説明

バッテリ装置

【課題】バッテリセル間の温度差を極力低減することが可能なバッテリ装置を提供すること。
【解決手段】バッテリ装置は、複数のバッテリセル22により構成された複数のバッテリモジュール21を有するバッテリパッケージ4と、バッテリパッケージ4を冷却する冷却装置と、バッテリセル22をそれぞれ加熱する加熱装置6と、バッテリセル22の温度を検出する温度検出手段と、バッテリセル22を加熱装置6により加熱することで、バッテリセル22の温度差を低減可能なバッテリ管理手段9と、を備える構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に用いられるバッテリ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やプラグインハイブリッド自動車等の車両に用いられるバッテリ装置は、複数のバッテリセルから構成されるバッテリモジュールを複数有している。バッテリ装置は、これらバッテリモジュールをバッテリケースに収納して形成されている。バッテリ装置は、放電及び充電により、バッテリセルがそれぞれ発熱して、各バッテリセルの温度が上昇する。
【0003】
しかし、バッテリ装置は、その使用が可能な温度範囲が設定されており、この温度範囲外では、機能性及び安全性の理由から、放電及び充電を停止するように設定されている。このため、バッテリ装置は、例えば、バッテリケース内のバッテリモジュールに隣接して配置されたブロアファンにより、発熱したバッテリセルを冷却風で冷却する冷却構造を有するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかし、バッテリ装置は、バッテリモジュールの冷却や各バッテリセルの発熱によって、各バッテリモジュールの温度にばらつきが発生する。具体的には、放電及び充電によるバッテリセルへの負荷により、バッテリセルの温度が異なる。また、冷却構造による冷却は、送風口や冷却風の流れ等により、バッテリセルの冷却にばらつきが発生する。このため、各バッテリセルに温度差が発生し、バッテリモジュールにおいても、温度差が発生することとなる。
【0005】
このため、バッテリモジュールを熱する電熱線を備え、この電熱線を、バッテリモジュールの中央側よりも側縁側で密に配索するバッテリ装置が知られている(例えば特許文献2参照)。このバッテリ装置は、その温度が上昇しやすい中央側で、電熱線による加熱を抑えることで、バッテリモジュールの温度のばらつきを低減することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−54379号公報
【特許文献2】特開2007−329047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したバッテリ装置では以下の問題があった。即ち、バッテリモジュールは、バッテリセルの集合で形成されており、例えバッテリモジュールの温度のばらつきを低減したとしても、バッテリモジュール内、即ち、バッテリセルにおける温度のばらつきを低減することはできない。また、複数のバッテリモジュールは、その配置が複雑な場合には、必ずしも中央側のバッテリモジュールが側縁側のバッテリモジュールよりも温度が高くならない。
【0008】
そこで、本発明は、複数のバッテリセルの温度差を極力低減可能なバッテリ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決し目的を達成するために、本発明のバッテリ装置は次のように構成されている。
【0010】
本発明の一態様として、車両用駆動モータに電力を供給するバッテリモジュールを構成する複数のバッテリセルと、前記複数のバッテリセルのそれぞれの温度を検出する温度検出手段と、前記複数のバッテリセルのそれぞれの温度を調整可能な温度調整手段と、検出された前記バッテリセルの温度に基づいて前記複数のバッテリセルの平均温度を算出し、該算出された前記バッテリセルの平均温度と所定の温度差を有する前記バッテリセルの温度を前記温度調整手段により調整し、前記平均温度と前記所定の温度差を有する前記バッテリセルの温度との温度差を減少させる管理手段と、を備えることを特徴とするバッテリ装置が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、バッテリセル間の温度差を極力低減することが可能なバッテリ装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施の形態に係るバッテリ装置を用いた自動車の構成を模式的に示す斜視図。
【図2】同バッテリ装置の構成を示す分解斜視図。
【図3】同バッテリ装置の構成を模式的に示す説明図。
【図4】同バッテリ装置の使用の一例を示す流れ図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態に係るバッテリ装置1を図1〜4を用いて説明する。
図1は本発明の一実施の形態に係るバッテリ装置1を用いた電気自動車100の構成を模式的示す斜視図、図2は同バッテリ装置1の構成を示す分解斜視図、図3は同バッテリ装置1の構成を模式的に示す説明図、図4はバッテリ装置1の使用の一例を示す流れ図である。なお、図1〜3中、Bはボルトを、CはCANケーブルを、Sは信号線を、それぞれ示している。
【0014】
図1に示すように、バッテリ装置1は、例えば、電気自動車100に用いられる。電気自動車100は、例えば、電動機101と、充電装置102と、サスペンション等によって車体103に支持された駆動輪104と、を備えている。
【0015】
電動機101は、車体103の後部に配置され、駆動輪104を駆動可能に形成された、所謂駆動モータである。また、電動機101は、バッテリ装置1に接続され、このバッテリ装置1により供給された電力により駆動可能に形成されている。充電装置102は、バッテリ装置1に接続されるとともに、外部の供給電源と接続可能に形成されている。充電装置102は、この供給電源から供給された電力をバッテリ装置1に充電可能に形成されている。
【0016】
また、電気自動車100は、図示しないフレーム構造体を有している。このフレーム構造体は、複数のサイドメンバ及びクロスメンバを溶接により固定することで構成され、車体103の剛性を向上させるとともに、バッテリ装置1を接続固定可能に形成されている。駆動輪104は、電動機101により駆動可能に形成されている。
【0017】
図2、3に示すように、バッテリ装置1は、バッテリケース3と、バッテリパッケージ4と、冷却装置(冷却手段)5と、加熱装置(温度調整手段)6と、パッド部材7と、温度検出手段8と、バッテリ管理手段9と、を備えている。
【0018】
バッテリケース3は、バッテリパッケージ4を収容可能に形成されている。具体的には、バッテリケース3は、バッテリトレイ11と、バッテリカバー12と、を備えている。バッテリトレイ11は、バッテリケース3の下部を構成する。バッテリカバー12は、バッテリケース3の上部を構成する。
【0019】
バッテリケース3は、バッテリトレイ11及びバッテリカバー12が互いに対向して組み合うことで、内部にバッテリパッケージ4の収納空間が形成される。
【0020】
バッテリトレイ11は、上方に開口する凹形状であり、バッテリパッケージ4が、凹形状の上面に載置される。バッテリトレイ11の開口縁部には周方向に広がるトレイフランジ部13が形成される。バッテリカバー12は、下方に開口する凹形状である。バッテリカバー12の開口縁部には、周方向に広がるカバーフランジ部14が形成される。
【0021】
バッテリカバー12は、その上面に、開口部15が設けられている。なお、この開口部15は、冷却装置5と略対向する位置に設けられ、後述する冷却装置5で冷却された空気を外部へ排出可能な位置に形成されている。
【0022】
バッテリトレイ11及びバッテリカバー12は、その間にシール部材等が介在してトレイフランジ部13及びカバーフランジ部14が当接することで、その内部への液体の侵入を防止可能なバッテリケース3が形成される。
【0023】
バッテリパッケージ4は、電力が蓄電可能に形成されている。具体的には、バッテリパッケージ4は、複数のバッテリモジュール21により形成されている。複数のバッテリモジュール21は、複数のバッテリセル22の集合により構成されている。
【0024】
なお、図2中バッテリセル22は、2点鎖線で示す。バッテリパッケージ4は、複数のバッテリセル22が一つに接続されたバッテリモジュール21の集合により形成されている。また、図3に示すように、バッテリパッケージ4は、バッテリ管理手段9に電気的に接続されている。
【0025】
バッテリセル22は、その2つの電極22a,22bが、例えば、隣り合うバッテリセル22の異なる電極22b,22a、及び、バッテリ管理手段9と接続されている。即ち、バッテリセル22は、その陰極22aが一方に隣り合うバッテリセル22の陽極22bと接続されるとともに、その陽極22bが他方に隣り合うバッテリセル22の陰極22aと接続されている。このようなバッテリセル22は、例えば、リチウムイオン電池が用いられる。
【0026】
冷却装置5は、冷却手段31と、ファン装置32と、流路部33と、を備え、バッテリパッケージ4内の温度、具体的には、バッテリセル22を冷却し、バッテリセル22の温度を可変可能な温度可変手段である。冷却手段31は、エバポレータ35と、エバポレータケース36とを備えている。エバポレータ35は、蒸発する前の冷却用の冷媒を供給する導入路部35aと、エバポレータ35内で蒸発された冷媒を排出する排出路部35bと、を備え、図示しない外部の圧縮機などに連結されている。
【0027】
エバポレータケース36は、エバポレータ35を収容可能に形成されている。具体的には、エバポレータケース36は、エバポレータケースアッパ36aと、エバポレータケースロア36bとを備え、例えば互いにボルトBによって固定される。
【0028】
エバポレータケース36の周壁には、バッテリケース3内の空気をエバポレータ35に導く流入口部37が形成されている。また、エバポレータケースアッパ36aには、エバポレータ35を通過して冷却された空気を外部へ排出する排出口部38が形成されている。なお、この排出口部38は、バッテリカバー12の排出口部38と対向する部位に形成された冷却された空気を外部へ排出する開口部15と対向することで、バッテリカバー12を介して外部へと冷却された空気を排出可能に形成されている。
【0029】
ファン装置32は、ファン41と、ファンカバー42と、ファンダクト43とを備えている。ファン装置32は、送風装置の一例であり、冷却装置5で冷却された空気を、バッテリケース3内に流路部33を介して送風可能に形成されている。ファン41は、例えば、内側から吸気し、当該吸気を周方向外側から吐き出す遠心式ファンが用いられる。ファン41は、バッテリカバー12の上面に固定されている。
【0030】
ファンカバー42は、ファン41とファンダクト43とを覆うようにバッテリカバー12の上面に固定される。ファンダクト43は、その内部が空洞に形成され、冷却装置5で冷却された空気をファン41に導くように、その一端部43aが開口部15に接続されるとともに、その他端側43bがファン41の内側に接続されている。
【0031】
流路部33は、ファン41によって吐出された空気をバッテリケース3内に導く複数のダクト46を備えている。これらダクト46は、バッテリカバー12の上面に固定され、バッテリカバー12の内部と連通可能に形成されている。なお、例えば、バッテリカバー12のダクト46と対向する部位の一部には、ダクト46とバッテリケース3内とを連通可能な開口部が複数設けられることで、ダクト46を介して形成されている。
【0032】
図3に示すように、加熱装置6は、バッテリ管理手段9に電気的に接続された複数のヒータ51により構成され、バッテリパッケージ4内の温度、具体的には、バッテリセル22をそれぞれ加熱し、バッテリセル22の温度を可変可能な温度可変手段である。
【0033】
加熱装置6は、複数のヒータ51がバッテリ管理手段9にそれぞれ接続されるとともに、複数のバッテリセル22の、例えば、下方にそれぞれ配置される。ヒータ51は、シート状に形成され、バッテリ管理手段9により、各々が個別に昇温可能に形成されている。
【0034】
パッド部材7は、例えば弾性変形可能なゴムなどの樹脂で形成されている。パッド部材7は、例えばバッテリトレイ11及びバッテリカバー12の組み付け時に、パッド部材7の先端部がバッテリカバー12に当接して押圧される高さに形成されている。このパッド部材7は、バッテリモジュール21をバッテリケース3内に固定可能に形成されている。
【0035】
温度検出手段8は、バッテリセル22付近に近接して設けられた複数の温度センサ53により形成されている。例えば、温度検出手段8は、バッテリセル22間に設けられ、バッテリセル22の温度Txをそれぞれ検出可能に形成されるとともに、これら検出した温度Txのデータを、バッテリ管理手段9に送信可能に形成されている。
【0036】
バッテリ管理手段9は、バッテリカバー12内に設けられ、バッテリパッケージ4の管理を行う管理手段である。バッテリ管理手段9は、BMU(Battery Management Unit)55と、CMU(Cell Monitoring Unit)56と、を備えている。
【0037】
図3に示すように、BMU55は、電気自動車100に設けられたECU等にCAN−cのCANケーブルCにより接続されている。また、BMU55は、CMU56と通信が可能なケーブルS(以下、信号線Sとして説明)により接続されている。なお、BMU55は、データ等を記憶する記憶部(記憶手段)55aを有している。
【0038】
BMU55は、バッテリモジュール21の使用可能な温度、及び、使用に最適な温度が記憶部55aに記憶されている。ここで、バッテリモジュール21の使用可能な温度とは、バッテリモジュール21を安全、且つ、所定の能力で使用可能な最高温度及び最低温度である。なお、ここでは、最低温度は、一般的な使用における外気温以上であるため、ここでは、その詳細は省略する。
【0039】
バッテリモジュール21の使用に最適な温度とは、バッテリモジュール21が高能力であって、劣化が少ない温度である。なお、これら温度は、バッテリモジュール21にそれぞれ複数設けられたバッテリセル22の温度である。なお、以下、使用可能な最高温度を温度Th、最適温度を温度Tbとして説明する。
【0040】
CMU56は、バッテリモジュール21にそれぞれ設けられ、バッテリモジュール21のバッテリセル22と、信号線Sを介してそれぞれ接続されている。なお、具体的には、CMU56は、バッテリセル22に接続される温度端子56a及び電源端子56bと、ヒータ51に接続するヒータ端子56cと、を備えている。
【0041】
温度端子56aは、図3に示すように、温度センサ53に接続されている。CMU56は、温度端子56aは、信号線Sを介して温度センサ53により検出されたバッテリセル22の温度データを受信可能に形成されている。また、CMU56は、受信した温度データを、BMU55に信号線Sを介して送信可能に形成されている。
【0042】
電源端子56bは、バッテリセル22に信号線Sを介して接続されている。電源端子56bは、バッテリモジュール21に設けられた複数のバッテリセル22の両極22a,22bにそれぞれ接続されている。
【0043】
なお、図3に示すように、電源端子56bは、隣り合うバッテリセル22の接続された陰極22a及び陽極22b間に接続されていてもよい。CMU56は、BMU55の指示に基づいて、電源端子56bから信号線Sを介してバッテリセル22の充電及び放電が可能に、バッテリセル22に接続されている。
【0044】
ヒータ端子56cは、ヒータ51に信号線Sを介して接続されている。CMU56は、ヒータ51に通電することで、ヒータ51を加熱可能に形成されている。
【0045】
このようなBMU55及びCMU56を有するバッテリ管理手段9は少なくとも次の機能を有している。
(1)バッテリセル22の充電及び放電を行う機能
(2)バッテリセル22の温度Txを検出する機能
(3)バッテリモジュール21の推定温度Tm、及び、バッテリセル22の平均温度Tcを算出する機能
(4)バッテリモジュール21の推定温度Tmを監視する機能
(5)冷却装置5を駆動させる機能
(6)加熱装置6を駆動させる機能
次に、バッテリ管理手段9が有する上記機能(1)〜(6)について説明する。
機能(1)である、バッテリセル22の充電及び放電を行う機能は、電気自動車100に設けられたECU等からバッテリセル22の充電及び放電の指示に基づいて、バッテリセル22の充電及び放電を行う機能である。
【0046】
なお、上述にある充電及び放電の具体例としては、電気自動車100を起動しバッテリ装置1と他構成品との通電(放電)、充電装置102及び外部電源の接続によるバッテリセル22の充電、電動機101により駆動輪104の駆動による充電及び放電等が挙げられる。
【0047】
機能(2)である、バッテリセル22の温度Txを測定する機能は、温度センサ53により計測されたバッテリセル22の温度データをCMU56で受信する。CMU56は、受信したバッテリセル22の温度データをBMU55に送信する。BMU55は、CMU56から送信された温度データを受信するとともに、この受信した温度データを記憶部55aに一時的に記憶させる。このように、温度センサ53により検出されたバッテリセル22の温度TxをBMU55が受信し、記憶する機能である。
【0048】
機能(3)の一である、バッテリモジュール21の推定温度Tmを算出する機能は、機能(2)で計測したバッテリセル22の温度Txに基づいて、BMU55がバッテリモジュール21に設けられた複数のバッテリセル22の温度Txから、それらバッテリセル22の平均温度をバッテリモジュール21の推定温度Tmとして算出する機能である。また、機能(3)の一である、バッテリセル22の平均温度Tcを算出する機能は、機能(2)で計測したバッテリセル22の温度Txに基づいて、BMU55が、全バッテリセル22の温度データから、全バッテリセル22の平均温度Tcを算出する機能である。
【0049】
機能(4)である、バッテリモジュール21の推定温度Tmを監視する機能は、BMU55が、機能(3)で算出したバッテリモジュール21の推定温度Tmを常時監視し、バッテリモジュール21の推定温度Tmが、バッテリ装置1の使用可能な温度範囲である最高温度Thよりも低いか否かの監視を行う機能である。
【0050】
なお、BMU55は、バッテリモジュール21のいずれかの推定温度Tmが、最高温度Th以上となった場合には、緊急停止指示として、バッテリ装置1の充電及び放電を停止させ、外部へこの情報を報知可能に形成されている。なお、使用可能な温度範囲の最低温度も監視する機能を有しているが、ここでは省略する。
【0051】
機能(5)である、冷却装置5を駆動させる機能は、BMU55が、機能(3)で算出したバッテリモジュール21の推定温度Tmを、温度Th以内に位置させるとともに、温度Tbに近似させるために、冷却装置5を駆動させる機能である。
【0052】
詳しくは、BMU55が、算出した推定温度Tmを、BMU55に記憶された温度Tbと比較し、推定温度Tmが、温度Tbよりも高い場合に、冷却装置5を駆動し、各バッテリセル22を冷却させる。
【0053】
なお、このとき、BMU55からの駆動指示が冷却装置5に送られ、この駆動指示に基づいて、冷却装置5は、ファン装置32を駆動させる。冷却装置5は、エバポレータ35で冷却された空気を、流路部33を介してバッテリケース3へ送風する。この冷却された空気によって、バッテリケース3内のバッテリセル22を冷却し、バッテリモジュール21の推定温度Tmを低減させ、使用可能な温度範囲内(温度Thよりも低い温度)とする機能である。また、バッテリモジュール21の推定温度Tmを温度Tbに近似させる機能である。
【0054】
機能(6)である、加熱装置6を駆動させる機能は、BMU55が、機能(3)で算出したバッテリモジュール21の推定温度Tmが使用可能な温度範囲内である場合に、各バッテリセル22の温度Txを近似させるために加熱装置6を駆動させる機能である。即ち、バッテリセル22の平均温度Tcに対して温度差が所定値(所定の温度差)を超えるバッテリセル22の温度を可変させる機能である。例えば、低温のバッテリセル22を、そのバッテリセル22を加熱するヒータ51で加熱して、温度の低いバッテリセル22の温度を上昇させ、バッテリセル22の平均温度Tcに近似させ、各バッテリセル22間の温度差を低減させる機能である。
【0055】
詳しくは、機能(6)は、機能(2)により、先ず、バッテリセル22の温度Txを常時、又は、所定の時間毎に温度センサ53で検出し、この検出した温度データをBMU55にて受信する。BMU55は、機能(5)で冷却したバッテリセル22のうち、バッテリセル22の平均温度Tcより低い温度のバッテリセル22をヒータ51に通電して加熱する。また、加熱装置6により加熱しているバッテリセル22の温度を常時又は所定の時間毎にBMU55で受信し、この温度が、バッテリセル22の平均温度Tc以上となった場合には、ヒータ51の通電を停止し、加熱を中止する機能である。
【0056】
このように構成された電気自動車100に用いられるバッテリ装置1は、バッテリ管理手段9により、バッテリパッケージ4の管理が行われる。このバッテリ管理手段9によるバッテリパッケージ4の管理は、バッテリ管理手段9によるバッテリモジュール21の推定温度の平均化、及び、バッテリセル22の温度の平均化の処理である。次に、このようなバッテリ装置1のバッテリ管理手段9による処理の一例を、図4に示す流れ図を用いて説明する。
【0057】
電気自動車100の充電装置102が供給電源等に接続される、又は、電動機101により駆動輪104の駆動が行われる等により、電気自動車100の各構成品の通電指示があると、BMU55は、その通電指示に応じてバッテリ装置1の充電又は放電が開始される(ステップST1)。
【0058】
バッテリ装置1の充電又は放電が行われると、バッテリ管理手段9は、BMU55により、先ず、バッテリセル22の温度Txをそれぞれ測定する(ステップST2)。具体的には、各バッテリモジュール21にそれぞれ設けられたCMU56は、各温度センサ53により、各バッテリセル22の温度Txを検出する。
【0059】
CMU56は、温度センサ53で検出されたバッテリセル22の温度データを受信し、この温度データをBMU55に信号線Sを介して送信する。BMU55は、バッテリセル22の温度データを受信するとともに、例えば、BMU55の記憶部に一端記憶させる。
【0060】
BMU55は、受信したバッテリセル22の温度データから、各バッテリモジュール21の推定温度Tm、及び、バッテリセル22の平均温度Tcを算出する(ステップST3)。
【0061】
次に、BMU55は、記憶部55aに記憶されている温度Thと、バッテリモジュール21の推定温度Tmを比較し、バッテリモジュール21の温度Tmが温度Thより低い温度(Tm<Th)か否かの判断を行う(ステップST4)。バッテリモジュール21の温度Tmが温度Thより低い(Tm<Th)場合(ステップST4のYES)には、BMU55は、バッテリモジュール21を冷却するか否かの判断を行う(ステップST5)。
【0062】
具体的には、BMU55は、バッテリモジュール21の温度Tmが温度Tbより高い温度(Tm>Tb)であるか否かの判断を行う。バッテリモジュール21の温度Tmが温度Tbよりも高い場合(ステップST5のYES)には、冷却装置5を駆動させ、バッテリモジュール21の温度Tmを温度Tbに近似させる(ステップST6)。
【0063】
BMU55は、まず、冷却装置5のエバポレータ35より、エバポレータ35の周囲の空気を熱交換により冷却する。続いて、BMU55は、ファン装置32を駆動させる。これにより、冷却した空気がバッテリケース3内に案内され、バッテリパッケージ4が冷却される。即ち、冷却装置5により、各バッテリセル22が冷却され、バッテリモジュール21の推定温度Tmを温度Tbに近似させる。
【0064】
なお、ステップST5において、バッテリモジュール21の温度Tmが温度Tbと同一又は低い(Tm≦Tb)場合(ステップST5のNO)には、BMU55は、冷却装置5を駆動させない。
【0065】
また、BMU55は、各バッテリセル22の温度の監視し、過大な温度差のバッテリセル22の有無を確認する(ステップST7)。具体的には、BMU55は、各バッテリセル22の温度Txから、バッテリセル22の平均温度Tcよりも低温度のバッテリセル22(Tx<Tc)の有無を確認する。この低温度のバッテリセル22がある場合(ステップST7のYES)には、BMU55は、加熱装置6を駆動する(ステップST8)。
【0066】
具体的には、BMU55は、低温度のバッテリセル22に設けられたヒータ51を加熱させる指示を、そのバッテリセル22が設けられたバッテリモジュール21のCMU56に行う。CMU56は、BMU55からの指示に基づいて、低温度のバッテリセル22に設けられたヒータ51を加熱して、当該バッテリセル22を昇温(加熱)させる。
【0067】
CMU56は、バッテリセル22を加熱させながら、バッテリセル22の温度を検出し、BMU55に送信する。BMU55は、加熱されたバッテリセル22の温度Txから、各バッテリセル22の温度差が低減し、バッテリセル22の温度差が平均化されたか否かの判断を行う(ステップST9)。
【0068】
なお、この平均化の一例としては、低温度のバッテリセル22の温度Txがバッテリセル22の平均温度Tc以上(Tx≦Tc)であるか否かの判断を行う。なお、バッテリセル22の温度差の平均化として、バッテリセル22の最高温度と最低温度との温度差を具体的に設定し、この温度差以内にバッテリセル22の各温度差を収めることとしてもよい。
【0069】
BMU55は、バッテリセル22に過大な温度差や低温度なバッテリセル22がある場合(ステップST9のNO)に、バッテリセル22の温度が平均化されていないと判断し、ステップST7へと戻り、再度、各バッテリセル22の温度を監視し、ヒータ51により加熱させる。
【0070】
BMU55は、バッテリセル22の温度が平均化されたと判断した場合(ステップST9のYES)には、加熱装置6を停止させる(ステップST10)。
【0071】
次に、BMU55は、充電又は放電の終了指示を確認する(ステップST11)。BMU55の充電又は放電の終了指示がない場合(ステップST11のNO)には、ステップST2に戻り、再びバッテリセル22の温度Txを測定する。以下、ステップST3以降の流れとなる。なお、充電又は放電の終了指示がある(ステップST11のYES)と、BMU55は、CMU56への指示を停止する。これにより、バッテリ管理手段9によるバッテリ装置1の管理が終了する。
【0072】
なお、ステップST4において、バッテリモジュール21の温度Tmが温度Th以上(Tm≧Th)の場合(ステップST4のYES)には、BMU55は、エラー処理を行う(ステップST12)。なお、このエラー処理は、バッテリモジュール21の高温による事故、例えば、バッテリパッケージ4の破損や機能停止を防止するために、バッテリ装置1を他構成品と電気的に切断し、放電及び充電を停止する。なお、バッテリ装置1は、冷却装置5にのみ放電し、バッテリパッケージ4を冷却装置5により急速冷却する構成としてもよい。
【0073】
このように構成されたバッテリ装置1によれば、バッテリ管理手段9により、バッテリモジュール21を、使用可能な温度範囲内に冷却するとともに、各バッテリセル22間において、温度差を極力低減することができる。
【0074】
即ち、複数設けられたバッテリセル22は、その配置、隣接する部材、冷却装置5の流路部33及びバッテリケース3等の形状等により、その温度の上昇及び低下はそれぞれ異なる。このような使用温度が異なると、バッテリセル22の充放電特性、電気的特性及び寿命特性が各バッテリセル22において異なることとなる。
【0075】
特に、このような複数のバッテリセル22が用いられるバッテリパッケージ4は、その能力が、いずれかのバッテリセル22のうち、最も低いバッテリセル22の能力となる。このため、一つのバッテリセル22が著しく劣化すると、他のバッテリセル22の劣化は殆どなくても、バッテリパッケージ4の能力が低下することとなる。このようなバッテリパッケージ4の能力の低下は、走行可能距離の低下となるため、電気自動車100の機能及び信頼性の低下となる。
【0076】
しかし、本実施の形態のバッテリ装置1は、複数のバッテリセル22のうち、温度差が大きいバッテリセル22を加熱させ、バッテリセル22間の温度差を低減させる温度の平均化が可能となる。これにより、各バッテリセル22の充放電特性及び電気的特性は勿論のこと、寿命特性の平均化にもなる。このためバッテリパッケージ4の寿命の低下となる。
【0077】
また、本実施の形態のバッテリ装置1は、冷却装置5によりバッテリモジュール21を冷却した後に、バッテリモジュール21を構成するバッテリセル22の平均温度を算出するため、単にバッテリセル22の平均温度を算出するよりも確実に異常が生じているバッテリセル22、特に異常な温度上昇が生じているバッテリセル22を見極めることができる。
【0078】
上述したように、本実施の形態に係るバッテリ装置1によれば、バッテリセル22にそれぞれ設けたヒータ51により、各バッテリセル22を必要に応じて加熱することで、各バッテリセル22の温度差を極力低減することが可能となる。これにより、バッテリ装置1の充放電特性及び電気的特性を安定させるとともに、寿命特性を向上させることが可能となる。
【0079】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではない。上述した例では、機能(5)として、バッテリモジュール21の推定温度Tmが温度Tbよりも高い場合に、冷却装置5によりバッテリセル22を冷却させ、推定温度Tmを温度Tbに近似させる構成としたが、これに限定されない。例えば、推定温度Tmが温度Tbよりも高い場合だけでなく、推定温度Tmが温度Tbより低い場合には、加熱装置6により、バッテリセル22を加熱させて、推定温度Tmを温度Tbに近似させてもよい。
【0080】
また、上述した例では、バッテリ装置1では、低温度のバッテリセル22をヒータ51で昇温させて、他のバッテリセル22との温度差を低減させる構成としたが、これに限定されない。例えば、バッテリセル22に、温度可変手段としてペルチェ素子をそれぞれ設け、低温度のバッテリセル22と温度差が大きい高温度のバッテリセル22を、ペルチェ素子のペルチェ効果で冷却し、複数のバッテリセル22の温度を平均化してもよい。即ち、バッテリセル22の温度を平均化可能であれば、温度可変手段は冷却又は加熱の何れを用いても良い。但し、バッテリセル22の能力が最も高い値で平均化できるのが望ましい。
【0081】
また、上述した例では、冷却装置5は、エバポレータ35で冷却した空気をファン装置32でバッテリケース3内に案内し、バッテリセル22を冷却するとしたが、これに限定されない。冷却装置5は、バッテリセル22を冷却可能であればよく、例えば、エバポレータ35を用いるのではなく、バッテリセル22にペルチェ素子をそれぞれ設け、ペルチェ効果により、バッテリセル22を冷却させてもよい。
【0082】
さらに、上述した例では、CMU56は、温度端子56a、電源端子56b及びヒータ端子56cを有する構成で説明したが、これに限定されない。即ち、CMU56に接続されていれば、各構成品に接続される端子は、専用の端子でなくても、同一端子であってもよく、また、他の構成でも適用可能である。
【0083】
また、上述した例では、バッテリ装置1を電気自動車100に用いられると説明したがこれに限定されない。例えば、内燃機関及び電動機で駆動するプラグインハイブリッド自動車であってもよい。また、鉄道車両であってもよい。即ち、バッテリ装置1を用いる車両であれば他の構成であっても適用できる。この他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能である。
【符号の説明】
【0084】
1…バッテリ装置、3…バッテリケース、4…バッテリパッケージ、5…冷却装置(冷却手段)、6…加熱装置(温度調整手段)、7…パッド部材、8…温度検出手段、9…バッテリ管理手段(管理手段)、11…バッテリトレイ、12…バッテリカバー、13…トレイフランジ部、14…カバーフランジ部、15…開口部、21…バッテリモジュール、22…バッテリセル、22a…陰極、22b…陽極、31…冷却手段、32…ファン装置、33…流路部、35…エバポレータ、35a…導入路部、35b…排出路部、36…エバポレータケース、36a…エバポレータケースアッパ、36b…エバポレータケースロア、37…流入口部、38…排出口部、41…ファン、42…ファンカバー、43…ファンダクト、43a…一端部、43b…他端側、46…ダクト、51…ヒータ、53…温度センサ、55…BMU、55a…記憶部(記憶手段)、56…CMU、56a…温度端子、56b…電源端子、56c…ヒータ端子、100…電気自動車、101…電動機、102…充電装置、103…車体、104…駆動輪、B…ボルト、C…CANケーブル、S…信号線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用駆動モータに電力を供給するバッテリモジュールを構成する複数のバッテリセルと、
前記複数のバッテリセルのそれぞれの温度を検出する温度検出手段と、
前記複数のバッテリセルのそれぞれの温度を調整可能な温度調整手段と、
検出された前記バッテリセルの温度に基づいて前記複数のバッテリセルの平均温度を算出し、該算出された前記バッテリセルの平均温度と所定の温度差を有する前記バッテリセルの温度を前記温度調整手段により調整し、前記平均温度と前記所定の温度差を有する前記バッテリセルの温度との温度差を減少させる管理手段と、
を備えることを特徴とするバッテリ装置。
【請求項2】
前記バッテリ装置は、前記バッテリモジュールを冷却する冷却手段をさらに備え、
前記管理手段は、
前記冷却手段により前記バッテリモジュールを冷却した後に前記平均温度を算出することを特徴とする請求項1に記載のバッテリ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−79553(P2012−79553A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−224020(P2010−224020)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】