説明

ハイブリッド車両

【課題】バッテリ低温又は高温時であっても、変速時のドライバビリティの低下を防止することができるハイブリッド車両を提供する。
【解決手段】車両は、電動機3及び/又はエンジン2から変速機を介して駆動輪4への動力伝達及び電動機3と該エンジン2との間の動力伝達を断続可能とするECU8と、バッテリ7の温度を検知する温度検出部11とを備える。変速機は、電動機3及び/又はエンジン2から駆動輪4へ動力を伝達可能な、変速比の異なる複数の変速段を備える第1の変速群(奇数段24a,24b)と、エンジン2から駆動輪4へ動力を伝達可能な第2の変速群(偶数段25a,25b)とを有する。ECU8は、バッテリ7の温度が第1の所定温度未満のとき又は第2の所定温度以上のときには、第1の変速群の変速段を中間段(例えば、3速ギヤ24a)とし、この中間段と隣り合う第2の変速群の中間段で走行するように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機及び内燃機関を備えたハイブリッド車両に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関(エンジン)と蓄電装置に接続された電動機とを有するハイブリッド車両が知られている。例えば、有段変速機を備えるハイブリッド車両では、外気温が低温時に、変速機の油温や蓄電装置の温度等が低くなり、有段変速機の変速応答性に影響が生じる場合がある。変速時には、電動機や変速機を構成する軸やギヤ等の回転部材の回転を、変速段の変速比に対応した回転速度にする場合、回転部材の慣性モーメントのため、変速に所定の時間を要する。
【0003】
そこで、例えば氷点下30度のような極低温時の変速応答性を改善する技術として、極低温状態が検出された場合に有段変速を制限する車両駆動装置の制御装置が、特許文献1に開示されている。この装置では、有段変速機の高速側の変速比が禁止され、低速側の変速比が選択されて、変速機を構成している回転部材の回転数(回転速度)を大きくし、変速機の油温の上昇を促進することで変速応答性を改善するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−118721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、蓄電装置は、上記のような低温時あるいは高温時には、通常温度時と比較して出力が低下する。そのため、変速機で変速段を下げるダウンシフト或いは変速段を上げるアップシフトの場合、電動機の出力が減少して変速に要する時間が長くなる、すなわち変速応答性の低下(変速のもたつき)が生ずるという問題がある。
【0006】
上記特許文献1の装置では、極低温時に変速機の油温の上昇を促進することで変速応答性を改善しようとするが、低温又は高温時に蓄電装置の出力が低下することで生ずる変速のもたつきを改善することは困難である。
【0007】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、内燃機関と蓄電装置が接続された電動機とを備えるハイブリッド車両において、蓄電装置が低温又は高温下にあっても、変速応答性及びドライバビリティの低下を防止できるハイブリッド車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、内燃機関と、蓄電装置に接続された電動機とを有し、該電動機及び/又は該内燃機関から変速機を介して被駆動部への動力伝達及び該電動機と該内燃機関との間の動力伝達を断続可能とする制御部を備えるハイブリッド車両であって、
前記蓄電装置の温度を検知又は推定する温度検知部を備え、
前記変速機は、前記電動機及び/又は前記内燃機関から前記被駆動部へ動力を伝達可能であって変速比の異なる複数の変速段を備える第1の変速群と、前記内燃機関から前記被駆動部へ動力を伝達可能な第2の変速群とを有し、
前記制御部は、前記温度が第1の所定温度未満である低温状態又は該第1の所定温度より高い第2の所定温度以上である高温状態では、前記第1の変速群の変速段を中間段に変速するように前記電動機及び前記内燃機関の出力を制御し、前記第1の変速群の中間段と隣り合う前記第2の変速群の変速段を用いて走行することを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、制御部は、低温状態又は高温状態では、前記第1の変速群の変速段を中間段とし、その中間段と隣り合う前記第2の変速群の変速段を用いて走行することで、変速時に電動機による変速先の変速段への回転速度を合わせる動作を行うことがなく、蓄電装置の出力が低下しても、ダウンシフト又はアップシフトを行う場合の変速に要する時間を抑えて、変速のもたつきを抑制することができる。
【0010】
従って、本発明によれば、低温又は高温時であっても、変速応答性の低下ひいてはドライバビリティの低下を生じさせないハイブリッド車両が提供される。
【0011】
本発明のハイブリッド車両において、前記制御部は、前記低温状態、前記高温状態、及びこれらのいずれでもない通常状態に対応して、前記電動機及び前記内燃機関の出力を制御する第1、第2及び第3の制御パターンを定めた制御マップを有し、前記低温状態又は前記高温状態では、前記通常状態に対応する第3の制御パターンから前記第1又は第2の制御パターンに切り替えた制御マップに基づいて制御することが好ましい。
【0012】
この構成によれば、前記低温状態又は前記高温状態では、第1又は第2の制御パターンの制御マップに基づいて制御することで、低温状態又は高温状態に応じて変速のもたつきを抑制できる。従って、低温又は高温時でも、変速応答性やドライバビリティの低下を生じさせない車両が得られる。
【0013】
上記構成のハイブリッド車両において、前記制御部は、前記第2の変速群を介して前記内燃機関から前記被駆動部へ動力を伝達可能とし且つ前記第1の変速群を介して前記電動機と前記被駆動部との間の動力を伝達可能として、前記電動機を回転させるように制御することが好ましい。
【0014】
これによれば、電動機を回転させることで蓄電装置を充電することが可能である。すなわち、蓄電装置の内部抵抗に電流を流すことで、蓄電装置が加温される。このため、蓄電装置を、比較的短時間で低温(第1の所定温度未満)から通常温度(第1の所定温度以上で第2の所定温度未満)とすることができる。従って、比較的短時間で、蓄電装置が低温状態での走行モードから通常温度での走行モードに移行することができる。
【0015】
更にこの場合、前記制御部は、前記低温状態では、該電動機と該内燃機関との間の動力伝達を可能とすると共に、前記内燃機関及び前記電動機から前記第1の変速群を介して前記被駆動輪へ動力伝達を行うように制御することが好ましい。
【0016】
これによれば、制御部は、低温状態のとき、該電動機と該内燃機関との間の動力伝達を可能とすると共に、前記内燃機関及び前記電動機から前記第1の変速群を介して前記被駆動輪へ動力が伝達される。すなわち、蓄電装置の内部抵抗に電流を流すことで、蓄電装置が加温される。このため、蓄電装置の温度を、比較的短時間で、低温(第1の所定温度未満)から通常温度(第1の所定温度以上かつ第2の所定温度未満)とすることができる。従って、より短い時間で、蓄電装置が低温状態での走行モードから通常温度での走行モードに移行することが可能である。
【0017】
また、本発明のハイブリッド車両において、前記電動機又は前記内燃機関の出力で駆動される補機を備え、該補機は、前記高温状態では前記第1の変速群の中間段で駆動されることが好ましい。これによれば、高温時には補機を駆動することで蓄電装置の温度を下げることができるので、それによって蓄電装置の出力低下を抑えることができる。
【0018】
上記補機は、例えば車載エアコンのコンプレッサであり、これを駆動することにより車両内を通じて蓄電装置のバッテリ本体を冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態のハイブリッド車両の構成図。
【図2】本発明の第1実施形態のハイブリッド車両のECUの機能ブロック図。
【図3】本発明の第1実施形態のハイブリッド車両の全体構成図。
【図4】本発明の第1実施形態のハイブリッド車両においてバッテリの配置を示す図であり、(a)はハイブリッド車両の透過斜視図、(b)はバッテリ及び通気路の斜視図、(c)はバッテリ及びPDUの斜視図。
【図5】本発明の第1実施形態のハイブリッド車両のバッテリの通常温度、低温、高温を示す図。
【図6】SOCが50%のバッテリの出力を示す図であり、(a)はアシスト出力(放電量)、(b)は回生出力(充電量)を示す。
【図7】温度25℃でのバッテリのアシスト出力(放電量)及び回生出力(充電量)を示す図。
【図8】本発明の第1実施形態のハイブリッド車両の変速時の動作を示す図。
【図9】本発明の第1実施形態のハイブリッド車両の変速時の電動機による回転合せに要する時間の温度依存性を示す図。
【図10】本発明の第1実施形態のハイブリッド車両の低温時(高温時)及び通常温度時での変速に要する時間を示す図。
【図11】本発明の第1実施形態のハイブリッド車両の動作を説明するフローチャート。
【図12】本発明の第2実施形態のハイブリッド車両の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態のハイブリッド車両について説明する。先ず、本実施形態のハイブリッド車両の構成を説明する。
【0021】
図1に示すように、本実施形態のハイブリッド車両は、動力伝達装置1を備えるとともに、動力発生源としてエンジン2と、エンジン2を始動可能な電動機(モータ・ジェネレータ)3とを有する。エンジン2は、本発明における内燃機関に相当する。
【0022】
動力伝達装置1は、エンジン2及び/又は電動機3の動力(駆動力)を被駆動部である駆動輪4に伝達して、駆動輪4を駆動可能に構成されている。また、動力伝達装置1は、エンジン2からの動力及び/又は駆動輪4からの動力を電動機3に伝達して、電動機3により回生動作可能に構成されている。また、動力伝達装置1は、エンジン2及び/又は電動機3の動力を、車両に搭載された補機5を駆動可能に構成されている。補機5は、例えば、空調装置(エアコンディショナ)のコンプレッサ、ウォータポンプ、オイルポンプ等である。
【0023】
エンジン2は、例えば、ガソリン、軽油、アルコールなどの燃料を燃焼させることにより動力(トルク)を発生する内燃機関である。エンジン2は、発生した動力を動力伝達装置1に入力するための駆動力入力軸2aを有する。このエンジン2は、通常の自動車のエンジンと同様に、図示しない吸気路に備えられたスロットル弁の開度を制御する(エンジン2の吸気量を制御する)ことによって、エンジン2による動力が調整される。
【0024】
電動機3は、本実施形態では3相のDCブラシレスモータである。電動機3は、ハウジング内に回転自在に支持された中空のロータ(回転体)3aと、ステータ(固定子)3bとを有する。本実施形態のロータ3aには、複数の永久磁石が備えられている。ステータ3bには、3相分のコイル(電機子巻線)3baが装着されている。ステータ3bは、動力伝達装置1の外装ケース等、車体に対して静止した不動部に設けられたハウジングに固定されている。
【0025】
コイル3baは、インバータ回路を含む駆動回路であるパワー・ドライブ・ユニット(以下、「PDU」という)6を介して直流電源としてのバッテリ(蓄電装置、二次電池)7に電気的に接続されている。また、PDU6は、電子制御ユニット(以下、「ECU」という)8に電気的に接続されている。
【0026】
ECU8は、PDU6の他に、動力伝達装置1、エンジン2、電動機3等の車両の各構成要素に電気的に接続されている。ECU8は、本発明における制御部に相当する。本実施形態のECU8は、CPU(Central processing unit)、RAM(Random access memory)、ROM(Read only memory)、インターフェイス回路等を含む電子回路ユニットであり、プログラムにより規定される制御処理を実行することで、動力伝達装置1、エンジン2、電動機3等を制御する。
【0027】
ECU8は、本発明における機能を実現する手段として、図2に示すように、バッテリ温度検知部8aと、SOC検知部8bと、通常温度処理部8cと、低高温度処理部8dとを有する。このECU8の機能については後述する。
【0028】
また、ECU8の制御処理により実現される機能として、エンジン2の動作を図示しないスロットル弁用のアクチュエータなどエンジン制御用のアクチュエータを介して制御する機能、後述する各種クラッチや各種同期装置のスリーブの動作を図示しないアクチュエータ又は駆動回路を介して制御する機能、車速やエンジン2の回転速度等から駆動輪4に要求される駆動力を設定する駆動力設定部9からの信号を受け、その要求駆動力や走行状態に応じて各構成要素を制御する機能等を制御する。
【0029】
また、ECU8は、温度検知部8aで検知(又は推定)された温度が、第1の所定温度未満である低温状態、該第1の所定温度より高い第2の所定温度以上である高温状態、及びこれらのいずれでもない通常状態に対応して、電動機3及びエンジン2の出力を制御する第1、第2及び第3の制御パターンを定めた制御マップを有する。そして、前記低温状態又は高温状態では、前記通常状態に対応する第3の制御パターンから第1又は第2の制御パターンに切り替えた制御マップに基づいて制御する動作プログラムを、記憶部(メモリ)に格納している。
【0030】
また、ECU8は、PDU6を介してコイル3baに流れる電流を制御することによって、電動機3がロータ3aから出力する動力(トルク)を調整する。この場合、PDU6を制御することによって、電動機3は、バッテリ7から供給される電力でロータ3aに力行トルクを発生する力行運転を行い、モータとして機能する。すなわち、ステータ3bに供給された電力が、ロータ3aにより動力に変換されて出力される。また、PDU6を制御することで、電動機3は、ロータ3aに与えられる回転エネルギによって発電して、バッテリ7を充電しつつ、ロータ3aに回生トルクを発生する回生運転を行う。つまり、電動機3はジェネレータとしても機能する。すなわち、ロータ3aに入力された動力が、ステータ3bで電力に変換される。
【0031】
駆動力設定部9は、例えば、運転者の操作や走行状態に基づいて、駆動輪4に要求される駆動力を設定可能である。駆動力設定部9としては、例えば、アクセルペダルに設けられたアクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセルセンサ、スロットル開度を検出するスロットル開度センサ等を採用することができる。
【0032】
各種センサ10は、例えば、エンジン2の回転速度を検出するエンジン回転速度検出部10a、電動機3の回転速度を検出する電動機回転速度検出部10b、車両の速度を検出する車速検出部10c、動力伝達装置1の変速機の変速段を検出する変速段検出部10d、動力伝達軸の回転速度を検出する軸回転速度検出部10e等を有し、各検出部(センサ)による検出結果を示す信号をECU8に送る。
【0033】
バッテリ温度検出部11は、バッテリ7の温度を検出し、その検出結果を示す信号をECU8に送る。
【0034】
SOC検出部12は、バッテリ7のSOCを検出し、その検出結果を示す信号をECU8に送る。本実施形態では、SOCは0%〜100%の範囲内の値で表される。
【0035】
次に、本実施形態の動力伝達装置1の各構成要素について説明する。動力伝達装置1は、エンジン2の動力と電動機3の動力を合成する動力合成機構13を有する。動力合成機構13としては、本実施形態では遊星歯車装置を採用する。動力合成機構13については後述する。
【0036】
エンジン2の駆動力入力軸2aには、第1主入力軸14が連結されている。この第1主入力軸14は、駆動力入力軸2aに平行に配置され、エンジン2からの動力が第1クラッチC1を介して入力される。第1主入力軸14は、エンジン2側から電動機3側に亘って延在している。第1主入力軸14は、第1クラッチC1により、エンジン2の駆動力入力軸2aと断接可能に構成される。また、本実施形態の第1主入力軸14は、電動機3のロータ3aに連結されている。
【0037】
第1クラッチC1は、ECU8の制御により、駆動力入力軸2aと第1主入力軸14とを断接可能に構成されている。第1クラッチC1により駆動力入力軸2aと第1主入力軸14とが接続されると、駆動力入力軸2aと第1主入力軸14との間で動力伝達が可能となる。また、第1クラッチC1により駆動力入力軸2aと第1主入力軸14との接続が切断されると、駆動力入力軸2aと第1主入力軸14との間で動力伝達が遮断される。
【0038】
第1主入力軸14に対して、第1副入力軸15が同軸心に配置されている。この第1副入力軸15は、エンジン2からの動力が第2クラッチC2を介して入力される。第2クラッチC2は、ECU8の制御により、駆動力入力軸2aと第1副入力軸15との間を断接可能に構成されている。第2クラッチC2により駆動力入力軸2aと第1副入力軸15とが接続されると、駆動力入力軸2aと第1副入力軸15との間で動力伝達が可能となる。また、第2クラッチC2により駆動力入力軸2aと第1副入力軸15との接続が切断されると、駆動力入力軸2aと第1副入力軸15との間で動力伝達が遮断される。第1クラッチC1と第2クラッチC2は、第1主入力軸14の軸心方向に隣接して配置されている。本実施形態の第1クラッチC1と第2クラッチC2は、湿式多板クラッチで構成されている。
【0039】
上述したように、動力伝達装置1では、第1クラッチC1が、駆動力入力軸2aの回転を第1主入力軸14(第1駆動ギヤ軸)に解除自在に伝達し、第2クラッチC2が駆動力入力軸2aの回転を第2主入力軸22(第2駆動ギヤ軸)に解除自在に伝達するように構成されている。
【0040】
第1主入力軸14に対して平行にリバース軸16が配置されている。リバース軸16には、リバースギヤ軸17が回転自在に軸支されている。第1主入力軸14とリバースギヤ軸17とは、ギヤ列18を介して常時結合されている。このギヤ列18は、第1主入力軸14上に固定されたギヤ14aとリバースギヤ軸17に設けられたギヤ17aとが噛合して構成されている。
【0041】
リバース軸16には、リバースギヤ軸17上に固定された後進ギヤ17cと、リバース軸16との連結及び切断を切換可能な後進同期装置SRが設けられている。
【0042】
リバース軸16に対して、ひいては、第1主入力軸14に対して平行に中間軸19が配置されている。中間軸19とリバース軸16とは、ギヤ列20を介して常時接続されている。このギヤ列20は、中間軸19上に固定されたギヤ19aとリバース軸16上に固定されたギヤ16aとが噛合して構成されている。また、中間軸19と第1副入力軸15とは、ギヤ列21を介して常時接続されている。このギヤ列21は、中間軸19上に固定されたギヤ19aと第1副入力軸15に固定されたギヤ15aとが噛合して構成されている。
【0043】
中間軸19に対して、ひいては、第1主入力軸14に対して平行に第2主入力軸22が配置されている。第2主入力軸22と中間軸19とは、ギヤ列23を介して常時接続されている。このギヤ列23は、中間軸19上に固定されたギヤ19aと第2主入力軸22上に固定されたギヤ22aとが噛合して構成されている。
【0044】
第1主入力軸14は、変速比の異なる複数の変速段のうち、変速比順位で奇数番目又は偶数番目の変速段(本実施形態では奇数番目の3速段及び5速段)の各ギヤ列の駆動ギヤを回転自在に軸支すると共に、電動機3に連結されている。第1主入力軸14は、本発明における第1駆動ギヤ軸に相当する。
【0045】
詳細には、第1主入力軸14に対して、第2副入力軸24が同軸心に配置されている。第2副入力軸24は、第1副入力軸15よりも電動機3側に配置されている。第1主入力軸14と第2副入力軸24とは、第1同期噛合機構S1(本実施形態ではシンクロメッシュ機構)を介して接続される。第1同期噛合機構S1は、第1主入力軸14に設けられ、3速ギヤ24aと5速ギヤ24bとを第1主入力軸14に選択的に連結する。第1同期噛合機構S1は、詳細には、シンクロクラッチなどの周知のものであり、図示しないアクチュエータ及びシフトフォークで、スリーブS1aを第2副入力軸24の軸方向に沿って移動させることにより、3速ギヤ24aと5速ギヤ24bとを第1主入力軸14に選択的に連結させる。詳細には、スリーブS1aが図示の中立位置から3速ギヤ24a側に移動した場合、3速ギヤ24aと第1主入力軸14とが連結される。一方、スリーブS1aが図示の中立位置から5速ギヤ24b側に移動した場合、5速ギヤ24bと第1主入力軸14とが連結される。
【0046】
第2主入力軸22は、変速比の異なる複数の変速段のうち、変速比順位で偶数番目又は奇数番目の変速段(本実施形態では偶数番目の2速段及び4速段)の各ギヤ列の駆動ギヤを回転自在に軸支する。第2主入力軸22は、本発明における第2駆動ギヤ軸に相当する。詳細には、第2主入力軸22に対して、第3副入力軸25が同軸心に配置されている。第2主入力軸22と第3副入力軸25とは、第2同期噛合機構S2(本実施形態ではシンクロメッシュ機構)を介して接続される。第2同期噛合機構S2は、第2主入力軸22に設けられ、2速ギヤ25aと4速ギヤ25bとを第2主入力軸22に選択的に連結するように構成されている。第2同期噛合機構S2は、シンクロクラッチなどの周知のものであり、図示しないアクチュエータ及びシフトフォークで、スリーブS2aを第3副入力軸25の軸方向に移動させることにより、2速ギヤ25aと4速ギヤ25bとを第2主入力軸22に選択的に連結させる。スリーブS2aが図示の中立位置から2速ギヤ25a側に移動した場合、2速ギヤ25aと第2主入力軸22とが連結される。一方、スリーブS2aが図示の中立位置から4速ギヤ25b側に移動した場合、4速ギヤ25bと第2主入力軸22とが連結される。
【0047】
第3副入力軸25と出力軸26とは、2速ギヤ列27を介して結合されている。この2速ギヤ列27は、第3副入力軸25上に固定されたギヤ25aと出力軸26に固定されたギヤ26aとが噛合して構成されている。また、第3副入力軸25と出力軸26とは、4速ギヤ列28を介して結合されている。この4速ギヤ列28は、第3副入力軸25上に固定されたギヤ25bと、出力軸26に固定されたギヤ26bとが噛合して構成されている。
【0048】
出力軸26と第2副入力軸24とは、3速ギヤ列29を介して結合されている。この3速ギヤ列29は、出力軸26に固定されたギヤ26aと第2副入力軸24上に固定されたギヤ24aとが噛合して構成されている。また、出力軸26と第2副入力軸24とは、5速ギヤ列30を介して結合されている。この5速ギヤ列30は、出力軸26に固定されたギヤ26bと第2副入力軸24上に固定されたギヤ24bとが噛合して構成されている。なお、出力軸26に固定される各ギヤ列のギヤ26a,26bを従動ギヤという。
【0049】
また、出力軸26には、ファイナルギヤ26cが固定されている。出力軸26の回転は、ファイナルギヤ26c、差動歯車ユニット31及び車軸32を介して駆動輪4に伝達するように構成されている。
【0050】
上記ギヤ24a、ギヤ24bは、第1の変速群に相当する。また、ギヤ25a、ギヤ25bは、第2の変速群に相当する。第1の変速群及び第2の変速群は、変速機に相当する。
【0051】
本実施形態の動力合成機構13は、電動機3の内側に設けられている。電動機3を構成するロータ3a、ステータ3b、及びコイル3baの一部又は全部は、第1主入力軸14の軸線方向と直交する方向に沿って、動力合成機構13と重なるように配置されている。
【0052】
動力合成機構13は、第1回転要素、第2回転要素、及び第3回転要素を互いに差動回転可能な差動装置により構成されている。動力合成機構13を構成する差動装置は、本実施形態では、シングルピニオン型の遊星歯車装置であり、3つの回転要素として、サンギヤ13s(第1回転要素)と、リングギヤ13r(第2回転要素)と、このサンギヤ13sとリングギヤ13rとの間で、サンギヤ13sとリングギヤ13rに噛合された複数のプラネタリギヤ13pを回転自在に支持するキャリア(第3回転要素)13cとを同軸心に備えている。これらの3つの回転要素13s,13r,13cは、互いの間で動力を伝達可能であると共に、それぞれの回転数(回転速度)の間の関係を一定の共線関係を保ちつつ回転する。
【0053】
サンギヤ13sは、第1主入力軸14と連動して回転するように、第1主入力軸14に固定されている。また、サンギヤ13sは、電動機3のロータ3aと連動して回転するように、ロータ3aに固定されている。これにより、サンギヤ13s、第1主入力軸14、ロータ3aは連動して回転する。
【0054】
リングギヤ13rは、第3同期噛合機構SLにより、不動部であるハウジング33に対して固定する状態と、非固定状態とを切換自在に構成されている。詳細には、第3同期噛合機構SLのスリーブSLaを、リングギヤ13rの回転軸方向に沿って移動させることにより、ハウジング33とリングギヤ13rとを固定した状態と、非固定状態とを切換自在となるように構成されている。
【0055】
キャリア13cは、第2副入力軸24と連動して回転するように、第2副入力軸24の電動機3側の一端部に連結されている。
【0056】
リバース軸16に対して、補機5の入力軸5aが平行に配置されている。リバース軸16と、補機5の入力軸5aとは、例えば、ベルト機構34を介して結合されている。このベルト機構34は、リバースギヤ軸17上に固定されたギヤ17bと、入力軸5a上に固定されたギヤ5bとがベルトを介して連結されて構成されている。補機5の入力軸5aには、補機用クラッチ35が介設されている。ギヤ5bと補機5の入力軸5aとが補機用クラッチ35を介して同軸心に連結されている。
【0057】
補機用クラッチ35は、ECU8の制御の下で、ギヤ5bと補機5の入力軸5aとの間を接続又は遮断するように動作するクラッチである。この場合、補機用クラッチ35を接続状態に動作させると、ギヤ5bと補機5の入力軸5aとが互いに一体に回転するように、補機用クラッチ35を介して結合される。また、補機用クラッチ35を遮断状態に動作させると、補機用クラッチ35によるギヤ5bと補機5の入力軸5aとの間の結合が解除される。この状態では、第1主入力軸14と補機5の入力軸5aへの動力伝達が遮断される。
【0058】
次に、各変速段について説明する。上述したように、本実施形態の動力伝達装置1は、変速比の異なる複数の変速段の各ギヤ列を介して入力軸の回転速度を複数段に変速して出力軸26に出力するように構成されている。つまり、本実施形態の動力伝達装置1は有段変速機を有する。また、動力伝達装置1では、変速段が大きいほど変速比が小さいように規定されている。
【0059】
エンジン始動時、第1クラッチC1を接続状態にして、電動機3を駆動し、エンジン2を始動させる。即ち、電動機3はスタータとしての機能を兼ね備えている。
【0060】
1速段は、第3同期噛合機構SLにより、リングギヤ13rとハウジング33とを連結した状態(固定状態)とすることで確立される。エンジン2により走行する場合には、第2クラッチC2を遮断状態(以下、OFF状態という)、第1クラッチC1を接続状態(以下、ON状態という)にする。エンジン2から出力される駆動力が、サンギヤ13s、キャリア13c、ギヤ列29、出力軸26等を介して駆動輪4に伝達される。
【0061】
なお、エンジン2を駆動させると共に、電動機3を駆動させれば、1速段での電動機3によるアシスト走行(エンジン2の駆動力を電動機3で補助する走行)を行うこともできる。更に、第1クラッチC1をOFF状態とすれば、電動機3のみで走行するEV走行を行うこともできる。
【0062】
また、減速回生運転中では、電動機3を制動することにより車両を減速状態として電動機3で発電させ、PDU6を介してバッテリ7に充電させることができる。
【0063】
2速段は、第3同期噛合機構SLによりリングギヤ13rとハウジング33とを非固定状態とし、第2同期噛合機構S2を、第2主入力軸22と2速ギヤ25aとを連結した状態とすることで確立される。エンジン2により走行する場合には、第2クラッチC2をON状態とする。この2速段では、エンジン2から出力される駆動力が、第1主入力軸14、ギヤ列21、中間軸19、ギヤ列23、第2主入力軸22、ギヤ列27、及び出力軸26等を介して駆動輪4に伝達される。
【0064】
なお、第1クラッチC1をON状態とし、エンジン2を駆動させると共に電動機3を駆動させれば、2速段での電動機3によるアシスト走行を行うこともできる。更に、この状態でエンジン2による駆動を止めて、EV走行を行うこともできる。エンジン2による駆動を止める場合には、例えばエンジン2をフューエルカット状態や休筒状態としてもよい。又、2速段で減速回生運転を行うことができる。
【0065】
また、第1クラッチC1をOFF状態とし、第2クラッチC2をON状態とし、エンジン2の駆動により2速段で走行中、ECU8が車両の走行状態により3速段へアップシフトが予想されると判断した場合に、第1同期噛合機構S1により、第1主入力軸14と3速ギヤ24aとを連結させた状態、又は、この状態に近づけるプリシフト状態とする。これにより2速段から3速段へのアップシフトをスムーズに行うことができる。
【0066】
3速段は、第1同期噛合機構S1を、第1主入力軸14と3速ギヤ24aとを連結した状態とすることで確立される。エンジン2により走行する場合には、第1クラッチC1をON状態とする。この3速段では、エンジン2から出力される駆動力が、第1主入力軸14、3速ギヤ列29、及び出力軸26等を介して駆動輪4に伝達される。
【0067】
なお、第1クラッチC1をON状態とし、エンジン2を駆動させると共に電動機3を駆動させれば、3速段での電動機3によるアシスト走行を行うこともできる。更に、第1クラッチC1をOFF状態とし、EV走行を行うこともできる。また、EV走行時に、第1クラッチC1をON状態とし、エンジン2による駆動を止めて、EV走行を行うこともできる。又、3速段で減速回生運転を行うことができる。
【0068】
3速段で走行中、ECU8が車両の走行状態に基づいて、次に変速される変速段が2速段又は4速段であるかを予測する。ECU8が、2速段へのダウンシフトを予想した場合には、第2同期噛合機構S2を、2速ギヤ25aと第2主入力軸22とを連結する状態、又はこの状態に近づけたプリシフト状態とする。ECU8が、4速段へのアップシフトを予想した場合には、第2同期噛合機構S2を、4速ギヤ25bと第2主入力軸22とを連結する状態、又はこの状態に近づけたプリシフト状態とする。これにより、3速段からのアップシフト及びダウンシフトをスムーズに行うことができる。
【0069】
4速段は、第2同期噛合機構S2を、第2主入力軸22と4速ギヤ25bとを連結した状態とすることで確立される。エンジン2により走行する場合には、第2クラッチC2をON状態とする。この4速段では、エンジン2から出力される駆動力が、第1主入力軸14、ギヤ列21、中間軸19、ギヤ列23、第2主入力軸22、及び出力軸26等を介して駆動輪4に伝達される。
【0070】
なお、第2クラッチC2をON状態とし、第1クラッチC1をON状態とし、エンジン2を駆動させると共に電動機3を駆動させれば、4速段での電動機3によるアシスト走行を行うこともできる。更に、この状態でエンジン2による駆動を止めて、EV走行を行うこともできる。
【0071】
また、第2クラッチC2をOFF状態とし、第1クラッチC1をON状態とし、エンジン2の駆動により4速段で走行中、ECU8が車両の走行状態に基づいて、次に、変速される変速段が3速段又は5速段であるかを予測する。ECU8が、3速段へのダウンシフトを予想した場合には、第1同期噛合機構S1により、第1主入力軸14と3速ギヤ24aとを連結させた状態、又は、この状態に近づけるプリシフト状態とする。ECU8が、5速段へのアップシフトを予想した場合には、第1同期噛合機構S1により、第1主入力軸14と5速ギヤ24bとを連結させた状態、又は、この状態に近づけるプリシフト状態とする。これにより、4速段からのアップシフト及びダウンシフトをスムーズに行うことができる。
【0072】
5速段は、第1同期噛合機構S1を、第1主入力軸14と5速ギヤ24bとを連結した状態とすることで確立される。エンジン2により走行する場合には、第1クラッチC1をON状態とする。この5速段では、エンジン2から出力される駆動力が、第1主入力軸14、3速ギヤ列29、及び出力軸26等を介して駆動輪4に伝達される。
【0073】
なお、第1クラッチC1をON状態とし、エンジン2を駆動させると共に電動機3を駆動させれば、5速段での電動機3によるアシスト走行を行うこともできる。更に、第1クラッチC1をOFF状態とし、EV走行を行うこともできる。又、第1クラッチC1をON状態とし、エンジン2による駆動を止めて、EV走行を行うこともできる。又、5速段で減速回生運転を行うことができる。
【0074】
また、5速段で走行中、ECU8が車両の走行状態に基づいて、次に変速される変速段が4速段であると判断した場合に、ECU8が、第2同期噛合機構S2を、4速ギヤ25bと第2主入力軸22とを連結する状態、又はこの状態に近づけたプリシフト状態とする。これにより、5速段から4速段へのダウンシフトをスムーズに行うことができる。
【0075】
後進段は、後進同期噛合機構SRを、リバース軸16と後進ギヤ17cとを連結させた状態とし、第2同期噛合機構S2を、例えば、第2主入力軸22と2速ギヤ25aとを連結した状態とすることで確立される。エンジン2により走行する場合には、第1クラッチC1をON状態とする。この後進段では、エンジン2から出力される駆動力が、第1主入力軸14、ギヤ列18、リバースギヤ17c、リバース軸16、ギヤ列20、中間軸19、ギヤ列23、第2主入力軸22、第3副入力軸25、ギヤ列27、及び出力軸26等を介して駆動輪4に伝達される。なお、エンジン2を駆動させると共に電動機3を駆動させれば、後進段での電動機3によるアシスト走行を行うこともできる。また、第1クラッチC1をOFF状態とすることで、EV走行を行うこともできる。後進段で減速回生運転を行うことができる。
【0076】
次に、図3,図4を参照しながら、本実施形態のハイブリッド車両の温度制御を説明する。本実施形態のハイブリッド車両100は、空調装置40を有する。空調装置40としては、例えば、ヒートポンプ方式を採用することができる。この空調装置40は、コンプレッサ41、車両室外の熱交換器42、車両室内の熱交換器43、送風装置(ファン)44を有する。コンプレッサ41、室外熱交換器42、及び室内熱交換器43は、冷媒通路により接続されている。この空調装置40は、ECU8の制御によりコンプレッサ41が駆動されると、冷媒が冷媒通路を介して室外熱交換器42及び室内熱交換器43を循環することにより、車両室内の空気の温度を調整可能に、具体的には暖房及び冷房を切換可能に構成されている。また、暖房の際、エンジン2の冷却水による熱を利用したヒータコア45により、車両室内100aの空気を暖房してもよい。
【0077】
上記補機5としてのコンプレッサ41は、上述したように、ベルト機構34により、リバースギヤ軸17上に固定されたギヤ17bと、入力軸5a上に固定されたギヤ5bとがベルトを介して連結されている。コンプレッサ41は、電動機3又はエンジン2により第1主入力軸14を介して回転駆動可能に構成されている。
【0078】
バッテリ7には、車両室内100aの空気を、バッテリ本体に送風するための送風装置7aが備えられている。詳細には、本実施形態では、車両の後部に設けられた荷室100bに、バッテリ7及びPDU6が備えられている。バッテリ7及びPDU6は、ヒートシンクとしての収容容器7b内に収容されている。この収容容器7bは、車両室内100aと連通する第1通気路7cと、荷室100bと連通する第2通気路7dとを備える。第2通気路には送風装置7aが設けられている。
【0079】
ECU8は、例えばバッテリ温度制御条件を満たした場合に、補機5としてのコンプレッサ41を駆動して、空調装置40により車両室内100aの暖房又は冷房を行うと共に、送風装置7aを駆動する。第1通気路7c内及び収容容器7b内の圧力が、車両室内100aに対して負圧となり、車両室内100aの空気が、吸気口7eから第1通気路7cを介してバッテリ7本体に送風される。これにより、バッテリ7が加温又は冷却される。収容容器7b内の空気は、送風装置7aにより第2通気路7dを介して排気口7fから荷室100bに送られる。
【0080】
次に、図2に示したECU8の機能について説明する。
【0081】
バッテリ温度検知部8aは、温度検出部11からのバッテリ7の温度を示す信号に基づいて、バッテリ7の温度を検知する。また、バッテリ温度検知部8aは、例えば、バッテリ7の充放電量、初期値、満充電量(満充電容量)等に基づいて、バッテリ7の温度を演算により推定することで、バッテリ7の温度を検知してもよい。
【0082】
バッテリ充電量検知部8bは、SOC検出部12からのバッテリ7の充電状況(SOC)を示す信号に基づいて、バッテリ7のSOCを検知する。また、バッテリ充電量検知部8bは、例えば、バッテリ7の充放電量、初期値等に基づいて、バッテリ7のSOCを演算により推定することで、SOCを検知してもよい。
【0083】
通常温度処理部8cは、バッテリ7の温度が通常温度範囲の場合に、通常温度の走行モードで、車両の各構成要素を制御する。本実施形態の通常温度範囲は、図5に示すように、第1の所定温度TL以上で第2の所定温度TH未満である。バッテリ7の高温域は、第2の所定温度TH以上である。バッテリ7の低温域は、第1の所定温度TL未満である。また、本実施形態のECU8は、バッテリ7が極低温、詳細には第1の所定温度TLより低い第3の所定温度TLa未満、または高温の場合には、バッテリ7の出力(充放電)を制限又は禁止するように制御する。
【0084】
低高温度処理部8dは、温度検知部8aにより検知されたバッテリ7の温度が所定温度TL(第1の所定温度)未満のとき又は該第1の所定温度TLより高い第2の所定温度TH以上のときには、バッテリ7の温度、詳細には低温又は高温に応じた処理を行う。低高温度処理部8dの機能については後述する。
【0085】
次に、図6を参照しながら、本実施形態のハイブリッド車両のバッテリ7の出力、詳細には、アシスト出力(W)と回生出力(W)の温度変化を説明する。バッテリ7のSOCは50%に設定されている。バッテリ7の充放電量のうち放電電流量がアシスト出力に相当し、充電電流量が回生出力に相当する。
【0086】
本実施形態では、バッテリ7のアシスト出力は、バッテリ7の温度が高温域に近い温度領域で最大値を示し、それより低い温度域では温度が下がるほど低下する。バッテリの回生出力は、バッテリ7の温度が高温域に近い温度領域で最小値を示し、それより低い温度域では温度が下がるほど増大する。
【0087】
ECU8は、バッテリ7の温度が所定温度TH以上では、バッテリ7の充放電を制限又は禁止するように制御する。また、ECU8は、バッテリ7の温度が所定温度TLa以下の極低温では、バッテリ7の電流の充放電を制限又は禁止するように制御する。高温時又は低温時にバッテリ7の充放電を制限又は禁止することで、バッテリ7の負荷を低減する。
【0088】
次に、図7を参照しながら、本実施形態のバッテリ7のSOCが変化した場合のバッテリ7のアシスト出力と回生出力を説明する。このバッテリ7の温度は通常温度域に設定されている。本実施形態のバッテリ7は、SOCが大きいほど、バッテリ7のアシスト出力が増大し、バッテリ7の回生出力が減少する(回生出力の絶対値が減少する)。また、バッテリ7は、SOCが小さいほど、バッテリ7のアシスト出力が減少し、バッテリ7の回生出力が増大する(回生出力の絶対値が増大する)。SOCが50%の場合には、バッテリ7のアシスト出力及び回生出力は、SOC25%とSOC75%の略中間値となる。上記バッテリ7のアシスト出力及び回生出力の特性は、バッテリ7が低温時及び高温時でも略同様な特性である。
【0089】
次に、図8を参照しながら、本実施形態のハイブリッド車両の変速に要する時間を説明する。詳細には、変速機が偶数段から奇数段へ変速(プリシフト)するときの変速に要する時間を説明する。以下の動作は、ECU8の制御により行われる。
【0090】
上記変速に要する時間は、(1)同期噛合機構のスリーブを、選択されている偶数段のギヤ段を噛合状態から非噛合状態にするのに要する時間と、(2)電動機3、変速機、動力伝達軸等の回転部材の回転速度を、変速先のギヤ段に対応する回転速度にするのに要する時間(以下、回転合わせ時間という)と、(3)変速先の奇数段のギヤ段に、同期噛合機構のスリーブを噛合状態にするのに要する時間とを加算した時間である。
【0091】
図8に示すように、時間t0で、第2クラッチC2は接続状態であり、4速段(偶数段)でエンジン駆動により走行中である。この際、第2クラッチC2には所定の大きさのトルクClutchTrq(C2)が生じている。また、第1クラッチC1は切断した状態であり、第1クラッチC1のトルクClutch Trqは0(Nm)である。奇数段側では3速段が選択されており、電動機3が3速段に対応した回転速度NMot(rpm)で回転している。
【0092】
本実施形態では、エンジン駆動により4速段で走行中に、走行状態や駆動力要求等に基づいて、5速段にシフトアップすると判断した場合に、第1同期噛合機構S1により5速段のギヤ24bと第1主入力軸14とを連結する。
【0093】
時間t1で、奇数段(3速段)からニュートラルに設定する。詳細には、第1同期噛合機構S1により、ニュートラルに設定する。電動機3の駆動トルクを0(Nm)となるように制御する。
【0094】
時間t2から時間t4で、第1クラッチC1が切断状態、且つ、奇数段がニュートラル状態で、ECU8は、3速段での電動機3の回転速度から、5速段での電動機3の目標回転速度になるように、駆動トルクを出力制御する。この際、5速段での電動機3の目標回転速度は、3速段での電動機3の回転速度より小さい。このため、ECU8は、電動機3の回転速度を下げるように回生制御を行う。
【0095】
本実施形態では、上記電動機3によりトルクが出力されているとき(時間t3)、第1主入力軸14側において、ニュートラル状態から5速段とする(プリシフトアップ)。詳細には、ECU8は、第1同期噛合機構S1により第1主入力軸14と5速段ギヤとを固定するように制御する。
【0096】
時間t5で、電動機3を5速段に対応する回転速度になるように制御する。偶数段(4速段)で走行時、3速段から5速段へのプリシフトのために、電動機3の回転速度を合わるのに要する時間(回転合わせ時間)は、時間t2から時間t5に相当する。
【0097】
時間t6から時間t7にかけて、第1クラッチC1を係合すると共に、第2クラッチC2を切断状態となるように制御する。この際、第1クラッチC1では、完全に係合した時のクラッチトルクの約70%(半クラッチ状態)となるように制御される。
【0098】
時間t7から時間t8にかけて、ECU8は、エンジン回転速度Neを、5速段に対応した回転速度となるように制御する。この際、時間t7aから時間t7bにかけて、燃料供給量を短時間だけ少量にし、短時間だけエンジントルクを下げる。
【0099】
時間t8で、第1クラッチC1を完全に係合して、第1主入力軸14とエンジン2とを連結する。
【0100】
時間t9から時間t10にかけて、電動機3により所定の駆動トルクを出力して、エンジン2による駆動をアシストする。
【0101】
上述したように、電動機3、変速機、動力伝達軸等の回転部材は、慣性モーメントを有する。このため、バッテリ7が低温時又は高温時に、バッテリ出力が比較的小さい場合には、上記回転合わせ時間が比較的長くなる。
【0102】
次に、図9を参照しながら、ハイブリッド車両の変速時、各バッテリ温度での回転合せに要する時間を説明する。詳細には、バッテリ特性、車速、電動機3の回転速度、電動機3の駆動性能及び回生性能等に基づいて、コンピュータの演算により、各バッテリ温度での偶数段から奇数段への変速時の回転合わせに要する時間を算出した。
【0103】
計算条件としては、バッテリ7のSOCが高く、車速が高速域、4速段(プリ3速段状態)から5速段へ変速時、3速段に対応する電動機3の回転速度から5速段に対応する回転速度となるように設定した。この際、電動機3のロータ3aや第1主入力軸14等の回転部材は、所定の大きさの慣性モーメントを有するとした。また、バッテリ7の充放電特性のパラメータが異なるバッテリA〜バッテリCの各々について、上記回転合わせ時間を算出した。
【0104】
上述したように、バッテリ7は、温度が低いほど出力(充放電量)が低下し、電動機3のトルク(又は逆トルク)が低下し、電動機3の回転速度を減速させるのに要する時間が大きくなる。上記回転合わせに要する時間は、ドライバビリティを確保するために、所定時間(例えば0.5秒)以下であることが好ましい。
【0105】
上記回転合わせに要する時間は、バッテリB,Cでは所定温度以下の場合に0.5秒以上となる。バッテリAでは所定温度TL以下で0.5秒となる。本実施形態では、上記回転合わせに要する時間を所定時間(0.5秒)以下とするために、温度TL以下の場合に、バッテリ7が小出力であっても、ドライバビリティの低下を防止するように、本発明にかかるバッテリ温度制御を行う。また、バッテリ7が高温時に、バッテリ7が小出力であっても、ドライバビリティの低下を防止するように、本発明にかかる制御を行う。
【0106】
次に、図10を参照しながら、本実施形態のハイブリッド車両において、バッテリ7が通常温度時、低温時又は高温時の変速に要する時間を説明する。
【0107】
通常温度時では、バッテリ7の出力(充放電量)が比較的大きく、電動機3によるトルク又は逆トルクが比較的大きい。SOCが25%,50%,75%それぞれで、プリダウンシフトに要する時間が0.1秒、プリアップシフトに要する時間が0.1秒である。このため、プリアップシフト及びプリダウンシフトに要する時間が比較的短く、ドライバビリティが良好である。
【0108】
バッテリ7が低温時(又は高温時)では、SOCが75%の状態でプリダウンシフトに要する時間が0.3秒、プリアップシフトに要する時間が1.0秒である。SOCが50%の状態でプリダウンシフトに要する時間が0.5秒、プリアップシフトに要する時間が0.5秒である。SOCが25%の状態でプリダウンシフトに要する時間が1.0秒、プリアップシフトに要する時間が0.3秒である。
【0109】
つまり、バッテリ7が低温又は高温時に、SOCが50%より低い場合(例えば25%)では、アシスト出力が比較的小さいので、ダウンシフト時の電動機3の回転合わせ(ダウンシフト時には電動機3の回転速度を上げる)に要する時間が比較的大きい。
【0110】
また、バッテリ7が低温状態又は高温状態で、SOCが50%より高い場合(例えば75%)では、回生出力が比較的小さいので、アップシフト時の電動機3の回転合わせ(アップシフト時には電動機3の回転速度を下げる)に要する時間が比較的大きい。
【0111】
すなわち、SOCが75%では、アップシフトに要する時間が比較的大きい。SOCが25%では、ダウンシフトに要する時間が比較的大きい。このため、本実施形態では、バッテリ7が低温状態又は高温状態で、バッテリ7の出力(充放電量)が比較的低い場合に、SOCを50%又は50%近傍とすることにより、ダウンシフト又はアップシフトに要する時間を所定時間(約0.5秒)以下となるように制御して、ドライバビリティの低下を防止する。
【0112】
次に、本実施形態の低高温度処理部8dの機能について説明する。
【0113】
低高温度処理部8dは、温度検知部8aにより検知された温度が所定温度TL(第1の所定温度)未満のとき又は第1の所定温度より高い第2の所定温度TH以上のときに、第1の変速群(奇数段)の変速段のうち中間段(本実施形態では3速段)に規定する。つまり、本実施形態では、上記奇数段のうち一つの変速段(3速段)に限定する。こうすることで、例えば、変速時の電動機による変速先の変速段への回転速度を合わせる動作を行うことなく、ドライバビリティの低下を防止することが可能である。
【0114】
また、例えば、上記第1の変速群(奇数段)の中間段(3速段)が選択された状態から、アップシフト又はダウンシフトを行う場合には、電動機3が接続されていない動力伝達軸(第2主入力軸22)側に設けられた偶数段(2速段、4速段)に変速を行うことで、電動機3による回転合わせを行う必要がなく、バッテリの出力低下に伴う変速応答性の低下を防止すると共に、ドライバビリティの低下を防止することができる。
【0115】
また、低高温度処理部8dは、第2の変速群(偶数段)を介してエンジン2から駆動輪4へ動力を伝達可能とし、且つ、第1の変速群(奇数段)を介して電動機3と駆動輪4との間の動力を伝達可能として、電動機3を回転させるように制御する。
【0116】
また、低高温度処理部8dは、バッテリ7の温度が第1の所定温度TLより低いとき、電動機3とエンジン2との間の動力伝達を可能とすると共に、エンジン2及び電動機3から第1の変速群(奇数段)を介して駆動輪4へ動力伝達を行うように制御する。
【0117】
次に、図11を参照しながら、本実施形態のハイブリッド車両の動作を説明する。
【0118】
ステップST11で、バッテリ7の温度が第1の所定温度TL1未満、又は、第2の所定温度TH以上か否かを判断する。その判断の結果、バッテリ7の温度が所定温度TL1未満、又は、第2の所定温度TH以上の場合にはステップST13の処理に進み、それ以外の場合にはステップST12の処理に進む。
【0119】
ステップST12で、バッテリ7の温度が通常の温度範囲内(−10〜49℃)の場合に、通常の走行モードにて走行を行う。この際、バッテリ7の出力は、低温時又は高温時と比較して大きい。このため、本実施形態のハイブリッド車両では、SOCに関わらず、比較的短時間で変速を行うことができる。
【0120】
ステップST13で、ECU8は、電動機3の接続側の動力伝達軸(第1主入力軸14)に設けられた第1の変速群(奇数段)のうち中間段の変速段(例えば3速段)に規定する。極低温時又は高温時に、電動機3が接続された動力伝達軸(第1主入力軸14)に設けられた複数の変速段(奇数段)について、その複数の変速段(複数の奇数段)のうち一つの中間段(例えば3速段)に限定する。
【0121】
ステップST14で、ECU8は、バッテリ温度検出部で検出したバッテリ7の温度が高温である場合には、ステップST15の処理に進み、バッテリ7の温度が低温(第1所定温度TLより低温)の場合に、ステップST16の処理に進む。
【0122】
ステップST15で、ECU8は、バッテリ7の近傍に設けられたファン(送風装置)7aを駆動すると、車内の空気がバッテリ7に送られることにより、バッテリ7が冷却する。
【0123】
ステップST16で、ECU8は、奇数段走行時に、積極的にモータアシストを行う。例えば、バッテリ7が低温時に、モータアシストを行うことにより、バッテリ7の充放電が行われ、バッテリ7の内部抵抗によりバッテリ7自体が発熱して、バッテリ7の温度を上昇させることができる。
【0124】
この際、電動機3の駆動及び回生制御により、電動機3と動力伝達装置1の潤滑・作動油(ATF:Automatic Transmission Fluid)の加温も同時に行う。潤滑油の温度を上昇させることで、電動機3の回転時の負荷を、低温時と比較して低減することが可能である。
【0125】
ステップST17で、ECU8は、奇数段走行時に、走行状態、駆動力要求等に基づいて、偶数段に変速するか否かを判断する。偶数段に変速する場合に、ステップST18の処理に進む。
【0126】
ステップST18で、ECU8は、奇数段から偶数段に変速した場合、偶数段と奇数段とが出力軸26に共噛みで接続するように制御を行う。すなわち、エンジン駆動による偶数段走行時には、出力軸26に偶数段と奇数段とが共に噛み合った状態となっている。第1クラッチC1は切断した状態である。
【0127】
詳細には、上記共噛み状態とは、第1同期噛合機構S1により、3速ギヤ24aと第1主入力軸14を連結した状態で、第2同期噛合機構S2により、2速ギヤ25a又は4速ギヤ25bを第2主入力軸22に連結した状態である。すなわち、エンジン2の駆動により偶数段のギヤを用いて走行している時に、電動機3を回転させることができるので、バッテリ7を加温することができる。
【0128】
ステップST17,ST17による動作の後、ステップST11の処理に戻る。
【0129】
すなわち、バッテリ7の温度が通常温度になるまで、ステップST13からステップST18に示した動作を行い、バッテリ7の温度が通常温度になった場合には、通常の走行モード(通常の充放電制御)に移行する(ステップST12)。
【0130】
以上、説明したように、本実施形態では、動力伝達装置1の変速機は、電動機3及び/又はエンジン2から駆動輪4へ動力を伝達可能な、変速比の異なる複数の変速段を備える第1の変速群(奇数段)と、エンジン2から駆動輪4へ動力を伝達可能な、変速比の異なる複数の変速段を備える第2の変速群(偶数段)とを有する。ECU8は低高温度処理部8dにより、温度検知部8aにより検知された温度が第1の所定温度(TL)未満又は第2の所定温度(TH)以上のときに、変速機の変速段を電動機3接続側の第1の変速群(奇数段)の変速段のうち一中間段(例えば3速段)に規定する。こうすることで、バッテリ7が低温又は高温時に、バッテリ7が小出力の場合には、変速時の電動機3による変速先の変速段への回転速度を合わせる動作を行うことなく、電動機3接続側の奇数段の3速段に制限した状態で車両を走行させることで、変速応答性の低下を防止すると共にドライバビリティの低下を防止することができる。
【0131】
また、電動機3接続側の第1の変速群(奇数段)の中間段から第2の変速群(偶数段)へシフトアップ又はシフトダウン(変速)を行う場合であっても、変速時の電動機3による変速先の変速段への回転速度を合わせる動作を行うことがないので、ドライバビリティの低下を防止することができる。
【0132】
また、本実施形態では、ECU8は低高温度処理部8dにより、第2の変速群(偶数段)を介してエンジン2から駆動輪4へ動力を伝達可能とし、且つ、第1の変速群(奇数段)を介して電動機3と駆動輪4との間の動力を伝達可能として、電動機3を回転させることができる。その際に、バッテリ7を充電することが可能である。すなわち、バッテリ7の内部抵抗に電流を流すことで、バッテリ7が加温される。このため、バッテリ7を、比較的短時間で低温(第1の所定温度未満)から通常温度(第1の所定温度以上かつ第2の所定温度未満)とすることができる。すなわち、比較的短時間で、バッテリ7が低温状態での走行モードから通常温度での走行モードに移行することが可能である。
【0133】
また、本実施形態では、ECU8は低高温度処理部8dにより、バッテリ7の温度が第1の所定温度より低いとき、電動機とエンジン2との間の動力伝達を可能とすると共に、エンジン2及び電動機3から第1の変速群(奇数段)を介して駆動輪4へ動力伝達を行うように制御する。1の変速群すなわち、バッテリ7の内部抵抗に電流を流すことで、バッテリ7が加温される。このため、バッテリ7の温度を、比較的短時間で、低温(第1の所定温度未満)から通常温度(第1の所定温度以上かつ第2の所定温度未満)とすることができる。すなわち、比較的短時間で、バッテリ7が低温状態での走行モードから通常温度での走行モードに移行することが可能である。
【0134】
[第2実施形態]
次に、図12を参照しながら、本発明の第2実施形態のハイブリッド車両を説明する。本実施形態のハイブリッド車両は、動力伝達装置が1速段〜7速段を備える変速機を有する。第1実施形態と同様な構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0135】
本実施形態の第1主入力軸14は、変速比の異なる複数の変速段のうち、変速比順位で奇数番目又は偶数番目の変速段(本実施形態では奇数番目の3速段、5速段、7速段)の各ギヤ列の駆動ギヤを回転自在に軸支すると共に、電動機3に連結されている。
【0136】
具体的には、第1主入力軸14には、3速ギヤ24aと5速ギヤ24bとの間に、7速ギヤ24cが回転自在に軸支されている。3速ギヤ24aと7速ギヤ24cとの間には、第1主入力軸14に接続された第1同期噛合機構S1が設けられている。7速ギヤ24cと5速ギヤ24bとの間には、第1主入力軸14に接続された第3同期噛合機構S3が設けられている。
【0137】
本実施形態の第1同期噛合機構S1は、3速ギヤ24aと7速ギヤ24cとを第1主入力軸14に選択的に連結する。スリーブS1aが図示の中立位置から3速ギヤ24a側に、第1主入力軸14に沿って移動した場合、3速ギヤ24aと第1主入力軸14とが連結される。一方、スリーブS1aが図示の中立位置から7速ギヤ24c側に移動した場合、7速ギヤ24cと第1主入力軸14とが連結される。
【0138】
第3同期噛合機構S3は、5速ギヤ24bと第1主入力軸14とを連結自在に形成されている。スリーブS3aが図示の中立位置では、5速ギヤ24bは、第1主入力軸14に回転自在な状態である。スリーブS3aが図示の中立位置から5速ギヤ24b側に、第1主入力軸14に沿って移動した場合、5速ギヤ24bと第1主入力軸14とが連結される。
【0139】
本実施形態の第2主入力軸22は、変速比の異なる複数の変速段のうち、変速比順位で偶数番目又は奇数番目の変速段(本実施形態では偶数番目の2速段、4速段、6速段)の各ギヤ列の駆動ギヤを回転自在に軸支する。具体的には、第2主入力軸22には、2速ギヤ25aと4速ギヤ25bとの間に、6速ギヤ25cが回転自在に軸支されている。2速ギヤ25aと6速ギヤ25cとの間には、第2主入力軸22に接続された第2同期噛合機構S2が設けられている。6速ギヤ25cと4速ギヤ25bとの間には、第2主入力軸22に接続された第4同期噛合機構S4が設けられている。
【0140】
本実施形態の第2同期噛合機構S2は、2速ギヤ25aと6速ギヤ25cとを第2主入力軸22に選択的に連結する。スリーブS2aが図示の中立位置から2速ギヤ25a側に、第2主入力軸22に沿って移動した場合、2速ギヤ25aと第2主入力軸22とが連結される。一方、スリーブS2aが図示の中立位置から6速ギヤ25c側に移動した場合、6速ギヤ25cと第2主入力軸22とが連結される。
【0141】
第4同期噛合機構S4は、4速ギヤ25bと第2主入力軸22とを連結自在に形成されている。スリーブS4aが図示の中立位置では、4速ギヤ25bは、第2主入力軸22に回転自在な状態である。スリーブS4aが図示の中立位置から4速ギヤ25b側に、第2主入力軸22に沿って移動した場合、4速ギヤ25bと第2主入力軸22とが連結される。
【0142】
本実施形態では、第3副入力軸25と出力軸26とは、6速ギヤ列36を介して結合されている。この6速ギヤ列36は、6速ギヤ25cと出力軸26に固定されたギヤ26dとが噛合して構成されている。出力軸26と第2副入力軸24とは、7速ギヤ列37を介して結合されている。この7速ギヤ列37は、出力軸26に固定されたギヤ26dと7速ギヤ24cとが噛合して構成されている。なお、出力軸26に固定される各ギヤ列のギヤ26a,26b,26cを従動ギヤという。
【0143】
上記ギヤ24a、ギヤ24b、24cは、第1の変速群に相当する。また、ギヤ25a、ギヤ25b、25cは、第2の変速群に相当する。第1の変速群及び第2の変速群は変速機に相当する。
【0144】
本実施形態のハイブリッド車両では、バッテリ7の温度に応じて、ECU8が第1実施形態と同様な制御を行う。
【0145】
詳細には、本実施形態の低高温度処理部8dは、温度検知部8aにより検知された温度が所定温度TL(第1の所定温度)未満又は第2の所定温度TH以上のときに、第1の変速群(奇数段)の変速段のうち中間段(本実施形態では3速段又は5速段)に規定する。つまり、本実施形態では、上記奇数段のうち一つの変速段(3速段又は5速段)に限定する。こうすることで、例えば、変速時の電動機による変速先の変速段への回転速度を合わせる動作を行うことなく、ドライバビリティの低下を防止することが可能である。
【0146】
また、例えば、上記第1の変速群(奇数段)の中間段(3速段又は5速段)が選択された状態から、アップシフト又はダウンシフトを行う場合には、電動機3が接続されていない動力伝達軸(第2主入力軸22)側に設けられた偶数段(2速段又は4速段、あるいは4速段又は6速段)に変速を行うことで、電動機3による回転あわせを行う必要がなく、バッテリの出力低下に伴う変速応答性の低下を防止すると共に、ドライバビリティの低下を防止することができる。
【0147】
また、本実施形態の低高温度処理部8dは、第2の変速群(偶数段)を介してエンジン2から駆動輪4へ動力を伝達可能とし、且つ、第1の変速群(奇数段)を介して電動機3と駆動輪4との間の動力を伝達可能として、電動機3を回転させるように制御する。詳細には、低高温度処理部8dは、例えば、2速段と3速段、3速段と4速段、4速段と5速段、5速段と6速段、又は6速段と7速段が、出力軸22に共噛み状態となるように制御する。この状態で、電動機3を回転させることができ、バッテリ7の充放電を行うことが可能である。すなわち、バッテリ7の内部抵抗に電流を流すことで、バッテリ7が加温される。
【0148】
以上、実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではない。例えば、ハイブリッド車両の変速段は7速段以上の有段変速段を有していてもよい。
【0149】
また、例えば、ハイブリッド車両の動力伝達装置は、電動機のロータと遊星歯車機構のリングギヤとが互いに固定し、電動機のロータとサンギヤが非固定状態で、互いに回転自在となるように構成されていてもよい。
【0150】
また、ECU8の構成は、上述した形態に限られるものではない。
【符号の説明】
【0151】
1…動力伝達装置、2…エンジン(内燃機関:ENG)、2a…駆動力入力軸(入力軸)、3…電動機、3a…ロータ、3b…ステータ、4…駆動輪(被駆動部)、5…補機、6…パワードライブユニット(PDU)、7…バッテリ(蓄電装置、二次電池)、8…電子制御ユニット(ECU)、8a…バッテリ温度検知部、8b…SOC検知部、8c…通常温度処理部、8d…低高温度処理部、9…駆動力設定部、10…各種センサ、11…バッテリ温度検出部、12…SOC検出部、13…動力合成機構(遊星歯車装置)、13c…キャリア、13p…プラネタリギヤ、13r…リングギヤ、13s…サンギヤ、14…第1主入力軸(第1駆動ギヤ軸)、15…第1副入力軸、16…リバース軸、17…リバースギヤ軸、18…ギヤ列、19…中間軸、20…ギヤ列、21…ギヤ列、22…第2主入力軸(第2駆動ギヤ軸)、23…ギヤ列、24…第2副入力軸、25…第3副入力軸、26…出力軸、26a,26b…従動ギヤ、27…2速ギヤ列、28…4速ギヤ列、29…3速ギヤ列、30…5速ギヤ列、31…差動歯車ユニット、32…車軸、33…ハウジング(不動部)、34…ベルト機構、40…空調装置、41…コンプレッサ、42…熱交換器(車両室外)、43…熱交換器(車両室内)、44…送風装置(ファン)、C1…第1クラッチ(断接装置)、C2…第2クラッチ、S1…第1同期噛合機構、S2…第2同期噛合機構、SL…第3同期噛合機構、SR…後進同期噛合機構。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と、蓄電装置に接続された電動機とを有し、該電動機及び/又は該内燃機関から変速機を介して被駆動部への動力伝達及び該電動機と該内燃機関との間の動力伝達を断続可能とする制御部を備えるハイブリッド車両であって、
前記蓄電装置の温度を検知又は推定する温度検知部を備え、
前記変速機は、前記電動機及び/又は前記内燃機関から前記被駆動部へ動力を伝達可能であって変速比の異なる複数の変速段を備える第1の変速群と、前記内燃機関から前記被駆動部へ動力を伝達可能な第2の変速群とを有し、
前記制御部は、前記温度が第1の所定温度未満である低温状態又は該第1の所定温度より高い第2の所定温度以上である高温状態では、前記第1の変速群の変速段を中間段に変速するように前記電動機及び前記内燃機関の出力を制御し、前記第1の変速群の中間段と隣り合う前記第2の変速群の変速段を用いて走行することを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項2】
請求項1に記載のハイブリッド車両において、
前記制御部は、前記低温状態、前記高温状態、及びこれらのいずれでもない通常状態に対応して、前記電動機及び前記内燃機関の出力を制御する第1、第2及び第3の制御パターンを定めた制御マップを有し、前記低温状態又は前記高温状態では、前記通常状態に対応する第3の制御パターンから前記第1又は第2の制御パターンに切り替えた制御マップに基づいて制御することを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項3】
請求項2に記載のハイブリッド車両において、
前記制御部は、前記第2の変速群を介して前記内燃機関から前記被駆動部へ動力を伝達可能とし且つ前記第1の変速群を介して前記電動機と前記被駆動部との間の動力を伝達可能として、前記電動機を回転させるように制御することを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項4】
請求項3に記載のハイブリッド車両において、
前記制御部は、前記低温状態では、該電動機と該内燃機関との間の動力伝達を可能とすると共に、前記内燃機関及び前記電動機から前記第1の変速群を介して前記被駆動輪へ動力伝達を行うように制御することを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項5】
請求項1に記載のハイブリッド車両において、
前記電動機又は前記内燃機関の出力で駆動される補機を備え、
該補機は、前記高温状態では前記第1の変速群の中間段で駆動されることを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項6】
請求項5に記載のハイブリッド車両において、
前記補機は、エアコンのコンプレッサであり、これを駆動することにより車両内を通じて前記蓄電装置を冷却することを特徴とするハイブリッド車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−121414(P2011−121414A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−278936(P2009−278936)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】