説明

フィルムの平面性検査装置および平面性検査方法

【課題】フィルムロールの状態のままフィルムの平面性を非接触で且つ瞬時に検査できるフィルムの平面性検査装置および当該検査装置を使用した平面性検査方法を提供する。
【解決手段】平面性検査装置は、フィルムロール8の外周部を走査する走査装置1と、当該走査装置から得られた信号を処理する演算処理装置5とから成る。走査装置1は、レーザー光を照射する発光部2と、遮られなかったレーザー光を受光する受光部3と、受光した光量Fzに応じて数値化信号を出力する信号変換素子4とを含み、かつ、フィルムロール8に対してその軸線と平行に且つ幅方向に沿って相対的に移動可能に構成される。演算処理装置5は、フィルムロール8の外径値およびそれらの平均値を演算し、各外径値と平均値との差を変位量として演算し、正の最大変位量を抽出する。平面性検査方法においては、正の最大変位量と予め設定された基準値とを比較してフィルムの良否を判別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムの平面性検査装置および平面性検査方法に関し、詳しくは、巻き芯にフィルムを巻き取って成るフィルムロールに適用される装置であって、フィルムロールの状態のままフィルムの平面性を検査するフィルムの平面性検査装置および平面性検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルム表面に対する樹脂の塗布、紙の貼り合わせ等の加工は、フィルムロールから繰り出されたフィルムを走行させながら行われるが、繰り出されたフィルムにたるみが生じている場合、すなわち、平面性(平坦性)が損なわれている場合、例えば、樹脂の塗布においては、均一に塗布できず、ムラやヌケが発生し、また、貼り合わせにおいては、シワが発生する。しかも、これらの不具合に対する調整のため、加工速度が低下し、生産性に影響を来す。従って、フィルム製造工程においては、品質管理の一環として、フィルムの平面性を検査する必要がある。
【0003】
フィルムの平面性を検査する方法としては、例えば、二つのロール間でフィルムを走行させ、一定の張力条件下でフィルム表面に斜め上方から光を照射し、その反射光を像としてスクリーンに映し出し、これを測定者が目視で読み取って平面性を評価する方法、あるいは、水平なフラット板上にフィルムを配置し、所定間隔離れた位置から超音波やレーザー方式の距離計によりフィルムの高さを測定し、測定位置の水平座標とフィルムの高さの情報とから、フィルムの褶曲した表面に沿った長さを算出すると共に、水平面上に投影したフィルムの長さと褶曲表面の実際の長さとを比較することにより、フィルムの平面性を評価する方法が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−27561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、フィルムの平面性を検査する上記の様な方法は、測定者による個人誤差が出易い、測定中は目が離せない、測定速度に限度がある、高速巻取り時には測定できない、測定のためにフィルムロールからフィルムの一部をサンプリングする必要がある、また、それによりフィルムのロスが発生する等の問題がある。更に、フィルムロール自体が製品であるため、全数検査が難しいと言う問題もある。
【0006】
本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、製品としてのフィルムロールに適用される平面性検査装置であって、フィルムロールの状態のままフィルムの平面性を非接触で自動的に且つ瞬時に検査することが出来るフィルムの平面性検査装置、および、当該検査装置を使用したフィルムの平面性検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明では、フィルムロールの外周部に光束の一部が遮られる状態にレーザー光を照射しながら、フィルムロールの外周面を幅方向に走査し、フィルムロール外周面の外径線、すなわち、微小なうねりを表す値として、各測定点において遮られなかったレーザー光の光量を外径値として数値化すると共に、これらの平均値をベースラインとして、各測定点における外径値のベースラインからの変位量(ずれ量)を算出し、変位量が正の最大となる箇所をたるみの最も大きな箇所と見なし、変位量をたるみ量として特定する様にした。これにより、予め設定された基準値と上記の最大の変位量とを比較し、フィルムロールの品質を判別することが出来る。
【0008】
すなわち、本発明の第1の要旨は、フィルムロールの状態でフィルムの平面性を検査する平面性検査装置であって、フィルムロールの外周部をレーザー光により走査する走査装置と、当該走査装置から得られた信号を処理する演算処理装置とから構成され、前記走査装置は、フィルムロールの軸線に直交する方向から当該フィルムロールの外周部にレーザー光をその光束の一部が前記外周部で遮られる状態に照射する発光部と、前記外周部で遮られなかったレーザー光を受光する受光部と、当該受光部で受光したレーザー光の光量に応じて数値化信号を出力する信号変換素子とを含み、かつ、フィルムロールに対してその軸線と平行に且つ幅方向に沿って相対的に移動可能に構成され、前記演算処理装置は、前記走査装置からの信号出力に基づき、フィルムロールの幅方向に沿った各測定点におけるフィルムロールの外径値およびそれらの平均値を演算し、前記各外径値と前記平均値との差を変位量として演算し、正の最大変位量を抽出する機能を備えていることを特徴とするフィルムの平面性検査装置に存する。
【0009】
また、本発明の第2の要旨は、上記の平面性検査装置を使用し、フィルムロールの状態でフィルムの平面性を検査する平面性検査方法であって、走査装置からの信号出力に基づき、フィルムロールの幅方向に沿った各測定点におけるフィルムロールの外径値およびそれらの平均値を演算し、前記各外径値と前記平均値との差を変位量として演算し、正の最大変位量を抽出し、当該最大変位量と予め設定された基準値とを比較してフィルムの良否を判別することを特徴とするフィルムの平面性検査方法に存する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、フィルムロールから繰り出されるフィルムの平面性を製品としてのフィルムロールの状態のまま非接触で自動的に且つ瞬時に定量的に検査できる。従って、フィルムのロスを発生させることがなく且つ全数検査が可能であり、また、測定者の違いによる測定誤差が生じることもない。更に、必要に応じて、フィルムの平面性曲線等を表示装置で表示し、製品であるフィルムロールの平面性を視覚的に管理することも出来る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係るフィルムの平面性検査装置の主要な構成を示す側面図である。
【図2】本発明に係るフィルムの平面性検査装置における走査装置の作動を示す正面図である。
【図3】フィルムロールにおける走査位置としての線状測定対象域を展開して示す斜視図である。
【図4】フィルムロールの外周部の走査で得られる外径線の一例を表示するグラフである。
【図5】フィルムの平面性を表示するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。本発明に係るフィルムの平面性検査装置(以下、「検査装置」と略記する。)は、巻き芯にフィルムを巻き取って成るフィルムロール(以下、「ロール」と略記する。)に適用される装置であり、巻回されたフィルムの平面性をロールの状態で検査可能な装置である。本発明において、平面性とは、フィルムのたるみの状態を指し、検査対象のフィルムとしては、各種のフィルム又はシートを含み、その例としては、プラスチックフィルム、プラスチックシート、光沢紙、金属フォイル等が挙げられる。
【0013】
本発明の検査装置は、図1に示す様に、所定の状態、例えば水平状態に保持されたロール(8)の外周部をレーザー光により走査する走査装置(1)と、当該走査装置から得られた信号を処理する演算処理装置(5)とから主として構成される。ロール(8)は、適宜のロール保持手段(図示省略)によって保持されるが、後述する様に走査装置(1)が可動方式の場合、前記のロール保持手段としては、検査の際に一定の向きで(例えば水平に)且つ静止状態でロール(8)を保持し得る限り、製造工程に備えられた搬送装置や保管装置を利用することが出来る。また、走査装置(1)が固定方式の場合、上記のロール保持手段としては、一定の向きで(例えば水平に)ロール(8)を保持し且つロール(8)の軸線の方向に一定速度で当該ロールを移動可能なコンベヤ等の搬送装置を利用することが出来る。
【0014】
走査装置(1)は、ロール(8)に対してその軸線と平行に且つ幅方向に沿って相対的に移動可能に構成される。例えば、可動方式の走査装置(1)は、走査装置駆動機構(6)に組み込まれることにより、保持されたロール(8)の幅方向に沿って移動可能に構成される。走査装置(1)は、装置構成をシンプルにするために1組だけ設けられてもよいが、測定精度を高めるために図1に例示した様に2組設けられてもよい。
【0015】
具体的には、上記の走査装置駆動機構(6)は、例えば、2つの基台(61)に各立設された支柱(62)の各上端を梁状の横架材(63)で連結して成るアーチ型の枠組(図1参照)から成り、かつ、各基台(61)の底部に車輪が付設されていることにより、直線状に敷設された軌道(7)上を走行自在に構成され、そして、空気圧方式のリニアガイド、シリンダ装置、モーター駆動のベルトやチェーン機構などの駆動手段(図示省略)によって進退可能に構成される。
【0016】
更に、走査装置駆動機構(6)の上記の枠組において、横架材(63)は、長さ調整用の継手部により伸縮自在に構成され、また、軌道(7)は、中央で2分割され且つ長さ調整可能な連結材で連結されたベースにレールを固定して構成されることにより、走査装置(1)は、ロール(8)に対する位置を調節可能になされている。そして、走査装置(1)は、1回の測定においてロール(8)の2つの部位を同時に測定し得る様に、走査装置駆動機構(6)の各支柱(62)に対応して2組配置される。すなわち、ロール(8)を挟んで当該ロールの外周側に位置する様に対称に二組設けられる。
【0017】
各走査装置(1)は、レーザー光でロール(8)の外周面を走査する装置であり、走査装置駆動機構(6)の横架材(63)の支柱(62)近傍に下向きに取り付けられた発光部(2)、当該発光部の鉛直方向に位置する様に上記の走査装置駆動機構(6)の基台(61)上に取り付けられた受光部(3)、および、信号変換用の信号変換素子(4)を備えている。そして、前述の走査装置駆動機構(6)の横架材(63)の長さ調整、軌道(7)の幅調整により、ロール(8)の外径に応じて走査装置(1)の各組の間隔を調整すると共に、ロール(8)の外周部にレーザー光をかすめる状態に照射してロール(8)表面を走査する様になされている。
【0018】
発光部(2)の光源としては、通常、フィルムを透過しない波長の光を照射可能な半導体レーザーダイオードが使用される。発光部(2)から照射されるレーザー光の幅(光束の大きさ)は、後述する線状測定対象域(21)を形成し得る程度以上とされるが、種々のロール(8)の外径に対応し易くするため、殊に、発光部(2)としては、スポット面積のより広い例えば面発光型半導体レーザーが好ましい。
【0019】
上記の発光部(2)は、そのレーザー光の光束の一部がロール(8)によって遮られる様に、当該発光部側から視た場合(平面視した場合)、ロール(8)の外周部の最外郭部、すなわち、最も外側に位置する外径部(接線)に向けてレーザー光を照射可能に配置される。通常、上記の接線付近にレーザー光の光束の中心が位置する様に位置調節される。そして、走査装置(1)の移動に伴い、レーザー光の照射部分がロール(8)の軸線と平行に直線状に移動する様に構成される。
【0020】
換言すれば、図2中に2点鎖線で線状測定対象域(81)として示す様に、走査装置(1)は、走査ポイントがロール(8)の外周面を当該ロールの幅方向に沿って直線移動する様に構成される。図3中の2点鎖線は、ロール(8)からフィルムを繰り出した状態において上記の線状測定対象域(81)を示したものであるが、斯かる線状測定対象域(81)は、発光部(2)からロール(8)表面に照射されたレーザー光の光束のうち、ロール(8)に遮られることなく通過した光とロール(8)表面の接点から成る細長い線状の仮想面域を指す。
【0021】
線状測定対象域(81)は、水平に配置されたロール(8)にレーザー光を上方から垂直に照射する場合、ロール(8)の幅に相当する。通常、ロール(8)の円周方向に沿った線状測定対象域(81)の幅は、数mm程度以下であり、その長さは、ロール(8)の全幅に亙る長さとされるが、目的に応じてロール(8)の幅の一部に限定してもよい。
【0022】
受光部(3)は、光の受光量(光強度)に応じて電流を発生させるフォトダイオード、フォトトランジスタ等の受光素子により構成され、必要に応じて増幅回路が内蔵される。上記の発光部(2)と受光部(3)は、これらの間に遮光物が入ることにより受光素子への入光量が減少し、受光素子からの出力が変化することを捉える透過型フォトセンサの一種であるいわゆる分離型フォトセンサを構成している。
【0023】
信号変換素子(4)は、受光したレーザー光の光量に応じて受光部(3)から出力される電流信号をその大きさに応じて数値化する素子であり、CCDやCMOS等の素子で構成される。信号変換素子(4)は、図示する様に、受光部(3)と別個に設けられてもよいし、また、図示しないが、走査装置(1)において受光部(3)と一体的に設けられてもよい。あるいは、演算処理装置(5)に組み込んで設けられてもよい。通常、上記の線状測定対象域(81)を走査する場合、信号変換素子(4)は、走査装置(1)の移動速度の制御と、別途設けられたコントローラーによる出力制御により、例えば100〜2000点/cmの間隔で測定する様に設定される。
【0024】
更に、図示を省略するが、走査装置(1)には、そのロール(8)の幅方向への移動に伴い、ロール(8)表面の線状測定対象域(81)における走査位置(X軸方向の位置)を検出する位置検出センサーが備えられている。斯かる位置検出センサーとしては、対象物に向けて超音波やレーザー光を照射してその反射時間を測る超音波式やレーザー光式の距離計が使用される。可動方式の走査装置(1)においては、走査装置駆動機構(6)の例えば基台(61)(基準位置)に距離計を装着し、軌道(7)の端部(目標点)に反射板などを配置するか、あるいは、軌道(7)の端部(基準位置)に距離計を配置し、走査装置駆動機構(6)の例えば基台(61)(目標点)に反射板などを装着して、基準位置から目標点までの距離を測定し、線状測定対象域(81)における走査位置を特定する様に構成される。
【0025】
また、図示しないが、走査装置(1)が固定方式の場合、斯かる走査装置(1)は、例えば、前述の図1の態様と同様のアーチ型の枠組をロール(8)の搬送路に相当する床面に直接設置し、その基台および横架材を利用して光源(2)及び受光部(3)を配置して構成され、前述の態様と同様に、ロール(8)を挟んで当該ロールの外周側に位置する様に対称に二組設けられる。また、横架材が伸縮自在に構成され且つ各基台間の離間距離が調節可能に構成されていることにより、各組の走査装置(1)は、ロール(8)に対する位置を調節可能になされている。そして、コンベヤ等の搬送装置を利用したロール保持手段により、例えば水平に保持したロール(8)をその軸線方向に一定速度で移動させながら、前述の態様と同様にロール(8)外周部の線状測定対象域(81)をレーザー光により走査する様になされている。
【0026】
なお、固定方式の走査装置(1)においては、枠組の一部、例えば基台を基準位置として当該基台に前述の様な距離計を設置し、ロール保持手段の一部位を目標点として距離を測定することにより、線状測定対象域(81)における走査位置(X軸方向の位置)を特定することが出来る。
【0027】
上記の様に、走査装置(1)は、ロール(8)の軸線に直交する方向から当該ロールの外周部にレーザー光をその光束の一部がロール外周部で遮られる状態に照射する発光部(2)と、ロール(8)の外周部で遮られなかったレーザー光を受光する受光部(3)と、当該受光部で受光したレーザー光の光量(Fz)(図1参照)に応じて数値化信号を出力する信号変換素子(4)とを備えており、受光部(3)から電流出力される信号を伝送ケーブル(51)によって信号変換素子(4)に送信し、その信号の大きさに応じて信号変換素子(4)でデジタル化し、数値データ(外径値(Z))(図4参照)として伝送ケーブル(52)によって演算処理装置(5)に送信する様に構成されている。そして、本発明の測定装置においては、走査装置(1)から得られる位置データ(X)(図4のX軸の値)と共に、線状測定対象域(81)を走査して得られる数値データを各測定点におけるロール(8)の外径値(Z)として演算処理装置(5)で処理する様になされている(図4参照)。
【0028】
演算処理装置(5)は、通常、データの記憶部、演算部および出力部を備えたコンピュータによって構成される。本発明においては、演算処理装置(5)に所定のプログラムが予め書き込まれていることにより、演算処理装置(5)は、走査装置(1)からの信号出力に基づき、ロール(8)の幅方向に沿った線状測定対象域(81)の各測定点におけるロール(8)の外径値(Z)及びそれらの平均値(Z)を演算し、各外径値(Z)と平均値(Z)との差を変位量(Z),(Z)・・・として演算し(図4参照)、正(プラス)の最大変位量、例えば図4における変位量(Z)を抽出する機能を備えている。
【0029】
なお、図示しないが、本発明においては、走査装置(1)及び走査装置駆動機構(6)の作動を制御する制御部が設けられており、斯かる制御部は、上記のコンピュータで構成されてもよいし、別途設けられるプログラマブルコントローラ等の制御機器で構成されてもよい。
【0030】
次に、上記の演算処理装置(5)の具体的な機能と共に、本発明の検査装置を使用したフィルムの平面性検査方法について説明する。上記の平面性の検査においては、先ず、図1及び図2に示す様に、走査装置駆動機構(6)を駆動させ、ロール保持手段により水平に保持したロール(8)の一端側から他端側へ走査装置(1)を一定速度で移動させながら、ロール(8)の軸線に沿って当該ロールの幅方向にその外周部の各線状測定対象域(81)を走査する。
【0031】
各走査装置(1)においては、発光部(2)がロール(8)の軸線に略直交する方向にレーザー光を照射し、受光部(3)がロール(8)の外周部によって遮られなかったレーザー光を受光する。そして、図1に示す様に、受光部(3)は、各測定点において遮られなかったレーザー光の光量(Fz)に応じて、信号変換素子(4)へ電流信号を出力し、信号変換素子(4)は、信号の大きさに応じてこれをデジタル化し、数値データとして、測定点の位置データ(X軸方向の値)(X)と共に演算処理装置(5)へ出力する。
【0032】
演算処理装置(5)は、走査装置(1)の信号変換素子(4)からの信号出力に基づき、ロール(8)の幅方向(X軸方向)に沿った各測定点におけるロール(8)の外径値(仮想値)、すなわち、線状測定対象域(81)の外径値(Z)を演算し、図4に示す様なロール(8)の外径曲線(R)を作成する。図4は、測定結果としての外径値(Z)から外径曲線(R)を作成して表示装置に出力したものである。また、同時に、各測定点における外径値(Z)の平均値をベースライン(Z)として演算する。次いで、各測定点における外径値(Z)とベースライン(平均値)(Z)との差を演算する。すなわち、ベースライン(Z)を基準としたときの当該ベースラインからの各外径値(Z)の変位量(Z),(Z),(Z)・・・を算出する。
【0033】
上記のベースライン(Z)は外径値(Z)の平均値であるから、これを完全に平坦なフィルムから成るロール(8)の外周面ラインと仮定すると、ベースライン(Z)からの変位はロール(8)外周面のうねりによるもの考えられる。そして、平面性の損なわれたたるみ部分を有するフィルムが巻き取られた場合、実際、たるみ部分が膨らみとしてロール(8)の外周面に現れる。
【0034】
そこで、たるみ部分が影響している可能性のある部位のデータとして、各外径値(Z)の中のプラス側の値(図4において変位量(Z),(Z),(Z)で示す部分)を選択する。そして、品質管理において良否の判別を自動的に行うため、例えば図5に示す様に、選択したプラス側の変位量(Z),(Z),(Z)を負(マイナス)の変位量(Y)に変換し、平面性がどの程度損なわれているかを凹部で示す。図5の曲線は、たるみ部分が影響している部位の外径線だけを負の変位として表示装置に出力した平面性曲線である。
【0035】
すなわち、本発明では、各測定点における外径値(Z)(測定値)のベースライン(Z)からの変位量(ずれ量)(Z),(Z),(Z)・・・を算出し、これらの変位量が正(プラス)の最大となる箇所を最も大きなたるみ箇所と見なし、その変位量、例えば図4中の変位量(Z)をたるみ量として特定する。品質管理上は最大のたるみ点を管理すればよいから、上記の様に、プラスの変位量(Z)をマイナス側の変位量(Y)に変換し(図5参照)、最も低い凹部、すなわち、Y値の最小の点をたるみ点(P)として抽出する。
【0036】
これにより、予め設定された基準値と上記の最大の変位量(Y)とを比較し、フィルムの平面正の良否を判別することが出来る。換言すれば、たるみ点(P)の変位量(Y)は、フィルムの平面性を示す代替特性となり、変位量(Y)の許容値は、目的とする用途毎に適宜設定し、製品の平面性の管理項目として利用することが出来る。
【0037】
上記の様に、本発明においては、ロール(8)の外周部に光束の一部が遮られる状態にレーザー光を照射しながら、ロール(8)の外周面を幅方向に走査し、ロール(8)外周面の外径線(微小なうねり)を表す値として、各測定点において遮られなかったレーザー光の光量(Fz)を外径値(Z)として数値化すると共に、これらの平均値をベースライン(Z)として、各測定点における外径値(Z)のベースライン(Z)からの変位量(Z),(Z),(Z)・・・を算出し、これら変位量が正の最大となる箇所をたるみの最も大きな箇所と見なし、その変位量(Z)をたるみ量として特定する。
【0038】
従って、本発明によれば、ロール(8)から繰り出されるフィルムの平面性を製品としてのロール(8)の状態のまま非接触で自動的に且つ瞬時に定量的に検査できる。そして、本発明によれば、フィルムのロスを発生させることがなく且つ全数検査が可能であり、また、測定者の違いによる測定誤差が生じることもない。更に、必要に応じて、フィルムの平面性曲線等を表示装置で表示し、製品であるロール(8)の平面性を視覚的に管理することも出来る。
【0039】
また、本発明において、演算処理装置(5)は、正の最大変位量、例えば図4に示す変位量(Z)と予め設定された基準値(閾値)とを比較し、あるいは、変換された負の最大変位量、例えば図5に示す変位量(Y)と予め設定された基準値(閾値)とを比較し、変位量(Z)が基準値を超えた場合、あるいは、変位量(Y)が基準値よりも小さい場合に不良と判別する機能を備えていてもよい。
【0040】
なお、本発明においては、上記の様に走査装置(1)が2組設けられている場合、各組の測定点のデータを並列的に取り扱って演算処理し、1つのたるみ量を抽出する様にしてもよいし、あるいは、各組毎に前述の演算処理を行い、得られた各最大変位量(正の最大変位量(Z)又はたるみ点(P)の変位量(Y))を比較、選択して、最終的なたるみ量を判別してもよい。また、上記の様に、走査装置(1)が2組設けられている場合には、例えば、各受光部(3)の設置位置を予め設定することにより、ロール(8)の実際の直径を正確に測定でき、標準直径(規格値)からの正確なずれ量として前述の変位量(Z),(Z),(Z)・・・を特定することが出来る。
【0041】
更に、演算処理装置(5)における上記の様な演算においては、測定データである外径値(Z)をマトリックスとして保持するため、ロール(8)の外径曲線(R)、ベースライン(Z)、平面性曲線およびたるみ点(P)を必ずしも表示したり出力する必要はないが、管理を容易にするため、測定の際、表示装置やプリンター等の出力装置へ並行して出力するのが好ましい。また、平面性曲線を出力する場合には、ロール(8)(試料)の違いやたるみ点(P)の変位量の大きさに対応させて色彩または明るさを変えて表示可能に構成されているのが好ましい。
【符号の説明】
【0042】
1 :走査装置
2 :発光部
3 :受光部
4 :信号変換素子
5 :演算処理装置
6 :走査装置駆動機構
7 :軌道
8 :フィルムロール
81:線状測定対象域
Fz:遮られなかった光量
P :たるみ点
R :外径曲線
X :フィルムロールの幅方向の測定点
Y :負の変位量(たるみ量)
Z :外径値
,Z,Z:変位量
:ベースライン(平均値)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムロールの状態でフィルムの平面性を検査する平面性検査装置であって、フィルムロールの外周部をレーザー光により走査する走査装置と、当該走査装置から得られた信号を処理する演算処理装置とから構成され、前記走査装置は、フィルムロールの軸線に直交する方向から当該フィルムロールの外周部にレーザー光をその光束の一部が前記外周部で遮られる状態に照射する発光部と、前記外周部で遮られなかったレーザー光を受光する受光部と、当該受光部で受光したレーザー光の光量に応じて数値化信号を出力する信号変換素子とを含み、かつ、フィルムロールに対してその軸線と平行に且つ幅方向に沿って相対的に移動可能に構成され、前記演算処理装置は、前記走査装置からの信号出力に基づき、フィルムロールの幅方向に沿った各測定点におけるフィルムロールの外径値およびそれらの平均値を演算し、前記各外径値と前記平均値との差を変位量として演算し、正の最大変位量を抽出する機能を備えていることを特徴とするフィルムの平面性検査装置。
【請求項2】
正の最大変位量と予め設定された基準値とを比較し、前記最大変位量が前記基準値を超えた場合に不良と判別する機能を備えている請求項1に記載のフィルムの平面性検査装置。
【請求項3】
走査装置は、フィルムロールを挟んで当該フィルムロールの外周側に位置する様に対称に二組設けられている請求項1又は2に記載のフィルムの平面性検査装置。
【請求項4】
請求項1に記載の平面性検査装置を使用し、フィルムロールの状態でフィルムの平面性を検査する平面性検査方法であって、走査装置からの信号出力に基づき、フィルムロールの幅方向に沿った各測定点におけるフィルムロールの外径値およびそれらの平均値を演算し、前記各外径値と前記平均値との差を変位量として演算し、正の最大変位量を抽出し、当該最大変位量と予め設定された基準値とを比較してフィルムの良否を判別することを特徴とするフィルムの平面性検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−185763(P2010−185763A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−29795(P2009−29795)
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】