説明

ハイブリッド車両の回生制動力制御装置及び回生制動力制御方法

【課題】シャシダイナモ装置を用いた、FR−HEV車両に対する二輪駆動状態の燃費測定時に、回生制動により発電する電力の減少を抑制することが可能な、ハイブリッド車両の回生制動力制御装置及び回生制動力制御方法を提供する。
【解決手段】後輪のみを駆動輪とした二輪駆動状態のハイブリッド車両が、シャシダイナモ装置上で、後輪の回転のみで走行すると判定すると、前輪及び後輪を駆動輪とした四輪回転状態において運転者が要求する制動力に応じてモータが発生する回生制動力よりも、運転者が要求する制動力に応じてモータが発生する回生制動力の減少度合いを減少させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータにより駆動する後輪を備えるハイブリッド車両に対し、回生制動力を制御するハイブリッド車両の回生制動力制御装置及び回生制動力制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンとモータとの間に介装する第一クラッチと、モータと駆動輪との間に介装する第二クラッチとの接続及び解放の組み合わせにより、エンジン及びモータによる走行や回生制動等の走行制御が可能なハイブリッド車両がある。
このようなハイブリッド車両に対し、回生制動時にモータが発生する回生制動力等を測定する装置として、例えば、特許文献1に記載されているような装置がある。
【0003】
特許文献1に記載の装置は、シャシダイナモ装置(シャシダイナモメータ)で検出した駆動輪の制動力を、駆動輪及び従動輪の合計制動力として仮定し、その制動力を、予め記憶した制動力配分率のデータにより分解して、基準回生制動力を算出する。さらに、運転者が実際にブレーキを操作した際の踏力(実踏力)を検出し、この実踏力と制動力配分率のデータに基づき、実踏力により駆動輪が発生する制動力と同じ制動力を、駆動輪及び従動輪がトータルとして発生するための仮想踏力として算出する。そして、この仮想踏力と制動力配分率のデータとに基づいて、仮想踏力において駆動輪が発生する仮想回生制動力を算出し、この仮想回生制動力を基準回生制動力と比較する。
【特許文献1】特開平10−217935号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ハイブリッド車両としては、モータにより駆動する駆動輪を後輪としたハイブリッド車両(FR−HEV車両)がある。このFR−HEV車両では、第一クラッチを解放し、第二クラッチを接続した状態を、二輪駆動状態とする。
このようなFR−HEV車両に対し、特許文献1に記載の装置を用いて、二輪駆動状態における燃費測定を行う場合の制動時には、前輪が回転しないため、ブレーキの実踏力に応じた油圧制動及び回生制動が可能な後輪のみで、制動力を発生させる。このため、実際に路面上を走行している状態、すなわち、前輪及び後輪が回転している状態における回生制動時よりも、ブレーキの実踏力を増加させることとなる。
【0005】
上記の燃費測定において、前輪及び後輪が回転している状態における回生制動時よりもブレーキの実踏力を増加させると、ブレーキ制御手段(ブレーキECU)が、運転者が要求する制動力が回生制動による制動力よりも増加したと認識する。このため、ブレーキECUは、ハイブリッド車両の操縦安定性を確保するために、後輪が発生する制動力のうち、回生制動による制動力の割合を減少させるとともに、油圧制動による制動力の割合を増加させる。これにより、回生制動により発電する電力の回収量が減少して、バッテリへ供給する電力が減少し、燃費が悪化するという問題が発生するおそれがある。
本発明は、上記のような点に着目してなされたもので、FR−HEV車両に対する二輪駆動状態の燃費測定時に、回生制動により発電する電力の減少を抑制することが可能な、ハイブリッド車両の回生制動力制御装置及び減速制御方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、前輪及び後輪を駆動輪とした四輪回転状態において運転者が要求する制動力に応じてモータが発生する回生制動力よりも、運転者が要求する制動力に応じてモータが発生する回生制動力の減少度合いを減少させる。これは、後輪のみを駆動輪とした二輪駆動状態のハイブリッド車両が、シャシダイナモ装置上で後輪の回転のみで走行する際に行う。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、二輪駆動状態のハイブリッド車両がシャシダイナモ装置上で走行する際に、運転者が要求する制動力に応じてモータが発生する回生制動力の減少度合いを減少させる。このため、シャシダイナモ装置を用いた、FR−HEV車両に対する二輪駆動状態の燃費測定時に、回生制動により発電する電力の減少を抑制することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
(第一実施形態)
以下、本発明の第一実施形態(以下、「本実施形態」と記載する)について、図面を参照しつつ説明する。
(構成)
まず、図1から図5を参照して、本実施形態のハイブリッド車両の回生制動力制御装置(以下、「回生制動力制御装置」と記載する)の構成を説明する。
図1は、本実施形態の回生制動力制御装置を備えるハイブリッド車両HEVの概略構成図であり、ハイブリッド車両HEVの駆動系構成を説明する図である。
図1中に示すように、回生制動力制御装置を備えるハイブリッド車両HEVの駆動系は、は、前輪1と、エンジン2と、モータ4と、第一クラッチ6と、第二クラッチ8と、トランスミッション10と、後輪12とを有している。
【0009】
前輪1は、車幅方向中心よりも左側に配置した左前輪1Lと、車幅方向中心よりも右側に配置した右前輪1Rを備えており、ハイブリッド車両HEVの従動輪を形成している。
左前輪1L及び右前輪1Rには、それぞれ、車輪の回転状態(回転数、回転速度)を検出し、この検出した回転状態を含む情報信号を、後述するブレーキコントローラ14へ出力する車輪速センサ16を設けている。
エンジン2は、内燃機関であり、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンを用いて形成する。
また、エンジン2は、後述するエンジンコントローラ18が出力する制御指令に基づいて、スロットルバルブ(図示せず)のバルブ開度等を制御する。なお、エンジン2の出力軸には、フライホイール20を設けている。
【0010】
また、エンジン2には、エンジン回転数センサ22を設けている。
エンジン回転数センサ22は、エンジン2の回転数を検出し、この検出した回転数(エンジン回転数)を含む情報信号を、エンジンコントローラ18へ出力する。
モータ4は、ロータ(図示せず)に永久磁石を埋設し、ステータ(図示せず)にステータコイルを巻き付けた、同期型モータジェネレータで形成する。
また、モータ4は、後述するモータコントローラ24が出力する制御指令に基づいて、インバータ26が形成した三相交流を印加して制御する。
【0011】
また、モータ4は、バッテリ28から電力の供給を受けて回転駆動する電動機として動作可能である(以下、この状態を「力行」と記載する)。さらに、モータ4は、ロータが外力により回転している場合には、ステータコイルの両端に起電力を生じさせる発電機として機能し、バッテリ28を充電することが可能である(以下、この動作状態を「回生」と記載する)。なお、モータ4のロータは、図外のダンパーを介して、トランスミッション10の入力軸に連結している。
【0012】
また、モータ4には、レゾルバ30と、モータ回転数センサ32とを設けている。
レゾルバ30は、モータ4のロータ回転位置を検出し、この検出したロータ回転位置を含む情報信号を、モータコントローラ24へ出力する。
モータ回転数センサ32は、モータ4の回転数(モータ回転数Nm)を検出し、この検出したモータ回転数Nmを含む情報信号を、後述する統合コントローラ34へ出力する。
第一クラッチ6は、例えば、油圧式単板クラッチにより形成し、エンジン2とモータ4との間に介装する。
【0013】
また、第一クラッチ6は、後述する第一クラッチコントローラ36が出力する制御指令に基づいて、第一クラッチ油圧ユニット38が形成する制御油圧により、滑り締結と滑り開放を含む接続状態または解放状態に切り換わる。
また、第一クラッチ6には、第一クラッチ油圧センサ40と、第一クラッチストロークセンサ42を設けている。
第一クラッチ油圧センサ40は、第一クラッチ油圧ユニット38から第一クラッチ6へのクラッチ油(作動油)供給路に配置し、第一クラッチ6へ供給するクラッチ油の圧力を検出する。そして、この検出したクラッチ油の圧力を含む情報信号を、第一クラッチコントローラ36へ出力する。
【0014】
第一クラッチストロークセンサ42は、第一クラッチ6のストロークを検出し、この検出した第一クラッチ6のストロークを含む情報信号を、第一クラッチコントローラ36へ出力する。ここで、第一クラッチ6のストロークは、第一クラッチ6が接続状態であるか解放状態であるかを反映する。
第二クラッチ8は、例えば、油圧式単板クラッチにより形成し、モータ4と左右後輪12L、12Rとの間に介装する。
また、第二クラッチ8は、後述するATコントローラ44が出力する制御指令に基づいて、第二クラッチ油圧ユニット46が形成する制御油圧により、滑り締結と滑り開放を含む接続状態または解放状態に切り換わる。
【0015】
また、第二クラッチ8は、トランスミッション10の各変速段にて締結する複数の摩擦締結要素のうち、いくつかの摩擦締結要素を流用している。
また、第二クラッチ8には、第二クラッチ油圧センサ48と、第二クラッチ出力回転数センサ50と、第二クラッチトルクセンサ52とを設けている。
第二クラッチ油圧センサ48は、第二クラッチ油圧ユニット46から第二クラッチ8へのクラッチ油(作動油)供給路に配置し、第二クラッチ8へ供給するクラッチ油の圧力を検出する。そして、この検出したクラッチ油の圧力を含む情報信号を、統合コントローラ34へ出力する。
【0016】
第二クラッチ出力回転数センサ50は、第二クラッチ8の出力回転数(第二クラッチ出力回転数N2out)を検出し、この検出した第二クラッチ出力回転数N2outを含む情報信号を、統合コントローラ34へ出力する。
第二クラッチトルクセンサ52は、第二クラッチ8のトルク(第二クラッチトルクTCL2)を検出し、この検出した第二クラッチトルクTCL2を含む情報信号を、統合コントローラ34へ出力する。
トランスミッション10は、例えば、前進5速・後退1速、前進6速・後退1速等、有段階の変速比を、車速やアクセル開度等に応じて自動的に切り換える変速機である。
また、トランスミッション10は、メカオイルポンプ54と、電動オイルポンプ56とを備えている。
【0017】
メカオイルポンプ54は、エンジン2を動力としており、トランスミッション10に油圧を供給する。
電動オイルポンプ56は、トランスミッション10に油圧を供給するポンプとしての機能と、油圧駆動の発電機としての機能を備えている。
以上により、トランスミッション10は、トランスミッション10に油圧を供給するポンプとして、メカオイルポンプ54と、電動オイルポンプ56とを併用している。
後輪12は、前輪1よりも車両前後方向後方に配置してあり、車幅方向中心よりも左側に配置した左後輪12Lと、車幅方向中心よりも右側に配置した右後輪12Rを備えている。
【0018】
左後輪12Lは、左ドライブシャフト58L、ディファレンシャル60、プロペラシャフト62を介して、トランスミッション10の出力軸と連結している。
右後輪12Rは、右ドライブシャフト58R、ディファレンシャル60、プロペラシャフト62を介して、トランスミッション10の出力軸と連結している。
したがって、左後輪12L及び右後輪12Rは、第二クラッチ8を接続状態に切り換えると、モータ4により駆動するハイブリッド車両HEVの駆動輪を形成する。
【0019】
また、左後輪12L及び右後輪12Rには、それぞれ、車輪の回転状態(回転数、回転速度)を検出し、この検出した回転状態を含む情報信号を、ブレーキコントローラ14へ出力する車輪速センサ16を設けている。なお、図1中では、左前輪1L、右前輪1R、左後輪12L及び右後輪12Rにそれぞれ設けた四つの車輪速センサを一括して、一つの「車輪速センサ16」として示している。
【0020】
次に、ハイブリッド車両HEVの制御系を説明する。
ハイブリッド車両HEVの制御系は、エンジンコントローラ18と、モータコントローラ24と、インバータ26と、バッテリ28と、第一クラッチコントローラ36と、第一クラッチ油圧ユニット38とを有している。これに加え、ハイブリッド車両HEVの制御系は、ATコントローラ44と、第二クラッチ油圧ユニット46と、ブレーキコントローラ14と、統合コントローラ34とを有している。
なお、エンジンコントローラ18と、モータコントローラ24と、第一クラッチコントローラ36と、ATコントローラ44と、ブレーキコントローラ14と、統合コントローラ34とは、互いに情報信号の入出力が可能な、CAN通信線64を介して接続している。
【0021】
エンジンコントローラ18は、エンジン回転数センサ22が出力した情報信号の入力を受けると、統合コントローラ34が出力する目標エンジントルク指令等に応じて、エンジン動作点を制御する指令(制御指令)を演算する。そして、この演算した制御指令を含む情報信号を、例えば、図外のスロットルバルブアクチュエータへ出力する。なお、エンジン動作点を制御する指令が含むエンジン回転数Neの情報は、CAN通信線64を介して、統合コントローラ34へ出力する。
【0022】
モータコントローラ24は、レゾルバ30が出力した情報信号の入力を受けると、統合コントローラ34が出力した目標モータジェネレータトルク指令等に応じて、モータ4のモータ動作点を制御する指令(制御指令)を演算する。そして、この演算した制御指令を含む情報信号を、インバータ26へ出力する。
なお、モータコントローラ24では、バッテリ28の充電状態を示すバッテリSOCを監視している。バッテリSOCを監視して得たバッテリSOCの情報(情報信号)を、モータ4の制御情報に用いるとともに、CAN通信線64を介して、統合コントローラ34へ出力する。
【0023】
第一クラッチコントローラ36は、第一クラッチ油圧センサ40及び第一クラッチストロークセンサ42が出力した情報信号の入力を受けると、統合コントローラ34が出力した第一クラッチ制御指令に応じて、第一クラッチ6を制御する指令(制御指令)を演算する。ここで、第一クラッチ6を制御する指令とは、第一クラッチ6を接続状態または解放状態に切り換える指令である。
【0024】
そして、第一クラッチコントローラ36は、演算した制御指令を含む情報信号を、第一クラッチ油圧ユニット38に出力する。なお、第一クラッチストロークCISの情報は、CAN通信線64を介して、統合コントローラ34へ出力する。
ATコントローラ44は、アクセル開度センサ66、車速センサ68及び第二クラッチ油圧センサ48が出力した情報信号の入力を受けると、統合コントローラ34が出力した第二クラッチ制御指令に応じて、第二クラッチ8を制御する指令(制御指令)を演算する。ここで、第二クラッチ8を制御する指令とは、第二クラッチ8を接続状態または解放状態に切り換える指令である。
【0025】
そして、ATコントローラ44は、変速制御における第二クラッチ8の制御に優先して、演算した制御指令を含む情報信号を、AT油圧コントロールバルブ内の第二クラッチ油圧ユニット46に出力する。
なお、アクセル開度センサ66は、運転者によるアクセルペダル(図示せず)の操作量(踏量)を検出し、この検出した操作量を含む情報信号を、ATコントローラ44へ出力する。また、アクセルペダルの操作量、すなわち、アクセル開度APの情報は、CAN通信線64を介して、統合コントローラ34へ出力する。
【0026】
また、車速センサ68は、例えば、ディファレンシャル60に設けてあり、トランスミッション10の出力軸の回転数等に基づいて、ハイブリッド車両HEVの速度(車速)を検出する。この検出した車速を含む情報信号を、ATコントローラ44へ出力する。また、車速VSPの情報は、CAN通信線64を介して、統合コントローラ34へ出力する。
【0027】
ブレーキコントローラ14は、車輪速センサ16及びブレーキストロークセンサ70が出力した情報信号の入力を受けると、統合コントローラ34が出力した回生協調制御指令に基づいて、回生協調ブレーキ制御を行う。この回生協調ブレーキ制御は、例えば、ブレーキペダル(図示せず)の踏み込み制動時、ブレーキストロークBSに基づいて求める要求制動力に対し、モータ4が発生する回生制動力だけでは不足する場合、その不足分を、機械的制動力で補足するように行う制御である。ここで、機械的制動力とは、油圧ブレーキやモータブレーキ等を示す。
【0028】
具体的には、第二クラッチ8を連結状態として、後輪12によりモータ4を回す回生により発電するとともに、回生制動力を発生させる。このとき、モータ4が発電する電力は、SOCが減少しているバッテリ28へ供給して、バッテリ28の充電容量を増加させる。ここで、第一クラッチ6を解放状態として、モータ4とエンジン2を切り離すとともに、エンジン2は停止(アイドルストップ)状態とする。
【0029】
そして、上記のように、回生制動力だけでは要求制動力が得られない場合には、予め設定した制動力マップを参照して、回生制動力と機械的制動力との協調による回生協調ブレーキを併用する。制動力マップに関する説明は、後述する。
ここで、機械的制動力による制動は、各車輪(左右前輪1L、1R及び左右後輪12L、12R)に設けたブレーキ装置72を介して行う。なお、図1中では、左前輪1L、右前輪1R、左後輪12L及び右後輪12Rにそれぞれ設けた四つのブレーキ装置を一括して、一つの「ブレーキ装置72」として示している。
【0030】
なお、ブレーキストロークセンサ70は、運転者によるブレーキペダルの操作量(踏量)を検出し、この検出した操作量を含む情報信号を、ブレーキコントローラ14へ出力する。また、ブレーキペダルの操作量を含む情報信号は、CAN通信線64を介して、統合コントローラ34へ出力する。
統合コントローラ34は、ハイブリッド車両HEV全体の消費エネルギ(エンジン消費燃料、モータ消費電力)を管理し、高い効率でハイブリッド車両HEVを走行させるような制御を行う。
【0031】
具体的には、統合コントローラ34は、モータ回転数センサ32、第二クラッチ出力回転数センサ50、第二クラッチトルクセンサ52、マップ選択スイッチ74がそれぞれ出力した情報信号、及びCAN通信線64を介して得られる各種の情報信号の入力を受ける。
なお、マップ選択スイッチ74は、後述する測定者や運転者等の人為的な選択操作や、外部装置が出力した信号により、後述する制動力マップ記憶部76が記憶している複数の制動力マップの中から、一つの制動力マップを選択するスイッチである。
【0032】
また、マップ選択スイッチ74は、人為的な選択操作や、外部装置が出力した信号により、複数の制動力マップのうち一つの制動力マップが選択されると、この選択された制動力マップを示す情報信号を、統合コントローラ34へ出力する。ここで、人為的な選択操作や、外部装置が出力した信号により、複数の制動力マップのうち、後述するシャシダイ走行マップを選択するモードを、「整備モード」とする。
【0033】
そして、上述した各情報信号の入力を受けた統合コントローラ34は、エンジンコントローラ18へ出力する制御指令により、エンジン2の動作制御を行い、モータコントローラ24へ出力する制御指令により、モータ4の動作制御を行う。これに加え、上述した各情報信号の入力を受けた統合コントローラ34は、第一クラッチコントローラ36へ出力する制御指令により、第一クラッチ6の接続または解放制御を行う。さらに、上述した各情報信号の入力を受けた統合コントローラ34は、ATコントローラ44へ出力する制御指令により、第二クラッチ8の接続または解放制御を行う。また、上述した各情報信号の入力を受けた統合コントローラ34は、ブレーキコントローラ14へ出力する制御指令により、各ブレーキ装置72の動作制御を行う。
【0034】
次に、図1を参照しつつ、図2から図5を用いて、回生制動力制御装置の詳細な構成について説明する。
図2は、回生制動力制御装置の構成を示すブロック図である。
図2中に示すように、回生制動力制御装置は、シャシダイ走行判定手段78と、要求制動力検出手段80と、制動力マップ記憶部76と、マップ選択手段82と、回生制動力制御手段84とを備えている。なお、シャシダイ走行判定手段78、制動力マップ記憶部76、マップ選択手段82及び回生制動力制御手段84は、統合コントローラ34が備えている。
【0035】
シャシダイ走行判定手段78は、二輪駆動状態のハイブリッド車両HEVが、シャシダイナモ装置上で、後輪12の回転のみで走行しているか否かを判定する。ここで、二輪駆動状態とは、第一クラッチ6を解放するとともに第二クラッチ8を接続し、さらに、前輪1及び後輪12のうち、後輪12のみを駆動輪とした状態である。すなわち、二輪駆動状態では、前輪1は従動輪を形成する。
【0036】
また、二輪駆動状態のハイブリッド車両HEVが、シャシダイナモ装置CD上で、後輪12の回転のみで走行している状態とは、図3中に示すように、シャシダイナモ装置CDが備えるローラRにより、駆動輪とした後輪12を回転可能に支持する状態である。この状態では、前輪1を、ローラRを取り付けた台の上面CDUに載置するため、前輪1は回転しない。なお、図3は、シャシダイナモ装置CD上にハイブリッド車両HEVを配置した状態を示す図である。
【0037】
これは、例えば、工場で完成したハイブリッド車両HEVに対し、二輪駆動状態における回生制動力や燃費等の測定を行う状態である。なお、本実施形態では、工場で完成したハイブリッド車両HEVに対し、二輪駆動状態における燃費測定を行う場合について説明する。
なお、シャシダイナモ装置CDには、図外の診断機を接続している。この診断機は、マップ選択スイッチ74へ、複数の制動力マップから、シャシダイ走行マップを選択する信号を出力可能な構成である。
【0038】
以下、シャシダイ走行判定手段78の具体的な構成について説明する。
シャシダイ走行判定手段78は、マップ選択操作検出手段86と、要求駆動力検出手段88と、前輪回転状態検出手段90と、シャシダイ走行判定部92とを備えている。
マップ選択操作検出手段86は、マップ選択スイッチ74が出力した情報信号に基づき、この情報信号が含む、複数の制動力マップの中から選択された一つの制動力マップを参照する。そして、この選択された一つの制動力マップを含む情報信号を、シャシダイ走行判定部92へ出力する。
【0039】
要求駆動力検出手段88は、アクセル開度センサ66が出力する情報信号に基づき、この情報信号が含む、運転者が要求する駆動力を検出する。そして、この検出した駆動力を含む情報信号を、シャシダイ走行判定部92へ出力する。
前輪回転状態検出手段90は、CAN通信線64を介して、ブレーキコントローラ14から、前輪1の回転状態を含む情報信号の入力を受ける。そして、この情報信号に基づき、前輪1の回転状態を検出して、前輪1が回転しているか否かを判定する。前輪1が回転しているか否かを判定した前輪回転状態検出手段90は、この判定結果を含む情報信号を、シャシダイ走行判定部92へ出力する。
【0040】
シャシダイ走行判定部92は、二輪駆動状態のハイブリッド車両HEVが、シャシダイナモ装置CD上で、後輪12の回転のみで走行しているか否かを判定する。この判定は、マップ選択操作検出手段86、要求駆動力検出手段88及び前輪回転状態検出手段90が出力する情報信号に基づいて行う。そして、シャシダイ走行判定部92は、二輪駆動状態のハイブリッド車両HEVが、シャシダイナモ装置CD上で、後輪12の回転のみで走行しているか否かの判定結果を含む情報信号を、マップ選択手段82に出力する。
【0041】
具体的には、以下に示す二つ条件のうち、少なくとも一方を満足する場合に、二輪駆動状態のハイブリッド車両HEVが、シャシダイナモ装置CD上で、後輪12の回転のみで走行していると判定する。
第一の条件は、マップ選択操作検出手段86が、シャシダイ走行マップの選択操作を検出する状態で満足する。これは、マップ選択操作検出手段86から入力された情報信号が、複数の制動力マップの中から選択された一つの制動力マップが、シャシダイ走行マップであると判定した判定結果を含む状態である。
【0042】
第二の条件は、要求駆動力検出手段88が検出した駆動力が、所定の駆動力以上であり、且つ前輪回転状態検出手段90が、前輪1の停止を検出する状態で満足する。これは、要求駆動力検出手段88から入力された情報信号が含む、運転者の要求した駆動力が、予め設定した所定の駆動力以上となる状態である。これに加え、前輪回転状態検出手段90から入力された情報信号が含む、前輪1の回転状態が、前輪1が回転していない状態、すなわち、前輪1の回転数及び前輪1の回転速度が「0」である状態である。
【0043】
なお、第二の条件は、例えば、測定者や運転者等の人為的な選択操作が行われていない場合や、外部装置が信号を出力していない場合等、マップ選択スイッチ74が情報信号を出力しておらず、第一の条件を満足する要素が無い場合に、必須の条件となる。ここで、第一の条件を満足する要素が無い場合には、マップ選択操作検出手段86からシャシダイ走行判定部92への情報信号の出力が無く、シャシダイ走行判定部92は、マップ選択操作検出手段86から出力される情報信号を検出できない状態となる。
【0044】
なお、本実施形態では、所定の駆動力を、予め、アクセルペダルの操作量が「0」を超える状態での駆動力とする。すなわち、操作量の大小に関わらず、運転者によりアクセルペダルが操作されている状態であれば、運転者の要求した駆動力が所定の駆動力以上である状態とする。なお、所定の駆動力は、例えば、アイドリング回転数等に応じて変化させてもよい。
【0045】
以上により、本実施形態では、第二の条件を、運転者によりアクセルペダルが操作されている(アクセルON)状態で、前輪1が停止している状態とする。
また、以上により、シャシダイ走行判定手段78は、二輪駆動状態のハイブリッド車両HEVが、シャシダイナモ装置CD上で、後輪12の回転のみで走行しているか否かを判定する。
要求制動力検出手段80は、ブレーキストロークセンサ70が出力する情報信号に基づき、この情報信号が含む、運転者が要求する制動力(以下、「要求制動力)と記載する)を検出する。そして、この検出した制動力を含む情報信号を、回生制動力制御手段84へ出力する。
【0046】
制動力マップ記憶部76は、複数の制動力マップを有する。
制動力マップは、要求制動力と、要求制動力に応じて前輪1が発生する前輪制動力及び後輪12が発生する後輪制動力と、要求制動力に応じてモータ4が発生する回生制動力の、後輪制動力に対する割合との関係を示すマップである。
複数の制動力マップは、通常マップと、シャシダイ走行マップとを含む。
通常マップは、要求制動力に応じてモータ4が発生する回生制動力として、前輪1及び後輪12を回転可能とした四輪回転状態において、要求制動力に応じてモータ4が発生する回生制動力を適用したマップである。
【0047】
なお、四輪回転状態とは、シャシダイナモ装置CD上ではなく、通常の路面上において、前輪1及び後輪12を回転可能として走行する状態である。また、四輪回転状態には、前輪1及び後輪12を駆動輪とした状態である四輪駆動状態を含む。すなわち、四輪回転状態においては、ハイブリッド車両HEVの制動時において、前輪1及び後輪12に制動力が発生する。
一方、シャシダイ走行マップは、通常マップよりも、要求制動力に応じてモータ4が発生する回生制動力の減少度合いが小さいマップである。
【0048】
以下、図1から図3を参照しつつ、図4及び図5を用いて、通常マップ及びシャシダイ走行マップの具体的な構成について説明する。
まず、図4を用いて、通常マップの具体的な構成について説明する。
図4は、通常マップの具体的な構成を示す図である。なお、図4中では、横軸を、要求制動力(図中では、「ブレーキ踏力」と示す)とする。また、図4中では、縦軸を、前輪制動力(図中では、「Front」と示す)と後輪制動力(図中では、「Rear」と示す)との総制動力(図中では、「総制動力」と示す)とする。さらに、図4中では、要求制動力に応じてモータ4が発生する回生制動力を、「回生制動力」と示す。
【0049】
図4中に示すように、通常マップでは、運転者によりブレーキペダルの操作が開始されると、まず、要求制動力に応じてモータ4が発生する回生制動力により、後輪12のみに制動力を発生させる。
そして、運転者によるブレーキペダルの操作量が増加して要求制動力が増加し、モータ4が発生する回生制動力の上限値に達すると、回生制動力を上限値(図中に示す「上限値」)に保持した状態で、前輪1に対する機械的制動力を発生させる。
【0050】
前輪1に対する機械的制動力を発生させた後は、運転者によるブレーキペダルの操作量に応じて前輪1に対する機械的制動力を増加させ、回生制動力及び機械的制動力による総制動力を増加させる。
回生制動力を上限値に保持した状態で、前輪1に対する機械的制動力を増加させ、総制動力のうち前輪制動力に配分する配分比と、総制動力のうち後輪制動力に配分する配分比が、所定の配分比となると、後輪12に対する機械的制動力を発生させる。
【0051】
後輪12に対する機械的制動力を発生させた後は、後輪12に対する機械的制動力を、運転者によるブレーキペダルの操作量に応じて増加させる。また、後輪12に対する機械的制動力を発生させた後は、後輪12に対する機械的制動力の増加に応じて、回生制動力を減少させる。
したがって、通常マップでは、運転者によるブレーキペダルの操作量が増加すると、モータ4が発生する回生制動力は、増加した後に上限値を維持し、後輪12に対する機械的制動力を発生させると減少する。これにより、通常マップでは、運転者によるブレーキペダルの操作量が増加すると、回生制動時に発生する電力は、上限値へ向けて増加した後に上限値を維持し、後輪12に対する機械的制動力を発生させると減少する。
【0052】
次に、図5を用いて、シャシダイ走行マップの具体的な構成について説明する。
図5は、シャシダイ走行マップの具体的な構成を示す図である。
図5は、シャシダイ走行マップの具体的な構成を示す図である。なお、図5中では、横軸及び縦軸、前輪制動力と後輪制動力との総制動力、要求制動力に応じてモータ4が発生する回生制動力を、図4中と同様に示す。
図5中に示すように、シャシダイ走行マップの構成は、運転者によりブレーキペダルの操作が開始された状態から、回生制動力を上限値に保持した状態で、後輪12に対する機械的制動力を発生させる状態までは、通常マップと同様の構成とする。
【0053】
そして、シャシダイ走行マップでは、通常マップと異なり、回生制動力を上限値に保持した状態で、後輪12に対する機械的制動力を発生させた後も、要求制動力が所定の制動力に達するまで、回生制動力を上限値に保持する。
後輪12に対する機械的制動力を発生させた後は、後輪12に対する機械的制動力を、運転者によるブレーキペダルの操作量に応じて増加させる。
運転者によるブレーキペダルの操作量が増加して、要求制動力が所定の制動力に達すると、後輪12に対する機械的制動力の増加に応じて、回生制動力を減少させる。
【0054】
したがって、シャシダイ走行マップでは、運転者によるブレーキペダルの操作量が増加すると、モータ4が発生する回生制動力は、上限値へ向けて増加した後に、要求制動力が所定の制動力に達するまで上限値を維持する。そして、要求制動力が所定の制動力に達すると、モータ4が発生する回生制動力は、後輪12に対する機械的制動力の増加に応じて減少する。
すなわち、シャシダイ走行マップは、通常マップよりも、要求制動力に応じてモータ4が発生する回生制動力の減少度合いが小さいマップとする。
【0055】
また、シャシダイ走行マップに示す、モータ4が発生する回生制動力は、通常マップに示す、四輪回転状態において要求制動力に応じてモータ4が発生する回生制動力に対し、予め算出した踏力係数を乗じた値とする。この乗算は、例えば、シャシダイ走行判定部92において、第二の条件が満足された後に行うことにより、シャシダイ走行マップに示す、モータ4が発生する回生制動力を、車速等の条件に応じて補正する。
踏力係数は、要求制動力に応じて前輪1及び後輪12が発生する総制動力のうち、前輪制動力に配分する配分比をBfとし、総制動力のうち後輪制動力に配分する配分比をBrとした場合に、以下の計算式(1)で算出する。
踏力係数=(Bf+Br)/Br…(1)
【0056】
なお、前輪制動力に配分する配分比Bf及び後輪制動力に配分する配分比Brは、それぞれ、車速(後輪12の回転速度)等、走行状態を反映する要素を用いて設定してもよい。また、前輪制動力に配分する配分比Bf及び後輪制動力に配分する配分比Brは、予め、ハイブリッド車両HEVに固有の値として設定してもよい。本実施形態では、一例として、配分比Bf及び配分比Brを、予め、ハイブリッド車両HEVに固有の値として設定する場合、配分比Bf及び配分比Brは、例えば、Bf:Br=7:3とする。
【0057】
ここで、踏力係数を、上述した式(1)により算出する理由について説明する。
通常、四輪回転状態では、要求制動力に応じて前輪1及び後輪12が発生する総制動力のうち、前輪制動力に配分する配分比Bfを7とし、後輪制動力に配分する配分比Brを3とする場合が多い。この配分比は、制動力の理想的な配分比に近い値である。
一方、二輪駆動状態のハイブリッド車両HEVが、シャシダイナモ装置CD上で、後輪12の回転のみで走行する場合、要求制動力に応じて発生する制動力は、後輪12のみで発生することとなる。このため、前輪制動力に配分する配分比Bfを、後輪制動力に配分する配分比Brとともに、後輪12で発生させることとなる。
【0058】
したがって、二輪駆動状態のハイブリッド車両HEVが、シャシダイナモ装置CD上で、後輪12の回転のみで走行する場合、後輪12が発生させる制動力は、四輪回転状態と比較して、約3.3倍となる。これは、上記の式(1)に、前輪制動力に配分する配分比Bf及び後輪制動力に配分する配分比Brを代入して算出する。
このため、シャシダイナモ装置CD上で後輪12の回転のみで走行する二輪駆動状態のハイブリッド車両HEVが、制動(減速)を行うと、後輪12は、四輪回転状態と比較して約3倍の制動力を発生させることとなる。これは、シャシダイナモ装置CD上で走行するハイブリッド車両HEVが、例えば、減速方向の加速度が約0.2Gで減速する場合、後輪12は、減速方向の加速度が約0.6Gとなる制動力を発生させる必要があるためである。
【0059】
これに対し、踏力係数を、上述した式(1)により算出する踏力係数を用いて、シャシダイ走行マップに示すモータ4が発生する回生制動力の値を設定すると、要求制動力に対して回生制動力の上限値を維持する領域を、延長させることが可能となる。これにより、シャシダイナモ装置CD上で後輪12の回転のみで走行するハイブリッド車両HEVの制動時に、四輪回転状態と比較して約3倍のブレーキペダルの操作量が発生しても、回生制動力の減少を抑制することが可能となる。
【0060】
なお、上述した踏力係数による補正は、ハイブリッド車両として、モータにより駆動する駆動輪を前輪としたハイブリッド車両(FF−HEV車両)では必要としない。これは、二輪駆動状態のFF−HEV車両が、シャシダイナモ装置CD上で、前輪1の回転のみで走行する場合、前輪1が発生させる制動力は、四輪回転状態と比較して、約1.4倍となる。これは、上記の式(1)に、前輪制動力に配分する配分比Bf及び後輪制動力に配分する配分比Brを代入して算出する。
【0061】
このため、シャシダイナモ装置CD上で後輪12の回転のみで走行する二輪駆動状態のFF−HEV車両が、減速を行うと、前輪1は、四輪回転状態と比較して、変化の少ない制動力を発生させることとなる。これは、シャシダイナモ装置CD上で走行するFF−HEV車両が、例えば、減速方向の加速度が約0.2Gで減速する場合、前輪1が発生させる制動力は、減速方向の加速度が約0.28G程度の制動力となるためである。
したがって、FF−HEV車両は、FR−HEV車両と比較して、シャシダイナモ装置CD上で後輪12の回転のみで走行する状態における、減速時に発生する制動力の変化が小さいため、踏力係数による補正を必要としない。
【0062】
以下、図2及び図3を用いた説明に復帰する。
マップ選択手段82は、シャシダイ走行判定手段78の判定結果に応じて、複数の制動力マップのうち一つを選択する。そして、この選択した一つの制動力マップを選択する制御指令を含む情報信号を、回生制動力制御手段84へ出力する。
具体的には、シャシダイ走行判定手段78が出力した情報信号に基づき、制動力マップ記憶部76が有する複数の制動力マップから、通常マップまたはシャシダイ走行マップを選択する。なお、シャシダイ走行マップの選択は、シャシダイ走行判定手段78が出力した情報信号が、ハイブリッド車両HEVが、シャシダイナモ装置CD上で、後輪12の回転のみで走行していると判定する判定結果を含む場合に限定して行う。そして、制動力マップ記憶部76が有する複数の制動力マップから、選択した一つの制動力マップを選択する制御指令を生成し、この生成した制御指令を含む情報信号を、回生制動力制御手段84へ出力する。
【0063】
回生制動力制御手段84は、要求制動力検出手段80が検出する制動力を、マップ選択手段82が選択した制動力マップに適合させて、モータ4が発生する回生制動力を制御する。
具体的には、マップ選択手段82が出力した情報信号に基づき、制動力マップ記憶部76が有する複数の制動力マップから、通常マップまたはシャシダイ走行マップを選択し、この選択したマップを制動力マップ記憶部76から取得する。そして、この取得したマップと、要求制動力検出手段80が出力した情報信号に基づき、取得したマップに要求制動力を適用して、要求制動力に応じてモータ4が発生する回生制動力を演算し、この演算した回生制動力に応じたモータトルク指令値を演算する。
モータトルク指令値を演算した回生制動力制御手段84は、演算したモータトルク指令値を含む情報信号を、モータコントローラ24へ出力する。
【0064】
(動作)
次に、図1から図5を参照しつつ、図6を用いて、回生制動力制御装置を備えたハイブリッド車両HEVの動作について説明する。
図6は、回生制動力制御装置の動作(処理)を示すフローチャートである。
図6に示すフローチャートは、二輪駆動状態のハイブリッド車両HEVを、シャシダイナモ装置CD上に配置した状態からスタート(図中に示す「START」)する(図3参照)。
【0065】
二輪駆動状態のハイブリッド車両HEVを、シャシダイナモ装置CD上に配置した状態において、回生制動力制御装置の処理は、ステップS10へ移行する。
ステップS10では、シャシダイ走行判定部92が、マップ選択操作検出手段86から出力される情報信号を検出したか否か(図中に示す「マップ選択操作検出手段からの情報信号を検出?」)を判定する(図2参照)。
【0066】
ステップS10において、シャシダイ走行判定部92が、マップ選択操作検出手段86から出力される情報信号を検出したと判定(図中に示す「Yes」)した場合、回生制動力制御装置の処理は、ステップS20へ移行する。
一方、ステップS10において、シャシダイ走行判定部92が、マップ選択操作検出手段86から出力される情報信号を検出していないと判定(図中に示す「No」)した場合、回生制動力制御装置の処理は、ステップS30へ移行する。
【0067】
以下、ステップS20以降の処理について説明する。ステップS30以降の処理については、後述する。
ステップS20では、シャシダイ走行判定部92が、マップ選択スイッチ74が出力した情報信号に基づき、複数の制動力マップから選択した一つの制動力マップが、シャシダイ走行マップであるか否かを判定する。すなわち、人為的な選択操作や、外部装置が出力した信号により、複数の制動力マップのうちシャシダイ走行マップを選択したか否か(図中に示す「整備モードに設定されているか?」)を判定する(図1及び2参照)。
【0068】
ステップS20において、複数の制動力マップのうちシャシダイ走行マップを選択したと判定(図中に示す「Yes」)した場合、回生制動力制御装置の処理は、ステップS22へ移行する。
一方、ステップS20において、複数の制動力マップのうちシャシダイ走行マップを選択していないと判定(図中に示す「No」)した場合、回生制動力制御装置の処理は、ステップS24へ移行する。
【0069】
ステップS22では、マップ選択手段82が、複数の制動力マップのうちシャシダイ走行マップを選択する制御指令を含む情報信号を、回生制動力制御手段84へ出力(図中に示す「シャシダイ走行マップを選択」)する(図2及び図5参照)。そして、回生制動力制御装置の処理は、ステップS26へ移行する。
一方、ステップS24では、マップ選択手段82が、複数の制動力マップのうち通常マップを選択する制御指令を含む情報信号を、回生制動力制御手段84へ出力(図中に示す「通常マップを選択」)する(図2及び図4参照)。そして、回生制動力制御装置の処理は、ステップS28へ移行する。
【0070】
ステップS26では、シャシダイ走行判定部92が、要求駆動力検出手段88が出力する情報信号に基づき、運転者によりアクセルペダルが操作されているか否かを判定する。これに加え、シャシダイ走行判定部92が、前輪回転状態検出手段90が出力する情報信号に基づき、前輪1が停止しているか否かを判定する。すなわち、運転者によりアクセルペダルが操作されているとともに、前輪1が停止しているか否か(図中に示す「アクセルペダル操作時に、前輪が停止しているか?」)を判定する(図1及び2参照)。これは、二輪駆動状態のハイブリッド車両HEVが、シャシダイナモ装置CD上で、後輪12の回転のみで走行しているか否かの判定として用いる。
【0071】
ステップS26において、運転者によりアクセルペダルが操作されているとともに、前輪1が停止していると判定(図中に示す「Yes」)した場合、回生制動力制御装置の処理は、ステップS40へ移行する。
一方、ステップS26において、運転者によりアクセルペダルが操作されていない、または、前輪1が停止していないと判定(図中に示す「No」)した場合、回生制動力制御装置の処理は、ステップS42へ移行する。
【0072】
ステップS40では、警告ランプを点灯(図中に示す「警告ランプ点灯」)させて、二輪駆動状態のハイブリッド車両HEVが、シャシダイナモ装置CD上で、後輪12の回転のみで走行している状態を示す(図3参照)。そして、回生制動力制御装置の処理は、ステップS44へ移行する。なお、上記の警告ランプは、シャシダイナモ装置CDに接続した診断機に設けてもよく、また、ハイブリッド車両HEVの運転席付近等に配置してもよい。
【0073】
一方、ステップS42では、警告ランプを点滅(図中に示す「警告ランプ点滅」)させて、二輪駆動状態のハイブリッド車両HEVが、シャシダイナモ装置CD上で、前輪1及び後輪12の回転のみで走行している状態を示す。そして、回生制動力制御装置の処理は、ステップS46へ移行する。なお、この状態では、例えば、シャシダイナモ装置CD上のハイブリッド車両HEVが、正常な動作を行っていない可能性がある。
【0074】
ステップS44では、要求制動力に応じて前輪1及び後輪12が発生する総制動力のうち、前輪制動力に配分する配分比Bfと、後輪制動力に配分する配分比Brから、踏力係数を算出(図中に示す「配分比Bf・配分比Brから踏力係数を算出」)する。そして、回生制動力制御装置の処理は、ステップS48へ移行する。
ステップS48では、ステップS44で算出した踏力係数を、通常マップに示す、四輪回転状態において要求制動力に応じてモータ4が発生する回生制動力に対して乗算(図中に示す「踏力係数を乗算」)する。これにより、シャシダイ走行マップに示す、モータ4が発生する回生制動力を補正する。シャシダイ走行マップに示す、モータ4が発生する回生制動力を補正すると、回生制動力制御装置の処理は、ステップS50へ移行する。
【0075】
なお、上述したステップS44及びステップS48の処理は、ステップS22の処理とステップS26の処理との間に行ってもよい。すなわち、踏力係数の算出及び乗算は、シャシダイ走行マップを選択した処理と、二輪駆動状態のハイブリッド車両HEVが、シャシダイナモ装置CD上で、後輪12の回転のみで走行しているか否かを判定する処理との間に行ってもよい。
【0076】
ステップS50では、要求制動力検出手段80が検出する制動力を、シャシダイ走行マップに適合させて、モータ4が発生する回生制動力を演算(図中に示す「ブレーキ踏力とシャシダイ走行マップから、回生制動力を演算する」)する(図2及図5参照)。そして、この回生制動力に応じたモータトルク指令値を演算し、演算したモータトルク指令値を含む情報信号を、モータコントローラ24へ出力する。演算したモータトルク指令値を含む情報信号を、モータコントローラ24へ出力すると、回生制動力制御装置の処理は、ステップS10の処理へ復帰する(図中に示す「RETURN」)。
【0077】
一方、ステップS46では、回生制動を行わないモータトルク指令値を演算し、演算したモータトルク指令値を含む情報信号を、モータコントローラ24へ出力(図中に示す「回生制動力を0にする」)する(図2参照)。そして、回生制動力制御装置の処理は、ステップS10の処理へ復帰する(図中に示す「RETURN」)。
また、ステップS28では、要求制動力検出手段80が検出する制動力を、通常マップに適合させて、モータ4が発生する回生制動力を演算(図中に示す「ブレーキ踏力と通常マップから、回生制動力を演算する」)する(図2及び図4参照)。そして、この回生制動力に応じたモータトルク指令値を演算し、演算したモータトルク指令値を含む情報信号を、モータコントローラ24へ出力する。演算したモータトルク指令値を含む情報信号を、モータコントローラ24へ出力すると、回生制動力制御装置の処理は、ステップS10の処理へ復帰する(図中に示す「RETURN」)。
【0078】
次に、ステップS30以降の処理について説明する。
ステップS30では、ステップS26の処理と同様、運転者によりアクセルペダルが操作されているとともに、前輪1が停止しているか否か(図中に示す「アクセルペダル操作時に、前輪が停止しているか?」)を判定する(図1及び2参照)。
ステップS30において、運転者によりアクセルペダルが操作されているとともに、前輪1が停止していると判定(図中に示す「Yes」)した場合、回生制動力制御装置の処理は、ステップS60へ移行する。
【0079】
一方、ステップS30において、運転者によりアクセルペダルが操作されていない、または、前輪1が停止していないと判定(図中に示す「No」)した場合、回生制動力制御装置の処理は、ステップS62へ移行する。
ステップS60では、ステップS22の処理と同様の処理を行い、複数の制動力マップのうちシャシダイ走行マップを選択する制御指令を含む情報信号を、回生制動力制御手段84へ出力(図中に示す「シャシダイ走行マップを選択」)する(図2及び図5参照)。そして、回生制動力制御装置の処理は、ステップS64へ移行する。
【0080】
一方、ステップS62では、ステップS42の処理と同様、警告ランプを点滅(図中に示す「警告ランプ点滅」)させる。そして、回生制動力制御装置の処理は、ステップS66へ移行する。
ステップS64では、ステップS40の処理と同様、警告ランプを点灯(図中に示す「警告ランプ点灯」)させる。そして、回生制動力制御装置の処理は、ステップS68へ移行する。
【0081】
ステップS68では、ステップS44の処理と同様、踏力係数を算出(図中に示す「配分比Bf・配分比Brから踏力係数を算出」)する。そして、回生制動力制御装置の処理は、ステップS70へ移行する。
ステップS70では、ステップS48の処理と同様、ステップS68で算出した踏力係数を、通常マップに示す、四輪回転状態において要求制動力に応じてモータ4が発生する回生制動力に対して乗算(図中に示す「踏力係数を乗算」)する。これにより、シャシダイ走行マップに示す、モータ4が発生する回生制動力を補正する。シャシダイ走行マップに示す、モータ4が発生する回生制動力を補正すると、回生制動力制御装置の処理は、ステップS72へ移行する。
【0082】
ステップS72では、ステップS50の処理と同様の処理を行い、モータ4が発生する回生制動力を演算(図中に示す「ブレーキ踏力とシャシダイ走行マップから、回生制動力を演算する」)する(図2及図5参照)。そして、この回生制動力に応じたモータトルク指令値を演算し、演算したモータトルク指令値を含む情報信号を、モータコントローラ24へ出力すると、回生制動力制御装置の処理は、ステップS10の処理へ復帰する(図中に示す「RETURN」)。
【0083】
一方、ステップS66では、ステップS46の処理と同様、回生制動を行わないモータトルク指令値を演算し、演算したモータトルク指令値を含む情報信号を、モータコントローラ24へ出力(図中に示す「回生制動力を0にする」)する(図2参照)。そして、回生制動力制御装置の処理は、ステップS10の処理へ復帰する(図中に示す「RETURN」)。
【0084】
なお、上述したように、本実施形態の回生制動力制御装置の動作で実施するハイブリッド車両の回生制動力制御方法(回生制動力制御方法)は、運転者が要求する制動力に応じて、モータが発生する回生制動力を制御する方法である。
具体的には、前輪及び後輪を駆動輪とした四輪回転状態において運転者が要求する制動力に応じてモータが発生する回生制動力よりも、運転者が要求する制動力に応じてモータが発生する回生制動力の減少度合いを減少させる。これは、後輪のみを駆動輪とした二輪駆動状態のハイブリッド車両が、シャシダイナモ装置上で後輪の回転のみで走行する際に行う。
【0085】
(第一実施形態の効果)
(1)本実施形態の回生制動力制御装置では、シャシダイ走行判定手段が、二輪駆動状態のハイブリッド車両がシャシダイナモ装置上で後輪の回転のみで走行していると判定すると、マップ選択手段が、複数の制動力マップからシャシダイ走行マップを選択する。ここで、シャシダイ走行マップは、運転者が要求する制動力に応じてモータが発生する回生制動力の減少度合いが、前輪及び後輪を回転可能とした四輪回転状態で用いる通常マップよりも小さいマップである。
【0086】
このため、制動時に、前輪及び後輪が回転している状態における回生制動時よりもブレーキの操作量を増加させても、後輪が発生する制動力のうち、回生制動による制動力の割合が減少することを抑制することが可能となる。
その結果、FR−HEV車両に対する二輪駆動状態の燃費測定時に、回生制動により発電する電力の回収量が減少することを抑制可能となり、バッテリへ供給する電力の減少を抑制して、燃費の低下を抑制することが可能となる。
【0087】
(2)本実施形態の回生制動力制御装置では、シャシダイ走行マップの、要求制動力に応じてモータが発生する回生制動力を、四輪回転状態における、要求制動力に応じてモータが発生する回生制動力に対し、予め算出した踏力係数を乗じた値とする。ここで、踏力係数は、四輪回転状態における要求制動力に応じて前輪及び後輪が発生する総制動力のうち、前輪制動力に配分する配分比をBfとし、後輪制動力に配分する配分比をBrとして算出する。また、踏力係数は、(Bf+Br)/Brの計算式により算出する。
【0088】
このため、シャシダイナモ装置上で行う、FR−HEV車両に対する二輪駆動状態の燃費測定を、実際の路面上を走行するFR−HEV車両に対する燃費測定や、四輪駆動状態のFR−HEV車両に対する燃費測定と同様に行うことが可能となる。
その結果、FR−HEV車両に対する二輪駆動状態の燃費測定に対し、測定精度を向上させることが可能となる。
【0089】
(3)本実施形態の回生制動力制御装置では、マップ選択操作検出手段がシャシダイ走行マップを選択する選択操作を検出すると、シャシダイ走行判定手段が、二輪駆動状態のハイブリッド車両が、シャシダイナモ装置上で後輪の回転のみで走行していると判定する。
このため、ハイブリッド車両の動作状態を検出することなく、二輪駆動状態のハイブリッド車両がシャシダイナモ装置上で後輪の回転のみで走行していると判定することが可能となる。
その結果、シャシダイ走行判定手段の構成を簡略化することが可能となり、回生制動力制御装置の構成を簡略化することが可能となるため、部品コスト及び製造コストを低減することが可能となる。
【0090】
(4)本実施形態の回生制動力制御装置では、運転者が要求する駆動力が所定の駆動力以上であり、前輪が停止している場合に、シャシダイ走行判定手段が、二輪駆動状態のハイブリッド車両が、シャシダイナモ装置上で後輪の回転のみで走行していると判定する。
このため、測定者や運転者等の人為的な選択操作や、外部装置が出力する信号に因らず、ハイブリッド車両の動作状態に応じて、二輪駆動状態のハイブリッド車両がシャシダイナモ装置上で後輪の回転のみで走行していると判定することが可能となる。
その結果、選択操作に人為的なミスが生じた場合や、外部装置に故障が生じた場合であっても、二輪駆動状態のハイブリッド車両が、シャシダイナモ装置上で後輪の回転のみで走行していると判定することが可能となる。
【0091】
(5)本実施形態の回生制動力制御方法では、後輪のみを駆動輪とした二輪駆動状態のハイブリッド車両が、シャシダイナモ装置上で後輪の回転のみで走行する際に、運転者が要求する制動力に応じて、モータが発生する回生制動力を制御する。この制御は、前輪及び後輪を駆動輪とした四輪回転状態において運転者が要求する制動力に応じてモータが発生する回生制動力よりも、運転者が要求する制動力に応じてモータが発生する回生制動力の減少度合いを減少させる制御とする。
【0092】
このため、制動時に、前輪及び後輪が回転している状態における回生制動時よりもブレーキの操作量を増加させても、後輪が発生する制動力のうち、回生制動による制動力の割合が減少することを抑制することが可能となる。
その結果、FR−HEV車両に対する二輪駆動状態の燃費測定時に、回生制動により発電する電力の回収量が減少することを抑制可能となり、バッテリへ供給する電力の減少を抑制して、燃費の低下を抑制することが可能となる。
【0093】
(応用例)
(1)本実施形態の回生制動力制御装置では、シャシダイ走行マップに示す、モータ4が発生する回生制動力を、通常マップに示す、四輪回転状態において要求制動力に応じてモータ4が発生する回生制動力に対し、踏力係数を乗じた値とした。しかしながら、シャシダイ走行マップに示す、モータ4が発生する回生制動力は、これに限定するものではない。すなわち、シャシダイ走行マップに示す、モータ4が発生する回生制動力は、通常マップよりも、要求制動力に応じてモータ4が発生する回生制動力の減少度合いが小さければよい。
【0094】
(2)本実施形態の回生制動力制御装置では、シャシダイ走行判定手段78が行う判定を、マップ選択操作検出手段86、要求駆動力検出手段88及び前輪回転状態検出手段90が出力する情報信号に基づいて行ったが、これに限定するものではない。
すなわち、マップ選択操作検出手段86が出力する情報信号のみに基づいて、シャシダイ走行判定手段78が行う判定を行ってもよい。この場合、シャシダイ走行判定手段78の構成を、要求駆動力検出手段88及び前輪回転状態検出手段90を備えていない構成としてもよい。
また、要求駆動力検出手段88及び前輪回転状態検出手段90が出力する情報信号のみに基づいて、シャシダイ走行判定手段78が行う判定を行ってもよい。この場合、シャシダイ走行判定手段78の構成を、マップ選択操作検出手段86を備えていない構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】第一実施形態の回生制動力制御装置を備えるハイブリッド車両HEVの概略構成図であり、ハイブリッド車両HEVの駆動系構成を説明する図である。
【図2】回生制動力制御装置の構成を示すブロック図である。
【図3】シャシダイナモ装置CD上にハイブリッド車両HEVを配置した状態を示す図である。
【図4】通常マップの具体的な構成を示す図である。
【図5】シャシダイ走行マップの具体的な構成を示す図である。
【図6】回生制動力制御装置の動作(処理)を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0096】
1 前輪
2 エンジン
4 モータ
6 第一クラッチ
8 第二クラッチ
10 トランスミッション
12 後輪
14 ブレーキコントローラ
16 車輪速センサ
18 エンジンコントローラ
24 モータコントローラ
26 インバータ
28 バッテリ
34 統合コントローラ
36 第一クラッチコントローラ
44 ATコントローラ
64 CAN通信線
66 アクセル開度センサ
68 車速センサ
70 ブレーキストロークセンサ
72 ブレーキ装置
74 マップ選択スイッチ
76 制動力マップ記憶部
78 シャシダイ走行判定手段
80 要求制動力検出手段
82 マップ選択手段
84 回生制動力制御手段
86 マップ選択操作検出手段
88 要求駆動力検出手段
90 前輪回転状態検出手段
92 シャシダイ走行判定部
HEV ハイブリッド車両
CD シャシダイナモ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪と、エンジンとモータとの間に介装する第一クラッチと、前記モータと後輪との間に介装する第二クラッチと、を有するハイブリッド車両が備え、
前記モータが発生する回生制動力を制御するハイブリッド車両の回生制動力制御装置であって、
前記第一クラッチを解放するとともに前記第二クラッチを接続し、且つ前記前輪及び前記後輪のうち後輪のみを駆動輪とした二輪駆動状態の前記ハイブリッド車両が、シャシダイナモ装置上で前記後輪の回転のみで走行しているか否かを判定するシャシダイ走行判定手段と、
運転者が要求する制動力を検出する要求制動力検出手段と、
運転者が要求する制動力と、当該制動力に応じて前記前輪が発生する前輪制動力及び前記後輪が発生する後輪制動力と、前記運転者が要求する制動力に応じて前記モータが発生する回生制動力の前記後輪制動力に対する割合と、の関係を示す複数の制動力マップを有する制動力マップ記憶部と、
前記シャシダイ走行判定手段の判定結果に応じて、前記複数の制動力マップのうち一つを選択するマップ選択手段と、
前記要求制動力検出手段が検出する制動力を前記マップ選択手段が選択した制動力マップに適合させて、前記回生制動力を制御する回生制動力制御手段と、を備え、
前記複数の制動力マップは、前記運転者が要求する制動力に応じて前記モータが発生する回生制動力として、前記前輪及び前記後輪を回転可能とした四輪回転状態において運転者が要求する制動力に応じて前記モータが発生する回生制動力を適用した通常マップと、当該通常マップよりも運転者が要求する制動力に応じて前記モータが発生する回生制動力の減少度合いが小さいシャシダイ走行マップと、を含み、
前記マップ選択手段は、前記シャシダイ走行判定手段が、二輪駆動状態の前記ハイブリッド車両がシャシダイナモ装置上で前記後輪の回転のみで走行していると判定すると、前記複数の制動力マップから前記シャシダイ走行マップを選択することを特徴とするハイブリッド車両の回生制動力制御装置。
【請求項2】
前記シャシダイ走行マップの前記運転者が要求する制動力に応じて前記モータが発生する回生制動力を、前記四輪回転状態において運転者が要求する制動力に応じて前記モータが発生する回生制動力に対し、予め算出した踏力係数を乗じた値とし、
前記踏力係数を、前記四輪回転状態において運転者が要求する制動力に応じて前記前輪及び前記後輪が発生する総制動力のうち前記前輪制動力に配分する配分比をBfとし、前記総制動力のうち前記後輪制動力に配分する配分比をBrとした場合に、以下の計算式で算出することを特徴とする請求項1に記載したハイブリッド車両の回生制動力制御装置。
踏力係数=(Bf+Br)/Br
【請求項3】
前記シャシダイ走行判定手段は、前記複数の制動力マップから一つの制動力マップを選択する選択操作を検出するマップ選択操作検出手段を備え、
前記マップ選択操作検出手段が前記シャシダイ走行マップを選択する選択操作を検出すると、二輪駆動状態の前記ハイブリッド車両がシャシダイナモ装置上で前記後輪の回転のみで走行していると判定することを特徴とする請求項1または2に記載したハイブリッド車両の回生制動力制御装置。
【請求項4】
前記シャシダイ走行判定手段は、運転者が要求する駆動力を検出する要求駆動力検出手段と、前記前輪の回転状態を検出する前輪回転状態検出手段と、を備え、
前記要求駆動力検出手段が検出した前記駆動力が所定の駆動力以上であり、且つ前記前輪回転状態検出手段が前記前輪の停止を検出した場合に、二輪駆動状態の前記ハイブリッド車両がシャシダイナモ装置上で前記後輪の回転のみで走行していると判定することを特徴とする請求項1から3のうちいずれか1項に記載したハイブリッド車両の回生制動力制御装置。
【請求項5】
前輪と、エンジンとモータとの間に介装する第一クラッチと、前記モータと後輪との間に介装する第二クラッチと、を有するハイブリッド車両に対し、前記モータが発生する回生制動力を制御するハイブリッド車両の回生制動力制御方法であって、
前記第一クラッチを解放するとともに前記第二クラッチを接続し、且つ前記前輪及び前記後輪のうち後輪のみを駆動輪とした二輪駆動状態の前記ハイブリッド車両が、シャシダイナモ装置上で前記後輪の回転のみで走行する場合に、
運転者が要求する制動力に応じて前記モータが発生する回生制動力の減少度合いを、前記前輪及び前記後輪を回転可能とした四輪回転状態において運転者が要求する制動力に応じて前記モータが発生する回生制動力よりも減少させて、前記回生制動力を制御することを特徴とするハイブリッド車両の回生制動力制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−154643(P2010−154643A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−329584(P2008−329584)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】