説明

ディーゼルエンジンからの排ガスを浄化する方法

本発明は、選択的接触還元のための装置、及び該選択還元触媒のための装置の下流に組み込まれた、触媒層によって好ましくは少なくとも部分的に覆われた、ディーゼル粒子フィルターを含む系におけるディーゼルエンジンからの排ガスを浄化する方法を提供する。該選択的接触還元のための装置の上流及び/又は、選択的接触還元のための装置とディーゼル粒子フィルターとの間に接触酸化のための装置が組み込まれる。該選択的接触還元のための装置の入口に、制御された量の還元剤を注入するための装置が組み込まれ、そして該接触酸化の入口に、制御された量の炭化水素を注入するための装置が組み込まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジンからの排ガスを浄化する方法に関する。粒子、不完全燃焼の炭化水素類、一酸化炭素、CO、及び窒素酸化物類、NOは、排ガスから除去される。
【0002】
本発明は、特に、効果的であるが簡単なフィルター再生方法を含む浄化方法に関する。
【0003】
排ガスを浄化する方法はすでに知られている。米国特許第6,863,874号明細書(特許文献1)には、排ガス中の不純物を酸化し、続いて二酸化窒素及び酸素によって煤を酸化させるフィルターによって除去する方法が開示されている。さらに、下流において、NO吸収剤の入口に還元剤が注入され、その後続いて三元触媒又は選択還元のための触媒が導入される。
【0004】
別の方法が米国特許第6,696,031号明細書(特許文献2)に開示されており、該方法において不純物は、酸化、濾過及び選択的接触還元(SCR)によって除去される。アンモニアは、酸化又はSCRの上流に注入され、そして更なるその上流には予備酸化触媒が導入され、そこには炭化水素を導入することができる。コンピューターが二つのアンモニア流を制御しなければならない。
【0005】
排ガスからの不純物は、米国特許第6,871,489号明細書(特許文献3)の方法、すなわちそのガスを酸化触媒、迂回路を備えた冷却器、尿素の注入によるSCRセクションを通過させ、加熱器を介し、そして最後にディーゼル粒子フィルターを通過させることによって除去される。このように、加熱器からの熱出力を増大させることによってフィルターの温度を上昇させてフィルターを再生しなければならない。
【0006】
これらの方法は、複雑であるか、エネルギーを過度に要求するか、又は低温エンジンの始動時における緩慢な尿素分解と同時の緩慢なNOの接触還元であるかのいずれかである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6,863,874号明細書
【特許文献2】米国特許第6,696,031号明細書
【特許文献3】米国特許第6,871,489号明細書
【特許文献4】欧州特許出願第1916029号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の一般の目的は、粒子、不完全燃焼の炭化水素、一酸化炭素、CO、及び窒素酸化物類、NOを排ガスから除去し、そしてフィルターを再生すると同時に非常に簡単な浄化方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、選択的接触還元のための装置、好ましくは触媒層によって少なくとも部分的に覆われ、そして上記の選択還元触媒のための装置の下流に組み込まれた、ディーゼル粒子フィルターを含むシステムにおけるディーゼルエンジンからの排ガスを浄化する方法を提供する。接触酸化のための装置は、上記の選択的接触還元のための装置の上流及び/又は該選択的接触還元のための装置と触媒化されたディーゼル粒子フィルターとの間に組み込まれる。制御された量の還元剤を注入するための装置は、上記の選択的接触還元のための装置の入口に組み込まれ、そして制御された量の炭化水素を注入するための装置は、上記の接触酸化の入口に組み込まれる。
【0010】
本発明は、触媒化されたディーゼル粒子フィルターが、還元剤の注入部を閉じることによって受動的に再生され、そして、触媒化されたディーゼル粒子フィルターが、少なくとも一つの接触酸化のための装置の炭化水素注入部入口を開き、そして任意に還元剤の注入部を閉じることによって能動的に再生されることを提供する。そのフィルターは、500℃までの温度のNOによって受動的に再生され、そして500℃〜700℃の温度で能動的に再生される。
【0011】
この還元剤は、アンモニア、アンモニア水溶液、尿素、尿素水溶液、シアヌル酸である。その他の可能な窒素ベースの試薬には、アンメリド(ammelide)、アンメリンゲ(ammelinge)、シアヌル酸アンモニウム、ビウレット、カルバミン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、ギ酸アンモニウム、メラミン、及びトリシアノウレアである。アンモニア、アンモニア水溶液、尿素、尿素水溶液、シアヌル酸が好ましい。
【0012】
炭化水素は燃料であり、好ましくはディーゼルエンジンのための燃料である。選択的接触還元は、バナジウムベース触媒、又はゼオライトベース触媒、又は機能化された酸性の卑金属酸化物混合物の存在下で起こる。バナジウムベース触媒は、チタン酸化物上のタングステン酸化物又はモリブデン酸化物が追加され得るバナジウム酸化物である。上記のゼオライトベース触媒は、銅及び/又は鉄変性βゼオライト、ZSM−5又はチャバザイト(chabasite)であり、そして上記の機能化された酸性の卑金属酸化物混合物は、酸性のセリウム−ジルコニウム酸化物混合物及びジルコニウム−チタン酸化物混合物を含む。バナジウムベース触媒は150℃〜550℃で使用され、そしてゼオライトベース触媒又は酸性の卑金属酸化物混合物触媒は150℃〜800℃で使用される。
【0013】
第一の酸化触媒は選択的接触還元装置の上流に組み込まれ、そして第二の酸化触媒はその選択的接触還元装置とディーゼル粒子フィルターとの間に組み込まれる場合は、それからアンモニアをその第一の酸化触媒の入口に注入することができる。第一の酸化触媒は、ランタン酸化物促進アルミニウム酸化物上の白金及びパラジウム、又はケイ素酸化物促進チタン酸化物上の白金及びパラジウム、又はジルコニウム酸化物促進セリウム酸化物上の白金及びパラジウムを含む。第二の酸化物触媒は、ランタン酸化物促進アルミニウム酸化物上のパラジウム、又はケイ素促進チタン酸化物上のパラジウム、又はジルコニウム酸化物促進セリウム酸化物上のパラジウム、又は銅酸化物及びマンガン酸化物の混合物、又は銅酸化物及びマンガン酸化物の混合物上のパラジウムを含む。
【0014】
ディーゼル粒子フィルター上の触媒層は、パラジウム及び白金等の貴金属と組み合わせることができる、卑金属酸化物類の混合物を含む。セリウム酸化物ジルコニウム酸化物混合物上のパラジウムの特に有利な例が欧州特許出願第1916029号(特許文献4)に開示されている。
【0015】
フィルター全体にわたる圧力降下が測定され、そして生成された信号は還元剤の追加及び燃料の追加を制御するのに用いられる。
【0016】
本発明は、上述の方法を実施するためのシステムをさらに含む。
【0017】
このシステムは、選択還元触媒の急速な低温始動を確保し、そして非常に高いNO転化率をもたらす。還元剤及び炭化水素注入の能動的なオン/オフ管理により、触媒化フィルターの受動的及び能動的再生が確保される。
【0018】
本発明は、動力車、典型的には自動車、バン、トラック、及び船舶にも組み込まれているディーゼルエンジンからの排ガスの洗浄において非常に有用である。また、ディーゼルエンジンで駆動される発電所においても、本発明の方法によって排ガスを有利に洗浄することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、公知の技術による排ガスの浄化方法の概要図を示している。
【図2】図2は、本発明の方法の好ましい一実施形態による排ガスの浄化方法の概要図である。
【図3】図3は、本発明の方法の好ましい別の実施形態による排ガスの浄化方法の概要図である。
【図4】図4は、本発明の方法の好ましい更に別の実施形態による排ガスの浄化方法の概要図である。
【0020】
ディーゼルエンジンは過剰空気で稼動し、そしてそれらの排ガスは、窒素酸化物類、NO、一酸化炭素、CO、粒状物質及び不完全燃焼の炭化水素を含み、これらは全て健康上被害を招く。
【0021】
本発明は、基本的に通常の排ガス浄化の間に次の三つの工程を含む:
接触酸化であり、その際、
CO、NO及びHCがOと反応してCO、NO及びHO及び熱が生ずる;
選択的接触還元であり、その際、
NO及びNOが、NHにより典型的に還元されてN及びHOが生成される;及び
触媒的に被覆されたフィルターでの粒子の捕獲であり、その際、
CO、C、HC及び生じ得るNHのスリップ(slip)がN、CO及びHOへと酸化される。
【0022】
ここで、Cは、ディーゼル粒子フィルター上に堆積した粒状物質又は煤を意味する。
【0023】
しかしながら、粒子がフィルター上に蓄積すると、フィルターは、フィルター被膜の二酸化窒素、卑金属酸化物又は排ガス中の高温酸素によって再生することができる。
【0024】
C及びHCは、NO、NO及び/又はOによって酸化されてN、CO及びHOを形成する。
【0025】
現在使用されているディーゼル排気システム技術(公知技術)は、図1に示されるように、SCR触媒を触媒化フィルターの下流に有することを特徴としている。
【0026】
排ガス1は、エンジンから酸化触媒2へ流れ、酸化された排ガス3は、その後ディーゼル粒子フィルター4へ運ばれる。この後、その排ガス中に還元剤5が注入され、その混合された排ガス6は、次いで選択的接触還元SCRのために触媒7中へ導入され、その触媒7を出る排ガス8は浄化されている。高い温度が必要な場合、炭化水素9がエンジン内へ後注入されるか、又はエンジン及び酸化触媒2の間で排ガス中に注入される。
【0027】
これを以下の工程(1)で更に説明する。
(1) エンジン → DOC→cDPF → Ureainj → zSCR
ここで、DOCはNOを形成するためのPtを含むディーゼル酸化触媒であり、そしてcDPFは、これもまたNOを形成するためのPtを含む触媒化煤フィルターである。
【0028】
Ureainjは、注入された還元剤、典型的には尿素水溶液であり、zSCRはゼオライトベースのSCR触媒又は機能化酸性卑金属酸化物混合物である。
【0029】
約600℃のフィルター入口温度のフィルターによるフィルターの強制的な再生の間、系は次の通りである。
(2) エンジン → HCinj → DOC→ cDPF → zSCR
ここで、HCinjは炭化水素であり、これはエンジンからの排ガス中及びDOCの上流へ注入される。
【0030】
NOによる煤の受動的な再生は、工程(1)に示すような構成で起こる。
【0031】
この系にはいくつかの欠点がある。低温始動からのSCRの加熱及び反応の始動が遅く、そして試験サイクルにおいても測定される全NO放出量が高くなる。尿素の注入に最低200℃が要求されるため、この始動も遅い。更に、zSCR触媒は、少なくとも750℃のフィルター再生温度に耐えることができなければならず、そして、zSCRによる作用もまた管理されたNO/NO比を通常要求し、これは、粒状物質もまたフィルター中のNOと反応するため、cDPFによって妨害される。最後に、この系は非常に高価である。
【0032】
本発明の好ましい実施形態が図2に示されている。エンジンからの排ガス1は、酸化触媒2、選択的接触還元のための触媒7を通過し、そして最後の段階としてディーゼル粒子フィルター4を通過する。還元剤5は、酸化触媒2とSCR触媒7との間に注入される。炭化水素9は、酸化触媒2の上流に注入することができる。
【0033】
cDPFの前にSCRがある逆転した構成を有する新しいディーゼル排気系を以下の工程(3)で更に説明する。これは、新しい、特別な管理をさらに含む。
(3) エンジン → DOC → Ureainj → zSCR → cDPF
ここで、zSCRはゼオライトベースのSCR触媒又は機能化酸性卑金属酸化物混合物触媒であり、最低750℃の耐性を有する。
【0034】
cDPFは、ディーゼル粒子フィルターであり、好ましくは触媒的に被覆されている。この実施形態において、市場から入手可能であり、欧州特許出願第1916029号(特許文献4)中に開示されている、Haldor Topsoe A/SのBMC−211触媒のようなパラジウム卑金属酸化物被膜を用いることが特に有利である。この触媒は、可能なNO放出量を制限し、そして300〜600℃の温度において煤の燃焼を促進させる。
【0035】
DOCは、ディーゼル酸化触媒であり、これは別の組成を有することができる。この触媒は、典型的には、コーディエライト、炭化ケイ素ムライト、又はフェクラロイ(Fecralloy)のようなモノリス型スケルトン基板上に施用された、促進された金属酸化物担体上の貴金属(類)である。これは、典型的には白金を含む。これは、ランタン酸化物促進アルミニウム酸化物上の白金及びパラジウム、又はケイ素酸化物促進チタン酸化物上の白金及びパラジウム、又はジルコニウム酸化物促進セリウム酸化物上の白金及びパラジウムを含む。
【0036】
本発明は、フィルターの煤の再生を、SCR触媒がcDPFの上流に配置されたディーゼル排気系において受動的かつ能動的条件の両方に対して効率的に確保するものである。本発明はさらに、低温始動時の高いNO転化率を確保するものである。
【0037】
排ガス中のOによる煤の燃焼は、能動的な再生の間575℃より高い範囲の温度で起こる。NOを用いる煤の燃焼である受動的なNO再生は、250〜約450℃の温度範囲で起こすことができる。最後に、受動的な接触煤の燃焼は、触媒化フィルターで起こすこともできる。300〜600℃の温度区間において、卑金属触媒BMC−211は、煤の燃焼を促進することができる。
【0038】
系(3)における能動的な再生は、以下の工程(4)に示すように、尿素の注入を同時に停止することによるエンジンにおけるディーゼル後注入によって、約620℃のフィルター入口温度で起こる。このシステムにおいては、SCR触媒、例えばゼオライト系SCR触媒がその温度に耐えられることが要求される。
(4) エンジン → HCinj → DOC → zSCR → cDPF Tfilterin = 620℃、10分間
工程(3)は、現在の技術に比べて多くの利点を有しているが、二酸化窒素による受動的なフィルターの再生の間に一つの欠点を有すると思われる。本発明は、公知技術工程(1)において示されるような、触媒化フィルター下流のSCR触媒による系に比べてSCR下流における非常に低いNO濃度の系(3)のこの見かけ上の欠点を解決するものである。本発明は、NOを用いる煤フィルターの受動的な再生を確保する。
【0039】
本発明は、系(3)又は(4)の能動的な管理にも関連する。本発明は、NO濃度が尿素注入の停止による短時間のインターバルにおいて一時的に増加し、それ故、NOが受動的再生のために形成されて、ディーゼル燃料を節約できることも含む。触媒化フィルターにわたる圧力降下が予め設定された値に増大し、そして少なくとも250℃であるべきフィルターの入口温度が予め設定した値に達する時、この一時的なNOの増加が開始する。その後、系(3)は、系工程(5)に示されるように作用する。
(5) エンジン → DOC → zSCR → cDPF
【0040】
約300〜400℃の温度範囲において、NO/NOは、高いNO含有量に最適である。NO濃度及び受動的な煤の燃焼の効果は、(5)において示されるようにその時点で尿素の注入を停止させることにより、以下の(6)で示すように、一時的にエンジン排ガス再循環(EGR)を閉じることによってさらに増加させることができる。
(6) エンジン (noEGR) → DOC → zSCR → cDPF
【0041】
系(3)の更なる改善は、水の蒸発及び尿素分解の両方を必要とする尿素に代えてアンモニア(NH)を注入することによって達成できる。次いで、NH混合を、数センチメートルの排気管長内、例えば5cm、で起こすことができるため、約150℃からSCR反応を開始させることができ、そしてSCR触媒をディーゼル酸化触媒DOCの非常に近くに配置することができる。それ故、政府基準の試験サイクルのいずれかによって試験した場合に、排気系から出るより低いNOが運転中に達成される。
【0042】
停止されたNH注入によって増強された受動的な再生による系は、工程(5)及び(6)によって示される。
【0043】
更に可能な系(5)の改善は、DOCの上流にアンモニア(NH)を注入することである。これを行うことにより、過剰なNOがDOC中に形成され、そして受動的な再生に使用される。同時に、系中の温度が増加する。これは、以下に、排ガスの再循環ありなしで示される。
(7) エンジン → NH3inj → DOC → zSCR → cDPF
(8) エンジン(noEGR) → NH3inj → DOC → zSCR → cDPF
系(3)は、ディーゼル後注入を用いる乗用車に関して、特に興味深いものである。
【0044】
本発明の別の好ましい実施形態を図3に示す。その際、エンジンからの排ガス1は、順次、第一の酸化触媒2、選択還元触媒7、第二の酸化触媒10、及び最後にディーゼル粒子フィルター4を通る。炭化水素9及び11は、その第一の酸化触媒2及び第二の酸化触媒10の上流の排ガス流に添加することができる一方、還元剤5は、選択還元触媒7の入口に注入される。フィルター4からは、浄化された排ガス流8が流れる。
【0045】
還元剤5の量は弁12によって制御される。これは、例えば、フィルター4にわたる差圧測定からの信号を受信し、そして弁12は、受動的な再生を開始させるために閉じる。同様に、酸化触媒2、10の入口又は出口の温度を増加させる必要がある場合、弁16及び/又は14を開く。任意に、そこにアンモニアを添加してもよい。この実施形態を以下でさらに説明する。通常運転は次によって説明される。
(9) エンジン → DOC(1) → Ureainj → SCR → HCinj → DOC(2) → cDPF.
【0046】
これは重要な例であり、ハルドール・トプサーリバーススタンダードシステムユーロVIシステム(Haldor Topsoe reverse standard system Euro VI system)と呼ばれている。SCRは、バナジウムベースSCR又はゼオライト系SCR、又は機能化酸性卑金属酸化物混合物のいずれかであることができる。能動的な再生の間の工程は次の通りである。
(10) エンジン → DOC (1) → NH3inj → zSCR → HCinj → DOC(2) → cDPF
そして、低温始動時及び同時能動的再生は次の通りである。
(11) Engine→ NH3inj → DOC (1)→NH3inj →zSCR→ HCinj→ DOC(2)→ cDPF
【0047】
上流の第一のDOC(1)へのNHの注入により、熱を生じさせることで低温始動性能を向上させることができ、同様に、NO/NO比が、zSCRでのSCR反応に関してより最適になる。DOC(1)は、系(3)で説明したDOCである。
【0048】
DOC(2)触媒は、促進金属酸化物担体上の貴金属であり、典型的には、コーディエライト、炭化ケイ素ムライト、又はフェクラロイ(Fecralloy)のようなモノリス型スケルトン基板上に施用された、促進された金属酸化物担体上の貴金属(類)である。この触媒は、貴金属を有するか又は有さない、卑金属酸化物の混合物であることもでき、典型的には、コーディエライト、炭化ケイ素ムライト、又はフェクラロイ(Fecralloy)のようなモノリス型スケルトン基板上に施用された、卑金属酸化物の混合物であることもできる。これは典型的に白金を含まない。これは、ランタン酸化物促進アルミニウム酸化物上のパラジウム、又はケイ素促進チタン酸化物上のパラジウム、又はジルコニウム酸化物促進セリウム酸化物上のパラジウム、又は酸化銅と酸化マグネシウムの混合物、又は酸化銅と酸化マグネシウムの混合物上のパラジウムを含む。
【0049】
系(9)は、トラック用途及び乗用車用途の両方に有利である。第三の好ましい実施形態を図4に示す。ここでは、エンジンからの排ガス1は選択的接触還元7、接触酸化10を通り、そして最後にフィルター4を通過する。還元剤5は排ガス1に添加され、そして炭化水素11は選択的接触還元7と接触酸化10との間に添加できる。
【0050】
この排気系による利点は、SCR触媒への最大入口温度が、約550℃であるエンジンの出口温度と同じであることができるということである。この系は、標準的なバナジウムベースのSCR触媒(V−SCR)が選択できるのを容易にする。V−SCRの使用による工程は次の通りである。
(12) エンジン → Ureainj → V−SCR → HCinj→ DOC→ cDPF
銅ベースゼオライトSCR触媒、Cu−zSCRは、NO/NO比にほとんど依存しないが、エンジンからのHC放出に耐えることから、選択されたSCR触媒として使用できる。
【0051】
SCR反応のために、尿素の代わりにNH注入を用いそして同時に能動的な再生を用いる系は次の通りである。
(13) エンジン → NH3inj →V−SCR → HCinj→ DOC→ cDPF
系(13)では、エンジンマニホールドからV−SCR触媒までの距離を、因数10で50cmから5cmまで減少させることができる。それ故、低温始動時のエンジンの熱は、余分な管長を加熱するのに使用されるのではなく、化学反応を開始させるのに使用される。系(13)は、NH注入が停止される管理された受動的な再生の間、一時的に次の通りである。
(14) エンジン → V−SCR → DOC → cDPF
そして、EGRのない場合と同等であるのが次である。
(15) エンジン (noEGR) → V−SCR→ DOC → cDPF
系(12)は、トラック用途に特に関心が持たれている。
【実施例】
【0052】
例1
SCR+DOC+cDPF系を用いたスカニア(Scania)12リットルエンジンに対するエンジンベンチテストにより、断続的な尿素の計量添加及び一時的な高NO含有量での、7回の世界統一試験サイクル(world harmonized test cycles)後の、変化していない煤添加(スートロード(soot load))圧力降下が与えられる。
【0053】
系を、尿素の、低い計量添加量及び高い計量添加量の両方で管理操作された場合の、一日で測定された繰り返し世界統一試験サイクル(WHTC)の1回目と7回目についてのcDPEに関する圧力降下の測定
図5において、二つの曲線は同じであり、従って、これら曲線はそれぞれ最高の状態で書かれている。これは、追加的な煤添加によって圧力降下が増大しないことを示していることを意味する。この結果は、以下の参照例と比較すべきである。
【0054】
この参照例では、尿素の計量添加は連続的であり、かつ、高いSCR反応のために高い。これは、SCR触媒を出る低いNO及びNO(約1〜2gNOx/kWh)(cDPF入口)をもたらす。図6では、上記の図5とは対照的に、最初のWHTCから7回目のサイクルまで圧力降下が増大していることがわかる。これは、煤がフィルター上に堆積していることを意味している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
選択的接触還元のための装置;
前記選択還元触媒のための装置の下流に組み込まれた、触媒層によって好ましくは少なくとも部分的に覆われた、ディーゼル粒子フィルター;
前記選択的接触還元のための装置の上流及び/又は、選択的接触還元のための装置とディーゼル粒子フィルターとの間に組み込まれた接触酸化のための装置;
前記選択的接触還元のための装置の入口に注入される制御された量の還元剤を注入するための装置;及び
前記接触酸化のための装置の入口に注入される制御された量の炭化水素を注入するための装置;
を含む系におけるディーゼルエンジンからの排ガスを浄化する方法であって、前記ディーゼル粒子フィルターが、還元剤の注入を閉じることによって受動的に再生され、そして前記ディーゼル粒子フィルターが、接触酸化のための装置の少なくとも一つの入口への炭化水素の注入を開放し、そして任意に還元剤の注入を閉じることによって能動的に再生されることを特徴とする、上記方法。
【請求項2】
前記フィルターが500℃までの温度においてNOにより受動的に再生される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記フィルターが500℃〜700℃の温度で能動的に再生される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記還元剤が、アンモニア、アンモニア水溶液、尿素、尿素水溶液、シアヌル酸、アンメリド(ammelide)、アンメリンゲ(ammelinge)、シアヌル酸アンモニウム、ビウレット、カルバミン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、ギ酸アンモニウム、メラミン、又はトリシアノウレアである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記還元剤が、アンモニア、アンモニア水溶液、尿素、尿素水溶液又はシアヌル酸である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記炭化水素が、燃料、好ましくはディーゼルエンジンに対するのと同じ燃料である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記選択的接触還元が、バナジウムベース触媒、又はゼオライトベース触媒、又は機能化酸性卑金属混合酸化物触媒の存在下で起こる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記バナジウムベース触媒が、タングステン酸化物又はモリブデン酸化物が追加され得る、チタン酸化物上のバナジウム酸化物であり、前記ゼオライトベース触媒が、銅及び/又は鉄変性βゼオライト、ZSM−5又はチャバザイト(chabasite)であり、そして前記機能化酸性卑金属混合酸化物触媒が、酸性のセリウム−ジルコニウム酸化物混合物及びジルコニウム−チタン酸化物混合物からなる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記バナジウムベース触媒が、150℃〜550℃の温度で使用され、そして前記ゼオライトベース触媒が、150℃〜800℃の温度で使用される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記ディーゼル粒子フィルター上の前記触媒層が、任意に貴金属、好ましくはパラジウム及び白金と組み合わされた卑金属酸化物類の混合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記選択的接触還元装置の上流に第一の酸化触媒が組み込まれ、そして前記選択的接触還元装置と前記ディーゼル粒子フィルターとの間に第二の酸化触媒が組み込まれ、そしてアンモニアが該第一の酸化触媒入口に注入される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記選択的接触還元のための装置の上流に組み込まれた前記接触酸化のための装置が、ランタン酸化物促進アルミニウム酸化物上の白金及びパラジウム、又はケイ素酸化物促進チタン酸化物上の白金及びパラジウム、又はジルコニウム酸化物促進セリウム酸化物上の白金及びパラジウムを含む触媒を含み、そして前記選択的接触還元のための装置の下流に組み込まれた前記接触酸化のための装置が、ランタン酸化物促進アルミニウム酸化物上のパラジウム、又はケイ素酸化物促進チタン酸化物上のパラジウム、又はジルコニウム酸化物促進セリウム酸化物上のパラジウム、又は銅酸化物及びマンガン酸化物の混合物、又は銅酸化物及びマンガン酸化物の混合物上のパラジウムを含む触媒を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記フィルターにわたる圧力降下が測定され、そして還元剤の追加及び炭化水素の追加を制御するために、生成した信号が使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一つに記載の方法を使用するためのシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−518734(P2012−518734A)
【公表日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−550424(P2011−550424)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【国際出願番号】PCT/EP2009/009017
【国際公開番号】WO2010/094313
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(590000282)ハルドール・トプサー・アクチエゼルスカベット (50)
【Fターム(参考)】