説明

プラズマ処理装置及びプラズマ処理装置のフィードバック制御方法

【課題】サセプタに均一に高周波電力を供給する。
【解決手段】マイクロ波プラズマ処理装置10は、処理容器100と、処理容器の内部にて基板Gを載置するサセプタ105と、高周波電力Pwを出力する高周波電源130と、サセプタ105に位置する複数の給電ポイントAにてサセプタ105に接続され、高周波電源130から出力された高周波電力Pwを複数の給電ポイントAからサセプタ105に供給する複数の供給棒Bと、高周波電源130と複数の給電棒Bとの間に設けられ、複数の給電棒Bに一対一に接続された複数の可変コンデンサCmを含み、出力側とプラズマ側のインピーダンスをマッチングさせる整合器125と、各給電ポイント近傍のコンデンサCpの電圧を検出するセンサSrと、センサSrにより検出された電圧に基づき複数の可変コンデンサCmをフィードバック制御する制御装置700とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスを励起することにより生成されたプラズマを用いて被処理体をプラズマ処理するプラズマ処理装置に関し、より詳しくは、前記プラズマ処理装置内に設けられたサセプタに高周波電力を給電するためのフィードバック制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマ処理装置には、一般的に、ガスを励起させてプラズマを生成するためのエネルギー源としてマイクロ波電源や高周波電源が設けられるとともに、サセプタ(載置台)に所定のバイアス電圧を印加するためのエネルギー源として、別途、高周波電源が設けられている。この高周波電源から出力される高周波電力により、サセプタ内に所定のバイアス電圧が印可され、このエネルギーによってプラズマに含まれるイオンがサセプタに向かって引き込まれる。このようにして、プラズマ中のイオンが被処理体に衝突する際のエネルギーを増加させることができる。よって、高周波電力の供給状態が変化すると、たとえば、プロセス速度が予想外に変化してしまう等の事態が生じる可能性がある。このため、高周波電力の供給状態は、プラズマ処理において非常に重要である。
【0003】
しかしながら、プラズマ処理装置では、処理容器とサセプタあるいは電源線との間にて静電容量C(寄生容量)が発生する。また、高周波では、電源線にかなりの電圧降下を生じさせるインダクタンスLが存在する。このようにして発生する整合器の下流側(プラズマ側)のインピーダンスにより、高周波電力が電源線を伝播中、高周波電力にかなりの損失が生じる。つまり、整合器の下流側のインピーダンスが大きければ大きいほど、プラズマの制御に利用することができる高周波電力は小さくなる。
【0004】
一方、整合器の下流側にて発生する容量性成分および誘導性成分の状態は、装置の寸法、材質だけでなく、処理容器やサセプタの壁面に堆積する堆積物の量や種類などによっても変化する。よって、整合器の下流側のインピーダンスには、いろいろな要因から予測できない変化が生じ、これに応じて、電源線を伝播中の高周波電力に予測できない損失が発生する。
【0005】
そこで、電源線を伝播後の高周波電力を測定するために、被処理体の上部表面に電気プローブを直接取り付け、電気プローブによりサセプタに印加されたバイアス電圧を直接測定する方法が提案されている(たとえば、特許文献1を参照。)。この方法では、測定されたバイアス電圧からサセプタに供給された高周波電力を求め、サセプタに供給すべき高周波電力の理想値と求められた高周波電力の値と差からサセプタに供給される高周波電力を理想値に近づけるようにフィードバック制御する。サセプタに実際に印加されたバイアス電圧に基づきフィードバック制御が実行されるため、伝播中に高周波電力にどの程度の損失が生じたかを問題する必要がなく、実測されたバイアス電圧に基づき、高周波電源から出力する高周波電力を精度良くフィードバック制御することができる。
【0006】
【特許文献1】特表2003−510833号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記フィードバック制御方法では、電気プローブを被処理体に直接接触させてバイアス電圧を測定するため、電気プローブによる測定時には、被処理体の損傷を考慮して測定用の被処理体を用いる。よって、スループット及び生産性の向上のためには、電気プローブによるバイアス電圧の測定頻度はおのずと制限され、フィードバック制御の精度を悪化させる結果となり、反対にフィードバック制御の精度を高めようとすると、バイアス電圧の測定頻度が高くなって、測定用の資源を多く必要とするとともに、スループット及び生産性を低下させる結果となる。
【0008】
上記課題を解消するために、本発明では、被処理体を損傷させることなくプラズマに関するパラメータを測定することにより、サセプタに均一に高周波電力を供給するプラズマ処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、上記課題を解決するために、本発明のある態様によれば、ガスを励起することにより生成されたプラズマを用いて被処理体をプラズマ処理するプラズマ処理装置であって、処理容器と、前記処理容器の内部に設けられ、被処理体を載置するサセプタと、高周波電力を出力する高周波電源と、前記サセプタに位置する複数の給電ポイントにて前記サセプタに接続され、前記高周波電源から出力された高周波電力を前記複数の給電ポイントから前記サセプタに供給する複数の電源線と、前記高周波電源と前記複数の電源線との間に設けられ、前記複数の電源線に一対一に接続された複数の第1の可変コンデンサを含み、前記高周波電源側のインピーダンスとプラズマ側のインピーダンスとをマッチングさせる整合器と、各給電ポイント近傍のプラズマに関するパラメータをそれぞれ検出するセンサと、前記センサにより検出された各給電ポイントのプラズマに関するパラメータに基づき、前記複数の第1の可変コンデンサをフィードバック制御する制御装置と、を備えたプラズマ処理装置が提供される。
【0010】
近年の基板の大面積化に伴いサセプタ自身が大型化するに従い、一点の給電点からサセプタに電力を供給すると、サセプタ内の電力分布に偏りが生じる可能性がある。たとえば、サセプタの中心から高周波電力を印加する場合、給電点及びその近傍に最も大きな高周波電力が印加され、給電点から遠ざかるほど供給される高周波電力は小さくなる可能性がある。この場合、サセプタ中央にて最もプロセス速度が速く、そこから遠ざかるほどプロセス速度が遅くなるため、被処理体に処理ムラができる。
【0011】
しかしながら、かかる構成によれば、高周波電源に接続された複数の電源線から複数の給電ポイントを介してサセプタに高周波電力が印加される。このため、サセプタ内の一点から高周波電力を給電する場合に比べてサセプタ内の電力分布にバラツキが生じにくくなる。この結果、被処理体全体に良好なプロセス処理を施すことができる。
【0012】
また、かかる構成によれば、プラズマに関するパラメータ(たとえば、バイアス電圧や電流)をそれぞれ検出するセンサが各給電ポイント近傍に設けられていて、前記センサにより検出された給電ポイント毎のプラズマに関するパラメータに基づき、複数の電源線に一対一に接続された複数の第1の可変コンデンサがフィードバック制御される。これによれば、たとえば、プラズマに関するパラメータとしてサセプタに実際に印加されたバイアス電圧に基づきフィードバック制御が実行されるため、伝播中に高周波電力にどの程度の損失が生じたかを問題する必要がなく、実測されたバイアス電圧に基づき、高周波電源から出力する高周波電力を精度良くフィードバック制御することができる。
【0013】
前記センサは、前記複数の給電ポイントの近傍に配設された複数の測定用コンデンサの両極の電圧を検出し、前記制御装置は、前記複数の測定用コンデンサにかかる電圧に基づき、前記複数の第1の可変コンデンサをフィードバック制御してもよい。
【0014】
これによれば、センサは、給電ポイント毎のプラズマに関するパラメータとして、各給電ポイントの近傍に設けられた測定用コンデンサの両極の電圧を検出する。たとえば、図1の下部に示したように、整合器125は、高周波電源130と4本の給電棒B1〜B4(電源線の一例)とを接続する基幹電源線BBに接続され、4つの可変コンデンサCm1〜Cm4(第1の可変コンデンサに相当)を有している。可変コンデンサCm1〜Cmは、給電棒B1〜B4に一対一に接続されている。センサSr1〜Sr4は、給電ポイントA1〜A4近傍の測定用コンデンサCp1〜Cp4の両極にかかる電圧を検出する。制御装置700は、検出された電圧V〜Vに基づき、給電棒B1〜B4に接続された可変コンデンサCm1〜Cm4をフィードバック制御する。
【0015】
この方法では、電気プローブを被処理体に直接接触させてバイアス電圧を測定する方法に比べて、測定用の被処理体を製品用の被処理体とは別に用意する必要がない。また、この方法では、プロセス中に計測が可能なのでスループット及び生産性が低下しない。これらの理由から、この方法では、バイアス電圧を適度な頻度で測定し、より精度の高いフィードバック制御を実現することにより、適正化された高周波電力を複数の給電ポイントからサセプタ全体に均一に供給することができる。これにより、被処理体全体に均一に供給されたエネルギーにより被処理体に良好なプラズマ処理を施すことができる。
【0016】
前記整合器は、前記複数の第1の可変コンデンサに加え、前記高周波電源と前記複数の電源線とを繋ぐ基幹電源線に接続された第2の可変コンデンサを有し、前記制御装置は、前記センサにより検出された前記各給電ポイント近傍の測定用コンデンサにかかる電圧に基づき、前記高周波電源から出力する高周波電力、前記複数の第1の可変コンデンサおよび前記第2の可変コンデンサをフィードバック制御してもよい。
【0017】
これによれば、たとえば、図1に示したように、制御装置700は、測定用コンデンサCpに印加された電圧Vに基づき、高周波電源130から出力される高周波電力Pwをフィードバック制御する。また、制御装置700は、整合器125の基幹電源線BBに接続された可変コンデンサCf(第2の可変コンデンサに相当)をフィードバック制御することにより、高周波電源側のインピーダンスとプラズマ側のインピーダンスとを大まかにマッチングする。さらに、制御装置700は、各給電棒Bにそれぞれ設けられた可変コンデンサCmを用いて各給電棒の特性インピーダンスをそれぞれ別個に制御することにより、複数の給電棒Bを通って各給電ポイントAからサセプタにムラなく高周波電力を供給する。
【0018】
その際、前記制御装置は、前記複数の測定用コンデンサにかかる電圧に基づき、前記複数の給電ポイントの各々に供給された高周波電力を算出し、前記複数の給電ポイントの少なくともいずれかに供給される高周波電力に所望の損失量が生じるように前記複数の第1の可変コンデンサをフィードバック制御してもよい。
【0019】
具体的には、前記制御装置は、前記算出された高周波電力に基づき、前記サセプタに供給された高周波電力の最小電力値を求め、前記最小電力値に応じて前記高周波電源から出力する高周波電力を増減させてもよい。
【0020】
たとえば、測定用コンデンサCp1〜Cp4を用いて測定された各電圧に基づき、図5に示したように、給電ポイントA1〜A4に印加された電力が高周波電力P1〜P4であると算出されたとする。この算出結果から、サセプタ内の電力分布Haが予測される。電力分布Haの最小電力値Pminを、図6の目標膜質Dsが得られる電力Psに合致させるように高周波電源130から出力される高周波電力をフィードバック制御する。この場合には、最小電力値Pminと目標電力値Psとの差分Dfだけ、高周波電源130から出力される高周波電力を減少させる。これにより、理論上、サセプタ内の電力分布は、電力分布Haから電力分布Hbの状態に変化する。このようにして、サセプタに供給する高周波電力の最小値を目標とする電力に制御することができる。
【0021】
各給電ポイントに高周波電力を伝搬させる際の電力の損失量は、前述した「各電源線の特性インピーダンス」により定まる。よって、制御装置は、各給電ポイントに供給される高周波電力が最小電力値に応じた値になるように各給電ポイントに高周波電力を伝搬させる際の損失量を算出し、算出された損失量が発生するように各第1の可変コンデンサをフィードバック制御する。これにより、各電源線の特性インピーダンスが変化し、各電源線を伝搬する高周波電力に所望の損失を発生させることができる。
【0022】
具体的には、前記制御装置は、前記各給電ポイントに供給される高周波電力が前記最小電力値に等しい値となるように前記各給電ポイントに高周波電力を伝搬させる際の損失量を算出し、前記算出された損失量が発生するように前記各第1の可変コンデンサをフィードバック制御する。
【0023】
たとえば、図5に示したように、電力分布Haを上記方法により電力分布Hbに補正することにより高周波電力P1〜P4を高周波電力Pc1〜Pc4に補正した場合について考える。この場合、高周波電力が、給電棒B1〜B4を伝搬中に損失量ls1〜ls4だけエネルギーを損失するように各可変コンデンサCm1〜Cm4を調整する。これにより、高周波電力は、給電ポイントA1〜A4に到達するまでに損失量ls1〜ls4だけ電力を損失する。これは、サセプタに供給された高周波の電力分布が曲線Hbからフラットな直線Hcに補正されたことを意味する。すなわち、第1の可変コンデンサをフィードバック制御することにより、給電ポイントA1〜A4に到達した高周波電力を均一化することができる。このようにして、均一に供給された高周波電力のエネルギーにより、被処理体が大面積化しても被処理体全体に理想的な膜質Dsの薄膜を形成することができる。
【0024】
前記サセプタは、複数に分割され、前記分割された複数のサセプタのそれぞれには、前記複数の給電ポイントの少なくともいずれかが位置づけられるように、前記分割された複数のサセプタのいずれにも前記複数の電源線の少なくともいずれかが接続され、前記制御装置は、前記分割されたサセプタのそれぞれに位置する給電ポイント毎のプラズマに関するパラメータに基づき、前記複数の電源線に直列に接続された複数の第1の可変コンデンサをフィードバック制御してもよい。
【0025】
これによれば、分割された複数のサセプタのそれぞれに、少なくとも一つの給電ポイントが位置付けられる。たとえば、分割サセプタのそれぞれに一つの給電ポイントがある場合、各給電ポイント近傍の測定用コンデンサを用いてバイアス電圧を実測する際、サセプタは互いに分離しているので互いに干渉しないため、より精度の高い測定を実現することができる。また、一般的に、大面積のサセプタに対して電力分布の均一性を保つことは、大面積のサセプタをいくつかに分割して、分割されたサセプタ毎に電力分布を管理するより難しい。したがって、サセプタを分割することにより、分割サセプタ毎の電力分布を均一に管理することができる。この結果、被処理体の大面積化に対応して被処理体全体に良好なプロセス処理を施すことができる。
【0026】
前記複数の電源線は、前記サセプタの同一円周上に位置した3以上の給電ポイントにて前記サセプタに接続される3本以上の給電棒から構成され、前記制御装置は、前記センサにより検出された給電ポイント毎のプラズマに関するパラメータに基づき、前記3本以上の給電棒に一対一に接続された3以上の第1の可変コンデンサをフィードバック制御してもよい。
【0027】
これによれば、3本以上の電源線を伝搬した高周波電力は、同一円周上に位置する3以上の給電ポイントからサセプタに供給される。その一例について図11及び図12を参照しながら説明する。図11では、3本の給電棒B1〜B3が3つの給電ポイントA1〜A3にてサセプタ105に接続されている。これにより、図11に示した中心点Oに対して同一円周上に位置する各給電ポイントA1、A2、A3からサセプタにそれぞれ高周波電力が供給される。
【0028】
給電ポイントA1、A2、A3をその端部とする給電棒B1、B2、B3に、紙面の背面側から手前に向かって電流が流れている。この場合、給電棒B1、B2、B3には、右ねじの法則により時計と反対周りに誘導磁場m1、m2、m3が発生する。誘導磁場m1、m2、m3は、同一円周上の位置から発生しているので、互いに均等に渦巻き状に干渉し合い、全体として互いに逆回り誘導磁場Ma、Mbを形成する。この2つの誘導磁場Ma、Mbは打ち消し合う。このようにして、3本以上の給電棒からサセプタに高周波電力を供給する際、サセプタ下部にて給電棒の外周に発生した誘導磁場をキャンセルすることができる。これにより、サセプタ下部に発生した誘導磁場によってサセプタ下部にプラズマが発生し、プロセス処理に必要なプラズマが乱れることを防止することができる。
【0029】
また、サセプタ下部に誘電磁場が発生すると、その誘電磁場によりサセプタ下部にて電流が発生し、サセプタの電位がサセプタ直上のシース電圧に対応したバイアス電圧の本来の値に対応せず、バイアス電圧に誘電磁場の発生により生じた電流に対応する電圧分を加えた値になってしまう。このため、折角、サセプタ内の測定用コンデンサを用いてバイアス電圧を直接計測しても、投入された高周波電力の利用効率が悪く、フィードバック制御の効果が充分に得られない。
【0030】
しかしながら、かかる構成によれば、誘導磁場の発生を抑制する位置に3本以上の給電棒が配置され、これにより、サセプタに高周波電力を多点給電するため、誘導磁場の影響を受けて高周波電力の利用効率を落とすことなく、安定したプロセスを実現することができる。
【0031】
なお、前記サセプタに埋設された電極板をさらに備え、前記3本以上の給電棒は、前記サセプタ内の電極板の同一円周上に位置する3以上の給電ポイントにて前記電極板に接続されてもよい。
【0032】
前記サセプタは、対称的に複数に分割され、前記分割された複数のサセプタのうち同一サセプタ内の同一円周上又は複数のサセプタに跨った同一円周上であって、かつ、前記分割された複数のサセプタのいずれにも1以上の給電ポイントが位置づけられるように、前記分割された複数のサセプタのいずれにも前記3本以上の給電棒の少なくとも1本が接続され、前記制御装置は、前記センサにより検出された給電ポイント毎のパラメータに基づき、前記3本以上の給電棒に直列に接続された3以上の第1の可変コンデンサをフィードバック制御してもよい。
【0033】
これによれば、単一の又は複数の同一円周上に3以上の給電ポイントが位置づけられるため、上述した理論により誘電磁場の発生を抑制することができるとともに、サセプタが互いに対称的な形状に分割されているため、各サセプタにおける高周波電力の分布を平滑化しやすくなる。この結果、均一な電力供給に基づきより安定したプロセスを実現することができる。
【0034】
前記測定用コンデンサの容量Cは、シース容量Cシースの4.2倍以下であってもよく、シース容量Cシースの2.1倍以下であることが好ましい。
【0035】
かかる範囲であれば、測定用コンデンサを用いた計測に測定誤差が入り込む余地が小さい。よって、測定用コンデンサの容量を上記のように適正化することにより、測定誤差の小さい実測値に基づき、さらに精度の高いフィードバック制御を実現することができる。
【0036】
前記3本以上の給電棒は、互いに平行に配置されていてもよい。また、前記3本以上の給電棒は、前記サセプタに垂直に挿入されていてもよい。
【0037】
このように構成することにより、3本以上の電源線に前記高周波電源から同一方向に電流が流れた場合、これに応じて発生する誘電磁場を全体として確実にキャンセルすることができる。
【0038】
上記課題を解決するために、本発明の他の態様によれば、ガスを励起することにより生成されたプラズマを用いて被処理体をプラズマ処理するプラズマ処理装置のフィードバック制御方法であって、高周波電源から高周波電力を出力し、被処理体を載置するサセプタに位置する複数の給電ポイントを介して前記複数の給電ポイントに一対一に接続された複数の電源線から前記サセプタに前記高周波電力を供給し、各給電ポイントに応じたプラズマに関するパラメータをセンサにより検出し、前記センサにより検出された給電ポイント毎のプラズマに関するパラメータに基づき、前記複数の電源線に一対一に接続された複数の第1の可変コンデンサをフィードバック制御するプラズマ処理装置のフィードバック制御方法が提供される。
【0039】
これによれば、複数の給電点からサセプタ内に均一に電力を供給するため、サセプタ内の一点のみから高周波電力を給電する場合に比べてサセプタ内の電力分布にバラツキが生じにくくなる。
【0040】
また、前記プラズマ処理装置は、前記複数の第1の可変コンデンサと、前記高周波電源と前記複数の電源線とを繋ぐ基幹電源線に接続された第2の可変コンデンサとを有する整合器を備え、前記プラズマに関するパラメータとして前記各給電ポイント近傍の測定用コンデンサにかかる電圧を前記センサにより検出し、前記検出された前記各給電ポイント近傍の測定用コンデンサにかかる電圧に基づき、前記高周波電源から出力する高周波電力、前記複数の第1の可変コンデンサおよび前記第2の可変コンデンサをフィードバック制御してもよい。
【0041】
これによれば、測定用コンデンサに印加された電圧に基づき、高周波電源から出力される高周波電力及び整合器の基幹電源線に接続された第2の可変コンデンサをフィードバック制御する。これにより、高周波電力および出力側と負荷側のインピーダンスを大まかに調整する。また、測定用コンデンサに印加された電圧に基づき、複数の電源線に一対一に接続された複数の第1の可変コンデンサをフィードバック制御する。これによれば、伝播中の高周波電力にどの程度の損失が生じたかを問題する必要がなく、実測されたバイアス電圧に基づき、高周波電源から出力する高周波電力を精度良くフィードバック制御することができる。この結果、被処理体全体に良好なプロセス処理を施すことができる。
【発明の効果】
【0042】
以上説明したように本発明によれば、被処理体を損傷させることなくプラズマに関するパラメータを測定することにより、サセプタに均一に高周波電力を供給することができる。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下の添付図面を参照しながら、本発明の第1〜第4の実施形態にかかるプラズマ処理装置について説明する。以下の各実施形態では、プラズマ処理装置の一例として、マイクロ波プラズマ処理装置の一形態であるCMEP(Cellular Microwave Excitation Plasma)プラズマ処理装置を挙げて説明する。なお、以下の説明及び添付図面において、同一の構成及び機能を有する構成要素については同一符号を付することにより重複説明を省略する。
【0044】
(第1実施形態:多点給電)
まず、本発明の第1実施形態にかかるプラズマ処理装置について、図1を参照しながら説明する。マイクロ波プラズマ処理装置10は、処理容器100と蓋体200とを有している。処理容器100は、その上部が開口された有底立方体形状を有している。処理容器100と蓋体200との接触面にはOリング250が配設されている。これにより処理容器100は密閉され、プラズマ処理を施す処理室Uが画成される。処理容器100および蓋体200は、たとえば、アルミニウム等の金属からなり、電気的に接地されている。
【0045】
処理容器100の底部には、基板Gを載置するサセプタ(載置台)105が絶縁体110を介して設置されていて、これにより、サセプタ105と処理容器100とは電気的に絶縁される。サセプタ105の内部には電極板115が埋設されている。
【0046】
サセプタ105の内部の給電ポイントA1〜A4は、給電棒B1〜B4の先端に位置し、図1のI−I面にてサセプタ105を切断した図2に位置関係を示したように、給電ポイントA1〜A4の近傍には測定用コンデンサCp1〜Cp4が埋め込まれている。給電棒B1〜B4には、整合器125を介して高周波電源(RF)130が接続されている。高周波電力Pwは、高周波電源130から出力され、整合器125、4本の給電棒B1〜B4を伝搬して4つの給電ポイントA1〜A4を介してサセプタ105に供給され、これにより、所定のバイアス電圧が印加される。高周波電源130は接地されている。
【0047】
給電棒B1〜B4が貫通する処理容器100の底壁にはOリング135が配設され、これにより、処理容器100の内部は密閉されている。なお、給電棒B1〜B4は、サセプタ105に設けられた複数の給電ポイントAにてサセプタ105に接続される複数の電源線の一例である。電源線は、サセプタ105に垂直に挿入され、互いに平行に配置されることが好ましいが、必ずしもこれに限られず、棒状であっても線状であってもよい。
【0048】
整合器125は、高周波電源130と給電ポイントA1〜A4との間にて基幹電源線BBおよび4本の給電棒B1〜B4に接続されている。整合器125は、4本の給電棒B1〜B4にそれぞれ直列に接続された可変コンデンサCm1〜Cm4(第1の可変コンデンサに相当)、インダクタLおよび基幹電源線BBと接地線との間に接続された可変コンデンサCf(第2の可変コンデンサに相当)を有している。整合器125は、高周波電源130の出力インピーダンス(電源側インピーダンス)と負荷インピーダンス(整合器及びプラズマ側インピーダンス)とを見かけ上一致させるように機能する。
【0049】
サセプタ105の周囲には、処理室U内のガスを好ましい流れに制御するためのバッフル板150が設けられている。処理容器100の底部には、処理容器100の外部に設けられた真空ポンプ(図示せず)が備えられている。真空ポンプは、ガス排出管155を介して処理容器100内のガスを排出することにより、処理室Uを所望の真空度まで減圧する。
【0050】
蓋体200には、6本の方形導波管205、スロットアンテナ210および複数枚の誘電体板215が設けられている。6本の方形導波管205は、その断面形状が矩形状であり、蓋体200内にて等間隔に配置されている。方形導波管205の内部は誘電部材205aにより充填されている。方形導波管205は、図示しないマイクロ波源と連結している。
【0051】
スロットアンテナ210は、アルミニウムなどの金属であって非磁性体により形成されている。スロットアンテナ210には、各方形導波管205の下面にてスロット210a(開口)がそれぞれ等間隔に開けられている。各スロット210aの内部には誘電部材210a1が充填されている。
【0052】
各誘電体板215はタイル状に形成されていて、格子状の金属梁220に支持されながらスロット210aの下面に位置するように取り付けられる。これにより、多数の誘電体板215が、天井面全体に等ピッチでアレイ状に配置される。金属梁220の内部にはガス導入管225が貫通している。
【0053】
各誘電体板215は、石英ガラス、AlN、Al、サファイア、SiN、セラミックスなどの誘電材料を用いて形成されている。各誘電体板215の基板Gと対向する面には凹凸が形成されている。これにより、各誘電体板215から供給されるマイクロ波の電界エネルギーの強度をより均一にすることができる。
【0054】
冷却水配管400には、冷却水供給源405が接続されていて、冷却水供給源405から供給された冷却水が冷却水配管400内を循環して冷却水供給源405に戻ることにより、蓋体200は、所望の温度に保たれるようになっている。
【0055】
ガス供給源500は、ガスライン505を介してガス導入管225と連通する。各バルブの開閉および各マスフローコントローラの開度(いずれも図示せず)をそれぞれ制御することにより、所望の濃度のガスがガスライン505及びガス導入管225から処理容器100内に供給される。
【0056】
以上に説明した構成により、マイクロ波源から出力された、たとえば、2.45GHzのマイクロ波は、各方形導波管205を伝搬し、各スロット210aを通って各誘電体板215を等方向に透過し、各誘電体板の下面から処理室U内に放射されるようになっている。処理室Uに放射されたマイクロ波は、ガス導入管225から各誘電体板215の近傍に導入されたガスを励起させ、これにより、天井面の下方にてプラズマが生成される。基板Gには、生成されたプラズマの作用によりエッチングや成膜などのプラズマ処理が施される。
【0057】
サセプタ105には、高周波電源130から出力される高周波電力により所定のバイアス電圧が印可され、このエネルギーによってプラズマに含まれるイオンがサセプタに向かって引き込まれる。つまり、サセプタ105に供給する高周波電力(パワー)を増やすと、プラズマ中のイオンが基板Gに衝突する際のエネルギーを増加させることができる。よって、高周波電力の供給状態の変化は、たとえば、プロセス速度の変化をしてしまう等の事態を生させる可能性がある。このため、高周波電力の供給状態の管理は、プラズマ処理において非常に重要である。
【0058】
ところが、処理容器100とサセプタ105あるいは給電棒Bとの間には静電容量C(寄生容量)が発生する。また、高周波では、給電棒にかなりの電圧降下を生じさせるインダクタンスLが存在する。このようにして発生する整合器125の下流側(プラズマ側)のインピーダンスにより、高周波電力が給電棒を伝播中、高周波電力にかなりの損失が生じる。つまり、整合器125の下流側のインピーダンスが大きければ大きいほど、プラズマの制御に利用することができる高周波電力は小さくなる。
【0059】
一方、整合器125の下流側にて発生する容量性成分および誘導性成分の状態は、装置の寸法、材質だけでなく、処理容器100やサセプタ105の壁面に堆積する堆積物の量や種類などによっても変化する。よって、整合器125の下流側のインピーダンスには、いろいろな要因から予測できない変化が生じ、これに応じて、給電棒Bを伝播中の高周波電力に予測できない損失が発生する。
【0060】
そこで、基板Gの上部表面に電気プローブを直接取り付け、電気プローブによりサセプタに印加されたバイアス電圧を直接測定し、測定されたバイアス電圧からサセプタに供給された高周波電力を求め、サセプタに供給すべき高周波電力の理想値と求められた高周波電力の値と差から、サセプタに供給される高周波電力を理想値に近づけるようにフィードバック制御する方法も考えられる。この方法では、給電棒を伝播中に高周波電力にどの程度の損失が生じたかを問題する必要がなく、実測されたバイアス電圧に基づき高周波電力をフィードバック制御することができる。
【0061】
しかしながら、上記フィードバック制御方法では、電気プローブを被処理体に直接接触させてバイアス電圧を測定するため、被処理体の損傷を考慮して測定用の被処理体を用いなければならない。
【0062】
そこで、本実施形態では、サセプタ105に測定用のコンデンサを埋め込み、プラズマに関するパラメータの一つとして測定コンデンサの両極の電圧を測定し、この測定値をフィードバック制御方法に用いる。これにより、被処理体を損傷させることなく、サセプタに均一に高周波電力を供給するフィードバック制御方法を実現することができる。以下では、測定用コンデンサを用いたフィードバック制御方法を具体的に説明する。
【0063】
(計測方法)
まず、基板直下の高周波電力を予測するために測定用コンデンサCp1〜Cp4の両極の電圧を測定するセンサSr1〜Sr4について説明する。センサSr1〜Sr4は、図1に示した2本のプローブ600およびオシロスコープ605をそれぞれ有している。各センサSrの2本のプローブ600は、その一端にて測定用コンデンサCpの上部金属板および下部金属板に接続されている。各プローブ600の他端は、処理容器100の底壁を貫通して、処理容器100の外部に置かれたオシロスコープ605に接続されている。オシロスコープ605は接地されている。各プローブ600が貫通する処理容器100の底壁には、Oリング610が配設され、これにより、処理容器100の内部は密閉されている。
【0064】
センサSr1〜Sr4は、所定時間が経過するたびに測定用コンデンサCp1〜Cp4の両極の電圧V〜Vを検出し、検出した電圧V〜Vを制御装置700に伝えるようになっている。このようにして、センサSr1〜Sr4は、高周波電源130から基幹電源線BB、整合器125及び4本の給電棒B1〜B4を介して測定用コンデンサCp1〜Cp4に印加される高周波電力(電圧)を、プラズマに関するパラメータとして計測する。なお、プラズマに関するパラメータとしては、測定用コンデンサCpの両極の電圧値だけでなく、たとえば、電流値であってもよい。
【0065】
(制御装置)
つぎに、制御装置700について説明する。図3にハードウエア構成を示したように、制御装置700は、センサSr1〜Sr4により検出された電圧V〜Vを入力し、高周波電源130及び整合器125をフィードバック制御するための高周波電力Pw、可変コンデンサCfの容量、4つの可変コンデンサCm1〜Cm4の容量を示した制御信号を出力する。
【0066】
具体的には、制御装置700は、8つの波形整形回路700a1〜700a8、4つの電圧・位相比較器700b1〜700b4および制御回路700cを有している。波形整形回路700a1〜700a8は、センサSr1〜Sr4により検出された電位V〜Vを入力し、それぞれ波形整形する。電圧・位相比較器700b1〜700b4は、波形整形された電圧V〜Vを入力し、電圧V及びV、電圧V及びV、電圧V及びV、電圧V及びVの振幅差および位相差をそれぞれ求める。制御回路700cは、波形整形された各電圧V〜Vの振幅差および位相差に基づき、サセプタ105に印加する高周波電力Pw、可変コンデンサCfの容量及び4つの可変コンデンサCm1〜Cm4の容量を求める。
【0067】
(電力算出方法)
つぎに、給電ポイントAの電力Pの算出方法について、給電ポイントA1の電力P1の算出方法を例に挙げて説明する。まず、測定用コンデンサの両極の電圧V,Vを、周波数成分(すなわち、高周波電源から出力される高周波信号の周波数を基本波とする高調波成分)に分解することにより次式(1)を導く。ここで、kは高調波の次数、Iは計測ポイントの位置を示す。このとき、係数は、最小二乗法により決定される。
【数1】

【0068】
つぎに、電圧V,Vの差分から次式(2)を求める。
【数2】

【0069】
つぎに、各周波数で電流の振幅M、位相φを計算する。具体的には、ΔVにjωCを掛けてコンデンサに流れる電流Iを求める代わりに、電圧V,Vの振幅差MΔVkにkωCを掛け、電圧V,Vの位相差φΔVkにπ/2を足す。結果をそれぞれMIk,φIkとすると、次式(3)が成り立つ。
【数3】

【0070】
振幅MIk、MVIkの実効値および力率(cos(φIk−φVIk))から、コンデンサに印加された電力Pが次式(4)のように求められる。
【数4】

【0071】
このようにして、基板近傍の実測値V〜Vに基づいて求められた4つの電力値P1〜P4は、基板直下の高周波電力、すなわち、プラズマの制御に消費可能な電力にほぼ等しいと考えられる。また、式(4)により算出される電力P1〜P4のそれぞれに含まれる計測誤差は、コンデンサの容量をシース容量の4.2倍以下(好ましくは2.1倍以下)にすることにより充分に小さくすることができる。これは、特願07−94965に記載した理由および実験から実証されている。
【0072】
このようにして、シース容量の4.2倍以下(好ましくは2.1倍以下)の容量をもつ測定用コンデンサCp1〜Cp4の両極の電圧V〜Vの実測値に基づき、式(4)を用いてサセプタ105に印加される高周波電力P1〜P4を求めることにより、サセプタ105に供給された基板直下の高周波電力を正確に把握することができる。
【0073】
(フィードバック制御)
つぎに、制御装置700により実行されるフィードバック制御処理について、図4に示したフローチャートを参照しながら詳しく説明する。このフィードバック制御処理は、プロセス中、所定時間が経過するたびに繰り返し行われる。
【0074】
なお、制御装置700は、図示しないCPU、記憶領域(ROM,RAMなど)、入出力インターフェース、データバス、アドレスバスを有している。CPUは、記憶領域に格納したフィードバック制御処理を実行するためのプログラムを起動し、記憶領域に記憶されたデータや入出力インターフェースを介して外部から入力したデータを用いながらフィードバック制御処理を実行する。たとえば、記憶領域には、膜に混入させるイオン量により定められる膜質Dとその膜質Dを得るための電力Pとの相関関係を示した図6のテーブルTbが予め記憶されている。ここでは、目標とする膜質Dsを得るために、初期状態では高周波電源130から電力Psが出力されることとする。
【0075】
フィードバック制御処理は、ステップS400から開始され、制御装置700は、ステップS405にて、センサSr1〜Sr4を用いて測定用コンデンサCp1〜Cp4の両極の電圧V〜Vを検出する。つぎに、ステップS410に進んで、制御装置700は、検出した電圧V〜Vを波形整形する。
【0076】
ついで、ステップS415に進み、制御装置700は、波形整形された電圧V〜Vを上式(1)〜(4)に代入することにより、給電ポイントA1〜A4に印加された高周波電力P1〜P4を算出する。つぎに、制御装置700は、ステップS420にて4つの給電ポイントA1〜A4の電力P1〜P4に基づき、サセプタ105に供給された高周波の電力分布を求め、最小電力値Pminを求める。たとえば、図5には、サセプタ105の電極板115の各位置に供給された電力分布が示されている。たとえば、給電ポイントA1〜A4の高周波電力P1〜P4により電極板115の電力分布が曲線Haで表されたとする。これにより、サセプタ105に供給された最小電力値Pminが導き出される。
【0077】
最小電力値Pminがサセプタ105に印加されている場合、図6によれば、形成された膜の膜質Dminは目標とする膜質Dsと異なっているため、欲する膜の特性からずれている。そこで、制御装置700は、ステップS425にて、テーブルTbに基づき目標とする膜質Dsが得られる電力Psと算出された最小電力値Pminとの差分Df(=Pmin−Ps)を求め、ステップS430にて差分Dfが「0」以上と判定された場合、図6のテーブルTbに示したように、サセプタ105に印加された電力Pminは理想の電力Psより大きいので、ステップS435にて高周波電源130から出力する電力Pwを差分Dfだけ小さくするようにフィードバック制御する。これにより、図5に示したサセプタ105の電力分布Haは、電力分布Hbに補正され、各給電ポイントA1〜A4の電力値P1〜P4は、電力値Pc1〜Pc4に補正される。
【0078】
つぎに、制御装置700は、ステップS440にてフィードバック制御後の各給電ポイントA1〜A4の電力値Pc1〜Pc4を目標とする電力値Psに合致させるために必要な損失成分ls1〜ls4を求める。ついで、制御装置700は、ステップS445にて高周波電力Pwが給電棒B1〜B4を伝搬中、損失量ls1〜ls4だけ電力をロスしながら各給電ポイントA1〜A4まで供給されるように、可変コンデンサCm1〜Cm4及び可変コンデンサCfをフィードバック制御し、ステップS495に進んで本処理を一旦終了する。これにより、図5に示したサセプタ105の電力分布Hbは、電力分布Hcに補正され、各給電ポイントA1〜A4の電力値Pc1〜Pc4は、すべて目標電力値Psに補正される。この結果、電極板115に一様に電力が供給される。
【0079】
一方、ステップS430にて差分Dfが「0」の値より小さいと判定された場合、図6のテーブルTbに示したように、サセプタ105に印加された電力Pmin’は理想の電力Psより小さい。よって、制御装置700は、ステップS450に進んで、高周波電源130から出力する電力Pwを差分Df’だけ大きくするようにフィードバック制御する。これにより、図5に示したサセプタ105の電力分布Ha’は、電力分布Hbに補正される。この状態で、前述したステップS440及びステップS445を実行して、高周波電力Pwが所望量だけ損失しながら各給電ポイントA1〜A4まで供給されるように、可変コンデンサCm1〜Cm4及び可変コンデンサCfをフィードバック制御し、ステップS495に進んで本処理を一旦終了する。これにより、図5に示したサセプタ105の電力分布Hbは、電力分布Hcに補正される。この結果、電極板115に一様に電力が供給される。
【0080】
これによれば、最初に高周波電源130から出力される高周波電力Pwをフィードバック制御することにより、サセプタに供給された電力の最小値Pminを目標値Psに合わせ、つぎに、可変コンデンサCm1〜Cm4及び可変コンデンサCfをフィードバック制御することにより、伝搬中の高周波電力に損失lsを発生させ、これにより、電極板115の電力分布を均一にする。
【0081】
たとえば、図5に示したように、各給電ポイントA1〜A4に供給された高周波電力P1〜P4が高周波電力Pc1〜Pc4に補正された場合、高周波電力Pc1〜Pc4が給電棒B1〜B4を伝播して給電ポイントA1〜A4に到達するまでに、給電棒B1ではls1のロスが生じ、給電棒B2ではls2のロスが生じ、給電棒B3ではls3のロスが生じ、給電棒B4ではls4のロスが生じる。これにより、補正後の電力分布曲線Hbは、フラットな直線Hcに補正される。この結果、目標電力Psをサセプタ105に均一に供給することができ、均一な高周波電力のエネルギーにより、基板全体に目標とする膜質Dsの薄膜を形成することができる。
【0082】
(可変コンデンサCm1〜Cm4、Cfのフィードバック制御)
ここで、ステップS435にて実行される整合器125の可変コンデンサCm1〜Cm4及び可変コンデンサCfのフィードバック制御について、図7A〜図7Eを参照しながら具体的に説明する。
【0083】
図7Aは、高周波電源130、整合器125及び処理室Uの等価回路を示している。ここで、処理室Uの内部は容量成分Csと抵抗成分Rsに置き換えられる。この等価回路において、図7Bに示した各可変コンデンサCm1、Cm2、Cm3、Cm4を含む各直列回路にて損失成分ls1、ls2、ls3、ls4が発生するようにそれぞれの可変コンデンサCm1、Cm2、Cm3、Cm4を調整する。
【0084】
たとえば、整合器のインダクタLと可変コンデンサCm1とプラズマ側の容量成分Csとからなる合成インピーダンスにより伝搬中の高周波電力に損失成分ls1が発生するように可変コンデンサCm1を調整する。これらは直列回路を構成しているので、可変コンデンサCm1の容量を調整することにより、高周波電源130から出力される高周波電力に対してインピーダンスをほぼ0にする直列共振が可能であるが、ここではL成分、すなわち、損失成分ls1を残すように可変コンデンサCm1を調整する。他の可変コンデンサCm2〜Cm4もそれぞれ同様に調整する。この結果、インダクタL、可変コンデンサCm(Cm1〜Cm4)及びプラズマ側の容量成分Csが、図7Cに示した各損失成分ls(ls1〜ls4)に置き換えられる。
【0085】
つぎに、図7Cに示した直列回路のLとRの成分である損失成分ls(ls1〜ls4)及び抵抗値Rsを、図7Dに示した並列回路のL成分がインダクタlp(lp1〜lp4)、R成分が所望の抵抗値Rpになるように可変コンデンサCm(Cm1〜Cm4)を調整する。
【0086】
最後に、可変コンデンサCf及び4つのインダクタ成分(lp1〜lp4)からなる並列回路の可変コンデンサCfを調整して、高周波電源130から出力される高周波に対してインピーダンスが無限大となるように並列共振させる。これにより、図7Eに示したように、高周波電源130側から見たプラズマ側のインピーダンスは、所望の抵抗値Rpのみでリアクタンス(L及びC)成分がない状態となる。
【0087】
以上に説明したように、本実施形態にかかるフィードバック制御方法によれば、整合器125の基幹電源線BBに接続された可変コンデンサCfを調整(フィードバック制御)することにより、高周波電源側のインピーダンスとプラズマ側のインピーダンスとをマッチングさせる。また、4本の給電棒B1〜B4に一対一に接続された4つの可変コンデンサCm1〜Cm4を調整(フィードバック制御)することにより、伝搬中の高周波電力に所定のロスを生じさせる。これにより、高周波電力をサセプタ内の4つの給電ポイントに均一に供給することができる。
【0088】
また、本実施形態にかかるマイクロ波プラズマ処理装置10によれば、各給電ポイント近傍のバイアス電圧を検出するセンサSrが設けられていて、センサSrにより検出された給電ポイント毎の電圧に基づき、複数の給電棒Bに一対一に接続された複数の可変コンデンサCmがフィードバック制御される。これによれば、給電棒Bを伝播中の高周波電力に予測できない損失が発生してもそれに左右されることなく、サセプタ105に実際に印加された電圧を正確に測定することができる。これにより、給電ポイントの実測電圧に基づいて精度の高いフィードバック制御を実現することができる。この結果、近年の基板Gの大面積化に伴い大型化したサセプタであっても、サセプタ全体に均一に所望の高周波電力を供給することができ、均一な高周波電力のエネルギーを用いて良好なプロセスを実現することができる。
【0089】
また、センサSrは、複数の給電ポイントAの近傍にて複数の給電ポイントAに一対一に設けられた複数の測定用コンデンサCpの両極の電圧を検出し、検出された電圧に基づきフィードバック制御が行われる。よって、この方法では、電気プローブを基板Gに直接接触させてバイアス電圧を測定する方法に比べて、測定用のダミー基板を製品用の基板とは別に用意する必要がない。また、この方法では、プロセス中に同時に計測が可能なので製品の生産性を低下させない。これらの理由から、本実施形態のフィードバック制御方法によれば、生産性を低下させることなく、精度の高いフィードバック制御が可能となり、サセプタ全体により均一に高周波電力を供給することができる。
【0090】
(第2実施形態:分割サセプタ)
つぎに、第2実施形態にかかるマイクロ波プラズマ処理装置10について、図8及び図9を参照しながら説明する。第2実施形態にかかるマイクロ波プラズマ処理装置10では、サセプタ105を中央にて2分割している点で第1実施形態と異なる。
【0091】
具体的には、図8のII−II面にてサセプタ105を切断した図9に示したように、サセプタ105は左右に位置するサセプタ105d1及びサセプタ105d2の2つに分割され、分割された2つのサセプタ105d1、105d2のそれぞれには、給電ポイントA1及びA2、給電ポイントA3及びA4を介して図8に示した給電棒B1及びB2、給電棒B3及びB4がそれぞれ接続されている。制御装置700は、センサSr1〜Sr4により検出された測定用コンデンサCp1〜Cp4にかかる電圧V〜vに基づき、給電棒B1〜B4に一対一に接続された可変コンデンサCm1〜Cm4をそれぞれフィードバック制御する。これにより、2つに分割されたサセプタ105のそれぞれに供給される高周波電力が制御される。
【0092】
これによれば、分割された2つのサセプタ105d1、105d2のそれぞれに2つずつ給電ポイントが位置付けられる。2つのサセプタ105d1、105d2は互いに分離しているので、測定用コンデンサCpを用いた電圧の実測時に互いに干渉しないため、より精度の高い実測値を得ることができる。また、一般的に、大面積のサセプタ105に対して電力分布の均一性を保つ制御より、大面積のサセプタ105をいくつかに分割して、分割されたサセプタ毎に電力分布を管理するほうが、サセプタの面積が小さい分だけ容易である。したがって、本実施形態では、大面積のサセプタ105を複数のサセプタに分割し、分割サセプタ毎に高周波電力の供給をフィードバック制御することにより、より均一に高周波電力を供給することができる。その結果、基板Gの処理ムラをなくし、基板全体により良好なプロセス処理を施すことができる。
【0093】
なお、分割したサセプタ105d1、105d2間の空間Spに誘電体や絶縁材を充填させる必要はない。空間Spにそれらの部材を充填させなくても、異常放電などの問題は生じないためである。
【0094】
(第3実施形態:磁場レス)
つぎに、第3実施形態にかかるマイクロ波プラズマ処理装置10について、図10〜図12を参照しながら説明する。第3実施形態にかかるマイクロ波プラズマ処理装置10では、サセプタ105内の電極板115の同一円周上に3つの給電ポイントA1〜A3が位置づけられるように3本の給電棒B1〜B3が接続されている点で、給電ポイントAおよび給電棒Bの配置にそのような位置の制限がない第1実施形態にかかるマイクロ波プラズマ処理装置10と異なる。
【0095】
具体的には、図10のIII−III面にてサセプタ105を切断した図11に示したように、3つの給電ポイントA1〜A3は、中心Oに対する円Cの円周上に位置づけられる。制御装置700は、図10に示した各センサSr1〜Sr3により検出された各給電ポイント近傍の測定用コンデンサCp1〜Cp3にかかる電圧V〜Vに基づき、3本の給電棒B1〜B3に一対一に接続された3つの可変コンデンサCm1〜Cm3、可変コンデンサCfおよび高周波電力Pwのそれぞれをフィードバック制御する。これにより、高周波電源130から3本の給電棒B1〜B3を伝搬し、3つの給電ポイントA1〜A3からサセプタ105に供給される高周波電力が制御される。
【0096】
これによれば、3本の給電棒Bを介して同一円周上に設けられた3つの給電ポイントAからサセプタ105に高周波電力が供給される。各給電棒B1、B2、B3には、紙面の背面側から手前に向けて電流が流れている。この場合、各給電棒B1、B2、B3には、右ねじの法則により時計と反対周りに誘導磁場m1、m2、m3が発生する。各誘導磁場m1、m2、m3は、同一円周上の位置から発生しているので、互いに均等に渦巻き状に干渉し合い、全体として互いに逆回り誘導磁場Ma、Mbを形成する。この2つの誘導磁場Ma、Mbは打ち消し合う。このようにして、3本以上の給電棒からサセプタに高周波電力を供給する際、サセプタ下部にて給電棒の外周に発生した誘導磁場をキャンセルすることができる。これにより、サセプタ下部に発生した誘導磁場によってサセプタ下部にプラズマが発生し、プロセス処理に必要なプラズマが乱れることを防止することができる。
【0097】
また、サセプタ下部に誘電磁場が発生すると、その誘電磁場によりサセプタ下部にて電流が発生し、サセプタの電位がサセプタ直上のシース電圧に対応したバイアス電圧の本来の値に対応せず、バイアス電圧に誘電磁場の発生により生じた電流に対応する電圧分を加えた値になってしまう。このため、折角、サセプタ内の測定用コンデンサCpを用いてバイアス電圧を直接計測しても、投入された高周波電力の利用効率が悪く、フィードバック制御の効果が充分に得られない。
【0098】
しかしながら、かかる構成によれば、誘導磁場の発生を抑制する位置に3本以上の給電棒が配置され、これにより、サセプタ105に高周波電力Pwを多点給電するため、誘導磁場の影響を受けて高周波電力の利用効率を落とすことなく、安定したプロセスを実現することができる。
【0099】
3本の給電棒B1〜B3は、互いに平行に配置されている。これにより、3本の給電棒B1〜B3に高周波電源130から同一方向に電流が流れた場合、これに応じて発生する誘電磁場を全体として確実にキャンセルすることができる。
【0100】
なお、同一円周上に設けられた3以上の給電ポイントAにて3本以上の給電棒Bがサセプタ105に接続される必要がある。「同一円周上に設けられた3以上の給電ポイント」としたのは、1本の給電棒Bでは右ねじの法則により発生した誘導磁場をキャンセルすることはできないのと同様、2本の給電棒Bを用いても誘導磁場をキャンセルすることはできないためである。
【0101】
その理由について、図12を参照しながら説明する。中心点Oに対して同一円周C上に設けられた2つの給電ポイントA1,A2にて2本の給電棒B1、B2がサセプタ105に接続されている場合、各給電棒B1、B2には、右ねじの法則により時計と反対周りに誘導磁場m1、m2が発生する。
【0102】
各誘導磁場m1、m2は、同一円周上の各給電ポイントA1、A2から発生しているので、互いに均等に干渉し合い、給電棒B1,B2の内側にて打ち消し合うが、給電棒B1,B2の外側にて生成された誘導磁場Maはキャンセルされず、残ってしまう。このように、給電棒が2本の場合、誘導磁場をキャンセルすることができず、誘導磁場によりプラズマが乱れる場合が生じる。
【0103】
また、1つの円周上に設けられた3以上の給電ポイントにて3本以上の給電棒がサセプタに接続されていても、他の給電ポイントが1つまたは2つである場合、誘導磁場をキャンセルすることはできない。その理由について、図13を参照しながら説明する。中心点Oに対して同一円周C上に設けられた4つの給電ポイントA1〜A4にて4本の給電棒B1〜B4がサセプタ105に接続されている場合、各給電棒B1〜B4には右ねじの法則により時計と反対周りに誘導磁場m1〜m4が発生する。
【0104】
各誘導磁場m1〜m4は、同一円周上の各給電ポイントA1〜A4から発生しているので、互いに均等に干渉し合い、給電棒B1〜B4の外側の誘導磁場Maおよび内側の誘導磁場Mbを形成して打ち消し合う。しかしながら、給電棒B5に電流を流すことにより発生する誘導磁場m5はそのまま残ってしまう。このように、「同一円周上に設けられた3以上の給電ポイント」は、複数の円が存在する場合には、円毎に3以上の給電ポイントが必要であることを意味する。
【0105】
(第4実施形態)
つぎに、第4実施形態にかかるマイクロ波プラズマ処理装置10について、図14〜図16を参照しながら説明する。第4実施形態にかかるマイクロ波プラズマ処理装置10は、第2実施形態にて説明した複数の分割サセプタ、および、第3実施形態にて説明した3つ以上の給電ポイントの位置の特定による誘導磁場のキャンセル機能の両方の特徴を含んでいる。
【0106】
図14のIV−IV面にてサセプタ105を切断した図15に示したように、サセプタ105は、縦中央及び横中央にて対称的に4分割されている。4つの分割サセプタ105d1、105d2、105d3、105d4には、各分割サセプタに跨った同一円周上に4つの給電ポイントA1、A2、A3、A4が位置づけられるように、分割サセプタのいずれにも図14の給電棒B1、B2、B3、B4がそれぞれ接続されている。制御装置700は、センサSr1〜Sr4により検出された給電ポイントA1〜A4の電圧V〜Vに基づき、4本の給電棒B1〜B4に一対一に接続された4つの可変コンデンサCm1〜Cm4の容量をフィードバック制御するための制御信号を出力する。制御装置700は、また、高周波電力Pw及び可変コンデンサCfの容量をフィードバック制御するための制御信号を出力する。
【0107】
これによれば、複数の分割サセプタ105に跨った同一円周上に4つの給電ポイントAが位置づけられるため、上述した理由から誘電磁場の発生をキャンセルすることができるとともに、分割サセプタ105が互いに対称的な形状に分割されているため、各分割サセプタにおける高周波電力の分布を平滑化しやすくなる。このようにして、誘導磁場の発生を抑制しながら、上記フィードバック制御方法により分割サセプタに高周波電力を均一に供給することにより、安定したプロセスを実現することができる。
【0108】
(変形例)
サセプタ105を対称的に分割した他の例を図16A〜図16Eに示す。図16Aでは、サセプタ105は、中央に1つ及び周囲に対称的に4つのサセプタに分割されている。2つの円S、Tの各円周上に給電ポイントA1〜A4及び給電ポイントA5〜A7が設けられている。これによれば、各円S、Tの円周上に位置する各給電ポイントに接続された、図示しない給電棒から発生する誘電磁場を図11に示した原理によりキャンセルすることができる。なお、中央の分割サセプタに1つまたは2つの給電ポイントを設けることは好ましくない。図12又は図13に示した原理により誘導磁場が残るからである。
【0109】
図16Bでは、サセプタ105は、上下に4つのサセプタと両端から中央に張り出した2つのサセプタとに分割されている。同一円周C上には各分割サセプタに1つずつ給電する給電ポイントA1〜A6が設けられている。これによれば、円Cの円周上に位置する図示しない給電棒から発生する誘電磁場をキャンセルすることができる。
【0110】
分割サセプタは、図16C〜図16Eに例示したパターンであってもよい。いずれも分割サセプタに対称性があり、各分割サセプタに少なくとも1つの給電ポイントを有し、かつ、1または2以上の円の各円周上に3以上の各給電ポイントAが位置づけられている。
【0111】
以上に説明した分割サセプタにおいても、1または2以上の円の各円周上に3以上の各給電ポイントをそれぞれ設けることにより、各円周上に位置する給電棒の外周に発生する誘電磁場をキャンセルすることができる。
【0112】
以上に説明した各実施形態にかかるマイクロ波プラズマ処理装置10によれば、サセプタ105に埋設された測定用コンデンサCpの電圧を実測することにより、測定時に基板Gに損傷を与えることなく、測定された電圧値に基づきサセプタ105に供給された高周波電力Pを算出し、算出された高周波電力Pに基づいてサセプタ105に供給する高周波電力を精度良くフィードバック制御することができる。
【0113】
また、サセプタ105を分割することによりゾーン制御が可能となり、大面積のサセプタ105においても、各分割サセプタへの均一な電力供給が容易となる。また、複数の給電棒を用いた多点給電により、大面積のサセプタ105においても、サセプタへの均一な電力供給が容易となる。さらに、3本以上の給電棒を同心円状に配置することにより、高周波電力供給時に発生する誘導磁場をキャンセルすることができる。これらの作用の1つ又は2つ以上の組み合わせにより、経時変化や機差に左右されないサセプタ105の電圧Vdc制御が可能となる。
【0114】
なお、第1実施形態では、図5に示したように、高周波電力P1〜P4からサセプタ内の電力分布Haを予測し、電力のフィードバック制御により電力分布を電力分布Haから電力分布Hbに補正した上で、各可変コンデンサCm、Cfの容量を制御することにより給電棒伝搬中の高周波電力を損失量ls1〜ls4だけ損失させ、これにより、サセプタ105への高周波電力分布を平坦化させた。
【0115】
しかしながら、各給電棒Bを伝搬中の電力の損失成分lsは、必ずしも電力分布を平坦化させるように設定する必要はなく、たとえば、サセプタ105の外周側に最も高い電力が供給されるように各損失成分lsを設定したり、サセプタ105の中心側に最も高い電力が供給されるように各損失成分lsを設定したりすることも自由である。このように、本実施形態では、複数の給電棒Bに一対一に複数の可変コンデンサCmを設けたことにより、サセプタ105へ供給する高周波電源の平坦化や任意の傾斜制御が可能となる。
【0116】
上記実施形態において、各部の動作はお互いに関連しており、互いの関連を考慮しながら、一連の動作として置き換えることができる。そして、このように置き換えることにより、プラズマ処理装置の発明の実施形態を、プラズマ処理装置のフィードバック制御方法の実施形態とすることができる。
【0117】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0118】
たとえば、上記実施形態では、プラズマ処理装置の一例としてCMEPプラズマ処理装置を挙げたが、本発明にかかるプラズマ処理装置はこれに限られず、たとえば、ラジアルラインスロットアンテナ(Radial Line Slot Antenna)を用いたRLSAプラズマ処理装置(マイクロ波プラズマ処理装置)や、誘導結合型(ICP:Inductively Coupled Plasma)プラズマ処理装置、容量結合型プラズマ処理装置、電子サイクロトロン共鳴(Electron Cyclotron Resonance)プラズマ処理装置、ダイポールリングマグネトロン(Dipole Ring Magnetron)プラズマ処理装置などのあらゆるプラズマ処理装置に利用することができる。
【0119】
また、本発明に係るプラズマ処理装置では、プラズマに関するパラメータ(たとえば、シース電圧)を検出するために、必ずしも各給電ポイント近傍にコンデンサを設けることを要しない。たとえば、センサは、電気プローブを基板の上部表面に直接取り付けることにより、プラズマに関するパラメータとしてサセプタのバイアス電圧を実測してもよい。この場合には、プローブを直接、基板表面に接触させるため、測定時には測定用の基板を使用するほうがよい。
【0120】
また、本発明に係るプラズマ処理装置のサセプタに載置される被処理体は、基板Gに限られず、シリコンウエハであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】本発明の第1実施形態に係るかかるマイクロ波プラズマ処理装置の縦断面図である。
【図2】図1のI−I断面図である。
【図3】制御装置のハードウエハ構成図である。
【図4】フィードバック制御処理を示したフローチャートである。
【図5】電極板の電力分布とその分布の補正を説明するための図である。
【図6】電力と膜質との相関関係の一例を示したテーブルである。
【図7A】高周波電源、整合器及び処理室の等価回路を示した図である。
【図7B】直列共振と損失成分の設定を説明するための図である。
【図7C】可変コンデンサCmの調整を説明するための図である。
【図7D】直列回路から並列回路への変換を説明するための図である。
【図7E】並列共振と可変コンデンサCfの調整を説明するための図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係るかかるマイクロ波プラズマ処理装置の縦断面図である。
【図9】図8のII−II断面図である。
【図10】本発明の第3実施形態に係るかかるマイクロ波プラズマ処理装置の縦断面図である。
【図11】図10のIII−III断面図である。
【図12】誘導磁場をキャンセルできない場合の一例を説明するための図である。
【図13】誘導磁場をキャンセルできない場合の他の例を説明するための図である。
【図14】本発明の第4実施形態に係るかかるマイクロ波プラズマ処理装置の縦断面図である。
【図15】図14のIV−IV断面図である。
【図16A】分割サセプタの変形例である。
【図16B】分割サセプタの他の変形例である。
【図16C】分割サセプタの他の変形例である。
【図16D】分割サセプタの他の変形例である。
【図16E】分割サセプタの他の変形例である。
【符号の説明】
【0122】
10 マイクロ波プラズマ処理装置
100 処理容器
105,105d1,105d2,105d3,105d4 サセプタ
110 絶縁体
115 電極板
125 整合器
130 高周波電源
135,250,610 Oリング
200 蓋体
205 方形導波管
210 スロットアンテナ
210a スロット
215 誘電体板
220 金属梁
225 ガス導入管
700 制御装置
A、A1、A2、A3、A4 給電ポイント
B、B1、B2、B3、B4 給電棒
BB 基幹電源線
Cp,Cp1,Cp2,Cp3,Cp4 測定用コンデンサ
Cm,Cm1,Cm2,Cm3,Cm4,Cf 可変コンデンサ
Pw 高周波電力
m,Ma,Mb 誘導磁場
Sr,Sr1,Sr2,Sr3,Sr4 センサ
Tb テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスを励起することにより生成されたプラズマを用いて被処理体をプラズマ処理するプラズマ処理装置であって、
処理容器と、
前記処理容器の内部に設けられ、被処理体を載置するサセプタと、
高周波電力を出力する高周波電源と、
前記サセプタに位置する複数の給電ポイントにて前記サセプタに接続され、前記高周波電源から出力された高周波電力を前記複数の給電ポイントから前記サセプタに供給する複数の電源線と、
前記高周波電源と前記複数の電源線との間に設けられ、前記複数の電源線に一対一に接続された複数の第1の可変コンデンサを含み、前記高周波電源側のインピーダンスとプラズマ側のインピーダンスとをマッチングさせる整合器と、
各給電ポイント近傍のプラズマに関するパラメータをそれぞれ検出するセンサと、
前記センサにより検出された各給電ポイントのプラズマに関するパラメータに基づき、前記複数の第1の可変コンデンサをフィードバック制御する制御装置と、を備えたプラズマ処理装置。
【請求項2】
前記センサは、前記複数の給電ポイントの近傍に配設された複数の測定用コンデンサの両極の電圧を検出し、
前記制御装置は、前記複数の測定用コンデンサにかかる電圧に基づき、前記複数の第1の可変コンデンサをフィードバック制御する請求項1に記載されたプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記複数の測定用コンデンサにかかる電圧に基づき、前記複数の給電ポイントの各々に供給された高周波電力を算出し、前記複数の給電ポイントの少なくともいずれかに供給される高周波電力に所望の損失量が生じるように前記複数の第1の可変コンデンサをフィードバック制御する請求項2に記載されたプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記算出された高周波電力に基づき、前記サセプタに供給された高周波電力の最小電力値を求め、前記最小電力値に応じて前記高周波電源から出力する高周波電力を増減させる請求項3に記載されたプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記制御装置は、各給電ポイントに供給される高周波電力が前記最小電力値に応じた値になるように前記各給電ポイントに高周波電力を伝搬させる際の損失量を算出し、前記算出された損失量が発生するように各第1の可変コンデンサをフィードバック制御する請求項4に記載されたプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記各給電ポイントに供給される高周波電力が前記最小電力値に等しい値となるように前記各給電ポイントに高周波電力を伝搬させる際の損失量を算出し、前記算出された損失量が発生するように前記各第1の可変コンデンサをフィードバック制御する請求項5に記載されたプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記整合器は、前記複数の第1の可変コンデンサに加え、前記高周波電源と前記複数の電源線とを繋ぐ基幹電源線に接続された第2の可変コンデンサを有し、
前記制御装置は、前記センサにより検出された前記各給電ポイント近傍の測定用コンデンサにかかる電圧に基づき、前記高周波電源から出力する高周波電力、前記複数の第1の可変コンデンサおよび前記第2の可変コンデンサをフィードバック制御する請求項3〜6のいずれかに記載されたプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記サセプタは、複数に分割され、
前記分割された複数のサセプタのそれぞれには、前記複数の給電ポイントの少なくともいずれかが位置づけられるように、前記分割された複数のサセプタのいずれにも前記複数の電源線の少なくともいずれかが接続され、
前記制御装置は、前記分割されたサセプタのそれぞれに位置する給電ポイント毎のプラズマに関するパラメータに基づき、前記複数の電源線に直列に接続された複数の第1の可変コンデンサをフィードバック制御する請求項1〜7のいずれかに記載されたプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記複数の電源線は、前記サセプタの同一円周上に位置した3以上の給電ポイントにて前記サセプタに接続される3本以上の給電棒から構成され、
前記制御装置は、前記センサにより検出された給電ポイント毎のプラズマに関するパラメータに基づき、前記3本以上の給電棒に一対一に接続された3以上の第1の可変コンデンサをフィードバック制御する請求項1〜8のいずれかに記載されたプラズマ処理装置。
【請求項10】
前記サセプタに埋設された電極板をさらに備え、
前記3本以上の給電棒は、前記サセプタ内の電極板の同一円周上に位置する3以上の給電ポイントにて前記電極板に接続される請求項9に記載されたプラズマ処理装置。
【請求項11】
前記サセプタは、対称的に複数に分割され、
前記分割された複数のサセプタのうち同一サセプタ内の同一円周上又は複数のサセプタに跨った同一円周上であって、かつ、前記分割された複数のサセプタのいずれにも1以上の給電ポイントが位置づけられるように、前記分割された複数のサセプタのいずれにも前記3本以上の給電棒の少なくとも1本が接続され、
前記制御装置は、前記センサにより検出された給電ポイント毎のパラメータに基づき、前記3本以上の給電棒に直列に接続された3以上の第1の可変コンデンサをフィードバック制御する請求項9または請求項10のいずれかに記載されたプラズマ処理装置。
【請求項12】
前記3本以上の給電棒は、互いに平行に配置される請求項9〜11のいずれかに記載されたプラズマ処理装置。
【請求項13】
前記3本以上の給電棒は、前記サセプタに垂直に挿入される請求項9〜12のいずれかに記載されたプラズマ処理装置。
【請求項14】
前記測定用コンデンサの容量Cは、シース容量Cシースの4.2倍以下である請求項2〜13のいずれかに記載されたプラズマ処理装置。
【請求項15】
前記測定用コンデンサの容量Cは、シース容量Cシースの2.1倍以下である請求項2〜13のいずれかに記載されたプラズマ処理装置。
【請求項16】
ガスを励起することにより生成されたプラズマを用いて被処理体をプラズマ処理するプラズマ処理装置のフィードバック制御方法であって、
高周波電源から高周波電力を出力し、
被処理体を載置するサセプタに位置する複数の給電ポイントを介して前記複数の給電ポイントに一対一に接続された複数の電源線から前記サセプタに前記出力された高周波電力を供給し、
各給電ポイントに応じたプラズマに関するパラメータをセンサにより検出し、
前記検出された給電ポイント毎のプラズマに関するパラメータに基づき、前記複数の電源線に一対一に接続された複数の第1の可変コンデンサをフィードバック制御するプラズマ処理装置のフィードバック制御方法。
【請求項17】
前記プラズマ処理装置は、前記複数の第1の可変コンデンサと、前記高周波電源と前記複数の電源線とを繋ぐ基幹電源線に接続された第2の可変コンデンサとを有する整合器を備え、
前記プラズマに関するパラメータとして前記各給電ポイント近傍の測定用コンデンサにかかる電圧を前記センサにより検出し、
前記検出された前記各給電ポイント近傍の測定用コンデンサにかかる電圧に基づき、前記高周波電源から出力する高周波電力、前記複数の第1の可変コンデンサおよび前記第2の可変コンデンサをフィードバック制御する請求項16に記載されたプラズマ処理装置のフィードバック制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図7E】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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【図16C】
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【図16D】
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【図16E】
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【公開番号】特開2009−231248(P2009−231248A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−78793(P2008−78793)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】