説明

パターンマッチング方法、及びパターンマッチングを行うためのコンピュータープログラム

【課題】本発明の目的の1つは、周期的構造を含む試料上でも適正な測定対象パターンを選択することが可能なパターンマッチング方法、及びそのパターンマッチングをコンピューターに実行させるためのコンピュータープログラムの提供にある。
【解決手段】上記目的を達成するために、本発明の一態様によれば、対象試料の設計データに基づく第1の画像と、第2の画像との間でマッチングを行うパターンマッチング方法において、マッチングを行う領域に、周期的な構造が含まれているか否かを判定し、含まれている場合には、画像内に設定される原点と、周期的な構造を構成するパターンとの距離に基づいて、含まれていない場合には、画像内におけるパターンの一致度に基づいて、パターンを選定するパターンマッチング方法、及びコンピュータープログラムを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターンマッチング方法、及びパターンマッチングを行うためのコンピュータープログラムに係り、特に、周期的な構造を含む試料のパターンマッチングを行うのに好適な方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体ウェハを測定,検査する走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)等では、パターンマッチング技術を用いて、所望の測定個所にその視野(Fieldof View:FOV)や走査個所の位置合せを行うことが行われている。特許文献1には、そのようなパターンマッチング法の一例が説明されている。
【0003】
パターンマッチングは、テンプレートと呼ばれる予め登録されたパターン画像と、SEM等で実際に取得された画像との間の一致度を測定することによって行われる。特許文献2には、パターンマッチング用のテンプレートを、半導体素子等の設計データに基づいて形成する例が説明されている。設計データに基づいてテンプレートを形成できれば、テンプレートを形成するためにわざわざSEM画像を取得するというような手間がなくなる等の利点がある。
【0004】
【特許文献1】特開2001−243906号公報(対応米国特許USP6,627,888)
【特許文献2】特開2002−328015号公報(対応米国特許US2003/ 0173516)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的なパターンマッチング法は、画像中において、テンプレートとの一致度が最も高い個所が、視野移動或いは測定目的個所として選択する。しかしながら同等の形状が周期的に複数配列されているパターンの場合、一致度に基づくパターン選択を行うと、不必要に視野を大きく移動させてしまう可能性がある。周期的な構造の場合、同じパターンが配列されているため、これらのパターンの平均的な評価を、1つのパターンを抽出して行う場合、どのパターンを選択しても良い場合がある。しかしながら、一致度に基づくパターン選択では、一致度が最も高いパターンを選択することになるため、パターンマッチング前の視野中心から離れた位置のパターンを選択する可能性がある。
【0006】
SEMの視野を移動させるためには、試料を配置したステージを移動させたり、SEMの電子ビームを偏向することによって視野を移動させることが考えられるが、不必要に視野を大きく移動させることは、ステージや偏向器等に含まれる誤差成分を増長させることになり、誤った視野移動を行う要因となることがある。特許文献1,2に説明されているパターンマッチング法は、このような問題を解決することを志向するものではない。
【0007】
本発明の目的の1つは、周期的構造を含む試料上でも適正な測定対象パターンを選択することが可能なパターンマッチング方法、及びそのパターンマッチングをコンピューターに実行させるためのコンピュータープログラムの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一態様によれば、対象試料の設計データに基づく第1の画像と、第2の画像との間でマッチングを行うパターンマッチング方法において、マッチングを行う領域に、周期的な構造が含まれているか否かを判定し、含まれている場合には、画像内に設定される原点と、周期的な構造を構成するパターンとの距離に基づいて、含まれていない場合には、画像内におけるパターンの一致度に基づいて、パターンを選定するパターンマッチング方法、及びコンピュータープログラムを提供する。
【0009】
以上のような構成によれば、マッチング領域に周期的な構造を含む場合は、不必要に視野を大きく移動させないように、原点との距離を優先してパターンを選定し、周期的な構造を含まない場合には、上記問題が起こりえないとの観点から、一致度を優先してパターンを選定するようにできる。以上のように本発明の一態様によれば、試料の状態に応じて適正なマッチングを実施することが可能になる。
【0010】
更に具体的な本発明の一態様によれば、設計データに基づいて、周期的な構造の有無を判断しているため、ノイズや試料の製造誤差に因らない正確な判断を行うことが可能になる。
【発明の効果】
【0011】
上記本発明の一態様によれば、試料に周期的構造が含まれるか否かによって、適正なマッチング法を適用することが可能となり、試料に周期的な構造が含まれるか否かによらず、正確なパターンマッチング(位置照合)を行うことが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下の説明は主に半導体ウェハ・半導体露光用マスク・液晶上の構造に基づいて、パターンマッチングを行う方法,パターンマッチングを行うためのコンピュータープログラム、及び当該コンピュータープログラムを実行する装置に関するものである。
【0013】
半導体検査装置の一種である測長走査電子顕微鏡の検査対象は半導体チップ製造の際に半導体ウェハ上に作られたパターンである。測長走査電子顕微鏡を用いて半導体チップの構造を解析する際には、検査を自動で連続に行う為、画像処理により位置照合を行う必要がある。その為に検査を自動で連続に行う前に撮影条件や、画像処理による位置照合の条件,検査項目等の検査条件を設定する必要がある。
【0014】
画像処理による位置照合はパターンマッチングと呼ばれる。パターンマッチングには自動で検査位置を探索する為に、検査対象とは別に特徴的な形状のパターンを予め登録する必要がある。この登録パターンは、例えば、測長走査電子顕微鏡で検査対象を撮影した画像や、撮影された画像から計算された輪郭線情報,CADデータ等の設計パターンの画像,設計パターンの輪郭線情報などが使用されている。この登録パターンを用い、検査を行う毎に撮影される画像である被検出パターンに対してパターンマッチングを行い、位置照合を行っている。
【0015】
測長走査電子顕微鏡(Critical Dimension Scanning Electron Microscope :CD−
SEM)は、登録パターンを用いてパターンマッチングによる位置照合を行い、パターンマッチング結果の位置から、検査位置の位置照合を行う。その際、検査対象を広範囲に画像を撮影する低倍率から、精密な位置照合を行う為の高倍率へと段階的に撮影倍率を上げパターンマッチングを行うことにより、検査対象を撮影する為の精密な位置照合を行う。検査位置の特定の後、測長走査電子顕微鏡は設定された検査項目により、検査を行う。測長走査電子顕微鏡の検査項目として代表的な例は、半導体ウェハ上に作られた線(ライン)の幅や、穴(ホール)の大きさ等である。
【0016】
パターンマッチングによる位置照合を行う際、被検出パターンが登録パターンで登録した形状から変形した場合、パターンマッチングに失敗することがあり、その場合、検査位置が目的とする位置と違うことになり、検査に失敗することになるため、検査装置を効率的に運用する上で問題となっている。
【0017】
また、測長走査電子顕微鏡においては、検査条件の設定作業には経験のある操作者が従事する必要があること、また、微細な検査対象に対して位置照合を行う為には、数段階の撮影倍率に分けて登録パターンを設定する必要があること等から、操作者の作業量が多くなり、検査条件の設定を効率良く行うことが困難であるという問題点がある。また、システムLSI製造では多品種の製品を少量だけ生産することが多い為、検査条件を設定する回数が増え、検査装置を効率的に運用する上で問題となっている。
【0018】
これらの問題を解決する方法としてCADデータ等の設計データを利用して、検査条件を設定し、検査条件設定の為に測長走査電子顕微鏡を占有する時間を短縮し、測長走査電子顕微鏡の稼働率を向上させる方法があるが、設計データと半導体ウェハを撮影した電子顕微鏡撮影画像を被検出パターンとするパターンマッチングでは、半導体ウェハ上のパターンが形状変化する問題により、精密に位置照合を行うことが困難である。
【0019】
また、半導体回路を作成する際の露光条件を決めるシミュレーションにおいては、露光条件を決定するため、また、より精度の高いシミュレーションを可能とする条件を設定するために、露光のシミュレーションより得られる光強度画像と電子顕微鏡画像の位置合わせおよび、光強度画像の適切な閾値設定が重要である。しかしながら、光強度画像と電子顕微鏡画像は形状が違うことから精密な位置合わせ、適切な閾値設定が困難である。
【0020】
これを解決するために電子顕微鏡画像と、撮影領域に対応する設計データや光強度画像から作成した重心分布画像を用いてパターンマッチングを行う方法があるが、測長走査電子顕微鏡で撮像する検査対象は、ゲートやキャパシタと呼ばれる回路構造が周期的に並ぶパターンであることが多いため、局所的な位置を撮像した電子顕微鏡画像でパターンマッチングを行った場合、正しい位置から周期的にずれて失敗してしまうことがある。
【0021】
また、測長走査電子顕微鏡は電子顕微鏡は主走査方向(電子ビームの走査線の線方向)の分解能が高いという特質がある。これは電子線を検査対象に対して照射した際の物理的な特質に起因する。この為、目的とする検査対象に対する検査に最適な走査方向に回転させて撮像を行い、画像を取得する。この場合、撮像される画像は検査対象の物理的な方向に対して回転した画像となる。この場合、ディスプレイ上にも回転した画像として表示されるため、操作者が方向を間違えやすいという欠点がある。また、同様に、設計データを照合するシステムにおいても、操作者は設計データを基準に位置を把握するため、電子顕微鏡画像が物理的な方向に対して、または設計データに対して回転してしまうと、操作者が位置を間違えやすいことは同様である。
【0022】
また、測長走査電子顕微鏡の検査の目的のため、縦方向と横方向の走査比率を違えて、撮像を行うことがある。例えば、横方向の主走査方向に対して縦方向の副走査方向の範囲を広げて撮像を行うことがある。この場合、検査対象に対して電子線を照射した領域は縦長の矩形になり、撮像される電子顕微鏡画像は正方形となる。この場合、ディスプレイ上には正方形で表示されるため、操作者が物理的な形状を間違えやすいという欠点がある。また、同様に、設計データを照合するシステムにおいても、操作者は、縦横の比率が正確な設計データを基準に形状を把握することが多いため、操作者が形状を間違え易いという欠点がある。
【0023】
以下に説明する測長走査電子顕微鏡の画像処理によるパターンマッチング方法は、登録パターンと検査対象が周期的な構造である場合、周期的にずれた位置にパターンマッチングを行った結果、位置照合に失敗し、正確な位置照合を行うことができないという課題等に着目し、それを解決するためのものである。
【0024】
以下に説明する本発明の一例は、測定・検査対象が周期的な構造を持つ場合においても、登録パターンと検査対象の周期的なずれを軽減するパターンマッチングを可能とするためのものである。
【0025】
また、検査対象の物理的な位置または設計データの表示に対して、撮像方向を回転して画像を取得した場合、操作者が理解し易いようにディスプレイ上に表示を行うことを可能とする例についても説明する。
【0026】
また、検査対象の物理的な縦横の比率または設計データの縦横の比率に対して、撮像比率を違えて画像を取得した場合、操作者が理解し易いようにディスプレイ上に表示を行うことを可能とする例についても説明する。
【0027】
具体的には、設計データ(登録パターン)、又は、測定・検査対象の種類、或いは、その両方からパターンマッチングの種類やパラメータを選ぶことを可能にする。
【0028】
更に、登録パターン,検査対象、または、その両方の画像内の構造物の数を数えることを可能にする。また、構造物の数によりパターンマッチングの種類やパラメータを選ぶことを可能にする。
【0029】
また、登録パターン,検査対象、または、その両方の画像内の構造物の配置が周期的であるかどうかを判定することを可能にする。また、構造物の周期性によりパターンマッチングの種類やパラメータを選ぶことを可能にする例について説明する。また登録パターン,検査対象、または、その両方の画像内にある構造物の図形毎の頂点数,長さ,面積,傾き,円形度、及び/または、モーメントから数値化し、それら数値からまたは、それら数値の複数の組み合わせにより各図形の形状特徴を判定し、画像内の図形が同一であるかどうかを判断し、それらの図形により画像が周期的であるかどうかを判定することを具体的に可能にする例について説明する。
【0030】
更に、登録パターン,検査対象、その両方の画像内の構造物の配置が周期的である場合に正規化相関法や一般化ハフ変換法のような画像処理によるパターンマッチングの結果として、複数の解が得られたとき、それら複数の解の中から、アプリケーションの目的に適した位置の解を選択すること可能にする例について説明する。
【0031】
また、撮像範囲や画像内のパターンの密度によりパターンマッチングの種類やパラメータを変更することを可能とする例について説明する。
【0032】
更に、検査対象の物理的な方向に対して回転させた画像、または、ディスプレイ上に表示した設計データに対して回転した画像を撮像した場合、操作者が方向を間違え難くするために、方向を理解し易い表示を可能とする例について説明する。
【0033】
また、検査対象の物理的な縦横比率、または、ディスプレイ上に表示した設計データに対して縦横比率を違えて撮像した場合、操作者が縦横の比率が正確な形状を把握することを可能にする例について説明する。
【0034】
図1は、測長走査電子顕微鏡の構成概要のブロック図である。電子顕微鏡101内の、電子銃102から発せられた電子線103が電子レンズ113によって収束され、試料
105に照射される。電子線照射によって、試料105表面から発生する二次電子114、或いは反射電子の強度が電子検出器106によって検出され、増幅器107で増幅される。電子線103の照射位置を移動させる偏向器104で、制御システム110の制御信号108によって電子線103を試料105表面上でラスタ走査させる。増幅器107から出力される信号を画像処理プロセッサ109内でAD変換し、デジタル画像データを作る。表示装置111は、画像データを表示する装置である。CADデータ等の半導体チップの設計データ112において、検査すべき領域を任意に指定することが可能である。制御システム110は、設計データ112及び検査すべき領域の情報を用いて半導体ウェハの撮影や検査の為の制御、また、画像処理プロセッサ109への通信を行う。電子顕微鏡101,画像処理プロセッサ109,制御システム110,表示装置111,設計データ112を格納する装置から構成されるシステムはデータを交換する為の通信手段を有する。
【0035】
画像処理プロセッサ109は、制御システム110、或いは画像処理プロセッサ109に登録されたプログラムに基づいて、設計データと取得画像との間でパターンマッチングを行う。なお、マッチング処理に関しては後述する種々の手法が考えられる。また、当該プログラムは、図2に示すフローチャート、後述する画像処理、及び演算が可能なようにプログラムされている。
【0036】
また、上記プログラムは、コンピューター読み出し可能媒体として頒布可能であって、実際の頒布のために使用される特定のタイプの媒体に関係なく適用され得る。こうしたコンピューター読み出し可能媒体の例には、フレキシブルディスク,CD−ROMなどの記録可能なタイプの媒体、並びに、デジタル及びアナログ通信リンクなどの伝送タイプの媒体が含まれる。
【0037】
図2は本発明の一実施例であり、測長走査電子顕微鏡で撮影された画像と、設計データのパターンマッチング処理のフローチャート201を示した図である。設計データとはここでは、半導体で作成されるLSI,半導体露光用マスク或いは液晶等を設計した際の
CADデータ等のことであり、座標データによるベクトル画像やビットマップを問わず外形構造がわかる情報とする。まず、202において設計データからパターン形状の判定を行う。パターン形状の判定は、例えば、図3及び図4及び図5に示す方法で行うことが可能である。
【0038】
後述するように、設計データに基づく第1の画像とSEM像に基づく第2の画像間でパターンマッチングを行う際に、比較の対象となる領域に含まれるパターン形状の種類を判定し、その判定に応じて、パターンマッチングの手法を変更する。なお、以下の説明では、マッチングの対象となる領域内のパターンの種類を、登録された設計データから判定する例について説明するが、これに限られることはなく、例えば設計データ上のマッチング領域の周囲のパターン状況に応じて、上記判定を行うようにしても良い。設計データは、ノイズや試料の製造誤差のない理想的な形状を示しているため、パターンの種類を上記誤差要因によらず、正確に判定を行うことができる。
【0039】
パターン形状を判定した後、パターン形状により203において、パターンマッチング方法の変更を行う。設計データのパターン中に図形が単数の場合、204のようにパターンマッチングのアルゴリズムに一般化ハフ変換を選択する。一般化ハフ変換はパターンマッチングの手法としては一般的であり、登録パターンと被検出パターン両者の形状の外形線または画素の座標を投票と呼ばれる演算により、位置照合を行う方法である。この場合、205において被検出パターンである電子顕微鏡画像から輪郭線を抽出した後、206において一般化ハフ変換によるパターンマッチングを行いパターンマッチングの候補を検出する。
【0040】
パターン中に図形が単数の際に一般化ハフ変換を選択した場合、多くの画素に対して演算を行う必要がある正規化相関法よりも計算量が少ないという点で優れる。また、図6に示すように所定の領域から、特徴的な図形のみを抽出してパターンマッチングを行う場合にも、正規化相関法に対して優位である。また、206の一般化ハフ変換では複数のパターンマッチング候補を検出することが可能だが、最もスコアの高いものを選択する。
【0041】
一方、設計データのパターン中に図形が複数ある場合、203において、207のようにパターンマッチングのアルゴリズムに正規化相関法を選択する。正規化相関法は画像処理によるパターンマッチングにおいて、よく知られた方法であり、登録パターンと被検出パターンにビットマップ画像を用いて行う。任意の画像に対してロバスト性のある一般的な方法であるが、所定の領域の全ての画素に対して照合を行う演算を行うため、計算量が多く処理時間がかかる。また、正規化相関法は図6で示した方法のように登録パターンまたは、被検出パターンの所定の領域から特徴的な図形のみを抽出してパターンマッチングを行いたい場合、どちらかに、それ以外の図形があると検出性能が低くなるという欠点がある。正規化相関法により、パターンマッチングを行う場合、208により設計データからビットマップ画像を作成し、209において電子顕微鏡画像と正規化相関法によるパターンマッチングを行う。正規化相関法では一般的に、スコアの大きい順に複数のパターンマッチング候補を検出することが可能である。
【0042】
正規化相関法において複数のパターンマッチング候補を検出した後、210において、設計データのパターンが周期的かどうかの判定を行い、211のように設計データが周期的でない場合、212において複数のパターンマッチング候補の中から正規化相関法のスコアが最も大きい(一致度が最も大きい)パターンマッチング候補を選定する。また、
213のように設計データのパターンが周期的な場合、図7の方法により複数のパターンマッチング候補の中から選定を行う。
【0043】
206または212または214において検出されたパターンマッチング候補に対して215において、位置の微調整を行う。これは、設計データと電子顕微鏡画像は図形ごとに形状や大きさが違うため、各図形での中心または重心が合っていない場合が多く、目的とする検査ができない場合が多いために行う微小な補正である。この方法には、設計データと電子顕微鏡画像から外形線を取得して画像処理により自動で行う方法などが取られる。206により、各図形での重心あわせを行い最終的なパターンマッチング候補を出力する。フローチャート201の方法による設計データと電子顕微鏡画像のパターンマッチングにより、成功率が高く、また周期的なパターンでずれることが少なく、また、図形ごとに重心が合っている精密なパターンマッチングを自動で行うことが可能である。
【0044】
図3は本発明の一実施例である、パターン形状の判定は設計データから、パターン形状を判定する方法を示した図である。設計データ301を図形ごとに区別する。例えば、
302,303,304,305、及び306は構造的に分離された図形である。図形を分離する処理は、設計データが座標によるベクトル画像である場合、座標処理であるため容易である。その結果、設計データ301は単数または複数の図形が含まれるということを判定することが可能である。301の場合、複数の図形が含まれている。302に対して特徴量算出のための処理を行うために図形307として抜き出す。307の座標数及び周囲長を求めることは単純な座標演算のみを行うだけであり容易である。その後、307の面積を求めるために308のように307を三角形に分割する。309は308の構造内にある任意の点であり、各頂点に対して線を引くことで308のように三角形に分割が可能である。三角形の面積は座標演算により容易に算出可能であり、その和を求めることで307の面積を求めることが可能である。310のハッチングで示した矩形は307の外接矩形である。この対角線311の傾き312を307の特徴量でる傾きとして算出することが可能である。また、307のモーメント及び重心を求めるために縦軸I314、横軸J315を設定する。その場合、307を任意の小さなブロック316で分割する。これは307の形状を表現できる大きさであれば適宜設定できる。その場合、316の大きさにより量子化誤差が発生する。モーメントを求めるために数式317を利用する。
317に代入を行った318は縦軸I(314)の方向のモーメントであり、319は縦軸J(315)の方向のモーメントである。また、317を利用した320と321は重心を求める数式であり、320はI軸(314)方向の座標、321はJ軸(315)方向の座標である。
【0045】
また、302以外にも、303,304,305、及び306に対しても同様に特徴量算出のための処理を行う。その結果、302,303,304,305、及び306は、頂点数,周囲長,面積,傾き,円形度,モーメント,重心、の各特徴量が同一である。このため302,303,304,305、及び306は同一の図形であると判断することが可能である。その結果、設計データ301は同一の図形が複数個含まれる周期的なパターンだと判断することが可能である。
【0046】
この場合、上記の特徴量は必ずしも全て求める必要は無く、同一の図形であると判断できる単数または複数の組み合わせの特徴量のみを算出することでも目的とする処理は行うことができる。また、各特徴量は必ずしも同一である必要は無く、誤差範囲を設定することも可能である。
【0047】
また、各図形は座標が既知であるため、設計データ301の中での各図形の配置も容易に算出可能であり、例えば302と303の間隔322を得ることも可能である。
【0048】
また、逆に特徴量が同一でない図形がある場合、その図形が他の図形に対して特異的であること、特異的な図形の場所で周期性がないこと、が判定可能である。
【0049】
設計データが座標によるベクトル画像である場合、座標処理であるため、これらの演算は容易であり、ビットマップ画像においてもビットマップ画像からベクトル画像を作成することが容易であるため、同様に処理が可能である。また、ここでは例として図形の特徴量を算出する方法をベクトル画像において行ったが、各特徴量をビットマップ画像から直接算出する方法は画像処理の手法として既知であるため、どちらの画像から行った場合でも目的とする演算は可能である。
【0050】
また、図2のフローチャート201では設計データにより202のパターン形状判定を行ったが、電子顕微鏡画像からも輪郭線抽出処理を行うことでベクトル画像にすることが可能であるので図3の処理を行うこと、202の処理において設計データの代わりに電子顕微鏡画像により目的とする処理を行うことは可能であり、その場合、本発明の意図することと等価な処理である。
【0051】
また、図4は本発明の一実施例である、各図形の形状を特に特定し、パターンマッチングの方法を選択する方法を示した図である。例えば、設計データ401内の402のように正方形で設計された場合、実際に半導体上に作成された構造物を電子顕微鏡画像403に撮像した場合、404のように円形であることが多い。このことから、設計データ中に正方形がある場合、電子顕微鏡画像では円形を見つけることが目的とされることが多い。また、画像処理によるパターンマッチングは特定の形状に対して特化した方法を選択し、特定の形状に対して優位な方法をとることもある。これを手動により指定することもできるが、202の処理の際に、図形が正方形ならば、円を検出するパターンマッチングの方法を選択するように203で分岐することも可能である。また、円形だけでなく、設計データ405内の構造物406のような任意の形状に対しても、電子顕微鏡画像407中の構造物408のように予め対応する形状が予測される場合に、パターンマッチングの方法を選択することも可能である。
【0052】
図5は本発明の一実施例である、パターンが単数の図形を含むものであるか、複数の図形を含むものであるか、の判定の例である。設計データ501は図形502のみを含むため単数の図形から構成される画像であり、設計データ503は図形504,505,506,507の図形を含むため、複数の図形から構成される画像である。図3に示した処理により容易に判定が可能である。
【0053】
図6は本発明の一実施例である、特徴的なパターンを抽出する処理を行った後、パターンマッチングに適した図形を選択する処理を示した図である。設計データ601は図3で示した方法により、602の形状と同一の図形を複数個含み、また、図形603と図形
604を1つずつ含むことが判定可能である。パターンマッチングを行う場合、登録パターンまたは、被検出パターンは他の領域に比較して特異的な形状であることが望まれる。従って、設計データ601内に複数個存在する図形602をパターンマッチングが多く含まれる場合、形状に特異性が無く、パターンマッチング行う場合、周期ズレを起こしやすいなどの欠点があり、適切でない。一方、設計データ内に1つずつ存在する図形603と図形604は特異的で、パターンマッチングを行う場合、適切である。また、図2で触れたように登録パターンまたは、被検出パターンの所定の領域から特徴的な図形のみを抽出して、一般化ハフ変換法によるパターンマッチングを行うことが可能である。このように、パターンの形状により、マッチングの方法を選択すること、パターンマッチングに適した図形を選択することが可能である。一般化ハフ変換法を例にとり説明を行ったが、特定のパターンマッチング手法とその手法に適した特徴的な形状を持つ図形の組み合わせに対しては、この発明はなんら一般性を失わない。
【0054】
図7は本発明の一実施例である、登録パターン、または、被検出パターン、または、その両方が周期的な場合に正規化相関法や一般化ハフ変換などのパターンマッチングを行った際に、複数個の解が得られる場合、その複数個の解の中からアプリケーションに適した解を選択する手法を示した図である。
【0055】
電子顕微鏡画像701に対応する位置を設計データ702の中から見つける場合、正規化相関法や正規化相関法を用いたパターンマッチングを行うと、電子顕微鏡画像701に似た形状が設計データ702の中に複数個存在する為、例えば、703,704,705,706,708のように複数個の解が検出される。この場合、測長操作電子鏡の検査目的においては視野中心に近い解が選択されると、検査に適している。視野中心に原点708を設定し、703,704,705,706,708の各解の中心座標との距離をそれぞれ求める。距離は数学的な演算により、簡単に演算可能である。最も距離が小さい解は
706であるので、最終的な解を706として出力する。このようにパターンが周期的な場合に正規化相関法や一般化ハフ変換などを用いたパターンマッチングを行い複数個の解が得られる場合、アプリケーションに即した位置座標を設定することで、複数個の最適解の中から適した解を選択することが可能である。
【0056】
図8は本発明の一実施例である、検査対象の物理的な縦横比率、または、ディスプレイ上に表示した設計データに対して縦横比率を違えて撮像し、パターンマッチングを行った際に、ディスプレイ803上に表示を行う手法を示した図である。検査対象の物理的な縦横比率、または、ディスプレイ上に表示した設計データに対して縦横比率を違えて撮像した場合にパターンマッチングを行う手法は、設計データ801または電子顕微鏡画像802のどちらかの縦横比率を他方に合わせることで、行うことが可能である。この場合、電子顕微鏡を考えた場合、撮像を行った比率で表示することが望まれ、設計データと比較する場合は設計したとおりの比率で表示することが望まれる。また、両方で比較したいということも望まれる。しかし、両者の表示方法が異なるため、操作者が物理的な形状を間違えやすいという欠点がある。また、同様に、設計データを照合するシステムにおいても、操作者は、縦横の比率が正確な設計データを基準に形状を把握することが多いため、操作者が形状を間違え易いという欠点がある。このため、ディスプレイ803に表示を行う場合、804のように電子顕微鏡画像802の縦横比率に設計データ801の縦横比率を画像処理的に画素変換処理を行い表示を行うことで、または、805のように設計データ801の縦横比率に電子顕微鏡画像802の縦横比率を画像処理的に画素変換処理を行い表示を行うことで、この問題を解決することが可能である。また、ディスプレイ803には804と805を片方ずつ表示すること、また、両方同時に表示することでも、同様の効果を得ることが可能である。
【0057】
図8は本発明の一実施例である、物理的な方向に対して回転させた画像、または、ディスプレイ上に表示した設計データに対して回転した画像を撮像し、パターンマッチングを行った際に、ディスプレイ803上に表示を行う手法を示した図である。検査対象の物理的な方向に対して回転させた画像、または、ディスプレイ上に表示した設計データに対して回転した画像に対してターンマッチングを行う手法は、設計データ801または電子顕微鏡画像802のどちらかを回転させて他方に合わせることで、行うことが可能である。この場合、電子顕微鏡を考えた場合、撮像を行った回転方向で表示することが望まれ、設計データと比較する場合は設計したとおりの回転方向で表示することが望まれる。また、両方で比較したいということも望まれる。しかし、両者の表示方法が異なるため、操作者が物理的な方向・形状を間違えやすいという欠点がある。また、同様に、設計データを照合するシステムにおいても、操作者は、設計データの方向を基準に形状を把握することが多いため、操作者が方向を間違え易いという欠点がある。このため、ディスプレイ903に表示を行う場合、904のように電子顕微鏡画像902の回転方向に設計データ901の回転方向を画像処理的に画素変換処理を行い表示を行うことで、または、905のように設計データ901の回転方向に電子顕微鏡画像902の回転方向を画像処理的に画素変換処理を行い表示を行うことで、この問題を解決することが可能である。また、ディスプレイ903には904と905をどちらか一方を表示すること、また、両方同時に表示することでも、同様の効果を得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】測長走査電子顕微鏡の構成概要のブロック図。
【図2】本発明の一実施例である設計データと電子顕微鏡画像のパターンマッチングのフローチャート。
【図3】本発明の一実施例である設計データからパターンの形状を判定する方法を示した図。
【図4】本発明の一実施例である設計データと電子顕微鏡画像の特定の組み合わせを登録する方法を示した図。
【図5】本発明の一実施例であるパターン内に図形が単数または複数か判定する方法を示した図。
【図6】本発明の一実施例であるパターンからパターンマッチングの方法及び特徴的な図形を選択する方法を示した図。
【図7】本発明の一実施例である周期的なパターンから特定の位置に最も近い位置を選択する方法を示した図。
【図8】本発明の一実施例である設計データと電子顕微鏡画像をディスプレイ上に表示する方法を示した図。
【図9】本発明の一実施例である設計データと電子顕微鏡画像をディスプレイ上に表示する方法を示した図。
【符号の説明】
【0059】
201…設計データと電子顕微鏡画像のパターンマッチングのフローチャート、803…設計データと電子顕微鏡画像を表示したディスプレイ、903…設計データと電子顕微鏡画像を表示したディスプレイ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象試料の設計データに基づく第1の画像と、第2の画像との間でマッチングを行うパターンマッチング方法において、
前記第1の画像と第2の画像のマッチングを行う領域に、周期的な構造が含まれているか否かを判定し、前記領域に周期的な構造が含まれている場合には、前記画像内に設定される原点と、前記周期的な構造を構成するパターンとの間の距離に基づいて、前記パターンを選定し、前記領域に周期的な構造が含まれていない場合には、前記画像内におけるパターンの一致度に基づいて、前記パターンを選定することを特徴とするパターンマッチング方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記判定では、前記設計データに基づく第1の画像内の前記マッチングを行う領域に、前記周期的な構造が含まれているか否かを判定されることを特徴とするパターンマッチング方法。
【請求項3】
請求項1において、
前記領域に周期的な構造が含まれている場合には、画像中心から最も近い前記周期的な構造を構成するパターンを選定することを特徴とするパターンマッチング方法。
【請求項4】
請求項1において、
前記領域に周期的な構造が含まれていない場合には、前記画像内の最も高い一致度を示すパターンを選定することを特徴とするパターンマッチング方法。
【請求項5】
請求項1において、
前記選定された第2の画像のパターンの寸法を測長することを特徴とするパターンマッチング方法。
【請求項6】
請求項1において、
前記判定は、前記画像内に図形が複数含まれている場合に行われることを特徴とするパターンマッチング方法。
【請求項7】
請求項1において、
前記領域内の複数の図形の形状を判定し、当該領域内に同一と判断される図形が複数含まれている場合に、前記領域に周期的な構造が含まれていると判定すること特徴とするパターンマッチング方法。
【請求項8】
対象試料の設計データに基づく第1の画像と、第2の画像との間でマッチングを行うようにコンピューターを機能させるプログラムにおいて、
前記第1の画像と第2の画像のマッチングを行う領域に、周期的な構造が含まれているか否かを判定し、前記領域に周期的な構造が含まれている場合には、前記画像内に設定される原点と、前記周期的な構造を構成するパターンとの距離に基づいて、前記パターンを選定し、前記領域に周期的な構造が含まれていない場合には、前記画像内におけるパターンの一致度に基づいて、前記パターンを選定することを特徴とするプログラム。
【請求項9】
請求項8において、
前記判定では、前記設計データに基づく第1の画像内の前記マッチングを行う領域に、前記周期的な構造が含まれているか否かを判定されることを特徴とするプログラム。
【請求項10】
請求項8において、
前記領域に周期的な構造が含まれている場合には、画像中心から最も近い前記周期的な構造を構成するパターンを選定することを特徴とするプログラム。
【請求項11】
請求項8において、
前記領域に周期的な構造が含まれていない場合には、前記画像内の最も高い一致度を示すパターンを選定することを特徴とするプログラム。
【請求項12】
請求項8において、
前記選定された第2の画像のパターンの寸法を測長することを特徴とするプログラム。
【請求項13】
請求項8において、
前記判定は、前記画像内に図形が複数含まれている場合に行われることを特徴とするプログラム。
【請求項14】
請求項8において、
前記領域内の複数の図形の形状を判定し、当該領域内に同一と判断される図形が複数含まれている場合に、前記領域に周期的な構造が含まれていると判定すること特徴とするプログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−256225(P2007−256225A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−84445(P2006−84445)
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】