説明

ハロゲンフリーの難燃性接着剤組成物、フレキシブル銅張積層板、カバーレイ及び接着剤フィルム

【課題】保存安定性が良好であるハロゲンフリーの難燃性接着剤組成物、その難燃性接着剤組成物を用いたハンドリング性及び成形性に優れ、高い密着性、屈曲性、耐熱性、絶縁信頼性、及び良好な反り特性を併せ持つフレキシブル銅張積層板、カバーレイ及び接着剤フィルムを提供する。
【解決手段】(A)ポリエポキシド化合物、(B)下記の一般式(1)で示されるビス−p−アミノベンゾアート、(C)エポキシ用硬化促進剤、(D)ホスファゼン化合物、(E)有機ホスフィン酸塩化合物、(F)合成ゴム、及び(G)無機充填剤を必須成分とし、接着剤組成物全体に対して、(D)成分及び(E)成分の合計量が5〜30質量%であり、且つ(D)成分及び(E)成分の質量割合(D)/「(D)+(E)」が、0.3〜0.7であることを特徴とするハロゲンフリーの難燃性接着剤組成物である。


(但し、式中m,nはそれぞれ独立に1〜12の整数を表し、m×nは6〜20である)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保存安定性が良好であるハロゲンフリーの難燃性接着剤組成物、並びにそれを用いたハンドリング性及び成形性に優れ、高い密着性、屈曲性、耐熱性、絶縁信頼性、及び良好な反り特性を併せ持つフレキシブル銅張積層板、カバーレイ及び接着剤フィルムに関し、さらにこれらを用いて製造されたフレキシブルプリント配線板及びプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エレクトロニクス分野の発展が目覚ましく、特に通信用・民生用の電子機器の小型化、軽量化、高密度化が進み、これらの性能に対する要求がますます高度なものとなっている。
このような要求に対して、フレキシブルプリント配線板は可撓性を有し、繰り返し屈曲に耐えるため、狭い空間に立体的に高密度の実装が可能であり、電子機器への配線、ケーブル、コネクター機能等を付与した複合部品として、その用途が拡大しつつある。
カバーレイとは、電気絶縁性の基材フィルムの片面に半硬化状態の接着剤を塗布したものと離型材とを貼り合わせたものである。これは、フレキシブルプリント配線板の回路保護や屈曲性の向上等を目的として使用されている。
このカバーレイに要求される特性としては、保存性、密着性、耐熱性、電気特性、成形性を含む加工性等が挙げられる。
【0003】
接着剤フィルムは、離型材の片面に半硬化状態の接着剤を塗布したもの、あるいは離型材の片面に半硬化状態の接着剤を塗布し、さらに離型材と貼り合わせたものである。これは、フレキシブルプリント配線板同士を貼り合わせて多層フレキシブル印刷配線板を製造する場合、フレキシブルプリント配線板と補強板とを貼り合わせる場合等に接着材料として使用される。この接着剤フィルムに要求される特性としては、保存性、密着性、耐熱性、電気特性、成形性を含む加工性等が挙げられる。
【0004】
最近では、フレキシブルプリント配線板の高多層化及びファインパターン化が進展し、フレキシブルプリント配線板を製造する上で、高品位・高精度、高歩留に対する要求が強く、そのため作業性及びその成形性等の向上がさらに厳しい要求となって出されている。 具体的には、上記フレキシブルプリント配線板の製造の際、中間材料(カバーレイ、接着剤フィルム、銅張積層板)のハンドリング性で樹脂割れ、反り等の問題がある。
また成形時における、スルホール部の埋込性と基板端部への樹脂の流れ出し(フロー)の適正を満足させることが、生産性向上のため実施する短時間成形の影響もあり、管理を含めて益々厳しく、困難な状況になってきている。
さらに、シート材料(カバーレイ、接着剤フィルム)の保存安定性に起因するフローのバラつき発生の問題が上記成形性の難易度に拍車をかけている。
【0005】
一方、使用する環境は、高温高湿化しており、フレキシブルプリント配線板に対する要求特性がより高度なものとなってきている。従って、フレキシブルプリント配線板に用いられる絶縁材料には高摺動屈曲性、高耐熱、高密着性で高密度実装が可能であることが要求され、このため、はんだ耐熱性や銅箔引剥し強さ、高絶縁信頼性に対する要求レベルは益々厳しい。
さらには、環境問題を背景として、電子機器に実装される部品に対してハロゲン化合物の使用を禁止する傾向があり、従来、フレキシブルプリント配線板用の基板材料を難燃化するために用いられてきた臭素化合物の使用が困難となり、リン元素を主体とした代替難燃剤を使用する取組が種々なされているが(特許文献1〜6)、上記要求特性をバランス良く満足するには十分でなく、まだまだ改善の余地は多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−2294号公報
【特許文献2】特開2004−115612号公報
【特許文献3】特開2005−53989号公報
【特許文献4】特開2006−328112号公報
【特許文献5】特開2001−339132号公報
【特許文献6】特開2007−81151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ハロゲンを含まずに良好な難燃性を示す(ハロゲンフリー)とともに、上記従来技術の欠点を解消した接着剤組成物を提供することにある。
さらに、本発明は、そのような難燃性接着剤組成物を用いたフレキシブル銅張積層板、カバーレイ及び接着剤フィルム並びにこれらを用いて製造されたフレキシブルプリント配線板、プリント配線板を提供することをも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の目的を達成しようと鋭意研究を重ねた結果、接着剤組成物に、特定ビス−p−アミノベンゾアートを含有させるとともに、ホスファゼン化合物と有機ホスフィン酸塩化合物その他を適切に組み合わせるという新規な配合によって、ハロゲンを含まずに良好な難燃性を示すとともに、成形性、耐湿性、耐熱性、絶縁性等が向上し、さらには保存安定性、屈曲性、反り、ハンドリング性等がより向上し、上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は、
1.(A)ポリエポキシド化合物、
(B)下記の一般式(1)で示されるビス−p−アミノベンゾアート、
【0009】
【化1】

【0010】
(但し、式中m,nはそれぞれ独立に1〜12の整数を表し、m×nは6〜20である)
(C)エポキシ用硬化促進剤、
(D)ホスファゼン化合物、
(E)有機ホスフィン酸塩化合物、
(F)合成ゴム、
及び(G)無機充填剤を必須成分とする接着剤組成物であって、該接着剤組成物全体に対して、(D)成分及び(E)成分の合計量が5〜30質量%であり、且つ(D)成分及び(E)成分の質量割合(D)/「(D)+(E)」が、0.3〜0.7であることを特徴とするハロゲンフリーの難燃性接着剤組成物。
2.(D)ホスファゼン化合物が、下記一般式(2)に示すシクロホスファゼンオリゴマー、
【0011】
【化2】

【0012】
(但し、式中、X1及びX2は、それぞれ独立に水素原子であるかハロゲン原子を含まない有機基を、kは3〜10の整数をそれぞれ表す。)
であることを特徴とする上記1に記載のハロゲンフリーの難燃性接着剤組成物。
3.(E)有機ホスフィン酸塩化合物が、有機ホスフィン酸アルミニウムであることを特徴とする上記1又は2に記載のハロゲンフリーの難燃性接着剤組成物。
4.さらに、(H)トリアジンジチオール誘導体と、(I)ゴム老化防止剤を含有してなることを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載のハロゲンフリーの難燃性接着剤組成物。
5.前記(I)ゴム老化防止剤が、フェノール類、芳香族アミン類並びにヒドラジン及びその誘導体から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする上記4に記載のハロゲンフリーの難燃性接着剤組成物。
【0013】
6.上記1〜5のいずれかに記載の接着剤組成物でポリイミドフィルムの少なくとも片面に銅箔を貼り合わせてなることを特徴とするフレキシブル銅張積層板。
7.上記1〜5のいずれかに記載の接着剤組成物でポリイミドフィルムの表面に樹脂層を形成してなることを特徴とするカバーレイ。
8.上記1〜5のいずれかに記載の接着剤組成物をフィルム状に形成してなることを特徴とする接着剤フィルム。
9.上記1〜5のいずれかに記載の接着剤組成物でポリイミドフィルムの少なくとも片面に銅箔を貼り合わせた後、回路を形成してなることを特徴とするフレキシブルプリント配線板。
10.上記9記載のフレキシブルプリント配線板上に上記7のカバーレイを貼り合わせてなることを特徴とするフレキシブルプリント配線板。
11.上記9又は10記載のフレキシブルプリント配線板と補強板を、上記8記載の接着剤フィルムを介して貼り合わせてなることを特徴とする補強板付きプリント配線板。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ハロゲンを含有しないで優れた難燃性を示し、しかも成形性、耐熱性、絶縁性等が向上し、さらには保存安定性、屈曲性、反り、ハンドリング性等がより向上したフレキシブル銅張積層板、カバーレイ、接着剤フィルムを与える接着剤が提供される。
このような材料を用いれば、良好な環境特性を付与し、かつ種々の特性に優れたフレキシブルプリント配線板を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に用いる(A)ポリエポキシド化合物としては、グリシジルエーテル系エポキシ樹脂が好適である。これには、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられ、これらは単独又は2種以上混合して使用することができる。また、このエポキシ樹脂には、グリシジルエーテル系の変性エポキシ樹脂も含む。変性エポキシ樹脂として例えば、BT樹脂(ビスマレイミド・トリアジン樹脂)変性エポキシ樹脂などを使用することができる。
(A)成分のビスフェノールA型エポキシ樹脂等は、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとをアルカリの存在下で反応させるために、その反応残渣、反応副生成物としての不純物ハロゲンが残存する。
ハロゲンフリーの本発明において使用される(A)〜(G)成分は、それぞれについて不純物ハロゲンの含有量が0.1質量%以下のものとすることが好ましい。
【0016】
本発明に用いる(B)硬化剤として用いられるビス−p−アミノベンゾアートは上記一般式において、m、nはそれぞれ独立に1〜12の整数であり、かつm×nは6〜20である。この値が6未満であると可撓性が十分でなく、材料のハンドリング性、反り等が充分でなくなる。また、20を超えると樹脂の反応性を低下させ、耐熱性等の製品の信頼性を損なう。該当材料の市販品では、商品名でエラストマー1000(イハラケミカル社製、アミン当量309.5、m×n=13.6、Mw1238)が挙げられる。
また、その他の硬化剤として、エポキシ樹脂の硬化剤として用いられる公知のものを併用しても差し支えない。
具体的には、ジエチレントリアミン、テトラエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等の脂肪族アミン系硬化剤、イソホロンジアミン等の脂環式アミン系硬化剤、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、フェニレンジアミン等の芳香族アミン系硬化剤、無水フタル酸、無水ピロメリト酸、無水トリメリト酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等の酸無水物系硬化剤、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、ジシアンジアミド、三フッ化ホウ素アミン錯塩、硼弗化錫、硼弗化亜鉛等の硼弗化物、オクチル酸錫、オクチル酸亜鉛等のオクチル酸塩等が挙げられ、好ましくは脂肪族アミン系硬化剤、芳香族アミン系硬化剤、イミダゾール化合物、ジシアンジアミド、硼弗化物、及びオクチル酸塩、芳香族アミン系硬化剤、ジシアンジアミド、及びイミダゾール化合物である。これらの硬化剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
(B)成分の配合量は、(A)成分のエポキシ当量、接着剤組成物の硬化状態、特性のバランス等を考慮して決められるが、概ね(A)成分100質量部に対して0.1〜40質量部であり、0.5〜30質量部であることがより好ましい。
この配合量が0.1質量部以上であれば、良好な可撓性、ライフ特性及び反り、ハンドリング性向上効果が発揮されると共に、エポキシ樹脂が十分に硬化し、半田耐熱性及び耐溶剤性が良好となる。一方、40質量部以下の場合には組成物が十分に硬化し、半田耐熱性等信頼性を損なうことがない。
なお、(B)成分とその他の硬化剤の割合は、硬化剤全体の20質量%以上を(B)成分が含有することが、その効果を発現するために好ましい。
【0018】
本発明においては、(C)エポキシ用硬化促進剤を用いる。
硬化促進剤としては、通常のエポキシ樹脂用の硬化促進剤として用いられる第三級アミン、2−エチル−4−イミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、芳香族アミン、三フッ化ホウ素錯化合物、トリフェニルホスフィン等が挙げられる。好ましくは三フッ化ホウ素錯化合物である。その三フッ化ホウ素錯化合物としては、三フッ化ホウ素モノメチルアミン錯体、三フッ化ホウ素ピペリジン錯体、三フッ化ホウ素トリエタノールアミン錯体、三フッ化ホウ素ベンジルアミン錯体、三フッ化ホウ素イミダゾール錯体等が挙げられる。これらの硬化促進剤は単独又は2種以上混合して用いることができる。
本発明に用いる(C)エポキシ用硬化促進剤の配合量は、(A)エポキシ樹脂100質量部に対して、硬化促進剤は0.01〜5質量部の範囲であることが好ましい。
【0019】
本発明に用いる(D)ホスファゼン化合物としては、耐熱性、耐湿性、難燃性、耐薬品性の観点から、シクロホスファゼンオリゴマーが好適である。
シクロホスファゼンオリゴマーは、下記一般式に示されるものであり、さらにその融点は、80℃以上であることが好ましい。
【0020】
【化3】

(但し、式中、X1及びX2は、それぞれ独立に水素原子であるかハロゲンを含まない有機基であって、それらが互いに同じでも異なってもよい。また、式中のkは3〜10の整数を表す。)
シクロホスファゼンオリゴマーにおけるハロゲンを含まない有機基X1及びX2としては、アルコキシ基、フェノキシ基、アミノ基、アリル基などが挙げられる。
【0021】
ホスファゼン化合物の市販品としては、例えば、商品名で、SPE−100(大塚化学(株)製、シクロホスファゼン化合物、リン含有量:13質量%、融点:110℃)等が挙げられる。
【0022】
本発明に用いる(E)有機ホスフィン酸塩化合物は、具体的には、下記一般式(3)に示されるものであり、
【化4】

(式中、R16及びR17はそれぞれ独立に、非置換または置換の1価炭化水素基を表し、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、周期表4、8〜10、12、13族元素を表し、qはMの価数で、1〜4の整数である。)で表される有機ホスフィン酸塩等が挙げられる。
【0023】
上記一般式(3)中、Mとしては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属;チタン等の周期表4族元素;鉄、コバルト、ニッケル等の周期表8〜10族元素;亜鉛等の周期表12族元素;アルミニウム等の周期表13族元素等が挙げられ、好ましくはアルミニウムである。
上記一般式(3)中、R16及びR17で表される非置換または置換の1価炭化水素基は、通常、炭素原子数1〜30、好ましくは1〜20、典型的には1〜10のものである。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等のアルキル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基等が挙げられ、好ましくは炭素原子数1〜3のアルキル基、より好ましくはエチル基である。
【0024】
(E)有機ホスフィン酸塩化合物の具体例としては、有機ホスフィン酸アルミニウム、有機ホスフィン酸カルシウム、有機ホスフィン酸亜鉛等が挙げられ、好ましくは有機ホスフィン酸アルミニウムであり、より好ましくはジアルキルホスフィン酸アルミニウム、さらに好ましくはジエチルホスフィン酸アルミニウムである。
【0025】
前記(D)成分及び(E)成分の配合量は、接着剤組成物全体に対して、(D)成分及び(E)成分の合計量が5〜30質量%であり、且つ(D)成分及び(E)成分の質量割合(D)/「(D)+(E)」が、0.3〜0.7であることを要する。
なお、(D)及び(E)成分はそれぞれ一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
ここで、上記(D)成分及び(E)成分の合計量が5質量%未満では難燃効果が低く、30質量%を超えると、特に接着強度等の接着剤としての緒特性が低下する。
また、上記の(D)/「(D)+(E)」が、0.3未満では保存安定性が低下し、0.7を超えると樹脂フローのコントロールが困難となって成形性が悪化する。
【0026】
本発明に用いる(F)合成ゴムとしては、アクリルゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンメチルアクリレートアクリロニトリルゴム、ブタジエンゴム、カルボキシル基含有アクリロニトリルブタジエンゴム、ビニル基含有アクリロニトリルブタジエンゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、ポリビニルブチラール等のハロゲンを含まないゴムのうち少なくとも1種を用いることができる。
本発明に用いる(G)無機充填剤としては、難燃性などの補助添加剤として使用する無機充填剤であり、接着剤としての諸特性を阻害しない範囲で可能である。
これらの充填剤には、タルク、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等が挙げられ、これらは単独又は2種以上混合して使用することができる。本発明の接着剤組成物において、(G)の無機充填剤は、2〜50質量%の割合であることが好ましい。
【0027】
本発明において必要に応じて用いることができる(H)トリアジンジチオール誘導体としては、例えば一般式(4)
【化5】

(式中、R1は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基、アミノ基、−NR23、−NHR4、−OR5又は−SR6で表される基である。)で表される化合物が挙げられる。この置換基R1としては、水素原子、アルキル基又はフェニル基であることが好ましい。
【0028】
ここで、アルキル基としては、炭素原子数が1〜25、好ましくは1〜18のアルキル基が挙げられる。このようなアルキル基としては、直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、セチル基、ステアリル基、1−メンチル基等が挙げられ、メチル基又はエチル基であることが好ましい。
また、アルケニル基としては、炭素原子数が2〜20、好ましくは2〜10のアルケニル基が挙げられる。
このようなアルケニル基としては、例えば、プロペニル基、イソプロペニル基、3−メチル−2−ブテニル基、アリル基、2−メチルアリル基等が挙げられ、イソプロペニル基であることが好ましい。
【0029】
また、アルキニル基としては、炭素原子数が2〜20、好ましくは2〜10のアルキニル基が挙げられる。このようなアルキニル基としては、例えば、プロパルギル基、1−フェニルプロパルギル基等が挙げられ、プロパルギル基であることが好ましい。
また、アラルキル基としては、炭素原子数が7〜20、好ましくは7〜10のアラルキル基が挙げられる。このようなアラルキル基としては、例えば、4−フェニルブチル基等が挙げられる。
また、アリール基としては、フェニル基、メトキシフェニル基、o−トリル基、p−ニトロフェニル基、2−ニトロフェニル基、3−ニトロフェニル基、p−フルオロフェニル基、p−メトキシフェニル基、p−アミノフェニル基、N−メチルアミノフェニル基、p−(ジメチルアミノ)フェニル基、4−アセチルフェニル基、p−ヨードフェニル基、p−クロロフェニル基、2,4,6−トリクロロフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、2,4,6−トリブロモフェニル基、2,4−ジクロロフェニル基、2,4−ジブロモフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基等が挙げられ、フェニル基であることが好ましい。
【0030】
また、−NR23で表される置換アミノ基としては、置換基R2及びR3がそれぞれ同一又は異なって、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリル基又はアラルキル基であり、アルキル基又はアルケニル基であることが好ましい。
ここで、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリル基及びアラルキル基としては、R1と同様の基が挙げられる。ここで、アルキル基としては、R1の説明で挙げた基の他に、2−ピペリジノエチル基、フッ素置換されたフルオロアルキル基、環状のシクロアルキル基であることも好ましく、フルオロアルキル基としては、テトラフルオロエチル基等、シクロアルキル基としては、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等が挙げられる。
また、アラルキル基としては、ベンジル基又は置換ベンジル基であることも好ましく、例えば、ベンジル基、メチルベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基等が挙げられる。
また、−NHR4で表されるモノ置換アミノ基としては、置換基R4が、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基、アニリノ基、ヒドロキシアニリノ基、p−メチルアニリノ基及びモルホリノ基から選ばれる基を示し、これらのうちでは、アルキル基が好ましい。
【0031】
ここで、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基としては、前記R2で示した基と同様の基が例示される。ヒドロキシアニリノ基としては、o−,m−,p−ヒドロキシアニリノ誘導体に由来する基が挙げられる。
また、−OR5で表される基としては、置換基R5がアルキル基、アルケニル基、アラルキル基又はアリール基から選ばれる基を示す。
ここで、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基は、R2と同様の基を挙げることができ、アラルキル基としては、例えば、4−フェニルブチル基等が挙げられ、アリール基としては、フェニル基、ハロゲノフェニル基等の置換フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
ここで、ハロゲノフェニル基としては、例えば、p−ヨードフェニル基、p−クロロフェニル基、p−ブロモフェニル基、2,4−ジクロロフェニル基、2,4−ジブロモフェニル基、2,4−ジヨードフェニル基、2,4,6−トリクロロフェニル基、2,4,6−トリブロモフェニル基等が挙げられる。
また、−SR6で表される基としては、置換基R6がアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基又はアリール基から選ばれる基を示す。これらの基としては、前記R5で示した置換基と同様の基を挙げることができる。
【0032】
このような前記一般式(4)で表されるジチオール化合物としては、具体的には、例えば、s−トリアジン−2,4−ジチオール、6−メチル−s−トリアジン−2,4−ジチオール、6−フェニル−s−トリアジン−2,4−ジチオール、6−アミノ−s−トリアジン−2,4−ジチオール、6−ジヘキシルアミノ−s−トリアジン−2,4−ジチオール、6−[ビス(2−ヘキシル)アミノ]−s−トリアジン−2,4−ジチオール、6−ジエチルアミノ−s−トリアジン−2,4−ジチオール、6−ジシクロヘキシルアミノ−s−トリアジン−2,4−ジチオール、6−ジフェニルアミノ−s−トリアジン−2,4−ジチオール、6−ジベンジルアミノ−s−トリアジン−2,4−ジチオール、6−ジアリルアミノ−s−トリアジン−2,4−ジチオール、6−ジドデシルアミノ−s−トリアジン−2,4−ジチオール、6−ジブチルアミノ−s−トリアジン−2,4−ジチオール、6−ジメチルアミノ−s−トリアジン−2,4−ジチオール、6−フェニルアミノ−s−トリアジン−2,4−ジチオール、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニリノ)−s−トリアジン−2,4−ジチオール、6−ステアリルアミノ−s−トリアジン−2,4−ジチオール、6−エチルアミノ−s−トリアジン−2,4−ジチオール、6−ヘキシルアミノ−s−トリアジン−2,4−ジチオール、6−(cis−9−オクタデセニルアミノ)−s−トリアジン−2,4−ジチオール、6−シクロヘキシルアミノ−s−トリアジン−2,4−ジチオール、6−(4−アニリノ−N−イソプロピルアニリノ)−s−トリアジン−2,4−ジチオール、6−メトキシ−s−トリアジン−2,4−ジチオール、6−(1−ナフチルオキシ)−s−トリアジン−2,4−ジチオール、6−(m−クロロフェノキシ)−s−トリアジン−2,4−ジチオール、6−(2,4−ジメチルフェノキシ)−s−トリアジン−2,4−ジチオール、6−フェノキシ−s−トリアジン−2,4−ジチオール等が挙げられる。これらのトリアジンジチオール誘導体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
この(H)トリアジンジチオール誘導体は、銅配線と樹脂層との密着性を改良するために十分となる量で用いられ、通常、(F)合成ゴム100質量部に対して0.01〜5質量部であることが好ましく、0.1〜5質量部の割合で用いることがより好ましい。
5質量部以下であるとコスト的に有利であり、かつ、樹脂の物性低下を抑制することができ、0.01質量部以上であると密着性を十分に改良することができる。
【0034】
次に、本発明で用いられる(I)ゴム老化防止剤は、フレキシブルプリント配線板の銅配線表面を不活性化させることにより、配線層の腐食を抑制する機能を有する公知のものであれば種々のものを制限なく用いることができる。
使用にあたっては、耐熱性・耐熱変色防止性等の物性から適宜選択すればよく、例えば、フェニル−α−ナフチルアミン等の芳香族アミン類、ヒドロキノン類、ヒンダードフェノール類、ヒンダードアミン、チオプロピオン酸誘導体、有機リン酸エステル、ヒドラジド誘導体、ジチオカルバミン酸塩とその誘導体、チオウレア誘導体、亜リン酸誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、サリチル酸誘導体、有機チオ酸、ヒドラジン誘導体、2,4−ジヒドロキシ安息香酸アニリド誘導体等が挙げられ、これらは単独又は2種以上混合して使用することができる。
【0035】
具体的には、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール、ビス[2−(2−ヒドロキシベンゾイル)ヒドラジン]ドデカン二酸、4,4′−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、トリオクタデシルフォスフェート、トリフェニルフォスフェート、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジチオフォスフェート、ジ−t−チオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネートなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
本発明で用いるゴム老化防止剤の配合量は、(F)合成ゴム100質量部に対して0.01〜5質量部であることが好ましく、0.1〜5質量部の割合で用いることがより好ましい。5質量部以下であると添加効果が充分に発揮されると共に、材料の着色が起こったり、製品表面にブツが発生するのを抑制することができ、コスト的にも有利であり、かつ、樹脂の物性が低下するのを抑制することができ、一方、0.01質量部以上であると良好な耐熱性、耐熱変色防止性が得られる。
【0037】
本発明の接着剤組成物は上述した(A)〜(G)成分を必須成分、(H)成分と(I)成分を任意成分とするが、本発明の目的に反しない限度において、また必要に応じて、さらに顔料、劣化防止剤等を添加配合することができる。
以上述べた本発明の接着剤組成物は、これをプロピレングリコールモノメチルエーテル等の好適な有機溶剤で希釈してワニスとなし、これをポリイミドフィルム上に塗布し、熱ロールで銅箔を片面または両面に貼り合わせた後、加熱硬化するという通常の方法により、本発明のフレキシブル銅張積層板を製造することができる。
また、本発明の接着剤組成物は、上記と同様にプロピレングリコールモノメチルエーテル等の好適な有機溶剤で希釈してワニスとなし、これをポリイミドフィルム上に塗布し、加熱乾燥するという通常の方法により、本発明のカバーレイを製造することができる。
また、本発明の接着剤組成物は、上記と同様にプロピレングリコールモノメチルエーテル等の好適な有機溶剤で希釈してワニスとなし、キャリアフィルム上に塗布し、加熱乾燥して剥離するという通常の方法により接着剤フィルムを製造することができる。
【0038】
また、上記フレキシブル銅張積層板に回路を形成し、必要であれば穴明けスルーホールメッキを施し、ついで所定箇所に穴を明けた該カバーレイを重ねて加熱加圧成形するという通常の方法で、本発明のフレキシブルプリント配線板を製造することができる。
更にこのフレキシブルプリント配線板に上記接着剤フィルムを介して補強板を重ね合わせ、加熱加圧成形するという通常の方法で、本発明の補強板付きプリント配線板を製造することができる。
また、多層プリント配線板は、上記フレキシブルプリント配線板に該接着剤フィルムを介して上記フレキシブル銅張積層板またはハロゲンを含まないガラスエポキシ銅張積層板などを重ね合わせ、加熱加圧成形し、スルーホールを形成し、スルーホールメッキを行った後、所定の回路を形成するという通常の方法により製造することができる。
【実施例】
【0039】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
以下の実施例及び比較例において「部」とは「質量部」を意味する。
【0040】
[実施例1]
カルボキシル基含有アクリロニトリルブタジエンゴムのニポール1072(日本ゼオン社製 商品名 結合アクリロニトリル含量27質量%)150部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂のエピコート1001(油化シェル社製 商品名エポキシ当量470)320部、ビス−p−アミノベンゾアート(イハラケミカル社製 商品名エラスマー1000、アミン当量309.5、m×n=13.6、Mw1238)65部、フェノキシシクロホスファゼンオリゴマー(融点100℃)100部、ジエチルホスフィン酸アルミニウム(クラリアント社製 商品名OP−935)100部、水酸化アルミニウム150部及び3フッ素化ホウ素モノメチルアミン2.0部からなる混合物に溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)及びメチルエチルケトンを加えて固形分40質量%の接着剤を調製した。
この接着剤を厚さ25μmのポリイミドフィルムのカプトン(東レデュポン社製、商品名)にロールコーターで乾燥後の厚さが15μmになるように塗布乾燥し、その接着界面と銅箔(35μm)の処理面とを重ね合わせて120℃のラミネートロールで圧着した後、オーブンで100℃,3時間、130℃,3時間、160℃,3時間処理し、接着剤を硬化させてフレキシブル銅張積層板を得た。
また、上記の接着剤を厚さ25μmのポリイミドフィルムのカプトン(東レデュポン社製、商品名)にロールコーターで乾燥後の厚さが25μmになるように塗布乾燥し、カバーレイを得た。このカバーレイを上記フレキシブル銅張積層板に重ね合わせ、熱プレスで160℃,4MPa,1時間加熱加圧接着し、評価用のカバーレイ付きフレキシブル銅張積層板を作製した。
【0041】
[実施例2]
カルボキシル基含有アクリロニトリルブタジエンゴムのニポール1072(日本ゼオン社製 商品名 結合アクリロニトリル含量27質量%)150部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂のエピコート1001(油化シェル社製 商品名エポキシ当量470)320部、DOS(4,4′−ジアミノジフェニルスルホン)40部、ビス−p−アミノベンゾアート(イハラケミカル社製 商品名エラスマー1000、アミン当量309.5、m×n=13.6、Mw1238)25部、フェノキシシクロホスファゼンオリゴマー(融点100℃)100部、ジエチルホスフィン酸アルミニウム(クラリアント社製 商品名OP−935)100部、水酸化アルミニウム150部及び3フッ素化ホウ素モノメチルアミン2.0部からなる混合物に溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)及びメチルエチルケトンを加えて固形分40質量%の接着剤を調製した。
この接着剤を用い、実施例1と同様にして、それぞれのフレキシブル銅張積層板、カバーレイ、カバーレイ付きフレキシブル銅張積層板を作製した。
【0042】
[実施例3]
カルボキシル基含有アクリロニトリルブタジエンゴムのニポール1072(日本ゼオン社製 商品名 結合アクリロニトリル含量27質量%)150部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂のエピコート1001(油化シェル社製 商品名 エポキシ当量470)320部、ビス−p−アミノベンゾアート(イハラケミカル社製 商品名エラスマー1000、アミン当量309.5、m×n=13.6、Mw1238)65部、フェノキシシクロホスファゼンオリゴマー(融点100℃)100部、ジエチルホスフィン酸アルミニウム(クラリアント社製 商品名OP−935)100部、トリアジンジチオール誘導体として6−ジブチルアミノ−s−トリアジン−2,4−ジチオール(三協化成社製 商品名ZISNET−DB)2.0部、老化防止剤として2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(川口化学社製、商品名アンテージBHT)1.5部、水酸化アルミニウム150部及び3フッ素化ホウ素モノメチルアミン2.0部からなる混合物に溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)及びメチルエチルケトンを加えて固形分40質量%の接着剤を調製した。
この接着剤を用い、実施例1と同様にして、それぞれのフレキシブル銅張積層板、カバーレイ、カバーレイ付きフレキシブル銅張積層板を作製した。
【0043】
[比較例1]
カルボキシル基含有アクリロニトリルブタジエンゴムのニポール1072(日本ゼオン社製 商品名 結合アクリロニトリル含量27質量%)150部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂のエピコート1001(油化シェル社製 商品名 エポキシ当量470)320部、ビス−p−アミノベンゾアート(イハラケミカル社製 商品名エラスマー1000、アミン当量309.5、m×n=13.6、Mw1238)65部、ジエチルホスフィン酸アルミニウム(クラリアント社製 商品名OP−935)200部、トリアジンジチオール誘導体として6−ジブチルアミノ−s−トリアジン−2,4−ジチオール(三協化成社製 商品名ZISNET−DB)2.0部、老化防止剤として2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(川口化学社製、商品名アンテージBHT)1.5部、水酸化アルミニウム150部及び3フッ素化ホウ素モノメチルアミン2.0部からなる混合物に溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)及びメチルエチルケトンを加えて固形分40質量%の接着剤を調製した。
この接着剤を用い、実施例1と同様にして、それぞれのフレキシブル銅張積層板、カバーレイ、カバーレイ付きフレキシブル銅張積層板を作製した。
【0044】
[比較例2]
カルボキシル基含有アクリロニトリルブタジエンゴムのニポール1072(日本ゼオン社製 商品名 結合アクリロニトリル含量27質量%)150部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂のエピコート1001(油化シェル社製 商品名 エポキシ当量470)320部、ビス−p−アミノベンゾアート(イハラケミカル社製 商品名エラスマー1000、アミン当量309.5、m×n=13.6、Mw1238)65部、フェノキシシクロホスファゼンオリゴマー(融点100℃)200部、トリアジンジチオール誘導体として6−ジブチルアミノ−s−トリアジン−2,4−ジチオール(三協化成社製 商品名ZISNET−DB)2.0部、老化防止剤として2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(川口化学社製、商品名アンテージBHT)1.5部、水酸化アルミニウム150部及び3フッ素化ホウ素モノメチルアミン2.0部からなる混合物に溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)及びメチルエチルケトンを加えて固形分40質量%の接着剤を調製した。
この接着剤を用い、実施例1と同様にして、それぞれのフレキシブル銅張積層板、カバーレイ、カバーレイ付きフレキシブル銅張積層板を作製した。
【0045】
[比較例3]
カルボキシル基含有アクリロニトリルブタジエンゴムのニポール1072(日本ゼオン社製 商品名 結合アクリロニトリル含量27質量%)150部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂のエピコート1001(油化シェル社製 商品名 エポキシ当量470)320部、ビス−p−アミノベンゾアート(イハラケミカル社製 商品名エラスマー1000、アミン当量309.5、m×n=13.6、Mw1238)65部、フェノキシシクロホスファゼンオリゴマー(融点100℃)20部、ジエチルホスフィン酸アルミニウム(クラリアント社製 商品名OP−935)180部、トリアジンジチオール誘導体として6−ジブチルアミノ−s−トリアジン−2,4−ジチオール(三協化成社製 商品名ZISNET−DB)2.0部、老化防止剤として2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(川口化学社製、商品名アンテージBHT)1.5部、水酸化アルミニウム150部及び3フッ素化ホウ素モノメチルアミン2.0部からなる混合物に溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)及びメチルエチルケトンを加えて固形分40質量%の接着剤を調製した。
この接着剤を用い、実施例1と同様にして、それぞれのフレキシブル銅張積層板、カバーレイ、カバーレイ付きフレキシブル銅張積層板を作製した。
【0046】
[比較例4]
カルボキシル基含有アクリロニトリルブタジエンゴムのニポール1072(日本ゼオン社製 商品名 結合アクリロニトリル含量27質量%)150部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂のエピコート1001(油化シェル社製 商品名 エポキシ当量470)320部、ビス−p−アミノベンゾアート(イハラケミカル社製 商品名エラスマー1000、アミン当量309.5、m×n=13.6、Mw1238)65部、フェノキシシクロホスファゼンオリゴマー(融点100℃)180部、ジエチルホスフィン酸アルミニウム(クラリアント社製 商品名OP−935)20部、トリアジンジチオール誘導体として6−ジブチルアミノ−s−トリアジン−2,4−ジチオール(三協化成社製 商品名ZISNET−DB)2.0部、老化防止剤として2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(川口化学社製、商品名アンテージBHT)1.5部、水酸化アルミニウム150部及び3フッ素化ホウ素モノメチルアミン2.0部からなる混合物に溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)及びメチルエチルケトンを加えて固形分40質量%の接着剤を調製した。
この接着剤を用い、実施例1と同様にして、それぞれのフレキシブル銅張積層板、カバーレイ、カバーレイ付きフレキシブル銅張積層板を作製した。
【0047】
[比較例5]
カルボキシル基含有アクリロニトリルブタジエンゴムのニポール1072(日本ゼオン社製 商品名 結合アクリロニトリル含量27質量%)150部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂のエピコート1001(油化シェル社製 商品名 エポキシ当量470)320部、ビス−p−アミノベンゾアート(イハラケミカル社製 商品名CUA−4 m×n=3 MW314)270部、フェノキシシクロホスファゼンオリゴマー(融点100℃)100部、ジエチルホスフィン酸アルミニウム(クラリアント社製 商品名OP−935)100部、トリアジンジチオール誘導体として6−ジブチルアミノ−s−トリアジン−2,4−ジチオール(三協化成社製 商品名ZISNET−DB)2.0部、老化防止剤として2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(川口化学社製、商品名アンテージBHT)1.5部、水酸化アルミニウム150部及び3フッ素化ホウ素モノメチルアミン2.0部からなる混合物に溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)及びメチルエチルケトンを加えて固形分40質量%の接着剤を調製した。
この接着剤を用い、実施例1と同様にして、それぞれのフレキシブル銅張積層板、カバーレイ、カバーレイ付きフレキシブル銅張積層板を作製した。
【0048】
[比較例6]
カルボキシル基含有アクリロニトリルブタジエンゴムのニポール1072(日本ゼオン社製 商品名 結合アクリロニトリル含量27質量%)150部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂のエピコート1001(油化シェル社製 商品名 エポキシ当量470)320部、ビス−p−アミノベンゾアート(イハラケミカル社製 商品名エラスマー1000、アミン当量309.5、m×n=13.6、Mw1238)65部、リン酸エステル(大八化学社製 商品名PX−200)200部、トリアジンジチオール誘導体として6−ジブチルアミノ−s−トリアジン−2,4−ジチオール(三協化成社製 商品名ZISNET−DB)2.0部、劣化防止剤として2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(川口化学社製、商品名アンテージBHT)1.5部、水酸化アルミニウム300部及び3フッ素化ホウ素モノメチルアミン2.0部からなる混合物に溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)及びメチルエチルケトンを加えて固形分40質量%の接着剤を調製した。
この接着剤を用い、実施例1と同様にして、それぞれのフレキシブル銅張積層板、カバーレイ、カバーレイ付きフレキシブル銅張積層板を作製した。
【0049】
[比較例7]
カルボキシル基含有アクリロニトリルブタジエンゴムのニポール1072(日本ゼオン社製 商品名 結合アクリロニトリル含量27質量%)150部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂のエピコート1001(油化シェル社製 商品名 エポキシ当量470)320部、ビス−p−アミノベンゾアート(イハラケミカル社製 商品名エラスマー1000、アミン当量309.5、m×n=13.6、Mw1238)65部、リン酸エステルアミド(四国化成社製 商品名SP−703)200部、トリアジンジチオール誘導体として6−ジブチルアミノ−s−トリアジン−2,4−ジチオール(三協化成社製 商品名ZISNET−DB)2.0部、老化防止剤として2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(川口化学社製、商品名アンテージBHT)1.5部、水酸化アルミニウム300部及び3フッ素化ホウ素モノメチルアミン2.0部からなる混合物に溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)及びメチルエチルケトンを加えて固形分40質量%の接着剤を調製した。
この接着剤を用い、実施例1と同様にして、それぞれのフレキシブル銅張積層板、カバーレイ、カバーレイ付きフレキシブル銅張積層板を作製した。
実施例1〜3及び比較例1〜7で得た試料についての配合組成を表1に、特性評価結果を表2に示す。
【0050】
各特性の評価方法は下記の通りである。
1.ハンドリング性
樹脂割れ:
サンプルを20mm幅、長さ約150mmのサイズに切断し、23℃×55%相対湿度の恒温恒湿槽で2時間以上コンディショニングを行う。ついで、サンプルの離型紙を剥がした後、接着剤面を外側に折り目がつかないように丸まった状態で折り返して、その部分から2〜3cmの位置に金尺を直角に当てる。金尺をゆっくりと折り返している方向に移動し、接着剤層に折り目が入った(割れが発生)ときに発生する音を確認し、その時点で金尺の移動を止め、金尺に沿って線を引く、ついで、折り返したサンプルを開いて、引かれた線と接着剤層の割れが発生した部分との距離を測定して評価した。下記にて判定した。
○:0mm △:1〜3mm ×:3mm超
【0051】
2.接着強度
A 常態での測定: JIS C 6481 5.7.3(1)に準拠し、23℃において、カバーレイフィルムを銅箔から剥がすときの剥離強度を測定した。
S4 はんだ処理後の測定:JIS C 6481 5.7.3(2)に準拠し、260℃はんだ槽の中に20秒間浮かべた後、付着したはんだを除去してから室温まで冷やした後、カバーレイフィルムを銅箔から剥がすときの剥離強度を測定した。
3.半田耐熱性
JIS C 6481に準じ、下記の条件で試験を行った。
260℃、280℃、300℃のはんだ浴に1分間フロートさせて、接着剤層の膨れ、剥がれ等の外観異常の有無を目視により評価した。
その結果、膨れ及び剥がれ等の外観異常が確認されなかったものを○、膨れ及び剥がれ等の外観異常が確認されたものを×として表示した。
【0052】
4.耐マイグレーション性
試験装置として、50Vを±1%の範囲で供給できる直流電源と、85±2℃、85±3%に調整できる恒温恒湿槽とを用い、フレキシブル銅張積層板に、試験用に回路幅及び回路間隔が75μmの櫛型電極を作製し、カバーレイフィルムを積層し、160℃、60分、4MPaでプレス接着したものをサンプルとし、このサンプルを恒温恒湿槽に投入し、電極間に50V直流電圧を1000時間印加し、印加前と印加後の電極間を顕微鏡観察し、かつ印加した後の絶縁抵抗値を恒温恒湿槽内で連続観察し、外観が良好で、絶縁抵抗値が102MΩ以上保持したものを○、どちらか一方を満たしたものを△、両方を満たさなかったものは×とした。
5.難燃性
UL規格94VTM−0グレードを達成できるか否かにより評価した。達成したものを○、達成できなかったものを×として判定した。
【0053】
6.屈曲性
フレキシブル銅張積層板において、高速屈曲試験機を用いて、カバーレイ面を内側にして、曲率半径4mm、屈曲速度1500cpm、ストローク20mm、及び測定温度80℃の条件で、室温と80℃の恒温槽中における屈曲回数による抵抗値の変化を測定し、抵抗値上昇率10%を閾値とした時の屈曲回数が10000万回以上を○、1000万回〜10000万回未満を△、1000万回未満を×とした。
表2での屈曲性の評価項目中「A」は室温での測定、「高温」は80℃の恒温槽中における測定結果を表している。
【0054】
7.成形性
1)TH埋込性
銅張板に0.13mmのスルホールを施し、片面よりカバーレイを140℃×4.0MPa×10minで成形させた後、スルホール内の樹脂の埋込率を断面観察により、埋込率が80%以上のものを○、50〜80%未満のものを△、50%未満のものを×とした。
2)端部流れ出し性
銅張板の表面に成形し、貼り付けたカバーレイの端部からの樹脂の流れ出し量(最大値)を端部からの距離を測定し、○:0.1mm以下、△:0.1mm超〜0.2mm、×:0.2mm超として測定した。
【0055】
8.保存安定性
各材料を製造後、常温(25℃)で30日保管後、成形性の判定をして、変化が無かったものを○、変化が有ったものを×とした。なお、成形性の判定での双方試験のどちらかが×である場合は、×の判定とした。
9.反り
フレキシブル銅張積層板の試料(巾25mm)を水平な台に置き、平面に対する反りの度合を測定した。○:1mm以下、△:1mm超〜2mm、×:2mm超
10.総合判定
○:各項目の評価が○のみのもの、又は○と△であるもの(合格)。
×:各項目の評価で×が一つでもあるもの(不合格)。
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリエポキシド化合物、
(B)下記の一般式(1)で示されるビス−p−アミノベンゾアート、
【化1】

(但し、式中m,nはそれぞれ1〜12の整数を表し、m×nは6〜20である)
(C)エポキシ用硬化促進剤、
(D)ホスファゼン化合物、
(E)有機ホスフィン酸塩化合物、
(F)合成ゴム、
及び(G)無機充填剤を必須成分とする接着剤組成物であって、該接着剤組成物全体に対して、(D)成分及び(E)成分の合計量が5〜30質量%であり、且つ(D)成分及び(E)成分の質量割合(D)/「(D)+(E)」が、0.3〜0.7であることを特徴とするハロゲンフリーの難燃性接着剤組成物。
【請求項2】
(D)ホスファゼン化合物が、下記一般式(2)に示すシクロホスファゼンオリゴマー、
【化2】

(但し、式中、X1及びX2は、それぞれ独立に水素原子であるかハロゲン原子を含まない有機基を、kは3〜10の整数をそれぞれ表す。)
であることを特徴とする請求項1記載のハロゲンフリーの難燃性接着剤組成物。
【請求項3】
(E)有機ホスフィン酸塩化合物が、有機ホスフィン酸アルミニウムであることを特徴とする請求項1又は2に記載のハロゲンフリーの難燃性接着剤組成物。
【請求項4】
さらに、(H)トリアジンジチオール誘導体と、(I)ゴム老化防止剤を含有してなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のハロゲンフリーの難燃性接着剤組成物。
【請求項5】
前記(I)ゴム老化防止剤が、フェノール類、芳香族アミン類並びにヒドラジン及びその誘導体から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項4に記載のハロゲンフリーの難燃性接着剤組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の接着剤組成物でポリイミドフィルムの少なくとも片面に銅箔を貼り合わせてなることを特徴とするフレキシブル銅張積層板。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の接着剤組成物でポリイミドフィルムの表面に樹脂層を形成してなることを特徴とするカバーレイ。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の接着剤組成物をフィルム状に形成してなることを特徴とする接着剤フィルム。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の接着剤組成物でポリイミドフィルムの少なくとも片面に銅箔を貼り合わせた後、回路を形成してなることを特徴とするフレキシブルプリント配線板。
【請求項10】
請求項9記載のフレキシブルプリント配線板上に請求項7のカバーレイを貼り合わせてなることを特徴とするフレキシブルプリント配線板。
【請求項11】
請求項9又は請求項10記載のフレキシブルプリント配線板と補強板を、請求項8記載の接着剤フィルムを介して貼り合わせてなることを特徴とする補強板付きプリント配線板。

【公開番号】特開2010−265353(P2010−265353A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−116282(P2009−116282)
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【出願人】(390022415)京セラケミカル株式会社 (424)
【Fターム(参考)】