説明

ナビゲーション装置

【課題】ナビゲーション装置は、移動中に情報配信サーバから道路地図データの更新データを効率的にダウンロードする。
【解決手段】ナビゲーション装置100において、道路地図データの更新データをダウンロードする際に、探索された経路を構成するリンク単位で予めダウンロードをスケジューリングするようにした。また、そのダウンロードスケジューリングにおいては、無線通信性能が考慮されるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動中に情報配信サーバから道路地図データの更新データをダウンロードするナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ナビゲーション装置は、ディスプレイの表示画面上に道路地図を表示する。実際には道路の新設・廃止・改良等が随時発生しているため、適宜道路地図データの更新が必要となる。更新データは、CD−ROM等の記録媒体か、または携帯電話ネットワーク等の広域通信ネットワークに接続されている情報配信サーバの記憶装置かのいずれかに記録されていることが多い。前者の場合、記録媒体はその読み取り装置によってナビゲーション装置にマウントされ、更新データの読み出しが可能となる。後者の場合、コンテンツ配信サーバの記憶装置に記録されている更新データは、広域通信ネットワークおよび無線基地局を介してデータ信号としてダウンロード可能である。
【0003】
ナビゲーション装置において、実際に道路地図データを更新するタイミングが移動開始時としばしば重複する。無線通信を介して道路地図データをデータ信号としてダウンロードする場合、道路地図データのダウンロード終了を待たないと最適な経路誘導を実行できない。そこで、探索した経路に関連した地図データをユーザの出発点に近い領域分から優先付けて移動体へ配信できる地図データ送信装置が特許文献1に開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−241965号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示の発明によると、移動体がダウンロード中に接続している無線通信が不安定な場合、通信速度、通信帯域等の通信性能を考慮し、未送信の地図データにおいて優先度の高い未送信パーツを選択し直す。したがって、通信性能変化の検出処理や、未送信パーツを選択し直すための再演算処理の間はダウンロードが中断するので、ダウンロード処理の非効率性という問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるナビゲーション装置は、推奨経路を探索するために演算する演算手段と、推奨経路に関して取得するデータのリストを通信によって受信する受信手段と、リストにおいて、データに含まれる複数のコンテンツのうち、移動体が推奨経路を移動する間の取得対象となる対象コンテンツと、停止している間の取得対象となる他のコンテンツとを属性によって識別する識別手段と、移動体が推奨経路を移動する際に、通信の状態を推奨経路の区間毎に検出する検出手段と、属性と、区間毎に検出される通信の状態とに基づき、移動体が推奨経路を移動しながら区間毎に分けてデータを取得するためのスケジューリングを、推奨経路に沿って移動体が移動を開始する前に行うスケジューリング手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ナビゲーション装置は、移動中に情報配信サーバから道路地図データの更新データを効率的にダウンロードできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1〜図16を参照して、本発明によるナビゲーション装置を車両に搭載した一実施の形態を説明する。図1は、本実施の形態のナビゲーション装置を含む道路地図データ更新システムの全体構成を示す図である。
【0009】
図1に示す道路地図データ更新システムは、本実施の形態のナビゲーション装置を搭載した車両10と、情報配信サーバ200と、基地局300と、広域通信ネットワーク40とを含んで構成されている。
【0010】
情報配信サーバ200は、ネットワークインタフェースを介して広域通信ネットワーク40に接続され、広域通信ネットワーク40内を流通している様々な情報を検索および収集する機能、収集した情報をデータベース化して管理する機能、それらの情報を移動端末へ配信する機能等を備えたサーバである。
【0011】
基地局300は、本実施の形態のナビゲーション装置のような移動端末に対して無線通信サービスを提供する機能を備えると共に、ゲートウェイノードとして広域通信ネットワーク40に接続される。
【0012】
図1の一例では、車両10が出発地から目的地までの経路を走行する際に、車両10に搭載された本実施の形態のナビゲーション装置が、広域通信ネットワーク40に接続されている情報配信サーバ200からの道路地図データの更新データを、初めは基地局300(X)との無線通信を介し、次に基地局300(Y)との無線通信を介して受信する。
【0013】
図2は、本実施の形態のナビゲーション装置100の構成を例示する図である。CPU110はナビゲーション装置100全体を制御する演算処理装置であり、CPU110およびその周辺装置は互いにバスで接続されている。周辺装置は、主記憶装置115、補助記憶装置140、ディスプレイモジュール150、および無線通信モジュール160を含む。主記憶装置115は、CPU110の作業エリアであるワークメモリや制御プログラムが格納されているプログラムメモリを有する。
【0014】
CPU110においては、現在地検出装置120およびユーザ入力装置130からの信号が入力される。現在地検出装置120は、たとえば、GPSセンサ、ジャイロセンサ、および車速センサである。ユーザ入力装置130は、たとえば、タッチパネル、パネル周辺の押ボタン式スイッチ、リモコン、およびジョイスティックである。
【0015】
補助記憶装置140は、ナビゲーション処理に使用する道路地図データやPOI(Point Of Interest:観光地や各種施設)情報を格納する記憶装置である。補助記憶装置140としては、たとえば、ハードディスクドライブのほか、道路地図データが格納されたCDやDVD、フラッシュメモリ、その他の記録媒体、およびその読み出し装置であっても良い。
【0016】
道路地図データは、地図に関する情報であり、地図表示用データ、経路探索用データ、誘導データを含む。地図表示用データは道路や道路地図の背景を表示するためのデータである。経路探索用データは、道路形状とは直接関係しない分岐情報を含むデータであり、主に推奨経路の演算(経路探索)を行う際に用いられる。誘導データは、交差点名称・道路名称・方面名称・方向ガイド施設情報を含むデータであり、演算された推奨経路に基づきユーザを経路誘導する際に用いられる。
【0017】
道路地図データにおいては、一本の道路は、交差点などをノードとして定義し、ノード間をリンクとして定義することによって、リンク列データとして表される。したがって、リンク列データは、ノードデータおよびリンクデータから構成される。道路地図データは、ノードデータとリンクデータとが、メッシュコードとともにメッシュ領域単位で分類して格納されている。メッシュ領域とは、道路地図を所定範囲毎に区分けしたときの区分けされた各領域をいう。メッシュコードの記憶領域には、メッシュ領域を識別する番号が格納されている。リンク列データの記憶領域には、ノードの位置座標と、ノード間のリンクを表すリンク番号と、リンクをさらに短く分割する補間点の位置座標とが格納されている。これらの位置座標が地図表示やロケータ処理の形状データとして用いられる。
【0018】
補助記憶装置140には、情報配信サーバ200との通信において用いられる、ナビゲーション装置100を表す個体識別子が格納される。また、補助記憶装置140には、情報配信サーバ200から取得(ダウンロード)する更新データおよび更新データリストを格納するバッファ領域が予約され、更新データのダウンロードに際しての各種設定が格納される。補助記憶装置140には、さらに、ナビゲーション装置100において収集または計測(測定)される各種データ、および統計交通情報が格納される。ディスプレイモジュール150は、CPU110から出力される文字や図形を含む画像データを画面表示する。無線通信モジュール160は、アンテナを介して基地局300との無線通信を行う。
【0019】
図3は情報配信サーバ200のシステムブロック図である。情報配信サーバ200は、ネットワークインタフェース210を用いて、広域通信ネットワーク40および基地局300を介し、ナビゲーション装置100との間で通信メッセージを送受信する。広域通信ネットワーク40は、たとえば1つまたは複数の電話網で構成されても良いし、インターネットで構成されても良い。ネットワークインタフェース210は、インターネットと電話網のいずれにも対応するように構成しても良いし、いずれか一方に対応するように構成しても良い。プラットフォーム(OS)220は、アプリケーションソフトウェアおよびハードウェアを制御する。したがって、プラットフォーム220にはネットワークインタフェース210のドライバソフトウェアも含まれ、各アプリケーションソフトウェア230〜260はオペレーティングシステム220上で動作する。
【0020】
保守運用機能部230は、情報配信サーバ200のメンテナンスおよびオペレーションのために、オペレータが情報配信サーバ200へアクセスする際に入力されるコマンドを翻訳してプラットフォーム220へ引き渡す。
【0021】
通信メッセージ処理部240は、情報配信サーバ200がナビゲーション装置100から受信する通信メッセージを解析し、情報配信サーバ200がナビゲーション装置100へ送信する通信メッセージを作成する。通信メッセージには、たとえば、ナビゲーション装置100の個体識別子、更新データの有無の問合せ、更新データリスト、および更新データが含まれる。通信メッセージ処理部240は、パスワード認証のようなアクセス制御処理機能を備えていても良い。
【0022】
データ処理部250は、データベース260を検索し、更新データリストおよび更新データを作成する。データベース260には、道路地図データ、道路地図データのバージョン等の管理データ、およびナビゲーション装置100の個体識別子データが記憶される。
【0023】
図4は、ナビゲーション装置100のCPU110が実行する道路地図データ更新処理手順を示すフローチャートである。
【0024】
ステップS410では、出発地から目的地までの推奨経路探索演算処理が実行されたか否かを判定する。否定判定の場合、肯定判定が得られるまで本判定を繰り返す。肯定判定の場合、ステップS420において、更新データがあるか否かを情報配信サーバ200へ問い合わせる。否定判定の場合、本処理手順は終了する。肯定判定の場合、ステップS430において、情報配信サーバ200から更新データリストを取得する。
【0025】
ステップS440では、サブルーチン「リンク毎通信容量算出」を実行し、探索された経路に含まれる各リンクに対応する道路上を車両10が走行する際に、無線通信によってナビゲーション装置100が取得可能な更新データの容量を算出する。ステップS450では、サブルーチン「更新データダウンロード優先度設定」を実行し、ナビゲーション装置100が取得可能な更新データのうち、取得優先度の高い更新データの種別を選択する設定をユーザに入力させる。
【0026】
ステップS460では、取得した更新データリスト、算出したリンク毎通信容量、およびユーザによって入力された更新データダウンロード優先度設定に基づいて、更新データのダウンロードの順序およびタイミングをスケジューリングする。
【0027】
ステップS470では、車両10の走行開始を許可する旨のメッセージをディスプレイモジュール150に含まれるパネルの画面に表示し、実際に移動が開始されたか否かを判定する。否定判定の場合、肯定判定が得られるまで本判定を繰り返す。肯定判定の場合、ステップS480において、サブルーチン「更新データダウンロード」を実行し、スケジューリングされた順序およびタイミングに従って更新データをダウンロードする。サブルーチン「更新データダウンロード」が完了すると、本処理手順は終了する。
【0028】
図5は、サブルーチン「リンク毎通信容量算出」の内容を示すフローチャートである。
【0029】
ステップS510では、変数nをリセットする。変数nは、出発地から目的地までの経路に含まれる第nリンクの序数であり、車両10が走行する道路を表すリンクの順序を表す。車両10は、第1リンクから昇順に各リンクに対応する道路上を走行する。ステップS520では、変数nが1だけインクリメントされる。ステップS530では、第nリンクのリンク番号を特定する。
【0030】
ステップS540では、無線通信モジュール160の通信速度(規格値)を収集する。ステップS550では、無線電界強度を収集する。ここで収集される無線電界強度の値は、通信キャリアが提供する無線電界強度データ、および無線通信モジュール160が備えるアンテナによって過去に測定された無線電界強度データによって得られる値である。
【0031】
ステップS560では、リンク旅行時間を収集する。ここで収集されるリンク旅行時間の値は、統計交通情報に含まれる平均リンク旅行時間データ、および過去に計測されたリンク旅行時間データによって得られる値である。
【0032】
ステップS570では、第nリンクに対応する道路上を車両10が走行する際に、無線通信によってナビゲーション装置100が取得可能な更新データの容量を算出する。ステップS580では、全リンクの通信容量算出が完了したか否かを判定する。否定判定の場合、処理をステップS520へ戻す。肯定判定の場合、本処理手順は終了する。
【0033】
図6は、サブルーチン「更新データダウンロード優先度設定」の内容を示すフローチャートである。
【0034】
ステップS610では、更新データダウンロード優先度設定をユーザが入力することができる画面を、ディスプレイモジュール150に含まれるパネルに表示する。表示される画面の一例を図7に示す。「コンビニエンスストア」および「スーパーマーケット」に対応するチェックボックスをマークすると、取得優先度が高く設定される。「百貨店」に対応するチェックボックスはマークされていないので、取得優先度は低く設定される。「交通・サービス」に対応するチェックボックスをマークすると、「ガソリンスタンド」、「駐車場」、および「公衆トイレ」に対応するチェックボックスのいずれもがマークされ、取得優先度が高く設定される。
【0035】
図6におけるステップS620では、ユーザからの設定入力が完了したか否かを判定する。肯定判定の場合、ステップS630にて、入力内容が設定に反映される。否定判定の場合、ステップS640では、デフォルト設定が設定される。いずれの場合を経ても、本処理手順は終了する。
【0036】
図8は、サブルーチン「更新データダウンロード」の内容を示すフローチャートである。
【0037】
ステップS8010では変数kに1を設定し、ステップS8020では変数mをリセットする。変数kは、出発地から目的地までの経路に含まれる第kリンクの序数であり、車両10は第kリンクに対応する道路上を走行している。変数mは、出発地から目的地までの経路に含まれる第mリンクの序数であり、ナビゲーション装置100は、第mリンクにてダウンロードするようにスケジューリングされた更新データをダウンロードしている。
【0038】
ステップS8030では、リンク旅行時間の計測を開始する。ステップS8040では、無線通信モジュール160が備えるアンテナによって無線電界強度の測定を開始する。無線電界強度は、車両10が各リンクに対応する道路上を走行中に1または複数の地点で測定する。
【0039】
ステップS8050では、変数mが1だけインクリメントされる。ステップS8060では、更新データのダウンロードスケジュールを参照し、第mリンクでダウンロードするようにスケジューリングされた更新データを情報配信サーバ200へ要求する。ただし、第(m−1)リンクが目的地までの最終リンクである場合は、各リンクに対応付けされない更新データを情報配信サーバ200へ要求する。ステップS8070では、更新データ要求への応答として配信される更新データの受信を開始する。
【0040】
ステップS8080では、車両10が第kリンクに対応する道路上の走行を終了したか否かを判定する。否定判定の場合、後述するステップS8380へ処理を進める。肯定判定の場合、ステップS8090において、車両10が目的地へ到着したか否かを判定する。肯定判定の場合、後述するステップS8140へ処理を進める。否定判定の場合、ステップS8100において、変数kが1だけインクリメントされる。
【0041】
ステップS8110では、リンク旅行時間の計測を停止し、計測結果を第(k−1)リンクのリンク番号と対応付けて補助記憶装置140に格納し、さらに第kリンクにおけるリンク旅行時間の計測を開始する。ステップS8120では、無線電界強度の測定を停止し、測定結果を第(k−1)リンクのリンク番号と対応付けて補助記憶装置140に格納し、さらに第kリンクにおける無線電界強度の測定を開始する。
【0042】
ステップS8130では、変数mの値が変数kの値よりも小さいか否かを判定する。否定判定の場合、すなわち変数mの値が変数kの値よりも大きいかまたは等しい場合、更新データのダウンロードスケジュールよりも前倒ししてダウンロードが行われている状態にあり、ダウンロードが継続されながら車両10は第kリンクに対応する道路上を走行するように、処理をステップS8080へ戻す。肯定判定の場合、すなわち変数mの値が変数kの値よりも小さい場合、更新データのダウンロードスケジュールよりもダウンロードが遅れる状態にある。車両10が既に通過したリンクでダウンロードするようにスケジューリングされた更新データのダウンロードが継続される必要は無いため、ステップS8140において、更新データの受信を停止し、処理をステップS8150へ進める。また、上述したように、ステップS8090にて肯定判定の場合においても、ステップS8140において、更新データの受信を停止し、処理をステップS8150へ進める。
【0043】
上述したように、ステップS8080にて否定判定の場合、ステップS8380へ処理を進める。ステップS8380においては、第kリンクでダウンロードするようにスケジューリングされた更新データの受信が終了したか否かを判定する。否定判定の場合は、ステップS8080へ処理を戻す。肯定判定の場合は、更新データのダウンロードスケジュールよりも前倒ししてダウンロードが行われるように、処理をステップS8150へ進める。
【0044】
ステップS8150においては、移動中に取得すべき更新データの全ての受信が終了したか否かを判定する。否定判定の場合、ステップS8050へ処理を戻す。肯定判定の場合、ステップS8160にて、リンク旅行時間の計測を停止し、計測結果を第(k−1)リンクのリンク番号と対応付けて補助記憶装置140に格納する。ステップS8170においては、無線電界強度の測定を停止し、測定結果を第(k−1)リンクのリンク番号と対応付けて補助記憶装置140に格納する。
【0045】
ステップS8180においては、車両10が走行する道路を表すリンクに対応付けられていない残りの更新データをダウンロードするか否かについて判定する。否定判定の場合、本処理手順は終了する。肯定判定の場合、ステップS8190にて、残りの更新データをダウンロードし、本処理手順は終了する。
【0046】
図4におけるステップS460で実行されるダウンロードスケジューリングの詳細について説明する。上述したように、ステップS460では、取得した更新データリスト、算出したリンク毎通信容量、およびユーザによって入力された更新データダウンロード優先度設定に基づいて、更新データのダウンロードの順序およびタイミングをスケジューリングする。
【0047】
図9に、ステップS430で情報配信サーバ200から取得される更新データリストの一例を示す。コンテンツIDは、便宜上、更新データに含まれるコンテンツに番号を付与したものである。各コンテンツの種別は、メインカテゴリIDおよびサブカテゴリIDによって補助記憶装置に格納されるコンテンツデータベース上で特定される。
【0048】
図10に、コンテンツデータベースの一例を示す。たとえば、メインカテゴリIDが03であるコンテンツは施設情報であり、その場合におけるサブカテゴリIDが008であるコンテンツはガソリンスタンドであることを示している。
【0049】
設定カテゴリは、図7に一例を示した更新データダウンロード優先度設定の画面において、「交通・サービス」、「ショップ」および「お食事」という表示が該当し、すなわち、ユーザが複数のサブカテゴリを一括して指定するための便宜上のカテゴリである。その画面におけるユーザ入力によって付与された優先度に従って、属性「優先取得要否」は決定される。「○」が付与されたサブカテゴリのコンテンツは優先的にダウンロードされるようにスケジューリングされる。ユーザ入力によらない場合、属性「優先取得要否」は固定値であるものとする。
【0050】
属性「走行中取得要否」は、車両10が走行している間に走行予定経路を考慮してダウンロードすることが必要なサブカテゴリのコンテンツに対して「○」が付与されるというものである。また、走行予定経路を考慮する必要が無く、例えば目的地に到着後にダウンロードしても良いサブカテゴリのコンテンツに対しては「×」が付与されている。本実施の形態についての説明においては、属性「走行中取得要否」は固定値であるものとするが、ユーザによって変更されることとしても良い。
【0051】
「データ容量」は、コンテンツIDで特定されるコンテンツデータの容量を示す。「メッシュコード」は、コンテンツIDで特定されるコンテンツデータの位置が含まれるメッシュのコードを示す。該当するコンテンツが複数個存在する場合は複数のメッシュコードが対応付けられる。音声認識データのように、位置との関係が無いコンテンツデータに対しては、メッシュコードは「none」となる。コンテンツIDで特定されるコンテンツデータがリンク上に位置するというように、リンクとの関係がある場合は、「リンク番号」が対応付けられる。
【0052】
図11に、ステップS410で経路が探索された場合に生成されるリンク走行順序リストの一例を示す。「リンク走行順序」は、車両10が走行する道路を表すリンクの順序を表す。各リンクに対して、リンク番号とメッシュコードと、そのメッシュコードについての車両10が走行する順序が表される。
【0053】
図12は、図11で得られるリンク走行順序リストを用いて図5で算出されるリンク毎通信容量の管理テーブルを示す。「データ容量」は、各リンクにおける通信容量を表す。
【0054】
図13は、図9で示される各コンテンツが、図10に示される2つの属性「走行中取得要否」および「優先取得要否」、ならびに図11で示されるリンク走行順序に基づき、いずれのリンクに対応する道路上を走行するまでにダウンロードされる必要があるかを示す、コンテンツ取得条件リストである。例えば、コンテンツIDが01のコンテンツは、車両10が出発してから第4リンクに対応する道路上を走行し終えるまでにダウンロードされることが必要であることを表す。コンテンツIDが04のコンテンツは、目的地に到着後にダウンロードされても良いことを表す。
【0055】
図14は、図12で生成されるリンク毎通信容量の管理テーブルおよび図13で生成されるコンテンツ取得条件リストとに基づき、図4におけるステップS460で実行されるダウンロードスケジューリングによって得られるダウンロードスケジューリングリストを示す。例えば、車両10が出発してから第1リンクに対応する道路上を走行し終えるまでにコンテンツIDが02のコンテンツをダウンロードされるようにスケジューリングされる。図13におけるコンテンツ取得条件リストによると、本来は、車両10が出発してから第1リンクに対応する道路上を走行し終えるまでにコンテンツIDが03のコンテンツをもダウンロードされるようにスケジューリングされるはずである。しかし、例えば第1リンクにおいては微弱電波のために無線通信性能が低下するような場合、そうした第1リンクにおける通信容量の制限により、2つの属性「走行中取得要否」および「優先取得要否」がいずれも高いコンテンツIDが02のコンテンツのみがダウンロードされるようにスケジューリングする。コンテンツIDが03のコンテンツは、留保コンテンツIDで管理され、目的地到着後にダウンロードされる。同様にして第2リンク以降も目的地までの各リンクにおいて、同様のソーティングがされることによってダウンロードスケジューリングリストが作成される。
【0056】
図15は、図5におけるステップS560で用いられる平均リンク旅行時間データが含まれる統計交通情報の管理態様の一例を示す。統計交通情報は、メッシュコード単位で管理され、補助記憶装置140に記憶されている。メッシュコード#x_1に対する統計交通情報は階層構造を形成しており、日種で大きく分類されて格納されている。日種は、たとえば、平日(一般)、平日(休前日)、休日(連休初日)、休日(連休中日)、休日(連休最終日)という5種類である。日種毎に交通状況の特徴が異なっているため、統計交通情報を日種毎に管理する。
【0057】
日種の次の階層として、メッシュコード#x_1で表されるメッシュ領域に含まれるリンクのリンク番号別に統計情報が格納されている。たとえば、リンク番号#y_1に対して格納されている統計交通情報は、さらに次の階層では時間別に格納されている。その中の1つである0:00から1:00までの時間に対する統計交通情報は、図2に示す例では、旅行時間257秒かつ渋滞レベル1という情報である。それは、メッシュコード#x_1において、リンク番号#y_1で表されるリンクに対応する道路上を走行するのに要する時間は、午前0:00から1:00までの時間帯であれば257秒であり、走行の際の渋滞状況はレベル1であることを意味する。
【0058】
図5におけるステップS560では、過去に、図8におけるステップS8030からステップS8110にかけて計測されたリンク旅行時間データが用いられ得る。上述したリンクデータには、リンク長や標準走行速度のデータが格納されている。したがって、リンク長を過去に計測されたリンク旅行時間データで除して得られる過去に計測された走行速度をy軸、標準走行速度をx軸として得られるグラフが図16に示される。標準走行速度に従って走行すると、過去に計測された走行速度は破線で示されるy=xの直線上にプロットされるが、実際には複数の点がプロットされているように、y=xの直線に対してばらつきが生じる。それらの複数の点から推定される近似曲線をy=f(x)とすると、リンクデータに含まれる標準走行速度から、運転者の過去の運転特性が反映された走行速度が求められる。これにより、車両10が過去に走行したことのない道路を表すリンクにおいても、運転者の運転特性を考慮したリンク旅行時間が求められ、図5におけるステップS560に用いられ得ることとなる。
【0059】
図5におけるステップS550では、図8におけるステップS8040からステップS8120にかけて無線通信モジュール160が備えるアンテナによって過去に測定された無線電界強度データが用いられ得る。過去に測定された無線電界強度データとして、各リンクにおいて、例えば所定距離間隔で無線電界強度を測定した結果を用いることにより、より正確に無線電界強度を特定することが可能である。
【0060】
以上で説明した実施の形態のナビゲーション装置100は、以下の作用効果を奏する。
(1)ナビゲーション装置100において、道路地図データの更新データをダウンロードする際に、探索された経路を構成するリンク単位で予めダウンロードをスケジューリングするようにした。したがって、出発前に更新データのダウンロードを完了させる時間を確保する必要は無く、移動中にスムーズにダウンロードされる。
【0061】
(2)道路地図データの更新データを移動中にダウンロードするためのダウンロードスケジューリングにおいては、無線通信性能が考慮されるようにした。したがって、移動中のダウンロードにおいても、予期せぬ無線通信性能の低下に対して不必要なリトライ処理にCPU110の処理能力を消費する必要も無い。
【0062】
(3)道路地図データの更新データを移動中にダウンロードするためのダウンロードスケジューリングにおいては、更新データの取得優先度、走行リンクの順序、ならびに無線通信性能および運転者の運転特性の履歴情報といったパラメータがダウンロード条件に考慮されるようにした。したがって、取得優先度に応じて効率的にダウンロードできると共に、履歴データに基づくスケジューリング結果の信頼性が高くなる。
【0063】
−−−変形例−−−
以上で説明した実施の形態のナビゲーション装置100を、次のように変形することもできる。
(1)上述の図1においては、無線通信モジュール160は、アンテナを介して基地局300との無線通信を行うこととしたが、無線通信モジュール160は、携帯電話機のように、ナビゲーション装置100の外部接続機器であっても良い。
【0064】
(2)上述の図4においては、ステップS440にてリンク毎通信容量を算出し、リンク単位で予めダウンロードをスケジューリングするようにした。しかし、例えば、無線通信モジュール160として携帯電話機を使用するような場合は、基地局300が無線通信をカバーする範囲は広いため、メッシュ毎通信容量を算出し、メッシュ単位で予めダウンロードをスケジューリングするようにしても良い。
【0065】
(3)上述の図4においては、ステップS480にて更新データダウンロードを実行する際に、図8に示すように、リンク旅行時間計測および無線電界強度測定を行うようにした。しかし、リンク旅行時間は、図15に示す統計交通情報に含まれるリンク旅行時間を用いても良い。無線電界強度測定は、図5におけるステップS550において用いられる通信キャリアが提供する無線電界強度データのみを用いても良い。
【0066】
(4)上述の図16に示されるグラフを作成するために、道路地図データのリンクデータに含まれるリンク長と、図5におけるステップS560にて用いられる過去に計測されたリンク旅行時間データとから過去に計測された走行速度を算出した。しかし、過去に計測された走行速度は、現在地検出装置120に含まれる車速センサによる測定から得ても良い。
【0067】
(5)上述の図14において留保コンテンツとして位置づけられたコンテンツについては、図8におけるステップS8190にて残更新データに含めてダウンロードすることとした。しかし、ステップS8380にて各リンクでスケジューリングされていた更新データの受信終了後に、車両10が次のリンクに対応する道路上での走行を開始するまでの間にダウンロードすることとしても良い。あるリンクに対応する道路上において、例えば一時的な停車により、計画を上回る時間走行した場合に有用である。
【0068】
(6)上述の一実施の形態および変形例の説明では、本発明をナビゲーション装置100に適用した実施の形態を説明したが、無線通信モジュールを備えるPND(Personal Navigation Device)に本発明を適用しても良い。そのPNDは、車両に搭載されたPNDであっても良いし、歩行者または自転車の乗員が携行するPNDであっても良い。ただし、上述の(4)における形態で本発明をPNDに適用する場合は、車速センサ入力機能を備えたPNDを車両に搭載する。
【0069】
(7)PDA(Personal Digital Assistant)、携帯電話機、ポータブルパソコン、ポータブルゲーム機に本発明を適用しても良い。
【0070】
上述した一実施の形態および変形例は、それぞれ組み合わせてもよい。また、本発明の特徴的な機能を損なわない限り、本発明は、上述した実施の形態における機器構成に何ら限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本実施の形態のナビゲーション装置を含む道路地図データ更新システムの全体構成を示す図。
【図2】本実施の形態のナビゲーション装置の構成を例示する図。
【図3】情報配信サーバのシステムブロック図。
【図4】ナビゲーション装置のCPUが実行する道路地図データ更新処理手順を示すフローチャート。
【図5】サブルーチン「リンク毎通信容量算出」の内容を示すフローチャート。
【図6】サブルーチン「更新データダウンロード優先度設定」の内容を示すフローチャート。
【図7】更新データダウンロード優先度設定をユーザが入力することができる画面の一例を示す図。
【図8】サブルーチン「更新データダウンロード」の内容を示すフローチャート。
【図9】情報配信サーバから取得される更新データリストの一例を示す図。
【図10】コンテンツデータベースの一例を示す図。
【図11】経路が探索された場合に生成されるリンク走行順序リストの一例を示す図。
【図12】リンク毎通信容量の管理テーブルを示す図。
【図13】コンテンツ取得条件リストを示す図。
【図14】ダウンロードスケジューリングリストを示す図。
【図15】統計交通情報の管理態様の一例を示す図。
【図16】過去に計測された走行速度をy軸、標準走行速度をx軸として得られるグラフ。
【符号の説明】
【0072】
10 車両
40 広域通信ネットワーク
100 ナビゲーション装置
110 CPU
115 補助記憶装置
120 現在地検出装置
130 ユーザ入力装置
140 補助記憶装置
150 ディスプレイモジュール
160 無線通信モジュール
200 情報配信サーバ
210 ネットワークインタフェース
220 プラットフォーム(OS)
230 保守運用機能部
240 通信メッセージ処理部
250 データ処理部
260 データベース
300 基地局

【特許請求の範囲】
【請求項1】
推奨経路を探索するために演算する演算手段と、
前記推奨経路に関して取得するデータのリストを通信によって受信する受信手段と、
前記リストにおいて、前記データに含まれる複数のコンテンツのうち、移動体が前記推奨経路を移動する間に取得対象となる対象コンテンツと、停止している間に取得対象となる他のコンテンツとを属性によって識別する識別手段と、
前記移動体が前記推奨経路を移動する際に、前記通信の状態を前記推奨経路の区間毎に検出する検出手段と、
前記属性と、前記区間毎に検出される前記通信の状態とに基づき、前記移動体が前記推奨経路を移動しながら前記区間毎に分けて前記データを取得するためのスケジューリングを、前記推奨経路に沿って前記移動体が移動を開始する前に行うスケジューリング手段とを備えることを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
請求項1に記載のナビゲーション装置において、
前記属性によって識別される前記対象コンテンツの各々を、前記移動体が前記推奨経路のいずれの区間を移動するまでに取得すべきか、という取得条件を特定する特定手段と、
前記通信の状態に基づいて、前記区間毎に前記通信によって取得する前記データの容量を割り当てる割り当て手段とをさらに備え、
前記スケジューリング手段は、前記属性に基づく前記取得条件と、前記区間毎に検出される前記通信の状態に基づいて前記区間毎に割り当てられる前記容量とに基づき、前記スケジューリングを行うことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項3】
請求項2に記載のナビゲーション装置において、
前記検出手段によって検出された前記通信の状態を前記区間と対応付けて状態履歴として記憶する記憶手段をさらに備え、
前記スケジューリング手段は、前記属性に基づく前記取得条件と、前記状態履歴に基づいて前記区間毎に割り当てられる前記通信によって取得する前記データの容量とに基づき、前記スケジューリングを行うことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項4】
請求項2に記載のナビゲーション装置において、
前記移動体が前記区間を移動する際の実際の移動時間を計測する計測手段と、
前記実際の移動時間と、前記区間の長さと、前記移動体が前記区間を移動するために要する標準的な移動時間とに基づいて得られる実際の区間速度と標準的な区間速度との関係を推定する推定手段とをさらに備え、
前記通信によって取得する前記データの容量は、前記推定手段によって推定される前記関係に基づいて割り当てられることを特徴とするナビゲーション装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−127768(P2010−127768A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−302824(P2008−302824)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)
【Fターム(参考)】