説明

ブラシレスモータ用制御装置およびそれを備えた洗濯機

【課題】簡単、安価な構成および簡単な演算での回転位置センサの取付誤差を補正して、振動、騒音を低減できるブラシレスモータ用制御装置およびそれを備えた洗濯機を提供する。
【解決手段】ブラシレスモータ用制御装置5は、ホールセンサ55u,55v,55wの出力に基づいて、複数のホールセンサ55u,55v,55wの複数の間隔データを得ると共に、複数の間隔データの平均値を求める誤差検出部80とを備える。上記複数の間隔データおよび平均値はセンサ誤差メモリ部65に記憶される。センサ誤差補正部66は、上記間隔データおよび平均値に基づいて、ホールセンサ55u,55v,55wの間隔のズレを補正する。これにより、角速度推定部67は、ホールセンサ55u,55v,55wの間隔のズレを補正した結果を示す信号に基づいて、ブラシレスモータ4のロータの回転速度を正確に求めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラシレスモータ用制御装置およびそれを備えた洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ブラシレスモータ用制御装置としては、特開2008−312389号公報(特許文献1)に開示されたものがある。このブラシレスモータ用制御装置は、ブラシレスモータと、このブラシレスモータを駆動するためのインバータ回路とを備えている。
【0003】
上記ブラシレスモータは、3相巻線を有する固定子と、この固定子内に、固定子と隙間を空けて回転可能に配置された回転子とを備えている。この回転子の外周部には、周方向において磁極が交互になるように複数のマグネットを設けている。また、上記ブラシレスモータは磁極検出素子を含む回転子位置センサを搭載しており、この回転子位置センサが回転子の位置を磁極で検出する。
【0004】
このような構成のブラシレスモータ用制御装置では、3相巻線の誘起電圧の零クロス点の電気角と、回転位置センサからの基準位置信号との誤差を時間で測定して、この時間を電気角度に換算する。この電気角度を用いて上記基準位置信号の補正を補正することにより、ブラシレスモータの振動、騒音を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−312389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来のブラシレスモータ用制御装置では、3相巻線の誘起電圧の零クロス点の電気角と、各相の回転位置センサからの位置信号の電気解との誤差を時間で測定して、この時間から求めた電気角度に基づいて、基準位置信号を補正しているため、誘起電圧の検出回路、誘起電圧の零クロス点の検出回路、電気角度の算出回路が必要であって、制御が煩雑かつ高価になるという問題があった。
【0007】
そこで、本発明の課題は、簡単、安価な構成および簡単な演算での回転位置センサの取付誤差を補正して、振動、騒音を低減できるブラシレスモータ用制御装置およびそれを備えた洗濯機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明のブラシレスモータ用制御装置は、
ブラシレスモータのロータの回転位置を検出するための複数の回転位置センサと、
上記複数の回転位置センサの出力に基づいて、上記複数の回転位置センサの複数の間隔データを得る間隔データ取得手段と、
上記複数の間隔データを記憶するメモリと、
上記間隔データと基準の間隔データとに基づいて、上記回転位置センサの間隔のズレを補正して上記ロータの回転速度を求める回転速度算出手段と
を備えることを特徴としている。
【0009】
上記構成によれば、上記間隔データ取得手段は、複数の回転位置センサの出力に基づいて、複数の回転位置センサの複数の間隔データを得る。この複数の間隔データはメモリに記憶されて、この間隔データと基準の間隔データとに基づいて、回転速度算出手段が、回転位置センサの間隔のズレを補正してロータの回転速度を求める。
【0010】
したがって、トルクを大きくするために、極対数を多くして電気角に対する寸法が極めて小さくなって、上記回転位置センサを所望位置に精度高く取り付けることができなくて、回転位置センサ同士の間隔にズレが生じていても、回転速度算出手段は、上記間隔データと基準の間隔データとに基づいて、回転位置センサ間の間隔データのズレを補正するので、ロータの電気角および回転速度を簡単かつ正確に求めることができる。このように、誘起電圧の検出回路、誘起電圧の零クロス点の検出回路、偏差の算出回路などを必要としない簡単安価な構成で、回転位置センサ間の間隔データのズレを補正して、ブラシレスモータの振動、騒音を低減できる。
【0011】
一実施形態のブラシレスモータ用制御装置では、
上記複数の間隔データの平均値を求める平均値算出手段を備え、
上記基準の間隔データは、上記平均値算出手段が求める上記複数の間隔データの平均値であり、
上記平均値算出手段は上記回転位置センサの上記ロータの極対数分以上の間隔データの平均値を算出する。
【0012】
上記実施形態によれば、上記基準の間隔データは、平均値算出手段が求める複数の間隔データの平均値であるので、回転速度算出手段は、間隔データと基準の間隔データとに基づいて、回転位置センサ間の間隔データのズレを確実に補正することができる。
【0013】
また、上記平均値算出手段が回転位置センサのロータの極対数分以上の間隔データの平均値を算出するので、平均値の信頼性が高くなる。したがって、上記回転速度算出手段はロータの回転速度をより正確に求めることができる。
【0014】
一実施形態のブラシレスモータ用制御装置では、
上記速度算出手段は、上記平均値と上記間隔データの比に基づいて、上記回転位置センサの間隔のズレを補正して速度を算出する。
【0015】
上記実施形態によれば、上記速度算出手段は、上記平均値と上記間隔データの比に基づいて、上記回転位置センサの間隔のズレを補正して速度を算出するので、簡単な演算で間隔のズレを補正できる。
【0016】
一実施形態のブラシレスモータ用制御装置では、
上記間隔データ取得手段は、上記ロータを一定速度で回転させているときの上記回転位置センサの出力に基づいて上記間隔データを取得する。
【0017】
上記実施形態によれば、上記間隔データ取得手段は、ロータを一定速度で回転させているときの回転位置センサの出力に基づいて間隔データを取得するので、間隔データ取得手段が取得する間隔データの信頼性を高めることができる。
【0018】
このロータを一定速で回転させるのは、ブラシレスモータの外部から強制的に一定速で回転させてもよく、あるいは、このブラシレスモータ自体の機能で回転させてもよい。
【0019】
本発明の洗濯機は、
本発明のブラシレスモータ用制御装置を備えたことを特徴としている。
【0020】
上記構成によれば、上記ブラシレスモータ用制御装置を備えるので、簡単安価な構成でブラシレスモータによる振動および騒音を低減できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明のブラシレスモータ用制御装置は、回転位置センサ間の間隔のズレに基づいて、回転位置センサ間の間隔のズレに基づいて、回転位置センサの出力を補正するので、簡単安価な構成で、ブラシレスモータの振動、騒音を低減できる。
【0022】
本発明の洗濯機は、極対数を多くして高トルクにしても、簡単安価な構成で振動および騒音を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は本発明の一実施形態のドラム式洗濯乾燥機の概略斜視図である。
【図2】図2は上記ドラム式洗濯乾燥機の概略断面図である。
【図3】図3は上記ドラム式洗濯乾燥機のブラシレスモータの概略背面図である。
【図4】図4は図3のIV−IV線矢視の概略断面図である。
【図5】図5は上記ブラシレスモータの模式断面図である。
【図6】図6は上記ドラム式洗濯乾燥機のモータ制御装置の構成を示すブロック図である。
【図7】図7は上記ドラム式洗濯乾燥機のホールセンサの検出信号を示す図である。
【図8】図8は上記ドラム式洗濯乾燥機の要部を説明するためのブロック図である。
【図9】図9は上記ドラム式洗濯乾燥機のホールセンサの検出信号を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明のブラシレスモータ用制御装置および洗濯機を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態のドラム式洗濯乾燥機を斜め上方から見た概略図である。
【0026】
上記ドラム式洗濯乾燥機は、外箱開口部6を前面部に有する外箱1を備えている。外箱1の前面部には、外箱開口部6を閉鎖するためのドア7をヒンジで左右方向に回動可能に取り付けている。外箱開口部6をドア7で閉鎖しているときに、ドア開ボタン8を押すと、図示しない付勢部材の付勢力によって、ドア7が少し開くようになっている。また、外箱1の上部には、操作キーや表示部を有する操作部9を設けている。この操作部9の裏側(外箱1の内部側)には、ドラム式洗濯乾燥機の動作を制御する制御装置11(図2参照)を配置している。この制御装置11は、図5に示すブラシレスモータ用制御装置5を備えている。
【0027】
図2は、上記ドラム式洗濯乾燥機を側方から見た概略断面図である。
【0028】
上記ドラム式洗濯乾燥機は、外箱1内に配置された有底筒形状の水槽2と、この水槽2内に回転可能に配置され、洗濯物を収容する有底円筒形状のドラム3と、水槽2の後部に取り付けられ、ドラム3を回転駆動するブラシレスモータ4と、水槽2の後部を弾性支持する2本のダンパ12(図2では1本のみ図示)とを備えている。なお、ドラム3は回転槽の一例である。
【0029】
上記外箱1の上面部の後部には給水口10を設けている。この給水口10は、図示しない給水ホースを介して水道の蛇口に接続される。また、給水口10を外箱1内で給水弁13の注入口に接続している。これにより、水道水が、給水ダクト15と、図示を省略した洗剤ケースとを経由して、水槽2の上部から水槽2内に流入したり、あるいは、冷却水ダクト14を流れて、水槽2の下部から水槽2内に流入したりすることが可能になっている。
【0030】
上記水槽2の前面部には、斜め上方を向いて外箱開口部6に対向する水槽開口部16を設けている。この水槽開口部16の開口縁は、筒状の接続部材17を介して外箱開口部6の開口縁に接続されている。また、水槽開口部16の開口縁には、ゴムや軟質樹脂等の弾性体から成るパッキン18を固着している。これにより、ドア7を閉じると、ドア7がパッキン18に密着して、水槽2内の液体が水槽2外へ漏れ出るのを防げるようになっている。また、排水モータ23が排水弁22を開放すると、水槽2内の液体は、排水ダクト19、接続ケース20および排水ホース21を順次流れて外箱1外へ流れる。また、排水弁22を閉鎖した状態で循環ポンプ24を駆動すると、水槽2内の液体を水槽2外に出して、排水ダクト19および循環ダクト25を介して水槽2内に戻せるようになっている。また、接続ケース20は糸屑フィルタ70を収容している。
【0031】
上記ドラム3は前側に対して後側が下がるように水平方向に対して傾斜するように配置されている。また、ドラム3の前面部には、外箱開口部6および水槽開口部16に対向するドラム開口部26を設けている。また、ドラム3の周壁には複数の小孔27(図2では6個のみ図示)を全周にわたって設けている。また、ドラム3の周壁の内面には、半径方向内側に向かって突出する複数のバッフル28(図2では1個のみ図示)を設けている。また、ドラム3のドラム開口部26には液体バランサ29を取り付けている。
【0032】
また、上記ドラム式洗濯乾燥機は、洗濯物を乾燥させるために、金属性の冷却板30と、送風機33と、ヒータ34とを備えている。乾燥運転時、冷却板30の周辺の空気が、水槽2の後面部(底部)の下部の導出口31から水槽2外に出た後、導出ダクト32、送風機33、ヒータ34および導入ダクト35を順次流れて、ドラム3の後面部の環状の導入孔36からドラム3内に吹き出る。なお、37はエアフィルタである。
【0033】
また、上記導入ダクト35には、銀イオン水を噴出するノズル38を取り付けている。このノズル38には、冷却水ダクト14の上端部から分岐した分岐ダクト39の下端部を接続している。また、分岐ダクト39内の水道水は銀イオン溶出装置40を経由して銀イオン水となる。また、分岐ダクト39の下端部には逆止弁41を設けて、銀イオン水が逆流しないようにしている。
【0034】
上記ダンパ12は、オイルが封入されたシリンダ部42と、上端部がシリンダ部42内に入ったピストンロッド43とを有している。このピストンロッド43の下端部は、弾性材からなるダンパブッシュ44を介してダンパ支持金具45に取り付けられている。
【0035】
図3は、上記ブラシレスモータ4を後側から見た概略図である。また、図4は、図3のIV−IV線に沿って切った概略断面図である。なお、図3では、ブラシレスモータ4の内部構造を判り易くするため、ブラシレスモータ4の一部を破断した状態を示している。
【0036】
上記ブラシレスモータ4は、図3,図4に示すように、モータケース46と、このモータケース46内に回転可能に配置されたロータ47と、このロータ47を取り囲むステータ48と、ロータ47と一体に回転するシャフト49とを有している。
【0037】
上記モータケース46は、前側モータケース51と、この前側モータケース51に複数のボルト53,53,…で固定された後側モータケース52とから成っている。また、前側モータケース51には複数のボルト71(図3での図示は省略、図4では1つのみ図示)でステータ48を固定している。
【0038】
上記ロータ47の外周縁部には、周方向に所定の間隔をあけて複数(例えば20個)の永久磁石50,50,…を取り付けている。この複数の永久磁石50,50,…により、S極の磁極エリアとN極の磁極エリアとが周方向に沿って交互に形成される。
【0039】
上記ステータ48の内周縁部には、周方向に所定の間隔をあけて複数のコイル部54,54,…を設けている。また、ステータ48の下部には、回転位置センサの一例としてのホールセンサ55u,55v,55wを搭載したホルダ59を複数のネジ60,60で固定している。ホールセンサ55u,55v,55wは、ロータ47の回転位置を検出すると共に、ロータ47の回転位置を示す検出信号Hu,Hv,Hwを出力する。なお、上記検出信号HuはU相のコイル部54に対応する信号であり、また、検出信号HvはV相のコイル部54に対応する信号であり、また、検出信号HwはW相のコイル部54に対応する信号である。
【0040】
上記シャフト49は、前側モータケース51に取り付けられた前側ベアリング56と、後側モータケース52に取り付けられた後側ベアリング57とで回転可能に支持されている。また、シャフト49の前端部は連結ブラケット58を介してドラム3の後端面(底部外面)に固定されている(図2参照)。これにより、シャフト49が回転すると、ドラム3がシャフト49と一体に回転する。
【0041】
図5は、上記ブラシレスモータ4を回転軸方向から見た模式断面図である。
【0042】
上記ホールセンサ55u,55v,55wは、周方向に予め設定された間隔をあけて配置されている。この間隔は検出信号Hu,Hv,Hwから検出できる。
【0043】
図6は、上記ブラシレスモータ4の回転をベクトル制御するブラシレスモータ用制御装置5の構成を示すブロック図である。
【0044】
上記ブラシレスモータ用制御装置5は、電流指令生成部61と、ベクトル演算部62と、d−q/UVW変換部63と、インバータ64と、メモリの一例としてのセンサ誤差メモリ部65と、回転速度算出手段の一例としてのセンサ誤差補正部66と、回転速度算出手段の一例としての角速度推定部67と、角度推定部68と、間隔データ取得手段および平均値算出手段の一例としての誤差検出部80とを有している。
【0045】
上記電流指令生成部61には角速度偏差Δωが入力される。これに応じて、電流指令生成部61は、角速度偏差Δωに基づき、d軸指令電流Id,q軸指令電流Iqを生成してベクトル演算部62へ出力する。なお、上記角速度偏差Δωは、目標角速度である指令角速度ωと、角速度推定部67が演算した推定角速度ωとの差である。
【0046】
上記ベクトル演算部62は、電流指令生成部61からのd軸指令電流Id,q軸指令電流Iqと、角度推定部68からの推定電気角θとを用いて、ベクトル演算する。そして、上記ベクトル演算の結果は、d−q座標系で表されたd軸指令電圧Vd,q軸指令電圧Vqとしてd−q/UVW変換部63に出力される。ここで、d軸指令電流Idは、永久磁石50,50,…による磁束の方向における指令電流であり、q軸指令電流Iqは永久磁石50,50,…による磁束の方向と直交する方向における指令電流である。また、d−q座標系は、ロータ47と共に回転する回転座標系である。また、d軸指令電圧Vdは、永久磁石50,50,…による磁束の方向における指令電圧であり、q軸指令電圧Vqは永久磁石50,50,…による磁束の方向と直交する方向における指令電圧である。
【0047】
上記d−q/UVW変換部63は、ベクトル演算部62からのd軸指令電圧Vd,q軸指令電圧VqをU相指令電圧Vu,V相指令電圧Vv,W相指令電圧Vwに変換してインバータ64へ出力する。
【0048】
上記インバータ64は、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)から成るスイッチング素子を複数有し、図示しない直流電源回路から直流電圧の供給を受けるようになっている。また、インバータ64は、U相指令電圧Vu,V相指令電圧Vv,W相指令電圧Vwに基づいて、スイッチング素子を制御する。これにより、U相指令電圧Vu,V相指令電圧Vv,W相指令電圧Vwに対応する三相交流電圧がブラシレスモータ4のコイル部54,54,…に印加される。
【0049】
上記センサ誤差補正部66には、ホールセンサ55u,55v,55wからの検出信号Hu,Hv,Hwが入力される。これにより、センサ誤差補正部66は、センサ誤差メモリ部65に記憶された間隔時間ΔTn(n=0,1,…,5)および平均値ΔTaveに基づいて、ホールセンサ55u,55v,55wの間隔のズレを補正する。具体的には、検出信号Hu,Hv,Hwのエッジ間の時間Δtを補正する。なお、間隔時間ΔTnは間隔データの一例である。
【0050】
上記間隔時間ΔTnおよび平均値ΔTaveは、ドラム式洗濯乾燥機の組立工程でセンサ誤差メモリ部65に記憶させたものである。より詳しくは、ドラム式洗濯乾燥機の組立工程において、ブラシレスモータ4でドラム3を回転駆動できるようにした後、図示しない回転駆動装置で空のドラム3を一定速で回転させて、ホールセンサ55u,55v,55wの検出信号Hu,Hv,Hwを誤差検出部80に入力する。これにより、誤差検出部80は、図7に示す間隔時間ΔTnを得ると共に、間隔時間ΔTnの平均値ΔTaveを求める。そして、上記センサ誤差メモリ部65が間隔時間ΔTnおよび平均値ΔTaveを記憶する。このとき、0度〜60度のエッジ間の時間が間隔時間ΔT1として、60度〜120度のエッジ間の時間が間隔時間ΔT2として、120度〜180度のエッジ間の時間が間隔時間ΔT3として、180度〜240度のエッジ間の時間が間隔時間ΔT4として、300度〜360度のエッジ間の時間が間隔時間ΔT5としてセンサ誤差メモリ部65に記憶される。なお、図6の点線矢印は、ドラム式洗濯乾燥機の組立工程のみで起こる信号の流れであることを示している。
【0051】
上記角速度推定部67は、センサ誤差補正部66からの検出信号Hu,Hv,Hwのエッジ間の時間Δtの補正後の値に基づいて、推定角速度ωを求める。すなわち、上記角速度推定部67は、下記式を使っていることになる。ここで、ΔTnはΔtに対応する区間の時間である。例えば、Δtが180度〜240度のエッジ間の時間であれば、ΔTnはΔT4である。

Pn:永久磁石50,50,…の極対数
Δt:検出信号Hu,Hv,Hwのエッジ間の時間
上記角度推定部68は、角速度推定部67からの推定角速度ωから推定電気角θを求めてベクトル演算部62へ出力する。
【0052】
また、上記ドラム式洗濯乾燥機は、図8に示すように、角速度推定部67が演算した推定角速度ωが入力可能なセンシングデータ取得部69を備えている。このセンシングデータ取得部69は、速度推定部からの推定角速度に基づいて、ドラム3内の洗濯物量を検出したり、ドラム3のバランスを検出する。なお、Tmは、電流指令生成部61に入力される指令トルクである。
【0053】
上記構成のドラム式洗濯乾燥機によれば、ブラシレスモータ4のトルクを大きくするために、永久磁石50,50,…の極対数を多くしてホールセンサ55u,55v,55wの取付誤差の許容範囲が小さくなって、ホールセンサ55u,55v,55wを所望位置に精度高く取り付けることができなくて、ホールセンサ55u,55v,55w同士の間隔にズレが生じていても、センサ誤差補正部66が検出信号Hu,Hv,Hwのエッジ間の時間Δtのズレを補正するので、推定電気角θおよび推定角速度ωを簡単かつ正確に求めることができる。このように、誘起電圧の検出回路、誘起電圧の零クロス点の検出回路、偏差の算出回路などを必要としない簡単安価な構成で、検出信号Hu,Hv,Hwのエッジ間の時間Δtのズレを補正して、ブラシレスモータ4の振動、騒音を低減できる。
【0054】
また、上記センサ誤差補正部66は、平均値ΔTaveと間隔時間ΔTnの比に基づいて、ホールセンサ55u,55v,55wの間隔のズレを補正するので、簡単な演算で間隔のズレを補正できる。
【0055】
また、上記誤差検出部80は、ロータ47を一定速度で回転させているときのホールセンサ55u,55v,55wの検出信号Hu,Hv,Hwに基づいて、間隔時間ΔTnを取得するので、誤差検出部80が取得する間隔時間ΔTnの信頼性を高めることができる。
【0056】
また、上記ドラム式洗濯乾燥機は、ブラシレスモータ用制御装置5でブラシレスモータ4を制御することにより、簡単安価な構成で例えば脱水運転を低振動、低騒音にできる。
【0057】
また、上記ドラム式洗濯乾燥機は、ドラム3内の洗濯物量を検出するためのセンシングや、ドラム3のバランスを検出するセンシングに、角速度推定部67による推定角速度ωを利用できる。より詳しくは、上述のセンシングを行うときに、センシングデータ取得部69に推定角速度ωを入力することにより、ドラム3内の洗濯物量を正確に検出できると共に、ドラム3のバランスの誤検出を低減することができる。
【0058】
上記実施形態では、センサ誤差補正部66が、間隔時間ΔTnおよび平均値ΔTaveに基づいて、ホールセンサ55u,55v,55wの間隔のズレを補正していたが、間隔時間ΔTnと、例えば予め求めたシミュレーション値とに基づいて、ホールセンサ55u,55v,55wの間隔のズレを補正してもよい。あるいは、上記間隔時間ΔTnと、予め定めた基準値とを比較して、間隔時間ΔTnが上記基準値以上であれば、予め定めた第1補正パターンでホールセンサ55u,55v,55wの間隔のズレを補正するようにする一方、間隔時間ΔTnが上記基準値未満であれば、予め定めた第2補正パターンでホールセンサ55u,55v,55wの間隔のズレを補正するようにしてもよい。ここで、上記第2補正パターンは第1補正パターンとは異なるパターンである。
【0059】
上記実施形態では、ドラム式洗濯乾燥機の組立工程において、ブラシレスモータ4でドラム3を回転駆動できるようにした後、図示しない回転駆動装置で空のドラム3を一定速で回転させて、ホールセンサ55u,55v,55wの検出信号Hu,Hv,Hwを誤差検出部80に入力するようにしていたが、ブラシレスモータ4で空のドラム3を一定速で回転させて、ホールセンサ55u,55v,55wの検出信号Hu,Hv,Hwを誤差検出部80に入力するようにしてもよい。
【0060】
上記実施形態では、誤差検出部80は、間隔時間ΔT1、ΔT2、ΔT3、ΔT4、ΔT5およびΔT6の平均値ΔTaveを求めていたが、7個以上の間隔時間の平均値を求めてもよい。誤差検出部80が永久磁石50,50の極対数分以上の間隔時間の平均値を求めた場合、この平均値の信頼性は高いので好ましい。
【0061】
上記実施形態では、導入ダクト35内に、銀イオンを含む水を供給できるようにしていたが、導入ダクト35内に、銀イオン以外の抗菌作用を有する金属イオンを含む水を供給できるようにしてもよい。
【0062】
上記実施形態では、誤差検出部80が、ホールセンサ55u,55v,55wの出力に基づいて、図7に示す間隔時間ΔTnおよびこの平均値ΔTaveを求めて、ホールセンサ55u,55v,55wの間隔のズレの補正に用いていたが、図9に示す間隔時間ΔT’nおよびこの平均値ΔT’aveを求めて、ホールセンサ55u,55v,55wの間隔のズレの補正に用いてもよい。
【0063】
また、上記ホールセンサ55u,55v,55wのうちの2つのセンサの検出信号を加算して、簡単な方法で、位相の遅れを振幅によって求めてもよい。
【0064】
本発明のブラシレスモータ用制御装置は、インナーロータ型ブラシレスモータであっても、アウターロータ型ブラシレスモータであっても制御でき、また、乾燥機能を有さないドラム式洗濯機、ドラム式洗濯乾燥機、乾燥機能を有さない縦型洗濯機、縦型洗濯乾燥機にも用いることができる。
【0065】
また、本発明のブラシレスモータ用制御装置は、洗濯機のみならず、例えば工作機械や電動パワーステアリング装置などといった様々機器に用いることができる。
【符号の説明】
【0066】
1…外箱
2…水槽
3…ドラム
4…ブラシレスモータ
5…ブラシレスモータ用制御装置
47…ロータ
55u,55v,55w…ホールセンサ
61…電流指令生成部
62…ベクトル演算部
63…d−q/UVW変換部
64…インバータ
65…センサ誤差メモリ部
66…センサ誤差補正部
67…角速度推定部
80…誤差検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラシレスモータのロータの回転位置を検出するための複数の回転位置センサと、
上記複数の回転位置センサの出力に基づいて、上記複数の回転位置センサの複数の間隔データを得る間隔データ取得手段と、
上記複数の間隔データを記憶するメモリと、
上記間隔データと基準の間隔データとに基づいて、上記回転位置センサの間隔のズレを補正して上記ロータの回転速度を求める回転速度算出手段と
を備えることを特徴とするブラシレスモータ用制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のブラシレスモータ用制御装置において、
上記複数の間隔データの平均値を求める平均値算出手段を備え、
上記基準の間隔データは、上記平均値算出手段が求める上記複数の間隔データの平均値であり、
上記平均値算出手段は上記回転位置センサの上記ロータの極対数分以上の間隔データの平均値を算出することを特徴とするブラシレスモータ用制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のブラシレスモータ用制御装置において、
上記速度算出手段は、上記平均値と上記間隔データの比に基づいて、上記回転位置センサの間隔のズレを補正して速度を算出することを特徴とするブラシレスモータ用制御装置。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか一項に記載のブラシレスモータ用制御装置において、
上記間隔データ取得手段は、上記ロータを一定速度で回転させているときの上記回転位置センサの出力に基づいて上記間隔データを取得することを特徴とするブラシレスモータ用制御装置。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか一項に記載のブラシレスモータ用制御装置を備えたことを特徴とする洗濯機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−85418(P2013−85418A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224694(P2011−224694)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】