説明

ハードコート付粘着フィルムの製造方法およびハードコート付粘着フィルム

【課題】基材フィルムを使用しないでハードコート層を形成でき、ハードコート付粘着フィルムの全体厚みの薄膜化が可能な上、ハードコート層中に透明性など光学特性を低下させる滑材などを含ませる必要がなく、生産性に優れたハードコート付粘着フィルムの製造方法およびハードコート付粘着フィルムを提供する。
【解決手段】離型性を有するセパレーター15の一方の面上に、エネルギー線硬化により常温でのボールタック(JIS Z0237に準じた傾斜式ボールタック測定方法、傾斜角度30度)が1以上となる粘着剤層形成用の樹脂層Aと、エネルギー線硬化により常温でのボールタックが、0となるハードコート層形成用の樹脂層Bを順に多層コーティングした後に、エネルギー線を照射して前記樹脂層A、樹脂層Bとを同時に硬化させることにより、ハードコート層12,13の一方の面に粘着剤層14が積層された粘着フィルムを一度に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードコート付粘着フィルムの製造方法およびハードコート付粘着フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般にハードコート付粘着フィルムは、各種フィルムからなる基材フィルムの片面に、アクリル系やゴム系の溶剤型粘着剤、エマルジョン型粘着剤、またはホットメルト型粘着剤などからなる粘着剤層を設け、基材フィルムの粘着剤側とは反対の面にハードコート層を設けたものである。製品形態としては、粘着剤面に剥離フィルムや剥離紙等のセパレーターを貼り合わせたり、基材フィルムのハードコート層の上に剥離剤を塗布する剥離処理を施してテープ状に巻き上げたりした形態とされている。ハードコート付粘着フィルムの製造には、ハードコートした基材フィルムに直接粘着剤を塗布、乾燥・硬化したのち粘着材面にセパレーターを貼り合わせる方法、セパレーターの剥離処理面に粘着剤を塗布、乾燥・硬化したのち粘着剤にハードコートした基材フィルムを貼り合わせる方法が用いられている。
【0003】
近年、例えばディスプレイ用のハードコート付粘着フィルムや保護フィルムにおいては、歩留まり向上、及びコスト削減のため、保護フィルムまたはパネル等に不具合があった場合には、パネルと保護フィルムとを分離して、不具合のない保護フィルムまたはパネル等を再利用することが行なわれている。また、工業製品の廃棄処分時には製品を分解し、構成部品を材料の種類毎に分別処分するという要求から、ハードコート付粘着フィルムを使用した工業製品を廃棄する際に、ハードコート付粘着フィルムを被着体から剥離して分別する必要性が出てきている。このため、ハードコート付粘着フィルムに対してリワーク性や貼付け位置の修正作業性、廃棄時の剥離し易さが要求されつつあり、さらには、ハードコート付粘着フィルムを剥離したときに糊残り(被着体表面に粘着剤が残る現象)が生じないことが求められている。しかし、従来の製造方法によるハードコート付粘着フィルムでは、ハードコートした基材フィルムに対する粘着剤層の投錨力が不十分であり、被着体に対する粘着力が強い場合には糊残りが生じて問題となることがあった。
また、被着体に対する粘着剤の糊残りの問題と同様、ハードコート付粘着フィルムの粘着剤層が形成される面とは反対側の面にコーティングする材料についても、同様な要求がある。例えば、ハードコート層の上に帯電防止となる層をコーティングすると、場合によっては、ハードコート層との密着性や投錨性が悪く、表面をこすったりするとコーティング層が取れてしまったり、ハードコート付粘着フィルムを屈曲させたり断裁することで層間剥離してしまい、問題となることがあった。
【0004】
一方、廃棄物の問題に関して、ハードコート付粘着フィルムが廃棄物となったときの減容化の点からハードコート層などを含めた全体の厚さを薄くすることも求められつつある。しかし、従来の製造方法では、基材フィルムの上にハードコートしているので基材フィルムの厚さが薄くなると、粘着剤の塗工・乾燥装置における加工時に基材フィルムに掛ける張力を弱くせざるを得ず、基材フィルムのシワ、よじれを防ぐためには、基材フィルムの厚さに比べて粘着剤層を厚く塗布することが難しいのが実情である。また、粘着剤をセパレーター上に塗布した後にハードコートした基材フィルムを貼り合わせる方法の場合、基材フィルムの厚さが薄いとハードコートした基材フィルムの貼合時にシワや浮きが生じやすいという問題がある。
【0005】
さらに、従来技術である、粘着剤をハードコートした基材フィルムに塗布する方法では、ハードコートするための基材フィルムの厚さがロールに巻き取れる程度の厚さを有していないと、連続加工ができないという問題がある。また、ハードコートするための基材フィルム自体は、ロール状に巻き取るときの摩擦によるシワや傷つき等の問題を避けるため、カオリン、炭酸カルシウム、コロイダルシリカ等の滑材を添加する、樹脂合成時に使用する触媒等の一部または全部を析出させる、もしくは表面に微粒子層や塗布層を設ける(例えば特許文献1、2参照)等の方法により、ハードコートするための基材フィルムの表面に滑り性を付与して、ロール状に円滑に巻き取れるようにしている。しかし、光学分野への応用を考慮すると、ハードコートするための基材フィルム自体は高透明な樹脂を採用しても、滑材の添加、触媒の析出、表面への凹凸の形成等の手法を採用した場合には、ハードコートするための基材フィルムの光学特性(透明性など)が劣ると考えられる。
【0006】
また、従来技術では、ハードコート層と粘着剤層の両方にエネルギー線硬化型樹脂を用いて形成するハードコートフィルムの製造方法においては、基材フィルムへコートするため、ハードコート層と粘着剤層とを基材フィルムの両面に片面ずつ別々にコートしなければならなかった。あるいは、基材フィルムの両面に同時にコートする特別な製造装置が必要であった。また、光学特性においては基材フィルムに含まれる滑剤などの影響でヘイズを低くすることや透過率を上げることが困難であった。さらに、基材フィルムとハードコート層及び粘着剤層との密着性が悪いことがあり、貼合したハードコートフィルムを再度剥がして貼合する作業時に層間剥離してしまうなどの問題があった。
特許文献3には、基材フィルムの一方の面上に緩衝層形成用の塗布液をコーティングしてエネルギー線で硬化させた後、硬化させた緩衝層の表面上にハードコート層形成用の塗布液をコーティングしてエネルギー線で硬化させたハードコートフィルムが開示されているが、基材フィルムを使用しているため、上記の従来技術に係わる問題点は完全には解決されていなかった。
【0007】
このように、従来技術においては、基材フィルムを使用してハードコート層を積層コーティングするため上記のような問題が生じていた。
【特許文献1】特開平5−70612号公報
【特許文献2】特開2003−119305号公報
【特許文献3】特開平11−300873号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、基材フィルムを使用しないでハードコート層を形成でき、ハードコート付粘着フィルムの全体厚みの薄膜化が可能な上、ハードコート層中に透明性など光学特性を低下させる滑材などを含ませる必要がなく、生産性に優れたハードコート付粘着フィルムの製造方法およびハードコート付粘着フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明は、離型性を有するセパレーターの一方の面上に、エネルギー線硬化により常温でJIS Z0237に準じた傾斜式ボールタック測定方法で傾斜角度30度にて測定したボールタックが、1以上となる粘着剤層形成用の樹脂層Aと、エネルギー線硬化により常温でJIS Z0237に準じた傾斜式ボールタック測定方法で傾斜角度30度にて測定したボールタックが、0となるハードコート層形成用の樹脂層Bを順に多層コーティングした後に、エネルギー線を照射して前記樹脂層A、樹脂層Bとを同時に硬化させることにより、ハードコート層の一方の面に粘着剤層が積層された粘着フィルムを一度に形成することを特徴とするハードコート付粘着フィルムの製造方法を提供する。
【0010】
前記樹脂層Aおよび樹脂層Bは、無溶剤型のエネルギー線硬化性組成物からなることが好ましい。
前記樹脂層Bは、少なくとも2層の多層コーティングした樹脂層からなり、JIS K5600−5−4,5に準ずる鉛筆硬度試験でH以上のハードコート性を有することが好ましい。さらに、樹脂層Bの上に、反射防止層を積層してもよい。また、樹脂層Bの上に、反射防止層と、最外層として防汚層を積層してもよい。
【0011】
前記セパレーターは、合成樹脂フィルム、金属箔、剥離紙などの可撓性を有する剥離体の群から選択された1種であって、前記樹脂層Aと樹脂層Bとが同時に硬化した後も前記セパレーターが前記樹脂層Aと貼合してなるものとしてもよい。
また、前記セパレーターは、合成樹脂板、金属板、ガラス板などの可撓性を有しない剥離体の群から選択された1種であって、前記樹脂層Aと樹脂層Bとが同時に硬化した後に前記セパレーターを樹脂層Aから剥離するものとしてもよい。
また、本発明は、上記の製造方法により得られる、ハードコート層の一方の面に粘着剤層が積層されたハードコート付粘着フィルムを提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ボールタックが1以上となる粘着剤層形成用の樹脂層Aと、ボールタックが0となるハードコート層形成用の樹脂層Bとを同時に重合・硬化させて粘着剤層とハードコート層とを一度に形成するので、下記の効果を奏する。
(1)ハードコート層と粘着剤の層間に化学結合が形成しやすくなることやハードコート層に対する粘着剤層の投錨効果により密着性が向上するので、ガラスや金属板など粘着力が強くなる被着体に貼付した場合でも、糊残りの問題が発生しにくくなる。
(2)基材フィルムを使用しないでハードコート層を形成できると共に、ハードコート層および粘着剤の厚さを自由に設定することができ、ハードコート層の厚さを薄くしても製造上の問題が生じない。よって、従来よりも全体の厚みが薄型のハードコート付粘着フィルムを製造することができる。
(3)製造工程中において、ハードコート層のみを単独のフィルムでロール状に巻き取る工程がないので、ハードコート層に滑材など滑り性を付与するための成分を混入させる必要がない。よって、透明性等の光学特性的が優れたハードコート付粘着フィルムを製造することができる。
【0013】
粘着剤層形成用の樹脂層Aと、ハードコート層形成用の樹脂層Bとして、無溶剤型のエネルギー線硬化性樹脂組成物を用いた場合、溶剤を使用しないので作業環境の悪化や大気汚染につながる揮発性有機化合物(VOC)の発生もほとんどない。また、エージング(養生)の期間や乾燥が不要のため、生産に要する時間が短くなり、コンパクトな設備で製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、最良の形態に基づいて本発明を説明する。
本発明のハードコート付粘着フィルムの製造方法は、離型性を有するセパレーターの一方の面上に、エネルギー線硬化により常温でのボールタックが1以上となる粘着剤層形成用の樹脂層Aと、エネルギー線硬化により常温でボールタックが0となるハードコート層形成用の樹脂層Bとを順に多層コーティングした後に、エネルギー線を照射して前記樹脂層Aと樹脂層Bとを同時に硬化させることにより、ハードコート層の一方の面に粘着剤層が積層された粘着フィルムを一度に形成することを特徴とする。
本発明において、ボールタックは、JIS Z0237に準じた傾斜式ボールタック測定方法で傾斜角度30度にて測定する。
【0015】
ここで、粘着剤層形成用の樹脂層Aおよびハードコート層形成用の樹脂層Bを形成する方法としては、セパレーター上への多層コーティングを好ましく採用することができる。この場合、セパレーターの上には、前記樹脂層Aおよび樹脂層Bを少なくとも各1層ずつコーティングして、その度に硬化させれば、従来の一般的な粘着フィルムの構成となるが、本発明において粘着剤層形成用の樹脂層Aおよびハードコート層形成用の樹脂層Bの積層の数や厚さは、多層コーティングした全体が可撓性を有する限りにおいて限定されず、必要となる機能によって粘着剤層形成用の樹脂層Aおよび/またはハードコート層形成用の樹脂層Bを複数層とすることもできる。前記樹脂層Bは、少なくとも2層の多層コーティングした樹脂層からなり、最外層(粘着剤層形成用の樹脂層Aが形成される面とは反対側の面)が硬化後にハードコート性を有することもできる。
【0016】
セパレーターとしては、合成樹脂フィルム、金属箔、剥離紙などの可撓性を有する剥離体の群から選択された1種を用いることができる。この場合は、セパレーターを剥離せずとも、ハードコート付粘着フィルムをセパレーターが貼合されたままロール状に巻き取ることができるので、樹脂層Aと樹脂層Bとが同時に硬化した後もセパレーターが樹脂層Aと貼合してなるものとすることができる。
可撓性を有する剥離体としては、例えば、ポリカーボネートフィルム、ポリアリレートフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリオレフィンフィルム、ノルボルネン系フィルム、フェノキシエーテル型重合体フィルム、有機耐透気性フィルムをはじめとする単層または複層プラスチックフィルムにシリコーン系剥離剤等による剥離処理を施して少なくとも片面が剥離性を有する剥離フィルム;紙にシリコーン系剥離剤等による剥離処理を施して少なくとも片面が剥離性を有する剥離紙;フッ素系樹脂フィルムやある種のポリオレフィン系フィルムなどフィルム自体が剥離性を有するフィルム;剥離剤を内添して製膜したフィルムなどが挙げられる。
【0017】
また、セパレーターには、合成樹脂板、金属板、ガラス板などの可撓性を有しない剥離体の群から選択された1種を用いることもできる。この場合は、樹脂層Aと樹脂層Bとが同時に硬化した後に、該セパレーターを硬化後の樹脂層Aから剥離させることによって、ハードコート層に粘着剤層が積層されたハードコート付粘着フィルムを製造し、そのままロール状に巻き取ることができる。なお、セパレーターの表面は、シリコーン系剥離剤等による剥離処理や、機械研磨あるいは化学研磨による鏡面研磨仕上げなどを施して、少なくとも片面に剥離性を持たせるのが好ましい。
【0018】
セパレーターの厚さは特に限定されないが、セパレーターを粘着フィルムと貼り合わせた状態でロールに巻き取る場合には、通常は5〜500μm、好ましくは10〜100μmとすることが多い。セパレーターの材質は、使用する粘着剤やハードコート付粘着フィルムの使用用途(粘着剤の剥離強度、セパレーターの有無)に合わせて選ばれるものとする。
【0019】
ボールタックが1以上となる粘着剤層形成用の樹脂層Aは、エネルギー線照射により硬化するエネルギー線硬化性化合物を含有する、粘着剤層形成用の樹脂組成物のコーティングによって形成することができる。樹脂層Aの硬化に用いるエネルギー線としては、加熱や、活性エネルギー線(紫外線、電子線、場合により可視光線など)が挙げられる。
加熱により硬化を図る場合には、予め粘着剤層形成用の樹脂組成物全体に対し0.1〜5重量%程度の重合開始剤を配合するのが通常である。重合開始剤としては、有機過酸化物系やジアゾニウム系重合開始剤などが好適に用いられる。
紫外線や可視光線などの照射により硬化を図る場合には、予め粘着剤層形成用の樹脂組成物全体に対し0.1〜10重量%程度の重合開始剤を配合するのが通常である。しかし、カチオン系、アニオン系重合方式を用いる場合は必要ない場合もある。なお活性エネルギー線照射の場合は、照射後に必要に応じて加熱処理を行なうことにより、硬化の完全化を図ることもでき、その逆に加熱処理を行なってからエネルギー線照射でも構わず、二種以上のエネルギー線照射を組み合わせても構わない。
【0020】
紫外線や可視光線などの照射により硬化を図る場合に用いられる光重合開始剤は、特に限定されず、例えばベンゾイン、イソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、クロロチオキサントン、ドデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、アセトフェノンジエチルケタール、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等が挙げられるが、中でもベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンなどが好適に用いられる。
カチオン系光重合開始剤としては、オニウム塩系、トリ(置換)フェニルスルホニウム系、ジアゾスルホン系、ヨードニウム系などの開始剤が好適に用いられる。アニオン系光重合開始剤には、アルキルリチウム系などの有機金属系開始剤などが好適に用いられる。
粘着剤層形成用の樹脂組成物の配合は、エネルギー線硬化後の皮膜のガラス転移点が20℃以下となるように調整することが好ましい。
【0021】
粘着剤層形成用の樹脂組成物としては、流動性ある無溶剤型の高粘度粘着性樹脂組成物が好ましい。特に、ソフトセグメントを与えるモノマー成分およびハードセグメントを与えるモノマー成分(さらには必要に応じ官能基含有モノマー成分や多官能の(メタ)アクリレート成分)を共重合して得られる粘着剤グレードのアクリル系共重合体を必須の構成要素とするものが好適に用いられる。
なお、本明細書において「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレートおよび/またはメタクリレート」を意味する。
【0022】
前記粘着剤グレードのアクリル系共重合体において、重合したときにソフトセグメントを与えるモノマー成分としては、アルキル基の炭素数が4以上のアルキルアクリレート(n−ブチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等)、アルキル基の炭素数が6以上のアルキルメタクリレート(n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート等)などが挙げられる。これらのモノマーは単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
ハードセグメントを与えるモノマー成分としては、アルキル基の炭素数が1〜3のアルキルアクリレート(メチルアクリレート等)、アルキル基の炭素数が1〜5のアルキルメタクリレート(メチルメタクリレート等)、酢酸ビニル、スチレンなどが挙げられる。これらのモノマーは単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
官能基含有モノマー成分としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマール酸、グリシジル(メタ)アクリレート、N−メチロールアクリルアミド、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらのモノマーは単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
多官能の(メタ)アクリレート成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトールなどの多価アルコールのジ、トリまたはポリ(メタ)アクリレート;ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらのモノマーは単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
粘着剤グレードのアクリル系樹脂組成物には、上記のアクリル系共重合体とともに、先に述べたソフトセグメントを与えるモノマー、ハードセグメントを与えるモノマー、官能基含有モノマー、多官能の(メタ)アクリレートを、モノマー状で添加することが好ましい。これらのモノマーは、製膜時にはアクリル系共重合体の可塑剤として作用して流動性を与え、後にエネルギー線照射によって硬化して重合する。このようなモノマーと共にあるいはこのようなモノマーに代えて、比較的低分子量のオリゴマーや一般の可塑剤を用いることもできる。
また、高粘度のオリゴマー樹脂の粘度を低くするために上記アクリレートモノマーを添加する配合もある。オリゴマーの具体例としては、ポリエステル系やポリカーボネート系などのウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、市販のオリゴエステルアクリレート、上記同様のメタクリレート類等などが挙げられる。これらのオリゴマーは単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
高粘度粘着性樹脂組成物としては、上記のアクリル系重合体を必須の構成要素とするもののほか、ウレタン系、ポリカーボネート系、ポリエステル系、アクリルウレタン系、ゴム系、ビニル系、シリコーン系などの粘着剤グレードの樹脂組成物も用いることができる。
【0028】
粘着剤層形成用の樹脂組成物の粘度は、20〜100000cps/20℃程度、好ましくは20〜80000cps/20℃、さらに好ましくは20〜12000cps/20℃とするのが適当である。
【0029】
ハードコート層形成用の樹脂層Bは、ハードコート層形成用の樹脂組成物のコーティングによって形成することができる。ハードコート層形成用の樹脂組成物は、流動性ある無溶剤型のエネルギー線硬化性組成物が好ましい。このエネルギー線硬化性組成物は、エネルギー線により硬化するエネルギー線硬化性化合物を必須成分として含有し、硬化後のボールタックが0となる樹脂が用いられる。
硬化に用いるエネルギー線としては、加熱や、活性エネルギー線(紫外線、電子線、場合により可視光線など)が挙げられる。
加熱により硬化を図る場合には、予めハードコート層形成用の樹脂組成物全体に対し0.1〜5重量%程度の重合開始剤を配合するのが通常である。重合開始剤としては、有機過酸化物系やジアゾニウム系重合開始剤などが好適に用いられる。
紫外線や可視光線などの照射により硬化を図る場合には、予めハードコート層形成用の樹脂組成物全体に対し0.1〜10重量%程度の重合開始剤を配合するのが通常である。しかし、カチオン系、アニオン系重合方式を用いる場合は必要ない場合もある。なお活性エネルギー線照射の場合は、照射後に必要に応じて加熱処理を行なうことにより、硬化の完全化を図ることもでき、その逆に加熱処理を行なってからエネルギー線照射でも構わず、二種以上のエネルギー線照射を組み合わせても構わない。
【0030】
紫外線や可視光線などの照射により硬化を図る場合に用いられる光重合開始剤は、特に限定されず、例えばベンゾイン、イソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、クロロチオキサントン、ドデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、アセトフェノンジエチルケタール、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等が挙げられるが、中でもベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンなどが好適に用いられる。
カチオン系光重合開始剤としては、オニウム塩系、トリ(置換)フェニルスルホニウム系、ジアゾスルホン系、ヨードニウム系などの開始剤が好適に用いられる。アニオン系光重合開始剤には、アルキルリチウム系などの有機金属系開始剤などが好適に用いられる。
ハードコート層形成用のエネルギー線硬化性組成物の配合は、エネルギー線硬化後ボールタックが0となるように調整することが好ましい。
【0031】
本発明のハードコート層は、硬化した状態で透明であり、かつ、充分な硬度を備えていればどのような樹脂でもよいが、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、有機シリケート化合物、シリコーン系樹脂または金属酸化物などの中でも、アクリル酸エステル系、ビニル系、ウレタンアクリレート系、エステルアクリレート系、エポキシアクリレート系のモノマー、オリゴマー等の活性光線によって硬化する樹脂等が好ましい一例として挙げられる。特に、硬度と耐久性などの点で、シリコーン系樹脂とアクリル系樹脂が好ましく、更に、硬化性、可撓性および生産性の点で、アクリル系樹脂、特に、活性線硬化型のアクリル系樹脂からなるものが好ましい。また、ハードコート層の厚さは、実際に作製された現物からは測定しにくいが、コート量から0.1〜30g/mの範囲内であり、好ましくは1〜15g/mの範囲内である。そのコート量が1g/m未満では、耐擦傷性等の硬度が劣る場合がある。一方、コート量が30g/mを超えるとヘイズが高くなり、カールが発生し易くなる。また、折り曲げなどの応力により硬化膜にクラックが入りやすくなる傾向にある。また、本発明の効果が損なわれない範囲において、ハードコート層の最外層に図柄などの印刷層を設けてもよい。
【0032】
市販されているアクリル系硬化塗料としては三菱レイヨン(株);(商品名“ダイヤビーム”シリーズなど)、長瀬産業(株);(商品名“デナコール”シリーズなど)、新中村(株);(商品名“NKエステル”シリーズなど)、大日本インキ化学工業(株);(商品名“UNIDIC”シリーズなど)、東亜合成化学工業(株);(商品名“アロニックス”シリーズなど)、日本油脂(株);(商品名“ブレンマー”シリーズなど)、日本化薬(株);(商品名“KAYARAD”シリーズなど)、共栄社化学(株);(商品名“ライトエステル”シリーズ、“ライトアクリレート”シリーズなど)などの製品を利用することができる。
【0033】
アクリルオリゴマー、反応性希釈剤、光重合開始剤、光増感剤、架橋装置などの具体例は、山下晋三、金子東助編、「架橋剤ハンドブック」、大成社1981年発行、第267頁から第275頁、第562頁から第593頁を参考とすることができるが、本発明ではこれらに限定されるものではない。市販品として多官能アクリル系紫外線硬化塗料として三菱レイヨン(株)、藤倉化成(株)、大日精化工業(株)、大日本インキ化学工業(株)、東亜合成化学工業(株)、日東化成(株)、日本化薬(株)などの製品を利用することができる。
【0034】
また本発明では、ハードコート層の改質剤として、塗布性改良剤、消泡剤、増粘剤、帯電防止剤、無機系粒子、有機系粒子、有機系潤滑剤、有機高分子化合物、紫外線吸収剤、光安定剤、染料、顔料あるいは安定剤などを用いることができ、これらは活性線による反応を損なわない範囲内でハードコート層を構成する塗布層の組成物成分として使用され、
用途に応じてハードコート層の特性を改良することができる。
【0035】
ハードコート層を形成するための組成物を含有する塗剤(塗液)の塗布手段としては、
各種の塗布方法、例えば、リバースコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、バーコート法、ダイコート法またはスプレーコート法などを用いることができる。
【0036】
本発明の粘着フィルムの製造方法では、セパレーターまたはその他の被塗布物の上に、粘着剤層形成用の樹脂層Aおよびハードコート層形成用の樹脂層Bを多層コーティングし、エネルギー線を照射して粘着剤層形成用の樹脂層Aとハードコート層形成用の樹脂層Bとを同時に硬化させる。また、エネルギー線を照射するとき、必要に応じて、コーティング層の上にエネルギー線を透過可能なセパレーター等を被せておくことができる。
これにより、ハードコート層の一方の面に粘着剤層が積層された粘着フィルムを一度に形成することができる。このように製造される粘着フィルムは、ハードコート層の硬化後の常温でのボールタックが0となり、前記粘着剤層の硬化後の常温でのボールタックが1以上であることが好ましい。これにより、常温で粘着性を発現する粘着剤層と、常温で粘着性を発現しないハードコート層とを有する粘着フィルムを得ることができる。
【0037】
ハードコート層形成用の樹脂組成物の粘度は、粘着剤層形成用の樹脂組成物と同じでも構わないし、異なっても構わない。各層をコーティングし各層が完全に相溶する前にエネルギー線を照射して硬化させることによりハードコート層および粘着剤層を一括で得ることが出来る。粘度が高い樹脂組成物を先にコーティングし、その後で粘度の低い樹脂組成物をコーティングするほうが、実際の生産工程では既存の装置を活用できるのでより良いと考えられる。また、粘度の低い樹脂組成物をセパレーターなどの支持体へコーティングする前に完全に硬化しない程度のエネルギー線を照射することにより粘度を少し上げてからコーティングする方法や、低粘度のままコーティングした後に、硬化しない程度のエネルギー線を照射することにより粘度を少し上げてから次の低粘度組成物を積層コーティングし、その後で完全にエネルギー線による硬化させる手順を踏むなど、先にコートする樹脂組成物に対して何らかの方法で粘度をあげてから、次の樹脂組成物をコーティングすることが実際の生産工程では有効となる。
【0038】
製造方法としては、下記の方法が考えられるが限定されるものではない。
エネルギー線照射雰囲気中の酸素を出来るだけ除外した状態で活性エネルギー線(紫外線、電子線、場合により可視光線など)照射を行ない、樹脂を硬化させる製造方法(1)と、活性エネルギー線照射雰囲気中には酸素が存在するが、エネルギー硬化性樹脂に酸素が接しないようにしておき、活性エネルギー線照射を行なう製造方法(2)が考えられる。
【0039】
製造方法(1)は、具体的に、セパレーター(1)/粘着剤層形成用の樹脂層(A)/ハードコート層形成用の樹脂層(B)の層構成を形成したのち、活性エネルギー線を照射後、セパレーター(1)/粘着剤層(a)/ハードコート層(b)の層構成を有する粘着フィルムを製造する構成が考えられる。活性エネルギー線照射後の工程や製品としてセパレーター(2)が必要な場合は、活性エネルギー線照射前にセパレーター(2)を貼合しても構わないし、活性エネルギー線照射しながらセパレーター(2)を貼合しても構わないし、活性エネルギー線照射後にセパレーター(2)を貼合するなど、どの順番でも構わない。
【0040】
製造方法(1)の場合は、活性エネルギー線照射前にセパレーター(2)を貼合しないため、重合阻害で硬化不十分にならないように、活性エネルギー線照射雰囲気を窒素などの不活性ガスなどの重合阻害を起さないような雰囲気に置換しておく必要がある。ここで言う重合阻害とは、活性エネルギー線照射雰囲気中に酸素などのラジカルを吸収しやすい材料が存在することにより、重合に使用されているラジカルがとられてしまい、重合反応が進まないことを意味する。特に酸素の場合、活性エネルギー線照射により生成した酸素ラジカルによる酸素阻害を抑制するため、窒素置換などが良く行なわれている。
重合阻害があっても硬化させるためには、高価な重合開始剤を多量に添加することが既知であるが、不純物として光重合開始剤の分解物が残ってしまい粘着力が変ってしまったり、糊が残ったり分解物が転写するなど、不具合の原因となることや、活性エネルギー線の総照射量が多くなり加工速度が落ちるなどの問題のため、実際の生産では有効ではないため、窒素などでの置換を行なうことが必要となる。
【0041】
製造方法(2)は、具体的に、セパレーター(1)/粘着剤層形成用の樹脂層(A)/ハードコート層形成用の樹脂層(B)の層構成を形成し、セパレーター(2)をハードコート層形成用の樹脂層(B)に貼合しながらもしくは、貼合した後、活性エネルギー線を照射することによって、セパレーター(1)/粘着剤層(a)/ハードコート層(b)/セパレーター(2)の層構成を有する粘着フィルムを製造する構成が考えられる。
活性エネルギー線照射後の工程や製品としてセパレーター(2)が不必要な場合は、エネルギー線照射後セパレーター(2)を剥がして製品とする。
【0042】
セパレーター(2)を用いることで、窒素などの置換を必要とせず重合阻害がない環境を簡便に形成できることや、ハードコート層(b)の表面保護、セパレーター表面構造の転写によるハードコート層(b)の表面形状の制御など、安価な装置で付加価値を上げることが可能になる。しかし、セパレーター(2)をきれいに貼合するためには、粘着剤層形成用の樹脂層(A)やハードコート層形成用の樹脂層(B)の粘度は高いほうが好ましい。
そのため、粘度が低いハードコート層形成用の樹脂層(B)の場合には、若干硬化させて粘度をあげた状態でセパレーター(2)を貼合するなどの手順の工夫が必要となるため、セパレーター(1)/粘着剤層形成用の樹脂層(A)/ハードコート層形成用の樹脂層(B)の層構成の状態で若干硬化させた後、セパレーター(2)を貼合してから再度活性エネルギー線照射を行ない硬化させるなど、製造方法(1)や製造方法(2)のオンラインやオフラインでの組み合わせも実際の生産では有効になると考えられる。
【0043】
また、セパレーター(1)/粘着剤層形成用の樹脂層(A)のみを製造方法(1)やセパレーター(2)を合わせて製造方法(2)の状態で一度活性エネルギー線照射を行ない若干硬化させた後、粘着剤層形成用の樹脂層(A)の上にハードコート層形成用の樹脂層(B)をコートして製造方法(1)やセパレーター(2)を合わせて製造方法(2)の状態で活性エネルギー線照射し硬化させるなど、一層ごと少しずつ硬化させて最後に全体を硬化させるなど、積層方法には様々な手順が考えられる。
また、加熱による硬化など、酸素ラジカルなどの重合阻害が少ない場合には、製造方法(1)でも製造方法(2)のどちらを選択しても構わない。
さらに、セパレーター(1)/粘着剤層(a)/ハードコート層(b)/粘着剤層(a)/セパレーター(2)と言うような、ハードコート層(b)の両面に粘着剤層(a)を有する両面粘着フィルムの構成も、上記製造方法(1)と製造方法(2)のいずれかの片方もしくはこれらの組み合わせで作製できる。
【0044】
粘着剤層側のセパレーター(1)は、粘着フィルムを被着体に貼付する直前で剥離除去するのが通常である。ハードコート層側のセパレーター(2)はその必要が生じた時点で剥離除去すればよく、用途によっては、粘着フィルムを被着体に貼付したあとでも剥離除去しなくてよいこともある。例えば、被着体に貼付した粘着フィルムを保護するため、ハードコート層側のセパレーター(2)を貼付したままとすることができる。
【0045】
セパレーター(1)、(2)がロール状に巻き取られた長尺のフィルムまたはシートである場合には、製造した粘着フィルムを再度ロール状に巻き取ることができ、生産性に優れた製造方法となる。この場合、製造設備としては、巻き取られたセパレーター(1)を繰り出す繰り出し装置、セパレーター(1)上に粘着剤層形成用の樹脂層Aおよびハードコート層形成用の樹脂層Bを多層コーティングするコーター、多層コーティングの上にセパレーター(2)を貼り合わせる合わせロール、粘着剤層形成用の樹脂層Aおよびハードコート層形成用の樹脂層Bを硬化させるためのエネルギー線照射装置、粘着剤層およびハードコート層が硬化した粘着フィルムを巻き取る巻き取り装置によって構成することができる。
【0046】
従来、溶剤型粘着剤をハードコート付フィルムに塗工して粘着フィルムを製造する場合では長大な乾燥機が必要であったが、本発明によれば乾燥機が必要ないので、繰り出し装置から巻き取り装置までの設備全長をコンパクトに収めることができる。また、乾燥やエージングが必要ないため製造に要する時間を短縮でき、生産性の向上、塵埃が製品に付着することの抑制を図ることができる。
【0047】
なお、本発明において、粘着剤層形成用の樹脂層Aおよびハードコート層形成用の樹脂層Bが順に多層コーティングされるセパレーターは、合成樹脂フィルム、金属箔、剥離紙などの可撓性を有する剥離体である必要はなく、例えばシリコーン等で剥離処理したり、機械研磨または化学研磨により鏡面仕上げを施すなどにより剥離性を持たせた金属板(例えばステンレス板)、ガラス板、合成樹脂板など可撓性を有しない剥離体を用いて、その上に多層コーティングした後にエネルギー線照射を行ない同時に硬化させることにより、粘着剤層およびハードコート層を有するハードコート付粘着フィルムを製造することもできる。この場合、可撓性を有しない剥離体から粘着フィルムを剥がした後には、製造したハードコート付粘着フィルムの粘着剤層を保護するため、新たに可撓性を有する剥離体と貼り合わせてもよい。また、可撓性を有しない剥離体から剥がした粘着フィルムを、そのまま被着体に貼付してもよい。さらには、可撓性を有しない剥離体から剥がした粘着フィルムを、そのままロール状に巻き取ることができる。このロール体を所定幅にスリットすることにより、ハードコート付粘着テープに加工することができる。
【0048】
本発明は、樹脂層Bの上(粘着剤層形成用の樹脂層Aが形成される面とは反対側の面)に反射防止層を積層した構成とすることもできる。ここで、反射防止層は、ハードコート付粘着フィルムを光学用途の被着体に貼り付けたときに、外側からの可視光線の反射を防ぐためのものであって、単層の場合は、反射防止層を支持するハードコート層形成用の樹脂層Bに比べて屈折率の低い物質、例えばポリシロキサン構造を有するフッ素含有有機化合物等の薄膜を形成する。また多層からなる場合は、ハードコート層形成用の樹脂層Bに比べて高屈折率の物質、例えば酸化チタンの蒸着薄膜と、ハードコート層形成用の樹脂層Bに比べて低屈折率の物質、例えば酸化ケイ素の薄膜を交互に積層する。このような金属酸化物薄膜の形成方法は特に限定されず、スパッタリング法、真空蒸着法、湿式塗布法により、酸化ジルコニウム、ITO、酸化ケイ素等の薄膜を形成することができる。
【0049】
さらに、樹脂層Bや反射防止層の上に防汚層を有していると、指紋等の汚れ防止や汚れが付いたときに簡単に取り除くことができるので好適である。防汚層としては、水および/または油脂に対して非濡性を有するものであって、例えばフッ素系化合物やシリコン系化合物からなる撥水性塗料が挙げられる。フッ素系撥水性塗料として具体的には商品名オプツール(ダイキン社製)等が挙げられ、シリコン系撥水性塗料としては、商品名タカタクォンタム(日本油脂社製)等が挙げられる。樹脂層Bや反射防止層の上に、これらの撥水性塗料を、塗布膜厚みが1〜50nm程度になるように薄く塗布する。撥水性塗料の塗布膜厚みが50nmよりも厚くなると反射防止層などの効果に悪影響を及ぼすので好ましくない。
また、フッ素系化合物やシリコン系化合物からなる撥水性塗料には、エネルギー線照射により硬化する材料を用いても構わない。樹脂層Bの上に防汚層を設ける場合においては、防汚層の密着性を向上させるためには、エネルギー線硬化型材料を樹脂Bなどの上にコートし、同時にエネルギー線硬化させることが好ましい。エネルギー線硬化型材料としては、例えばフッ素含有多官能(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。フッ素含有多官能(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、直鎖パーフルオロアルキレンジ(メタ)アクリレートや、パーフルオロポリエーテルジ(メタ)アクリレート、パーフルオロポリエーテルトリ(メタ)アクリレート、パーフルオロポリエーテルテトラ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0050】
以上説明したように、本発明の粘着フィルムの製造方法によれば、多層コーティングした粘着剤層形成用の樹脂層Aおよびハードコート層形成用の樹脂層Bを、エネルギー線照射で同時に重合・硬化させることにより粘着剤層とハードコート層とを一度に形成するので、ハードコート層に対する粘着剤層の密着性が向上し、ガラスや金属板などの粘着力が強くなる被着体に貼付した場合でも、被着体から粘着フィルムを剥がした時に糊残りの問題が発生しにくくなる。
また、本発明によれば、基材フィルムを使用しないでハードコート層を形成できると共に、ハードコート層および粘着剤の厚さを自由に設定することができ、製造上の問題が生じない。よってハードコート層の厚さを薄くすることができ、従来よりも全体の厚みが薄型のハードコート付粘着フィルムを製造することができる。
製造工程中、ハードコート層を単独でロール状に巻き取る工程がないので、ハードコート層に滑材など滑り性を付与するための成分を混入させる必要がない。よって、透明性等の光学特性的が優れたハードコート付粘着フィルムを製造することができる。
【0051】
粘着剤層形成用の樹脂層Aおよびハードコート層形成用の樹脂層Bとして、無溶剤型のエネルギー線硬化性樹脂組成物を用いた場合、溶剤を使用しないので作業環境の悪化や大気汚染につながる揮発性有機化合物(VOC)の発生もほとんどない。このため、VOCを回収・処理する設備を置くための費用やスペースを削減できる。また、エージング(養生)の期間や乾燥が不要のため、生産に要する時間が短くなり、コンパクトな設備で製造できる。
【実施例】
【0052】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下「部」とあるのは重量部である。
【0053】
評価項目として、VOC発生、ボールタック性、ハードコート性、ハードコート密着性、断裁適性を検討した。
VOC発生については、使用する塗料に有機溶剤を使用するかどうかで判断し、使用しない場合をOK、使用する場合をNGとした。
ボールタック性は、JIS Z0237に準じた傾斜式ボールタック測定方法(傾斜角度30度)で測定した。
ハードコート性については、スチールウールで5回こすった面が、PETフィルム単体より擦り傷が少ないことを目視で確認しハードコート層面を確認した上で、ハードコート層面側からJIS K5600−5−4,5に準ずる鉛筆硬度試験を行なった。
ハードコート密着性とは、粘着剤層(a)とハードコート層(b)およびハードコート層(b)とハードコート層(c)の密着性のことであり、評価方法として、粘着フィルムとしてのリワーク性を評価する時に、各層間で剥離しないこと、および光学特性、特に透明性や映り込みが発生しているかを目視で確認を行ない、変化無い場合をOK、透明性が落ちたり白濁することや映り込みが発生するほど剥離する場合をNGとした。
断裁適性は、かみそり刃(フェザー安全剃刀株式会社製、製品名FAS−10)で、作成した粘着フィルムをカットし粘着剤が糸を引くことがないかを目視で確認を行ない、糸引きがない場合をOK、糸引きがある場合をNGとした。さらに、かみそり刃でカットした界面を偏光顕微鏡で断面を観察し、明確な界面が観察できるか、連続層いわゆる傾斜層になっているかを確認し、ハードコート密着性との相関を検討した。
【0054】
(実施例1)
可撓性を有する剥離体である剥離フィルム(1)、(2)の一例として、片面にシリコーン系剥離剤による剥離処理を施した厚さ38μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを準備した。
また、粘着剤層(a)形成用の流動性ある無溶剤型の粘着性樹脂組成物(A)として、ハードセグメントとしてベンゼン環を有し、繰り返し単位にアルキル基を有するウレタンアクリレートオリゴマー50部に2−エチルヘキシルアクリレート50部および光重合開始剤(商品名:Irgacure184、チバスペシャリティーケミカルス製)3部を混合した混合液を準備した。
【0055】
さらに、ハードコート層(b)形成用のUV硬化性樹脂(B)として、ハードセグメントとしてポリカーボネート骨格を有し、繰り返し単位にアルキル基を有するウレタンアクリレートオリゴマーおよび光重合開始剤(商品名:Irgacure184、チバスペシャリティーケミカルス製)3部を混合した混合液を準備した。
さらに、ハードコート層(c)形成用のUV硬化性樹脂(C)として、紫外線硬化型アクリル系ハードコート剤を準備した。
【0056】
上記の剥離フィルム(1)に、上記の粘着剤層(a)形成用の粘着性樹脂組成物(A)とUV硬化性樹脂(B)、UV硬化性樹脂(C)を3層同時コートし、これらの3層のコーティング層上に剥離フィルム(2)を泡が入らないように貼合させた。具体的には、粘着性樹脂組成物(A)をアプリケーターで約30μmのギャップで製膜し、その上にUV硬化性樹脂(B)をアプリケーターで約70μmのギャップで製膜し、さらにその上にUV硬化性樹脂(C)をアプリケーターで約80μmのギャップで製膜した。
出力120W/cm、ランプ距離150mm、積算光量600mJ/cmの条件で紫外線照射を行なってコーティング層を硬化させた。これにより、図1に示すように、剥離フィルム(1)/粘着剤層(a)/ハードコート層(b)/ハードコート層(c)/剥離フィルム(2)の層構成を有する粘着フィルムを得た。
【0057】
作製したフィルムからのVOCの発生は、有機溶剤を使用しないために、OKであった。粘着剤層(a)のボールタックは、3であった。また、ハードコート層(c)のボールタックは0であった。ハードコート性は、鉛筆硬度試験で2Hであった。ハードコート密着性は、OKであった。断裁適性もOKであり、明確な界面を確認できず、連続層であると推定された。
【0058】
(実施例2)
粘着剤層(a)形成用の流動性ある無溶剤型の高粘度粘着性樹脂組成物(A)として、ハードセグメントとしてベンゼン環を有し、繰り返し単位にアルキル基を有するウレタンアクリレートオリゴマー90部に2−エチルヘキシルアクリレート10部および光重合開始剤(商品名:Irgacure184、チバスペシャリティーケミカルス製)3部を混合した混合液を準備した。この粘着性樹脂組成物(A)以外は実施例1と同様にして、剥離フィルム(1)/粘着剤層(a)/ハードコート層(b)/ハードコート層(c)/剥離フィルム(2)の層構成を有する粘着フィルムを得た。
【0059】
作製したフィルムからのVOCの発生は、有機溶剤を使用しないために、OKであった。粘着剤層(a)のボールタックは、1であった。また、ハードコート層(c)のボールタックは0であった。ハードコート性は、鉛筆硬度試験で2Hであった。ハードコート密着性は、OKであった。断裁適性もOKであり、明確な界面を確認できず、連続層であると推定された。
【0060】
(実施例3)
粘着剤層(a)形成用の流動性ある無溶剤型の粘着性樹脂組成物(A)として、ハードセグメントとしてベンゼン環を有し、繰り返し単位にアルキル基を有するウレタンアクリレートオリゴマー50部に2−エチルヘキシルアクリレート50部および光重合開始剤(商品名:Irgacure184、チバスペシャリティーケミカルス製)3部を混合した混合液を準備した。
さらに、ハードコート層(b)形成用のUV硬化性樹脂(B)として、紫外線硬化型アクリル系ハードコート剤を準備した。
【0061】
上記の剥離フィルム(1)に、上記の粘着剤層(a)形成用の粘着性樹脂組成物(A)とUV硬化性樹脂(B)を2層同時コートし、これらの2層のコーティング層上に剥離フィルム(2)を泡が入らないように貼合させた。出力120W/cm、ランプ距離150mm、積算光量600mJ/cmの条件で紫外線照射を行なってコーティング層を硬化させた。これにより、剥離フィルム(1)/粘着剤層(a)/ハードコート層(b)/剥離フィルム(2)の層構成を有する粘着フィルムを得た。
【0062】
作製したフィルムからのVOCの発生は、有機溶剤を使用しないために、OKであった。粘着剤層(a)のボールタックは、1であった。また、ハードコート層(c)のボールタックは0であった。ハードコート性は、鉛筆硬度試験で2Hであった。ハードコート密着性は、OKであった。断裁適性もOKであり、明確な界面を確認できず、連続層であると推定された。
【0063】
(実施例4)
剥離フィルム(1)、(2)の一例として、片面にシリコーン系剥離剤による剥離処理を施した厚さ38μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを準備した。
また、粘着剤層(a)形成用の流動性ある無溶剤型の粘着性樹脂組成物(A)として、2−エチルヘキシルアクリレート50部、2−ヒドロキシプロピルアクリレート50部、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート0.50部および光重合開始剤(商品名:Irgacure184、チバスペシャリティーケミカルス製)3部よりなる樹脂液を準備した。
さらに、ハードコート層(b)形成用のUV硬化性樹脂(B)として、ハードセグメントとしてポリカーボネート骨格を有し、繰り返し単位にアルキル基を有するウレタンアクリレートオリゴマーおよび光重合開始剤(商品名:Irgacure184、チバスペシャリティーケミカルス製)3部を混合した混合液を準備した。
さらに、ハードコート層(c)形成用のUV硬化性樹脂(C)として、紫外線硬化型アクリル系ハードコート剤を準備した。
【0064】
上記の剥離フィルム(1)に、上記の粘着剤層(a)形成用粘着性樹脂組成物(A)をコートし、コーティング層上に剥離フィルム(2)を泡が入らないように貼合させた。出力120W/cm、ランプ距離150mm、積算光量約50mJ/cmの条件で紫外線照射することで、樹脂の若干の硬化を行なった。剥離フィルム(2)を剥離させ、剥離面にUV硬化性樹脂(B)およびUV硬化性樹脂(C)をコートし、これらの3層のコーティング層上に新しい剥離フィルム(2)を泡が入らないように貼合させた。出力120W/cm、ランプ距離150mm、積算光量600mJ/cmの条件で紫外線照射を行なってコーティング層を硬化させた。これにより、剥離フィルム(1)/粘着剤層(a)/ハードコート層(b)/ハードコート層(c)/剥離フィルム(2)の層構成を有する粘着フィルムを得た。
【0065】
作製したフィルムからのVOCの発生は、有機溶剤を使用しないために、OKであった。粘着剤層(a)のボールタックは、16であった。また、ハードコート層(c)のボールタックは0であった。ハードコート性は、鉛筆硬度試験で2Hであった。ハードコート密着性は、OKであった。断裁適性もOKであり、明確な界面を確認できず、連続層であると推定された。
【0066】
(比較例1)
剥離フィルム(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)の一例として、片面にシリコーン系剥離剤による剥離処理を施した厚さ38μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを準備した。
粘着剤層(a)形成用の粘着性樹脂組成物(A)、ハードコート層(b)形成用のUV硬化性樹脂(B)、ハードコート層(c)形成用のUV硬化性樹脂(C)としては、実施例1で準備したものを用いた。
【0067】
上記の剥離フィルム(1)に、上記の粘着剤層(a)形成用の粘着性樹脂組成物(A)をコートした後、剥離フィルム(2)を泡が入らないように貼合させた。出力120W/cm、ランプ距離150mm、積算光量600mJ/cmの条件で紫外線照射を行なうことにより、剥離フィルム(1)/粘着剤層(a)/剥離フィルム(2)の層構成を有する積層体を製造した。
同様に、剥離フィルム(3)に、上記のUV硬化性樹脂(B)をコートした後、剥離フィルム(4)を泡が入らないように貼合させた。出力120W/cm、ランプ距離150mm、積算光量600mJ/cmの条件で紫外線照射を行なうことにより、剥離フィルム(3)/ハードコート層(b)/剥離フィルム(4)の層構成を有する積層体を製造した。
同様に、剥離フィルム(5)に、上記のUV硬化性樹脂(C)をコートした後、剥離フィルム(6)を泡が入らないように貼合させた。出力120W/cm、ランプ距離150mm、積算光量600mJ/cmの条件で紫外線照射を行なうことにより、剥離フィルム(5)/ハードコート層(c)/剥離フィルム(6)の層構成を有する積層体を製造した。
【0068】
粘着剤層(a)の剥離フィルム(2)とハードコート層(b)の剥離フィルム(4)を剥がし、ロールプレス機にて貼合し、剥離フィルム(1)/粘着剤層(a)/ハードコート層(b)/剥離フィルム(3)の層構成を有する粘着フィルムが得られた。さらに、粘着フィルムの剥離フィルム(3)とハードコート層(c)の剥離フィルム(6)を剥がし、ロールプレス機で貼合した。これにより、剥離フィルム(1)/粘着剤層(a)/ハードコート層(b)/ハードコート層(c)/剥離フィルム(5)の層構成を有する粘着フィルムが得られた。
【0069】
作製したフィルムからのVOCの発生は、有機溶剤を使用しないために、OKであった。粘着剤層(a)のボールタックは、1であった。また、ハードコート層(c)のボールタックは0であった。ハードコート性は、鉛筆硬度試験で2Hと測定はできたが、ハードコート層(b)とハードコート層(c)間ではほとんど接着しておらず、積層品を形成することは不可能であった。断裁適性はOKであったが、明確な界面が確認できたため、連続層ではなく界面が存在していると推定された。
【0070】
(比較例2)
粘着剤層(a)形成用の粘着性樹脂組成物(A)およびハードコート層(c)形成用のUV硬化性樹脂(C)として、実施例1で準備したものを用いた。ハードコート層(b)形成用には東洋紡社製ポリエチレンテレフタレートフィルム(製品名:E5000)を用いた。
ハードコート層(b)へ粘着性樹脂組成物(A)をコーティングし、気泡が入らないように剥離フィルム(1)を貼合後、出力120W/cm、ランプ距離150mm、積算光量600mJ/cmの条件で紫外線照射を行なってコーティング層を硬化させた。
粘着性樹脂組成物をコーティングした逆面に、UV硬化性樹脂(C)を、コーティングし気泡が入らないように剥離フィルム(2)を貼合後、出力120W/cm、ランプ距離150mm、積算光量600mJ/cmの条件で紫外線照射を行なってコーティング層を硬化させた。
これにより、剥離フィルム(1)/粘着剤層(a)/ハードコート層(b)/ハードコート層(c)/剥離フィルム(2)の層構成を有する粘着フィルムを得た。
【0071】
作製したフィルムからのVOCの発生は、有機溶剤を使用しないために、OKであった。粘着剤層(a)のボールタックは、1であった。また、ハードコート層(c)のボールタックは0であった。ハードコート性は、鉛筆硬度試験で2Hであった。ハードコート密着性は、フィルム界面で剥離が生じ透過率の低下や白濁が目視で確認が出来たためNGであった。断裁適性はOKであったが、明確な界面が確認できたため、連続層ではなく界面が存在していると推定された。
さらに、基材フィルムを使用しており、光学異方性があるため、使用できる用途が限られる。
【0072】
(比較例3)
剥離フィルム(1)の一例として、片面にシリコーン系剥離剤による剥離処理を施した厚さ38μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを準備した。
粘着剤層(a)形成用の粘着性樹脂組成物(A)として、2−エチルヘキシルアクリレート−アクリル酸(重量比で95:5)共重合体100部にポリイソシアネート硬化剤を3部添加し、トルエン溶媒を加えて粘度500cpsに調整した。ハードコート層(b)形成用には東洋紡社製ポリエチレンテレフタレートフィルム(製品名:E5000)を用いた。ハードコート層(c)形成用のUV硬化性樹脂(C)としては、実施例1で準備したものを用いた。
【0073】
上記のハードコート層(b)に、上記の粘着剤層(a)形成用粘着性樹脂組成物(A)をコートした後80℃で乾燥し、剥離フィルム(2)を泡が入らないように貼合させた。そのあと、40℃中で一週間熟成させ硬化させることにより、剥離フィルム(1)/粘着剤層(a)/ハードコート層(b)の層構成を有する積層体を製造した。
さらに、ハードコート層(b)へUV硬化性樹脂(C)をコートし、剥離フィルム(2)を泡が入らないように貼合させた。出力120W/cm、ランプ距離150mm、積算光量600mJ/cmの条件で紫外線照射を行なってコーティング層を硬化させた。これにより、剥離フィルム(1)/粘着剤層(a)/ハードコート層(b)/ハードコート層(c)/剥離フィルム(2)の層構成を有する粘着フィルムを得た。
【0074】
作製したフィルムからのVOCの発生は、有機溶剤を使用しているために、NGであった。粘着剤層(a)のボールタックは、1であった。また、ハードコート層(c)のボールタックは0であった。ハードコート性は、鉛筆硬度試験で2Hであった。ハードコート密着性は、フィルム界面で剥離が生じ透過率の低下や白濁が目視で確認が出来たためNGであった。断裁適性はOKであったが、明確な界面が確認できたため、連続層ではなく界面が存在していると推定された。
さらに、基材フィルムを使用しており、光学異方性があるため、使用できる用途が限られる。
【0075】
以上の評価結果を表1にまとめて示す。
【0076】
【表1】

【0077】
以上述べたように、実施例1〜4の粘着フィルムは、手で曲げたときに粘着剤層(a)/ハードコート層(b)の界面では剥離しないことを断面顕微鏡観察で確認でき、かみそり刃でカットした断面のハードコート層(b)/粘着剤層(a)の界面を顕微鏡観察したときに剥離していないことを確認でき、さらに、その界面を偏光顕微鏡で断面を観察したときに、明確な界面は観察できず、連続層いわゆる傾斜層になっていることが確認できた。これらの結果から、ハードコート密着性は「〇」と評価することができる。また、剥離フィルム(1)、(2)を剥離した粘着フィルムを一般的なガラスへ貼合したところ、貼着操作も円滑であった。このため、貼合性は「〇」と評価することができる。したがって、総合評価は「◎」と評価することができる。実施例1〜4の粘着フィルムの製造方法は、溶媒の使用および乾燥工程がないので、VOCの発生はOKと評価することができる。
【0078】
これに対して、比較例1〜3の粘着フィルムは、粘着フィルムを手で曲げた後、粘着剤層(a)/ハードコート層(b)/ハードコート層(c)の界面を断面顕微鏡で観察したときに界面で剥れている部分が確認でき、その界面を光学顕微鏡・偏光顕微鏡で断面を観察したときに、明確な界面が観察され、その界面で剥離していることが確認でき、また、剥離フィルム(2)を徐々に剥離させた後、一般的なガラスへ貼合したところ、貼着はできたが、粘着剤層(a)/ハードコート層(b)の界面、および/または、ハードコート層(b)/ハードコート層(c)の界面で剥離が生じ、白化することがあった。これらの結果から、貼合性は「〇」、ハードコート密着性は「×」、総合評価は「×」と評価することができる。
比較例3の粘着フィルムの製造方法は、トルエン溶媒の乾燥工程を有するので、VOCの発生はNGと評価することができる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明のハードコート付粘着フィルムの製造方法は、各種のハードコート付粘着フィルム、例えば光学用のハードコート付き粘着フィルムの製造に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明のハードコート付粘着フィルムの一例を示す模式的断面図である。
【符号の説明】
【0081】
11…剥離フィルム(セパレーター)、12…ハードコート層、13…ハードコート層、14…粘着剤層、15…剥離フィルム(セパレーター)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
離型性を有するセパレーターの一方の面上に、エネルギー線硬化により常温でJIS Z0237に準じた傾斜式ボールタック測定方法で傾斜角度30度にて測定したボールタックが、1以上となる粘着剤層形成用の樹脂層Aと、エネルギー線硬化により常温でJIS Z0237に準じた傾斜式ボールタック測定方法で傾斜角度30度にて測定したボールタックが、0となるハードコート層形成用の樹脂層Bを順に多層コーティングした後に、エネルギー線を照射して前記樹脂層A、樹脂層Bとを同時に硬化させることにより、ハードコート層の一方の面に粘着剤層が積層された粘着フィルムを一度に形成することを特徴とするハードコート付粘着フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記樹脂層Aおよび樹脂層Bは、無溶剤型のエネルギー線硬化性組成物からなることを特徴とする請求項1に記載のハードコート付粘着フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記樹脂層Bは、少なくとも2層の多層コーティングした樹脂層からなり、JIS K5600−5−4,5に準ずる鉛筆硬度試験でH以上のハードコート性を有することを特徴とする請求項1または2に記載のハードコート付粘着フィルムの製造方法。
【請求項4】
さらに、樹脂層Bの上に、防汚層を積層したことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のハードコート付粘着フィルムの製造方法。
【請求項5】
さらに、樹脂層Bの上に、反射防止層と、最外層として防汚層を積層したことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のハードコート付粘着フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記セパレーターは、合成樹脂フィルム、金属箔、剥離紙などの可撓性を有する剥離体の群から選択された1種であって、前記樹脂層Aと樹脂層Bとが同時に硬化した後も前記セパレーターが前記樹脂層Aと貼合してなることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載のハードコート付粘着フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記セパレーターは、合成樹脂板、金属板、ガラス板などの可撓性を有しない剥離体の群から選択された1種であって、前記樹脂層Aと樹脂層Bとが同時に硬化した後に前記セパレーターを樹脂層Aから剥離することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載のハードコート付粘着フィルムの製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の製造方法により得られることを特徴とする、ハードコート層の一方の面に粘着剤層が積層されたハードコート付粘着フィルム。

【図1】
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【公開番号】特開2008−133349(P2008−133349A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−319931(P2006−319931)
【出願日】平成18年11月28日(2006.11.28)
【出願人】(000224101)藤森工業株式会社 (292)
【Fターム(参考)】