説明

トーションダンパー及び制震装置

【課題】トーションバースプリングの捩じり構造に工夫を加えることにより、高いダンパー効果が得られ、しかもコンパクト性にも優れたトーションダンパーを提供することを課題とする。
【解決手段】トーションバースプリング11、トーションバースプリング11の一端部を回転不可能な状態に収納したスプリングホルダー12、ロータリダンパー13、一対の傘歯車39、48を収納したギヤボックス30、トーションバースプリング11の捩じり端部18に捩じり荷重を加える回転リンク14、スプリングホルダー12に取り付けられた逆回転リンク15によって構成され、回転リンク14と逆回転リンク15に逆トルクを加えることにより、傘歯車39、48を経てトーションバースプリング11の捩じり端部に捩じり荷重を加え、その捩じり回転によってロータリダンパー13を回転させダンパー効果を発揮させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はトーションダンパー及びこれを用いた制震装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ロータリダンパーとトーションバースプリングの組み合わせからなるトーションダンパーは、従来から家具の蓋等の緩衝装置に使用されている(特許文献1)。
【0003】
その構成は、有底円筒状のケースに筒状の回転体が収納され、ケースの内径面と回転体とのすき間に粘性流体が封入される。円筒体の内部にトーションバースプリングが挿通される。トーションバースプリングの一端部がケースの内底面に固定され、他端部は回転体に係合される。ケースを装置に固定するとともに回転体を緩衝対象物(例えば、ピアノの蓋)の回転軸に連結する。蓋の開閉時に回転体がトーションバースプリングの一端部に捩じり荷重を付与し、トーションバースプリングの回転に伴ってロータリダンパーが作動され緩衝作用を行う。トーションバースプリングに作用する捩じり荷重に対する固定端部側の反力は、ケースを介して装置の固定部によって受けられる。
【0004】
また、建造物の制震装置として、相対回転可能に嵌合された内筒と外筒との間にゴムのような粘弾性部材を介在させたトーションダンパーを用い、建造物の柱と梁が作るコーナー部において、内筒を柱に、外筒を梁に固定したものが知られている(特許文献3)。柱の傾斜に伴って生じる回転によって内筒が外筒に対して相対回転することにより制震を行う。内筒から外筒に加えられる捩じり荷重に対する反力は、外筒を固定した梁を経て建造物の基礎により受けられる。
【0005】
また、柱と梁によって構成されたラーメン構造物の制震装置として、ラーメン構造物の柱と梁からなる四角形空間の斜めに対向した位置にある連結部に支承プレートを取り付ける。その支承プレート間に四辺形リンクの対角位置の2個所を連結ピンにより取り付け、さらに中間連結ピン相互間に、ピストンシリンダー式のオイルダンパーを介在したものが知られている(特許文献2)。柱の傾斜によって中間連結ピンの間の距離が変化するのに伴いオイルダンパーが作動し制震を行う。
【0006】
なお、オイルダンパーを連結した中間連結ピンに作用する力により、四辺形リンクが面外方向に変形するのを防止するために、各中間連結ピンと左右の柱の間にクランクアーム機構が設けられる。
【0007】
この制震装置の場合は、ピストンとシリンダーが同時に反対方向に直進運動を行い、両方の荷重の反力はそれぞれが連結された中間連結ピン、四辺形リンク及び支承プレートを介して建造物の基礎によって受けられる。オイルダンパーの両端部が共に中間連結ピンに連結され、その中間連結ピンの部分が反対方向に直進運動し、反力が四辺形リンク、支承プレートを経て建造物の基礎によって受けられるという反力支持構造において前記2者の反力支持構造と異なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開昭62−81739号公報
【特許文献2】特開2011−12708号公報
【特許文献3】特開2004−232202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1及び同2に開示されたトーションダンパーのように、トーションバースプリングの一端部に捩じり荷重を加える一方、他端部を固定した構造では、トーションバースプリングに加えられる捩じり量は一端部に加えられる捩じり荷重の大きさに限定される。ロータリダンパーはトーションバースプリングの捩じり量に応じた大きさのダンパー効果を発揮するので、捩じり荷重に限定があることにより、ダンパー効果にも一定の制限がある。
【0010】
特許文献3の場合は、オイルダンパーのピストンとシリンダーの両方が同時に反対向きに作動することで、いずれか一方が作動する場合に比べ、内部のオイルに対する圧縮荷重が倍増され、その分ダンパー効果も大きくなる。
【0011】
しかし、トーションダンパーが四辺形リンクの中間連結ピンの間に設けられるため、トーションダンパーが柱と梁からなる四角形空間の中央部分を占めることになり、コンパクト性に欠ける問題がある。
【0012】
そこで、この発明は、トーションバースプリングの捩じり構造に工夫を加えることにより、高いダンパー効果が得られ、しかもコンパクト性にも優れたトーションダンパー及びこれを用いた制震装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記の課題を解決するために、この発明に係るトーションダンパーは、一端に捩じり端部、他端に固定端部を有するトーションバースプリングと、前記トーションバースプリングを収納し前記固定端部を相対回転不可能な状態に支持するスプリングホルダーと、前記スプリングホルダーに同心状態に結合されたロータリダンパーとによってダンパーユニットが構成され、前記ロータリダンパーの回転中心にトーションバースプリングの捩じり端部が一体回転可能に貫通され、前記捩じり端部に捩じり荷重を加える回転手段及び前記スプリングホルダーの固定手段がそれぞれ設けられたトーションダンパーにおいて、前記回転手段が回転リンクにより、前記固定手段が逆回転リンクによりそれぞれ構成され、前記回転リンクのリンク回転軸線と直交するダンパー軸線上に前記ダンパーユニットが配置され、前記リンク回転軸線とダンパー軸線の交差部分に配置されたギヤボックスに90°取り付け角度を異にして相互に噛み合ったリンク側傘歯車とダンパー側傘歯車が取り付けられ、前記リンク側傘歯車に前記回転リンクが同軸状態に取り付けられ、前記ダンパー側傘歯車に前記トーションバースプリングの捩じり端部側が同軸状態に取り付けられ、前記ダンパーユニットが前記逆回転リンクに固定され、前記逆回転リンクが前記ギヤボックスに対し前記リンク回転軸線を中心に回転可能に取り付けられ、前記回転リンクと逆回転リンクに対し逆トルクが加えられるようにしたものである。
【0014】
前記構成のトーションダンパーは、回転リンクの一方向への回転によってリンク側傘歯車及びダンパー側傘歯車を経てトーションバースプリングの捩じり端部に捩じり荷重が付与される。これと同時に、逆回転リンクの逆方向への回転によりギヤボックス、ダンパーユニット及びリンク側傘歯車がリンク回転軸線の回りを回転し、ダンパー側傘歯車を回転させることにより、前記と同方向の捩じり荷重を捩じり端部に付与する。回転リンクと逆回転リンクによって、トーションバースプリングの捩じり端部に重畳的に捩じり荷重が付与される。
【0015】
前記捩じり荷重に対向してトーションバースプリングの固定端部に作用する反力は、ダンパーユニットが固定された逆回転リンク及びその逆回転リンクにトルクを加える制震装置等によって支持される。
【0016】
前記捩じり端部の回転によってロータリダンパーが回転し、回転リンク及び逆回転リンクの回転に対してダンパー効果を発揮させる。また、ダンパーユニットが逆回転リンクにその長さ方向に沿って取り付けられるので、コンパクトな構成となる。
【0017】
なお、この発明において、回転リンクと逆回転リンクは、いずれもリンク回転軸線を中心に回転するリンクであるが、回転の方向が反対であるので、いずれか一方を回転リンクと呼び、他方を逆回転リンクと呼ぶものである。
【0018】
前記の課題を解決するための他のトーションダンパーは、一端に捩じり端部、他端に固定端部を有するトーションバースプリングと、前記トーションバースプリングを収納し前記固定端部を相対回転不可能な状態に支持するスプリングホルダーと、前記スプリングホルダーに同心状態に結合されたロータリダンパーとによってダンパーユニットが構成され、前記ロータリダンパーの回転中心にトーションバースプリングの捩じり端部が一体回転可能に貫通され、前記捩じり端部に捩じり荷重を加える回転手段及び前記スプリングホルダーの固定手段がそれぞれ設けられたトーションダンパーにおいて、前記回転手段が回転リンクにより、前記固定手段が前記ダンパーユニットに固定されたギヤボックスによりそれぞれ構成され、前記回転リンク及び逆回転リンクが前記ギヤボックスの両側において同一のリンク回転軸線上に配置され、前記リンク回転軸線と直交するダンパー軸線上に前記トーションバースプリングが配置され、前記ギヤボックス内に前記リンク回転軸線上で対向した一対のリンク側傘歯車が取り付けられるとともに、前記スプリング軸線上で前記リンク側傘歯車に噛み合うスプリング側傘歯車が取り付けられ、前記一対のリンク側傘歯車にギヤボックスの外部において前記の回転リンク及び逆回転リンクが同軸状態にそれぞれ取り付けられ、前記スプリング側傘歯車に前記トーションスプリングの捩じり端部側が同軸状態に取り付けられ、前記回転リンクと逆回転リンクに対し逆トルクが加えられるようにしたものである。
【0019】
前記構成のトーションダンパーは、回転リンクの一方向への回転によってリンク側傘歯車及びダンパー側傘歯車を経てトーションバースプリングの捩じり端部に捩じり荷重が付与される。これと同時に、逆回転リンクの逆方向への回転により前記リンク側傘歯車と対向した他のリンク側傘歯車及びダンパー側傘歯車を経て前記と同方向の捩じり荷重を捩じり端部に付与する。この場合も前記と同様に、回転リンクと逆回転リンクによって、トーションバースプリングの捩じり端部に重畳的に捩じり荷重が付与される。その捩じり荷重に対する反力は、ダンパーユニット及びギヤボックスを経て両方の回転リンクを駆動する制震装置等によって受けられる。
【0020】
前記捩じり端部の回転によってロータリダンパーが回転し、回転リンク及び逆回転リンクの回転に対してダンパー効果を発揮させる。ダンパーユニットがリンク回転軸と直交するダンパー軸線上に設けられるので、コンパクトな構成となる。
【0021】
前記回転リンクと逆回転リンクに外部から前記の逆トルクを加える手段として、前記回転リンクと逆回転リンクの自由端部にそれぞれ副リンクを相対回転可能に連結するとともに、両副リンクの他端部相互を相対回転可能に連結して全体として四辺形リンクを構成し、前記両副リンクの他端部の連結端部を制震装置の固定部に相対回転可能に連結した構成であり、一つの四辺形リンク当たり1個のダンパーユニットを有する構成をとることができる。
【0022】
また、前記回転リンクと逆回転リンクに外部から前記の逆トルクを加えるその他の手段として、前記ダンパーユニット、回転リンク及び逆回転リンクとそれぞれ同一構造を持った他のダンパーユニット、回転リンク及び逆回転リンクからなる他のトーションダンパーによって構成され、当該他のトーションダンパーのダンパーユニットを制震装置の固定部に相対回転自在に取り付け、両方の回転リンクの自由端相互及び逆回転リンクの自由端相互をそれぞれ相対回転可能に連結して四辺形リンクを構成し、一つの四辺形リンク当たり2個のダンパーユニットを複合的に有する構成をとることができる。
【0023】
さらに、前記回転リンクと逆回転リンクに外部から前記の逆トルクを加えるその他の手段として、前記回転リンクと逆回転リンクの各自由端部を装置の固定部に押し当てる構成がある。
【0024】
前記のような逆トルクを加える手段として四辺形リンクを備えたトーションダンパーはそのまま制震装置に用いることができる。その制震装置としては、基礎上に構築された柱と梁からなるラーメン構造物の対角位置にある上部支承プレート又は下部支承プレートのいずれか一方に前記トーションダンパーの回転リンクを支持するリンク軸の部分が回転自在に取り付けられ、他方の支承プレートに前記両副リンクの他端部が相対回転可能に連結された構成がある。
【0025】
逆トルク手段を加える手段として、回転リンクと逆回転リンクの各自由端部を装置の固定部に押し当てた構成を備えた前記のトーションダンパーを用いた制震装置としては、基礎に設けられた四角形の内壁面に囲まれた床面に任意方向にスライド自在に設置された四角形のテーブルと、前記内壁面ごとに設けられた前記トーションダンパーとの組み合わせからなり、前記トーションダンパーのリンク軸にブラケットが回転自在に取り付けられ、前記各内壁面に設けた支承ブロックに前記ブラケットを取り付け、前記ブラケットによって前記リンク軸が床面に対して垂直となる向きに各トーションダンパーを支持せしめ、回転リンクの自由端と逆回転リンクの自由端のいずれか一方を前記内壁面に、他方をテーブルに当接させた構成をとることができる。
【発明の効果】
【0026】
この発明に係るトーションダンパー及びこれを用いた制震装置は、トーションバースプリングの捩じり端部に回転リンクと逆回転リンクの双方から重畳的に捩じり荷重を加えるものであるから、大きな捩じり弾性を発揮させることができる。ロータリダンパーは前記の捩じり荷重によって作動されるものであるから、大きなダンパー効果若しくは制震効果を発揮することができる。
【0027】
また、トーションダンパーは、ダンパーユニットと、V形リンクを構成する回転リンクと逆回転リンクによって構成され、ダンパーユニットは両方のリンクの連結部分に配置されるのでコンパクトな構成となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、実施形態1のトーションダンパーの一部省略斜視図である。
【図2】図2は、同上の一部省略縦断正面図である。
【図3】図3は、図2のX1−X1線の断面図である。
【図4】図4は、実施形態1の分解斜視図である。
【図5】図5は、実施形態2のトーションダンパーの一部省略斜視図である。
【図6】図6は、同上の一部省略縦断正面である。
【図7】図7は、図6のX2−X2線の断面図である。
【図8】図8は、実施形態2の分解斜視図である。
【図9】図9は、実施形態3の制震装置の正面図である。
【図10】図10は、図9の一部拡大正面図である。
【図11】図11は、実施形態3の他の状態の正面図である。
【図12】図12は、実施形態3の変形例の正面図である。
【図13】図13は、実施形態4の正面図である。
【図14】図14は、同上の作動状態の正面図である。
【図15】図15は、実施形態5の横断平面図である。
【図16】図16は、同上の一部の斜視断面図である。
【図17】図17は、図15のX3−X3線の断面図である。
【図18】図18は、同上の変形例の断面図である。
【図19】図19は、実施形態6の横断平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
[実施形態1]
【0030】
図1から図4に示した実施形態1に係るトーションダンパー10はダンパーユニット20と、そのダンパーユニット20にトルクを伝達する回転リンク14、逆回転リンク15及びギヤボックス30等によって構成される。ダンパーユニット20は、同一の軸線、即ちダンパー軸線X上に配置されたトーションバースプリング11、これを収納した円筒状のスプリングホルダー12及びロータリダンパー13によって構成される(図2、図4参照)。
【0031】
前記の回転リンク14及び逆回転リンク15の回転軸は同一のリンク回転軸線Y上に配置される(図4参照)。ダンパー軸線X及びリンク回転軸線Yは、ギヤボックス30の内部において直交する。回転リンク14と逆回転リンク15は、ダンパーユニット20に対し逆向きのトルク、即ち逆トルクTを加える作用を行う。
【0032】
ギヤボックス30は、図4に示したように、直角の壁面の一方にダンパー軸線X上に属する軸孔16及び他方にリンク回転軸線Y上に属する軸孔17が設けられる。軸孔16にダンパー側傘歯車39、軸孔17にリンク側傘歯車48が取り付けられ、相互に噛み合わされる(図1、図2参照)。
【0033】
トーションバースプリング11(図2参照)は鋼棒によって形成され、一端部に捩じり端部18、他端部に固定端部19が設けられる。捩じり端部18と固定端部19には、相手部材との嵌合部で回り止めができるようにそれぞれ平行2面の平坦面21が設けられる。捩じり端部18と固定端部19の間はこれらより小径の丸棒部22が設けられる。丸棒部22が軸心を中心に復元性の弾性をもって捩じられる。
【0034】
前記のトーションバースプリング11を収納するスプリングホルダー12は、一端部が閉塞された円筒体によって構成され、閉塞部の内端面に固定穴24が設けられる。前記トーションバースプリング11は固定端部19が固定穴24に嵌合され、スプリングホルダー12に対し回転不可能な状態に収納される。
【0035】
前記スプリングホルダー12の開放端の外周面に四角形のツバ25が設けられ(図4参照)、そのツバ25の一側縁に設けたL形の屈曲部26を、スプリングホルダー12の長さ方向に沿わせた逆回転リンク15の片面に接合することにより、スプリングホルダー12と逆回転リンク15を一体化している。逆回転リンク15は、トーションバースプリング11の捩じり端部18に加えられた捩じり荷重に対する反力を、スプリングホルダー12を経て支持する固定手段を構成している。
【0036】
スプリングホルダー12の長さは、トーションバースプリング11の固定端部19側を固定穴24に嵌合させた状態で、捩じり端部18がスプリングホルダー12の外部に露出する程度に形成される。捩じり端部18の先端部にネジ軸23が設けられる(図4参照)。
【0037】
ロータリダンパー13は、図2に示したように、軸方向の一端部が開放され他端部が閉塞された円筒状のダンパーケーシング27、そのダンパーケーシング27の開放端に固定された蓋部材28、その蓋部材28によって閉塞されたチャンバー29及び前記ダンパーケーシング27の閉塞端と蓋部材28を液密を保持して回転自在に貫通するシャフト31を有する。
【0038】
さらに、シャフト31に一体化されチャンバー29の内部で回転可能なディスク32、チャンバー29に封入されたシリコーンオイル等の粘性流体33が構成部材となっている。シャフト31の内部孔34は前記トーションバースプリング11の捩じり端部18の断形状と同形状をもつように形成される。
【0039】
前記ディスク32には、所要数の調整孔35が設けられ、その調整孔35の数や径の大きさによってダンパー特性の調整が行われる。前記ダンパーケーシング27の閉塞端外側面の中心対称の2個所に連結突起36が設けられる。
【0040】
前記閉塞端にスプリングホルダー12の前記ツバ25が同心状態に突き合わされ、連結突起36をツバ25の連結孔37(図4参照)に圧入固定し、さらに、反対面の連結突起36aをギヤボックス30側の連結孔37aに圧入固定
することにより、ツバ25を介してロータリダンパー13、スプリングホルダー12及び逆回転リンク15を一体化している。
【0041】
トーションバースプリング11の捩じり端部18が前記シャフト31の内部孔34に挿通される。その捩じり端部18の露出端がギヤボックス30のダンパー軸線X上に属する軸孔16に滑り軸受38を挟んでダンパー側傘歯車39が回転自在に嵌合される。ダンパー側傘歯車39は、座金40を挟んでネジ軸23にネジ結合したナット41により固定される(図4参照)。
【0042】
また、ダンパーユニット20と一体化された逆回転リンク15は、ギヤボックス30の壁面に外向きに設けられた屈曲部42に溶接等により接合一体化される。これにより、逆回転リンク15は、ギヤボックス30及び前記のダンパーユニット20とともにリンク回転軸線Yを回転中心として回転することができる。
【0043】
前記の回転リンク14の一端部に設けられた角孔43に取り付けられるリンク軸44(図4参照)は、その両端面に角軸部55、角軸部55の先端面にネジ軸56が設けられたものである。その一方の角軸部55が前記の角孔43に挿通され、ネジ軸56に座金45を介してナット46をねじ込むことによりリンク軸44の一端部が回転リンク14の角孔43に固定される(図3参照)。
【0044】
リンク軸44の他端部はギヤボックス30の軸孔17に挿通され、ギヤボックス30の内部において角軸部55に滑り軸受47を介してリンク側傘歯車48が取り付けられる。リンク側傘歯車48は前記のダンパー側傘歯車39と90°の交差角をもって噛み合い、座金49を介してネジ軸部56にナット50をねじ込むことによりリンク側傘歯車48がリンク軸44に固定される。
【0045】
なお、リンク軸44は、このトーションダンパー10が使用される装置、例えば後述の制震装置の支承プレート64(図9参照)に転がり軸受66を介して取り付けられる。その支承プレート64と回転リンク14の間、及び支承プレート64とギヤボックス30の間に、それぞれ滑り軸受51、52が介在される。
【0046】
回転リンク14と逆回転リンク15は、リンク回転軸線Yを共通の回転中心としたV形リンク53(図1参照)を構成する。V形リンク53は、トーションバースプリング11が中立状態にある場合に一定の開き角θを持った原点位置にある。ダンパーユニット20は、逆回転リンク15の片面に一体化され、そのダンパー軸線Xは、V形リンク53の開き角θの大きさに関わらずリンク回転軸線Yと90°の角度で交差する。各リンク14、15の自由端部に連結孔54を設けたものを示しているが、設けない場合もある。
【0047】
なお、スプリングホルダー12の径及び長さを適当に設定することにより、その開放端の内部にロータリダンパー13を嵌合一体化した構成をとることもできる。
【0048】
実施形態1に係るトーションダンパー10は以上のような構成であり、これを使用する場合は、図3に示したように、リンク軸44の外径面に転がり軸受66を介して、例えば制震対象となる装置の支承プレート64(図9参照)等の固定部にリンク回転軸線Yを中心に回転自在に取り付けられる。V形リンク53を構成する回転リンク14と逆回転リンク15の開き角θは一定の大きさに保持された原点位置にある。
【0049】
実施形態1に係るトーションダンパー10は以上のように構成され、次にその作用について説明する。
【0050】
回転リンク14と逆回転リンク15の自由端部に装置側から回転方向の向きが反対の逆トルクT(図1、図2参照)を同時に加える。いま、V形リンク53の開き角θを小さくする内向きの逆トルクTが加えられたとすると、回転リンク14は反時計回りに回転され(図2の矢印A参照)、逆回転リンク15は時計方向に回転される(同図矢印B参照)。
【0051】
回転リンク14の反時計回り方向の回転によって、リンク側傘歯車48及びこれに噛み合ったダンパー側歯車39を経てトーションバースプリング11の捩じり端部18に時計回りの捩じり荷重が付与される(図2の矢印A参照)。
【0052】
また、逆回転リンク15の時計回り方向の回転によって、ダンパーユニット20及びギヤボックス30が時計回り方向に回転され(矢印B参照)、ギヤボックス30と一体にダンパー側傘歯車39がリンク側傘歯車48に対して回転することにより、トーションバースプリング11の捩じり端部18に時計回りの捩じり荷重が付与される。
【0053】
その結果、捩じり端部18には、回転リンク14からの捩じり荷重(矢印A)と逆回転リンク15からの捩じり荷重(矢印B)が同方向に重畳的に加えられる。その結果、回転リンク14又は逆回転リンク15のいずれか一方から捩じり荷重が加えられる場合に比べて、2倍の捩じり荷重が加えられる。付与される捩じり荷重が大きい分、捩じり弾性の大きいトーションバースプリング11を使用できるので、大きな復元弾性が得られる。
【0054】
一方、前記の重畳的な捩じり荷重によって捩じり端部18が回転されると、ロータリダンパー13のシャフト31とディスク32が一体となって、粘性流体33及びこれが付着したダンパーケーシング27に対して回転し、回転リンク14の時計回り方向の回転に対しダンパー効果を発揮する。付与される捩じり荷重が大きい分、ダンパー特性の高いロータリダンパー13を使用できるので、大きなダンパー効果が得られる。
【0055】
ダンパー効果は、前記のロータリダンパー13だけでなく、トーションバースプリング11自体の捩じり弾性によっても発揮されるので、両方の効果が相まって大きなダンパー効果が得られる。
【0056】
回転リンク14及び逆回転リンク15に加えられた逆トルクTの向きが変わると、トーションバースプリング11の捩じり弾性が解放され、V形リンク53を構成する回転リンク14及び逆回転リンク15の開き角θも元の大きさ、即ち原点位置に戻る。このとき、ロータリダンパー13は、回転の向きが逆になってダンパー作用を発揮する。
【0057】
前記向きが変わった逆トルクTが原点位置を越える大きさであると、回転リンク14及び逆回転リンク15は原点位置を越えて開き角θを縮小する方向に作動し、トーションバースプリング11を前記と逆方向に捩じる。ロータリダンパー13は引き続き逆向きに回転してダンパー作用を行う。トーションバースプリング11の復元弾性が大きい分、V形リンク53は早期に原点位置に復帰する。
[実施形態2]
【0058】
図5から図8に示した実施形態2に係るトーションダンパー10aは、ダンパー軸線X及びリンク回転軸線Yがギヤボックス30において直交する点、ダンパー軸線X上にダンパーユニット20が配置され、リンク回転軸線Y上に回転リンク14及び逆回転リンク15の回転軸線が配置されている点で前記の実施形態1の構成と共通するところがある。
【0059】
しかし、実施形態1の場合において、ダンパーユニット20と一体化されることによって捩じり荷重に対する反力の固定手段を構成していた逆回転リンク15が、実施形態2の場合はダンパーユニット20と分離されており、ギヤボックス30が捩じり荷重に対する反力の固定手段となっている点で相違がある。また、リンク回転軸線Y上に相互に対向した一対のリンク側傘歯車48、48aが配置され、これらの傘歯車48、48aがダンパー軸線X上のダンパー側傘歯車39に噛み合う構成においても相違がある。以下詳述する。
【0060】
即ち、実施形態2に係るトーションダンパー10aは、実施形態1のトーションダンパー10と同様に、ダンパーユニット20と、そのダンパーユニット20にトルクを伝達する回転リンク14、逆回転リンク15及びギヤボックス30等によって構成される。ダンパーユニット20は、前記の場合と同様に、ダンパー軸線X上に配置されたトーションバースプリング11、これを収納した円筒状のスプリングホルダー12及びロータリダンパー13によって構成される。
【0061】
前記の回転リンク14及び逆回転リンク15の回転軸となるリンク軸44、44aは同一のリンク回転軸線Y上に配置される(図8参照)。ダンパー軸線X及びリンク回転軸線Yは、ギヤボックス30の内部において直交する。回転リンク14と逆回転リンク15は、トーションバースプリング11に対し逆向きのトルク(逆トルクT)を加える作用をなす。
【0062】
ギヤボックス30は、図8に示したように、ダンパー軸線X上に属する軸孔16を有する壁面、リンク回転軸線Y上に配置された対向一対の軸孔17、17aを有する2壁面と、これらの壁面上を結合する壁面の4壁面からなるものである。軸孔16にダンパー側傘歯車39、軸孔17、17aにそれぞれリンク側傘歯車48、48aが取り付けられる。ダンパー側傘歯車39の両側にリンク側傘歯車48、48aが配置され、相互に噛み合わされる(図7参照)。
【0063】
トーションバースプリング11及びこれを収納したスプリングホルダー12に関して前記の場合と異なる点は、そのツバ25がギヤボックス30の軸孔16の属する壁面の両端部から突き出した連結壁60に対して溶接等によって固定される構成である。
【0064】
ロータリダンパー13も実施形態1の場合と同様の構成であるが、この場合は、連結突起36aがギヤボックス30の連結孔37aに圧入固定される。ロータリダンパー13の背後から、スプリングホルダー12のツバ25が連結壁60に接合一体化されることにより、ツバ25とギヤボックス30の壁面との間にスペースが生じ、そのスペースにロータリダンパー13が収納される。
【0065】
トーションバースプリング11の捩じり端部18のロータリダンパー13からの露出端が、ギヤボックス30のダンパー軸線X上に属する軸孔16に挿通される。その露出端に滑り軸受38を挟んでダンパー側傘歯車39が嵌合される。ダンパー側傘歯車39は、座金40を挟んでネジ軸23にナット41により固定される。
【0066】
前記の回転リンク14の角孔43にリンク軸44が固定される構成、その先端部がギヤボックス30に挿入され、その先端部にリンク側傘歯車48が取り付けられる構成、そのリンク側傘歯車48がダンパー側傘歯車39と90°の交差角をもって噛み合う構成は前記の場合と同様である。
【0067】
この実施形態2の場合の逆回転リンク15は、回転リンク14と同様に、一端部に角孔43aが設けられ、リンク軸44aの一方の角軸部55が角孔43aに挿通され、ネジ軸56に座金45aを介してナット46aをねじ込むことによりリンク軸44の一端部が逆回転リンク15の角孔43aに固定される。
【0068】
リンク軸44aの他端部はギヤボックス30の前記の軸孔17と対向した軸孔17aに挿通され、ギヤボックス30の内部において角軸部55に滑り軸受47aを介してもう一つのリンク側傘歯車48aが取り付けられる。リンク側傘歯車48aは前記のダンパー側傘歯車39と90°の交差角をもって他方のリンク側傘歯車48とダンパー軸線Xを挟んでその両側で噛み合う。リンク側傘歯車48aは、座金49aを介してネジ軸部56にナット50aをねじ込むことによりによりリンク軸44aに固定される。
【0069】
回転リンク14と逆回転リンク15は、リンク回転軸線Yを共通の回転中心としたV形リンク53(図5参照)を構成する点、V形リンク53は、トーションバースプリング11が中立状態にある場合に一定の開き角θを有する原点位置にある構成は実施形態1の場合と同様である。
【0070】
実施形態2のトーションダンパー10aは以上のようなものであり、これを使用する場合は、図7に示したように、リンク軸44の外径面に転がり軸受66を介して制震対象となる装置の支承プレート64(図4参照)等の固定部にリンク回転軸線Yを中心に回転自在に取り付ける。
【0071】
V形リンク53を構成する回転リンク14と逆回転リンク15の自由端部に装置から逆トルクTを同時に加える。図6に示したように、V形リンク53の開き角θを小さくする内向きの逆トルクTが加えられると、回転リンク14が反時計回りに回転され、逆回転リンク15は時計方向に回転される。
【0072】
回転リンク14の反時計回り方向の回転によって、リンク側傘歯車48及びダンパー側傘歯車39を経てトーションバースプリング11の捩じり端部18に時計回りの捩じり荷重が付与される(図6の矢印A参照)。
【0073】
また、逆回転リンク15の時計回り方向の回転によって、リンク側傘歯車48a及びダンパー側傘歯車39を経てトーションバースプリング11の捩じり端部18に時計回りの捩じり荷重が付与される(図6の矢印B参照)。その結果、捩じり端部18には、回転リンク14からの捩じり荷重(矢印A)と逆回転リンク15からの捩じり荷重(矢印B)が同方向に重畳的に加えられる。
【0074】
前記の捩じり荷重によって固定端部19側にも同方向の荷重が加えられるが、その反力はスプリングホルダー12及びギヤボックス30を経て、回転リンク14及び逆回転トルク15に逆トルクTを加える駆動源によって支持される。
【0075】
一方、前記の重畳的な捩じり荷重によって捩じり端部18が回転された場合のロータリダンパー13の作用は前記の場合と同様であるのでその説明を省略する。回転リンク14及び逆回転リンク15に加えられた逆トルクTの向きが変わった場合の作用も同様である。
[実施形態3]
【0076】
図9から図12に示した実施形態3は、前記の実施形態1のトーションダンパー10を使用した制震装置に関し、柱61と梁62とからなる四角形の建築物要素、いわゆるラーメン構造物63の制震に適したものである。ラーメン構造物63の対角位置にあるコーナー部に、それぞれ上部支承プレート64、下部支承プレート65が取り付けられる。
【0077】
上部支承プレート64に転がり軸受66(図3参照)を介して前述のトーションダンパー10がリンク軸44を中心に回転自在に支持される。ダンパーユニット20は、逆回転リンク15の片面に一体化されている。また、回転リンク14及び逆回転リンク15によって構成されたV形リンク53は、一定の開き角θをもってV字形に四角形空間の中央部に広がる。各リンク14、15は同一長さに形成される。
【0078】
下部支承プレート65には、前記四角形の面と直交する方向の連結ピン67によって、回転副リンク68と逆回転副リンク69の各端部がそれぞれ相対回転可能な状態に同軸状態に連結される。これらの副リンク68、69は前記の回転リンク14及び逆回転リンク15と同じ長さに形成され、それぞれの自由端相互が中間連結ピン70によってそれぞれ相対回転可能にリンク結合されている。これら4本のリンク14、15、68、69によってひし形リンク71が構成される。
【0079】
なお、リンク14、15、68、69はひし形リンク71に限らず、凧形リンク、平行四辺形リンク等の四辺形リンクであればよい。このような一つの四辺形リンクに対し、1個のトーションダンパー10が設けられる。
【0080】
実施形態3の免震装置は以上のようなものである。制震対象であるラーメン構造物63が正規の姿勢に維持され、トーションバースプリング11に何らの捩じり荷重が作用しない位置、即ち原点位置にある場合(図9の2点鎖線の位置)において、基礎72からラーメン構造物63に地震の振動が加えられたとする。その振動によって、図9に示したように、梁62の一方の端部(上部支承プレート64の無い方の端部)から梁62の長さ方向の振動外力Fが加えられ、ラーメン構造物63が二点鎖線の状態から実線の状態に角度δだけ傾斜変形したとする。
【0081】
その変形に伴い、中間連結ピン70相互の間隔が縮小するので、回転リンク14と逆回転リンク15に対し、副リンク68、69側からそれぞれ大きさ同じ、内向きの逆トルクTが同時に加えられる。これによりV形リンク53は、開き角θが縮小する方向に変形する。
【0082】
前記の逆トルクTにより、トーションダンパー10においては、回転リンク14と共にリンク側傘歯車48、これと噛み合ったダンパー側傘歯車39が回転し(図2、図10参照)、トーションバースプリング11の捩じり端部18に捩じり荷重が加えられる(図2の矢印A参照)。同時に、逆回転リンク15とともに、ダンパーユニット20及びギヤボックス30及びダンパー側傘歯車39が一体に回転し、トーションバースプリング11の捩じり端部18に捩じり荷重が重畳的に加えられる(図2の矢印B参照)。
【0083】
トーションバースプリング11の捩じり端部18に加えられる捩じり荷重に対する反力は、固定端部19、スプリングホルダー12、逆回転リンク15、逆回転副リンク69、下部支承プレート65を経て基礎72で受けられる。
【0084】
また、トーションバースプリング11の前記の捩じり回転に伴い、ロータリダンパー13(図2参照)のシャフト31とディスク32に対し、粘性流体33とダンパーケーシング27が相対回転することにより、回転リンク14及び逆回転リンク15の回転に対しダンパー効果が付与される。その結果、ラーメン構造物63の地震振動に対し制震効果が発揮される。
【0085】
前記とは逆に、上部支承プレート64側から振動外力Fが作用し、逆方向に角度δだけ変形したとすると(図11参照)、中間連結ピン70相互の間隔が拡大し、回転リンク14と逆回転リンク15に対し、それぞれ同じ大きさの外向きの逆トルクTが同時に加えられ、前記の開き角θが拡大するように変形する。
【0086】
この場合のトーションバースプリング11に作用する捩じり荷重、その反力支持構造、ロータリダンパー13によるダンパー効果は前記の場合と向きは逆であるが、同様の作用となるのでその説明を省略する。
【0087】
このようにして、地震振動による振動外力Fがラーメン構造物63に作用した場合、ひし形リンク71を経て加えられる逆トルクTによって、トーションバースプリング11に対し回転リンク14及び逆回転リンク15側から重畳的に捩じれ荷重が加えられる。その結果、ロータリダンパー13は両方の捩じれ荷重に基づくダンパー効果を発揮し、同時にトーションバースプリング11自体によるダンパー効果も相まって、大きなダンパー効果が発揮される。
【0088】
このようにして、地震振動によって発生した振動外力Fは急速に制震され、ラーメン構造物63は早期に初期の姿勢である原点位置に戻る。
【0089】
なお、以上の説明では、上部支承プレート64にダンパーユニット20を取り付けた構成として説明しているが、ダンパーユニット20を下部支承プレート65に取り付け、上部支承プレート64に副リンク68、69の端部を相対回転可能に連結した構成をとることもできる。
【0090】
また、図12に示したように、上部支承プレート64と下部支承プレート65の両者にトーションダンパー10を取り付け、両方の回転リンク14の自由端相互、及び逆回転リンク15の自由端部相互を連結ピン70で連結することによりひし形リンク71を構成するようにしてもよい。
【0091】
さらに、前記トーションダンパー10に代えて、実施形態2のトーションダンパー10aを使用することができる。
[実施形態4]
【0092】
図13及び図14に示した実施形態4の場合は、前記のラーメン構造物63と前記実施形態1の2個のトーションダンパー10(図13において左側の柱61に近いものから1番目、2番目と称する。)との組み合わせ構造である。各トーションダンパー10の回転リンク14が直列に連結され、下部の梁62aの一部を構成する。各回転リンク14は、柱61等に固定され回転不可能な状態にある。
【0093】
1番目のトーションダンパー10は、回転リンク14の自由端部がその柱61の下端に連結され、逆回転リンク15は回転リンク14に対して直角に起立し、柱61に対して平行となる。その自由端(上端)は連結ピン73によって上部の梁62に回転自在に連結される。
【0094】
2番目のトーションダンパー10の回転リンク14は、前記1番目の回転リンク14と連結一体化される。逆回転リンク15も柱61に平行であり、その上端が上部の梁62に対し連結ピン73によって回転自在に連結される。いずれのトーションダンパー10においても、回転リンク14と逆回転リンク15の開き角θは、原点位置において90°に設定される。
【0095】
前記のラーメン構造物63に地震による振動外力Fが加えられ、図14に示したように角度δだけ傾斜した場合、回転リンク14は回転を生じることがなく、逆回転リンク15が開き角θの縮小する方向に回転し、トーションバースプリング11(図2参照)の捩じり端部18に捩じり荷重を加え、同時にロータリダンパー13によるダンパー作用を受けて制震効果は発揮される。
【0096】
トーションダンパー10を上部の梁62側に設けることができる。この場合は、回転リンク14によって上部の梁62の一部を構成し、逆回転リンク15の自由端部が下部の梁62aに対し回転自在に取り付けられる。
【0097】
なお、逆回転リンク15によって下部又は上部の梁62a、62の一部を構成し、回転リンク14を柱61と平行に配置して、その自由端部を反対側の梁62又は62aに回転自在に取り付ける場合もある。また実施形態2のトーションダンパー10aを用いることができる。
[実施形態5]
【0098】
図14から図18に示した実施形態5は、建造部等の基礎75の床面78上に設置されたテーブル76の制震装置に関するものである。
【0099】
この制震装置は、基礎75の四角形の内壁面77に囲まれた床面78に、任意方向にスライド自在に設置された四角形のテーブル76と、テーブル76の4辺にそれぞれ設けられた一対トーションダンパー10、全部で8台の前記実施形態2に係るトーションダンパー10との組み合わせによって構成される。
【0100】
テーブル76の脚部下面に滑りシートを貼るか、キャスターが取り付けられ、床面78に対し任意の方向にスライドが可能となっている。
【0101】
前記内壁面77と床面78のコーナー部には、各辺同じ高さの段差部79が設けられ(図16参照)、その段差部79の長さ方向の中間部に、床面78と段差部79の上部の内壁面77に至る高さの支承ブロック80が設けられる。支承ブロック80の中間部には内壁面77に対し直角方向のスリット81が設けられる。
【0102】
前記一対のトーションダンパー10は、ダンパーユニット20側を突き合わせて設置され、それぞれ回転リンク14に取り付けられた転がり軸受66を介してブラケット82が回転自在に取り付けられる(図17参照)。ブラケット82は、下向きに開放された鉤形係合部83を有し、その鉤形係合部83の先端部をスリット81に係合させ、スリット81で区分された支承ブロック80の半分(例えば右側)の部分をカバーするように被せて保持させる。その保持状態でリンク軸44は床面78に対して垂直となり、トーションダンパー10は床面78に対して平行に保持される。
【0103】
支承ブロック80のスリット81の左側に他方のトーションダンパー10が同様に係合保持される。前記の保持状態において、各回転リンク14はテーブル76の側面に当接され、逆回転リンク15は内壁面77に当接される(図15参照)。
【0104】
実施形態5の制震装置は以上のように構成され、基礎75に発生する外部振動によって、テーブル76の1辺とこれに対向した内壁面77の間が縮小されると、回転リンク14と逆回転リンク15の開き角θが縮小される。対向した他の辺においては、内壁面77の間隔が拡大されるので、開き角θが拡大される。開き角θの縮小・拡大によってトーションダンパー10がダンパー効果を発生することは前記の各実施形態の場合と同様であり、その結果テーブル76に作用する地震振動が制震される。
【0105】
なお、図18に示したように、各トーションダンパー10のブラケット82を一体に設け、その中間部に溝形係合部84を設けた構成をとることができる。この場合は、支承ブロック80の両側にトーションダンパー10を配置し、ブラケット82の溝形係合部84を支承ブロック80の上面に係合させることにより、両側のトーションダンパー10を保持する。この構造によると、支承ブロック80にスリット81を設ける必要はない。
[実施形態6]
【0106】
図19に示した実施形態6の制震装置は、前述の実施形態5において、各トーションダンパー10を構成する回転リンク14及び逆回転リンク15の自由端の扱いについて、異なった構成となっている。
【0107】
即ち、実施形態5の場合(図15参照)においては、回転リンク14及び逆回転リンク15の自由端はそれぞれテーブル76及び内壁面77に当接させた構成であった。これに対し、この実施形態6の場合は、テーブル76及び段差部79にそれぞれガイド溝85、86を設け、回転リンク14の自由端に設けたピン87をテーブル76のガイド溝85にスライド自在に係合している。また、逆回転リンク15の自由端に設けたピン88を段差部79のガイド溝86にスライド自在に係合している。
【0108】
前記の構成により、回転リンク14及び逆回転リンク15の自由端の姿勢が安定し、それぞれテーブル76側及び内壁面77側から外れることがない。
【符号の説明】
【0109】
X ダンパー軸線
Y リンク回転軸線
10、10a トーションダンパー
11 トーションバースプリング
12 スプリングホルダー
13 ロータリダンパー
14 回転リンク
15 逆回転リンク
16 軸孔
17、17a 軸孔
18 捩じり端部
19 固定端部
20 ダンパーユニット
21 平坦面
22 丸棒部
23 ネジ軸
24 固定穴
25 ツバ
26 屈曲部
27 ダンパーケーシング
28 蓋部材
29 チャンバー
30 ギヤボックス
31 シャフト
32 ディスク
33 粘性流体
34 内部孔
35 調整孔
36、36a 連結突起
37、37a 連結孔
38 滑り軸受
39 ダンパー側傘歯車
40 座金
41 ナット
42 屈曲部
43、43a 角孔
44、44a リンク軸
45、45a 座金
46、46a ナット
47、47a 滑り軸受
48、48a リンク側傘歯車
49、49a 座金
50、50a ナット
51、52 滑り軸受
53 V形リンク
54 連結孔
55 角軸部
56 ネジ軸
60 連結壁
61 柱
62、62a 梁
63 ラーメン構造物
64 上部支承プレート
65 下部支承プレート
66 転がり軸受
67 連結ピン
68 回転副リンク
69 逆回転副リンク
70 連結ピン
71 ひし形リンク
72 基礎
73 連結ピン
75 基礎
76 テーブル
77 内壁面
78 床面
79 段差部
80 支承ブロック
81 スリット
82 ブラケット
83 鉤形係合部
84 溝形係合部
85、86 ガイド溝
87、88 ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に捩じり端部、他端に固定端部を有するトーションバースプリングと、前記トーションバースプリングを収納し前記固定端部を相対回転不可能な状態に支持するスプリングホルダーと、前記スプリングホルダーに同心状態に結合されたロータリダンパーとによりダンパーユニットが構成され、前記ロータリダンパーの回転中心にトーションバースプリングの捩じり端部が一体回転可能に貫通され、前記捩じり端部に捩じり荷重を加える回転手段及び前記スプリングホルダーの固定手段がそれぞれ設けられたトーションダンパーにおいて、前記回転手段が回転リンクにより、前記固定手段が逆回転リンクによりそれぞれ構成され、前記回転リンクのリンク回転軸線と直交するダンパー軸線上に前記ダンパーユニットが配置され、前記リンク回転軸線とダンパー軸線の交差部分に配置されたギヤボックスに90°取り付け角度を異にして相互に噛み合ったリンク側傘歯車とダンパー側傘歯車が取り付けられ、前記リンク側傘歯車に前記回転リンクが同軸状態に取り付けられ、前記ダンパー側傘歯車に前記トーションバースプリングの捩じり端部側が同軸状態に取り付けられ、前記ダンパーユニットが前記逆回転リンクに固定され、前記逆回転リンクが前記ギヤボックスに対し前記リンク回転軸線を中心に回転可能に取り付けられ、前記回転リンクと逆回転リンクに対し逆トルクが加えられるようにしたことを特徴とするトーションダンパー。
【請求項2】
一端に捩じり端部、他端に固定端部を有するトーションバースプリングと、前記トーションバースプリングを収納し前記固定端部を相対回転不可能な状態に支持するスプリングホルダーと、前記スプリングホルダーに同心状態に結合されたロータリダンパーとによってダンパーユニットが構成され、前記ロータリダンパーの回転中心にトーションバースプリングの捩じり端部が一体回転可能に貫通され、前記捩じり端部に捩じり荷重を加える回転手段及び前記スプリングホルダーの固定手段がそれぞれ設けられたトーションダンパーにおいて、前記回転手段が回転リンクにより、前記固定手段が前記ダンパーユニットに固定されたギヤボックスによりそれぞれ構成され、前記回転リンク及び逆回転リンクが前記ギヤボックスの両側において同一のリンク回転軸線上に配置され、前記リンク回転軸線と直交するダンパー軸線上に前記トーションバースプリングが配置され、前記ギヤボックス内に前記リンク回転軸線上で対向した一対のリンク側傘歯車が取り付けられるとともに、前記ダンパー軸線上で前記リンク側傘歯車に噛み合うダンパー側傘歯車が取り付けられ、前記一対のリンク側傘歯車にギヤボックスの外部において前記の回転リンク及び逆回転リンクが同軸状態にそれぞれ取り付けられ、前記スプリング側傘歯車に前記トーションバースプリングの捩じり端部側が同軸状態に取り付けられ、前記回転リンクと逆回転リンクに対し逆トルクが加えられるようにしたことを特徴とするトーションダンパー。
【請求項3】
前記回転リンクと逆回転リンクに外部から前記の逆トルクを加える手段が、前記回転リンクと逆回転リンクの自由端部にそれぞれ回転副リンクと逆回転副輪機を相対回転可能に連結するとともに、両副リンクの他端部相互を相対回転可能に連結して全体として四辺形リンクを構成し、前記両副リンクの他端部の連結端部を制震装置等の固定部に相対回転可能に連結した構成であり、一つの四辺形リンク当たり1個のダンパーユニットを有することを特徴とする請求項1又は2に記載のトーションダンパー。
【請求項4】
前記回転リンクと逆回転リンクに外部から前記の逆トルクを加える手段が、同一構造を持った他のトーションダンパーによって構成され、当該他のトーションダンパーのダンパーユニットを制震装置等の固定部に相対回転自在に取り付け、両方の回転リンクの自由端相互及び逆回転リンクの自由端相互をそれぞれ相対回転可能に連結して四辺形リンクを構成し、一つの四辺形リンク当たり2個のダンパーユニットを複合的に有することを特徴とする請求項1又は2に記載のトーションダンパー。
【請求項5】
前記回転リンクと逆回転リンクに外部から前記の逆トルクを加える手段が、前記回転リンクと逆回転リンクの各自由端部を制震装置等の固定部に押し当てた構成であることを特徴とする請求項1又は2に記載のトーションダンパー。
【請求項6】
前記ロータリダンパーは、軸方向の一端部が開放されたケーシング、その開放端に固定された蓋部材、前記蓋部材によって閉塞されたチャンバー、前記ケーシングの閉塞端及び蓋部材を液密を保持して回転自在に貫通するシャフト、前記シャフトに一体化され前記チャンバー内部で回転可能に保持されたディスク、前記チャンバーに封入された粘性流体によって構成されたことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のトーションダンパー。
【請求項7】
請求項3、4又は6に記載のトーションダンパーを用いた制震装置において、基礎上に構築された柱と梁からなるラーメン構造物の対角位置にある上部支承プレートと下部支承プレート間に前記トーションダンパーを取り付けたことを特徴とする制震装置。
【請求項8】
前記トーションダンパーとして請求項3又は6に記載のものを用い、上部又は下部支承プレートのいずれか一方に当該トーションダンパーの回転リンクを支持するリンク軸が回転自在に取り付けられ、他方の支承プレートに回転副リンクと逆回転副リンクを相対回転自在に連結したことを特徴とする請求項7に記載の制震装置。
【請求項9】
前記トーションダンパーとして請求項4又は6に記載のトーションダンパーを用いた制震装置において、前記上部及び下部支承プレートにそれぞれ当該両トーションダンパーの各回転リンクを支持するリンク軸がそれぞれ回転自在に取り付けられことを特徴とする請求項7に記載の制震装置。
【請求項10】
請求項3、4又は6に記載のトーションダンパーを用いた制震装置において、基礎上に構築された左右の柱、上部梁及び下部梁からなるラーメン構造物の下部梁の一部を前記トーションダンパーの回転リンクによって構成し、前記逆回転リンクを前記柱と平行に配置するとともに、その自由端部を上部梁に回転自在に取り付けたことを特徴とする制震装置。
【請求項11】
請求項3、4又は6に記載のトーションダンパーを用いた制震装置において、基礎上に構築された左右の柱、上部梁及び下部梁からなるラーメン構造物の上部梁の一部を前記トーションダンパーの回転リンクによって構成し、前記逆回転リンクを前記柱と平行に配置するとともに、その下端部を下部梁に回転自在に取り付けたことを特徴とする制震装置。
【請求項12】
請求項5又は6に記載のトーションダンパーを用いた制震装置において、基礎に設けられた四角形の内壁面に囲まれた床面に任意方向にスライド自在に設置された四角形のテーブルと、前記内壁面ごとに設けられた前記トーションダンパーとの組み合わせからなり、前記トーションダンパーのリンク軸にブラケットが回転自在に取り付けられ、前記各内壁面に設けた支承ブロックに前記ブラケットを係合し、前記ブラケットによって前記リンク軸が床面に対して垂直となる向きに各トーションダンパーを支持せしめ、回転リンクの自由端と逆回転リンクの自由端のいずれか一方を前記内壁面に、他方をテーブルに当接させたことを特徴とする制震装置。
【請求項13】
請求項5又は6に記載のトーションダンパーを用いた制震装置において、基礎に設けられた四角形の内壁面に囲まれた床面に任意方向にスライド自在に設置された四角形のテーブルと、前記内壁面ごとに設けられた前記トーションダンパーとの組み合わせからなり、前記トーションダンパーのリンク軸にブラケットが回転自在に取り付けられ、前記各内壁面に設けた支承ブロックに前記ブラケットを係合し、前記ブラケットによって前記リンク軸が床面に対して垂直となる向きに各トーションダンパーを支持せしめ、回転リンクの自由端と逆回転リンクの自由端のいずれか一方を前記内壁面に設けたガイド溝に、他方をテーブルに設けたガイド溝にそれぞれ各自由端に設けたピンを介してスライド自在に係合させたことを特徴とする制震装置。
【請求項14】
前記トーションダンパーが各内壁面にそれぞれ一対ずつ、かつそれぞれのダンパーユニット側を突き合わせて設置し、各トーションダンパーの前記ブラケットにそれぞれ鉤形の係合部が設けられ、前記支承ブロックの中間部にスリットが設けられ、前記支承ブロックの両側に配置された各トーションダンパーのブラケットの係合部を前記支承ブロックの両側から同じスリットに係合させたことを特徴とする請求項12又は13に記載の制震装置。
【請求項15】
前記トーションダンパーが各内壁面にそれぞれ一対ずつ、かつそれぞれのダンパーユニット側を突き合わせて設置し、各トーションダンパーの前記ブラケットが一体化されその中間部に溝形の係合部が設けられ、前記支承ブロックの両側に各トーションダンパーを配置するとともに、前記ブラケットの係合部を支承ブロックの上面に係合させたことを特徴とする請求項12又は13に記載の制震装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−60765(P2013−60765A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200689(P2011−200689)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】