説明

ハイブリッド自動車

【課題】アクセルオフ時にバッテリから放電が行なわれるのを抑制可能にする。
【解決手段】シフトポジションSPがBポジションでアクセルオフのときに、モータMG2の回生駆動によって生じる回生電力Pm2の積算値である回生電力積算値Pm2を計算すると共に(S210,S220)、エンジンのモータリングのためにモータMG1で消費されるモータリング電力Pm1の積算値であるモータリング電力積算値Pm1sumを計算し(S230,S240)、モータリング電力積算値Pm1sumと回生電力積算値Pm2sumとの和が正の値(電力消費側の値)のときには(S270)、シフト変更提案情報をディスプレイに表示出力する(S280)。これにより、シフトポジションSPのDポジションへのシフト変更を運転者に促すことができ、アクセルオフ時にバッテリから放電が行なわれるのを抑制可能にすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のハイブリッド自動車としては、エンジンと、第1モータ(MG1)と、エンジンのクランクシャフトとモータMG1の回転軸と車軸に連結された駆動軸とに接続された動力分配統合機構と、駆動軸に接続された第2モータ(MG2)と、モータMG1,MG2と電力のやりとりを行なうバッテリと、を備え、シフトレバーがBレンジのときには、車速が高いほど高くなる傾向の回転数でエンジンが回転しながら走行するようエンジンとモータMG1,MG2とを制御するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−21622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
こうしたハイブリッド自動車では、シフトレバーがBレンジでアクセルオフのときには、モータMG2の回生駆動によって生じる制動力とモータMG1による燃料噴射を停止した状態のエンジンのモータリングによって生じる制動力(いわゆるエンジンブレーキ)とにより、シフトレバーがDレンジのときよりも大きな制動力を車両に作用させている。このとき、モータMG2の回生駆動によって生じる電力(以下、回生電力という)とエンジン22のモータリングのためにモータMG1で消費される電力(以下、モータリング電力という)との和が電力発生側の値のときには、回生電力の一部がバッテリに充電されることになるが、回生電力とモータリング電力との和が電力消費側の値のときには、モータリング電力の一部がバッテリからの放電によって賄われることになる。前者については問題ないが、後者については、アクセルオフ時にバッテリから放電が行なわれることになり、ハイブリッド自動車として好ましくない。
【0005】
本発明のハイブリッド自動車は、アクセルオフ時にバッテリから放電が行なわれるのを抑制可能にすることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のハイブリッド自動車は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明のハイブリッド自動車は、
内燃機関と、動力を入出力可能な発電機と、車軸に連結された駆動軸と前記内燃機関の出力軸と前記発電機の回転軸との3軸に3つの回転要素が接続された遊星歯車機構と、前記駆動軸に動力を入出力可能な電動機と、前記発電機および前記電動機と電力のやりとりが可能な二次電池と、アクセルオフのときにシフトポジションに応じて車両に要求される要求制動力を設定する要求制動力設定手段と、シフトポジションが第1走行用ポジションでアクセルオフのときには前記電動機の回生駆動によって生じる制動力である回生制動力により前記設定された要求制動力が車両に作用するよう前記電動機を制御し、シフトポジションが前記第1走行用ポジションよりもアクセルオフ時に大きな制動力が要求される第2走行用ポジションでアクセルオフのときには前記発電機による前記内燃機関のモータリングによって生じる制動力である機関制動力と前記回生制動力とにより前記設定された要求制動力が車両に作用するよう前記発電機と前記電動機とを制御する駆動制御手段と、を備えるハイブリッド自動車において、
情報を報知する報知手段と、
シフトポジションが前記第2走行用ポジションでアクセルオフのとき、前記内燃機関のモータリングのために前記発電機によって消費される電力の積算値である発電機電力積算値と前記電動機の回生駆動によって生じる電力の積算値である電動機電力積算値との和が電力消費側の値のときには、シフトポジションの前記第1走行用ポジションへのシフト変更を促す情報であるシフト変更提案情報が運転者に報知されるよう前記報知手段を制御する報知制御手段と、
を備えることを要旨とする。
【0008】
この本発明のハイブリッド自動車では、シフトポジションが第1走行用ポジションでアクセルオフのときには、電動機の回生駆動によって生じる制動力である回生制動力により車両に要求される要求制動力が車両に作用するよう電動機を制御し、シフトポジションが第1走行用ポジションよりもアクセルオフ時に大きな制動力が要求される第2走行用ポジションでアクセルオフのときには、発電機による内燃機関のモータリングによって生じる制動力である機関制動力と回生制動力とにより要求制動力が車両に作用するよう発電機と電動機とを制御する。そして、シフトポジションが第2走行用ポジションでアクセルオフのときに、内燃機関のモータリングのために発電機によって消費される電力の積算値である発電機電力積算値と電動機の回生駆動によって生じる電力の積算値である電動機電力積算値との和が電力消費側の値のときには、シフトポジションの第1走行用ポジションへのシフト変更を促す情報であるシフト変更提案情報が運転者に報知されるよう報知手段を制御する。発電機電力積算値と電動機電力積算値との和が電力消費側の値のときには、アクセルオフ時に二次電池から放電が行なわれていると考えられる。したがって、このときに、シフト変更提案情報を運転者に報知することにより、シフトポジションの第1走行用ポジションへのシフト変更を運転者に促すことができ、アクセルオフ時に二次電池から放電が行なわれるのを抑制可能にすることができる。なお、発電機電力積算値と電動機電力積算値とは、同一時間の積算値である、ものとすることもできる。
【0009】
こうした本発明のハイブリッド自動車において、前記報知制御手段は、前記電動機電力積算値と前記発電機電力積算値との和が電力消費側の値であるか否かを判定したときに前記電動機電力積算値と前記発電機電力積算値とを値0にリセットする手段である、ものとすることもできる。こうすれば、電動機電力積算値と発電機電力積算値との和が電力消費側の値であるか否かを判定したときに電動機電力積算値と発電機電力積算値とを値0にリセットしないものに比して、二次電池が充電されている状態から二次電池から放電が行なわれる状態に移行したときに、二次電池から放電が行なわれ始めてから電動機電力積算値と発電機電力積算値との和が電力消費側の値であると判定されるまでの時間が短くなるから、シフト変更提案情報を運転者により迅速に報知することができる。この態様の本発明のハイブリッド自動車において、前記報知制御手段は、シフトポジションが前記第2走行用ポジションのとき、アクセルオンされたときには前記電動機電力積算値と前記発電機電力積算値とを値0にリセットしない手段である、ものとすることもできる。こうすれば、アクセルオンとアクセルオフとが繰り返されるときでも、電動機電力積算値と発電機電力積算値とをアクセオフのときの積算値として得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施例としてのハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】ハイブリッド用電子制御ユニット70により実行されるアクセルオフ時駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図3】要求トルク設定用マップの一例を示す説明図である。
【図4】シフトポジションSPがDポジションでアクセルオフのときの動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図の一例を示す説明図である。
【図5】目標回転数設定用マップの一例を示す説明図である。
【図6】シフトポジションSPがBポジションでアクセルオフのときの動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図の一例を示す説明図である。
【図7】ハイブリッド用電子制御ユニット70により実行されるBポジションアクセルオフ時表示制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図8】変形例のハイブリッド自動車120の構成の概略を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0012】
図1は、本発明の一実施例としてのハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、エンジン22と、エンジン22の出力軸としてのクランクシャフト26にダンパ28を介して接続された3軸式の動力分配統合機構30と、動力分配統合機構30に接続された発電可能なモータMG1と、動力分配統合機構30に接続された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに取り付けられた減速ギヤ35と、この減速ギヤ35に接続されたモータMG2と、車両全体をコントロールするハイブリッド用電子制御ユニット70とを備える。
【0013】
エンジン22は、例えばガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関であり、エンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)24により燃料噴射制御や点火制御,吸入空気量調節制御などの運転制御を受けている。エンジンECU24には、エンジン22の運転状態を検出する各種センサからの信号、例えば、エンジン22のクランクシャフト26のクランク角を検出する図示しないクランクポジションセンサからのクランクポジションなどが入力されている。エンジンECU24は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によりエンジン22を運転制御すると共に必要に応じてエンジン22の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。なお、エンジンECU24は、図示しないクランクポジションセンサからのクランクポジションに基づいてクランクシャフト26の回転数、即ちエンジン22の回転数Neも演算している。
【0014】
動力分配統合機構30は、外歯歯車のサンギヤ31と、このサンギヤ31と同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤ32と、サンギヤ31に噛合すると共にリングギヤ32に噛合する複数のピニオンギヤ33と、複数のピニオンギヤ33を自転かつ公転自在に保持するキャリア34とを備え、サンギヤ31とリングギヤ32とキャリア34とを回転要素として差動作用を行なう遊星歯車機構として構成されている。動力分配統合機構30は、キャリア34にはエンジン22のクランクシャフト26が、サンギヤ31にはモータMG1が、リングギヤ32にはリングギヤ軸32aを介して減速ギヤ35がそれぞれ連結されており、モータMG1が発電機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力をサンギヤ31側とリングギヤ32側にそのギヤ比に応じて分配し、モータMG1が電動機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力とサンギヤ31から入力されるモータMG1からの動力を統合してリングギヤ32側に出力する。リングギヤ32に出力された動力は、リングギヤ軸32aからギヤ機構60およびデファレンシャルギヤ62を介して、最終的には車両の駆動輪63a,63bに出力される。
【0015】
モータMG1およびモータMG2は、いずれも発電機として駆動することができると共に電動機として駆動できる周知の同期発電電動機として構成されており、インバータ41,42を介してバッテリ50と電力のやりとりを行なう。インバータ41,42とバッテリ50とを接続する電力ライン54は、各インバータ41,42が共用する正極母線および負極母線として構成されており、モータMG1,MG2のいずれかで発電される電力を他のモータで消費することができるようになっている。したがって、バッテリ50は、モータMG1,MG2のいずれかから生じた電力や不足する電力により充放電されることになる。なお、モータMG1,MG2により電力収支のバランスをとるものとすれば、バッテリ50は充放電されない。モータMG1,MG2は、いずれもモータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)40により駆動制御されている。モータECU40には、モータMG1,MG2を駆動制御するために必要な信号、例えばモータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ43,44からの信号や図示しない電流センサにより検出されるモータMG1,MG2に印加される相電流などが入力されており、モータECU40からは、インバータ41,42へのスイッチング制御信号が出力されている。モータECU40は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によってモータMG1,MG2を駆動制御すると共に必要に応じてモータMG1,MG2の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。なお、モータECU40は、回転位置検出センサ43,44からの信号に基づいてモータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2も演算している。
【0016】
バッテリ50は、例えばリチウムイオン二次電池として構成されており、バッテリ用電子制御ユニット(以下、バッテリECUという)52によって管理されている。バッテリECU52には、バッテリ50を管理するのに必要な信号、例えば、バッテリ50の端子間に設置された図示しない電圧センサからの端子間電圧,バッテリ50の出力端子に接続された電力ライン54に取り付けられた図示しない電流センサからの充放電電流,バッテリ50に取り付けられた温度センサ51からの電池温度Tbなどが入力されており、必要に応じてバッテリ50の状態に関するデータを通信によりハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。また、バッテリECU52は、バッテリ50を管理するために電流センサにより検出された充放電電流の積算値に基づいて残容量(SOC)を演算したり、演算した残容量(SOC)と電池温度Tbとに基づいてバッテリ50を充放電してもよい最大許容電力である入出力制限Win,Woutを演算している。なお、バッテリ50の入出力制限Win,Woutは、電池温度Tbに基づいて入出力制限Win,Woutの基本値を設定し、バッテリ50の残容量(SOC)に基づいて出力制限用補正係数と入力制限用補正係数とを設定し、設定した入出力制限Win,Woutの基本値に補正係数を乗じることにより設定することができる。
【0017】
ハイブリッド用電子制御ユニット70は、CPU72を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU72の他に処理プログラムを記憶するROM74と、データを一時的に記憶するRAM76と、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。ハイブリッド用電子制御ユニット70には、イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号,シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP,アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ88からの車速Vなどが入力ポートを介して入力されている。ハイブリッド用電子制御ユニット70からは、情報を表示するディスプレイ89への出力信号などが出力ポートを介して出力されている。ハイブリッド用電子制御ユニット70は、前述したように、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。なお、実施例のハイブリッド自動車20では、シフトポジションセンサ82により検出するシフトポジションSPとして、駐車時に用いる駐車ポジション(Pポジション)、後進走行用のリバースポジション(Rポジション)、中立のニュートラルポジション(Nポジション)、前進走行用の通常のドライブポジション(Dポジション)の他に、アクセルオン時の駆動力の設定等はDポジションと同一であるが走行中のアクセルオフ時に車両に作用させる制動力がDポジションよりも大きく設定されるブレーキポジション(Bポジション)が用意されている。
【0018】
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20は、運転者によるアクセルペダル83の踏み込み量に対応するアクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクを計算し、この要求トルクに対応する要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるように、エンジン22とモータMG1とモータMG2とが運転制御される。エンジン22とモータMG1とモータMG2の運転制御としては、要求動力に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にエンジン22から出力される動力のすべてが動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによってトルク変換されてリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御するトルク変換運転モードや要求動力とバッテリ50の充放電に必要な電力との和に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にバッテリ50の充放電を伴ってエンジン22から出力される動力の全部またはその一部が動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによるトルク変換を伴って要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御する充放電運転モード、エンジン22の運転を停止してモータMG2からの要求動力に見合う動力をリングギヤ軸32aに出力するよう運転制御するモータ運転モードなどがある。
【0019】
次に、こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20の動作、特にアクセルオフ時の動作について説明する。図2は、ハイブリッド用電子制御ユニット70により実行されるアクセルオフ時駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、アクセルオフ時に所定時間毎(例えば数msec毎)に繰り返し実行される。なお、アクセルオフ時には、ハイブリッド用電子制御ユニット70は、このルーチンと並行してエンジンECU24に燃料カット指令を送信し、燃料カット指令を受信したエンジンECU24は、エンジン22の燃料噴射と点火とを停止する。
【0020】
アクセルオフ時駆動制御ルーチンが実行されると、ハイブリッド用電子制御ユニット70のCPU72は、まず、シフトポジションセンサ82からのシフトポジションSPや、車速センサ88からの車速V,モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2など制御に必要なデータを入力する処理を実行する(ステップS100)。ここで、モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2は、回転位置検出センサ43,44により検出されたモータMG1,MG2の回転子の回転位置に基づいて演算されたものをモータECU40から通信により入力するものとした。
【0021】
こうしてデータを入力すると、入力したシフトポジションSPと車速Vとに基づいて車両に要求されるトルクとして駆動輪63a,63bに連結された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクTr*を設定する(ステップS110)。要求トルクTr*は、実施例では、シフトポジションSPと車速Vと要求トルクTr*との関係を予め定めて要求トルク設定用マップとしてROM74に記憶しておき、アクセル開度Accと車速Vとが与えられると記憶したマップから対応する要求トルクTr*を導出して設定するものとした。図3に要求トルク設定用マップの一例を示す。要求トルクTr*は、図示するように、車速Vが大きいほど小さくなる(制動力として大きくなる)傾向に、且つ、シフトポジションSPがBポジションのときにDポジションのときよりも小さくなる傾向に設定するものとした。
【0022】
続いて、シフトポジションSPを調べ(ステップS120)、シフトポジションSPがDポジションのときには、モータMG1のトルク指令Tm1*に値0を設定し(ステップS130)、要求トルクTr*に設定したトルク指令Tm1*を動力分配統合機構30のギヤ比ρで除したものを加えて更に減速ギヤ35のギヤ比Grで除してモータMG2のトルク指令Tm2*を次式(1)により計算し(ステップS160)、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*をモータECU40に送信して(ステップS170)、本ルーチンを終了する。トルク指令Tm1*,Tm2*を受信したモータECU40は、トルク指令Tm1*でモータMG1が駆動されると共にトルク指令Tm2*でモータMG2が駆動されるようインバータ41,42のスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。シフトポジションSPがDポジションでアクセルオフのときの動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図の一例を図4に示す。図中、左のS軸はモータMG1の回転数Nm1であるサンギヤ31の回転数を示し、C軸はエンジン22の回転数Neであるキャリア34の回転数を示し、R軸はモータMG2の回転数Nm2を減速ギヤ35のギヤ比Grで除したリングギヤ32の回転数Nrを示す。式(1)は、この共線図を用いれば容易に導くことができる。こうした制御により、シフトポジションSPがDポジションのときには、エンジン22が運転停止され、モータMG2の回生駆動によってリングギヤ軸32aに作用する制動力により、要求トルクTr*をリングギヤ軸32aに出力することができる。なお、この場合、モータMG2の回生駆動によって生じる電力はバッテリ50に充電される。
【0023】
Tm2*=(Tr*+Tm1*/ρ)/Gr (1)
【0024】
ステップS120でシフトポジションSPがBポジションのときには、車速Vに基づいてエンジン22の目標回転数Ne*を設定する(ステップS140)。エンジン22の目標回転数Ne*は、実施例では、車速Vと目標回転数Ne*との関係を予め定めて目標回転数設定用マップとしてROM74に記憶しておき、車速Vが与えられると記憶したマップから対応する目標回転数Ne*を導出して設定するものとした。図5に目標回転数設定用マップの一例を示す。目標回転数Ne*は、図示するように、車速Vが高いほど大きくなる傾向に設定するものとした。
【0025】
こうしてエンジン22の目標回転数Ne*を設定すると、エンジン22の目標回転数Ne*とモータMG2の回転数Nm2と動力分配統合機構30のギヤ比ρと減速ギヤ35のギヤ比Grとを用いて次式(2)によりモータMG1の目標回転数Nm1*を計算すると共に計算した目標回転数Nm1*と入力したモータMG1の回転数Nm1とに基づいて式(3)によりモータMG1のトルク指令Tm1*を計算し(ステップS150)、モータMG2のトルク指令Tm2*を設定し(ステップS160)、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*をモータECU40に送信して(ステップS170)、本ルーチンを終了する。ここで、式(2)は、動力分配統合機構30の回転要素に対する力学的な関係式である。シフトポジションSPがBポジションでアクセルオフのときの動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図の一例を図6に示す。なお、R軸上の2つの太線矢印は、モータMG1から出力されたトルクTm1がリングギヤ軸32aに作用するトルクと、モータMG2から出力されるトルクTm2が減速ギヤ35を介してリングギヤ軸32aに作用するトルクとを示す。式(2)は、この共線図を用いれば容易に導くことができる。また、式(3)は、モータMG1を目標回転数Nm1*で回転させるためのフィードバック制御における関係式であり、式(3)中、右辺第1項の「k1」は比例項のゲインであり、右辺第2項の「k2」は積分項のゲインである。こうした制御により、シフトポジションSPがBポジションのときには、モータMG1による燃料噴射を停止した状態のエンジン22のモータリングによってリングギヤ軸32aに作用する制動力(いわゆるエンジンブレーキ)とモータMG2の回生駆動によってリングギヤ軸32aに作用する制動力とにより、要求トルクTr*をリングギヤ軸32aに出力することができる。
【0026】
Nm1*=Ne*・(1+ρ)/ρ-Nm2/(Gr・ρ) (2)
Tm1*=k1・(Nm1*-Nm1)+k2・∫(Nm1*-Nm1)dt (3)
【0027】
以上、アクセルオフ時の駆動制御について説明した。次に、シフトポジションSPがBポジションでアクセルオフのときのディスプレイ89の表示制御について説明する。図7は、ハイブリッド用電子制御ユニット70により実行されるBポジションアクセルオフ時表示制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、シフトポジションSPがBポジションでアクセルオフのときに、所定時間毎(例えば、数msec毎)に繰り返し実行される。
【0028】
Bポジションアクセルオフ時表示制御ルーチンが実行されると、ハイブリッド用電子制御ユニット70のCPU72は、まず、図2のアクセルオフ時駆動制御ルーチンと同様にモータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2を入力すると共に、図2のアクセルオフ時駆動制御ルーチンで設定したモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を入力し(ステップS200)、入力したモータMG2のトルク指令Tm2*にモータMG2の回転数Nm2を乗じて、モータMG2の回生駆動によって生じる電力(以下、回生電力という)Pm2を計算すると共に(ステップS210)、計算した回生電力Pm2を前回にこの処理を実行したときに計算した回生電力積算値(前回Pm2sum)に加えることによって回生電力積算値Pm2sumを計算し(ステップS220)、モータMG1のトルク指令Tm1*にモータMG1の回転数Nm1を乗じて、エンジン22のモータリングのためにモータMG1で消費される電力(以下、モータリング電力という)Pm1を計算する共に(ステップS230)、計算したモータリング電力Pm1を前回にこの処理を実行したときに計算したモータリング電力積算値(前回Pm1sum)に加えることによってモータリング電力積算値Pm1sumを計算する(ステップS240)。こうして計算されるモータリング電力積算値Pm1sumは正の値(電力消費側の値)であり、回生電力積算値Pm2sumは負の値(電力発生側の値)である。なお、モータリング電力積算値Pm1sumや回生電力積算値Pm2sumは、シフトポジションSPが他のポジションからBポジションにシフト変更されたときに初期値として値0が設定され、その後、後述のステップS290の処理の実行時に値0にリセットされる。
【0029】
続いて、カウンタCをインクリメントし(ステップS250)、インクリメントしたカウンタCを予め定められた閾値Crefと比較し(ステップS260)、カウンタCが閾値Cref未満のときには、そのまま本ルーチンを終了し、カウンタCが閾値Cref以上のときには、モータリング電力積算値Pm1sum(正の値)と回生電力積算値Pm2sum(負の値)との和が正の値であるか否かを判定する(ステップS270)。ここで、閾値Crefは、ステップS270の処理を行なってよいか否かの判定するための閾値であり、例えば、数十秒や数分に相当する値などを用いることができる。また、ステップS270の処理は、アクセルオフ時に、閾値Crefに相当する時間全体で見たときにバッテリ50から放電が行なわれているか否かを判定する処理である。なお、カウンタCは、シフトポジションSPが他のポジションからBポジションにシフト変更されたときに初期値として値0が設定され、その後、後述のステップS290の処理の実行時に値0にリセットされる。
【0030】
モータリング電力積算値Pm1sumと回生電力積算値Pm2sumとの和が正の値のときには、閾値Crefに相当する時間全体で見たときにバッテリ50から放電が行なわれていると判断し、シフトポジションSPのDポジションへのシフト変更を促す情報(例えば、「シフトレバーをDポジションに操作して下さい。」などの文字やこれに相当する画像など、以下、シフト変更提案情報という)をディスプレイ89に表示出力し(ステップS280)、回生電力積算値Pm2sumやモータリング電力積算値Pm1sum,カウンタCを値0にリセットして(ステップS290)、本ルーチンを終了する。一方、モータリング電力積算値Pm1sumと回生電力積算値Pm2sumとの和が値0以下のときには、シフト変更提案情報をディスプレイ89に表示出力せずに、回生電力積算値Pm2sumやモータリング電力積算値Pm1sum,カウンタCを値0にリセットして(ステップS290)、本ルーチンを終了する。実施例のハイブリッド自動車20では、前述したように、シフトポジションSPがBポジションでアクセルオフのときには、モータMG1による燃料噴射を停止した状態のエンジン22のモータリングによって生じる制動力(いわゆるエンジンブレーキ)とモータMG2の回生駆動によって生じる制動力とにより、Dポジションでアクセルオフのときの要求トルクTr*よりも小さな(制動力としては大きな)要求トルクTr*をリングギヤ軸32aに出力している。このとき、モータリング電力積算値Pm1sumと回生電力積算値Pm2sumとの和が負の値のときには、バッテリ50を充電することができると共にエンジンブレーキを車両に作用させることができるため、問題ないが、モータリング電力積算値Pm1sumと回生電力積算値Pm2sumとの和が正の値のときには、モータリング電力Pm1の一部がバッテリ50からの放電によって賄われる即ちアクセルオフ時にバッテリ50から放電が行なわれることになるため、ハイブリッド自動車として好ましくない。なお、後者の現象は、下り坂で運転者がシフトポジションSPをBポジションにシフト変更し、その後に、下り坂から平坦路に移行しても運転者がシフトポジションSPをDポジションに戻さなかったときなどに生じることがある。実施例では、このことを踏まえて、モータリング電力積算値Pm1sumと回生電力積算値Pm2との和が正の値のときには、シフト変更提案情報をディスプレイ89に表示出力し、シフトポジションSPのDポジションへのシフト変更を運転者に促すものとした。これにより、アクセルオフ時にバッテリ50から放電が行なわれるのを抑制可能にすることができる。即ち、シフト変更提案情報に応じて運転者がシフトポジションSPをDポジションに変更すると、アクセルオフのときには、モータMG1によってエンジン22をモータリングせずに、モータMG2の回生駆動によって生じる制動力により要求トルクTr*をリングギヤ軸32aに出力するから、アクセルオフ時にバッテリ50から放電が行なわれるという現象は解消されるのである。ところで、図7のBポジションアクセルオフ時表示制御ルーチンはシフトポジションSPがBポジションでアクセルオフのときに所定時間毎に繰り返し実行されるルーチンであり、回生電力積算値Pm2sumやモータリング電力積算値Pm1sum,カウンタCはモータリング電力積算値Pm1sumと回生電力積算値Pm2sumとの和が正の値であるか否かを判定したときに値0にリセットされる(アクセルオンされたときには値0にリセットされない)から、アクセルオフから一旦アクセルオンされてその後に再びアクセルオフされるなどアクセルオンとアクセルオフとが繰り返されるときには、カウンタCや閾値Crefはアクセルオフの時間の積算値として考えればよく、回生電力積算値Pm2やモータリング電力積算値Pm1sumはアクセルオフのときの回生電力Pm2やモータリング電力Pm1の積算値として計算することができる。したがって、閾値Crefに相当する時間だけアクセルオフが継続されないときでも、閾値Crefに相当する時間全体で見たときにバッテリ50から放電が行なわれているか否かを判定することができる。また、実施例では、モータリング電力積算値Pm1sumと回生電力積算値Pm2sumとの和が正の値であるか否かを判定したときに、回生電力積算値Pm2sumとモータリング電力積算値Pm1sumとを値0にリセットするから、このときに回生電力積算値Pm2sumとモータリング電力積算値Pm1sumとを値0にリセットしないものに比して、バッテリ50に充電されている状態からバッテリ50から放電が行なわれる状態に移行したときに、バッテリ50から放電が行なわれ始めてからモータリング電力積算値Pm1sumと回生電力積算値Pm2sumとの和が正の値であると判定されるまでの時間が短くなるから、シフト変更提案情報を運転者により迅速に報知することができる。
【0031】
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20によれば、シフトポジションSPがBポジションでアクセルオフのときに、エンジン22のモータリングのためにモータMG1で消費されるモータリング電力Pm1の積算値であるモータリング電力積算値Pm1sumと、モータMG2の回生駆動によって生じる回生電力Pm2の積算値である回生電力積算値Pm2と、の和が正の値(電力消費側の値)のときには、シフトポジションSPのDポジションへのシフト変更を促すシフト変更提案情報をディスプレイ89に表示出力するから、シフトポジションSPのDポジションへのシフト変更を運転者に促すことができ、アクセルオフ時にバッテリ50から放電が行なわれるのを抑制可能にすることができる。
【0032】
実施例のハイブリッド自動車20では、シフトポジションSPがBポジションでアクセルオフのときに、モータリング電力積算値Pm1sumと回生電力積算値Pm2sumとの和が正の値(電力消費側の値)であるか否かを判定したときには、回生電力積算値Pm2sumやモータリング電力積算値Pm1sum,カウンタCを値0にリセットするものとしたが、これに加えて、アクセルオンされたときにも、回生電力積算値Pm2sumやモータリング電力積算値Pm1sum,カウンタCを値0にリセットするものとしてもよい。この場合、シフトポジションSPがBポジションでアクセルオフが閾値Crefに相当する時間だけ継続するときに、モータリング電力積算値Pm1sumと回生電力積算値Pm2sumとの和が正の値であるか否かを判定することになる。
【0033】
実施例のハイブリッド自動車20では、モータリング電力積算値Pm1sumと回生電力積算値Pm2sumとの和が正の値(電力消費側の値)であるか否かを判定したときには、必要に応じてシフト変更提案情報をディスプレイ89に表示出力し、回生電力積算値Pm2sumやモータリング電力積算値Pm1sumを値0にリセットするものとしたが、回生電力積算値Pm2sumやモータリング電力積算値Pm1sumを値0にリセットしないものとしてもよい。この場合、シフトポジションSPが他のポジションからBポジションにシフト変更されてからのアクセルオフのときの積算値として回生電力積算値Pm2sumやモータリング電力積算値Pm1sumを計算し、カウンタCが閾値Cref以上に至る毎に、モータリング電力積算値Pm1sumと回生電力積算値Pm2sumとの和が正の値であるか否かを判定することになる。
【0034】
実施例のハイブリッド自動車20では、、モータリング電力積算値Pm1sumと回生電力積算値Pm2sumとの和が正の値のときには、シフト変更提案情報をディスプレイ89に表示出力するものとしたが、これに限られず、例えば、シフト変更提案情報を音声などにより運転者に報知するものとしてもよい。
【0035】
実施例のハイブリッド自動車20では、モータMG2の動力を減速ギヤ35により変速してリングギヤ軸32aに出力するものとしたが、図8の変形例のハイブリッド自動車120に例示するように、モータMG2の動力をリングギヤ軸32aが接続された車軸(駆動輪63a,63bが接続された車軸)とは異なる車軸(図8における車輪64a,64bに接続された車軸)に出力するものとしてもよい。
【0036】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、エンジン22が「内燃機関」に相当し、モータMG1が「発電機」に相当し、動力分配統合機構30が「遊星歯車機構」に相当し、モータMG2が「電動機」に相当し、バッテリ50が「二次電池」に相当し、アクセルオフ時に、シフトポジションSPと車速Vとに基づいて要求トルクTr*を設定する図2のアクセルオフ時駆動制御ルーチンのステップS110の処理を実行するハイブリッド用電子制御ユニット70が「要求制動力設定手段」に相当し、シフトポジションSPがDポジションでアクセルオフのときには、モータMG1のトルク指令Tm1*に値0を設定すると共に、モータMG2の回生駆動によって生じる制動力によって要求トルクTr*がリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG2のトルク指令Tm2*を設定してモータECU40に送信し、シフトポジションSPがBポジションでアクセルオフのときには、モータMG2の回生駆動によって生じる制動力とモータMG1による燃料噴射を停止した状態のエンジン22のモータリングによって生じる制動力(いわゆるエンジンブレーキ)とにより要求トルクTr*がリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定してモータECU40に送信する図2のアクセルオフ時駆動制御ルーチンのステップS120以降の処理を実行するハイブリッド用電子制御ユニット70と、受信したトルク指令Tm1*,Tm2*に基づいてモータMG1,MG2を制御するモータECU40と、が「駆動制御手段」に相当し、ディスプレイ89が「報知手段」に相当し、シフトポジションSPがBポジションでアクセルオフのときに、エンジン22のモータリングのためにモータMG1によって消費されるモータリング電力Pm1の積算値であるモータリング電力積算値Pm1sumとモータMG2の回生駆動によって生じる回生電力Pm2の積算値である回生電力積算値Pm2sumとの和が正の値(電力消費側の値)のときには、シフトポジションSPのDポジションへのシフト変更を促すシフト変更提案情報をディスプレイ89に表示出力する図7のBポジションアクセルオフ時表示制御手段を実行するハイブリッド用電子制御ユニット70が「報知制御手段」に相当する。
【0037】
ここで、「内燃機関」としては、ガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関に限定されるものではなく、水素エンジンなど如何なるタイプの内燃機関であっても構わない。「発電機」としては、同期発電電動機として構成されたモータMG1に限定されるものではなく、誘導電動機など、動力を入出力可能なものであれば如何なるタイプの電動機であっても構わない。「遊星歯車機構」としては、上述の動力分配統合機構30に限定されるものではなく、ダブルピニオン式の遊星歯車機構を用いるものや、複数の遊星歯車機構を組み合わせて4以上の軸に接続されるものなど、車軸に連結された駆動軸と内燃機関の出力軸と発電機の回転軸との3軸に3つの回転要素が接続されたものであれば如何なるものとしても構わない。「電動機」としては、同期発電電動機として構成されたモータMG2に限定されるものではなく、誘導電動機など、駆動軸に動力を入出力可能なものであれば如何なるタイプの電動機であっても構わない。「二次電池」としては、リチウムイオン二次電池として構成されたバッテリ50に限定されるものではなく、ニッケル水素二次電池やニッケルカドミウム二次電池,鉛蓄電池など、発電機や電動機と電力のやりとりが可能なものであれば如何なるタイプの二次電池であっても構わない。「要求制動力設定手段」としては、アクセルオフ時に、シフトポジションSPと車速Vとに基づいて要求トルクTr*を設定するものに限定されるものではなく、車速Vに拘わらずにシフトポジションSPだけに基づいて要求トルクTr*を設定するものなど、アクセルオフのときにシフトポジションに応じて車両に要求される要求制動力を設定するものであれば如何なるものとしても構わない。「駆動制御手段」としては、ハイブリッド用電子制御ユニット70とモータECU40とからなる組み合わせに限定されるものではなく単一の電子制御ユニットにより構成されるなどとしてもよい。「駆動制御手段」としては、シフトポジションSPがDポジションでアクセルオフのときには、モータMG1のトルク指令Tm1*に値0を設定すると共に、モータMG2の回生駆動によって生じる制動力によって要求トルクTr*がリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG2のトルク指令Tm2*を設定してモータMG1,MG2を制御し、シフトポジションSPがBポジションでアクセルオフのときには、モータMG2の回生駆動によって生じる制動力とモータMG1による燃料噴射を停止した状態のエンジン22のモータリングによって生じる制動力(いわゆるエンジンブレーキ)とにより要求トルクTr*がリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定してモータMG1,MG2を制御するものに限定されるものではなく、シフトポジションが第1走行用ポジションでアクセルオフのときには電動機の回生駆動によって生じる制動力である回生制動力により要求制動力が車両に作用するよう電動機を制御し、シフトポジションが第1走行用ポジションよりもアクセルオフ時に大きな制動力が要求される第2走行用ポジションでアクセルオフのときには発電機による内燃機関のモータリングによって生じる制動力である機関制動力と回生制動力とにより要求制動力が車両に作用するよう発電機と電動機とを制御するものであれば如何なるものとしても構わない。「報知手段」としては、情報を表示するディスプレイ89に限定されるものではなく、情報を音声出力するスピーカーなど、情報を報知するものであれば如何なるものとしても構わない。「報知制御手段」としては、シフトポジションSPがBポジションでアクセルオフのときに、エンジン22のモータリングのためにモータMG1によって消費されるモータリング電力Pm1の積算値であるモータリング電力積算値Pm1sumとモータMG2の回生駆動によって生じる回生電力Pm2の積算値である回生電力積算値Pm2sumとの和が正の値(電力消費側の値)のときには、シフトポジションSPのDポジションへのシフト変更を促すシフト変更提案情報をディスプレイ89に表示出力するものに限定されるものではなく、シフトポジションが第2走行用ポジションでアクセルオフのとき、内燃機関のモータリングのために発電機によって消費される電力の積算値である発電機電力積算値と電動機の回生駆動によって生じる電力の積算値である電動機電力積算値との和が電力消費側の値のときには、シフトポジションの第1走行用ポジションへのシフト変更を促す情報であるシフト変更提案情報が運転者に報知されるよう報知手段を制御するものであれば如何なるものとしても構わない。
【0038】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0039】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、ハイブリッド自動車の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0041】
20,120 ハイブリッド自動車、22 エンジン、24 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、26 クランクシャフト、28 ダンパ、30 動力分配統合機構、31 サンギヤ、32 リングギヤ、32a リングギヤ軸、33 ピニオンギヤ、34 キャリア、35 減速ギヤ、40 モータ用電子制御ユニット(モータECU)、41,42 インバータ、43,44 回転位置検出センサ、50 バッテリ、51 温度センサ、52 バッテリ用電子制御ユニット(バッテリECU)、54 電力ライン、60 ギヤ機構、62 デファレンシャルギヤ、63a,63b 駆動輪、64a,64b 車輪、70 ハイブリッド用電子制御ユニット、72 CPU、74 ROM、76 RAM、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトポジションセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルポジションセンサ、88 車速センサ、MG1,MG2 モータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と、動力を入出力可能な発電機と、車軸に連結された駆動軸と前記内燃機関の出力軸と前記発電機の回転軸との3軸に3つの回転要素が接続された遊星歯車機構と、前記駆動軸に動力を入出力可能な電動機と、前記発電機および前記電動機と電力のやりとりが可能な二次電池と、アクセルオフのときにシフトポジションに応じて車両に要求される要求制動力を設定する要求制動力設定手段と、シフトポジションが第1走行用ポジションでアクセルオフのときには前記電動機の回生駆動によって生じる制動力である回生制動力により前記設定された要求制動力が車両に作用するよう前記電動機を制御し、シフトポジションが前記第1走行用ポジションよりもアクセルオフ時に大きな制動力が要求される第2走行用ポジションでアクセルオフのときには前記発電機による前記内燃機関のモータリングによって生じる制動力である機関制動力と前記回生制動力とにより前記設定された要求制動力が車両に作用するよう前記発電機と前記電動機とを制御する駆動制御手段と、を備えるハイブリッド自動車において、
情報を報知する報知手段と、
シフトポジションが前記第2走行用ポジションでアクセルオフのとき、前記内燃機関のモータリングのために前記発電機によって消費される電力の積算値である発電機電力積算値と前記電動機の回生駆動によって生じる電力の積算値である電動機電力積算値との和が電力消費側の値のときには、シフトポジションの前記第1走行用ポジションへのシフト変更を促す情報であるシフト変更提案情報が運転者に報知されるよう前記報知手段を制御する報知制御手段と、
を備えるハイブリッド自動車。
【請求項2】
請求項1記載のハイブリッド自動車であって、
前記報知制御手段は、前記電動機電力積算値と前記発電機電力積算値との和が電力消費側の値であるか否かを判定したときに前記電動機電力積算値と前記発電機電力積算値とを値0にリセットする手段である、
ハイブリッド自動車。
【請求項3】
請求項2記載のハイブリッド自動車であって、
前記報知制御手段は、シフトポジションが前記第2走行用ポジションのとき、アクセルオンされたときには前記電動機電力積算値と前記発電機電力積算値とを値0にリセットしない手段である、
ハイブリッド自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−81805(P2012−81805A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−227753(P2010−227753)
【出願日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】