説明

ビーム照射装置

【課題】目標領域内におけるスキャン動作を精度よく行い得るビーム照射装置を提供する。
【解決手段】制御処理部202は、ミラーアアクチュエータ100を第1基準位置と第2基準位置の近傍域で2次元的に駆動させ、これら基準位置を検出した時のPSD106の出力値(座標データ)を記憶する。温度変化や経年変化等の影響でPSDの状態が初期状態から変化すると、図8(b)に示す如く、記憶された座標データ(第1基準点R1´、第2基準点R2´)は、初期状態において設定した座標データ(第1基準点R1、第2基準点R2)からずれるようになる。制御処理部202は、これら2つの基準点におけるズレ量ΔP1、ΔP2とズレ量ΔQ1、ΔQ2に基づいて目標値テーブル202aのデータ校正を行い、校正した目標値テーブルを用いてサーボ動作を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目標領域にレーザ光を照射するビーム照射装置に関し、特に、目標領域にレーザ光を照射したときの反射光をもとに、目標領域内における障害物の有無や障害物までの距離を検出する、いわゆるレーザレーザに搭載されるビーム照射装置に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、走行時の安全性を高めるために、走行方向前方にレーザ光を照射し、その反射光の状態から、目標領域内における障害物の有無や障害物までの距離を検出するレーザレーダが、家庭用乗用車等に搭載されている。一般に、レーザレーダは、レーザ光を目標領域内でスキャンさせ、各スキャン位置における反射光の有無から、各スキャン位置における障害物の有無を検出し、さらに、各スキャン位置におけるレーザ光の照射タイミングから反射光の受光タイミングまでの所要時間をもとに、そのスキャン位置における障害物までの距離を検出するものである。
【0003】
これまで、レーザ光のスキャン機構として、ポリゴンミラーを用いるスキャン機構と、走査用レンズを2次元駆動するレンズ駆動タイプのスキャン機構(たとえば、以下の特許文献1参照)が知られている。
【0004】
また、これらスキャン機構とは異なる新たなスキャン機構として、出願人は、先に特願2006−121762号を出願し、ミラー回動タイプのスキャン機構を提案している。このスキャン機構では、ミラーが2軸駆動可能に支持され、コイルとマグネット間の電磁駆動力によって、ミラーが各駆動軸を軸として回動される。レーザ光は、ミラーに斜め方向から入射され、その反射光が目標領域に向けて照射される。ミラーが各駆動軸を軸として2次元駆動されることにより、レーザ光が、目標領域内において、2次元方向に走査される。
【0005】
レーザレーダの検出精度を高めるには、レーザ光を目標領域内において適正にスキャンさせる必要がある。このため、ビーム照射装置では、レーザ光のスキャン位置を所期の軌道に沿わせるためのサーボ動作が必要となる。上記ミラー回動方式のスキャン機構では、目標領域におけるレーザ光のスキャン位置がミラーの回動位置に一対一に対応する。よって、レーザ光のスキャン位置はミラーの回動位置を検出することによって検出可能である。ここで、ミラーの回動位置は、たとえば、ミラーに伴って回動する別部材の回動位置を検出することにより検出することができる。
【0006】
図14は、ミラーの回動位置を検出するための構成例を示す図である。同図(a)は、別部材として平行平板状の透明体を用いる場合の構成例、同図(b)は、別部材としてミラーを用いる場合の構成例である。
【0007】
同図(a)において、601は半導体レーザ、602は透明体、603は光検出器(PSD:Position Sensing Device)である。半導体レーザ601から出射されたレーザ光(サーボ光)は、レーザ光軸に対し傾いて配置された透明体602によって屈折され、光検出器603に受光される。ここで、透明体602が矢印のように回動すると、サーボ光の光路が図中の点線のように変化し、光検出器603上におけるサーボ光の受光位置が変化する。よって、光検出器603にて検出されるサーボ光の受光位置によって、透明体602の回動位置を検出することができる。
【0008】
同図(b)において、611は半導体レーザ、612はミラー、613は光検出器(PSD)である。半導体レーザ611から出射されたレーザ光(サーボ光)は、レーザ光軸に対し傾いて配置されたミラー612によって反射され、光検出器613に受光される。ここで、ミラー612が矢印のように回動すると、サーボ光の光路が図中の点線のように変化し、光検出器613上におけるサーボ光の受光位置が変化する。よって、光検出器613にて検出されるサーボ光の受光位置によって、ミラー612の回動位置を検出することができる。
【0009】
この他、目標領域内におけるレーザ光の走査位置の検出は、目標領域に向かうレーザ光の一部をビームスプリッタ等によって分岐させ、分岐された光(サーボ光)を光検出器にて受光するようにして行うこともできる。
【特許文献1】特開平11−83988号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、光検出器(PSD)からの出力値は、温度変化や経年変化の影響を受ける。すなわち、サーボ光がPSD受光面上の同じ位置に照射されても、光検出器の温度が異なることによって、出力値がばらつく惧れがある。また、機器の使用期間が長くなると、出力値がずれてくる惧れがある。このように、同じ照射位置における光検出器の出力値がばらついてしまうと、これら出力値を用いて正確なサーボ動作を行うことができなくなる惧れがある。
【0011】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、レーザ光による目標領域内でのスキャン動作を精度よく行うことできるビーム照射装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の発明に係るビーム照射装置は、走査レーザ光を2次元方向に走査させるアクチュエータと、前記アクチュエータを駆動制御する駆動制御部と、前記アクチュエータの駆動に伴ってサーボ光の進行方向を変化させるサーボ光変位部と、前記サーボ光を受光して受光位置に応じた信号を出力する受光位置検出器と、前記走査レーザ光が目標領域内を適正に走査するときの前記受光位置検出器上における前記サーボ光の理想軌道に関する軌道情報を記憶する軌道情報記憶部と、前記アクチュエータが予め設定された特定位置に位置づけられたときの前記受光位置検出器上における前記サーボ光の基準受光位置に関する参照情報を記憶する基準位置記憶部と、前記アクチュエータが前記特定位置にあることを検出する特定位置検出部と、前記特定位置検出部によって前記アクチュエータが前記特定位置にあることが検出されたときの前記受光位置検出器からの出力信号と前記基準位置記憶部に記憶された前記参照情報に基づいて前記軌道情報を現状に適合するよう校正する軌道情報校正部とを備え、前記駆動制御部は、前記受光位置検出器からの出力信号と前記軌道情報校正部にて校正された前記軌道情報に基づいて前記走査レーザ光が前記目標領域内を走査するよう前記アクチュエータを制御することを特徴とする。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1に記載のビーム照射装置において、前記特定位置検出部は、第1の特定位置および第2の特定位置を検出し、前記第1の特定位置および第2の特定位置は、前記アクチュエータがこれら特定位置にあるときの前記受光位置検出器上における前記サーボ用レーザ光の受光位置が前記受光位置検出器の受光面上においてほぼ対角の位置となるよう設定されていることを特徴とする。
【0014】
請求項3の発明は、請求項2に記載のビーム照射装置において、前記特定位置検出部は、位置検出光を発光する位置検出用光源と、前記アクチュエータの駆動に伴って前記位置検出光の進行方向を変化させる検出光変位部と、前記アクチュエータが前記第1の特定位置にあるときに前記位置検出光を受光する第1の受光器と、前記アクチュエータが前記第2の特定位置にあるときに前記位置検出光を受光する第2の受光器とを含むことを特徴とする。
【0015】
ここで、特定位置検出部は、例えば、第1および第2の受光器における位置検出光の受光量が最大となる位置を特定位置として検出する。
【0016】
請求項4の発明は、請求項3に記載のビーム照射装置において、前記走査レーザ光を出射する光源を前記位置検出用光源として兼用するとともに前記第1受光器および第2受光器の前段に光強度を減衰させるフィルタを配したことを特徴とする。
【0017】
請求項5の発明は、請求項1から4のいずれか1項に記載のビーム照射装置において、前記受光位置検出器の温度を検出する温度検出部を備え、前記駆動制御部は、前記温度検出部によって検出された温度が予め設定された温度になったときに前記アクチュエータを前記特定位置の近傍範囲において駆動させ、前記軌道情報校正部は、当該近傍範囲における前記アクチュエータの駆動に応じて前記軌道情報の校正を行うことを特徴とする。
【0018】
請求項6の発明は、請求項1から5のいずれか1項に記載のビーム照射装置において、前記駆動制御部は、当該ビーム照射装置を搭載する移動体の速度情報を参照し、前記移動体が移動状態にあるときは前記走査レーザ光が前記目標領域内を走査するよう前記アクチュエータを制御し、前記移動体が停止状態にあるときに前記アクチュエータを前記特定位置の近傍範囲において駆動させ、前記軌道情報校正部は、当該近傍範囲における前記アクチュエータの駆動に応じて前記軌道情報の校正を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1の発明によれば、アクチュエータが特定位置にあるときの受光位置検出器からの出力信号と基準位置記憶部に記憶された参照情報とに基づいて、軌道情報記憶部内の軌道情報が現状に適合するよう校正される。ここで、参照情報は、たとえば、サーボ光に理想軌道を設定するときと等価の条件にてアクチュエータが特定位置に位置づけられたときに、受光位置検出器から出力される信号に基づくものとされる。したがって、この参照情報と、実動作の際にアクチュエータを特定位置に位置づけたときに受光位置検出器から実際に出力される信号とを比較して、軌道情報記憶部内の軌道情報を実動作時に適合するよう校正すれば、校正後の軌道情報を用いてアクチュエータを制御することにより、走査レーザ光を目標領域内において適正に走査させることができる。よって、温度変化や経年変化等によって受光位置検出器からの出力信号が理想軌道設定時のものから変化しても、精度の高いサーボ動作を実現することができ、走査レーザ光による目標領域内でのスキャン動作を精度よく行うことができる。
【0020】
また、請求項2の発明によれば、受光位置検出器の受光面上のほぼ対角となる2つの受光位置において出力信号の変化を検出することができるので、検出する点をできる限り少なくしてセンサなどの部品が増加するのを抑えつつ、受光面上の場所の違いによる出力値の変化のバラツキを考慮した軌道情報の校正を行うことができる。
【0021】
さらに、請求項3の発明によれば、アクチュエータと非接触状態で位置検出を行うことができ、アクチュエータに余計な負荷がかかるのを防止できる。
【0022】
さらに、請求項4の発明によれば、走査用光源を、位置検出用光源として兼用できるので、構成の簡素化を図ることができる。
【0023】
さらに、請求項5の発明によれば、受光位置検出器からの出力信号に影響が出るような温度になったときに軌道情報の校正が行われるので、温度変化によるサーボ動作の精度劣化を防止できる。また、出力信号に影響が出るような温度にならなければ軌道情報の校正を行わないので、目標領域内でのスキャン動作が軌道情報の校正のために頻繁に中断されるようなことがない。
【0024】
さらに、目標領域内でのスキャン動作は、目標領域内での障害物を検出するために行われるものであり、この障害物の検出は、ビーム照射装置を搭載する移動体が移動状態のときに特に必要となる。請求項6の発明によれば、移動体が停止している時に軌道情報の校正が行われるので、移動体が動いている時に障害物の検出動作が中断されるようなことがなく、安全性が確保される。
【0025】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施の形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下の実施の形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施の形態に何ら制限されるものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態につき図面を参照して説明する。本実施の形態は、レーザレーダに本発明を適用したものである。本実施の形態では、レーザ光が水平方向からミラーに入射される。ミラーを水平方向および垂直方向に回動させることにより、レーザ光が目標領域において2次元方向に走査される。
【0027】
図1に、本実施の形態に係るミラーアクチュエータの構成を示す。同図(a)はアクチュエータの分解斜視図、同図(b)はアセンブル状態にあるアクチュエータの斜視図である。
【0028】
同図(a)において、10は、ミラーホルダである。ミラーホルダ10には、端部に抜け止めを有する支軸11、12が形成されている。また、ミラーホルダ10の前面には平板状のミラー13が装着されており、背面にはコイル14が装着されている。なお、コイル14は、方形状に巻回されている。ミラーホルダ10の支軸12には、反射面がミラー13の反射面と平行となるようにして、平板状のミラー15が装着されている。ミラー15は、ミラー13の反射面と同じ側の面に反射面15aを有し、反射面15aと反対側の面に反射面15bを有している。
【0029】
20は、ミラーホルダ10を支軸11、12を軸として回動可能に支持する可動枠である。可動枠20には、ミラーホルダ10を収容するための開口21が形成されており、また、ミラーホルダ10の支軸11、12と係合する溝22、23が形成されている。さらに、可動枠20の側面には、端部に抜け止めを有する支軸24、25が形成され、背面には、コイル26が装着されている。コイル26は、方形状に巻回されている。
【0030】
30は、可動枠20を支軸24、25を軸として回動可能に支持する固定枠である。固定枠30には、可動枠20を収容するための凹部31が形成され、また、可動枠20の支軸24、25と係合する溝32、33が形成されている。さらに、固定枠30の内面には、コイル14に磁界を印加するマグネット34と、コイル26に磁界を印加するマグネット35が装着されている。なお、溝32、33は、それぞれ固定枠30の前面から上下2つのマグネット35間の隙間内まで延びている。
【0031】
40は、可動枠20の支軸24、25が溝32、33から脱落しないよう、支軸24、25を前方から押さえる押さえ板である。なお、ミラーホルダ10の支軸11、12を可動枠20の溝22、23から脱落しないよう規制する押さえ板は、図示省略されている。
【0032】
アクチュエータをアセンブルする際には、ミラーホルダ10の支軸11、12を可動枠20の溝22、23に係合させ、さらに、支軸11、12の前面を押さえるようにして、押さえ板(図示せず)を可動枠20の前面に装着する。これにより、ミラーホルダ10が、可動枠20によって、回動可能に支持される。
【0033】
このようにしてミラーホルダ10を可動枠20に装着した後、可動枠20の支軸24、25を固定枠30の溝32、33に係合させ、さらに、支軸32、33の前面を押さえるようにして、押さえ板40をマグネット35の前面に装着する。これにより、可動枠20が、回動可能に固定枠30に装着され、アクチュエータのアセンブルが完了する。
【0034】
ミラーホルダ10が可動枠20に対し支軸11、12を軸として回動すると、これに伴ってミラー13、15が回動する。また、可動枠20が固定枠30に対し支軸24、25を軸として回動すると、これに伴ってミラーホルダ10が回動し、ミラーホルダ10と一体的にミラー13、15が回動する。このように、ミラーホルダ10は、互いに直交する支軸11、12と支軸24、25によって、2次元方向に回動可能に支持され、ミラーホルダ10の回動に伴って、ミラー13、15が2次元方向に回動する。
【0035】
なお、同図(b)に示すアセンブル状態において、2つのマグネット34は、コイル14に電流を印加することにより、ミラーホルダ10に支軸11、12を軸とする回動力が生じるよう配置および極性が調整されている。したがって、コイル14に電流を印加すると、コイル14に生じる電磁駆動力によって、ミラーホルダ10が、支軸11、12を軸として回動する。
【0036】
また、同図(b)に示すアセンブル状態において、2つのマグネット35は、コイル26に電流を印加することにより、可動枠20に支軸24、25を軸とする回動力が生じるよう配置および極性が調整されている。したがって、コイル26に電流を印加すると、コイル26に生じる電磁駆動力によって、可動枠20が、支軸24、25を軸として回動する。
【0037】
このように、コイル14とコイル26に電流を印加することにより、ミラーホルダ10と可動枠20がそれぞれ支軸11、12と支軸24、25を軸として回動する。これにより、ミラー13、15が、ミラーホルダ10と一体となって、2次元方向に回動する。
【0038】
図2に、本実施の形態に係るレーザレーダの構成を示す。なお、同図では、目標値テーブル202aのデータ校正のための構成(後述)が省略されている。
【0039】
図示のように、レーザレーダは、ビーム照射ヘッド201と、制御処理部202と、アクチュエータ駆動部203と、レーザ駆動部204と、を備えている。
【0040】
ビーム照射ヘッド201は、前方空間に設定された走査領域においてレーザ光を走査させる。図示のように、ビーム照射ヘッド201は、ミラーアクチュエータ100の他に、半導体レーザ101と、コリメートレンズ102と、収差板103と、半導体レーザ104と、集光レンズ105と、PSD106と、受光レンズ107と、PD(Photo Detector)108を備えている。
【0041】
走査用の半導体レーザ101は、図2のX軸方向にレーザ光(以下、「走査用レーザ光」という)を出射する。出射された走査用レーザ光は、コリメートレンズ102によって平行光に変換され、さらに、収差板103によって光学的に調整された後、ミラーアクチュエータ100に支持された平板状のミラー13に入射される。
【0042】
ミラー13に入射された走査用レーザ光は、ミラー13によって反射され、目標領域へ向かう。ミラーアクチュエータ100によってミラー13が2次元駆動されることにより、走査用レーザ光が目標領域内において2次元方向(図2のX−Y平面方向)にスキャンされる。なお、収差板103は、目標領域における走査用レーザ光の形状を調整するためのものである。収差板103に替えて、2枚のシリンドリカルレンズを組み合わせて配置しても良い。
【0043】
サーボ用の半導体レーザ104は、図2のX軸方向であって走査用レーザ光と反対方向にレーザ光(以下、「サーボ用レーザ光」という)を出射する。出射されたサーボ用レーザ光は、ミラー15の反射面15bによって反射された後、集光レンズ105によってPSD106の受光面上に集光される。集光レンズ107は目標領域からの反射光をPD108上に集光する。PD108は、受光強度に応じた信号を制御処理部202に出力する。
【0044】
図3(a)は、PSD106の構成を示す図(側断面図)、図3(b)はPSD106の受光面を示す図である。
【0045】
図3(a)に示すように、PSD106は、N型高抵抗シリコン基板の表面に、受光面と抵抗層を兼ねたP型抵抗層を形成した構造となっている。抵抗層表面には、同図(b)の横方向における光電流を出力するための電極X1、X2と、縦方向における光電流を出力するための電極Y1、Y2(同図(a)では図示省略)が形成されている。また、裏面側には共通電極が形成されている。
【0046】
受光面にサーボ用レーザ光が照射されると、照射位置に光量に比例した電荷が発生する。この電荷は光電流として抵抗層に到達し、各電極までの距離に逆比例して分割されて、電極X1、X2、Y1、Y2から出力される。ここで、電極X1、X2、Y1、Y2から出力される電流は、サーボ用レーザ光の照射位置から各電極までの距離に逆比例して分割された大きさを有している。よって、電極X1、X2、Y1、Y2から出力される電流値をもとに、受光面上における光の照射位置を2次元的に検出することができる。
【0047】
PSD106上におけるサーボ用レーザ光の照射位置は、ミラー15の傾斜状態に応じて変位する。他方、ミラー15はミラー13と一体的に回動するため、ミラー13の回動位置とミラー15の回動位置は一対一に対応する。したがって、ミラー15で反射されたサーボ用レーザ光のPSD106受光面上における照射位置は、ミラー15の回動位置、すなわち、目標領域内における走査用レーザ光のスキャン位置に対応することとなる。
【0048】
図4(a)は、目標領域における走査用レーザ光の走査状態を模式的に示す図、図4(b)は、PSD受光面上におけるサーボ用レーザ光の走査状態を模式的に示す図である。
【0049】
図4(a)に示すように、走査用レーザ光は、目標領域内において、まず、最上段のライン(走査ライン1)に沿って水平方向(X軸方向)にスキャンされる。そして、このラインのスキャンが終わると、鉛直方向(Y軸方向に)に一段下のライン(走査ライン2)が水平方向にスキャンされる。このスキャン動作が、予め設定された複数段(同図では5段)に亘って繰り返される。最下段のライン(走査ライン5)に対する走査が終了すると、最上段(走査ライン1)に戻り、同様の走査が繰り返される。
【0050】
このように走査用レーザ光が走査されると、これに伴って、サーボ用レーザ光がPSD106受光面上を走査する。すなわち、図4(b)に示すように、サーボ用レーザ光は、PSD106の受光面上において、走査用レーザ光のスキャン軌道に対応するスキャン軌道を描く。図中、点線矢印が、同図(a)の各走査ラインに対応するサーボ用レーザ光のスキャン軌道である。
【0051】
図2に戻り、制御処理部202には、PSD106から走査用レーザ光のスキャン位置に係る電流信号が入力される。制御処理部202は、PSD106からの電流信号に基づいて、走査用レーザが目標領域内で適正なスキャン軌道(図4(a)参照)を通るように、ミラーアクチュエータ100を駆動制御する。この制御に用いるために、制御処理部202内には、目標値テーブル202aが配備されている。
【0052】
目標値テーブル202aには、図4(b)に示す理想軌道上の予め決められた位置(サンプル点)にサーボ用レーザ光が位置づけられたときのPSD106の出力値に基づくデータ(PSD受光面上におけるサンプル点の座標データ)が記憶されている。図5はサーボ用レーザ光の走査軌跡とサンプル点の関係を模式的に示す図である。図中、実線矢印は、走査用レーザ光が目標領域内を適正に走査するとき(図4(a)参照)の、PSD106受光面上におけるサーボ用レーザ光の理想軌道を示している。これらの座標データは、走査用レーザ光を目標領域内でスキャンするときの目標値となるものであり、予め検証等を行うことにより取得される。
【0053】
制御処理部202は、走査用レーザ光によるスキャン動作時、PSD106からの電流信号に基づいて、PSD受光面上のスキャン軌道が目標値テーブル202a内の座標データ(目標値)により規定される軌道に引き込まれるよう、アクチュエータ駆動部203に制御信号を出力する。アクチュエータ駆動部203は、この制御信号に基づいて、ミラーアクチュエータ100を駆動する。かかるサーボ動作によって、走査用レーザ光が目標領域内において適正な軌道でスキャンされる。
【0054】
また、制御処理部202は、レーザ駆動部204に対し、半導体レーザ101、104を駆動するための制御信号を出力する。レーザ駆動部204は、この制御信号に基づいて、半導体レーザ101、104を駆動する。
【0055】
制御処理部202は、走査用レーザ光のスキャン動作時、PSD受光面上におけるサーボ用レーザ光の収束位置を監視する。そして、この収束位置が、障害物検出および距離検出を行うための位置(以下、「測距位置」という)として予め設定され位置に到達すると、このタイミングにて、半導体レーザ101の出力を一定期間だけ高パワーとする制御信号を、レーザ駆動部204に出力する。これにより、各測距位置において、半導体レーザ101からパルス状の高パワーのレーザ光(以下、「パルスレーザ光」という)が出射される。
【0056】
このパルスレーザ光が障害物で反射され、PD108により受光されると、これに基づく電気信号が制御処理部202に入力される。これにより、制御処理部202は、障害物が存在することを検出する。また、制御処理部202は、パルスレーザ光の出射タイミングとPD108による受光タイミングとに基づいて、障害物までの距離を測定する。
【0057】
ところで、PSD106からの出力値は、温度変化や経年変化の影響を受け易い。すなわち、サーボ用レーザ光がPSD受光面上の同じ位置に収束しても、PSD106の温度が異なることによって、出力値がばらつく惧れがある。また、機器の使用期間が長くなると、同じ温度条件であっても、PSD106からの出力値が初期動作時の値からずれてくる惧れがある。これらの要因により、同じ収束位置におけるPSD106の出力値が、目標値テーブル202aの座標データを取得したときと実際のスキャン動作時とで異なることが想定され得る。しかし、こうなると、PSD106の出力値と目標値テーブル202aの座標データとを用いたサーボ動作が適正に行われなくなってしまう。
【0058】
そこで、本実施の形態では、温度変化や経年変化等によってPSD106の出力値にズレが生じた可能性がある場合に、目標値テーブル202aの座標データを現状に合うよう校正し、校正後の目標値テーブル202aを用いてサーボ動作を行うようにしている。
【0059】
図6は、レーザレーダにおける、目標値テーブル202aのデータ校正を行うための構成を示す図である。なお、同図では、前述の目標領域をスキャンするための構成が省略されている。
【0060】
ビーム照射ヘッド201には、上述した構成のほか、温度検出器109と、校正用の半導体レーザ110と、第1の受光器111と、第2の受光器112が備えられている。
【0061】
温度検出器109はPSD106の近傍に配されている。この温度検出器109によって、PSD106の周辺温度を検出することにより、PSD106、特にその受光面の温度が間接的に検出される。温度検出器109による検出信号は、制御処理部202に入力される。
【0062】
第1、第2の受光器111、112は、それぞれ、前記ミラーアクチュエータ100に設定された座標データ校正用の2つの基準位置(第1基準位置、第2基準位置)を検出するためのものである。第1、第2の受光器111、112は、ミラー15の反射面15aに対し、図6のZ軸方向に所定距離を有して配置されている。また、第1、第2の受光器111、112は、図7に示すように、図6のZ軸方向からミラーアクチュエータ100を見たときに、ミラー15を挟んで対角の位置に配置されている。第1、第2の受光器111、112は、乗用車の走行時の振動などで容易に動いてしまわないよう、ビーム照射ヘッド201の筐体(図示せず)などにネジ止め、UV接着などによって強固に固定されている。第1、第2の受光器111、112は、受光面にて受光される光の強さに応じた電気信号を出力する。この電気信号は、制御処理部202に入力される。
【0063】
目標値テーブル202a設定時の状態(以下、「初期状態」という)のもとで、アクチュエータ100が第1基準位置に駆動されると、サーボ用レーザ光は、図8(a)に示す第1基準点R1の位置に照射され、また、アクチュエータ100が第2基準位置に駆動されると、サーボ用レーザ光は、図8(a)に示す第2基準点R2の位置に照射される。第1基準点R1と第2基準点R2は、PSD106の受光面上のほぼ矩形のスキャン領域に対し、ほぼ対角の位置となる。目標値テーブル202aには、上記スキャン制御のための座標データの他に、第1基準点R1および第2基準点R2に対応する座標データが記憶されている。
【0064】
図6に戻り、半導体レーザ110は、レーザ駆動部204により駆動される。半導体レーザ110からは、図6のZ軸方向であって、サーボ用レーザ光の出射方向と反対方向にレーザ光(以下、「位置検出用レーザ光」という)が出射される。出射された位置検出用レーザ光は、ミラー15の反射面15aによって反射される。
【0065】
ミラーアクチュエータ100が第1基準位置に来ると、反射面15aにて反射された位置検出用レーザ光は第1の受光器111に入射し、第1の受光器111における受光量が最大となる。また、ミラーアクチュエータ100が第2基準位置に来ると、反射面15aにて反射された位置検出用レーザ光は第2の受光器112に入射し、第2の受光器112における受光量が最大となる。すなわち、第1、第2の位置検出器111、112の受光量が最大になることを検出することで、ミラーアクチュエータ100(ミラー13およびミラー15)の第1基準位置、第2基準位置がそれぞれ検出される。
【0066】
座標データの校正時には、制御処理部202は、半導体レーザ104、110を駆動させるとともに、ミラーアアクチュエータ100を第1基準位置の近傍域で2次元的に駆動させる。これにより、PSD106の受光面上では、第1基準点R1の近傍域でサーボ用レーザ光がスキャンされる。制御処理部202は、このスキャン動作中に第1の受光器111で受光量が最大となったときのPSD106の出力値(座標データ)を記憶する。
【0067】
次に、制御処理部202は、第2基準位置の近傍域でミラーアクチュエータ100を駆動させ、同様に、サーボ用レーザ光を第2基準点R2の近傍でスキャンさせる。そして、このスキャン動作中に第2の受光器112で受光量が最大となったときのPSD106の出力値(座標データ)を記憶する。
【0068】
実動作時におけるPSD106の状態が初期状態と同じであれば、このようにして校正動作時に記憶された2つの座標データは、第1基準点R1、第2基準点R2の座標データと等しくなる。よって、この場合、制御処理部202は、目標値テーブル202aの座標データの校正を行わない。
【0069】
一方、温度変化や経年変化等の影響を受けることにより、PSD106の状態が初期状態から変化した場合には、校正動作時に記憶された2つの座標データは、第1基準点R1、第2基準点R2の座標データと異なるものとなる。つまり、校正時に記憶された2つの座標データに対応する座標点を、それぞれ、第1基準点R1´および第2基準点R2´とすると、図8(b)に示すように、第1基準点R1´および第2基準点R2´は、第1基準点R1、第2基準点R2からずれるものとなる。この場合、制御処理部202は、以下と等価な処理を行うことによって目標値テーブル202aを校正し、校正後の目標値テーブルを用いてサーボ動作を行う。
【0070】
すなわち、第1基準点R1´と第1基準点R1との間の水平方向のズレ量ΔP1と鉛直方向のズレ量ΔQ1を算出するとともに、第2基準点R2´と第1基準点R2との間の水平方向のズレ量ΔP2と鉛直方向のズレ量ΔQ2を算出する。次に、水平方向のズレ量の平均値(ΔP1+ΔP2)/2、および鉛直方向のズレ量の平均値(ΔQ1+ΔQ2)/2を求め、これらを補正値として目標値テーブル202aの各座標データに加算して新たな目標値テーブル202aを生成する。そして、生成後の目標値テーブル202aを用いてサーボ動作を行う。
【0071】
このように、温度変化や経年変化等に合わせて目標値テーブル202a内の座標データを校正し、校正後の目標値テーブルをサーボ動作に用いることにより、温度変化や経年変化等によらず、精度の高いサーボ動作を行うことができる。
【0072】
本実施の形態において、目標値テーブル202aの校正動作は、図9に示すフローチャートに従って行われ得る。なお、以下の動作は、制御処理部202における処理制御のもとで行われる。
【0073】
レーザレーダにおいて障害物の検出動作が開始されると、まず、上記図8(b)を参照して説明した如くして、目標値テーブル202aのデータ校正が行われる(S1)。かかるデータ校正が終了すると、目標領域内における走査用レーザ光のスキャン動作が開始される(S2)。このスキャン動作は、S1において校正された目標値テーブルを用いて行われる。
【0074】
スキャン動作中、温度検出器109からの検出信号をもとにPSD106の温度が監視される。すなわち、温度検出器109により検出された温度が、スキャン動作開始時の温度から、予め設定された温度T(たとえば、50℃、60℃、70℃、…)を超えたか否かが判断される(S3)。検出温度が設定温度Tを超えていなければ(S3:NO)、他の要因(電源OFF等)によってスキャン動作が終了されない限り(S5:NO)、スキャン動作が継続される。
【0075】
一方、温度検出器109における検出温度が設定温度T(たとえば、50℃)を超えたと判断されると(S3:YES)、スキャン動作が停止され(S4)、再び目標値テーブルのデータ校正が行われる(S1)。データ校正が終了すると、校正後の目標値テーブルをもとに、スキャン動作が再開される(S2)。
【0076】
その後、引き続きPSD106の温度が監視される。そして、温度検出器109の検出温度が次の設定温度T(たとえば、60℃)を超えたか否かが判断される(S3)。検出温度が次の設定温度Tを超えたと判断されると(S3:YES)、上記と同様に、スキャン動作が停止され(S4)、目標値テーブルのデータ校正が行われ(S1)、校正後の目標値テーブルをもとに、スキャン動作が再開される(S2)。
【0077】
スキャン動作中に、スキャン動作を終了すべき他の要因が生じると(S5:YES)、スキャン動作が停止され、障害物の検出動作が終了する。
【0078】
以上、上記実施の形態では、PSD106の出力値が、温度変化や経年変化などによって変化する状況となった場合に、ミラーアクチュエータ100のサーボ動作に利用される目標値テーブル202aの座標データを、PSD106の出力値の変化に応じて校正するようにしたので、精度の高いサーボ動作を行うことができる。これにより、走査用レーザ光による目標領域内でのスキャン動作を精度よく行うことできる。
【0079】
さらに、ミラーアクチュエータ100の第1基準位置および第2基準位置を、半導体レーザ110(半導体レーザ101)と第1、第2の受光器111、112を用いて検出するようにしているので、ミラーアクチュエータ100と非接触状態で検出を行うことができ、ミラーアクチュエータ100に余計な負荷がかかるのを防止できる。
【0080】
さらに、本実施の形態では、障害物の検出動作が起動される度に、データ校正を行うようにしているので、経年変化によるスキャン動作の精度劣化を一層防止できる。
【0081】
さらに、本実施の形態では、温度検出器109による検出温度が、SD106の出力値が影響を受けるような温度になった場合にデータ校正を行う構成としたので、的確なタイミングでデータ校正を行うことができる。よって、温度変化によるスキャン動作の精度劣化を防止しつつ、障害物検出のために行われるスキャン動作がデータ校正のために頻繁に中断されることを防止でき、安全性を確保することができる。
【0082】
なお、PSD106における出力変動は、受光面上の全ての位置において一様ではなく、通常、位置毎に変動の仕方が相違する可能性が高い。よって、目標値テーブル202aの校正は、かかる変動のばらつきを考慮して、なるべく多くの基準点を受光面上に設定し、各基準点における変動値(図8(b)のΔP1、ΔQ1およびΔP2、ΔQ2)の平均値等をもとに行うのが望ましいとも考えられる。しかし、多数の基準点を受光面上に設定すると、それに応じてアクチュエータ100の基準位置も増加し、その結果、各基準点を検出するための光検出器の配置数も増加する。このため、受光面上に設定する基準点をあまり多くすると、部品点数が増加し、構成の複雑化とコストの上昇を招くこととなる。
【0083】
これに対し、本実施の形態では、PSD106の受光面上の対角となる2つの位置に第1基準点R1と第2基準点R2を設定し、これら基準点において出力値の変化を検出するようにしたので、検出点をできる限り少なくして光検出器などの部品が増加するのを抑えつつ、受光面上の位置による出力値の変化のバラツキを考慮した校正処理を行うことができる。
【0084】
なお、本実施の形態のレーザレーダは、たとえば、乗用車等の移動体に搭載することができる。
【0085】
図10は、乗用車にレーザレーダを搭載した場合の構成を示す図である。制御処理部202には、乗用車側に備えられたキー位置検出器301および速度検出器302から検出信号が入力される。キー位置検出器301は、エンジンを始動するためのイグニッションキーがエンジンを始動する位置にあるか否か検出するものである。イグニッションキーがエンジンを始動する位置に来れば、エンジンが始動したと判断できる。速度検出器302は乗用車の速度を検出するものである。
【0086】
図11は、レーザレーダが乗用車に搭載された場合における校正動作の一例を示すフローチャートである。なお、以下の動作は、制御処理部202における処理制御のもとで行われる。
【0087】
キー位置検出器301からの入力に基づいて、乗用車のエンジンが始動したか否かが判断される(S11)。エンジンが始動したと判断されると、障害物の検出動作が開始される。
【0088】
まず、上記図8(b)を参照して説明した如くして、目標値テーブル202aのデータ校正が行われる(S12)。かかるデータ校正が終了すると、スキャン動作が開始される(S13)。このスキャン動作は、S12において校正された目標値テーブルを用いて行われる。
【0089】
次に、温度検出器109により検出された温度が、スキャン動作開始時の温度から、予め設定された温度T(たとえば、50℃、60℃、70℃、…)を超えたか否かが判断される(S14)。そして、検出温度が設定温度T(たとえば、50℃)を超えたと判断されると(S14:YES)、速度検出器302からの入力に基づいて、乗用車の速度が停止したか否かが判断される(S15)。乗用車が走行していれば(S15:NO)、目標値テーブル202aのデータ校正が行われずにそのまま待機される。
【0090】
乗用車が信号待ちで一時停止するなどして乗用車が停止すると(S15:YES)、スキャン動作が停止され(S16)、目標値テーブル202aのデータ校正が再び行われる(S12)。データ校正が終了すると、校正後の目標値テーブルをもとに、スキャン動作が再開される(S13)。
【0091】
その後、引き続きPSD106の温度が監視される。そして、温度検出器109の検出温度が、次の設定温度T(たとえば、60℃)を超えたと判断されると(S14:YES)、上記と同様に、速度停止(S15:YES)を待って、スキャン動作が停止され(S16)、データ校正が行われる(S12)。
【0092】
スキャン動作の間、キー位置検出器301からの入力に基づいて、エンジンが停止されたか否かが判断される(S17)。エンジンが停止したと判断されると(S17:YES)、スキャン動作が停止され、障害物の検出動作が終了される。
【0093】
このように、図11のフローチャートでは、エンジンを始動する度、すなわち、障害物の検出動作を起動する度に目標値テーブルのデータ校正が行われるので、経年変化によるサーボ動作の精度劣化を防止できる。
【0094】
また、図11のフローチャートでは、PSD106の出力値が影響を受けるような温度になるとデータ校正が行われるので、温度変化によるサーボ動作の精度劣化を防止できる。
【0095】
さらに、図11のフローチャートでは、速度停止がなされなければデータ校正が行われないので、乗用車の走行中に、校正動作によって障害物検出のためのスキャン動作が中断されるようなことがなく、安全性が確保される。
【0096】
次に、ビーム照射ヘッド201の変更例につき、図12を参照して説明する。この変更例では、図12(a)に示すように、ミラーアクチュエータ100において、ミラー15に変えて、屈折素子50が設けられている。この屈折素子50は、例えば、アクリルやガラスでできている。集光レンズ105およびPSD106は、この屈折素子50を挟んで、半導体レーザ104の反対側に配置されている。
【0097】
半導体レーザ104から出射されたサーボ用レーザ光は、屈折素子50に入射され、同図(a)に示すように、屈折素子50の屈折作用を受ける。その後、屈折素子50を通過したサーボ用レーザ光は、集光レンズ105を介してPSD106に受光される。このとき、屈折素子50が回動すると、屈折作用によってPSD106への照射位置が変位する。
【0098】
また、この変更例においては、同図(b)に示すように、校正用の半導体レーザとして、走査用の半導体レーザ101が兼用される。この場合、第1の受光器111および第2の受光器112は、図13に示すように、図12(b)のZ軸方向からミラーアクチュエータ100を見たときに、ミラー13を挟んで対角の位置に配置される。ここで、第1の受光器111および第2の受光器112は、障害物検出の際に走査用レーザ光を目標領域内で走査しても、走査用レーザ光を遮ることのない位置に配されている。
【0099】
半導体レーザ101は、図6における校正用の半導体レーザ110に比べて出射パワーがかなり大きい。このような高パワーのレーザ光が第1、第2の受光器111、112にそのまま入射されてしまうと、第1、第2の受光器111、112が破損してしまう惧れがある。そこで、第1、第2の受光器111、112における受光面の前には、それぞれ、レーザ光を減衰させるフィルタ113、114が配されている。こうして、校正動作の際には、半導体レーザ101からのレーザ光が位置検出用レーザ光として利用される。当然ながら、校正動作時における半導体レーザ101の出射パワーは、目標領域を走査する際の出射パワーに対し可能な限り低く抑えるのが望ましい。
【0100】
このように、走査用の半導体レーザ101を、校正用の半導体レーザ110として兼用できるようにすれば、構成の簡素化を図ることができる。
【0101】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施の形態によって制限されるものではなく、また、本発明の実施形態も、上記以外に種々の変更が可能である。
【0102】
例えば、上記実施の形態では、目標値テーブル202aのデータ校正に利用する第1基準点R1と第2基準点R2を、図8(a)に示す如く、障害物検出動作時におけるサーボ用レーザ光の軌道領域外に設定したが、これら基準点をサーボ用レーザ光の軌道領域内に設定するようにしてもよい。但し、上記図12に示す変更例では、障害物検出の際に走査用レーザ光を遮ることのない位置に第1、第2の受光器111、112を配置する必要があり、これに応じて、PSD受光面上における基準点を設定する必要がある。この理由から、この変更例においては、第1基準点R1と第2基準点R2は、必然的に、サーボ用レーザ光の軌道領域外に設定されることとなる。
【0103】
また、上記実施の形態では、ミラーアクチュエータ100の第1基準位置および第2基準位置を、校正用の半導体レーザ110(または、半導体レーザ101を兼用)と第1、第2の受光器111、112を用いて検出するようにしたが、たとえば、マイクロスイッチによる非接触式の検出スイッチなど、他の検出器によってこれら基準位置を検出するようにしてもよい。
【0104】
さらに、上記図11の構成例では、キー位置検出器301からの信号によりエンジンの始動を判断し、速度検出器302からの信号により速度停止を判断する構成としたが、その他、例えば、乗用車側の制御部からエンジン始動の情報、速度停止の情報をもらうような構成としてもよい。
【0105】
さらに、上記図11の構成例では、乗用車のエンジンの始動を検出してデータ校正を行う構成としているが、検出動作を起動するタイミングでデータ校正を行うように校正してよく、例えば、レーザレーダ自身に電源が投入されたタイミングでデータ校正を行う構成とすることも可能である。
【0106】
さらに、上記実施の形態では、温度検出器109によって、PSD106の周辺温度を検出することで、PSD106の温度を間接的に検出するようにしている。これは、上記実施の形態においては、PSD106に温度検出器109を直接取り付けて直接的に温度を検出することが難しいためである。しかし、可能であれば、PSD106に温度検出器109を直接取り付けて、直接的に温度を検出するようにしてもよく、また、被接触式の温度検出器を用いて直接的に温度を検出するようにしてもよい。PSD106の温度を検出する方法としては、その他、種々の方法が取られ得る。
【0107】
さらに、上記実施の形態は、車載用のレーザレーダに本発明を適用したものであったが、本発明は、たとえば、大気中のエアロゾル計測用など、他の用途のレーザレーダに適用することも可能である。また、上記実施の形態では、サーボやデータ校正に用いるレーザ光を出射する光源として半導体レーザを用いたが、これに代えて、LED(Light Emitting Diode)等、他の光源を用いることもできる。
【0108】
この他、本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】実施の形態に係るミラーアクチュエータの構成を示す図
【図2】実施の形態に係るレーザレーダの構成を示す図
【図3】実施の形態に係るPSDの構成を示す図
【図4】実施の形態に係るレーザレーダにおいて、目標領域における走査用レーザ光の走査状態およびPSD受光面上におけるサーボ用レーザ光の走査状態を示す図
【図5】実施の形態に係るレーザレーダにおいて、サーボ用レーザ光の走査奇跡とサンプル点の関係を模式的に示す図
【図6】実施の形態に係るレーザレーダにおける、目標値テーブルのデータ校正を行うための構成を示す図
【図7】実施の形態に係る第1、第2の受光器の配置を示す図
【図8】実施の形態に係る目標値テーブルのデータ校正について説明するための図
【図9】実施の形態に係るレーザレーダにおける、目標値テーブルの校正動作のタイミングの一例を示すフローチャート
【図10】実施の形態に係るレーザレーダを乗用車に搭載した場合におけるレーザレーダに関連する構成を示す図
【図11】実施の形態に係るレーザレーダが乗用車に搭載された場合における校正動作のタイミングの一例を示すフローチャート
【図12】実施の形態に係るビーム照射ヘッドの変形例を示す図
【図13】実施の形態に係るビーム照射ヘッドの変形例における第1、第2の受光器の配置を示す図
【図14】光屈折素子およびミラーを用いた位置検出方法を説明する図
【符号の説明】
【0110】
13 ミラー(検出光変位部)
15 ミラー(サーボ光変位部、検出光変位部)
50 屈折素子(サーボ光変位部)
100 ミラーアクチュエータ(アクチュエータ)
101 半導体レーザ(光源)
106 PSD(受光位置検出器)
109 温度検出器(温度検出部)
110 半導体レーザ(位置検出用光源)
111 第1の受光器
112 第2の受光器
113 フィルタ
114 フィルタ
202 制御処理部(駆動制御部、軌道情報校正部)
202a 目標値テーブル(軌道情報記憶部、基準位置記憶)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走査レーザ光を2次元方向に走査させるアクチュエータと、
前記アクチュエータを駆動制御する駆動制御部と、
前記アクチュエータの駆動に伴ってサーボ光の進行方向を変化させるサーボ光変位部と、
前記サーボ光を受光して受光位置に応じた信号を出力する受光位置検出器と、
前記走査レーザ光が目標領域内を適正に走査するときの前記受光位置検出器上における前記サーボ光の理想軌道に関する軌道情報を記憶する軌道情報記憶部と、
前記アクチュエータが予め設定された特定位置に位置づけられたときの前記受光位置検出器上における前記サーボ光の基準受光位置に関する参照情報を記憶する基準位置記憶部と、
前記アクチュエータが前記特定位置にあることを検出する特定位置検出部と、
前記特定位置検出部によって前記アクチュエータが前記特定位置にあることが検出されたときの前記受光位置検出器からの出力信号と前記基準位置記憶部に記憶された前記参照情報に基づいて前記軌道情報を現状に適合するよう校正する軌道情報校正部とを備え、
前記駆動制御部は、前記受光位置検出器からの出力信号と前記軌道情報校正部にて校正された前記軌道情報に基づいて前記走査レーザ光が前記目標領域内を走査するよう前記アクチュエータを制御する、
ことを特徴とするビーム照射装置。
【請求項2】
請求項1に記載のビーム照射装置において、
前記特定位置検出部は、第1の特定位置および第2の特定位置を検出し、
前記第1の特定位置および第2の特定位置は、前記アクチュエータがこれら特定位置にあるときの前記受光位置検出器上における前記サーボ用レーザ光の受光位置が前記受光位置検出器の受光面上においてほぼ対角の位置となるよう設定されている、
ことを特徴とするビーム照射装置。
【請求項3】
請求項2に記載のビーム照射装置において、
前記特定位置検出部は、
位置検出光を発光する位置検出用光源と、
前記アクチュエータの駆動に伴って前記位置検出光の進行方向を変化させる検出光変位部と、
前記アクチュエータが前記第1の特定位置にあるときに前記位置検出光を受光する第1の受光器と、
前記アクチュエータが前記第2の特定位置にあるときに前記位置検出光を受光する第2の受光器とを含む、
ことを特徴とするビーム照射装置。
【請求項4】
請求項3に記載のビーム照射装置において、
前記走査レーザ光を出射する光源を前記位置検出用光源として兼用するとともに前記第1受光器および第2受光器の前段に光強度を減衰させるフィルタを配した、
ことを特徴とするビーム照射装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のビーム照射装置において、
前記受光位置検出器の温度を検出する温度検出部を備え、
前記駆動制御部は、前記温度検出部によって検出された温度が予め設定された温度になったときに前記アクチュエータを前記特定位置の近傍範囲において駆動させ、
前記軌道情報校正部は、当該近傍範囲における前記アクチュエータの駆動に応じて前記軌道情報の校正を行う、
ことを特徴とするビーム照射装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のビーム照射装置において、
前記駆動制御部は、当該ビーム照射装置を搭載する移動体の速度情報を参照し、前記移動体が移動状態にあるときは前記走査レーザ光が前記目標領域内を走査するよう前記アクチュエータを制御し、前記移動体が停止状態にあるときに前記アクチュエータを前記特定位置の近傍範囲において駆動させ、
前記軌道情報校正部は、当該近傍範囲における前記アクチュエータの駆動に応じて前記軌道情報の校正を行う、
ことを特徴とするビーム照射装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2009−128014(P2009−128014A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−299713(P2007−299713)
【出願日】平成19年11月19日(2007.11.19)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(504464070)三洋オプテックデザイン株式会社 (315)
【Fターム(参考)】