説明

パワーモジュール

【課題】エポキシ樹脂を封止材とした絶縁シート構造のパワーモジュールにおいて、吸湿による絶縁シートの絶縁性能低下を防止することにより、長期的信頼性を向上させる。
【解決手段】金属基板11と、絶縁シート2と、ヒートスプレッタ3と、半導体素子4と、リードフレーム5と、配線6と、封止樹脂7とを備え、金属基板11は、その端部が湾曲形状を有するとともに封止樹脂7内に封止される。これにより、外部から絶縁シート2までの水分浸入経路を長くすることができ、吸湿による絶縁シート2の絶縁性低下を防止して、パワーモジュールの長期信頼性を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トランスファモールドによる樹脂封止型のパワーモジュールに関し、特に、高温高湿環境下で使用する際に吸湿による絶縁性の劣化を防止することのできるパワーモジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、パワーモジュールは、高温高湿や振動などの影響を受ける厳しい環境下で使用されることから、特に耐湿信頼性に対する要求が非常に厳しくなっている。
中でも、有機系材料からなる絶縁シートを用いて高電圧で動作するパワーモジュールにおいては、吸湿による絶縁性の低下を防止することが非常に重要である。
【0003】
高温高湿環境下で高電圧が印加される状況でパワーモジュールを使用すると、リードフレームと金属基板の端部との間、封止樹脂が剥離した際のリードフレーム間、および、リードフレームと金属基板との間にリークやショートが発生し易く、吸湿による絶縁シート自体の劣化によっても、リークやショートが発生する。
【0004】
特に、車両や電鉄などに使用されるパワーモジュールの場合には、家庭電化製品で使用される半導体装置に比べて、使用環境が高温高湿であり、このような環境下では、絶縁シートの劣化を抑制することが困難になる。この結果、吸湿による絶縁シート自体の劣化により、リークやショートが発生してパワーモジュールの信頼性が低下する。
そこで、パワーモジュールの長期信頼性を確保するためには、有効な防湿対策が必要となる。
【0005】
防湿対策としては、封止樹脂の表面に耐湿性コーティング層を設けることによって、封止樹脂の内部に水分が浸入するのを抑制する技術が知られている。
しかしながら、この種の耐湿性コーティング層は、断熱層として作用するので、パワーモジュール内で発生した熱を外部へ放出するのを妨げる可能性が高く、実用的ではない。
【0006】
そこで、封止樹脂の表面に耐湿性コーティング層を用いずに、樹脂モールド部の形状を工夫して防湿性を高めるための構成が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
この場合、基板と放熱板の上面及び側面から背面までとを封止樹脂でモールドして水分の浸入経路を延長することで、吸湿による劣化を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−284630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来のパワーモジュールは、特許文献1のように絶縁シートへの水分浸入経路を延長した場合には、防湿対策としては有効であるが、パワーモジュールが大型化するという課題があった。
また、金属基板の背面まで封止樹脂を設けた場合には、放熱効果をさらに高めるためにヒートスプレッタを別の放熱部材(たとえば、ヒートシンクまたはフィン)に取り付けて使用する際に、金属基板の背面に設けられた封止樹脂からなるモールド部が別の放熱部材との間に介在することから、放熱効果が十分に得られないという課題があった。
【0009】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、大型化を招くことなく、吸湿による絶縁シートの絶縁性低下を防止し、長期信頼性を向上されたパワーモジュールを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に係るパワーモジュールは、金属基板と、金属基板上に配置された絶縁シートと、絶縁シート上に配置されたヒートスプレッタと、ヒートスプレッタ上に実装された半導体素子と、配線を介して半導体素子に接続されたリードフレームと、金属基板、絶縁シート、ヒートスプレッタ、半導体素子、リードフレームおよび配線を封止する封止樹脂とを備え、金属基板の端部は、湾曲部を有して封止樹脂内に封止されたものである。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、金属基板の端部を湾曲形状として封止樹脂の中に封止させることにより、金属基板を大型化することなく、絶縁シートへの水分浸入経路の長さを延長可能とし、吸湿による絶縁シートの絶縁性低下を防止して、長期信頼性を向上させたパワーモジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施の形態1に係るパワーモジュールの構成を模式的に示す断面図である。
【図2】この発明の実施の形態1による効果を示す説明図である。
【図3】この発明の実施の形態2による金属基板を模式的に示す断面図である。
【図4】この発明の実施の形態3に係るパワーモジュールの構成を模式的に示す断面図である。
【図5】従来のパワーモジュールの構成を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1の構成を模式的に示す断面図である。
図1において、この発明の実施の形態1に係るパワーモジュールは、金属基板11と、金属基板11上に密着して配置された絶縁シート2と、絶縁シート2上に配置されたヒートスプレッタ3と、ヒートスプレッタ3上に実装された半導体素子4と、リードフレーム5と、半導体素子4とリードフレーム5とを接続する配線6と、パワーモジュール全体を被覆する封止樹脂7とを備えている。
【0014】
封止樹脂7は、金属基板11、絶縁シート2、ヒートスプレッタ3および半導体素子4の上面および側面と、リードフレーム5および配線6の上下面および側面とを封止している。
金属基板11は、両端部に湾曲部12(湾曲形状)を有する。さらに具体的には、金属基板11の端部は、金属基板11の上面(封止樹脂7内)に向けて、約15度〜90度の角度で湾曲し、さらに約15度〜90度の角度で金属基板11の側面(外側)に向けて湾曲している。
【0015】
ところで、パワーモジュール内の絶縁シートの劣化は、具体的には以下の現象によって進行するものと考えられる。
すなわち、高温高湿環境下において、高電圧が印加される状況で使用すると、主に封止樹脂と異種材料(金属基板など)との界面から水分が入り込み、界面から浸入した水分が絶縁シートに達して、絶縁シートの周囲から内部に拡散する。
【0016】
このときの封止樹脂材料の吸水挙動は、フィックの拡散式で表されるが、実際の高温高湿環境下でのパワーモジュールの高電圧を印加した試験においては、封止樹脂中での水の拡散係数(10−6〜10−7mm/sec)から見積もられる。
【0017】
なお、通常、吸湿によって絶縁シート自体が劣化して故障が発生するまでの時間は、封止樹脂の外表面から吸湿した水分が封止樹脂中を拡散して絶縁シートに達して絶縁シートに拡散するまでの時間に比べて、極めて短時間であることが知られている。
【0018】
上記現象結果に鑑みれば、絶縁シート自体の劣化を引き起こす水分は、封止樹脂を介して絶縁シートに拡散する水分ではなく、パワーモジュールの外表面に露出した封止樹脂と金属基板などの異種材料との界面から短時間で入り込んでいることになる。
【0019】
したがって、高温高湿環境下における吸湿による絶縁シート自体の劣化を防止するためには、水分の浸入経路である異種材料界面の距離を長くして、絶縁シートの吸湿を遅延することが有効と考えられる。
【0020】
図5は、図1の構成と比較するための、従来のパワーモジュールの構成を模式的に示す断面図である。
図5において、パワーモジュールは、金属基板10と、絶縁シート2と、熱伝導性材からなるヒートスプレッタ(放熱板)3と、半導体素子4と、リードフレーム5と、配線6と、封止樹脂7とを備えており、金属基板10は、平面形状を有している。
【0021】
たとえば、金属基板10のサイズは、60mm×60mm×1mmである。
また、金属基板10と封止樹脂7との界面10a、10bは、長さが約3.5mmであり、パワーモジュール内の絶縁シート2に対して水が浸入する最も速い経路となる。
なお、図示しないが、必要に応じて、金属基板10の裏面には、放熱用のヒートシンクまたはフィンなどが配置され得る。
【0022】
前述のように、絶縁シート2自体の劣化を引き起こす水分は、封止樹脂7を介して絶縁シート2に拡散する水分ではなく、パワーモジュールの外表面に露出した封止樹脂7と金属基板10(異種材料)との界面10a、10bから入り込んでいる水分である。
【0023】
図5に示すように、絶縁シート2に水分が浸入する経路のうち最も速い経路は、金属基板10と封止樹脂7との間の界面10a、10bである。
したがって、絶縁シート2の吸湿を防止するためには、界面10a、10bの長さ(金属基板10の厚さ、幅および長さ)を増加させることが有効である。しかしながら、この場合、パワーモジュールのサイズが大幅に増加することになる。
【0024】
この発明の実施の形態1においては、図1のように、金属基板11が湾曲部12を有しているので、金属基板11と封止樹脂7との間には、金属基板11の上面および側面での界面11a、11bのみならず、湾曲部12の表裏面に新たな界面11c、11d、11eが形成される。
【0025】
新たな界面11c〜11eは、前述(図5)の平板ストレート形状の金属基板の場合には形成されないので、図1の金属基板11によれば、実質上、パワーモジュール寸度を増大せずに、外部から絶縁シート2までの水分浸入経路の長さを延長する役割を果たすことになる。
この結果、パワーモジュールのサイズ増加を招くことなく、吸湿による絶縁シート2の寿命低下を防ぐことが可能となる。
【0026】
ここで、図2を参照しながら、図1のように、端部に湾曲部12を有する金属基板11を用いた効果について具体的に説明する。
図2はこの発明の実施の形態1による効果を示す説明図であり、初期(白グラフ)および1000時間経過後(黒グラフ)の各リーク電流特性の変化を、3個のサンプルごとの実試験による信頼性評価結果により示している。
【0027】
図2においては、比較例として参照した従来(図5)のパワーモジュールのサンプルp1〜p3の各劣化特性と、この発明の実施の形態1(図1)によるパワーモジュールのサンプルq1〜q3の各劣化特性とを、比較して示している。
【0028】
図1において、金属基板11の湾曲部12により、新たに界面11c〜11eが形成されるので、絶縁シート2に水を浸入する最も速い経路は、金属基板11と封止樹脂7との間の界面11a〜11eである。
このとき、前述のように、吸水経路は、従来(図5)と比べて、界面11c〜11eの長さ分だけ延長されているので、パワーモジュールのサイズを大幅に増加させることなく、絶縁シート2の吸湿を防止して、長期信頼性を向上させることができる。
【0029】
具体例として、図2内の各サンプルp1〜p3、q1〜q3のヒートスプレッタ3は、サイズ50mm×50mm×3mmの銅製からなり、ヒートスプレッタ3上に、はんだ材を介して半導体素子4が実装され、ヒートスプレッタ3と一方のリードフレーム5との間も、はんだ材を用いて接合されているものとする。また、半導体素子4と他方のリードフレーム5との間は、アルミ線からなる配線6を介して電気的に接続されている。
【0030】
一方、各サンプルq1〜q3の金属基板11は、サイズ61mm×61mm×1mの銅製からなり、金属基板11の端部は、金属基板11の上面に対し約90度だけ封止樹脂7内に向けて湾曲してから、さらに約90度だけ金属基板11の外側に向けて湾曲することにより、湾曲部12を形成している。
【0031】
各サンプルq1〜q3の湾曲部12での表裏面における界面11c、11eの長さは、たとえば0.5mmであり、湾曲後の端部下面における界面11dの長さは、たとえば2mmである。
また、図1のように湾曲加工された金属基板11の上面に、55mm角の半硬化状態のアルミナ粒子を含有する絶縁シート2を積層して熱圧着するものとする。
【0032】
このように、絶縁シート2を熱圧着した金属基板11と、半導体素子4を搭載したヒートスプレッタ3とを図1に示した順に積層し、トランスファモールド金型に位置決めセットした後、トランスファモールド装置により、シリカ粒子が充填されたエポキシ樹脂で180℃/3分間の条件でトランスファ成形する。
【0033】
さらに、その後、封止樹脂7を175℃/6時間で硬化させてパワーモジュールのサンプルq1〜q3を作製するものとする。
封止樹脂7は、ガラス転移温度160℃、熱膨張係数14×10−6/Kの特性を有する樹脂からなる。
【0034】
最終的なパワーモジュールのパッケージサイズは、各サンプルp1〜p3、q1〜q3のいずれも、65mm×65mm×10mmであるものとする。
図1において、絶縁シート2に水が浸入する最も速い経路となる界面11a〜11eの長さは、約6mmであり、従来(図5)の界面10a、10bの長さ3.5mmと比べて、約85%増加したことになる。
【0035】
従来(図5)のサンプルp1〜p3は、金属基板10が平面形状に作成されている点を除けば、この発明の実施の形態1(図1)によるサンプルq1〜q3と同様であり、金属基板10のサイズ60mm×60mm×1mmのみが異なる。
【0036】
図2の信頼性評価結果は、各3個ずつのサンプル、すなわち、従来のパワーモジュールのサンプルp1〜p3と、この発明の実施の形態1のサンプルq1〜q3とを用意し、85℃および85%RHの条件下で、高温高湿バイアス試験を行い、絶縁シート2に1000Vの直流電圧を1000時間にわたって印加して経時変化を観測した結果を示している。
【0037】
図2において、従来のサンプルp1〜p3の場合には、絶縁シート2に流れるリーク電流が、1000時間経過後には初期値から2桁程度増加していることが分かる。
これに対し、この発明の実施の形態1のサンプルq1〜q3の場合には、絶縁シート2に流れるリーク電流が、1000時間経過後でも初期値から1桁程度しか増加していないことが分かる。したがって、図1の構成により、吸湿による絶縁シート2の劣化が抑制されることは明らかである。
【0038】
なお、金属基板11としては、任意の熱伝導性に優れた金属(たとえば、アルミニウムおよびアルミニウム合金、銅および銅合金、鉄および鉄合金、または、銅/鉄一ニッケル合金/銅、アルミニウム/鉄一ニッケル合金/アルミニウムなどの複合材料)が適用可能である。
【0039】
ただし、特に半導体素子4として電流容量の大きい電力用素子が用いられる場合には、金属基板11として電気伝導性に優れた銅を用いることが好ましい。
このとき、金属基板11の厚み、長さおよび幅は、電力用の半導体素子4の電流容量に応じて適宜設定される。すなわち、電力用の半導体素子4の電流容量が大きくなるほど、金属基板11の厚みは厚く設定され、且つ金属基板11の長さおよび幅は大きく設定される。
【0040】
また、絶縁シート2としては、たとえば、各種セラミックスや無機粒子を含有するエポキシ樹脂シート、ガラス繊維を含有するエポキシ樹脂シートが適用可能である。
この場合、絶縁シート2に含有される無機粒子としては、アルミナ、ボロンナイトライド、シリカ、窒化珪素、窒化アルミニウムなどが挙げられる。また、絶縁シート2の厚みは、たとえば、50〜450ミクロンに設定される。
【0041】
また、ヒートスプレッタ3としては、金属基板11と同様に熱伝導性に優れた金属(たとえば、アルミニウムおよびアルミニウム合金、銅および銅合金、鉄および鉄合金、または、銅/鉄一ニッケル合金/銅、アルミニウム/鉄一ニッケル合金/アルミニウムなどの複合材料)が適用可能である。
【0042】
ただし、前述のように電力用の半導体素子4を用いる場合には、ヒートスプレッタ3として電気伝導性に優れた銅を用いるのが好ましい。
また、ヒートスプレッタ3の厚み、長さおよび幅は、金属基板11の場合と同様に、電力用の半導体素子4の電流容量に応じて適宜設定される。
このとき、配線6として、アルミニウム線、銅線、銅金線や被服銅線が用いられ、配線6の線径も、電力用の半導体素子4の電流容量に応じて適宜設定される。
【0043】
さらに、封止樹脂7としては、たとえば、フィラーとしてシリカ粒子が充填されたエポキシ樹脂組成物が用いられ、封止樹脂7に充填されるシリカ粒子の含有率は、パワーモジュールに用いられる部材の熱膨張係数などを考慮して最適な量が選定される。
【0044】
以上のように、この発明の実施の形態1(図1、図2)に係るパワーモジュールは、金属基板11と、金属基板11上に配置された絶縁シート2と、絶縁シート2上に配置されたヒートスプレッタ3と、ヒートスプレッタ3上に実装された半導体素子4と、配線6を介して半導体素子4に接続されたリードフレーム5と、金属基板11、絶縁シート2、ヒートスプレッタ3、半導体素子4、リードフレーム5および配線6を封止する封止樹脂7とを備えており、金属基板11の端部は、湾曲部12を有して封止樹脂7内に封止されている。
【0045】
このように、金属基板11の端部を封止樹脂7内に向けた湾曲構造にすることにより、外部から絶縁シート2までの水分浸入経路となる金属基板11と封止樹脂7との間の界面11a〜11eの距離が延長されるので、金属基板11を特に大型化することなく、吸湿による絶縁シート2の絶縁性能低下を防止することができ、絶縁シート2を用いたパワーモジュールの長期的信頼性を向上させることができる。
【0046】
また、金属基板11の端部は、金属基板11の上面に対して約15度〜90度の角度で封止樹脂7内に向けて湾曲し、さらに約15度〜90度の角度で金属基板11の外側に向けて湾曲しているので、パッケージサイズの増加を抑制することができる。
【0047】
実施の形態2.
なお、上記実施の形態1(図1)では特に言及しなかったが、図3のように、金属基板11の表面に複数の溝13を設けてもよい。
図3はこの発明の実施の形態2による金属基板11を模式的に示す断面図であり、図示を省略した他の構成は図1に示した通りである。
【0048】
図3において、金属基板11は、封止樹脂7と接触する湾曲部12の周辺の表面に、複数の溝13が設けられている。なお、溝13の断面形状は任意であり、長方形に限らず、楕円形であってもよい。
【0049】
以上のように、この発明の実施の形態2(図3)によれば、金属基板11は、封止樹脂7との接触面に複数の溝13が設けられているので、実質的に、吸水経路(界面)の長さをさらに長くすることができるうえ、金属基板11と封止樹脂7との密着性も高くすることができる。
【0050】
実施の形態3.
なお、上記実施の形態1(図1)では、金属基板11の端部に、2段階に湾曲したS字形状の湾曲部12を形成したが、図4のように、1段階のみの湾曲部14を形成してもよい。
図4はこの発明の実施の形態3に係るパワーモジュールの構成を模式的に示す断面図であり、前述(図1参照)と同様のものについては、前述と同一符号を付して詳述を省略する。
【0051】
図4において、金属基板11の端部は、金属基板11の上面に対して約15度〜90度の角度で封止樹脂7内に向けて湾曲しており、湾曲部14を形成している。
この場合、金属基板11と封止樹脂7との間には、湾曲部14により新たな界面11fが形成される。
【0052】
新たな界面11fは、従来(図5)の平板ストレート形状の金属基板の場合には存在しないので、実質上、外部から絶縁シート2までの水分の浸入経路を長くする役割を果たている。
この結果、前述の実施の形態1と同様に、吸湿による絶縁シート2の寿命低下を防ぐことが可能となるうえ、パワーモジュールのサイズを小さくすることが可能である。
【0053】
以上のように、この発明の実施の形態3(図4)によれば、金属基板11の端部を封止樹脂7内に向けて湾曲する構造にしたので、外部から絶縁シート2までの水分浸入経路を長くすることができ、吸湿による絶縁性の低下を防止して、絶縁シート2を用いた構造のパワーモジュールの長期信頼性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0054】
2 絶縁シート、3 ヒートスプレッタ、4 半導体素子、5 リードフレーム、6 配線、7 封止樹脂、10 金属基板、10a〜10b 界面、11 金属基板、11a〜11f 界面、12、14 湾曲部、13 溝、q1〜q3 サンプル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属基板と、
前記金属基板上に配置された絶縁シートと、
前記絶縁シート上に配置されたヒートスプレッタと、
前記ヒートスプレッタ上に実装された半導体素子と、
配線を介して前記半導体素子に接続されたリードフレームと、
前記金属基板、前記絶縁シート、前記ヒートスプレッタ、前記半導体素子、前記リードフレームおよび前記配線を封止する封止樹脂とを備え、
前記金属基板の端部は、湾曲部を有して前記封止樹脂内に封止されたことを特徴とするパワーモジュール。
【請求項2】
前記金属基板の端部は、前記金属基板の上面に対して約15度〜90度の角度で前記封止樹脂内に向けて湾曲したことを特徴とする請求項1に記載のパワーモジュール。
【請求項3】
前記金属基板の端部は、前記金属基板の上面に対して約15度〜90度の角度で前記封止樹脂内に向けて湾曲し、さらに約15度〜90度の角度で前記金属基板の外側に向けて湾曲したことを特徴とする請求項2に記載のパワーモジュール。
【請求項4】
前記金属基板は、前記封止樹脂との接触面に複数の溝が設けられたことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のパワーモジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−182344(P2012−182344A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−44807(P2011−44807)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】