説明

ハイブリッド車の制御装置

【課題】ハイブリッド車の制御装置に関し、エンジン走行中にエンジンの出力が過剰になったらエンジンの不要な吹け上がりやこれによるエンジンのオーバーランを防止しながらクラッチを開放することができるようにする。
【解決手段】電動モータ1及びエンジン2を走行用駆動源として備えたハイブリッド車の制御装置において、エンジン2からの駆動力を車両の駆動輪に伝達可能とする動力断接クラッチ4と、エンジン2に接続された発電機3と、エンジンの状態量を検出する状態量検出手段74と、車両の状態に基づいてエンジンから出力されるべき目標状態量を算出する目標状態量算出手段75と、動力断接クラッチ4が接続されてエンジンの駆動力により車両が走行している際に状態量と目標状態量との差が所定量以上となると、発電機3でエンジンの回転数を抑制し、エンジンの回転数抑制が始まった後に動力断接クラッチ4を開放させる制御手段7とをそなえる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの駆動力を断接可能なクラッチを備えたハイブリッド車におけるエンジン及びクラッチを制御する制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
モータ(電動機,電動モータともいう)とエンジン(内燃機関)とを駆動力源として装備したパラレル式ハイブリッド車には、エンジンと駆動輪側の動力伝達軸との間に、動力を断接するクラッチを備え、エンジンを駆動力源として使用しないときに、駆動力系統からエンジンを切り離すことができるようにしたものが開発されている。
このようなパラレル式ハイブリッド車において、エンジンやエンジンの制御系統(センサ類も含む)が正常であれば、エンジン側の応答遅れはあるものの、エンジンは指令した出力に近い出力状態で作動する。しかし、エンジンの出力を用いて走行している際に、エンジンやエンジンの制御系統(センサ類も含む)に不具合(故障等)が生じると、故障内容によってはエンジン2の実際の出力が、指令した出力(目標出力)よりも大きい側に乖離し、適切な走行に支障をきたすことも考えられる。
【0003】
この場合、クラッチを速やかに開放(つまり、緊急開放)してエンジンの動力を駆動輪側から遮断すると共にエンジンを停止させれば、制御可能なモータのみでの走行が可能となる。しかし、このとき、エンジンの停止よりも前に、クラッチが切り離されてしまうと、エンジンは負荷を瞬時に開放されるため、エンジンの不要な吹け上がりを招いて、ひいてはオーバーラン(過回転)を生じてしまう恐れがある。
【0004】
なお、パラレル式ハイブリッド車におけるエンジン停止の際の制御として、特許文献1に開示された技術がある。この技術は、エンジンとモータとの双方の駆動力により走行している状態から減速あるいは発電要求等の条件変化に伴いモータのみによる走行に移行する場合、単にクラッチを切ってエンジンを切り離すとそれまで作用していたエンジントルク(減速時はエンジンブレーキトルク)がなくなるため駆動力が急減してしまうのでこれを解消すべく、クラッチ開放時のエンジントルクをエンジン側の第1モータにより相殺し、この相殺分のトルクを駆動系の第2モータで発生させることによりクラッチ開放前後で駆動力を一定化するという技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−136835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述の特許文献1の技術は、出力要求の変化等からエンジンを駆動系から切り離すためのクラッチ開放にかかる技術であって、エンジンの出力が過剰になったためにクラッチを開放する技術ではなく、しかも、クラッチ開放前後で駆動力を一定化しようとする技術であって、クラッチ開放によってエンジンの不要な吹け上がりやこれによるエンジンのオーバーランを防止しうるものではない。
【0007】
本発明は、かかる課題に鑑みて創案されたもので、何らかの不具合によってエンジンの出力が過剰になったためにクラッチを開放する場合に、このクラッチ開放によってエンジンの不要な吹け上がりやこれによるエンジンのオーバーランを防止することができるようにした、ハイブリッド車の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するために、本発明のハイブリッド車の制御装置は、電動モータ及びエンジンを走行用駆動源として備えたハイブリッド車の制御装置において、前記エンジンからの駆動力を前記車両の駆動輪に伝達可能とする動力断接クラッチと、前記エンジンに接続された発電機と、前記エンジンの状態量を検出する状態量検出手段と、前記車両の状態に基づいて前記エンジンから出力されるべき目標状態量を算出する目標状態量算出手段と、前記動力断接クラッチが接続されて前記エンジンの駆動力により前記車両が走行している際に前記状態量と前記目標状態量との差が所定量以上となると、前記発電機により前記エンジンの回転数を抑制し、前記エンジンの回転数抑制が始まった後に前記動力断接クラッチを開放させる制御手段と、をそなえていることを特徴としている。
【0009】
前記エンジンを制御するエンジン制御手段を更に備え、前記制御手段は、前記動力断接クラッチの開放を行なうときにこれと共に前記エンジン制御手段に前記エンジンを停止させるように停止信号を発することが好ましい。
前記状態量はエンジン回転数であり、前記目標状態量は目標エンジン回転数であることが好ましい。
【0010】
前記制御手段は、前記動力断接クラッチの開放の後、前記エンジンの回転数低下に伴って前記発電機の回転数を低下させることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のハイブリッド車の制御装置によれば、制御手段が、動力断接クラッチが接続されてエンジンの駆動力により車両が走行している際に状態量と目標状態量との差が所定量以上となると、発電機でエンジンの回転数を抑制し、エンジンの回転数抑制が始まった後に動力断接クラッチを開放させるので、動力断接クラッチの開放時に、エンジンの不要な吹け上がりやこれによるエンジンのオーバーランを防止することができる。
【0012】
制御手段が、動力断接クラッチの開放を行なうときにこれと共にエンジン制御手段にエンジンを停止させるように停止信号を発すれば、より確実にエンジンの不要な吹け上がりやこれによるエンジンのオーバーランを防止することができる。
また、エンジンの作動状態の判定について、算出した実トルクが算出した目標トルクよりも予め設定された所定値以上大きい場合や、検出したエンジン回転数が算出した目標回転数よりも予め設定された所定値以上大きい場合に、エンジンが過剰な作動状態であると判定すれば、適切に判定を行なうことができる。
【0013】
動力断接クラッチの緊急開放及びエンジン停止を、発電機の回転数が一定回転数に安定するのを確認してから実行すれば、より確実にエンジンの不要な吹け上がりやこれによるエンジンのオーバーランを防止することができる。
動力断接クラッチの開放及びエンジン停止の指令後、エンジン回転数が低下を開始したら発電機を停止させることにより、エンジンの不要な吹け上がりやこれによるエンジンのオーバーランを確実に防止したうえで、速やかに発電機を停止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態にかかるハイブリッド車の動力系の構成図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかるハイブリッド車の制御を説明するフローチャートである。
【図3】本発明の一実施形態にかかるハイブリッド車の制御を説明するタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
図1〜図3は本発明の一実施形態を説明する図であり、図1はそのハイブリッド車の動力系の構成図、図2,図3はそのハイブリッド車の制御を説明するフローチャート,タイムチャートである。
(構成)
図1に示すように、本実施形態にかかるハイブリッド車は、車両の走行用駆動源として電動モータ(電動機、以下、単にモータとも言う)1とエンジン(内燃機関)2とを備えている。モータ1の出力軸1aは、動力伝達部材41を介してプロペラシャフト42に常時接続され、エンジン2の出力軸2aは、動力伝達部材43及び動力断接クラッチ(以下、単にクラッチとも言う)4を介してプロペラシャフト42に断接可能に接続されている。プロペラシャフト42にはデファレンシャル51及び駆動軸52,52を介して左右の駆動輪5,5に接続されている。
【0016】
モータ1には電力供給線61を介して走行用バッテリ(高電圧バッテリ、以下、単にバッテリとも言う)6が接続され、バッテリ6から電力供給されるようになっている。
また、エンジン2の出力軸2aには変速比を変更できる機構(変速機)は装備されず、エンジン2の出力回転は一定の変速比で駆動輪5,5に伝達される。
また、ここでは、クラッチ4は電磁クラッチであり、遠隔で速やかに断接操作できるようになっているが、クラッチ4には、電気信号に応じて断接する流体圧回路を備えた流体圧クラッチ(例えば、油圧クラッチ)も適用可能である。
【0017】
さらに、エンジン2の出力軸2aには、ジェネレータ(発電機)3が接続されている。クラッチ4が開放されている場合には、エンジン2の出力によりジェネレータ3が駆動され、ジェネレータ3による発電電力は、バッテリ6に送られてバッテリ6を充電する、又は、モータ1に直接供給されるように、電力供給線62,63が配設されている。また、クラッチ4が接続されている場合には、エンジン2の出力は駆動輪5,5に供給されるが、このときにも、エンジン2の出力の一部によりジェネレータ5を駆動し、ジェネレータ3による発電を行ない、バッテリ6の充電やモータ1への電力供給をすることもできる。
【0018】
そして、モータ1を制御するためにモータコントローラ(モータ制御手段)11が、エンジン2を制御するためにエンジンECU(エンジン制御手段)12が、ジェネレータ3を制御するためにジェネレータコントローラ(ジェネレータ制御手段)13が、それぞれ備えられている。さらに、モータコントローラ11、エンジンECU12、ジェネレータコントローラ13には、これらを統合制御するために、通信線70を通じて、車両コントローラ(制御手段)7が接続されている。各コントローラ類11,12,13,7は、入出力装置、記憶装置(ROM、RAM、不揮発性RAM等)、中央処理装置(CPU)及びタイマカウンタ等を含んで構成されている。
【0019】
車両コントローラ7には、車両の車速を検出する車速センサ(車速検出手段、ここでは、車輪速センサ)81と、エンジン回転数を検出するエンジン回転数センサ(エンジン回転数検出手段)82と、エンジン負荷に相当するアクセル開度(アクセルペダル83aの踏込量)を検出するアクセル開度センサ(エンジン負荷検出手段)83とが、それぞれ接続されており、車両コントローラ7では、これらの各センサ(状態検出手段)81〜83からの情報に基づいて車両の状態を検出し判定及び制御指令を行なうようになっている。
【0020】
ここで、エンジンやエンジンの制御系統(センサ類も含む)に不具合のない通常走行時における、車両コントローラ7によるモータ1及びエンジン2の制御を説明する。
本車両の走行モードには、モータ1の出力のみにより走行するモード(モータ走行モード)と、エンジン2によりジェネレータ3で発電をすることで十分な電力をモータ1に供給しながら走行するモード(発電走行モード)と、エンジン2の出力に状況によってモータ1の出力を加えて走行するモード(併用走行モード)と、があり、車両コントローラ7では、車速とアクセル開度(エンジン負荷)とに基づいて、走行モードを設定する。
【0021】
つまり、車両コントローラ7では、低車速時には、エンジン2を停止し、モータ1のみで発進又は走行するモータ走行モードを選択する。この際、車両の走行にバッテリ6の出力可能な電力を超えた高出力が要求されると、ジェネレータ3をモータとして作動させてジェネレータ3の出力を走行に使用することも可能になっている。
一方、車両の速度が一定以上の高速走行になると、車両コントローラ7では、エンジン2を作動させて、エンジン2の出力にモータ1の出力を加えて走行する併用走行モードを選択し、この併用走行モードでは、エンジン2の出力のみではアクセル開度に対応した車両走行用の出力要求を満たせない場合には、エンジン2の出力で不足する分をモータ1の出力でアシストするようにして走行する。
【0022】
つまり、車両コントローラ7では、走行中に、車速センサ81からの車速に応じて、モータ走行モードと、発電走行モードと、併用走行モードとを切り替える。
モータ走行モードにおいては、アクセル開度センサ83から得られるアクセル開度(車両への出力要求)に応じてモータ1の目標出力(目標モータトルク)を設定して、これに基づいてモータ1を制御する。
【0023】
また、発電走行モードにおいては、アクセル開度センサ83から得られるアクセル開度に応じてモータ1の目標出力(目標モータトルク)を設定しこの目標出力がバッテリ6の出力可能値を超えている場合はエンジン2の目標出力(目標エンジントルク)を設定して、不足電力をジェネレータ3で発電するようエンジン2を制御する。
さらに、併用走行モードにおいては、アクセル開度センサ83から得られるアクセル開度に応じて車両の目標出力(車両目標トルク)を設定して、エンジン2の目標出力(目標エンジントルク)を設定すると共に、車両目標トルクに対して目標エンジントルクでは不足する分をモータ1の目標出力(目標モータトルク)に設定して、これらに基づいてエンジン2及びモータ1を制御する。
したがって、目標エンジントルクに着目すれば、車両コントローラ7では、車速とアクセル開度(エンジン負荷)とに基づいて目標エンジントルクを設定する。
【0024】
本制御に着目すれば、車両コントローラ7には、各センサ81〜83により検出された情報に基づいて、エンジンが過剰な作動状態であるか否かを判定する機能(判定手段)71と、エンジン2が過剰な作動状態であるときに、クラッチ4を緊急開放すると共にエンジン2を停止する指令を出力する機能(エンジン駆動力遮断制御手段)72と、エンジン2が過剰な作動状態であるときに、ジェネレータ3を一定回転数に回転数制御する指令を出力する機能(発電機制御手段)73と、エンジンの状態量を検出する状態量検出手段74と、車両の状態に基づいてエンジンの出力されるべき目標状態量を算出する目標状態量算出手段75と、を備えている。
【0025】
なお、目標状態量算出手段75は、エンジン2の目標状態量である目標エンジン回転数を、上述のように、車速とアクセル開度(エンジン負荷)とに基づいて算出する。
一方、状態量検出手段74は、エンジン2の状態量であるエンジン回転数を検出する、エンジン回転数センサである。
【0026】
そして、判定手段71では、走行中に、車速とアクセル開度(エンジン負荷)とに基づいて目標エンジン回転数を設定して、エンジン回転数センサ82によって検出された実エンジン回転数(状態量)からこの設定した目標エンジン回転数(目標状態量)を減算した値(差)が、予め設定された所定値以上になったら、エンジン2が過剰な作動状態であると判定するように構成されている。
【0027】
エンジン駆動力遮断制御手段72は、判定手段71でエンジン2が過剰な作動状態であると判定されたら、所定条件下でクラッチ4を緊急開放する指令と共にエンジン2を停止する指令を出力する。なお、ここでは、クラッチ4は電磁クラッチなので、その開放は電気的に速やかに行なわれる。また、エンジン2の停止は、エンジン2への燃料供給の遮断により行なうことができる。
【0028】
発電機制御手段73は、判定手段71でエンジン2が過剰な作動状態であると判定されたら、ジェネレータ3を一定回転数に回転数制御する指令を出力する。この一定回転数とは、例えば、判定手段71でエンジン2が過剰な作動状態であると判定された時点のエンジン回転数(=ジェネレータ回転数)或いはこの近傍のエンジン回転数とする。この回転数制御は、エンジン2が過剰な作動状態であると判定されたら直ちに開始し、クラッチ4の開放制御の実施によって終了する。また、エンジン2の停止が確認されたらジェネレータ3も停止するように指令する。
【0029】
エンジン駆動力遮断制御手段72によるクラッチ4の緊急開放及びエンジン2の停止の各指令は、発電機制御手段73によるジェネレータ3の回転数制御、換言すれば、エンジン2の回転数制御を実施してから行なうように設定されており、特に、ここでは、ジェネレータ回転数(エンジン回転数)が安定したことを確認してから、上記指令を行なうように設定されている。この場合のジェネレータ回転数の安定とは、例えば、ジェネレータ回転数の時間変化率(微分値)が予め設定された所定値(所定量)以下の状態が予め設定された時間(又は、エンジンの積算回転数で規定される期間)だけ継続したら安定したと判定することができる。
【0030】
本発明の一実施形態にかかるハイブリッド車の制御装置は、上述のように構成されるため、例えば、図2のフローチャートに示すように制御が行なわれる。
つまり、まず、車速,アクセル開度,エンジン回転数を、車速センサ,アクセル開度センサ,エンジン回転数センサにより検出し(ステップS10)、車両コントローラ7が、車速及びアクセル開度からエンジン2の目標回転数(目標エンジン回転数)を算出し(ステップS22)、判定手段71では、検出したエンジン2の回転数(実エンジン回転数)から算出した目標エンジン回転数を減算した値を所定値(所定量)と比較して、エンジンが過剰な作動状態であるか否かを判定する(ステップS42)。
【0031】
ここで、実エンジン回転数から算出した目標エンジン回転数を減算した値が所定値以上であれば、エンジンが過剰な作動状態であると判定して、ステップS50以降のクラッチオフ(クラッチ開放)に至る処理を行なう。実エンジン回転数から算出した目標エンジン回転数を減算した値が所定値以上でなければ、今回の制御周期の処理を終了し、次回の制御周期で、再び、上記のステップS10からの処理を行なう。
【0032】
ステップS50に進むと、発電機制御手段73により、ジェネレータ3を一定回転数に回転数制御するジェネレータ回転数制御が行なわれる。次に、ステップS60に進んで、ジェネレータ回転数(エンジン回転数)が安定したか否かを判定する。この判定で否の場合には、ジェネレータ回転数制御が続行され、ジェネレータ回転数が安定したら、ステップS70に進んで、エンジン駆動力遮断制御手段72によるクラッチ4の緊急開放及びエンジンECU12に対するエンジン2の停止指令が出力される。なお、この指令と共に、ジェネレータ回転数制御は終了とされる。
【0033】
そして、エンジン回転数情報からエンジン出力の低下を判定し(ステップS80)、エンジン出力が低下したと判定されたら、ジェネレータ3の回転数を徐々に減少させるジェネレータ停止処理を行なう(ステップS90)。
したがって、図3のタイムチャートに実線で例示するように、実エンジン回転数が目標エンジン回転数よりも所定値以上大きくなると(時点t)、エンジンが過剰な作動状態であると判定して,ジェネレータ回転数制御が行なわれる。このジェネレータ回転数制御の際には、エンジン2の出力トルクがジェネレータ3で吸収され(つまり、ジェネレータ3は負の出力トルク)ながら、エンジン2の回転数の上昇抑制が行なわれる。
【0034】
これにより、ジェネレータ回転数(エンジン回転数)の安定が確認されると(時点t−時点t)、クラッチオフ(クラッチ開放)指令及びエンジン出力0(エンジン停止)指令が出力される(時点t)。これに応じて、クラッチオフ(クラッチ開放)及びエンジン出力0(エンジン停止)の各処理が実施されると(時点t)、その後、エンジン2が出力停止し(時点t)、これに応じて、ジェネレータ3の停止処理が行なわれる。
【0035】
図3中にも、本ジェネレータ回転数制御を実施しないでクラッチオフ(クラッチ開放)を行なった場合を破線で例示しているが、ジェネレータ回転数制御を実施しないでクラッチオフ(クラッチ開放)を行なうと、エンジンの不要な吹け上がりが起こり、これによるエンジンのオーバーランが生じるおそれがあるが、ジェネレータ回転数制御を実施してクラッチオフ(クラッチ開放)を行なうとエンジンの不要な吹け上がりは起こらず、これによるエンジンのオーバーランが生じるおそれもないことがわかる。
【0036】
特に、クラッチ4の緊急開放及びエンジン2の停止を、ジェネレータ3の回転数が一定回転数に安定するのを確認してから実行するので、より確実にエンジン2の不要な吹け上がりやこれによるエンジンのオーバーランを防止することができる。
また、クラッチ4の緊急開放及びエンジン2の停止の指令後、エンジン回転数が低下を開始したらこの時点でジェネレータ3を停止させることにより、エンジン2の不要な吹け上がりやこれによるエンジン2のオーバーランを確実に防止したうえで、速やかにジェネレータ3を停止することができる。
【0037】
〔その他〕
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で上記実施形態を適宜変形して実施することができる。
【0038】
例えば、上記実施形態では、エンジン2の出力軸2aには変速比を変更できる機構(変速機)が装備されていないが、エンジン2の出力軸2aに変速機を接続して、エンジン2の出力回転を、変速比を変えて駆動輪5,5に伝達するものに本発明の適用することも可能である。この場合、例えば、エンジンの目標トルク,実トルクの算出や、エンジンの目標回転数の算出に、変速比を考慮する必要があるが、使用中の変速段や、変速比の状態をし、このパラメータを勘案して各値を算出すれば、本発明の制御を実施することができる。
【0039】
また、上記実施形態では、状態量及び目標状態量に関するパラメータとしてエンジン回転数を用いたが、かかるパラメータはこれに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0040】
1 電動モータ(電動機、モータ)
1a モータ1の出力軸
2 エンジン(内燃機関)
2a エンジン2の出力軸
3 ジェネレータ(発電機)
4 動力断接クラッチ(クラッチ)
5 駆動輪
6 走行用バッテリ(高電圧バッテリ、バッテリ)
7 車両コントローラ(制御手段)
11 モータコントローラ(モータ制御手段)
12 エンジンECU(エンジン制御手段)
13 ジェネレータコントローラ(ジェネレータ制御手段)
41 動力伝達部材
42 プロペラシャフト
43 動力伝達部材
44 プロペラシャフト
51 デファレンシャル
52 駆動軸
61〜63 電力供給線
70 通信線
71 判定手段
72 エンジン駆動力遮断制御手段
73 発電機制御手段
74 状態量検出手段
75 目標状態量算出手段
81 車速センサ(車速検出手段、車輪速センサ)
82 エンジン回転数センサ(エンジン回転数検出手段)
83 アクセル開度センサ(エンジン負荷検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータ及びエンジンを走行用駆動源として備えたハイブリッド車の制御装置において、
前記エンジンからの駆動力を前記車両の駆動輪に伝達可能とする動力断接クラッチと、
前記エンジンに接続された発電機と、
前記エンジンの状態量を検出する状態量検出手段と、
前記車両の状態に基づいて前記エンジンから出力されるべき目標状態量を算出する目標状態量算出手段と、
前記動力断接クラッチが接続されて前記エンジンの駆動力により前記車両が走行している際に前記状態量と前記目標状態量との差が所定量以上となると、前記発電機により前記エンジンの回転数を抑制し、前記エンジンの回転数抑制が始まった後に前記動力断接クラッチを開放させる制御手段と、をそなえている
ことを特徴とする、ハイブリッド車の制御装置。
【請求項2】
前記エンジンを制御するエンジン制御手段を更に備え、
前記制御手段は、前記動力断接クラッチの開放を行なうときにこれと共に前記エンジン制御手段に前記エンジンを停止させるように停止信号を発する
ことを特徴とする、請求項1に記載のハイブリッド車の制御装置。
【請求項3】
前記状態量はエンジン回転数であり、前記目標状態量は目標エンジン回転数である
ことを特徴とする、請求項1又は2記載のハイブリッド車の制御装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記動力断接クラッチの開放の後、前記エンジンの回転数低下に伴って前記発電機の回転数を低下させる
ことを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載のハイブリッド車の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−30664(P2012−30664A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−171094(P2010−171094)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】