説明

ハイブリッド自動車

【課題】二次電池の温度が低いときにその蓄電割合が過剰に高くなるのを抑制する。
【解決手段】電池温度Tbが所定温度未満のときに、電池温度Tbが所定温度以上のときに比してモータからの動力だけを用いて走行する電動走行が行なわれにくくなると共にエンジンからの動力とモータからの動力とを用いて走行するハイブリッド走行が行なわれやすくなるものにおいて、バッテリの蓄電割合SOCに応じて蓄電割合調整用パワーPbsocを設定し(S300)、電池温度Tbが所定温度未満のときに所定温度以上のときに比して小さな値を嵩上げパワーPbηに設定し(S310)、これらの和をバッテリの充放電用パワーPb*に設定する(S320)。そして、ハイブリッド走行によって走行するときには、充放電用パワーPb*を走行用パワーに加えたパワーがエンジンから出力されながら走行するようエンジンと二つのモータとを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド自動車に関し、詳しくは、走行用の動力を出力可能な内燃機関と、少なくとも一つの電動機を有し内燃機関からの動力を用いて発電可能であると共に走行用の動力を出力可能な電動機装置と、電動機装置と電力のやりとりが可能な二次電池と、を備えるハイブリッド自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のハイブリッド自動車としては、エンジンと、第1のモータ(MG1)と、エンジンと第1のモータと車軸に連結された駆動軸とにキャリアとサンギヤとリングギヤとが接続された動力分配統合機構と、駆動軸に接続された第2のモータ(MG2)と、モータMG1,MG2と電力をやりとりするバッテリとを備えるハイブリッド自動車において、アクセル開度に基づく駆動要求パワーがエンジン停止閾値より小さな補正下限値以上のときには、バッテリの残容量と基準値とに基づく充放電要求パワーと駆動要求パワーに基づく正の補正パワーとのうち大きい方を充放電要求パワーに再設定すると共に再設定した充放電要求パワーと駆動要求パワーとを用いてエンジン要求パワーを設定し、設定したエンジン要求パワーがエンジンから出力されると共に駆動要求パワーに基づくパワーによって走行するようエンジンとモータMG1,MG2とを制御するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このハイブリッド自動車では、こうした制御を行なうことにより、駆動要求パワーが補正下限値以上のときにエンジンの運転が継続されるようにし、エンジンの始動と停止とが頻繁に生じるのを抑止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−42561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
こうしたハイブリッド自動車では、バッテリが低温のときには、バッテリが低温でないときに比してバッテリから出力可能な最大電力が小さくなることから、走行性能を確保するために、モータMG2から入出力される動力だけを用いて走行する電動走行を制限してエンジンから出力される動力とモータMG2から入出力される動力とを用いて走行するハイブリッド走行が行なわれ易くなるようにすることが考えられている。この場合、バッテリが低温のときには、電動走行の継続によってバッテリの残容量が比較的大きく低下するという状況が生じにくいため、ハイブリッド走行によって走行するときに、上述したように、正の補正パワーを用いて再設定した充放電要求パワーに基づくエンジン要求パワーがエンジンから出力されるようエンジンを制御すると、バッテリの残容量が基準値に比して過剰に高くなりやすいという課題があった。
【0005】
本発明のハイブリッド自動車は、二次電池の温度が低いときに、二次電池の蓄電割合が過剰に高くなるのを抑制することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のハイブリッド自動車は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明のハイブリッド自動車は、
走行用の動力を出力可能な内燃機関と、少なくとも一つの電動機を有し前記内燃機関からの動力を用いて発電可能であると共に走行用の動力を出力可能な電動機装置と、前記電動機装置と電力のやりとりが可能な二次電池と、を備え、前記電動機装置から入出力される動力だけを用いて走行する電動走行と前記内燃機関から出力される動力と前記電動機装置から入出力される動力とを用いて走行するハイブリッド走行とが可能で、前記二次電池の温度が予め定められた所定温度未満のときには該二次電池の温度が該所定温度以上のときに比して前記電動走行を制限するハイブリッド自動車であって、
走行に要求される走行用パワーを設定する走行用パワー設定手段と、
前記ハイブリッド走行によって走行するとき、前記設定された走行用パワーと、前記二次電池の温度が前記所定温度未満のときに該二次電池の温度が該所定温度以上のときに比して該二次電池に充電される電力が小さくなるよう設定される充放電用パワーと、の和のパワーが前記内燃機関から出力されながら前記設定された走行用パワーに基づくパワーによって走行するよう前記内燃機関と前記電動機装置とを制御する制御手段と、
を備えることを要旨とする。
【0008】
この本発明のハイブリッド自動車では、電動機装置から入出力される動力だけを用いて走行する電動走行と内燃機関から出力される動力と電動機装置から入出力される動力とを用いて走行するハイブリッド走行とが可能で、二次電池の温度が予め定められた所定温度未満のときには二次電池の温度が所定温度以上のときに比して電動走行を制限するものにおいて、ハイブリッド走行によって走行するときに、走行用パワーと、二次電池の温度が所定温度未満のときに二次電池の温度が所定温度以上のときに比して二次電池に充電される電力が小さくなるよう設定される充放電用パワーと、の和のパワーが内燃機関から出力されながら走行用パワーに基づくパワーによって走行するよう内燃機関と電動機装置とを制御する。二次電池の温度が所定温度未満のときには、二次電池の温度が所定温度以上のときに比して、電動走行の継続によって二次電池の蓄電割合(二次電池に蓄えられている蓄電量の全容量に対する割合)が比較的大きく低下するという状況が生じにくいが、このように充放電用パワーを設定して制御することにより、二次電池の蓄電割合が過剰に高くなるのを抑制することができる。
【0009】
こうした本発明のハイブリッド自動車において、前記制御手段は、前記二次電池の蓄電割合と目標割合との差を打ち消すためのパワーとして設定される蓄電割合調整用パワーと、前記内燃機関からの出力を大きくするためのパワーとして前記二次電池の温度が前記所定温度未満のときに該二次電池の温度が該所定温度以上のときに比して小さな値が設定される嵩上げパワーと、の和を前記充放電用パワーに設定する手段である、ものとすることもできる。
【0010】
この蓄電割合調整用パワーと嵩上げパワーとの和を充放電用パワーに設定する態様の本発明のハイブリッド自動車において、前記嵩上げパワーは、前記二次電池の温度が前記所定温度未満のとき、該二次電池の温度が低いほど小さくなる傾向に設定されるパワーである、ものとすることもできる。この態様の本発明のハイブリッド自動車において、前記嵩上げパワーは、前記二次電池の温度が前記所定温度未満のとき、前記設定された走行用パワーが小さいほど緩やかに該二次電池の温度が低いほど小さくなる傾向に設定されるパワーである、ものとすることもできる。
【0011】
また、蓄電割合調整用パワーと嵩上げパワーとの和を充放電用パワーに設定する態様の本発明のハイブリッド自動車において、前記嵩上げパワーは、前記蓄電割合が大きいほど小さくなる傾向に設定されるパワーである、ものとすることもできる。こうすれば、二次電池の過充電を抑制することができる。
【0012】
さらに、蓄電割合調整用パワーと嵩上げパワーとの和を充放電用パワーに設定する態様の本発明のハイブリッド自動車において、前記嵩上げパワーは、前記設定された走行用パワーが予め定められた所定パワー以上のときには、前記二次電池の温度に拘わらず値0が設定されるパワーである、ものとすることもできる。こうすれば、内燃機関からの出力が所定パワー近傍のときにその運転効率が最も良好またはその近傍となる内燃機関を用いる場合において、走行用パワーが所定パワー以上のときに、正のパワーを嵩上げパワーに設定するものに比して内燃機関の運転効率が低下するのを抑制することができる。
【0013】
本発明のハイブリッド自動車において、前記二次電池の温度と蓄電割合とに応じて該二次電池から出力可能な最大電力である出力制限を設定する出力制限設定手段を備え、前記制御手段は、前記内燃機関が運転停止されているときに前記設定された走行用パワーが前記設定された出力制限に相当する出力制限相当パワーから前記電動機装置によって前記内燃機関をモータリングして始動する際に要する始動用パワーを減じて得られる始動用閾値より大きくなったときには、該走行用パワーが該始動用閾値より小さな停止用閾値より小さくなるまで前記ハイブリッド走行によって走行するよう前記内燃機関と前記電動機装置とを制御し、前記内燃機関が運転されているときに前記設定された走行用パワーが前記停止用閾値より小さくなったときには、該走行用パワーが前記始動用閾値より大きくなるまで前記電動走行によって走行するよう前記内燃機関と前記電動機装置とを制御する手段である、ものとすることもできる。
【0014】
また、本発明のハイブリッド自動車において、前記電動機装置は、前記内燃機関からの動力を用いて発電可能な発電機と、走行用の動力を出力可能な走行用電動機と、を有する装置である、ものとすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施例としてのハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】電池温度Tbと入出力制限基本値Wintmp,Wouttmpとの関係の一例を示す説明図である。
【図3】バッテリ50の蓄電割合SOCと出力制限用補正係数,入力制限用補正係数との関係の一例を示す説明図である。
【図4】ハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図5】要求トルク設定用マップの一例を示す説明図である。
【図6】エンジン22を始動するためにモータMG1でエンジン22をモータリングしながら走行しているときの動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係の一例を示す共線図を示す説明図である。
【図7】エンジン22の動作ラインの一例と目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定する様子を示す説明図である。
【図8】エンジン22からパワーを出力している状態で走行しているときの動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図の一例を示す説明図である。
【図9】ハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される充放電用パワー設定ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図10】蓄電割合調整用パワー設定用マップの一例を示す説明図である。
【図11】走行用パワーPdrv*と電池温度Tbとに基づいて嵩上げパワーPbηを設定する様子を示す説明図である。
【図12】走行用パワーPdrv*が所定パワーPrefよりも小さいときのバッテリ50の蓄電割合SOCと電池温度Tbと蓄電割合調整用パワーPbsocと充放電用パワーPb*との関係の一例を示す説明図である。
【図13】変形例の走行用パワーPdrv*と電池温度Tbと嵩上げパワーPbηとの関係の一例を示す説明図である。
【図14】嵩上げパワー上限設定用マップの一例を示す説明図である。
【図15】変形例のハイブリッド自動車120の構成の概略を示す構成図である。
【図16】変形例のハイブリッド自動車220の構成の概略を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0017】
図1は、本発明の一実施例としてのハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、例えばガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関として構成されたエンジン22と、エンジン22の出力軸としてのクランクシャフト26にダンパ28を介して複数のピニオンギヤ33を連結したキャリア34が接続されると共に駆動輪63a,63bにデファレンシャルギヤ62とギヤ機構60とを介して連結された駆動軸としてのリングギヤ軸32aにリングギヤ32が接続されて遊星歯車機構として構成された3軸式の動力分配統合機構30と、例えば永久磁石が埋め込まれた回転子と三相コイルが巻回された固定子とを有する周知の同期発電電動機として構成されて動力分配統合機構30のサンギヤ31に回転子が接続されたモータMG1と、例えば永久磁石が埋め込まれた回転子と三相コイルが巻回された固定子とを有する周知の同期発電電動機として構成されて駆動軸としてのリングギヤ軸32aに減速ギヤ35を介して回転子が接続されたモータMG2と、モータMG1,MG2を駆動するためのインバータ41,42と、例えばリチウムイオン二次電池として構成されてインバータ41,42を介してモータMG1,MG2と電力のやりとりを行なうバッテリ50と、車両全体をコントロールするハイブリッド用電子制御ユニット70と、を備える。
【0018】
エンジン22は、エンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)24により吸入空気量調節制御や燃料噴射制御,点火制御などの運転制御を受けている。エンジンECU24には、エンジン22の運転状態を検出する各種センサからの信号、例えば、エンジン22のクランクシャフト26のクランク角を検出する図示しないクランクポジションセンサからのクランクポジションなどが入力されている。また、エンジンECU24からは、エンジン22を運転制御するための種々の制御信号、例えば、スロットルバルブや燃料噴射弁,点火プラグ,可変バルブタイミング機構への駆動制御信号などが出力されている。エンジンECU24は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によりエンジン22を運転制御すると共に必要に応じてエンジン22の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。なお、エンジンECU24は、図示しないクランクポジションセンサからのクランクポジションに基づいてクランクシャフト26の回転数、即ちエンジン22の回転数Neも演算している。
【0019】
モータMG1,MG2は、いずれもモータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)40により駆動制御されている。モータECU40には、モータMG1,MG2を駆動制御するために必要な信号、例えばモータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ43,44からの信号や図示しない電流センサにより検出されるモータMG1,MG2に印加される相電流などが入力されており、モータECU40からは、インバータ41,42へのスイッチング制御信号が出力されている。モータECU40は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によってモータMG1,MG2を駆動制御すると共に必要に応じてモータMG1,MG2の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。なお、モータECU40は、回転位置検出センサ43,44からの信号に基づいてモータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2も演算している。
【0020】
バッテリ50は、バッテリ用電子制御ユニット(以下、バッテリECUという)52によって管理されている。バッテリECU52には、バッテリ50を管理するのに必要な信号、例えば、バッテリ50の端子間に設置された電圧センサ51aからの端子間電圧Vbやバッテリ50の正極側の出力端子に取り付けられた電流センサ51bからの充放電電流Ib,バッテリ50に取り付けられた温度センサ51cからの電池温度Tbなどが入力されており、必要に応じてバッテリ50の状態に関するデータを通信によりハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。また、バッテリECU52は、バッテリ50を管理するために、電流センサ51bにより検出された充放電電流Ibの積算値に基づいてバッテリ50に蓄えられている蓄電量の全容量(蓄電容量)に対する割合である蓄電割合SOCを演算したり、演算した蓄電割合SOCと電池温度Tbとに基づいてバッテリ50を充放電してもよい最大許容電力である入出力制限Win,Woutを演算したりしている。なお、バッテリ50の入出力制限Win,Woutは、電池温度Tbに基づいて入出力制限Win,Woutの基本値としての入出力制限基本値Wintmp,Wouttmpを設定し、バッテリ50の蓄電割合SOCに基づいて出力制限用補正係数と入力制限用補正係数とを設定し、設定した入出力制限基本値Wintmp,Wouttmpに補正係数を乗じることにより設定することができる。図2に電池温度Tbと入出力制限基本値Wintmp,Wouttmpとの関係の一例を示し、図3にバッテリ50の蓄電割合SOCと出力制限用補正係数,入力制限用補正係数との関係の一例を示す。
【0021】
ハイブリッド用電子制御ユニット70は、CPU72を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU72の他に処理プログラムを記憶するROM74と、データを一時的に記憶するRAM76と、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。ハイブリッド用電子制御ユニット70には、イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号,シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP,アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ88からの車速Vなどが入力ポートを介して入力されている。ハイブリッド用電子制御ユニット70は、前述したように、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。
【0022】
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20は、運転者によるアクセルペダル83の踏み込み量に対応するアクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクを計算し、この要求トルクに対応する要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるように、エンジン22とモータMG1とモータMG2とが運転制御される。エンジン22とモータMG1とモータMG2の運転制御としては、要求動力に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にエンジン22から出力される動力のすべてが動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによってトルク変換されてリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御するトルク変換運転モードや、要求動力とバッテリ50の充放電に必要な電力との和に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にバッテリ50の充放電を伴ってエンジン22から出力される動力の全部またはその一部が動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによるトルク変換を伴って要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御する充放電運転モード,エンジン22の運転を停止してモータMG2からの要求動力に見合う動力をリングギヤ軸32aに出力するよう運転制御するモータ運転モードなどがある。なお、トルク変換運転モードおよび充放電運転モードは、いずれもエンジン22の運転を伴って要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるようエンジン22とモータMG1,MG2とを制御するモードであるから、両者を合わせてエンジン運転モードとして考えることができる。
【0023】
次に、こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20の動作について説明する。図4は、ハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、所定時間毎(例えば数msec毎)に繰り返し実行される。
【0024】
駆動制御ルーチンが実行されると、ハイブリッド用電子制御ユニット70のCPU72は、まず、アクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accや車速センサ88からの車速V,モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2,電池温度Tb,バッテリ50の蓄電割合SOC,バッテリ50の入出力制限Win,Woutなど制御に必要なデータを入力する処理を実行する(ステップS100)。ここで、モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2は、回転位置検出センサ43,44により検出されたモータMG1,MG2の回転子の回転位置に基づいて演算されたものをモータECU40から通信により入力するものとした。また、電池温度Tbは、温度センサ51cにより検出されたものをバッテリECU52から通信により入力するものとした。バッテリ50の蓄電割合SOCは、電流センサ51bにより検出された充放電電流の積算値に基づいて演算されたものをバッテリECU52から通信により入力するものとした。バッテリ50の入出力制限Win,Woutは、バッテリ50の電池温度Tbとバッテリ50の蓄電割合SOCとに基づいて設定されたものをバッテリECU52から通信により入力するものとした。
【0025】
こうしてデータを入力すると、入力したアクセル開度Accと車速Vとに基づいて車両に要求されるトルクとして駆動輪63a,63bに連結された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクTr*を設定すると共に設定した要求トルクTr*に基づいて走行のために車両に要求される走行用パワーPdrv*を設定する(ステップS110)。要求トルクTr*は、実施例では、アクセル開度Accと車速Vと要求トルクTr*との関係を予め定めて要求トルク設定用マップとしてROM74に記憶しておき、アクセル開度Accと車速Vとが与えられると記憶したマップから対応する要求トルクTr*を導出して設定するものとした。図5に要求トルク設定用マップの一例を示す。走行用パワーPdrv*は、設定した要求トルクTr*にリングギヤ軸32aの回転数Nrを乗じたものと損失としてのロスLossとの和として計算することができる。なお、リングギヤ軸32aの回転数Nrは、車速Vに換算係数kを乗じること(Nr=k・V)によって求めたり、モータMG2の回転数Nm2を減速ギヤ35のギヤ比Grで割ること(Nr=Nm2/Gr)によって求めたりすることができる。
【0026】
続いて、バッテリ50を充放電するためにエンジン22から出力すべきパワーとしての充放電用パワーPb*を設定し(ステップS120)、設定した充放電用パワーPb*を走行用パワーPdrv*に加えた値をエンジン22に要求されるエンジン要求パワーPe*に設定する(ステップS130)。充放電用パワーPb*の設定については後述する。
【0027】
そして、車速Vに基づいて、モータMG1によってエンジン22をモータリングして始動する際に要する始動用パワーPstを設定する(ステップS140)。ここで、始動用パワーPstは、実施例では、車速Vと始動用パワーPstとの関係を予め実験や解析などによって定めてマップとしてROM74に記憶しておき、車速Vが与えられると記憶したマップから対応する始動用パワーPstを導出して設定するものとした。この始動用パワーPstは、車速Vが高いほど小さくなる傾向に設定される。これは以下の理由による。エンジン22を始動するためにモータMG1でエンジン22をモータリングしながら走行しているときの動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係の一例を示す共線図を図6に示す。図中、左のS軸はモータMG1の回転数Nm1であるサンギヤ31の回転数を示し、C軸はエンジン22の回転数Neであるキャリア34の回転数を示し、R軸はモータMG2の回転数Nm2を減速ギヤ35のギヤ比Grで除したリングギヤ32の回転数Nrを示す。なお、R軸上の2つの太線矢印は、モータMG1から出力されたトルクTm1が動力分配統合機構30を介してリングギヤ軸32aに作用するトルクと、モータMG2から出力されたトルクTm2が減速ギヤ35を介してリングギヤ軸32aに作用するトルクとを示す。図示するように、モータMG1によってエンジン22をモータリングするときには、モータMG1の回転数が負の領域ではモータMG1は回生駆動され、モータMG1の回転数が正の領域ではモータMG1は力行駆動される。そして、車速Vが高いほどモータMG1の回転数が小さくなる(負の方向に大きくなる)から、モータMG1から出力されるトルクが一定の場合には車速Vが高いほどモータMG1の回生駆動によって生じる電力が大きくなる。車速Vが高いほど小さくなる傾向に始動用パワーPstを設定するのは、こうした理由に基づく。
【0028】
こうして始動用パワーPstを設定すると、電力を駆動系のパワーに換算する換算係数kwをバッテリ50の出力制限Woutに乗じて得られる出力制限相当パワー(kw・Wout)から始動用パワーPstを減じた値を運転停止中のエンジン22を始動するか否かの判定に用いる始動用閾値Pstartに設定すると共に、始動用閾値Pstartからマージンとしての所定パワーαを減じた値を運転中のエンジン22を運転停止するか否かの判定に用いる停止用閾値Pstopに設定する(ステップS150)。ここで、始動用閾値Pstartは、出力制限相当パワー(kw・Wout)のうち始動用パワーPstを除くパワーによって走行用パワーPdrv*に対応できる上限を定めるものである。また、所定パワーαは、走行用パワーPdrv*が始動用閾値Pstart近傍のときにエンジン22の始動と運転停止とが頻繁に生じないようにヒステリシスを持たせるためのものであり、適宜設定することができる。始動用閾値Pstartや停止用閾値Pstopは、バッテリ50の出力制限Woutに基づくことから、バッテリ50の蓄電割合SOCがある程度高いときを考えれば、図2の電池温度Tbと出力制限基本値Wouttmpとの関係と同様に、電池温度Tbが所定温度Tbref(例えば、5℃や10℃,15℃など)以上の領域では比較的大きな値となり、電池温度Tbが所定温度Tbref未満の領域では電池温度Tbが低いほど小さくなる。
【0029】
次に、エンジン22が運転中であるか或いは運転停止中であるかを判定し(ステップS160)、エンジン22が運転停止中であるときには、走行用パワーPdrv*を始動用閾値Pstartと比較し(ステップS170)、走行用パワーPdrv*が始動用閾値Pstart以下のときには、モータ運転モードによる走行(電動走行)を継続可能であると判断し、モータMG1のトルク指令Tm1*に値0を設定すると共に(ステップS180)、要求トルクTr*を減速ギヤ35のギヤ比Grで除したものをモータMG2のトルク指令Tm2*として設定し(ステップS190)、設定したトルク指令Tm1*,Tm2*をモータECU40に送信して(ステップS200)、本ルーチンを終了する。トルク指令Tm1*,Tm2*を受信したモータECU40は、トルク指令Tm1*でモータMG1が駆動されると共にトルク指令Tm2*でモータMG2が駆動されるようインバータ41,42のスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。こうした制御により、モータMG2から駆動軸としてのリングギヤ軸32aに走行用パワーPdrv*を出力して走行することができる。即ち、電動走行によって走行することができる。
【0030】
ステップS170で走行用パワーPdrv*が始動用閾値Pstartより大きいときには、エンジン22を始動すべきと判断し、モータMG1によってエンジン22をモータリングして始動する(ステップS210)。ここで、エンジン22の始動は、エンジン22をモータリングするためのトルクをモータMG1から出力すると共にこのトルクの出力に伴って駆動軸としてのリングギヤ軸32aに作用するトルクをキャンセルするためのトルクをモータMG2から出力することによりエンジン22をモータリングし、エンジン22の回転数Neが所定回転数(例えば1000rpmなど)以上に至ったときに燃料噴射制御や点火制御などを開始することにより行なわれる。なお、このエンジン22の始動の最中も要求トルクTr*がリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG2の駆動制御が行なわれる。即ち、モータMG2から出力すべきトルクは、要求トルクTr*をリングギヤ軸32aに出力するためのトルクと、モータMG1によってエンジン22をモータリングする際にリングギヤ軸32aに作用するトルクをキャンセルするためのトルクと、の和のトルクとなる。
【0031】
こうしてエンジン22を始動すると、エンジン要求パワーPe*に基づいてエンジン22を運転すべき運転ポイントとしての目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定する(ステップS220)。この設定は、エンジン22を効率よく動作させる動作ラインと要求パワーPe*とに基づいて行なわれる。エンジン22の動作ラインの一例と目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定する様子を図7に示す。図示するように、目標回転数Ne*と目標トルクTe*とは、動作ラインとエンジン要求パワーPe*(Ne*×Te*)が一定の曲線との交点により求めることができる。
【0032】
次に、エンジン22の目標回転数Ne*とモータMG2の回転数Nm2と動力分配統合機構30のギヤ比ρと減速ギヤ35のギヤ比Grとを用いて次式(1)によりモータMG1の目標回転数Nm1*を計算すると共に計算したモータMG1の目標回転数Nm1*と入力したモータMG1の回転数Nm1とエンジン22の目標トルクTe*と動力分配統合機構30のギヤ比ρとを用いて式(2)によりモータMG1のトルク指令Tm1*を計算する(ステップS230)。ここで、式(1)は、動力分配統合機構30の回転要素に対する力学的な関係式である。エンジン22からパワーを出力している状態で走行しているときの動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図の一例を図8に示す。式(1)は、この共線図を用いれば容易に導くことができる。また、式(2)は、モータMG1を目標回転数Nm1*で回転させるためのフィードバック制御における関係式であり、式(2)中、右辺第2項の「k1」は比例項のゲインであり、右辺第3項の「k2」は積分項のゲインである。
【0033】
Nm1*=Ne*・(1+ρ)/ρ-Nm2/(Gr・ρ) (1)
Tm1*=-ρ・Te*/(1+ρ)+k1・(Nm1*-Nm1)+k2・∫(Nm1*-Nm1)dt (2)
【0034】
そして、要求トルクTr*にモータMG1のトルク指令Tm1*を動力分配統合機構30のギヤ比ρで除したものを加えて更に減速ギヤ35のギヤ比Grで除してモータMG2から出力すべきトルクの仮の値である仮トルクTm2tmpを次式(3)により計算すると共に(ステップS240)、バッテリ50の入出力制限Win,Woutと設定したトルク指令Tm1*に現在のモータMG1の回転数Nm1を乗じて得られるモータMG1の消費電力(発電電力)との差分をモータMG2の回転数Nm2で除することによりモータMG2から出力してもよいトルクの上下限としてのトルク制限Tm2min,Tm2maxを次式(4)および式(5)により計算し(ステップS250)、設定した仮トルクTm2tmpを式(6)によりトルク制限Tm2min,Tm2maxで制限してモータMG2のトルク指令Tm2*を設定する(ステップS260)。ここで、式(6)は、図8の共線図から容易に導くことができる。
【0035】
Tm2tmp=(Tr*+Tm1*/ρ)/Gr (3)
Tm2min=(Win-Tm1*・Nm1)/Nm2 (4)
Tm2max=(Wout-Tm1*・Nm1)/Nm2 (5)
Tm2*=max(min(Tm2tmp,Tm2max),Tm2min) (6)
【0036】
こうしてエンジン22の目標回転数Ne*や目標トルクTe*,モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定すると、エンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*についてはエンジンECU24に、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*についてはモータECU40にそれぞれ送信し(ステップS270)、本ルーチンを終了する。目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを受信したエンジンECU24は、エンジン22が目標回転数Ne*と目標トルクTe*とによって示される運転ポイントで運転されるようにエンジン22における吸入空気量調節制御や燃料噴射制御,点火制御などの制御を行なう。また、トルク指令Tm1*,Tm2*を受信したモータECU40は、トルク指令Tm1*でモータMG1が駆動されると共にトルク指令Tm2*でモータMG2が駆動されるようインバータ41,42のスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。こうした制御により、エンジン22からエンジン要求パワーPe*を出力すると共にバッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内でモータMG1,MG2を駆動することによって、走行用パワーPdrv*に基づくパワーを駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力して走行することができる。即ち、ハイブリッド走行によって走行することができる。
【0037】
こうしてエンジン22からの動力を用いての走行を開始すると、次回に本ルーチンが実行されたときにはステップS160でエンジン22は運転中であると判定されるから、走行用パワーPdrv*を停止用閾値Pstopと比較し(ステップS280)、走行用パワーPdrv*が停止用閾値Pstop以上のときには、エンジン運転モードによる走行(ハイブリッド走行)を継続すべきと判断し、上述したステップS220〜S270の処理により、エンジン22の目標回転数Ne*や目標トルクTe*,モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定してエンジンECU24やモータECU40に送信して、本ルーチンを終了する。一方、走行用パワーPdrv*が停止用閾値Pstop未満のときには、エンジン22の運転を停止し(ステップS290)、上述したステップS180〜S200の処理により、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定してモータECU40に送信して、本ルーチンを終了する。
【0038】
以上、駆動制御について説明した。実施例では、上述したように、バッテリ50の蓄電割合SOCがある程度大きいときを考えれば、電池温度Tbが所定温度Tbref(例えば、5℃や10℃,15℃など)以上の領域では始動用閾値Pstartや停止用閾値Pstopが比較的大きな値となり、電池温度Tbが所定温度Tbref未満の領域では電池温度Tbが低いほど始動用閾値Pstartや停止用閾値Pstopが小さくなるから、電池温度Tbが低いほど運転停止中のエンジン22が始動されやすくなると共に運転中のエンジン22が運転停止されにくくなる。即ち、電池温度Tbが低いほど、電動走行が行なわれにくくなると共にハイブリッド走行が行なわれやすくなるのである。したがって、電池温度Tbがある程度高いときには、電動走行の継続によってバッテリ50の蓄電割合SOCがある程度低下することがあるが、電池温度Tbが低いときには、こうした状況が生じにくくなる。
【0039】
次に、充放電用パワーPb*を設定する処理(上述のステップS120の処理)について説明する。充放電用パワーPb*の設定は、実施例では、図9に例示する充放電用パワー設定ルーチンにより行なわれる。充放電用パワー設定ルーチンでは、バッテリ50の蓄電割合SOCと予め定められた目標割合SOC*(例えば、50%や60%など)とに基づいて、バッテリ50の蓄電割合SOCと目標割合SOC*との差を打ち消すために走行用パワーPdrv*に加えるべきパワーとしての蓄電割合調整用パワーPbsocを設定し(ステップS300)、走行用パワーPdrv*と電池温度Tbとに基づいて、エンジン22をより効率のよい運転ポイントで運転するために走行用パワーPdrv*に加えるべきパワーとしての嵩上げパワーPbηを設定し(ステップS310)、蓄電割合調整用パワーPbsocと嵩上げパワーPbηとの和を充放電用パワーPb*に設定して(ステップS320)、本ルーチンを終了する。以下、蓄電割合調整用パワーPbsocや嵩上げパワーPbηの設定について説明する。
【0040】
蓄電割合調整用パワーPbsocは、実施例では、蓄電割合SOCと蓄電割合調整用パワーPbsocとの関係を予め定めて蓄電割合調整用パワー設定用マップとして記憶しておき、蓄電割合SOCが与えられると記憶したマップから対応する蓄電割合調整用パワーPbsocを導出して設定するものとした。図10に蓄電割合調整用パワー設定用マップの一例を示す。蓄電割合調整用パワーPbsocは、図示するように、バッテリ50の蓄電割合SOCが目標割合SOC*より小さいときには、バッテリ50が充電されるよう蓄電割合SOCが小さいほど大きくなる傾向の正のパワーを設定し、バッテリ50の蓄電割合SOCが目標割合SOC*より大きいときには、バッテリ50から放電が行なわれるよう蓄電割合SOCが大きいほど小さくなる(絶対値としては大きくなる)傾向の負のパワーを設定するものとした。
【0041】
嵩上げパワーPbηは、実施例では、走行用パワーPdrv*と電池温度Tbと嵩上げパワーPbηとの関係を予め定めて記憶しておき、走行用パワーPdrv*と電池温度Tbとが与えられるとその関係から対応する嵩上げパワーPbηを導出して設定するものとした。図11に走行用パワーPdrv*と電池温度Tbとに基づいて嵩上げパワーPbηを設定する様子を示す。図11(a)は、エンジン要求パワーPe*と動作ラインとエンジン22の運転効率ηとの関係の一例を示し、図11(b)は、走行用パワーPdrv*と電池温度Tbと嵩上げパワーPbηとの関係の一例を示す。動作ライン上の運転ポイント(回転数,トルク)でエンジン22を運転する場合、図11(a)から分かるように、エンジン22の運転効率ηは、エンジン要求パワーPe*が所定パワーPref近傍に近いほど高くなる。したがって、実施例では、図11(b)に示すように、走行用パワーPdrv*が所定パワーPrefよりも小さいときには正のパワーを嵩上げパワーPbηに設定し、走行用パワーPdrv*が所定パワーPref以上のときには値0を嵩上げパワーPbηに設定するものとした。これにより、前者の場合には、嵩上げパワーPbηを考慮しない(値0を設定する)ものに比してエンジン要求パワーPe*が大きくなることによってエンジン22をより効率のよい運転ポイントで運転することができ、後者の場合には、エンジン要求パワーPe*が走行用パワーPdrv*と蓄電割合調整用パワーPbsocとの和に対して大きくならないようにすることによってエンジン22の運転効率ηが低下するのを抑制することができる。また、実施例では、図11(b)に示すように、走行用パワーPdrv*が所定パワーPrefよりも小さいときに、電池温度Tbが所定温度Tbref以上の領域では正の所定パワーPbη1(例えば、数kWなど)を嵩上げパワーPbηに設定し、電池温度Tbが所定温度Tbref未満の領域では電池温度Tbが低いほど所定パワーPbη1から正の範囲で小さくなる傾向に嵩上げパワーPbηを設定するものとした。これは、以下の理由による。上述したように、電池温度Tbが高いときには、始動用閾値Pstartや停止用閾値Pstopが比較的大きいため、電動走行が比較的長く継続されることがあり、このときにバッテリ50の蓄電割合SOCが比較的大きく低下する。一方、電池温度Tbが低いときには、始動用閾値Pstartや停止用閾値Pstopが比較的小さく電動走行が行なわれにくいため、蓄電割合SOCが比較的大きく低下するという状況が生じにくい。このため、電池温度Tbに拘わらず所定パワーPbη1を嵩上げパワーPbηに設定すると、電池温度Tbが低いときに、バッテリ50の蓄電割合SOCが蓄電割合SOC*に比して過剰に高くなってしまう可能性がある。これに対して、実施例では、走行用パワーPdrv*が所定パワーPrefよりも小さいときに、電池温度Tbが所定温度Tbref未満の領域で電池温度Tbが低いほど正の範囲で小さくなる傾向のパワーを嵩上げパワーPbηに設定するから、電池温度Tbが低いほど(電動走行が行なわれにくいほど)充放電用パワーPb*と蓄電割合調整用パワーPbsocとの差が小さくなり、バッテリ50の蓄電割合SOCが目標割合SOC*に比して過剰に高くなるのを抑制することができる。参考のために、走行用パワーPdrv*が所定パワーPrefよりも小さいときのバッテリ50の蓄電割合SOCと電池温度Tbと蓄電割合調整用パワーPbsocと充放電用パワーPb*との関係の一例を図12に示す。
【0042】
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20によれば、電池温度Tbが所定温度Tbref未満のときに、電池温度Tbが所定温度Tbref以上のときに比してモータMG2からの動力だけを用いて走行する電動走行が行なわれにくくなると共にエンジン22からの動力とモータMG2からの動力とを用いて走行するハイブリッド走行が行なわれやすくなるものにおいて、ハイブリッド走行によって走行するときには、バッテリ50の蓄電割合SOCと目標割合SOC*との差を打ち消すためのパワーとして設定される蓄電割合調整用パワーPbsocとエンジン22からの出力を大きくするためのパワーとして電池温度Tbが所定温度Tbref未満のときに電池温度Tbが所定温度Tbref以上のときに比して小さな値が設定される嵩上げパワーPbηとの和を充放電用パワーPb*として設定し、充放電用パワーPb*を走行用パワーPdrv*に加えた値をエンジン要求パワーPe*として設定し、設定したエンジン要求パワーPe*がエンジン22から出力されると共に走行用パワーPdrv*に基づくパワーによって走行するようエンジン22とモータMG1,MG2とを制御するから、電池温度Tbが所定温度Tbref未満のときに、バッテリ50の蓄電割合SOCが目標割合SOC*に比して過剰に高くなるのを抑制することができる。
【0043】
実施例のハイブリッド自動車20では、図11に示したように、走行用パワーPdrv*が所定パワーPrefよりも小さいときには、電池温度Tbが所定温度Tbref以上の領域では正の所定パワーPbη1を嵩上げパワーPbηに設定し、電池温度Tbが所定温度Tbref未満の領域では電池温度Tbが低いほど所定パワーPbη1から正の範囲で小さくなる傾向に嵩上げパワーPbηを設定するものとしたが、走行用パワーPdrv*が所定パワーPrefよりも小さいときには、電池温度Tbが所定温度Tbref未満の領域で電池温度Tbが所定温度Tbref以上の領域に比して小さな値を嵩上げパワーPbηに設定するものであればよく、例えば、電池温度Tbが所定温度Tbref未満の領域では所定パワーPbη1よりも小さな一定値を嵩上げパワーPbηに設定するものとしてもよい。
【0044】
実施例のハイブリッド自動車20では、図11に示したように、走行用パワーPdrv*が所定パワーPrefよりも小さいときには、電池温度Tbが所定温度Tbref以上の領域では正の所定パワーPbη1を嵩上げパワーPbηに設定し、電池温度Tbが所定温度Tbref未満の領域では電池温度Tbが低いほど所定パワーPbη1から正の範囲で小さくなる傾向に嵩上げパワーPbηを設定するものとしたが、走行用パワーPdrv*が所定パワーPrefよりも小さいときには、電池温度Tbだけでなく走行用パワーPdrv*も考慮して嵩上げパワーPbηを設定するものとしてもよい。図13に変形例の走行用パワーPdrv*と電池温度Tbと嵩上げパワーPbηとの関係の一例を示す。この変形例では、図13に示すように、走行用パワーPdrv*が所定パワーPrefよりも小さいときに、電池温度Tbが所定温度Tbref未満の領域では、走行用パワーPdrv*が小さいほど緩やかに(走行用パワーPdrv*が大きいほど急峻に)電池温度Tbが低いほど小さくなる傾向に嵩上げパワーPbηを設定するものとした。走行用パワーPdrv*が所定パワーPrefよりも小さい領域では、エンジン要求パワーPe*が小さいほどエンジン22の運転効率ηが低くなるため、このように嵩上げパワーPbηを設定することにより、バッテリ50の過充電の抑制とエンジン22の運転効率ηの向上との両立を図ることができる。
【0045】
実施例のハイブリッド自動車20では、走行用パワーPdrv*と電池温度Tbとに基づいて嵩上げパワーPbηを設定するものとしたが、走行用パワーPdrv*と電池温度Tbとに加えて、他のパラメータ(例えば、車速Vなど)も考慮して嵩上げパワーPbηを設定するものとしてもよい。
【0046】
実施例のハイブリッド自動車20では、蓄電割合調整用パワーPbsocと嵩上げパワーPbηとの和を充放電用パワーPb*に設定するものとしたが、蓄電割合調整用パワーPbsocと、嵩上げパワーPbηをこれを制限するための嵩上げパワー上限Pbηmaxで制限した値と、の和を充放電用パワーPb*に設定するものとしてもよい。ここで、嵩上げパワー上限Pbηmaxは、例えば、バッテリ50の蓄電割合SOCと嵩上げパワー上限Pbηmaxとの関係を予め定めて嵩上げパワー上限設定用マップとして記憶しておき、バッテリ50の蓄電割合SOCが与えられると記憶したマップから対応する嵩上げパワー上限Pbηmaxを導出して設定する、ことなどによって設定することができる。図14に嵩上げパワー上限設定用マップの一例を示す。図14の例では、嵩上げパワー上限はPbηmaxは、バッテリ50の蓄電割合SOCが所定割合Sref(例えば、目標割合SOC*よりも若干大きな値など)以下の領域では上述の所定パワーPbη1を設定し、バッテリ50の蓄電割合SOCが所定割合Srefより大きい領域では蓄電割合SOCが大きいほど値0に向けて小さくなる傾向に設定するものとした。これにより、バッテリ50の蓄電割合SOCが比較的高く蓄電割合調整用パワーPbsocに負のパワー(放電用のパワー)が設定されているときに、充放電用パワーPb*が大きくなる(値0に近くなる)のを抑制することができる。この結果、バッテリ50の過充電をより確実に抑制することができる。
【0047】
実施例のハイブリッド自動車20では、バッテリ50の蓄電割合SOCと目標割合SOC*とに応じて設定される蓄電割合調整用パワーPbsocと、走行用パワーPdrv*と電池温度Tbとに応じて設定される嵩上げパワーPbηと、の和を充放電用パワーPb*に設定するものとしたが、このように充放電用パワーPb*を設定するものに限定されるものではなく、例えば、バッテリ50の蓄電割合SOCから目標割合SOC*を減じた値と走行用パワーPdrv*と電池温度Tbとに応じて充放電用パワーPb*を直接設定するものなどとしてもよい。
【0048】
実施例のハイブリッド自動車20では、出力制限相当パワー(kw・Wout)から始動用パワーPstを減じた値を始動用閾値Pstartに設定すると共に、始動用閾値Pstartから所定パワーαを減じた値を停止用閾値Pstopに設定するものとしたが、始動用パワーPstを考慮せず、例えば、出力制限相当パワー(kw・Wout)を始動用閾値Pstartに設定すると共に始動用閾値Pstartから所定パワーαを減じた値を停止用閾値Pstopに設定するものとしてもよい。
【0049】
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22の運転停止中に走行用パワーPdrv*が始動用閾値Pstartより大きくなったときにエンジン22を始動し、エンジン22の運転中に走行用パワーPdrv*が停止用閾値Pstop未満になったときにエンジン22を運転停止するものとしたが、これに限られず、例えば、エンジン22の運転停止中に、走行用パワーPdrv*が始動用閾値Pstartより大きくなるかエンジン要求パワーPe*がエンジン22を効率よく運転可能なパワーの範囲の下限として定められた所定パワーPset以上になったときにエンジン22を始動し、エンジン22の運転中に、走行用パワーPdrv*が停止用閾値Pstop未満になると共にエンジン要求パワーPe*が所定パワーPsetからマージンとしての所定パワーα2を減じた値未満になったときにエンジン22を運転停止するものなどとしてもよい。なお、所定パワーα2は、エンジン22の始動と運転停止とが頻繁に生じないようにヒステリシスを持たせるためのものであり、適宜設定することができる。
【0050】
実施例のハイブリッド自動車20では、モータMG2の動力を減速ギヤ35により変速してリングギヤ軸32aに出力するものとしたが、図15の変形例のハイブリッド自動車120に例示するように、モータMG2の動力をリングギヤ軸32aが接続された車軸(駆動輪63a,63bが接続された車軸)とは異なる車軸(図15における車輪64a,64bに接続された車軸)に出力するものとしてもよい。
【0051】
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22からの動力をプラネタリギヤ30を介して駆動輪63a,63bに接続された駆動軸32に出力すると共にモータMG2からの動力を駆動軸32に出力するものとしたが、図16の変形例のハイブリッド自動車220に例示するように、駆動輪63a,63bに接続された駆動軸に変速機230を介してモータMGを接続すると共にモータMGの回転軸にエンジン22を接続する構成とし、エンジン22からの動力をモータMGの回転軸と変速機230とを介して駆動軸に出力すると共にモータMGからの動力を変速機230を介して駆動軸に出力するものとしてもよい。この構成では、モータMGは、走行用の動力を出力することができると共に、エンジン22からの動力を用いて発電することもできる。こうしたハイブリッド自動車220において、エンジン22とモータMGとの間にクラッチを設けるものとしてもよい。
【0052】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、エンジン22が「内燃機関」に相当し、モータMG1とプラネタリギヤ30とモータMG2とを組み合わせたものが「電動機装置」に相当し、バッテリ50が「二次電池」に相当し、アクセル開度Accと車速Vとに基づく要求トルクTr*と駆動軸としてのリングギヤ軸32aの回転数Nrとに応じて走行用パワーPdrv*を設定する図4の駆動制御ルーチンのステップS110の処理が「走行用パワー設定手段」に相当し、エンジン22からの動力とモータMG2からの動力とを用いて走行するハイブリッド走行によって走行するときには、バッテリ50の蓄電割合SOCと目標割合SOC*との差を打ち消すためのパワーとして設定される蓄電割合調整用パワーPbsocとエンジン22からの出力を大きくするためのパワーとして電池温度Tbが所定温度Tbref未満のときに電池温度Tbが所定温度Tbref以上のときに比して小さな値が設定される嵩上げパワーPbηとの和を充放電用パワーPb*として設定し、充放電用パワーPb*を走行用パワーPdrv*に加えた値をエンジン要求パワーPe*として設定し、設定したエンジン要求パワーPe*がエンジン22から出力されると共に走行用パワーPdrv*に基づくパワーによって走行するようエンジン22の目標回転数Ne*や目標トルクTe*,モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定してエンジンECU24やモータECU40に送信する図4の駆動制御ルーチンのステップS120以降の処理を実行するハイブリッド用電子制御ユニット70と、受信した目標回転数Ne*と目標トルクTe*とに基づいてエンジン22を制御する24と、受信したトルク指令Tm1*,Tm2*に基づいてモータMG1,MG2を制御するモータECU40と、が「制御手段」に相当する。また、モータMG1が「発電機」に相当し、モータMG2が「走行用電動機」に相当する。
【0053】
ここで、「内燃機関」としては、ガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関として構成されたエンジン22に限定されるものではなく、水素エンジンなど、走行用の動力を出力可能なものであれば如何なるタイプの内燃機関であっても構わない。「電動機装置」としては、モータMG1とプラネタリギヤ30とモータMG2とを組み合わせたものに限定されるものではなく、少なくとも一つの電動機を有し内燃機関からの動力を用いて発電可能であると共に走行用の動力を出力可能なものであれば如何なるものとしても構わない。「二次電池」としては、リチウムイオン二次電池として構成されたバッテリ50に限定されるものではなく、ニッケル水素二次電池やニッケルカドミウム二次電池,鉛蓄電池など、電動機装置と電力のやりとりが可能なものであれば如何なるタイプの二次電池であっても構わない。「走行用パワー設定手段」としては、アクセル開度Accと車速Vとに基づく要求トルクTr*と駆動軸としてのリングギヤ軸32aの回転数Nrとに応じて走行用パワーPdrv*を設定するものに限定されるものではなく、走行に要求される走行用パワーを設定するものであれば如何なるものとしても構わない。「制御手段」としては、ハイブリッド用電子制御ユニット70とエンジンECU24とモータECU40とからなる組み合わせに限定されるものではなく、単一の電子制御ユニットにより構成されるなどとしてもよい。また、「制御手段」としては、エンジン22からの動力とモータMG2からの動力とを用いて走行するハイブリッド走行によって走行するときには、バッテリ50の蓄電割合SOCと目標割合SOC*との差を打ち消すためのパワーとして設定される蓄電割合調整用パワーPbsocとエンジン22からの出力を大きくするためのパワーとして電池温度Tbが所定温度Tbref未満のときに電池温度Tbが所定温度Tbref以上のときに比して小さな値が設定される嵩上げパワーPbηとの和を充放電用パワーPb*として設定し、充放電用パワーPb*を走行用パワーPdrv*に加えた値をエンジン要求パワーPe*として設定し、設定したエンジン要求パワーPe*がエンジン22から出力されると共に走行用パワーPdrv*に基づくパワーによって走行するようエンジン22の目標回転数Ne*や目標トルクTe*,モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定してエンジン22とモータMG1,MG2とを制御するものに限定されるものではなく、ハイブリッド走行によって走行するとき、走行用パワーと、二次電池の温度が所定温度未満のときに二次電池の温度が該所定温度以上のときに比して二次電池に充電される電力が小さくなるよう設定される充放電用パワーと、の和のパワーが内燃機関から出力されながら走行用パワーに基づくパワーによって走行するよう内燃機関と電動機装置とを制御するものであれば如何なるものとしても構わない。「発電機」としては、同期発電電動機として構成されたモータMG1に限定されるものではなく、誘導電動機など、内燃機関からの動力を用いて発電可能なものであれば如何なるタイプの発電機であっても構わない。「走行用電動機」としては、同期発電電動機として構成されたモータMG2に限定されるものではなく、誘導電動機など、走行用の動力を出力可能なものであれば如何なるタイプの電動機であっても構わない。
【0054】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0055】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、ハイブリッド自動車の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0057】
20,120,220 ハイブリッド自動車、22 エンジン、24 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、26 クランクシャフト、28 ダンパ、30 動力分配統合機構、31 サンギヤ、32 リングギヤ、32a リングギヤ軸、33 ピニオンギヤ、34 キャリア、35 減速ギヤ、40 モータ用電子制御ユニット(モータECU)、41,42 インバータ、43,44 回転位置検出センサ、50 バッテリ、51a 電圧センサ、51b 電流センサ、51c 温度センサ、52 バッテリ用電子制御ユニット(バッテリECU)、54 電力ライン、60 ギヤ機構、62 デファレンシャルギヤ、63a,63b 駆動輪、64a,64b 車輪、70 ハイブリッド用電子制御ユニット、72 CPU、74 ROM、76 RAM、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトポジションセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルポジションセンサ、88 車速センサ、MG,MG1,MG2 モータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用の動力を出力可能な内燃機関と、少なくとも一つの電動機を有し前記内燃機関からの動力を用いて発電可能であると共に走行用の動力を出力可能な電動機装置と、前記電動機装置と電力のやりとりが可能な二次電池と、を備え、前記電動機装置から入出力される動力だけを用いて走行する電動走行と前記内燃機関から出力される動力と前記電動機装置から入出力される動力とを用いて走行するハイブリッド走行とが可能で、前記二次電池の温度が予め定められた所定温度未満のときには該二次電池の温度が該所定温度以上のときに比して前記電動走行を制限するハイブリッド自動車であって、
走行に要求される走行用パワーを設定する走行用パワー設定手段と、
前記ハイブリッド走行によって走行するとき、前記設定された走行用パワーと、前記二次電池の温度が前記所定温度未満のときに該二次電池の温度が該所定温度以上のときに比して該二次電池に充電される電力が小さくなるよう設定される充放電用パワーと、の和のパワーが前記内燃機関から出力されながら前記設定された走行用パワーに基づくパワーによって走行するよう前記内燃機関と前記電動機装置とを制御する制御手段と、
を備えるハイブリッド自動車。
【請求項2】
請求項1記載のハイブリッド自動車であって、
前記制御手段は、前記二次電池の蓄電割合と目標割合との差を打ち消すためのパワーとして設定される蓄電割合調整用パワーと、前記内燃機関からの出力を大きくするためのパワーとして前記二次電池の温度が前記所定温度未満のときに該二次電池の温度が該所定温度以上のときに比して小さな値が設定される嵩上げパワーと、の和を前記充放電用パワーに設定する手段である、
ハイブリッド自動車。
【請求項3】
請求項2記載のハイブリッド自動車であって、
前記嵩上げパワーは、前記二次電池の温度が前記所定温度未満のとき、該二次電池の温度が低いほど小さくなる傾向に設定されるパワーである、
ハイブリッド自動車。
【請求項4】
請求項3記載のハイブリッド自動車であって、
前記嵩上げパワーは、前記二次電池の温度が前記所定温度未満のとき、前記設定された走行用パワーが小さいほど緩やかに該二次電池の温度が低いほど小さくなる傾向に設定されるパワーである、
ハイブリッド自動車。
【請求項5】
請求項2ないし4のいずれか1つの請求項に記載のハイブリッド自動車であって、
前記嵩上げパワーは、前記蓄電割合が大きいほど小さくなる傾向に設定されるパワーである、
ハイブリッド自動車。
【請求項6】
請求項2ないし5のいずれか1つの請求項に記載のハイブリッド自動車であって、
前記嵩上げパワーは、前記設定された走行用パワーが予め定められた所定パワー以上のときには、前記二次電池の温度に拘わらず値0が設定されるパワーである、
ハイブリッド自動車。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1つの請求項に記載のハイブリッド自動車であって、
前記二次電池の温度と蓄電割合とに応じて該二次電池から出力可能な最大電力である出力制限を設定する出力制限設定手段を備え、
前記制御手段は、前記内燃機関が運転停止されているときに前記設定された走行用パワーが前記設定された出力制限に相当する出力制限相当パワーから前記電動機装置によって前記内燃機関をモータリングして始動する際に要する始動用パワーを減じて得られる始動用閾値より大きくなったときには、該走行用パワーが該始動用閾値より小さな停止用閾値より小さくなるまで前記ハイブリッド走行によって走行するよう前記内燃機関と前記電動機装置とを制御し、前記内燃機関が運転されているときに前記設定された走行用パワーが前記停止用閾値より小さくなったときには、該走行用パワーが前記始動用閾値より大きくなるまで前記電動走行によって走行するよう前記内燃機関と前記電動機装置とを制御する手段である、
ハイブリッド自動車。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1つの請求項に記載のハイブリッド自動車であって、
前記電動機装置は、前記内燃機関からの動力を用いて発電可能な発電機と、走行用の動力を出力可能な走行用電動機と、を有する装置である、
ハイブリッド自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−111450(P2012−111450A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−264366(P2010−264366)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】