説明

ナビゲーション装置および車両の走行安全装置

【課題】道路の分岐点において適切なマップマッチングをおこない、適切に安全装置を作動させる。
【解決手段】ナビゲーション装置13は、現在位置検出部21から出力される位置信号に基づいて地図データ記憶部23の道路データのうち自車両が存在する走行路を判定するナビゲーション処理部22と、撮影装置16から出力される画像データに基づいて道路の走行区分線を認識する道路形状認識部65とを備え、ナビゲーション処理部22は、道路形状認識部65により認識された走行区分線に基づいて、自車両が分岐点を通過する前後において同一の道路を継続して走行しているか否かを判定し、同一の道路を継続して走行していると判定した場合に、自車両が存在する走行路を、この時点までに判定した走行路から分岐点に接続された他の走行路へと変更することを禁止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ナビゲーション装置および車両の走行安全装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、撮像装置により道路の走行区分線を認識し、道路の分岐点において走行区分線を跨いで走行した場合に、分岐路に分岐したことを検出する装置が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2007−62651号公報
【特許文献2】特開2007−3286号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記従来技術に係る装置をナビゲーション装置と共に車両に搭載した場合において、ナビゲーション装置は、地図の道路データと自車両の位置とに基づくマップマッチングをおこなう際に、道路の分岐点において自車両が実際に走行する道路とは異なる走行路の道路データに自車両の位置がマッチングされてしまうミスマッチングが生じた場合であっても、走行路の道路データと自車両の位置との位置ずれが所定値以上に増大するまでは、ミスマッチングの有無を適切に判定することができず、撮像装置に基づく道路の認識結果とナビゲーション装置の演算結果との間の不整合が増大してしまういつ問題が生じる。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、道路の分岐点において適切なマップマッチングをおこなうことが可能なナビゲーション装置および道路の分岐点において適切に安全装置を作動させることが可能な車両の走行安全装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明の第1態様に係るナビゲーション装置は、道路データを記憶する記憶手段(実施の形態での地図データ記憶部23)と、自車両の位置を検出して位置信号を出力する自車位置検出手段(実施の形態での現在位置検出部21)と、前記道路データおよび前記自車位置検出手段から出力される前記位置信号に基づいて前記道路データのうち自車両が存在する走行路を判定する走行路判定手段(実施の形態でのナビゲーション処理部22)とを備えるナビゲーション装置であって、自車両の外界を撮像して画像信号を出力する撮像手段(実施の形態での撮影装置16)と、前記撮像手段から出力される前記画像信号に基づいて道路の走行区分線を認識する走行区分線認識手段(実施の形態での道路形状認識部65)と、前記道路データに基づいて道路の分岐点を取得する分岐点取得手段(実施の形態でのナビゲーション処理部22)とを備え、前記走行路判定手段は、前記走行区分線認識手段により認識された前記走行区分線に基づいて、自車両が前記分岐点取得手段により取得された前記分岐点を通過する前後において同一の前記道路を継続して走行しているか否かを判定し、自車両が前記分岐点を通過する前後において同一の前記道路を継続して走行していると判定した場合に、自車両が存在する走行路を、この時点までに判定した走行路から前記分岐点に接続された他の走行路へと変更することを禁止する。
【0005】
さらに、本発明の第2態様に係るナビゲーション装置では、前記走行路判定手段は、自車両が前記分岐点を通過する前後において前記走行区分線認識手段により認識された同一の左右の前記走行区分線の間に継続して存在する場合に、同一の前記道路を継続して走行していると判定する。
【0006】
さらに、本発明の第3態様に係るナビゲーション装置では、前記走行路判定手段は、自車両が前記分岐点に到達する以前において前記道路の右側車線または左側車線の何れの車線を継続して走行しているかを認識したか否かを判定し、自車両が前記分岐点に到達する以前において前記道路の右側車線または左側車線の何れの車線を継続して走行しているかを認識したと判定した場合には、自車両が存在する走行路を、この時点までに判定した走行路から前記分岐点に接続された他の走行路へと変更することを許可する。
【0007】
また、本発明の第4態様に係る車両の走行安全装置は、道路データを記憶する記憶手段(実施の形態での地図データ記憶部23)と、自車両の位置を検出して位置信号を出力する自車位置検出手段(実施の形態での現在位置検出部21)と、前記道路データおよび前記自車位置検出手段から出力される前記位置信号に基づいて前記道路データのうち自車両が存在する走行路を判定する走行路判定手段(実施の形態でのナビゲーション処理部22)と、自車両の車両状態を検出して車両状態信号を出力するする車両状態検出手段(実施の形態での現在位置検出部21)と、前記走行路判定手段により判定された自車両が存在する走行路および前記車両状態検出手段から出力される前記走行状態信号に基づいて、自車両に設けられた安全装置(実施の形態での安全装置15)を作動させる作動手段(実施の形態での作動部64)とを備える車両の走行安全装置であって、自車両の外界を撮像して画像信号を出力する撮像手段(実施の形態での撮影装置16)と、前記撮像手段から出力される前記画像信号に基づいて道路の走行区分線を認識する走行区分線認識手段(実施の形態での道路形状認識部65)とを備え、前記作動手段は、前記走行区分線認識手段により認識された前記走行区分線に基づいて、自車両が同一の前記道路を継続して走行しているか否かを判定し、自車両が同一の前記道路を継続して走行していると判定した場合に、前記走行路判定手段により自車両が存在する走行路の変更がおこなわれたときに、前記安全装置の作動を禁止する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の第1態様に係るナビゲーション装置によれば、撮像手段から出力される画像信号に基づいて、自車両が分岐点を通過する前後において同一の道路を継続して走行していると判定される場合には、道路データおよび自車両の位置に基づき自車両が存在する走行路が変更されることを禁止することから、自車両が実際に走行する道路とは異なる走行路の道路データに自車両の位置がマッチングされてしまうミスマッチングが生じることを防止することができる。
【0009】
さらに、本発明の第2態様に係るナビゲーション装置によれば、自車両が分岐点を通過する前後において同一の左右の走行区分線の間に継続して存在する場合に、同一の道路を継続して走行していると判定することにより、判定精度および判定結果の信頼性を向上させることができる。
【0010】
さらに、本発明の第3態様に係るナビゲーション装置によれば、分岐点の手前位置から継続して道路の右側車線または左側車線の何れの車線を走行していることを認識した場合には、自車両が実際に走行する道路とは異なる走行路の道路データに自車両の位置がマッチングされてしまうミスマッチングが生じる可能性が低いと判断して、道路データおよび自車両の位置に基づき自車両が存在する走行路が変更されることを許可することから、判定処理が過剰に複雑化することを防止することができる。
【0011】
また、本発明の第4態様に係る車両の走行安全装置によれば、撮像手段から出力される画像信号に基づいて、自車両が同一の道路を継続して走行していると判定される状態で、自車両が存在する走行路の変更がおこなわれたときに、安全装置の作動を禁止することから、自車両が実際に走行する道路とは異なる走行路の道路データに応じて不必要に安全装置が作動することを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態に係るナビゲーション装置および車両の走行安全装置について添付図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1に示すように、本実施の形態による車両の走行安全装置10は、例えば、内燃機関11の駆動力を、オートマチックトランスミッション(AT)あるいは無段自動変速機(CVT)などのトランスミッション(T/M)12を介して車両の駆動輪に伝達する車両に搭載され、ナビゲーション装置13と、制御装置14と、ブレーキアクチュエータ15aおよび警報装置15bを具備する安全装置15と、外界センサをなす撮影装置16とを備えて構成されている。
【0014】
なお、撮影装置16は、例えば可視光領域や赤外線領域にて撮像可能なカメラ16aおよび画像処理部16bを備えて構成され、カメラ16aは、例えばフロントウィンドウの車室内側に配置され、フロントウィンドウ越しに自車両の進行方向前方の所定検知範囲の外界を撮影する。画像処理部16bは、カメラ16aにより撮影して得た画像に対して、例えばフィルタリングや二値化処理等の所定の画像処理を行い、画像データを生成して制御装置14へ出力する。
【0015】
ナビゲーション装置13は、例えば現在位置検出部21と、ナビゲーション処理部22と、地図データ記憶部23と、入力部24と、出力部25とを備えて構成されている。
【0016】
さらに、現在位置検出部21は、例えば人工衛星を利用して車両の位置を測定するためのGPS(Global Positioning System)信号などの測位信号を受信する測位信号受信部31と、水平面内での自車両の向きや鉛直方向に対する傾斜角度(例えば、車両の前後方向軸の鉛直方向に対する傾斜角度や車両重心の上下方向軸回りの回転角であるヨー角など)および傾斜角度の変化量(例えば、ヨーレートなど)を検出するジャイロセンサ32と、車両の速度(車速)を検出する車速センサ33とを備えて構成され、受信した測位信号によって、あるいは、車速やヨーレートなどの検出信号に基づく自律航法の算出処理によって、車両の現在位置を算出する。
【0017】
地図データ記憶部23は、例えばナビゲーション処理などにおいて出力部25の表示装置(図示略)に地図を表示するための地図表示用のデータおよび自車両の現在位置に基づくマップマッチングの処理に必要とされる道路座標データに加えて、経路探索や経路誘導などの処理に必要とされるデータ、例えば交差点および分岐点などの所定位置の緯度および経度からなる点であるノードと各ノード間を結ぶ線であるリンクとからなる道路データを地図データとして備えており、さらに、ノードおよびリンクには各種の情報が付加されている。
例えば、各ノードに対しては、緯度および経度および標高に加えて、信号機の有無や複数の道路の交差角度や形状などの交差点情報や、分岐点での分岐路の形状あるいはジャンクションでの道路の形状などの情報が付加され、各リンクには、道路種別(例えば、高速道路、一般道など)などの情報が付加されている。
【0018】
ナビゲーション処理部22は、例えば、地図データ記憶部23から取得される道路データに対して、現在位置検出部21における測位信号および自律航法の算出処理のそれぞれ、又は、何れか一方から得られる自車両の現在位置の情報に基づいてマップマッチングを行い、位置検出の結果を補正すると共に、道路データに具備される複数の走行路のうち、自車両が存在する走行路を判定する。そして、検出された車両の現在位置、あるいは、各種スイッチやキーボード等からなる入力部24を介して操作者により入力された適宜の車両の位置に対して、出力部25の表示装置での地図表示およびスピーカ(図示略)からの音声出力などを制御する。
また、ナビゲーション処理部22は、例えば車両の経路探索や経路誘導などの処理を実行し、地図データ記憶部23から取得される道路データと共に、例えば目的地までの経路情報や各種の付加情報を出力部25へ出力する。
【0019】
制御装置14は、速度制御部41と、エンジン制御部42と、変速制御部43と、ブレーキ制御部44と、警報制御部45とを備えて構成され、運転者によるアクセルペダルの操作量に係るアクセル開度を検出するアクセルペダル開度センサ51と、運転者によるブレーキペダルの操作量を検出するブレーキペダルセンサ52と、スロットル開度を検出するスロットル開度センサ53とから出力される各検出信号が入力されている。
【0020】
速度制御部41は、カーブ認識部61と、適正車速設定部62と、比較部63と、作動部64と、道路形状認識部65とを備えて構成されている。
【0021】
カーブ認識部61は、地図データ記憶部23に記憶された道路データを取得し、この道路データに基づいて自車両の進行方向の道路形状として道路に存在するカーブを検出する。
例えばカーブ認識部61は、道路データの基礎となるノードつまり道路形状を把握するための点と、リンクつまり各ノードを結ぶ線とに基づいて、カーブの形状を認識する。そして、例えばカーブの径や曲率および極性、カーブの長さ(カーブの深さ)、カーブの通過に要する旋回角などからなるカーブ形状値を算出し、適正車速設定部62へ出力する。
【0022】
適正車速設定部62は、カーブ認識部61にて認識されたカーブ形状値に基づいて、カーブを適正に通過可能な車両の速度(適正速度VS)を算出する。そして、適正車速設定部62は設定した適正速度VSのデータを比較部63へ出力する。
ここで、適正車速設定部62は、カーブ通過時に車両の横方向に発生する加速度(横加速度)を算出する横加速度算出部62aを備えている。すなわち、先ず、横加速度算出部62aは、カーブ認識部61にて認識されたカーブの形状に基づいて、このカーブを適正に通過する際に許容される横加速度を算出する。次に、適正車速設定部62は、この横加速度を車両に発生させる車両の速度を算出し、この速度を適正速度VSとして設定する。
なお、カーブ通過時に自車両に許容される横加速度は、路面状況、タイヤの状況、積載の状態などにより変化するため、これらを更に考慮して適正速度VSを設定するようにしてもよい。
また、認識されたカーブの形状の手前に上り勾配あるいは下り勾配などが存在する場合には、これらの勾配の大きさに応じて適正速度VSが設定される。
【0023】
比較部63は、現在位置検出部21の車速センサ33にて検出した車両の速度(現在速度)VPと、適正車速設定部62にて設定した適正速度VSとを比較して、この比較結果を作動部64へ出力する。
作動部64は、比較部63での比較結果に基づいてエンジン制御部42および変速制御部43およびブレーキ制御部44および警報制御部45の作動を制御する。例えば、比較部63での比較結果において、車速センサ33にて検出した現在速度VPと適正車速設定部62にて設定した適正速度VSとが異なる場合、例えば検出された車両の現在速度VPが適正速度VSよりも高い状態等のように車両が適正車両状態にない場合には、警報制御部45を介して警報装置15bを作動させて運転者の注意を喚起したり、ブレーキ制御部44を介してブレーキアクチュエータ15aを作動させて自動的に車両を減速させる。
【0024】
道路形状認識部65は、例えば撮影装置16から入力される画像データに基づき、画像データ上において自車両の走行車線に対する走行区分線(つまり、自車両が走行する道路の走行区分線)を検知することで自車両の進行方向の道路形状を認識する。
この道路形状認識部65により認識された自車両が走行する道路の走行区分線のデータは、制御装置14の作動部64およびナビゲーション装置13のナビゲーション処理部22へ出力されている。
【0025】
ナビゲーション処理部22は、地図データ記憶部23に記憶された道路データに基づいて、マップマッチングの処理において判定された自車両が存在する走行路上に設けられた分岐点および分岐路を取得し、道路形状認識部65により認識された走行区分線に基づいて、自車両が分岐点を通過する前後において、同一の道路を継続して走行しているか否かを判定する。この判定処理では、例えば、自車両が分岐点を通過する前後において、道路形状認識部65により認識された同一の1対の左右の走行区分線の間に自車両が継続して存在する場合(つまり、走行区分線を跨がずに走行する場合)に、自車両が同一の道路を継続して走行していると判定する。
【0026】
そして、ナビゲーション処理部22は、自車両が分岐点を通過する前後において、同一の道路を継続して走行していると判定した場合に、マップマッチングの処理において判定される自車両が存在する走行路を、この時点までに判定した走行路から分岐点に接続された他の走行路へと変更することを禁止する。
【0027】
例えば図2に示すように、本線Raを走行する自車両Pの進行方向前方に分岐点Dにおいて本線Raから分岐する分岐路Rbが存在する場合に、先ず、この分岐点Dの手前位置では、ナビゲーション処理部22によって設定される誘導経路A(つまり、適宜の目的地に対する経路探索や経路誘導などの処理で用いられる経路)と予測経路B(つまり、自車両の走行制御の処理やマップマッチングの処理などで用いられる経路)とは一致しており、かつ、マップマッチングの処理で判定される自車両が存在する走行路と予測経路Bとは一致している。
【0028】
そして、分岐点D付近以降において、例えば、誘導経路Aが分岐路Rbに設定され、かつ、予測経路Bが本線Raに設定されることで、誘導経路Aと予測経路Bとが一致しないと判定されると、誘導経路Aと一致するようにして予測経路Bが変更されることになり、これに伴い、マップマッチングの処理で判定される自車両が存在する走行路の変更を指示する指令が出力される。
しかしながら、実際には、自車両Pが本線Raを継続して走行することに伴い、道路形状認識部65により認識された走行区分線に基づいて、自車両が分岐点Dを通過する前後において同一の1対の左右の走行区分線の間に継続して存在すると判定され、自車両が同一の道路(つまり、本線Ra)を継続して走行していると判定されることから、マップマッチングの処理において判定される自車両が存在する走行路を、この時点までに判定した走行路(つまり、本線Ra)から分岐点Dに接続された他の走行路(つまり、分岐路Rb)へと変更することは禁止される。
【0029】
また、作動部64は、道路形状認識部65により認識された走行区分線に基づいて、自車両が分岐点を通過する前後において、同一の道路を継続して走行しているか否かを判定する。この判定処理では、例えば、自車両が分岐点を通過する前後において、道路形状認識部65により認識された同一の1対の左右の走行区分線の間に自車両が継続して存在する場合に、自車両が同一の道路を継続して走行していると判定する。
【0030】
そして、作動部64は、自車両が分岐点を通過する前後において、同一の道路を継続して走行していると判定した場合に、ナビゲーション処理部22によってマップマッチングの処理において判定される自車両が存在する走行路が変更されたときに、安全装置15の作動を禁止する。
【0031】
本実施の形態による車両の走行安全装置10は上記構成を備えており、次に、この車両の走行安全装置10の動作について添付図面を参照しながら説明する。
【0032】
先ず、以下に、作動部64およびブレーキ制御部44による作動判断処理について説明する。
例えば図3に示すステップS01においては、地図データ記憶部23に格納された自車両の進行方向前方の道路データを取得する。
次に、ステップS02おいては、自車両の現在位置および車速を取得する。
そして、ステップS03においては、道路データに基づき、進行方向前方にカーブを認識したか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、一連の処理を終了する。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS04に進む。
【0033】
そして、ステップS04においては、認識したカーブ(認識カーブ)までの距離が所定距離以下であるか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、一連の処理を終了する。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS05に進む。
そして、ステップS05においては、認識カーブにおける適正通過車速を算出する。
そして、ステップS06においては、自車両の車速が適正通過車速よりも大きいか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、一連の処理を終了する。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS07に進む。
【0034】
そして、ステップS07においては、自車両の車速から適正通過車速を減算して速度差ΔVを算出する。
そして、ステップS08においては、速度差ΔVに応じてブレーキアシスト量を算出する。
そして、ステップS09においては、運転者によるブレーキ操作があるか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、一連の処理を終了する。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS10に進む。
そして、ステップS10においては、算出したブレーキアシスト量に応じたブレーキアシストを実行し、一連の処理を終了する。
【0035】
以下に、ナビゲーション処理部22の動作、自車両が存在する走行路を判定する処理について説明する。
例えば図4に示すステップS21においては、地図データ記憶部23から取得される道路データと現在位置検出部21により検出される自車両の現在位置とに基づき、ナビゲーション処理部22のマップマッチングの処理において自車両が存在する走行路が認識されているか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、リターンに進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS22に進む。
【0036】
そして、ステップS22においては、ナビゲーション処理部22のマップマッチングの処理において自車両が存在する走行路として同一の走行路が継続してマッチングされているか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、リターンに進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS23に進む。
【0037】
そして、ステップS23においては、ナビゲーション処理部22によって誘導経路、つまり適宜の目的地に対する経路探索や経路誘導などの処理で用いられる経路が設定されているか否かを判定する。
この判定結果が「YES」の場合には、ステップS24に進み、このステップS24においては、予測経路(つまり、自車両の走行制御の処理やマップマッチングの処理などで用いられる経路)として誘導経路が設定される。
一方、この判定結果が「NO」の場合には、ステップS25に進み、このステップS25においては、例えば車速やヨーレートなどの検出信号に基づき、予測経路を作成する。
【0038】
そして、ステップS26においては、例えば自車両が分岐点を通過する場合などにおいて、ナビゲーション処理部22のマップマッチングの処理で判定される自車両が存在する走行路の変更を指示する指令が出力されているか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、リターンに進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS27に進む。
そして、ステップS27においては、道路形状認識部65により認識された走行区分線に基づいて、自車両が同一の道路を継続して走行しているか否かを判定する。
この判定結果が「YES」の場合には、後述するステップS30に進む。
一方、この判定結果が「NO」の場合には、ステップS28に進む。
【0039】
そして、ステップS28においては、自車両が走行中の道路が継続して認識されずに認識に断絶が生じたと判断する。
そして、ステップS29においては、マップマッチングの処理において判定される自車両が存在する走行路を、この時点までに判定した走行路から分岐点に接続された他の走行路へと変更することを許可し、リターンに進む。
【0040】
また、ステップS30においては、マップマッチングの処理において判定される自車両が存在する走行路を、この時点までに判定した走行路から分岐点に接続された他の走行路へと変更することを禁止する。
そして、ステップS31においては、マップマッチングの処理において判定される自車両が存在する走行路と、予測経路とが一致するか否かを判定する。
この判定結果が「YES」の場合には、この時点で設定されている予測経路を維持し、リターンに進む。
一方、この判定結果が「NO」の場合には、ステップS33に進み、新たな予測経路(新規予測経路)を生成し、リターンに進む。
【0041】
以下に、作動部64の動作、安全装置15の作動を制御する処理について説明する。
例えば図5に示すステップS41においては、地図データ記憶部23から取得される道路データと現在位置検出部21により検出される自車両の現在位置とに基づき、ナビゲーション処理部22のマップマッチングの処理において自車両が存在する走行路が認識されているか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、ステップS42に進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、後述するステップS44に進む。
【0042】
そして、ステップS42においては、ナビゲーション処理部22のマップマッチングの処理において自車両が存在する走行路として設定される走行路対象が実際に存在しないか否かを判定する。
この判定結果が「YES」の場合には、リターンに進む。
一方、この判定結果が「NO」の場合には、自車両が実際に走行中の道路の道路データが地図データ記憶部23に存在しないと判断し、後述するステップS47に進む。
【0043】
また、ステップS44においては、道路形状認識部65により認識された走行区分線に基づいて、自車両が同一の道路を継続して走行しているか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、ステップS45に進み、このステップS45においては、自車両が走行中の道路が継続して認識されずに認識に断絶が生じたと判断し、リターンに進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS46に進む。
【0044】
そして、ステップS46においては、ナビゲーション処理部22のマップマッチングの処理において自車両が存在する走行路として同一の走行路が継続してマッチングされているか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、リターンに進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS47に進む。
【0045】
そして、ステップS47においては、例えば自車両が分岐点を通過する場合などにおいて、ナビゲーション処理部22のマップマッチングの処理で判定される自車両が存在する走行路の変更を指示する指令が出力されているか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、リターンに進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS48に進む。
そして、ステップS48においては、マップマッチングの処理で判定される自車両が存在する走行路により予測経路を生成する。
【0046】
そして、ステップS49においては、安全装置15の作動要求があるか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、リターンに進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS50に進む。
そして、ステップS50においては、道路形状認識部65により認識された走行区分線に基づいて、自車両が同一の道路を継続して走行しているか否かを判定する。
この判定結果が「YES」の場合には、ステップS51に進み、このステップS51においては、安全装置15の作動を禁止し、リターンに進む。
一方、この判定結果が「NO」の場合には、リターンに進む。
【0047】
上述したように、本実施の形態によるナビゲーション装置13によれば、撮影装置16から出力される画像データに基づいて、自車両が分岐点を通過する前後において同一の道路を継続して走行していると判定される場合には、道路データおよび自車両の現在位置に基づき自車両が存在する走行路が変更されることを禁止することから、自車両が実際に走行する道路とは異なる走行路の道路データに自車両の位置がマッチングされてしまうミスマッチングが生じることを防止することができる。
また、自車両が分岐点を通過する前後において同一の左右の走行区分線の間に継続して存在する場合(つまり、走行区分線を跨がずに走行する場合)に、同一の道路を継続して走行していると判定することにより、判定精度および判定結果の信頼性を向上させることができる。
【0048】
また、本実施の形態による車両の走行安全装置10によれば、撮影装置16から出力される画像データに基づいて、自車両が同一の道路を継続して走行していると判定される状態で、自車両が存在する走行路の変更がおこなわれたときに、安全装置15の作動を禁止することから、自車両が実際に走行する道路とは異なる走行路の道路データに応じて不必要に安全装置15が作動することを防止することができる。
【0049】
なお、上述した実施の形態においては、例えば図2に示すように、自車両が本線を走行して分岐点を通過する前後において、同一の道路を継続して走行していると判定した場合に、マップマッチングの処理において判定される自車両が存在する走行路を、この時点までに判定した走行路(つまり本線)から分岐点に接続された他の走行路(つまり、本線に取り付けられた分岐路)へと変更することを禁止するとしたが、これに限定されず、例えば図6に示すように、自車両の進行方向前方に分岐点としてジャンクションが存在する場合には、このジャンクションの手前位置から継続して道路の右側車線または左側車線の何れの車線を走行しているか否かを判定し、この判定結果に応じて自車両が存在する走行路の変更を許可してもよい。
【0050】
例えば図6に示すように、自車両PがジャンクションJの手前位置から継続して道路の左側車線を走行していると判定した場合には、ナビゲーション処理部22によって設定される誘導経路Aと予測経路Bとは一致する可能性が高く、自車両が実際に走行する道路とは異なる走行路の道路データに自車両の位置がマッチングされてしまうミスマッチングが生じる可能性が低いと判断して、道路データおよび自車両の位置に基づき自車両が存在する走行路が変更されることを許可する。これにより、判定処理が過剰に複雑化することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両の走行安全装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る分岐点を有する道路での誘導経路および予測経路の一例を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る車両の走行安全装置の作動部およびブレーキ制御部による作動判断処理の一例を示すフローチャートである。
【図4】本発明の一実施形態に係る車両の走行安全装置のナビゲーション処理部の動作の一例を示すフローチャートである。
【図5】本発明の一実施形態に係る車両の走行安全装置の作動部の動作の一例を示すフローチャートである。
【図6】本発明の一実施形態に係るジャンクションを有する道路での誘導経路および予測経路の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0052】
10 車両の走行安全装置
15 安全装置
16 撮影装置(撮像手段)
21 現在位置検出部(自車位置検出手段)
22 ナビゲーション処理部(走行路判定手段、分岐点取得手段)
23 地図データ記憶部(記憶手段)
64 作動部(作動手段)
65 道路形状認識部(走行区分線認識手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路データを記憶する記憶手段と、
自車両の位置を検出して位置信号を出力する自車位置検出手段と、
前記道路データおよび前記自車位置検出手段から出力される前記位置信号に基づいて前記道路データのうち自車両が存在する走行路を判定する走行路判定手段とを備えるナビゲーション装置であって、
自車両の外界を撮像して画像信号を出力する撮像手段と、
前記撮像手段から出力される前記画像信号に基づいて道路の走行区分線を認識する走行区分線認識手段と、
前記道路データに基づいて道路の分岐点を取得する分岐点取得手段とを備え、
前記走行路判定手段は、
前記走行区分線認識手段により認識された前記走行区分線に基づいて、自車両が前記分岐点取得手段により取得された前記分岐点を通過する前後において同一の前記道路を継続して走行しているか否かを判定し、
自車両が前記分岐点を通過する前後において同一の前記道路を継続して走行していると判定した場合に、自車両が存在する走行路を、この時点までに判定した走行路から前記分岐点に接続された他の走行路へと変更することを禁止することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
前記走行路判定手段は、
自車両が前記分岐点を通過する前後において前記走行区分線認識手段により認識された同一の左右の前記走行区分線の間に継続して存在する場合に、同一の前記道路を継続して走行していると判定することを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
前記走行路判定手段は、
自車両が前記分岐点に到達する以前において前記道路の右側車線または左側車線の何れの車線を継続して走行しているかを認識したか否かを判定し、
自車両が前記分岐点に到達する以前において前記道路の右側車線または左側車線の何れの車線を継続して走行しているかを認識したと判定した場合には、自車両が存在する走行路を、この時点までに判定した走行路から前記分岐点に接続された他の走行路へと変更することを許可することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のナビゲーション装置。
【請求項4】
道路データを記憶する記憶手段と、
自車両の位置を検出して位置信号を出力する自車位置検出手段と、
前記道路データおよび前記自車位置検出手段から出力される前記位置信号に基づいて前記道路データのうち自車両が存在する走行路を判定する走行路判定手段と、
自車両の車両状態を検出して車両状態信号を出力するする車両状態検出手段と、
前記走行路判定手段により判定された自車両が存在する走行路および前記車両状態検出手段から出力される前記走行状態信号に基づいて、自車両に設けられた安全装置を作動させる作動手段とを備える車両の走行安全装置であって、
自車両の外界を撮像して画像信号を出力する撮像手段と、
前記撮像手段から出力される前記画像信号に基づいて道路の走行区分線を認識する走行区分線認識手段とを備え、
前記作動手段は、前記走行区分線認識手段により認識された前記走行区分線に基づいて、自車両が同一の前記道路を継続して走行しているか否かを判定し、
自車両が同一の前記道路を継続して走行していると判定した場合に、前記走行路判定手段により自車両が存在する走行路の変更がおこなわれたときに、前記安全装置の作動を禁止することを特徴とする車両の走行安全装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−19628(P2010−19628A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−179177(P2008−179177)
【出願日】平成20年7月9日(2008.7.9)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】