説明

ターボ機械

【課題】取付及び取外しを容易にするとともに、メンテナンス性を向上させること。
【解決手段】それぞれの背面部3a,3bが互いに対向する少なくとも1つの第1の動翼1及び第2の動翼2と、これら第1の動翼1及び第2の動翼2を支持するロータシャフト4と、軸受装置とを備えて成り、それぞれロータ軸受半部6a,6b及びステータ軸受半部7a,7bを有するアキシャル軸受5a,5bが第1の動翼1及び第2の動翼2それぞれの近傍において形成され、第1の動翼1及び第2の動翼2それぞれの背面部3a,3bにおいてロータ軸受半部6a,6bが形成されているターボ機械において、第1の動翼1をロータシャフト4に固設する一方、第2の動翼2を取外し可能にロータシャフト4に結合し、ロータシャフト4を、第1の動翼1から第2の動翼2へ向けて先細状に形成するか、又は同一の径を有するよう形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それぞれの背面部が互いに対向する少なくとも1つの第1の動翼及び第2の動翼と、これら第1の動翼及び第2の動翼を支持するロータシャフトと、軸受装置とを備えて成り、それぞれロータ軸受半部及びステータ軸受半部を有するアキシャル軸受が前記第1の動翼及び前記第2の動翼それぞれの近傍において形成され、前記第1の動翼及び前記第2の動翼それぞれの前記背面部において前記ロータ軸受半部が形成されているターボ機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ターボ機械におけるロータの軸方向の変位を磁気軸受によって受け止めるために、通常は、シャフト上に直接形成されるか又はシャフト上に固定されたアキシャル軸受ディスクに形成されるアキシャル軸受面が用いられる。また、軸方向に磁気で支持されたロータシャフトを備えたターボ機械も知られており、このようなターボ機械においては、軸方向の支持のための磁気軸受半部が、ロータシャフト上に焼ばめされた互いに対向するシャフトショルダ部又はアキシャル軸受ディスクに配置されている。
【0003】
ところで、ターボ機械においてできる限り短いロータ及びできる限り小さなロータ質量を有する形態を実現するために、冒頭に記載したような特徴を有するものが特許文献1に開示されている。ロータ軸受半部がラジアル方向の動翼の背面部に形成されているため、アキシャル軸受に対して必要な空間を大幅に削減することが可能である。このとき、アキシャル軸受半部は、ケーシングの壁面部及びラジアル方向の動翼の背面部に統合されているとともに、軸受から独立して設けられる必要があるものである。これにより、個々の構成部材の点数が削減されることになる。
【0004】
この特許文献1に記載された実施形態は、ロータの中央部に配置された電動機から両ラジアル方向の動翼へ向けてほぼ対称に形成されている。この電動機から両方向へ順に、ラジアル磁気軸受、補助軸受(Fanglager)、内部にシャフトシール部を有するステータ軸受半部を通る貫通孔及びロータシャフトの端部における可動の動翼が配置されている。また、この電動機を起点として、上記構成部材の順に両方向へ向けてロータシャフトの径がだんだんと小さくなっている。取付時には、まず、ロータシャフトを電動機と共にケーシング内へ設置する必要があり、このとき、両側に他の構成部材が設置され、最後に両動翼が設置される。また、後からメンテナンスができるよう、ターボ機械を両側から到達できるよう構成する必要があり、両側の動翼を取り外せるようにすることが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2017435号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記問題にかんがみてなされたもので、その目的とするところは、取付及び取外しを容易にするとともに、メンテナンス性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、冒頭に記載した特徴を有するターボ機械において、第1の動翼をロータシャフトに固設する一方、第2の動翼を取外し可能にロータシャフトに結合し、ロータシャフトを、第1の動翼から第2の動翼へ向けて先細状に形成するか、又は同一の径を有するよう形成したことにより達成される。
【0008】
本発明によれば、対称の形態を有しており、第1の動翼がロータシャフトに固設されている。これにより、本発明においては、第1の動翼がロータシャフトから全く分離されないか、又は非常に大きな力若しくは特別な手段によってのみロータシャフトから分離されるようになっている。例えば、第1の動翼を、ロータシャフトに焼ばめにより固設したり、このロータシャフトに溶接したり、あるいはこのロータシャフトに圧着させることが考えられる。そして、取付時には、まず固設された第1の動翼を取り付け、その後他の構成部材すなわち少なくともステータ軸受半部及び第2の動翼が順に設置される。これについて、ロータシャフトは、第1の動翼を起点として、第2の動翼へ向けて一定の径を有するか、又は先細状に形成されている。
【0009】
ロータシャフトが先細状に形成されている場合においては段が設けられており、この段部の外径は、当該部分に設けられる構成部材の内径に対応したものとなっている。そして、各構成部材は、これらが固定される各段部へ至るまでは容易に摺動可能となっている。また、取外し可能な形態となっているため、上記のような構成部材の取外し又は少なくともメンテナンスが可能となっている。特にアキシャル軸受の構成部材には、第2の動翼側から到達できるようになっている。
【0010】
本発明においては、ロータシャフトを挿通するための挿通孔を備えつつ一体形成された支持部を各ステータ軸受半部に設けたことを特徴としている。取付時に、各ステータ軸受半部が側方からロータシャフトへ挿通されるため、2つの部分に分けたり、セグメント化することが不要であり、これにより、安定性とシール性の向上が図られるだけでなく、加工における手間やコストも削減することが可能である。
【0011】
特に積極的に制御可能なアキシャル軸受を形成するために、軸受半部の片方に磁石コイルが設けられている。この磁石コイルにより、もう一方の軸受半部に作用しつつ特に必要に応じて制御可能な磁場が形成されることになる。なお、実用的な観点から、磁石コイルを固定されたステータ軸受半部に設けるのが好ましい。
【0012】
また、アキシャル磁気軸受を形成するためには、ロータ軸受半部をコイルと磁気的に相互作用する適当な材料で形成するか、又は永久磁石で形成する必要がある。なお、動翼に使用される材料は、磁気軸受のロータ軸受半部に適さないことが多い。このような場合には、動翼のうち少なくとも1つを、タービンブレードを含んで構成された動翼ブランクと、該動翼ブランクの背面側に固定された別材料から成るディスクとで形成することが考えられる。このとき、このディスクは、アキシャル軸受のロータ軸受半部を形成している。このようなディスクあるいはリングは、ロータシャフトを挿通するための挿通孔を有しており、例えば動翼ブランクに溶接されている。ここで、正確な溶接を達成するために、特に摩擦溶接を行うのが望ましい。なお、これに代えて、例えば永久磁石や磁性材料などの適当な材料をセグメントとして動翼の背面部の特に凹部に設けることも考えられる。
【0013】
また、完全な軸受装置を形成するために、ラジアル軸受を設けることが望ましい。このラジアル軸受を、例えば互いに逆に作用する2つのアキシャル軸受の間におけるロータシャフト上に設けることができる。特に、ラジアル軸受として、ロータリング及びステータリングを備えた磁気軸受を備えることも可能である。
【0014】
一方側からの取外し及び取付により、本発明においては、第1の動翼を他の構成部材と共にメインケーシング内に配置することができるようになっている。そして、ロータシャフトをメインケーシングから突出させるのが好ましく、これにより、第2の動翼がメインケーシングの外部に配置されることになる。
【0015】
背面部が互いに対向する(back-to-back Anordnung)少なくとも2つのラジアル方向の動翼を備えたターボ機械を、コンプレッサ、膨張器又は圧縮膨張器(Kompander)とすることが考えられる。また、2つの圧縮用動翼を備えたコンプレッサにおいては電動機により駆動される一方、2つの膨張用動翼を備えた膨張器においては、エネルギーを回収することができ、電動機は発電機として使用される。1つの圧縮用動翼と1つの膨張用動翼を備えた圧縮膨張器においては、電動機はオプションとしてのみ設けられており、この電動機は、使用目的に応じて、発電機としても、モータとしても機能する。
【0016】
また、本発明によれば、第1の動翼及び第2の動翼がそれぞれロータシャフトの端部に可動に配置されている。さらに、基本的には、両ラジアル方向の動翼のうち少なくとも1つにおいて、ロータシャフトを、当該ラジアル方向の動翼を超えて外部へ延出するようにしてもよい。このとき、ロータシャフトには、例えば他のラジアル方向の動翼などの少なくとも1つの他の装置を配置することが可能である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、取付及び取外しを容易にするとともに、メンテナンス性を向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明によるターボ機械の構成部材を示す図である。
【図2】メインケーシングに結合された図1に基づく配置構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0020】
図1には本発明によるターボ機械の基本的な構成部材が示されており、第1の動翼1及び第2の動翼2は、それぞれの背面部3a,3bが対向するよう、いわゆる背中合わせの配置となっている。これら第1及び第2の動翼1,2はロータシャフト4により支持されており、このロータシャフト4は、軸受装置により支持されている。また、この軸受装置は、第1及び第2の動翼1,2の近傍においてそれぞれロータ軸受半部6a,6bと、ステータ軸受半部7a,7bとを備えたアキシャル軸受5a,5bを含んで構成されている。ここで、ロータ軸受半部6a,6bは、それぞれ第1及び第2の動翼1,2における各背面部3a,3bに形成されている。
【0021】
本発明においては、第1の動翼1が例えば焼ばめによってロータシャフト4に固設されている一方、第2の動翼2は取外し可能になっている。したがって、取付時には、ステータ軸受半部7a,7b及び第2の動翼2を前後してロータシャフト4上で摺動させることが可能である。そして、このために、本実施の形態においては、ロータシャフト4は、第1の動翼から第2の動翼へ向けて先細状に形成されている。また、逆に、ロータ部材の取外しも可能である。
【0022】
図1に示すように、各ステータ軸受半部7a,7bは、ロータシャフト4及び磁石コイル9を挿通するための挿通孔を有する一体形成された支持部8を備えている。ここで、この磁石コイル9は、各支持部8の凹部に収容されている。また、第1及び第2の動翼1,2それぞれの背面部3a,3bに形成されたロータ軸受半部6a,6bは、磁石コイル9と相互に作用する材料で形成されている。ここで、これらロータ軸受半部6a,6bを例えば永久磁石、磁性材料、又は逆磁場を誘導する材料で形成することが考えられる。
【0023】
図1に示す実施形態においては、第1の動翼1は、タービンブレード10を含んで構成された動翼ブランク(Laufradrohling)11と、該動翼ブランク11の背面側に固定された他の材料から成るディスクとで形成されている。このディスクはアキシャル軸受5aのロータ軸受半部6aを形成しており、このディスクの材料については、磁石特性の観点から選択される。また、貫通孔あるいはリングを有するディスクとして形成されたロータ軸受半部6aを、例えば摩擦溶接によって動翼ブランク11に結着させることが考えられる。
【0024】
さらに、図1には互いに反対に作用するアキシャル軸受5a,5bの間のロータシャフト上にラジアル軸受12を配置することが記載されており、このラジアル軸受12は、ロータリング13及びステータリング14を有する磁気軸受として形成されている。ここで、ステータリング14が磁石コイルを含んで構成されている一方、ロータリングは、ステータリング14における磁石コイルと共にラジアル磁気軸受を形成するよう、適当な磁石特性を有する材料で形成されている。
【0025】
また、取付に際しては、まずステータ軸受半部7a、次にラジアル軸受12、もう一方のステータ軸受半部7b、最後に第2の動翼2が、対応するロータ軸受半部6bにその背面部3bにおいて順番に取り付けられる。ここで、このような取付を容易にするために、ロータシャフト4が複数の段部において先細状となっており、各段部は、それぞれ上記の構成部材に対応するよう割り当てられている。
【0026】
なお、本発明において、上記のような構成部材を順番に取り付けるようなものではなく、逆に部分的に取り外せるような順番としてもよい。こうすることで、各構成部材を個々にメンテナンスしたり、交換することが可能である。
【0027】
また、例えば、第1の動翼1をメインケーシング15内に他の構成部材と共に固設してもよい。この場合、ロータシャフト4はメインケーシング15から突出するとともに、第2の動翼2がメインケーシング15の外部に配置されることになる。これに対応した実施形態が図2に示されており、この実施形態においては、軸受装置の取付時、メンテナンス時及び取外し時にメインケーシング15が閉鎖されたまま維持されるとともに、軸受装置をカバーするサブケーシング16のみを離間させるだけでよいという利点が得られる。
【0028】
基本的には、ターボ機械には、特にラジアル軸受12と共に第1の動翼1と第2の動翼2の間に配置可能な不図示の電動機を設けることも可能である。さらに、第1及び第2の動翼1,2をそれぞれロータシャフト4の端部において可動に配置してもよい。なお、本発明は、上記のような実施形態に限定されるものではなく、ロータシャフト4を、第1及び第2の動翼のうち少なくともいずれかから突出するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 第1の動翼
2 第2の動翼
3a,3b 背面部
4 ロータシャフト
5a,5b アキシャル軸受
6a,6b ロータ軸受半部
7a,7b ステータ軸受半部
8 支持部
9 磁石コイル
10 タービンブレード
11 動翼ブランク
12 ラジアル軸受
13 ロータリング
14 ステータリング
15 メインケーシング
16 サブケーシング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれの背面部(3a,3b)が互いに対向する少なくとも1つの第1の動翼(1)及び第2の動翼(2)と、
これら第1の動翼(1)及び第2の動翼(2)を支持するロータシャフト(4)と、
軸受装置と
を備えて成り、それぞれロータ軸受半部(6a,6b)及びステータ軸受半部(7a,7b)を有するアキシャル軸受(5a,5b)が前記第1の動翼(1)及び前記第2の動翼(2)それぞれの近傍において形成され、前記第1の動翼(1)及び前記第2の動翼(2)それぞれの前記背面部(3a,3b)において前記ロータ軸受半部(6a,6b)が形成されているターボ機械において、
前記第1の動翼(1)を前記ロータシャフト(4)に固設する一方、前記第2の動翼(2)を取外し可能に前記ロータシャフト(4)に結合し、前記ロータシャフト(4)を、前記第1の動翼(1)から前記第2の動翼(2)へ向けて先細状に形成するか、又は同一の径を有するよう形成したことを特徴とするターボ機械。
【請求項2】
前記第1の動翼(1)を前記ロータシャフト(4)に焼ばめしたことを特徴とする請求項1記載のターボ機械。
【請求項3】
前記ロータシャフト(4)を挿通するための挿通孔を備えつつ一体形成された支持部(8)を前記各ステータ軸受半部(7a,7b)に設けたことを特徴とする請求項1又は2記載のターボ機械。
【請求項4】
前記ステータ軸受半部(7a,7b)に磁石コイル(9)又は永久磁石を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のターボ機械。
【請求項5】
前記第1の動翼(1)を、タービンブレード(10)を含んで構成された動翼ブランク(11)と、該動翼ブランク(11)の背面側に固定された別材料から成るディスクとで形成し、該ディスクにより、前記アキシャル軸受(5a)における前記ロータ軸受半部(6a)を形成したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のターボ機械。
【請求項6】
前記各アキシャル軸受(5a,5b)の間における前記ロータシャフト(4)上にラジアル軸受(12)を配置したことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のターボ機械。
【請求項7】
前記第1の動翼(1)を他の構成部材と共にメインケーシング(15)内に配置し、前記ロータシャフト(4)を前記メインケーシング(15)から突出させるとともに、前記第2の動翼(2)を前記メインケーシング(15)の外部に配置したことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のターボ機械。
【請求項8】
前記第1の動翼(1)と前記第2の動翼(2)の間に電動機を配置したことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のターボ機械。
【請求項9】
前記第1の動翼(1)及び前記第2の動翼を、それぞれ前記ロータシャフト(4)の端部に可動に配置したことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のターボ機械。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−202406(P2012−202406A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−59889(P2012−59889)
【出願日】平成24年3月16日(2012.3.16)
【出願人】(512068581)アトラス・コプコ・エネルガス・ゲゼルシヤフト・ミト・ベシユレンクテル・ハフツング (3)
【Fターム(参考)】