説明

プラズマ処理チャンバ用のサセプタ

【課題】プラズマ処理装置用サセプタの設計を改良し、安定的なプラズマの維持及び均一な膜の堆積を可能にするサセプタを提供する。
【解決手段】プラズマ処理装置用真空処理チャンバは、本体100と、本体の天井に設けられたシャワーヘッド125と、チャンバボディの内部に設けられた台140と、台に結合されたサセプタ135とを備えている。サセプタは、グラファイト本体を有し、グラファイト本体は少なくとも1つの基板を支持するための上面を有している。該上面は、例えばプラズマ噴霧された酸化アルミニウムコーティングなどの誘電体のコーティングを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、真空処理チャンバ、例えば化学蒸着(CVD)、プラズマCVD(PECVD)、物理蒸着(PVD)等に使用されるチャンバに関する。本発明は特に処理チャンバ内の基板を支持するためのサセプタに関する。
【背景技術】
【0002】
真空処理チャンバ、例えばプラズマ処理チャンバすなわちPECVDは、RFパワーを用いてプラズマを励起し維持する。
【0003】
RFパワーが、電極やアンテナなどを介してチャンバに与えられる。チャンバの設計においては、サセプタが、プラズマ処理の間に基板を支持するという機能に加え電極の1つとして用いられることがある。現存する設計のほとんどにおいて、サセプタは温度制御される。サセプタの性質は、導電性を有し、処理温度において熱的に安定であることが必要である。したがって、可能性のある物質の1つはグラファイトである。
【0004】
しかし、グラファイトの使用はプラズマの安定性およびフィルム厚さの不均一性の観点から問題を生じさせる。加えて、サセプタはチャンバ洗浄工程の間にエッチングされやすい。チャンバ洗浄工程は、通常サセプタ上に基板を載置することなくプラズマ励起を用いる。すなわち、サセプタがプラズマに晒される。
【発明の概要】
【0005】
下記の開示の要約は、本発明のいくつかの観点及び特徴の基礎的な理解を与えることを意図したものである。この要約は、本発明の全体的な概観ではなく、それ自体として本発明の重要または不可欠な構成要素を特定するものでもなく、発明の範囲を表現したものでもない。この要約の唯一の目的は、後に示されるより詳細な記述の前置きとして、本発明のいくつかの概念を単純化された形式で提示することである。
【0006】
本発明の実施の形態はサセプタの設計を改良したものであり、安定的なプラズマの維持及び均一な膜の堆積を可能にするサセプタを提供するものである。本明細書に開示されるいくつかの例は、太陽光セルの組み立てのためのプラズマ処理チャンバに関連する。
【0007】
より詳しくは、太陽光セルの組み立てにおいてARC(反射防止膜)を塗布する場合、グラファイトサセプタが接地電極として利用されるならば、望ましい装置の特性の観点から処理窓は狭くなることが観察された。このため、本発明の実施の形態によれば、薄い誘電体のコーティングがグラファイトサセプタの上に形成される。いくつかの実施例において、誘電体のコーティングはプラズマ噴霧された少なくとも厚さ3ミクロンの酸化アルミニウムのコーティングである。いくつかの実施例では、その厚さは約50ミクロンである。他の実施例では、誘電体のコーティングはシリコン窒化膜である。このようなコーティングを受けたサセプタを使用することで、プラズマの安定性、膜厚の不均一及びエミッタの飽和電流密度は実質的に改善される。
【0008】
なお、添付された図面は、本明細書に包含されて本明細書の一部を構成し、本発明の実施例を例示するものである。また添付された図面は、発明の詳細な説明とともに、発明の原理を説明し図示する。図面は典型的な実施例の主な特徴を図示することを概略的に図示することを意図したものである。図面は、実際の実施例のあらゆる特徴を示すことを意図したものではなく、また示された構成要素の相対的な大きさを示したものでもない。また、正確な縮尺を持って描かれているものでもない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1A】本発明の実施の形態に係るグラファイトサセプタを含むPECVD処理チャンバの主な構成要素を概略的に図示している。
【図1B】本発明の実施の形態に係るサセプタの設計を示している。
【図2A】従来技術のサセプタを用いた結果として得られた、ポリシリコンウェーハに堆積された膜厚が不均一なシリコン窒化膜を示す。
【図2B】本発明の実施の形態に係るグラファイトサセプタを用いた結果として得られた、ポリシリコンウェーハに堆積された膜厚が均一なシリコン窒化膜を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態によれば、上述した従来技術のサセプタに関連する問題は、サセプタの上面に誘電体コーティングを施すことにより解決される。一の実施例によれば、誘電体コーティングは、プラズマ噴霧された少なくとも3ミクロンの厚さを有する酸化アルミニウムである。一の実施例によれば、膜厚は約50ミクロンである。プラズマの安定性、膜厚の不均一さ及びエミッタの飽和電流密度は、実質的にこのようなサセプタを用いることにより改善される。
【0011】
シリコン窒化膜はコーティングに用いることができる別の誘電体である。シリコン窒化膜の誘電係数(6〜8)は、酸化アルミニウムの誘電係数(約9)にある程度近似しているが、実際には、プラズマ噴霧された酸化アルミニウムは、より製造が容易である。したがって、下記の実施例は、プラズマ噴霧された酸化アルミニウムに関する。
【0012】
図1Aは、グラファイトサセプタを含むPECVD処理チャンバの主な仕様の概略を図示したものである。本体100、天井105および床115は、処理スペース120を有するチャンバを構成し、ポンプ152により真空化される。シャワーヘッド125は、管130を介してガスを供給され、そのガスを処理スペース120に導く。サセプタ135は、台140により支持される。台140は、ヒータを備えたものであってもよい。台140は、上昇方向に移動可能であってもよいし、移動不能であってもよい。接地ストラップ145は、RFパワー源が天井105の電極またはシャワーヘッド125に接続される場合に、サセプタ135を接地電位に接続する。
【0013】
図1Bは、本発明の実施の形態に係るサセプタ135の設計をより詳細に図示している。本例のサセプタ135は、複数の基板を処理するのに用いられる。例えば、太陽光セルを組み立てるのに用いられる。基板(図示せず)はグラファイトサセプタ135の上面に形成されたポケットに格納される。グラファイトサセプタ135の上面は、例えば酸化アルミニウムなどの誘電体によりコーティングされる。
【0014】
図2Aは、従来技術にしたがってグラファイトサセプタを用いてポリシリコンウェーハ上にシリコン窒化膜を堆積させた結果としての膜の不均一性を示したものである。図2Aから判るように、堆積は基板の端部に向かうに従い薄くなる。実際は、ウェーハの本当の端部においては、堆積はほとんど見られない。このような結果は、容認することができない。この例では窒化層は絶縁保護膜として機能し、さらに反射防止膜としても機能する。これにより、太陽光セルに入射する光は、反射される代わりに電気に変換される。このような不均一な堆積では、太陽光セルの端部において光は反射され光電変換には十分には利用されないので、太陽光セルの効率は低下してしまう。
【0015】
図2Bは本発明の実施の形態に従い、プラズマ噴霧コーティングによるグラファイトサセプタを用いてポリシリコンウェーハ上に堆積されたシリコン窒化膜の均一さを示している。図2Bに示すように、ウェーハの表面全体が均一な青色となり、シリコン窒化膜の堆積は、コーティングされたサセプタを用いることにより、顕著により均一なものとなる。
(実施例)
【0016】
A5“ n型結晶シリコン(c−Si)太陽光セルウェーハがモニター用ウェーハとして選択された。反射防止膜を堆積する前に、ウェータは両面を加工され、両面に凹凸(Texture)が形成されるとともに 両面にp型のドーピングを施され、さらに両面にSiO2コーティングを付される。反射防止膜の堆積工程の間、800オングストロームのSiN膜がウェーハの両面に堆積され、この膜は深青色となる。シリコン窒化膜の両面への堆積の後、モニタウェーハはSinton社のWCT120という光導電ライフタイムテスタにより測定される。照明モードが一時的に設定される(フラッシュ設定1/64)。合計のエミッタ飽和電流密度(Jo)は、PCIDシミュレーションソフトウエアから示される。モニターは両側にエミッタを有する。したがって、エミッタの片側の飽和電流密度は、PCIDからの合計の飽和電流密度Joの半分である。モニタウェーハはコーティングのされたグラファイトサセプタ、又はされていないグラファイトサセプタ上で、いくつかの条件の下で加工された。片側のエミッタ飽和電流密度は表1で比較されている。飽和電流密度Joが減少すると開放回路電圧(Voc)及び太陽光セル効率が増加する。
【0017】
[表1]は、サセプタの両面へのシリコン窒化膜の堆積を行った後、コーティングを行った場合と行わなかった場合におけるサセプタ上のTTW(Textured Test Wafer)のエミッタ飽和電流密度を比較したものである。
【0018】
【表1】

【0019】
表1から理解されるように、ウェーハ本発明の実施の形態に従うサセプタ上で処理されたウェーハは、非常に改善された飽和電流密度Joを与える。この例では、サセプタはプラズマ噴霧された膜厚50ミクロンの酸化アルミニウムによりコーティングされている。
【0020】
本発明を特定の実施例との関連で説明したが、これらの実施例はあらゆる観点において図示を意図したものであり、限定を意図したものではない。この分野の当業者は、本発明の実施のため、多数の異なるハードウエア、ソフトウエア及びファームウエアの組み合わせが適切であることを理解するであろう。さらに、明細書の考慮及び明細書に記載される発明の実施から、本発明の他の実施が可能であることは、当業者にとって明らかであろう。記載されている実施の形態のさまざまな観点及び/又は構成要素は、それ単独で、又はプラズマチャンバ技術における様々な組み合わせとして使用され得る。明細書と実施例は例示としてのみ考慮されることを意図しており、本発明の真の範囲及び精神は、下記の特許請求の範囲によって示される。
【符号の説明】
【0021】
100・・・本体、 105・・・天井、 115・・・床、 120・・・処理スペース、 125・・・シャワーヘッド、 130・・・管、 135・・・サセプタ、 140・・・台、 145・・・接地ストラップ、 152・・・ポンプ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ処理装置用のサセプタにおいて、
少なくとも1つの基板を支持するための上面を有するグラファイト本体を備え、
前記上面は、その上に誘電体のコーティングを有している
ことを特徴とする、プラズマ処理装置用のサセプタ。
【請求項2】
誘電体のコーティングはプラズマ噴霧された酸化アルミニウムのコーティングである請求項1記載のサセプタ。
【請求項3】
前記プラズマ噴霧された酸化アルミニウムは約3ミクロンの厚さである請求項2記載のサセプタ。
【請求項4】
前記プラズマ噴霧された酸化アルミニウムは約50ミクロンの厚さである請求項2記載のサセプタ。
【請求項5】
前記誘電体のコーティングは、誘電体のコーティングはシリコン窒化膜である請求項1記載のサセプタ。
【請求項6】
プラズマ処理装置のサセプタにおいて、
少なくとも1つの基板を支持するための上面を有するグラファイト本体を備え、
前記上面は、前記基板を格納するための複数のポケットを有し、誘電体のコーティングが前記上面の上に形成されている
ことを特徴とするプラズマ処理装置のサセプタ。
【請求項7】
前記誘電体のコーティングはプラズマ噴霧された酸化アルミニウムのコーティングである請求項6記載のサセプタ。
【請求項8】
前記コーティングは約3ミクロンの厚さである請求項7記載のサセプタ。
【請求項9】
前記コーティングは約50ミクロンの厚さである請求項7記載のサセプタ。
【請求項10】
前記誘電体のコーティングはシリコン窒化膜である請求項6記載のサセプタ。
【請求項11】
メイン・チャンバ・ボディと、
前記メイン・チャンバ・ボディの天井に設けられたシャワーヘッドと、
前記メイン・チャンバ・ボディの中に設けられる台と、
前記台に結合されるサセプタと
を備え、
前記サセプタは、少なくとも1つの基板を支持するための上面を有するグラファイト本体を有し、前記上面はその上に誘電体のコーティングを形成されている
ことを特徴とする真空処理チャンバ。
【請求項12】
前記誘電体のコーティングはプラズマ噴霧された酸化アルミニウムのコーティングである請求項11記載のチャンバ。
【請求項13】
前記サセプタは複数のポケットを有し、それぞれのポケットは1つの基板を格納する請求項12記載のチャンバ。
【請求項14】
前記コーティングは約3ミクロンの厚さである請求項12記載のサセプタ。
【請求項15】
前記コーティングは約50ミクロンの厚さである請求項12記載のサセプタ。
【請求項16】
前記誘電体のコーティングはシリコン窒化膜である請求項11記載のサセプタ。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【公開番号】特開2012−9854(P2012−9854A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−126373(P2011−126373)
【出願日】平成23年6月6日(2011.6.6)
【出願人】(509263179)オルボテック エルティ ソラー,エルエルシー (5)
【Fターム(参考)】