(MND)、または筋萎縮性側索硬化症(ALS)である、請求項18に記載された方法。
【請求項28】
該疼痛状態が、急性疼痛、術後疼痛、慢性疼痛、侵害受容性疼痛、癌性疼痛、神経因性疼痛または心因性疼痛症候群である、請求項18に記載された方法。
【請求項29】
該薬物使用障害が、薬物中毒、薬物乱用、薬物嗜癖、薬物依存、退薬症状または過剰投与である、請求項18に記載された方法。
【請求項30】
癌が、黒色腫、胃腸間質性腫瘍(GIST)、小細胞肺癌、または他の固形腫瘍である、請求項18に記載された方法。
【請求項31】
該線維性疾患が、C型肝炎(HCV)、肝線維症、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝硬変、肺線維症、または骨髄線維症である、請求項18に記載された方法。
【請求項32】
該マラリア原虫関連疾患がマラリアである、請求項18に記載された方法。

【公表番号】特表2010−509349(P2010−509349A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−536405(P2009−536405)
【出願日】平成19年11月2日(2007.11.2)
【国際出願番号】PCT/US2007/083543
【国際公開番号】WO2008/058037
【国際公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(503261524)アイアールエム・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (158)
【氏名又は名称原語表記】IRM,LLC
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】